文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。
(1) 経営方針
当社グループは、コーポレート・ステートメントである「未来創発─Dream up the future.─」を掲げ、「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」、「お客様の信頼を得て、お客様とともに栄える」ことを使命と考えています。この使命を果たすべく、お客様の問題を先取りして解決策を導く「ナビゲーション」から、具体的な解決策を実施・運用する「ソリューション」までのトータルソリューションにより価値の最大化を目指すことを経営目標としています。
また、「新たな価値創造を通じた『活力ある未来社会の共創』」、「社会資源の有効活用を通じた『最適社会の共創』」、「社会インフラの高度化を通じた『安全安心社会の共創』」という「NRIらしい3つの社会価値」を作り出すことにより、社会課題の解決と持続可能な未来社会の実現に貢献していきます。
(2) 経営戦略
<中期経営計画>
昨今、企業においては、成長や競争力強化のため、DX(デジタルトランスフォーメーション)といわれるデジタル技術を活用した業務プロセスの変革やビジネスモデルの変革が、グローバルで進展しています。その一方で、既存システムの複雑化・ブラックボックス化がDX実現への阻害要因になっているほか、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など新しいデジタル技術を活用した新規市場の創出を推進するIT人材の不足、さらにはグローバル事業の強化やクラウド利用によるITコスト削減も引き続き顧客企業における重要な経営課題となっています。
このような事業環境のもと、当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に後半4か年の
「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)を策定しました。
中期経営計画2022では、DX戦略、グローバル戦略、人事・リソース戦略の3つの戦略テーマを設定しています。顧客との価値共創を通じて、当社グループの持続的成長と持続可能な未来社会づくりを目指します。
中期経営計画2022の成長戦略
・DX戦略:テクノロジーを活用した顧客のビジネスモデル・プロセスの変革
当社グループの強みを活かしたビジネスプラットフォームの進化
クラウドを活用し多様化するシステム基盤からアプリ開発までをトータル支援
・グローバル戦略:豪州・米国での外部成長を軸に事業基盤を拡大
・人材・リソース戦略:当社グループの競争力を支える人材の採用・育成、パートナー連携
当社グループは、中期経営計画2022の最終年度(2022年度)に、売上高6,700億円以上、海外売上高1,000億円、営業利益1,000億円、営業利益率14%以上、EBITDAマージン20%以上、ROE14%を目指します。なお、当年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度の自己資本利益率(ROE)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率の維持を目指します。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
<経営環境の認識>
当社グループはこれまで、国内市場においては金融業や流通業における顧客基盤の構築や金融分野のビジネスプラットフォームの提供などを通して、グローバル市場においては日本企業のグローバル化への対応と、主に豪州でのM&Aなどを通して成長してきました。一方で、顧客企業においてはDX関連のIT投資が増加し、業務プロセスを変革する段階から、ビジネスモデルそのものを変革する段階へと急速に進展しています。
このような環境の中、当社グループが今後さらなる成長を実現するためには、国内外の既存事業領域における競争優位性をさらに高めつつ、DX領域においても信頼されるパートナーとしての地位を確立し、顧客との取引を大型化する必要があると考えています。そのためにはDX事業やグローバル事業を推進する人材の確保が必要であり、採用と育成の強化が重要であると認識しています。
<DX事業の推進>
DX領域においては、AIやIoT、ブロックチェーンといった新しい技術が次々と生み出されています。顧客の業務プロセス、ビジネスモデルを変革・拡大していくためには、戦略策定からソリューションの実装まで、顧客とともに仮説検証を繰り返しながらビジネスを創出することが必要です。当社グループは、顧客の現在の業務プロセス変革・インフラ変革からビジネスモデルそのものの変革まで、顧客のDXパートナーとして、コンサルタントとシステムエンジニアが一体となり継続的に事業拡大に取り組んでいきます。
昨今、金融業界では業態自体の変革のほか、異業種からの新規参入が起きるなど業界の構造変化が起きています。その変化に対応するため、高品質な共同利用型サービスの提供やビジネスプロセスアウトソーシングなどのサービスラインアップの充実のほか、API(アプリケーションをつなぐインタフェース)提供など新たな事業創出による新規顧客獲得にも取り組んでいきます。
また、クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化するシステム基盤をトータルで支援していくことが必要です。老朽化したITシステムの刷新対応やクラウド上でのアプリ開発などのニーズを捉え、従来のプライベートクラウドに加え、パブリッククラウド活用などを基盤サービスラインアップに拡充することでスピーディーな対応とコスト最適化に取り組みます。
<グローバル事業の推進>
グローバル事業では、当社グループが設立した現地法人のほか、豪州・米国におけるM&Aにより事業拡大を進めてきました。引続きグローバルでの競争力確保に向けて、既存事業の拡大のほか、豪州ではより一層の外部成長を、北米では先進的な技術・ノウハウを持つ企業の高付加価値な知的財産の獲得を目指します。
また、「Vision2022」で掲げた海外売上高1,000億円の実現に向けては、グローバル戦略を着実に推進していく体制構築が必要です。そのため、グローバル本社機構を中心として、グローバル戦略の策定や執行を支援するとともに、海外子会社のCEOを支える経営層の強化とガバナンスを強化していきます。
<人材の確保・育成>
これらの施策を着実に実行していくには、付加価値の源泉である人材の確保と育成が不可欠です。現状では特に
DX領域やグローバル事業を着実に推進できる人材の確保が急務となっており、新卒・キャリア採用の強化と社員の育成に取り組みます。
また、技術・ノウハウを保有する企業との関係強化を図っていきます。さらには、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現していきます。
当社グループの事業等において、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、これらは当年度末における事業等に関するリスクのうち代表的なものであり、実際に起こり得るリスクはこの限りではありません。また、本文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 当社グループのリスク管理体制
当社グループ全般のリスク管理のため、リスク管理担当役員(代表取締役専務執行役員)を任命するとともに、リスク管理統括部署として統合リスク管理室を設置しています。
統合リスク管理室は、リスク管理の枠組みの構築・整備、リスクの特定・評価・モニタリング及び管理態勢全般の整備等を実施しています。
リスク管理担当役員を委員長とする統合リスク管理会議を年2回開催し、リスク管理PDCAサイクルの評価やリスク対応策の審議等を行い、その結果を取締役会に報告しています。
(2) 当社グループのリスク管理方法
① リスクの設定
当社グループの業務遂行上発生しうるリスクを13項目に分類し、さらにリスク分類ごとにリスク項目を設定します。リスク項目は、定期的にリスクの主管部署が評価し、リスク項目・重要度・影響度の見直しを行っています。13のリスク分類のうち、年度ごとに、特に重要度が高いと認識するものを「リスク管理に関する重点テーマ」として統合リスク管理会議で選定しています。2021年3月期のリスク管理に関する重点テーマは下記のとおりです。
・稼働システムの品質リスクに対する適切なマネジメントの継続
・情報セキュリティ管理態勢の高度化
・プロジェクトリスクに対するマネジメントの徹底
・NRIグループに相応しいガバナンス態勢の整備
・事業継続責任を果たすための適切な備え
・働きやすい労働環境の整備
② リスクの対策
リスク項目ごとに、リスク主管部署がリスク低減策を検討し実施します。リスク低減策はリスク管理統括部署に連携し、必要に応じて統合リスク管理会議で審議します。
③ モニタリング
リスク低減策の実施状況はリスク管理統括部署に連携し、定期的に統合リスク管理会議に報告し評価します。必要に応じて統合リスク管理会議で追加のリスク低減策の策定・実施を指示します。
(3) 新型コロナウイルス感染症に関するリスク
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、当社グループの事業活動においても影響が生じる懸念があります。
受注に関するリスクとしては、顧客における経営状況の変化や情報システムの投資計画の抜本的見直しが行われた場合には、当社グループとの契約が更新されない可能性があります。また、顧客の投資意欲が後退した場合には、新たな顧客の獲得が想定どおりに進まない可能性があります。
生産に関するリスクとしては、当社グループの役職員は、各国の政府及び地方自治体等からの外出自粛要請に従い、在宅勤務を基本とした勤務形態の切替えを行っており、勤務形態の切替えによる労働生産性の低下により、顧客が期待する高い品質のサービスを提供できない場合やコンサルティング、システム開発業務の遅延等が発生する可能性があります。また、当社グループは一定量のシステム開発業務を中国等のオフショアを含む協力会社に委託しています。今後、事態が長期化及び深刻化する場合には、安定した協力会社の確保に影響を及ぼす可能性があります。
これらの影響により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があるほか、その後の業務の受託に支障を来す可能性があります。なお、新型コロナウイルスの終息時期は依然として不透明であり、実際に起こり得るリスクはこの限りではありません。
なお、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、取締役を委員長とした危機管理会議を設置し、危機管理会議委員長及び統合リスク管理室、人事部、総務部等の主管部署で構成する危機管理会議事務局において、状況の確認や発生した課題への対策を検討・実施しています。危機管理会議事務局で検討した内容については、定期的に経営会議や取締役会に報告・協議しています。
また、提出日現在の感染拡大防止の取組みとして、テレワーク(在宅勤務)の積極的な活用や時差出勤の推奨、執務エリアの分散、座席間隔の確保、サーモグラフィカメラや検温等による来訪者の健康状態の確認等の施策を実施し、役職員等の健康維持を図るとともに、社内で感染者及び感染疑いが発生した場合に備え、危機管理会議事務局への報告体制、濃厚接触者の確認手順、消毒及び対外発表等の対応手順を整備しています。
(4) 特に重要と認識するリスク
① 品質に関するリスク
当社グループが開発する情報システムは、顧客の業務の重要な基盤となることが多く、完成後の安定稼働が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。
当社グループは、運用面での品質の向上に注力しており、ISO27001に準拠した情報セキュリティマネジメントシステム及びISO20000に準拠したITサービスマネジメントシステムにより、運用サービスの品質の維持及び向上に継続的に努めています。また、金融サービス業のシステムについては重点的に管理状況等の点検を行うほか、万一障害が発生した場合の対応整備を進めています。
データセンターについては、経済・社会に不可欠なインフラであり、その重要性を強く認識しています。一層の安全確保に向けて運営体制を整備し、その運営の評価・検証を定期的に行っています。
また、顧客の業務プロセスを受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスをはじめとしたアウトソーシング業務については、誤入力や誤送付などのオペレーションリスクが内在することを認識しており、より一層の管理体制の整備を進めています。
しかしながら、運用上の作業手順が遵守されないなどの人的ミスや機器・設備の故障、電力等のインフラの障害等により、顧客と合意した水準での安定稼働が実現できなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。
② 情報セキュリティに関するリスク
インターネットがインフラとして定着し、あらゆる情報が瞬時に広まりやすい社会になっています。こうした技術の発展により、利用者の裾野が広がり利便性が増す一方で、サイバー攻撃等の外部からの不正アクセスによる情報漏洩のリスクが高まっており、情報セキュリティ管理が社会全般に厳しく問われるようになっています。特に情報サービス産業は、顧客の機密情報を扱う機会が多く、より高度な情報セキュリティ管理や社員教育の徹底が求められます。
マイナンバーを含む個人情報の管理においてはプライバシーマークの付与認定(個人情報保護マネジメントシステムの適合性認定)を受け、また、一部の事業について情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得し、機密情報の適切な管理を行っています。常に高度なセキュリティレベルを維持するため、システムによる入退館の管理や、パソコンのセキュリティ管理の徹底、個人情報保護に関する研修の実施等を行っています。特に、顧客の基幹システムの運用を行うデータセンターでは、X線検査装置による持込持出チェックなど、厳重な入退館管理システムを採用しています。さらに、事業活動のグローバル化に伴う海外子会社の増加に対して、情報セキュリティ関連規程の確認やアセスメントの実施など、当社グループ全体の統制強化に努めています。
このような取組みにもかかわらず、情報漏洩が発生した場合には、顧客等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績が影響を受ける可能性があります。
③ プロジェクトに関するリスク
情報システムの開発は、原則として請負契約であり、納期までに情報システムを完成させ納品するという完成責任を負っていますが、顧客要請の高度化・複雑化や完成までの諸要件の変更等により、作業工数が当初の見積り以上に増加し、納期に遅延することがあります。また、引渡し後であっても性能改善を行うなど、契約完遂のため想定以上に作業が発生することがあります。特に複数年にわたる長期プロジェクトは、環境の変化や技術の変化に応じた諸要件の変更等が発生する可能性が高くなります。また、情報システムは重要な社会インフラであり、完成後の安定稼働に向け、開発段階からの品質管理、リスク管理が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。
当社グループは、教育研修等を通じプロジェクトマネージャーの管理能力の向上に努め、また、ISO(国際標準化機構)9001に準拠した品質マネジメントシステムを整備するなど、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えています。特に一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼働まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図っています。また、金融サービス業のシステムについては重点的にシステム開発プロセスの点検・改善を進めています。
しかしながら、作業工数の増加や納品後の性能改善等による追加費用が発生した場合には、最終的な採算が悪化する可能性があります。また、納期遅延やシステム障害等により顧客の業務に支障を来した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。
④ グループガバナンスに関するリスク
当社グループは、将来の事業機会をにらみ各事業会社に出資しているほか、事業上の関係強化を図るため、取引先等に対して投資採算性等を考慮に入れつつ出資しています。また、グローバルの事業基盤拡大に向けM&Aや提携を進めています。
これらの実施に当たっては、対象となる企業の財務内容や事業について詳細な事前審査を行い、意思決定のために必要かつ十分な情報収集と検討を行った上で決定しています。グローバル戦略を推進していく体制として、北米、アジア及び豪州においては地域統括会社又は持株会社を設置し、主に買収子会社に対するガバナンス体制の強化を進めており、また、当社においては新たに設置したグローバル本社機構を中心にグローバル戦略の策定や執行を支援するとともに、買収子会社を含む海外子会社全般のガバナンスの強化を進めています。
しかしながら、M&Aや提携などの実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、期待した成果を上げられなかった場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
⑤ 事業継続に関するリスク
事業活動のグローバル化やネットワーク化の進展に伴い、災害やシステム障害など万一の事態に想定される被害規模は大きくなってきており、危機管理体制の一層の強化が求められています。
当社グループは、新型コロナウイルス等の感染症、大規模地震・台風・水害等の自然災害、大規模災害、大規模障害、事業や業務遂行に関わる事件・事故が発生した場合に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業継続に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。当社グループが入居する主要オフィスは、事業を継続する上で高度防災機能を有しており、特に、東京本社、横浜総合センター及び大阪総合センターは、国内最高水準の高度防災機能を有しています。また、当社グループが保有するデータセンターはセキュリティ対策や耐震等の災害対策においても国内最高の水準にあり、関東地区と関西地区のデータセンターを連携した相互バックアップや機能分散など、広域災害への対策を整備しています。データセンター内にある当社グループの情報資産についてバックアップ体制の更なる強化を図るとともに、顧客から預かる情報資産については顧客と合意した水準に基づいて対策を進めています。
また、新型コロナウイルスや大規模自然災害等で出社不可となる事態においても業務遂行が可能となるよう、テレワーク環境の構築や事業継続計画の継続的な見直しを行っています。
しかしながら、一企業のコントロールを超える特別な事情や状況が発生し、業務の中断が不可避となった場合には、顧客と合意した水準でのサービス提供が困難となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
⑥ 人材確保・育成に関するリスク
当社グループは、社員個々人の高い専門性こそが、高付加価値サービスを顧客に提供するための土台であると考えています。専門性を備えた人材を確保・育成し、十分に能力を発揮できる人事制度や労務環境を整備することが、当社グループが中長期的に成長するために必要であると考えています。
当社グループは、人的資源を「人財」ととらえ、その確保・育成のための仕組み作りを進めています。人材確保については、優れた専門性を有した人材の採用に努め、また、ワークライフバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した人事制度の構築や労務環境の整備に取り組んでいます。人材育成については、各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、教育研修の専用施設等で、DX(デジタルトランスフォーメーション)領域の新技術の習得をはじめとした多くの人材開発講座を開催しています。また、当社グループ独自の社内認定資格を用意するなど社員に自己研鑽を促しています。このような取組みにもかかわらず、顧客の高度な要請に的確に応え得る人材の確保・育成が想定どおり進まなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、労務環境が悪化した場合には、社員の心身の健康が保てなくなり、労働生産性の低下や人材流出につながる可能性があります。
(5) 重要と認識するリスク
① 経営戦略に関するリスク
a. 情報サービス産業における価格競争について
情報サービス産業では、事業者間の競争が激しく、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品の普及も進んでいることから、価格競争が発生する可能性があります。
このような環境認識の下、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用に至る総合力をさらに高め、サービスの高付加価値化により競合他社との差別化を図るとともに、生産性の向上に取り組んでいます。
しかしながら、想定以上の価格競争が発生した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
b. 運用サービス事業の安定性について
運用サービスを展開するに当たっては、データセンターに係る不動産や運用機器、ソフトウエア等の投資が必要であり、投資額の回収は顧客との運用サービス契約に基づき長期間にわたって行われます。
運用サービスの契約は複数年にわたるものが多く、また単年契約であっても自動更新されることが多いため、売上高は比較的安定していると考えられます。さらに、当社グループは慎重な事業進捗管理と継続的な顧客の与信管理を行うことにより、投資額の回収に努めています。
しかしながら、運用サービスの売上高の安定性は将来にわたって保証されているわけではなく、顧客の経営統合や経営破綻、IT戦略の抜本的見直しなどにより、当社グループとの契約が更新されない可能性があります。
c. ソフトウエア投資について
当社グループは、製品販売、共同利用型サービス及びアウトソーシングサービス等の事業展開を図るため、ソフトウエア投資を行っています。多くの場合、ソフトウエアは特定用途別に設計するため、転用しにくい性質を持っており、投資に当たっては慎重な検討が求められます。
当社グループは、事業計画の妥当性を十分に検討した上でソフトウエアの開発に着手しています。また、開発途中及び完成後であっても、事業計画の進捗状況の定期的なチェックを行い必要に応じて速やかに事業計画を修正する社内体制を整えています。
しかしながら、投資の回収可能性は必ずしも保証されているわけではなく、資金回収ができずに損失を計上する可能性があります。
d. 情報サービス産業における技術革新について
情報サービス産業においては、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められています。
このような環境認識の下、当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
しかしながら、広範な領域において技術革新が急速に進展し、その対応が遅れた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
e. 野村ホールディングス㈱及びその関係会社との資本関係について
当年度末において、野村ホールディングス㈱が当社の議決権を28.8%保有(間接保有11.2%を含む。)しています。
当社に対する野村ホールディングス㈱の議決権比率は、将来にわたって一定であるとは限りません。また、野村ホールディングス㈱による議決権行使が、当社の他の株主の利益と必ずしも一致しない可能性があります。
② コンプライアンスに関するリスク
a. 知的財産権について
電子商取引に関連する事業モデルに対する特許など、情報システムやソフトウエアに関する知的財産権の重要性が増しています。
このような環境認識の下、当社グループは、情報システムの開発等に当たっては第三者の特許を侵害する可能性がないかを調査するとともに、教育研修等を通じて知的財産権に対する社員の意識向上に努めています。一方、知的財産は重要な経営資源であり、積極的に特許を出願することによって当社グループの知的財産権の保護にも努めています。
このような取組みにもかかわらず、当社グループの製品やサービスが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、情報システムの使用差止請求を受けサービスを停止せざるを得なくなるなど、業務遂行に支障を来す可能性があります。また、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。
b. 法令・規制について
当社グループは、事業活動を行う上で、国内外の法令及び規制の適用を受けています。また、近年、労働関係の法令については、より一層の法令遵守が求められています。当社グループでは、コンプライアンス体制の構築に加え、法令遵守の徹底及び労務環境の整備に努めています。
しかしながら、法令違反等が発生した場合、また新たな法規制が追加された場合には、当社グループの事業及び業績が影響を受ける可能性があります。
③ 協力会社に関するリスク
当社グループは、生産能力の拡大や生産性の向上及び外部企業の持つノウハウ活用等のため、外部企業に業務委託していますが、これらの多くは請負契約の下で行われています。
a. 良好な取引関係について
当年度において、生産実績に占める外注実績の割合は4割であり、当社グループが事業を円滑に行うためには、優良な協力会社の確保と良好な取引関係の維持が必要不可欠になります。
当社グループは、定期的に協力会社の審査を実施するほか、国内外を問わず協力会社の新規開拓を行うなど、優良な協力会社の安定的な確保に努めています。また、特に専門性の高い業務ノウハウ等を持つ協力会社である「eパートナー契約」締結先企業とのプロジェクト・リスクの共有や、協力会社に対するセキュリティ及び情報管理の徹底の要請など、協力会社も含めた生産性向上及び品質向上活動に努めています。
協力会社は、中国を始めとする海外にも広がっており、中国企業への委託は外注実績の1.7割を占めています。このため、役職員が中国を中心に海外の協力会社を定期的に訪問し、プロジェクトの状況確認を行うなど、協力体制の強化に努めています。
このような取組みにもかかわらず、優良な協力会社の確保や良好な取引関係の維持が実現できない場合には、事業を円滑に行うことができなくなる可能性があります。特に、海外の協力会社への委託については、日本とは異なる政治的、経済的、社会的要因により、予期せぬ事態が発生する可能性があります。
b. 請負業務について
請負契約の下で行われる業務委託に当たっては、労働関係法令に則った適切な対応が求められます。
当社グループは、請負業務に関するガイドラインを策定し全社的な問題意識の共有化・定着化を図り、また、協力会社を対象とした説明会を開催するなど、適正な業務委託の徹底に努めています。
このような取組みにもかかわらず、請負業務の趣旨から逸脱して業務が遂行され、偽装請負問題などが発生した場合には、当社グループの信用を失う可能性があります。
④ 社会的責任に関するリスク
地球規模で気候変動をはじめとした社会課題の深刻化が進んでおり、国際的にもパリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)などの社会課題解決に向けた目標の合意などから、企業においても社会的責任に対する取組みがこれまで以上に求められています。特に、気候変動問題においては、グローバルの情報サービス産業の中では、情報サービスの提供に際して再生可能エネルギーを活用する動きが急速に広がっています。
気候変動に関する将来の事項については不確実性が大きく、炭素税の影響及び再生可能エネルギー価格については、政治及び技術的な取組状況にも大きく左右されます。そのため、当社は金融安定理事会が設置した「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終提言に賛同して気候変動による事業へのリスクと機会を特定するシナリオ分析を実施しています。また、当社グループが保有する複数のデータセンターは、国内最高水準の環境性能を備えていることに加え、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムを導入し、再生可能エネルギー利用率を2030年度までに36%、当社グループ全体では2050年度までに100%とする環境目標を掲げています。しかしながら、目標とする再生可能エネルギーへの転換が遅延した場合、また気候変動に対する社会からの要請が急速に進展しその対応が遅れた場合、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。
当社グループは、グローバルで従業員13,000人超、協力会社12,500人超の事業規模に拡大しており、サプライチェーンを含む人権課題への対応が不可欠となっています。また、情報サービス産業においては、事業活動で扱うマイナンバーを含む個人情報も「デジタルライツ」として考慮すべき情報と考えられ、慎重な取扱いが必要となり、AI(人工知能)のシステム開発では、人権を考慮した設計、運用が必要となります。
当社は、当社グループの活動内容や今後の方針を示した人権報告書やAI倫理ガイドラインを策定し、負の影響を低減させる取組みを実施していますが、これらの人権課題に対して適切な対応が出来なかった場合、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。
⑤ 保有有価証券に関するリスク
当社グループは、取引先との関係強化などを目的として株式を、また資金運用を目的として債券等を、保有しています。
これらの有価証券について、発行体の業績悪化や経営破綻等が発生した場合には、会計上減損処理を行うことや、投資額を回収できないことがあります。また、経済環境、市場動向や発行体の業績動向等によって時価が変動するため、当社グループの財政状態に影響を与えます。
⑥ 退職給付に係る資産・負債に関するリスク
当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度及び退職一時金制度を設けています。退職給付に係る資産・負債は、退職給付債務と年金資産等の動向によって変動します。
退職給付債務については、従業員の動向、割引率等多くの仮定や見積りを用いた計算によって決定されており、その見直しによって大きく変動することがあります。年金資産については、株式市場動向、金利動向等により変動します。また、年金制度を変更する場合、退職給付に係る資産・負債が影響を受ける可能性があります。
⑦ 訴訟に関するリスク
当社は、2015年4月30日付で日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱から訴訟の提起を受け、現在係争中です。
同社は、全国の郵便局等を結ぶ通信ネットワークを新回線へ移行するに当たり、ソフトバンク㈱に対し回線サービスの調達・保守業務を、当社に対しネットワークの移行管理・調整業務を、発注しました。この新回線への移行が遅延し損害を被ったとして、日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱は、ソフトバンク㈱及び当社に対し、16,150百万円を連帯して支払うよう求めています。
当該訴訟の結果によっては、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2018年4月 1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) |
前年度比 |
|
|
増減額 |
増減率 |
|||
|
売上高 |
501,243 |
528,873 |
27,629 |
5.5% |
|
海外売上高 |
53,081 |
46,752 |
△6,328 |
△11.9% |
|
海外売上高比率 |
10.6% |
8.8% |
△1.7P |
- |
|
営業利益 |
71,442 |
83,178 |
11,736 |
16.4% |
|
営業利益(のれん償却前) |
75,373 |
86,343 |
10,970 |
14.6% |
|
営業利益率 |
14.3% |
15.7% |
1.5P |
- |
|
営業利益率(のれん償却前) |
15.0% |
16.3% |
1.3P |
- |
|
EBITDAマージン |
21.7% |
22.2% |
0.5P |
- |
|
経常利益 |
72,409 |
84,528 |
12,119 |
16.7% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
50,931 |
69,276 |
18,344 |
36.0% |
|
ROE(自己資本利益率) |
12.3% |
20.3% |
8.0P |
- |
(注)1. 消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜き方式によっています。
2. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額+固定資産除却損)÷売上高
当年度の日本経済は、米国を起点とする貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題による世界経済への影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明な状況となりました。情報システム投資においては、ITを用いたビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要は緩やかに増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、今後、企業の情報システム投資が鈍化する可能性があります。
このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当社グループは、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け、2019年4月に後半4か年の「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)を策定しました。「中期経営計画2022」では、2022年度の営業利益1,000億円、海外売上高1,000億円などの財務目標と、成長戦略と連動した非財務目標「持続的成長に向けた重要課題」に加えて、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)への取組みを「価値共創を通じた社会課題の解決」として新たに明示しました。これらの取組みを通じて、当社グループの持続的成長と持続可能な未来社会づくりを両立させる「サステナビリティ経営」を推進していきます。
「中期経営計画2022」では、その目標達成に向けて、当社グループの強みを発揮し、社会課題の解決を通じて事業の成長につながる(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の3つを成長戦略として位置付け、顧客との価値共創を目指します。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションの実装まで、テクノロジーを活用し、総合的に支援していきます。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援も行っていきます。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現していきます。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸とした事業基盤の拡大を進めます。豪州においてはマーケットシェアの拡大とM&Aを通じた成長を図るため、当年度に当社の豪州子会社を通じて豪州IT企業2社を子会社としました。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しました。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現していきます。
なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として、自己株式の取得(101,910千株、159,999百万円)及び自己株式の消却(114,591千株、169,710百万円)を行いました。
当社グループの当年度の売上高は、金融ITソリューションを中心に前年度を上回り、528,873百万円(前年度比5.5%増)となりました。売上原価は348,006百万円(同3.4%増)、売上総利益は180,866百万円(同9.8%増)、販売費及び一般管理費は97,688百万円(同4.7%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上し、営業利益は83,178百万円(同16.4%増)、営業利益率は15.7%(同1.5ポイント増)、経常利益は84,528百万円(同16.7%増)となりました。なお、営業利益(のれん償却前)は86,343百万円(同14.6%増)、営業利益率(のれん償却前)は16.3%(同1.3ポイント増)、EBITDAマージンは22.2%(同0.5ポイント増)となりました。保有株式の売却に伴い投資有価証券売却益19,198百万円、子会社株式の売却に伴い関係会社株式売却益1,566百万円を計上した一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の米国子会社の収益力の悪化懸念から、固定資産及びのれんの減損損失2,383百万円を特別損失として計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は69,276百万円(同36.0%増)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提して設計された情報システムやサービス。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2018年4月 1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) |
前年度比 |
|
|
増減額 |
増減率 |
|||
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
56,349 |
102,787 |
46,437 |
82.4% |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△16,826 |
18,382 |
35,209 |
- |
|
フリー・キャッシュ・フロー |
39,523 |
121,169 |
81,646 |
206.6% |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△73,106 |
△139,857 |
△66,751 |
91.3% |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△35,102 |
△22,421 |
12,680 |
△36.1% |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
123,200 |
100,778 |
△22,421 |
△18.2% |
当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から22,421百万円減少し100,778百万円となりました。
当年度において、営業活動により得られた資金は102,787百万円となり、前年度と比べ46,437百万円多くなりました。法人税等の支払額が大きく減少し、売上債権の減少額が多くなりました。
投資活動による収入は18,382百万円(前年度は16,826百万円の支出)となりました。共同利用型システムの開発に伴う無形固定資産の取得などの投資を行ったことに加え、日本証券テクノロジー㈱の株式取得などにより、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出がありましたが、保有株式の一部売却や資金運用目的の有価証券及び、関係会社株式の売却による収入がありました。
財務活動による支出は139,857百万円となり、前年度と比べ66,751百万円多くなりました。自己株式の取得による支出が171,058百万円となり、前年度と比べ134,273百万円増加しました。前年度は、取締役会決議に基づく自己株式の取得を29,999百万円実施し、当年度は、NRIグループ社員持株会専用信託による信託型従業員持株インセンティブ・プランのための当社株式の取得10,865百万円や、自己株式の公開買付けによる取得159,999百万円を実施しました。また、長期借入れ(シンジケートローン)による収入10,000百万円及び社債40,000百万円(第5回普通社債25,000百万円及び第6回普通社債15,000百万円)の発行による収入がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度にセグメントの区分を一部変更しており、以下、前年度比較については、当該変更後の区分による前年度の数値を用いています。
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額 (百万円) |
前年度比 (%) |
|
コンサルティング |
20,547 |
12.3 |
|
金融ITソリューション |
200,976 |
4.8 |
|
産業ITソリューション |
130,240 |
△1.6 |
|
IT基盤サービス |
91,621 |
7.2 |
|
小 計 |
443,385 |
3.6 |
|
調整額 |
△106,188 |
- |
|
計 |
337,197 |
3.0 |
(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前年度比 (%) |
||
|
|
金額 (百万円) |
割合 (%) |
金額 (百万円) |
割合 (%) |
|
|
外注実績 |
150,635 |
46.0 |
161,305 |
47.8 |
7.1 |
|
うち、中国企業への外注実績 |
23,213 |
15.4 |
28,514 |
17.7 |
22.8 |
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高 |
受注残高 |
||
|
金額 (百万円) |
前年度比 (%) |
金額 (百万円) |
前年度比 (%) |
|
|
コンサルティング |
39,352 |
14.7 |
4,339 |
21.9 |
|
金融ITソリューション |
284,089 |
6.9 |
165,449 |
6.8 |
|
産業ITソリューション |
176,867 |
△4.2 |
98,949 |
△1.6 |
|
IT基盤サービス |
40,671 |
21.5 |
17,041 |
16.6 |
|
計 |
540,980 |
4.4 |
285,779 |
4.4 |
(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上高は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額 (百万円) |
前年度比 (%) |
|
コンサルティング |
38,572 |
10.7 |
|
金融ITソリューション |
273,571 |
8.4 |
|
産業ITソリューション |
178,490 |
△1.3 |
|
IT基盤サービス |
38,239 |
15.3 |
|
計 |
528,873 |
5.5 |
b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上高及び当該売上高の連結売上高に対する割合は次のとおりです。
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前年度比 (%) |
||
|
金額 (百万円) |
割合 (%) |
金額 (百万円) |
割合 (%) |
||
|
野村ホールディングス㈱ |
60,579 |
12.1 |
65,049 |
12.3 |
7.4 |
|
㈱セブン&アイ・ホールディングス |
49,109 |
9.8 |
52,434 |
9.9 |
6.8 |
(注) 相手先別の売上高には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上高は次のとおりです。
|
サービスの名称 |
金額 (百万円) |
前年度比 (%) |
|
コンサルティングサービス |
96,862 |
6.7 |
|
開発・製品販売 |
161,703 |
7.5 |
|
運用サービス |
251,908 |
3.1 |
|
商品販売 |
18,399 |
17.3 |
|
計 |
528,873 |
5.5 |
(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されています。その作成には、資産、負債、収益及び費用の額に影響を与える仮定や見積りを必要とします。これらの仮定や見積りは、過去の実績や現在の状況等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」等に記載していますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を与えると考えています。
a. 工事進行基準の適用について
当社グループは、受注制作のソフトウエア及びコンサルティングプロジェクトの売上高及び売上原価の認識方法について、原則として工事進行基準を適用しています。具体的には、売上原価を発生基準で計上し、原価進捗率(プロジェクトごとの見積総原価に対する実際発生原価の割合)に応じて売上高を計上しています。期末時点で未完成のプロジェクトに係る売上高に対応する債権を、連結貸借対照表上「開発等未収収益」として計上しています。
工事進行基準の採用に当たっては、売上高を認識する基となるプロジェクトごとの総原価及び進捗率が合理的に見積り可能であることが前提となります。当社グループでは、プロジェクト管理体制を整備し、受注時の見積りと受注後の進捗管理を適切に行うとともに、見積総原価に一定割合以上の変動があったときはその修正を速やかに行っており、売上高計上額には相応の精度を確保していると判断しています。
b. ソフトウエアの会計処理について
パッケージ製品の開発、共同利用型サービス及びアウトソーシングサービスで使用する情報システムの開発において、発生した外注費や労務費等を費用処理せず、当社グループの投資としてソフトウエア及びソフトウエア仮勘定に資産計上することがあります。その場合、完成した情報システムを顧客に販売又はサービスを提供することによって、中長期的に開発投資を回収しています。
その資金の回収形態に対応して、共同利用型システム等で使用するサービス提供目的の自社利用ソフトウエアについては、利用可能期間(原則5年)に基づく定額法により償却しています。これらの償却に加えて、事業環境が急変した場合等には、回収可能額を適切に見積もり、損失を計上することがあります。
c. 退職給付会計について
退職給付債務及び年金資産は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率等の将来に関する一定の見積数値に基づいて算定されています。退職給付債務の計算に用いる割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しています。また、年金資産の長期期待運用収益率は、将来の収益に対する予測や過去の運用実績を考慮して決定しています。
見積数値と実績数値との差異や、見積数値の変更は、将来の退職給付債務及び退職給付費用に重要な影響を及ぼす可能性があります。
退職給付の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」をご覧ください。
d. 繰延税金資産について
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。将来の課税所得は過去の業績等に基づいて見積もっているため、税制改正や経営環境の変化等により課税所得の見積りが大きく変動した場合等には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。
e. のれんの減損について
当社グループは、のれんについて、事業環境や将来の業績見通しの悪化等、減損の兆候が発生した場合に、減損の判定を行っています。公正価値の見積りについては、必要に応じて、外部専門家等による評価を活用しています。
公正価値の算定においては、将来の収益に対する予測や割引率など、多くの見積りを使用しているため、将来の予想不能な事業上の前提条件の変化によって公正価値が下落した場合には、減損損失が発生する可能性があります。
のれんの減損の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益及び包括利益計算書関係 ※5 減損損失)」をご覧ください。
f. 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引について
当社は、従業員(連結子会社の従業員を含む。以下この項において同じ。)に対する中長期的な当社企業価値向上へのインセンティブ付与及び福利厚生の拡充等により当社の持続的成長を促すことを目的として、信託型従業員持株インセンティブ・プランを導入しています。
同プランは、NRIグループ社員持株会に加入する全ての従業員を対象に、当社株式の株価上昇メリットを還元するインセンティブ・プランであり、同プランを実施するため当社はNRIグループ社員持株会専用信託(以下この項において「持株会信託」という。)を設定しています。持株会信託は、信託の設定後4年間にわたりNRIグループ社員持株会が取得すると見込まれる規模の当社株式を、あらかじめ一括して取得し、NRIグループ社員持株会の株式取得に際して当該株式を売却していきます。株価が上昇し信託終了時に持株会信託内に利益がある場合には、従業員に金銭が分配されます。なお、当社は持株会信託が当社株式を取得するために行った借入れについて保証しており、信託終了時に借入債務が残っている場合には保証契約に基づき当社が弁済することになります。
会計処理については、期末における持株会信託の資産及び負債を当社の連結貸借対照表に計上し、持株会信託が保有する当社株式については、持株会信託の帳簿価額で純資産の部の自己株式に計上します。持株会信託における利益は、将来精算されることになる仮勘定として負債に計上します。持株会信託が損失となる場合は、将来精算されることになる仮勘定として資産に計上した上で、信託終了時に借入債務が残ることが見込まれるときは引当金を計上します。
② 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ① 連結経営成績の状況」に記載のとおり、当年度の当社グループの売上高は528,873百万円(前年度比5.5%増)、営業利益は83,178百万円(同16.4%増)となり、営業利益率は15.7%(同1.5ポイント増)となりました。
営業外収益は、為替相場が円安に推移し為替差損から為替差益に転じたことなどにより、2,068百万円
(同18.6%増)となりました。また、営業外費用は、自己株式取得費用が減少したことなどにより、718百万円
(同7.4%減)となりました。この結果、営業外損益は1,349百万円(同39.5%増)となり、経常利益は84,528百万円(同16.7%増)となりました。
特別損益は、保有株式の売却に伴い投資有価証券売却益19,198百万円(前年度は9,079百万円を計上)、子会社株式の売却に伴い関係会社株式売却益1,566百万円を計上した一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の米国子会社の収益力の悪化懸念から、固定資産及びのれんの減損損失2,383百万円を特別損失として計上しました。この結果、特別損益は17,968百万円(前年度比314.0%増)となりました。
税効果会計適用後の法人税等は、32,288百万円(同28.1%増)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は69,276百万円(同36.0%増)となりました。
法人税等の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。
b. 財政状態
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2019年3月31日) |
当連結会計年度 (2020年3月31日) |
前年度末比 |
|
|
増減額 |
増減率 |
|||
|
流動資産 |
285,788 |
259,855 |
△25,932 |
△9.1% |
|
固定資産 |
326,404 |
273,295 |
△53,108 |
△16.3% |
|
総資産 |
612,192 |
533,151 |
△79,041 |
△12.9% |
|
流動負債 |
124,264 |
140,456 |
16,192 |
13.0% |
|
固定負債 |
62,419 |
105,076 |
42,656 |
68.3% |
|
純資産 |
425,032 |
287,153 |
△137,878 |
△32.4% |
|
自己資本 |
410,978 |
271,332 |
△139,646 |
△34.0% |
|
自己資本比率 |
67.1% |
50.9% |
△16.2P |
- |
|
有利子負債 |
60,883 |
107,410 |
46,526 |
76.4% |
|
グロスD/Eレシオ(倍) |
0.15 |
0.40 |
0.25 |
- |
(注)1. 自己資本:純資産-非支配株主持分-新株予約権
2. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷自己資本
当年度末における当社グループの財政状態は、流動資産259,855百万円(前年度末比9.1%減)、固定資産
273,295百万円(同16.3%減)、流動負債140,456百万円(同13.0%増)、固定負債105,076百万円(同68.3%増)、純資産287,153百万円(同32.4%減)となり、総資産は533,151百万円(同12.9%減)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.40倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
当年度は3月に完了した案件が多かったことから、売掛金は2,467百万円増加し90,569百万円、開発等未収収益は4,014百万円減少し39,996百万円となりました。
投資有価証券は、保有株式の一部売却に加え、資金運用目的の有価証券の売却などにより51,691百万円減少し28,512百万円となりました。これにより、その他有価証券評価差額金は16,635百万円減少し10,517百万円、繰延税金負債は4,068百万円減少し1,860百万円となりました。
自己株式は、NRIグループ社員持株会専用信託による信託型従業員持株インセンティブ・プランのための当社株式の取得(2,119千株(2019年7月1日付株式分割(1:3)考慮後:6,358千株)、10,865百万円)や、自己株式の公開買付けによる取得(101,910千株、159,999百万円)により増加したものの、自己株式の消却(114,591千株、169,710百万円)により5,569百万円減少し、66,628百万円となりました。
自己株式の公開買付け資金は、手元資金の充当のほか、シンジケートローンにより10,000百万円、社債により40,000百万円(第5回普通社債25,000百万円及び第6回普通社債15,000百万円)を調達しました。これらにより、1年内返済予定の長期借入金は453百万円増加し5,133百万円、長期借入金は4,662百万円増加し17,876百万円、社債は39,379百万円増加し73,310百万円となりました。
このほか、現金及び預金が22,232百万円減少の102,540百万円、買掛金が2,085百万円減少の25,612百万円、未払法人税等が14,337百万円増加の20,772百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
d. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。あわせて、新しい技術が次々と登場する中で、企業のITに対する期待が変化してきています。コーポレートITは、品質を重視しながらも可能な限りコスト削減を目指し、パッケージ製品やクラウドサービス、ユーティリティ・サービスを利用することが一般化し、ビジネスITは、新たなデジタル技術を活用しながら事業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが拡大しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、さまざまな業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
e. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及び協力会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、一定以上、社債や借入れによる負債を活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、グロスD/Eレシオ(グロスデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は107,410百万円(前年度末比76.4%増)、現金及び現金同等物の残高は100,778百万円(同18.2%減)、グロスD/Eレシオは0.40倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるため、2020年4月にコマーシャルペーパーを発行しています。
f. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は83,178百万円(前年度比16.4%増)、EBITDAマージンは22.2%(同0.5ポイント増)、ROEは20.3%(同8.0ポイント増)、EPSは109円35銭(同37円24銭増)となりました。
当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。
また、2019年4月には、「Vision2022」の実現に向け、後半4か年の「NRIグループ中期経営計画
(2019年度~2022年度)(以下、「中期経営計画2022」という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中期経営計画2022(2019年度~2022年度)
(単位:百万円)
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指標 |
実績 |
中期経営計画2022 |
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2019年度 |
2022年度(目標) |
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売上高 |
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528,873 |
670,000以上 |
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営業利益 |
|
83,178 |
100,000 |
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営業利益率 |
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15.7% |
14%以上 |
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海外売上高 |
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46,752 |
100,000 |
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EBITDAマージン |
|
22.2% |
20%以上 |
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自己資本利益率(ROE) |
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20.3% |
14% |
※ 当年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度の自己資本利益率(ROE)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率を維持していきます。
g. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績(売上高には内部売上高を含む。)は次のとおりです。
なお、当年度にセグメントの区分を一部変更しており、以下、前年度比較については、当該変更後の区分による前年度の数値を用いています。
(単位:百万円)
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前連結会計年度 (自 2018年4月 1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) |
前年度比 |
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増減額 |
増減率 |
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コンサルティング |
売上高 |
35,481 |
39,612 |
4,130 |
11.6% |
|
営業利益 |
7,786 |
9,515 |
1,729 |
22.2% |
|
|
営業利益率 |
21.9% |
24.0% |
2.1P |
- |
|
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金融ITソリューション |
売上高 |
255,162 |
276,937 |
21,775 |
8.5% |
|
営業利益 |
27,095 |
35,034 |
7,938 |
29.3% |
|
|
営業利益率 |
10.6% |
12.7% |
2.0P |
- |
|
|
産業ITソリューション |
売上高 |
183,580 |
181,438 |
△2,142 |
△1.2% |
|
営業利益 |
18,449 |
19,719 |
1,270 |
6.9% |
|
|
営業利益率 |
10.0% |
10.9% |
0.8P |
- |
|
|
IT基盤サービス |
売上高 |
127,777 |
138,833 |
11,055 |
8.7% |
|
営業利益 |
17,130 |
18,454 |
1,323 |
7.7% |
|
|
営業利益率 |
13.4% |
13.3% |
△0.1P |
- |
|
|
調整額 |
売上高 |
△100,757 |
△107,946 |
△7,189 |
- |
|
営業利益 |
980 |
454 |
△525 |
- |
|
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計 |
売上高 |
501,243 |
528,873 |
27,629 |
5.5% |
|
営業利益 |
71,442 |
83,178 |
11,736 |
16.4% |
|
|
営業利益率 |
14.3% |
15.7% |
1.5P |
- |
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(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
顧客の経営環境の変化や競争の激化から、顧客のデジタル化、グローバル化への取組みや投資意欲が高まっており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスが期待されています。
当社グループは、顧客のDXを支援するDXコンサルティングの創出と拡大を通じて顧客基盤の拡大に努めるとともに、グローバル領域においては、当社グループが強みを持つアジアの顧客基盤の拡大に努めていきます。
当年度の売上高は、顧客のDXを支援するコンサルティングやシステムコンサルティングが増加し39,612百万円(前年度比11.6%増)となりました。営業利益は、良好な受注環境を背景に収益性が向上し、9,515百万円(同22.2%増)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービスの提供、共同利用型システム等のITソリューションの提供を行っています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの開発、デジタルバンキング事業などのDXビジネスの創出と拡大及び金融グローバル事業の拡大並びに既存事業の高度化・大型化を通じて、顧客基盤の拡大に努めていきます。事業拡大を支える生産活動においては、セグメント全体で生産革新による効率化や開発リソース管理の高度化を進めます。ビジネスモデルを変革するDX領域では、高度な技術を有する企業や顧客と合弁会社を設立するなど、協業を通じて、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みも進めていきます。また、金融インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、ITインフラの安定サービス運用に加え、顧客と共創し金融業界の発展に貢献することも目指します。
デジタルアセットの領域で金融ビジネスを創出することを目的に、野村ホールディングス㈱と合弁で、ブロックチェーン技術を活用した有価証券等の取引基盤の開発や提供を行う㈱BOOSTRYを設立し、当年度より持分法適用の範囲に含めています。
このほか、協業を通じた取り組みとして、㈱QUICKと共同出資により、金融情報に関連したシステムやサービスの開発を行う㈱Financial Digital Solutionsを設立し、子会社としました。同社は、新たに開発したシステムやサービスを通じて、金融機関の環境変化への対応に貢献していきます。また、みずほ証券㈱との協業を目的に、同社の連結子会社である日本証券テクノロジー㈱を子会社とし、金融ITソリューションセグメントの主要な関係会社としています。
当年度の売上高は、銀行業向け開発・製品販売や、証券業向けコンサルティングなど全てのサービスで増加し276,937百万円(前年度比8.5%増)となりました。良好な受注環境、生産活動に加え大型の製品販売の寄与もあり、収益性が向上し、営業利益は35,034百万円(同29.3%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションの提供を行っています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。ビジネスモデルを変革するDX領域では、高度な技術を有する企業や顧客と合弁会社を設立するなど、協業を通じて、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みを進めています。日本航空㈱との合弁会社JALデジタルエクスペリエンス㈱においては、当年度より多様な業界のパートナー企業と提携し、サービスを開始しました。
顧客基盤の拡大に向け、産業分野に多くの顧客を持つコンサルティング部門と連携し、顧客のDX領域でのビジネスモデルの構築からシステム構築まで、コンサルティングとITソリューションが一体となり、総合的に支援していきます。
当年度の売上高は、流通業向け開発・製品販売が増加しましたが、製造・サービス業向けコンサルティングが減少し、前年度と同水準の181,438百万円(前年度比1.2%減)となりました。国内子会社を中心に収益性が向上し、営業利益は19,719百万円(同6.9%増)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントに対し、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※1)やマネージドサービス(※2)の拡大や、IoT(モノのインターネット)領域でのセキュリティ事業の拡大に取り組んでいきます。
当年度の外部顧客に対する売上高は、デジタルワークプレイス事業(※3)やセキュリティ事業で増加し、内部売上高は、クラウドサービスやネットワークサービスなどが増加しました。
この結果、売上高138,833百万円(前年度比8.7%増)、営業利益18,454百万円(同7.7%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するITサービス。
※3 デジタルワークプレイス事業:企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値の向上を高めるソリューション。
該当事項はありません。
当社グループは、次の3つの領域において研究開発を行っています。
1. 新規事業・新商品開発に向けた研究並びに事業性調査、プロトタイプ開発、実証実験
2. 情報技術に関する先端技術、基盤技術、生産・開発技術の研究
3. 新しい社会システムに関する調査・研究
研究開発は、当社グループの技術開発を担うDX生産革新本部、及び政策提言・先端的研究機能を担う未来創発センターにおいて定常的に取り組んでいるほか、各事業部門においても、中長期的な視点に立った事業開発・新商品開発に取り組んでおり、必要に応じ社内横断的な協業体制の下で進めています。研究開発戦略を提起するとともに全社的な視点から取り組むべき研究開発プロジェクトを選定する場として、研究開発委員会を設置しており、立案から成果活用に至るまでプロジェクトの審査・推進支援を行っています。
当年度における研究開発費は
(コンサルティング)
当社は、シンクタンクを祖業とする特徴を生かして、かねてより日本が抱える社会課題に対する調査研究・提言を行っています。
地方創生に貢献する活動として継続実施している、地方の起業家が「革新的経営者」と交流を図ることにより触発され新たな事業創造を促進する取組みは、成果である事業構想数が増加し、東京でフォーラムを開催するなど関係各所の認知度向上を図りました。本件は、金融庁が発行した「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート」に「大手シンクタンクによる地域イノベーション創出に向けた取組事例」として掲載されました。
少子高齢化が進む中、社会課題となっている女性の労働参加率向上を目指して、現役世代を支援する社会保障改革について政策提言を行いました。アンケート等により子育て世代が抱える課題を明らかにし、政策決定者への助言やレポート作成により、対応施策を提言しました。
労働力人口が減少していく中、デジタル化により事業高度化を図る企業を支援するため、AI(人工知能)、ブロックチェーン(※1)などの先端技術分野について、高度な研究と多種多様な事業が行われている中国市場における高い技術力や優れたビジネスモデルを持つ現地企業を調査・探索しました。この結果を国内企業に紹介し、協業大を図りました。
当年度における当セグメントに係る研究開発費は
(金融ITソリューション)
中期的にニーズが高まる領域に絞って、海外の著名研究機関や有用な技術・ノウハウを持つ企業との共同研究を行うことで、金融サービスの高度化に資する研究を行いました。
昨年度から引き続き、海外研究機関との共同研究を実施し、金融事業に関わる先端技術についての調査や、これらの実用可能性、技術動向、金融システムへの影響などの研究を行いました。
また、革新的なビジネスモデルが多数誕生している中国金融市場における金融ビジネスの現況調査を行い、レポートや個別企業へのコンサルティング等の形で情報提供を行いました。
金融機関は、反社会勢力に対する利益供与やテロ資金供与の根絶などの観点で、規制当局よりいっそう厳格なリスクマネジメント体制の構築を求められています。当社は個人情報取得・管理やリスク事象のスクリーニングなどに貢献するソリューションの研究開発を行いました。
また、日本市場における個人金融資産に関する調査研究を継続して行い、出版、レポート、取材対応、提言等により情報提供を行いました。
当年度における当セグメントに係る研究開発費は
(産業ITソリューション)
幅広い産業において、消費者と直接コミュニケーションを図り、マーケティングやサービス・商品開発に活用するニーズがより一層高まっています。当社は、これらのニーズに対応するためデータ分析、AI(人口知能)などの研究開発を従前にも増して強化しています。顧客の行動データを活用した販売促進やタイムリーなサービス提供など、具体的な利用シーンを想定し、顧客企業とともに新たなソリューションの共創を目指して活動しました。
労働力人口の減少を受けて、あらゆる産業で業務オペレーションやマネジメント業務、人材育成など企業活動の多様な場面で省力化・効率化に対する要請がより一層高まっています。当社は、画像認識、VR(※2)などの技術を活用し、これら社会的な要請に対応できるよう、技術獲得、利用ノウハウの調査研究を進めました。
近年、ソフトウエア産業のみならず、あらゆる業態でリカーリングビジネスを拡大し、収益の安定化を図るとともに顧客接点を定常的に保持していくニーズが高まっています。当社は、これら新たなビジネスモデルの展開に資するソリューション開発を目指して、ビジネススキーム、要素技術の調査研究を行いました。
当年度における当セグメントに係る研究開発費は
(IT基盤サービス)
AWS、AZUREなどのクラウドサービス(※3)は、今年度も高水準の成長を続けており、各企業においては自社保有のデータセンター等、既存資産と合わせた最適な環境構築に関するコンサルティング、ソリューション提供へのニーズが高まっています。当社は、かねてより多様なウェッブベースサービスに対する調査研究を行い、活用ノウハウの獲得に努めました。
当社が保有する、AI技術を活用した音声認識、自然言語処理技術(※4)を活用し、顧客の業務効率化を図るソリューション開発に向けた調査研究を行いました。
データアナリティクスや画像診断、音声認識などのソリューションを下支えする要素技術に関する知見を獲得するため、機械学習に関する調査研究を行いました。
当年度における当セグメントに係る研究開発費は
※1:ブロックチェーン:ビットコインなどの暗号通貨のベースとなる技術で、「改ざんが非常に困難」「実在証明が可能」「一意の価値移転が可能」といった特徴を備えており、様々な金融業務での活用が期待されている。
※2:VR:人間の感覚器官に働きかけ、現実ではないが実質的に現実のように感じられる環境を人工的に作り出す技術。
※3:クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウエアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。
※4:自然言語処理技術:人間が日常的に使う言語をコンピュータに処理させる技術。