第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社グループは、コーポレート・ステートメントである「未来創発─Dream up the future.─」を掲げ、「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」、「お客様の信頼を得て、お客様とともに栄える」ことを使命と考えています。この使命を果たすべく、お客様の問題を先取りして解決策を導く「ナビゲーション」から、具体的な解決策を実施・運用する「ソリューション」までのトータルソリューションにより価値の最大化を目指すことを経営目標としています。

また、「新たな価値創造を通じた『活力ある未来社会の共創』」、「社会資源の有効活用を通じた『最適社会の共創』」、「社会インフラの高度化を通じた『安全安心社会の共創』」という「NRIらしい3つの社会価値」を作り出すことにより、社会課題の解決と持続可能な未来社会の実現に貢献していきます。

 

(2) 経営戦略

<中期経営計画>

昨今、企業においては、成長や競争力強化のため、DX(デジタルトランスフォーメーション)といわれるデジタル技術を活用した業務プロセスの変革やビジネスモデルの変革が、グローバルで進展しています。その一方で、既存システムの複雑化・ブラックボックス化がDX実現への阻害要因になっているほか、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など新しいデジタル技術を活用した新規市場の創出を推進するIT人材の不足、さらにはグローバル事業の強化やクラウド利用によるITコスト削減も引き続き顧客企業における重要な経営課題となっています。

このような事業環境のもと、当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に後半4か年の

「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)を策定しました。

中期経営計画2022では、DX戦略、グローバル戦略、人事・リソース戦略の3つの戦略テーマを設定しています。顧客との価値共創を通じて、当社グループの持続的成長と持続可能な未来社会づくりを目指します。

 

中期経営計画2022の成長戦略

・DX戦略:テクノロジーを活用した顧客のビジネスモデル・プロセスの変革

当社グループの強みを活かしたビジネスプラットフォームの進化

クラウドを活用し多様化するシステム基盤からアプリケーション開発までをトータル支援

・グローバル戦略:豪州・米国での外部成長を軸に事業基盤を拡大

・人材・リソース戦略:当社グループの競争力を支える人材の採用・育成、パートナー連携

 

当社グループは、中期経営計画2022の最終年度(2022年度)に、売上収益6,700億円以上、海外売上収益1,000億円、営業利益1,000億円、営業利益率14%以上、EBITDAマージン20%以上、ROE14%を目指します。なお、昨年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度のROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率の維持を目指します。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。

 

(4) 経営環境及び対処すべき課題

<経営環境の認識>

当社グループはこれまで、国内市場においては金融業や流通業における顧客基盤の構築や金融分野のビジネスプラットフォームの提供などを通して、グローバル市場においては日本企業のグローバル化への対応と、主に豪州でのM&Aなどを通して成長してきました。さらに、顧客企業においては新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にDX関連のIT投資が増加し、業務プロセスを変革する段階から、ビジネスモデルそのものを変革する段階へと急速に進展しています。

このような環境の中、当社グループが今後さらなる成長を実現するためには、国内外の既存事業領域における競争優位性をさらに高めつつ、DX領域においても信頼されるパートナーとしての地位を確立し、顧客との取引を大型化する必要があると考えています。そのためにはDX事業やグローバル事業を推進する人材の確保が必要であり、採用と育成の強化が重要であると認識しています。

 

<DX事業の推進>

DX領域においては、AIやIoT、ブロックチェーンといった新しい技術が次々と生み出されています。顧客の業務プロセス、ビジネスモデルを変革・拡大していくためには、戦略策定からソリューションの実装まで、顧客とともに仮説検証を繰り返しながらビジネスを創出することが必要です。当社グループは、顧客の現在の業務プロセス変革・インフラ変革からビジネスモデルそのものの変革、さらには社会課題解決まで、顧客のDXパートナーとして、コンサルタントとシステムエンジニアが一体となり継続的に事業拡大に取り組んでいきます。

昨今、金融業界では業態自体の変革のほか、異業種からの新規参入が起きるなど業界の構造変化が起きています。その変化に対応するため、高品質な共同利用型サービスの提供やビジネスプロセスアウトソーシングなどのサービスラインアップの充実のほか、API(アプリケーションをつなぐインタフェース)提供など新たな事業創出による新規顧客獲得にも取り組んでいきます。

また、クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化するシステム基盤をトータルで支援していくことが必要です。老朽化したITシステムの刷新対応やクラウド上でのアプリケーション開発などのニーズを捉え、従来のプライベートクラウドに加え、パブリッククラウド活用などを基盤サービスラインアップに拡充することでスピーディーな対応とコスト最適化に取り組みます。

 

<グローバル事業の推進>

グローバル事業では、当社グループが設立した現地法人のほか、豪州・米国におけるM&Aにより事業拡大を進めてきました。引続きグローバルでの競争力確保に向けて、既存事業の拡大のほか、豪州ではより一層の外部成長を、北米では先進的な技術・ノウハウを持つ企業の高付加価値な知的財産の獲得を目指します。

また、「Vision2022」で掲げた海外売上収益1,000億円の実現に向けては、グローバル戦略を着実に推進していく体制構築が必要です。そのため、グローバル本社機構を中心として、グローバル戦略の策定や執行を支援するとともに、海外子会社のCEOを支える経営層の充実とガバナンスの強化を図っていきます。

 

<人材の確保・育成>

これらの施策を着実に実行していくには、付加価値の源泉である人材の確保と育成が不可欠です。現状では特に

DX領域やグローバル事業を着実に推進できる人材の確保が急務となっており、新卒・キャリア採用の強化と社員の育成に取り組みます。

また、技術・ノウハウを保有する企業との関係強化を図っていきます。さらには、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現していきます。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業等において、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります

なお、これらは当年度末における事業等に関するリスクのうち代表的なものであり、実際に起こり得るリスクはこの限りではありません。また、本文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものです

 

(1) 当社グループのリスク管理体制

当社グループ全般のリスク管理のため、リスク管理担当役員(代表取締役専務執行役員)を任命するとともに、リスク管理統括部署として統合リスク管理室を設置しています。

統合リスク管理室は、リスク管理の枠組みの構築・整備、リスクの特定・評価・モニタリング及び管理態勢全般の整備等を実施しています。

リスク管理担当役員を委員長とする統合リスク管理会議を年2回開催し、リスク管理PDCAサイクルの評価やリスク対応策の審議等を行い、その結果を取締役会に報告しています。

 

(2) 当社グループのリスク管理方法

① リスクの設定

当社グループの業務遂行上発生しうるリスクを13項目に分類し、さらにリスク分類ごとにリスク項目を設定します。リスク項目は、定期的にリスクの主管部署が評価し、リスク項目・重要度・影響度の見直しを行っています。13のリスク分類のうち、年度ごとに、特に重要度が高いと認識するものを「リスク管理に関する重点テーマ」として統合リスク管理会議で選定しています。2021年3月期のリスク管理に関する重点テーマは下記のとおりです。

・稼働システムの品質リスクに対する適切なマネジメントの継続

・情報セキュリティ管理態勢の高度化

・プロジェクトリスクに対するマネジメントの徹底

・NRIグループ全体のガバナンスの実効性向上

・事業継続責任を果たすための適切な備え

・働きやすい労働環境の整備

 

② リスクの対策

リスク項目ごとに、リスク主管部署がリスク低減策を検討し実施します。リスク低減策はリスク管理統括部署に連携し、必要に応じて統合リスク管理会議で審議します。

 

③ モニタリング

リスク低減策の実施状況はリスク管理統括部署に連携し、定期的に統合リスク管理会議に報告し評価します。必要に応じて統合リスク管理会議で追加のリスク低減策の策定・実施を指示します。

 

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(3) 新型コロナウイルス感染症に関するリスク

新型コロナウイルス感染症の今後の経過によっては、当社グループの事業活動においても影響が生じる懸念があります。

受注に関するリスクとしては、顧客における経営状況の変化や情報システムの投資計画の抜本的見直しが行われた場合には、当社グループとの契約が更新されない可能性があります。また、顧客の投資意欲が後退した場合には、新たな顧客の獲得が想定どおりに進まない可能性があります。

生産に関するリスクとしては、当社グループの役職員は、各国の政府及び地方自治体等からの外出自粛要請に従い、在宅勤務を基本とした勤務形態の切替えを行っており、勤務形態の切替えによる労働生産性の低下により、顧客が期待する高い品質のサービスを提供できない場合やコンサルティング、システム開発業務の遅延等が発生する可能性があります。また、当社グループは一定量のシステム開発業務を中国等のオフショアを含む協力会社に委託しています。今後、事態が長期化及び深刻化する場合には、安定した協力会社の確保に影響を及ぼす可能性があります。

これらの影響により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があるほか、その後の業務の受託に支障を来す可能性があります。新型コロナウイルスの終息時期は依然として不透明であり、実際に起こり得るリスクはこの限りではありません。

なお、新型コロナウイルス感染症のリスクに対して昨年度に引き続き、取締役を委員長とした危機管理会議を設置し、危機管理会議委員長及び統合リスク管理室、人事部、総務部等の主管部署で構成する危機管理会議事務局において、状況の確認や発生した課題への対策を検討・実施しています。危機管理会議事務局で検討した内容については、定期的に経営会議や取締役会に報告・協議しています。

また、提出日現在の感染拡大防止の取組みとして、緊急事態宣言等の発令を踏まえたテレワーク(在宅勤務)の推進による出社率の抑止や会食の自粛、時差出勤の推奨、執務エリアの分散、座席間隔の確保、サーモグラフィカメラや検温等による来訪者の健康状態の確認、会議室へのAI機器導入による利用状況の可視化等の施策を実施し、役職員等の健康維持を図るとともに、社内で感染者及び感染疑いが発生した場合に備え、危機管理会議事務局への報告体制、濃厚接触者の確認手順、消毒及び対外発表等の対応手順を整備しています。

 

(4) 特に重要と認識するリスク

当社において特に重要と認識するリスクは、下記の通りです。これらのリスクは、「(2) 当社グループのリスク管理方法 ① リスクの設定」に記載した「リスク管理に関する重点テーマ」を基に選定しています。

① 品質に関するリスク

当社グループが開発する情報システムは、顧客の業務の重要な基盤となることが多く、完成後の安定稼働が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。

当社グループは、運用面での品質の向上に注力しており、ISO27001に準拠した情報セキュリティマネジメントシステム及びISO20000に準拠したITサービスマネジメントシステムにより、運用サービスの品質の維持及び向上に継続的に努めています。また、金融サービス業のシステムについては重点的に管理状況等の点検を行うほか、万一障害が発生した場合の対応整備を進めています。

データセンターについては、経済・社会に不可欠なインフラであり、その重要性を強く認識しています。一層の安全確保に向けて運営体制を整備し、その運営の評価・検証を定期的に行っています。

また、顧客の業務プロセスを受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスをはじめとしたアウトソーシング業務については、誤入力や誤送付などのオペレーションリスクが内在することを認識しており、より一層の管理体制の整備を進めています。

しかしながら、運用上の作業手順が遵守されないなどの人的ミスや機器・設備の故障、電力等のインフラの障害等により、顧客と合意した水準での安定稼働が実現できなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。

 

② 情報セキュリティに関するリスク

インターネットがインフラとして定着し、あらゆる情報が瞬時に広まりやすい社会になっています。こうした技術の発展により、利用者の裾野が広がり利便性が増す一方で、サイバー攻撃等の外部からの不正アクセスによる情報漏洩のリスクが高まっており、情報セキュリティ管理が社会全般に厳しく問われるようになっています。特に情報サービス産業は、顧客の機密情報を扱う機会が多く、より高度な情報セキュリティ管理や社員教育の徹底が求められます。

マイナンバーを含む個人情報の管理においてはプライバシーマークの付与認定(個人情報保護マネジメントシステムの適合性認定)を受け、また、一部の事業について情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得し、機密情報の適切な管理を行っています。常に高度なセキュリティレベルを維持するため、システムによる入退館の管理や、パソコンのセキュリティ管理の徹底、個人情報保護に関する研修の実施等を行っています。特に、顧客の基幹システムの運用を行うデータセンターでは、X線検査装置による持込持出チェックなど、厳重な入退館管理システムを採用しています。さらに、事業活動のグローバル化に伴う海外子会社の増加に対して、情報セキュリティ関連規程の確認やアセスメントの実施など、当社グループ全体の統制強化に努めています。

このような取組みにもかかわらず、情報漏洩が発生した場合には、顧客等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績が影響を受ける可能性があります。

 

③ プロジェクトに関するリスク

情報システムの開発は、原則として請負契約であり、納期までに情報システムを完成させ納品するという完成責任を負っていますが、顧客要請の高度化・複雑化や完成までの諸要件の変更等により、作業工数が当初の見積り以上に増加し、納期に遅延することがあります。また、引渡し後であっても性能改善を行うなど、契約完遂のため想定以上に作業が発生することがあります。特に複数年にわたる長期プロジェクトは、環境の変化や技術の変化に応じた諸要件の変更等が発生する可能性が高くなります。また、情報システムは重要な社会インフラであり、完成後の安定稼働に向け、開発段階からの品質管理、リスク管理が重要であると考えています。特に金融サービス業のシステムについては、当社顧客のみでなく金融市場全体の信頼性に関わる場合もあり、その重要性を強く認識しています。

当社グループは、教育研修等を通じプロジェクトマネージャーの管理能力の向上に努め、また、ISO(国際標準化機構)9001に準拠した品質マネジメントシステムを整備するなど、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えています。特に一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼働まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図っています。また、金融サービス業のシステムについては重点的にシステム開発プロセスの点検・改善を進めています。

しかしながら、作業工数の増加や納品後の性能改善等による追加費用が発生した場合には、最終的な採算が悪化する可能性があります。また、納期遅延やシステム障害等により顧客の業務に支障を来した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、当社グループの信用を失う可能性があります。

 

④ グループガバナンスに関するリスク

当社グループは、将来の事業機会をにらみ各事業会社に出資しているほか、事業上の関係強化を図るため、取引先等に対して投資採算性等を考慮に入れつつ出資しています。また、グローバルの事業基盤拡大に向けM&Aや提携を進めています。

これらの実施に当たっては、対象となる企業の財務内容や事業について詳細な事前審査を行い、意思決定のために必要かつ十分な情報収集と検討を行った上で決定しています。グローバル戦略を推進していく体制として、北米、アジア及び豪州においては地域統括会社又は持株会社を設置し、主に買収子会社に対するガバナンス体制の強化を進めており、また、当社においては新たに設置したグローバル本社機構を中心にグローバル戦略の策定や執行を支援するとともに、買収子会社を含む海外子会社全般のガバナンスの強化を進めています。

しかしながら、M&Aや提携などの実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、期待した成果を上げられなかった場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

⑤ 事業継続に関するリスク

事業活動のグローバル化やネットワーク化の進展に伴い、災害やシステム障害など万一の事態に想定される被害規模は大きくなってきており、危機管理体制の一層の強化が求められています。

当社グループは、新型コロナウイルス等の感染症、大規模地震・台風・水害等の自然災害、大規模災害、大規模障害、事業や業務遂行に関わる事件・事故が発生した場合に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業継続に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。当社グループが入居する主要オフィスは、事業を継続する上で高度防災機能を有しており、特に、東京本社、横浜総合センター及び大阪総合センターは、国内最高水準の高度防災機能を有しています。また、当社グループが保有するデータセンターはセキュリティ対策や耐震等の災害対策においても国内最高の水準にあり、関東地区と関西地区のデータセンターを連携した相互バックアップや機能分散など、広域災害への対策を整備しています。データセンター内にある当社グループの情報資産についてバックアップ体制の更なる強化を図るとともに、顧客から預かる情報資産については顧客と合意した水準に基づいて対策を進めています。

また、新型コロナウイルス感染拡大による出社率抑止や大規模自然災害等で出社不可となる事態においても業務遂行が可能となるよう、テレワーク環境での危機対応体制の構築や事業継続計画の継続的な見直しを行っています。

しかしながら、一企業のコントロールを超える特別な事情や状況が発生し、業務の中断が不可避となった場合には、顧客と合意した水準でのサービス提供が困難となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

⑥ 人材確保・育成に関するリスク

当社グループは、社員個々人の高い専門性こそが、高付加価値サービスを顧客に提供するための土台であると考えています。専門性を備えた人材を確保・育成し、十分に能力を発揮できる人事制度や労務環境を整備することが、当社グループが中長期的に成長するために必要であると考えています。

当社グループは、人的資源を「人財」ととらえ、その確保・育成のための仕組み作りを進めています。人材確保については、優れた専門性を有した人材の採用に努め、また、ワークライフバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した人事制度の構築や労務環境の整備に取り組んでいます。人材育成については、各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、教育研修の専用施設等で、DX(デジタルトランスフォーメーション)領域の新技術の習得をはじめとした多くの人材開発講座を開催しています。また、当社グループ独自の社内認定資格を用意するなど社員に自己研鑽を促しています。このような取組みにもかかわらず、顧客の高度な要請に的確に応え得る人材の確保・育成が想定どおり進まなかった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、労務環境が悪化した場合には、社員の心身の健康が保てなくなり、労働生産性の低下や人材流出につながる可能性があります。

 

(5) 重要と認識するリスク

① 経営戦略に関するリスク

a. 情報サービス産業における価格競争について

情報サービス産業では、事業者間の競争が激しく、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品の普及も進んでいることから、価格競争が発生する可能性があります。

このような環境認識の下、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用に至る総合力をさらに高め、サービスの高付加価値化により競合他社との差別化を図るとともに、生産性の向上に取り組んでいます。

しかしながら、想定以上の価格競争が発生した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

b. 運用サービス事業の安定性について

運用サービスを展開するに当たっては、データセンターに係る不動産や運用機器、ソフトウエア等の投資が必要であり、投資額の回収は顧客との運用サービス契約に基づき長期間にわたって行われます。

運用サービスの契約は複数年にわたるものが多く、また単年契約であっても自動更新されることが多いため、売上高は比較的安定していると考えられます。さらに、当社グループは慎重な事業進捗管理と継続的な顧客の与信管理を行うことにより、投資額の回収に努めています。

しかしながら、運用サービスの売上高の安定性は将来にわたって保証されているわけではなく、顧客の経営統合や経営破綻、IT戦略の抜本的見直しなどにより、当社グループとの契約が更新されない可能性があります。

c. ソフトウエア投資について

当社グループは、製品販売、共同利用型サービス及びアウトソーシングサービス等の事業展開を図るため、ソフトウエア投資を行っています。多くの場合、ソフトウエアは特定用途別に設計するため、転用しにくい性質を持っており、投資に当たっては慎重な検討が求められます。

当社グループは、事業計画の妥当性を十分に検討した上でソフトウエアの開発に着手しています。また、開発途中及び完成後であっても、事業計画の進捗状況の定期的なチェックを行い必要に応じて速やかに事業計画を修正する社内体制を整えています。

しかしながら、投資の回収可能性は必ずしも保証されているわけではなく、資金回収ができずに損失を計上する可能性があります。

d. 情報サービス産業における技術革新について

情報サービス産業においては、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められています。

このような環境認識の下、当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。

しかしながら、広範な領域において技術革新が急速に進展し、その対応が遅れた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

e. 野村ホールディングス㈱及びその関係会社との資本関係について

当年度末において、野村ホールディングス㈱が当社の議決権を28.8%保有(間接保有11.2%を含む。)しています。

当社に対する野村ホールディングス㈱の議決権比率は、将来にわたって一定であるとは限りません。また、野村ホールディングス㈱による議決権行使が、当社の他の株主の利益と必ずしも一致しない可能性があります。

 

② コンプライアンスに関するリスク

a. 知的財産権について

電子商取引に関連する事業モデルに対する特許など、情報システムやソフトウエアに関する知的財産権の重要性が増しています。

このような環境認識の下、当社グループは、情報システムの開発等に当たっては第三者の特許を侵害する可能性がないかを調査するとともに、教育研修等を通じて知的財産権に対する社員の意識向上に努めています。一方、知的財産は重要な経営資源であり、積極的に特許を出願することによって当社グループの知的財産権の保護にも努めています。

このような取組みにもかかわらず、当社グループの製品やサービスが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるほか、情報システムの使用差止請求を受けサービスを停止せざるを得なくなるなど、業務遂行に支障を来す可能性があります。また、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。

b. 法令・規制について

当社グループは、事業活動を行う上で、国内外の法令及び規制の適用を受けています。また、近年、労働関係の法令については、より一層の法令遵守が求められています。当社グループでは、コンプライアンス体制の構築に加え、法令遵守の徹底及び労務環境の整備に努めています。

しかしながら、法令違反等が発生した場合、また新たな法規制が追加された場合には、当社グループの事業及び業績が影響を受ける可能性があります。

 

③ 協力会社に関するリスク

当社グループは、生産能力の拡大や生産性の向上及び外部企業の持つノウハウ活用等のため、外部企業に業務委託していますが、これらの多くは請負契約の下で行われています。

a. 良好な取引関係について

当年度において、生産実績に占める外注実績の割合は4割であり、当社グループが事業を円滑に行うためには、優良な協力会社の確保と良好な取引関係の維持が必要不可欠になります。

当社グループは、定期的に協力会社の審査を実施するほか、国内外を問わず協力会社の新規開拓を行うなど、優良な協力会社の安定的な確保に努めています。また、特に専門性の高い業務ノウハウ等を持つ協力会社である「eパートナー契約」締結先企業とのプロジェクト・リスクの共有や、協力会社に対するセキュリティ及び情報管理の徹底の要請など、協力会社も含めた生産性向上及び品質向上活動に努めています。

協力会社は、中国を始めとする海外にも広がっており、中国企業への委託は外注実績の1.7割を占めています。このため、役職員が中国を中心に海外の協力会社を定期的に訪問し、プロジェクトの状況確認を行うなど、協力体制の強化に努めています。

このような取組みにもかかわらず、優良な協力会社の確保や良好な取引関係の維持が実現できない場合には、事業を円滑に行うことができなくなる可能性があります。特に、海外の協力会社への委託については、日本とは異なる政治的、経済的、社会的要因により、予期せぬ事態が発生する可能性があります。

b. 請負業務について

請負契約の下で行われる業務委託に当たっては、労働関係法令に則った適切な対応が求められます。

当社グループは、請負業務に関するガイドラインを策定し全社的な問題意識の共有化・定着化を図り、また、協力会社を対象とした説明会を開催するなど、適正な業務委託の徹底に努めています。

このような取組みにもかかわらず、請負業務の趣旨から逸脱して業務が遂行され、偽装請負問題などが発生した場合には、当社グループの信用を失う可能性があります。

 

④ 社会的責任に関するリスク

地球規模で気候変動をはじめとした社会課題の深刻化が進んでおり、国際的にもパリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)などの社会課題解決に向けた目標の合意などから、企業においても社会的責任に対する取組みがこれまで以上に求められています。特に、気候変動問題においては、グローバルの情報サービス産業の中では、情報サービスの提供に際して再生可能エネルギーを活用する動きが急速に広がっています。

気候変動に関する将来の事項については不確実性が大きく、炭素税の影響及び再生可能エネルギー価格については、政治及び技術的な取組状況にも大きく左右されます。そのため、当社は金融安定理事会が設置した「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終提言に賛同して気候変動による事業へのリスクと機会を特定するシナリオ分析を実施しています。また、当社グループが保有する複数のデータセンターは、国内最高水準の環境性能を備えていることに加え、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムを導入しています。

2030年度までに当社グループ全体で温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2)を2013年度比で72%削減、データセンターでの再生可能エネルギー利用率を70%、2050年度までに当社グループ全体で温室効果ガス排出量ゼロ、再生可能エネルギー利用率を100%とする環境目標を掲げています。2021年3月には、再生可能エネルギーの調達に向けてサステナビリティ・リンク・ボンドを発行し資金を調達しました。また、長期かつ安定した再生可能エネルギーの調達手段として、追加性(additionality)のある再生可能エネルギー発電設備へ資金を投入することなどを検討しています。しかしながら、目標とする再生可能エネルギーへの転換が遅延した場合、また気候変動に対する社会からの要請が急速に進展しその対応が遅れた場合、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。

当社グループは、グローバルで従業員13,000人超、協力会社12,500人超の事業規模に拡大しており、サプライチェーンを含む人権課題への対応が不可欠となっています。また、情報サービス産業においては、事業活動で扱うマイナンバーを含む個人情報も「デジタルライツ」として考慮すべき情報と考えられ、慎重な取扱いが必要となり、AI(人工知能)のシステム開発では、人権を考慮した設計、運用が必要となります。

当社は、当社グループの活動内容や今後の方針を示した人権報告書やAI倫理ガイドラインを策定し、負の影響を低減させる取組みを実施していますが、これらの人権課題に対して適切な対応が出来なかった場合、当社グループの社会的評価に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 保有有価証券に関するリスク

当社グループは、取引先との関係強化などを目的として株式を、また資金運用を目的として債券等を、保有しています。

これらの有価証券について、発行体の業績悪化や経営破綻等が発生した場合には、投資額を回収できないことがあります。また、経済環境、市場動向や発行体の業績動向等によって時価が変動するため、当社グループの財政状態に影響を与えます。

 

⑥ 退職給付に係る資産・負債に関するリスク

当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度及び退職一時金制度を設けています。退職給付に係る資産・負債は、確定給付制度債務と制度資産等の動向によって変動します。

確定給付制度債務については、従業員の動向、割引率等多くの仮定や見積りを用いた計算によって決定されており、その見直しによって大きく変動することがあります。制度資産については、株式市場動向、金利動向等により変動します。また、年金制度を変更する場合、退職給付に係る資産・負債が影響を受ける可能性があります。

 

⑦ 訴訟に関するリスク

当社は、2015年4月30日付で日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱から訴訟の提起を受け、現在係争中です。

同社は、全国の郵便局等を結ぶ通信ネットワークを新回線へ移行するに当たり、ソフトバンク㈱に対し回線サービスの調達・保守業務を、当社に対しネットワークの移行管理・調整業務を、発注しました。この新回線への移行が遅延し損害を被ったとして、日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱は、ソフトバンク㈱及び当社に対し、16,150百万円を連帯して支払うよう求めています。また、2020年6月24日付で日本郵政インフォメーションテクノロジー㈱から当社に対して請求の追加変更があり、当初のソフトバンク㈱及び当社に対する請求を含めると、合計で19,653百万円を支払うように求めています。

当該訴訟の結果によっては、当社の業績が影響を受ける可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。

なお、当社グループは、当連結会計年度から、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っています。

 

(1) 連結経営成績等の状況の概要

① 連結経営成績の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月 1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

前年度比

増減額

増減率

売上収益

528,721

550,337

21,616

4.1%

海外売上収益

46,752

43,625

△3,126

△6.7%

海外売上収益比率

8.8%

7.9%

△0.9P

事業利益

85,571

87,510

1,938

2.3%

営業利益

85,625

80,748

△4,876

△5.7%

営業利益率

16.2%

14.7%

△1.5P

EBITDAマージン

23.8%

23.6%

△0.2P

税引前利益

85,484

71,075

△14,409

△16.9%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

58,195

52,867

△5,328

△9.2%

ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

18.3%

18.2%

△0.1P

(注)1. 消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜き方式によっています。

2. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。

3. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益

 

当年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う世界経済の悪化懸念から、先行きが不透明な状況が続きました。景気後退に伴う企業の業績悪化により投資需要が鈍化する懸念があったものの、情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が回復しています。

このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。

当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の2年目となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取組むとともに、「中期経営計画2022」の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の3つを進めています。

(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションの実装まで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。

ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。

クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。

(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めます。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。

(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。

 

なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)を行いました。

 

当社グループの当年度の売上収益は、金融ITソリューションを中心に前年度を上回り、550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。売上原価は364,539百万円(同5.3%増)、売上総利益は185,798百万円(同1.7%増)、販売費及び一般管理費は98,366百万円(同0.9%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上したものの、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用を計上したことにより、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。なお、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)となりました。税引前利益は71,075百万円(同16.9%減)となりましたが、信託型従業員持株インセンティブ・プランの切替による税効果があり、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。

 

※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。

※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。

 

② 連結キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月 1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

前年度比

増減額

増減率

営業活動によるキャッシュ・フロー

112,838

84,594

△28,244

△25.0%

投資活動によるキャッシュ・フロー

18,382

△20,522

△38,905

フリー・キャッシュ・フロー

131,221

64,071

△67,150

△51.2%

財務活動によるキャッシュ・フロー

△149,908

△13,183

136,725

91.2%

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△22,421

52,408

74,830

現金及び現金同等物の期末残高

100,778

153,187

52,408

52.0%

 

当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から52,408百万円増加し153,187百万円となりました。

当年度において、営業活動により得られた資金は84,594百万円となり、前年度と比べ28,244百万円少なくなりました。法人所得税の支払額が増加し、営業債権及びその他の債権の増加額が大きくなりました。

投資活動による支出は20,522百万円(前年度は18,382百万円の収入)となりました。前年度は、投資の売却による収入がありました。当年度の主な投資内容は、共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得でした。

財務活動による支出は13,183百万円となり、前年度と比べ136,725百万円少なくなりました。前年度は、自己株式の公開買付けによる取得159,999百万円を実施しました。当年度に、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためのコマーシャル・ペーパーの発行による収入4,978百万円及び社債の発行による収入14,946百万円がありました。

また、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を取得したことにより、非支配持分からの子会社持分取得による支出11,324百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

19,324

△6.4

金融ITソリューション

214,233

6.6

産業ITソリューション

139,072

7.5

IT基盤サービス

93,169

2.8

小 計

465,800

5.5

調整額

△111,765

5.0

354,035

5.6

(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています

2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年度比

(%)

 

金額

(百万円)

割合

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

外注実績

161,353

48.1

171,560

48.5

6.3

うち、中国企業への外注実績

28,514

17.7

30,460

17.8

6.8

 

② 受注実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額

(百万円)

前年度比

(%)

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

39,957

1.5

7,050

62.5

金融ITソリューション

307,715

8.3

184,968

11.8

産業ITソリューション

189,587

7.2

102,484

3.6

IT基盤サービス

37,083

△8.8

15,281

△10.3

574,343

6.2

309,785

8.4

(注)1. 金額は販売価格によっています。

2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。

 

③ 販売実績

a. セグメント別販売実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

37,246

△3.4

金融ITソリューション

288,196

5.3

産業ITソリューション

186,051

4.2

IT基盤サービス

38,843

2.0

550,337

4.1

 

b. 主な相手先別販売実績

連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年度比

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

野村ホールディングス㈱

65,049

12.3

66,309

12.0

1.9

(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。

 

c. サービス別販売実績

当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。

サービスの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティングサービス

90,056

△7.0

開発・製品販売

183,847

13.7

運用サービス

258,656

2.7

商品販売

17,777

△3.4

550,337

4.1

 

(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。

なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

② 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績

「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ① 連結経営成績の状況」に記載のとおり、当年度の当社グループの売上収益は550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。

当年度は、サステナブルな退職給付制度の確立に向け制度を見直した結果、退職給付制度改定益928百万円を計上しました。一方で、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失2,220百万円や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用4,439百万円を計上しました。この結果、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)となり、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。

金融費用は、信託型従業員持ち株インセンティブ・プラン関連費用を計上したことなどにより、11,514百万円

(同435.2%増)となり、税効果会計適用後の法人所得税費用は、18,497百万円(同29.9%減)となりました。

以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。

法人所得税費用の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13. 法人所得税」をご覧ください。

 

b. 財政状態

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2020年3月31日)

当連結会計年度

(2021年3月31日)

前年度末比

増減額

増減率

流動資産

259,187

323,366

64,178

24.8%

非流動資産

306,042

333,170

27,127

8.9%

資産合計

565,229

656,536

91,306

16.2%

流動負債

156,179

174,348

18,168

11.6%

非流動負債

144,322

148,981

4,659

3.2%

資本合計

264,727

333,206

68,479

25.9%

親会社の所有者に帰属する持分

249,424

330,495

81,070

32.5%

親会社所有者帰属持分比率

44.1%

50.3%

6.2P

有利子負債

151,395

166,704

15,308

10.1%

グロスD/Eレシオ(倍)

0.61

0.50

△0.10

ネットD/Eレシオ(倍)

0.20

0.04

△0.16

(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分

2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現預金)÷親会社の所有者に帰属する持分

3. 有利子負債:社債及び借入金+リース負債+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)

   信用取引借入金(前連結会計年度末335百万円、当連結会計年度末503百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末1,297百万円、当連結会計年度末606百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。

 

当年度末における当社グループの財政状態は、流動資産323,366百万円(前年度末比24.8%増)、非流動資産

333,170百万円(同8.9%増)、流動負債174,348百万円(同11.6%増)、非流動負債148,981百万円(同3.2%増)、資本合計333,206百万円(同25.9%増)となり、資産合計は656,536百万円(同16.2%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.50倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.04倍となっています。

前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。

当年度は3月に完了した案件が多かったことから、営業債権及びその他の債権は8,919百万円増加し106,324百万円、契約資産は2,925百万円増加し42,921百万円となりました。

制度資産の増加等により退職給付に係る資産が26,750百万円増加し81,927百万円となりました。

社債及び借入金は、社債を新たに15,000百万円(第7回無担保社債10,000百万円及び第8回期限前償還条項付無担保社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)5,000百万円)を発行したこと及び新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためコマーシャル・ペーパーを発行したことにより14,486百万円増加し117,495百万円となりました。

シンジケートローン10,000百万円が返済まで1年内となり、固定負債から流動負債に振り替えたことなどにより、1年内返済予定の長期借入金は10,431百万円増加し15,565百万円、長期借入金は13,441百万円減少し4,435百万円となりました。また、2021年3月に再導入した信託型従業員持株インセンティブ・プランに伴い、信託型従業員持株インセンティブ・プランに係る負債が11,198百万円増加し12,840百万円となりました。

自己株式は、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)等により51,600百万円減少し、15,027百万円となりました。

非支配持分は、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を追加取得したことなどにより、12,591百万円減少し2,711百万円となりました。

このほか、現金及び現金同等物が52,408百万円増加の153,187百万円、営業債務及びその他の債務が3,296百万円増加の37,358百万円、未払法人所得税が10,959百万円減少の8,939百万円となりました。

 

c. キャッシュ・フローの状況

「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。

 

d. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。

情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。

市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。あわせて、新しい技術が次々と登場する中で、企業のITに対する期待が変化してきています。コーポレートITは、品質を重視しながらも可能な限りコスト削減を目指し、パッケージ製品やクラウドサービス、ユーティリティ・サービスを利用することが一般化し、ビジネスITは、新たなデジタル技術を活用しながら事業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが拡大しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。

品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。

 

e. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及び協力会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。

当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は166,704百万円(前年度末比10.1%増)、現金及び現金同等物の残高は153,187百万円(同52.0%増)、グロスD/Eレシオは0.50倍、ネットD/Eレシオは0.04倍となっています。

また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるため、当年度にコマーシャル・ペーパーを発行しています。

 

f. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。

当年度におけるこれらの指標は、営業利益は80,748百万円(前年度比5.7%減)、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)、ROEは18.2%(同0.1ポイント減)、EPSは88円34銭(同3円52銭減)となりました。

 

当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。

 

当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」(※1)という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。

 

中期経営計画2022(2019年度~2022年度)

(単位:百万円)

指標

実績

中期経営計画2022

2020年度

2022年度(目標)

売上収益

 

550,337

670,000以上

営業利益

 

80,748

100,000

営業利益率

 

14.7%

14%以上

海外売上収益

 

43,625

100,000

EBITDAマージン

 

23.6%

20%以上

ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

 

18.2%

(※)14%

 

※ 昨年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度のROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率を維持していきます。

 

g. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は次のとおりです。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月 1日

 至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月 1日

 至 2021年3月31日)

 前年度比

 増減額

 増減率

コンサルティング

売上収益

39,612

38,155

△1,457

△3.7%

営業利益

9,494

10,059

565

6.0%

営業利益率

24.0%

26.4%

2.4P

金融ITソリューション

売上収益

276,937

292,038

15,101

5.5%

営業利益

34,170

36,275

2,105

6.2%

営業利益率

12.3%

12.4%

0.1P

産業ITソリューション

売上収益

181,438

189,551

8,113

4.5%

営業利益

22,055

19,482

△2,573

△11.7%

営業利益率

12.2%

10.3%

△1.9P

IT基盤サービス

売上収益

138,680

142,686

4,006

2.9%

営業利益

19,450

19,785

335

1.7%

営業利益率

14.0%

13.9%

△0.2P

調整額

売上収益

△107,946

△112,094

△4,148

営業利益

454

△4,855

△5,309

売上収益

528,721

550,337

21,616

4.1%

営業利益

85,625

80,748

△4,877

△5.7%

営業利益率

16.2%

14.7%

△1.5P

 

(コンサルティング)

当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い顧客の経営環境が急速に変化している中、顧客のDXによる企業変革が加速しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスが期待されています。

当社グループは、顧客のDXを支援するDXコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、欧米等の先進国におけるDX関連の知的資産を探索し、国内外拠点の連携を通じた提案力の強化に努めました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は、未来社会を大きく変える可能性のある環境変化であることから、当社グループの総力を挙げて、新型コロナウイルス対策緊急提言を行いました。

当年度の売上収益は、グローバル関連のコンサルティング案件が減少し38,155百万円(前年度比3.7%減)となりました。営業利益は、ニューノーマルにおける新たなワークスタイルが浸透したことに伴い生産性が向上し、10,059百万円(同6.0%増)となりました。

 

(金融ITソリューション)

当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションを提供しています。

社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。

当社グループは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの開発、デジタルバンキング事業などのDXビジネスの創出と展開、金融グローバル事業の拡大及び既存事業の高度化・大型化を進め、顧客基盤の拡大に努めました。

金融ビジネスプラットフォームの更なる進化を目的として、当第2四半期に、㈱だいこう証券ビジネスを当社の完全子会社としました。

当年度の売上収益は、証券業向け開発・製品販売の増加や、日本証券テクノロジー㈱の寄与もあり、292,038百万円(前年度比5.5%増)となりました。前年度にあった利益率の高い大型の製品販売の反動や当第1四半期に一部の子会社において不採算案件が発生したものの、足元の受注環境は良好に推移しており、相場活況による共同利用型サービスの利用料の増加やBPОサービスが好調で、営業利益は36,275百万円(同6.2%増)となりました。

 

(産業ITソリューション)

当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。

産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により景気減退に伴うITコスト削減のニーズがあるものの、コロナ禍におけるパラダイムシフトを契機とした顧客のDXによる企業変革が加速しており、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みを進めています。

当社グループは、顧客基盤の拡大に向け、産業分野に多くの顧客を持つコンサルティング部門と連携し、顧客のDX領域でのビジネスモデルの構築からシステム構築まで、コンサルティングとITソリューションが一体となり、総合的に支援しました。

当年度の売上収益は、流通業向け運用サービスが減少しましたが、製造・サービス業向け開発・製品販売が増加し、189,551百万円(前年度比4.5%増)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響により海外子会社の採算性が悪化し、営業利益は19,482百万円(同11.7%減)となりました。

 

(IT基盤サービス)

当セグメントは、主に金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントに対し、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。

DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、顧客のDXによる事業継続のニーズが加速しています。

当社グループは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※3)及びマネージドサービス(※4)の拡大や、IoT(モノのインターネット)領域でのセキュリティ事業の拡大に取り組んでいます。当第2四半期より、「Oracle Cloud」dedicated regionを世界で初めて採用し、自社データセンター内に専用パブリッククラウドを設置することで、自社統制下で運用するという新しい活用形態の取組みを始めました。

当年度の外部顧客に対する売上収益は、セキュリティ事業で増加し、内部売上収益はクラウドサービスやネットワークサービスなどが増加しました。

この結果、売上収益142,686百万円(前年度比2.9%増)、営業利益19,785百万円(同1.7%増)となりました。

 

※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。

※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するITサービス。

※3 デジタルワークプレイス事業:企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値の向上を高めるソリューション。

 

(4) 並行開示情報

 連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、次のとおりです。

 なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。

 

① 要約連結貸借対照表(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2020年3月31日)

当連結会計年度

(2021年3月31日)

資産の部

 

 

流動資産

259,855

324,298

固定資産

 

 

有形固定資産

63,422

61,207

無形固定資産

85,118

87,691

投資その他の資産

124,755

156,902

固定資産合計

273,295

305,801

資産合計

533,151

630,100

 

 

 

負債の部

 

 

流動負債

140,456

154,458

固定負債

105,076

119,108

特別法上の準備金

464

230

負債合計

245,997

273,797

 

 

 

純資産の部

 

 

株主資本

272,517

329,377

その他の包括利益累計額

△1,184

23,723

新株予約権

679

394

非支配株主持分

15,141

2,806

純資産合計

287,153

356,302

負債純資産合計

533,151

630,100

 

② 要約連結損益及び包括利益計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月 1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

売上高

528,873

550,490

売上原価

348,006

365,150

売上総利益

180,866

185,339

販売費及び一般管理費

97,688

98,837

営業利益

83,178

86,502

営業外収益

2,068

1,538

営業外費用

718

2,018

経常利益

84,528

86,022

特別利益

20,873

8,067

特別損失

2,905

5,403

税金等調整前当期純利益

102,496

88,686

法人税等合計

32,288

20,566

当期純利益

70,208

68,120

(内訳)

 

 

親会社株主に帰属する当期純利益

69,276

68,120

非支配株主に帰属する当期純利益

931

△0

 

 

 

その他の包括利益合計

△26,447

25,199

包括利益

43,760

93,320

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

42,852

93,029

非支配株主に係る包括利益

908

291

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

385,739

25,239

978

13,075

425,032

当期変動額合計

△113,222

△26,424

△298

2,065

△137,878

当期末残高

272,517

△1,184

679

15,141

287,153

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

272,517

△1,184

679

15,141

287,153

当期変動額合計

56,860

24,908

△285

△12,335

69,148

当期末残高

329,377

23,723

394

2,806

356,302

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月 1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

102,787

73,931

投資活動によるキャッシュ・フロー

18,382

△20,518

財務活動によるキャッシュ・フロー

△139,857

△2,525

現金及び現金同等物に係る換算差額

△3,734

1,520

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△22,421

52,408

現金及び現金同等物の期首残高

123,200

100,778

現金及び現金同等物の期末残高

100,778

153,187

 

⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

(収益認識に関する会計基準等の適用)

 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしました。

 当該会計方針の変更による影響は軽微です。

 

(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりです。

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 37. 初度適用」に記載のとおりです。

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

(のれんの償却)

 日本基準では、のれんを個別案件ごとに判断し、20年以内の合理的な年数で定額法により償却していましたが、IFRSではのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が3,058百万円減少しています。

 

(退職給付に係る費用)

 日本基準では、数理計算上の差異を発生時にその他の包括利益で認識し、発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を、発生の翌年度から費用処理していましたが、IFRSでは発生時にその他の包括利益に認識し、直ちに利益剰余金に振替えています。また、日本基準では売上原価並びに販売費及び一般管理費で計上していた利息費用等を、IFRSでは金融収益又は金融費用で計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価並びに販売費及び一般管理費が2,694百万円増加し、金融収益が339百万円増加し、その他の包括利益が10,379百万円減少しています。

 

(リース)

 日本基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRSでは、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がないため、基本的に全てのリース取引について、「使用権資産」及び「リース負債」を計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、「使用権資産」及び「リース負債」がそれぞれ43,581百万円及び48,098百万円増加しています。

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、次の3つの領域において研究開発を行っています。

1. 新規事業・新商品開発に向けた研究並びに事業性調査、プロトタイプ開発、実証実験

2. 情報技術に関する先端技術、基盤技術、生産・開発技術の研究

3. 新しい社会システムに関する調査・研究

研究開発は、当社グループの技術開発を担うDX生産革新本部、及び政策提言・先端的研究機能を担う未来創発センターにおいて定常的に取り組んでいるほか、各事業部門においても、中長期的な視点に立った事業開発・新商品開発に取り組んでおり、必要に応じ社内横断的な協業体制の下で進めています。研究開発戦略を提起するとともに全社的な視点から取り組むべき研究開発プロジェクトを選定する場として、研究開発委員会を設置しており、立案から成果活用に至るまでプロジェクトの審査・推進支援を行っています。

当年度における研究開発費は4,468百万円であり、セグメントごとの主な研究開発活動は次のとおりです。

 

(コンサルティング)

当社は、永年の社会・産業分野における調査研究活動を基礎として、かねてより日本が抱える社会課題に関する調査研究・提言を行っています。

国家的な課題となっているカーボンニュートラル、ゼロエミッションに係る取組みとして、製品の長寿命化を図るとともに廃棄物発生を最小化するための取組みであるサーキュラーエコノミーに関する研究や食品廃棄ゼロを目指して食品流通全体を可視化、効率化していくための取組みに関して研究を実施しました。

地方創生に貢献する活動として、地方の起業家が「革新的経営者」と交流を図ることにより触発され新たな事業創造を促進する取組みを継続実施したほか、行政のデジタル化を推進するためにオープン基盤を活用して行政手続きを効率化する取組みや地方に所在する人的資源、企業、大学・研究機関等の資源の横断的な情報共有を図り、有効活用を促進するための検討などを実施しました。

企業活動における個人情報収集・管理・活用に係る関心が高まっている状況を踏まえて、企業内に所在する個人情報を包括的に管理し、活用状況をモニタリングするための枠組みについて調査研究を実施しました。

コロナ禍における在宅勤務や外出制限が定常化する中、生活者の就労状況、消費状況、生活上の課題などに係る調査研究を実施しました。

当年度における当セグメントに係る研究開発費は1,109百万円でした。

 

(金融ITソリューション)

近年、利用ニーズが高まっている仮想通貨に関する研究、実証実験などを実施しました。加えて、各国中央銀行で研究が盛んになっている中央銀行が発行するデジタル通貨に係る調査、研究を実施しました。

昨年度から引き続き、海外研究機関との共同研究を実施し、金融事業に関わる先端技術についての調査や、これらの実用可能性、技術動向、金融システムへの影響などの研究を行いました。

近年、継続的に高い関心が寄せられているアンチマネーロンダリング対策に係る領域で、海外で実績を上げている各種ソリューションに係る調査・研究、顧客との実証実験に向けた取組みなどを実施したほか、KYC(Know Your Customer)(※1)に関わる調査研究を実施しました。

当年度における当セグメントに係る研究開発費は1,947百万円でした。

 

(産業ITソリューション)

労働力人口の減少や電子マネーの流通拡大など社会変容や技術革新により、多くの店舗運営に関する課題が発生しています。またコロナ禍の継続により、EC需要が急拡大するなど消費行動の変容もより一層進んでいます。このような環境を踏まえて、店舗の自動化や多様な決済手段の活用、VR(※2)などを活用した様々な非店舗型販売手法、非店舗型販売を支えるコールセンターの高度化などの調査研究、実証実験を実施しました。

リテールビジネスのみならず、ホールセールビジネスにおいても、あらゆる業態でリカーリングビジネスを拡大し、収益の安定化を図るとともに顧客接点を定常的に保持していくニーズがより一層高まっています。当社は、これら新たなビジネスモデルの展開に資するソリューション開発を目指して、ビジネススキーム、要素技術の調査研究、実証実験を行いました。

当年度における当セグメントに係る研究開発費は757百万円でした。

 

(IT基盤サービス)

当年度も機械学習を用いたデータアナリティクスや音声認識、画像認識などの技術を用いたソリューション開発事例が増加しています。これらの動向を踏まえ、機械学習技術を効率的にソリューション開発に活用していく手法の研究やAI技術を活用したソリューションの品質確保のための調査研究を実施しました。

5G(※3)や量子コンピュータ(※4)など、既存のビジネスモデルを大きく変容しうる要素技術について、世の中の関心が高まっています。当社でもこれらの技術を活用した新たな付加価値創造に向けて調査研究を行いました。

当年度における当セグメントに係る研究開発費は654百万円でした。

 

※1:KYC:Know Your Customerの略で、金融機関等での口座開設時に求められる本人確認手続き。

※2:VR:Virtual Realityの略で、人間の感覚器官に働きかけ、現実ではないが実質的に現実のように感じられる環境を人工的に作り出す技術。

※3:5G:第5世代移動通信システムの略称。既存技術よりも高速・大容量を実現するもので、加えて低遅延、多数接続の特徴を持った通信規格。

※4:量子コンピュータ:重ね合わせや量子もつれといった量子力学的な現象を用いて従来のコンピュータでは現実的な時間や規模で解けなかった問題を解くことが期待されるコンピュータ。