近年、サステナビリティ意識の高まりやデジタル化など、環境の変化が急速に加速しています。成長戦略と基盤強化など本質的なものに今一度立ち返り、変革のスピードを上げていきます。2030年の長期ビジョン「Art for Human Possibilities ~人はもっと幸せになれる~」に向けて、成長性を高めるとともに、企業価値をさらに向上させていきます。
○中期経営計画の進捗
当社は、今中期経営計画(2022年~2024年)より、将来に向けて各事業に経営資源を適正に配分するポートフォリオマネジメントを実装しました。初年度の実績としては、成長性・収益性・効率性の財務指標は目標値を達成しました。また、コア事業が順調に進捗する一方、成長事業は上海ロックダウンや短期的な需要減速の影響を受け成長率が鈍化しました。新規事業は、新サービスの正式提供開始や新たな分野の自動化実証実験など着実に進捗しています。

■戦略事業領域
[新規事業]
長期ビジョンでは、「Rethinking Solution」を一つのテーマとして掲げています。社会課題に対して、当社がこれまで培った技術や知見とパートナーとの共創活動で、ヤマハらしい新価値創造を進め、SDGsの達成に貢献する事業開発を加速させます。
モビリティサービスでは、インド・ナイジェリアで事業を開始しました。車両の貸与を通じて、アセットマネジメント事業を行うと同時に、事業を通じた就労機会の創出により、人々の生活の質向上にも貢献していきます。
低速自動走行では、株式会社ティアフォーとジョイントベンチャーを組織、屋内外の幅広いニーズに対応する無人自動搬送サービス「eve auto」の提供を正式に開始しました。自動運転EVによる自動搬送の商用サービスは国内初の取り組みです。営業体制を強化し、高まる物流自動化ニーズに応えることで事業拡大を目指します。
医療・健康では、細胞培養工程を効率化する「CELL HANDLER(セルハンドラー)」を国立研究機関へ納入しました。農業自動化では、出資先企業への技術者派遣など、協業で開発・実証実験を進めています。
[ロボティクス事業(成長事業)]
中長期的には様々な分野のデジタル化や自動化ニーズの高まりにより、市場は今後も伸長が見込まれています。当社はさらに事業規模と領域を拡大し、ヤマハロボティクスホールディングス株式会社を含めた販売と開発のシナジー効果を高めながら、さらなる収益力向上を目標とします。また、事業拡大に向けた生産能力の増強のため、工場増築に着手しました。グローバルでは、需要が拡大している東南アジア・インドでの事業拡大を目指し、2023年1月にシンガポールに新会社を設立しました。
[SPV事業(成長事業)]
1993年に世界初となる電動アシスト自転車を発売して以来、多くのお客様に支えられ、2023年に30周年を迎えます。人々の移動様式の変化、そして世界的な環境規制と意識の高まりから、市場は拡大し続けています。当社はe-Kitの競争力強化と、完成車ニューモデルの投入で、市場成長以上の規模拡大と、売上高倍増を目指します。欧州市場に自社ブランドのeBike 3モデルを2023年より導入することを発表しました。
■コア事業領域
[二輪車事業]
足元では、半導体をはじめとした部品調達難などの逆風を受けていますが、今後も新興国において、プレミアム戦略を加速していきます。アセアン・インドなど需要が回復する市場においてプレミアム商品の販売比率を高め、収益性を向上します。
また、電動化シフトへの対応として、バッテリー着脱式電動スクーター「NEO'S」の販売を欧州で開始、バッテリー固定式電動スクーター「E01」の実証実験を欧州・日本・アセアンで順次開始しています。今後も電動スクーターの開発スピードを上げていきます。
[マリン事業]
「マリン版CASE」推進による提供価値拡大と高収益体質の維持・強化を目指しています。
2024年の大型船外機の生産能力20%増強(2021年比)の計画に加え、さらに2026年までに15%増強(2024年比)します。また、ラインナップの強化として、2023年に当社最大となる450馬力の船外機を北米市場に投入します。
CASE戦略では、次世代操船システム「HARMO」を2022年春より欧州で販売開始しました。また、フィンランドのITスタートアップ企業「Skipperi」への出資を2023年1月に行い、シェアリングベンチャーへの布石を打ちました。
■財務指標・株主還元方針
資本コスト以上のリターンの継続的創出を目標とし、ROE15%水準、ROIC9%水準、ROA10%水準(いずれも3年平均)を目指します。株主還元については、「業績の見通しや将来の成長に向けた投資を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を行う」ことを基本方針とし、キャッシュ・フローの規模に応じて機動的な株主還元を実施します。総還元性向は中期経営計画期間累計で40%水準です。なお、2022年は第2四半期連結会計期間に200億円の自己株式取得を行いました。2023年は300億円を予定しています。
■サステナビリティに向けた取り組み
2050年のカーボンニュートラルを目標とした「ヤマハ発動機グループ環境計画 2050」のうち、海外を含む自社工場における目標達成時期を2035年へと前倒ししました。これまでに、省エネルギー・再生可能エネルギー設備を10か国以上に導入し、国内事業所でのCO2フリー電力の採用を開始しました。
また、カーボンオフセットが可能な新たな取り組みとして、環境分野の課題解決に取り組む企業へ出資する投資ファンド「Yamaha Motor Sustainability Fund」を設立し、スタートアップ企業への出資を行いました。環境課題の解決に挑戦している多くの企業との連携を強め、より良い社会の実現に貢献していきます。
■DX戦略
基盤となるDX人財の育成・創出に加え、経営基盤の改革とお客様とつながることで、生涯を通じたヤマハファンを創造していきます。
DX人財は、2024年までに1,200人創出を目指しており、実践的な教育を進めています。
■人財戦略
会社の成長に欠かせない「人財の活力」を高めるため、社員エンゲージメントを重要な指標として取り入れました。エンゲージメント向上をグローバルで加速するため、2023年より海外グループ会社と共通指標を用いた調査を開始します。継続的なフォローアップを実施し、社員のエンゲージメントスコア向上を目指します。
■安全ビジョン
当社は、「2050年交通死亡事故ゼロ」を目指しています。長期ビジョンの構成要素である「Transforming Mobility(モビリティの変革)」では、モビリティに関わる様々な社会課題の解決と変革に向けて、パーソナルモビリティが本来持つ価値の一つ「楽しい移動」の実現に取り組んでいます。「人機官能・人機安全」という独自の開発思想で「技術・技量・つながる」を軸にした安全をもとに、お客様と共に「事故のない社会」を目指します。具体的には、「認知・判断・操作・被害軽減のアシスト」「運転技術向上のアシスト」「データ集積によるヒューマンエラー及び環境起因事故予防のアシスト」に取り組みます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。なお、これらは全てのリスクを網羅したものではなく、これら以外にも投資者の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年3月23日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、世界中の数多くの国又は地域において事業を展開しています。これらの市場の長期にわたる景気低迷及び金融危機など経済情勢の急変で需要が縮小した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・市場における競争
当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争にさらされており、このような競争状態のために当社グループにとって有利な価格決定をすることが困難な状況に置かれる場合があります。このような競争状態は、当社グループの利益の確保に対する圧力となり、その圧力は特に市場が低迷した場合に顕著となります。また、当社グループは、激しい競争の中で優位性を維持又は獲得するために、競争力のある新製品を市場に投入し続けていますが、資源を投入して開発した製品が計画通り販売出来ない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・海外市場での事業展開
当社グループの売上高に占める海外比率は約90%となっています。従って、当社グループが事業を展開している国又は地域における輸出入規制、外貨規制、税制等の変更や移転価格税制等に基づく課税など予期出来ない事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、日本を含む世界の国々で生産活動を行い、その製品を世界各国に輸出しており、製造のための原材料や部品の調達及び製品の販売において、各国で外貨建の取引があります。従って、為替変動は、当社グループの売上はもとより、収益及び費用等に影響し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループは為替ヘッジ取引を行い、為替レートの変動による影響を最小限に止める努力をしていますが、急激な為替相場の変動により、計画された調達、製造及び販売活動に影響が出る可能性があります。また、為替が想定とは逆方向に変動することにより、ヘッジ取引により逸失利益が生じる可能性があります。
また、当社グループは在外子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成した連結財務諸表をもって業績及び財政状態を表示していますので、各通貨の円に対する為替レートの変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4) 資金調達リスク・金利変動リスク
当社グループは、事業活動の資金を内部資金および金融機関からの借入や社債の発行等により調達しています。
しかしながら、経済環境が変動した際、金融機関の融資姿勢や金融市場の不安定化により、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などに資金調達を想定通り行うことが難しくなり、資金調達コストが増加するリスクがあります。
当社及び連結子会社では、適時に資金繰計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することや十分な融資枠を維持することなどにより、流動性リスクを管理しています。
また、借入金に係る支払利息の金利上昇リスクを抑制するために、固定金利で長期資金調達又は金利スワップ取引等を利用することがあります。
当社グループは、二輪車、船外機等の消費者向け製品を市場に供給しているだけでなく、顧客企業に対して自動車用エンジン等を供給しており、その売上は顧客企業の経営方針、調達方針等の当社グループが管理出来ない要因により影響を受けることがあります。
・特定の供給業者への依存
当社グループは、製品の製造に使用する原材料及び部品等を当社グループ外の多数の供給業者から調達しており、これらの一部については特定の供給業者に依存しています。互換性のある部品や原材料への切替や、長期的な内示数量提示による数の確保などの対策を進めていますが、市況、災害等、当社グループでは制御出来ない要因により、当社グループがこれらの原材料及び部品等を効率的に、且つ安定したコストで調達し続けることが出来なくなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・資材供給市況
鉄、アルミを中心に原材料価格の高騰や半導体をはじめとした部品不足が生じており、当該状況が長期化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
当社グループは、一部の国又は地域において合弁で事業を展開しています。これらの合弁事業は、合弁パートナーの経営方針等により影響を受けることがあります。
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されています。毎年、金利変動等が退職給付債務に与える影響の検証を実施していますが、実際の条件が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響額を一定の年数で規則的に処理するため、将来期間において認識する費用及び計上する債務に影響を及ぼします。このため、割引率が低下した場合や運用利回りが悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、グループ品質保証体制の下に、世界各国の工場で製品を製造しています。しかし、法律や政府の規制に従い、或いは、お客様の安心感の観点から、リコール等の市場処置を実施する可能性もあります。また、当社グループは、製造物責任等の訴訟、その他の商取引、独占禁止、消費者保護などの法的手続の当事者となる可能性があります。大規模なリコール等の市場処置を講じた場合や当社グループが当事者となる法的手続で不利な判断がなされ、多額の費用・損害賠償責任が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループが事業を展開する多くの国又は地域において、当社グループは、製品の安全性、燃費、排ガス規制、並びに工場からの汚染物質排出レベル等の広範囲な環境規制及びその他の法規制を受けています。これらの規制は変更されることがあり、多くの場合規制が厳しくなる傾向にあります。当社グループは、環境負荷の低減を目的としたグリーン調達を推進するためのガイドラインを制定し、さらに専任者を含むチームを置いて活動するなどの環境活動を推進していますが、当社グループが事業を展開する国又は地域におけるこれらに関連する規制又は法令の変更があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、製品を他社製品と差別化するために多数の特許権、商標権、その他の知的財産に関わる権利を、必要に応じて法的手続きを講じることにより確保しています。しかしながら、当社グループが事業を展開している国又は地域の中には、知的財産権による完全な保護が不可能、又は限定的にしか保護されない状況にある場合があり、これらの国又は地域においては、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造及び販売することを効果的に防止できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
顧客等の個人情報や機密情報の漏洩等の防止は、会社の信用維持、円滑な事業運営にとって、必要不可欠の事項といえます。当社グループにおいては、社内規程の制定、社内教育、情報セキュリティシステムの構築等の措置を講じていますが、万一、情報漏洩等の事態が発生した場合、当社グループの信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生するおそれがあります。また、当社グループの事業活動において、情報システムへの依存度とその重要性は増大しており、この対応として情報システム全体の可用性の向上を図るとともに、ハード・ソフト両面のセキュリティ対策等を実施していますが、サイバー攻撃やコンピューターウイルスの感染等により情報システム障害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
自然災害、疫病、パンデミック、戦争、テロ、ストライキ、デモ等が発生した場合、当社グループの操業が遅延又は中断する可能性があり、さらに、当社グループの製造拠点等が直接に損害を受けた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループの日本における主力製造拠点は、予想される南海トラフ巨大地震の震源域近傍に集中しているため、被害を最小化するための主要建築物の耐震補強工事、被災後の早期復旧を可能にするための体制整備等の対策を進めており、また当社グループが保有する建築物、在庫等の損害に対する地震保険に加入しています。さらに新型インフルエンザ等の発生に対しても事業継続計画を策定しています。これらの対策や保険については継続的に見直していますが、当社グループの想定を超える規模の災害等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症
当社グループは、既成の新型インフルエンザ等の発生に対する事業継続計画に準じて、本社での職域接種の実施、各国における従業員のワクチン接種率の向上等、グループ一丸となって種々の対応・対策を行っています。今後も被害を最小に抑えてまいりますが、新型コロナウイルス感染症の影響が想定以上に拡大・長期化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
・ウクライナ・ロシア情勢
経済制裁や各国規制に基づく営業活動への影響はあるものの当社グループの業績及び財政状態に与える影響は軽微と見込んでいますが、グループ社員の安全確保、原材料・物流費の高騰、サイバー攻撃に関する懸念等、想定されるリスクに対して必要な対策を行っています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、新型コロナウイルス感染再拡大に伴う中国のロックダウン、急激な為替変動など不安定要因が多く発生しました。加えて、後半からは米国の金利上昇により、世界的な景気減速懸念が広がりました。
当社事業においては、アウトドアレジャー需要が引き続き堅調に推移する中、半導体をはじめとした部品不足の長期化、サプライチェーンの混乱などにより製品供給不足が生じました。さらに、これまでにないレベルで原材料価格、物流費、人件費などのコストが高騰しましたが、一方で円安は当社にとっては追い風となりました。
このような経営環境の中、当社は開発・製造・販売が一体となり部品調達不足の影響最小化に努めるとともに、損益分岐点経営を念頭に、経費コントロールやコストダウンといった自助努力、加えて価格転嫁を進めました。
この結果、当連結会計年度の売上高は2兆2,485億円(前期比4,360億円・24.1%増加)、営業利益は2,249億円(同425億円・23.3%増加)、経常利益は2,393億円(同499億円・26.3%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,744億円(同189億円・12.1%増加)となり、過去最高の売上高・各利益を達成しました。売上高が2兆円を、営業利益及び経常利益が2,000億円を超えたのは初めてとなります。
なお、当連結会計年度の為替換算レートは、米ドル132円(前期比22円の円安)、ユーロ138円(同8円の円安)でした。
売上高は、世界的なサプライチェーン混乱による供給不足の影響を受けたものの、先進国における船外機需要の堅調な推移、新興国の二輪車需要が回復したことで増収となりました。営業利益は、原材料や物流費をはじめ、コストが大幅に上昇しましたが、コストダウンの継続や、価格転嫁の効果顕在化、加えて円安によるプラスの効果により、増益となりました。
財務体質については、ROEは18.7%(前期比1.0ポイント減少)、ROICは11.9%(同0.5ポイント減少)、ROAは11.2%(同0.7ポイント増加)となり、いずれも中期目標の水準を上回りました。自己資本は1兆31億円(前期末比1,438億円増加)、自己資本比率は45.9%(同0.9ポイント減少)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は32億円のマイナス(同935億円減少)となりました。
セグメント別の概況
〔ランドモビリティ〕
売上高1兆4,682億円(前期比2,885億円・24.5%増加)、営業利益874億円(同187億円・27.2%増加)となりました。
部門別の経営成績の概要は、次の通りです。
二輪車では、売上高1兆2,917億円(前期比2,751億円・27.1%増加)、営業利益847億円(同321億円・61.2%増加)となりました。先進国においては、需要が堅調に推移し、欧州・北米で販売台数が増加した結果、売上高3,229億円(前期比735億円・29.5%増加)となりました。新興国においては、各国で経済活動の回復が進んだことで需要が増加し、インドネシア・ベトナム・インドなどで販売台数が増加した結果、売上高9,688億円(前期比2,017億円・26.3%増加)となりました。半導体などの部品不足は想定よりも長期化していますが、代替部品の調達、生産管理の徹底により影響を最小化し、増収となりました。二輪車全体の営業利益は、原材料価格や物流費などの生産コスト高騰の逆風を受けましたが、価格転嫁の実施や円安によるプラスの効果もあり、増益となりました。
二輪車全体の販売台数は、多くの地域での需要が堅調に推移し、477万台(前期比6.3%増加)となりました。
RV(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)、スノーモビル)では、売上高1,233億円(前期比106億円・9.4%増加)、営業損失29億円(前期:営業利益84億円)となりました。アウトドアレジャー需要は引き続き旺盛ですが、部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が続きました。販売台数は減少しましたが、売上高は価格転嫁や円安によるプラスの効果もあり、増収となりました。営業利益は米国生産拠点における生産稼働率の低下や生産コスト高騰により、減益となりました。
電動アシスト自転車では、売上高533億円(前期比28億円・5.5%増加)、営業利益56億円(同21億円・27.5%減少)となりました。第2四半期連結会計期間に上海ロックダウンに起因する部品不足や、コンテナ不足による物流遅延の影響を受け、大幅な生産遅れが発生しました。その後、状況は改善に向かっていますが、挽回には至らず販売台数が減少しました。売上高は円安のプラス効果もあり、微増となりました。営業利益は、コストアップに対して価格転嫁を進めましたが、第1四半期連結会計期間にバッテリーのリコールに伴う製品保証引当金を計上したこともあり、減益となりました。
〔マリン〕
売上高5,170億円(前期比1,259億円・32.2%増加)、営業利益1,092億円(同324億円・42.2%増加)となりました。
船外機では、先進国におけるアウトドアレジャーブームは依然継続しており、特に200馬力以上の大型船外機の需要が堅調に推移しました。コンテナ不足の影響や、米国の港湾混乱の影響がありましたが、徐々に改善し販売台数が増加しました。また新興国においても観光需要が回復しました。ウォータービークルでは、強い需要が継続しましたが、部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が続き、販売台数が減少しました。マリン事業全体では、第3四半期連結会計期間以降に価格転嫁が進んだことに加え、円安によるプラスの効果もあり、増収・増益となりました。
〔ロボティクス〕
売上高1,159億円(前期比44億円・3.7%減少)、営業利益119億円(同57億円・32.6%減少)となりました。
中国では上海ロックダウンの影響と景気回復の遅れにより設備投資需要が減少しましたが、欧米の車載向け投資やチャイナプラスワンの動き、自国生産移行に向けた設備投資が堅調に推移しました。当社は、サーフェスマウンターでは車載系の大型投資などで日本を中心に先進国の販売が安定的に増加しましたが、中国・台湾・韓国は需要の冷え込みにより減少しました。産業用ロボットと半導体製造装置でも中国・台湾などで販売が減少しました。その結果、ロボティクス事業全体では減収となりました。営業利益は、部品・物流費の高騰により減益となりました。
〔金融サービス〕
売上高622億円(前期比135億円・27.8%増加)、営業利益175億円(同16億円・8.4%減少)となりました。
全地域で販売金融債権が増加し、増収となりました。営業利益は、利上げ影響を受け調達金利が上昇したことに加え、リスクに鑑み貸倒引当金を計上したこと、一方で前年は一過性要因として貸倒引当費用が減少していたことから、減益となりました。
〔その他〕
売上高851億円(前期比124億円・17.1%増加)、営業損失12億円(前期:営業利益0億円)となりました。
ゴルフカーにおいて高価格帯の売上増加や価格転嫁実施により増収となりましたが、原材料価格高騰やサプライチェーン混乱に伴う固定費増加などにより、減益となりました。
なお、各セグメントの主要な製品及びサービスは以下のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 主要製品について記載しています。
当社グループは主に見込み生産をしています。
(注) セグメント間取引については相殺消去しています。
総資産は、前期末比3,504億円増加し、2兆1,833億円となりました。流動資産は、堅調な需要を背景とした売掛金や短期販売金融債権の増加や、部品調達難による生産遅延等で棚卸資産が増加したことなどにより同2,610億円増加しました。固定資産は、小売ファイナンスの増加に伴う長期販売金融債権の増加などにより同894億円の増加となりました。
負債合計は、運転資金の増加等による有利子負債の増加などにより同1,967億円増加し、1兆1,290億円となりました。
純資産合計は、配当金の支払419億円、自己株式の取得200億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,744億円、為替換算調整勘定の増加478億円などにより同1,536億円増加し、1兆543億円となりました。
これらの結果、自己資本比率は45.9%(前期末:46.9%)、D/Eレシオ(ネット)は0.31倍(同:0.21倍)となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益2,458億円(前期:1,997億円)や減価償却費598億円(同:511億円)などの収入に対して、棚卸資産の増加901億円(同:762億円の増加)、販売金融債権の増加708億円(同:50億円の減少)、法人税等の支払額538億円(同:301億円)、売上債権の増加129億円(同:86億円の増加)などの支出により、全体では709億円の収入(同:1,413億円の収入)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資有価証券の売却による収入225億円(前期:171億円の収入)などがありましたが、固定資産の取得による支出894億円(同:668億円の支出)、投資有価証券の取得による支出153億円(同:54億円の支出)などにより、742億円の支出(同:510億円の支出)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
配当金の支払や自己株式の取得などによる支出がありましたが、有利子負債の増加などにより231億円の収入(前期:935億円の支出)となりました。
これらの結果、当期のフリー・キャッシュ・フローは32億円のマイナス(前期:903億円のプラス)、現金及び現金同等物は2,968億円(前期末比:219億円の増加)となりました。当期末の有利子負債は6,027億円(同:1,442億円の増加)となりました。
(5) 金融サービス事業を区分した経営成績情報
以下の表は金融サービス事業と金融サービス事業以外の事業を区分した要約連結貸借対照表、要約連結損益計算書及び要約連結キャッシュ・フロー計算書です。これらの要約連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準においては要求されていませんが、金融サービス事業はそれ以外の事業とは性質が異なるため、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の「金融サービス事業以外の事業及び消去」は連結計から金融サービス事業の数値を差し引いたものとしています。
要約連結貸借対照表
要約連結損益計算書
要約連結キャッシュ・フロー計算書
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。
運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。
資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。
当連結会計年度においては、フリー・キャッシュ・フローはマイナスとなりましたが、各国での旺盛な需要や堅調な販売を背景に販売金融債権や棚卸資産などが増加したことや、設備投資などの投資活動が活発であったことによるものです。また、株主還元と資本効率の向上を図るために自己株式の取得を行いました。
当社は株主の皆様の利益向上を重要な経営課題と位置付け、企業価値の向上に努めています。株主配当については期末配当1株当たり67.5円(2023年3月22日開催の第88期定時株主総会にて決議)、2023年は年間配当1株当たり130円、加えて300億円の自己株式の取得を予定しています。
また、2023年の設備投資は1,000億円、研究開発費は1,210億円を計画しています。
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。なお、当連結会計年度における重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
当社グループは、棚卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済指標の著しい悪化などの外部環境の変化により債権の信用リスクが増加した場合には、必要に応じて見積りに対し補正を加えています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
当社グループは、減損の兆候のある資産または資産グループごとに将来キャッシュ・フローの見積りを行い、固定資産の減損要否の判定を行っています。資産または資産グループの減損が必要であると判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を超える部分について減損損失を認識します。将来、回収可能価額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関及びスタートアップ企業・ベンチャー企業等の株式を保有しています。これらの株式には価格変動性が高い上場株式と市場価格のない非上場株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しています。時価のある有価証券についての減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (有価証券関係)」に記載しています。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、将来の一定期間における課税所得の見積りやタックスプランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を検討しています。これらの将来に係る見積りは、市場の動向や経済環境、また、当社グループの事業計画等の変動の影響を受けるため、回収可能性が大きく変動した場合、税金費用が大きく変動する可能性があります。
当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。数理計算上の差異等の償却は退職給付費用の一部を構成していますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものです。また、前述の前提条件の変化により償却額は変動する可能性があります。
特記事項はありません。
当社グループは、「感動創造企業」を企業目的とし、世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供することを目指しています。その実現のために、「新しく独創性ある発想・発信」「お客様の悦び・信頼感を得る技術」「洗練された躍動感を表現する魅力あるデザイン」「お客様と生涯にわたり結びつく力」を目指す「ヤマハ発動機らしいモノ創り」に挑戦し続け、人間の論理と感性を織り合わせる技術により、個性的かつ高品質な製品・サービスを提供します。
当社は、こうした「ヤマハ発動機らしさ」が「ヤマハ」ブランドとして様々なステークホルダーの皆様に認識され、生涯にわたって当社の製品・サービスを選んでいただけるよう、努力を続けることが当社の持続的な成長を実現するとともに中長期的な企業価値を高めるものと考えます。
当社は、2030年を見据えた長期ビジョンならびに2022年からの3ヵ年における中期経営計画において、サステナビリティと企業価値向上の両立を実現するための施策の取組みを行っています。コア事業の稼ぐ力を高め、サステナブルな社会に貢献する新規・成長事業への研究開発投資の拡大、多様なエネルギー源に対応したパワートレインの開発を推進し、デジタル技術の活用と共創の加速によりヤマハらしい新価値創造を進めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、
主な成果は以下のとおりです。
(二輪車)
・二輪車の安定性に寄与し、軽快性の向上に貢献する新たなライダー支援技術、ステアリングサポートシステム「Electric Power Steering(EPS)」の開発。
・ミリ波レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)、アダプティブクルーズコントロールなどを搭載し、さらに電子制御サスペンションも連動させ、ライダーに負担の少ないフィーリングを実現した「TRACER9 GT+」の開発。
・原付二種クラスEVや急速充電の市場受容性を探ることを目的に行い、車両固定式バッテリー搭載の出力8.1kWクラス電動スクーター「E01(イーゼロワン)」の実証実験を日本国内にて実施。
(電動アシスト自転車)
・新モデル「WABASH RT(ワバッシュ アールティー)」、「CROSSCORE RC(クロスコア アールシー)」の開発。従来ユニット比約100gの軽量化を果たし、上質なアシストを提供するドライブユニット「PWseries ST」を初めてスポーツ電動アシスト自転車(eBike)「YPJシリーズ」として採用。
主な成果は以下のとおりです。
(船外機)
・従来のV型8気筒、排気量5,559cm³のエンジンをベースに新設計し、新たな充電システムによる優れた電力供給能力、独自の新機能「TotalTilt®」によるチルト機構の操作性向上など、利便性と快適性を追求した、当社最大馬力となる450馬力の4ストローク船外機「F450A」の開発。
(ボート)
・新たに次世代ボート制御システム「ヘルムマスターEX(HELM MASTER EX)」を採用、定点保持機能「セットポイント」に新たに「フィッシュポイント」と「ドリフトポイント」が加わり、船外機を自動制御してポイントを維持、または船首を特定の方位に維持することが可能となった、快適で楽しいボートライフを提供するプレジャーボート「SR330」、「YFR-27HMEX」、「S-QUALO」の開発。
(プール)
・FRP(繊維強化プラスチック)技術で社会課題の解決に対する取り組みとして、静粛空間の実現と、生産コストの低減を両立するカプセルホテル用 「FRP製カプセルユニット」の、株式会社ナインアワーズとの共同開発。
主な成果は以下のとおりです。
(産業用ロボット)
・モジュール構造とリニアモータによる高速ダイレクト駆動が特長の搬送システム、リニアコンベアモジュール「LCMR200」の最大可搬質量を30kgに倍増させ、トラバースユニットとの組み合わせで自由度の高い搬送システムを構築。
(産業用無人ヘリコプター)
・有効積載量(ペイロード)最大50kg(注)を実現(従来モデル比で15kg向上)し、運搬に関わる機能・性能を強化した運搬専用機の開発。
・農業用途に自動飛行機能を追加し、散布作業の効率化や操縦者の負担軽減に寄与する次世代の産業用無人ヘリコプター「FAZER R AP(フェザー アール エーピー)」の開発。
・従来機との比較で収納時約1/2サイズの縮小を実現させ、自動飛行機能を標準搭載し、高い飛行安定性を実現した産業用マルチローター「YMR-II(ワイエムアール・ツー)」の開発。
注:有効積載量(ペイロード)は、天候や気象条件、標高等によって異なる。
主な成果は以下のとおりです。
(ゴルフカー)
・当社と株式会社ティアフォーが設立した合弁会社「株式会社eve autonomy(イヴ オートノミー)」が手掛ける、搬送の自動化ニーズへの対応を目的に新規開発された、EV車両による自動搬送サービス「eve auto」を本格始動。