第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、企業理念から導かれるVALUE、行動指針のもと、持続可能な社会を実現する「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、ステークホルダーの皆さまとともに企業価値をより向上させていきます。


 

当社グループは、「事業活動を通じて社会に貢献する」ことを使命とし常に変化しています。企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の下、「『環境・エネルギーカンパニー』グループとして超スマート社会を実現する」を事業方針に掲げ、ポートフォリオ変革によってさらなる成長を目指しています。

当社グループでは、戦略的事業領域を「モビリティ」「インフラストラクチャー&セーフティー」「ライフ&ヘルスケア」の3つに定め、無線・通信事業、マイクロデバイス事業およびブレーキ摩擦材・化学品・成形品・繊維等で構成されるケミカル事業を柱として企業活動を展開しています。

車のEV化や自動運転・船の自律航行といったモビリティの劇的変化に対応し、遠隔医療や見守りサービスを実現するのが無線・通信およびマイクロデバイスの世界です。まずは異常気象という目の前の課題に、防災無線やセンサネットワークを提供して災害から人びとの命を守ります。そして、市場のトップランナーであるブレーキ摩擦材や燃料電池用カーボンセパレータをはじめとするさまざまな環境素材とプライベートLTEやローカル5Gといった通信システムや半導体で、環境問題にソリューションを提供してまいります。さらに、レーダやGPS、超音波センサ等、モノづくりで極めた技術や製品を活用したサービス事業へと領域拡大を進めます。

こうした事業活動により、地球環境を守り・改善するサステナビリティ経営を推進することが、当社グループの持続的成長につながると考えます。そして、資本・経営・労働がそれぞれの権限と責任を認め合い協力して付加価値の総体としての利潤を増やすことで、顧客・株主・社員・取引先・地域社会等、さまざまなステークホルダーの期待に応えてまいります。

2030年に温室効果ガス排出量を50%削減(2014年比)し、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという環境目標の達成に邁進すると同時に、イノベーションの源である多様性とイノベーションの加速装置であるDXにより、事業の変革と成長を目指します。また、遵法に止まらず、人としての倫理に基づき行動することを旨とし、粘り強く人権デューデリジェンスやD&I活動を推進し、事業の多様性・人の多様性・価値観の多様性を強みとして企業価値向上に取り組んでまいります。

 

(2) 事業別の経営戦略及び経営環境並びに対処すべき課題

①無線・通信事業

無線・通信事業では、事業変革による利益体質の強化に取り組んでいます。事業ポートフォリオ改革を遂行し、低収益事業の見極めと見切りを徹底し、高収益事業へのシフトを実現しながら、コスト構造改革の実施とデジタルを活用したビジネス変革およびイノベーション創出を図ります。またデータやDXの積極的な活用を通じて、ビジネスパートナーと連携・協創し、実証実験などにも挑戦しながら、顧客にとって真に価値あるソリューションの提供を目指します。

・マリンシステム

マリンシステムではグローバル成長戦略として、商船分野における収益力向上、中小型船分野におけるマーケットシェアの拡大、自動運航へとつながるシステム機器の市場投入、Smart Shipコンテンツの開発促進に注力するほか、洋上風力発電設備関連ソリューションの販売拡大など、海洋システムビジネスの開拓にも取り組みます。

安全・安心・効率化の船舶運航に寄与する、付加価値を持つ船上機器の提供やSmart Shipを実現するコンテンツの共同開発を進め、今後さらに必要性が高まる船舶の自律・自動運行に向けた機能やシステムの提供を進めます。

その取り組みの一例が、海上情報サービスを提供する「J-Marine Cloud」です。「J-Marine Cloud」は、“海のDX化”に資する革新的な取り組みとして、日本海事協会の「イノベーションエンドースメント」認証を取得しており、今後市場でのさらなる活用が期待されます。また海のモビリティの高度化促進に向けては、東京大学を中心とした社会連携講座「海事デジタルエンジニアリング講座」に参画しています。これは高度化する船舶や陸上支援システムの設計・開発プロセスにおいて、生産性の確保と信頼性の向上を目指す取り組みです。

また、安定収益体質への変革を実現するべく、デジタル技術による業務の効率化を進め、営業力およびサービス力を強化することで利益創出を目指します。

・ソリューション・特機

官公庁、民需、海外の各事業分野で、既存事業の需要を確実に取り込むのと並行して、事業領域の拡大に向けて、アライアンスやM&Aを通じて隣接分野・市場への進出を目指します。事業領域の拡大を目指す上では、「国土強靭化基本計画・5か年加速化対策」に基づき、集中豪雨等の観測体制の強化・予測精度の向上など、流域治水対策やインフラ施設等の老朽化対策に対してICT/IoTを活用します。ロボット、ドローン技術の活用、スマートデバイスを通じた避難に関する情報等の提供、収集、伝達の高度化に取り組み、DXビジネスの推進を通じたインフラメンテナンス事業への進出や、ICT/IoTを活用した情報サービス事業の確立を図ります。また、グループ会社、パートナー企業との連携も強化しながら、業務プロセスの各作業のデジタル化を通じて効率化を図り、効果的な事業拡大と収益力の強化に注力していきます。※ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)

・ICT・メカトロニクス

ICT事業分野では、次世代スマートメータ用通信機製品やIoT環境モニタリングシステムの開発により新レイヤー・新領域での事業拡大を図ります。メカトロニクス事業分野では、スマートファクトリー事業化の推進および顧客の深掘りによる新領域案件の獲得を目指します。コンポーネント事業分野では、海外顧客の開拓など海外展開の加速によりグローバルシェアの拡大に向けた基盤固めに注力します。

収益力の強化に向けては、高収益事業領域へのリソース配分、新レイヤーへの挑戦、自主開発製品比率の向上の3つの方針を掲げ、事業ポートフォリオ改革を推進しています。新基幹システムの導入を通じた業務の効率化や、生産拠点全体のDX化、省人化、さらにはサプライチェーンやロジスティクス改革の推進にも取り組んで、コスト構造改革を通じた利益の創出と、生産設備の高度化による生産性の向上を目指します。

・医用機器

医用機器事業では、ニーズオリエンテッドな独自商品開発に挑戦し、マーケティング力の強化を通じて、成長性・収益性の両立する企業体質を構築します。成長戦略事業分野として、携帯型超音波診断分野ではハンディエコーのバリエーション拡大など独自商品の開発力向上や自主企画品による事業展開に注力しているほか、予防・予後・医用システム分野では、要介護者などの見守りシステムの高機能化など、デジタル医療ビジネスの事業拡大を図ります。さらに、基盤事業分野である医用分析装置事業では、積極的なODMを推進し、高付加価値製品を継続的に提供することで事業機会の創出に注力します。

 

・5G/LTEへの取り組み

国内では、IoT基盤を用いたデータ活用ビジネス拡大が著しく、ローカル5Gの活用も大きく期待されています。日本無線㈱長野事業所のローカル5G無線局を活用した実験検証や、顧客との共同研究、現場での実証実験で得たノウハウをも活用し、強みであるインフラ無線技術を活かして高い顧客価値を創出するトータルソリューションの提供でさらなる事業拡大を図ります。

海外では、主にパブリックセーフティ領域で、欧米を中心にプライベートLTEを展開しており、今後はその拡大に努めると同時に、将来的な5Gへの事業発展を睨んで海外拠点等を活用した顧客増大施策を展開します。顧客ニーズに応じたLTE-Boxや高品質映像通話アプリケーションなど、高度化された最適ソリューションの提供で、さらなるビジネス拡大を図ります。

 

②マイクロデバイス事業

日清紡マイクロデバイス㈱では、「競争優位な電子デバイス事業の推進」と「マイクロ波事業の拡大と利益創出」をテーマに、既存のベースビジネスを強化しながら、より高付加価値な信号処理製品や電源モジュール製品の展開を図ります。また、アナログ半導体およびマイコン等のハードと、それらを制御するためのソフトやAI等、両方の質を高めて顧客提供価値を追求することで、新しいアナログソリューションを提供していきます。

・統合シナジー

2022年1月に、旧・新日本無線㈱と旧・リコー電子デバイス㈱の2社を統合しました。統合初年度からクロスセルによる顧客開拓が順調に進んでいます。また開発面でも、双方の強い技術を持ち寄り、効率的な開発フローを構築して新しい顧客価値を提供する製品が順次開発されています。相互の生産拠点での交流を通じて、カイゼン事例を共有・実施することで、生産面からも業績貢献につながる効果が創出されました。また「品質のNISD」ブランドの定義を全社で共有し、これまで両社が持っていた品質ノウハウを融合した品質教育・QMS・顧客サポート等の体制構築を進めています。

・2023年の半導体市況見通し

2023年は半導体市況全体の減速が予想されています。当事業の電子デバイス製品の多数を占めるアナログ半導体は、比較的堅調な見通しではあるものの、需要の変化を見越した対応を講じるとともに、これまで生産が追いつかずに積み上がった、納期遅れ受注残の解消と新規拡販、売価適正化等の施策に取り組みます。

・電子デバイス製品

電子デバイス製品では、SP(Signal Processing:信号処理)とEM(Energy Management:電源制御)に注力していきます。SPはオペアンプおよびIoTなどで市場が拡大するセンサ製品群を含む信号処理系ICで、マイクロ波センサとの融合も図りつつ、これまでの単体ICの提供からモジュール、さらにはソリューションの提供を目指します。EMはあらゆるデバイスに必要で、低消費化、高精度化などの要求が高まる電源制御系ICで、PMIC、IPMといった高付加価値な電源モジュール製品の展開を目指します。車載向け、産業機器向け、民生向けといった幅広い市場をターゲットとし、車載および産業機器向けでは顧客志向で高機能なASIC/ASSP製品の企画・開発を強化するとともに、民生向けではタッチレスセンサなど、コロナ禍での社会変化に即した製品を提供していきます。また新たに電子聴診器などの医療分野にも市場を広げ、製品の企画・開発を加速します。そして、これら4市場向けの製品をバランスよく拡大することで、安定的な事業ポートフォリオを確立します。

収益性の向上に向けて、生産面で外注委託コストの低減を図ります。ウエハプロセス(前工程)は、やしろ事業所(兵庫県)で0.18umCDMOSの微細化・高耐圧プロセスを量産化し、今後の高付加価値製品の内製化を進めます。アセンブリプロセス(後工程)は、佐賀県とタイの生産子会社でテストとアセンブリの内製化を進め、同時に、安価な海外OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)の活用拡大を図ります。また、確定受注生産の運用で生販整合体制を強化し、棚卸資産の圧縮と効率的な生産管理体制の運用を行います。

 

・マイクロ波製品

電子管・レーダーコンポーネントでは、生産効率化で利益率の改善を図ります。また、需要が旺盛な電子銃の増産体制を構築し、売上増に努めます。衛星通信用コンポーネントでは、好調なVSAT(小型地球局)向け製品(送信機・受信機)の安定生産に努めます。また、既存製品のモデルチェンジと高付加価値が期待できる基地局向けの高出力送信機の開発や新規市場開拓を進めます。

マイクロ波センサでは、ミリ波帯(60GHz)製品の販売を開始します。また、電子デバイスでのパッケージ技術との融合や、他のセンサと組み合わせた複合センサ技術、信号から必要な情報を抽出し低消費電力化を図る制御・信号処理技術など、IoTに対応した使いやすいセンサ開発を加速し、センサを用いたシステムの設計・開発に対応した技術力も高めることで、顧客からの幅広い要求に対応していきます。

部材調達は、一部改善の兆しはあるものの、依然不安定な供給状態が続いています。さらなる調達難が予測されるものもあり、市場動向を見据えた部材調達戦略で部品調達力を高め、安定生産につなげます。また、タイ子会社での生産拡大で価格競争力を強化し、拡販につなげます。

・サステナビリティへの取り組み:環境とD&I

当社グループの中期環境目標に合わせ、マイクロデバイス事業では2030年までにGHG排出量の3万8千トン削減を目標に掲げました。また統合初年度は相互の人材交流を積極的に図ったほか、川越事業所では近隣に「NISD農園」を開設し、障がいを持つ人財が働きやすい就労環境を整え障がい者雇用を促進しました。

 

③ブレーキ事業

・市場環境と事業戦略

グローバルの自動車生産は、いまだにコロナ前の水準には戻っていませんが、2022年下半期より、車載半導体不足に改善の兆候が一部地域で見られ、今後は自動車メーカーの操業も徐々に正常化へ向かうことが予想されます。景気後退等を要因に自動車需要そのものの低下も懸念されますが、当事業では国内や米国、中国で新たに受注した銅フリー摩擦材の立ち上げ等を通じて、売上のさらなる伸長を見込みます。

銅フリー摩擦材の拡販に向けて、グローバルでの生産体制を最適化し、実際の受注状況を見極めながら設備投資を実行していきます。先進国を中心に労働力がひっ迫することを見据え、自動化・省力化関連投資も積極的に進めます。

中国の3つの子会社のうち2つの子会社については、環境規制の強化に伴う操業制限リスクへの対応や事業運営の効率化を目的に統合を決定し、今後、機能や設備移管等を通じた合理化を推し進めます。

一方で、TMDグループが事業を展開するアフターマーケット事業は、引き続き戦略的な生産体制の強化を進めます。これまで事業再生計画を進めてきた組み付け製品事業では、2022年にフランス工場・レバークーゼン工場での生産が終了し、他工場への製品移管などの生産統合が進みました。今後もルーマニア工場の積極活用などを通じて最適地生産を進め、さらなるコスト競争力の強化を進めます。

原料費・光熱費の高騰が利益の下押し要因となっていますが、日清紡ブレーキ㈱、TMDグループともに引き続き顧客との粘り強い交渉を通じて、コスト上昇分の販売価格への転嫁を進めていきます。

 

・電動化や自動運転の普及に向けて

電動化や自動運転に関連した次世代車両や新たなブレーキの企画が完成車メーカー各社において進捗しています。HEV、BEVなどの電動車では制動時に電気駆動システムを活用したエネルギー回収(回生ブレーキ)が行われ、従来の機械式ブレーキによる摩擦材の摩耗が減少し、長期的には補給部品の需要減少が想定されます。一方で、新車組み付け部品は長期間の使用に耐える耐久性や電子的に制御される回生ブレーキとの協調による安定した制動力の実現と、さらに車両静粛性の高まりへの対応として、制動時のノイズ・振動抑制に優れる高品質な製品が求められています。当社では、今後の自動車の使われ方による摩擦材への要求の変化を見据え、電子制御ブレーキと親和性の高い製品の研究開発に注力しています。

製品開発では、シミュレーションやデジタル化のさらなる進化と、AIを活用したデータ駆動型研究開発という新たなPDCAサイクルを開発に取り入れることで、製品の性能向上や効率化を図っています。その実現を支えるために、データサイエンティストを頂点とするデジタル人財を育成する教育プログラムをスタートしました。

加えて2050年までのCO2排出量ゼロに向けて、独自の目標も策定しながら材質および製造工程の研究・開発にも取り組んでいます。また、日清紡グループ内で連携しながら、車両の安全、自律運転を見据えた足廻りのセンシングに関する研究も推進しています。

・カイゼン活動、競争力強化活動

グローバルで取り組むカイゼン活動は経営の基盤です。各拠点の地域特性やレベルに合わせて推進する従来の活動に加え、昨今ではDXへの取り組みもカイゼン活動と一体化させながら推進しています。製造工程の自動化・省力化、ICT・IoT技術を活用した効率的な生産管理、設備稼働状況の可視化や設備の予兆保全、さらにはAIカメラを活用した品質管理に取り組み、採算性の向上や製品品質の向上に成果を上げています。定期的なカイゼン活動発表会を通じて各拠点の得た知見を共有するなど、全社的にカイゼン文化が醸成されています。

・サステナビリティへの取り組み事例:銅フリーブレーキ摩擦材

環境規制の強化が進む米国では、2025年以降、銅含有量0.5%以上の摩擦材製品の販売および新車への組み付けが禁止されます。日清紡ブレーキ㈱が早くから開発を進めてきた銅フリー(銅含有量0.5%未満)摩擦材は、自動車メーカーからの評価も高く、新規受注増で市場シェアを伸ばしています。

 

④精密機器事業

・事業/製品の見極めと見切り

日清紡メカトロニクス㈱の成形品事業および南部化成㈱は、グローバルでの各種需要を効率的に取り込み、収益拡大につなげていくために、生産体制の最適化を図っています。成形品事業部では、原価管理の徹底により不採算製品の抽出と原価低減活動を強化しており、顧客への適正な価格提案へとつなげ収益力の改善を進めています。

南部化成グループでは、不採算事業の解消を目的に、インドネシア子会社について、現地法に定める独自の法的債務整理手続きを申し立て、2021年に生産を終了し、会社清算に向けた手続きを進めています。南部化成の中国・広州の子会社についても、2022年3月に生産を終了し、同年12月に会社清算手続きが完了しました。

南部化成グループでは、継続して不採算事業の見極めと見切りを実施することで、経営資源を付加価値の高い事業へと振り向け、収益性のさらなる向上へつなげていきます。

・自動車向けEBS用バルブブロック事業の拡大

日清紡メカトロニクス㈱ではドイツの自動車部品メーカー大手のコンチネンタル社と2015年に中国江蘇省・揚州で日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司を設立し、EBS用バルブブロックの生産・販売数を順調に増加させてきました。2022年9月にはインドのグルグラムで新たに合弁企業を設立し、自動車向けEBS用バルブロックの生産拡大を図ります。経済成長著しいインドでは、自動車ならびに自動二輪車の生産台数が拡大しており、EBSの需要拡大が見込まれることから、コンチネンタル社とのパートナーシップを通じて、同事業の発展に向け活動していきます

 

・新製品開発と上市の加速

「新製品開発と上市の加速」は重点取り組みテーマです。

モビリティ領域に関しては、射出成形技術、エレクトロニクス技術をベースにIMPC®(In-Mold Printed Circuit:立体配線成形技術)を合わせた配線機能一体型成形品等の開発を加速していきます。

ライフ&ヘルスケア領域では、医療分野において、優れた生体適合性等を備えたスーパーエンプラ樹脂を用いた新製品をはじめ、予防・予後・再生医療に貢献する製品の開発・上市を進めていきます。家電・住設分野では、快適な居住空間や省エネに向けた空調機器用ファンや高気密・高断熱窓枠等の開発に取り組んでいきます。

インフラストラクチャー&セーフティー領域に関しては、再生可能エネルギーや社会インフラの整備等、持続可能な社会に向けた製品開発を進め、新たな事業創出に取り組みます。

・サステナビリティへの取り組み事例

サステナブルな社会を実現するために企業活動を通じて社会課題を解決すべく、精密機器事業ではマテリアリティの特定および重点取組み項目の策定を通じ、SDGsの理解・浸透に向けた社員への啓蒙活動を推進しており、また環境目標KPIの達成に向けた持続可能製品の売上比率の拡大、GHG排出量削減等、各種活動を進めています。

 

⑤化学品事業

・燃料電池セパレータの生産能力増強と開発加速

グローバルでカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速する中、さまざまな用途を視野に、燃料電池の実証実験が拡大しています。当社への引き合いも引き続き旺盛に推移し、複数の有力メーカーと車載用等の燃料電池カーボンセパレータの開発を進めています。2022年に決定した工場増設と新ラインの設置は計画通り進捗しており、2023年から本格的に建屋の建設と設備の導入に向けた準備を開始します。車載用の商業化と来る需要拡大期に向けて、生産工程の自動化や次世代製品の開発に注力しながら、大量生産体制の構築とコスト削減に注力していきます。

・環境課題解決に寄与する機能化学品:カルボジライト製品

マイクロプラスチックによる海洋汚染や地球温暖化、揮発性有機化学物質(VOC)による大気汚染等の環境課題を前に、グローバルで環境意識が高まっています。環境課題解決に資する生分解性プラスチックの普及や塗料・コーティング剤の水性化、電子材料の高性能化に欠かせない素材として、カルボジライト製品の需要は拡大しており、現在、環境配慮型製品をターゲットに製品開発と販路拡大を強化しています。特に環境・エネルギー市場の成長が著しいカルボジライトの未開拓地域で、水性および粉状カルボジライトの販売を加速していきます。

国内および欧米諸国では、カルボジライトの性能に対する要望が高度化しており、これらのニーズに応える高付加価値製品を開発し、未開拓市場を含め、積極的に市場投入を図ることで販路の拡大につなげます。

・断熱製品の差別化・高付加価値化に向けて

断熱製品では、中核製品である土木原液と硬質ブロックの維持拡大と、難燃性能の高い製品の市場投入を通じて事業拡大に取り組んでいます。また、次世代エネルギーの普及に伴い、サプライチェーンにおける運搬貯蔵設備用の高性能断熱材の開発を進めています。

防振分野では、軌道保守メンテナンス周期の延伸を可能にする製品の受注拡大とともに、海外大型物件の受注を視野に入れた取り組みを行います。

水処理分野では、アジア各国において、日本ブランドと高い技術開発力を武器に差別化戦略を推進すると同時に、国内では市場ニーズに適合した新製品開発で、新規に民間排水分野での受注と浄化槽市場への展開を図ります。

加えて、新たな高付加価値製品の提供に向けて、インフラ構造物の安全対策に資する製品の展開を進めるなど、断熱にこだわらない新規開発品による事業領域の拡大を図ります。

 

・長期的な成長が見込めるガラス状カーボン製品

ガラス状カーボン製品の主要用途である半導体市場は、今後も市況の増減はあるものの、CASEやメタバースの浸透により、長期的な成長が期待されます。米中経済摩擦をきっかけとしたサプライチェーンの混乱、その後の半導体不足回復を目的とした増設投資もあり、製造装置市場も成長が期待できます。特に設備投資を牽引している先端半導体セグメントに注力し、高度化する材料への要求に応え、微細化プロセスの量産を支えるキーマテリアルを提供することで、事業の成長を目指します。

・サステナビリティへの取り組み事例

化学品事業では、カーボンニュートラルを実現する技術として注目を集める燃料電池向けにセパレータを供給しているほか、生分解性樹脂や水性塗料の利用促進が求められる中で、それらの機能を向上させる機能化学品「カルボジライト」を製造しており、様々な製品で環境問題に対するソリューションを提供しています。

 

⑥繊維事業

・事業収益力の再構築

繊維事業では、「サステナビリティ戦略の推進による利益体質の再構築」をスローガンに、環境・健康・快適を軸に開発した高機能性商品の展開を加速させます。省電力に貢献し売り上げを伸ばしているノーアイロンシャツ「アポロコットシャツ」のさらなる進化や、「防汚・冷感」等の新たな機能を付与した付加価値商品の開発・拡販を通じて、市場シェアの拡大と収益力の強化に注力します。また、原価管理の徹底と原材料や製造工程の抜本的見直しによる原価低減に取り組み、在庫削減も進めることでキャッシュ・フローの改善を図ります。

・市場変化に対応した事業変革

東京シャツ㈱では2021年以降、店舗集約による経費削減を進めてきましたが、今後は地域性を考慮したスクラップアンドビルドによる店舗の再編と店舗当たりの売上増加施策の強化を進めます。ECと連動した店舗サービスを拡充させ、EC・OMOを事業基盤とするビジネスモデルへと転換していきます。

オイコス事業では、オイコスの生分解性の特徴を活かし、農業用資材用途として育苗ポットやマルチシートを開発しています。環境優位性を訴求しながら新規販路を開拓すると同時に、落綿・再用綿(工程内リサイクル)の使用や検反の省人化を通じたコストダウンで構造改革を進めます。

・サーキュラーエコノミー型事業への挑戦

「環境」「健康」領域でのサステナブルな事業展開として、テキスタイルとケミカル技術を融合させたサーキュラーエコノミー型事業の実現に挑戦しています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の先導研究プログラムに採択された「シャツ再生プロジェクト」では、廃棄されるシャツから再生セルロース繊維をつくる資源循環システムの確立を目指します。「セルロースナノファイバー活用プロジェクト」では、製造工程で発生する綿繊維廃棄物をナノファイバー化し、繊維加工技術と組み合わせて独自の機能加工剤の開発を目指します。生分解性を持ったスクラブ材や、綿製品に抗菌剤等を固定化する石油由来バインダーの代替など、今後も「環境」「健康」に貢献できる用途の開発を進めていきます。

・サステナビリティへの取り組み:地球環境問題への対応

繊維事業では、2021年のニカワテキスタイルの石炭自家発電設備の停止(買電へ切り替え)、2022年のインドネシア3拠点での地熱発電へ切り替えで、2022年のGHG排出量を2014年度比65%削減したほか、水使用に関しても、日清紡インドネシアと国内事業所で生産排水の再利用を通じた使用量の削減に取り組んでいます。

 

 

⑦不動産事業

2023年は、土地やオフィスビル・商業施設用建物の賃貸による安定した賃貸事業と、土地販売などの分譲事業の継続により、前年に引き続き高収益を確保する見込みです。

当事業は、全社での経営計画達成に向けた資金創出を担う役割を継続しつつ、今後も長期安定的な賃料の確保と分譲事業の収益力の向上を目指し、グループ全体の不動産のさらなる有効活用や物件の組み換えを推進します。以下のプロジェクトを中心に、今後も継続的、安定的な収益の確保を見込んでいます。

浜松工場跡地(静岡)の商業施設用地の販売は、1回目の引渡しが2022年に完了し、2回目の引渡しを2023年に予定しています。

美合事業所跡地(愛知)の再開発は、引き続き全357区画の戸建て用地の販売を実施します。

西新井社宅(東京)の賃貸マンション建て替え事業は、第1期(50戸)が竣工し賃貸を開始しており、第2期(149戸)は2024年より賃貸を開始する計画です。

能登川工場跡地(滋賀県)は、129戸のマンションの建築を開始しており、2023年の販売を予定しています。

日本無線㈱清風寮跡地(東京)においても賃貸マンション(50戸)の建築計画を進めています。2022年より開発、建築工事に着手し、2024年より賃貸を開始する計画です。

また、日清紡都市開発㈱が所有する芝浦日新ビル跡地(東京)においても、大手住宅メーカーとの共同事業で賃貸マンション(115戸)の建築計画を進めています。

 

 

(3) ESG、SDGsの取組み

当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、グループ経営、グローバル経営の深化を図り、多様性の中での団結を進め企業価値の向上を目指しています。これはSDGsの考え方と軌を一にするものです。

(日清紡ホールディングス統合報告書https://www.nisshinbo.co.jp/ir/library/annual_report.html

 


 


 

当社グループの事業が社会とともに持続的に成長するために取り組むべき課題を明確にすることを目的として、マテリアリティ(重要課題)を次の通り特定しています。

〇環境・エネルギー分野の貢献

〇安心・安全な社会づくり

〇グローバル・コンプライアンス

当社グループでは、企業価値の向上を目指し、2008年度よりCSR計画を策定しCSR推進活動を展開、活動をより確実に推進するため、2016年11月からKPI活動に取り組んできました。2022年度からは「CSR計画」を「サステナビリティ推進計画」と呼称を改めるとともに、サステナビリティの実現に向けて引き続き活動を推進しています。

2022年度からの第5期サステナビリティ推進計画は、前期計画で設定した目標20項目の達成度や実績の評価をもとに、内容やKPI目標の見直しを行いました。社会に貢献し、社会とともに成長していくために、グループ一丸となってサステナビリティ推進活動に取り組んでいます。

 

マテリアリティに基づく活動内容は以下のとおりです。なお、詳細な活動内容および目標の達成状況につきましては、当社グループの統合報告書およびホームページにて積極的な開示に努めています。

(日清紡ホールディングスHP https://www.nisshinbo.co.jp/index.html


 

 

(4) 気候変動への取り組み

気候変動は、国・地域を超えて地球規模の課題であり、温室効果ガスの削減は世界共通の長期目標となっています。当社グループでは、気候変動による事業機会の取り込みおよびリスクへの適切な対応を行うことが重要と考え、2021年度より、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた気候変動シナリオ分析を開始しました。気候変動が将来、当社グループに及ぼすリスクや機会を特定し、事業戦略の策定に活かすことで、より柔軟で堅牢な戦略を立案し、将来のリスクに対するレジリエンスを高めていきます。また、2022年6月にTCFD提言への賛同を表明しました。

TCFD推奨4項目への取り組みと2022年度の進展状況は次の通りです。

・ガバナンス

当社グループでは、全社ガバナンス体制の中で、気候変動に関するリスク・機会に適切に対応するため、ガバナンス体制を整備し運営しています。気候関連課題の責任は社長、執行役員で構成される経営戦略会議などの会議体が負い、取締役会に報告を行っており、取締役会では報告された気候関連課題への対応について議論するとともに、目標とその進捗状況を監督しています。

・戦略

当社グループは事業が多岐にわたるため、2021年度にリスク・機会のインパクトが大きいと想定される無線・通信事業におけるソリューション事業、ブレーキ事業、化学品事業を、2022年度に無線・通信事業におけるマリンシステム事業、ICT・メカトロニクス事業、モビリティ事業、マイクロデバイス事業、精密機器事業、繊維事業を対象に、気候変動シナリオ分析を実施しました。使用した気候変動シナリオは、温暖化が進行する世界(温暖化進行シナリオ、2.6~4℃シナリオ)と、温暖化が抑制され積極的な移行が進む世界(脱炭素シナリオ、1.5℃~2℃シナリオ)という二つです。

対象とした事業それぞれについて、重要なリスクと機会を洗い出しました。気候変動の影響は中長期的に顕在化する可能性を有することから、短期のみならず、2050年までの中長期の時間軸で分析を行いました。その結果、2021年度に分析を行った3事業及び全事業共通の対応策の定義は次の通りです。

◎全事業部共通

GHG排出に係るリスクを最小化すべく、GHG排出削減や省エネによる炭素税回避とエネルギーコストの削減に取り組みます。

◎無線・通信事業におけるソリューション事業

自然災害の頻発により、洪水リスクが増加することから、防災製品・サービスの需要の増加が見込まれるため、需要増を確実に取り込んでいきます。

◎ブレーキ

自動車需要の高まりにより、ブレーキ用摩擦材の需要拡大が期待される一方で、EV比率の高まりにより、ブレーキの補修需要が減少する可能性もあり、脱炭素化に伴う変化・規制に対応した製品・サービスの提供に取り組みます。

◎化学品

架橋剤、建材用断熱材、燃料電池セパレータの需要増が期待され、それらの需要増を確実に取り込んでいきます。洪水リスクの増加に対応し、被害防止・緩和に向けた取り組みを推進します。

なお、2022年度にシナリオ分析を行った事業については、最終結果を分析中です。

・リスク管理

当社グループが留意すべき気候変動に関するリスク・機会については、「リスクマネジメント規定」に基づいて、一義的には各事業においてリスクの把握、分析と評価を実施しています。各事業の責任者が、リスクの優先順位を決め、事業へのインパクトの大きさと将来のシナリオを想定します。その情報を経営戦略センターで総合・マッピングし、経営戦略会議や取締役会で審議しています。

・指標と目標

当社グループでは、気候変動関連の事業機会の取り込みとリスクの低減を目指しています。気候関連リスクを低減するため、2050年までのカーボンニュートラルを目指し、省エネルギー活動やPFC(パーフルオロカーボン)※排出量の削減などの気候変動対策を積極的に推進しています。※PFC(パーフルオロカーボン):半導体製造工程におけるドライエッチング等で使用されるフッ素系温室効果ガス

2024年目標(第5期3カ年環境目標)

温室効果ガス排出量を2014年度比で35%以上削減

2030年目標(中期環境目標)

温室効果ガス排出量を2014年度比で50%以上削減

2050年目標(長期環境目標)

カーボンニュートラルを目指す

 

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

 (リスクマネジメント体制)

当社グループは、事業遂行上の経営リスクに対し適切に対応し経営リスク発生時の損失をミニマイズするために、下図のようにリスクマネジメント体制を定め運営しています。また、経営リスクを持続的成長のための「機会」とするべくさまざまな事業環境の変化を定常的に把握・分析し、グループ企業理念から導かれた事業方針のもと、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして社会に貢献することで、新たな成長「機会」を創出していきます。


 

 ●リスク 〇機会

 

リスク・機会の内容

対応

気候変動

・異常気象に起因する大規模災害などによるサプライチェーンへの影響

・炭素税導入などによるCO2排出コストの発生

・CO2排出量削減コストの発生

・各国のSOx/NOx規制強化への対応コスト発生

・温室効果ガス規制強化による事業活動への影響

・大規模災害の発生を想定し事業継続計画(BCP)を策定、実施訓練により中断リスクへの対応力を強化

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた気候変動シナリオ分析の実施

・CO2排出量の低減措置の推進

・SOx/NOx除去装置の導入推進

・2030年までに「持続可能な社会に貢献する製品」の売上高構成比を70%に

・水素社会の進展により燃料電池車の需要増

・バイオマス燃料の輸送需要増による輸送船の新造数増加

・増加する風水害に対応し、防災・減災のためのソリューションを提供するビジネスが拡大

・燃料電池用部材の技術開発力向上

・バイオマス燃料輸送船の新造需要に対応し、船舶用無線通信機器の製販能力を増強

・国内で培った水/河川管理システムや気象レーダなどの防災、減災ビジネスを海外へ展開

地政学的リスク

・地政学上のリスクが事業に与える影響

・カントリーリスクなどを考慮し、国/地域別の適切な投資レベルを決定

 

 

 

リスク・機会の内容

対応

製品市場・為替相場・原材料価格の変動など  

・景気変動による製品市場の需給バランスの変化

・原材料価格の乱高下が業績に与える影響

・為替変動が業績に与える影響

・製品/サービスに対する各国法規制の変更や制度改革などの影響

・属性の異なる多様な事業展開により、急激な外部環境の変化による業績への影響を軽減

・複数のサプライヤーとの信頼関係構築

・為替予約などにより為替変動リスクのミニマイズ化

・各国・地域の事業拠点によるリスク情報収集と経営層へのフィードバック

感染症

・新型コロナウイルスのような未知の感染症のパンデミックによる業績への影響

・緊急事態対策チームを組成、情報の集約と発信により適切な経営判断をサポート

・メディカル関連事業における貢献により新たな価値創出

グループ経営

・事業が多角化され管理が困難

・事業間で重複する機能が多い

・社会課題の変化に応じ事業ポートフォリオを変革、キャッシュ・フローを改善

・グループを横断する組織再編やアウトソーシングなどにより効率化を推進

・グループ会社の管理部門をHDが統括、財務面の規律確立とともにグループ求心力を維持

・事業/組織の融合により、イノベーションや環境変化に対するレジリエンスなど多様性の有する強みを創出

M&A /大型投資

・M&Aあるいは大型投資計画の失敗

・M&A案件ごとにプロジェクトチームを組成し、PMI活動を強化。取締役会で投資効果を検証しつつ社内に知見を蓄積

・設備投資は予算承認と実行承認を分離、経営環境の変化に応じた実行でリスクヘッジ

・新たな経営資源の活用による持続的な成長機会の獲得

人財

・優秀な人財の採用と確保が困難になる

・RPAやIoTなどの活用により自動化、省力化推進

・企業認知度・好感度向上のための戦略的広報活動

・産学共同研究への人財/資金両面における寄与

・地域密着型の採用活動

・若年層に広まるESG志向と当社の企業理念は方向性一致、人財獲得の機会拡大

急速な技術革新

・技術革新による既存市場の急激な変化

・技術開発あるいは製品開発プランの進捗遅延による競争力低下

・経営陣が研究開発案件を定期的に検証し、継続/中止を適時判断

・多様な事業リソースの組み合わせによる革新的な技術開発、成長機会の獲得

・事業を横断した柔軟な人材配置による組織組成

・2020年4月、HDに「デジタルビジネス推進室」を設置、先端技術開発を推進

・他社やスタートアップ企業との協業

人権問題

・ハラスメントをはじめとする人権問題の発生による労働環境の悪化

・HDに人権啓発グループを設置、グループ全体で人権意識のレベル維持向上を図っている

経営管理

・ガバナンスの形骸化

・2006年社外取締役制導入、2009年HD化、2017年顧問/相談役制度廃止など、先んじた取り組みにより経営の透明性と果敢なリスクテイクの高次元での両立を図る

・攻守の調和したガバナンスによるリスクテイク

 

 

 

リスク・機会の内容

対応

品質問題

・製品やサービスの品質問題や欠陥などによる信頼の低下、損害賠償請求やリコール発生

・リスクマネジメントシステムを活用し、リスクの発生確率と影響度をミニマイズ

・HDに品質保証グループを設置、グループ会社の品質保証や製品安全活動の状況を包括的に管理

情報セキュリティ

・個人情報や顧客情報、営業秘密の漏えい

・サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏えいなどの被害等が発生した場合による事業への影響

・継続的な教育と運営状況の内部監査を毎年実施

・サイバーセキュリティ対策においては、多層防御を行いつつ、必要な対策を実施

コンプライアンス

・贈収賄、競争法違反をはじめとして法令違反や社会規範を逸脱した企業行動による信頼低下と企業価値の毀損

・HD社長から「正しく儲ける」ことの重要性を発信

・コンプライアンス教育を継続的に実施

・不正行為は厳罰をもって処分

・法曹界出身の社外取締役を招聘

不正/不法行為

・粉飾や不正経理操作など

・内部統制制度と倫理通報制度の両輪の運用により不正行為を防止

・定期的なローテーションによる不正行為の防止

労働災害

・グローバルに従業員の労働安全衛生管理が実現できないことによる事業への影響

・HDとグループ会社とが連携し、国内事業で培った労働安全衛生管理の手法をグローバルに展開

レピュテーション

・マスコミの誤報や風説の流布、ネット上の風説による事業への影響

・投資家のダイベストメントの対象に浮上

・リスクマネジメントの対象に位置付け定常的に監視

・主要なESG投資家やESGインデックスリサーチ会社と継続的に情報交換、動向を把握

政策保有株式/遊休不動産

・時価の変動リスク

・政策保有株式は、コーポレートガバナンス・ポリシーに基づき継続的に縮減

・不動産は再開発により価値向上

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営成績

当社グループは、収益認識に関する会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しています。そのため、会計基準変更による業績への影響を除いた前年同期比較情報を参考値として次のとおり表示します。

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

2022年12月期通期

516,085

15,435

20,397

19,740

2021年12月期通期
組替後(※)

483,853

20,557

24,715

24,173

増減

32,232

△5,122

△4,318

△4,433

増減率(%)

6.7

△24.9

△17.5

△18.3

 

(※)2021年12月期通期組替後は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を2021年12月期の期首から適用したと仮定して簡易的な方法により組み替えた2021年12月期通期の推定値です。

 

当連結会計年度の当社グループの売上高は、マイクロデバイス事業、ブレーキ事業および精密機器事業が増収となったこと等により516,085百万円(組替後前年同期比32,232百万円増、6.7%増)となりました。

営業利益は、マイクロデバイス事業は大幅な増益となりましたが、無線・通信事業やブレーキ事業等が減益となったこと等により15,435百万円(組替後前年同期比5,122百万円減、24.9%減)となりました。

経常利益は、営業利益減等により20,397百万円(組替後前年同期比4,318百万円減、17.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益も19,740百万円(組替後前年同期比4,433百万円減、18.3%減)となりました。

事業セグメントの業績は下記のとおりです。セグメント利益またはセグメント損失は営業利益または営業損失ベースの数値です。

 

(無線・通信事業)

ソリューション・特機事業は、飛行場の管制シミュレータや無線電話装置等の航空・気象システムは増加したものの、道路情報システムや水・河川情報システムの大型案件が電子部品需給ひっ迫の影響を受け減少したことにより減収・減益となりました。

マリンシステム事業は、好調な海運市況に支えられた新造船用機器や欧州ワークボート等の中小型船用機器が好調に推移したことに加え、漁業用陸上無線設備等のシステムが増加したことにより増収・増益となりました。

ICT・メカトロニクス事業は、決済端末等のICT製品の需要は減少したものの、海外向け事務機器の需要が増加したことにより売上・利益ともに前年同期並みとなりました。

モビリティ事業は、海外業務用無線は堅調に推移したものの、顧客の生産調整の影響を受け自動車用ITS(高度道路交通システム)が減少したことにより減収・減益となりました。

その結果、無線・通信事業全体では、売上高150,392百万円(組替後前年同期比1.8%減)、セグメント利益4,821百万円(組替後前年同期比34.1%減)となりました。

 

(マイクロデバイス事業)

主力の電子デバイス事業は、スマートフォンやPC用の民生製品(コンシューマ製品)は減速したものの、EV用の電源関連やセンサ、半導体製造装置用等の車載・産業機器製品が伸長したことに加え、円安による為替影響により増収・大幅増益となりました。

マイクロ波事業は、船舶用電子管が好調だったことに加え、衛星通信関連製品も韓国・北米向けが堅調に推移したことにより増収・増益となりました。

その結果、マイクロデバイス事業全体では、売上高85,329百万円(組替後前年同期比11.2%増)、セグメント利益8,947百万円(組替後前年同期比113.4%増)となりました。

 

 

(ブレーキ事業)

2022年の自動車販売台数は日本、米国、欧州といった主要な市場で前年を下回りましたが、OE事業を中心とする各拠点は銅レス・銅フリー摩擦材によりシェアを拡大しています。

国内および米国拠点は、シェア拡大により増収となるも原材料やエネルギー価格高騰により減益となりました。日系顧客向け中国拠点は、銅レス・銅フリー摩擦材が順調に立ち上がり増収となるも費用増により減益となりました。同じ中国でも韓国・北米系顧客向け拠点は、顧客の生産回復により増収・黒字化となりました。韓国拠点は、顧客の生産回復により前年同期並みの売上となるも費用増により減益となりました。タイ拠点は、ASEAN市場の自動車生産回復により増収・前年同期並みの利益となりました。

TMD社は、欧州における急激な原材料費の高騰を受けて、アフターマーケット事業、OE事業ともに積極的な価格転嫁を進めることで増収となりましたが、ウクライナ情勢に起因するエネルギー需給ひっ迫に伴う急激なインフレにより大幅な損失拡大となりました。

その結果、ブレーキ事業全体では、売上高153,643百万円(組替後前年同期比11.8%増)、セグメント損失4,664百万円(組替後前年同期比7,637百万円悪化)となりました。

 

(精密機器事業)

精密部品事業は、自動車用EBS部品の受注が好調で増収となりましたが、減価償却費増等により前年同期並みの利益となりました。成形品事業は、国内・タイ・インド拠点において家電関連製品の受注が増加したことや南部化成㈱の不採算事業の整理が進んだこと等により増収・増益となりました。

その結果、精密機器事業全体では、売上高53,655百万円(組替後前年同期比13.3%増)、セグメント利益776百万円(組替後前年同期比16.4%増)となりました。

 

(化学品事業)

エネルギー価格の上昇や原材料の高騰・調達難の影響を受けましたが、断熱製品は冷蔵冷凍設備・住宅用原液および硬質ブロック等の受注増により増収・増益となり、ガラス状カーボン製品も半導体製造装置用の受注増により増収・増益となりました。燃料電池用カーボンセパレータは海外定置用の受注増により増収となりましたが、研究開発費増等により減益となりました。機能化学品は水性架橋剤および電子材料用製品の受注増により増収となりましたが、製品構成の変化により減益となりました。

その結果、化学品事業全体では、売上高12,673百万円(組替後前年同期比13.7%増)、セグメント利益2,181百万円(組替後前年同期比4.9%増)となりました。

 

(繊維事業)

シャツ事業は、人流の回復に伴いアポロコット等の形態安定商品の販売が好調に推移したことで増収・黒字化となりました。東京シャツ㈱は、前年同期並みの売上に止まりましたが経費削減等により損失縮小となりました。ユニフォーム事業は、生地の受注増により増収ながらも原材料費増等により減益となりました。

その結果、繊維事業全体では、売上高38,333百万円(組替後前年同期比16.2%増)、セグメント利益99百万円(組替後前年同期比1,145百万円改善)となりました。

 

(不動産事業)

分譲事業は、静岡県浜松市や愛知県岡崎市の宅地販売を実施しましたが、東京都三鷹市のマンション販売および徳島県北島町や滋賀県東近江市の宅地販売を実施した前年同期との比較では減収・減益となりました。

その結果、不動産事業全体では、売上高11,178百万円(組替後前年同期比28.2%減)、セグメント利益8,719百万円(組替後前年同期比7.1%減)となりました。

 

(その他)

ニッシントーア・岩尾㈱(食品、産業資材等の商社機能)等の事業を、その他として区分しています。

その他の売上高は10,879百万円(組替後前年同期比15.6%増)、セグメント利益は283百万円(組替後前年同期比116.4%増)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

142,097

△1.4%

マイクロデバイス

89,409

+27.3%

ブレーキ

128,583

+18.6%

精密機器

51,360

△3.7%

化学品

8,122

+16.2%

繊維

33,985

+34.2%

その他

472

△9.2%

合計

454,029

+11.1%

 

(注) 1 金額は製造原価により算出しています。

2 不動産事業は生産活動を行っていないため、上記金額には含まれていません。

 

②受注状況

無線・通信事業、マイクロデバイス事業及び精密機器事業のうち、一部の製品において受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、精密機器事業については金額的重要性が乏しいため記載していません。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

152,969

106,103

マイクロデバイス

104,120

56,421

合計

257,090

162,524

 

(注)  「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。当連結会計年度の数値については当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前年同期比増減率は記載していません。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

150,392

マイクロデバイス

85,329

ブレーキ

153,643

精密機器

53,655

化学品

12,673

繊維

38,333

不動産

11,178

その他

10,879

合計

516,085

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が総販売実績の10%未満のため記載を省略しています。

2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。当連結会計年度の数値については当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前年同期比増減率は記載していません。

 

 

(2)財政状態

当連結会計年度末における総資産は616,273百万円となり、前連結会計年度末と比較し11,474百万円増加しました。

棚卸資産の増加26,560百万円、有形固定資産の増加5,354百万円、投資有価証券の減少13,964百万円、退職給付に係る資産の減少4,979百万円等が主な要因です。

当連結会計年度末における負債総額は337,775百万円となり、前連結会計年度末と比較し5,608百万円増加しました。

短期借入金の増加18,290百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の減少3,294百万円、退職給付に係る負債の減少9,589百万円等が主な要因です。

当連結会計年度末における純資産は278,498百万円となり、前連結会計年度末と比較し5,866百万円増加しました。

利益剰余金の増加2,833百万円、自己株式の減少による増加2,712百万円、その他有価証券評価差額金の減少9,111百万円、為替換算調整勘定の増加7,515百万円、退職給付に係る調整累計額の増加1,770百万円等が主な要因です。

以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末と比較して変動がなく42.8%となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は19,585百万円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益25,758百万円、減価償却費25,087百万円、退職給付に係る負債の増減額△4,608百万円、投資有価証券売却損益△7,277百万円、売上債権及び契約資産の増減額6,565百万円、棚卸資産の増減額△23,024百万円、仕入債務の増減額2,506百万円、法人税等の支払額△5,601百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は11,692百万円となりました。これは主として、定期預金の払戻による収入2,462百万円、有形固定資産の取得による支出△22,399百万円、投資有価証券の売却による収入9,241百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は8,888百万円となりました。これは主として、短期借入金の純増減額16,602百万円、長期借入金の返済による支出△7,019百万円、自己株式の取得による支出△10,002百万円、配当金の支払額△5,290百万円、その他△2,685百万円によるものです。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は45,092百万円と前連結会計年度末に比べ2,496百万円増加しました。

 

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移 

 

2018年3月期

2018年12月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

自己資本比率

41.2%

40.1%

38.6%

39.4%

42.8%

42.8%

時価ベースの自己資本比率

35.6%

22.9%

28.2%

21.5%

24.1%

24.8%

債務償還年数

4.6年

10.5年

6.3年

3.5年

3.3年

7.5年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

38.2倍

18.6倍

23.1倍

37.6倍

34.5倍

12.1倍

 

(注)1 自己資本比率:(純資産-新株予約権-非支配株主持分)/総資産

  時価ベ-スの自己資本比率:株式時価総額/総資産

  債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

  インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

  ①各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

  ②株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。

  ③営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロ-計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象にしています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

  2 2018年12月期は、決算期変更に伴い変則的な決算となっています。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

①財務戦略

当社グループは、持続的な企業価値の向上を目指し、重点事業領域での成長投資を積極的に実行しつつ、連結配当性向30%程度を目安に、安定的かつ継続的な株主還元を行うことを財務戦略の基本方針としています。当社グループでは、中長期的な投資とリスクに備え、財務健全性を維持しながら、資本生産性を重視した経営を推進し、ROICを重要な社内管理指標として導入し、投資の効率化(運転資本の圧縮)と固定資産(土地や有価証券)の流動化を進め、自律的な企業成長を目指します。また、株主資本比率については、40%程度に保ち、強固な財務体質の維持に努めます。

 

②資金調達の方針と流動性の分析

当社グループの運転資金や成長投資等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローを財源としていますが、必要に応じて有利子負債を効果的に活用し資本効率の向上を図っています。主に短期的な資金についてはコミットメントライン等の短期銀行借入やコマーシャル・ペーパーによる調達を、設備投資、M&A投資等の長期的な資金については、金融市場動向や長短バランスなどを総合的に勘案し、適宜長期銀行借入を組成しています。

また、当社グループは、ガバナンス強化と資金効率向上を目的として、グループ一体となった資金調達と資金管理を実施しており、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)やグループローンによる資金融通を行ない、グループ内の流動性確保と資本コストの低減に努めています。

なお、 当社グループは、気候変動による事業機会の取り込みおよびリスクへの適切な対応を重要な経営課題の一つと認識しています。当社グループが取り組む環境貢献に資する投資についてわかりやすく整理、訴求し、グリーンボンド等のサステナブル・ファイナンスにも取り組みたいと考えています。

重要な資本的支出の予定及び資金の調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

資金の流動性については、当連結会計年度においても当社は主要銀行とのコミットメントライン契約を同額で維持し、30,000百万円で更改しました。その他、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーも引き続き十分な調達枠を維持しており、必要とされる流動性を確保しています

また、政策保有株式については、コーポレートガバナンス・ポリシーに基づき計画的に縮減していきますが、柔軟且つ機動的な売却の意思決定により、資金の流動性を補完することも可能です。

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。海外子会社については、IFRS(国際財務報告基準)及び米国会計基準に準拠して作成され、現地監査法人の監査を受けた上で必要な調整を反映させています。

 この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

(7)次期の業績見通し

2023年12月期も、主力の無線・通信事業、マイクロデバイス事業を中心に経営資源を重点的に配分し、成長戦略を遂行します。

無線・通信事業では、主軸の公共事業向けソリューション・特機事業は、新基幹システム導入に伴う費用増はあるものの需要は引き続き堅調に推移すると見込んでいます。マリンシステム事業は、強みとする商船分野での収益性向上を図ると同時に、船舶の自動航行支援等のデータビジネスへと領域を拡げていきます。

マイクロデバイス事業では、信号処理ICや電源IC等のアナログ半導体を展開しており、今後は単体ICメーカーからアナログソリューションプロバイダへとさらなる成長・発展を図ります。アナログ半導体は電装化が進む車載用を中心に旺盛な需要が続き、次期も業績は堅調に推移する見込みです。

ブレーキ事業では、環境規制に対応した銅レス・銅フリー摩擦材の受注が引き続き好調です。当連結会計年度に原材料価格やエネルギー価格高騰の影響の強く受けたTMD社も、価格転嫁の効果が明確になってきており、次期は業績回復を見込んでいます。

不動産事業では大型分譲案件の終了等、一定の減収・減益要因を想定していますが、その他の各事業セグメントにおいてもコロナ禍からの業績回復を見込んでいます。

これらのことから、次期の連結業績見通しは、売上高557,000百万円、営業利益24,000百万円、経常利益27,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益18,000百万円となる見込みです。

なお、為替レートは通期平均で1米ドル=130円、1ユーロ=135円を前提としています。

 

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 合弁会社設立に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

契約締結年月

提出会社

PT.WARGA DJAJA TRADING CORP.

(インドネシア)

帝人㈱               (日本)

綿及び合繊混素材を原料とする糸・織物の生産・販売を目的とする合弁会社 PT.NIKAWA TEXTILE INDUSTRY (インドネシア)の設立

2011年3月

CONTINENTAL AG

(ドイツ)

自動車用EBS(電子式ブレーキシステム)、ブレーキ全般(摩擦材・ドラムブレーキ及び大・中型商用車用ブレーキを除く)の研究開発、製造、販売を目的とする合弁会社コンチネンタル・オートモーティブ㈱(旧会社名コンチネンタル・テーベス㈱)の設立

2000年11月

CONTINENTAL AUTOMOTIVE HOLDING CO., LTD.

(中国)

自動車用EBS(電子式ブレーキシステム)の主要部品であるバルブブロックの製造・販売を目的とする合弁会社日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司の設立

2013年11月

CONTINENTAL AUTOMOTIVE HOLDING NETHERLANDS B.V.

(オランダ)

自動車及び自動二輪車用EBS(電子式ブレーキシステム)の主要部品であるバルブブロックの製造・販売を目的とする合弁会社NISSHINBO COMPREHENSIVE
 PRECISION MACHINING(GURGAON) PRIVATE LTD.(インド)の設立

2022年2月

 

 

(2) 技術導入に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

対価

契約締結年月
(有効期間)

日本無線㈱

ULTRA ELECTRONICS FLIGHTLINE SYSTEMS INC.

(米国)

ソノブイ受信機のノウハウ及び製造販売実施権の許諾

売上の一定比率額

1988年12月

(2023年10月まで)

THALES COMMUNICAIONS & SECURITY SAS

(フランス)

電波高度計の製造販売実施権の

許諾

売上の一定比率額

1989年11月

(2024年3月まで)

日清紡マイクロデバイス㈱

TEXAS INSTRUMENTS INC.

(米国)

半導体装置に関する特許権並びに実用新案権の実施許諾

売上の一定比率額

2016年12月

(2026年3月まで)

㈱デンソー

(日本)

半導体装置等に関する特許権並びに技術提供等の実施許諾

一定額及び売上の一定比率額

2012年12月

(2023年12月まで)

ルネサスエレクトロニクス㈱

(日本)

半導体装置に関する特許権並びに実用新案権の実施許諾

一定額及び売上の一定比率額

2022年5月

(2028年3月まで)

 

 

(3) 技術供与に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

対価

契約締結年月
(有効期間)

日清紡
ブレーキ㈱

RANE BRAKE LINING LTD.

(インド)

ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術、原料配合及び製造設備技術情報に関するノウハウの提供

売上金額基準による技術指導料

2022年12月
(2023年12月)

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループでは、“環境・エネルギー”を軸とし、「モビリティ」、「インフラストラクチャー&セーフティー」、「ライフ&ヘルスケア」に関わる3つの分野を戦略的事業領域に定め、これらの分野において高性能・高品質かつ競争力のある製品・技術の開発に力を注いでいます。そのために、グループ横断的な研究開発活動を行っており、無線・通信、マイクロデバイス、ブレーキ、化学品といった、多岐にわたる保有技術を融合してイノベーションを創出し、持続可能な社会へ資する新たなバリューを提供していきます。

当連結会計年度の研究開発費は25,864百万円であり、主な研究開発とその成果は次のとおりです。

 

(1)無線・通信

無線・通信事業では、遠隔操船、自律航行、交通の運航管理等のモビリティの高度化に貢献すること、自然災害に対する防災減災、インフラストラクチャー管理の効率化等の社会の安全と社会基盤の高度化に貢献すること及びライフ&ヘルスケアの高度化に貢献することを目的にAI、IoT、クラウド等を用いた予測、分析、情報サービスに関する技術及びローカル5Gを使用した各種ソリューション技術を中心とした研究開発に注力してきました。

モビリティ分野に関しては、船舶の衝突を回避するための避航ルート生成技術の研究開発を進めています。他の船舶の衝突リスクを事前に知らせる衝突危険領域表示する機能(Safety Zone Viewer)を船舶レーダのオプションとして提供を開始しました。海上情報サービスについてはJ-Marine Cloudが革新的な取り組みとして日本海事協会の「イノベーションエンドースメント」認証を取得しました。今後もサービス内容を充実し運航の安全と効率化に貢献していきます。さらに陸上においては工事現場、農場、倉庫等で使用する作業車両の周囲をミリ波レーダとカメラからの情報からAIで判別することで監視する装置の開発を完了し提供を開始しました。この装置は小型で低消費電力ながら高速信号処理が可能になっています。航空においてはヘリコプターに搭載するテレビ画像伝送用の通信機器を開発しました。

インフラストラクチャー&セーフティー分野に関しては、道路の維持管理の効率化、通信設備のリモート故障診断と故障予測、通信システムの高度化等のインフラストラクチャー関連、及び防災減災、防犯等のセーフティー関連に対するソリューションをAI、センシング、通信等の技術を使用して研究開発を行っています。例えば路面の劣化状況を走行しながらカメラ映像をAIで自動診断する技術、山間部に設置されたテレビ送信機の運用状態や故障情報をセンサーからクラウド経由で把握するシステム、インターフェースの多様化と保守運用性が向上したマイクロ波帯の新型公共業務用多重無線装置、河川の映像から水位と危険状態をAIで判定する技術、水防災向け各種情報を安価かつ低消費電力で伝送できるLPWA(Low Power Wide Area)対応通信機等を開発しました。ローカル5G関係では、有効電波領域が高速道路に沿った範囲に限定する通信サービスシステムを首都高速道路株式会社と共同で開発を行っています。また、スタンドアロン(SA)構成のローカル5Gの無線局を自社の事業所に設置し利用技術とアプリケーションの研究と開発を進めています。

ライフ&ヘルスケア分野に関しては、介護者の負担軽減を目的とした要介護者見守りシステムの開発を完了し提供を開始しました。また、ポータブル超音波診断装置においては画質の鮮鋭化と尿量自動計測等の技術開発を進め、非接触バイタルセンシングでは患者や医療スタッフの負荷を軽減するために技術の高度化を進めています。

当セグメントに係る研究開発費は6,457百万円です。

 

 

(2)マイクロデバイス

マイクロデバイス事業では、電子デバイス製品やマイクロ波製品等の企画、設計から生産技術まで総合的な研究開発を行っています。

モビリティ分野に関しては、先進運転支援システム(ADAS)カメラ用パワーマネージメントICや、高精度測位システムを高感度に実現するGNSS(衛星測位システム)、マルチバンド対応RFフロンドエンドモジュール(FEM)などの量産を開始しました。

インフラストラクチャー&セーフティー分野に関しては、各種センサと信号処理を含んだカスタムセンサモジュール製品の開発を進めています。2022年は感染症対策や衛生面の向上に貢献可能な、ボタンをタッチレス化する光学式反射型センサ「Optton™」シリーズの量産を開始しました。海上やルーラルエリア(非都市圏)等、有線による通信インフラ構築が難しい地域・環境でニーズの高い衛星通信分野では、屋外設置送受信機の高周波化・高出力化を進め、高速化・大容量化といった社会の需要に対応しています。

ライフ&ヘルスケア分野に関しては、オーディオファンに"真実の音"を提供することを目的としたオーディオ専用デバイス「MUSES」シリーズにおいて、オペアンプMUSES05の一般販売を開始し、シリーズ初となる高音質電源ICの開発も進めています。また、マイクロ波・ミリ波センサでは水洗便座用センサユニットの新製品の量産を開始しました。更に介護・見守りやセキュリティ・環境モニタ用途など幅広い用途向けの開発も進めています。

当セグメントに係る研究開発費は8,302百万円です。

 

(3)ブレーキ

ブレーキ事業では、モビリティ分野においてコスト競争力のある差別化商品の提供と技術力の強化を目標に掲げ、自動車用摩擦材の開発に取り組んでいます。

R&D機能では、社会環境の変化とその要請にスピード感のある対応の実行を目的に、より効率的な運営と的確で有効なマネジメントを構想し、組織を適合開発部、ソリューション開発部、サステナブル開発部の3部体制に再編しました。重要保安部品としての高い信頼性を堅持し、銅規制等に対応した環境負荷物質を低減する製品の開発では、①xEV化で静粛性が高まる新世代車への適合における音・振動事象の撲滅、②効きの安定性、③摩耗粉塵の排出を抑制する優れた摩耗特性等、お客様ニーズへの対応に重点をおいて活動しています。開発した材質は、お客様にご好評を頂いており、国内外の数多くの車両プログラムへの適用が決まり、量産化が進捗しています。

開発シーンでは、シミュレーションやデジタル化の更なる進化と、AIを活用したデータ駆動型研究開発という新たなPDCAサイクルを開発に取り入れる事によって、更なる製品の性能向上や効率化を図っています。その実現を支えるためにデータサイエンティストを頂点とするデジタル人財の育成も重視し教育プログラムをスタートしました。加えて、2050年にCO2排出量ゼロに向けて独自の目標を掲げ、材質および製造工程の研究開発への取り組みも開始しています。また、当社グループ内のコラボレーションにより車両の安全、自律運転を見据えた足廻りのセンシングに関する研究を推進しています

当セグメントに係る研究開発費は8,163百万円です。

 

(4)精密機器

精密機器事業では、新製品開発と上市の加速を重点取組みテーマと位置づけ開発活動を行っています。

モビリティ分野に関しては、射出成形技術、エレクトロニクス技術をベースにIMPC®(In-Mold Printed Circuit:立体配線成形技術)を合わせた配線機能一体型成形品の開発や、自動運転などの実現に貢献するセンサ関連の新製品開発を加速していきます。

ライフ&ヘルスケア分野に関しては、医療分野において、優れた生体適合性等の高機能を備えたスーパーエンプラ樹脂を用いた新製品をはじめ、予防・予後・再生医療に貢献する製品の開発・上市を進めます。家電・住設分野においては、快適な居住空間や省エネに向けた空調機器用ファンや高気密・高断熱窓枠等の開発に取り組んでいます。

なお、インフラストラクチャー&セーフティー分野に関しては、再生可能エネルギーや社会インフラの整備等持続可能な社会に向けた製品の開発を進めており、新たな事業創出に向けた活動に取り組んでいます。

当セグメントに係る研究開発費は122百万円です。

 

 

(5)化学品

化学品事業では、地球環境問題の解決に貢献する技術・製品の研究開発に取り組んでいます。

モビリティ分野に関しては、燃料電池事業において、モビリティ用燃料電池に使用されるカーボンセパレータの新生産方法や性能向上を重点に活動しており、新生産方法での量産化に向け開発を進めています。機能化学品事業では、カーボンニュートラルへの貢献を目的とし、自動車塗装工程の低温化を実現する水性架橋剤の開発を進めています。

インフラストラクチャー&セーフティー分野に関しては、断熱事業において、鉄道軌道用防振材の開発のほか、安全安心をテーマに不燃ノンフロンウレタンフォームの実用化を進めています。カーボン事業および機能化学品事業では、次世代・先端半導体向けの製品・添加剤の開発を進めています。

ライフ&ヘルスケア分野に関しては、機能化学品事業において、マイクロプラスチックによる海洋汚染の拡大防止に向けて、海洋環境で生分解性プラスチックの分解を促進する添加剤の開発を進めています。断熱事業では、次世代エネルギーである液化水素の輸送及び貯蔵施設向けの高性能断熱材の開発、きれいな水を守るための高性能水処理担体の開発を進めています。

当セグメントに係る研究開発費は379百万円です。

 

(6)繊維

繊維事業では、ライフ&ヘルスケア分野において「サステナブルな繊維事業への転換」を目指し、環境・健康社会への貢献を重点取り組み事項として掲げ、グループ内外と幅広く連携し、研究開発を進めています。

当連結会計年度はノーアイロンシャツに代表される「アポロコット」シリーズの商品を拡充し、環境配慮型の次世代商品として、防汚、冷感、ノンホルマリンなどの機能加工商品の開発にも注力しています。

また、安心・安全を提供できる防透、抗菌防臭、抗ウイルスなどの健康快適商品の充実を図り、さらに、当社グループ内のマイクロデバイス事業と連携し、胎児見守り腹帯や騒音職場通信デバイスなどのスマートテキスタイルの開発も取り組んでいます。

「サーキュラーエコノミー」の実現を目指した、廃棄シャツから再繊維化し新たなシャツに生まれ変わらせる「シャツ再生プロジェクト」については、当連結会計年度にNEDO先導研究プログラムに採択され、信州大学と共同で基礎技術の確立に向けた研究開発を進めています。

当セグメントに係る研究開発費は679百万円です。

 

(7)全社共通

グループ内の研究開発においては、各事業セグメントを超えた連携によるシナジーにより、環境・エネルギーカンパニーとして地球環境問題・社会課題の解決に貢献する新たな事業の創出に取り組んでいます。

・水素社会実現のための取組み

レアメタルを使用しない燃料電池用触媒や水素生成用触媒などの部材開発に加え、燃料電池活用のためのシステム開発に取組んでいます。これら取組みの一部は、NEDO事業に採択をされています。

当社グループの持つ超音波技術を活用した水素ガスセンサの開発は、携帯型水素ガス漏れ検知器「MoLeTELL®」の試験販売に加え、定置型漏れ検知器や水素濃度測定器など顧客ニーズに合わせた製品開発を進めています。

・地球環境問題への取組み

マイクロプラスチックによる海洋汚染の拡大防止に向けて、海洋生分解性プラスチックの開発に取組んでいます。本取組みの一部は、NEDO事業に採択をされています。また、開発した微粒子はプラスチック微粒子代替材料として、ユーザーでの評価が進んでいます。

・安心・安全への取組み

食の安心安全・安定供給に向けて、「完全閉鎖型植物工場」「環境センサネットワークによる制御」「画像AIとロボットによる省力化」など、プラントファクトリーのスマート化に取組んでいます。

大容量化するデジタルコンテンツ情報をストレスなく送受信するための高速通信技術を活用した大容量のデータを瞬時に確実に伝送する「ミリ波通信システム」や、センサ及び通信技術を活用した「見守り機器・システム」などの開発、更にはこれらシステムを活用した「データ活用ビジネス」といったサービスへの取組みを強化しています。

全社共通に係る研究開発費は1,759百万円です。

※国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構