文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
THKグループは、機械の直線運動部分を“軽く”“正確に”動かすため、“すべり”を“ころがり”化する重要な機械要素部品を世界へ供給しています。「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、1971年の創業以来、創造開発型企業として「LMガイド(Linear Motion Guide:直線運動案内)」をはじめとする機械要素部品を供給し、工作機械、半導体製造装置など様々な機械装置の高精度化、高剛性化、高速化、省エネルギー化を実現し、必要不可欠な部品として産業の発展に貢献してまいりました。
当社グループは、LMガイドを開発して以降、世界のトップメーカーとして、お客様の多様なニーズにお応えする中で蓄積してきたノウハウによる高品質な製品や幅広い提案力により、お客様から高い信頼を獲得しています。近年では産業分野のみならず、自動車、医療機器、航空機、サービスロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野へと当社グループの製品の採用が広がっています。このように、世界中で多くのお客様より供給が求められる中、エッセンシャルビジネスとして本業を通じた社会貢献を実現しながらも、気候変動など地球環境が変化する中で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進め、企業価値の向上を図ってまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、地理的な領域拡大を目指した「グローバル展開」と用途的な領域拡大を目指した「新規分野への展開」に加え、AI、IoT、ロボットをはじめとするテクノロジーを徹底活用する「ビジネススタイルの変革」を成長戦略の柱として掲げ、事業領域の拡大を図っております。
グローバル展開では、日本・米州・欧州・アジアの4極において、現地で生産して販売するという「需要地における製販一体体制」を構築しています。日本国内における当社グループのLMガイドをはじめとする直動製品の認知度は高く、市場シェアも高水準で推移する一方、海外では普及率が日本国内に比べて低いことから、まだ多くの潜在需要が存在すると考えております。近年は、とりわけ中長期的に需要の拡大が見込まれる中国やその他の新興国において、販売網の拡充ならびに生産体制の強化を図っています。加えて、先進国においてもユーザーの裾野が広がる中で着実に需要を取り込むべく販売網を拡充し、さらなる成長へと繋げています。
新規分野への展開では、LMガイドを中心とする製品群の現在の主な顧客は資本財メーカーですが、自動車、医療機器、航空機、サービスロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野へと当社グループの製品の採用が広がっています。このように産業分野のみならず我々の身の回りにも膨大な需要が存在すると考えており、これらの需要を取り込むべく、これまで培ってきた直動システムのコア技術を応用した新製品を投入し、新規分野への展開を加速しています。
ビジネススタイルの変革では、デジタルテクノロジーが急速な進展を見せる中、AI、IoT、ロボットをはじめとする新たなテクノロジーを販売、生産、開発などのあらゆる面で徹底的に活用することにより、ビジネスの進め方や仕組みの変革を図っています。お客様向けコミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」、製造業向けIoTサービス「OMNIedge」、そして「THK DXプロジェクト」の推進など、あらゆる取り組みにより新たな顧客体験価値を創造し、ビジネスのさらなる拡大を図っています。
そして、これらの取り組みを推し進める中、単にものづくりだけではなく、ビフォーサービスからアフターサービスまでの一連の工程をビジネスとし、お客様との接点を広げ、真にお客様に貢献していく「ものづくりサービス業」をビジョンにかかげ、その姿を鮮明にしていきます。今後もこれらの取り組みの前提となる、サステナビリティ、ESGの取り組みを強化していくとともに、収益性の向上や財務体質の強化を強力に推進し、企業価値の向上を図ってまいります。
(3) 経営環境
当社グループの需要環境においては、デジタルテクノロジーの急速な進展や、地球環境保護機運の高まり、そして先進国における人手不足や長寿命化などのマクロ動態の変化がメガトレンドを形成する中、「5G」「AI・IoT」「CASE」「インダストリー4.0」「自動化・省人化・省エネ化」といった変化のキーワードが表れています。そして、これらのキーワードから、半導体製造装置・FA関連向け製品、サービスロボット関連製品、医療機器向け製品、電動アクチュエータ、次世代自動車部品、Omni THK、OMNIedgeなどの当社グループが提供する製品やサービスが求められており、その成長ポテンシャルは中長期かつ飛躍的なものになると考えられます。したがって、これらの需要を顕在化させるとともに着実に取り込むべく、成長戦略を推し進めてまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
産業機器事業においては、既存顧客の深耕を図るともに、デジタルテクノロジーが急速に進展する中、ビジネススタイルの変革を推し進め、さらなる事業領域の拡大を図っています。お客様向けコミュニケーションプラット
フォーム「Omni THK」においては、THKの在庫品検索、短納期品の入手、選定・CADデータ・見積書取得とあらゆる工程をサポートすることに加え、標準品・セミオーダー品の短納期対応機能「Delivery」、お客様の製品管理情報とTHKの製品情報の紐付管理機能「Your Catalog」、お客様の需要予測とTHKの製造予定の照合による予実管理機能「Forecast」など、新たな顧客体験価値を提供しています。一方社内においては、「THK DXプロジェクト」を推進し、これらを成し遂げるべく、社内のシステムもお客様の発注から当社の出荷まで人を介さずに、一気通貫で自動で流れる仕組みの構築を目指し、飛躍的な生産性向上を図っています。このように顧客向けの「Omni THK」と社内改革の「THK DXプロジェクト」の両面からなる改革を連携しながら推し進め、新たな顧客体験価値の創出・提供により顧客満足度の向上を図っています。製造業向けIoTサービス「OMNIedge」は、製造現場で発生するロスを削減できるソリューションを提供することで、持続的な生産性向上(設備総合効率:OEEの最大化)に貢献して参ります。これまでに直動製品と回転部品の予兆検知AIソリューション、工具監視AIソリューションの3つを提供しており、機械要素部品の状態を数値化して予兆検知や、工作機械の工具欠損を検知することで、保全業務の効率化、在庫管理コストの削減、不良発生によって生じるロス削減を実現し、生産計画のスムーズな遂行をサポートします。
輸送機器事業においては、半導体をはじめとする部材不足による自動車の減産や鋼材価格の値上がりなどにより営業損失が続いています。そのような中、収益性改善に向けたさらに踏み込んだ対応が必要と考え、輸送機器事業の再編を進めています。グローバルにおける生産品目・生産ラインや人員・組織の再編、生産性・工程改善を推し進めるリカバリープランの継続・強化をはじめ、収益性の低い製品は売上の縮小も厭わない利益重視の運営、そして固定費を産業機器製品の生産に振り向けるなど、収益性改善に向けた施策を強化しています。一方、自動車業界における自動運転化や電動化をはじめとするCASEの潮流を追い風に、直動製品で培ったコア技術を活かした次世代自動車向けの新製品の開発・販売活動を加速しています。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2026年度を最終年度とする経営目標として連結売上収益5,000億円、営業利益1,000億円、EPS(基本的1株当たり当期利益)590円、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)17%を掲げ、成長戦略を展開し持続的な企業価値の向上を図っております。
(6) 気候変動への対応:TCFD提言に沿った情報開示
当社グループは、「気候変動」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げ、2023年2月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に対して賛同を表明しました。TCFD提言は、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つのテーマを中核的要素と位置付けています。当社は、TCFD提言に沿って、気候変動の影響について分析しました。
ガバナンス
気候変動に関わるリスクや機会、対応策等を検討、審議する組織として、代表取締役社長を委員長とする取締役会の諮問機関である「サステナビリティ委員会」を設置しています。
「サステナビリティ委員会」には、下部組織として、各業務部門の代表をメンバーとする「サステナビリティ推進部会」を設け、TCFD提言に沿って気候変動に関わるリスクと機会に関するシナリオ分析を実施しています。
「サステナビリティ委員会」は「サステナビリティ推進部会」がまとめた分析結果について協議するとともに、気候変動に関わる対応策を決定し、進捗状況を管理しています。
取締役会は、「サステナビリティ委員会」で協議、決議された事項について、適宜報告、提案を受け、議論するとともに、各業務部門における気候変動対応の取組み全般を監督しています。
戦略
気候変動に関わるリスク及び機会を踏まえた戦略とそのレジリエンスについて検討するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な影響を踏まえ、当社の産業機器事業及び輸送機器事業(いずれも日本)を中心にシナリオ分析を実施しました。
※1.5℃シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化等の対策が取られるシナリオ
IEA-NZE、IPCC-AR6(第6次評価報告書)-SSP1-1.9 等
※4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象等の物理的影響が生じるシナリオ
IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP8.5 等
≪気候変動に関する主なリスク/機会と対策≫
|
シナリオ |
要因 |
変化 |
リスク /機会 |
評価 |
当社への影響 |
当社の対策 |
|
1.5℃ |
炭素税の導入 |
調達コスト増加 |
リスク |
大 |
炭素税導入により、原材料への価格転嫁が進み、調達コストが増加 |
・原材料投入量の削減 ・炭素税の低い原材料への切替 |
|
操業コスト増加 |
リスク |
大 |
炭素税導入により、国内のScope1・2の排出量に応じて炭素税の支払コストが増加 |
・省エネ生産技術の開発 ・低炭素、非化石エネルギーへの転換 |
||
|
再エネへの切替 |
エネルギー調達コスト増加 |
リスク |
小 |
再エネへの切替により、エネルギー調達コストが増加 |
・太陽光発電設備の設置による、再エネの内部調達 |
|
|
省エネニーズの高まり |
環境対応技術ソリューションの需要増加 |
機会 |
大 |
エネルギー効率の向上を目的とした自動化及び効率化のための設備設計、製作、改造、製品需要が増加 |
・省エネ化に寄与する当社製品(LMガイド、電動アクチュエータ、ユニット品等)の供給強化 |
|
|
半導体ビジネス機会拡大 |
機会 |
大 |
省エネ化のコアとなるパワー半導体を中心に、半導体製造装置部品の製造をはじめとした、ビジネス機会が拡大 |
・柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備 |
||
|
故障診断・予兆検知サービスの需要増加 |
機会 |
小 |
生産性向上に貢献し、エネルギーロスの削減を実現する、IoT技術を駆使した故障診断・予兆検知サービスの需要が増加 |
・生産性向上に貢献するIoTサービスの拡充並びに営業及びソリューションの強化 |
||
|
EV化の進展 |
EV車関連部品の需要増加 |
機会 |
大 |
EV化に伴い新たな製品が求められるようになり、当社製品の需要が拡大 |
・柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備 ・新規ビジネスの企画 |
|
|
環境貢献ビジネスの拡大 |
ESG投資増加 |
機会 |
小 |
環境に貢献するビジネスを拡大することで、投資家の関心、評価が高まり、ESG投資が増加 |
・柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備 ・積極的な情報開示、ステークホルダーとのコミュニケーション強化 |
|
|
4℃ |
気象災害の激甚化 |
サプライチェーン寸断 |
リスク |
小 |
原材料調達先の被災による、原材料供給の停止 |
・原材料調達先の分散化 ・代替調達先の確保 |
|
気温上昇対応コスト増加 |
リスク |
小 |
気温上昇による、工場、物流拠点、オフィス等の空調コスト増加 |
・建屋の断熱性能向上 |
リスク管理
全社的なリスク管理については、取締役会の諮問機関である「リスク管理委員会」において包括的、網羅的に把握するとともにリスク管理規程に則りリスクアセスメントを実施し、重要性評価及び対策の優先度を決定しています。
なかでも気候変動に関わるリスクについては、「サステナビリティ委員会」と下部組織である「サステナビリティ推進部会」において気候変動に特化したシナリオ分析を実施し、識別、評価のうえ対応策を決定しています。
なお、取締役会は、「リスク管理委員会」並びに「サステナビリティ委員会」で識別されたリスク及び対応策を踏まえ、気候変動が経営に及ぼす影響について取りまとめています。
指標と目標
当社グループは、2021年8月、地球温暖化の抑制に向けて、以下のとおり温室効果ガス排出量削減の「中期目標」及び「長期目標」を策定しました。
「中期目標」
2030年CO2排出量 基準年2018年 50%削減
対象範囲:国内THK、国内グループ会社
2018年実績値:106,514 t-CO2
2030年目標値:53,257 t-CO2
「長期目標」
2050年CO2排出量:実質ゼロ*にする
対象範囲:THKグループ全体
*実質ゼロ:CO2等の温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
これらの目標を踏まえ、より一層省エネや省力化に貢献できる製品開発を進めるとともに、より環境に配慮した事業活動を継続し、豊かな社会づくり、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクや不確定な要因は以下のものがありますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できないリスクや重要度が低いと考えられるリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、本項に含まれる将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社のリスク管理体制
当社は、当社グループの事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、経営陣による適切なリスクテイクを支えるため、社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、リスク管理規程に基づく全社的なリスク管理体制を構築しています。リスク管理委員会では、当社グループの事業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスク管理体制が有効に機能しているかどうかの検証を行っております。
また、当社は、リスクを組織の収益や損失に影響を与える「不確実性」と捉え、マイナスの側面とプラスの側面の両面があると考えており、マイナス面のリスクに対して適切にリスクヘッジしつつ、プラス面のリスクに対して積極的なリスクテイクを行うことができれば、今後の持続的成長につながると考えています。
(2) リスクの特定方法
当社は、リスク管理規程に則り、当社グループ全体を対象にリスクアセスメントを毎年実施しています。国内外のグループ会社および当社の各部門から報告を受けたリスクアセスメントの結果を基に「発生可能性」、「影響度」の2つの評価軸でマッピングを行うことで、リスクの重要度を評価し、リスク対策の優先度を決定しています。リスクの発生頻度、影響度はそれぞれ5段階で評価し、数字が高いほど、またリスクとして抽出した会社・部門が多いほど、リスクが高くなります。
(3) 事業等のリスク
<特に重要なリスク>
① 災害・地政学的問題・テロ・戦争・感染症等について
当社グループは、日本国内はもとより、米州、欧州、アジア他に製造・販売拠点を有していますが、これらの事業拠点及び取引先の事業拠点において、地震・火災等の災害やテロ攻撃・戦争による政情不安または感染症蔓延等による被害を受けた場合には、生産活動をはじめとする企業活動全般に重大な影響を与える可能性があります。当社グループでは、事業継続計画(BCP)を策定し、危機発生時において被害を最小化するための事前対策や事業を継続、早期復旧するための対策を講じるとともに、地震や大雨等の自然災害発生時に、自社への影響を速やかに把握できる危機管理サービスを導入し、被害地域にある事業所及び取引先の把握と被害による部品供給状況を速やかに把握できる体制を整えておりますが、リスクを完全に回避することは困難であり、想定を超える被害が発生した場合には、結果として当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期化やロシア・ウクライナ問題を始めとする国際関係の変化に起因する各地域での政治・経済の混乱の影響は、世界的な物価の高騰、部品・原材料の供給不足等として顕在化しております。
ロシア・ウクライナ問題の紛争当事国における当社グループの事業活動の規模は比較的小さく、当社グループの事業への直接的な影響は僅少でありますが、ロシア・ウクライナ問題が長期化した場合、または他の地域で国際紛争が発生した場合には、エネルギーや原材料価格の高騰や原材料の調達遅延等、グローバルに事業展開する当社グループの事業活動への影響が懸念されます。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、当社グループでは、2020年2月より新型コロナウイルス対策会議を原則として毎日開催し、世界中に展開する当社グループ各社と連携し、各国・地域の政府や自治体の指導に基づいた対策をいち早く開始しました。新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、製品やサービスの提供に支障が生じないよう、生産・物流を含めたサプライチェーン網の維持等にも最大限の努力を続けております。
また、感染拡大防止の施策として、従業員、顧客、取引先等のステークホルダーの安全の確保と事業継続を最優先に考え、在宅勤務や時差出勤等を実施するとともに、リモートワークツール等の積極的な活用により業務を継続できる環境を確保しています。
現時点では、新型コロナウイルス感染症の収束時期や世界経済に及ぼす影響の大きさについては予測が困難であり、今後、新たな変異株の出現等、事態が更に深刻化、長期化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
② 海外事業展開について
当社グループは、米州、欧州、アジア他に製造・販売拠点を有しておりますが、中国をはじめとする新興国製品の台頭により、特に価格面における競争環境はグローバル規模で厳しさを増しています。
当社グループでは、顧客の心で考え、行動し、検証する「顧客志向」の立場で日々営業活動を行うとともに、直動製品と回転部品の予兆検知や工作機械の工具欠損検知ができる「OMNIedge」、当社と顧客を繋ぐコミュニケーションプラットフォームである「Omni THK」等、ITを活用して顧客や市場のニーズを的確に捉える仕組みを導入し、高性能で付加価値の高い製品の開発、提供を継続して進めていますが、顧客や市場のニーズを十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合や新製品の市場への投入が遅れた場合、他社が画期的な新製品を開発することによって、当社製品が機械要素部品及び輸送用機器要素部品に占める地位を失うに至った場合には、将来の成長と収益性を低下させるおそれがあります。
また、グローバルで政治・経済情勢や法規制、関税や安全保障貿易管理に基づく輸出規制等に関する最新の状況をモニタリングし、取引形態やサプライチェーンの見直し等の対策を講じ、事業への影響の低減を図っていますが、当社グループの製品を製造・販売している国や地域の政治情勢や経済状況の変動、あるいは予期せぬ法規制等の変更により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
③ 人財について
当社グループは、競争力を維持するため、優秀な人財を国内外で継続的に採用し、“個力の強化”を目標に、従業員の成長支援に取り組んでいます。また、新卒のみならずキャリア採用を強化するとともに、女性・高齢者・障がい者の活躍支援、自己申告制度による従業員の希望の確認等、体制面や従業員エンゲージメントの向上に努めています。
しかしながら、少子高齢化を背景として各分野における人財の確保競争が激しさを増すなか、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、特定分野のスキルを持った人財に対する世界的な需要の高まりが競争に拍車をかけており、当社グループが計画どおりに適切な人財を採用できなかった場合やその育成に齟齬が生じた場合、技術・技能の承継にも支障をきたし、当社グループの事業の遂行に制約が生じる可能性があります。
また、当社グループでは安定した労使関係の構築に努めていますが、海外においては労使慣行の相違が存在し、法制度や経済環境、社会環境の変化等予期せぬ事象を起因とする労使関係の悪化や労働争議の発生、また新興国を中心として従業員の賃金が急上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
④ 特定産業界における需要動向の変化による影響について
当社グループは、産業機器事業と輸送機器事業を展開しています。産業機器事業はLMガイドやボールねじ等の機械要素部品、輸送機器事業はリンクボールやサスペンションボールジョイント等の輸送用機器要素部品を製造・販売しており、それぞれ工作機械や一般機械、半導体製造装置をはじめとする産業用機械メーカー、輸送機器事業は自動車関連企業等の輸送用機器メーカーが主要顧客です。当社グループでは、「グローバル展開」、「新規分野への展開」及び「ビジネススタイルの変革」の三つの戦略軸によるビジネス領域の拡大を進め、特定の顧客・製品に依存しないようリスクの分散に努めていますが、現状においては、当社グループの業績は主要顧客である工作機械、一般機械、半導体製造装置、輸送用機器等の産業界における需要動向に影響を受けており、特に輸送機器事業は自動車業界の動向の影響を強く受ける傾向があります。
従って、将来において特定の産業界における急激な需要動向の変化等により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
⑤ 原材料や部品の調達について
当社グループは、製品の製造に使用する原材料及び部品を、国内に限らず広く世界中の複数の供給元から調達しています。これらの供給元を“共に成長するための重要なパートナー”と位置付け、新技術・新工法・新素材等の情報を出し合う場を設けるなど協調体制を組み、安定かつ継続的な供給の維持を図るとともに、徹底したコスト管理に努めています。さらに、紛争鉱物への対応や環境への配慮等、サプライチェーンを通じて、社会からESG観点での高度な対応が求められていることから、供給元の事業者に「CSR調達ガイドライン」を配布し、CSR調達の徹底を図っています。
ロシア・ウクライナ問題は世界的な物価の高騰を引き起こしており、ロシア・ウクライナ問題が長期化した場合、または他の地域で国際紛争が発生した場合、さらには供給元の生産能力不足や品質不良、倒産、コンプライアンス違反あるいは火災や地震等の自然災害等に加え、感染症の発生等を契機として供給元の所在する国や地域でロックダウン(都市封鎖)等が行われ、サプライチェーン寸断による原材料および部品の不足が生じた場合や原油高の影響、原材料供給国の社会情勢、新興国における需要の高まり等を背景として原材料価格が予期せぬ高騰を示した場合、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
<重要なリスク>
① 製品の品質問題について
当社グループの製品は、工作機械、産業用ロボット、半導体製造装置等の産業用機械から、自動車、免震・制震装置、医療機器、アミューズメント機器、航空機等の民生品分野にも採用が拡がっています。
そのような中、当社グループは、国内外の各生産拠点において品質マネジメントシステムであるISO9001を認証取得し、それに従った各種製品・サービスの開発や製造を行うことで、産業機器事業の品質保証体制の整備を図るとともに、自動車産業をはじめとする輸送機器事業、また航空宇宙産業等の新たな分野に適応する各種品質セクター規格を認証取得し、あらゆる市場に適合する高い品質保証体制の構築に努めています。
しかしながら、製品に欠陥が生じるリスクをゼロに低減することは不可能であり、万が一大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような予期せぬ製品の不具合が発生した場合、多大な費用の発生や社会的信用の低下、取引停止等により、経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
また、当社グループはグローバルな製造物責任保険等に加入しておりますが、損害賠償等の損失についてその全てを担保するという保証はありません。
② 為替レートの変動について
当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引について、為替予約等により為替リスクをヘッジしておりますが、為替レートに大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
また、連結財務諸表を作成するにあたって在外子会社の財務諸表を円換算しておりますが、現地における通貨金額が変わらない場合においても、換算時の為替レートにより円換算後の連結財務諸表上の金額が影響を受けるおそれがあります。
③ 金利の変動について
当社グループは、金融機関からの借入、社債及びコマーシャルペーパーの発行等の方法によって資金調達を行っており、資金需要に対してその内容や財政状態および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しています。金利が上昇した場合にはこれらの調達コストが増加します。この影響を軽減するため、当社グループでは金利スワップ契約等のデリバティブ取引を利用しています。
当社グループでは投資した資産について、現在価値の算出に市場金利を基準とする割引率を用いており、金利が大きく上昇した場合、使用価値の計算に用いる割引率が大きく上昇することにより回収可能価額が減少し、対象資産の評価額に影響を及ぼす可能性があります。
金利動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
④ 情報セキュリティについて
当社グループは、事業活動を通して、個人情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。
当社グループでは、社長を委員長とする「情報セキュリティ委員会」を設置・運用しており、当委員会には、外部の専門家もオブザーバーとして参加し、情報セキュリティに関する管理体制やルールの整備・強化を図るとともに、国内外の個人情報保護を始めとする法規制強化への都度対応、情報リテラシーを高めるための社員教育の実施等、情報の厳格な管理に努めています。
また、当社グループは、事業全般において様々なコンピューターシステム及びITネットワークを活用しており、これらシステムには十分な安全対策を施しています。
近年、サイバー攻撃の手口の高度化・巧妙化、クラウドサービスの利用の増加等、情報セキュリティに関するリスクが高まっていることから、適宜セキュリティの強化に努めていますが、サイバー攻撃、コンピューターウイルスの感染、不正アクセス、インフラ障害、情報システムの不具合等により情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等不測の事態が生じた場合には、当社グループに対する社会的信用の低下や事業活動の中断、対策費用の発生、多額の課徴金の支払い、取引の停止等により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
⑤ 環境問題について
当社グループは、地球環境を健全な状態で次世代に引き継いでいくことは企業の社会的責務であるとの認識に立ち、THKグループ環境基本方針を制定し、省エネルギー製品の開発、環境負荷の継続的な低減と自然環境の維持・改善等に努めています。また、当社グループは、各生産拠点において環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の認証を取得するとともに、国内外の環境関連法令の遵守はもちろんのこと、EUの有害物質規制法RoHS指令及びREACH規則や中国の電子情報製品生産汚染防止管理弁法に代表される様々な規制に対しても、国内・海外の生産拠点に対して「グリーン調達ガイドライン」を適用し対応しており、これまで重大な環境問題が発生したことはありません。
しかしながら、不測の事態により将来において環境問題が発生した場合には、損害賠償や対策費用の発生、罰金等の行政処分、社会的信用の低下、生産活動の停止等により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
また、環境に関する規制がさらに厳格化し、追加の義務や費用負担が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
⑥ コンプライアンスについて
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、様々な国の法令・規則の適用を受けています。
当社グループでは、コンプライアンス意識の徹底と不正を許さない職場環境の醸成のため、社長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置・運用しており、当委員会には、外部の専門家もオブザーバーとして参加し、法令・社内規範・倫理規範の遵守を目的とした体制を整備し、公正な企業活動に努めています。また、当社グループの役職員が共有・遵守すべき「THKグループ行動憲章」を制定し、当社グループの全役職員に周知するとともに、必要な社内教育を実施するなど、コンプライアンス意識の向上を図っています。
また、内部通報制度を整備し、担当部署、監査等委員会、顧問弁護士と社内外に3つの通報窓口を設け、法令や社内規範等に違反する行為、またはそのおそれのある行為について、通報を受け付け、コンプライアンスリスクの未然防止に努めています。
しかしながら、グローバルに事業を展開するなか、コンプライアンスリスクを完全に回避することは困難であり、法令違反等が生じた場合には、当社グループが刑事上、民事上、行政上の責任を負い、また社会的信用の低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受けるおそれがあります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及び
キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響が続き、世界経済の先行きに強い不透明感が残る中でも、中国をはじめ、先進国を含む各地域において持ち直しの動きが続きました。
当社グループでは、「LMガイド(直線運動案内:Linear Motion Guide)」をはじめとする当社製品の市場を拡大すべく「グローバル展開」、「新規分野への展開」及び「ビジネススタイルの変革」を成長戦略の柱として掲げています。グローバル展開では、中国やその他の新興国においてFA(Factory Automation)の進展などを背景としてマーケットは成長し、先進国でもユーザーの裾野が広がる中、これらの需要を取り込むべくグローバルで生産・販売体制の拡充に努めています。新規分野への展開では、自動車、医療機器、航空機、ロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野においても当社グループ製品の採用が広がる中、従来品のみならず新規開発品の売上収益の拡大を図っています。さらに、これらの戦略を推し進めるべく、様々な面でAI、IoT、ロボットをはじめとするテクノロジーを徹底的に活用することで、ビジネススタイルの変革を図り、ビジネス領域のさらなる拡大を図っています。
そのような中、産業機器事業においては、中国をはじめとする各地域において、半導体関連や自動化、ロボット化の流れ、及びEV(電気自動車)関連などを中心に全般的に需要が好調に推移する中、これらの需要をこれまで推し進めてきた工場拡張や生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。一方、輸送機器事業においては、半導体などの部品不足に加え、中国の一部地域におけるロックダウンやウクライナ情勢に伴う部品調達難による自動車の減産の影響が続きました。これらに加え、為替が前期に比べて円安で推移したことなどにより、連結売上収益は前期に比べて754億9千8百万円(23.7%)増加し、3,936億8千7百万円となりました。
コスト面では、売上収益の増加や為替の円安の影響に加え、生産性向上に向けた各種改善活動を引き続き推進したことなどにより、売上原価率は前期に比べて1.6ポイント低下し、73.3%となりました。
販売費及び一般管理費は、売上収益の増加などにより前期に比べて80億3百万円(15.7%)増加し589億9千1百万円となりました。売上収益に対する比率は、売上収益の増加に加え、各種費用の抑制や業務の効率化に努めたことなどにより、前期に比べて1.0ポイント低下し15.0%となりました。
これらに加え、輸送機器事業を営む当社の連結子会社において、顧客である自動車メーカーにおける半導体などの部品調達難や、中国の一部地域におけるロックダウンの影響による減産に伴う売上収益の減少、及び鋼材価格やエネルギー価格の上昇等による収益の低下により、保有する固定資産について減損の兆候が認められたことから、国際財務報告基準(IFRS)に基づく減損テストを実施した結果、40億2千1百万円を固定資産の減損損失として、その他の費用に計上しました。また、海外の輸送機器事業におけるのれんについて、国際財務報告基準(IFRS)に基づく減損テストを実施したところ、世界的な物価の高騰が続く中、各国の金融引き締め政策等による急激な金利の上昇を受けて割引率が上昇した結果、96億2千万円をのれん及び無形資産の減損損失として、その他の費用に計上しました。
これらの結果、営業利益は前期に比べて41億9千1百万円(13.8%)増加し344億6千万円となりましたが、売上収益営業利益率は0.7ポイント低下し8.8%となりました。
金融収益は33億3千5百万円、金融費用は21億9千9百万円となりました。
これらの結果、税引前利益は前期に比べて56億1千2百万円(18.7%)増加し355億9千6百万円となりましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期に比べて18億8百万円(△7.9%)減少し211億9千8百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(日本)
日本では、産業機器事業において、エレクトロニクス関連をはじめ、全般的に好調な需要が続きました。そのような中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げた結果、売上収益は前期に比べて208億1千6百万円(16.9%)増加し、1,441億8千9百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は、輸送機器事業を営む当社の連結子会社であるTHKリズム株式会社において、12億8千6百万円を固定資産の減損損失としてその他の費用に計上した上、関係会社株式評価損を計上した結果、前期に比べて52億4千8百万円(△23.6%)減少し、170億1千4百万円となりました。
(米州)
米州では、産業機器事業において、エレクトロニクス関連を中心に全般的に好調な需要が継続する中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて236億3千4百万円(41.3%)増加し、808億5千5百万円となりました。セグメント損益(営業損益)は、売上収益が増加した一方、輸送機器事業を営む当社の連結子会社であるTHK RHYTHM NORTH AMERICA CO., LTD.において、20億9千4百万円を固定資産の減損損失としてその他の費用に計上した結果、前期に比べて12億1千7百万円悪化し、23億5千1百万円の損失(前期は11億3千4百万円の損失)となりました。
(欧州)
欧州では、産業機器事業において、全般的に好調な需要が継続する中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて124億6千7百万円(24.8%)増加し、627億1千5百万円となりました。セグメント損益(営業損益)は、売上収益が増加した一方、輸送機器事業を営む当社の連結子会社であるTHK RHYTHM AUTOMOTIVE CZECH a.s.において、96億2千万円をのれん及び無形資産の減損損失としてその他の費用に計上した結果、前期に比べて83億4千7百万円悪化し、96億8千4百万円の損失(前期は13億3千7百万円の損失)となりました。
(中国)
中国では、全般的に好調な需要が継続する中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて162億3千9百万円(24.2%)増加し、833億1千2百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は、輸送機器事業を営む当社の連結子会社である蒂業技凱力知茂(常州)汽車配件有限公司において、10億9百万円を固定資産の減損損失としてその他の費用に計上しましたが、売上収益が増加したことなどにより、前期に比べて43億1千4百万円(45.6%)増加し、137億7千3百万円となりました。
(その他)
その他では、インド・ASEANをはじめとして当社グループ製品への需要の裾野が着実に広がる中、当社グループにおいては販売網の拡充に加え、新規顧客を開拓すべく積極的な営業活動を展開しました。加えて、一部地域で中国における需要の回復の影響を受けたことなどにより、売上収益は前期に比べて23億4千万円(11.5%)増加し、226億1千4百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は、輸送機器事業を営む当社の連結子会社であるTHK RHYTHM MALAYSIA Sdn. Bhd.において、1千2百万円を固定資産の減損損失としてその他の費用に計上しましたが、売上収益が増加したことなどにより、前期に比べて5億8千2百万円(25.6%)増加し、28億6千1百万円となりました。
② 財政状態の概況
資産は、のれん及び無形資産が94億2千3百万円減少しましたが、現金及び現金同等物が124億4百万円、営業債権及びその他の債権が103億7千2百万円、棚卸資産が132億5千2百万円、有形固定資産が142億6百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ442億1千8百万円増加の5,603億4百万円となりました。
負債は、未払法人所得税が7億9千5百万円、退職給付に係る負債が14億4千5百万円減少しましたが、営業債務及びその他の債務が16億4千7百万円、社債及び借入金が191億1千9百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ212億2千6百万円増加の2,230億2千3百万円となりました。
資本は、自己株式の増加で59億2千2百万円、非支配持分が43億4千万円減少しましたが、利益剰余金が123億3千3百万円、その他の資本の構成要素が212億4千万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ229億9千1百万円増加の3,372億8千1百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益355億9千6百万円、減価償却費及び償却費208億3千4百万円、減損損失136億4千1百万円、営業債務及びその他の債務の増減額24億7千7百万円などのキャッシュ・インに対し、営業債権及びその他の債権の増減額94億8千1百万円、棚卸資産の増減額97億1千4百万円、法人所得税の支払額138億3千万円などのキャッシュ・アウトが発生したことにより、375億6千1百万円のキャッシュ・イン(前連結会計年度は156億4千3百万円のキャッシュ・イン)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出294億7百万円などのキャッシュ・アウトにより、300億8千1百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度は191億2千5百万円のキャッシュ・アウト)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入200億円のキャッシュ・インに対し、長期借入金の返済による支出21億8千5百万円、自己株式の取得による支出59億5千8百万円、配当金の支払額95億8千2百万円などのキャッシュ・アウトが発生したことにより、36億4千9百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度は127億2千5百万円のキャッシュ・アウト)となりました。
これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて、124億4百万円増加し、1,638億3千5百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、連結ベースにおいてはセグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に関連付けて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
連結売上収益は3,936億8千7百万円、営業利益は344億6千万円、税引前利益は355億9千6百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は211億9千8百万円となり、売上収益、営業利益、税引前利益は前期に比べて増加したものの、輸送機器事業における減損損失の計上の影響などにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期に比べて減少し、EPS(基本的1株当たり当期利益)は172.67円、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は6.7%となりました。
事業別の状況を見ると、中国をはじめとする各地域において、半導体関連や自動化、ロボット化の流れ、及びEV(電気自動車)関連などを中心に全般的に需要が好調に推移する中、これらの需要をこれまで推し進めてきた工場拡張や生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。一方、輸送機器事業においては、半導体などの部品不足に加え、中国の一部地域におけるロックダウンやウクライナ情勢に伴う部品調達難による自動車の減産の影響が続きました。これらに加え、為替が前期に比べて円安で推移したことなどにより、売上収益は前期に比べて増加しました。
地域別の状況を見ると日本では、産業機器事業において、引き続き回復基調で推移しているエレクトロニクス関連をはじめ、全般的に需要に回復の動きが見られた一方、輸送機器事業においては自動車の減産の影響を受けました。米州では産業機器事業におけるエレクトロニクス関連を中心に需要に回復の動きが見られた一方、 輸送機器事業においては、自動車の減産の影響を受けました。欧州では産業機器事業においては、全般的に需要の回復が見られた一方、輸送機器事業においては、自動車の減産の影響を受けました。中国では産業機器事業において全般的に需要の回復が続いたものの、輸送機器事業においては、自動車の減産の影響を受けました。アジア他地域では産業機器事業において、インド・ASEANをはじめとして当社グループ製品への需要の裾野が着実に広がる中、一部地域で中国における需要の回復の影響を受けました。
コスト面では、輸送機器事業において自動車の減産や鋼材価格の上昇、そしてこれらに伴う減損損失の影響を受けましたが、産業機器事業における売上収益の増加や為替の円安に加え、生産性向上に向けた各種改善活動を引き続き推進したことなどにより、営業利益、税引前利益については前期に比べて増加しました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、企業価値向上に向けた資金を適切に調達、配分しております。加えて、パンデミック、自然災害、不測の事態の発生時においても事業を継続し、当社製品の供給責任を果たすべく、強固な財務基盤を堅持することを財務戦略の基本としております。財務基盤の堅持に関しては、安定的な資金調達を可能とするため、格付機関である格付投資情報センターおよび日本格付研究所からともに取得している「A+(シングルAプラス)」の維持向上を目指しております。主要な金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務基盤を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金は調達可能であると認識しております。
b.資金の調達と流動性
当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローとコマーシャルペーパー、社債の発行及び金融機関からの借入などの財務活動による資金調達になります。当期の営業活動によるキャッ
シュ・フローは、375億6千1百万円であります。財務活動においては、普通社債の発行により200億円を調達しております。なお、主要な金融機関において、コミットメントライン300億円を設定しており、緊急時の資金調達手段を確保しております。
また、当社グループでは、日本国内、米州、欧州及び中国の各地域において、グループ各社が保有する資金をグループ内で効率的に活用するキャッシュ・マネジメントシステムを構築し運用しております。日本国内においては当社、米州及び欧州においては当社の金融子会社、中国においては持株統括会社が資金集中管理を行うことにより資金の偏在をならし、資金の効率化、流動性の確保を図っております。
c.資金需要
当社グループの主な資金需要は、製品製造のための原材料及び部品の購入費、製造経費、販売費および一般管理費等の運転資金に加え、生産効率及び品質向上、生産能力増強を目的とした設備投資や技術革新に対応した研究開発のための資金ならびに配当金支払いなどを見込んでおります。
当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の217億2千9百万円に比べ103億6千6百万円(47.7%)増加し、320億9千5百万円となりました。需要が回復基調で推移する中、工場拡張や自動化、ロボット化による生産性向上に向けた取り組みなどにより、設備投資額は前連結会計年度に比べ大きく増加しました。研究開発費は、前連結会計年度の55億6千万円に比べ7億7千7百万円(14.0%)増加し、63億3千8百万円となりました。配当金支払額は、95億8千2百万円となりました。
これらの設備投資、研究開発のための資金や、配当金の支払などの原資については、主に自己資金で賄っております。
d.経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、将来の収益の獲得を目的とする設備投資や研究開発投資を実施すること、安定的な配当の継続を基本とするとともに業績に応じた積極的な利益配分を実施すること、そして内部留保を充実させて強固な財務基盤を堅持することが重要であると考えております。
利益配分につきましては、期間損益に対して連結配当性向30%を基本としておりますが、1株当たり配当金の下限を年間15円(中間・期末各7.5円)と設定しております。内部留保金につきましては、事業機会を的確に捉えるために必要となる水準を保持することを基本とし、当社グループの成長戦略の柱である「グローバル展開」、「新規分野への展開」、「ビジネススタイルの変革」の取り組みなどに有効活用してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、本社およびテクノセンター(東京都)を研究開発拠点として、基幹の直動システムをはじめ、精密XYステージやリニアモータアクチュエータなどのメカトロ機器、さらに自動車、免震・制震装置、医療機器、航空機、再生可能エネルギー、ロボットなどの消費財に近い分野において、直動システムのコア技術とノウハウを活かした製品開発に努めております。
海外では、2010年に中国に海外初の研究開発拠点となるR&Dセンターを設置し、2012年に本格稼動を開始しました。さらに、2015年から新たに連結子会社となったTHK RHYTHM AUTOMOTIVEのドイツの研究開発部門を加え、世界各地のお客様のニーズにより的確にお応えできるよう、米州、欧州、アジアを視野に入れた最適地開発体制の構築を進めております。
産業機器関連事業では、ロバスト性を高めた総ローラーガイド「小型SRG-G形」を開発しました。工作機械、半導体製造装置の高性能化要求に貢献していきます。また、プレートカバーを簡単に取付けるための専用治具「WPC-ST形」、耐薬品性能を向上させた積層形接触スクレーパ「発泡H-NBR LaCS」を市場投入しました。オプション類の拡充により幅広いお客様にご好評をいただいております。ボールねじでは、軸方向許容荷重を2倍に向上させたプレス機向け高負荷ボールねじ「HBN-KP形」を開発しました。許容荷重が高いため、ねじ軸径の大型化を抑えた装置設計が可能です。また、「SDA-V形」のラインナップを大幅に拡充しました。工作機械、半導体製造装置、電子部品実装機、ロボットなど幅広い分野で市場拡大を図ってまいります。クロスローラーリングでは、従来製品と寸法互換性があり内部構造を進化させ高剛性を実現した「RB-H/RE-H/RU-H形」を開発しました。また、内輪・外輪をそれぞれ一体形にした「RBU形」を開発しました。外輪のズレが発生しないためお客様の組付け工数の大幅な短縮に貢献します。さらに、高速複列アンギュラリング「BWH形」を市場投入しました。転動体をローラーからボールへと置き換えることで、高速性ニーズと発熱による昇温の抑制を実現し高速化が進む工作機械・ダイレクトドライブモータの市場での競争力向上をはかります。アクチュエータでは、ロボットの関節機構に適した回転モジュール「RMR型」を開発しました。剛性に優れたTHK製のクロスローラーリングを回転機構の主軸受とし、さらにロボットの関節部には欠かせない減速機、モータ、エンコーダ、ブレーキなどの要素を一体化した、ロボットの関節機構に適したアクチュエータです。
ロボット関連では、円筒座標型モジュール「MLS型」を開発しました。各軸をモジュール化、ボルトオンで簡単に組み立てができ一般的なPLCで操作可能なため容易に使用することができます。また、ピッキングロボットハンドシステム「PRS形」を市場投入しました。物流倉庫仕分け行程(ピースピッキング作業)の自動化・省人化が必要な箇所に提案していきます。
IoT関連では、お客様の設備の予兆検知の実現に向けた製造業向けIoTサービス「OMNIedge」において、LMガイドやボールねじなどの直動製品の予兆検知に加え、2022年2月にはポンプやファンなどの回転部品向けもラインナップに追加いたしました。さらに、第3弾として、同年11月には、工作機械の工具欠損検知ができる「工具監視AIソリューション」もラインナップに追加いたしました。
輸送機器事業では、自動車の電動化に伴い、軽量化ニーズへの対応と拡販に向け、新工法を採用したアルミ製品の市場投入を開始するだけでなく、北米ではアルミ鍛造技術を内製化し、米国のお客様のみならず、現地調達化ニーズのある日系メーカーのお客様にもご採用いただいております。
また、L&S(リンケージ アンド サスペンション)事業だけでなく、第2の柱として「CASE」関連の自動車用ボールねじ製品を開発、量産しております。自動ブレーキ要素部品として出荷するだけでなく、新たに、次世代サスペンション用途へも出荷を開始しました。更なる拡販に向け、シリーズ化を進めてまいります。
引き続きお客様がまだ気づかれていない、5年先、10年先のニーズを見据えた真のマーケットインを目指した次世代製品の開発を推進するとともに、現在のお客様のニーズにお応えした製品ラインナップの拡充に努めてまいります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は