文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2022年3月25日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
① 企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY
当社は、1872年に創業し、今年創業150周年を迎えます。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、新・企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指しています。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの140年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
〔THE SHISEIDO PHILOSOPHY〕

〔OUR MISSION〕
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
ビューティーイノベーションでよりよい世界を
資生堂は多様化する美の価値観、ニーズをとらえ、
人々に自信と勇気を与え、喜びや幸せをもたらすイノベーションに挑戦します。
美でこの世界をよりよくするためにイノベーションを
おこし続けていくことが私たちの責任であり、使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/企業理念」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
② 中長期経営戦略 「WIN 2023 and Beyond」
当社は、スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を通して、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指す中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を遂行しています。外部環境が急激に変化する中、2021年~2023年の3年間で、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、“スキンビューティーカンパニー”としての盤石な基盤を構築します。
この戦略のもと、2021年は、「変革と次への準備」の期間としてWithコロナへの対応を進めるとともに、困難な決断も先送りすることなく、事業ポートフォリオの再構築を短期間で実行し、2022年以降の再成長に向けた準備を確実に行いました。創業150周年を迎える2022年は「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、グローバルブランドの成長促進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速・進展に取り組みます。
また、2023年の「完全復活」とそれに続く成長を見据え、3年間にわたり、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人財の強化に向け、積極的な投資を継続していきます。

③ 2022年の重点方針 ~構造改革を経て、再び成長軌道へ~
新型コロナウイルス変異株の発現により、経済の先行きに対する不透明感は継続していますが、当社では、一部の地域を除き、2022年中の市場回復を見込んでいます。こうした中、2022年は以下の取り組みを重点的に実施し、「WIN 2023 and Beyond」で掲げた2023年における売上高1兆円程度・営業利益率15%達成に向け、市場の変化にも迅速・的確に対応できる柔軟性を備えた経営体制を整えていきます。
[2022年の重点方針]
● スキンビューティーブランド育成、M&A機会探索
● 欧米収益性改革の続行
● 日本・中国事業 下期の本格回復を目指す
● 中国・トラベルリテール 成長基盤を維持
● 全社DX加速
● 構造改革継続、収益力・生産性の拡大
● 長期取り組み強化(ESG、サプライネットワーク、R&D、“FOCUS”※、人財)
※最先端のテクノロジーを活用して会社のシステムをグローバルに統合し、データの標準化、業務プロセスの最適化を目指す全社的なプロジェクト
上記取り組みにより、2022年12月期の連結売上高は、事業譲渡影響などを除く実質14%成長の1兆1,000億円を見込んでいます。利益については、売上増に伴う差益増の一方、市場の回復を見据えた戦略的投資を織り込み、営業利益600億円を見込んでおりますが、今後の市場回復によるプレミアムスキンビューティーブランドを中心にした売上のさらなる拡大、原価率改善、マーケティング投資効率の向上を通じて、さらなる増益をめざします。また、経常利益635億円、親会社株主に帰属する当期純利益400億円を見込んでいます。
年間の主要な為替レートを、1米ドル=114円、1ユーロ=131円、1中国元=17.5円として計画を策定しています。
なお、2021年11月10日に発表したとおり、当社は2022年第1四半期より、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用します。同基準による2022年12月期の連結業績予想につきましては、2022年第1四半期の決算発表の際に公表予定です。
スキンビューティーブランドの拡充
2021年は、当社が強みを持つスキンビューティー領域をコア事業と位置づけ、スキンケアを中心としたスキンビューティーブランドを核とする事業ポートフォリオに再構築しました。2022年は、従来のスキンケアに加え、肌だけでなく体の内面を整え、健やかで美しい肌を目指すインナービューティーや、美容機器と皮膚科学技術を組み合わせたエイジングケア、そして自然や環境に配慮したサステナブル・クリーンといった領域も強化することにより、スキンビューティーブランドをさらに拡充していきます。
具体的には、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「イプサ」「エリクシール」「dプログラム」といった既存のコアスキンケアブランド(敏感肌含む)やサンケアブランド「アネッサ」の強化、メンズカテゴリーの拡大に加え、メイクアップブランド「マキアージュ」においても、スキンケア効果を兼ね備えた美容液リキッドファンデ―ションを発売するなど、スキンビューティーを充実させていきます。
また、サステナブル・クリーンなブランド「バウム」や「Drunk Elephant」の成長を促進し、今後の伸長が期待できるサステナビリティに配慮するお客さまの需要にも積極的に対応していきます。
その他、1996年の誕生以来進化を続ける「ザ・コラーゲン」ブランドに加え、新しいインジェスティブル(摂取型)※ビューティーブランド「INRYU(インリュー)」を、日本では2022年1月より発売し、中国でも発売を予定するなど、インナービューティー領域も展開していきます。
これらの取り組みにより、当社グループ全体の売上高に占めるスキンビューティーブランドの構成比を、2022年には75%超まで高めていきます。
※インジェスティブル(摂取型):経口で体内に摂取することを意味する。
日本事業における今後の戦略
当社は2022年後半に日本市場の回復を見込んでおり、これを視野に入れながら、成長性の回復と収益性改善に取り組んでいきます。
成長性回復に向けては、プレステージブランドの価値を強化するとともに、プレミアムブランドでは革新的な商品開発により魅力的な商品を提供していきます。加えて、DXの推進により進化したデジタルデータ・ツールを活用し、お客さま一人ひとりの価値観に寄り添ったパーソナルな接客を強化していきます。これらの取り組みにより、愛用者基盤の盤石化を加速します。
収益性の改善に向けては、スキンビューティーカテゴリーの構成比だけでなく、その中の重点ブランドの構成比を高めることにより、プロダクトミックスの好転に伴う原価率の改善を目指します。同時に、Eコマース比率も引き上げて収益性の拡大を図ります。また、マーケティング投資の管理・分析を徹底して投資リターンを最大化するとともに、原価および物流費の低減、組織の効率化に向けたオフィス再編、人的生産性を高めていくことにより、収益性を改善していきます。
中国事業における今後の戦略
中国では、新型コロナウイルス感染症の変異株拡大によるロックダウンなど短期的な影響はあるものの、中長期的にはEコマースとプレステージがけん引し成長が継続すると見込んでいます。こうした中、当社は、既存のブランドに対する投資を最優先し、主力ブランドが、プロダクトラインの拡充やカテゴリーの拡大を通じて、新たな成長領域の構築を図ることで成長を目指します。一方、2021年に新たに導入したブランドについては、そのユニークなブランドポジションを最大限発揮できるオペレーション構築に取り組みます。また、新規のオンライン・オフラインともにチャネル拡大を図り、お客さまとの接点を新たに創出していきます。
一方、成長とともに持続的な収益性を高めるために、自社データベースを拡充し、よりお客さま一人ひとりとつながるパーソナライズされたコミュニケーションを実現させます。中国最大のソーシャルメディア事業者であるTencent(テンセント)グループとの提携により、ソーシャルコマース※売上の拡大を目指します。売上増に伴う差益増のほか、物流センターの統合やサンプルの現地生産化、間接購買の一元化などによりコスト構造を改善し、固定費率を低減していきます。
※ソーシャルメディア(SNS)とEコマース(EC)を掛け合わせて商品の販売促進を行う。
DXの加速
DXの推進については、2021年の資生堂インタラクティブビューティー株式会社の設立や、テクノロジー企業との戦略的パートナーシップの締結を通じ、デジタルを活用した事業モデルへの転換に向け、様々な取り組みを実行していきます。
具体的には、オンライン肌診断プログラムを多言語対応としグローバル展開することにより、幅広い消費者とエンゲージメントを高め、多様な肌データを蓄積していきます。また、先端のデジタルテクノロジーを積極的に活用し、さらに充実したデジタルマーケティングを実現させていきます。「NARS」では、臨場感あふれる世界観と革新的なデジタル技術を融合させ、ゲームの世界や仮想空間でブランドコミュニティを共創し、次世代の参加型マーケティングを展開しています。
これらの取り組みにより、2021年には34%に達したグローバルでのEコマース売上比率を、さらに引き上げていきます。
サプライチェーンの確立:供給能力と生産性の向上
今後のさらなる成長性を確保するためには、中長期的に安定した供給体制の確立が不可欠です。当社では、中長期経営戦略で掲げている“高収益構造への転換”、“スキンビューティーへ注力”、“成長基盤の再構築”を実現するため、2019年の那須工場、2020年の大阪茨木工場の稼働に続き、2022年の福岡久留米工場の稼働により、さらに自社供給体制の強化と生産性の向上を進めます。
大阪茨木工場は、西日本物流センターを併設しており、プレステージスキンケア製品の生産と、物流を担うサプライチェーン拠点として始動しました。生産から輸送にかかる作業効率を上げ、輸送時にかかるコストや環境負荷を軽減していきます。
また、福岡久留米工場は、次世代型工場として、IoTなどの最先端の技術や最新の設備を活用し、既存工場より少ない要員で高い生産性を実現するとともに、周囲の自然と調和し、環境に配慮した工場を目指します。
市場の回復に伴う需要の拡大に迅速かつ的確に対応できるよう、生産・供給体制を整えていきます。

福岡久留米工場(2022年5月稼働予定) デジタル化による生産性向上
環境・社会・ガバナンス(ESG)
長期的な成長を実現するために、当社では環境、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)、コーポレートガバナンスの強化を重要視し、これらを経営戦略の一部として統合していきます。
環境面※1においては、環境関連の中期目標達成に向け、再生可能エネルギーへの切替えやエネルギー効率改善などによるCO2排出量の削減、水や廃棄物量の削減、サステナブルパッケージへの切替えなどに継続的に取り組んでいきます。
社会面においては、D&I、特に女性活躍をさらに推し進めており、国内外の当社グループ全体の女性管理職比率は58%※2に達しています。一方、日本国内の女性管理職比率は37%※2に留まっており、これを長期的に50%にまで高めていきます。また、「30% Club Japan」への参加や「資生堂女性研究者サイエンスグラント」の実施などにより、社外の女性活躍を後押しする活動も継続していきます。
コーポレートガバナンスにおいても、取締役会における社外役員や女性役員の比率を高め、実効性と透明性を向上させていきます。
※1 詳細は、16ページ「6. 社会価値創造に向けた取り組み」を参照ください。
※2 2022年2月時点(速報値)
人財、組織ケイパビリティ:グローバルリーダーシップチーム
当社は、グローバルビューティーカンパニーの実現のためには、強いリーダーシップチームと、高い組織ケイパビリティが重要と考えています。
当社は、2022年1月より執行役員制度を廃止し、エグゼクティブオフィサー体制へ完全移行しました。エグゼクティブオフィサーは、当社グループの全社経営の視点から必要となる重要な職責や役割に対して、CxO(シーエックスオー)として領域ごとに責任を持つポジションです。ダイバーシティ経営を加速させるため、ジェンダー・国籍・年齢などの枠にとらわれることなく、これまで以上に適材適所を実現し、多様な人財を社内外問わずグローバルで登用していきます。
④ 全社員参加型の未来プロジェクト Project Phoenix 始動
当社のコア事業である化粧品事業のグローバルな復活・成長を目指して、2021年11月に「Project Phoenix」を立ち上げました。「Project Phoenix」は、化粧品事業に関連する社員一人ひとりが、成長と発展のための大胆なアイディアを出すボトムアップ型のプロジェクトです。各地域で、リージョンCEOのリーダーシップの下、各職場で多様性に富んだ意見やアイディアを収集していきます。
「WIN 2023 and Beyond」で掲げた”2030年スキンビューティーカンパニー世界 No.1”を確実に達成するために、ブランド、商品開発、イノベーション、サステナビリティ、デジタル、サプライチェーン、人財・組織など多岐にわたる視点から、社員が自発的に課題を洗い出し、改善策を模索・提案していきます。こうして集まった提案を経営戦略に反映させ、全社がさらなる連帯感をもって”世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指していきます。

⑤ 株主還元と創業150周年記念配当
株主への利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」 を目指しています。フリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。
また、創業150周年を記念して、記念配当を実施する方針です。これは、株主を含むステークホルダーからの長期にわたる支援に対し感謝するとともに、当社の未来の発展への決意を込めて実施するものです。
なお、2022年12月期配当予想(創業150周年記念配当)に関しては、当社企業情報サイトに掲載している以下のニュースリリースを参照ください。
https://bit.ly/362vDoq (短縮URL)

⑥ 社会価値創造に向けた取り組み
サステナビリティの推進体制
資生堂では、ブランド・地域事業を含む、全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。
2020年にサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、サステナビリティ関連課題について専門的に審議し決議するSustainability Committeeを設置しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定や、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。社長 CEOを含む、経営戦略、R&D、サプライネットワーク、広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論しています。
2021年は、従来のSustainability Committee開催に加えて、サステナビリティ課題を経営へ取り込むべく、関係するエグゼクティブオフィサーや主要組織の実務推進責任者と実行における対応を議論・決定する会議を追加実施し、全社での推進を強化しました。また、業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会にも諮り、審議しています。
2022年1月には、サステナビリティ活動を強化・拡充し、経営戦略・事業戦略と一体的に運用・推進していくため、組織改正を行いました。具体的には、経営革新本部内に全社のサステナビリティに関する戦略・推進機能を担う「サステナビリティ戦略推進部」を設置し、社内外に向けて当社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)アクションを加速するために「D&I戦略推進部」を新設しました。
〔環境関連の中期目標〕
※1 資生堂全事業所、Scope1+2 ※2 資生堂全事業所、売上高原単位 ※3 自社工場のみ
※4 プラスチック製容器について ※5 製品における
TCFD提言に基づく気候変動リスクと評価のシナリオ分析
資生堂は、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、2019年4月にTCFDへの賛同を表明し、TCFDフレームワークに沿った情報開示に着手しました。2020年はリスクと機会の定性分析の結果を開示、2021年は定量的に分析する手法を開発し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会、および気候変動にともなう自然環境の変化によって引き起こされる物理的リスク・機会について、1.5℃シナリオと4℃シナリオそれぞれにおいて、分析結果と主な対応アクションを開示しました。
<シナリオ分析の内容>
1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示したRCP(代表濃度経路)とSSP(共通社会経済経路)シナリオに沿ってリスクと機会について分析を行いました。リスクについては、1.5/2℃シナリオでは、脱炭素の移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を分析し、積極的な気候変動対策がとられない4℃シナリオにおいては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について分析を実施。その中で、特に影響の大きな炭素税、市場や消費者動向、洪水、水不足などに伴うリスク要因について、2030年時点での財務影響を定量化しました。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオでは、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まることが予想され、4℃シナリオでは、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大することが予想されます。
今後は、事業と連携して対応アクションを策定し、経営・事業計画に反映させることでバリューチェーンを通じたリスクの緩和に努めるとともに、機会創出につながる取り組みについて、順次開示していきます。同時に、イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していきます。
環境対応パッケージ開発促進
CO₂排出量や海洋プラスチックごみ問題などは、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題であり、当社はサステナブルな容器の開発などで対応を強化しています。当社はサーキュラー・エコノミーの考えに賛同し、2025年までに100%サステナブルな容器※1とすることを目標として定めました。環境負荷軽減に向けて、容器包装に関するポリシー5Rs(Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース))に基づき、製品のライフサイクル全体を通じた取り組みを推進します。
2021年においても、環境に配慮した様々な容器包装の取り組みを実施しました。例えば、プラスチック使用量の削減だけでなく、本体容器の繰り返し使用が促進できる「つめかえ・つけかえ」容器のグローバル展開、容器を再利用するプラットフォームLoop※2での製品の発売、リサイクルに適した単一素材容器、石油由来に比べCO₂排出量の少ないサトウキビ由来ポリエチレンを使った容器、そして株式会社カネカとの共同による優れた生分解性が期待される素材「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet™※3」の化粧品容器への応用を実現しています。また、製品だけでなく、日用品/化粧品4社協働※4にて販促物に使用するプラスチックを紙製に変更する取り組みも実施しています。
加えて、小売店や競合他社と協働し、お客さまから使用後の空き容器を回収・リサイクルし、資源として再活用しています。
このように、当社の独自の技術や社外とのコラボレーションを通じたイノベーションにより、製品の使いやすさや美しさとともに、環境課題解決も追求していきます。
※1 プラスチック製容器について
※2 Loop: 米国に本社を持つテラサイクル社が開発した容器を回収・洗浄し再利用する循環型ショッピングプラットフォーム。米国、フランスなどではすでにスタートし、2021年に日本においてEコマースで販売
※3「カネカ生分解性ポリマー Green Planet™」:株式会社カネカが独自に開発した100%植物由来のポリマーであり、海中や土中など幅広い環境下で優れた生分解性が期待される素材
※4 資生堂ジャパン株式会社、株式会社ファイントゥデイ資生堂、ユニ・チャーム株式会社、ライオン株式会社
メイクを通じた社会貢献活動、「メセナアワード 2021」で優秀賞を受賞
当社のがん患者さんを支援する活動「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」が、公益社団法人 企業メセナ協議会が主催する「メセナアワード 2021」において、優秀賞を受賞しました。2017年より開始した本プロジェクトは、化粧のちからで、がん患者さんが、「がんに支配されることなく自分らしく、生きていく」という意思を表現することを支援する活動です。今後も社会課題に対して真摯に向き合い、経営資源および当社が本業を通じて培った知見や経験を活かしながら、企業や団体、病院、学校などとの連携を一層強化することで、同様のお悩みを持った方々への支援を展開していきます。
創業150年の歴史を未来へとつなげるヘリテージ教育の強化
創業から150年にわたって積み重ねてきた、資生堂のヘリテージは私たちの強みです。この強みとナレッジを未来のイノベーションの糧とするため、社員に向けたヘリテージ教育を強化しています。
日本国内の営業担当・ビューティーコンサルタントに向けて、「BEYOND OUR HISTORY」と題した講演を実施し、創業から近代の歴史とその背景にある先人の想いをエピソードとともに伝え、リアルとオンラインを組み合わせて2,000人以上の社員に直接語りかけました。あわせて講演内容を映像コンテンツとして制作し、より多くの社員が資生堂の創業からの想いを学べるよう配信しました。グローバルな取り組みとしては、資生堂企業資料館が収集保存してきた資料および情報を全世界の社員が閲覧できるデータベース、「SHISEIDO ARCHIVES」をイントラネット上に整備しました。現在は約13万件のアーカイブが公開され、今後さらに閲覧可能なデータを増やすとともに機能を強化し、社員によるアーカイブ活用を加速させていきます。価値開発に携わるブランドホルダーやR&D部門に向けては、資生堂のDNAのひとつである「アート&サイエンス」を体感するための特別プログラムを構築し、最先端のアートや資生堂の美意識がこめられたヘリテージと向き合うことを通じて、ユニークで新しい価値を生み出すための感性を刺激しています。
こうした活動により、一人ひとりの社員が資生堂のヘリテージにインスパイアされ、他社にはない独自の価値を創造していくことを目指しています。
資生堂健康宣言および資生堂ビジョン・ゼロ宣言(安全宣言)
私たちは、本業であるビューティービジネスそのもので社会課題の解決や人々が幸せになるサステナブルな社会を実現することが、資生堂の使命であると考えています。それを実現するため、「資生堂健康宣言」および「資生堂ビジョン・ゼロ宣言(安全宣言)」を策定しました。
サステナビリティ関連銘柄・インデックスへの選定
当社は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する令和2年度「なでしこ銘柄」に選定されました。「なでしこ銘柄」とは、女性活躍推進に優れた上場企業を中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することにより、そうした企業に対する投資家の関心を一層高め、各社の取り組みを加速化していくことを狙いとするものです。
加えて、当社は、世界の代表的なサステナビリティ指標である「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)World」および、アジア・太平洋地域を対象とした「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に選定されました。同インデックスは、企業の「経済・環境・社会」の3つの側面から企業活動を分析・評価し、持続可能性に優れた企業を選定するもので、企業の社会的責任に関心を寄せる投資家の意思決定にとって、重要な指標の一つとなっています。
当社は、今後も、ジェンダーや環境など様々な社会課題に、本業であるビューティービジネスを通して取り組むことにより企業価値をさらに向上させるとともに、「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指していきます。
当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性のある事項と考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年3月25日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。
当社では、「あらゆるステークホルダーとの信頼関係を築き、中長期経営戦略の実現を一層確実なものとすること」を主眼に置いてリスクマネジメントを推進しています。そのため、リスクを戦略実現に影響を与える「不確実性」と捉え、脅威だけでなく、機会も含めた概念として定義し、必要な体制を構築するとともに、積極的かつ迅速に対応策を講じています。
定期的に当社グループのリスクを特定し対応策等を審議する体制として、当社CEOを委員長とし各地域CEOおよび当社エグゼクティブオフィサー等をメンバーとする「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」を設置しています。また、リスクに関連する情報は、グループCLO(チーフリーガルオフィサー)直轄のリスクマネジメント部門に集約されます。
2021年度は、総合的・多面的な手法(ホリスティックアプローチ)を用いてリスクを抽出しました。具体的には、当社CEOをはじめとしたエグゼクティブオフィサー、各地域CEOのリスク認識を把握するインタビュー、ならびに各地域で実施した地域ごとのリスク評価、当社関連機能部門との情報交換等を元に、リスクマネジメント部門による分析や外部有識者の知見を加えて、「WIN 2023 主要戦略※1」実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定しました。
そして、それらのリスクについて、「リスクが顕在化した場合の経営成績等に与える影響」、「リスクが顕在化する可能性の程度や時期」、「当該リスクへの対応の十分性」の3つの評価軸を設定し、上記Committeeや個別会議※2などを通じて、リスクの優先付けおよび対策状況の検討・確認を行いました。
アセスメントの結果抽出されたリスクは、その性質に基づき、外部の変化に起因する「生活者・社会に関わるリスク」、内部の活動に起因する「事業基盤に関わるリスク」、そして「その他のリスク」の3つのリスクカテゴリーに分類し対応しています。
また、リスクごとにリスクオーナーを設定し、対策の責任を明確化し、さらに透明性高いモニタリングを実施するため、推進状況を定期的に上記Committeeおよび取締役会にて議論する仕組みを構築・運用しています。
当連結会計年度のアセスメント結果で特筆すべき点として、各リスクの結びつきが強固になっており、それに伴い各リスクにおける対応策の相互依存関係が一層高まっていること、また、「生活者の価値観変化」および「優秀な人材の獲得・維持と組織風土」が他のリスクに与える影響が大きいことが挙げられます。
以下に領域ごとに、主要戦略との関係性と想定されるリスク(脅威・機会)、対応策の概要を記述します。なお、記述内容は、2022年3月25日時点におけるものです。
※1 WIN 2023 主要戦略
※2 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、Committeeの全メンバーが一堂に会する対面方式での会議開催が困難な場合があったため、リスクマネジメント部門と各メンバーとの個別オンライン会議などの手段で代替しました。
<生活者・社会に関わるリスク>
<事業基盤に関わるリスク>
<その他のリスク>
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(注)1 EBITDAは、特別損失に計上した「減損損失」および「新型コロナウイルス感染症による損失」に含まれる減価償却費を含めています。
2 売上高における実質増減率は、パーソナルケア事業およびプレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」)の譲渡影響などを除いて計算しています。
当連結会計年度の景況感は、新型コロナウイルス感染症拡大によりグローバルで経済活動が停滞し、企業収益や雇用情勢の悪化などによる消費マインドの低下など、厳しい状況が続きました。国内化粧品市場は、断続的な緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛などによる来店客数減少に加え、訪日外国人旅行者の減少に伴い、インバウンド需要も影響を受けました。海外化粧品市場は、全体として新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているものの、ワクチン接種の普及が進み、欧米を中心に回復基調となりました。
当社は、急激に変化する外部環境やこれまでの中長期戦略を踏まえ、プレミアムスキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行し、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指す中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を遂行しています。2021年~2023年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、“スキンビューティーカンパニー”としての盤石な基盤を構築します。
初年度である当連結会計年度は、「変革と次への準備」の期間と位置づけ、Withコロナへの対応と準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革および財務基盤の強化に取り組みました。具体的には、パーソナルケア事業やプレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」)の譲渡、Dolce&Gabbana S.r.l.とのグローバルライセンス契約の解消などを実行しました。また、DXの推進については、アクセンチュア株式会社との合弁会社資生堂インタラクティブビューティー株式会社を設立し、グローバルではデジタルマーケティング戦略強化のため、中国テクノロジー大手Tencent(テンセント)グループとの戦略的パートナーシップを締結しました。加えて、生産・物流体制を強化する大阪茨木工場および西日本物流センターも本格稼働しています。
当連結会計年度は、すべての地域で新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けましたが、日本を除く各地域では売上高を大きく回復させることができました。特に注力しているスキンビューティーブランドおよびEコマースの拡大が全社の成長に大きく貢献しています。
① 売上高
売上高は、すべての地域で新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けましたが、市場環境が厳しい日本を除く、各地域では売上高を大きく回復させることができました。特に注力しているスキンビューティーブランドへの戦略投資およびEコマースの拡大により、売上高は前年比 12.4%増の 1 兆 352 億円、現地通貨ベースでは前年比 7.8%増、事業譲渡などの影響を除く実質ベースでは前年比 11.9%増となりました。

ブランド別には、事業譲渡および事業譲渡に伴う製品供給等の影響を除いた「実質外貨前年比」の比較において、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」および「NARS」の売り上げは、中国事業において中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”で市場を大きく上回る売上成長を達成したことなどに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているものの、ワクチン接種の普及が進み、欧米を中心に市場が回復したことによりそれぞれ前年比15%増、21%増、39%増となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比10.3%増の2,630億円となりました。売上高に対する比率は、事業譲渡に伴う製品供給による原価率上昇はあったものの、 事業譲渡に伴うプロダクトミックスの好転、国内工場の生産性向上や在庫償却関連費用の減少などにより前年比0.5ポイント減の25.4%となりました。なお、事業譲渡に伴う製品供給による原価率上昇を除いた実質の原価率は前年比2.0ポイント減の23.9%となりました。
販売費及び一般管理費は、前年比9.5%増の7,306億円となりました。その内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト※
マーケティングコストの売上高に対する比率は、デジタルコミュニケーションの強化、市場回復に向けた投資強化、中国・トラベルリテール事業でのクロスボーダーマーケティングを含めた戦略的投資により、前年比0.7ポイント増の29.3%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年比0.8ポイント減の3.5%となりました。
(ハ) 人件費※
人件費の売上高に対する比率は、業績に応じて支給される賞与が増加したものの、欧米を中心とした不採算カウンター数減・構造改革等による人件費の適正化を進めた結果、前年比0.7ポイント減の21.3%となりました。
(ニ) 経費
経費(その他費用)の売上高に対する比率は、ゼロベースでのコスト見直しにより、前年比1.1ポイント減の16.5%になりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は256億円となり、売上高に対する比率は2.5%となりました。
なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
※マーケティングコストは、BC(ビューティーコンサルタント)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は38.2%となりました。人件費は、当該費用を除いた場合は、売上高に対する比率は12.4%となりました。
営業利益は、売上増に伴う差益増、プロダクトミックスの改善に加え、市場の変化に合わせた適切なコストマネジメントを実施したことなどにより、前年比177.9%増の416億円となりました。
経常利益は、営業利益の増加に加え、為替差益が増加したことにより、前年比365.2%増の448億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、「DOLCE&GABBANA」に係る商標権の減損損失およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡に伴うのれんの減損損失を計上した一方、営業増益およびパーソナルケア事業譲渡による特別利益計上などにより、前年に対し541億円増益の424億円となりました。
連結売上高営業利益率は4.0%、連結ROE(自己資本当期純利益率)は8.2%、連結ROIC(投下資本利益率)は3.3%となりました。
当連結会計年度における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1米ドル=110.0円、1ユーロ=129.9円、1中国元=17.0円です。
(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
(注)1 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です。
2 売上高における実質増減率はパーソナルケア事業およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除いて計算しています。
営業利益 (参考)
(注)1 当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「米州事業」に計上していたデジタル戦略に係るグローバルサービス機能の業績を「その他」に計上しています。また、「その他」に計上していたサプライネットワーク機能の業績を「日本事業」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 従来「日本事業」、「中国事業」および「アジアパシフィック事業」に計上していた各地域販売子会社のパーソナルケア事業に係る売上高は、パーソナルケア事業の譲渡および商流変更に伴い、2021年7月1日以降、一部を除き発生していません。一方で、当社および当社製造子会社による㈱ファイントゥデイ資生堂およびその関係会社への売上は同日以降「その他」に計上しています。
3「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、資生堂美容室㈱、生産事業および飲食業などを含んでいます。
4 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
5 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業では、コロナ禍で変化したお客さまニーズを捉え、スキンビューティー領域への戦略的投資を強化し、ベースメイクやサンケアなどのカテゴリーにおいてシェアを拡大しました。また、ライブコマースやWebカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くのお客さまとの接点を創出しました。これらにより、Eコマース売上は2桁成長しました。前年に引き続き、お客さまのニーズに対応したマスクにつかない商品の迅速な開発・導入に取り組んだほか、「Second Skin」技術を搭載した画期的な新製品の発売など、お客さまへの提供価値の最大化を追求しました。また、全国の医療従事者の方々に敬意と感謝の意を伝えることを目的とした「資生堂 Hand in Hand Project」を展開し、感染拡大防止と寄付や商品の提供により医療現場の方々をサポートしました。
一方、緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛などに伴い来店客数が減少したことに加え、訪日外国人旅行者の減少によりインバウンド需要も低調でした。
以上のことから、売上高は前年比8.9%減の2,762億円となりました。パーソナルケア事業の譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比1.4%減となりました。営業利益は、上期の海外向け輸出事業の売上増に伴う差益増に加え、市場の変化に合わせコスト効率化を進めたものの、売上減による差益減があり、前年比0.9%減の96億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、第3四半期の記録的豪雨や、主要都市を中心とした新型コロナウイルス変異株の拡大に伴い、店舗の一部閉鎖や来店客数減少などの影響を受けましたが、戦略的に投資を強化しているEコマースは好調に推移しました。中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”で市場を大きく上回る売上成長を達成したことなどにより、Eコマース売上比率は40%台後半に達しました。プレステージブランドへの戦略的投資を継続することで、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」など、高価格帯領域においてシェアを拡大しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比7.0%増、円換算後では前年比16.5%増の2,747億円となりました。パーソナルケア事業の譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比19.1%増となりました。営業利益は、注力ブランドへのマーケティング投資を強化したほか、一部、原価悪化に加え、パーソナルケア事業譲渡影響などにより前年比93.6%減の12億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、一部の国・地域で新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響が続きましたが、当社は各地域の主要Eコマースプラットフォーマーへの展開を強化したほか、「SHISEIDO」や「NARS」などのプレステージブランドが飛躍的に成長したことにより、アジア全体のEコマースでシェアを拡大しました。また、「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、各国・地域で母の日キャンペーンを行うなど積極的なプロモーションを行いました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比3.8%増、円換算後では前年比9.9%増の650億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比5.8%増となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比15.1%増の37億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていましたが、ワクチン接種の普及に伴い、回復が遅れていたメイクアップを含め化粧品市場のモメンタムが改善しました。その中で、米国発のスキンケアブランド「Drunk Elephant」は店舗数を拡大したほか、「NARS」はバーチャル新店舗をオープンさせるなどデジタルマーケティングを強化しシェアを拡大しました。また、プロモーションを強化した「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」に加え、フレグランスブランドも好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比28.4%増、円換算後では前年比32.8%増の1,214億円、プレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比29.9%増となり、2019年を上回る水準に回復しました。営業損失は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での固定費削減による収益性改善が寄与したことなどにより、前年に対し95億円改善の132億円となりました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていましたが、ワクチン接種の普及に伴い、スキンケアやフレグランスを中心に市場は回復基調となりました。その中で、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、オンラインカウンセリングやデジタルプロモーションの強化によりEコマース売上も伸長するなど、需要回復を捉え、全カテゴリーでシェアを拡大しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比16.4%増、円換算後では前年比24.1%増の1,170億円、プレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比16.5%増となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での収益性改善が寄与したほか、デジタルメディア投資強化に伴う費用効率化や固定費削減などにより、前年に対し157億円改善の25億円となり、黒字に転換しました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は、引き続き国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少などの影響を受けました。中国海南島においても、新型コロナウイルス変異株拡大に伴うフライトの減便など、移動制限の影響を受けましたが、Eコマース売上を中心に大きく成長しました。また、「Drunk Elephant」の展開強化に加え、主要ブランドの海南島での店頭カウンター数の拡大などにより、アジアを中心に力強い成長を実現しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比18.4%増、円換算後では前年比22.3%増の1,205億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比49.9%増の220億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売しています。当期は、一部の国・地域では新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続きましたが、ヘアサロンへの来店客数の回復やEコマースでのプロモーション強化、新プレミアムヘアカラーブランド「ULTIST」、サステナブルな取り組みのもとに作られたサロン向け新ヘアケアブランド「HAIR KITCHEN」の貢献などにより、売上高は現地通貨ベースで前年比19.6%増、円換算後では前年比24.4%増の159億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し8億円改善の8億円となり、黒字に転換しました。
(生産、受注及び販売の実績)
生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、ネットデット・エクイティ・レシオ0.2倍、ネットEBITDA有利子負債倍率0.5倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力及びキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑤株主還元と創業150周年記念配当」に記載の株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,721億円となり、手元流動性は連結売上高(2021年1月1日から2021年12月31日までの期間)の2.0カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は1,934億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,700億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドルを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。
2022年2月28日現在の発行体格付けはA2(見通し:ネガティブ)となっています。
当連結会計年度末の総資産は、事業譲渡に伴うたな卸資産および無形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ249億円減の1兆1,794億円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、事業譲渡で得た資金を有利子負債の返済に充当し857億円減の6,119億円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
当連結会計年度末の純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上および円安による為替換算調整勘定の増加などにより608億円増の5,674億円となりました。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に対し151.94円増の1,364.28円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末比6.0ポイント増の46.2%となりました。また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオ※およびEBITDAに対する現預金を除いた有利子負債の割合を示すネットEBITDA有利子負債倍率は以下のとおりです。
※ネットデット・エクイティ・レシオの計算における有利子負債は社債、借入金、リース債務です。
(単位:百万円)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ202億円増加し、1,565億円となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡益(740億円)、法人税等の支払額(239億円)、構造改革費用の支払額(220億円)などがあった一方、税金等調整前当期純利益(733億円)、減価償却費(630億円)などの非資金費用、仕入債務の増加(340億円)などにより、前年同期に比べ588億円増加の1,229億円の収入となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出(725億円)、無形固定資産の取得による支出(199億円)などがあった一方で、事業譲渡による収入(1,499億円)などにより、前年同期に比べ1,338億円増加の637億円の収入となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(100億円)などがあった一方で、長期借入金の返済による支出(947億円)、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少による支出(579億円)、配当金の支払額(160億円)、リース債務の返済による支出(105億円)などにより、前年同期に比べ2,231億円支出は増加し1,762億円の支出となりました。

当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フローおよび回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
なお、当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失26,463百万円を計上しています。
当社グループでは、のれん、商標権およびその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権およびその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。なお、「資生堂アメリカズCorp.」報告単位に関するのれんの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、地域および事業によって異なるものの、2022年下期から回復基調となり、2023年に本格回復するという一定の前提をおいています。
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態および経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態および経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度です。従業員の退職給付費用および債務は、割引率、退職率、死亡率および年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用および債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類ごとに期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用および債務に影響を及ぼす可能性があります。
(パーソナルケア事業の譲渡)
当社は、2021年7月1日付けで当社のパーソナルケア事業(以下、「対象事業」)を当社および当社国内子会社(資生堂ジャパン㈱および㈱エフティ資生堂) から会社分割により㈱ファイントゥデイ資生堂(以下、「新FTS」)に承継させ、新FTSの全株式を㈱Oriental Beauty Holding(以下、「OBH」)に譲渡しました。また、当社は2021年7月1日に現物出資によりOBHの完全親会社である㈱Asian Personal Care Holding の株式の35%相当を取得しました。なお、2021年10月1日付けで OBHを存続会社、新FTSを消滅会社とする合併が行われ、合併後のOBHの商号を㈱ファイントゥデイ資生堂に変更しています。
また、2021年7月1日に当社中国子会社2社(資生堂(中国)投資有限公司および資生堂化妆品制造有限公司)、2021年9月1日に当社中国子会社1社(資生堂香港有限公司)およびアジアパシフィック子会社2社(Shiseido Singapore Co., (Pte.) Ltd.、Shiseido Korea Co., Ltd.)は、対象事業に係る資産をOBHの関係会社に譲渡しました。
上記取引に加え、正味運転資本の減少等を調整した後の、株式および資産の譲渡対価合計は、143,153百万円です。
上記を除くアジアで対象事業を展開する当社子会社7社(台湾資生堂股份有限公司、法来麗國際股份有限公司、Shiseido Thailand Co., Ltd.、Shiseido Malaysia Sdn. Bhd.、Shiseido Philippines Corporation、PT. Shiseido Cosmetics Indonesia、Shiseido Cosmetics Vietnam Co., Ltd.)は、2022 年以降に対象事業に係る資産を譲渡する予定です。
なお、この会社分割、株式譲渡、資産譲渡および現物出資による株式取得は、当社およびOBHの間の Purchase Agreementに基づいて行われています。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
(Dolce&Gabbana S.r.l.とのグローバルライセンス契約の一部解消)
当社の子会社であるボーテプレステージインターナショナルS.A.S.は、Dolce&Gabbana S.r.l.(以下、「D&G社」)との間で締結していた、フレグランス、メイクアップ、スキンケア商品の開発、生産及び販売・マーケティングに関するグローバルライセンス契約(以下、「本ライセンス契約」)を解消することについて、2021年4月28日にD&G社と合意しました。
本ライセンス契約の解消に伴い、すべての市場での本ライセンス契約に関する事業展開が2021年12月31日を効力発生日として終了しました。
(プレステージメイクアップブランド「bareMinerals」、「BUXOM」および「Laura Mercier」の譲渡)
当社は、2021年12月6日付けで、アメリカ地域本社であり当社子会社である資生堂アメリカズCorp.(本社所在地:米国、デラウェア州、以下、「資生堂アメリカ」)を通じ、プレステージメイクアップブランド「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」の3ブランドに関して、プライベートエクイティファンドAdvent International Corporation(本社所在地:米国、マサチューセッツ州)が出資する法人に関連資産(資生堂アメリカの子会社株式を含む)を譲渡しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
(プロフェッショナル事業における会社分割および承継会社の株式譲渡)
当社は、当社のプロフェッショナル事業(以下、「対象事業」)を譲渡することを決定しました。この決定を受けて、会社分割(吸収分割)により、当社が日本国内で保有する対象事業の関連資産を当社から当社の100%子会社である資生堂プロフェッショナル株式会社(以下、「SPI」)に承継させることを前提に、SPIの株式の80%をHenkel AG & Co. KGaA(以下、「ヘンケル」)の子会社であるHenkel Nederland B.V.に譲渡するとともに、海外における対象事業の子会社株式および関連資産をヘンケルグループ会社に譲渡することに関して、2022年2月9日付けで法的拘束力を有する正式契約を締結しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、人間科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、日本発のイノベーションを創出することで、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。
資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでいます。新たに2021年には、美容・健康産業特区「東方美谷」の中国イノベーションセンター新拠点での本格的な活動を開始しました。同地区内で展開する様々な企業・機関と協働し、中国の化粧品業界をリードするとともに、資生堂グループ全体の成長に貢献します。
当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けています。化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「国際化粧品技術者会連盟カンクン中間大会2021」(IFSCC Conference 2021 in Cancún)において、口頭発表部門の「最優秀賞」を受賞しました。総受賞回数は通算29回(うち最優秀賞は25回)となり、世界の化粧品メーカーの中では最多の受賞回数となります。
さらなる研究開発活動強化を目的に、独自の研究開発理念として「DYNAMIC HARMONY」を制定しました。「DYNAMIC HARMONY」は、明治期に日本初の民間洋風調剤薬局として創業以来取り組んできた、西洋の科学と東洋の叡智を融合した成り立ちに端を発するものです。一見相反する価値や両立が難しい価値を融合し、唯一無二の新たな価値を生み出すという独自の研究開発の考え方を当社の強みとして再定義し、明文化しました。この理念のもと、5つの研究アプローチを柱に据え、多様なバックグラウンドをもつ世界中の研究員が能力を最大限発揮することを狙います。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
(1)スキンケア
シワができる本質には皮膚のかたさが大きく関わると考えられますが、皮膚は性状の異なる複数の層から形成されるため、シワの本質を理解するためには層ごとのかたさを評価する技術開発が必要とされていました。最先端の3D弾性イメージング技術を独自に開発して、幅広いお客さまの皮膚の層毎のかたさとシワの関係を調査した結果、加齢にともなって生じる「角層と真皮層の間で生じるかたさのバランスの崩れ」がシワの本質であることを発見しました。今回の研究成果は、まだ見えないシワの予防から刻まれたシワの改善までが可能になる、画期的なスキンケアへ繋がる知見です。本研究成果を「SHISEIDO」の商品開発にて応用しました。
シミと異常な毛細血管ネットワークの関係性について明らかにしてきましたが、更なる研究によりシミ部位での血管生成に関わる因子の機能の高まりとその抑制成分を見出しました。加えて、独自の肌内部の血管観察技術を用いて、シミ部位の血管状態がシミの形成だけでなく改善プロセスにおいても密接に関係していることを解明し、美白ケアにおける血管の重要性が改めて示されました。本技術を「HAKU」へ応用しました。
日焼け止めには、高い紫外線防御力や耐水性などの観点から酸化チタンなどに代表される粉末が一般的に用いられています。高い機能性を持つ一方で、肌への負担感や塗布後の被膜感、白さなど使用感触の面では課題もありました。そこで紫外線防御粉末を微細化する技術 “スムースプロテクトテクノロジー”を新たに開発し、自社従来品よりも少ない紫外線防御粉末で効果的に日焼け止め効果を引き出すことに成功しました。本技術を「アネッサ」へ応用しました。
(2)メイクアップ
シワ、たるみなどの形状の悩みは加齢とともに加速し、改善したいというニーズは広く存在しています。しかし、目袋のような大きな形状変化の改善は困難でした。そこで、米国ベンチャー企業 Olivo Laboratories より取得した「Second Skin」の基本技術に当社の強みである処方開発技術を組み合わせ、たるんだ目もとを自然な見え方でカバーするだけでなく長時間持続させる、効果と剥がれにくさを両立させた製剤の開発に成功しました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。
つやのある仕上がりをもち色移りしにくい口紅類を開発してきましたが、マスクによるこすれ対応には課題がありました。そこで、ジェル中へ独自成分とティント成分、密着油分・コート油分の2種の油分を配合する技術を開発しました。ジェルを唇に塗布すると、ティント成分は唇に染めつき、2種の油分は独自成分のサポートを受け「コート層」、「密着層」の二層に分かれ、つやのある滑らかな膜を形成します。このオイルコントロール技術により、マスクへの色移りのしにくさと、つやのある仕上がりの両立に成功しました。本技術を「マキアージュ」へ応用しました。
(3)ヘルスケア
美と健康をつなぐ食品の研究開発を進めています。「コケモモ」と「アムラ果実」の美容成分がコラーゲンを生み出す力を相乗的に高めるという研究成果を「ザ・コラーゲン」へ応用しました。
(4)ヘアケア
「ナチュラルやサステナブルなヘアケアアイテムには興味はあるが、仕上がりや使用感には満足できない」と感じている方が多い点に着目し、厳選された天然由来の野菜や果物のエキスやエシカル・サステナブルな香料を一部に使用しながら髪および頭皮に優しくなめらかな使い心地を実現した処方を開発し、「HAIR KITCHEN」へ応用しました。
(5)デジタル・機器
非接触かつメイクを落とさなくても、サーモカメラ計測による皮膚表面温度から肌内部の血流状態を判定する機器を開発しました。透明感、ハリ・弾力、なめらかさなどの肌要素も同時に判定することで、肌の内外の判定結果から、パーソナライズされたビューティーアドバイスが可能となりました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。
高周波・低周波を含む複合的な物理刺激(STエネルギー)を肌組織に作用させることで、毛細血管密度を高め、新しい肌を生みだす真皮幹細胞の数を増やすことを発見しました。さらに、顔に4週間、物理刺激とそれを肌に伝えるために最適化した化粧品基剤を毎日1回組合せて使用連用した結果、ハリの改善などの効果を見出しました。本技術を「EFFECTIM」へ応用しました。
以下、その他の活動について記載します。
サステナブルな製品開発(パッケージ、処方)を推進しています。パッケージにおいては、リユースの取り組みとして、洗浄・製品の再充填および再販売ステップへの耐久性と高級感を兼ね備えたガラス容器を独自開発して「AQL」へ応用し、循環型ショッピングプラットフォーム“Loop”サイトでE-コマースにて発売しました。
オープンイノベーションもさらに強化すべく、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を推進しています。活動の1つの目的である「スタートアップ企業のアイデアを商品やサービスへスピーディーに活用」への取り組みでは、株式会社ORPHEと共同で歩行の美しさに関する新評価法の実証実験を開始しました。「美しい歩行動作」を定量化する独自評価法と株式会社ORPHEが保有する小型センサー内蔵のスマートシューズとアプリを用いた動作分析システムの融合により、歩行動作の分析・評価サービスの提供、さらには美しい動きと肌や心身の健康との関連解明を目指します。また、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFEプラットフォーム」が新たに立ち上げた「THINK SPACE LIFE アクセラレータプログラム2021」に参画し、「生活リズム/体内リズムの見える化と適正化による美の実現」について事業提案を募りました。今後、選定企業と共同開発を進め、新事業価値創出、さらには宇宙における暮らしへの応用を目指します。
社外に向けてR&D戦略発表会を開催しました。紫外線を肌に有益な光に変え,環境と共生してその恵みから美を生み出す「紫外線変換技術」、加齢や重力による顔の変化を肌の外側と内側の双方向から最先端解析技術で解き明かした「たるみ研究」、目袋やほうれい線など圧倒的な顔の形状補正効果と、使いやすさの両立を追求し叶える「『Second Skin』技術」の発表を行いました。これらの研究や技術の進化をすすめ、商品へのさらなる活用を目指していきます。