文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2023年3月24日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
①企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY
当社は、1872年に創業し、昨年2022年に150周年を迎えました。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指しています。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの150年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
〔THE SHISEIDO PHILOSOPHY〕

〔OUR MISSION〕
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力が
あると信じています。
資生堂は創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の
発見と創造を行ってきました。
これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。
美の力でよりよい世界を。
それが、私たちの企業使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/THE SHISEIDO PHILOSOPHY」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
②中期経営戦略 「SHIFT 2025 and Beyond」~Shift for New Growth~
当社は、今年からスタートする2023年から2025年までの3ヶ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定しました。「SHIFT 2025 and Beyond」は、「守り」から「攻め」に転じる躍動の期間として、新経営体制のもと、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、さらなる事業成長を確実なものにします。
2021年から取り組んできた中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」は、新型コロナウイルス感染症が厳しい影響をもたらす中、多くの成果を生み出しました。まず、収益性を高めるため「選択と集中」を実行し、パーソナルケア事業譲渡やメイクアップブランドの譲渡など厳しい判断を必要とする変革を世界中で鋭意進め、徹底した構造改革を実施しました。また、長年の懸案であった欧米の収益性を改善しました。さらに全社でのスキンビューティー売上比率を着実に拡大させました。そして、日々変化する市場環境に迅速に対応するデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や FOCUS※1への投資、最先端技術を搭載した新工場や物流体制を構築し、高い品質や生産性を実現しました。このようなさまざまな取り組みを間断なく実行し、強固な財務基盤を確立することができました。
「SHIFT 2025 and Beyond」では、まず「WIN 2023 and Beyond」の残った課題である日本事業の成長性回復に取り組みます。2023年から3年間の抜本的な改革により、2025年に同事業で500億円を超えるコア営業利益を実現します。また、同期間において全社をあげて持続的な売上成長と収益性を向上させるための改革を実行し、Personal Skin Beauty & Wellness Company を目指します。長期的な成長を目指すうえで、「ブランド」、「イノベーション」、「人財」の3つの重点領域への投資を強化し、コア営業利益率で、2025年までに12%、さらに2027年の最終年度には15%という目標達成を計画しています。引き続き当社は、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指していきます。
長期的な成長を目指した主な重点領域
ブランド価値の向上・強化
「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」などのグローバルブランドをはじめ、「エリクシール」などアジアをメインに展開しているブランド、フレグランスブランド、メンズブランドそして戦略的に開発された新ブランドに対して、マーケティング投資について3ヶ年で累計1,000億円超※2の追加投資を実施します。
イノベーションへの研究開発費の継続投資
グローバル体制を活かした各地域における研究所との連携をこれまで以上に強化し、イノベーション領域の拡大、生活者への魅力ある訴求開発などの研究開発プロセスを進化させていきます。また、当社の知見を、外部との共同研究や企業間連携・M&Aなどを通じて取り入れた技術と掛け合わせ、新たな商品やサービスの創造を進めます。イノベーションのさらなる加速に向け、売上高比率3%の研究開発費を投資します。
グローバルな人財・リーダーシップの強化
「PEOPLE FIRST」という考えのもと、人財育成へ積極的に投資しています。将来のリーダー候補社員に対する選抜型プログラムや自発的キャリア開発支援、グローバルでの人財配置の加速や報酬制度の整備など、今後も企業成長を支える「人財」に引き続き投資をしていきます。さらに、創業150周年の記念事業として、今秋、当社の創業の地である銀座に次世代を担う人財開発の拠点「Shiseido Future University」をオープンし、当社のCEOである魚谷雅彦が初代学長を務めます。
各地域事業の主な取り組み
積極投資により継続的な安定成長を実現・高収益構造へ転換を目指します。
・日本:ブランド力・組織力の強化、再成長による収益基盤の再構築
・中国:ブランドポートフォリオの拡充・新領域開発
・アジアパシフィック:将来の有望市場における事業基盤構築
・トラベルリテール:旅行者向けの独自価値を構築
・米州:次なる成長の柱として成長基盤を構築
・欧州:構造改革を経て収益性を伴う成長の実現
財務戦略
財務目標
これまでの構造改革を経て構築した強固な財務基盤を活かして、2023年以降は、戦略的な成長投資を加速し、これによる持続的な売上拡大とコスト低減、そして収益性・キャッシュ創出力の強化に取り組みます。売上高 CAGR※3は、2023年から2025年までの3年間で+8%(2022年比)、2026年から2027年までの2年間で+6%(2025年比)を目指します。コア営業利益率は、この力強い売上成長とコスト低減施策の両輪で、2025年に12%、2027年に15%の実現を目指します。また、フリー・キャッシュ・フローは2025年に1,000億円、EBITDA※4マージンは、2025年に18%、2027年に20%を見込みます。資本効率については、2025年にはROICで12%、ROEで14%を実現します。
キャッシュアロケーション
当社の価値創造ドライバーである「ブランド」、「イノベーション」、「人財」への積極投資を通じた収益性改善で、2023年から2025年の3年間で4,000億円のキャッシュ・インフローを見込みます。この創出したキャッシュを、FOCUSをはじめとしたIT/DX関連や、工場への省エネ設備の導入等の設備投資、またM&A・新領域への成長投資に振り向け、中長期的な企業価値の最大化に向けた好循環を構築します。
株主還元
株主のみなさまへの利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しています。フリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。

「SHIFT 2025 and Beyond」の詳細については、当社企業情報サイトの「投資家情報/IRライブラリー/決算短信・決算説明資料」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/library/tanshin/)に掲載の「2022年度決算説明資料」等、および「第123回 定時株主総会 招集ご通知」の5ページ~6ページの「株主のみなさまへお伝えしたいこと」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/shareholder/)をご覧ください。
※1 全世界共通のITプラットフォームの構築・最適化(データの標準化や業務プロセスの最適化など)を進めるプ
ロジェクト
※2 2023~2025年累計 2022年比増加総額
※3 為替影響、事業譲渡影響を除いた年平均成長率
※4 コア営業利益+減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)
③サステナビリティの取り組み
資生堂は、事業を通じて人々の幸福感・充足感を高め、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指しています。サステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じた社会価値創出と社会・環境課題の解決を促進します。
推進体制(ガバナンス)
資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。2022年はサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、専門的に審議するSustainability Committeeを定期的に開催しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表取締役を含む経営戦略・R&D・サプライネットワーク・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合はGlobal Strategy Committeeや取締役会にも諮り、審議しています。
また、毎年グローバルのステークホルダーに向けたサステナビリティレポートを発行し、当社の本業を通じたサステナビリティアクションの中長期目標とその進捗を開示しています。
〔中長期目標〕
※1 資生堂全事業所(対2019年)
※2 資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体(対2019年)
※3 資生堂全事業所、売上高原単位(対2014年)
※4 プラスチック製容器について
※5 物理的なサプライチェーンモデルによる認証:アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマ
スバランスに基づく
※6 製品における、認証紙または再生紙など
気候変動対応とTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言への取り組み
資生堂は、気候変動問題による事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、TCFDフレームワークに沿った情報開示を行っています。脱炭素社会への移行、および気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる長期的なリスク・機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオそれぞれの短期・中期・長期の定性的・定量的な分析結果と主な対応アクションを開示しました。
ガバナンス
当社の気候関連のリスクおよび機会に係るガバナンスに関しては、サステナビリティ関連業務における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「サステナビリティの取り組み」の「推進体制(ガバナンス)」をご覧ください。
シナリオ分析
1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCCが示したRCPとSSPシナリオに沿ってリスクと機会について分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について、1.5/2℃および4℃の各シナリオを分析しました。なお、2030年時点においては、炭素税によるコスト増のリスクが最も事業への影響が大きいと想定し、導入される国や地域の数により約1~8億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。
●がついている要因は定量分析も実施しています。
詳細なリスク分析を含めた気候関連財務情報開示レポートは、当社企業情報サイトで公開しています。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/env/pdf/risks_report.pdf
リスクマネジメント
資生堂は2022年も、事業中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しました。その中には、「環境・気候変動」「自然災害・人的災害」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。気候関連リスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、気候変動や自然災害に関わるリスクとして全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」、取締役会にて対応策などが審議される体制となっています。
指標と目標
資生堂は、CO2排出量削減を目標として設定し、また定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし、対応策を講じることで、リスクの緩和に貢献しています。特にScope 1およびScope 2のCO2排出量については2026年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として設定しました。
また、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に関しては、1.5℃シナリオにて2030年に向けた目標に対して、SBTイニシアティブ(SBTi)※1の認証を取得し、CO2排出量削減に取り組んでいます。
気候関連リスクと機会の評価の詳細については、「気候関連財務情報開示レポート」、「サステナビリティレポート」をご参照ください。
※1 パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定すること
を推進している国際的なイニシアティブ
サステナブルパッケージと循環型モデルの推進
資生堂は、海洋プラスチックゴミ問題は、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題と認識し、サステナブルな容器包装の開発など対応を強化しています。
資生堂独自の容器包装開発ポリシー5Rs(Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース))を前提としたイノベーションを通して、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標を掲げています。容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器の拡大などによるプラスチック使用量の削減、分別しやすい容器設計や単一素材(モノマテリアル)によるリサイクルの促進や再生素材(PCR)を使用するなど環境負荷軽減を推進しています。
また、2022年には、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社と協業し、プラスチック製化粧品容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。今後は、3社が企業の垣根を超えて連携するとともに、関連する業界や企業にも参加を働きかけ、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

CDPにおける気候変動調査での最高評価獲得
当社は、国際的な環境調査・情報開示を行う非政府組織であるCDP※1の気候変動に関する調査において、最高評価にあたる「Aリスト企業」に選定されました。2022年は、過去最高の約18,700社の企業が調査に応じ、当社を含む日本企業74社が気候変動の「Aリスト企業」に選定されました。当社は、気候変動に関わる温室効果ガス削減目標として「2026年カーボンニュートラル達成※2」を掲げ、工場や事業所における継続的な省エネルギーの取り組みに留まらず、CO2排出量削減および環境負荷軽減に積極的に取り組んでいます。2022年には、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に対してSBTイニシアティブ(SBTi)からの認定取得やRE100※3への加盟、TCFD※4に準拠したリスクと機会の分析および対応策の開示と、全世界の工場や事業所において再生可能エネルギーの導入を積極的に行いました。具体的なCO2排出量削減の活動の姿勢が高く評価されたものと考えています。
※1 CDPは、130兆米ドル以上の資産を持つ680社以上の機関投資家と、6.4兆米ドルの調達支出を持つ280社の大手購買企業の要請に基づき、毎年、企業や自治体に環境への影響やリスク等に関するデータの開示を要請し、環境対策を促すことを主な活動としている
※2 資生堂全事業所、Scope1・2
※3 100%Renewable Electricityの略で、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される国際的なイニシアティブ
※4 Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって2015年12月に設立されたタスクフォース

社会課題への取り組み
資生堂は、1872年の創業以来、多様な価値観やライフスタイルのアップデートを通して時代を切り開き、心豊かな生き方を提案してきました。一方、現在の社会環境はかつてなく急激に変化し、既成概念や慣習、働き方にも多大な影響を与えています。新型コロナウイルス感染症拡大は社会的に困窮している人々の状況を悪化させるなど、課題は一層深刻になっています。私たちは、人は本来、多様であるという認識のもと、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな社会の実現に向け、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な経営戦略テーマと位置づけています。「女性のエンパワーメント」と「美の力によるエンパワーメント」を戦略の柱とし、社内におけるD&Iの取り組みや事業活動の実績をいかした社会貢献を推進していきます。
そのひとつに、英国発祥のグローバルイニシアティブとして、企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスを目指す「30% Club Japan(2019年5月発足)」へ参画しています。日本企業の役員※1に占める女性比率の向上(2030年をめどにTOPIX100企業で女性役員の比率30%※2を達成)を目標とし、当社代表取締役 会長 CEO 魚谷雅彦が会長を務め、TOPIX100を中心とした33社※3の企業トップとの議論、また、大学、インベスターとの連携など、日本企業ひいては日本社会のジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを進めています。
一人ひとりが尊重され、誰もが持てる能力を発揮できるインクルーシブな社会が人々の幸福につながると信じ、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に取り組んでいきます。
※1 役員は取締役と監査役と定義
※2 TOPIX100の取締役会における女性役員比率(監査役会設置企業は監査役を含む)
※3 2022年12月末時点(2023年3月時点では34社)

TOPIX社長会

資生堂ギャラリーにおける「第八次椿会 ツバキカイ 8 このあたらしい世界」の開催
創業から150年にわたる資生堂のヘリテージを成す要素の一つに、アートへの取り組みがあります。現存する日本で最古の画廊といわれる資生堂ギャラリーでは、1919年のオープンより「新しい美の発見と創造」に取り組み、日本の芸術文化の振興に寄与してきました。資生堂ギャラリーを代表する展覧会の一つである「椿会」は、第二次世界大戦で一時中断していた資生堂ギャラリーの活動を、1947年に再開するにあたり誕生したグループ展です。アートが人々に希望を与え、勇気をもたらすという信念に基づき、戦争や災害、不況などで世の中が閉塞状況にあるときにも再興を願い開催してきました。誕生から70年以上にわたり継続し、これまで合計86人の作家に参加いただきました。
2021年からスタートした「第八次椿会」のメンバーは杉戸洋、中村竜治、Nerhol (ネルホル)、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]の6組。ジャンルを超えた活動やコラボレーション、チームでの制作などを行う、今の時代を代表するアーティストたちです。同時代のアーティストたちと共に、コロナ後の「あたらしい世界」について考えています。2年目となる2022年は、「豊かさ」について考える場を作ることを試みました。8月27日から12月18日までの3ヶ月以上にわたり開催した展覧会には、延べ12,000人もの方々に来場いただきました。
今、我々の住む世界は大きな転換期にあります。先の予測ができない不確かな時代において、アートは未来を知るヒントや勇気を与えてくれます。資生堂はアートを通して、これからも人々の心を豊かにすることを目指し、社会への貢献を果たしていきます。

「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST”」会場風景
撮影:加藤健
次世代を担うリーダーの人財開発施設として「Shiseido Future University」設立
当社は、創業150周年の記念事業として、次世代を担うリーダーの人財開発施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座(東京都中央区)に設立することを決定しました。2023年秋にオープン予定です。当社のCEOである魚谷雅彦は、人財は当社の最大の資産であり、これまでも人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げてきました。「Shiseido Future University」を通じて、さらに人的資本への投資を強化していきます。具体的には、最先端でグローバルレベルのビジネススクールの学びと、美への感性や心の豊かさを創業以来追求してきた資生堂のヘリテージへの学びを掛け合わせたオリジナルカリキュラムで人財開発を行います。“戦略性”や“リーダーシップ”、“感性”を身につけ、イノベーションを起こしビジネスを成長させることでよりよい社会の実現に貢献できる、グローバルビューティーカンパニーのリーダーにふさわしい人財を開発していきます。

ワークショップスペース
当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。株主のみなさまにおかれましては、引き続き変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性のある事項と考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年3月24日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。
当社では、「あらゆるステークホルダーとの信頼関係を築き、経営戦略の実現を一層確実なものとすること」を主眼に置いてリスクマネジメントを推進しています。そのため、リスクを戦略実現に影響を与える「不確実性」と捉え、脅威だけでなく、機会も含めた概念として定義し、必要な体制を構築するとともに、積極的かつ迅速に対応策を講じています。
定期的に当社グループのリスクを特定し対応策等を審議する体制として、当社CEOを委員長とし各地域CEOおよび当社エグゼクティブオフィサー等をメンバーとする「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」を設置しています。また、リスクに関連する情報は、グループCLO(チーフリーガルオフィサー)直轄のリスクマネジメント部門に集約されます。
2022年度は、総合的・多面的な手法(ホリスティックアプローチ)を用いて全社的に重要なリスクを抽出しました。具体的には、当社エグゼクティブオフィサー、各地域CEOおよび社外取締役のリスク認識を把握するインタビュー、ならびに各地域で実施した地域ごとのリスク評価、当社関連機能部門との情報交換等を元に、リスクマネジメント部門による分析や外部有識者の知見を加えて、中期経営戦略である「SHIFT 2025 and Beyond」の達成に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定しました。
そして、それらのリスクについて、以下表1のとおり、「ビジネスへの影響度」、「顕在化の可能性」、「脆弱性」の3つの評価軸を設定し、上記Committeeや個別会議などを通じて、リスクの優先付けおよび対応策の検討・確認を行いました。
表1 <リスクの評価軸>
アセスメントの結果抽出された計21の重要リスクは、以下表2のように、「生活者・社会に関わるリスク」、「事業基盤に関わるリスク」、そして「その他のリスク」の3つのリスクカテゴリーに分類し対応しています。
また、リスクごとにリスクオーナーを設定し、対策の責任を明確化し、さらに透明性の高いモニタリングを実施するため、推進状況を定期的に上記Committeeおよび取締役会にて議論する仕組みを構築・運用しています。
表2 <資生堂グループ重要リスクの抽出結果>
当連結会計年度のリスクアセスメント結果で特筆すべき点として、各リスクの結びつきがますます強固となり、それに伴い各リスクの対応策の相互関係は強まりつつあることが挙げられます。加えて、当社では「生活者の価値観変化」「地政学的問題」「優秀な人財の獲得・維持と組織風土」「品質保証」「情報セキュリティ・プライバシー」の5つのリスクについて、昨年度と比較しリスクレベルが急上昇しているリスクとして特定し、対応を強化しています。また、独自の価値を有するブランドの育成や、美容機器やインナービューティーカテゴリーなどの新たな事業開発に伴い、重要度が増している「規制対応」を新たな重要リスクとして追加しています。
次項より重要リスクごとに、戦略実現に向けた主要な取り組み、想定される不確実性(脅威・機会)、対応策の概要およびリスクレベルの変化を記述します。なお、記述内容は、2023年3月24日時点におけるものです。
<生活者・社会に関わるリスク>
<事業基盤に関わるリスク>
<その他のリスク>
当社グループは当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDA は、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、為替影響、当連結会計年度・前連結会計年度におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下「事業譲渡影響」という。)を除いて計算しています。
当連結会計年度における世界経済は、全体として新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化が進む一方で、中国における断続的なロックダウンや、ウクライナ紛争の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、ドル高の進行等、引き続き不透明な状況が継続しました。
国内化粧品市場は、幅広い分野での値上げが化粧品購買への重石となる一方で、行動制限の緩和や外出機会の増加により緩やかに回復しました。海外化粧品市場は、中国では、上海や海南島を中心としたロックダウンによる店舗営業活動の制限・サプライチェーンの混乱等の影響を受け、厳しい市場環境が継続しました。一方、欧米では、経済活動の再開が本格化するとともに消費の回復が継続し、化粧品市場も全カテゴリーで力強く成長しました。
当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ&インクルージョンの実現といった社会課題解決に向けたイノベーションに積極的に取り組み、2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。
2021年にコロナ禍の難局に対応する中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を策定し、当社の強みを活かしたスキンビューティー領域への注力、事業ポートフォリオの再構築や、欧米事業を中心とした収益性改善などを通じて、より収益性とキャッシュ・フローを重視した経営へと抜本的な改革を進め、2年目となる当連結会計年度は、「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、グローバルブランドの成長促進やDXの加速・進展等に取り組んできました。
① 売上高
売上高は、中国においてコロナ禍の影響により不透明な環境が続いた一方、欧米事業、トラベルリテール事業の回復により、前年比5.7%増の1兆674億円、現地通貨ベースでは前年比3.9%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは0.9%増となりました。

ブランド別には、事業譲渡の影響を除いた「実質外貨前年比」の比較において、日本市場の上期の回復遅れや、中国における断続的なロックダウンによる店舗営業活動の制限・サプライチェーンの混乱等の影響により、多くのスキンケアブランが苦戦する中、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」およびフレグランスは、欧米での経済活動の再開や、中国事業でのプレステージブランドへの戦略的投資の継続、Eコマース売上の伸長などにより、それぞれ前年比6%増、22%増、12%増となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比18.9%増の3,232億円となりました。売上高に対する比率は、事業譲渡に係る移行期間中の製品供給による原価率上昇やパーソナルケア生産事業譲渡に伴う工場減損などにより前年比3.4ポイント増の30.3%となりました。なお、事業譲渡に伴う製品供給および減損による原価率上昇を除いた実質の原価率は、事業譲渡に伴うプロダクトミックスの好転や国内工場の生産性向上、在庫償却関連費用の減少などにより前年比1.5ポイント減の23.6%となりました。
販売費及び一般管理費は、前年比5.9%減の7,217億円となりました。コア営業利益ベースの内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト※
マーケティングコストの売上高に対する比率は、ブランドエクイティ向上のための投資費用が増加したものの、事業譲渡に伴う費用減や機動的なコストマネジメントにより、前年比2.4ポイント減の24.9%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年比1.3ポイント増の5.0%となりました。
(ハ) 人件費※
人件費の売上高に対する比率は、人的投資強化に伴う費用が増加したものの、構造改革等による人件費の適正化を進めた結果、前年比0.7ポイント減の21.5%となりました。
(ニ) 経費
経費(その他費用)の売上高に対する比率は、DX関連の投資費用が増加したものの、それ以上に売上高が増加したことに伴い前年比0.8ポイント減の15.8%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は267億円となり、売上高に対する比率は2.5%となりました。なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
※マーケティングコストは、PBP(パーソナルビューティーパートナー)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は34.5%となりました。人件費は、当該費用を除いた場合は、売上高に対する比率は12.0%となりました。
④ コア営業利益
コア営業利益は、中国での売上減に伴う差益減やパーソナルケア事業譲渡の影響はあったものの、機動的なコストマネジメントの推進や構造改革を通じた固定費の低減、為替影響等により、前年に対し88億円増益の513億円となりました。
⑤ 営業利益
営業利益は、前年にパーソナルケア事業譲渡に伴う譲渡益を計上していた一方、当連結会計年度においてはパーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失を計上したことなどから、前年に対し540億円減益の466億円となりました。
税引前利益は、金融収益が前年に対し18億円増益となったことや、持分法投資損益が前年に対し33億円の増益となった一方、営業利益が前年に対し540億円減益の466億円となったことにより、前年に対し487億円減益の504億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益が前年に対し487億円減益の504億円となったことに加えて、法人所得税費用の前年からの減少と非支配持分が増加したことにより、前年に対し127億円減益の342億円となりました。
EBITDAは、前年に対し79億円増益の1,024億円となり、マージンは9.6%となりました。
当連結会計年度における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=131.4円、1ユーロ=138.0円、1中国元=19.5円です。
(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
コア営業利益または損失 (参考)
(注) 1 当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「その他」に計上していた資生堂美容室 ㈱の業績は「日本事業」へ計上しています。また、従来「米州事業」に計上していた「NARS」および「Drunk Elephant」ブランドのブランドホルダー機能に係る業績は「その他」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 従来「日本事業」、「中国事業」および「アジアパシフィック事業」に計上していた各地域販売子会社のパーソナルケア事業に係る売上高は、パーソナルケア事業の譲渡および商流変更に伴い、2021年7月1日以降、一部を除き発生していません。一方で、当社および当社製造子会社による㈱ファイントゥデイ(2023年1月1日付で㈱ファイントゥデイ資生堂より社名変更)およびその関係会社への売上は同日以降「その他」に計上しています。
3 従来「プロフェッショナル事業」に計上していた各地域販売子会社に係る売上高は、プロフェッショナル事業の譲渡に伴い、2022年7月1日以降、一部を除き発生していません。
4 売上高における実質増減率は、為替影響およびパーソナルケア事業、プレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」)およびプロフェッショナル事業の譲渡影響を除いて計算しています。
5 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業および飲食業などを含んでいます。
6 コア営業利益または損失における売上比は、セグメント間の内部売上高または振替高を含めた売上高に対する比率です。
7 コア営業利益または損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業では、回復が遅れていた中価格帯市場が下期に回復基調に転じました。当社は年間を通じて、創業150周年を記念したプロモーションのほか、スキンビューティーブランドへの戦略的投資を継続的に強化しました。9月には「エリクシール」から最新のコラーゲン技術を搭載した化粧水・乳液をリニューアル発売したほか、第4四半期には「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」から新製品・限定品を展開するなど、ブランド・商品の価値伝達強化に取り組みました。また、店舗やEコマースなどの販売チャネルやブランドごとに提供していた会員サービスを一つに集約した新会員サービス「Beauty Key」を導入し、よりお客さまのニーズに対応したカウンセリングサービスを可能にしたほか、デジタルコミュニケーションの強化にも努めました。
以上のことから、売上高は2,376億円となりました。前年比は8.2%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年並みとなりました。コア営業損失は、費用効率化を進めたものの、パーソナルケア事業譲渡に伴う差益減等により、前年に対し196億円悪化の131億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めています。中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”において市場が大きく前年割れとなる中、当社の年間Eコマース売上は成長を実現しました。主要プラットフォームへの展開拡大、効果・効能にフォーカスしたコミュニケーションを強化したことが奏功しました。一方、オフラインでは、実店舗ならではのユニークな体験価値の提供、愛用者基盤の拡大の継続的な取り組みを強化したものの、ロックダウン等の影響を受け、前年を下回りました。
以上のことから、売上高は2,582億円となりました。前年比は6.0%減、現地通貨ベースでは前年比18.3%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比9.8%減となりました。コア営業損失は、売上減による差益減等により、前年に対し80億円悪化の39億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾が第4四半期から回復に転じたほか、韓国や東南アジアなどは力強い成長を継続しました。また、主要Eコマースプラットフォームへの展開強化、デジタル活用によるお客さま接点の拡大等により、アジア全体のEコマース売上も成長を継続しました。
以上のことから、売上高は680億円となりました。前年比は7.0%増、現地通貨ベースでは前年比3.7%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比13.0%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増の一方、人件費、経費等の増加により、前年に対し3億円減益の47億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続しました。その中でも、特に「NARS」は、新商品の好調さやデジタルマーケティング強化を通じたEコマースの力強い成長により、シェアを拡大しました。また、プロモーションを強化した「SHISEIDO」も堅調に推移しました。
以上のことから、売上高は1,379億円となりました。前年比は13.6%増、現地通貨ベースでは前年比4.7%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比8.8%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた固定費削減などにより、前年に対し60億円増益の77億円となりました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場は全カテゴリーで成長を継続しました。その中で当社は、需要の回復を捉えたプロモーションにより、「NARS」や「narciso rodriguez」等が力強い成長を実現し、シェアを拡大しました。加えて、「Drunk Elephant」の店舗数拡大も着実に進め、売上を拡大しました。
以上のことから、売上高は1,284億円となりました。前年比は9.8%増、現地通貨ベースでは前年比3.3%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比4.0%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた固定費削減等により、前年に対し42億円増益の69億円となりました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴い旅行客の往来が再開し、欧米を中心に急速に回復が進みました。中国海南島においては、ロックダウンの影響を受けたものの、海口市にある世界最大の免税ショッピングモールへの新規出店やEコマースの伸長により、力強く成長しました。
以上のことから、売上高は1,637億円となりました。前年比は35.7%増、現地通貨ベースでは前年比15.3%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比14.2%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し149億円増益の377億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで展開していましたが、2022年7月に一部を除き同事業を譲渡しました。
以上のことから、売上高は93億円となりました。前年比は38.9%減、現地通貨ベースでは前年比43.1%減となりました。コア営業利益は、前年並みの8億円となりました。
(生産、受注および販売の実績)
生産、受注および販売の実績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 2022年7月1日にプロフェッショナル事業を一部を除き譲渡したため、販売実績が減少しています。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、ネットデット・エクイティ・レシオ0.2倍、ネットEBITDA有利子負債倍率0.5倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力およびキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5ヶ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,345億円となり、手元流動性は連結売上高(2022年1月1日から2022年12月31日までの期間)の1.5ヶ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は2,998億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,800億円、当社および欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドルを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
当社グループは、流動性および資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。
2023年2月28日現在の発行体格付けはA3(見通し:安定的)となっています。
総資産は、前年の事業譲渡に伴う法人税や配当金の支払いなどによる現金及び現金同等物の減少、パーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失の計上による有形固定資産の減少、また事業譲渡および在庫管理の強化に伴う棚卸資産の減少などがあった一方で、円安による在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ67億円増の1兆3,077億円となりました。
(負債)
負債は、未払法人所得税の減少に伴う流動負債の減少や、退職給付に係る負債の減少に伴う非流動負債の減少などにより569億円減の6,819億円となりました。
資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や在外営業活動体に関連した為替換算影響などにより636億円増の6,258億円となりました。
1株当たり親会社所有者帰属持分は、前連結会計年度末に対し158.91円増の1,512.36円となり、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末比4.6ポイント増の46.2%となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分に対する現金及び預金の総額を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.05倍となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ375億円減少し、1,190億円となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額(675億円)、事業譲渡益(153億円)、営業債務の減少(125億円)、営業債権の増加(63億円)、棚卸資産の増加(33億円)などがあった一方、税引前利益(504億円)、減価償却費及び償却費(757億円)などの非資金費用などにより、前連結会計年度末に比べ875億円減少の467億円の収入となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡による収入(138億円)、有形固定資産及び無形資産の売却による収入(53億円)などがあった一方で、有形固定資産の取得による支出(363億円)、無形資産の取得による支出(299億円)などにより、前連結会計年度末に比べ1,080億円減少の413億円の支出となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行による収入(200億円)などがあった一方で、リース負債の返済による支出(297億)、配当金の支払額(220億円)、社債の償還による支出(150億円)などにより、前連結会計年度末に比べ1,382億円支出は減少し524億円の支出となりました。

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」および「4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しています。
「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。第7章および第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更およびIFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
また、日本基準により作成した要約連結財務諸表について、百万円未満を切り捨てて記載しています。
② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書
要約連結損益計算書
要約連結包括利益計算書
前連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
前連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
(連結の範囲に関する事項)
[新規]2社
資生堂インタラクティブビューティー㈱、資生堂クリエイティブ㈱を新たに設立し、連結の範囲に含めています。
[除外]5社
ドランクエレファントホールディングスLLC、ドランクエレファントLLC、ドランクエレファント ブロッカー,Inc. は、資生堂アメリカズCorp. に吸収合併したことにより、連結の範囲から除外しています。
上海ホネケーキCo.,Ltd. は、清算結了したことにより、連結の範囲から除外しています。
ベアエッセンシャル㈱は、保有株式を譲渡したことにより、連結の範囲から除外しています。
(持分法適用範囲の変更)
[新規]12社
㈱ファイントゥデイホールディングス(旧社名:㈱Asian Personal Care Holding)の株式を取得したことに伴い、同社および同社子会社の12社を持分法適用の範囲に含めています。
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
(連結の範囲に関する事項)
[新規]5社
資生堂資悦(上海)管理咨询有限公司 、厦门资悦股权投资合伙企业、㈱ファイントゥデイインダストリーズを新たに設立し、連結の範囲に含めています。
ガリネーLtd.の株式を新たに取得したため、そのグループ会社1社と併せて、当期より連結の範囲に含めています。
[除外]3社
資生堂プロフェッショナル㈱、資生堂プロフェッショナル(タイランド) Co., Ltd.は、保有株式を譲渡したことにより、連結の範囲から除外しています。
ダブリンインダストリーズInc.は、清算結了したことにより、当期より連結の範囲から除外しています。
(会計方針の変更)
1 収益認識に関する会計基準等の適用
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財またはサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識しています。
当該基準の適用に伴い、当社グループが商品の販売に応じて顧客に提供したポイントについて、従来は、販売時に収益を全額計上し、将来顧客が行使することが見込まれる額を引当金として計上していましたが、販売時に将来顧客が行使することが見込まれるポイントに配分された取引価格を流動負債として計上し、ポイントの使用に応じて収益を認識する方法に変更しています。また、従来は顧客に支払われる一部のリベート等を販売費及び一般管理費に計上していましたが、売上高から控除して表示する方法へ変更しています。
収益認識会計基準等の適用については、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従い、当連結会計年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、当連結会計年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用しています。
この結果、当連結会計年度の売上高が25,198百万円、売上原価が1,258百万円、販売費及び一般管理費が23,996百万円それぞれ減少し、営業利益が55百万円、経常利益および税金等調整前当期純利益が113百万円増加しています。また、利益剰余金の当連結会計年度の期首残高は2,629百万円減少しています。
2 時価の算定に関する会計基準等の適用
「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日。以下「時価算定会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準第19項および「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号 2019年7月4日)第44-2項に定める経過的な取り扱いに従って、時価算定会計基準等が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用しています。
なお、当該基準の適用による、連結財務諸表への重要な影響はありません。
3 在外子会社におけるIFRSに基づく会計処理の適用
当社グループの米国子会社である資生堂アメリカズCorp.(以下「資生堂アメリカ」という。)およびその子会社(以下「資生堂アメリカグループ」という。)は、従来米国で一般に公正妥当と認められた会計処理基準を適用していましたが、当連結会計年度より、IFRSを適用することとしました。
これは、グループ内の会計基準統一によるグローバル経営のさらなる推進、ならびに資本市場における国際的な財務情報の比較可能性の向上等を目的とし、資生堂アメリカグループにおいて当連結会計年度期首時点でIFRSに対応できる体制が整備されたため、当連結会計年度よりIFRSを適用するものです。
なお、この変更に伴い、資生堂アメリカグループにおける財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの数値ならびに「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号 2006年5月17日、2019年6月28日改正)等について遡及適用等を行い、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっています。
この結果、遡及適用を行う前と比べて、前連結会計年度の要約連結貸借対照表は、総資産が35,683百万円増加、総負債は35,619百万円増加し、純資産は63百万円増加しています。
前連結会計年度の要約連結損益計算書においては、営業利益は859百万円減少、経常利益は959百万円減少、税金等調整前当期純利益は12,096百万円減少し、当期純利益および親会社株主に帰属する当期純利益は11,284百万円減少しています。
前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、要約連結株主資本等変動計算書の前連結会計年度の期首において、利益剰余金は13,689百万円増加し、その他包括利益累計額は4,538百万円減少しています。
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「41.初度適用」における前連結会計年度に係る日本基準の連結財務諸表数値については、上記遡及適用は行っていません。
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
前連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
(表示科目の組替)
1 売上高の振替
日本基準では一部のリベート等を「販売費及び一般管理費」等として表示していましたが、IFRSでは「売上高」から控除して表示しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「売上高」が25,036百万円減少しています。
2 その他の振替
日本基準において、「営業外収益」、「営業外費用」、「特別利益」、「特別損失」として表示していた項目を、IFRSでは金融関連項目を「金融収益」、「金融費用」として、それ以外の項目は、各項目の性質に応じて「販売費及び一般管理費」、「その他の営業収益」、「その他の営業費用」等に表示しています。
(認識及び測定の差異)
3 未払有給休暇の調整
日本基準において認識していない有給休暇に係る債務について、IFRSでは未消化の有給休暇を負債として認識しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「その他の流動負債」が12,021百万円増加しています。
4 リース取引の調整
日本基準におけるオペレーティング・リースおよび賃貸借取引に準じて処理されていたファイナンス・リース取引を、IFRSでは売買取引に準じて使用権資産を計上し、対応する債務をリース負債(流動)およびリース負債(非流動)に計上しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「使用権資産」が69,181百万円、「リース負債(流動)」が10,386百万円、「リース負債(非流動)」が60,504百万円増加しています。
5 支配の喪失を伴う子会社の一部売却後の残余投資評価
子会社株式の一部売却により支配を喪失して関連会社となった場合に、日本基準では残余投資を持分法による投資評価額に修正していましたが、IFRSでは残余投資を公正価値で測定し、帳簿価額との差額を「その他の営業収益」として認識しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「持分法で会計処理されている投資」が20,800百万円増加、「その他の非流動負債」が24,478百万円減少、「その他の営業収益」が45,440百万円増加しています。
6 退職後給付の調整
日本基準では、退職給付における数理計算上の差異および過去勤務費用について、発生時にその他の包括利益として認識し、発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数で純損益を通じて償却していましたが、IFRSでは確定給付制度の再測定は発生時にその他の包括利益として認識し、過去勤務費用は発生時に純損益として認識しています。なお、その他の包括利益として認識した確定給付制度の再測定は、その他の資本の構成要素に認識後、直ちに「利益剰余金」に振り替えています。
また、確定給付制度債務を算定するための仮定の1つである死亡率について、IFRSでは将来変動を見込んだ数値を使用して計算を行っています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「退職給付に係る負債」が23,046百万円増加しています。
7 繰延税金資産および繰延税金負債の調整
日本基準からIFRSへの調整に伴い一時差異が発生したことおよび繰延税金資産の回収可能性を再検討したこと等により、「繰延税金資産」および「繰延税金負債」の金額を調整しています。
また、日本基準では、連結グループ内の内部取引における未実現利益に対する繰延税金資産の計上について、売却会社で発生した課税所得に基づき回収可能性を判定し、売却会社の実効税率を用いて計算していますが、IFRSでは取得会社における将来課税所得により回収可能性を判定し、取得会社の実効税率を用いて計算しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「繰延税金資産」が5,617百万円減少し、「法人所得税費用」が22,840百万円増加しています。
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
(表示科目の組替)
1 売却目的で保有する資産の振替
売却目的で保有する非流動資産または処分グループは、IFRSでは「売却目的で保有する資産」として流動資産に表示しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「売却目的で保有する資産」が18,929百万円増加し、「棚卸資産」が5,953百万円、「持分法で会計処理されている投資」が8,498百万円、「有形固定資産」が3,433百万円減少しています。
2 その他の振替
日本基準において、「営業外収益」、「営業外費用」、「特別利益」、「特別損失」として表示していた項目を、IFRSでは金融関連項目を「金融収益」、「金融費用」として、それ以外の項目は、各項目の性質に応じて「販売費及び一般管理費」、「その他の営業収益」、「その他の営業費用」等に表示しています。
(認識及び測定の差異)
3 のれんの計上額の調整
日本基準では、のれんの償却について償却年数を見積り、その年数で償却することとしていましたが、IFRSでは、移行日以降は非償却としています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「のれん」が10,175百万円増加し、「販売費及び一般管理費」が7,814百万円減少しています。
4 未払有給休暇の調整
日本基準において認識していない有給休暇に係る債務について、IFRSでは未消化の有給休暇を負債として認識しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「その他の流動負債」が12,346百万円増加しています。
5 リース取引の調整
日本基準におけるオペレーティング・リースおよび賃貸借取引に準じて処理されていたファイナンス・リース取引を、IFRSでは売買取引に準じて使用権資産を計上し、対応する債務をリース負債(流動)およびリース負債(非流動)に計上しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「使用権資産」が62,811百万円、「リース負債(流動)」が10,061百万円、「リース負債(非流動)」が54,238百万円増加しています。
6 支配の喪失を伴う子会社の一部売却後の残余投資評価
子会社株式の一部売却により支配を喪失して関連会社となった場合に、日本基準では残余投資を持分法による投資評価額に修正していましたが、IFRSでは残余投資を公正価値で測定しています。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「持分法で会計処理されている投資」が20,800百万円増加、「その他の非流動負債」が24,478百万円減少しています。
(プロフェッショナル事業における会社分割および承継会社の株式譲渡)
(パーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う会社分割および承継会社の株式譲渡)
2021年7月のパーソナルケア事業の譲渡後、㈱ファイントゥデイ(東京都港区 2023年1月1日付けで㈱ファイントゥデイ資生堂より社名変更)が好調なスタートを切り安定した経営が実現している状況下、同社独自の生産インフラの確保ならびに生産と販売の一体化を目的としています。
当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、感性科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。
資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでおり、世界中のお客さまに対して安全・安心、高品質な商品・サービスの創出に向け、資生堂グループ全体の成長に貢献するとともに世界の化粧品業界をリードします。
当社グループが生み出した研究開発成果は外部より高い評価を受けています。日本の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究開発を行った者に贈られる、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞(研究部門)」を受賞、そして米国画像科学技術学会が発行する論文誌「Journal of Imaging Science and Technology」において年間一報のみに贈られる「Charles E. Ives Journal Award」を受賞、さらに第22回日本抗加齢医学会総会において「最優秀演題賞」を受賞しました。
社外に向けた研究開発成果の発信にも力を入れています。「知と体験の融合」をコンセプトとしたイノベーションカンファレンスを実施し、当社グループの研究開発戦略とともに、最新の研究開発成果を社会に向けて発信しました。また、戦略実現を加速するアプローチとして、外部企業・研究機関等との連携および海外研究開発拠点でのイノベーション創出を積極的に進めることを示しました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
(1)スキンケア
環境とポジティブに調和・共生し、美を生み出すことを目指した、「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでいます。これまで肌に悪影響を及ぼすとされてきた紫外線について、“光合成”から着想を得て、肌に良い作用をもたらす可視光(美肌光)へと変換し、環境と共生しながら美へ導く革新的な技術を開発しました。本研究は、藻類由来のSpirulinaエキスと天然鉱物由来の蛍光酸化亜鉛に、効率よく紫外線を可視光(美肌光)に変換する効果を見出しただけではなく、紫外線による肌ダメージを回復させるとともにコラーゲンやヒアルロン酸の産生を高める作用があることを発見しました。本研究成果を「アネッサ」および「SHISEIDO」の商品開発に応用しました。
コラーゲンは、シワ・たるみなどの皮膚形態特性を決める重要な因子だと考えられています。また、紫外線などの影響で進む光老化では、線維芽細胞によるコラーゲンの産生が減ることや過剰な分解が起こることが知られています。当社グループは、光老化した皮膚において、本来体内で免疫機能を担うことが知られる2種類のマクロファージのバランスが、コラーゲンの産生、分解、除去など一連のコラーゲン代謝にも関与していることを明らかにしました。マクロファージバランスを健全に保つことにより、これまでのコラーゲン産生の維持・促進の効果に加えて、分解後のコラーゲン除去を含めた肌本来のコラーゲン代謝を適切に維持できることが期待されます。本研究成果を「エリクシール」の商品開発に応用しました。
肌の保湿や様々な生理活性を示すことが知られているヒアルロン酸 (HA) は、分子量が極めて大きいことから肌に浸透しにくく、その保湿効果は皮膚表面に限定されていました。そこで、HAを収縮させ、肌への浸透を劇的に高めることに成功し、さらに、収縮したHAを再膨潤させ、HAの保水力を最大限発揮させる技術を開発しました。本技術により、HA本来の性質を発揮し、角層水分量を高めることを可能としました。本研究成果は「SHISIEIDO」の商品開発に応用しました。
(2)メイクアップ
化粧品に求められる高い機能性や有効性、心地よさや塗布のしやすさ、高い安定性や安全性を満たすために、重要な成分である水と油を混合・安定化するのが乳化技術です。しかしながら、安定性と使用感触の両立には制約があり、特に粉末が含まれるメイクアップ製品においては難易度の高い課題となっていました。当社グループは、画期的な乳化技術の開発に成功し、高い乳化安定性によって配合可能な成分の幅も広がり、安定性と使用性・効果感を高次元で両立することができました。本技術は、「マキアージュ」の商品開発に応用しており、今後は使用感や効果感に対する多様なお客さまのニーズを満たすべく、サンケア製品、スキンケア製品など幅広い製品にも活用していきます。
Spiber株式会社が開発した「Brewed Protein™️繊維(※)」は、植物由来のバイオマスを原材料とした生分解性を有する繊維です。当社グループが目指す循環型モノづくりに資すると考え、マスカラファイバーとして活用するために、化粧品用途として共同開発を行いました。環境へ配慮しながら、しなやかで美しいまつ毛を演出するマスカラファイバーとして、今後も広く活用を検討していきます。本素材は「マキアージュ」の商品開発に応用しました。
※ Brewed Protein™️は、日本およびその他の国におけるSpiber株式会社の商標または登録商標です。
また、海外研究開発拠点のネットワークを活かし、新たな価値づくりも加速させています。米国を拠点とするメイクアップブランド「NARS」においては、国内開発拠点の資生堂グローバルイノベーションセンターが開発した技術をもとに、米国研究開発拠点のアメリカイノベーションセンターが処方を完成し、成分の70%以上をスキンケア成分で構成するファンデーションの開発に成功しました。商品はグローバルで非常に高い評価を得ています。
(3)ヘルスケア
当社グループは身体の内側から美を支えるビューティーウェルネス分野に早くから着目し、サプリメントや食品などの研究に取り組んできました。ワサビノキ葉および鳳梨(ほうり)抽出物などを配合した経口剤と、自社開発成分である4-メトキシサリチル酸カリウム塩やトラネキサム酸を配合した塗布剤を併用することにより、単独使用時と比べ全身の抗酸化力や肌の明るさおよび透明度がより一層高まることを確認しました。本研究は「HAKU」の商品開発に応用しました。
腸管バリア機能のうち「タイトジャンクション」は、腸細胞同士の隙間を閉じて異物の侵入を防ぐ働きをします。ストレスや加齢、肥満などさまざまな原因によりタイトジャンクションが壊れると、異物の侵入を防ぎきれず、体や肌の不調を引き起こします。黒ショウガエキスの摂取により、タイトジャンクションの働きが強化され腸管バリア機能が高まることを明らかにしました。本研究は「ベネフィーク」の商品開発に応用しました。
(4)サステナビリティ
製品の効果、容器の上質なデザインや感触などから感じる満足感と、人や社会や地球環境への尊重・共生を両立させる、資生堂ならではのアプローチで、サステナブルな製品の開発に取り組んでいます。
容器包装においては、プラスチック製容器について、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標を開示し、取り組みを加速しています。多種多様なプラスチックから作られる化粧品容器においては、分別が難しく循環利用が困難である点が課題となっていましたが、容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデルの構築と活用にむけて、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社と連携を開始しました。
安全性と品質に優れた原料の「責任ある調達」にも取り組んでいます。ヨーロッパイノベーションセンター主導で、フランスのスタートアップ企業Tower Farmとのパートナーシップにより、垂直農場(※)をパリ郊外に建設し、植物原料のうち主要な3品をフランス国内で、無農薬で栽培・収穫することに成功しました。得られた原料は、植物由来成分で、体の内外からすこやかな美しさを目指すスキンケアブランド「Ulé」に活用しました。
※ 垂直農場(または垂直農法)は高さのある建築物の階層や、傾斜面の高さを利用し、垂直的に農作物を生産すること
です。室内で光・温度・室温をコントロールし、安定供給および品質管理が可能となります。資生堂の垂直農場
では19の要素をコントロールしています。
以下、その他の活動について記載します。
外部の様々な知との融合によるイノベーションを目指すオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を、2021年の韓国に続き、中国にも展開しました。メディカルビューティー技術、ホリスティックビューティー技術をテーマに設定し、中国国内のスタートアップ企業を募集しました。当社のグローバルな研究開発体制の元、海外においても早期のイノベーション創出を目指します。
高いパーソナライズ性のあるこれまでにないビューティーケアの提案に繋がる研究にも力を入れています。長年にわたる皮膚科学研究とAIなどの新たな技術を組み合わせ、DNAの個人差と肌状態の関連性について明らかにし、DNA検査法の開発に成功しました。また、ヤマトエスロン株式会社、株式会社オルコアと共同で、皮膚の美しさや健康に重要な役割を果たしている皮膚常在菌の量とバランスを短時間で簡便に測定する新たな検査法を開発しました。
また、新たなビジネス基盤の創出を目指し、肌、身体、こころの関係性の科学的な解明にも取り組んでいます。資生堂と国立大学法人弘前大学は、共同研究講座「ビューティーウェルネス学研究講座」を開設し、互いの持つ研究データ、知見、手法を融合させ、肌・身体・こころの関係性を解き明かす研究を推進するための連携を開始しました。また、株式会社DeNAライフサイエンスとデータ解析に関する包括連携協定を締結し、よりスピーディーで精度の高いデータ解析を目指して連携を開始しました。
人材育成においても、新たな取り組みを始めています。最先端のバイオ研究を行いながら、果敢にチャレンジする研究者の育成にも積極的に取り組む慶応義塾大学先端生命科学研究所と、イノベーションの創出や未来型イノベーションをリードする人材育成を目的に連携を開始しました。