文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
① グループ長期ビジョン及び中期経営計画
当社グループは、企業理念「信頼を未来へ」のもと、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」及び2020~2024年度を対象としたグループ中期経営計画を策定しております。長期ビジョンでは、「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立していくことで、2030年頃に連結事業利益1,200億円を達成するとともに、SDGs達成への貢献を果たすことを掲げております。グループ中期経営計画(2020~2024年度)では、長期ビジョン実現に向けて、以下の「5つの重点戦略」と「ESG経営の高度化」を着実に推進することにより、後記「(2)目標とする経営指標」に示す経営指標に係る目標数値等の達成を目指すこととしております。
〈当社グループ長期ビジョン〉
イ.重点戦略① 「大規模再開発の推進」
・環境負荷の低減、自然災害への対策強化、賑わい拠点の創出、豊かなコミュニティの形成及び多様なパートナーとの協働と先進的なテクノロジーの活用による新たな価値の創出等によって、社会課題解決に貢献するまちづくりを実現し、オフィスビルポートフォリオの価値向上を目指します。
・東京駅前の旧本社ビルを含む再開発プロジェクトをはじめとする複数の大規模再開発プロジェクトを推進することで、安定的な賃貸利益の拡大を図ります。
ロ.重点戦略② 「分譲マンション事業の更なる強化」
・競争力の高いマンションの開発機会を継続的に獲得し、社会変化に対応した良質な住まいを提供することで、分譲マンション事業の更なる強化を図ります。
・大規模な再開発や建替えプロジェクトを継続的に展開し、安定的な利益の確保を目指します。
ハ.重点戦略③ 「投資家向け物件売却の拡大」
・不動産投資ニーズを捉えた多様なアセットの開発機会の積極的な獲得及び戦略的投資・売却の推進により、継続的な利益成長と資本効率の向上を目指します。
・資本効率の観点から固定資産についても収益性・将来性等を考慮し、ポートフォリオを見直します。
ニ.重点戦略④ 「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」
・不動産ストックの増加に着目した仲介事業並びに不動産の有効活用ニーズを捉えた駐車場事業を強化し、グループ関与アセットの拡大を目指します。
・開発・保有物件を当社がスポンサーを務めるREIT等へ売却することで、グループAUMを拡大し、ファンド事業の成長を図ります。
ホ.重点戦略⑤ 「海外事業の成長」
・長期にわたり展開している中国での事業及び他のアジア諸国での開発を継続して推進します。
・現地有力パートナーとの協業を通じて新規の事業機会を獲得することにより、利益の拡大を目指します。
ヘ.「ESG経営の高度化」
・サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進するため、サステナビリティ委員会等を通じて、ESGに関する重要事項の審議や目標の設定、進捗状況のモニタリング、達成内容の評価等を行うことで、サステナビリティ施策を継続的に展開します。
・ESG格付機関等による評価項目をベンチマークツールとして活用し、ESGインデックスへの組み入れを目指します。
② マテリアリティ
当社グループは、長期ビジョンの達成に向けて、事業を通じて社会と共有する価値を意識した取り組むべき14の重要課題を特定しております。事業を通じて重要課題に取り組み、社会価値を創出することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
〈当社グループマテリアリティ〉
③ 気候変動への対応
当社グループは、気候変動は最も重要な社会課題の一つであり、脱炭素社会の実現に貢献することは社会的使命であるとの認識のもと、グループ全体のCO2排出量を2030年度までに40%削減(2019年度比)、2050年度までにネットゼロとする温室効果ガス排出量削減の中長期目標を設定するとともに、2030年度における目標がパリ協定の求める水準(注)1に整合していることを示す「SBT(Science Based Targets)」認定を取得しております。また、2050年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際的な環境イニシアチブである「RE100」に参加しております。その他、投資家等に適切な投資判断を促すために有用となる気候変動関連情報のグローバルな開示フレームワークを示す「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」への賛同を表明し、複数のシナリオによる分析を行い、主力事業であるビル事業と住宅事業について、リスクと機会の特定及び重要度評価を行ったうえで、影響を受ける期間を整理してサステナビリティレポートに開示しております。
当社グループは、長期ビジョン及び中期経営計画の達成に向けて、ZEB(注)2・ZEH(注)3の開発や、再生可能エネルギー(注)4の導入、グリーンビルディング認証(注)5の取得といった脱炭素社会の実現に向けた具体的な取り組みを加速し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(注)1.世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの。
2.「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略称で、先進的な技術の採用による大幅な省エネ化、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物。
3.「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、断熱や省エネルギーなどのエネルギー消費低減と発電によるエネルギー創出を総合して、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅。
4.再生可能エネルギーに分類される非化石証書の活用を含む。
5.建設や運営にかかるエネルギーや水使用量の削減、施設の緑化など、建物全体の環境性能が高まるよう最大限配慮して設計された建築物を客観的に評価する指標。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、グループ中期経営計画(2020~2024年度)において、連結営業利益に持分法投資損益を加えた「連結事業利益」を目標とする利益指標として採用し、最終年度である2024年度については「連結事業利益750億円」を目標として掲げております。
また併せて、2024年度における資本効率の指標として「ROE8~10%」、財務指針として「D/Eレシオ2.4倍程度」、「有利子負債/EBITDA倍率12倍程度」を掲げており、財務健全性の維持と資本効率の向上を図りながら利益目標の達成を目指すとともに、事業ポートフォリオ及び資産構成の最適化に取り組みます。
(3)経営環境及び対処すべき課題
今後のわが国経済は、コロナ禍からの経済社会活動の正常化がさらに進み、各種政策効果と相まって、景気の持ち直しの動きが継続していくことが期待されるものの、ロシア・ウクライナ情勢の影響の長期化が懸念されるとともに、世界経済の減速リスクや国内の物価・金利の動向、為替変動の影響等を注視する必要があり、依然として先行き不透明な状況が続くものと思われます。
当不動産業界におきましては、大都市における国際競争力の強化やイノベーションの創出、まちづくりにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現、脱炭素社会の実現など様々な社会課題への取り組みが求められております。また、人々の価値観・ライフスタイルが多様化するなかで、リアルなコミュニケーションや体験の必要性・重要性を再認識し、重視する動きの広がりもみられることから、魅力あるリアルな「場の価値」と「体験価値」の創出に取り組むことが一層重要になっていくものと考えます。
このような認識のもと、当社グループでは、グループ中期経営計画(2020〜2024年度)の着実な達成に向けて、5つの重点戦略である「大規模再開発の推進」、「分譲マンション事業の更なる強化」、「投資家向け物件売却の拡大」、「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」、「海外事業の成長」の推進と「ESG経営の高度化」に努めるとともに、そのなかで、当社グループのマテリアリティ(重要課題)として特定した「国際都市東京の競争力強化」、「価値共創とイノベーション」、「脱炭素社会の推進」等に向けた取り組みを推進してまいります。具体的には、当社が本社を構え、複数の再開発事業を推進する八重洲・日本橋・京橋エリアにおいて、東京の国際競争力強化に資するイノベーション・エコシステム(注)形成を推進するため、グローバルスタートアップ企業の集積・連携とコミュニティ形成や価値共創を促進する施設の運営に取り組むとともに、同エリアを対象としてまちづくりにおける脱炭素化に関する大学との共同研究を行うなど、同エリアの「場の価値」と「体験価値」を高めてまいります。また、オフィスの利用状況を可視化するシステムを導入し、「新たな働き方」の実現に向けた実証実験を実施するなど、デジタル技術とデータを活用して、新たなサービスや付加価値創出につながる活動を促進し、DXの実現に向けて取り組んでまいります。さらに、脱炭素社会の実現に向けて、国内各所で開発を進める物流施設では屋上に可能なかぎり太陽光パネルを設置し、創出した電力を自家消費したうえ余剰電力を他の当社保有施設で有効活用するほか、ZEB・ZEHの開発を加速するとともに、既存の保有ビルにおいて再生可能エネルギー由来電力の導入を拡大するなど、当社グループが掲げるGHG(温室効果ガス)排出量削減目標の達成を目指してまいります。こうした当社グループのマテリアリティ(重要課題)への取り組みを積極的に推進していくことで、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
(注)ベンチャー企業や大企業、投資家、研究機関など、産学官の様々なプレーヤーが集積・連携することで先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。
当社グループは、企業価値の安定的な向上に向け、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクを適切に管理するため、関連規程を整備するとともに、リスクマネジメント体制を構築し、継続的なリスクのモニタリング・コントロールを実行しております。
(1)リスクマネジメント体制
当社は、リスクマネジメントの推進にあたり、「リスク管理規程」に基づき、当社グループのリスク管理を統括するため、社長を「リスク管理統括責任者」として定めるとともに、社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しております。
リスクマネジメント委員会では、リスクマネジメント年次計画の策定、当社グループの経営上重要なリスク(対策優先リスク)にかかる評価及び分析、予防策並びに対応策の策定、対応状況の定期的なモニタリングを実施するとともに、その内容を取締役会に対して定期的に付議・報告を行っております。
また、対策優先リスク以外のリスク(部門管理リスク)については、リスク管理規程に定める「リスク管理責任者」の各部室店長が部門管理リスクの予防及び管理を適切に実施しております。
さらに、リスクマネジメント活動にかかる実効性の維持・向上のため、リスクガバナンス体制を構築しており、コーポレート部門及び各事業本部企画部門は、各部室店等のリスク管理に関して、モニタリング、支援、指導を行い、内部監査室は、これらのコーポレート部門及び各事業本部企画部門による各部室店等のリスク管理に対する対応について、監査、助言を行うこととしております。
(当社グループリスクマネジメント体制図)
(2)事業等のリスク
当社グループでは、リスクを「当社グループにおける業務遂行に伴い生じるすべての不確実性」と定義し、当社グループにおけるリスクに関して、影響度(財務損失・人的損失等)、発生可能性、事業環境の変化及び企業の価値観の観点からリスクアセスメントを実施し、リスクマネジメント委員会において、同委員会が直接モニタリングするべき「対策優先リスク」を特定しております。
対策優先リスクのうち、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクを、以下に記載しております。なお、以下に記載したリスクは当社グループに係る全てのリスクを網羅したものではなく、その他のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断した内容であります。
① 感染症に関するリスク
わが国においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は収束に向かっており、今後は経済社会活動の正常化がさらに進むことが期待されますが、感染の再拡大が起こり、経済が停滞又は悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが海外事業を展開している国(中国及び東南アジア)においても同様の懸念があり、経済が停滞又は悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
② 不動産開発に関するリスク
当社グループは、不動産開発事業で想定されるリスクを、主にグループ経営会議において、あらかじめ把握・分析し、対策を講じたうえで事業を推進しておりますが、天候不順、自然災害の発生、許認可の取得の遅延、土壌汚染や埋設物の判明その他の予期し得ない事象等の影響により、事業におけるスケジュールの遅延、コストの増加等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 不動産市況の動向に関するリスク
当社グループは、国内外の景気動向や不動産市況を常に把握・分析し、経営への影響を注視しておりますが、急速又は大幅な景気や市況の変動により、賃貸オフィス市場における企業業績悪化に伴うオフィスニーズの減退、分譲住宅市場における顧客の購入意欲の低下、不動産投資市場における投資需要の低下等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 金利の変動に関するリスク
当社グループは、有利子負債の大部分を長期の借入等とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。
⑤ 保有株式に関するリスク
当社グループは、取引関係の維持・強化等により、中長期的な企業価値の向上に資すると判断される他社株式を純投資目的以外の株式(政策保有株式)として保有しております。個別の政策保有株式については、「コーポレートガバナンス・コード(原則1-4)」に則り、取締役会へ取引実績等を定期的に報告し、保有意義の適否を検証するなど、縮減に向けて適切に管理しておりますが、株式の市場価格が下落するなど、保有する株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 環境問題・気候変動に関するリスク
当社グループは、主にサステナビリティ委員会において、開発・保有する不動産における温室効果ガス排出量の削減目標や再生可能エネルギーの利用拡大に向けた検討など、サステナビリティ推進に係る重要事項の方針・戦略の立案・策定を行っております。また、本委員会の下部組織であるサステナビリティ推進協議会では、それらを実行するための具体的な施策の検討を行っております。また、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に賛同を表明し、複数のシナリオ分析を行い、主力事業であるビル事業と住宅事業について、リスクと機会の特定及び重要度評価を行ったうえで、影響を受ける期間を整理してサステナビリティレポートに開示しておりますが、今後、気候変動の激化により社会・経済環境が変化し、環境問題に関する法令規制の更なる強化等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 自然災害・人災等に関するリスク
当社グループでは、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、戦争、暴動、テロその他の人災が発生した場合に備え、各種規程やマニュアルの整備、定期的な訓練の実施など、有事の際における事業継続のための対策を講じておりますが、自然災害や人災等が発生した場合には、従業員の被災による事業活動への支障や、当社グループが保有、管理、運営する不動産の価値低下等を招く恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 情報漏洩・セキュリティに関するリスク
当社グループでは、各事業において個人情報をはじめとする多くの機密情報を取り扱っているため、「情報管理規程」及び「情報システム管理規程」等を整備し、書類・データ等の管理体制を強化するなど、適切な情報管理を行っております。また、情報端末に対するハード・ソフト両面でのセキュリティ強化や情報セキュリティリスクの発現を想定した訓練など、具体的な取り組みを進めるとともに、必要に応じてサイバー保険を付保しております。しかし、サイバー攻撃や当社グループ役職員の不注意等によって外部への情報漏洩が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 法令遵守に関するリスク
当社グループは、会社法、金融商品取引法、労働基準法、宅地建物取引業法、建築基準法をはじめとする法規制のもとで事業活動を行っております。また、「コンプライアンス憲章」及び「コンプライアンス規程」に基づく法令遵守のための体制を整備し、当社グループとその役職員に対し、定期的な研修をはじめとする教育等を実施しておりますが、当社グループとその役職員が法令等に違反した場合、当社グループの社会的信用の失墜、罰金・罰則等が課されることにより、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 法制、税制、政策の制定・改定に関するリスク
当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制に影響を受けているため、関係当局、業界団体及び専門家等より、適時情報を収集し適切な対応を図ったうえで事業を推進しておりますが、将来において、関連する法令、条例、税制等が制定・改定等された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解に相違が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 海外展開におけるカントリーリスク
当社グループは、グループ中期経営計画の重点戦略「海外事業の成長」に基づき、中国及び東南アジアにおいて事業展開を行っております。海外での事業にあたっては、進出国における政治・経済情勢や法規制等に精通した現地企業との連携等を通じて必要かつ適切な情報収集に努めておりますが、進出国における政治・経済情勢の悪化、法規制の変更、治安の悪化等により、事業の休停止、スケジュールの遅延、コストの増加等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下の通りであります。
なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と経済社会活動の両立が進み、景気は緩やかな持ち直しの動きが続きましたが、ロシア・ウクライナ情勢が長期化するなか、地政学リスクの顕在化やエネルギー価格・原材料価格の上昇、欧米における急速な金融引き締め等により、先行き不透明感の強い状況が継続しました。
当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率が全体的に上昇基調で推移しましたが、一部エリアで低下に転じるとともに、従業員のエンゲージメントやリアルなコミュニケーションを重視する企業が、より付加価値の高いオフィス環境を求める動きもみられました。分譲住宅市場については、低金利が継続するなか、多様なライフスタイルを実現できる住まい方へのニーズは引き続き強く、好調を維持しました。不動産投資市場については、国内において緩和的な金融環境が継続するなか、投資家の旺盛な投資意欲を背景として、堅調に推移しました。また、ホテルや商業施設については、行動制限や入国制限の緩和等により、年度後半には稼働率の上昇や売上の回復傾向がみられました。
このような事業環境のもと、当社グループは、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」の実現に向けて、2020~2024年度を対象期間とするグループ中期経営計画において掲げる5つの「重点戦略」と「ESG経営の高度化」を着実に推進いたしました。重点戦略の一つである「大規模再開発の推進」については、八重洲エリアや渋谷エリアでの再開発事業において重要な許認可の取得等が進むなど、総じて順調に進捗いたしました。「投資家向け物件売却の拡大」については、中規模オフィスビル「T-PLUS」シリーズを立ち上げ、その第1号物件が完成し、稼働いたしました。「ESG経営の高度化」については、分譲マンションでは、経済産業省による超高層ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス-マンション)実証事業に首都圏で初めて採択された物件を完成させるとともに、新たな開発物件は原則としてZEH化する方針とするなど、脱炭素社会の実現に資するZEHの開発に注力いたしました。ガバナンス面では、リスクマネジメント体制の強化を図るため、従来あった内部統制管理委員会を改編し、リスクマネジメント委員会と内部統制委員会を設置いたしました。当社グループのESG経営に対する外部評価は年々高まっており、新たに、ESG投資の主要指数である「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に選出されました。さらに、多様化する働き方のニーズに応えていくため、フレキシブルオフィス事業の強化に向けて「エキスパートオフィス㈱」を完全子会社化するなど、長期ビジョンで掲げる“「社会課題の解決」と「企業としての成長」のより高い次元での両立”に向けて、様々な取り組みを推進してまいりました。
当連結会計年度におきましては、ビル事業における賃貸が堅調に推移し、分譲マンションにおいて高収益物件を計上したほか、アセットソリューション事業における投資家向け物件売却が増加いたしました。この結果、営業収益は3,499億4千万円(前期3,404億7千7百万円、前期比2.8%増)、営業利益は644億7千8百万円(前期587億8千4百万円、前期比9.7%増)となりました。また、海外事業において持分法による投資利益を計上したこと等により、事業利益は663億4百万円(前期479億7千9百万円、前期比38.2%増)、経常利益は635億3千1百万円(前期462億7千万円、前期比37.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は430億6千2百万円(前期349億6千5百万円、前期比23.2%増)となりました。
なお、当社グループは営業利益に持分法による投資損益を加えた「事業利益」を利益指標として設定しております。
また、当連結会計年度において、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度の実績値については、新セグメントに組替えて表示しております。
各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。
イ.ビル事業
ビル事業におきましては、「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」(東京都中央区)において、A地区の市街地再開発組合の設立認可を受けたほか、「渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業」(東京都渋谷区)においては都市計画決定がなされるなど、大規模再開発プロジェクトを着実に推進いたしました。また、投資家向け売却用物件の取り組みとして、物流施設について全国で24プロジェクトを推進し、「T-LOGI横浜青葉」(横浜市都筑区)など8物件を竣工させたほか、中規模オフィスビル「T-PLUS」シリーズ、都市型のホテル・商業施設等、多様なアセットの開発を推進いたしました。
当連結会計年度におきましては、投資家向け物件売却として「T-LOGI久喜」(埼玉県久喜市)、「東京建物東渋谷ビル」(東京都渋谷区)を収益に計上した一方で、前年度に大型物件を売却した反動等により、収益が減少いたしました。
この結果、営業収益は1,451億5千5百万円(前期1,556億7千1百万円、前期比6.8%減)、営業利益は409億1千万円(前期444億8千1百万円、前期比8.0%減)、事業利益は412億4百万円(前期448億9百万円、前期比8.0%減)となりました。
|
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
|
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
|
ビル賃貸 |
建物賃貸面積 |
862,209㎡ |
75,701 |
建物賃貸面積 |
947,514㎡ |
76,735 |
|
(うち転貸面積 |
87,516㎡) |
(うち転貸面積 |
81,095㎡) |
|||
|
不動産売上 |
5件 |
43,283 |
2件 |
29,812 |
||
|
管理受託等 |
- |
36,686 |
- |
38,607 |
||
|
営業収益計 |
- |
155,671 |
- |
145,155 |
||
|
営業利益 |
- |
44,481 |
- |
40,910 |
||
|
事業利益 |
- |
44,809 |
- |
41,204 |
||
ロ.住宅事業
住宅事業におきましては、お客様評価No.1を目指し、分譲マンションブランド「Brillia」の価値向上に努めるとともに、賃貸マンション「Brillia ist」の開発等に積極的に取り組んでまいりました。当連結会計年度におきましては、分譲マンション事業については、「Brillia City 西早稲田」(東京都豊島区)、「Brillia Tower 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING RESIDENCE」(東京都多摩市)、「SHINTO CITY(Ⅱ・Ⅲ街区)」(さいたま市大宮区)等を収益に計上し、また、「Brillia 目黒大橋」(東京都目黒区)、「Brillia Tower 箕面船場 TOP OF THE HILL」(大阪府箕面市)等の販売を開始いたしました。また、投資家向けに「Brillia ist 両国」(東京都墨田区)、「Brillia ist 新宿曙橋」(東京都新宿区)等を売却し収益に計上いたしました。
この結果、営業収益は1,313億9千万円(前期1,205億8千5百万円、前期比9.0%増)、営業利益及び事業利益は233億4百万円(前期170億9千6百万円、前期比36.3%増)となりました。
|
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
|
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
|
住宅分譲 |
|
1,109戸 |
71,903 |
|
1,435戸 |
85,958 |
|
不動産売上 |
- |
20,585 |
- |
17,500 |
||
|
住宅賃貸 |
建物賃貸面積 |
153,254㎡ |
5,896 |
建物賃貸面積 |
125,085㎡ |
5,309 |
|
マンション管理受託 |
管理戸数 |
98,789戸 |
12,906 |
管理戸数 |
98,006戸 |
13,743 |
|
その他 |
- |
9,292 |
- |
8,879 |
||
|
営業収益計 |
- |
120,585 |
- |
131,390 |
||
|
営業利益 |
- |
17,096 |
- |
23,304 |
||
|
事業利益 |
- |
17,096 |
- |
23,304 |
||
ハ.アセットサービス事業
アセットサービス事業におきましては、仲介事業については、新規の情報ルート開拓や法人のお客様、投資家との関係強化による収益力向上等に取り組んでまいりました。アセットソリューション事業については、仲介事業との連携を進めることで、情報収集力の強化や新規売却先の獲得につなげるとともに、新たなアセットタイプの開発等にも注力いたしました。駐車場事業については、コロナ禍の影響が続いたものの、大型施設の新規開設や不採算な既存施設の見直しを進めるとともに、駐車場システムの高機能化等による顧客サービス向上に努めてまいりました。
当連結会計年度におきましては、アセットソリューション事業における投資家向け物件売却が増加したこと等により、収益が増加いたしました。この結果、営業収益は502億4千万円(前期426億5千4百万円、前期比17.8%増)、営業利益及び事業利益は73億9千9百万円(前期43億3千1百万円、前期比70.8%増)となりました。
|
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
|
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
|
仲介 |
1,152件 |
4,473 |
1,086件 |
4,626 |
||
|
アセットソリューション(注) |
- |
13,746 |
- |
19,084 |
||
|
賃貸管理等 |
- |
4,446 |
- |
4,554 |
||
|
駐車場運営 |
車室数 |
75,254室 |
19,988 |
車室数 |
80,057室 |
21,975 |
|
営業収益計 |
- |
42,654 |
- |
50,240 |
||
|
営業利益 |
- |
4,331 |
- |
7,399 |
||
|
事業利益 |
- |
4,331 |
- |
7,399 |
||
(注)取得した不動産の付加価値を向上させて再販する買取再販業務を主に行っております。
ニ.その他事業
クオリティライフ事業については、愛犬同伴型リゾートホテル及びゴルフ場は引き続き通年で高い稼働を維持し、コロナ禍の影響を受けていた温浴施設では売上が回復基調となりました。保育施設では、新たに「おはよう保育園 有明」(東京都江東区)を開設いたしました。また、海外事業については、シンガポールにおいて持分法適用関連会社が保有する「79ロビンソンロード」の全持分を売却いたしました。
当連結会計年度におきましては、クオリティライフ事業においてリゾート施設の稼働が改善したこと等により、収益が増加いたしました。また、海外事業において持分法による投資利益を計上したこと等により、事業利益が増加いたしました。この結果、営業収益は231億5千4百万円(前期215億6千5百万円、前期比7.4%増)、営業利益は25億1千8百万円(前期20億1千7百万円、前期比24.8%増)、事業利益は40億5千万円(前期 事業損失91億1千5百万円)となりました。
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区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
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営業収益 (百万円) |
営業収益 (百万円) |
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クオリティライフ事業 |
17,377 |
18,541 |
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その他 |
4,188 |
4,612 |
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営業収益計 |
21,565 |
23,154 |
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営業利益 |
2,017 |
2,518 |
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事業利益 |
△9,115 |
4,050 |
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1兆7,201億3千4百万円となり、前連結会計年度末比で693億6千3百万円の増加となりました。これは、販売用不動産(仕掛販売用、開発用不動産含む)の増加があったこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は1兆2,632億9千6百万円となり、前連結会計年度末比で401億8千6百万円の増加となりました。これは、有利子負債の増加があったこと等によるものであります。なお、有利子負債残高(リース債務除く。)は9,897億9千8百万円となり、前連結会計年度末比で329億6千2百万円の増加となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,568億3千8百万円となり、前連結会計年度末比で291億7千7百万円の増加となりました。これは、利益剰余金及び土地再評価差額金の増加があったこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動により33億3千2百万円減少、投資活動により212億4百万円減少、財務活動により184億2千1百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比で45億6千9百万円減少し、824億3千9百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、33億3千2百万円(前期比692億2千2百万円減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益による資金の増加があった一方で、棚卸資産の増加による資金の減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、212億4百万円(前期比195億6千2百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の取得による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、184億2千1百万円(前期比506億9百万円増加)となりました。これは主に、長期借入れによる資金の増加があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
生産、受注及び販売の実績については、「① 経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2020年度に策定したグループ中期経営計画(2020~2024年度)において、最終年度である2024年度の利益目標として、連結事業利益750億円を掲げております。また、D/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債/EBITDA倍率12倍程度を目標達成に向けた財務指針として設定しております。
なお、当連結会計年度における達成状況は次の通りであります。
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2022年12月期 実績 |
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連結事業利益 |
663億円 |
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D/Eレシオ |
2.2倍 |
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有利子負債/EBITDA倍率 |
11.1倍 |
② 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの連結業績については、ビル事業における賃貸収益が堅調に推移したこと、分譲マンションにおいて高収益物件を計上したほか、アセットソリューション事業における投資家向け物件売却が増加いたしました。この結果、営業収益は3,499億4千万円(前期3,404億7千7百万円、前期比2.8%増)、営業利益は644億7千8百万円(前期587億8千4百万円、前期比9.7%増)となりました。また、海外事業において持分法による投資利益を計上したこと等により、事業利益は663億4百万円(前期479億7千9百万円、前期比38.2%増)、経常利益は635億3千1百万円(前期462億7千万円、前期比37.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は430億6千2百万円(前期349億6千5百万円、前期比23.2%増)となりました。
各セグメントの業績概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の通りであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は主に不動産の取得・開発資金であり、これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行等により資金調達を行っております。また、当社及び主要な連結子会社は、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。
なお、資本の財源及び資金の流動性についての分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に、財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載の通りであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。