第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」は以下のとおりです。また、将来に関する事項については別段の記載のない限り、本書提出日現在において判断したものです。

 

(1) 経営方針

当社は、「Empower the Patients」を事業ミッションとして掲げております。この事業ミッションに基づき、患者、医師をはじめとする医療従事者、医療業界を取り巻くプレーヤー(製薬企業、医療機器メーカー、自治体等)の方々とともに共同でサービスの開発・運営を行っており、今後も同分野における新規事業の開発等に積極的に取り組んでいく方針であります。

 

(2) 経営戦略等

当社は、PHRプラットフォームサービス事業に引き続き経営資源を集中してまいります。

創業以来取り組んでいるPHRプラットフォームサービスは、各疾患領域でのサービスメニューを拡充しており、臨床現場におけるユーザー(患者)の行動変容による様々な効果が報告されつつあります。患者の行動変容が起こりやすい傾向がある疾患領域は多く存在しており、当社が未だアプローチできていない領域については、より効果的な提案活動を推進するための施策を講じております。

また、当社はPHRプラットフォームを他社のサービス等と連携させることで、双方のサービスの相乗効果を高め、医療者や患者により利便性の高いサービスを提供していく方針であります。各医療関連事業者との共同プラットフォーム開発など、各方面におけるサービス基盤の構築を引き続き進めてまいります。

これらの取り組みにより、「医療×デジタル」の価値を高め、持続的な成長と安定的な収益を実現してまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、高い成長性及び生産性をもって収益に結びつけ、継続的に成長していくことを経営上の目標としております。収益性及び成長性などの各経営指標のバランスを重視し、外部環境やトレンドに左右されることのない財務基盤を構築することで、企業価値の向上を図ってまいります。具体的には、売上高、営業利益、経常利益を重要な指標と考えております。

 

(4) 経営環境

経営環境につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」に記載しております。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

当社は、「Empower the Patients」を事業ミッションに掲げ、PHRプラットフォームサービスを提供しております。経営安定化及び業容拡大を図っていくうえで、以下の課題に積極的に取り組む方針であります。文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① サービス強化

 患者及び医療者(ユーザー)に治療プロセスの中で、より良いサービスを利用していただくため、当社は、ユーザーのニーズに基づく、機能改修、UX※/UI※の改修、データ連携計測機器の追加、及び検査値等各種医療データとの連携を絶えず、強化していきたいと考えております。

※ 「UX」とは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、「ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験」を指します。

※ 「UI」とは、ユーザーインターフェイス(User Interface)の略で、「ユーザーの目に触れる部分又は使用する部分」を指します。

 

 

② サービス普及

 当社の提供する各サービスの利用拡大により継続的な企業価値の向上を実現していくためには、ユーザーにとって魅力あるサービスを継続的に提供することに加え、各サービスの知名度や当社のコーポレートブランド価値、顧客ベースを持つ企業との連携などによるサービス普及が不可欠であると考えております。そのために、各主要学会でのクリニカル・エビデンスの発表、広報、広告宣伝、事業提携の推進などを通じてサービス普及活動に積極的に取り組んでまいります。

 

③ データの適正な取り扱い

 当社が提供する患者向けPHRプラットフォームサービスにおいては、患者の様々なPROデータ(Patient Reported Outcome:医師による評価ではなく、患者自らが生活・健康状態・治療について、主に自記式質問票により、患者又は被験者から直接得られる情報を指します。)が蓄積されておりますが、要配慮個人情報を含む医療情報であるため、事業推進に当たっては適正な利用を図る必要があります。

 疾患ソリューションサービスにおいては、患者と医療従事者間の臨床上の情報共有のために、当該患者の個別同意を取得したうえで、患者のPROデータを医療従事者へ提供しております。製薬企業向けには、共同開発した対象サービスの利用患者数等の統計情報をマーケティング目的で提供しており、同意を得ない各患者の個人情報及び要配慮個人情報については提供しておりません。

 Welbyマイカルテサービスにおいては、患者と医療従事者間の臨床上の情報共有のために、当該患者の個別同意を取得したうえで、医療従事者へ提供しているほか、自治体・一般企業向けには生活習慣病重症化予防の効果検証として、同サービスの利用患者数、記録データの統計情報(血圧、体重の平均値等)の提供をしています。学会、大学病院、医療機関、研究機関等向けに情報を提供するサービスにおいては、学術利用目的であることを明示し、患者の個別同意を取得したうえで実施しています。

 上記のように要配慮情報含む個人情報の適正利用を担保することによりユーザーからの信頼を維持すると同時に、情報セキュリティの観点から安心してプラットフォームを活用いただけるよう、個人情報保護法、「3省2ガイドライン※」、「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針※」、アメリカの「HIPAA法※」(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996)等により求められるデータセキュリティ課題にも引き続き対応してまいります。

※ 「3省2ガイドライン」とは、医療機関や医療情報を取り扱う情報処理事業者等が準拠すべき総務省、厚生労働省、経済産業省各省が策定したガイドラインの総称を指します。

※ 「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」とは、民間PHR(Personal Health Record)サービスが適切に利活用されることを目的に、経済産業省、厚生労働省、総務省各省が民間PHR事業者のために策定したルールを指します。

※ 「HIPAA法」とは、アメリカにおける医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律。医療情報の電子化の推進とそれに関係するプライバシー保護やセキュリティ確保について定めた法律を指します。

 

④ 優秀な人材の確保及び育成

 当社の業容拡大のためには、優秀な人材の確保及び当社の成長フェーズに応じた組織体制の強化が不可欠であると認識しております。社内外を問わず人材リソースの確保のため、リファラル採用等の採用チャネルの多様化、専門領域に特化したエージェント企業との協力関係の構築などを積極的に進める方針であります。人材育成については、各人の担当業務に関するOJTを実施し、且つ各種研修機会の提供を通じて各人の成長を促進するとともに、リーダー層においてはマネジメントスキル向上のための施策を講じてまいります。

 

⑤ コーポレート・ガバナンスの強化

 当社が持続的成長を維持していくためには、内部管理体制の強化を通じた業務の標準化と効率化が重要であると考えております。それらの実効性を高めるための環境を整備し、組織的な統制・管理活動を通じてリスク管理の徹底とともに、業務の標準化と効率化を目指しております。また、コーポレートガバナンス・コードの基本原則に従い、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーからの社会的信頼に応えていくことを企業経営の基本的使命とし、コンプライアンス体制の強化、迅速かつ正確な情報開示の充実に努め、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいります。

 

⑥ 新型コロナウイルスの感染拡大について

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う医療領域のDX(Digital Transformation)化の流れがPHRの活用に追い風になり、現在商談進行中のプロジェクトは前期比で拡大しております。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大以降、顧客の意思決定の遅延などにより、受注のリードタイムが長期化する傾向にあります。このように、今後の新型コロナウイルスの感染状況の変化による社会経済環境、及び主要な顧客である製薬会社等の業績に与える影響など現時点で不確定要素が極めて大きいと考えており、継続して注視してまいります。

 なお、当社では、従業員及び家族の健康と安全の確保を第一に考え、テレワークの推奨、オンラインツールを活用した打合せの推進及び時差出勤の推奨等、感染リスク低減のための措置を実施しております。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(事業環境に関するリスク)

① 医療及びヘルスケア市場について

当社の売上高の多くが、医療・ヘルスケア関連分野からのものとなっています。同業界は今後も市場の成長が見込まれますが、何らかの理由により、市場の成長が停滞し、あるいは市場が縮小するなどした場合や、新たな市場動向に当社が対応できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の主要顧客である製薬企業においては、グローバルなレベルでの企業間競争及び再編の動きが続いており、これは当社が提供するプラットフォームサービス展開を加速させる可能性がある一方、製薬企業の戦略方針の変更又は再編された既存顧客による契約見直しを要求されることも考えられます。その契約内容により、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

② 競合について

当社は、「患者・家族が自己管理をする」ための支援サービス提供を主な事業としております。提供アプリの最適なUI/UXを追求した機能設計、特色あるサービスの提供、取引の安全性の確保やカスタマーサポート充実への取り組みなどにより、競争力の向上を図っております。しかし、当社が継続的に優位性を高め、エンドユーザーの利用価値の維持向上を図ることの可否については不確実な面があります。今後、高い知名度、幅広い顧客基盤を有する先行同業他社による模倣や、資本力、マーケティング力、専門性を有する企業等の参入によって、当社の競争優位性が低下または競争が激化する等の状況が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 新規サービス展開に伴うリスクについて

医療業界においては、PHRプラットフォームの標準サービスがなく、当社は、事業ミッションに基づき、患者、医師をはじめとする医療従事者、医療業界を取り巻くプレーヤー(製薬企業、医療機器メーカー、自治体等)の方々とともに共同開発・運営を行っており、今後も同分野における新規事業の開発等に積極的に取り組んでおります。新規事業の開発にかかる人材、システム、広告等に対する追加的な支出の発生及び事業が安定して収益を生み出すまでにはある程度の時間がかかることから、これにより当社の利益が一時的に低下する可能性があります。また、当社が想定するプラットフォームの標準化の立ち上がりスピード及び当該新規事業が想定どおりに推移しない場合は当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(事業運営に関するリスク)

① 収益の季節変動性について

当社の収益は主要顧客である大手製薬会社の決算期に納品・検収のタイミングが影響される傾向にあり、特に近年は外資系製薬企業の決算が集中する第4四半期会計期間における納品・検収が顕著に大きくなる傾向があるため、売上高及び利益がそれらの時期に集中する傾向があります。このため、特定の四半期業績をもって当社の通期業績見通しを早期に判断することは困難な場合があります。また、当社は顧客企業の検収をもって売上を計上しておりますので、期末月に売上計上を計画する案件については、予期せぬトラブルやスケジュール変更等により期ずれが生じる可能性があり、当該要因により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、第12期事業年度における四半期別の売上高及び営業損益は、次のとおりであります。

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高(千円)

183,437

226,508

133,462

507,585

1,050,994

営業利益

又は営業損失(△)(千円)

△67,775

△46,439

△109,262

284,385

60,907

 

 

② 個人情報の取り扱いについて

当社が展開する事業において、多くの患者及び利用者からの重要な個人情報を取り扱っております。当社は、これら個人情報のセキュリティを十分に担保し、信頼性の高い情報として利用していただくことが責務であると考え、個人情報保護法を遵守するとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)であるISO27001及びクラウドセキュリティマネジメントシステムであるISO27017の認証を取得しております。加えて、EU一般データ保護規則(GDPR)等諸外国の個人情報保護法制についても、随時外部弁護士等専門家にも確認をしながら必要な検討及び取組みを進めております。しかしながら、個人情報取扱いに関する内外の法令の変化により、当社の事業運営に支障をきたす可能性があります。また、個人情報流出等の不測の事態が生じて患者個人のプライバシーが侵害され、当社が企業としての信用を失墜することにより業績の悪化や財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

 

③ 知的財産権について

当社は、第三者の特許権その他の知的財産権を侵害することのないよう万全を期しておりますが、万が一侵害があった場合には、相手方より相応の損害賠償を請求される可能性があります。また、現在のインターネットの基盤技術はその権利帰属先が不明な部分があり、基盤技術の重要な一部について第三者の特許取得が認められた場合あるいは将来特許取得が認められた他社の技術がインターネットの基盤技術の重要な一部を構成することとなった場合には、当該ライセンサーに対しライセンス料を負担する必要が生じる可能性があります。このような損害賠償及びライセンス料の負担が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は知的財産権について適切な保護管理策を講じておりますが、第三者が当社の知的財産権を侵害する可能性を完全に排除することは困難でもあり、当社の重要な知的財産権が第三者に不当に侵害された場合には、当社の経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報セキュリティについて

当社は、顧客の新製品開発計画や営業上の機密情報等に接する機会があり、当然ながら守秘義務を負うこととなるため、顧客及び社外の専門スタッフとの取引時には機密情報の守秘義務契約を締結しております。またデータの授受にはセキュアなクラウド上のファイルサーバー等を利用するなどセキュリティ対策を講じております。過去に機密情報漏洩などの事象は発生しておりませんが、何らかの理由によりそれら機密情報等が漏洩し、顧客に重大な損害を与えた場合には、損害賠償請求や信用失墜等により当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

⑤ 外注先企業の選定管理および確保について

当社は、システム開発の一部を外部の開発パートナー会社に委託しております。開発業務のスピード向上やコスト削減のためには、一定レベルのスキルを持った優秀な外部委託先を安定的に確保することが必須となります。そのため既存の外部委託先のみならず、新規の候補先については技術力などについて厳しく審査を行ない、信頼できる会社を選定することとしておりますが、万が一の外注先の責による納入遅延や瑕疵などのリスクを完全に排除できるものではなく、適切な外部委託先を安定的に確保することができない場合、開発スケジュールに支障をきたし、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ サービスに関する不具合、クレームについて

当社は、エンドユーザー(患者)からの意見やクレームに対応するセクションとしてカスタマーサポート窓口を設置しております。クレームに即時に対応することや、様々な意見などを関連部門にフィードバックすることで、サービス改善等に繋げる役割を果たしております。当社が今後もエンドユーザーに信頼され、支持される企業として発展していくためには、満足度の向上が必要不可欠であり、かつクレームへの対応が重要と認識したうえで、さらに迅速な対応が出来る体制の強化を図ってまいります。しかしながら、結果的に当社のサービスをめぐる重大なクレーム等が発生した場合は、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(組織体制に関するリスク)

① 人材の確保及び育成について

当社は、業容拡大に向けた優秀な人材の確保及び育成が極めて重要な課題であると考えております。スタッフの業務スキルの底上げを図ると共に、新たな人材確保のための採用活動を強化し、さらに外部パートナーの開拓や育成、他業種との業務提携なども順次行なっております。しかし、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職するなどして、十分な人材リソースを確保することができない場合には、当社の業績又は将来的な事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(その他のリスク)

① 各種規制について

当社が提供するPHRプラットフォームサービスは、現時点は薬機法規制対象である「医療機器プログラム」に該当しないことを管轄官庁の厚生労働省に確認しております。しかし、今後プラットフォームサービスにおける診断サポート機能の追加や医薬品とのセットでの提供(いわゆる「コンパニオンアプリ」)により、「医療機器プログラム」に認定され、当社がこれに対応できない場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、法的規制以外では、日本製薬工業協会が定める「製薬協コード・オブ・プラクティス」が存在します。製薬協コード・オブ・プラクティスとは、製薬企業が薬機法・独禁法等の関係法規と公正競争規約等の自主規制を遵守し、医薬情報を適正な手段で提供・収集・伝達するために定めている薬業界の自主ルールであり、当社では当該コードの遵守に努めております。しかしながら、業界では各種規制の見直しが進んでおり、関連法令や業界団体による規制等の改廃、新設が行われた際に、当社が何らかの対応を余儀なくされた場合や、これらに対応できない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当事業年度における我が国経済は、ワクチン接種率の向上とともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の厳しい状況から徐々に回復の兆しが見られたものの、今後の景気動向については未だ先行き不透明な状況が続いております。

当社については、主たる事業領域であるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)関連業界において、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり超高齢社会を迎える「2025年問題」を見据え、給付と負担のバランスを図りながら制度の持続可能性を確保するための医療制度改革が進む一方、高齢化に伴い慢性疾患罹患率が増加し、生活の中で生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まるなど医療に対するニーズの変化が着実に進みました。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況は収まってきたものの、依然として医療資源の不足等により医療機関による患者への遠隔モニタリングの必要性は高まっており、当社が進めるPHRサービスが社会的課題の解決策の一つとして認識されております。

このような事業環境下、当社は「Empower the Patients」を事業ミッションのもと、医療関係者をはじめ、製薬企業、医療機器メーカー等とともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応なども含めたPHRプラットフォームサービスの普及に取り組みました。

また、PHRサービス産業の健全な発展を通じて国民の健康増進や豊かで幸福な生活(Well-being)に貢献することを目的として「PHRサービス事業協会(仮称)」をPHRサービス事業を展開する企業と共に設立する予定です。これにより官民一体でPHRの社会実装を加速させることで、患者の治療課題解決に向けて更に貢献できるものと期待しています。

 

疾患ソリューションサービスにおいては、業界全体のDX(Digital Transformation)の加速化などもあり、製薬企業から受注を受けた既存PHRサービスの改修や機能追加、慢性疼痛を対象にした新規PHRサービス提供が売上の主な構成要素となっております。

オンコロジー領域においては、PSP(Patient Support Program)として、プラットフォームサービス「WelbyマイカルテONC」を製薬企業に展開するなどの継続した活動により更なる拡大を図っています。また、大学病院等と連携した乳がんや肺がんに関する臨床研究を推進するとともに、製薬企業スポンサーによる複数施設を対象とした臨床研究を開始しております。具体的には、神戸大学や昭和大学によるがん領域の臨床研究にて、「WelbyマイカルテONC」がePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)機能として採用されたことや、製薬企業が実臨床において利用していた「WelbyマイカルテONC」が臨床研究においても利用が決定するなど臨床現場での普及が拡大しております。

サービス普及の観点からは、がん領域におけるPHRの普及浸透と活用支援を通じて患者中心のがん診療実現と適正なデータ活用によるがん診療の向上に寄与することを目的にオンコロジスト向けコンソーシアムを賛同した製薬企業のスポンサーの元に運営しております。こちらのコンソーシアムを契機にがん拠点病院や製薬企業などを中心に普及を強化しております。

前年同期よりストック売上高は着実に増加した一方で、前年同期に前々期からの期ズレ案件が多く売上計上されたこと等により疾患ソリューションサービスの売上高は、647,495千円と、前年同期と比べて170,232千円(20.8%)の減収となりました。

 

Welbyマイカルテサービスにおいては、医療機関向けにサービス提供を計画している顧客に対し、当社の医療者向け管理機能への使用許諾を行ったことで、今期の収益が拡大しております。また、前年に開始した自社で新たにPHRサービスの展開を計画している顧客へのPHR基盤プラットフォームのOEM提供についても、継続して案件を受注したことなどにより今期の収益が拡大しております。具体的には、大阪府吹田市の多世代居住型健康スマートタウンなど各地域にて個人及び医療機関向けのPHRデータポータビリティ機能の提供を推進しております。今後も自社でPHRサービスを展開したい顧客の需要は旺盛であり、収益の拡大を見込んでおります。

サービス普及の観点からは、広範な顧客網を有するパートナー企業との協業を推進しております。株式会社スズケン、フクダ電子株式会社などと普及活動を継続しました。引き続き、新たに導入をする医療機関が増加するほか、これまでに導入を完了した医療機関を対象に実臨床におけるPHRの利用価値の訴求・情報提供を推進しました。また、糖尿病領域向けには株式会社三和化学研究所や各血糖測定器メーカーとの連携により、糖尿病専門医に特化した普及や利用促進が加速しております。また、PHRと電子カルテの連携推進を通じて医療の質的向上に寄与すると見込んでおり、PHRのデータポータビリティ実現に向けて更なる普及に取り組んでおります。加えて今後は、株式会社スズケンとWelbyマイカルテを活用した保険薬局向け処方箋情報送信サービスの普及に向けた共同展開を開始し、保険薬局への普及を推進する予定です。Welbyマイカルテ利用者が登録したかかりつけ医療機関は2022年12月末時点で約26,200施設(無料利用施設を含み、重複を除く)となっています。なお、2022年12月末時点で各アプリの合計ダウンロード数は約98万回に達しております。国民への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が一巡し、経済活動が一部再開している中で、普及のペースは落ち着いております。

PHRサービスと他分野の協業の一環として、患者や利用者個人の健康状態や好みに合わせてパーソナライズ化された情報やユーザー体験を提供することや、そのサービス提供によるアウトカム向上(健康状態の改善)を目指すヘルスケア事業を展開しております。具体的には、生命保険分野において業務提携関係になる大同生命保険株式会社と保険契約者の生活習慣の改善に向けた取り組みや新たな保険商品・サービスの開発などを目的としたWelbyマイカルテ利用者の生活習慣・重症化予防効果についての共同研究を行った結果を踏まえ、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを対象に生活習慣を改善するための保険商品と連動したサービス開発などを継続推進するとともに、対象疾患の拡大に進めております。

また、食品など関連分野においては、Welbyマイカルテを利用する2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者や予防・健康管理などで利用する方々を対象に、Welbyマイカルテとのデータ連携機能に対応する血圧計などの各種測定器や食品を提供するなど、健康管理に関する様々な利用者のニーズにこたえております。生活習慣改善プログラムや臨床研究などへのPHRサービス利用の事業モデルを確立し、食品業界の企業と案件を推進しました。具体的には、ダイドードリンコ株式会社とPHRを活用した生活習慣病改善プログラムを開発し、実施しました。今後更なる収益化へ向けての取り組みを継続して行っております。

パーソナライズ化されたヘルスケア事業を展開するための提携先である株式会社電通と個別案件の事業化に向けた検討を継続し、日本国内におけるPHRの認知向上と活用促進に向けて、企業・自治体・学会・メディアなどと協議をしております。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種5回目が実施される中、当社の提供する新型コロナワクチン接種前後の症状記録(問診)・管理ツールに5回目接種まで対応可能な機能を実装しました。また、新型コロナチェックツールに各種検査結果(PCR検査/抗原検査/抗体検査)を記録・共有することができる機能を実装しました。これらにより、新型コロナウイルスの予防から罹患後の情報共有までを一気通貫でサポートするプラットフォームとして普及を推進しております。

基盤提供モデルの拡販により、Welbyマイカルテサービスの売上高は403,498千円と、前年同期と比べて82,037千円(25.5%)の増収となりました。

 

 

これらの結果、当事業年度の売上高は1,050,994千円(前年同期比7.7%減)となりました。昨年より取り組んでいた原価低減が着実に進んだことや高収益案件を受注したこと等により売上総利益については、755,440千円(前年同期比10.5%増)、売上総利益率は71.9%(前年同期比11.8%増)と前年同期比大幅な改善となりました。

販売費及び一般管理費については、業容拡大のための開発投資を行う一方、体制の再構築及び関連する人員配置の見直しにより694,532千円(前年同期比12.9%減)となりました。開発投資の内、プラットフォーム開発投資は、共通基盤での各種ガイドラインへの適用拡大、疾患治療向けPHRの患者UXナレッジの標準化、システム連携機能整備など、PHRプラットフォーム基盤の継続強化のための開発投資となり、こちらにより収益性の更なる向上を見込んでおります。

営業利益は60,907千円(前事業年度は営業損失113,124千円)、経常利益は73,641千円(前事業年度は経常損失109,671千円)となりました。当期純利益は有形固定資産の減損損失を計上したこと等により、33,909千円(前事業年度は当期純損失130,675千円)となりました。

  また、当事業年度にて計上したマイカルテやプラットフォーム開発などへの先行投資額は134,494千円となりまし

 た。

なお、当社は、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 

生産、受注及び販売の状況の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当社は、生産活動を行なっておりませんので、該当事項はありません。

② 受注実績

当社は、受注から売上高計上までの期間が短期であるため、当該記載を省略しております。

③ 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

当事業年度

(自 2022年1月1日

 至  2022年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

PHRプラットフォームサービス事業

1,050,994

92.3

 

(注) 最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度
(自 2021年1月1日
 至 2021年12月31日)

当事業年度
(自 2022年1月1日
 至 2022年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社コラボプレイス

260,000

24.7

興和株式会社

225,000

19.8

106,396

10.1

株式会社インテージヘルスケア

157,416

13.8

72,787

6.9

日本イーライリリー株式会社

141,360

12.4

72,992

6.9

 

 

(2) 財政状態

① 資産

当事業年度末の資産については、総資産が1,395,516千円となり、前事業年度末と比較し1,408千円の増加となりました。

流動資産の残高は、前事業年度末に比べ31,937千円増加し、1,352,171千円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が129,896千円減少した一方で、売掛金が160,292千円増加したことによるものであります。

固定資産の残高は、前事業年度末に比べ30,528千円減少し、43,345千円となりました。主な増減内訳は、敷金差入保証金が32,528千円減少したことによるものです。

② 負債

負債については、121,398千円となり、前事業年度末と比較して13,431千円の減少となりました。

流動負債の残高は、前事業年度末に比べ6,291千円減少し、120,188千円となりました。主な増減内訳は、未払消費税等が5,759千円減少したことによるものであります。

固定負債の残高は、前事業年度末に比べ7,140千円減少し、1,210千円となりました。これは、長期借入金の返済による減少であります。

③ 純資産

純資産の残高は、前事業年度末に比べ14,840千円増加し、1,274,118千円となりました。主な増減内訳は、繰越利益剰余金が33,909千円増加した一方で、新株予約権が19,069千円減少したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当事業年度末における現金及び現金同等物は、830,820千円となり、前事業年度末と比較して129,896千円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、114,112千円の支出(前事業年度は95,947千円の支出)となりました。主な要因は、売上債権が150,456千円増加し資金が減少した一方で、税引前当期純利益の計上38,151千円により資金が増加したことによるものであります。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、7,043千円の支出(前事業年度は34,557千円の支出)となりました。主な要因は、差入保証金の回収による収入50,791千円により資金が増加した一方で、有形固定資産の取得による支出32,752千円、差入保証金の差入による支出23,082千円により資金が減少したことによるものであります。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、8,739千円の支出(前事業年度は7,140千円の収入)となりました。主な要因は、借入金の返済による支出7,140千円によるものであります。

 

 

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度において当社が判断したものであります。

① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 売上高

当事業年度の売上高は、前事業年度に比べて88,194千円減少し1,050,994千円(前年同期比92.3%)となりました。売上高の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」をご参照ください。

b. 売上原価、売上総利益

売上原価は、前事業年度に比べて159,720千円減少し295,553千円(前年同期比64.9%)となりました。売上原価の主たる減少要因は、外注費が145,670千円減少したためであります。

以上の結果、売上総利益は前事業年度に比べて71,526千円増加し755,440千円(前年同期比110.5%)となりました。

c. 販売費及び一般管理費、営業利益

販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べて102,505千円減少し694,532千円(前年同期比87.1%)となりました。主たる要因としては、株式報酬費用が51,482千円、業務委託費が37,888千円減少したためであります。

以上の結果、営業利益は前事業年度に比べて174,031千円増加し60,907千円(前事業年度は営業損失113,124千円)となりました。

d. 営業外損益、経常利益

営業外収益は、前事業年度に比べ16,071千円増加し19,610千円(前事業年度は3,539千円)となりました。主たる要因は、役員報酬返納額が19,500千円増加したためであります。営業外費用は、前事業年度に比べ6,790千円増加し6,877千円(前事業年度は86千円)となり、主たる要因は、本社移転費用が5,067千円増加したためであります。

以上の結果、経常利益は73,641千円(前事業年度は経常損失109,671千円)となりました。

e. 当期純利益

当事業年度の法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む。)は4,241千円となりました。

以上の結果、当期純利益は33,909千円(前事業年度は当期純損失130,675千円)となりました。

② 財政状態の状況

「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 財政状態」に記載のとおりです。

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金については、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。

なお、当社の資金の流動性については、「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。現時点において重要な資本的支出の予定はございません。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、並びに報告期間における収益・費用の報告数値は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき、見積り及び判断が必要となる場合があります。経営者は、これらの見積りについての過去実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りに与える影響は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社が今後更なる成長と発展のためには、厳しい環境の中で、様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。

そのために、PHRプラットフォームサービスにおける対象疾患領域の拡大とサービスメニューの強化、及び患者PROデータ活用分野の拡大等を行ってまいります。

⑦ 経営戦略の現状と見通し

当社は設立以来「Empower the Patients」を事業ミッションに掲げ、当社のPHRプラットフォームサービスの利活用を通じて、患者及び医療者の治療継続への支援、及びアウトカムの改善に努めてまいりたいと考えております。

「患者の治療アウトカムの改善」をコアコンセプトとして、様々の医療機関と連携して患者及び医療者により良いサービスを提供するとともに、企業と連携してデータの活用を図ってまいります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。