第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

1.経営方針

(1)中長期的な会社の経営戦略

 2023年1月、昭和電工㈱と昭和電工マテリアルズ㈱は統合し、レゾナックグループとして新たなスタートを切った。

 

<経営理念>

  化学の力により人類と地球は共存できる。

 長期ビジョンで示した統合新会社の存在意義(パーパス)「化学の力で社会を変える」は化学メーカーとしての責任であると考えている。サステナビリティの考え方をパーパスの根幹に埋め込むことにより、私たちが化学と真剣に向き合っていくということを意味している。

  このパーパスに加え、従業員が大切にすべき4つのバリュー(価値観)として、

    「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」

    「機敏さと柔軟性」

    「枠を超える、オープンマインド」

    「未来への先見性と高い倫理観」

 を定め、これらをパーパスと合わせて統合新会社の経営理念とした。

 この経営理念のグループ、グローバルでの浸透を図り、レゾナックグループは一丸となって事業に取り組むとともに、人材育成の強化、人事評価の透明性や実力主義の徹底等を進めていく。

 

<レゾナック・グループの長期ビジョンの目指す姿と主要戦略>

  私たちは「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す。

  その姿として、質的な面、計数的な面それぞれを兼ね備えた「世界で戦える会社」、

  イノベーションと事業開発力で「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、

  さまざまなステークホルダーからも注目されるような「国内の製造業を代表する共創型人材創出企業」

  となることを掲げ、実現していく。

 

長期ビジョンでは、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」に向けて、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を組み込んだ「グローバル水準の収益基盤の確立」「ポートフォリオ経営の高度化」「イノベーション」の各戦略を推進していく。

 

(目指す姿)

0102010_001.png

 

(主要戦略)

0102010_002.png

 

 

<共創型化学会社>

 私たちは、川中から川下まで幅広く最先端の機能材料を社会に提供することで、社会課題の解決にイニシアチブを発揮する化学メーカーでありたいと考えており、これを実現するためには社内あるいは化学業界に閉じた事業活動にとどまっていては足りないと考えている。

 グローバルにおける一流の実力を備え、機敏かつ柔軟な行動と意思決定をもって、化学産業の内外のステークホルダーや共同体等の志を共にする仲間とよりよい社会を共創していく、

  これが私たちの“共創型化学会社”の姿である。

 

 

(2)長期数値目標

 

 

2022年実績

2025年

売上

(兆円)

1.39

1.0超

EBITDAマージン

(%)

12.1

20

ROIC

(%)

3.2

中長期的に10%

ネットD/Eレシオ

(倍)

1.08

1.0倍を目指す

 

目標数値の達成により、総株主還元(TSR)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指す。

 

<サステナビリティ>

 当社グループは、パーパス「化学の力で社会を変える」を実現するには、経営の根幹にサステナビリティを据える必要があると考え、サステナビリティ推進体制を強化している。

その一環として、「サステナビリティビジョン2030」を設定するとともに、上記主要戦略を実行し持続可能な社会に貢献していくために当社がクリアすべき経営の課題をサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)として特定し、非財務KPIに落とし込んで取り組みを進めている。また、サステナビリティへの取り組みを役員・社員の評価にもつなげることで実効性を持たせ、社内浸透を進めている。

 

サステナビリティビジョン2030達成までの道筋

2023年の統合新会社スタート前年である2022年は「サステナビリティビジョン2030」達成に向けた仕込みの年と位置付け、マテリアリティを非財務KPIに落とし込むなど体制を構築した。2023年からは実践を繰り返し、社内外のステークホルダーとのエンゲージメントを通じて取り組みを進化させていく。

 「サステナビリティビジョン2030」達成に向けて、①サステナビリティマネジメントの強化による経営戦略・事業戦略との一体化、②サステナビリティを軸に据えた事業・技術の開発による成長の源泉の創出、③カーボンニュートラルをはじめとする組織横断的な課題の解決による価値創出、④ステークホルダーエンゲージメントの強化による価値創造、⑤従業員のサステナビリティマインドの醸成の5つを重点領域と設定し、全社での活動を推進している。

 

サステナビリティ重要課題(マテリアリティ) と非財務KPI

 策定した3つのマテリアリティは、2030年までの長期ビジョンの目指す姿(世界で戦える会社、持続可能なグローバル社会に貢献する会社、国内の製造業を代表する共創型人材創出企業)に関連付けられており、当社長期ビジョンの達成と社会からの期待の両面をカバーしたものとなっている。また、グローバル経営の共通基盤として、コーポレート・ガバナンスとステークホルダーエンゲージメントにも力を入れていく。

 

0102010_003.png

 

マテリアリティに紐づき設定した中期の非財務KPIは、策定から実行、進捗確認、そして取締役会による監視監督に至る一連の全社マネジメントサイクルにのせることで、達成の確度を高めていく。

 下表は3つのマテリアリティに基づく主なコーポレートレベルのKPI(一部抜粋)である。引き続き社内での議論を重ね、具体的な施策に落として従業員のモチベーション向上に繋がるようにしていく。これらのKPIは進捗に応じて、またさまざまな社内外ステークホルダーの意見や期待を受け止めて、不断の見直しを行う。

 

サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)

マテリアリティ実現に向けた重要な構成要素(抜粋)

非財務KPIの例

イノベーションと事業を通じた競争力向上と社会的価値創造

・事業を通じた社会的価値の創出

・社会課題を解決するR&D/知財戦略

・SDGsに貢献する製品/事業戦略

サステナビリティ貢献製品評価指標の確立と目標設定

主要製品のカーボンフットプリント算出

責任ある事業運営による信頼の醸成

・全ての人が安心して働ける環境の提供

・製品ライフサイクル全体の環境負荷低減

・多様化/複雑化するリスクのマネジメント体制の強化

労働災害減

温室効果ガス排出量の削減

リスクマネジメント体制の強化

自律的・創造的な人材の活躍と文化醸成

・互いへの信頼と尊重から生まれる共創文化の醸成

・自律的/創造的なプロフェッショナル人材の育成と獲得

・従業員エンゲージメントの強化

従業員エンゲージメントスコアの向上

DE&I(女性管理職比率向上)

 

 

2.経営環境及び当社グループの対処すべき課題

デジタル化の加速、カーボンニュートラルに向けた取り組みの要請およびエネルギー価格の高騰など、企業を取り巻く環境は激しく変化している。また、地政学リスクの高まりやサプライチェーンの混乱も生じている。

このような不確実な情勢下、当社グループは、更なる競争力の強化のために、ポートフォリオ経営の高度化を推進している。コア成長事業である半導体材料に集中的に経営資源を配分し、また、モビリティ事業においては、想定以上の速度で内燃機関車から電動車へ移行する市場環境に適応した機動的な資源配分を加速することで、成長を実現していく。

当社グループは、様々な社会課題を解決する「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指すため、社会課題、顧客のニーズを把握し、社内外との共創を推進することを通して、イノベーションを生み出していく。

また、グローバルで戦うために欠かせないデジタル戦略にも取り組んでいく。

さらに、パーパスに込められたサステナビリティの理念を根幹におき、先端材料の提供を通じた省エネルギーや環境負荷の低減、イノベーションによるカーボンニュートラル、そしてリサイクル技術を通じた高度循環型社会の実現に貢献する。

 「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページを参照。

 https://www.resonac.com/jp/corporate/governance.html

2【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがある。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めており、詳細は以下「(1)リスクマネジメントの取組み」に記載している。

 なお、これらの事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではない。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナ情勢等による事業への影響について、今後も注視していく。

 

(1) リスクマネジメントの取組み

 ①リスクマネジメント体制

     当社グループでは、事業経営に与えるリスクとその影響を明確化し、経営資源の適正配分を実現するため、ISO31000に準拠したリスクマネジメント体制を整備している。

     CEOが議長を務めるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント体制やグループの重要リスクやその対応策など、トップマネジメントによる組織横断的な審議を行っている。リスクマネジメント委員会での審議事項は経営会議で審議・承認された後、取締役会でも報告され、取締役によるリスクマネジメント体制の妥当性や有効性の評価や推進状況の監督等が行われる。

     また、国内の事業部・事業所及び主要なグループ会社に、各部門のリスクの識別やリスクの対応策の推進などの実行責任を負うリスクオーナー、リスクオフィサー、リスクマネージャーを配置するとともに、各CXO組織は、各部門によるリスク評価や対応策について、全社を横断し俯瞰する視点からレビューや支援などを行い、相互に連携を図りながら、経営と現場が一体となって統合的なリスクマネジメントを推進する体制を構築している。

 

〔リスクマネジメント体制図〕

0102010_004.png

 

 ②当社のリスクの定義

     リスクは戦略リスクとオペレーショナルリスク、ハザードリスクに分けることができ、さらに戦略リスクは計画上の前提が変動するリスクと、策定した戦略が実行されないリスクの二つに分けることができる。企業価値の持続的成長のためには、従来の安全・コンプライアンス重視の“守りのリスクマネジメント”だけでなく、適切なリスクテイクを促す“攻めのリスクマネジメント”が必要であり、リスクを総合的に判断し、経営戦略に反映していく。

 ③リスク棚卸の実践

     年に1回、課・グループといった組織単位で事業活動の潜在リスクを含めた網羅的なリスクの洗い出しと評価(リスク棚卸)を実施している。リスク棚卸の結果は、事業部・事業所・グループ会社の拠点単位でトップによるレビューを行い、システムに登録される。登録されたリスクの中から、発生頻度と影響度の観点から分類を行い、重要度や優先度の非常に高いリスクを重要リスクとして位置づけ、リスクマネジメント委員会へ報告し、グループの重要リスクとその対応策など審議する。

 

(2) 個別事業の経営成績における大幅な変動

 当社グループは、エレクトロニクス、デバイスソリューション、モビリティ、セラミックス、機能性化学品、アルミ機能部材、コーティング材料、石油化学、グラファイト、基礎化学品、ライフサイエンスの事業領域において様々な製品の製造・販売を行っている。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがあるが、リスクはこれらの事業に限定されるものではない。

①半導体・電子材料セグメント

 当社グループの半導体・電子材料セグメントの各種製品は、モバイル機器、データセンタ、パワーモジュール、ITインフラストラクチャ、電気自動車や先進運転支援システム搭載車などに使用され、世界のマクロ経済や業界動向等に基づく最終製品需要の変化により、その需要は大きく影響を受ける。また、これらの市場は、急激な技術変化や製品の陳腐化による価格低下などの影響を受ける国際的競争が厳しい事業である。更に、市場ニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供するため、グローバルなサプライチェーン網を整備しているが、地政学リスク等による原材料・エネルギー・物流コストの高騰、サプライチェーンの寸断などの可能性がある。
 こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動、サプライチェーン上の重大なリスクの発生、あるいは、為替の大幅な変動などの場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 そのため、顧客のニーズや市況動向の把握に努め、新製品や技術の開発や製造プロセスの改善などに取り組むとともに、リスクの早期検知及び顧客への安定供給を実現すべく、サプライチェーン・マネジメント体制の強靭化に継続的に取り組んでいる。

②モビリティセグメント

 当社グループは、地球環境保護を目的とした燃費・CO2排出量の規制強化及びCASE(※)など、グローバルなモビリティ市場の動向に影響を受ける。モビリティ市場は、カーボンニュートラルの実現やCASEの進展などに伴い、自動車の電動化、軽量化、電装化、安全性・快適性向上のための商品開発が求められており、将来の中長期的な拡大が見込める有望な市場である。一方、競合他社、新規参入者との競争環境も激化しており、新たな技術・製品の開発や開発リードタイム短縮など顧客の要求水準やニーズの変化への対応が遅れるリスクに加え、新しい技術・製品により、既存事業が陳腐化し、市場競争力を失い、販売価格が下落することがある。また、EVシフトによる内燃機関車市場の縮小により、既存事業の収益性が低下するリスクもある。その他、現在、世界的に深刻化している半導体等部品供給不足に起因する自動車生産の減により、当社グループも生産調整を強いられるなど影響が出ている。
 こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動などにより、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 そこで、当社グループでは、CASE進展に伴う新たな技術ニーズを取り込むため、軽量化や小型化、電動化に伴うバッテリー関連、熱・音・電磁波の制御などの材料や部品のモジュール化などのソリューションを提供することで、既存顧客における採用モデル拡大や新規顧客開拓を一層推進する。

※CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング/サービス、Electric:電動化)

③イノベーション材料セグメント

〔アルミニウム事業〕

 当社グループは、大量のアルミニウム地金を海外から輸入しており、LME相場やアルミ割増金の上昇、円安等によりアルミニウム地金価格が上昇し、かつそれによる製造コストの上昇分をアルミニウム関連の製品価格の上昇で吸収できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また当社グループのアルミニウム製品は、自動車向け、電機電子部品・材料向けの販売が大きな比重を占めており、これらの製品の売上は、自動車市場や家電・情報機器関連市場の動向など当社グループが管理できない要因により、大きな影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、アルミニウム製品原料の価格変動リスクをLME相場や為替相場等でヘッジするとともに、コストダウンの推進等により安定的な収益構造の構築に努めている。

④ケミカルセグメント

〔石油化学事業〕

 当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の変動や需給バランス、為替等の要因によりナフサ価格等が変動し、販売価格との間に十分なスプレッドが確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。さらに、気候変動影響への懸念による世界的なカーボンニュートラル化推進への対応のスケジュールによって、要求される投資や費用支出が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、コストダウンの推進や販売方法の見直し等収益の安定化に努めている。

〔グラファイト事業〕

当社グループは、アジア、北米、欧州にて黒鉛電極を生産し、その製品をグローバルで販売しており、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、需給バランスの悪化により販売価格と原材料調達価格の間に十分なスプレッドが確保できず、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、在庫を市況に応じて適正な水準を維持する、コストダウンを強化するなど、収益基盤強化に積極的な取り組みを行う。

⑤グローバルな事業活動

 当社グループは、アジア、北米、欧州にて生産及び販売活動を行っているが、海外での事業活動には、予期しえない法律または規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在する。ウクライナ情勢による影響が顕在化するなか、今後の長期化に伴い、その影響が他の地域へ波及することにより、原燃料価格や物流コストの更なる上昇に繋がるリスクがある他、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化によるサプライチェーンの途絶などの可能性もある。
 こうしたリスクにより、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑥企業買収、資本提携及び事業再編

 当社グループは、事業領域の拡大や収益性向上を目的として国内外における企業買収、資本提携及び事業再編を実施している。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することでリスクの低減に努めているが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境の変化により、当初期待していた成果が得られない場合には、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(3) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動

①為替相場の大幅な変動

 当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めているが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。特に、米ドルをはじめとする他の通貨に対する急激な円高は、国内から海外市場に輸出される製品の価格競争力を弱め、一方、円安は、海外から輸入する原材料価格を上昇させ、それぞれ当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性がある。

 また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

②金融市場の動向や調達環境の変化

 金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金等の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。また、当初想定された業績及び財務状況並びに財務指標等が実現されない場合には、信用格付けが引き下げられる可能性があり、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れの条件にも影響を及ぼす可能性がある。
 このようなリスクに対して、財務体質の改善・強化に加えて、取引金融機関とのコミットメントライン契約等による流動性の確保、返済・償還額の平準化や固定金利・変動金利のバランス等を考慮した適切な資金調達に努めている。

③退職給付債務

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

④固定資産の減損

 当社グループの連結貸借対照表に表示されるのれん、無形資産、土地等の固定資産について、事業環境の悪化による収益性の低下や、保有資産時価の著しい下落等が生じた場合、固定資産に減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 また、日立化成㈱に対するTOBの結果、のれん及び無形資産の金額が増加しており、当社グループの業績が悪化した場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、感染の拡大が長期化した場合、一部の事業において減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑤繰延税金資産

 当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上している。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しているが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、感染の拡大が長期化した場合、一部の事業において回収可能性の見直しが必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(4) 特有の法的規制

 当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受ける。その規制内容は、「石油コンビナート等災害防止法」「消防法」「高圧ガス保安法」等の保安・安全に係るもの、「環境基本法」「大気汚染防止法」「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」等の環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底している。特に製造設備等に関連する法規制については、グループで法規制情報を共有するとともに、設備の新設・変更等に際し遵守状況を確認している。しかしながら、万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性がある。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(5) 重要な訴訟事件

 当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めているが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性がある。

 

(6) その他

①研究開発

 当社グループは、川中の素材技術と川下のアプリケーション技術を併せもつハイブリッド型の先端材料企業グループとして、技術融合によるイノベーションの実現に重点を置いている。川中素材の「作る化学」と、川下アプリケーションの「混ぜる化学」、そして評価・シミュレーション、構造解析、計算科学の「考える化学」、この3つの技術の融合によって市場に幅広い機能を提供し続けて事業を強化・創出する研究開発に注力している。
 これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

②知的財産

 当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護と他社権利の尊重に努めている。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用することができなかったり不当に侵害された場合、または第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合や保有するノウハウ等が不当に第三者へ流出した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

③品質保証・製造物責任

 当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めている。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、当社グループは、確実な工程管理を行うための設備維持、適切な測定機器設置、作業マニュアル整備、従業員教育等に努め、必要十分な検査実施による不良品流出防止の体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入している。

④事故・災害

 当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、全ての製造設備について定期的な点検を実施している。しかしながら、事故、大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、リスクアセスメントを含む適切なリスクマネジメントを実施し、事故防止及び事故発生時の被害の極小化を図っている。

⑤環境に対する影響

 当社グループは、化学物質の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進している。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、全事業場において網羅的なリスク棚卸による環境リスク評価を行い、環境施設の安全対策を進めるとともに、経年劣化が原因による環境汚染防止のための点検・補修等を計画的に実施している。
 また近年益々高まっている環境問題に対する社会的要求や将来的な環境法規制の強化へ適応するために、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑥感染症の蔓延

 新型コロナウイルス等の世界的な感染症の流行が発生した場合、製造拠点における生産停止や営業拠点を始めとするサプライチェーンでの当社製品供給の停滞により、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
 新型コロナウイルスの感染拡大に対して、健康経営や産業保健の施策企画・実行統率を管掌するCHRO部門が統括産業医の意見をふまえ、リスクマネジメント部と連携し、当社グループ従業員への注意喚起、感染防止対策の指示を行っている。また、グループCEOが「(1)グループ従業員、協力企業従業員全員の健康を最優先事項として守る。(2)社会生活に不可欠な製品を供給する社会的責任を果たす。(3)新型コロナウイルスを克服した後の当社グループの成長に備える。」ことを全グループ従業員にメッセージとして発信するとともに、BCP(事業継続計画)マニュアルを整備し、重要製品を選定するなど事業活動への影響を最小限とする対応を実施している。

⑦気候変動の影響

 当社グループは、2050年までのカーボンニュートラルに向けて真摯な取り組みを進めている。
 当社グループが提供する各種製品は製造過程で石化原燃料を使用し、温室効果ガス(GHG)を排出しており、2030年GHG排出量2013年度比30%削減(Scope1・2)に向けた施策を進めている。顧客との共創によるカーボンニュートラルへの取り組みも取引上重要性を増しているため、省エネルギー・炭素循環に貢献する製品の更なる効率性向上や開発等を事業・技術戦略に組み込むとともに、主要製品ごと及び技術開発段階でのカーボンフットプリント算定も順次進めている。また、リスクについては、顧客要求に加え加速度的に厳しくなる各国の法規制への対応、それに伴う設備投資、再生可能エネルギーの外部調達といったカーボンニュートラルに向けた移行リスクや、大型化する自然災害への備えを含む物理リスク対応のアセスメントや対応コスト増も見込まれる。このような気候変動への対応を、リスク・機会の両面にとっての重要な経営課題と捉え、2019年には「気候変動情報開示タスクフォース」(TCFD)に賛同した。シナリオ分析を通し、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会を評価して対応策を検討・実行し、レジリエンスを強化すべく、事業毎に順次取組みを進め、情報開示を行っている。
 なお、気候変動への取り組みについては、全社横断的なカーボンニュートラルプロジェクトを推進し、CEOを含む最高職務責任者(CXO)と事業責任者(BU長)が参画するサステナビリティ推進会議で定期的に審議のうえ重要事項は経営会議で審議・決定、取締役会に報告するなど、ガバナンスを強化することで経営へのリスクの軽減を図っていく。

⑧人権への取り組み

 当社グループは、2021年に国際規範に基づいた人権方針を策定し、事業を展開するあらゆる国や地域において、事業活動の根幹として人権を尊重することを宣言した。

当社グループは、製品の開発から調達、製造、流通、使用そして最終消費を経て廃棄に至るバリューチェーンの各プロセスにおいて、レゾナックグループ及びサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーのビジネスが、直接または間接的に、人権に影響を及ぼす可能性があることを理解し、当該方針を全従業員が自らの規準とするべく「行動規範」(22年改訂)に盛り込み、かつサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに当該方針を遵守頂くため「サステナブル調達ガイドライン」(22年改訂)を通じた働きかけを開始した。また、統合に伴う新たな組織運営に伴う人権リスクの再点検が必要であることを認識し、自社グループ内及びサプライチェーンに対する人権デューデリジェンスを継続・深化している。更に、従業員のみならずサプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティなどあらゆるステークホルダーが利用可能な通報窓口を設けることでリスクの把握や救済措置の提供に努めている。

なお、人権への取り組みについては、全社横断的な人権プロジェクトが推進し、CEOを含む最高職務責任者(CXO)と事業責任者(BU長)が参画するサステナビリティ推進会議で定期的に審議のうえ重要事項は経営会議で審議・決定、取締役会に報告するなど、ガバナンスを強化することで経営へのリスクの軽減を図っていく。

⑨人材・労務

     当社グループは総合型化学メーカーから世界トップレベルの機能性化学メーカーになることを目指しており、2030年を見据えたサステナビリティ重要課題の一つに「自律的で創造的な人材の活躍と文化醸成」を掲げている。その解決のための重要項目「人と組織の持続的な成長」には、経営又は技術に関する能力に優れた人材を採用、確保し、育成することが重要であると考えているが、優秀な人材の採用及び確保に関する競争は激化している。

     パーパス/バリューのもと、従業員エンゲージメントを高めつつ、共創文化を育んでいく。その上で、優秀な人材の採用、確保及び育成のため、採用手段の多様化、教育・研修プログラムの拡充、タレントマネジメントや早期選抜プログラムの充実に注力すると同時に、社員自身の自律的なキャリア構築を促していく。そのための人材マテリアリティと、それに基づく人材KPIの可視化を検討していく。

 

   ⑩サプライチェーン

     当社グループの事業継続における安定調達を実現するためには、サプライヤーとの良好な取引関係が不可欠であるが、サプライヤーにおける不法・反社会的行為、人権尊重・環境保全の欠如等、当社のみならず社会全体にとって好ましくない事態が発生することが想定される。こうした事態の発生を抑え、当社と共に社会的責任を果たすことを目的に、「サステナブル調達ガイドライン]を作成・公開しており、サプライヤーがこれを遵守するよう要請するとともに、その遵守状況を把握するために定期的なアンケートや訪問調査を実施している。

     また、自然災害・事故・感染症等によるサプライヤー操業停止、物流網寸断などで当社事業活動が影響を受ける可能性がある。これらの影響を最小限に留めるため、調達部門では有事におけるサプライヤー被災状況の情報収集と当社事業活動への影響を把握する手順を定めたマニュアル整備とこれに基づいたBCP訓練を実施している。

   ⑪情報セキュリティ(サイバーリスク)

当社グループは、社内システムや製造設備に対するサイバー攻撃等による被害や情報漏えいが生じた場合、社会的信用の低下や、対策費用や生産活動停止の発生により、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
 このようなリスクに対して、世界標準のセキュリティソリューションを導入することで、日々高度化・巧妙化するサイバーリスクに対する防御網を実現するとともに、当社グループの情報セキュリティグローバルスタンダード運用を確立し、教育・モニタリングによる改善活動を行うことで、情報管理の徹底及びインシデント発生時の影響を最小限に抑える対応策を講じている。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の概要)

(1)経営成績

 ① 経営成績全般

 当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関して行動制限が緩和し正常化が進む一方で、世界的なインフレ進行や長期化するウクライナ情勢によるエネルギーコスト及び原材料コストの高騰、供給面の制約発生、地域により消費持ち直しに足踏みが見られた。堅調に推移していた半導体業界についても、調整の動きが見られた。国内経済においては、個人消費及び企業の設備投資に緩やかな持ち直しの動きが見られ、総じて改善した。

 

 当連結会計年度の連結営業成績については、売上高は、旺盛な半導体需要や自動車生産の回復、販売価格の上昇等の増収要因があったが、前連結会計年度に実施した事業売却で約1,600億円の減収要因があり、総じて減収となる1兆3,926億21百万円(前連結会計年度比1.9%減)となった。なお、売却した事業のうち、蓄電デバイス・システム、アルミ缶、アルミ圧延品と、持分減少で連結除外となった昭光通商㈱の前連結会計年度の数値はその他セグメントに含まれている。営業利益は、原材料価格高騰の販売価格転嫁のタイムラグ影響や事業売却の影響もあり、総じて減益となる593億71百万円(同278億27百万円減)となった。営業外損益は、支払利息の増加はあったものの、主に為替差益により収益増となり、経常利益は593億67百万円(同274億94百万円減)となった。

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に計上した蓄電デバイス・システム事業の譲渡に係る事業構造改善費用等の特別損失の計上がなく、307億93百万円(同428億87百万円増)となった。

 

  ② セグメントの経営成績

 当連結会計年度より報告セグメントについては新経営体制に準じた形に変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析している。また、当連結会計年度よりセグメント別売上高については各セグメントの「外部顧客への売上高」を記載している。

 

[半導体・電子材料セグメント]

 当セグメントでは、半導体前工程材料及び半導体後工程材料は、年後半からの半導体後工程の生産調整の影響を受けたものの、年初からの旺盛な半導体需要を背景に増収となった。またデバイスソリューションは、HDメディアが当年第4四半期連結会計期間からのデータセンター向けの需要減速により数量減となったものの、SiCエピタキシャルウエハーが増収となり、前連結会計年度並みとなった。なお、前連結会計年度の売上高・営業利益には、前年第4四半期連結会計期間に譲渡したプリント配線板事業も含まれている。

 この結果、当セグメントの売上高は4,271億71百万円(前連結会計年度比1.0%増)となり、営業利益は原材料価格高騰の影響を受け、442億28百万円(同10.8%減)となった。

 

[モビリティセグメント]

 当セグメントでは、自動車部品は、年後半からの自動車生産の回復に加え、一部顧客の需要増もあって増収となった。リチウムイオン電池材料は、民生需要減速の影響を受けて減収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は1,806億26百万円(前連結会計年度比3.9%増)となり、営業損益は原材料価格高騰の影響もあり、14億89百万円(同5億32百万円増)の損失となった。

 

[イノベーション材料セグメント]

 当セグメントでは、原材料価格高騰に伴う値上げにより製品販売価格は上昇したものの、販売数量減により売上高は前連結会計年度比で減少した。

 この結果、当セグメントの売上高は1,410億81百万円(前連結会計年度比1.6%減)となり、営業利益は原材料価格高騰のコスト増加分の価格転嫁タイムラグ等により、98億38百万円(同27.9%減)となった。

 

[ケミカルセグメント]

 当セグメントでは、石油化学は4年に一度の大型定修はあったものの、ナフサ価格高騰による販売価格の上昇により売上高は前連結会計年度比で増加した。一方大型定修による販売数量減少に加え、前連結会計年度と比較し受払差が縮小したことから、営業利益は減少した。化学品は値上げによる販売価格上昇により売上高は増加したものの、営業利益は原燃料価格高騰等のコスト増により減少した。黒鉛電極は主に販売価格上昇により売上高、営業利益ともに増加した。

 この結果、当セグメント全体としては増収減益となり、売上高は5,278億25百万円(前連結会計年度比22.5%増)となり、営業利益は249億10百万円(同34.3%減)となった。

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本や法人税等の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べ149億34百万円の収入減少となる1,003億49百万円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による201億15百万円の支出増加、有形固定資産の売却による187億37百万円の収入増加や前連結会計年度の連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による841億33百万円の収入の影響等も含め、832億73百万円の収入減少となる546億67百万円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ982億8百万円の収入減少となる456億81百万円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による4,096億円の収入増加、連結範囲の変更を伴わない子会社株式取得2,876億35百万円の支出や前連結会計年度の株式の発行による824億5百万円の収入の影響等も含め、177億77百万円の支出減少となる1,039億64百万円の支出となった。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ482億55百万円減少となる1,866億83百万円となった。

 

(生産、受注及び販売の実績)

(1)生産実績

 当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため生産の状況については、「経営成績等の概要 (1)経営成績 ②セグメントの経営成績」におけるセグメントの経営成績に関連付けて示している。

(2)受注実績

  当連結会計年度において受注実績は、金額に重要性がないため記載を省略している。

 

(3)販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

半導体・電子材料

427,171

1.0

モビリティ

180,626

3.9

イノベーション材料

141,081

△1.6

ケミカル

527,825

22.5

 報告セグメント計

1,276,702

9.0

その他

115,919

△53.4

合計

1,392,621

△1.9

 (注)1 セグメント間の取引については、相殺消去している。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産、有形固定資産は増加したものの、現金及び預金、のれん等無形固定資産は減少し、前連結会計年度末比419億69百万円減少の2兆1,004億21百万円となった。負債合計は、子会社が発行していた優先株式を取得するため劣後ローンによる資金調達を行った結果、有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及びリース債務)が増加し、前連結会計年度末比2,018億6百万円増加の1兆5,257億44百万円となった。純資産は、為替換算調整勘定等の増加はあったが、金融機関保有の優先株式を当社が取得したことにより非支配株主持分が減少したため、前連結会計年度末比2,437億75百万円減少の5,746億77百万円となった。

 

(2)経営成績の分析

 当連結会計年度の連結営業成績については、売上高は、旺盛な半導体需要や自動車生産の回復、販売価格の上昇等の増収要因があったが、前連結会計年度に実施した事業売却で約1,600億円の減収要因があり、総じて前連結会計年度に比べ270億14百万円減少し1兆3,926億21百万円となった。

 売上原価は、原材料価格高騰の影響もあり、前連結会計年度に比べ79億97百万円増加し1兆896億39百万円となった。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に実施した事業売却により前連結会計年度に比べ71億84百万円減少し2,436億11百万円となった。

 営業利益は、原材料価格高騰の販売価格転嫁のタイムラグ影響や事業売却の影響もあり、総じて前連結会計年度に比べ278億27百万円減少し593億71百万円となった。

 経常利益は、支払利息の増加はあったものの、主に為替差益により営業外収益増となり、前連結会計年度に比べ274億94百万円減少し593億67百万円となった。

 特別利益は、固定資産売却益の計上等により前連結会計年度に比べ2億47百万円増加し232億80百万円となった。

 特別損失は、前連結会計年度に計上した蓄電デバイス・システム事業の譲渡に係る事業構造改善費用等の計上がなくなり、前連結会計年度に比べ529億4百万円減少し340億64百万円となった。

 これにより、税金等調整前当期純利益は485億83百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ428億87百万円増加し307億93百万円となった。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本や法人税等の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べ149億34百万円の収入減少となる1,003億49百万円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による201億15百万円の支出増加、有形固定資産の売却による187億37百万円の収入増加や前連結会計年度の連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による841億33百万円の収入の影響等も含め、前連結会計年度に比べ832億73百万円の収入減少となる546億67百万円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ982億8百万円の収入減少となる456億81百万円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による4,096億円の収入増加、連結範囲の変更を伴わない子会社株式取得2,876億35百万円の支出や前連結会計年度の株式の発行による824億5百万円の収入の影響等も含め、177億77百万円の支出減少となる1,039億64百万円の支出となった。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ482億55百万円減少となる1,866億83百万円となった。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、必要な資金について、自己資金の利用に加え、長期資金を主に設備投資計画等に基づき銀行借入及び社債の発行等によって調達するとともに、短期的な運転資金を銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等により調達している。

当連結会計年度においては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替換算調整勘定の増加による自己資本増加等により、ネットD/Eレシオが1.08倍まで改善した。なお、子会社が発行していた優先株式を取得するため劣後ローンによる資金調達を行ったが、優先株式及び劣後ローンは、㈱日本格付研究所よりその金額の50%の資本性が認められており、ネットD/Eレシオの算出に反映している。企業価値向上のため、コア成長事業向けを中心とした設備投資を積極的に行うとともに、引き続き財務体質強化のための有利子負債圧縮を進め、中期的にはネットD/Eレシオを1.0倍に近づけることを目指していく。

当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により、フリー・キャッシュ・フローの拡大を進めている。また、グループ各社の資金集約化等により、資金の効率的な活用も行っている。資金の流動性については、当連結会計年度末に保有している1,866億83百万円の現金及び現金同等物に加え、600億円のコミットメント・ラインを確保しており、資金需要にタイムリーに対応ができる状態を維持している。

 

(5)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 

 

 

2022年実績

2025年

売上

(兆円)

1.39

1.0超

EBITDAマージン

(%)

12.1

20

ROIC

(%)

3.2

中長期的に10%

ネットD/Eレシオ

(倍)

1.08

1.0倍を目指す

    目標数値の達成により、総株主還元(TSR)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指す。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要がある。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合がある。

 当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているが、特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えている。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定についての情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載している。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

①有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損

 当社グループは、営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなるなど減損の兆候が見られる場合に資産又は資産グループについて減損の判定を行い、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方が帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その差額を減損損失として認識する。使用価値は予算等社内における管理会計の計画数値を基に見積り、正味売却価額については不動産鑑定評価額等から関連する経費等を差し引いた額で見積っている。

 将来の不確実な経済条件の変動等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提が変化した場合には、認識される減損損失の金額に重要な影響を与える可能性がある。

 

②棚卸資産の評価

 当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げている。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいている。

 当社グループの保有する棚卸資産の一部は、価格変動の著しい経済環境の影響を受ける傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、棚卸資産の帳簿価額を切下げることになる。特に原油価格が下落した場合や黒鉛電極の需要が急激に減少した場合には、棚卸資産の評価損の金額に重要な影響を与える可能性がある。

 

③繰延税金資産の評価

 当社グループが計上している繰延税金資産は、将来減算一時差異等に関するものであり、定期的かつ合理的に回収可能性の評価のための見積りを実施している。繰延税金資産の回収可能性は、主に将来の課税所得の見積りによるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社グループの事業活動の状況及びその他の要因により変化する。繰延税金資産の回収可能性に不確実性がある場合、将来回収される可能性が高いと考えられる金額までを繰延税金資産に計上している。

 当該見積りについて、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合には、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性がある。

 

④退職給付債務及び費用

 当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在する。確定給付制度の退職給付債務は、数理計算上の仮定を用いて算定しており、当該数理計算上の仮定には、割引率、退職率、昇給率等の様々な計算基礎がある。

 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合には、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付に係る調整累計額の金額に重要な影響を与える可能性がある。

4【経営上の重要な契約等】

1.技術提携の状況

ナマケミカルズ社との技術供与関係契約を終了している。

 

2.新株の発行及び資金の借入について

 当社の連結子会社であるHCホールディングス㈱は、日立化成㈱(後の昭和電工マテリアルズ㈱)を完全子会社とするため、日立化成㈱の普通株式の公開買付けを実施した。そして、HCホールディングス㈱は、日立化成㈱が2020年6月23日を効力発生日として実施した株式併合の結果生じた端数株式について、会社法第235条第2項の準用する第234条第2項の規定に基づき、裁判所の許可を得て、2020年10月15日に端数株式の取得を実施した。

 本取引に係る資金調達のため、HCホールディングス㈱は、㈱みずほ銀行及び㈱日本政策投資銀行を引受先とする第三者割当増資の方法で優先株式2,750億株(発行価額1株につき1円)の発行、当社を引受先とする第三者割当増資の方法で普通株式2,950億株(発行価額1株につき1円)の発行を行うことを決定し、2020年4月27日に当該払込を受けた。そして、当社は、この普通株式2,950億株の引受けに必要となる資金を調達することを目的として、㈱みずほ銀行より2,950億円の借入れ(全銀協日本円TIBORに基づく変動金利、借入期間7年、期限一括弁済)を行うことを決定し、2020年4月27日に当該借入を実行した。なお、優先株式投資契約について変更契約を締結し、当社は2022年6月1日付で優先株式2,750億株の買取を実施した。

 また、本取引に係る資金調達のため、HCホールディングス㈱は、㈱みずほ銀行と、合計4,000億円のタームローン(全銀協日本円TIBORに基づく変動金利、借入期間5年、500億円は分割弁済、3,500億円は期限一括弁済)及び900億円のコミットメントライン(全銀協日本円TIBORに基づく変動金利、個別貸付実行から1週間~6ヵ月後に一括弁済)に係る契約を締結した。2020年4月27日に2,805億円、2020年9月25日に5億円、2020年10月9日に1,190億円を調達している。なお、本契約には主に純資産維持条項、利益維持条項等といった一定の財務制限条項が付されており、また日立化成㈱の普通株式等の一部資産を担保として提供している。当該タームローンに関する契約について、借入期間中の約定弁済や事業売却等に伴う期限前弁済を経て、残高については2022年3月31日付の借換により完済し、900億円のコミットメントラインを含めた当該契約を終了した。

 

3.持株会社体制への移行に伴う吸収合併及び吸収分割に関する契約の締結

 当社は、2022年8月4日開催の取締役会において、2023年1月1日を効力発生日として、(ⅰ)当社の完全子会社であるHCホールディングス株式会社(以下「HCHD」)を吸収合併消滅会社とし、HCHDの完全子会社である昭和電工マテリアルズ株式会社(以下「SDMC」)を吸収合併存続会社とする吸収合併に関し、HCHDとSDMCとの間で吸収合併契約(以下「本吸収合併契約」)を締結すること、(ⅱ)当社を分割会社とし、SDMCを分割承継会社としてSDMCに当社の全事業を承継させる会社分割(以下「本吸収分割①」)に関し、当社とSDMCとの間で吸収分割契約(以下「本吸収分割契約①」)を締結すること、及び(ⅲ)SDMCを分割会社とし、当社を分割承継会社として一部機能を当社に承継させる会社分割(以下「本吸収分割②」とし、本吸収分割①と本吸収分割②を併せて「本吸収分割」)に関し、当社とSDMCとの間で吸収分割契約(以下「本吸収分割契約②」)を締結することを決議し、同日付で契約を締結した。

 

(1)本件の目的

 当社グループは「化学の力で社会を変える」をパーパス(存在意義)とし、共創型化学会社として「日本発の世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指している。当社グループはこうした目指す姿のもと、社内や化学産業に閉じた事業活動にとどまらず、志を共にするステークホルダーや共同体との共創を通じてよりよい社会を創り出し、持続可能なグローバル社会の発展に貢献することを目指し変革を進めている。

 また当社グループは、世界で戦える会社の前提となる規模と収益性を実現するため、メリハリある経営資源配分によるポートフォリオ経営、競争力を生み出すイノベーション、人材育成戦略に注力する。こうした取り組みを通じて企業価値を最大化し、持続的な経営を実現していく。こうした目的を達成するための最適な組織体制を構築するため、本吸収合併及び本吸収分割を行う。

 

(2)本吸収合併の要旨

ア.本吸収合併の方法

 HCHDの完全子会社であるSDMCを吸収合併存続会社とし、当社の完全子会社であるHCHDを吸収合併消滅会社とする吸収合併である。

 

イ.本吸収合併の日程

当社及びSDMCにおける本吸収合併契約承認取締役会

2022年8月4日

HCHDにおける本吸収合併契約承認取締役決定

2022年8月4日

本吸収合併契約締結

2022年8月4日

HCHD及びSDMCにおける臨時株主総会決議日

2022年9月29日

本吸収合併効力発生日

2023年1月1日

 

ウ.合併に際して発行する株式及び割当

 本吸収合併に際して吸収合併存続会社であるSDMCは、普通株式6株を発行し、そのうち、HCHDの普通株式に代わる金銭等として当社の保有するHCHDの普通株式295,000,000,001株につきSDMC普通株式3株を、HCHDのA種優先株式に代わる金銭等として当社の保有するHCHDのA種優先株式275,000,000,000株につきSDMC普通株式3株を、それぞれ当社に割当交付する。

 

エ.吸収合併存続会社となる会社の概要

 本吸収合併後の吸収合併存続会社であるSDMCの概要は以下のとおりである。

(1)

名称

株式会社レゾナック

(2)

所在地

東京都港区芝大門一丁目13番9号

(3)

代表者の役職・氏名

代表取締役 髙橋 秀仁

(4)

事業内容

各種機能材料及び化学品、その加工品ならびにシステムの研究・開発・製造・販売・サービスの提供

(5)

資本金

15,554百万円

(注)SDMCは、2023年1月1日に、本吸収合併及び本吸収分割の効力が発生することを条件として、その商号を「株式会社レゾナック」に変更する。

(注2)SDMCは、2023年1月1日に、その所在地を千代田区(丸の内)から当社と同じ港区(芝大門)に変更する。

 

(3)本吸収分割の要旨

ア.本吸収分割の日程

当社の臨時株主総会基準日

2022年6月30日

当社及びSDMCにおける本吸収分割契約承認取締役会

2022年8月4日

本吸収分割契約①及び本吸収分割契約②締結

2022年8月4日

当社及びSDMCにおける本吸収分割①を承認する臨時株主総会決議日

2022年9月29日

本吸収分割効力発生日

2023年1月1日

(注)本吸収分割②は、当社においては会社法第796条第2項に規定する簡易吸収分割の要件を満たし、またSDMCにおいては会社法第784条第1項に規定する略式吸収分割の要件を満たすため、当社及びSDMCの株主総会の承認を経ずに本吸収分割②を行う。

 

イ.会社分割に係る割り当ての内容

 本吸収分割①に際し、吸収分割承継会社であるSDMCは、普通株式4株を発行し、そのすべてを吸収分割会社である当社に割当交付する。

 本吸収分割②に際し、吸収分割承継会社である当社は、株式の割当、その他の対価の交付は行わない。

 

ウ.分割する部門の事業内容(本吸収分割①)

 当社が営むすべての事業(但し、グループ経営管理及び吸収分割により当社から信州昭和株式会社に承継される黒鉛電極事業に係る権利義務を除く。)

 

エ.分割する部門の事業内容(本吸収分割②)

 事業を承継するものではない。

 

オ.会社分割後の吸収分割承継会社の資本金・事業の内容等

 本吸収分割後の承継会社である分割準備会社の概要は以下のとおりである。

 

 

当社

SDMC

(1)

名称

株式会社レゾナック・ホールディングス

株式会社レゾナック

(2)

所在地

東京都港区芝大門一丁目13番9号

東京都港区芝大門一丁目13番9号

(3)

代表者の役職・氏名

代表取締役社長 髙橋 秀仁

代表取締役 髙橋 秀仁

(4)

事業内容

グループ戦略立案及びグループ全体の統括管理

各種機能材料及び化学品、その加工品ならびにシステムの研究・開発・製造・販売・サービスの提供

(5)

資本金

182,146百万円

15,554百万円

(注)当社は、2023年1月1日に、本吸収合併及び本吸収分割の効力が発生することを条件として、その商号を「株式会社レゾナック・ホールディングス」に変更する。

(注2)SDMCは、2023年1月1日に、本吸収合併及び本吸収分割の効力が発生することを条件として、その商号を「株式会社レゾナック」に変更する。

(注3)SDMCは、2023年1月1日に、その所在地を千代田区(丸の内)から当社と同じ港区(芝大門)に変更する。

 

4.黒鉛電極事業の承継

 当社は、2022年8月4日付で、2023年1月1日を効力発生日として、当社が行う黒鉛電極事業を当社の完全子会社である信州昭和株式会社(以下、信州昭和)に承継させる会社分割(以下、本吸収分割(信州))に関し、当社と信州昭和との間で吸収分割契約を締結した。

 

(1)本件の目的

 当社の黒鉛電極事業は、世界3地域(南北アメリカ地域、欧州中東アフリカ地域、アジア地域)別の収益責任に基づいた地域統括体制とそれらをグローバルに統括するバーチャル組織による運営体制を両立させた事業運営を行っており、さらに、事業全体として運営基盤のグローバル共通化も推進している。

 信州昭和は、当該事業において製造機能の中核を担う重要な位置づけにある子会社である。今回、当社と信州昭和が一体となりグローバル共通の運営基盤を活用することで、黒鉛電極事業のグローバルでの統括会社として意思決定を迅速化して事業運営を安定・最適化し、更に強化することを目的に、本吸収分割(信州)を行う。

 

(2)会社分割の日程

当社及び信州昭和における吸収分割契約承認取締役会

2022年8月4日

吸収分割契約の締結

2022年8月4日

吸収分割契約承認株主総会(承継会社)

2022年9月29日

吸収分割の効力発生日

2023年1月1日

(注)本吸収分割(信州)は、会社法第784条第2項に基づく簡易分割に該当するため、当社の株主総会の決議を経ずに行う。

 

(3)会社分割に係る割り当ての内容

 本吸収分割に際し、吸収分割承継会社である信州昭和は、普通株式10,000株を発行し、そのすべてを吸収分割会社である当社に割当交付する。

 

(4)分割する部門の事業内容

当社が営む黒鉛電極事業

 

(5)会社分割後の吸収分割承継会社の資本金・事業の内容等

信州昭和株式会社の概要

名称

信州昭和株式会社

所在地

長野県大町市大町6850番地

代表者

代表取締役社長 稲田 達也

事業内容

黒鉛電極の製造販売

資本金

110百万円

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、昭和電工マテリアルズ㈱との統合に向けた「統合新会社の長期ビジョン」に基づき、コア成長事業・次世代事業・安定収益事業・基盤事業の4つの事業群の中で、特に中長期的に当社グループの成長の中心となる事業に研究開発資源を集中し、シナジーの顕現に繋がる新規事業パイプライン創出に重点を置いた施策を進めている。

 従来当社グループが保有する川中の素材技術と昭和電工マテリアルズの川下のアプリケーション技術、両社の評価・シミュレーション、構造解析、計算科学の技術の融合によって、現業強化と周辺分野の拡大に向けた研究及び事業開発を強化すると共に、オープンイノベーションやM&Aを活用し、必要な技術を社外からも積極的に導入していくことで、将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現、多様な技術・事業を通じたSDGsへの貢献に注力している。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、47,135百万円である。

 セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。

(半導体・電子材料)

 半導体・電子材料分野では、次世代事業のコアとなる基礎・基盤技術の研究開発、事業部門協働による新製品・新事業創出、社会を変える長期R&Dを目的として、研究開発部門との密接な連携の下に研究開発を推進している。

 一例としては、半導体デバイスの微細な回路形成を実現する半導体前工程材料(情報電子化学品(電子材料用高純度ガス・機能薬品)、半導体回路平坦化用研磨材料)、半導体後工程材料(エポキシ封止材、ダイボンディング材料、銅張積層板、感光性フィルム、感光性ソルダーレジスト)、デバイスソリューション(ハードディスク、SiCエピタキシャルウェハー、化合物半導体(LED))等の付加価値を高める開発をした。

 半導体前工程分野では、半導体製造プロセス材料として各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開している。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。

 半導体後工程分野では、プリント配線板用高機能積層材料に関し、低そり性や高耐熱特性を実現する高い技術力が評価された結果、一般社団法人日本電子回路工業会より表彰された。

 記録材料については、唯一のハードディスク外販メーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っており、Seagate Singapore International Headquarters Pte. Ltd.と熱アシスト磁気記録に対応した次世代ハードディスクの共同開発を継続実施した。世界最大の記録容量である第10世代として、シングルド記録方式に対応し、アルミ基板を用いて当社の最新磁性層設計及び結晶微細化技術を導入することで、業界最大となる1枚あたり2.6テラバイトハードディスクの出荷をしている。

 世界最大のSiCエピウェハー(以後、SiCエピ)外販メーカーとして、最高水準の品質のSiCエピを提供し、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ている。更なる品質向上や安定供給体制構築の一環として、SiCエピの製造に不可欠なSiCウェハー(以後、SiC基板)の自社生産を検討、複数のお客様の採用を受け、2022年3月に自社製6インチSiC基板を用いたSiCエピの量産を発表した。

さらに、市場ニーズの高まりを受け、2021年より200mm基板の開発を本格化させている。2022年9月には自社製の200mmSiC基板を用いたSiCエピのサンプル出荷を発表した。また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に造成されたグリーンイノベーション基金事業の次世代デジタルインフラの構築プロジェクトの研究開発項目の一つである「次世代パワー半導体に用いるウェハ技術開発」に採択され、「次世代グリーンパワー半導体に用いるSiCウェハ技術開発」として研究開発を始めた。この中で、SiCバルク単結晶の高速成長技術開発においては国立研究開発法人産業技術総合研究所と協力して研究開発を実施中である。今後も高性能で高い信頼性の製品を供給することで、SiCパワー半導体の普及に貢献する。

 化合物半導体を用いた発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力しているが、従来の反射型LEDの2倍近い出力の「ダブルジャンクション反射型LED」を開発した。成長する車載センサーや高性能フォトカプラなどの赤外領域の発光デバイスを主ターゲットに業界トップの品質とカスタマイズ力によりお客様の要望に応える製品を提供している。

 当連結会計年度における半導体・電子材料セグメントの研究開発費は、25,032百万円であった。

(モビリティ)

 モビリティ分野では、CASEの進展などに伴う自動運転化、電動化、軽量化、電装化、冷却性、安全性に関係する市場ニーズに幅広い材料ソリューション力で応えると共に、企業の社会的責任としてカーボンニュートラルへの取り組みをより一層進めるため、リサイクル性、バイオプラの適用検討を開発に取り込み推進している。

 現在上市中の樹脂ギヤ、樹脂バックドア、負極材、ブレーキパッド、粉末冶金等の製品は変化する市場動向にいち早く適応するべく開発を継続推進中であるが、それらに加えて新たに自動運転化のためのセンサー対応技術として「ミリ波透過コーティング」、車載デバイスの軽量化と冷却性を両立、向上させた新コンセプト冷却ユニット、「樹脂ウォータージャケット」及び「ラミクーラー」他の開発及び資源循環型材料の開発を進めている。また、顧客である主要カーメーカーやTier1において、自動車システム全体から末端部品の機能や必要性能をモデル上でシミュレートするモデルベース開発手法(MBD)の導入が一般的になっていることから、これに対応するため、社内蓄積のものづくりノウハウを体系的にデータ化、整理、応用し、当社独自のMBDの開発スタイルを構築している。このように一層のDX化を積極的に進め、新たな高効率開発スタイルへ変革中である。

 先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、導電助剤である気相法炭素繊維「VGCF®-H」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。

 当連結会計年度におけるモビリティセグメントの研究開発費は、5,914百万円であった。

(イノベーション材料)

 イノベーション材料分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、光機能材料、高機能ゲル、化粧品原料、インフラケミカルズ、エネルギー関連、アルミニウム及びセラミックスの研究開発を推進している。

 テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けている。2020年6月に増設を完了した中国においても生産・供給を開始し、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。また、電子材料、光学材料や歯科材料などに使用されるイソシアネートモノマー「カレンズ®MOI」や機能性アクリレート・メタクリレート「ファンクリル®FAシリーズ」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続している。特に「ファンクリル®FA500シリーズ(脂環式モノマー)」の耐熱透明性の特徴を生かし、車載用光学粘着剤に採用され、事業拡大を図っている。

 高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めている。世界6拠点から収集した営業情報に基づき、分析ノウハウ・技術サービスを的確、迅速にお客様に提供している。また従来にない高速分析と省溶媒を実現した有機溶媒系SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)用充填カラム、医薬・バイオ・食品分野における高感度分析を可能としたHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)用充填カラム、抗体タンパク質を高精度で分析可能な水系SEC用充填カラム、水道水や環境水中の陰イオンの高感度分析を実現したIC(イオンクロマトグラフィー)用充填カラム等の市場ニーズに適した新製品を順次発売している。

 化粧品原料では、保湿効果及び抗大気汚染物質効果に加え、新たに見出した抗ウィルス効果を持つ糖誘導体「モイストール®」を開発した。また水溶性ビタミンE誘導体「TPNa®」に目のクマへの改善効果を見出し、肌荒れ防止に加え、アイケア用途でも注目され出荷も継続して行っている。

 インフラケミカルズでは、水力発電向け補修材の試験施工を積極的に実施した。また光硬化タイプの下水管更生用樹脂の技術開発は継続して注力している。

 エネルギー関連では、xEV向け高耐熱絶縁ワニスは、電力モーターの高性能化による高電圧・耐サージ性に応じられる製品の技術開発を継続している。

 リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾール®LBシリーズ」の持つ、低抵抗性、優れた温度特性などが認められ、急速充電対応を求められる車載用途に国内外で採用された。またリチウムイオン電池の最大需要地である中国での生産体制を構築し、一部供給を開始した。今後もさらに市場ニーズを見据えつつ研究開発を加速し、車載用途への拡大を推進していく。リチウムイオン電池用セパレーターのセラミック耐熱層用バインダーとして最適化したポリ-N-ビニルアセトアミド「PNVA®」は、電池の安定性向上に寄与し、市場展開を継続している。

 アルミニウムでは、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。

 素形材関連では、昨今の自動車における軽量化ニーズの高まりを受け、サスペンションや駆動部品を始めとした自動車用部品でアルミ製品の採用が拡大しており、今後も需要は堅調に増加することが見込まれる。また、カーボンニュートラル対応のプロセス技術の量産適用にも取り組んでいる。冷却器関連では、パワーデバイス向けモジュール提案に向けた熱マネジメントシステムの開発・評価を強化し、次世代冷却器の開発に取り組んでいる。

 確実な成長が見込まれる半導体市場において、セラミックス関連では、半導体の研磨プロセスに使用されるセラミックス砥粒や、半導体用封止材の誘電率を制御するためのフィラーの研究開発に注力している。昭和電工の分子設計から原料を作る技術と昭和電工マテリアルズの原料を配合し機能を設計する混ぜる技術の融合により、次世代の顧客ニーズに合致した性能を有する複合材料の提供を目指す。

 電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)の開発を行っている。高熱伝導材料の開発と評価技術の深化により、放熱部材向けのフィラーとしての性能向上を実現し、パワーモジュール等の用途への展開を進めている。

 また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の用途では、MLCCの更なる小型化・高容量化に貢献すべく、原料である超微粒子酸化チタンの材料開発に取り組んでいる。

 当連結会計年度におけるイノベーション材料セグメントの研究開発費は、4,708百万円であった。

(ケミカル)

 ケミカル分野では、石油化学・基礎化学で、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供すると共に、製造工場のCO2排出量削減などカーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組んでいる。

 石油化学においては、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子・電気機器、輸送機器、食品包装などの分野において、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めている。当社技術を用いた大分の酢酸エチルプラントは、2014年の稼働開始以来高稼働を継続しているが、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求している。アリルアルコール製品群において、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしており、更なる市場拡大を企図して新規用途の展開を積極的に進めている。この他、当社技術の特長を活かした新規誘導品の研究開発を推進している。

 当連結会計年度におけるケミカルセグメントの研究開発費は、1,830百万円であった。

(その他)

 計算科学・情報科学の技術力強化と材料開発への適用に積極的に取り組んでおり、半導体材料の最適な配合探索にかかる時間を、量子コンピューティング技術を活用し、従来の数十年以上から数十秒に大幅に高速化可能であることを富士通㈱と協力し実証した。

 人工知能(AI)を用いた材料開発においては、機械学習モデルを効率的に運用する仕組みであるMLOps(機械学習オペレーション)を他社に先行して構築し、活用を開始した。これにより、機械学習モデルの開発からシステムの運用までの一連の流れに要する時間を短縮することが可能となり、また常に最新のデータを基に材料の特性予測を行えることで、材料開発の迅速化を実現した。

 従来難しかった「配位結合を有する化学物質」を含め、物質の特性を解明するための鍵を握る「最安定構造」の特定を自動で行うことができる新システムをQuantum Simulation Technologies, Inc. と共同で開発した。

 電子実験ノートの活用も進めており、実験の生データを入力する電子実験ノートから、データを活用するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)ウェブアプリまでを一気通貫で接続し、MIウェブアプリからAIモデル構築に使用された生データへ容易にアクセスできる機能を実装したデータパイプラインを他社に先駆けて構築した。

 長期R&Dの取り組みとして、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」に対し、日本製鉄㈱と共に「革新的分離剤による低濃度CO2分離システムの開発」を提案し、採択された。本プロジェクトは2030年までの9年間を想定しており、工場排ガスなどに含まれている低圧・低濃度のCO2を低コストで分離回収するための技術開発及び、回収したCO2を原料に使用した化学品を製造する技術検証に取り組む。これにより、CO2分離回収プラント事業及び分離剤事業の創出・拡大に加え、化石由来資源に依存しない、CO2を活用した化学品事業のビジネスモデルを創出し、カーボンニュートラルの実現に貢献していく。

 2018年度に横浜市が実施した京浜臨海部守屋・恵比須地区研究開発拠点施設整備・運営等事業による公募において、当該地区で整備を進めていた研究開発複合施設「共創の舞台」を2022年5月に開所した。「共創の舞台」では、社内外の多様な人々と連携しながら、持続可能な社会実現に貢献する長期の研究開発テーマ「次世代高速通信材料」「プラスチックリサイクル」の研究開発を推進すると共にR&D活動を支援・強化するプラットフォーム、現業も含めた研究開発支援を担う4センター(材料科学解析、計算科学・情報、プロセスソリューション、化学品管理・評価)も活動を行っている。

 当連結会計年度における報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は全社共通を含め9,652百万円であった。