第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「Mobile Tech for All~デジタルを簡単に、社会を便利に~」というミッションを掲げ、アプリ開発技術がなくてもノーコード(プログラミング不要)でネイティブアプリを開発、運用できるクラウド型のアプリ運営プラットフォーム「Yappli」を提供しております。ノーコードプラットフォームの歴史は長く、2000年代にはWebサイトをノーコードで開発するプラットフォームが出現、その後台頭し、昨今ではECサイトをノーコードで開発できるプラットフォームが躍進しております。当社は、世界的にも珍しいスマートフォンアプリを開発するプラットフォームを提供しており、その分野においてリーディングカンパニーであると考えております。当社は、このYappliを通じて、全ての企業に対してアプリのテクノロジーを開放してまいりたいと考えております。

 

(2)経営戦略等

 当社は以下の事項を中長期的な経営戦略の方針としております。

 

① コア事業Yappliのシェア拡大

 当社のコア事業であるYappliについては、既存ソリューションの深耕と新ソリューションの拡大を通して、売上高の成長を目指します。当社が提供するYappli for Marketingは、顧客企業の販売促進や消費者のロイヤリティ向上、ECにおける効果的なモバイルインターフェイスの提供や実店舗とオンラインショップのハブとなることで、売上高を成長させるという明確なメリットを顧客企業に提供しております。また、Yappli for Businessは社内や取引先などビジネスユーザー向けの情報配信ポータルとなっており、自社の商品・商材の紙カタログや社内報などの電子化や従業員の研修コンテンツをアプリ上で配信するなどの目的で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)(*1)を推進する様々な企業に業界横断的に導入が進んでおります。今後、さらなる機能開発を通じて、既に顧客ニーズが顕在化しているYappli for MarketingとYappli for Businessのシェア拡大を目指します。同時に既存ソリューションの機能を横展開や応用しながら、アプリの新しい用途を模索することで、新ソリューションの提供と未開拓の市場におけるターゲット業界の拡大を志向しております。

 

② 挑戦事業 Yappli CRMの強化

 当社は2021年10月にノーコードの顧客管理システムYappli CRMをローンチし、ユーザーとのタッチポイントであるアプリに加え、バックエンドのデータ領域へと当社のドメインを拡大いたしました。Yappli CRMは開発不要でアプリと連携することができ、ポイントカードや電子マネーの発行・管理などCRMならではの機能を実装することが可能です。提供価格は初期費用100万円、月額10万円からとなっております。2022年度はこのYappli CRMのプロダクト及びビジネスにおいて基礎の構築を行い、本格的に事業展開を始めました。今年度については、Yappli CRMを第2の柱とするため、エンジニアを中心に社内リソースを昨年度対比3倍にし、アプリだけでないマルチチャネルにリーチできるハブ製品として、単独販売可能なプロダクトへ進化させることを目指します。

 

③ 新規事業とM&Aを通じた未来事業の模索

 Yappli CRMのローンチにより、当社はユーザーとのカスタマータッチポイントであるアプリの領域からバックエンドのカスタマーデータの領域にそのドメインを拡大いたしました。今後は、Web、EC、Email、チャットなどアプリ以外のカスタマータッチポイントにリーチできるハブ製品として開発を進めますが、同時に新規事業とM&Aを通じてプロダクトロードマップの周辺領域を取り込み、アプリ以外のチャネル開拓を継続的に強化することを目指します。M&Aについては、既存プロダクト拡張もしくは顧客基盤の拡充に繋がる案件を中心に検討をします。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社が顧客を獲得して売上を計上するまでのプロセスは以下に記載のとおりとなります。当社では、アプリ運営プラットフォーム事業において、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、各プロセスに関連する重要な経営指標は、契約アプリ数、アプリ当たりの平均月額利用料、月次解約率(直近12カ月平均)であると考えております。

 

(顧客獲得~売上計上のプロセス)

 リード獲得(*2)・・当社マーケティング部門のマーケティング施策による潜在顧客リードの獲得

 商談獲得・・・・・・・当社インサイドセールス(*3)による潜在顧客への啓蒙活動や架電による商談の獲得

 契約受注獲得・・・・・当社フィールドセールス(*4)の商談の実施による契約受注の獲得

 アプリ制作、申請・・・当社ディレクター(*5)、デザイナーによるアプリの制作、アプリストア申請

 アップセル、解約防止・当社カスタマーサクセス(*6)による、顧客のアプリ運用の成功支援

 

(4)経営環境※

※以下に記載の統計データは、過去のデータ及び一時点における予測値であり、将来の結果を示唆または保証するものではありません。統計データに関する予測は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。また、出典元の予測機関は、予測値の達成を保証するものではありません。

 

 近年の情報通信技術の進化によって、インターネットの利用は社会全体に浸透し、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進みつつあります。企業においてもDXを後押しする傾向にあり、㈱富士キメラ総研公表の「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」(2022年3月)によれば、この市場規模は2030年度には5.0兆円に到達すると予測されております。

 

 一方、日本は他国と比較すると人口に対するIT技術者の割合が0.97%(世界35位)と低く(ヒューマンリソシア株式会社「2021版:データで見る世界のITエンジニアレポートvol.4」(2021年9月)より)、このようなデジタル化を下支えするIT人材の供給は年々不足が拡大していく(経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)- IT人材需給に関する調査 –」(みずほ情報総研委託)(2019年3月)より)と予測されております。さらに日本では、欧米と比較すると、IT企業に就職するIT人材の割合が高く(経済産業省「ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」(2018年9月)より)、非IT企業は益々エンジニアリソースの不足を強いられる傾向にあると推察されます。

 

 上記の背景の中、エンジニアを必要とせずクラウド上からソフトウェアを利用することができるSaaSの国内市場は2026年度では2021年度比80.0%増の1兆6,681億円(株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」(2022年7月)より)に拡大することが見込まれております。また、総務省公表の「我が国のICT現状に関する調査研究(2018年3月)」によると、2017年の日本のSaaS導入率は41%に対して米国の導入率は79%であり、国内のSaaS市場は米国と比較するとまだまだ拡大する余地があることが推察されます。

 

 当社の事業ドメインである、スマートフォンアプリの市場環境に関しては以下のとおりとなります。

 総務省公表の「令和3年版 情報通信白書」(2021年7月)によれば、携帯通信端末は従来型のフィーチャーフォンからスマートフォンに変化しており、スマートフォンの普及は2007年に米国でiPhoneが初めて発売されてから、わずか10年足らずで、加速的に普及してまいりました。2020年の世界のスマートフォン市場規模は3,389億ドル、出荷台数は12.9億台に対し、2023年には市場規模4,038億ドル、出荷台数は15.3億台にまで拡大すると推計されております。

 

 我が国におけるスマートフォン個人保有率についても、2011年は14.6%(総務省「令和元年通信利用動向調査の結果」(2020年5月)より)であったものの、2021年では74.3%まで上昇しており、特に20~40代では90%を超える高い利用率であります(総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」(2022年5月)より)。スマートフォンが普及したことによって、日常の様々な場面でアプリが使われるようになり、アプリのダウンロード数は2017年に1,781億ダウンロード(data.ai「アプリ市場予測2017-2022年版」(2018年5月)より)であったものの、2022年には2,550億ダウンロードへと増加いたしました(data.ai「モバイル市場年鑑2023」(2023年1月)より)。

 

 また、経済産業省公表の「令和3年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」(2022年8月)によれば、物販のBtoC-EC市場規模は2021年で13兆2,865億円であり、このうちスマートフォン経由の市場規模は6兆9,421億円であります。市場規模に占めるスマートフォン経由の割合は52.2%で、2015年の27.4%と比較すると24.8ポイントの増加となり、今後もBtoC-EC市場規模及びスマートフォン経由比率ともに増加することが見込まれております。

 

 

 さらに、ニールセンデジタル株式会社「ニールセンモバイルネットビュー2020」(2020年3月)によると、2019年の国内のスマートフォン経由でのオンライン滞在時間の内訳は全体の92%がアプリ経由で行われている事が発表されております。

 

 上記のとおり、国内のDXが加速する一方、IT人材の不足は拡大することが予見される背景のもと、国内のSaaS市場は益々拡大し、あわせてスマートフォンアプリの必要性も継続的に拡大することが予見されております。このような市場環境の中、ノーコードでネイティブなアプリを簡単に開発、運用できる当社のYappliの重要性は益々高まっていくと考えております。

 

(5)市場規模

 当社はYappliを通じて国内のアプリ開発市場を代替してきましたが、新製品Yappli  CRMの導入によりデジタルマーケティング領域をより深く開拓することが可能になったため、国内ソフトウェア市場におけるCX/デジタルマーケティング領域の市場規模約6.5千億円が当社のSAM(*7)にあたると考えております。当社が将来捕捉する可能性のあるTAM(*8)については、今後さらなるプロダクトの拡充により国内ソフトウェア市場全体も視野に入れられると考え、約2.5兆円の市場規模を選定しております。

 

(6)競合環境

 当社はYappliの開発に創業前から累計10年以上の歳月を注ぎ、サービスの機能拡充、UI/UX(*9)の向上、顧客満足度向上、特許取得などに努め、日本を代表する企業との契約や低い解約率を維持するなどYappliの優位性を確保してまいりました。昨今、スマートフォンアプリの市場拡大により、複数の企業が類似するサービスを提供しておりますが、主に中小企業向けの機能に留まっており、中~大企業に向けて提供する企業は業界にも当社のみであると考えております。従って、当社の主な競合は、スクラッチでネイティブアプリの開発を行うシステムインテグレーターとなります。システムインテグレーターとは提供するサービスの特性上、明確な差別化(プログラミング不要で開発・運用・分析を一手に担えるプラットフォーム、個別のカスタマイズは行わない代わりにYappli上で活用できる機能を継続的に拡充、サクセス支援、自動OSアップデート、毎月継続型の料金体系など)を実現しており、市場においてユニークな立ち位置を築いていると考えております。

 

(7)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社が属するアプリ業界での国内外の競争が激化する中にあって、安定した収益を確保し続けるために、対処すべき課題として以下の点に取り組んでおります。

 

① サービス、プロダクトの強化

 当社は、Yappli及びYappli CRMについて、技術開発が競争力の根幹であるという認識の下、システムの自動化・安定性・拡張性等の強化に取り組んでまいります。そのためには、優秀な人材の確保と人材の継続的な育成、付加価値の高い企業との提携、M&Aの実施などに取り組み、サービスの強化に努めてまいりたいと考えております。

 

② 利益及びキャッシュ・フローの創出

 当社は、事業拡大のため、開発や広告宣伝活動等の成長投資を積極的に進めており、当事業年度は営業損失を計上しております。

 今後は売上高と利益の成長を両立するバランス型の成長を目指す為、成長投資及びその他の費用に関しては意味のある改善に取り組み、収益性の向上に努めてまいります。

 

(*1)DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「デジタルの変革」を指し、ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることを言います。

(*2)リードとは、マーケティング施策により獲得した潜在顧客の連絡先のことを言います。

(*3)インサイドセールスとは、SaaS業界において潜在顧客へのサービスの啓蒙活動や商談設定に従事する部隊を言います。

(*4)フィールドセールスとは、SaaS業界において潜在顧客との商談を実施して契約の受注を獲得する部隊を言います。

(*5)ディレクターとは、当社においては、アプリの制作や申請について顧客と協議をし要件の定義をおこない、アプリストア申請が完了するまでのディレクションを行う部隊を言います。

(*6)カスタマーサクセスとは、SaaS業界において契約後の顧客のサービス活用に関するナレッジを共有するなどをして、顧客のサービス導入の目的を達成する(カスタマーサクセス)支援を行う部隊を言います。

(*7)SAMとは、Serviceable Available Marketの略称で、当社サービスが現在獲得できる可能性がある市場規模のことを言います。当社は、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」(2022年7月)掲載のソフトウェア「CX/デジタルマーケティング」カテゴリー 市場規模の2026年度の予測値をSAMとして採用しております。外部資料やそれに基づく推計は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。また、出典元の調査機関は、数値の正確性を保証するものではありません。

(*8)TAMとは、Total Addressable Marketの略称で当社が将来的に獲得できる可能性がある最大の市場規模を指します。当社が本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではありません。当社が将来捕捉する可能性のあるTAMは、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」(2022年7月)掲載のソフトウェア市場規模の2026年度の予測値を採用しております。外部資料やそれに基づく推計は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。また、出典元の予測機関は、予測値の達成を保証するものではありません。

(*9)UIとはUser Interfaceの略称でユーザーが電子端末を操作する際の入力や表示方法などの仕組みを言います。また、UXとは、User Experienceの略称でサービスなどによって得られるユーザー体験を言います。

 

2【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)モバイルアプリ市場について

当社が事業を展開している国内モバイルアプリ市場の売上高は、2016年の126億ドルから2020年には259億ドルまでに成長しており(出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」)、当社は今後も引き続き同市場を基盤とした事業を展開する計画であります。しかしながら、今後、経済情勢や景気動向により同市場の拡大が鈍化、縮小するような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合他社の動向について

当社事業は、プログラミング不要でネイティブアプリを簡単に開発、運用できるクラウド型のアプリ運営プラットフォームを提供しております。現時点において当社事業と同様にノーコードでアプリを開発、運用できるプラットフォームを大企業向けに提供している競合他社は存在しないと考えております。しかしながら、競争環境激化により当社と同様のシステムを大企業向けに提供する競合他社が参入し、当社の優位性が失われるような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)技術革新について

当社が事業を展開している国内モバイルアプリ市場は、技術革新が早く、当社の優位性を維持するためには、技術革新に即座に対応する必要があります。当社では、各種イベントやセミナーへの参加や社内の定期的な勉強会等を通じて、モバイルアプリ市場の技術革新の動向を把握するとともに、それに対応した新サービスの提供ができるよう努めております。しかしながら、当社が技術革新に対応できないような場合、または、当社が対応できないような技術革新が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)モバイルアプリに代わるツールの普及について

当社サービスを利用する顧客の多くはモバイルアプリをユーザーへのマーケティング、もしくは情報共有のツールとして使用しております。しかしながら、将来的にモバイルアプリに代わるツールが出現、普及した場合に、当社のサービス利用が減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)単一セグメントであることについて

当社事業はアプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであることから、市場の変化の影響を受けやすい性質があります。当社は、市場の変化に対して臨機応変に対応する方針でありますが、市場全体が縮小を続ける等、当社の対応に限度があるような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)先行投資に伴う財務的影響について

当社が運営するアプリ運営プラットフォーム事業においては、システムの機能性・利便性の向上及び市場シェアの獲得が重要と考えており、先行的にシステム開発人員に係る人件費やマーケティング活動費用として広告宣伝費を投下してきました。このため、当社は過年度の業績に関して継続的に赤字を計上しており、2021年12月期及び2022年12月期において、営業キャッシュ・フローがマイナスの状況となっております。

当社では、今後は先行投資型から売上高と利益の成長を両立するバランス型の成長戦略にシフトします。費用対効果を見ながら先行的な投資を継続しつつ、その他の費用に関しては意味のある改善を実施し、収益性の向上に努める方針であります。2023年12月期から営業利益の黒字化を目指しますが、先行投資については2022年12月期と比較して投資額の増加を抑制しており、広告宣伝費は10億円程度、人件費は20億円程度を予定しております。費用対効果に係る測定方法として、具体的には、LTV/CAC(*1)の水準をグローバルのSaaS業界の優良の水準とされる3~5倍(*2)を目標として、3~5倍水準で先行的な投資をコントロールすることを目指しております。しかしながら、経営環境の急激な変化等のリスクの顕在化等により、これらの先行投資が想定通りの成果に繋がらなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(*1)LTV/CACとは、顧客1契約あたりの生涯に生み出す収益(Life Time Value)を、1契約の顧客獲得コスト(Customer Acquisition Cost)で割り戻した数値を言います。当社では((新規獲得の顧客単価×粗利率÷月次解約率)+初期制作収入単価×粗利率)/((セールス人件費+マーケティング人件費+広告宣伝費+デモアプリ制作費)/新規顧客数)により算出しており、デモアプリ制作費とは、顧客に納品する初期的なアプリ制作に係る当社従業員の人件費を指します。

(*2)Bessemer Ventures Partnersのレポート“State of the cloud 2020”にて提唱されている水準であります。

 

(7)知的財産権について

当社は、当社が運営する事業に関する技術・商標等の知的財産権の保護を図っております。しかしながら、当社が使用する技術・商標等の知的財産権について、何らかの理由で第三者からの侵害を保護できない場合、または、保護に多額の費用が発生する場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の提供するサービスが第三者の技術・商標等の知的財産権を侵害しないように留意しており、当社は現在まで第三者の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはありません。しかしながら、第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。このような場合、当社に対する訴訟等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)個人情報の管理について

当社が提供するYappliでは、アプリ内でのユーザーの操作履歴をビッグデータとして活用するものの、当該データは個人が特定されるものではありません。そのため、Yappliで基本的に個人情報は取得しておりませんが、一部のサービスにおいては顧客へのサービス提供のために個人情報を取得することがあります。取得した個人情報については、外部漏洩や不正利用等の防止のため、情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理・保護しております。また、当社は個人情報保護のために、プライバシーマークを取得しており、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。しかしながら、悪意あるハッキングやコンピューターウィルス等により、当社が保有する個人情報が漏洩、盗用等される可能性を完全に排除することは困難であります。当社が保有する個人情報が漏洩、盗用等されることとなった場合、当社の社会的信用が失われるとともに、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)システムや通信インフラ環境について

当社事業は通信ネットワークやサーバー等のネットワーク機器の作動環境に依存しております。当社が構築しているコンピュータ・システムは、適切なセキュリティや保護手段を講じておりますが、自然災害や不正アクセス等によって通信ネットワークの切断やネットワーク機器の障害が発生した場合、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)Apple Inc.及びGoogle LLCの動向について

当社サービスにおいて主に提供されるモバイルアプリは、Apple Inc.及びGoogle LLCのプラットフォーム運営事業者の仕様に従い、アプリ提供の申請、承認を受けることが重要な前提条件であります。これらのプラットフォーム運営事業者の動向や著しい仕様変更によっては、当社の事業展開や事業運営に影響を与え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)内部管理体制の強化について

当社は、現在の事業規模に応じた内部管理体制を整備・運用しており、今後は事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模の拡大及び人員の増加に合わせ、適時に内部管理体制の強化ができなかった場合、適切な事業運営が行えず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)人材の獲得及び育成について

当社が今後成長を続けるためには、各方面で優秀な人材を配置することが必要不可欠であります。そのため、既存の人材の育成はもちろんのこと、優秀な人材の獲得にも努めております。しかしながら、人材の育成・獲得が円滑に進まない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)法令について

当社は、電気通信事業法等、企業活動に関わる各種法令の規制を受けております。現在のところ、当社事業に対する各種法規制の強化等が行われるという認識はありませんが、今後国内において新たにプライバシー関連法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備・強化がなされた場合、当社の業務が一部制約を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)訴訟について

当社では、コンプライアンスの徹底と社会的信用の向上を図ることを目的にコンプライアンス規程を整備し従業員へ周知することで、法令違反などの発生リスクの低減に努めており、本書提出日現在において訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、事業を展開する中で、当社が提供するサービスの不備や取引先、第三者との間での予期せぬトラブルの発生等により何かしらの問題が生じた場合には、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当該訴訟に対する防御の為に費用と時間を要する可能性がある他、当社の社会的信用が毀損され、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)新型コロナウイルスの影響について

感染力の高い新型コロナウィルス等の感染再拡大により現況が悪化し、今後の経済活動が再び停滞した場合、当社の顧客の業績が悪化し当社サービスの解約や商談中の案件が失注となる可能性があります。また、展示会等の延期・中止等により十分な広告宣伝活動を行う事ができず当社サービスへの問い合わせの減少や、テレワークの影響等により問い合わせから契約成立までのリードタイムの長期化により新規顧客に対する売上高の計上遅れ・減少等が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、事業年度末現在における付与数は4,345個であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は、6.52%となります。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が発行され、既存株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

(17)配当政策について

当社は、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますが、当社は現時点において配当を実施しておりません。今後におきましては、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針であります。しかしながら、当社の事業が計画通り推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。

 

(18)資金使途について

当社のSaaS型アプリ運営プラットフォーム事業においては、上場後の現在においても、システムの機能性・利便性の向上及び市場シェアの獲得が重要と考えております。そのため、上場時に調達した資金の使途につきましては、システム開発や事業拡大に伴う人件費及びマーケティング費用へ積極的に投資していきたいと考えております。

しかしながら、インターネット関連市場は変化が激しく、その変化に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途に使用する可能性があります。また、上記計画通りに資金を使用したとしても当初想定していた事業規模の拡大が進まない可能性があります。なお、将来にわたっては、資金調達の使途の前提となっている事業計画・方向性が見直される可能性があります。

 

(19)為替変動によるリスク

当社は国内で事業を展開しているため、為替の影響は比較的少なく抑えられていると見ておりますが、当社の既存顧客及びターゲット顧客層の中には、円安の影響により事業の運営が厳しくなっている企業が含まれるため、解約また新規顧客獲得に悪影響が出る可能性がございます。また、当社の費用についてですが、社内で使用している一部のツールは為替の影響を受ける為、為替相場が円安になった場合、当社の費用が増加する可能性がございます。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における資産合計は2,843,568千円となり、前事業年度末に比べ151,444千円減少いたしました。これは主に、売上高増加により受取手形及び売掛金が83,578千円増加した一方で、現金及び預金が217,179千円、オフィス再編等に伴い有形固定資産および投資その他の資産が100,321千円減少したことによるものであります。

(負債)

当事業年度末における負債合計は1,499,541千円となり、前事業年度末に比べ756,425千円増加いたしました。これは主に、借入により長期借入金(1年内返済予定含む)が695,814千円増加したことによるものであります。

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は1,344,026千円となり、前事業年度末に比べ907,870千円減少いたしました。これは、当期純損失を計上したことにより、利益剰余金が941,138千円減少したことによるものであります。

 

②経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化や世界経済悪化の影響等により極めて厳しい状況となりました。一方、企業や人々の生活のデジタル化やモバイルシフトは引き続き促進しており、当社が属するモバイルアプリ業界の重要性はますます高まっております。

当社は、「Mobile Tech for All~デジタルを簡単に、社会を便利に~」というミッションの下、アプリ開発技術がなくてもノーコード(プログラミング不要)で誰でも簡単にスマートフォンアプリの開発・運用を行うことができるプラットフォーム「Yappli」を提供しております。「Yappli」は従来の企業のアプリ開発における様々な課題を解決するだけではなく、顧客企業自ら効率的にアプリを運用することを可能にし、成果を生み出しやすいサービスとなっております。

また、2021年10月にはノーコードの顧客管理システムである「Yappli CRM」をローンチし、ユーザーとのタッチポイントであるアプリに加え、バックエンドのデータ領域へと当社のドメインを拡大いたしました。「Yappli

CRM」は順調に立ち上がり、様々な企業への導入が進んでおります。

以上の結果、当事業年度の業績は、売上高4,142,434千円(前年同期比26.9%増)、営業損失818,800千円(前年同期は営業損失928,548千円)、経常損失824,984千円(前年同期は経常損失931,115千円)、当期純損失941,138千円(前年同期は当期純損失939,895千円)となりました。営業損失以下、各段階損失が発生した主たる要因としては、売上高は順調に推移しているものの、先行投資としての人件費や広告宣伝費等の回収に至っていないためであります。特別損失は、リモートワークは継続しつつも、出社するメンバーにとっての一体感の醸成とコミュニケーション活性化を推進できるオフィスへと変更するために本社オフィスの一部解約に伴なって発生した費用107,401千円になります。

なお、当社はアプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,650,737千円となり、前事業年度に比べ217,179千円減少いたしました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により使用した資金は926,634千円となりました。これは主に、オフィス再編費用を107,401千円計上した一方で、税引前当期純損失を932,385千円計上、売上債権が83,578千円増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は19,577千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が20,971千円あったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により獲得した資金は729,032千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が104,186千円あった一方で、長期借入れによる収入が800,000千円あったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は、アプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

当事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

4,142,434

126.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高、売上原価、売上総利益)

売上高は、コロナ禍において成長が鈍化したものの、主に新規顧客獲得及び既存顧客に対するアップセル等の営業努力により4,142,434千円(前事業年度比878,464千円増)となりました。2022年12月末時点でのYappliの契約アプリ数は783となり、月次解約率(直近12カ月平均)も0.88%、月額利用料割合は80%と堅調に推移しています。

売上原価は、主に人員増加に伴う人件費の増加や契約アプリ数の増加に伴うサーバ費用、外注費などの増加の影響から1,390,554千円(前事業年度比328,936千円増)となりました。この結果、売上総利益は2,751,879千円となりました(前事業年度比549,528千円増)。

(販売費及び一般管理費、営業損失)

販売費及び一般管理費は、主に人員増加に伴う人件費の増加や積極的な広告宣伝、研究開発の実施の影響から3,570,680千円(前事業年度比439,780千円増)となりました。

この結果、当事業年度の営業損失は818,800千円(前事業年度営業損失928,548千円)となりました。

(営業外収益、営業外費用、経常損失)

営業外収益は主に受取手数料の減少に伴い1,418千円(前事業年度比3,795千円減)となりました。営業外費用は、主に支払利息の増加と支払補償費の計上があった一方で、株式交付費が減少したことに伴い7,602千円(前事業年度比179千円減)となりました。

この結果、当事業年度の経常損失は824,984千円(前事業年度経常損失931,115千円)となりました。

(特別利益、特別損失、税引前当期純損失)

特別損失は、本社オフィスの一部解約に伴って発生したオフィス再編費用に伴い107,401千円(前事業年度比107,401千円増)となりました。

この結果、当事業年度の税引前当期純損失は932,385千円(前事業年度税引前当期純損失931,115千円)となりました。

 

(法人税等、当期純損失)

法人税等については、法人税、住民税及び事業税は8,752千円となりました(前事業年度比26千円減)。

以上より、当事業年度の当期純損失は941,138千円(前事業年度当期純損失939,895千円)となりました。

 

(当社の経営成績に重要な影響を与える要因)

当社が事業展開するYappliは、小売業態において多くの導入実績があり、その中でも特にアパレル関係企業への導入が進んでおります。小売業界においては、これら企業の広告費は引き続き好調な推移を示すと予測する見方ではあるものの、国内外の経済情勢を受け当社の予想を超えて下振れするような場合には、当社の経営成績に重要な影響を及ぼすリスクがあります。

その他、当社が抱える事業等のリスクについての詳細は、「2 事業等のリスク」をご参照ください。

以上を踏まえ、当社は常に市場動向には留意しつつ、顧客に求められる機能やサービスを開発していくとともに、優秀な人材の採用、新規サービスの開拓、内部管理体制の強化をしていくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に備え、リスクの発生を抑え、適切に対応していく所存であります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社は、事業運営上必要な資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金、設備投資や長期運転資金の調達について、自己資金又は金融機関からの借入を基本としており、都度最適な方法を選択しております。

なお、当事業年度末における借入金の残高は918,750千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,650,737千円となります。

なお、当社は、アプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、事業年度末日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績及び適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。

なお、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は後述「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 追加情報」に記載の通りであります。

 

④経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、契約アプリ数、月次解約率、月額利用料割合を重要な経営指標と位置付けております。

当該指標については、2022年12月末時点でのYappliの契約アプリ数は783(前事業年度末比90件増)となり、月次解約率は0.88%(前事業年度末は0.68%)、月額利用料割合は80%(前事業年度末は77%)であります。これは、現時点において予定通りの進捗となっており、今後の業績に寄与するものと期待できることから、堅調に推移しているものと認識しております。なお、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の推移については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社は、自社において研究開発活動を行っております。なお、当社の事業は、アプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略をしております。

 当事業年度は、アプリ運営プラットフォーム事業で蓄積された経験を基に、Yappli CRMを含む新規サービスに関する研究開発を行い、研究開発費の総額は261,524千円となりました。