第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 売上成長、適切なコストコントロール、生産構造の最適化
 まず、当社グループの売上においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、当期は前期と比べ減少したものの、将来の売上収益の源泉となるデザイン・インは、当期の目標と比べ29%の過達となり、また、前期と比べ40%増加しました。
 当社グループは、さらなる成長に向けて、オーガニックなアプローチ(既存事業を拡大・強化するアプローチ)とインオーガニックなアプローチ(他社との戦略的な提携、買収などを活用するアプローチ)の双方を通じて、製品ポートフォリオと必要な技術の拡充・強化に努めます。

  オーガニックなアプローチによる取り組みとしては、当社グループの注力分野に対して、集中的に研究開発投資を進めます。具体的な注力分野としては、自動運転および自動運転支援向けのSoC、車載のドメインコントロール向けMCU、xEV向けのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、Arm社コア搭載MCU、BMS(Battery Management System:バッテリマネジメントシステム)、DRP-AI (Dynamically Reconfigurable Processor-AI:動的再構成プロセッサ-AI)を内蔵したMPU、データセンターや5G関連分野向けのアナログ・ミックスドシグナルなどがあげられます。
 一方、インオーガニックなアプローチによる取り組みとしては、買収した旧インターシル社や旧IDT社とのシナジーを最大化するため、ウイニング・コンビネーションなどの開発を継続して推進していきます。また、さらなるM&Aを通じて、当社グループが保有していない製品ポートフォリオや技術の拡充を適時に行います。
 次に、コストにおいては、IT費用や管理費用の削減により、当期のSG&A比率(売上高販管費率、販管費にはその他収益・費用が含まれております;Non-GAAPベース)が前期に比べ4%(費用計上区分変更に伴う影響2%を含みます。)減少しました。
 当社グループでは、短期的には、将来の事業の成長や効率化に必要となる戦略的な投資を確実に実行しつつ、継続的に適切なコストコントロールに努めます。

  また、生産においては、当期における当社グループ製造拠点の稼働率(前工程のウェハ投入量/生産能力の比率)は、6インチ製造ラインが42%、8インチ製造ラインは67%、12インチ製造ラインは53%でした。
 当社グループは、製造拠点の稼働率の向上に向け、現在一部残っている生産効率が低い設備や生産プロセスを有する工場については、継続して生産構造の最適化を推進するほか、アウトソーシングを積極的に活用することにより、生産効率の改善、費用構造の転換、最新技術へのアクセス、スケールメリットの享受に努めます。また、当社グループの製品ポートフォリオの拡充を通じて、12インチ製造ラインの稼働率を改善することも検討し、取り組んでいきます。

 

(2) ソフトウェア開発力の強化 
 当社グループにおいてエンジニア全体に占めるソフトウェアエンジニアの割合は、当期末現在で10%にとどまっております。

  しかしながら、近年、半導体に関連するソフトウェアの付加価値は一層高まっており、ソフトウェアの開発力の強化は、当社グループの製品やソリューションの提供のためにも重要になります。
 そこで、当社グループは、長期的にはインオーガニックなアプローチや積極的な採用を通じて、開発人員の拡充・強化を図るとともに、今後速やかに、ソフトウェア開発に関する戦略を構築し、実行します。

 
(3) 地政学的問題への対応
 近年、米中貿易摩擦は、ますます長期化と激化の様相を呈しており、今後、当社グループが事業セグメントとする半導体市場において、より重大な問題に発展する可能性があります。
 当社グループは、短期的および中長期的な視点から、設計拠点の所在やサプライチェーンのあり方に関する検討・見直しなど、地政学リスクを最小化するための各種施策を実行しており、今後もこの活動を継続していきます。

 

(4) 半導体業界における合従連衡への対応
 当社グループが事業を展開する半導体業界は、従来からグローバルレベルでの競争が激しく、合従連衡の動きが見られる業界であります。そして、最近では、当下期において、買収価額が1兆円を超える大型のM&Aが多数公表されるなど、こうした動きが加速しており、半導体業界各社の事業規模の差が顕著になっております。
 当社グループでは、こうした動きを踏まえ、これまでも買収候補先のリストを常時更新しており、今後も、当社グループの企業価値向上に資するM&Aの検討を進めていきます。

 

(5) 従業員エンゲージメントの向上と「ルネサスカルチャー」の浸透
 当社グループは、「To Make Our Lives Easier」をその目的として、人々の生活を楽(ラク)にする製品とソリューションを提供しております。この目的のもと、世界中の当社グループ組織とそこで働く従業員一人一人が絶えず変化する環境に迅速かつ柔軟に対応していくために共有する行動指針として、新たに「Transparent, Agile, Global, Innovative, Entrepreneurial」という5つの要素からなる「ルネサスカルチャー」を当期に策定し、展開しました。
 当社グループは、各種サーベイや拠点間での情報共有、情報交換などを通じて、全世界の当社グループ組織・従業員にこの「ルネサスカルチャー」を一層浸透させ、従業員エンゲージメントのさらなる向上に努めます。

 

(6) 従業員ポートフォリオの最適化
 2020年12月31日現在における当社グループ従業員の平均年齢は44.8歳であり、各拠点地域の人員構成は日本が52%、北米が9%、欧州が5%、アジア太平洋が34%でした。
 当社グループは、中長期的な視点から、グループ全体にとって最適な従業員の年齢構成と地域構成を実現するとともに、ソフトウェアなどの重要分野や今後成長が見込まれる分野に従事する従業員を拡充することを目指し、様々な人事施策に取り組みます。
 具体的には、従業員が自分の意思でその職種やキャリアパスを選択できる制度やフリーエージェント制度の導入、高い能力を備えた人材の成長を加速させるための取り組み、従業員の多様な働き方に対応するための勤務日数の柔軟化や副業制度の導入などの施策を予定しております。また、インオーガニックなアプローチも活用しながら、当社グループ従業員のポートフォリオの最適化に継続して取り組みます

 

(7) ESG活動と情報開示の推進
 近年、国内外で持続的な企業の成長を評価するうえで不可欠な観点として、ESGやSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に対する関心が高まっております。
 当社グループでは、これらに対する取り組みとして、持続可能な社会の実現に向けた「環境」に資する活動、人材の多様性や従業員の安全衛生などの「社会」に資する活動、そして、取締役会の多様性強化や報酬開示の透明性確保などの「ガバナンス」に資する活動をさらに強化します。
 また、ESG活動に関する非財務情報をより一層充実させ、ESG格付けの向上や、当社グループを取り巻く様々なステークホルダーに対する情報開示の拡充に努めます。

 

(8) サプライチェーンの最適化
 当社グループのサプライチェーンには、生産と受注のリードタイムの整合、受注確定に関する商慣行などの点で課題があります。
 これらの課題を解決するため、当社グループは、現在、モダンかつ業界標準的な仕組みやITシステムへと改善を進めておりますが、今後も引き続き、ITシステムの改良、取引条件の見直し、販売チャネルの適正化などの諸施策を通じて、サプライチェーンの最適化に向けて取り組みます。

 

 

 

2 【事業等のリスク】

  当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
 
(1) 市況の変動
 当社グループは、世界各国の景気循環、最終顧客の製品の需要の変化などに起因する、半導体市場の市況変動の影響を受けております。当社グループでは、常に市況の動向を見極めながら事業活動を遂行しておりますが、その影響を完全に回避することは困難であるため、市況が下降した局面においては、製品需要の縮小、生産・在庫数量の増加および販売価格の低下を招く可能性があります。その結果、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化につながり、収益が悪化する可能性があります。
 
(2) 為替相場および金利の変動
 当社グループは、世界各地域において様々な通貨を通じて事業活動を行っております。当社グループは為替変動のリスクをヘッジする取組みを行っておりますが、為替相場が大きく変動した場合、外貨建取引の売上高、外貨建の資材コスト、海外工場の生産コストなど当社グループの業績および財政状態が影響を受ける可能性があります。また、当社の外貨建の資産・負債を日本円に換算表示すること、さらに、海外子会社における外貨表示の財務諸表を日本円に換算表示することによっても、当社グループの資産・負債および収益・費用は変動します。
 また、金利の変動により、当社グループの事業運営に係る経費、資産および負債の価値が影響を受けるため、これにより、当社グループの事業、業績および財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
 
(3) 自然災害など
 地震、津波、台風、洪水などの自然災害、火災、停電、システム障害などの事故、テロ、感染症をはじめとした予測困難な事由が発生した場合、当社グループの事業活動が悪影響を受ける可能性があります。特に、当社グループは、地震が発生する確率が世界の平均より高いと考えられる地域に重要な施設・設備を保有しており、地震の発生時に、その影響により当社グループの施設・設備が損傷を受け、操業を停止せざるを得ないなど、多くの損害が発生する可能性があります。また、地震以外の自然災害、火災、停電、システム障害などの事故、テロ、感染症などによっても同様の事態が生じる可能性があります。例えば、2021年3月には、当社の生産子会社の半導体製造工場(那珂工場N3棟(300㎜ライン))の一部工程において火災が発生し、同工場における製品の生産・出荷が停止する事態が生じました。提出日現在において、上記工場火災により当社グループに生じる損害額を合理的に見積もることは困難ですが、今後、損傷した工場施設・設備の復旧のための費用負担や工場の稼働率の低下や操業停止に伴う売上・営業利益の減少、売上総利益率の悪化等により、当社グループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、こうしたリスクに備えて、各種事前対策、緊急対策などを定めたBCP(事業継続計画)などを策定・運用するとともに、各種保険に加入しておりますが、想定を上回る事態が発生する可能性は否定できず、それらの対策によっても、リスクを完全に回避することは困難であり、また、全ての損害を補填できるという保証もありません。

 また、現在、新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、不安定な社会、経済、財政および労働環境が継続しているところ、その影響は当社グループの業績や事業活動にも及んでおります。当社グループは、従業員、顧客その他関係者の健康と安全確保を最優先に考え、この感染拡大がもたらす様々な困難の中においても事業を継続できる体制の整備に努めていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大は当社グループが直接的に制御・抑制できる性質のものではないため、かかる体制整備により当社グループの事業継続が保証されるとは限りません。加えて、現段階では、新型コロナウイルス感染症の収束の見込みは立っておらず、その収束時期や将来的な影響は依然として不透明な状況であるため、上記以外の影響の有無を含めて新型コロナウイルス感染症が当社グループに及ぼす最終的な影響について確実性をもって予測することはできません。新型コロナウイルス感染症を取り巻く事態が、今後さらに深刻化、長期化した場合には、当社グループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。


(4) 競争
 半導体市場は熾烈な競合状態にあり、当社グループは、製品の性能、構成、価格、品質などの様々な面で、国内外の多くの同業他社との激しい競争に晒されております。とりわけ、近年において、同業他社間による買収、統合、業務提携などが行われており、今後もその可能性がありますが、その結果、当社を取り巻く競争環境はさらに激化する可能性があります。当社グループでは、競争力の維持強化に向けて、先端技術の設計、開発のプラットフォーム化、原価低減の推進、第三者との戦略的提携やさらなる企業買収の可能性の検討などの様々な施策に取り組んでおりますが、これらの施策を適時適切に行えなかった場合、製品のマーケットシェアが低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、熾烈な市場競争により、当社グループ製品の販売価格が急激な下方圧力に晒され、それを価格交渉や原価低減などの様々な収益性改善のための施策では補いきれずに、売上総利益率の悪化に見舞われる可能性があります。さらに、売上総利益率が低い当社グループ製品について、顧客において他の製品への移行が困難または一定の期間を要する場合などには、当社グループは、適時に生産の中止・減少が行えない可能性があり、その結果、当社グループの収益性を低下させる可能性があります。
 
(5) 事業戦略の推進
 当社グループは、急激に変化する経営環境下で、収益基盤を強化するため、中期成長戦略の策定、当社グループ内における組織体制の改編など様々な事業戦略および構造改革を遂行しております。これらの事業戦略および構造改革には一定の費用が伴う一方で、経済・事業環境の変化、将来の不確実な要因、予期できない要因などにより、その遂行が困難になる可能性や当初計画していた効果を得られない可能性がある他、当初の見込みを上回る費用が発生する可能性があり、その結果、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 

 

(6) グローバルな事業展開
   当社グループは、グローバルに事業を展開しておりますが、潜在的な顧客と現地企業との間の長期に亘る関係などの障壁、投資、輸出入に関する制限、関税、公正な取引などの各種規制、政治的・社会的・経済的リスク、疾病またはウィルスの流行または感染、為替変動、賃金水準の上昇、物流障害などの様々な要因により悪影響を受ける可能性があります。その結果、当社グループは、グローバルな事業展開に関する当初の目的を達成できず、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
(7) 戦略的提携および企業買収
 当社グループは、事業拡大や競争力の強化などを目的として、重要な技術や製品の研究開発、生産などの分野において、第三者との間で、共同出資関係を含む戦略的提携や企業買収を実施することがあり、例えば、2017年2月には米国のアナログ半導体企業である旧インターシル社を、また、2019年3月には同様に米国のアナログ半導体企業であるIDT社を買収しました。しかしながら、今後も当社グループにとって適切な提携先・買収先候補が見つかるとは限らず、また、適切な提携先・買収先があった場合にも、当社にとって受入れ可能な条件で合意に至ることができない可能性があります。また、提携先・買収先との合意に至った場合であっても、買収資金を調達できない可能性、提携先・買収先の株主承認等が得られない可能性、必要な許認可が取得できない可能性、法令その他の理由による制約が存在する可能性があり、買収を実行できる保証はありません。例えば、当社は、2021年2月に、英国の半導体会社であるDialog Semiconductor Plc(以下「Dialog社」)との間で、当社が同社の発行済普通株式および発行予定普通株式のすべてを取得し、完全子会社化するための手続きを開始することについて合意しておりますが、当該買収については、Dialog社株主の承認および英国の裁判所の認可並びに規制当局による承認等を条件とするところ、これらの条件が満たされるかは不確実であり、このうちの全部または一部が満たされない場合には、当該買収は実行されない可能性があります。

 さらに、当社グループでは、これらの提携や買収にあたって、投資回収や収益性などの可能性について様々な観点から検討していますが、事業遂行、技術、製品、人事、システム、関連当局の独占禁止法(競争法)への対応などの面で統合に時間と費用を要することに加え、資金調達、技術管理、製品開発などの経営戦略について提携先・買収先と不一致が生じたり、提携先・買収先において財務上その他の事業上の問題が生じた場合などに、提携関係・資本関係を維持できない、または買収時に想定していた投資回収や収益性を実現できなくなる可能性があります。また、提携先・買収先の主要顧客や主要人員を維持・確保できないことなどにより、想定していたシナジーやメリットが実現できない可能性があるなど、提携や買収が当初の期待通りの目的を達成できる保証はありません。


(8) 資金調達
  当社グループは、事業資金を金融機関からの借入などにより調達しておりますが、新製品を発売し、事業・投資計画を実行し、生産能力を拡張し、技術もしくはサービスを取得し、または負債を返済するため、将来、追加的に資金を調達しなければならない可能性があります。半導体業界の事業環境の悪化、金融・証券市場の環境の悪化、貸手側の融資方針の変更などにより、当社グループが必要な資金を適時に調達できない、または資金調達コストが増加する可能性があることなどにより、当社グループの資金調達が制約される可能性があります。また、当社は、企業買収を実施する際の買収資金についても金融機関からの借入により調達する可能性があり、例えば、2021年2月に公表したDialog社の買収資金の調達を目的として、金融機関との間でローン契約(Facilities Agreement)(総借入限度額7,354億円)を締結しております。当社は、当該ローン契約に基づく借入金については、新株発行を伴う資金調達(エクイティファイナンス)を含めて様々な長期資金への切り替えを進めていく予定であり、2021年2月には新株式発行に係る発行登録(上限2,700億円)を行っておりますが、かかる新株発行による資金調達が当社の希望する時期・条件で行える保証はありません。さらに、新株発行による資金調達の実施の有無にかかわらず、Dialog社の買収を含む企業買収のための資金調達を目的とした借入の実施により、当社は多額の有利子債務を負担することになるところ、当初想定したキャッシュ・フローの創出や長期資金への切り替えが実現しない場合には、当社グループの財務内容が悪化し、信用格付けが引き下げられる可能性があり、その場合にも、資金調達コストの増加や、当社グループの資金調達が制約される可能性があります。なお、当社グループが金融機関と締結している借入に係る契約の一部には財務制限条項が定められております。万一、当社グループの財務内容などの悪化により同条項に抵触し、上記借入について期限の利益を喪失する場合、当社グループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
 
(9) 追加ファイナンスについて
 2012年12月10日開催の取締役会決議に基づく第三者割当増資の実行後、当社において更なる成長資金が必要となった場合、旧㈱産業革新機構(2018年9月25日付で㈱産業革新投資機構に商号変更。以下同様)より合計500億円を上限として、追加の出資または融資を行う用意がある旨の申し出を受けておりましたが、旧㈱産業革新機構は、2018年9月21日付で会社分割を実施し、当該会社分割により、当社との契約における旧㈱産業革新機構の契約上の地位を新設分割設立会社である㈱INCJが承継しております。かかる追加の出資または融資の具体的条件および時期は現時点において何ら決定しておらず、かかる追加の出資または融資が確実に実行される保証はありません。当該申し出に基づき、出資が実行された場合には、更なる既存株式の希釈化が生じ、当社株価に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当該申し出に基づき融資が実行された場合には、当社有利子負債が増加し、事業活動などが制約を受ける可能性があります。さらに、今後、金利の変動が発生した場合、当社グループの事業、業績および財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
 
(10) 筆頭株主である㈱INCJとの関係について
 当社は、2013年9月30日に第三者割当増資の方法により、旧㈱産業革新機構等を割当先として普通株式を発行し、旧㈱産業革新機構は、当該株式の引受けにより、当社の議決権総数の過半数を所有する大株主となりました。同社は、2017年6月以降、段階的にその所有株式を売却するとともに、2018年9月21日付で会社分割を実施し、当該会社分割により、その所有する当社株式の全てを新設分割設立会社である㈱INCJが承継し、現在は㈱INCJが筆頭株主となっております。そのため、㈱INCJによる当社株主総会における議決権行使などにより、当社グループの事業運営が重大な影響を受ける可能性があります。また、㈱INCJは、投資目的で当社株式を所有しており、将来において当該株式を市場売却した場合には、売却時の市場環境などにより、当社株式の市場価格などに重大な影響を与える可能性があります。
 
(11) 急速な技術革新など
 当社グループが事業を展開している半導体市場は、急速な技術変化と技術標準の進展などを特徴としております。そのため、当社グループがこうした変化について、研究開発などにより適切に対応できなかった場合、当社グループ製品の陳腐化、代替製品の出現などにより、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
 

(12) 製品の生産
① 生産工程
 半導体製品は、非常に複雑な生産工程を経て生産されております。当社グループは、歩留り(材料当たりの製品良品率)を改善するため、生産工程の適切な管理および改良に継続して取り組んでおりますが、この生産工程に何らかの問題が発生した場合は、歩留りの悪化による製品出荷の遅延や出荷数量の減少、最悪の場合は出荷停止の結果を招く可能性があります。
 
② 原材料、部品、生産設備などの調達
 半導体製品の生産にあたっては、その生産に必要となる原材料、部品、生産設備などを適時に調達する必要があります。当社グループは、これらの調達に関連する問題の発生を回避するため、複数の供給者との緊密な関係構築に努めておりますが、原材料などの中には特定の供給者からしか入手できないものも含まれているため、需給が逼迫した場合や、供給者において自然災害や事故、経営状況の悪化、事業撤退などの事象が発生した場合、これらを適時に調達できず、また調達できる場合でも調達価格が大幅に上昇する可能性があります。また、調達した原材料や部品に欠陥が存在した場合、当社グループの生産工程に悪影響が生じる可能性や当社グループにおける追加の費用負担が発生する可能性があります。
 

③ 外部への生産委託
 当社グループは、半導体製品の生産の一部を外部のファウンドリ(受託生産専門会社)などに委託しております。これらの外注先の選定にあたっては、技術力や供給能力などについて、あらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる会社を選定しておりますが、外注先の責による納入の遅延や製品の欠陥をはじめとした、生産面でのリスクが生じる可能性を否定できず、外注先の生産能力不足や自然災害による外注先の操業停止などにより、当社グループが十分な製品供給を行えない可能性があります。
 
④ 適切な水準での生産能力の維持
 半導体市場は市況変動の影響を受けやすく、また、将来の製品需要を正確に予測することは困難であるため、必ずしも当社グループの生産能力を製品需要と見合った適切な水準に維持できるとは限りません。また、生産能力増強のための設備投資を行う場合であっても、通常、実際に当社グループの生産能力の増強に寄与するまでには一定期間を要します。
 そのため、特定の製品に関する需要が、ある時点における当社グループの生産能力を大幅に超過し、かかる需要超過の状態が継続した場合であっても、顧客が希望する製品供給を適時適切に行うことができず、当該製品に関する販売機会の喪失、競合他社製品への切り替えによるマーケットシェアの低下、当該顧客との関係悪化などを招く可能性があります。
 他方、特定の製品に関する製品需要の高まりに応じて設備投資を行い、生産能力の増強を図った場合であっても、当該設備投資により実際に生産能力が増強される時点以降において当該製品に関する需要が維持される保証はなく、実際の製品需要が想定を下回った場合などにおいて当該設備投資について見込んだ収益による投資の回収が行えない可能性があります。 

 

(13) 品質問題
 当社グループでは、様々な施策を通じて、当社グループ製品の品質向上に取り組んでおりますが、これらの製品に用いられる技術の高度化、顧客における製品の使用方法の多様化、外部調達した原材料や部品における欠陥などにより、出荷時に発見できない欠陥、異常または故障が製品に存在する可能性があり、顧客への出荷後にそれらが発見される場合があります。この場合、製品の返品や交換、損失の補償、製品の採用打ち切りなどの結果につながり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした事態に備えて、当社グループでは、生産物賠償責任保険(PL保険)、生産物回収費用保険(リコール保険)などの保険に加入しておりますが、それにより損失を全額補填できるという保証はありません。

 

(14) 製品の販売
① 主要顧客への依存
 当社グループは、当社グループ製品の顧客に対する売上高の多くを特定の主要顧客に依存しております。これらの主要顧客が当社グループ製品の採用を中止し、または著しくその発注数量を減らした場合、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
 
② 顧客固有の仕様に基づいた製品に係る顧客からの計画の変更など
 当社グループは、顧客からその顧客固有の仕様に基づいた製品の開発を受注することがあります。しかし、受注後に、発注元の顧客がその製品を搭載する予定であった最終製品の市場への投入を延期または中止したり、その製品の機能・性能が顧客の要求に満たない場合には、その製品の採用を中止する可能性があります。また、顧客は、その製品を組み込んだ最終製品の売れ行きが芳しくない場合、その製品の発注数量を減少させ、または納入期日を延期することがあります。
 こうした特定顧客向け製品に係る顧客からの製品計画の変更、発注の減少や延期などは、当社グループの売上や収益性を低下させる可能性があります。

 

③ 販売特約店などへの依存
 当社グループは、日本国内およびアジア地域では、多くの当社グループ製品を特定の主要な販売特約店などを通じて販売しております。当社グループがこれらの販売特約店などに対して、競争力ある販売報奨金やマージンを提供できない場合または販売特約店などにとって適切な売上数量を確保できない場合、販売特約店などは当社グループ製品の販売体制縮小などの見直しを行い、その結果、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(15) 人材の確保
 当社グループは、事業を展開していくうえで、経営、技術開発、営業その他において優秀な人材の確保に努めております。しかしながら、こうした優秀な人材は限られているため、かかる人材を求める競争は熾烈であります。そうした状況下で、当社グループが優秀な人材を確保することができない可能性があります。

 

(16) 確定給付制度債務
 当社グループが計上している退職給付に係る資産や負債は、割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出されております。金利変動や株式市場の下落などにより、数理計算上の前提と実績に乖離が生じ、確定給付制度債務が増加もしくは年金資産が減少した場合、退職後給付制度における積立不足が増加し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) 設備投資と固定費比率
 当社グループが営む半導体事業は、多額の設備投資を必要とする事業であり、当社グループは、継続的に設備投資を行っておりますが、かかる設備投資に伴い償却費用を負担する必要があります。また、市場環境の変化に伴い需要が減少し、想定した販売規模を達成できない場合、あるいは供給過剰により製品の単価が下落した場合、こうした設備投資の一部または全部について、回収することができない、あるいは回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があり、その結果、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社グループの費用の大部分は、上記の設備投資に伴う償却費用に加えて、工場の維持等に伴う生産コスト、研究開発費用といった固定費で占められているため、主要顧客からの受注の減少、製品需要の減少等による売上の減少や、工場稼働率の低下等が生じた場合であっても、それらの事象に対応した固定費の削減を行うことが困難であり、その結果、比較的小規模の売上の減少等が当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
(18) 固定資産の減損
 当社グループは、工場設備などの有形固定資産に加えて、旧インターシル社およびIDT社の買収に伴う多額ののれんなどの無形資産を含む多くの固定資産を保有しております。これらの固定資産については、減損の兆候がある場合、固定資産から得られる将来のキャッシュ・フローによる資産の帳簿価額の回収可能性を検討しております。その結果、当該資産が十分なキャッシュ・フローを生み出さない場合には、減損を認識しなければならない可能性があります。

 

(19) 情報システム
 当社グループの事業活動において、情報システムの重要性が増大しております。当社グループでは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、自然災害、事故、コンピューターウィルス、不正アクセスその他の要因により情報システムに重大な障害が発生した場合、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
 
(20) 情報管理
 当社グループは、事業活動の遂行に関連して、多数の秘密情報や個人情報を有しております。これらの情報については、法令や社内規則に基づき管理しておりますが、予期せぬ事態により情報が流出するおそれがあり、そのような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や、顧客の信用や社会的信用の低下を招き、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(21) 法的規制
 当社グループは、事業を展開する国および地域において、事業や投資の認可、独占禁止法(競争法)上の制限、輸出制限、関税、会計基準・税制、環境法令をはじめとする様々な規制の適用を受けております。今後、法的規制の強化などに伴う事業活動の制約、コストの増加などにより、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
 当社グループは、法令遵守や財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し、運用していますが、内部統制システムは本質的に内在する固有の限界があるため、その目的が完全に達成されることを保証するものではありません。従って、将来にわたって法令違反等が発生する可能性が皆無ではありません。当社グループが法令等に違反した場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分もしくは損害賠償請求の対象となり、または当社グループの社会的評価が悪影響を受け、その結果、当社グループの事業や業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
 
(22) 環境問題
 当社グループは、地球温暖化、大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物、有害物質、土壌汚染などに関する様々な環境法令の適用を受けております。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、過失の有無にかかわらず、環境問題に対して法的もしくは社会的責任を負う可能性があり、そのような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用負担が発生する可能性や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。
 

(23) 知的財産権
 当社グループは、知的財産権の確保に努めておりますが、その国や地域などによっては知的財産権に対する十分な保護を得られない可能性があります。また、当社グループ製品には第三者からライセンスを受けて開発・製造・販売しているものがありますが、今後、第三者から必要なライセンスを受けられない可能性や、ライセンスを受けられるとしても従前よりも不利な条件でしかライセンスを受けられない可能性があります。さらに、当社グループの製品に係る知的財産権に関して、当社グループまたはその顧客が第三者から特許侵害訴訟等を提起され、その結果によっては、当社グループの当該製品が、一定の国・地域で製造・販売できなくなる可能性や、当社グループが第三者または当社グループの顧客に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
 
(24) 法的手続
 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記 36.コミットメントおよび偶発事象 (4)その他」に記載のとおりであります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針および、将来に関する仮定および報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。

 

(2) 財政状態の状況

   (単位:億円)

 

前連結会計年度末
(2019年12月31日)

当連結会計年度末
(2020年12月31日)

前連結会計年度末比
増(減)

資  産  合  計

16,681

16,090

△591

資  本  合  計

6,244

6,197

△47

親会社の所有者に帰属する持分

6,215

6,167

△47

親会社所有者帰属持分比率(%)

37.3

38.3

                 1.0

有 利 子 負 債

7,859

6,937

△922

 D/Eレシオ(倍)

1.26

1.12

△0.14

 

 

 当連結会計年度末の資産合計は16,090億円で、前連結会計年度末と比べ591億円の減少となりました。これは、 主に減価償却などにより有形固定資産および無形資産が減少したことや為替相場の変動によりのれんが減少したことなどによるものであります。資本合計は 6,197億円で、前連結会計年度末と比べ47億円の減少となりました。これは、利益剰余金が増加したものの、為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が減少したことにより、その他の資本の構成要素が減少したことなどによるものであります。
 
  親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末と比べ47億円減少し、親会社所有者帰属持分比率は38.3%となりました。有利子負債は、借入金の返済による減少などにより、前連結会計年度末と比べ922億円の減少となりました。これらの結果、D/Eレシオは1.12倍となりました。

 

 

(3) 経営成績の状況

当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)およびIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しております。

Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、非経常項目やその他特定の調整項目を一定のルールに基づいて控除もしくは調整したものであります。当社グループの恒常的な経営成績を理解するために有用な情報と判断しており、当社グループはNon-GAAPベースで予想値を開示しております。具体的には、企業買収に伴い、認識した無形資産の償却額およびその他のPPA(取得原価の配分)影響額、企業買収関連費用、株式報酬費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などを控除または調整しております。

また、2019年3月にIDT社を買収完了した後、2事業本部体制に再編したことに伴い、当社グループは、2019年12月期第3四半期から開示情報について、当社グループの主要な事業内容である「自動車向け事業」、「産業・インフラ・IoT向け事業」に変更しました。なお、上記変更に伴い、当社グループがこれまで開示していた「半導体売上収益」については、開示区分を廃止しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。

なお、当社は、IDT社の買収およびその後のIDT社によるルネサス エレクトロニクス・アメリカ社の吸収合併を経て「One Renesas」に向け2020年1月1日以降、事業プロセスやITシステムなどの統合に着手したことを契機とし、当社グループの財政状態や経営成績をより適切に表示するために、費用計上区分の見直しを実施しました。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については、遡及適用後の連結財務諸表となっております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 会計方針の変更(費用計上区分の変更)」をご参照ください。

(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照しておりますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。

 

① 当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績(Non-GAAPベース)

(単位:億円)

 

前連結会計年度
(2019年1月1日~
2019年12月31日)

当連結会計年度
(2020年1月1日~
2020年12月31日)

前期比増(減)

Non-GAAP売上収益

7,182

7,157

△26

△0.4%

 

自動車

3,711

3,410

△301

△8.1%

 

産業・インフラ・IoT

3,297

3,636

339

10.3%

Non-GAAP営業利益(率)

925
(12.9%)

1,375
(19.2%)

451

(6.3pts)

48.7%

 

自動車

310
(8.3%)

484
(14.2%)

174
(5.8pts)

56.1%

 

産業・インフラ・IoT

591

(17.9%)

897

(24.7%)

306
(6.8pts)

51.9%

米ドル為替レート(円)

109

107

ユーロ為替レート(円)

123

121

 

    (注) 1 上記表の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメ

                ント」をご参照ください。

          2 為替レートは、収益・費用の換算に用いた各月のレートを平均したものであります。

 

当連結会計年度における業績は、以下のとおりであります。

 

(Non-GAAP売上収益)

当連結会計年度のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ0.4%減少し、7,157億円となりました。これは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により自動車生産が減少し、それに伴い当社の自動車向け事業の売上収益が減少した一方で、産業・インフラ・IoT向け事業の売上収益が増加したことによるものであります。売上収益の増加は、2019年12月期にはIDT社の買収後9ヶ月分の売上収益が計上されているのに対し、2020年12月期には12ヶ月の売上収益が計上されていることに加え、インフラストラクチャー、IoT向けの売上収益が堅調に推移したことなどによるものであります。

 

(Non-GAAP売上総利益 (率))

当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益は3,387億円となり、前連結会計年度と比べ306億円の増加となりました。これは主に、利益率の高い産業・インフラ・IoT向け事業の増収効果や、固定費の削減効果などによるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益率は、47.3%となり、前連結会計年度と比べ4.4ポイントの増加となりました。

 

(Non-GAAP営業利益 (率))

当連結会計年度のNon-GAAP営業利益は1,375億円となり、前連結会計年度と比べ451億円の増加となりました。これは、上述の理由による売上総利益の増加のほか、販売費及び一般管理費を中心とした費用効率化によるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP営業利益率は、19.2%となり、前連結会計年度と比べ6.3ポイントの増加となりました。

 

当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりであります。

 

<自動車向け事業> 

自動車向け事業には、自動車のエンジンや車体などを制御する半導体を提供する「車載制御」と、車内外の環境を検知するセンサリングシステムや様々な情報を運転者などに伝えるIVI(in-vehicle infotainment)・インストルメントパネル等の車載情報機器に半導体を提供する「車載情報」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoC(system-on-a-chip)、アナログ半導体およびパワー半導体を中心に提供しております。
 当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ8.1%減少し、3,410億円となりました。これは主に、自動車生産減少の影響を受け、「車載制御」の売上収益が減少したことによるものであります。

当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP営業利益は、前連結会計年度と比べ174億円増加し484億円となりました。これは、売上収益が減少したものの、製品ミックスの改善による売上総利益率が上昇したことや販売費及び一般管理費が減少したことなどによるものであります。

 

<産業・インフラ・IoT向け事業>

産業・インフラ・IoT向け事業には、スマート社会を支える「産業」、「インフラストラクチャー」および「IoT」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoCおよびアナログ半導体を中心に提供しております。
 当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ10.3%増加し、3,636億円となりました。これは主に、2019年3月のIDT社買収に伴う増収効果に加え、データセンター向けを中心とした「インフラストラクチャー」およびリモート勤務・学習により需要の増加しているPC等OA機器向け「IoT」の増収によるものであります。

当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP営業利益は、増収効果および売上総利益率改善に伴う利益増により、前連結会計年度と比べ306億円増加し、897億円となりました。

 

当社グループは2020年2月17日に中期の戦略および財務モデルを公表しております。当社グループでは、注力市場に経営資源を集中投下することで、Long-term targetとして市場を上回る売上成長率を実現し、生産効率の最適化、製品ミックスの改善およびIDT社の統合シナジーの発現などにより、Non-GAAPベースで売上総利益率50%、売上営業利益率20%以上とすることを目標に掲げております。

なお、中期の戦略および財務モデルで各目標は、提出日現在における当社グループの長期的な経営目標であり、その達成を保証するものではなく、「2 事業等のリスク」に記載された事項を含む多くのリスク要因その他外部環境等の変化により、その結果が左右される可能性があります。

 

 ② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整


 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2019年1月1日~
  2019年12月31日)

当連結会計年度

(2020年1月1日~
  2020年12月31日)

Non-GAAP売上総利益(率)

3,081(42.9%)

3,387(47.3%)

無形資産および固定資産償却費

△17

△15

株式報酬費用

△9

△12

棚卸資産の時価評価額

△113

その他非経常的な項目

および調整項目

6

△3

IFRS売上総利益(率)

2,948(41.0%)

3,357(46.9%)

 

 

 

Non-GAAP営業利益(率)

925(12.9%)

1,375(19.2%)

無形資産および固定資産償却費

△476

△555

株式報酬費用

△120

△146

棚卸資産の時価評価額

△113

その他非経常的な項目

および調整項目

△152

△24

IFRS営業利益(率)

63(0.9%)

651(9.1%)

 

(注)その他非経常的な項目および調整項目には企業買収関連費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などが含まれています。

 

③ 当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績(IFRS基準)


 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2019年1月1日~
  2019年12月31日)

当連結会計年度

(2020年1月1日~
  2020年12月31日)

前期比増(減)

売上収益

7,182

7,157

△26

△0.4%

売上総利益(率)

2,948

(41.0%)

3,357

(46.9%)

409
(5.9pts)

13.9%

営業利益(率)

63

(0.9%)

651

(9.1%)

589

(8.2pts)

940.1%

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品群であっても、その性能、構造、形式などは必ずしも一様ではないこと、受注生産形態をとらない製品も多いことなどから、品目ごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため、生産、受注および販売の状況については「第2  事業の状況 3  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」におけるNon-GAAP売上収益のセグメントに関連付けて示しております。なお、主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

 

関連する報告セグメント名

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

比率(%)

金額(百万円)

比率(%)

㈱リョーサン

自動車および産業・インフラ・IoT

75,146

10.5

73,599

10.3

 

(注) 上表金額には消費税等を含んでおりません。

 

 

(4) キャッシュ・フローの状況

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度
(2019年1月1日~2019年12月31日)

当連結会計年度
(2020年1月1日~2020年12月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,020

2,239

投資活動によるキャッシュ・フロー

△7,422

△402

フリー・キャッシュ・フロー

△5,402

1,837

財務活動によるキャッシュ・フロー

5,005

△1,045

現金及び現金同等物の期首残高

1,888

1,465

現金及び現金同等物の期末残高

1,465

2,198

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは2,239億円の収入となりました。これは主として、税引前利益を652億円計上したことおよび減価償却費などの非資金損益項目を調整したことなどによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出となりました。これは主として、有形固定資産や無形資産の取得による支出などによるものであります。

 

この結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは1,837億円の収入となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,045億円の支出となりました。これは主として、主要取引銀行などへの借入金の返済を行ったことなどによるものであります。

 

 

(5) 流動性および資金の源泉

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保すること、および健全なバランスシートを維持することを基本方針としております。当社は、IDT社の買収に必要な資金の調達、および長期的な運転資金の確保を目的とした既存借入金の借り換えのため、2019年1月15日付で主要取引銀行である㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行および三井住友信託銀行㈱等との間で、総額8,970億円のシンジケートローン契約を締結しました。このうち、2019年3月に6,980億円の実行可能期間付タームローンの借入を実行しました。また、2019年6月に既存のタームローンの借入を返済するとともに、1,490億円のタームローンの借入を実行しました。今後の事業展開における資金需要への対応と運転資金の確保および財務基盤の安定性向上のために、機動的な資金調達手段を確保することを目的に、2020年7月13日付で主要取引銀行との間で750億円のコミットメントラインの設定に係る契約を締結しました。なお、本契約は2021年3月2日に終了しております。
 当連結会計年度末における借入金の残高は6,797億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,198億円となっております。

 

(6) オフバランス取引

当社グループは、資産効率を高めるために、特定の売上債権等の流動化を適宜行っております。当連結会計年度末における流動化残高は138億円であります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社グループの事業遂行上、重要な契約とその内容は、次のとおりであります。

 

  (1) 技術援助契約およびこれに類する契約

契約および相手方の名称

契約締結日

契約の概要

①  Texas Instruments Incorporated

との特許クロスライセンス契約

2011年3月2日

半導体に係る特許権のクロスライセンス(子会社を含む。)

②  Arm Limitedからの技術導入契約

2015年12月22日

半導体の設計に係る技術の導入

 

 

 (2) 借入契約

借入先

契約締結日

契約の概要

① ㈱三菱UFJ銀行

  ㈱みずほ銀行

  三井住友信託銀行㈱等

2019年1月15日

買収に必要な資金の一部の調達および中長期的な資金として既存借入金の借り換えを目的とした総額8,970億円のシンジケートローン

② ㈱三菱UFJ銀行

  ㈱みずほ銀行

  三井住友信託銀行㈱

  ㈱りそな銀行

2020年7月13日

今後の事業展開における資金需要への対応、運転資金の確保、財務基盤の安定性向上に向け、機動的な資金調達手段の確保を目的とした総借入限度額750億円のコミットメントライン

③ ㈱三菱UFJ銀行

  ㈱みずほ銀行

2021年2月8日

買収に必要な資金の調達を目的とした総借入限度額7,354億円のローン

 

(注)借入契約②は、2021年3月に解約しております。

 

(3) その他

当社は、2021年2月、英国の半導体企業であるDialog Semiconductor Plcとの間で、当社が同社の発行済普通株式および発行予定普通株式のすべてを取得し、完全子会社化する手続きを開始することについて合意しました。

なお、詳細は、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 (1) 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 38. 後発事象」に記載のとおりであります。

 

5 【研究開発活動】

(1) 研究開発活動の体制および方針

当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。
  加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。
  家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやシステムLSIといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニングコンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現してまいります。
 

 

(2) 主な研究開発の成果

① 自動運転のメインプロセッシングを1チップで実現する車載用SoC「R-Car V3U」を発表

 当社グループは、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)や自動運転システムに向けて、車載用SoC「R-Car」の中で最も高い性能を誇る「R-Car V3U」を発表しました。本製品は、2020年12月からサンプル出荷を開始しており、2023年第2四半期から量産を開始する予定であります。
 本製品は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)のディープラーニング(深層学習)を用いた車載カメラ画像の物体認知から、レーダやLiDAR(注1)とのセンサフュージョン、走行計画の立案・制御指示など、自動運転の核となる処理を1つのチップ上で実現することができます。
 また、自動運転システムで求められている最も厳しい安全性レベル「ASIL D」(注2)にも対応しており、偶発的にハードウェアに生じた故障を高速で検出・制御する高度な安全機能を搭載しております。
 さらに、本製品は、周囲の物体検知やセグメンテーションなど、最先端の各種ディープラーニングに柔軟に対応できるほか、そのアーキテクチャは低消費電力性を実現しているため、熱の発生を抑えられ、空冷環境下でも動作可能なECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を開発することができます。
 本製品が含まれるR-Carの最大の特長は、そこで用いられる専用エンジンの共通化を図り、ソフトウェアの流用を可能にすることで、多様なニーズに応えられるスケーラブルなアーキテクチャを採用しているところにあります。本製品においても、既に市場投入している車載カメラ用SoC(R-Car V3M、R-Car V3H)との間で専用エンジンの共通化を図っており、顧客は、短期間でスムーズに自分の次世代製品に展開することができます。
 当社グループは、引き続き、顧客の開発負荷の軽減に向けて、様々な開発環境を提供し、顧客がより楽(ラク)にソフトウェアの開発を行うことができるように取り組みます。

 

 産業用モータ制御に革新をもたらす角度センサとして、高精度なインダクティブポジションセンサ用IC「IPS2200」を発表

  当社グループは、産業用モータを軽量化し、低コストで高精度かつ高効率に制御したいという顧客のニーズが高まる中、モータの回転角度を高精度に検出できる新たな位置センサとして、インダクティブポジションセンサ用IC「IPS2200」を発表しました。
 本製品は、磁石を使っておらず、薄型軽量の設計も可能なため、周辺磁場に対する高い耐性を持ち、産業、医療、ロボットをはじめとする幅広い応用分野に向けて、コストパフォーマンスの高い角度センサ付きモータを実現することができます。また、センシング素子として、プリント配線板にコイルパターンを配置したものを使用しており、設計の柔軟性にも優れ、精度の高いパフォーマンスを実現することができます。
 本製品の発売にあわせて、面倒な設定が不要で、すぐにセンシング素子を設計できるコイル設計ツールや、わずか30分程度でコイルの最適化を完了できるコイル最適化ツール、評価キットの提供も行っております。これらを通じて、顧客は、薄型軽量化に加え、その製造部材として標準品を用いることができるため、BOM(Bills of Materials:部品表)コストの削減にも役立ちます。

 当社グループは、本製品を積極的に展開し、顧客がより楽(ラク)に、産業・ロボット・コンシューマ・医療用向けなどのモータを実現できるよう貢献します。

 

③ DDR5メモリモジュール用の温度センサ「TS5111」およびデータバッファ「5DB0148」を発表

 当社グループは、米国半導体技術標準化機関「JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)」が策定した最新メモリ標準規格「DDR5(Double Data Rate 5)」に準拠したメモリモジュール用温度センサ「TS5111」を発表しました。
 本製品は、ピーク効率(ピークに対する計数効率)やリアルタイムでの信頼性に優れており、温度監視アルゴリズムの動作によるメモリモジュールや温度に敏感なシステム構築に最適であります。また、DDR5メモリモジュールに限らず、SSD(Solid State Disk)やコンピュータのマザーボードなど、リアルタイムでの正確な温度監視が求められる通信機器をはじめとした多様な用途に適しております。
 また、当社グループは、DDR5メモリモジュール用として、高速性と低消費電力性を実現したデータバッファ「5DB0148」を、限定ユーザを対象にサンプル出荷を開始しました。
 近年、リアルタイム解析、機械学習、HPC(High Performance Computing:高性能計算)、AIをはじめとして、とても多くのメモリや帯域幅を必要とするアプリケーションが増加しており、メモリの帯域幅の要件も飛躍的に拡大しております。

  本製品は、こうした新しい世代のアプリケーションの要となるDDR5用のメモリモジュールLRDIMM(Load-Reduced Dual Inline Memory Modules:負荷軽減メモリモジュール)に向けて、大幅な高速化を実現することができます。

 

④ 4G/5Gインフラシステム向けRFアンプ「F1490」を発売

 当社グループは、RFアンプのポートフォリオを強化し、4G/5G基地局用装置などの用途に向けて、自己消費電流が75mAと小さいRFアンプ「F1490」の量産を開始しました。
 本製品は、1.8GHzから5.0GHzの周波数範囲内で動作するなど、5Gの周波数帯域(サブ6GHz)をカバーしております。また、2種類のゲインモードを選択することにより、システム設計の柔軟性を高めることができます。顧客は、本製品を使うことにより、Massive MIMO(注3)の5Gプリドライバに求められるシステムレベルの要件をすべて満たすことができます。
 当社グループは、アクティブアンテナシステムや4G/5G基地局、その他無線通信機器向けのRFアンプソリューションを積極的に展開し、LTEと5Gのイノベーションを推進し続けます。

 

(注)1 LiDAR:「Light Detection and Ranging」の略称で、レーザー光を対象物に照射し、反射光を受光すること 

    で、自動車と対象物との距離を測定する技術であります。

  2 ASIL:「Automotive Safety Integrity Level」の略称で、自動車向け機能安全規格ISO 26262における機

    能安全レベルであります。

  3 Massive MIMO:多数のアンテナを用いて通信を多重化し、大容量化・高速化する無線通信技術でありま

    す。 

 

(3) 研究開発費

当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,351億円となり、前連結会計年度の1,348億円と比べ3億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。

なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。