第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

 当社グループでは、下記の4項目を経営ビジョンとして掲げ、経営の基本方針としております。

①独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。

②顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。

③市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。

④各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。

 

(2)中長期的な経営方針及び経営指標

 当社グループでは、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大と、その長期化に伴う市場ニーズや顧客志向の変化を踏まえ、withコロナ、afterコロナの時代を見据えて、2020年12月に、2025年度をゴールとした新たな中長期成長戦略「Mimaki V10」を策定し、実行することといたしました。

①「Mimaki V10」基本ステートメント

 ミマキならではの前工程・プリント/カット/コート・後工程の一貫システムや製品によるソリューション提供で、産業印刷のデジタルオンデマンド化をけん引する。

②「Mimaki V10」経営方針

 売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤を構築したうえで、2025年度までに営業利益率10%を達成する。

a. 収益性を重視し、2025年度までに営業利益率10%、経常利益率8%を達成する

b. 2020~2025年度の売上高平均成長率(CAGR)は、10%を目安とする

c. 環境変化への対応力を確保するために、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善を通じて財務基盤を強化する

d. 製品開発でInnovationを起こし、顧客にとって価値のあるソリューションを提供し続ける

e. 「Mimaki V10」の達成に向け、ミマキグループが一丸となって取り組む組織風土を創り上げる

 

(3) 中長期成長戦略「Mimaki V10」重点施策

①製品戦略

a. FA事業を保有する優位性を最大活用し、SG、IP、TA市場におけるプリント工程の自動化を実現する、デジタルオンデマンド・プリントソリューションを提供する

b. SG(サイングラフィックス)市場

・従来主流の有機溶剤系インクから、環境負荷が低いUV硬化型インクへの転換が加速する機を捉え、競争優位を確保しているUV硬化型インクを生かした製品やソリューションの開発・販売活動を積極的に展開

・エントリー領域でのシェア拡大と、ミドル(・ハイエンド)領域での収益確保

・UVプリンタ特許技術の活用による競争優位性強化

c. IP(インダストリアルプロダクツ)市場

・拡大するスマートファクトリーの流れを捉え、プリント/カット/コート工程の自動化による省人化・無人化を実現する製品やソリューションを提供

・グッズ・ノベルティプリント市場で大きなポジションを占めるパッド印刷を、インクジェットによるデジタル化で新たな成長市場として開拓

・UVプリンタ特許技術の活用による競争優位性強化

d. TA(テキスタイル・アパレル)市場

・コロナ禍により市場が店頭販売からEコマースにシフトし、生産者の需要が高速機から高付加価値機に変化する機会を捉えたソリューションの提供

・高速機は「Tiger-1800B MkⅢ」でポジションを維持しつつ、中・低速機のラインナップを強化し、デジタル・オンデマンド需要に対応

e. 3Dプリンティング事業

・2017年に発売した1,000万色フルカラー「3DUJ-553」を皮切りに、熱融解積層方式、1.8m大型造形モデルと順調にラインナップを拡大、2021年度より1,000万色フルカラーエントリーモデルを投入して需要を拡大

・3Dによる造形を容易にするためのソリューションの提供

 

②市場環境や顧客ニーズの急激な変化を見据えた事業展開

a. グローバル×デジタル

・デジタルプリントのIoTによるデジタルオンデマンド・プリントの推進と、中国市場の攻略

b. Eコマース×サブスクリプション

・新たなビジネスモデルで収益性を上げるとともに、Eコマースによる販売を展開

c. Innovationを起こし、新規市場・新規アプリケーションを開拓

・今までの開発計画を全面的に見直し、新しい市場向けのプライオリティを上げる

・開発サイクルの見直し(期間短縮)により、販売している製品の25%以上が3年以内に開発した製品とする

③ 収益性向上に向けた基盤構築

a. インクの品質改善

・インクの品質改善により、稼働するプリンタのダウンタイムを無くし、顧客の生産性向上に寄与するとともに、インク品質が起因の製品補修費を削減する具体的な取り組みとして、受入不良率の改善、工程内不良の削減、市場トラブルの早期対策を推進する

b. CX(コーポレート・トランスフォーメーション)

・2025年度営業利益率10%を目標とする

・2020年度は構造改革により固定費を圧縮し、事業体質を筋肉質化する

・これにより、2021年度は2019年度売上高の80%で利益が出る体制にする

・この基本的な固定費構造を維持しつつ、2025年度に向けて平均成長率(CAGR)10%を目安に売上高を伸ばし、営業利益率10%を達成する

・貸借対照表を重視した経営を進める

・デジタル化、省人化に取り組む

c. 生産体制の改革

・需要変動に応じた生産体制

・中国製と戦えるコスト力実現

・在庫管理を強化する

d. 営業体制の変革

・SFA(セールス・フォース・オートメーション)/CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を利用した営業分析を行い、ミニ展戦略につなげる

・バーチャルミニ展戦略を展開し、あらゆる地域の顧客を開拓

・新規顧客へ向けての販売チャネルを構築

・販売支援部隊の立ち上げ

・営業在庫のコントロール

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、「Mimaki V10」の達成に向けて対処すべき課題は以下のとおりと認識して、取り組んでまいります。

①デジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供

 当社が開発型企業として持続的な成長を実現するためには、SDGsで定められた持続可能な開発目標への貢献という社会的な要請はもちろん、個々のお客様の困りごとやニーズに的確に対応する必要があります。また、コロナ禍を経て、市場のニーズや顧客の志向は急激に変化しています。加えて、Eコマースの浸透に伴い、消費者は好きなものを、好きな時に、好きなだけ利用する「オンデマンド」供給への要求が益々強まり、多様なニーズに対応できるビジネスモデルの構築が求められています。このような環境変化に的確に対応し、持続的な成長を果たすためには、当社グループが所有する競争優位性の高い独自技術を基盤とした製品、ソフトウエア、サービスの提供に加え、今後ますます進展するデジタルトランスフォーメーション(バリューチェーンを含めて新たな付加価値につながるデジタル化)を、中期的な観点から成長ドライバとして取り込んだうえで、産業用印刷市場におけるデジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供を進めてまいります。具体的には、当社グループは、産業用印刷市場で必要とされる「プリントだけでなくその前・後工程の処理装置も含めた幅広い製品ラインナップ」と「充実した機能性インク」のほか、当市場を開拓する過程で蓄積してきた「問題解決のノウハウ提供力」を保有しています。とりわけ、当社のFA(ファクトリーオートメーション)事業では、プリント対象物の前処理/前加工や、プリント作業後の後処理/後加工に適した製品の開発・生産能力を有しています。このFA事業を自ら保有する優位性を最大限発揮するとともに、蓄積した有形・無形の資産を源泉とし、プリントに必要となる製品、ソフトウエア、ノウハウ等のご提供を通じて、お客様が制作する成果物の品質までをサポートする取り組みを進めています。また、プリント工程の自動化による省人化・無人化等のノウハウを安定して提供し、お客様の制作プロセスの変革支援につなげる提案を、積極的に行ってまいります。このように、産業印刷における前工程・プリント・後工程までの一貫システムによる、デジタルオンデマンド・プリントのトータルソリューションを提供するソリューションプロバイダーとしての役割を果たし、市場のニーズに的確に対応すべく、特に以下の2領域にフォーカスして取り組んでまいります。

a.デジタルプリントのIoT

 5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが開始され、当社が手掛けているSG(サイングラフィックス)市場、IP(インダストリアルプロダクツ)市場、TA(テキスタイル・アパレル)市場等の産業用インクジェットプリンタ事業の可能性が、大きく広がります。これらの市場に向け、当社が保有するデジタルプリントの前処理装置、プリンタ、インク、カッティングプロッタ、後処理装置、ワークフローソフトまでを含めた幅広い製品ラインナップと、プリント成果物制作プロセスの構築ノウハウを基盤に、プリント工程の自動化による省人化・無人化といった、デジタルプリントのIoTを推進してまいります。

 また、SG市場やIP市場で使用される機能性インクは、従来主流であった有機溶剤系インクから、環境負荷が低く生産性が高いUV硬化型インクへの転換が始まっており、同インクは向こう数年間で市場規模が大幅に増加すると見込まれています。当社は、UV硬化型インクの開発とそれを使用するインクジェットプリンタの開発にいち早く取り組むとともに、当社が保有するUVプリンタ特許技術の活用など、業界での競争優位性を確保しています。

 今後は、これらの優位性を生かし、産業用印刷市場に対してデジタルプリントのIoTとUV硬化型インクを含めた高い生産性を実現するトータルソリューションを提供し、マーケットリーダーとしての地位を確実なものとしてまいります。

b.3Dプリント事業

 IP領域における3Dプリントビジネスにおいては、2017年に発売したUV硬化インクジェット方式で1,000万色のフルカラー造形を世界で初めて実現した3DUJ-553を皮切りに、2021年にはその小型化を実現したエントリーモデル3DUJ-2207を発売する等、着実に製品ラインナップの拡大を進めてまいりました。今後も、お客様の多様なニーズにお応えする製品ラインナップのさらなる拡充に取り組むとともに、有力な3Dソフトウエアメーカー等を含めた幅広いパートナーシップ構築を進めフルカラーによる3D造形の市場成長を加速させるなど、多様な用途やアプリケーションの提案等に取り組み、3Dプリントを当社の次の事業の柱として育成してまいります。

②インク品質のさらなる向上

 当社グループにおいて、競争力の源泉である機能性インクの品質安定・向上は最重要課題であります。そのため、機能性インクの開発・生産・検査工程の見直しに取り組んでまいります。具体的には、設計評価・サービス評価・営業評価における基準を明確化して評価項目を見直すとともに、製造現場においてもインクの材料単位での品質チェック強化などにより、製品品質を高めてまいります。また、市場での品質問題発生時の情報早期フィードバックや見える化により、迅速な対応を実現してまいります。加えて、これらの取組みの前提として、不具合が発生した際の要因をより正確かつ迅速に把握し、的確な対策が実施できるよう、原材料の受け入れ段階、生産、出荷までの各時点での膨大な検査データを収集・蓄積し、適切に分析したうえで、生産工程から検査工程までの各段階での工程を改善するプロセスを、一層強化してまいります。以上の取り組みにより、インク品質のさらなる向上による競争力強化を図ってまいります。

③リスクマネジメントへの取組み

 近年の事業環境下では、想定を上回る規模の自然災害や新型コロナウイルスに代表される感染症の発生等に加え、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスクの顕在化により、事業継続計画(BCP)の重要性が増しています。大規模な自然災害が発生した場合でも、被害を最小限にとどめ、復旧までの時間を最小限におさえて業務を継続できるよう、業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋をはじめとする各設備の防災対策等について見直し・強化を行ってまいります。また、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの発生に際しては社会全体での取り組みが必要となりますが、当社グループとしても、役職員を始め地域やステークホルダーの皆様の安全確保と感染症拡大抑止を最優先に、適切な対策を検討・実施してまいります。さらに、地政学的なリスクの顕在化に伴う需要の低迷や部品・原材料等の調達難とコスト上昇、生産の遅延や輸送の混乱によるリードタイムの長期化とコスト上昇等のサプライチェーン全体に係る諸課題に対しても、適切なリスク評価に基づき最適な対策を検討・実施してまいります。

④生産・物流体制の改善

 当社グループにおいて、グローバルなお客様が求める商品・サービスを最適なタイミングで効率的にご提供するとともに、感染症拡大や地政学的リスクの顕在化等の影響による船舶及び陸上での輸送リードタイムの長期化や、物流コストの上昇への適切な対応により、売上、利益、キャッシュフローの最大化を図ることは重要な経営課題です。そのために、グローバルでの需要変動に柔軟に対応できるよう、販売、物流、生産・調達などの各機能を密接に連携させ、週次での生産管理を実現する体制整備に加え、製品ごとに最適な生産地で生産して効率的かつ機動的な物流・在庫マネジメントを実現するサプライチェーンの再構築を、プロジェクト体制で進めてまいります。また、グローバルでの在庫マネジメント再構築への取組みとして、エリア在庫の効率化を目的としたNRI(Non-Resident Inventory)倉庫の設置も進めており、今後の機動的な在庫マネジメントの確立につなげ、機会損失の最小化とコスト競争力の確保及び適正在庫の実現に取り組んでまいります。さらに、2022年4月に長野県上田市に新たに設置した丸子工場を活用し、本社・加沢工場における産業用インクジェットプリンタ本体の生産スペース不足を解消し、エントリーモデルからハイエンドモデルまでの多岐に渡る生産能力を増強し、今後の事業拡大に対応してまいります。

⑤研究・開発体制の強化

 当社グループは、コロナ禍を経て顕在化した市場ニーズや顧客志向の変化を見据え、製品開発でイノベーションを起こし、新規市場・新規アプリケーションの開拓に取り組んでまいります。具体的には、今までの開発計画を全面的に見直し、新しい市場向けのプライオリティを上げる取り組みとして、販売している製品の25%以上が3年以内に開発した製品とすることや、効率的な研究・開発体制のもとで優れた製品をタイムリーに市場投入するため、要求機能に対し、あらかじめ準備された製品・ユニット・部品・技術情報より適切なものを選び、組合せにより新しい製品を開発するモジュール開発により売上高の拡大と同時にSKU=在庫の削減につなげること等に取り組んでいます。また、基盤となる製品プラットフォームを横展開して、短期間で効率的に新製品を投入する開発プロセスを確立し、開発サイクルの短縮化を進めています。これらの活動の結果、2022年3月期から2023年3月期にかけて合計12機種の新製品を発表し市場投入するなど、既に具体的な成果に繋がっていますので、今後もこの取り組みの一層の強化・充実を図ることにより、「新しさと違い」を出せる製品の市場投入を進めてまいります。

⑥CX(コーポレート・トランスフォーメーション)

 当社グループは「Mimaki V10」で定めた目標を達成するために、会社の構造そのものの変革に取り組んでまいります。具体的には、固定費の圧縮と事業体質の筋肉質化に向け、固定費の投入を押さえつつ、RPAを導入して仕事の棚卸と自動化・AI化を進めてまいります。また、資金効率を向上させ財務体質を強化するとともに、フリーキャッシュフローの最大化を目的としたCCCの短縮活動にも取り組んでまいります。当期は、前期に発生した部品・原材料不足に伴う調達最優先・機会損失回避のオペレーションの結果、増加した製品・商品在庫の圧縮に全社をあげて取り組むことにより、CCCの短縮を進めてまいります。これに並行して、リードタイムを考慮した適正在庫水準のルール作りも進めてまいります。さらには、グローバルマネジメント体制の強化が重要課題であると認識し、子会社管理の強化、基幹システムや会計システム、人事制度等のグローバルな見直しとともに、業務の標準化やルールの明確化等を含めた管理強化に取り組んでまいります。加えて、為替リスクの低減に向けた施策にも取り組んでまいります。

⑦営業体制の変革

 当社グループはグローバルなお客様の多様なニーズにお応えするため、国内営業拠点及び海外販売子会社において、個々の地域特性に合致した販売戦略のもとで、新規ユーザーの開拓、製品の用途提案、製品導入後のアフターフォローや迅速な保守サービスの提供等、地域密着型の営業活動を推進し、顧客満足度の向上に努めてまいります。また、従来取り組んできたリアルな場でのミニ展示会によるチャネル・顧客との商談に加え、コロナ禍影響による顧客接点の変化に対応するために取り組んだWebを通じたバーチャルミニ展の展開により、お客様へのご提案や商談などを効率的・効果的に行う営業活動を継続して実施するとともに、新たなチャネル・顧客接点として製品/市場/販売ノウハウ/導入事例等をお伝えする「Mimaki Innovation Days」を、2022年3月期から2023年3月期にかけてWebを通じて計4回開催いたしました。加えて、インサイドセールス機能の強化を通じ、SFAやCRMを活用した営業分析により既存・見込客への営業活動状況を記録・管理して顧客接点を拡大するとともに、顧客からの引き合いプロセスの管理により着実に成約に繋げる活動など、ITの進化を活用した営業活動のオンライン化にも、積極的に取り組んでまいります。また、顧客へ向けての販売チャネルにつきましても、従来のSG市場向け主体のチャネルの強化・拡大による№1シェアの獲得・維持に加え、新規のチャネルとしてIP市場、3D市場、プロダクション機、エントリーモデル、カッティングプロッタにおいて、それぞれの領域での販売拡大に適したチャネルの開拓・構築を進めるとともに、自動化・省人化ソリューションの提供に向けたパートナーシップ構築により、産業用印刷のデジタル化提案を一層強化してまいります。

⑧内部統制・コンプライアンスの徹底

 企業の社会的責任として、内部統制及びコンプライアンスに徹底して取り組んでまいります。関係法令・規則の遵守はもとより、お客様の情報管理等に対するセキュリティーポリシーを確立し、役職員一人ひとりの高い倫理観の醸成、社会的良識を持った責任ある行動を目指して社内教育を行ってまいります。とりわけ、2023年3月期第3四半期決算の過程で、当社欧州子会社であるミマキヨーロッパ(オランダ)の販売取引において、EUによるロシア向け制裁措置違反の可能性がある事が判明した事案につきましては、当社及び子会社におけるレギュレーションチェック体制の不備、欧州において製品分類を行うCNコードの誤り、販売店による第三国出荷を止める仕組みの欠如、社内管理体制(レポートライン)の不備、コンプライアンスポリシーの不備等が原因であると分析したうえで、各事項に対する再発防止策を策定し、全社をあげて取り組んでまいります。また、反社会的勢力との関係に対しては、断固とした対応で臨むことにより一切の関係を遮断し、コンプライアンスに則った経営を行ってまいります。

⑨知的財産戦略の強化

 自社ブランド製品を開発・製造・販売する開発型企業である当社にとって、知的財産戦略は競争力を確保し、独自性を守り、持続的な成長を実現するために重要かつ欠くことのできない要素です。とりわけ、自社の知的財産を適切に保護するために、特許、商標等の権利の適切な登録・保護手続きを行い、他社による模倣や侵害から自社製品やブランドを守る必要があります。当社では、技術本部に知的財産部を置いて知的財産権の登録・保護活動を進めておりますが、今後当社の市場での競争力を一段と強化するために、製品の企画・開発から量産に至る各段階において多くの権利を出願・登録できるように知的財産権権利化プロセスを変革し、持続的な成長の実現に取り組んでまいります。

⑩SDGsへの取組み

 2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」において、人間及び地球の繁栄のための行動計画として「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられました。当社グループもこの目標に賛同し、さまざまな社会問題に真摯に向き合うとともに、事業を通じて社会や環境に良い影響をもたらすことで、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。特に、気候変動などの地球環境問題への対応も重要な経営課題として捉え、とりわけ産業印刷市場においては環境や資源への負荷の高い従来のアナログ印刷主体の産業構造から、デジタル化によるオンデマンドプリントに転換させることにより環境負荷を大幅に低減できることから、今後の製品開発を含む事業活動において環境に配慮した製品展開を推進するなど、積極的に取り組んでまいります。また、2050年カーボンニュートラルという政府指針を踏まえ、当社グループが脱炭素社会の実現に向けた環境課題の解決に一層貢献することを目指し、一部賃借物件を除く国内の当社グループ全事業所において、CO2フリー電力を導入いたしました。今後もこのような取り組みに加え、設備更新を含めた省エネ活動の強化、バリューチェーンでの環境負荷低減など、より環境に配慮した事業活動を推進し、地域貢献、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ESG関連取組の考え方及び状況

① 全社としての取組状況について

 経営にあたり、企業としての持続可能性、そして社会・環境の持続可能性の向上は、当社として常に意識して取り組まなければならない重要課題であると認識しています。その対応として2022年4月にSDGs推進室を設置し、SDGs推進会議にて課題の整理と、その対応の進捗確認を行う体制を整えました。その成果として、全社のサステナビリティ関連取組の現状把握を通じた足場の整備が挙げられます。主要な開示基準が盛んに議論されている今、求められる要件に柔軟に対応しつつ、さらに充実した開示を行うことが今後の課題です。

 当期は(1)環境負荷削減の取組、(2)人的資本関連取組を含むステークホルダーへの還元、(3)そして事業活動を適正に実施・維持するためのガバナンス、この3点を含むサステナビリティ関連対応状況を整理し、部署をまたぐ課題にも効率的に対処できる体制を構築しました。これまで各部門が別個・独自に推し進めてきた活動の全容を統括し、経営層を含む全本部長参加のSDGs推進会議を通じて進捗把握・改善対策が効果的に行われました。

 当社のESG対応状況の総括としては、領域により体制・活動の濃淡・不足はあるものの、網羅すべき領域に広く意識が向いていると言えます。今後の効果的な取組加速に向けては、各種団体・機関の議論を参考に、カバーすべき分野の漏れがないよう継続的に情報を収集しつつ、全社的な最重要課題の絞り込み、すなわちマテリアリティー特定とその対応計画立案に向かう必要があります。

 

② 当社の環境対応

 これまで各本部で多様な個別課題に取り組んでいる環境関連分野においては、「無駄を減らす技術・運営・ものづくり」がキーワードであると言えます。

 当社の売上の多くを占めるインクジェットプリンタは、「必要な時に必要な分だけ」の印刷・生産を可能にします。これは従来のアナログ印刷と比較して、環境負荷の面でも管理・運営の面でも、使用者にとって持続可能な特徴です。このインクジェットプリンタを使用して行うデジタル・オンデマンドプリントは、リードタイムの短縮によりジャストインタイムの生産を実現し、廃棄物の削減に貢献します。印刷箇所にのみインクを吐出することで、インクや水の大量消費という課題も解決します。当社の主力製品であるインクジェットプリンタを武器に、「市場に新しさと違いを提供する」経営ビジョンに則って活動を行うことが、技術力による環境負荷削減への貢献に繋がると考えています。

 そのような技術の開発や普及促進に加えて、国内の多くの拠点におけるCO2フリー電力導入や省資源設備の導入により、一般管理の面でも、限りある資源を「必要な時に必要な分だけ」使用する、省エネ・省資源の徹底を推進しています。

 同時に、製品包装等に使われる資源についても対応可能な製品から順次、使用量の削減に取り組んでいます。後述の気候変動対応にあたり分析を行うなかで、中・長期的に製品コストに直接関係するリスクの発生が予想されました。運営における省エネ促進に加え、設計・調達・生産・出荷過程で無駄を極力減らすことで、環境対応を通じたリスクヘッジを目指します。

 技術力によるお客様先での環境負荷削減貢献、企業運営における省エネ・省資源化の加速、そしてものづくりにおける無駄の排除を引き続き実行するため、社内の意識を継続的に高めて、各本部の連携による統合的なサステナビリティ向上を目指しています。

 

(2)サステナビリティに関する取組

① ガバナンス

 当社はサステナビリティに対する取組を推進するため、2022年4月にSDGs推進室を開設しました。経営企画本部内の組織となっていますが、全社統括できる位置づけで主幹として毎月SDGs推進会議を開催します。この会議は、社内取締役と一部執行役員を含む各本部責任者で組織されており、全社的な推進体制を整備しています。財務・経営に大きな影響のある事案については、取締役会へ適宜報告を行っています。

 SDGs推進室の設立を機に、これまで各本部が取り組んできたESG関連活動を整理した結果、効率的な活動推進が可能になりました。SDGs推進会議で進捗報告や議論を行い、関連部署をまたぐ複雑な課題の対応も組織的に進めています。

 同時に、全社横断体制で気候変動に関する議論を深める必要性から、当期は全本部よりメンバーを選出して「TCFDプロジェクト」を立ち上げました。全社的な視点で気候変動関連課題の分析、財務的影響の算定等を実施し、多角的に当社の状況を把握したことで、中・長期的に取り組むべき課題が明確になりました。この内容は、取締役会の承認を得て対策計画の立案・体制整備等に移ります。

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② 戦略

 サステナビリティ領域における具体的な取組内容は、次の表のとおりです。

 当期は現状把握と体制整備、そして取組の継続対応を行いました。表に示している内容は、SDGs推進室・SDGs推進会議の発足以前からの取組と、発足時にCO2排出量及び資源利用量削減のために開始した取組内容を整理し、ESG分類に当てはめて見直した結果です。今後、その他に網羅すべき領域を検討したうえで、取組の不足している、あるいは改善余地のある分野の課題を優先付け、すなわちマテリアリティーを特定し、その進度を測る指標と具体的な数値目標、そして達成のための計画を決めてまいります。

 

 

<サステナビリティ領域の取組内容詳細>

*下記の一覧には組織として当期以前より、恒常的に実施している取組や体制についての情報を含みます。

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*取組内容の多くは、第14期 長野県SDGs推進企業として当社ウェブサイトで開示している具体的な取り組み(様式第3号)より抽出しています。

 

<社会貢献活動>

 当社は、地元企業として主に長野県の地域社会への還元に力を入れています。

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③ リスク管理

 当社の全般的なリスク管理は、管理本部が統括し、その体制を含めて社長の直轄部署である監査室が内部監査を行っています。

 サステナビリティ関連リスクはこれまで主に、製品開発や生産、発注等の過程における課題の解決が、当社としての事業の持続可能性にも資するという観点で各部門が個々に抽出してきました。抽出したリスクは、各部が部門の業務計画に織り込んで対応してきましたが、当期よりSDGs推進会議が包括的な識別・評価・管理プロセスを担っています。引き続き、実際の対応は各部門が行います。

 気候関連リスクは、管理本部内の総務部及びSDGs推進室を中心に対応を行い、管理等はその他リスクと同様に月次のSDGs推進会議で行います。また、気候変動が事業活動にもたらす中長期的な財務的リスク・機会に関しては、TCFDプロジェクトを立ち上げて識別・評価を行いました。

 SDGs推進会議では、期初に設定した目標値に向けて、関連部署との定期的な情報共有・更新を兼ねて取組の進捗と課題を報告し、適宜方向修正を行います。当期は体制を整える期として、これまでの取組を整理・加速させつつ、対応不足領域を洗い出す機能も備えました。

 

④ 指標及び目標

 現在、開示の可能な指標は温室効果ガスの排出量(Scope 1・2)です。Scope 3を含む、その他の指標・目標については2023年度以降、全社のマテリアリティーを特定した上での開示・設定を目指しています。

 

・温室効果ガス(GHG)排出量

 2021年度より国内主要拠点において、CO2フリー電力への切替えを実施しました。一部の賃貸物件では未実現ですが、それ以外の海外拠点について、今後の切替えが可能かも含めて検討します。

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*「GHG排出量 / 全社」グラフには、下記の子会社の数値が含まれておりません。今後、データを収集し条件を揃えて算定を検討いたします。

㈱楽日、㈱マイクロテック

*排出量の数値は、算定範囲や算定に使用するCO2排出係数等により、後に変更となる可能性があります。

 

(3)気候変動への対応(TCFD提言への取組)

 当社は、気候変動問題が事業にもたらす影響を重要視し、TCFD -気候関連財務情報開示タスクフォース-の提言に基づく情報開示を進めてまいります。

 

① ガバナンス

 (2)サステナビリティに関する取組①ガバナンスをご参照ください。

 

② 戦略

 下記の手順で、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク・機会特定と財務的影響の算定、対応策の検討を行いました。

■手順

1

前提条件の設定

分析対象範囲(地域、事業)、時間軸の設定

2

リスク・機会の特定
事業インパクト評価

TCFD提言で挙げられている、低炭素経済への移行に伴う4分野のリスクと、気候変動の物理的影響に関連した2分野のリスク、そして気候変動への適応・緩和策に関する5分野の機会から事業継続において想定される影響を特定。「影響を受ける可能性」と「影響の大きさ」を点数化し、事業インパクトの大きいリスク・機会を抽出し、重要度を評価

3

シナリオ分析

2で特定したリスク・機会のうち、影響度が高いと推定されるものについて

2℃以下・2℃以上の各シナリオにおける当社事業への財務的影響を算定

4

対応策の検討

3の結果、事業インパクトの大きいリスク・機会について対応策や方針を検討

 

■移行リスク・物理リスク、機会

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*出典:TCFD「最終報告書 気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(2017年6月)」

 

■採用シナリオ

 分析には、移行リスクの面で国際エネルギー機関(IEA)によるSTEPSならびにSDSシナリオ、物理リスクの面で気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP8.5及び2.6シナリオを採用しました。

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*出典:環境省「IPCC第5次評価報告書の概要 -第1作作業部会(自然科学的根拠)- (2014年12月版)」*GHG:温室効果ガス

IPCC「第5次評価報告書」のRCP8.5シナリオ、RCP2.6シナリオ

IEA「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」のSDSシナリオ、STEPSシナリオ

 

■シナリオ分析の結果

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■レジリエンスの向上

 シナリオ分析の結果、今後の大きな気候変動関連リスクとしてコストの上昇(レピュテーション低下による人材不足対応を含む)、異常気象による調達難、そして機会としてはデジタル・オンデマンド印刷需要の増加が挙がりました。

 具体的には、炭素税の導入やそれに伴う材料・エネルギーの価格高騰など、製品コストにかかわるリスクの発生が予想されました。対策として、コスト削減と同時に資源利用量の削減を進めるべく既に取組を開始しています。主な内容としてはインクや保守部品の梱包に使われるプラスチック緩衝材・段ボールの削減、それに伴う積載効率向上による出荷時の使用コンテナ数の削減、国内の主要拠点におけるCO2フリー電力や省資源設備の導入、そして製品であるマシン本体の設計・生産における使用部品数の削減、さらに環境負荷の低減・資源循環への貢献を可能にする新技術の開発・普及への尽力により、企業運営の面でも「必要な分だけ」使用する、省エネ・省資源徹底を当期から強化しています。

 省資源化や省エネ促進に加え、環境負荷低減の取組への意識を社内で継続的に高め、今後は災害を含む異常事態に柔軟に対応できる体制を平素から整えることで、調達難を含む想定外の事態の影響を最小限に留めるために備えていきます。このためには、今後のサステナビリティ全般におけるマテリアリティー特定と目標達成のための計画実行が重要となります。

 レピュテーションリスク低減のためにも、今後、当社の技術がもたらす環境改善・維持への具体的な効果・メリットや、ESG対応全般の情報開示を充足させていくことで、社内外に当社の気候変動対応への対応姿勢を持続的に発信していきます。

 最後に、当社の強みであるインクジェットプリンタはアナログ印刷の課題を解消します。従来の方式では欠かせない版を使った大量生産を行うと、余剰在庫の発生リスクを抱え、さらには版・在庫を保管する倉庫の管理も必要となる可能性がありますが、デジタル・オンデマンドプリントを使うことでそれらの懸念を払拭できます。気候変動対応の緊急性が叫ばれる中で、大量生産・大量消費からの脱却に資するこの技術がもたらす価値は、向上し続けると推測しています。この技術・製品の普及に尽力することで、当社はお客様先のビジネスの支援と同時に、環境負荷の削減、管理面の負担軽減をもサポートしています。その取組の拡大は、社会課題の解決の一助になると考えています。

 お客様の持続可能なデジタル・プリンティングビジネスを支え、各本部によるリスクの低減・緩和と機会の最大化を通じて統合的なサステナビリティ向上を目指すことが、全社的なレジリエンス強化に繋がると考えています。

 

③ リスク管理

 当社では、気候関連のリスク・機会を全本部より選出されたメンバーからなるプロジェクトチームで識別・評価し、社長をはじめとする社内取締役・一部執行役員と各本部責任者で組織するSDGs推進会議、ならびに取締役会への適宜報告により管理しています。

リスクの抽出

評価・分析

対策・管理

TCFD最終提言ほか各機関の提言・発表等を参考に、マシン本体を取り扱う国内拠点を対象として気候変動関連リスクを抽出。

抽出したリスク・機会がもたらしうる事業への影響を点数評価しシナリオ毎に想定されるインパクトを分析。

そのなかで、影響度が大きいと推定される項目の財務的影響を算定。

財務的影響を算定した項目におけるリスク軽減ならびに機会増大のための対応策を検討。

SDGs推進会議、ならびに取締役会へ適宜報告し、対応策の承認を得て実際のリスクマネジメントやBCP策定に活用する。

目標と達成計画の策定後、経営計画に反映し毎月のSDGs推進会議でPDCAサイクルを回す。

 

④ 指標及び目標

 GHG排出量については(2)サステナビリティに関する取組④指標及び目標を参照ください。

 

(4)人的資本関連の取組

① 戦略

(基本的な考え方)

 経営ビジョンに「開発型企業」「イノベーター」をありたい姿として掲げる当社にとって、多様な価値観を有する「人材」こそ最大の経営資源であり、製品開発・製造・販売の根幹であると認識し、中核人材の確保を積極的に推進しています。併せて、ダイバーシティの推進、特に女性活躍推進やジェンダーギャップの解消、働き方改革の推進や働きやすい環境づくり、管理職を含めた意識改革などを進めています。また、教育体系の充実を図り、各人の能力を最大限発揮できる企業風土の醸成に取り組んでいます。

 こうした企業風土の醸成には、社員と経営との情報共有や意見交換が重要であり、社員代表と経営層で構成される「社員経営者協議会」を毎月開催して、社員の要望や意見の確認、施策の状況説明等を行っています。また、人的資本経営に関する重要事項については人事担当役員から取締役会へ適宜報告を行い、必要情報の共有を行っています。

 

 主な戦略は以下になります。

(中核人材の確保)

 「開発型企業」「イノベーター」を目指すために、中核となる人材の育成・確保は重要な経営課題であり、必要な人材の要件を明確にして、人員計画ならびに採用計画の立案・実行に取り組みます。

・職種に応じた適材適所の考え方を基本に、人材の多様性を考慮しつつ、採用活動を積極的に進めています。具体的には、キャリア採用は製品開発力の強化・新事業テーマの取組、営業戦力の強化、管理部門の強化に向けた「即戦力」を、新卒採用は中長期的視点から開発・営業の中核を担える「将来戦力」を確保します。

・処遇や評価の納得性を高め、組織の活性化を図るために人事制度の見直しを進めるとともに、教育体系の充実や職場環境の改善に取り組み、中核人材の確保・定着を進めます。

 

 

(多様性の確保)

 多様な人材が活躍できる環境を整え、「各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土」の実現を目指して取り組みます。

・多様な人材の活躍、特に女性活躍推進は重要課題と認識しています。女性管理職比率は、会社組織の拡大もあり2019年度4.1%から2022年度2.3%へ低下していますが、女性管理職を展望した育成研修への参加やダイバーシティ研修等を通じた従業員の意識改革を行い、女性管理職比率の適正な向上を目指します。

・また、女性社員比率は2022年度22.1%で製造業では相応の水準にはあるものの、上記と同様の理由から2021年度24.0%から低下傾向にあります。採用面においては女性応募者の増加を図るべく活動を行っており、職場環境面では女性が働きやすい職務の整備や女性社員の声が反映できる仕組みの整備を進めています。

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・当社は、人事制度上、役割等級制度を導入しており、賃金体系上は男女間の賃金差を設けていませんが、2022年度で男性100%に対して女性71.9%の賃金格差が存在しています。これは管理職の男性比率が高いこと、給与の高い階層における男性比率が高いこと等が要因であると考えていますが、女性管理職比率や女性社員比率の向上等により、改善を進めていきます。

   ※1 年度は年度末時点です

   ※2 従業員数は単体+国内子会社出向の正規雇用・非正規雇用社員の合計です

   ※3 女性管理職比率は管理職全体に占める女性管理職の比率、女性社員比率は全従業員(※2)に占める女性社員の比率です

 

(教育体系の充実・人材育成の強化)

 人材確保と併せて、教育体系の充実を図り、人材育成の強化に取り組みます。

・階層別教育の充実…新任管理職研修、中堅社員研修、サブリーダー研修等を人材育成の中核と位置づけ、新規の研修や国内グループ会社への対象拡大等、内容の充実・定着を図ります。

・専門教育の拡充…各本部で選定したテーマ(営業本部:営業担当向け営業テクニック研修等)に基づき、計画的に専門教育を実施しています。また、社内リソースだけでは対応が難しい専門教育については、外部教育機関との連携や当社グループ会社を活用します。2022年度には信州大学と「リスキリング教育短期プログラム契約」を締結し、2023年度は技術教育講座を実施します。また、連結子会社である㈱マイクロテックによる「DX人材研修」等を実施して、社員個々人の知識やスキルの向上を進めます。

・有益な資格取得に関わる取得費用や報奨金を支給する資格取得報奨制度の運営により、社員個々人の成長を継続的に支援します。

 

(職場環境の改善・福利厚生制度の充実)

 ワークライフバランスに配慮した職場環境、福利厚生制度の充実に加え、事故防止等安全・安心にも配慮した職場環境の実現に取り組みます。

・有給休暇の取得日数…2023年度から1週間連続して有給休暇が取得可能な「リフレッシュ休暇」制度を導入しました。一人平均有給休暇取得日数は2022年度実績で12.9日と、製造業では相応の水準にあるものの、有給休暇のさらなる取得日数増加及び有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組みます。

・時間外労働…一定期間における一人平均時間外労働が多い部門は、人事部から改善計画の策定を指示、定期的に取り組み状況を確認し、時間外労働の縮減を進めます。

・男性育児休業の取得率…人事部に相談窓口を設置し、職場・本人への制度周知や休暇取得の促進に取り組んでいますが、2022年度の取得率は65.4%に留まっています。固定的な性別役割分担意識からの脱却や男性の育児に対する意識の変革、育児との両立、働きやすい環境作りを進める中で、取得率の改善を進めます。

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・事故防止・安全衛生…安全衛生委員会を中心に横断的な活動を行い、定期的なリスクアセスメントの実施や事故防止に取り組んでいます。また、各本部・部門単位で独自にテーマ選定を行い、幅広く職場の課題解決を行う5S活動を展開していきます。

  ※1 年度は年度末時点です

 

② 目標及び指標

・重点的に取り組む指標ならびに目標は以下のとおりです。今後、各カテゴリーにおける取り組みの有効性・有益性等の検討を行い、適切な指標ならびに目標を設定していきます。

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3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある認識しているリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)製品の欠陥について

 当社グループは、自社開発の製品を主な商材としておりますが、製品の不具合が発生した場合には、その修理や補償に係るコストに加えて製品開発計画に遅れが生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。品質問題がやむなく発生してしまった場合の対応策としては、誠実かつ的確な顧客対応を行うとともに、発生の原因究明と対策を速やかに実施することと併せて、再発防止策を策定し実行いたします。なお、当社では製造物責任賠償保険に加入しております。品質問題を発生させないための対応策としては、設計・製造・サービスの各部門の課題を明確にして取り組むとともに、品質改善を経営の最優先事項としてプロジェクト体制で推進し、より実効性のある対策を展開して品質コストの低減を進めてまいります。

(2)コスト競争力について

①原材料の調達について

 当社グループの製品は、プリントヘッド、電装部品、機構部品、インク染料等の原材料から構成されております。原材料の調達にあたって何らかの理由で現仕入先からの調達が困難になる可能性や、市況動向等の影響による価格上昇の可能性があります。当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、一部原材料の調達が困難な状況が継続するとともに、原油を含む各種燃料価格や素材・原料価格上昇に伴う歴史的なインフレの影響等により、当社での原材料調達価格も全般に上昇しております。これらの要因は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、サプライチェーンの見直しに向けてプロジェクト体制による調達力の強化に取り組み、地政学的リスクも勘案した調達先の見直しや複数の確保等によるリスク分散を進めてまいります。また、設計段階における部品の共通化・点数削減、作業の効率化等による原価の抑制にも、継続して取り組んでまいります。

②生産計画について

 当社グループは、主に見込み生産の形態をとり、需要予測の変動に追従して生産計画の見直しを行っております。需要予測の変動が正確に生産計画に反映されない場合や、販売実績が需要予測を大きく下回る場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、発注・受入・組立・出荷・着荷の連動性を高めることで需要変動に柔軟に対応できる生産システムの構築に取り組んでまいります。

 

(3)製品開発について

 当社グループは、新製品の開発を成長の源泉としている一方、新製品開発に際しては、試作部材、労務等の研究開発費が先行的に発生いたします。新製品開発が計画どおりに進捗せず、研究開発費が増加した場合や、開発遅延により売上高の減少等が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策としては、先進的で効率的な開発手法を常に取り入れるとともに、開発技術のノウハウを内部蓄積させることにも取り組んでまいります。加えて、新たな技術開発へのチャレンジやプラットフォーム設計の推進等により、効率的な新製品開発に取り組んでまいります。

(4)海外における事業展開について

①海外情勢の影響について

 当社グループは、売上高の約7割を海外市場が占めており、今後も海外での販売強化により売上高成長を目指す方針としております。また、生産についても既にアジア(中国、台湾)と欧州(オランダ、イタリア、リトアニア)の工場で産業用インクジェットプリンタ及びインクを製造しており、今後も海外適地での生産体制を構築・増強する方針としております。そのため、主要な海外市場における経済情勢の悪化、進出国の諸法令・規制・税制等の変更、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスク等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度においては、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中国での新型コロナウイルス感染症拡大に伴う都市封鎖等により、当社製品の原材料調達、生産、輸送、販売等のサプライチェーンへの影響が顕在化する等、地政学的リスクへの対応が急務となっております。当該リスクへの対応策として、グローバルでの情報収集や管理体制、リスクマネジメント体制の強化に加え、サプライチェーンの見直しに向けたプロジェクト体制での取り組みを進めてまいります。

 なお、当社では2023年3月期第3四半期決算の過程で、当社欧州子会社であるMimaki Europe B.V.(オランダ)の販売取引において、EUによるロシア向け制裁措置違反の可能性がある事が判明いたしました。本件の詳細につきましては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。

②為替変動リスクについて

 当社グループは、海外生産に比して海外販売の比率が高い状況にあります。そのため、想定を超えて急激に為替が変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、為替管理の専門部署を設けてデリバティブ等により短期的な為替リスクのヘッジに努めるほか、外貨建て売掛金の早期回収により外貨建て債権を減らす取り組みや、インク等消耗品の消費地生産を推進して中期的な外貨ポジションの改善に努めてまいります。

(5)競合等について

 当社グループの主力製品である産業用インクジェットプリンタは、既存市場において大手企業や新興国企業等の市場参入が増加しております。現時点では、当社グループの製品に技術面、品質面等の優位性があると認識しておりますが、競争環境が激化して価格低下圧力に晒された場合や市場シェアが低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、地域密着型の営業活動を徹底して顧客ニーズを汲み取るとともに、革新的な新製品を継続的に上市できるように取り組んでまいります。

(6)人材の確保について

 当社グループは、開発型企業及びグローバル企業としての成長を志向するため、製品開発を行う人材とグローバル適応のできる人材の持続的な確保・育成が必須と認識しております。これらの人材が大きく不足する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、人的資本に係る戦略に基づき、人事制度の適切な見直しや採用活動のグローバル展開に取り組んでまいります。

(7)金利変動リスクについて

 当社グループは、主に金融機関からの借入金等によって設備資金及び運転資金の一部を調達しており、有利子負債依存度は当連結会計年度末で41.3%となっております。そのため、急激に金利変動等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、経理部門が主導して多様な資金調達方法の検討に努めてまいります。

(8)知的財産権について

 当社グループは、知的財産権に関連して①第三者が当社グループの知的財産権を使用し類似製品を製造することを防止できない可能性、②当社グループの取り扱う製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性、③当社グループが認識しない特許権等の成立で第三者より損害賠償等の訴訟を起こされる可能性、等のリスクが想定できます。これらが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、知的財産権の専門部門を設け、自社が保有する技術について特許権等の取得による保護を図るほか、他社の権利に抵触しないよう取り組んでまいります。

(9)法的規制等による影響について

 当社グループは、国内において製造物責任法、輸出貿易管理令等の規制を受けているほか、事業展開する各国においては、CEマーキング、電気電子機器の特定有害物質使用規制等に加え、関税や移転価格税制等の様々な法令や規制の適用を受けております。これらの規制を遵守できずに当社グループの活動が制限された場合、または規制改正や新たな規制適用による対応のため当社グループのコストが増加した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門を設けて製造業に関連するグローバルベースの各種法的規制等の調査・管理を行うことで、これらを遵守するよう取り組んでまいります。

 

(10)重要な訴訟について

 当社グループは、事業活動を展開する中で、ステークホルダーとの係争案件が発生する可能性がありますが、特に重要な訴訟等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である法務部が主導して弁護士等を交え、円滑な解決に向けて取り組んでまいります。

(11)情報セキュリティに係るリスクについて

 当社グループにおいて、情報セキュリティの脆弱性やサイバー攻撃により、機密情報の漏洩による信頼性低下や信用の失墜、サービスやシステムが停止することによる業務停止や顧客サービスの低下、外部からの攻撃や強迫による金銭的損害や企業イメージの失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である経営情報システム部が主導して、セキュリティポリシーの策定とそれに基づく徹底した情報管理及び社員教育の実施や、システムのバックアップ及びセキュリティ強化による防御力の向上と、脆弱性の監視・対策等に取り組んでまいります。

(12)投資等に係るリスクについて

 当社グループは、単独または他社と共同で新会社の設立や既存会社の買収等を行っております。これら投資等の価値が低下した場合、あるいは追加資金拠出が必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、既存の投資事業に関しては客観的な事業性と成長性の評価とともに、新規の投資事業に際してはリスクとリターンの検証を十分に行ってまいります。

(13)自然災害等の緊急事態について

 当社グループは、長野県東御市に本社・研究開発施設・工場を有しており、この地域に大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの事業活動が停滞することにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、大規模な自然災害が発生した場合も被害を最小限にとどめ、可及的速やかな業務再開を可能にするための事業継続計画(BCP)策定に努めてまいります。

(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等、疫病・感染症の拡大について

 当社グループは、新型コロナウイルスやインフルエンザ等の各種ウイルス等の疫病・感染症が拡大した場合、役職員の出社が困難になったり、世界経済全体が低迷する等により、当社グループの事業活動が停滞して業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、当社グループにおいても、世界経済の低迷による顧客でのプリント需要の急速な減少に加え、事業展開している国や地域における各種規制への対応に伴い、開発・生産・物流・営業等の事業活動に支障が生じ、前連結会計年度において業績への影響が表れており、今後もこのような状況が発生する可能性があります。当該リスクへの対応策として、日頃からの安全・衛生活動により社員の啓蒙と予防に努める等、適切な管理体制を構築し、顧客や取引先並びに従業員の安全確保を最優先とした取り組みを進めております。加えて、事業活動の正常化に向けた対応を迅速かつ的確に進めるとともに、需要変動への適切な対応を図る等により、業績への影響を最小限にとどめる取り組みを、社会情勢を見極めながら適切に実施してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度(以下、当期)における世界経済は、部品・原材料の調達難による製品供給不足やコスト上昇、ロシア・ウクライナ問題を発端としたエネルギーや食糧等の価格高騰に伴う歴史的なインフレの継続に加え、第3四半期後半からは欧米各国での急速な利上げや中国でのゼロコロナ政策とその解除に伴う混乱等の影響により、世界経済の成長減速が徐々に顕在化するなど、厳しい状況が続きました。わが国においては、徐々に経済の持ち直しが見られる一方、インフレの拡大や為替相場の急激な変動による先行き不透明感の増大から、予断を許さない状況が続きました。一方で、世界的に環境問題やデジタル化などのテーマに対する投資は増加しており、これらの分野でのビジネスチャンスが増えているという側面もあり、当社グループでは中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた収益性向上に向けた基盤構築を継続しつつ、新しい技術やサービスを開発/提供することで、競争力を高め持続的な成長を果たすべく取り組んでおります。

 当期の売上高は、半導体を中心とした部材不足及び輸送リードタイム長期化や、ロシア・ウクライナ問題や中国のゼロコロナ政策に伴う販売面への影響等を受けましたが、当社製品への堅調な需要が継続しました。製品市場別には、新製品が好調であったIP(インダストリアルプロダクツ)市場向けに加えて、TA(テキスタイル・アパレル)市場向けでは新興国を中心に大幅に販売が増加、SG(サイングラフィックス)市場向けも主力製品を中心に堅調に推移し、FA事業では基板検査装置がけん引し堅調な結果となりました。品目別では、本体に加えてインク・保守部品も好調に推移しました。一方で、第3四半期後半から欧米を中心に経済成長減速の影響が徐々に顕在化したことから、第4四半期の売上高予想は下方に修正しましたが、通期では堅調な需要に加え為替の円安によるプラス効果もあり、大幅な増収となりました。利益面では、販売機会損失回避を優先した部材調達によるコスト増加や、エネルギーコスト高騰等の影響を受けたものの、コスト上昇に対応するための販売価格見直しを進めたこと等により、売上原価率が若干改善しました。また、事業・営業活動が活発化する中で人件費、研究開発費、販売促進費等を中心に販管費は増加しましたが、費用の効率的な執行に努め、販管費率が改善しました。これらに加え、為替の円安によるプラス効果もあり、営業利益は大幅な増益となりました。

 当期における当社グループの売上高は706億7百万円(前期比18.6%増)、営業利益は42億41百万円(同65.1%増)、経常利益は37億89百万円(同41.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は28億7百万円(同19.6%増)となりました。なお、売上高、経常利益、当期純利益はいずれも過去最高を記録しました。

 また、当期においてトルコの子会社の財務諸表について、「超インフレ経済下における財務報告」(IAS第29号)に基づき会計上の調整を加え、その影響をインフレ会計調整額として営業外費用に計上しました。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。

 当期における主要な為替レートは、1米ドル=135.48円(前期 112.38円)、1ユーロ=140.97円(前期 130.56円)で推移しました。

 セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメントの利益につきましては、セグメント間取引消去の影響により連結損益計算書の営業利益から乖離してしまうため、記載を省略しております。

 (日本・アジア・オセアニア)

 売上高は316億53百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。日本では、IP市場向けが小型フラットベッド(以下、FB)製品を中心に好調な販売が継続して大幅に販売を増やすとともに、SG及びTA市場向けも堅調な伸びを確保しました。FA事業も堅調に推移しました。また、インク・保守部品とも堅調に推移し、全体では大幅な増収となりました。アジア・オセアニアでは、中国がゼロコロナ政策の解除により足下で販売は回復したものの、通年では販売減となりました。しかしながら豪州、タイ、インド等を筆頭に、中国以外のほぼ全ての国と地域が大幅に販売を伸ばし、特にTA市場向けが各国で大幅に伸長するとともに、SG及びIP市場向けも好調に推移し、本体のみでなくインク・保守部品も好調となり、エリア全体での大幅増収につながりました。

 (北・中南米)

 売上高は189億68百万円(同33.0%増)となりました。北米では、IP市場向けで小型FB製品に加えて、大型FB製品も好調で大幅な販売増となり、SG及びTA市場向けの販売も好調に推移しました。第4四半期は売上高予想下方修正前の水準までは挽回できませんでしたが、全般に為替のプラス影響もあり、通期では大幅増収となりました。中南米では、ブラジルやメキシコを中心に、SG及びTA市場向けが好調に推移する等により、エリア全体で大幅増収となりました。

 (欧州・中東・アフリカ)

 売上高は199億84百万円(同11.1%増)となりました。ロシア・ウクライナ問題に伴う売上のマイナス影響を受けたものの、ドイツ、イタリア、イギリス、ポルトガル、スペイン、フランス等の主要国の全てにおいて好調に推移しました。TA市場向けは販売減となったものの、SG及びIP市場向けは好調に推移し、インクの需要も好調でした。第4四半期は売上高予想下方修正値並の水準となりましたが、全般に為替のプラス影響もあり、通期では増収となりました。

 

[市場別売上高]

 

売上高(百万円)

構成比率(%)

対前年増減率(%)

S G 市 場 向 け

28,451

40.3

15.2

I P 市 場 向 け

20,132

28.5

24.0

T A 市 場 向 け

6,611

9.4

20.0

F  A  事  業

4,650

6.6

4.1

そ     の    他

10,760

15.2

25.2

合           計

70,607

100.0

18.6

 

(SG市場向け)

 売上高は284億51百万円(前期比15.2%増)となりました。本体では、主力のミドルレンジモデルやエントリーモデルのJV/UJV100、新製品CG-ARシリーズを投入したカッティングプロッタが好調に推移し、同じく新製品であるフラグシップモデルJV/CJV330も販売増に貢献しました。またインクの販売も好調に推移しました。

(IP市場向け)

 売上高は201億32百万円(同24.0%増)となりました。本体では、ラインナップを更新した主力の小型FB製品の販売が大幅に伸長し、大型FB製品も好調に販売を伸ばすとともに、本体に加えインク・保守部品の販売も好調に推移し、全体で大幅な販売増となりました。

(TA市場向け)

 売上高は66億11百万円(同20.0%増)となりました。本体では、エントリーモデルのTS100が中南米やアジアを中心に大幅に販売を伸ばすとともに、主力のミドルレンジモデルも好調に推移し、全体で大幅な販売増となりました。また、インクも顧客の稼働率上昇に伴い、大幅に販売が増加しました。

(FA事業)

 売上高は46億50百万円(同4.1%増)となりました。基板検査装置や金属加工は伸びたものの、半導体製造装置や基板実装装置等は販売が減少しました。

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度における資産の残高は、697億89百万円(前連結会計年度末608億57百万円)となり89億32百万円増加いたしました。流動資産の残高は、536億92百万円(同474億95百万円)となり61億97百万円増加いたしました。これは、輸送リードタイム長期化の継続による影響や、販売の拡大に対応した在庫確保のオペレーションを進める中で、第4四半期の販売が想定ほど伸びなかったことにより、商品及び製品が増加したこと等によるものであります。また、固定資産は160億97百万円(同133億62百万円)となり27億34百万円増加いたしました。これは、主に会計方針の変更による使用権資産の増加や、丸子工場の追加工事等に係る建設仮勘定の増加等があったことによるものです。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

(負債)

 当連結会計年度における負債の残高は、477億33百万円(同421億40百万円)となり55億93百万円増加いたしました。流動負債の残高は、401億44百万円(同323億29百万円)となり78億15百万円増加いたしました。これは、短期借入金の増加等があったことによるものであります。固定負債の残高は、75億89百万円(同98億10百万円)となり22億21百万円減少いたしました。これは長期借入金の減少等があったことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度における純資産の残高は、220億56百万円(同187億16百万円)となり33億39百万円増加いたしました。これは、利益剰余金の増加等があったことによるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、長期借入金の返済による支出や有形固定資産の取得による支出等があったものの、短期借入金の増加や税金等調整前当期純利益等により前連結会計年度末に比べ7億円増加し、当連結会計年度末には、82億2百万円となりました。なお、営業活動、投資活動、財務活動別の詳細につきましては、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は4億90百万円(前連結会計年度は51億29百万円の使用)となりました。これは、棚卸資産の増加18億97百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益38億49百万円等があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は35億円(前連結会計年度は27億11百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出22億14百万円、定期預金の預入による支出8億15百万円等があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は35億19百万円(前連結会計年度は42億75百万円の獲得)となりました。これは長期借入金の返済による支出38億44百万円等があったものの、短期借入金の増加80億13百万円等があったことによるものであります。

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年増減率(%)

日本・アジア・オセアニア(千円)

30,639,903

13.1

欧州・中東・アフリカ(千円)

3,861,928

11.8

合     計(千円)

34,501,831

13.0

 (注)金額は標準原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 また、当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりであります。

市  場  別

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年増減率(%)

S G 市 場 向 け(千円)

13,622,568

17.0

I P 市 場 向 け(千円)

7,251,136

7.6

T A 市 場 向 け(千円)

3,977,133

20.3

F  A  事  業(千円)

4,214,450

2.8

そ    の    他 (千円)

5,436,543

14.6

合          計 (千円)

34,501,831

13.0

 

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年増減率(%)

日本・アジア・オセアニア(千円)

31,653,906

16.1

北・中南米(千円)

18,968,811

33.0

欧州・中東・アフリカ(千円)

19,984,294

11.1

合     計(千円)

70,607,012

18.6

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

また、当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりであります。

市  場  別

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年増減率(%)

S G 市 場 向 け(千円)

28,451,967

15.2

I P 市 場 向 け(千円)

20,132,376

24.0

T A 市 場 向 け(千円)

6,611,762

20.0

F  A  事  業(千円)

4,650,614

4.1

そ    の    他 (千円)

10,760,290

25.2

合           計(千円)

70,607,012

18.6

 

 当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品        目

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年増減率(%)

製  品  本  体(千円)

29,500,461

16.2

イ    ン    ク(千円)

25,242,444

20.0

保  守  部  品(千円)

5,754,473

14.9

そ    の    他(千円)

10,109,632

25.2

合          計(千円)

70,607,012

18.6

 (注)主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

 なお、運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末に対して16億17百万円増加し、135億47百万円となりました。今後も厳しい経営環境が続くものと想定されますが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てができております。

 

 経営成績につきましては、売上高は706億7百万円(前連結会計年度比18.6%増)、営業利益は42億41百万円(同65.1%増)となりました。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」記載のとおりであります。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは30億9百万円のマイナスとなりました。その要因は、営業キャッシュ・フローは、棚卸資産は増加したものの、税金等調整前当期純利益が大幅に増加したことからプラスを確保した一方で、中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた目標達成に向け、生産能力増強を目的とした丸子工場の取得及び付帯工事に加え、新製品開発・量産に向けた金型投資や研究開発用設備投資を積極的に行ったこと等により、投資キャッシュ・フローが大幅にマイナスとなったことによるものであります。当期以降も、先ずは棚卸資産の削減に向けた諸施策を実施して営業キャッシュ・フローの最大化を図りつつ、将来成長のために必要な投資も積極的に行い、財政状態の健全性維持と持続的な成長の実現を両立させるべく、内部資金・直接金融・間接金融のバランスを図りつつ、計画的に資本の財源を確保してまいります。

③経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中長期成長戦略「Mimaki V10」において、2025年度までに営業利益率10%達成を目標に掲げ、この実現に向けて従来のように売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤の構築に取り組んでまいります。

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループは、常に市場に「新しさと違い」を提供するイノベーターであり続けるため、国内従業員の約3割にあたる約420名が開発部門に属し、研究開発活動を積極的に進めております。なお、当社グループにおける研究開発活動は日本国内で行っております。

 当社では、市場ニーズを捉えて素早く製品化するため、製品を成り立たせる根幹となる要素技術の開発を製品開発に先行して進めております。製品開発に直結する開発体制としては、機構設計技術(メカ)、制御設計技術(ハード)、機器組み込みソフトウエア技術(ファームウエア)、アプリケーションソフトウエア技術及びインク技術の5分野からなる技術を結集して、技術本部内のプロジェクトチームが製品化を進めております。要素技術を各プロジェクトが共有し、積極的に共通化・標準化設計を展開することにより、開発期間の短縮を図るとともに高品質かつコストパフォーマンスの高い製品開発を行っております。また、マーケティング部門と技術本部とのコミュニケーションを密にすることで、ユーザーのニーズや技術動向を常に注視し、マーケットインの製品開発を中長期的視点から行える体制を構築しており、製品本体、アプリケーションソフトウエア、インク、メディア等のトータルソリューションを最適化し、「美しく・速い」プリント及びカットをユーザーに提供することを目指しております。

 また、2022年3月に子会社化した㈱マイクロテックのソフトウエア開発技術及び人材も含めたノウハウを新たな経営資源として取り込み融合することで、当社グループ全体のソフトウエア開発力のさらなる強化と、市場環境や顧客ニーズの変化を捉えたソリューションを、スピード感を持って提供いたします。

 さらに当社グループでは、新型コロナウイルス感染症の影響により急激に変化した市場ニーズや顧客志向、デジタル・オンデマンド供給への需要拡大の流れに対し、先進性と独自性による強みで優位に事業展開するため、製品開発を最も重要な戦略の一つと位置づけ、開発投資を積極的に行っております。

 

 当連結会計年度における研究開発活動等の主な成果は次のとおりであります。

(ハードウエア)

(1)SG市場向けで、これまで同市場をリードしてきた当社が、長年蓄積してきた「高画質」と「信頼性」の技術をベースに、省作業・省人化をアシストする高付加価値機能を備えてお客様にご提供する“新しい価値”を追求したフラグシップモデルのエコソルベントインクジェットプリンタ「JV330-130/160」「CJV330-130/160」を発売。また、さまざまな用途で効率よく加工できるフラットベッドカッティングプロッタ「CFXシリーズ」を発表。さらにサステナビリティ対応の一環として、SG市場向けインクにおいて紙製インクカートリッジの販売を開始し、脱プラ推進プラスチック削減率68%を達成。

(2)IP市場向けで、UV硬化インクジェット方式フルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」で利用できるピュアクリアインク「MH-110PCL」を発表。従来のクリアインク「MH-100CL」で要望されていたクリア造形物の黄色味を低減し、透き通ったクリア造形を実現。

(3)TA市場向けで、当社が20年以上にわたり蓄積してきた技術力を結集し、美しい画質と高い生産性に加え、省作業をアシストする高い付加価値機能を備えた、テキスタイル・アパレル向け水性昇華転写インクジェットプリンタのフラグシップモデル「TS330-1600」を発売。また、当社初のダイレクト トゥ フィルム[Direct To Film]プリンタ「TxF150-75」及びDTF専用 熱転写顔料インク「PHT50」を発表。

(4)FA事業で、当社の連結子会社であるアルファーデザイン㈱は、施設マネジメント・業務改革ソリューションの新製品として、施設のセキュリティ強化と利用者のトータル管理に向けたシステム「入退室管理システムSIX」を発表。

(ソフトウエア)

(5)3Dプリンタの造形時に用いる3Dデータを自動でエラー修正し形状を最適化する、当社では初となるサブスクリプション型のクラウドソフトウエアサービス「Mimaki 3D Print prep Pro(3DP³)」を発売。3Dデータから3Dプリントを行う際に必要となるエラー修正を簡単操作で自動実行でき、さらに3Dモデルに適した形状に最適化することができ、3Dデータの扱いに不慣れな方も簡単にエラー修正が行え、修正時間の軽減に貢献します。

 

 これらの研究開発活動を行った結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に係る費用の総額は4,956百万円であります。なお、当該金額には既存製品の改良、応用等に関する費用が含まれており、「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計審議会)に規定する「研究開発費」は2,901百万円であります。