第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 ソニーの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

 2022年度の世界経済は、2021年度に引き続きインフレの影響を大きく受けました。経済活動は、2020年から始まった新型コロナウイルス感染拡大による停滞から正常化へ動き出したものの、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化は、世界的な物価上昇を加速させ、インフレ水準は歴史的なものとなりました。このような状況のもと、米国では2022年3月に連邦準備制度理事会がゼロ金利政策を解除し利上げを開始した結果、日米の金利差が拡大し、2022年10月には円相場は対米ドルで32年ぶりの安値を記録しました。足元では、各国の急激な利上げが欧米を中心とした金融システム不安につながるなど、今後の世界経済の不確実性は一層高まっています。

 ソニーは、グローバルに多様な事業を展開しており、これらの世界経済の状況の変化に加えて、米中関係の緊張による地政学リスクの高まりやAIのような技術の急速な進化、地球環境問題や社会の分断への対応など、ソニーの事業を取り巻く環境は大きく変化しています。

 ソニーは、これらの事業環境の変化に迅速に対応し、各事業の収益構造の強化に取り組むとともに、長期視点の経営を重視し、グループ全体の企業価値向上のための取り組みを続けてきました。

 

 2023年5月18日に開催した2023年度経営方針説明会では、会長 CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎が経営の方向性を、そして社長 COO(最高執行責任者) 兼 CFO(最高財務責任者)の十時裕樹が各事業の成長戦略を中心に話しました。

 吉田からはまず、長期視点で事業を広げてきた創業以来の歩みと、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)を軸に、ソニーが近年取り組んできた、グループアーキテクチャー再編、クリエイティブの強化、そして感動空間の拡張について説明しました。また、吉田は、ソニーはクリエイティビティにコミットし、クリエイターとともに創る「感動」を世界に広げることに貢献すると述べました。そして、その一例として、Sony Pictures Networks India(以下「SPNI」)のCEOであるN.P. シンが、インドにおけるソニーグループの事業の広がりと成長機会について話しました。

 続いて十時が、グループ経営の視点から俯瞰した各事業セグメントの成長戦略を説明しました。また、十時は、人材と事業の多様性をより進化させ、有機的につなぐことで、さらなる成長と長期的な企業価値の向上をめざすと述べました。詳細は以下のとおりです。

 

(1) 経営の長期視点

 ソニーは、音を起源として、エレクトロニクス事業、エンタテインメント事業、半導体事業など、長期視点で事業を広げてきました。金融分野の生命保険事業は、1979年に創業者の一人が20年の長期ビジョンをもって開始しました。そして、20世紀に仕込まれた音楽、映画、G&NSの3つのエンタテインメント事業は、2021年度に続き、2022年度も売上高、営業利益ともにグループ連結の50%を超えました。サステナビリティに関しても、持続可能な世界の実現に向けて、環境負荷ゼロをめざす長期環境計画「Road to Zero」などを策定し、長期視点での活動に取り組んでいます。

 

(2) Purposeの策定とグループアーキテクチャーの再編

 ソニーは、「感動」をキーワードとして、2019年にPurposeを策定しました。また、各事業が等距離でつながることをめざし、2020年にグループ本社からのエレクトロニクス事業の分社化、金融事業の完全子会社化などのグループアーキテクチャーの再編を発表しました。これにより、エレクトロニクスとエンタテインメントの事業間連携に加え、エンタテインメント事業間のコンテンツIP(知的財産)でのシナジー創出が後押しされました。

 

(3) クリエイティブの強化

 ソニーは、「感動」を生み出すクリエイターに世界で最も選ばれるブランドになることをめざし、コンテンツやテクノロジーなど、各領域でのクリエイションを強化します。

 

① コンテンツIPの強化

・ 「感動」を創る力への投資

 音楽、映画、ゲーム、アニメなどの領域でのクリエイティブの強化のために、クリエイターに近づき、「感動」を創ることに注力すると同時に、「感動」を創る力への投資を実行。コンテンツIPには過去5年間で約1兆円を投資。

 

・ パートナー連携とコンテンツIPでの事業間連携

 「世界を感動で満たす」ために、クリエイターが生み出す感動コンテンツをパートナーとともにより多くの人に提供。

・ プレイステーションの自社制作タイトルをテレビドラマ化した「The Last of Us」は、配信を行ったパートナーであるMax(旧称:HBO Max)史上、欧州とラテンアメリカで最も視聴された番組となった。

 

・ クリエイションにつながる“Community of Interest”

 ソニーグループが直接つながる人を10億人に広げるという長期的なビジョンの下、アニメ、ゲーム、インドなど、コミュニティが生まれる特定の領域においては自社で「感動」を届け、ユーザーから学び、クリエイションに活用。

・ アニメに特化したDirect-to-Consumer(以下「DTC」)サービス「Crunchyroll」は、視聴データをクリエイターに還元。

・ インドでは、SPNIのDTCサービス「SonyLIV」などを通じたローカルでの感動の創造・提供や、音楽事業と映画事業の合弁会社による地元アーティストやクリエイターへの機会提供など、新たな価値創造に取り組む。また、予定しているSPNIとZee Entertainment Enterprises Ltd.(以下「Zee」)との合併を通じて、地域文化に根差したクリエイションのさらなる拡大をめざす。

 

② プロダクト、サービスを通じたクリエイションの強化

・ ハリウッドにおけるデジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズの採用拡大。

・ クリエイターの新しい映像表現をテクノロジーで支える、バーチャルプロダクションへの注力。

・ 審判判定支援で知られるHawk-Eye Innovations(以下「ホークアイ」)による、スポーツの感動を生み出すエンタテインメントテクノロジーサービスの提供。

 

③ 感動を生み出すクリエイション半導体

・ CMOSイメージセンサーはフルサイズミラーレス一眼カメラα™(Alpha™)やスマートフォンを通じて、「瞬間」を撮ることと、世界中のユーザーがクリエイターになることに貢献。

・ 過去5年で1兆円以上の設備投資を実行。今後もクリエイションを支えるキーデバイスとしてイメージセンサー事業に注力。

 

(4) 感動空間の拡張

 ソニーは、VRやAIなどのテクノロジーを活用しながら、感動の「場」を現実空間から仮想空間や移動空間に広げる、長期視点でのチャレンジを行います。

 

① 仮想空間

・ゲームのライブサービス、音楽アーティストのライブ、スポーツのファンエンゲージメントを高める取り組みを通して、クリエイションの場であり、人と人とがつながる場を提供。

・ モバイルモーションキャプチャー『mocopi』や、骨格情報を推定するトラッキングシステムなどのテクノロジーを活用し、バーチャルとフィジカルをシームレスに繋ぐ。

・ ゲーム空間の中での体験価値を高めるレーシングAIエージェント「Gran Turismo Sophy」に代表されるAIで、クリエイターの創造性を拡張。今後も研究開発から社会実装まで進める。

 

② 移動空間

・ イメージング・センシング技術、エンタテインメント、5Gを含む通信・ネットワークなどの領域でモビリティの進化に貢献。ソニー・ホンダモビリティの新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」開発車両にも技術提供を行う予定。

・ Epic Games, Inc.(以下「Epic Games」)との協業により、リアルタイム3D制作ツール「Unreal Engine」で新しいエンタテインメントを追求。

 

③ 宇宙空間

・ 「STAR SPHERE」プロジェクトによる超小型人工衛星『EYE』を通じた感動体験の探索。

 

(5) 第四次中期経営計画の進捗

 2021年度から2023年度の3年間の中期経営計画(以下「第四次中期経営計画」)のKPIである3年間累計の調整後EBITDAは、当初計画を大幅に上回って進捗しています。2023年度は第四次中期経営計画の最終年度として、不安定な事業環境の中、KPIの確実な達成に向け、リスクマネジメントに重点を置いた事業運営を進めていきます。なお、第四次中期経営計画の詳細については、後述の「第四次中期経営計画 数値目標とその進捗」をご参照ください。

 

(6) 各事業の成長戦略

・ G&NS分野: アクティブユーザーの増加

・ プレイステーション®5(以下「PS5™」)の普及拡大。2022年度第4四半期における販売台数が630万台に達し、フルキャパシティの生産を継続。

・ Bungieの知見の共有を進め、自社ライブサービスゲームの開発・運営力を強化。PC上でのアクティブユーザーも増加させていく。

 

・ 音楽分野: ストリーミングサービス及び新興メディア市場の伸びを上回る成長

・ ①ソニー・ミュージックの所有レーベル及び所属アーティストの新曲訴求によるシェア拡大、②The Orchardを核にディストリビューション・レーベルへのサービス拡大、③AWALなどを通じた新興アーティストとの接点の早期確保、④地元アーティストの発掘を含む新興市場の開拓。

・ ソーシャルメディアやゲーム内ライブコンサートなどの、 新たなメディアにおける音楽利用での収益化とアーティストへの還元。

 

・ 映画分野: 長期的なIP価値の最大化

・ ストラテジックサプライヤーとして、独自の配信プラットフォームを持つことで発生する投資負担を抑え、その分をクリエイティブ領域に投資して作品の質を向上させ、それぞれの作品の魅力を理解する配信プラットフォームに提供。

・ 業界からも支持を得ている、劇場公開を重視する姿勢を維持し、長期的な収益を向上。

 

・ エンタテインメント領域横断: IP活用深化による価値最大化

・ エンタテインメント事業間でのシナジー

・ ゲームIPの映像化:プレイステーション®の自社制作タイトルである「The Last of Us」、「グランツーリスモ」、「Twisted Metal」などの映画化とテレビシリーズ化の推進。

・ アニメの成長加速:「鬼滅の刃」を手掛けるアニプレックスとCrunchyrollの連携。

・ ロケーションベースエンタテインメント:

・ タイのテーマ&ウォーターパーク “Columbia Pictures Aquaverse”

・ 『アンチャーテッド』の世界観を投影したスペインのライドアトラクション

・ 日本の屋内体験型アトラクション「THE TOKYO MATRIX」の「ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-」

 

・ ET&S分野: 幅広いクリエイター向けのソリューションとサービス群の拡大

・ フォトグラファーや放送事業者向けに、クラウド上での効率的な映像制作などのサービス事業を拡大するとともに、個人クリエイター向けにも最適化。

・ 映像制作者向けに、「VENICE」シリーズやバーチャルプロダクションなどのクリエイションテクノロジーを進化させ、時間と空間の制約からクリエイターを解放。

 

・ I&SS分野: イメージセンサーNo.1ポジションの強化

・ スマートフォン用CMOSイメージセンサーの大判化と高性能化。

・ モビリティの安全に貢献する車載用センサー、社会のスマート化に貢献する産業・社会インフラ用センサー群による事業機会の拡大。

 

・ 金融分野: ブランディングの再強化、グループインフラ活用と成長投資

・ ブランディングの再強化とソニーグループのインフラの活用、さらには成長に向けた投資が金融事業の成長のポイント。

・ 金融事業のさらなる成長を実現するために、同事業を営むSFGIの株式上場を前提にしたパーシャル・スピンオフを検討開始。

・ スピンオフの実行後も、同事業が社名を含むソニーブランドの活用と、ソニーグループ各社とのシナジー創出を継続できるよう、当社が一部の株式(20%弱)を保有する前提で検討する。

・ 実行予定時期などの詳細は未定だが、2~3年後のスピンオフの実行を念頭に置いて、2023年度末にかけて詳細の検討を進める。

 

(7) 事業と人材の多様性の継続的な進化

 多様な人材が、境界を越えて知や活動を共有し、事業の多様化を進化させ、有機的につながることで、ソニーグループのさらなる成長と長期的な企業価値向上をめざします。

 

第四次中期経営計画 数値目標とその進捗

<数値目標>

・ 当社は、2021年4月28日に第四次中期経営計画の数値目標を発表しました。

・ 経営を引き続き長期視点で行っていくため、経営指標には3年間累計の指標を用いることとし、3年間累計の調整後EBITDA*を最も重視する経営指標(グループKPI)としました。2021年度から2023年度までの3年間において、連結ベースで累計4兆3,000億円の調整後EBITDAを創出するという数値目標を設定しました。

・ 調整後EBITDAは、一時的な損益の影響を含まないことから、事業の持続的な収益力を表わすとともに、金融事業を含むグループ全体の投資とそのリターンの循環による中長期での事業拡大をマネジメントの観点から確認することができ、さらに企業価値評価との親和性も高い指標であることから、ソニーが重視する長期視点での経営に適した経営指標であると考えています。

・ 第四次中期経営計画におけるキャピタルアロケーションについては、その計画期間を超えた長期的な事業の成長に向けて、設備投資に1兆5,000億円、自己株式の取得を含む戦略投資に2兆円以上を配分する計画としました。配当については、従来どおり、長期、安定的に増額していく方針としました。このキャピタルアロケーションの原資として、2021年度から2023年度の3年間で累計3兆8,000億円以上のキャッシュを創出する見通しとしました。これには、金融分野を除くソニー連結ベースの営業活動によるキャッシュ・フロー3兆1,000億円以上、必要に応じて実行される事業や資産の売却及び厳格な財務規律の範囲内での借り入れによるキャッシュ・インフロー3,000億円以上、ならびに第三次中期経営計画期間(2018年度から2020年度の3年間)及びそれ以前からの繰り越し分4,000億円が含まれます。

 

<進捗>

・ 2022年度の調整後EBITDA実績は1兆7,034億円**となりました。グループKPIである3年間累計の調整後EBITDAは、音楽・映画分野を中心に当初計画を大幅に上回って進捗しています。

・ キャピタルアロケーションについて、設備投資は、当初計画に、I&SS分野におけるイメージセンサー向け投資と、全社R&DやG&NS分野におけるサーバー投資などの増加分4,000億円を加えた1兆9,000億円を見込んでいます。一方、戦略投資は、運転資金及び設備投資の増加と、足元のM&A市場環境も考慮し、当初計画である2兆円から1兆8,000億円に減額しています。

 

*  調整後EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)=当社株主に帰属する当期純利益+非支配持分に帰属する当期純利益+法人所得税+金融収益・金融費用に計上される支払利息(純額)-金融収益・金融費用に計上される資本性金融商品の再評価益(純額)+減価償却費・償却費(コンテンツ資産に含まれる繰延映画製作費、テレビ放映権、自社制作のゲームコンテンツ及び原盤制作費ならびに繰延保険契約費の償却費を除く)-当社が非経常的と判断する損益****

 

調整後EBITDAはIFRSに則った開示ではありませんが、ソニーはこの開示が投資家の皆様に有益な情報を提供すると考えています。調整後EBITDAはIFRSに則って開示されるソニーの経営成績の状況を代替するものではなく、追加的なものとしてご参照ください。

 

** 2022年度のIFRSにもとづく当社株主に帰属する当期純利益と調整後EBITDAの調整については、以下の表をご参照ください。

 

 

2022年度

(億円)

当社株主に帰属する当期純利益

9,371

非支配持分に帰属する当期純利益

65

法人所得税

2,367

金融収益・金融費用に計上される支払利息(純額)

40

金融収益・金融費用に計上される資本性金融商品の再評価益(純額)

46

減価償却費・償却費***

5,422

当社が非経常的と判断する損益****

△278

調整後EBITDA

17,034

 

*** 減価償却費・償却費には、コンテンツ資産に含まれる繰延映画製作費、テレビ放映権、自社制作のゲームコンテンツ及び原盤制作費ならびに繰延保険契約費の償却費を含んでいません。

 

**** 2022年度の当社が非経常的と判断する損益の詳細については、以下の表をご参照ください。

 

 

2022年度

(億円)

音楽制作及び音楽出版における訴訟に関する和解金の受領の影響(関連費用控除後)(音楽分野)

57

ソニー生命の子会社において前年度に発生した不正送金に係る資金回収(金融分野)

221

合計

278

 

 分野別の2022年度の実績ならびに分野別の事業環境及び事業戦略については、「第2 事業の状況」『4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析』もあわせてご参照ください。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

サステナビリティに関する基本方針

 当社は、取締役会において、サステナビリティに関する基本方針を以下のとおり定めています。

『ソニーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)と、「人に近づく」という経営の方向性のもと、「人」を軸に多様な事業を展開し、この多様性を強みとした持続的な価値創造と長期視点での企業価値の向上をめざしています。人々が感動で繋がるためには、私たちが安心して暮らせる社会や健全な地球環境があることが前提であり、ソニーは、その事業活動が株主、顧客、社員、調達先、ビジネスパートナー、地域社会、その他機関等のソニーグループのステークホルダーや地球環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、対話を通じてステークホルダーとの信頼を築くよう努めます。そして、イノベーションと健全な事業活動を通じて、企業価値の向上を追求し、持続可能な社会の発展に貢献することをめざします。』

 

(1)サステナビリティ推進体制及びその取り組み

<推進体制>

 当社は、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部を設置し、同部がビジネスユニット及び事業会社(以下あわせて「各事業部門」)及び当社関連部署(コンプライアンス、人事、経営企画管理、財務、法務等)(以下「関連部門」)と連携しながら、グループ全体のサステナビリティに関する各種取り組みを推進しています。

 当社のサステナビリティ担当上級役員は、サステナビリティに関連するリスクを定期的に検討・評価し、損失のリスクの発見・情報伝達・評価・対応に取り組んでいます。当社の取締役会は、少なくとも四半期に1回、サステナビリティに関する取り組み及びその進捗の報告をサステナビリティ推進部から受けています。取締役会は、さらに、各事業部門からの中期経営計画に関する報告の一部として、それぞれの事業に関わりの大きいサステナビリティの課題と機会及びそれらへの取り組みについての報告を受けています。

 

<推進のための主な取り組み>

 上記体制のもとで、サステナビリティ推進部は、前述の「サステナビリティに関する基本方針」にもとづき、ソニーの事業活動への当該基本方針の浸透を図るとともに、ステークホルダーとの対話やマテリアリティ分析などを通じて、グループ全体で対応が必要なサステナビリティ課題を特定しています。また、それらの特定したサステナビリティ課題について、当社マネジメントや関連部門と連携しながら、長期環境計画「Road to Zero」等のグループとしての対応方針を策定し、グループ全体に周知すること等により、グループ全体での取り組みを推進しています。

 また、各事業部門においては、サステナビリティの観点からの課題と機会を検討するとともに、それぞれの事業特性に応じた、サステナビリティに関する取り組みを行っています。加えて、サステナビリティ推進部と議論の上、重視しているサステナビリティ課題への取り組みについてKPI(以下「サステナビリティKPI」)を設定しています。サステナビリティKPIは各事業部門の業績評価の一部に組み込まれており、その達成状況をサステナビリティ推進部においても評価しています。加えて、当社上級役員の業績連動報酬のうち、個人業績の評価指標の一部には、社会価値創出及びESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からのサステナビリティに関する取り組みの指標を含めています。

 2022年度は、サステナビリティ担当上級役員、人事担当上級役員及び各事業部門のサステナビリティ担当者が参加するグループ全体でのサステナビリティ会議を開催し、各事業部門のサステナビリティに関する取り組み及びサステナビリティKPIの進捗状況などを共有し、確認しました。

 なお、各事業部門が設定した2022年度のサステナビリティKPIには、製品の石油由来バージンプラスチック使用量の削減、製造事業所における再生可能エネルギー(以下「再エネ」)の導入、製造プロセスの温室効果ガス(以下「GHG」)排出量の削減、ソニーグループのコンテンツIPを活用した環境やダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」)の啓発活動の実施、DE&Iに関するプログラムや研修の実施などが含まれていました。

 

<上記取り組みの前提となるマテリアリティ分析>

 中長期的な視点で、ソニーのサステナビリティ活動を社会環境の変化やステークホルダーからの要請などに応じたものとするため、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部が主導し、ソニーグループにとってのマテリアリティ項目を分析・特定し、定期的にその重要性について見直しています。直近では2022年度に見直しを実施しており、マテリアリティ項目を「中長期的な社会の変化及び多様なステークホルダーのニーズを踏まえた、ソニーの価値創造に影響を与えるサステナビリティに関する重要項目」と定義した上で、ソニーに関連性の高いサステナビリティ課題(ソニーの価値創造にネガティブなインパクトを与える項目を含む)について、自社視点・ステークホルダー視点の両面からその重要性を評価しました。

 自社視点での重要性については、中長期的にソニーの価値創造に与えるポジティブ又はネガティブなインパクトの観点から、また、ステークホルダー視点での重要性については、非政府組織(NGO)、投資家、評価機関、メディアなどが公表している情報等にもとづき、各項目を評価しました。

 かかる評価にもとづき、当社マネジメント及び取締役会のレビューを経て、グループ全体で優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目を特定しました。

 

(2)サステナビリティに係る戦略等

 2022年度に実施したマテリアリティ分析の結果、グループ全体で優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目として、「気候変動」、「DE&I」、「人権の尊重」及び「サステナビリティに貢献する技術」(以下あわせて「最重要マテリアリティ項目」)を特定しました。

 

<最重要マテリアリティ項目特定の背景>

・気候変動:ソニーは、気候変動による影響の顕在化と、脱炭素社会への移行は全ての企業にとっての重要課題であること、また、自社の環境負荷などを低減していく「責任」と、多様な事業や技術を生かして行う「貢献」の両面から、幅広いステークホルダーからの環境への取り組みに対する期待が高まっていることを認識しています。ソニーの企業活動は、あらゆる生命の生存基盤である地球環境が健全であって初めて成り立つものであり、気候変動対策をはじめとする環境への対応が重要と考えています。

 

・DE&I:ソニーは、企業活動において、多様性に富む組織は、そうでない組織に比べて、よりイノベーティブであることを認識しています。そして、社員一人ひとりの多様な価値観を尊重するとともに、エクイティ(公平性)の観点を大切にし、インクルーシブな組織風土を醸成することが重要と考えています。また、社会正義や不平等などの社会課題に対する企業の取り組みにも期待が高まっており、グループ全体で社内外の課題解決に向けた取り組みのより一層の推進が重要と考えています。

 

・人権の尊重:ソニーは、そのグローバルな事業活動において、人権への潜在的な影響があることを認識しています。すなわち、ソニーのバリューチェーン全体において人権を尊重し、ソニーの事業活動との関係が直接的か間接的かに関わらず、潜在的なものも含めて人権への負の影響に対処することは、ソニーが果たすべき責任として幅広いステークホルダーから求められていることを認識しています。近年の人権の尊重に関連する外部環境の変化も踏まえ、ソニーとしてもより一層取り組みを強化することが重要であると考えています。

 

・サステナビリティに貢献する技術:ソニーは、テクノロジーを通じて、事業の成長と社会・環境課題の解決を両立させることについて、ステークホルダーからソニーに対する期待があるものと認識しています。ソニーの開発する技術や製品により、事業収益の増加のみならず、社会及び環境にポジティブな影響をもたらすことでサステナビリティ課題の解決をリードし貢献することは、ソニーにとって重要な使命であると考えています。

 

<最重要マテリアリティ項目に係る戦略と目標、主な取り組み>

・気候変動

 ソニーは、2010年にグループ全体で地球環境に及ぼす負荷を2050年までにゼロとすることをめざす長期環境計画「Road to Zero」を掲げ、以来、気候変動、資源、化学物質、生物多様性の4つの視点から環境負荷低減のための取り組みを行ってきました。2022年5月には、気候変動領域において、環境負荷低減活動をさらに加速するため、スコープ1から3までを含むバリューチェーン全体でのネットゼロ(以下「ネットゼロ目標」)の達成目標年を2040年に前倒しすることを発表しました。なお、この2040年のネットゼロ目標は、2022年8月に「Science Based Targets initiative (SBTi)*1」によるネットゼロ目標*2の認定を取得しました。

 

*1 気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を企業が設定することを推進する国際イニシアティブ。

*2 ソニーのネットゼロ目標は、以下のSBTiの「企業ネットゼロ基準」に従っています。

・スコープ1、2及び3のGHG排出量をゼロにするか、又は、適格な1.5℃軌道においてグローバル若しくはセクターレベルでのGHGネットゼロ排出達成と整合する残余排出量水準にまでGHG排出量を削減すること。

・ネットゼロ目標の時点におけるGHGの残余排出量及びそれ以降に大気中に放出される全てのGHG排出量を中和すること。

 

上記の2040年のネットゼロ目標達成に向けた具体的な目標については以下のとおりです。

 

1.2030年までに、ソニーグループの事業所オペレーションにおけるGHGの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロとすることをめざします。さらに、製品、サプライチェーン、物流などその他の排出(スコープ3)については、2035年までに、製品使用時のGHG排出量を2018年度比で45%削減することをめざします。2040年には、全スコープにおいてGHG排出量をネットゼロとすることをめざします。

2.2030年までに、当社グループの事業所で使用する電力を100%再エネ化することをめざします。2025年時点での再エネ由来の電力使用率目標を35%としています。

 

上記1及び2の目標を達成するために、ソニーでは主に次のような施策を実施していきます。

・ソニーグループの事業所における継続的な環境負荷低減:グループ全体で、省エネルギー(以下「省エネ」)化、太陽光発電設備の設置及び再エネ導入を加速。日本におけるFIP(フィードインプレミアム)制度を活用したバーチャルPPA(電力購入契約)。

・ソニー製品の省エネ化:ソニー製品1台当たりの年間消費電力量の低減に向けた動きを加速。

・パートナーへの働きかけ強化:部品、材料及び完成品の製造委託先などにも、それぞれのGHG排出量の管理、省エネ及び再エネ転換などを促す。

・炭素除去・固定*3への貢献: 炭素除去等の関連スタートアップ企業への投資検討や、株式会社SynecO(シネコ)のSynecoculture(シネコカルチャー)*4をはじめとする拡張生態系の普及事業にともなう生物多様性と炭素固定の指標化の検討など。

 

*3 大気中から炭素を吸収し、固定させる技術。

*4 Synecocultureはソニーグループ株式会社の商標です。

 

・DE&I

 DE&Iに関する戦略等については、「(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標」をご参照ください。

 

・人権の尊重

 「ソニーグループ行動規範」において、ソニーの人権の尊重に関する方針を定め、全てのグループ会社に対し、関連する法令及び行動規範に従って人権を尊重し、誠実な事業活動を行うことを求めています。

 その上で、責任あるサプライチェーンの実現に向けたソニーグループ製造事業所及びサプライヤーの行動規範を定めた「ソニーサプライチェーン行動規範」や、ソニーの全ての役員及び従業員がソニーグループの価値観や新たな社会規範に沿ってAIの活用や研究開発を行うための指針である「ソニーグループAI倫理ガイドライン」などの人権に関わる特定の領域における方針を策定し、運用しています。また、ソニーは、国連人権理事会によって発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)及びOECD多国籍企業行動指針に定められた枠組みに沿って、潜在的な人権への負の影響の防止と軽減に取り組んでいます。その主要な取り組みの一つとして、人権デューディリジェンスの起点となる人権リスクのインパクト評価を実施しています。当該評価において、ソニーの事業活動との関連性が高い人権リスクを特定した上で、これらの人権リスクのうち、責任あるサプライチェーン、多様性の尊重、責任あるテクノロジーの開発及び使用の3つの領域を、ソニーグループ全体で優先的に取り組みを進める重点領域として定め、個別の取り組みを推進しています。

 

・サステナビリティに貢献する技術

 ソニーは、事業成長に貢献する技術開発とともに、未来に向けて新たな社会・産業の在り方をもたらすイノベーションの創出に取り組んでいます。

 例えば、土壌中の水分量などのセンシング、超広域の通信ネットワーク、そして捉えたデータにもとづく予兆分析技術の研究開発などを行っています。また、籾殻から生まれた天然由来の多孔質カーボン素材であるTriporous™(トリポーラス)の実用化を推進したことにより、消臭・抗菌繊維などのアパレル分野や、洗浄剤などのヘルスケア分野おける採用が進みました。さらに、環境に配慮した材料の開発及び低消費電力化技術によるソニー製品の環境負荷の低減などにも取り組んでいます。

 

<その他のサステナビリティ課題に係る主な取り組み>

 ソニーでは、多様なニーズを持つ人々に、ソニーの製品・サービスを楽しんでいただけるよう、アクセシビリティを高める活動をグループ全体で推進しています。例えば、製品・サービスの企画段階から障がいのある社員やユーザーへのインタビューやユーザビリティテストを実施するなど、インクルーシブデザインを取り入れ、その結果を製品・サービスに反映するなどの活動を行っています。2023年3月には、米国で開催されたCSUN Assistive Technology Conference 2023へ出展し、アクセシビリティに配慮したソニーの製品・サービスを体験する機会をより多くのユーザーに提供するともに、これらの製品・サービスのさらなるアクセシビリティの向上に向けた多様な観点のフィードバックを受ける機会としました。

 また、ソニーでは、AIの開発及び利用を一層拡大していくにあたり、前述の「ソニーグループAI倫理ガイドライン」を2018年に策定し、その遵守を徹底しています。さらに、2019年12月の「ソニーグループAI倫理委員会」の設置に加えて、2021年にはソニーグループの全ての事業に対してAI倫理に関する専門知識を提供するための中心的な役割を果たす組織として、AI倫理室を当社内に設置しました。また、エレクトロニクス製品・サービスの商品化プロセスにおいて遵守すべき要件をとりまとめた文書の作成や、製品開発ライフサイクルにおけるAI倫理アセスメントを開始するなど、AI倫理に関する活動及び体制の強化を進めています。

 

(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標

<人事戦略 –「ダイバーシティ」と「個を求む」・「個を伸ばす」・「個を活かす」–>

 ソニーは、エレクトロニクス事業を起源として、半導体、音楽、金融、映画、ゲームにまで事業の幅を広げ進化を続けています。これら全ての事業をグローバルに展開しており、主要6事業のうち半数が本社を米国に置き、事業運営に最適な組織体制をグローバルに編成しつつビジネスを展開しています。そして、多様な地域で展開する多様な事業を支え、イノベーション創出の基盤となるのが、ソニーにとって最も重要な経営資源の一つである多様な人材です。ソニーでは、人と事業の「ダイバーシティ」を、「クリエイティビティ」「テクノロジー」と並ぶ「価値創造のドライバー」と位置づけており、全世界で活躍する約11万人の社員は、国籍や人種の多様性はもとより、事業の広がりによって職種も極めて多岐にわたり、各事業の成長の原動力となっています。これら多様な人材が、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)のもと、事業や地域を超えてつながり、交錯し、テクノロジーやクリエイティビティを融合することで、新たな価値創造につなげています。

 ソニーは創業以来、個の自主性と挑戦を尊重し、会社と社員が覚悟と緊張感を持って「都度、お互いに選び合い、応え合う」対等な関係を大切にしてきました。人材理念である“Special You, Diverse Sony”には、企業文化として根付き継承されてきたソニーの人材に対する考え方が表現されており、異なる個性を持つ一人ひとりと、多様な“個”を受け入れるソニーとがPurposeを中心にともに成長し続けていく、というメッセージが込められています。

 この人材理念にもとづき、グループ共通の人事戦略を「個を求む」・「個を伸ばす」・「個を活かす」と定義し、自発的な社員の挑戦と成長意欲を支援し、社員一人ひとりの力を最大限引き出す施策にフォーカスすることで、会社全体としての成果を最大化します。具体的な取り組みについては、各事業の人事責任者が、それぞれの事業や地域の特性に応じて最適な人事施策を策定・実行しています。

 

① 個を求む

 Purposeへの共感を喚起し、高いスキルや専門性を持ち、挑戦心と成長意欲に満ちた多様な人材の獲得が重要だと考えています。採用活動では、世界トップレベルの人材を惹きつけるべく、世界各地のグループ会社と協力して戦略的に取り組んでおり、中長期視点での施策として産学連携による多様な人材の育成にも注力しています。また、事業や地域、社会環境に応じて様々なバックグラウンドを持つ人材の活躍につながる機会をグローバルで提供しており、例えば米国では、十分に機会が得られていない方々への早期育成や教育支援を行うとともに、その活動を多様な人材の採用に繋げています。

 

② 個を伸ばす

 社員の成長には、自主性溢れる人材の挑戦を通した成長への高い意識と、それを最大限に発揮できる職務へのアサインメントが最も効果的であると考えています。そのため、役割に応じて求められる能力を体系化し、グループ全体でそれぞれの能力の強化を図っています。特に、ソニーグループの成長及び社員の成長には管理職の役割が大きいという考えのもと、マネジメント及び人事部署が管理職の中期的な育成の方向性を議論し、その視野や経験領域の拡大のために、リーダーシップ開発やコーチング等の様々な施策を行っています。また、各事業・機能において中核的役割を担う経営人材の育成を目的とした次世代リーダー育成プログラム「ソニーユニバーシティ」や、マネジメントの豊富な経験値を次世代に継承し、新たなグループシナジーや人材育成につなげることを目的とした「ソニークロスメンタリングプログラム」等を実施しています。

③ 個を活かす

 多様な個を活かすため、異なる個性やライフスタイル・ワークスタイルを持つ社員が成長を求めて挑戦できる、インクルーシブな職場環境の醸成が重要だと考えています。多様な社内募集制度(社内募集制度、社内FA制度、キャリアプラス制度等)やグループ全社員を対象とした学びと交錯の場、「PORT」の整備もその一例であり、PORTでは各種研修に加え、社員が自発的に開催するコミュニティ活動も行われています。

 そして、多様な社員が個性を最大限発揮できているかどうかは、Purposeへの共感度と社員エンゲージメントに集約されると考え、定期的にそれらを確認する社員意識調査を実施しています。特に社員エンゲージメントは重要な指標ととらえ、当社上級役員の業績連動報酬の評価指標の一部に組み入れています。今後も社員のPurposeへの共感と社員エンゲージメント向上につながる取り組みを推進し、ソニーの持続的成長を実現します。

 

<人材の多様性の確保とインクルーシブな組織の構築に関する方針>

 ソニーでは、強い石垣は異なる形の石をうまく組み合わせて構築されることになぞらえ、企業においても同様に、多様な個性や意見、見解、価値観が共存する組織の実現をめざしています。多様なバックグラウンドを持つ人材の登用を推進するとともに、エクイティ(公平性)の観点を大切にし、真のインクルージョンを実現させていくことで、多様な事業を有するソニーグループの持続的な成長に繋げるべく、事業や地域、社会環境に応じた重点施策を実行しています。

 グループ共通の取り組みとしては、多様性推進の重要性を謳う「ダイバーシティステートメント」を制定しており、米国では、SMEにおける産業の発展にも寄与する多様性、公平性、インクルージョンの醸成を推進するフレームワーク“MILES”や、SPEにおける人材、コンテンツ、パートナー、コミュニティの四つの柱を軸に据えて社会的に機会に恵まれない人々を対象に支援を行う“Sony Pictures Action”等、社内外で広く機会を創出しています。また、国内も含め、2015年からは毎年“Diversity Week”を開催しており、世界中のソニーグループ各社で性別、人種、国籍、性的指向、性自認や障がいといった様々な多様性について理解を深めるイベントを実施しています。

 

① 経験の多様性

 他社での経験を通して培われた新たな知見や視点が加わることで事業や人材の成長につながると考え、長年他社経験者採用を積極的に推進してきており、ビジネスニーズに応じて継続的に外部人材を採用しています。国内のソニーグループ各社における入社者全体に占める他社経験者の割合は、2022年度52.5%、2021年度49.6%、2020年度48.7%となっており、海外では大半が他社経験者となっています。入社後の人事評価においても、他社経験者と新卒入社者とを区別していません。

 

② 国籍の多様性

 当社の役員体制において、2022年度末時点では主要事業の責任者である上席事業役員の半数が外国籍の役員であり、経営層において多様なバックグラウンドが確保されています。また、ソニーグループの主要事業の中には、映画事業や音楽出版事業等、外国籍の社員がその運営において主要な役割を担っている事業もあります。そして、ソニーグループ全社員のうち約半数が日本国外での事業活動に従事しており、そのうちの9割以上が現地採用社員です。グローバルに展開するR&Dや㈱ソニーリサーチ(旧 ㈱ソニーAI)でのAI等の先端技術開発を推進できる人材についても、国籍を問わず採用する活動を強化しており、世界中から優秀な学生や経験者を採用する取り組みを積極的に続けています。

 

③ 性別の多様性

 多様な人材が活躍する職場環境の推進の一環として女性の活躍推進の実現に向けた取り組みをグローバルで進めており、2022年度末時点のソニーグループ全社員のうちの女性社員比率は34.0%、管理職に占める女性労働者の割合(以下「女性管理職比率」)は30.0%です。一方で、日本では、女性管理職比率が低く、教育課程において理工系分野を専攻する女性の数が限定的であることから、注力すべき領域と捉えています。

 ソニーは、就業・職場環境の整備、育成施策、採用活動等において女性の活躍推進の実現に向けた取り組みを実施することが重要であると考えており、女性社員の継続的育成の観点では、女性リーダーの育成やキャリアアップを後押しする研修や、女性社員を対象とした座談会や交流会等を開催し、女性社員の採用活動強化の観点では、次世代育成のための女子学生向けサイエンスプログラム等を実施しています。また、当社及び国内主要子会社において、女性管理職比率及び男性労働者の育児休業取得率(以下「男性育休取得率」)を向上させるため、二つの目標を以下のとおり設定しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における女性管理職比率に係る目標及び実績

会社名

2025年度末目標 *1

2023年3月末実績

ソニーグループ㈱

20.0%

16.0%

ソニー㈱

7.0%

6.9%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

4.9% *2

4.2%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

15.0%

12.0%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

28.0%

25.6%

ソニーフィナンシャルグループ *3

18.0%

14.9%

(注)*1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令」(平成27年厚生労働省令第162号)の規定にもとづく「管理職に占める女性労働者の割合」の2025年度末時点の目標について記載しています。

*2 女性活躍推進法にもとづく行動計画において定めた2025年度末時点での女性管理職目標人数が2023年3月末時点の管理職総数に占める割合です。

*3 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社(ソニーフィナンシャルグループ㈱、ソニー生命保険㈱(同社本社の内勤社員のみ)、ソニー損害保険㈱、ソニー銀行㈱、ソニー・ライフケア㈱、ライフケアデザイン㈱及びプラウドライフ㈱)の2025年度末時点の女性管理職の目標人数及び2023年3月末時点の人数実績をそれぞれ合算し、それぞれの合計の数値を、実績については2023年3月末時点の社員数の合計で、目標については2025年度末時点の想定社員数の合計で、それぞれ除した数値を記載しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における男性育休取得率に係る目標及び実績

会社名

2025年度末目標 *1

2023年3月末実績

ソニーグループ㈱

100%

56%

ソニー㈱

100%

77%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

100%

74%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

100%

72%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

100%

30%

ソニーフィナンシャルグループ *2

100%

74%

(注)*1 育児・介護休業法の規定にもとづき、育児・介護休業法施行規則第71条の4第2号が定める育児休業等をしたものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用したもの(以下「男性育休取得者」)の数の合計数の割合についての2025年度末時点の目標を記載しています。

*2 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社(ソニーフィナンシャルグループ㈱、ソニー生命保険㈱(同社本社の内勤社員のみ)、ソニー損害保険㈱、ソニー銀行㈱、ソニー・ライフケア㈱、ライフケアデザイン㈱及びプラウドライフ㈱)の2025年度末時点の男性育休取得者の目標人数及び2023年3月末時点の人数実績をそれぞれ合算し、それぞれの合計の数値を、実績については2023年3月末時点の男性社員数の合計で、目標については2025年度末時点の想定男性社員数の合計で、それぞれ除した数値を記載しています。

 

④LGBTQ+の社員の活躍推進

 LGBTQ+の社員が、自分らしく、安心して働くことができる職場環境づくりを国・地域の実情に合わせて推進し、多様な社員を包摂するインフラの整備を行っています。

 グループ共通の取り組みとして、ソニーがLGBTQ+の社員及びコミュニティを尊重し支援する姿勢を社内外に視覚的に表明することを目的とし、レインボーカラーで表示したソニーロゴタイプの「Prideロゴ」を導入しました。また、LGBTQ+の社員への対応だけでなく、全社員を対象としたeラーニングやワークショップの実施、誰もが働きやすい職場環境についての意識啓発イベントやパレード参加等にグローバルで取り組んでいます。SMEでは、メディアによるLGBTQ+差別を防止する団体GLAADとのパートナーシップを通じ、LGBTQ+の包摂に関する研修を行うとともに、LGBTQ+に関して公正、正確、包括的に表現したメディアを表彰する第33回GLAADメディア賞のスポンサリングも実施しました。日本では、多様な社員を包摂する職場環境を確保すべく、配偶者に適用される人事関連制度の一部を同性パートナーにも適用することとし、多目的トイレの設置、採用時における性別欄の任意記入、個室(トイレ・浴室付)社員寮の手配等にも取り組んでいます。

 

⑤障がいのある社員の活躍推進

 ソニーは、障がいが障壁を作らず、障害によって足かせを感じる社員がいない職場環境づくりをめざしています。創業者の一人である井深大の「障がい者だからという特権なしの厳しさで、健丈者よりも優れたものを、という信念を持って」活躍してほしいという思いを理念とし、「障がいを感じない、働き甲斐のあるソニーらしい障がい者雇用環境」の実現をめざしています。そのため、それぞれの国や地域の法令や規範を遵守し、障がいの有無にかかわらずキャリア構築ができるインクルーシブな職場環境づくりをめざし、グループ全体でその実現に向けて取り組んでいます。

 ソニーは、障がいのある人のインクルージョンに焦点を当てた世界経済フォーラムのイニシアティブ「The Valuable 500」に署名しています。ソニーのインクルーシブな職場環境づくりは、本イニシアティブの考え方とも共通しており、署名企業500社の中から、推進役として国や地域、業界をリードするIconic Companiesの1社に選ばれています。米国では、ビジネスにおける障がい者インクルージョンに注力しているDisability:INという団体と連携しながら積極的に活動しており、グループ各社共同でアクセシビリティや障がいへの理解を深めるe-ラーニングを作成し、社員へ提供しています。日本では、3つの特例子会社を自立した一つの事業所として運営を行い、その運営を通じて得られた障がい者雇用にかかわる合理的配慮やアクセシビリティのノウハウをグループ全体に展開しています。例えば、海外グループ会社の社員が日本の特例子会社の製造現場を見学し、障がい者が働きやすい製造ラインの設計について学んでいます。

 

 かかる方針の下、ソニーの持続的な成長や社会への価値創造をめざし、人材の多様性の確保とインクルーシブな組織の構築に向けた取り組みの強化に一層注力していきます。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあると考えています。なお、当該事項は、本書提出日現在において入手し得る情報にもとづいて判断したものです。

 

(1) ソニーは収益又は営業利益率の低下につながりかねない一層激化する競争を克服しなければなりません。

 ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、単一又は数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にわたって、業界の既存企業や新規参入企業などの多くの企業と競争しています。また、潜在的には現在ソニーに製品を供給している企業も競合相手となる可能性もあります。これらの既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、ソニーの財政状態及び業績は、当該既存及び新規参入の競合他社に効率的に対抗する能力にかかっています。

 ソニーが直面する競合要因は業種により異なります。例えば、エレクトロニクス領域において、ソニーは、競合他社との間で価格や機能を含む様々な要素で競争しています。また、音楽分野及び映画分野では、アーティスト、作詞家、俳優、ディレクター、及びプロデューサーといった才能ある人材ならびに製作・制作、取得、ライセンス、又は配信されるエンタテインメント・コンテンツを得るため競争しています。競合他社との価格競争は、価格の下落に比例して費用が下落しない場合には利益率の低下につながり、また、才能ある人材と魅力的なコンテンツ獲得競争も、そのような才能ある人材やコンテンツの獲得に必要とされる費用の増加を増収により埋め合わせできない場合には、収益力の低下につながる可能性があります。さらに、イメージセンサーのように、現在ソニーが強い競争力を有していると考えられる製品においても、競合他社の技術力の向上により、ソニーがその優位性を保てなくなる可能性もあります。また、一般消費者向けエレクトロニクス製品においては、製品に対する消費者の関心が絶えず変化し、例えば、消費電力の低減や、製品や包装材として地球環境に配慮した材料の使用を求めるなど、一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くが同種の製品をすでに保有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し、競争力ある価格と特長を有する、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。ソニーは、様々な一般消費者向け製品において、一層激化する競合他社との価格競争にともなう価格低下圧力の高まり、小売業者の集約化、新規の販売・流通チャネルの構築、及び製品サイクルの短期化に直面しています。音楽分野及び映画分野における業績は、予測が困難である作品に対する世界中の消費者からの支持による影響、ソニーの作品に代わり消費者が利用可能な娯楽及びレジャー活動による影響、ならびに、同時期もしくは近接した時期に公開された他の競合作品による影響を受ける可能性があります。例えば、映画分野では、各地域で新型コロナウイルス感染拡大による制限の解除が進み、映画館の再開にともなって劇場興行収入が回復する中で、主要スタジオ各社による映画公開スケジュールが過密となり、公開可能なスクリーンを巡って競争が激化していることにより、映画分野の業績に悪影響が出る可能性があります。

 仮に、ソニーが、技術その他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなった場合、ソニーの一般消費者向け製品に対して頻繁に影響を及ぼす継続的な価格下落又はその事業に影響を及ぼすコスト圧力について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルや消費者の嗜好が変化した場合、又はソニーの一般消費者向け製品の平均価格の下落スピードが当該製品の製造原価削減のスピードを上回った場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起し、製品及びサービスの革新を実現するために研究開発投資を行う必要があり、また、新しい製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理しなければなりません。

 ソニーは、製品及びサービスの競争力を強化するため、特にG&NS分野及びI&SS分野といった成長分野において、研究開発投資を継続的に行っています。しかしながら、ソニーとして、著しい成長可能性を持った製品及びサービス、ならびに市場動向を特定できなかった場合やそれらを把握できなかった場合、研究開発投資が成功しない可能性があります。加えて、ソニーの研究開発投資が革新的な技術を生み出さない可能性、想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない可能性、又は競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。これらは、競争力のある新たな製品やサービスを商品化するソニーの機会を妨げる要因となり得ます。

 ソニーは、継続的に一般消費者向けエレクトロニクス製品及びネットワークサービスを導入し、これらを拡充させることにより、消費者の需要を喚起し続けていく必要があります。これらの製品及びサービスは、年末商戦における消費者需要に特に影響を受けます。G&NS分野の売上及び収益性には、ストリーミングを含め、プラットフォームの導入及び普及の成否が重要な影響を及ぼし、この成否は、魅力的なソフトウェアの品揃えとオンラインサービスが消費者に提供されるか否かに影響されます。しかしながら、外部のソフトウェアの開発事業者や開発・販売事業者、主要な協力業者がソフトウェアの開発や供給をし続ける保証はありません。加えて、ソニーは、売上の拡大及び収益性の向上を図るために、ハードウェア、ソフトウェア、エンタテインメント・コンテンツ及びネットワークサービスの統合を促進させること、消費電力を最小限に抑えること、ならびにそのような統合の効果を達成するための研究開発への投資が不可欠であると考えています。しかしながら、この戦略は、ネットワークサービス技術のさらなる開発能力、ソニーの様々な事業ユニット・販売チャネル間の戦略上及びオペレーション上の課題の調整と適切な優先順位付け、ユーザーインターフェースを含むエネルギー効率に優れたネットワークプラットフォームをシームレスに接続するための、消費者にとって革新的であり、エネルギー効率に優れ、かつ価格競争力のある魅力的な高性能ハードウェアの継続的な提供に依存しています。そして、業界内やネットワークに接続可能なソニーの製品や事業間における技術やインターフェース規格の標準化を行う能力にも依存しています。加えて、G&NS分野、音楽分野及び映画分野では、消費者の支持を得られるかどうかが分かる前に、社内で開発されたソフトウェアのタイトル、アーティスト、ミュージック・カタログ、映画作品、テレビ番組の製作及び番組の放送に関連して、相当の先行投資を含め、多額の投資を行わなければなりません。さらに、映画作品の初期の流通市場における業績と、その後の流通市場における業績には高い相関性がみられるため、初期の流通市場における映画作品の業績が想定を下回った場合、公開年及び将来におけるソニーの業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 新製品及びサービスの導入ならびに切り替えの成功は、開発をタイムリーにかつ成功裏に完了させること、市場における受け入れ度合、効果的なマーケティング戦略の企画及び実行、新製品の導入の管理、生産立ち上げ時における課題への対処、新製品向けアプリケーションソフトウェアが入手できること、品質管理、及び年末商戦における消費者需要の集中度など、数多くの要素に依存しています。研究開発への投資に対して想定した成果を達成できない場合、新製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理できない場合、新製品やサービスが消費者に受け入れられない場合、又は統合戦略を実行できない場合、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) ソニーの戦略的目的を達成するための買収、第三者との合弁、投資、資本的支出、組織再編成、構造改革は成功しない可能性があります。

 ソニーは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁、資本的支出及びその他の戦略的出資を積極的に実施しています。例えば、2021年度には、少数持分を保有しているEpic Gamesへの追加の戦略的出資、Kobalt Music Group Limited(以下「Kobalt」)が保有する主にインディーズアーティストを対象とした音楽配給事業である「AWAL」、ならびに音楽の著作隣接権管理事業である「Kobalt Neighbouring Rights」に関するKobaltの子会社の全ての株式及び関連資産の取得、AT&T Inc.の子会社でアニメ事業Crunchyrollを運営するEllation Holdings, Inc.(以下「Ellation」)の持分の100%の取得、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limitedの子会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing㈱への少数持分出資ならびにブラジルの独立系音楽レーベルSom Livreに係る全株式及び関連資産の取得を行いました。2022年度には、米国の独立系ゲーム開発会社Bungieの全ての株式の取得、Epic Gamesへの追加の戦略的出資、本田技研工業株式会社とのモビリティ分野における合弁会社の設立を行いました。

買収や合併の完了は、関係当局の承認及び許可の取得等が条件となる場合がありますが、競争法制度や競争法当局の審査の厳格化により、確定契約締結後の審査に想定以上の時間がかかること又は承認もしくは許可を得られないこと等により、ソニーが事業機会を逸失し、当初想定した買収や合併の効果の一部又は全部を実現できない可能性があります。なお、本書提出日現在において、既に確定契約を締結し、関係当局の承認及び許可の取得等が取引完了の条件となっている買収や合併として、例えば、SPNIとメディア・コンテンツ事業を営むインドの上場会社であるZeeとの合併があります。

ソニーは、買収・合併する会社の技術、会計、税務、財務、人事及び法的な観点等における包括的な分析と評価を行いますが、多額の買収コスト又は統合費用の発生や、新たに買収した会社におけるIT及び情報セキュリティリスク、想定したシナジーが実現できないこと、期待された収益の創出とコスト改善の失敗、主要人員の喪失や債務の引受け等により、ソニーの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

ソニーが第三者と合弁会社を設立したり戦略的パートナーシップを構築する場合、ソニーの財政状態及び業績は、パートナーとの戦略の相違又は文化的相違、利害の対立、シナジーが実現できないこと、合弁会社及びパートナーシップ維持のために必要となる追加出資や債務保証、合弁パートナーからの持分買取義務、ソニーが保有する合弁持分の売却義務、もしくはパートナーシップの解消義務、キャッシュ・フローの管理を含む不十分な経営管理、特許技術やノウハウの喪失、減損損失、及びソニーブランドを使用する合弁会社の行為又は事業活動から受ける風評被害により、悪影響を受ける可能性があります。

ソニーは、スマートフォンやその他の製品向けイメージセンサー用製造設備を含む生産設備や装置に多額の投資を行っています。ソニーは、競争環境、想定を下回る消費者需要、ソニーの主要顧客の財政状態やビジネス上の意思決定の変更又は生産設備や装置の調達の遅れに起因して、これらの資本的支出を計画どおりに実行できない又は一部もしくは全部を計画した期間内に回収できない場合があります。ソニーは、イメージセンサーの生産能力増強などのために、2021年度及び2022年度にそれぞれ、2,371億円及び3,559億円の資本を投資しました。

さらに、ソニーは、収益力、事業の自律性及び株主価値を向上させ、また、ソニー全体の事業ポートフォリオにおける各事業の位置づけを明確にするため、構造改革及び事業構造変革の施策を実施しています。しかし、社内外で生じるビジネス上の阻害要因や予想を上回る市況の悪化が原因となり、想定された収益性レベルの達成を含め、これらの施策の実施によって期待される恩恵が得られない可能性があります。ソニーがこれらの施策を達成できない場合、ソニーの業績、財政状態、評判、競争力又は収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) ソニーの売上や収益性は卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績の影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、製品の流通を卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に依存しており、その多くが競合他社の製品を同時に取り扱っています。例えば、携帯電話キャリアを通して販売されるソニーのスマートフォンは、そのキャリアから補助金を受けている場合があります。これらのキャリアとの契約更新又は新しいキャリアと締結する契約において、今後もそのような補助金が同額で継続し、又は補助金そのものを継続的に受けられる保証はありません。映画分野では、映画配給においては第三者の映画館運営会社に、映画やテレビ番組の配信においてはケーブル、衛星、インターネット及びその他配信システムに依存しており、当該第三者からソニーが受領するライセンス料の減少が映画分野の売上に悪影響を与える可能性があります。映画分野における世界中のテレビネットワークを通じた配信も、第三者のケーブル、衛星及びその他配信システム経由で行われ、これらの第三者配信会社との契約を更新できない、又は不利な条件で契約を更新する場合は、これらの第三者ネットワークを通じた広告販売及び予約販売の実績に悪影響を及ぼす可能性があります。ソニーは、卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に対して、ソニー製品を市場に導入し、販売を促進するインセンティブを与えることを目的としたプログラムに資金を投入しています。しかしながら、それらのプログラムの提供が、消費者を競合他社の製品の代わりにソニー製品を買うように促し、結果的にソニーに大きな利益や追加収入をもたらすことを保証するものではありません。

 多くの卸売業者、小売業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績及び財政状態は、特にオンライン小売業者との競争と景気の後退により悪影響を受けます。これらの業者の財政状態が継続的に悪化したり、ソニー製品を取り扱うことを中止したり、もしくはソニー製品に対する需要が不透明になるなどの要因によりこれらの業者がソニー製品の発注数やマーケティング活動、販売奨励金、又は販売を減少させたり縮小させたりするような場合、ソニーの業績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。

 

(5) ソニーはグローバルに事業を展開しているため、多くの国々において広範な法規制の適用を受けるとともに、企業の社会的責任に関する消費者の関心の高まりに直面しています。これらの法規制や消費者及び規制当局の関心は大きく変わる可能性があり、その変化がソニーの事業活動費用の増加、事業活動の制約及びソニーの評判への悪影響につながる可能性があります。

 ソニーはグローバルに事業を展開しているため、広告、販売促進、消費者保護、輸出入、腐敗防止、反競争的行為、環境保護(気候変動対策にともなう脱炭素規制を含む)、データプライバシー及びデータ保護、コンテンツや放送規制、知的財産、労働、製造物責任、課税(デジタルサービスからの収入に係る税金を含む)、外国投資規制、政府調達、為替管理、経済制裁を含む多数の地域における事業活動に影響を与える世界中の多くの国々の法規制の適用を受けます。

 これらの法規制を遵守することは事業活動における負担をともない、また、遵守にともない費用が発生する可能性があります。これらの法規制は継続的に変更されるとともに、管轄ごとに異なるものとなる可能性があり、その遵守や事業遂行にかかる費用が増加する可能性があります。このような変更は、場合によっては頻繁に又は事前の通知なくして起こり、消費者にとってのソニー製品又はサービスの魅力の低下、新製品又はサービスの導入の遅延もしくは禁止、あるいはソニーの事業遂行の変更や制約に結びつく可能性があります。例えば、米国及びその他の地域における貿易制限措置及び報復措置の導入が、ソニーの製品に賦課される関税率の増加、部品の調達費用の増加、又は既存及び将来的なソニーの製品及びサービスの顧客への販売の制限又は中止につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。I&SS分野において、2020年8月17日に発表された米国政府による輸出規制に従い、ソニーの中国の特定顧客に対するイメージセンサーの出荷を同年9月15日から一時的に停止していました。その後、米国政府の輸出許可を得て、当該顧客に対する一部の出荷を再開したものの、輸出規制が発効する前に比べて、イメージセンサーの売上が減少しました。また、2020年度において、当該顧客向けのイメージセンサーの在庫に関する評価減を計上しました。加えて、ソニーがオンライン上を含め事業を行う上で依拠又は適用を受ける法規制又はそれに関連する裁判所の解釈に変化が生じた場合や、ソニーがこのような変化を想定できなかった場合にも、ソニーの法的責任に対するリスクの増加、法規制遵守のための費用の増加又は一部の事業活動に対する制限、制約もしくは中止を含む事業活動の変更につながる可能性があります。

 ソニー、又はソニーの役員・従業員、第三者サプライヤー、ビジネスパートナー、もしくは代理人が法規制に違反すると、ソニーが罰金、刑罰、法的制裁の対象となり、また、ソニーの事業遂行への制約や評判への悪影響につながる可能性があります。加えて、企業の社会的責任や調達活動を含むサステナビリティに係る取り組みに対し、全世界的に規制当局や消費者の注目が高まっており、また、これらの事項に関する情報開示の法的規制が強化されています。特に、アジア地域で操業する電子部品の製造事業者や製造/設計受託事業者(OEM/ODM)、製品の製造事業者における労働環境を含む労働慣行への注目が高まっています。ソニーは製品の製造に多くの部品や原材料を使用しており、それらの部品や原材料の供給を第三者サプライヤーに依存しているものの、第三者サプライヤーの調達活動や雇用慣行を直接的には管理していないため、これらの領域における規制の強化や消費者の関心の高まりによって、ソニーの法規制の遵守にかかる費用が増加する可能性があります。さらに、かかる法規制の不遵守があった場合、又は消費者の関心の高まりに対してソニーが適切に対処していないとみなされた場合には、それが法的に求められているか否かにかかわらず、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ソニーは市況変動の大きい環境のなか、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスの在庫量、入手可能性、費用及び品質をコントロールするために第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーからの大量かつ広範な調達品を管理する必要があります。

ソニーの製品やサービスは、例えば、半導体、プレイステーションのゲーム機及びモバイル製品向けチップセット、ならびにモバイル製品、テレビ及びサービスに利用されている液晶パネルやアンドロイドOSを含め、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスに関して、第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーに大きく依存しています。したがって、第三者サプライヤーやパートナーにおけるこれらの供給不足、当該第三者サプライヤーやパートナーから提供を受ける部品等の価格変動、品質問題、製造の中止、取引条件の変更、又は第三者サプライヤーやパートナーがエレクトロニクス領域以外の顧客あるいはソニーの競合他社を優先させた場合、ソニーの業績、ブランド及び評判に悪影響を与える可能性があります。例えば、ET&S分野では、2020年度の後半から2022年度の前半にかけて顕著であった世界的な半導体及びその他の部品不足の影響を受け、市場の需要に十分に対応できない状況が続きました。2022年度末時点では半導体及びその他の部品の世界的な需要は下落基調ではありますが、再び需要が旺盛になった場合はソニーの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者のソフトウェア及び技術への依存は、競合他社の製品とソニーの製品との差異化をますます難しくする可能性があります。さらに、特にソニーが一社に部品の調達を依存している場合、特注の部品の生産能力に限界がある場合、もしくは新しい技術を使用する製品の初期生産能力に制約がある場合には、部品の供給不足や出荷遅延が生じ、その結果、ソニー又はビジネスパートナーの製造事業所における生産調整又は生産停止が起こる可能性があります。

ソニーは消費者需要の予測にもとづいて事前に決定した生産量及び在庫計画に沿って部品を発注していますが、そうした消費者需要の変動は大きく、また、予測が難しいものです。不正確な消費者需要予測や不十分な在庫管理は、在庫不足もしくは過剰在庫を招き、その結果、生産計画に混乱が生じることにより売上の機会損失や在庫調整につながる可能性もあります。ソニーでは、部品や製品が陳腐化したり、在庫レベルが使用見込み数量を上回ったり、もしくは在庫の帳簿価額が正味実現可能価額を上回る場合には、在庫の評価減を行います。過去にこのような売上機会の損失及び在庫調整、ならびに部品の供給不足がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。

 

(7) ソニーの売上、収益性及び事業活動は、世界及び地域の経済動向及び政治動向ならびに情勢に敏感です。

 ソニーの売上及び収益性は、ソニーが事業を営む主要市場の経済動向に敏感です。2022年度のソニーの売上高及び金融ビジネス収入において、日本、米国、欧州における構成比はそれぞれ23.3%、29.5%、19.0%でした。これらの市場が深刻な景気後退に陥ると、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。ソニーの主要市場における経済状況の悪化や今後悪化するという見通しにより、最終消費が低迷して法人顧客の事業が悪影響を受け、その結果、ソニーの製品やサービスに対する需要が減少する可能性があります。

 また、ソニーは世界各地において事業活動を行っており、このような世界規模での事業遂行、特に一部の新興市場での事業遂行には困難がともなうこともあります。例えば、ET&S分野、I&SS分野及びG&NS分野においては、中国やその他のアジアの国々・地域において製品及び部品を生産、調達しているため、これらの地域外の市場に製品を供給するために要する時間が長くなり、変化する消費者需要に迅速に対応することがより難しくなる可能性があります。さらにソニーは、複数の国において、ソニーにとって望ましくない政治的・経済的な要因により、事業を企画・管理する上で困難に直面する可能性があります。この例としては、武力紛争、外交関係の悪化、通商政策の変更、期待される行動規範からの逸脱、及び十分なインフラの欠如などがあります。不安定な国際政治又は国内政治・軍事情勢が今後生じた場合、ソニーやそのビジネスパートナーの事業活動が阻害されることにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、2021年度に発生したウクライナ・ロシア情勢の悪化を受け、本書提出日現在において、ソニーはロシアにおける事業を中断しています。今後、情勢がさらに悪化した場合、国際情勢の不安をもたらし、ソニーの他地域での事業又は世界的な経済状況の悪化につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) ソニーの業績及び財政状態は外国為替変動の影響を受ける可能性があります。

 ソニーの製品の多くは開発、製造された国・地域と異なる国・地域で販売されるため、ソニーの業績と財政状態は外国為替相場の変動による影響を受けます。例えば、エレクトロニクス領域においては、研究開発費や本社間接費は主に円で、原材料及び部品の調達や外部委託生産を含む製造費用は主に米ドル及び円で発生しています。売上は日本・米国・欧州・中国・新興国市場を含むその他地域において、それぞれの地域の通貨で計上されています。結果として、特に米ドルに対する大幅な円安及びユーロ安や、ユーロに対する大幅な円高、ならびに新興国通貨に対する米ドル高は、ソニーの業績に悪影響をこれまでも及ぼしており、今後も及ぼす可能性があります。また、ソニーの連結損益計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成されていることから、外国為替相場の変動が、かかる換算にともないソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、近年では中国や新興国市場を含むその他地域におけるビジネス拡大とともに、これらの地域の通貨の米ドル及び円に対する為替レートの変動の影響も大きくなっています。中長期的な為替レート水準の変動により、ソニーの経営資源のグローバルな配分が妨げられたり、ソニーが研究開発、資材調達、生産、物流、販売といった活動を、収益力を保った形で遂行する能力が低下したりする可能性があります。

 また、ソニーは、短期の外貨建て債権債務(純額)の一部を取引が発生する前にヘッジすることで為替リスクの低下に努めていますが、かかるヘッジ活動によっても、ヘッジされている為替について限られた期間に為替が不利に変動する場合に、全くもしくは一部しか財政状態への悪影響を解消できない可能性があります。

 さらに、ソニーの連結財政状態計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成されるため、米ドル及びユーロならびにその他の外国通貨に対して円高が進行すると、ソニーの自己資本に悪影響を与える可能性があります。

 

(9) 信用格付けの低下や国際金融市場における深刻かつ不安定な混乱状況は、ソニーの資金調達や資金調達コストに悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの業績及び財政状態の悪化は、ソニーの信用格付け評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。信用格付けの低下は、資金調達コストの上昇を招き、ソニーのコマーシャル・ペーパー(以下「CP」)及び中長期債市場からの受諾可能な条件での調達に悪影響を与える可能性があります。

 また、国際金融市場が深刻かつ不安定な混乱状況に陥った場合、金融その他の資産価格全般に下落圧力が生じたり、資金調達に影響が生じたりする可能性があります。従来、ソニーは、営業活動によるキャッシュ・フロー、CP及び中長期債などのその他の債券の発行、銀行やその他の融資機関からの借入金などにより資金を調達してきました。しかしながら、将来にわたってこのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達が可能となる状況が継続するという保証はありません。

 その結果、ソニーは弁済期限到来時のCPや中長期債の返済、その他事業遂行上必要ある場合や必要な流動性を賄うために、金融機関と契約しているコミットメントラインや資産の売却などの代替的な資金源を活用する可能性がありますが、そのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達ができない可能性があります。その結果、ソニーの業績、財政状態及び流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) ソニーの成功は、挑戦心と成長意欲に満ちた多様な人材との良好な関係の維持と、それら人材の採用・確保に依存しています。

 ソニーが、ますます競争が激しくなる市場において、コンテンツの制作やサービスの開発、製品の設計、製造、マーケティング及び販売を継続するためには、マネジメント人材、クリエイティブな人材、及びハードウェアやソフトウェアエンジニアなどの高い専門性や豊富な経験を持った内部及び外部の重要な人材を惹きつけ、確保し、それらの人材との間で良好な関係を維持することが必要となります。しかしながら、そのような人材には高い需要があります。加えて、事業譲渡や構造改革及びその他の事業構造変革施策の実施により、経験豊かな人材やノウハウが意図せず喪失又は流出してしまう可能性があります。また、特にエンタテインメント領域において、労働組合によるストライキが生じた場合、又はそのおそれがある場合、作品のリリースの遅れやコストの増加につながることもあります。例えば、映画分野では、全米脚本家組合が2023年5月2日からストライキを開始しており、長期化した場合には、映画分野の業績に悪影響が出る可能性があります。さらに、日本国内においては、少子高齢化にともなう労働人口の減少や、企業間の専門人材獲得競争の激化、人件費の高騰などが進んでおり、人事制度の設計・運用が不十分である場合、必要な人材を確保することが困難となる可能性があります。もしこれらの事象が起きた場合、あるいは高い専門性や豊富な経験を持った人材や重要なマネジメント人材を惹きつけ、確保し、良好な関係を維持できなかった場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) ソニーの知的財産は不正利用や窃取の被害を受け、また、第三者が保有する知的財産のソニーによる利用が制限される可能性があります。

 ソニーは、ソニーの製品やサービスに関連する知的財産の不正利用や窃取の被害を受ける可能性があります。例えば、デジタル技術、デジタルメディアの利用及び世界的なインターネットの普及は、ソニーが著作権で保護されたコンテンツを違法コピー及び偽造等から保護することを困難にさせ、正規製品の販売にも悪影響を与えます。ソニーは、知的財産権の保護のために費用を計上しており、今後も引き続き費用を計上します。しかしながら、ソニーが行っているこれらの知的財産保護のための様々な取り組みが想定している効果を達成できない可能性があり、ソニーの競争上の地位や研究開発投資に悪影響を与えるおそれがあります。

 さらに、ソニーの知的財産権は、これらに関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、ソニーの知的財産権が、ソニーの競争力を維持するうえで十分ではない可能性があります。

 また、多くのソニー製品やサービスは第三者が保有する特許その他の知的財産権のライセンス供与を受けて設計されています。過去の経験や業界の慣行により、将来的にビジネスに必要な様々な知的財産権のライセンス供与を受け又は更新できるとソニーは考えていますが、全く供与されない、又は受諾可能な条件で供与されない可能性があります。そのような場合には、ソニーは、製品又はサービスの設計変更や、マーケティング、販売、あるいは提供もしくは配信の断念を余儀なくされる可能性があります。

 ソニーの製品やサービスに利用されている第三者の部品、ソフトウェア及びネットワークサービスを含め、ソニーの製品やサービスが、第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張がソニーに対してなされており、また、今後もなされる可能性もあります。特に、新規技術やより高度な機能が製品及びサービスに導入されるにともない、競合他社又は第三者の権利者から、かかる主張がなされる可能性があります。かかる主張により、ソニーは和解やライセンス契約の締結、又は多額の損害賠償金の支払いが必要となる可能性があり、差止命令、あるいはソニーの製品やサービスの一部についてマーケティング、販売、又は提供の中止に直面する可能性があります。

 ソニーの知的財産権の不正利用や窃取を防止できない場合、必要とされる第三者の知的財産権のライセンスが受けられない場合、ソニーの知的財産権が無効になる場合、又は第三者との間で知的財産の権利侵害の訴えについて和解が成立する場合は、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 新たな技術や配信プラットフォームによる消費行動の変化や、デジタル音楽配信会社による寡占度が高まること、及び配信会社自らがコンテンツを制作することは、音楽分野及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 音楽分野及び映画分野で使用される技術、特にデジタル技術は進化を続け、デジタルコンテンツの発掘及び消費の方法とプラットフォームは急速に変化しつつあります。このような技術の進歩は、消費者行動を変化させ、消費者が、デジタルコンテンツを消費するタイミング、場所及び方法を、これまでよりも消費者自身がコントロールすることを可能とさせています。

 デジタルストリーミングネットワークやその他新規メディアが普及した場合、従来のテレビ放送や劇場での映画鑑賞にも影響が及ぶことが考えられ、映画分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、より多くの音楽や映像コンテンツがデジタルストリーミングのネットワークで消費されることにより、デジタル音楽配信会社の寡占度がさらに高まり、ソニーの音楽コンテンツの競争力を減少させることで、ソニーの価格設定に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、デジタルの音楽や映像コンテンツの配信会社は自らのサービスのための自社制作コンテンツを増やす可能性があり、ソニーが制作するコンテンツに対する需要が減少する可能性があります。ソニーがこのような変化に適切に対応できない場合、又は新たな市場の変化に効果的に適応することができない場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(13) 法令改正や金融市場の動向などが、金融分野の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 ソニーの金融分野は、日本における保険や銀行といった法規制や監督の対象となる業界で事業を行っています。将来における法規制・政策などの改正・変更は、当該法規制や政策の遵守に対応するための費用の増加や事業活動に対する制約にもつながる可能性があります。なお、日本の監督官庁の指針にもとづく制約により、当社の金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されています。

 また、金融分野においては、金利及び外国為替レートの変動ならびに日本国債、国内社債、米国債、株式、不動産及びその他の投資資産の価値変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ソニーの生命保険事業では、保有契約から生じる長期の負債特性に見合うように、一般勘定資産のうち大部分を超長期日本国債及び国内社債ならびに超長期米国債に投資しています。生命保険事業では、上述の市況変動により投資ポートフォリオの利回りが低下する可能性がある一方で、残存する保険契約の予定利率を保証しています。また、ソニーの銀行事業では、住宅ローンが貸出金の大部分、総資産の過半を占めています。上述の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じ、損失評価引当金の積み増しが必要となり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの生命保険事業及び損害保険事業においては、上述の市況変動とこれらの変動に対するソニーの管理体制、又は日本における大地震や感染症などの疫病、あるいはその他の大規模災害の発生が、費用計上額の増加につながり、又は保険契約負債を履行する保険事業の能力に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 保険事業における保険契約負債は、不確実な多くの保険数理上の前提にもとづいて計算されています。その計算前提が大幅に変更された場合や、上述の市況変動により、金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、保険負債の計算前提は、各報告期間末日時点での見直しが求められています。

 

(14) 大規模な災害や停電、新型コロナウイルスを含む感染症などが生じた場合、ソニーの設備や事業活動は被害や損害を受け、それがサプライチェーンや、製造その他の事業遂行における混乱を引き起こし、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの本社及びイメージセンサー等の最先端の製造拠点の多くは、地震のリスクが比較的高い日本国内にあります。日本で大地震が起きた場合、特にソニーの本社がある東京、一般消費者向けエレクトロニクス製品の製造事業所が所在する東海地方、又はイメージセンサーの製造事業所が所在する九州地方及び東北地方で起きた場合には、建物や機械設備、棚卸資産が被害を受けたり、製造事業所では生産活動が中断したりするなど、ソニーの事業は大きな被害を受ける可能性があります。例えば、2016年4月14日以降に発生した平成28年(2016年)熊本地震の影響で、九州地方にあるイメージセンサー製造事業所に損傷があり、その事業所における製造が中断しました。

 また、ネットワーク、情報通信システムインフラ、研究開発、資材調達、製造、映画やテレビ番組の製作・制作、物流、販売及び、オンラインやその他のサービスに使用される、ソニーやサプライヤー、外部サービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの世界各地にあるオフィスや設備は、自然災害、新型コロナウイルスを含む感染症、テロ行為、武力紛争、大規模停電、大規模火災などの予期できない大惨事により、破壊されたり、一時的に機能が停止したり、混乱に陥ったりする可能性があります。これらのオフィスや設備のいずれかが前述の大惨事により重大な損害を受けた場合、事業活動の停止、設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、又はオフィスや設備の修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性があります。例えば、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大については、各地域で外出制限等の解除が進み、経済活動への影響も小さくなっていますが、今後の感染再拡大により経済活動が再び停滞した場合、ソニーの製品又はサービスの部品又は原材料の調達、生産、開発又は制作、及び販売又は提供に悪影響を及ぼし、結果として、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。G&NS分野では、部品のサプライチェーン上の問題からハードウェアの生産に再び悪影響が出る可能性があります。音楽分野では、対面でのコンサートその他のイベントの開催等が再び制限され、これらに関連する収益が減少する可能性があります。映画分野では、映画館が再び閉鎖された場合又は収容人数が制限された場合、劇場興行収入が減少する可能性があります。また、感染再拡大や外出制限等の感染対策の状況によっては、新作映画の製作やテレビ番組作品の制作のスケジュールの遅れ、広告収入の減少といった影響を再び受ける可能性があります。ET&S分野では、製造事業所の稼働停止や稼働率低下、サプライチェーンの混乱及び製品の販売店舗の世界的な閉鎖や休業による悪影響を受ける可能性があります。

 さらに、ソニーは、原材料及び部品の価格高騰や、法人顧客の需要減少による影響を受ける可能性があり、これらの場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動の影響で気温上昇が進むにつれて異常気象が激甚化・頻発化することにより、上記のリスク及び不確実な要素に悪影響を与える可能性があります。

 

(15) ソニーあるいは外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対する侵害又はその他の不正行為があった場合、ソニーのブランドイメージ及び評判や事業への悪影響が及ぶ可能性や、ソニーが法的な責任を追及される可能性があります。

 ソニーならびに外部のサービスプロバイダ、サプライヤー及びその他のビジネスパートナーは、情報技術を広範に活用することで営業活動を行い、また、顧客に対しネットワークサービスやオンラインサービスを提供しています。これらの事業及びサービス、ならびにソニーのビジネス情報は、国家が支援する組織を含む悪意をもった第三者、犯罪組織、ソニーの役員・従業員、ソニーもしくは外部のサービスプロバイダ又はその他のビジネスパートナーの故意又は過失により侵害を受ける可能性があります。そのような組織や個人は、悪意のあるソフトウェアをインストールしたり、情報技術の脆弱性を利用したり、ソーシャル・エンジニアリングを用いて役員・従業員やビジネスパートナーのパスワードや機密情報を開示させたり、分散DoS(サービス停止)攻撃を仕組んだりするなど、様々な技術の組み合わせにより、サービスを停止させる可能性があります。サイバー攻撃がますます高度化かつ自動化し、より容易にツールやリソースを利用できるようになりつつあることから、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。また、ソニーの役員・従業員は、新型コロナウイルス感染拡大以降、出社による勤務と在宅勤務を併用しており、今後もこのような働き方は継続することが予想されます。ソニーは、在宅勤務者に対し適切な情報セキュリティ保護が確実に実施されるように措置を講じていますが、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。その結果、個人を識別できる情報を含むソニーのビジネス情報の消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又は承諾を得ない第三者による不正アクセスが発生し、ソニー、あるいは外部のサービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの情報システム又は事業が破壊される可能性があります。また、悪意をもった第三者は、ソニーに知られることなく、ソニーの外部の事業パートナーを侵害するためのプラットフォームとしてソニーのネットワークに不正にアクセスする可能性があります。ソニーは過去に、高度かつ明確に標的を定めた攻撃の対象になったことがあります。例えば、G&NS分野のネットワークサービス、映画分野の社内ネットワーク及びITインフラ、ならびにソニーのウェブサイトが、不正アクセスやDoS(サービス停止)攻撃、役員・従業員の情報や顧客情報及びその他の情報を含むソニーのビジネス情報の窃取・漏洩、データ破壊などのサイバー攻撃の対象となったことがあります。

 こうした情報セキュリティに対する事象によって、多額の復旧費用が発生する可能性があります。加えて、ソニーのネットワークやオンラインサービス、情報技術への破壊行為、その他のソニーの情報セキュリティに対する侵害行為によって、売上の喪失、ビジネスパートナー及びその他の第三者との関係の悪化、専有情報の不正漏洩、改変、破壊あるいは悪用、ならびに顧客の維持や勧誘の失敗などが生じ、その結果、ソニーの事業や活動が重大な打撃を受ける可能性があります。さらに、これらの破壊や侵害行為がマネジメントの関心や経営資源の分散につながる可能性があります。他にも、メディアの報道に悪影響をもたらし、ソニーのブランドイメージや評判を傷つける可能性があります。また、ソニーは、訴訟や、規制当局による調査や法的措置を含む法的手続の対象となる可能性があります。ソニーが加入しているサイバー攻撃に対する保険は、発生する費用や損失の全額を填補できない可能性があり、その結果、ソニー又は外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対するそのような侵害その他の不正行為が、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(16) 訴訟及び規制当局による措置が不利な結果に終わった場合、ソニーの評判、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、様々な国において事業の遂行に関して、訴訟及び規制当局による措置に服するリスクにさらされています。訴訟及び規制当局による措置により、ソニーは、多額かつ不確定な損害賠償や事業活動に対する制約を要求される場合がありますが、その発生の可能性や影響の程度を予測するには相当の期間を要することがあります。例えば、公正な競争に反する市場慣行に関して規制当局が行う調査が、訴訟や規制当局による措置につながる可能性があります。多大な法的責任や規制当局による不利な措置が課された場合や、訴訟及び規制当局による措置への対応に多大なコストがかかった場合、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) ソニーは製品品質、製品セキュリティ及び製造物責任による財務上のリスクや評判を損なうリスクにさらされています。

 急速な技術の進化や、モバイル製品及びオンラインサービスに対する需要増にともない、一般消費者向けエレクトロニクス製品、業務用及び産業用製品、部品、半導体、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスなどのソニーの製品・サービスは一層高機能かつ複雑になっており、また、多くの製品が常にインターネットやソニー又は第三者が提供するサービスにつながっている環境におかれています。ソニーは、製品品質及び製品セキュリティを維持しながら、技術の急速な進展や、モバイル製品及びオンラインサービスの需要増加に対応できない可能性があり、これにより、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、ソニーの評判に悪影響を及ぼし、製品回収やアフターサービスなどの費用が発生する可能性があります。加えて、既存の製品及びサービスへの販売後のアップグレード、機能の拡充、又は新機能の導入に成功しない可能性や、既存の製品及びサービスを、他の技術及びオンラインサービスとの間で便宜的かつ効果的に連携させ続けることができない可能性があります。その上、インターネットに接続されている製品に対するサイバー攻撃は劇的に増加しており、ソニーの製品・サービスが他者からの攻撃にさらされる事態、顧客情報ならびにソニー及び他社の技術情報が流出する事態、又は製品・サービスが利用不能となる事態や他者への攻撃に悪用される事態が生じるおそれがあります。ソニーが導入したセキュリティ対策は、ソニーの製品及びサービスに対する侵害の防止を保証することはできません。

 そのため、ソニーの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招く可能性があり、その結果、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、根拠の有無にかかわらず、ソニー製品に関するセキュリティ脆弱性、健康面や安全性の問題に関する申立て又は訴訟は、直接的に、ソニーのブランドイメージや、高品質な製品やサービスを提供する企業であるという評価に対して影響を与え、その結果として、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題は、ソニーがその製品を製造したか否かに関係なく、また、ソニーが直接顧客に販売する製品のみならず、半導体などのソニー製の部品が搭載された他社製品においても生じる可能性があります。

 

(18) ソニーの業績及び財政状態は確定給付制度債務により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、確定給付年金制度ごとの確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除した金額を確定給付負債又は資産の純額として認識しています。制度資産の公正価値が確定給付制度債務の現在価値を超過している場合、資産計上額は、利用可能な制度からの返還及び将来掛金の減額の現在価値を上限としています。制度資産の公正価値の減少や割引率の低下、その他の年金数理計算前提となる比率の変動による確定給付制度債務の現在価値増加にともない確定給付負債又は資産の純額が増加又は減少し、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、ソニーの業績及び財政状態は、日本の確定給付企業年金法の年金積立要求により悪影響を受ける可能性があります。確定給付企業年金法により、ソニーは定期的な財政再計算や年次の財政決算を含む年金財政の検証を行うことが求められています。法定の責任準備金などに対して制度資産の公正価値がこれを下回り、かつ法令もしくは特別な政令などにより認められた期間内にそのような状況が回復しないと見込まれる場合には、ソニーは年金制度への追加拠出が必要となり、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。同様に、海外の年金制度についても各国の法令にもとづき追加拠出が必要となる場合、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。また、今後、法令が定める掛金の更新にともなって制度資産の長期期待収益率などの前提を見直したことにより、年金制度への拠出金の水準が引上げられた場合、ソニーのキャッシュ・フローに対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 繰延税金資産に対して評価減を計上している税務管轄におけるさらなる損失の発生、ソニーが繰延税金資産を最大限に利用できないこと、各国の法令にもとづく繰延税金資産の使用の制限、追加的な税金負債あるいは税率の変動がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人所得税を課されており、通常の営業活動において連結会社間の移転価格取引により最終的な税額の決定に不確実な状況が多く生じています。また、ソニーは、多くの税務管轄において税務当局から継続的な調査を受けています。ソニーの税金引当額、及び繰越欠損金や繰越税額控除を含む税金資産の帳簿価額の計算には将来の課税所得の見積りを含む高度な判断と見積りが要求されます。ソニーは、決算日において、繰延税金資産に対して計上している評価減の妥当性を判断するため、これら資産の再評価を行います。2023年3月31日現在、総額で2,373億円の評価減が計上されています。これら評価減の増加は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 繰延税金資産は、税務管轄ごとに評価されます。2023年3月31日時点において、ソニーは主に日本において地方税に係る評価減を計上しています。さらに、充分な課税所得を適切な税務管轄内で生み出せないなど様々な理由により、繰延税金資産は未使用のまま消滅、又は回収できない可能性があります。繰延税金資産が未使用のまま消滅した場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 一部の税務管轄において、繰越欠損金又は繰越税額控除の使用が、翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されており、ある特定の要因の所得との相殺にしか使用できない場合があります。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、多額の繰越欠損金又は繰越税額控除があるにもかかわらず、税金の支払いが発生するため税金費用を計上する可能性があります。

 また、ソニーの将来における実効税率は、法定税率の変更や異なる法定税率が適用される各国での利益の割合の変化、又は最低税率に関する枠組み、ロイヤルティや利息の損金算入制限、及び税額控除の使用制限を含む租税法規の改正やそれらの解釈の変更などにより不利な影響を受ける可能性があります。

 上記に加え、ソニーのビジネスには、実効税率に直接影響しないものの、デジタルサービス税を含む新たな形態の総収益に対する課税や取引税が課される可能性があり、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) ソニーは、のれん、コンテンツ資産、その他の無形資産、もしくは有形固定資産の減損損失を計上する可能性があります。

 ソニーは多くののれん、コンテンツ資産、その他の無形資産ならびに製造施設及び設備を含む有形固定資産を保有しています。これらの資産については、業績の悪化や時価総額の減少、将来のキャッシュ・フローの見積額の減少、世界経済情勢の変化、減損の判定に用いられる高度な判断を必要とする見積り・前提の変更により、減損損失を計上する可能性があります。減損の可能性を示す事象又は状況の変化には、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などが含まれます。なお、ソニーがさらされている国際的な競争環境の激化や技術動向の急激な変化により、減損の判定に用いられる見積り、前提及び判断が変動し、減損損失の計上の可能性が増加することがあります。このような減損損失の計上は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものです

(1)重要な会計上の見積り

 IFRSにしたがった連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような、マネジメントによる見積り・仮定を必要とします。ソニーは、継続的に、過去のデータ、将来の予測及び状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な仮定にもとづき見積りを評価します。これらの評価の結果は、他の方法からは容易に判定しえない資産・負債の簿価あるいは費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、これらの見積りと大きく異なる場合があります。ソニーは、会社の財政状態や業績に重要な影響を与え、かつその適用にあたってマネジメントが重要な判断や見積りを必要とするものを重要な会計上の見積りであると考えます。ソニーは、以下に述べる項目を会社の重要な会計上の見積りとして考えています。なお、会計上の見積りの各項目に関連する会計方針については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『3.重要な会計方針の要約』をご参照ください。

金融商品

 ソニーは、金融商品の契約の当事者になった時点で、金融商品を金融資産又は金融負債として認識しています。金融資産及び金融負債は公正価値で当初測定されます。

 ソニーの保有する金融商品は測定方法にしたがって分類され、このうち公正価値で測定される金融商品については、将来における公正価値の変動により連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 また、負債性証券の信用損失の評価は、多くの場合、主観的であり、発行企業の信用格付け、業績予想、事業計画及び将来キャッシュ・フローに関するある特定の前提及び見積りが必要とされます。したがって、現在、信用損失がないと判断している負債性証券について、信用格付けの低下、継続的な業績の低迷、将来の世界的な株式市況の大幅悪化又は市場金利変動の影響等の事後的に利用可能となる情報の評価にもとづき、将来、信用損失に関する引当金が測定され、費用として認識されることにより、将来の収益を減少させる場合があります。

非金融資産の減損

 ソニーは、棚卸資産、契約コスト及び繰延税金資産を除く非金融資産について、個々の資産又は資金生成単位に係る減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能性の検討を行っています。これに加え、各資金生成単位に配分されているのれん、耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産の帳簿価額については、年に1回第4四半期に減損テストを実施しています。

 

 当年度の減損判定において、のれんを持つ全ての資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。また、重要なのれんを持つ資金生成単位において回収可能価額は帳簿価額を少なくとも10%以上超過しています。耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産においても、回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、減損損失を認識することはありませんでした。

 

 中期計画を除く、2022年度ののれんの減損判定において実施された資金生成単位の回収可能価額への影響に関する感応度分析を含む重要な前提の検討は下記のとおりです。

・税引後割引率は2.6%から15.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、割引率を1ポイント増加させた場合においても、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。

・G&NS分野、ET&S分野、I&SS分野及び金融分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューに適用された成長率はおおよそ1.0%から1.5%の範囲です。音楽分野の資金生成単位における中期計画を超える期間の成長率は1.0%から3.0%の範囲、映画分野では△5.0%から21.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、成長率を1ポイント減少させた場合においても、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。

・映画分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューの算定に使用される利益倍率は1.5から12.0、収益倍率は1.3から1.5です。他の全ての前提を同一とし、利益倍率を1.0、収益倍率を0.25それぞれ減少させた場合においても、重要なのれんの減損損失を認識することはありませんでした。

 マネジメントは、のれんの減損判定における回収可能価額の見積りに用いられた前提は、合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、回収可能価額の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、結果として、将来においてソニーが非金融資産の減損損失を認識することになる可能性があります。

企業結合

 被取得企業における識別可能資産及び負債は、限定的な例外を除き、取得日の公正価値で測定しています。

 企業結合で移転された対価、被取得企業の非支配持分の金額及びソニーが従来保有していた被取得企業の資本持分の公正価値の合計が、取得日における識別可能資産及び負債の正味価額を上回る場合にはその超過額がのれんとして認識され、下回る場合には純利益として認識されます。

 見積りや前提には固有の不確実性が含まれるため、この移転された対価は異なる金額で評価され、識別可能資産及び負債に割り当てられる可能性があります。実際の結果が異なる可能性があること又は予想しない事象及び状況がこのような見積りに影響を与える可能性があることから、識別可能資産及びのれんの減損損失の計上又は識別可能負債の増加が必要となる可能性があります。

 

映画分野における予想総収益の見積り

 映画会計においては、作品のライフサイクルを通した予想総収益を見積もる過程でマネジメントの判断が必要となります。この予想総収益の見積りは、繰延映画製作費及び映画分野における未払分配金債務の測定にあたり重要となります。

 映画作品が製作され関連する費用が資産化される際に、その繰延映画製作費の公正価値が減損し、回収不能と見込まれる額を評価減する必要があるかどうかを決定するため、マネジメントは発生時に費用化される配給関連費用を含む追加で発生する費用を控除した予想総収益を見積もる必要があります。また、ある映画作品に関する売上原価として認識される繰延映画製作費の額は、その映画作品がそのライフサイクルにおいて様々な市場で公開されることから、残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合にもとづいて計上されています。

 マネジメントが各作品の予想総収益を見積もる際に基礎とするのは、同種の過去の作品の収益、主演俳優の人気度、その作品の公開される予測映画館数、BD/DVDなどのパッケージメディアやデジタル販売、テレビ放映及びその他の付随マーケットでの期待収益ならびに将来の売上に関する契約などです。この見積りは、各作品の直近までの実現収益及び将来予測収益にもとづいて定期的に見直されます。例えば、公開当初数週間の劇場収入が予想を下回った場合には、通常、劇場、BD/DVDなどのパッケージメディアやデジタル販売、及びテレビ放映の生涯収益などを下方に修正することになります。そのような下方修正を行わなかった場合、当該期間における映画製作費の償却費の過少計上になる可能性があります。さらに、未払分配金債務は残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合に応じて計上されます。

 

繰延税金資産の評価

 繰延税金資産は、将来それらを利用できる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識しています。したがって、繰延税金資産の計上金額は、繰延税金資産の回収可能性に関連する入手可能な証拠にもとづいて、定期的に評価されます。

 

 繰延税金資産の評価は、財政状態計算書日時点で適用されている税制や税率にもとづいており、また、ソニーの財務諸表及び税務申告書で認識されている事象に関して将来に起こり得る税務上の結果についてのマネジメントの判断と最善の見積り、様々な税務戦略を実行する能力、一定の場合においての将来の結果に関する予測、事業計画及びその他の見込みを反映しています。ソニーが事業を行っているそれぞれの税務管轄における現在の税制や税率の改正は、実際の税務上の結果に影響を与える可能性があり、市場経済の悪化やマネジメントによる構造改革の目標未達は、将来における業績に影響を与える可能性があります。そして、これらのいずれかが、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。将来の結果が計画を下回る場合、税務調査の結果や連結会社間の移転価格に関する事前確認制度の交渉が現在の損益配分に関する予想と異なる結果となる場合、及び税務戦略の選択肢が実行可能ではなくなる場合や売却を予定する資産の価値が税務上の簿価を下回ることになる場合には、繰延税金資産に対して評価減の計上が要求される可能性があります。一方、将来の予測される利益の改善や継続した利益の計上、ビジネス構造の変革といった他の要因によって、関連し得る要因の評価の結果、将来において、税金費用の減額をともなう評価減の戻し入れが計上される可能性があります。現在の見込みにおいて予想していないこれらの起こり得る要因や変化は、評価減が計上又は取崩される期間において、ソニーの業績又は財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

繰延保険契約費

 新規保険契約の獲得もしくは保険契約の更新に直接関連し、かつそれに応じて変動する費用のうち、回収できると認められるものについては繰り延べています。繰り延べの対象となる新規契約費用は、保険契約募集手数料(費用)、診査及び調査費用等から構成されます。繰延保険契約費については、資産計上した金額が見積粗利益又は保険料から保険給付金及び事業費を控除した額の現在価値を超えていないことを検証するために、少なくとも年1回、回収テストが行われます。伝統的保険商品に関する繰延費用は、保険契約債務の計算と共通の基礎数値を用いて関連する保険契約の保険料払込期間にわたり償却されます。非伝統的保険商品に関する繰延費用は、見積期間にわたり関連する保険契約の見積粗利益の現在価値にもとづく一定の比率により償却されます。見積粗利益の現在価値算定における重要な仮定として資産運用利回り、死亡率、解約率及び割引率などを使用しています。

 

保険契約債務

 保険契約債務は、保険契約者に対する将来の予測支払額の現在価値として計上されています。これらの債務は将来の資産運用利回り、罹患率、死亡率及び解約率等の要因についての予測にもとづき平準純保険料式の評価方法により算定されます。これらの見積り・予測は定期的に検証されています。また、保険契約債務には変額個人年金保険契約及び変額保険契約における最低保証給付に対する債務を含んでいます。

 

生命保険ビジネスにおける契約者勘定

 生命保険ビジネスにおける契約者勘定に関する負債は、会計期間末日での契約者の給付に生じた契約の価値を表しています。負債は一般的に、累積的な積立額に付与利息を加え、契約者の引出額と残高に対して課せられるその他の手数料を差し引いたものです。生命保険ビジネスにおける契約者勘定には最低保証が付帯する変額個人年金保険契約及び変額保険契約に関する債務を含んでいます。

(2)生産、受注及び販売の状況

 ソニーの生産・販売品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また、ゲーム機やゲームソフト、音楽・映像ソフト、エレクトロニクス機器等は、その性質上、原則として見込生産を行っているため、分野別に生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。販売の状況については後述の「(3)経営成績の分析」において各分野の業績に関連付けて示しています。

 

 

(3)経営成績の分析

 

営業概況

 

 

2021年度

(億円)

2022年度

(億円)

売上高及び金融ビジネス収入

99,215

115,398

営業利益

12,023

12,082

税引前利益

11,175

11,803

当社株主に帰属する当期純利益

8,822

9,371

 

連結業績

売上高

 2022年度の売上高及び金融ビジネス収入(以下「売上高」)は、前年度比1兆6,183億円増加し、11兆5,398億円となりました。この大幅な増収は、G&NS分野、I&SS分野、音楽分野及び映画分野の大幅な増収、ならびにET&S分野の増収によるものです。売上高の内訳の詳細については、後述の「分野別営業概況」をご参照ください。

 

 (後述の「売上原価」、「研究開発費」及び「販売費及び一般管理費」に関する売上高に対する比率分析において、売上高には、純売上高のみが考慮されており、金融ビジネス収入は除かれています。これは、金融ビジネス費用は連結財務諸表上、売上原価や販売費及び一般管理費とは別に計上されていることによります。さらに、後述の比率分析のうち、セグメントに関するものについては、セグメント間取引を含んで計算されています。)

 

売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業損(益)(純額)

 2022年度の売上原価は、前年度比1兆3,289億円増加して7兆1,747億円となり、売上高に対する比率は前年度の69.6%から71.1%に悪化しました。

 研究開発費(売上原価に全額含まれる)は、前年度比1,173億円増加して7,357億円となり、売上高に対する比率は前年度の7.4%から7.3%になりました。(詳細は「第2 事業の状況」『6 研究開発活動』参照)

 販売費及び一般管理費は、前年度比3,807億円増加し、1兆9,692億円になりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は前年度の18.9%から19.5%に悪化しました。

 その他の営業損(益)(純額)は、前年度比535億円減少し、120億円の利益となりました。この悪化は、主に前年度に映画分野においてGame Show Network, LLCの一部の事業譲渡にともなう利益700億円があったことによるものです。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『31.連結損益計算書についての補足情報』参照)

 

持分法による投資利益(損失)

 2022年度の持分法による投資利益(損失)は、前年度比ほぼ横ばいの244億円の利益となりました。これは、エムスリー㈱の持分法による投資利益の減少などがあったものの、主に音楽分野及び映画分野における投資利益の増加によるものです。エムスリー㈱の持分法による投資利益の減少は、前年度にエムスリー㈱の関連会社が上場にともない新株発行を行ったことによるエムスリー㈱で計上された持分変動利益に係る持分法投資利益51億円の計上があったことによるものです。

 

営業利益

 2022年度の営業利益は、前年度比ほぼ横ばいの1兆2,082億円となりました。これは、映画分野及びG&NS分野の大幅な減益ならびにET&S分野の減益があったものの、金融分野、I&SS分野及び音楽分野の大幅な増益、ならびに全社(共通)及びセグメント間取引消去の損失の大幅な縮小によるものです。なお、前年度の営業利益には、前述のその他の営業損(益)(純額)として計上された要因が含まれています。また、前年度の営業利益には、ソニー生命の子会社における不正送金による損失168億円ならびに主に全社(共通)及びセグメント間取引消去に計上されている一部の米国子会社における確定給付型年金制度終了にともなう清算益55億円が含まれています。当年度の営業利益には、音楽制作及び音楽出版における訴訟に関する和解金の受領の影響(関連費用控除後)57億円及びソニー生命の子会社において前年度に発生した不正送金に係る資金回収221億円が含まれています。

 

金融収益及び費用

 2022年度の金融収益は、前年度から118億円増加し、311億円となりました。一方、金融費用は前年度に比べ452億円減少し、590億円となりました。金融収益から金融費用を差し引いた純額は、前年度比569億円改善し、279億円の費用となりました。この大幅な改善は主に、Spotify Technology S.A.株式などの評価損が減少したことによるものです。

 

税引前利益

 2022年度の税引前利益は、前年度比628億円増加し、1兆1,803億円となりました。

 

法人所得税

 2022年度の法人所得税は、当年度において2,367億円を計上し、実効税率は前年度の20.5%を下回り、20.1%となりました。当年度の税率には、日本における税額控除額の増加及び日本における外国子会社合算税制に係る繰延税金負債の減少の影響が反映されています。なお、前年度の税率には、一部の日本の会社における繰延税金資産に対する以前に計上した評価減の戻入れの影響が反映されていました。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『25.法人所得税』参照)

 

非支配持分に帰属する当期純利益

 2022年度の非支配持分に帰属する当期純利益は、前年度比3億円増加し、65億円となりました。

 

当社株主に帰属する当期純利益

 2022年度の当社株主に帰属する当期純利益(非支配持分に帰属する当期純利益を除く)は、前年度比549億円増加し、9,371億円となりました。

 基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の711.84円に対し、2022年度は758.38円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の705.16円に対し、2022年度は754.95円となりました。(1株当たり当社株主に帰属する当期純損益の詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『26.基本的及び希薄化後EPSの調整表』参照)

 

分野別営業概況

 以下の情報はセグメント情報にもとづきます。各分野の売上高はセグメント間取引消去前のものであり、また各分野の営業損益はセグメント間取引消去前のもので配賦不能費用は含まれていません。(「第5 経理の状況」 連結財務諸表注記『4.セグメント情報』参照)

 

G&NS分野

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

デジタルソフトウェア・アドオンコンテンツ

1,424,459

1,523,045

ネットワーク

409,355

464,676

ハードウェア・その他

840,542

1,550,812

外部顧客向け売上高の合計

2,674,356

3,538,533

セグメント間取引

65,407

106,065

セグメント売上高

2,739,763

3,644,598

セグメント営業利益

346,089

250,006

 

 

 

主要製品の売上台数

(万台)

(万台)

PS5™ハードウェア

1,150

1,910

 

 2022年度のG&NS分野の売上高は、前年度比9,048億円増加し、3兆6,446億円となりました。この大幅な増収は、アドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームソフトウェア販売減少などがあったものの、主に為替の影響やハードウェアの売上増加及び自社制作ゲームソフトウェア販売の増加によるものです。

 営業利益は、前年度比961億円減少し、2,500億円となりました。この大幅な減益は、主にゲームソフトウェア開発費及びBungie等の当年度に取引を完了した買収にともなう費用*を中心としたコスト増や前述の自社制作以外のゲームソフトウェア販売減少の影響によるものです。この減益は、前述の自社制作ゲームソフトウェア販売の増加の影響やハードウェアの損失縮小により一部相殺されています。なお、当年度の為替の悪影響は324億円でした。

 

* 当年度に取引を完了した買収にともなう費用として527億円を計上しました。なお、Bungieの買収に関する詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『30.企業結合』をご参照ください。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、下半期にPS5™の供給が大きく改善したことによるハードウェア及び周辺機器の販売好調と、3つのティアで構成される新たなプレイステーション®プラスのローンチの好影響によるネットワークサービスからの継続的かつ安定した収益貢献を反映したものとなりました。一方、ソフトウェア販売については、『God of War: Ragnarök』などの一部の新作タイトルの販売が好調だったものの、新型コロナウイルス感染縮小による外出機会の増加にともなうユーザーのゲーム支出減少の影響を受けました。このような環境下、プレイステーションのエコシステムのアクティブユーザー数増加を通じた今後の成長に向けて、三つの成長戦略として、コンソールの成長、ポートフォリオの拡大及びソニーグループ内連携のための取り組みを進めていきます。コンソールの成長については、ユーザーエンゲージメントをけん引しているPS5™のユーザーベースのさらなる拡大のために、PS5™の普及をさらに加速していきます。ポートフォリオの拡大については、PlayStation Studiosへの積極的な費用投下やサードパーティスタジオに対する出資・買収などを継続的に実施することにより、新規IPとライブサービスゲームの開発を強化していきます。例えば、今後のライブサービスゲーム領域におけるポートフォリオ拡大の推進にあたって、2022年7月のBungieの買収完了以降、同社と密接に連携し、その専門性や経験を活用しています。また、PCやモバイルといったマルチプラットフォームに自社制作ソフトウェアを展開することで、既存IPのリーチ拡大にも取り組んでおり、2022年度には『Marvel’s Spider-Man』や『The Last of Us Part 1』などのPC向けタイトルの売上が前年度比で大幅に増加しました。ソニーグループ内連携については、2022年度に『The Last of Us』のテレビシリーズのヒットがあったように、プレイステーションのゲームIPの映画化・テレビ番組化を着実に進めており、さらなる連携強化に取り組んでいきます。

 

音楽分野

 音楽分野の業績には、日本のSMEJの円ベースでの業績、ならびにその他全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、SME及びSMPの円換算後の業績が含まれています。

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

音楽制作(ストリーミング)

462,368

598,868

音楽制作(その他)

206,412

286,270

音楽出版

200,334

276,665

映像メディア・プラットフォーム

231,418

203,012

外部顧客向け売上高の合計

1,100,532

1,364,815

セグメント間取引

16,417

15,817

セグメント売上高

1,116,949

1,380,632

セグメント営業利益

210,933

263,107

 

 2022年度の音楽分野の売上高は、前年度比2,637億円増加し、1兆3,806億円となりました。この大幅な増収は、アニメ事業の収入減少による映像メディア・プラットフォームの減収があったものの、主に為替の影響ならびに音楽制作及び音楽出版の増収によるものです。音楽制作及び音楽出版の増収は、音楽制作における新作リリースのヒットもあり、主に有料会員制ストリーミングサービスからの収入が増加したことによるものです。

 営業利益は、前年度比522億円増加し、2,631億円となりました。この大幅な増益は、前述の映像メディア・プラットフォームの減収の影響があったものの、主に為替の好影響や前述の音楽制作及び音楽出版の増収の影響ならびに音楽制作及び音楽出版における訴訟に関する和解金の受領の影響(関連費用控除後で57億円)によるものです。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、世界的にデジタルストリーミング配信の拡大が続く中、Alamo Records、Som Livre、AWALなどを含めた過去に積極的に行った買収を含めたアーティストの発掘・育成の強化によるストリーミングサービスからの収入の増加を反映したものとなりました。このような環境下、ソニーは市場成長を上回る継続的な成長の実現に向けた施策として、コンテンツIP強化やアーティストとの関係強化のための積極的な投資、The Orchardを核にしたディストリビューション・レーベルに対するサービスの強化、AWALなどを通じた新興アーティストとの接点の早期確保、ならびに新興市場におけるローカルタレントへの積極的な投資やローカル企業との協業などによる新興市場へのアプローチの強化を進めていきます。さらに、ソーシャルメディアやゲームなどの新たな事業機会も引き続き増加しており、今後もこのような新規事業領域において、多様なサービスパートナーとの連携を通じて、音楽コンテンツの新たな利用機会の創出による収益基盤の拡大と、アーティストにとっての収益拡大の機会の創出によるアーティストとの関係強化に取り組んでいきます。加えて、ソニーグループの多様性を活かし、アーティストに幅広いマーケティングの機会を提供していきます。また、映像メディア・プラットフォームにおいては、マーチャンダイジングや海外販売の拡大及び制作力強化によるアニメ事業の成長、ならびにファンエンゲージメントの向上やクオリティの高いゲーム開発の推進によるゲーム事業の成長を図っていきます。

 

映画分野

 映画分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結しているSPEの円換算後の業績です。ソニーはSPEの業績を米ドルで分析しているため、一部の記述については「米ドルベース」と特記してあります。

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

映画製作

518,840

464,043

テレビ番組制作

419,494

536,250

メディアネットワーク

298,065

364,594

外部顧客向け売上高の合計

1,236,399

1,364,887

セグメント間取引

2,512

4,535

セグメント売上高

1,238,911

1,369,422

セグメント営業利益

217,393

119,255

 

 2022年度の映画分野の売上高は、前年度比1,305億円(11%)増加し、1兆3,694億円となりました(米ドルベースでは、8%の減収)。この米ドルベースでの減収は、主に映画製作において「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」、「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」などの大型作品の貢献があった前年度に比べ、当年度劇場興行収入が減少したこと、テレビ番組制作において前年度に「サインフェルド」のライセンス収入があったこと、及び、映画製作において前年度に動画配信サービスへライセンスした新作映画の作品数が多かったことによるものです。この減収は、テレビ番組制作における作品の納入数の増加やIndustrial Media及びBad Wolfの買収の影響、ならびにCrunchyrollの買収の影響を含むアニメ専門DTCサービスにおける増収などにより一部相殺されています。

 営業利益は、前年度比981億円減少し、1,193億円となりました(米ドルベースでは、54%の減益)。この米ドルベースでの大幅な減益は、主に前年度にGame Show Network, LLCの一部門であるGSN Gamesの事業譲渡にともなう譲渡益700億円の計上があったこと及び前述の減収の影響によるものです。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、前年度における大型作品の貢献やGSN Gamesの譲渡益及び「サインフェルド」のライセンス収入の計上の剥落による影響があったものの、動画配信サービスからのコンテンツへの継続的な需要があったことや米国における劇場興行収入の回復が進んだことを背景に、ストラテジックサプライヤー(あらゆる配信プラットフォームにコンテンツを提供できる独立系コンテンツサプライヤー)としてのソニーの強みを反映したものとなりました。このような環境下、ストラテジックサプライヤーとしての強みを活かすとともに、映画作品の劇場公開を重視する戦略を継続し、引き続き作品の長期的な価値最大化をめざします。映画製作においては、新規IPの展開及び既存IPの再活性化を進めていきます。2023年度には『Spider-Man: Across the Spider-Verse』や『Kraven the Hunter』といった映画作品の劇場公開を通じて、Sony Pictures Universe of Marvel Charactersの展開を拡大していく予定です。テレビ番組制作においては、多様なコンテンツに対するニーズに対応するために、ドキュメンタリーやリアリティ番組を含む様々なノンフィクションジャンルにおける制作能力を引き続き強化していきます。加えて、映画製作やテレビ番組制作におけるソニーグループ内連携の取り組みも継続しており、2022年の『アンチャーテッド』の劇場公開や2023年のテレビシリーズ『The Last of Us』の成功に続き、今後もプレイステーションのゲームIPを題材とした作品展開を拡大していきます。メディアネットワークにおいては、CrunchyrollやSonyLIVなどのDTCサービスの展開をさらに強化していきます。例えば、Crunchyrollは、2022年度には、アニメグッズの販売会社Right Stuf, Inc.の買収を通じてファン向けのeコマースサービスを強化しました。2021年12月にSPNIとZeeとの合併に関する確定契約の締結を発表しましたが、本合併により、急成長するインドのメディア・エンタテインメント市場において、両社の強みを活かしデジタル配信サービスを強化していくことで、事業拡大とデジタル化をさらに加速していくことをめざします。また、ソニーは、ロケーションベースエンタテインメント領域においても既存IPからの収益機会を積極的に追求していきます。

 

ET&S分野

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

テレビ

858,837

733,251

オーディオ・ビデオ

326,704

391,608

静止画・動画カメラ

414,898

565,018

モバイル・コミュニケーション

365,864

356,771

その他

331,583

390,091

外部顧客向け売上高の合計

2,297,886

2,436,739

セグメント間取引

41,300

39,286

セグメント売上高

2,339,186

2,476,025

セグメント営業利益

212,942

179,461

 

 

 

主要製品の売上台数

(万台)

(万台)

テレビ

850

660

 

 2022年度のET&S分野の売上高は、前年度比1,368億円増加し、2兆4,760億円となりました。この増収は、販売台数の減少によるテレビの減収があったものの、主に為替の影響及び販売台数の増加によるデジタルカメラの増収によるものです。

 営業利益は、前年度比335億円減少し、1,795億円となりました。この減益は、前述のデジタルカメラの増収の影響があったものの、主にテレビの減収の影響によるものです。なお、当年度の為替の好影響は94億円でした。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、中国での断続的な新型コロナウイルス感染再拡大による生産及び物流の混乱や欧米を中心とした市場減速などの厳しい事業環境の中、これらに機敏に対応するための徹底したサプライチェーンマネジメントや固定費削減などの各種施策を実行するとともに、テレビやデジタルカメラを中心に高付加価値商品へのシフトを推進した成果を反映したものとなりました。このような環境下、当分野では、収益性の維持向上をめざす「収益軸事業領域」と新規事業の創出・拡大による成長をめざす「成長軸事業領域」の二軸での事業構造を確立するという方針のもと、事業運営を行っていきます。収益軸事業領域においては、生産から販売までの一貫したDX化や自動化の推進によるオペレーション強化を進めていきます。また、サウンドやイメージングの独自技術を活かしたキャプチャリングデバイスの強みに加え、通信やクラウドといったテクノロジーを活かしたクリエイティブソリューションを加えることで、クリエイターと新たな体験価値を創造するとともに、リカーリング型の事業モデルへとポートフォリオをシフトさせ、ボラティリティの低減をめざします。成長軸事業領域においては、クリエイターとともに未来のエンタテインメントを創造していくために、社内外のパートナーとの連携により事業モデルを進化させ、持続的な成長の実現に向けた新たな事業モデルの構築をめざします。時間や空間、ハードウェア機能の制約からクリエイターを開放し、新たな映像・クリエイティブ表現を実現するバーチャルプロダクション事業やソフトウェアソリューション事業、リアルとバーチャルをつなぐ新しいスポーツエンタテインメントの実現をめざすスポーツ事業などを推進していきます。また、ライフサイエンス事業やネットワークサービス事業では、これまで培ってきたテクノロジーを活用することで、安心と持続可能な社会の実現に貢献することをめざします。

 

I&SS分野

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

外部顧客向け売上高の合計

992,200

1,301,481

セグメント間取引

84,224

100,706

セグメント売上高

1,076,424

1,402,187

セグメント営業利益

155,597

212,214

 

 2022年度のI&SS分野の売上高は、前年度比3,258億円増加し、1兆4,022億円となりました。この大幅な増収は、主に為替の影響及びモバイル機器向けイメージセンサーが販売数量の減少の一方で製品ミックスの改善により増収となったことによるものです。

 営業利益は、前年度比566億円増加し、2,122億円となりました。この大幅な増益は、研究開発費及び減価償却費の増加ならびに製造経費の増加があったものの、主に為替の好影響及び前述の増収の影響によるものです。なお、当年度の為替の好影響は1,209億円でした。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、中国のスマートフォン市場の減速が続いたものの、ハイエンドスマートフォンを中心にモバイル機器向けイメージセンサーの大型化、高画質・高性能化の傾向が継続したことを反映したものとなりました。このような環境下、引き続き、イメージセンサーの大型化、高画質・高性能化に対応するための技術力と生産能力を向上させ、中期的な売上成長及び収益性改善のための取り組みを進めるとともに、イメージセンサーにおける世界No.1ポジションのさらなる強化をめざします。また、車載や産業機器などのセンシング領域やエッジAIセンシングプラットフォームAITRIOS™によるソリューション事業といった新規領域における取り組みも引き続き積極的に進めていきます。車載領域はこれまで順調に成長しており、引き続きOEMやプラットフォーマーとの関係構築・強化を進め、収益拡大をめざします。産業機器領域では、多種多様な商品ラインアップを強みとして、省人化や自動化をはじめとした、様々な現場の課題解決に貢献するソリューションを提供し、中長期的な事業成長につなげていきます。中長期的なイメージセンサーの需要拡大に対応することを目的として、将来の不確実性を念頭に置き、今後の投資計画を慎重に精査しつつも、生産能力増強のための設備投資も継続していきます。

 

金融分野

 金融分野には、SFGI及びSFGIの連結子会社であるソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行等の業績が含まれています。金融分野に記載されている業績は、SFGI及びその連結子会社が日本の会計基準に則って個別に開示している業績とは異なります。

 

主要経営数値

 

2021年度

(百万円)

2022年度

(百万円)

金融ビジネス収入

1,533,829

1,454,546

営業利益

150,111

223,935

 

 2022年度の金融ビジネス収入は、主にソニー生命の減収により、前年度比793億円減少し1兆4,545億円となりました。ソニー生命の収入は、特別勘定における運用益が減少したことにより、前年度比1,084億円減少し、1兆2,421億円となりました。

 営業利益は、前年度比738億円増加し、2,239億円となりました。この大幅な増益は、ソニー生命の子会社において前年度は不正送金による損失168億円を計上したのに対し、当年度は当該不正送金の資金回収にともない営業利益が221億円増加したこと、及びソニー生命における大幅な増益などによるものです。ソニー生命の営業利益は、新型コロナウイルス関連の給付金などの増加があったものの、不動産売却益の計上や、保有契約高の積み上がりによる利益の増加などにより、前年度比297億円増加し、1,770億円となりました。

 

事業環境及び事業戦略

 2022年度の当分野の業績は、日本経済と債券市場の状況を反映したものとなりました。日本経済は、前年度同様に新型コロナウイルスの感染拡大による逆風を受けました。また、ロシアによるウクライナ侵攻後に加速した輸入物価の高騰が食料やガソリン価格の上昇を通じて、家計を圧迫しました。しかし、経済活動の正常化が徐々に進展したことにより、景気は緩やかな回復傾向で推移しました。2022年度第1四半期には年初からのオミクロン変異株の感染拡大が一服したことを受け、5月の大型連休時を中心に旅行や買い物目的の外出需要が持ち直しました。その後にオミクロン変異株の感染が再度拡大する時期もありましたが、日本政府は行動制限・自粛要請を見送りました。その結果、人々の外出増加や入国制限の本格緩和など経済活動の正常化が進展したことにより、景気が下支えされました。一方、海外経済の減速や半導体などIT関連需要の減少等により、年度後半の製造業の生産は鈍化しました。日本の債券市場は、米国及び日本の金融政策の影響を受けました。このような環境下、お客様への提供価値を最大化することで金融グループ全体として収益性をともなった持続的成長を実現するため、コア・ユニークな競争優位性の徹底強化、低金利に耐え得る収益構造への転換、お客様目線経営のさらなる進化、テクノロジーによる競争力強化、グループシナジーの最大化の五つを戦略の柱として、各種取り組みを進めています。これまでの取り組みは順調に進んでおり、強みを活かすことで業容は着実に拡大しています。例えば、ソニー生命におけるライフプランナーの一人当たりの生産性は、注力分野である法人ビジネスにおける新契約高の伸長によって改善しており、ライフプランナー数も着実に増加しています。今後もライフプランナーの生産性向上、収益性強化などの質的転換を徹底し、さらなる利益成長をめざします。加えて、テクノロジーによる競争力の強化を加速するためのソニーグループ内連携の強化や外部パートナーからの知見・技術の獲得の強化、金融分野各社の事業の垣根を超えたデータ利活用等によるお客様への提供価値向上に向けた取り組みも推進していきます。また、ソニーグループの一員として社会的責任を果たすべく、サステナビリティ推進と金融グループにおけるガバナンス徹底強化に注力します。さらに、中長期的には、コア顧客の深掘りに加え、テクノロジーやアライアンスの活用により、顧客基盤及び顧客とのタッチポイントを拡大し、顧客生涯価値の最大化をめざします。

 

金融分野を分離した経営成績情報

 以下の表は金融分野の要約損益計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約損益計算書です。これらの要約損益計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約損益計算書(3月31日に終了した1年間)

 

(単位:百万円)

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

 

2021年度

2022年度

2021年度

2022年度

2021年度

2022年度

売上高

8,402,217

 10,101,979

8,396,702

 10,095,841

金融ビジネス収入

1,533,829

 1,454,546

1,524,811

 1,443,996

売上高及び金融ビジネス収入合計

1,533,829

 1,454,546

8,402,217

 10,101,979

9,921,513

 11,539,837

売上原価

5,856,925

 7,186,767

5,845,804

 7,174,723

販売費及び一般管理費

1,582,850

 1,961,906

1,588,473

 1,969,170

金融ビジネス費用

1,383,054

 1,234,758

1,374,037

 1,224,208

その他の営業損(益)(純額)

664

 △4,147

△66,158

 △5,566

△65,494

 △12,021

売上原価、販売費・一般管理費及びその他の一般費用合計

1,383,718

 1,230,611

7,373,617

 9,143,107

8,742,820

 10,356,080

持分法による投資利益(損失)

23,646

 24,449

23,646

 24,449

営業利益

150,111

 223,935

1,052,246

 983,321

1,202,339

 1,208,206

金融収益(費用)(純額)

△45,698

 13,437

△84,836

 △27,893

税引前利益

150,111

 223,935

1,006,548

 996,758

1,117,503

 1,180,313

法人所得税

45,402

 63,865

183,689

 172,528

229,097

 236,691

当期純利益

104,709

 160,070

822,859

 824,230

888,406

 943,622

当期純利益の帰属

 

 

 

 

 

 

金融分野の当期純利益

104,216

 159,698

金融分野を除くソニー連結の当期純利益

817,123

 818,106

当社株主に帰属する当期純利益

882,178

 937,126

非支配持分に帰属する当期純利益

493

 372

5,736

 6,124

6,228

 6,496

 

その他分野

 2022年度の売上高は、前年度比112億円減少し、876億円となりました。営業利益は、前年度比11億円減少し、168億円となりました。

 

為替変動とリスク・ヘッジ

 2022年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ135.4円、140.9円と前年度の平均レートに比べ米ドルは23.1円、ユーロは10.4円の円安となりました。

 2022年度の連結売上高は、前年度に比べ1兆6,183億円(16%)増加し、11兆5,398億円となりました。前年度の為替レートを適用した場合、売上高は約4%の増収となります。為替変動による売上高及び営業損益への影響については後述の『注記』をご参照ください。

 G&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野の為替変動による売上高及び営業損益への影響については、以下の表をご参照ください。また、詳細については、「経営成績の分析」の分野別概況における各分野の分析をご参照ください。為替の影響が大きかった分野やカテゴリーについて、その影響に言及しています。

 

 

 

2021年度

(億円)

2022年度

(億円)

為替変動による影響額

(億円)

G&NS分野

売上高

27,398

36,446

+4,198

 

営業利益

3,461

2,500

△324

ET&S分野

売上高

23,392

24,760

+2,375

 

営業利益

2,129

1,795

+94

I&SS分野

売上高

10,764

14,022

+2,027

 

営業利益

1,556

2,122

+1,209

 

 なお、2022年度の音楽分野の売上高は前年度比24%増加の1兆3,806億円となりましたが、前年度の為替レートを適用した場合、約8%の増収でした。映画分野の売上高は前年度比11%増加の1兆3,694億円となりましたが、米ドルベースでは、前年度比約8%の減収でした。詳細な分析は、「(3)経営成績の分析」の「音楽分野」及び「映画分野」をご参照ください。ソニーの金融分野は、円ベースのSFGIを連結しています。同分野の事業のほとんどが日本で行われていることから、ソニーは金融分野の業績の分析を円ベースでのみ行っています。

 2022年度のG&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野において、米ドルに対する1円の円高の影響は、売上高では約299億円、営業損益では約4億円の減少と試算されます。ユーロに対する1円の円高の影響は、売上高では約111億円、営業損益では約66億円の減少と試算されます。(「第2 事業の状況」『3 事業等のリスク』参照)

 ソニーの連結業績は、主に収入と費用において通貨構成が異なることから生ずる為替変動リスクにさらされています。G&NS分野では、米ドル建てのコストの割合が高いのに対して、売上高は日本円、米ドル又はユーロで計上されるため、米ドルに対する円高は営業利益に好影響を、ユーロに対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。ET&S分野では、主要製品におけるドル建ての製造コスト等の割合が高いことなどから米ドルに対する円高は営業利益に好影響を及ぼします。一方で、新興国での売上高の割合が高いため、新興国通貨に対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。I&SS分野では、米ドル建ての販売契約の割合が高い一方、主に日本で製造を行っていることから、米ドルに対する円高は営業利益に大幅な悪影響を及ぼします。

 これらの為替変動によるリスクを軽減するため、ソニーは一貫したリスク管理方針に従い、先物為替予約、通貨オプション契約を含むデリバティブを利用しています。ソニーが行っているこれらのデリバティブは、主に当社及び当社の子会社の予想される外貨建て取引及び外貨建て営業債権や営業債務から生じるキャッシュ・フローの為替変動によるリスクを低減するために利用されています。

 ソニーは、総合的な財務サービスを当社及び当社の子会社・関連会社に提供することを目的として、Sony Global Treasury Services Plc(以下「SGTS」)を英国に設立しています。為替変動リスクにさらされている当社及び全ての子会社が、リスク・ヘッジのための契約をSGTSとの間で結ぶことがソニーの方針となっており、当社及び当社の子会社のほとんどはこの目的のためにSGTSを利用しています。為替リスク集中の原則にもとづき、SGTSと当社がソニーグループ全体の相殺後のほとんどの為替変動リスクをヘッジしています。ソニーの方針として、金融機関との為替デリバティブ取引は、リスク管理のため、原則としてSGTSに集中しています。 SGTSはグループ外の信用の高い金融機関との間で外国為替取引を行っています。ほとんどの外国為替取引は、実際の輸出入取引が行われる前の予定された取引や債権・債務に対して行われます。一般的には、実際の輸出入取引が行われる1ヵ月前からヘッジを行っています。ソニーは金融機関との外国為替取引を主にヘッジ目的のために行っています。ソニーは、金融分野を除き、売買もしくは投機目的でこれらのデリバティブを利用していません。金融分野においては、主に資産負債の総合管理の一環としてデリバティブを活用しています。

 

 キャッシュ・フロー・ヘッジとして指定されたデリバティブの公正価値変動は、当初累積その他の包括利益に計上され、ヘッジ対象取引が損益に影響を与える時点で損益に振り替えられます。一方、ヘッジ会計の要件を満たさない先物為替予約、通貨オプション契約、及びその他のデリバティブは時価評価され、その変動は、直ちに金融収益・金融費用に計上されます。2022年度末における外国為替契約の資産に計上された公正価値(純額)の合計は14億円となっています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『15.デリバティブ及びヘッジ活動』参照)

 

『注記』

前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況、及び為替変動による影響額について

 前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況は、当年度の現地通貨建て月別売上高に対し、前年度の月次平均レートを適用して算出しています。ただし、音楽分野のSME及びSMP、ならびに映画分野については、米ドルベースで集計した上で、前年度の月次平均米ドル円レートを適用した金額を算出しています。

 映画分野の業績の状況は、米国を拠点とするSPEが、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結していることから、米ドルベースで記載しています。

 為替変動による影響額は、売上高については前年度及び当年度における平均為替レートの変動を主要な取引通貨建て売上高に適用して算出し、営業損益についてはこの売上高への為替変動による影響額から、同様の方法で算出した売上原価ならびに販売費及び一般管理費への為替変動による影響額を差し引いて算出しています。I&SS分野では独自に為替ヘッジ取引を実施しており、売上高及び営業損益への為替変動による影響額に同取引の影響が含まれています。

 これらの情報はIFRSに則って開示されるソニーの連結財務諸表を代替するものではありません。しかしながら、これらの開示は、投資家の皆様にソニーの営業概況をご理解頂くための有益な分析情報と考えています。

 

所在地別の業績

 所在地別の業績は、顧客の所在国又は地域別に分類した売上高及び金融ビジネス収入を「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『4.セグメント情報』に記載しています。

 

(4)財政状態の分析

 以下の表は金融分野の要約財政状態計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約財政状態計算書です。これらの要約財政状態計算書はソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、両者の繰延税金資産と繰延税金負債を相殺する前の金額となっています。これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約財政状態計算書

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

科     目

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

2021年度末

2022年度末

2021年度末

2022年度末

2021年度末

2022年度末

 

 

 

流動資産

 

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物 *1

889,140

756,493

1,160,496

724,407

2,049,636

1,480,900

金融分野における投資及び貸付 *2

360,673

328,357

-

-

360,673

328,357

営業債権、その他の債権及び契約資産

169,929

134,404

1,478,620

1,668,257

1,628,521

1,777,939

棚卸資産 *3

-

-

874,007

1,468,042

874,007

1,468,042

その他の金融資産

81,174

47,044

68,124

63,906

149,301

110,950

その他の流動資産

72,441

63,025

450,953

562,442

473,070

610,330

流動資産合計

1,573,357

1,329,323

4,032,200

4,487,054

5,535,208

5,776,518

非流動資産

 

 

 

 

 

 

持分法で会計処理されている投資

-

-

268,513

325,220

268,513

325,220

金融分野における投資及び貸付 *2

18,445,088

18,445,728

-

-

18,445,088

18,445,728

金融分野への投資(取得原価)

-

-

550,483

550,483

-

-

有形固定資産

18,010

15,316

1,095,241

1,329,219

1,113,213

1,344,864

使用権資産

73,774

84,023

339,658

395,210

413,430

478,063

のれん及び無形資産(コンテンツ資産含む) *4

72,578

78,197

2,672,466

3,322,639

2,745,044

3,400,836

繰延保険契約費

676,526

730,864

-

-

676,526

730,864

繰延税金資産

-

-

332,330

431,533

298,589

384,839

その他の金融資産

37,037

46,941

663,233

789,470

696,306

832,344

その他の非流動資産

77,657

75,143

284,834

319,306

289,050

321,946

非流動資産合計

19,400,670

19,476,212

6,206,758

7,463,080

24,945,759

26,264,704

合 計

20,974,027

20,805,535

10,238,958

11,950,134

30,480,967

32,041,222

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流動負債

 

 

 

 

 

 

短期借入金

1,964,776

1,891,856

183,187

211,020

2,147,962

2,102,876

営業債務及びその他の債務

118,921

77,595

1,744,011

1,812,670

1,843,242

1,865,993

銀行ビジネスにおける顧客預金

2,886,361

3,163,237

-

-

2,886,361

3,163,237

未払法人所得税

4,444

13,370

101,648

139,330

106,092

152,700

映画分野における未払分配金債務

-

-

190,162

230,223

190,162

230,223

その他の金融負債

68,793

43,128

29,050

30,444

97,843

73,572

その他の流動負債

242,937

222,039

1,296,205

1,513,882

1,488,488

1,720,335

流動負債合計

5,286,232

5,411,225

3,544,263

3,937,569

8,760,150

9,308,936

非流動負債

 

 

 

 

 

 

長期借入債務

470,498

663,353

733,148

1,104,344

1,203,646

1,767,696

退職給付に係る負債

37,167

37,183

217,381

198,938

254,548

236,121

繰延税金負債

634,576

304,838

110,715

112,938

696,492

356,324

保険契約債務その他

7,039,034

7,264,421

-

-

7,039,034

7,264,421

生命保険ビジネスにおける契約者勘定

4,791,295

5,148,579

-

-

4,791,295

5,148,579

映画分野における未払分配金債務

-

-

220,113

192,952

220,113

192,952

その他の金融負債

128,208

153,724

86,391

199,327

211,959

350,278

その他の非流動負債

5,864

7,225

121,558

142,096

106,481

127,593

非流動負債合計

13,106,642

13,579,323

1,489,306

1,950,595

14,523,568

15,443,964

負 債 合 計

18,392,874

18,990,548

5,033,569

5,888,164

23,283,718

24,752,900

金融分野の株主に帰属する資本

2,577,705

1,811,167

-

-

-

-

金融分野を除くソニー連結の株主に帰属する資本

-

-

5,156,059

6,007,177

-

-

当社株主に帰属する資本

-

-

-

-

7,144,471

7,229,709

非支配持分

3,448

3,820

49,330

54,793

52,778

58,613

資 本 合 計

2,581,153

1,814,987

5,205,389

6,061,970

7,197,249

7,288,322

合 計

20,974,027

20,805,535

10,238,958

11,950,134

30,480,967

32,041,222

 

 

(注)*1 2022度末の金融分野を除くソニー連結における現金及び現金同等物の減少要因は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の『(5)キャッシュ・フローの状況の分析』をご参照ください。

*2 2021年度末及び2022年度末の金融分野における投資及び貸付の変動については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『5.金融商品』をご参照ください。

*3 2022年度末の金融分野を除くソニー連結における棚卸資産の増加は、主にG&NS分野において棚卸資産が増加したことによるものです。

*4 2022年度末の金融分野を除くソニー連結におけるのれん及び無形資産(コンテンツ資産含む)の増加は、主にBungieの株式の取得及び繰延映画製作費の増加によるものです。

 

(5)キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フロー:2022年度において営業活動から得た現金及び現金同等物(純額)は、前年度比9,190億円減少し、3,147億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、4,155億円の受取超過となり、前年度比3,978億円の受取の減少となりました。この減少は、非資金調整項目(減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)、その他の営業損(益)(純額)ならびに有価証券に関する損(益)(純額))を加味した後の税引前利益が前年度に比べて増加した一方で、棚卸資産やコンテンツ資産の増加額が拡大したこと、営業債務が増加から減少に転じたことなどによるものです。

 金融分野では前年度の4,597億円の受取超過に対し、当年度は563億円の支払超過となりました。これは、生命保険ビジネス及び銀行ビジネスにおける借入債務の増加額が前年度に比べて縮小したことなどによるものです。

 

 投資活動によるキャッシュ・フロー:2022年度において投資活動に使用した現金及び現金同等物(純額)は、前年度比3,239億円増加し、1兆527億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、1兆320億円の支払超過となり、前年度比3,209億円の支払の増加となりました。この増加は、固定資産の購入による支払が前年度に比べ増加したことや、当年度においてBungieの株式の取得があったこと、Epic Gamesへの追加出資があったこと、Industrial Mediaの買収に関連する支払があったことなどによるものです。なお、前年度においては、アニメ事業Crunchyrollを運営するEllationの持分取得や、主にインディーズアーティストを対象とした音楽配給事業であるAWALを含むKobaltの一部の子会社の全ての株式及び関連資産の取得、ならびにEpic Gamesへの追加出資に係る支払などがありました。

 金融分野ではほぼ前年度並みの238億円の支払超過となりました。

 

 財務活動によるキャッシュ・フロー:財務活動による現金及び現金同等物(純額)は、前年度の3,366億円の支払超過に対し、2022年度は843億円の受取超過となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、前年度の3,258億円の支払超過に対し、当年度は955億円の受取超過となりました。この受取超過は、長期銀行借入を行ったことや、普通社債の発行を行ったことなどによるものです。

 金融分野ではほぼ前年度並みの526億円の支払超過となりました。

 

 現金及び現金同等物:以上の結果、為替変動の影響を加味した2023年3月末の現金及び現金同等物期末残高は1兆4,809億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の2023年3月末における現金及び現金同等物期末残高は、2022年3月末に比べ4,361億円減少し、7,244億円となりました。金融分野の2023年3月末における現金及び現金同等物残高は、2022年3月末に比べ1,326億円減少し、7,565億円となりました。

 

金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報

 以下の表は、金融分野の要約キャッシュ・フロー計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約キャッシュ・フロー計算書です。この要約キャッシュ・フロー計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

 

要約キャッシュ・フロー計算書

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

項    目

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

2021年度

2022年度

2021年度

2022年度

2021年度

2022年度

営業活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

税引前利益(損失)

150,111

223,935

1,006,548

996,758

1,117,503

1,180,313

営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)への税引前利益(損失)の調整

 

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)

24,932

26,333

810,301

978,257

835,233

1,004,590

繰延保険契約費の償却費

69,237

84,523

-

-

69,237

84,523

その他の営業損(益)(純額)

664

△4,147

△66,158

△5,566

△65,494

△12,021

有価証券に関する損(益)(純額)(金融分野以外)

-

-

60,402

4,469

60,402

4,469

保険契約債務その他の増加・減少(△)

458,880

234,102

-

-

458,880

234,102

生命保険ビジネスにおける契約者勘定の非資金取引の増加・減少(△)

238,309

15,523

-

-

238,309

15,523

生命保険ビジネスにおける契約者勘定の収入・支払(△)

227,262

346,455

-

-

227,262

346,455

資産及び負債の増減

 

 

 

 

 

 

営業債権及び契約資産の増加(△)・減少

△53,819

35,524

△121,684

△110,668

△171,094

△70,448

棚卸資産の増加(△)・減少

-

-

△194,624

△560,382

△194,624

△560,382

金融分野における投資及び貸付の増加(△)・減少

△1,724,164

△1,250,078

-

-

△1,724,164

△1,250,078

コンテンツ資産の増加(△)・減少

-

-

△502,253

△603,314

△502,253

△603,314

繰延保険契約費の増加(△)・減少

△117,337

△118,096

-

-

△117,337

△118,096

営業債務の増加・減少(△)

37,885

△40,071

93,660

△64,765

126,989

△109,336

銀行ビジネスにおける顧客預金の増加・減少(△)

230,236

300,201

-

-

230,236

300,201

生命保険ビジネス及び銀行ビジネスにおける借入債務の増加・減少(△)

905,139

111,314

-

-

905,139

111,314

法人所得税以外の未払税金(純額)の増加・減少(△)

△5

112

17,845

4,071

17,840

4,183

その他

12,380

△21,912

△290,769

△223,387

△278,421

△247,307

営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

459,710

△56,282

813,268

415,473

1,233,643

314,691

投資活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

有形固定資産及びその他の無形資産の購入

△20,562

△24,195

△420,542

△590,320

△441,096

△613,635

投資及び貸付(金融分野以外)

-

-

△91,082

△191,129

△91,082

△191,129

投資の売却又は償還及び貸付の回収(金融分野以外)

-

-

16,081

13,548

16,081

13,548

その他

2,914

393

△215,597

△264,125

△212,683

△261,448

投資活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

△17,648

△23,802

△711,140

△1,032,026

△728,780

△1,052,664

財務活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

借入債務の増加・減少(△)

△10,975

△11,226

△151,721

273,195

△162,696

261,969

配当金の支払

△39,159

△41,335

△74,342

△86,568

△74,342

△86,568

その他

△6

△2

△99,702

△91,100

△99,540

△91,101

財務活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

△50,140

△52,563

△325,765

95,527

△336,578

84,300

現金及び現金同等物に対する為替相場変動の影響額

-

-

94,369

84,937

94,369

84,937

現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額

391,922

△132,647

△129,268

△436,089

262,654

△568,736

現金及び現金同等物期首残高

497,218

889,140

1,289,764

1,160,496

1,786,982

2,049,636

現金及び現金同等物期末残高

889,140

756,493

1,160,496

724,407

2,049,636

1,480,900

 

 

(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 以下の基本方針及び数値情報は、独自に流動性を確保している金融分野及び一部の子会社を除いたソニーの連結事業にもとづいて説明しています。なお、金融分野については当該項目において別途説明しています。

 

流動性マネジメントと資金の調達

 ソニーは、事業活動に必要な流動性を保ちながら健全な財政状態を維持することを財務の重要な目標と考えています。ソニーは、現金及び現金同等物(以下「現預金等」。ただし、国の規制等で資金の移動に制約があるものを除く)及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけています。

 流動性の保持に必要な資金は、営業活動及び投資活動(資産売却を含む)によるキャッシュ・フロー及び現預金等でまかないますが、ソニーは必要に応じて社債、CP、銀行借入などの手段を通じて、金融・資本市場からの資金調達を行っています。

 当社、SGTS及び米国の子会社Sony Capital Corporation(以下「SCC」)は日本・米国・欧州の各市場へアクセス可能なCPプログラム枠を有しています。2022年度末時点で当社、SGTS及びSCCは、円換算で合計1兆1,663億円分のCPプログラム枠を保有しています。2022年度末における発行残高はありません。

 金融・資本市場が不安定な混乱状況に陥り、前述の手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、ソニーは、多様な金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しています。2022年度末の未使用のコミットメントラインの総額は円換算で6,415億円です。未使用のコミットメントラインの内訳は、日本の銀行団と結んでいる2,750億円の円貨コミットメントライン、日本の銀行団と結んでいる1,700百万米ドルの複数通貨建てコミットメントライン、外国の銀行団と結んでいる1,050百万米ドルの複数通貨建てコミットメントラインです。金融・資本市場の流動性がなくなった場合でも、ソニーは現預金等及びこれらのコミットメントラインを使用することによって十分な流動性を維持することができると現時点では考えています。

 ソニーは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、安定した一定水準の信用格付けの維持を重要な経営目標の一つと位置づけています。ただし、グループ全体の主要な資金調達に関する金融機関との契約において、ソニーの信用格付けが低下した場合に、強制的に早期弁済を求められるものはありません。また、これら契約のうち一部のコミットメントライン契約については、ソニーの信用格付けにより借入コストが変動する条件が含まれているものがありますが、未使用のコミットメントラインからの借入を禁ずる条項を含んでいるものはありません。

 

キャッシュ・マネジメント

 ソニーは日本においては当社、米国においてはSCC、それ以外の地域においてはSGTSを中心にグローバルな資金管理を行っています。資本取引に規制があり資金移動を制限されている国や地域は一部存在しますが、大部分の子会社における資金の過不足は、当社、SGTS及びSCCにより純額ベースで運用又は調達をしています。ソニーは資金の効率化をめざし、各子会社に資金余剰が出た場合は当社、SGTS及びSCCに預け、また各子会社に資金不足が生じた場合には当社、SGTS及びSCCを通じて資金の貸し借りを行うことで、余剰資金を活用し、外部借入を削減することができます。関係会社間の効率的な資金移動が制限されている国や地域では、ソニーは当社、SGTS及びSCCの外に資金を残していますが、必要な流動性資金はキャッシュ・フローや外部からの借入(もしくはその両方)によって調達しています。ソニーは、海外に所在する移動を制限されている資金が、ソニー全体の流動性や財務状況ならびに業績に重大な影響を与えるとは考えていません。

 

金融分野

 SFGI、ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行の各マネジメントは、業務の遂行にともなう支払義務を履行するのに十分な流動性を確保することが重要だと認識しています。ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行は、法令(保険業法及び銀行法など)や金融庁及びその他関係規制当局の定める各種規制を遵守することに加え、それに準拠した社内規程を制定、運用しながら、十分な現預金等を準備し、支払能力を確保することに努めています。ソニー生命及びソニー損保は、受取保険料を主な資金の源泉とし、有価証券を中心とした投資を行うにあたり、保険金等の円滑な支払等に十分な水準の流動性を確保しています。ソニー銀行は、顧客からの円貨・外貨建て預金を主な資金の源泉とし、住宅ローンを中心とする貸出と主に市場性のある有価証券投資を行う中で、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しています。外貨建て顧客預金で得られた資金は、主に同じ通貨建の金融商品に投資されています。

 なお、金融分野の子会社は、保険業務、銀行業務の公共性から、その信用を維持し、契約者や預金者の保護を確保することが保険業法、銀行法で定められています。したがって、金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されており、金融分野の子会社は、上記の当社、SGTS及びSCCを介したグローバルなキャッシュ・マネジメントからも隔離されています。

 

 なお、ソニーグループが創出した営業活動によるキャッシュ・フローに関する、成長投資、手許資金及び株主還元への配分についての考え方に関しては「第2 事業の状況」「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等『第四次中期経営計画 数値目標とその進捗』」をご参照ください。

 

オフバランス取引

 ソニーは、流動性と資金調達手段の確保、及びクレジットリスクを軽減するためにオフバランス取引を行っています。これらの取引は、ソニーが営業債権に対する支配を放棄したことから、売却として会計処理されます。なお、一部の営業債権売却プログラムにはストラクチャード・エンティティが関与しています。「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28.ストラクチャード・エンティティ』をご参照ください。

 

借入債務、コミットメント及び偶発債務等

 2023年3月31日現在におけるソニーの借入債務、コミットメント及び偶発債務等は以下のとおりです。

 

 借入債務

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『6.金融商品に関連するリスク管理 (4) 流動性リスク』及び『14.短期借入金及び長期借入債務』をご参照ください。

 

 ローン・コミットメント、パーチェス・コミットメント及び訴訟に関する偶発債務

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『33.パーチェス・コミットメント、偶発債務及びその他』をご参照ください。

 

 保険契約負債

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『13.保険関連科目 (5) 保険及び市場リスク』をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

 プレイステーション®4及びPS5™ハードウェアを含むソニーのブルーレイディスク™プレーヤー機能付製品は、米国のMPEG LA LLC及びOne-Blue, LLCとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、ブルーレイディスク規格上特定されている技術に関する特許に大きく依存しています。

 

6【研究開発活動】

ソニーのPurpose(存在意義)は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。そして、そのキーワードは「感動」です。

世界が感動で満たされ続けるためには、人々のクリエイティビティを解き放つテクノロジーを生み出しつづけ、我々の文明を持続可能なものにする必要があります。これを明確にするために、「我々の文明を進歩させ、この惑星を持続可能にする」を、ソニーグループにおける研究開発のミッションとして掲げました。

 

ソニーのPurposeを実現するためには、多様なテクノロジーが必要となります。その中核となるのが「センシング」「AI」「仮想空間」の3つの領域とそれらの連動です。現実空間でのセンサーとAIの連動により、画像認識や音声認識の高度化が期待されます。そしてセンシングされたデータや、そのデータを学習することで強化されたAIを用いて、仮想空間上での精密なシミュレーションや魅力的なコンテンツの生成が可能となります。さらに、仮想空間で得られた結果をAIにフィードバックすることで、AIの能力を強化することができます。このように、センシング、AI、仮想空間を連動させ、ソニーをAI/Data-driven Companyへと変革していきます。

 

ソニーグループの研究開発組織(以下「コーポレートR&D」)は、日本、欧米、インド、中国にある複数の拠点と連携し、それぞれの地域の特徴や強みを活かした研究開発活動を行っています。現地の優秀な研究開発人材の獲得をめざすとともに、ソニーグループの各事業とのさらなる連携を進めていきます。また、ソニーグループの中だけに閉じず、外部のクリエイターやアカデミアとの連携も強化していきます。すでに世界各地の大学との共同開発など様々な活動を推進しており、今後さらに拡大させていきます。

 

 2022年度の研究開発費は、前年度に比べ1,173億円(19.0%)増加の7,357億円となりました。金融分野を除く売上高に対する比率は、前年度の7.4%から7.3%になりました。

 

 各分野及びコーポレートR&Dにおける研究開発費の金額は以下のとおりです。

項目

2021年度

(億円)

2022年度

(億円)

増減率

(%)

G&NS

1,757

2,711

54.3

ET&S

1,418

1,557

9.8

I&SS

1,980

2,237

13.0

コーポレートR&D

487

464

△4.8

 

 

 2022年度の主な研究開発活動及び成果として、以下のものがあげられます。

 

(1)G&NS

・Access™コントローラー

 ゲームのアクセシビリティをさらに一歩前進させるPS5™用のアクセシビリティコントローラーキットであるAccessコントローラーを発表しました。アクセシビリティの専門家、コミュニティーメンバー、ゲーム開発者の多大なる協力により開発された本製品は、ハードウェア及びユーザーインターフェースの両面において様々なカスタマイズが可能で、あらゆる方がより簡単に、快適に、そして長い時間ゲームをお楽しみいただけるようにサポートします。

 

・PlayStation®VR2

 2023年2月に発売を開始したPlayStation VR2は、高精細な4K HDRビジュアルや、新しいセンサー機能、トラッキング性能の進化によって前世代機から飛躍的な進化を遂げ、圧倒的な没入感をお届けします。本製品では、プレイヤーの目の動きを検知してゲームキャラクターを操作できる視線トラッキングや、ヘッドセットの振動によりプレイヤーがゲームから受ける感覚を増幅させるヘッドセットフィードバック、そしてPS5のTempest 3Dオーディオ技術など、様々なテクノロジーを組み合わせることで、これまでにない感覚と没入感をお楽しみいただけます。また、付属のPS VR2 Sense™コントローラーは、トラッキング性能の向上に加えて、フィンガータッチ機能やハプティックフィードバック、アダプティブトリガーなどの機能を備え、次世代のバーチャルリアリティ体験を実現しました。

 

(2)ET&S

・バーチャルプロダクション

 大型LEDディスプレイCrystal LED™ 『Bシリーズ』、デジタルシネマカメラVENICE、カメラトラッキングシステムとリアルタイムエンジンを組み合わせたインカメラVFXの手法により、クリエイターの映像表現の自由度を高める新たな撮影ソリューションです。3DCGを中心としたバーチャル背景を、高精細・高輝度・広色域などの特長を持つCrystal LED 『Bシリーズ』に表示し、その手前に演者や被写体を配置してVENICEで撮影することで、合成などの後処理なくリアルタイムにCGと実写を組み合わせた映像制作を可能にします。2022年2月に開設したソニーピーシーエル㈱のクリエイティブ拠点「清澄白河BASE」に続き、10月には、米国カリフォルニア州カルバーシティのスタジオ敷地内のSony Innovation StudiosにCrystal LEDディスプレイを備えたものとして世界最大規模のバーチャルプロダクション用ステージを開設しました。また、南カリフォルニア大学と提携し、同大学の敷地内に、ソニーのCrystal LED 『Bシリーズ』を2022年夏に設置し、2022年秋よりバーチャルプロダクションの教育カリキュラムを学生に提供しています。次世代クリエイターの育成支援を通じてクリエイティブコミュニティへ貢献していきます。

 

・プレーを可視化するホークアイの技術と空間再現ディスプレイ

 高精度・リアルタイムのトラッキング技術SkeleTRACKと可視化技術HawkVISIONを組み合わせることにより、スポーツにおいてファンエンゲージメントを高めるためのコンテンツを提供しています。SkeleTRACKは選手の位置や骨格情報、ボールやバットなどの動きも高精度かつリアルタイムにトラッキングすることで、全てのプレーをデータ化します。また、HawkVISIONによって、カメラの位置に制限されず自由な視点からバーチャル空間上でプレーを可視化できます。これら2つの技術で再現したプレー映像を、高速ビジョンセンサーと視線認識技術によって、見る人の目の位置を検出し左右それぞれの目に最適な立体映像を生成するソニーの空間再現ディスプレイで再生すると、スポーツの試合がまるで目の前で行われているかのような臨場感や立体感のある新しい観戦体験が裸眼で可能になります。こうしたエンタテインメント性あふれるコンテンツ体験を通じて、メタバース空間上で新たなコミュニティを生み出すとともに、フィジカルとバーチャルを繋げ、それらを融合した新しい未来を創り出していきます。

 

・次世代のクラウド制作プラットフォーム(Creators' Cloud)

 これまで培ってきたクラウド技術・サービスを更に発展させ、未来の映像制作ワークフローを見据えた次世代のクラウド制作プラットフォーム(Creators' Cloud)を法人顧客向けに導入しました。クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせて、新たな映像表現や迅速かつ効率的な制作を実現します。また法人顧客向けをベースに、最先端のカメラ技術とクラウド技術を掛け合わせて最適化し、個人向けサービスとしても幅広く提供を開始しました。カメラで撮影した動画・静止画を簡単にクラウドサービスへアップロードするスマートフォン向けアプリ(Creators’App)、カメラメタデータとクラウドAIを活用した動画編集クラウドサービス(Master Cut (Beta))、クリエイター同士が繋がり作品を発信するコミュニティ機能(Discover)などを新たに提供しました。また、従来法人顧客向けに提供してきたクラウドメディアストレージ(Ci Media Cloud)を個人向けにも提供を開始しました。クラウドを活用した編集サポートから、クリエイター間の出会いや共同作業を可能にする環境までCreators’Cloudを通じて提供し、多様なクリエイターの高次元のコンテンツ創作活動を総合的にサポートします。

 

・嗅素を手軽に制御するTensor Valve™テクノロジー

 嗅覚にアプローチする新たな価値の創出に向け、多数の嗅素(においの素)を手軽に制御し、混在させずに均一に提示することを可能にしたTensor Valve(テンソルバルブ)テクノロジーを開発し、この技術を搭載したにおい提示装置『NOS-DX1000』を発売しました。高気密カートリッジ技術により、強いにおいの嗅素でもにおい漏れを抑制します。また、本体に内蔵された脱臭機構の気流制御により、提示されたにおいを速やかに除去し汚染を抑制するため、脱臭装置や専用の部屋を必要としない手軽な運用が可能です。医療機関をはじめ、研究機関、自治体等において、嗅覚測定や嗅覚トレーニング、においサンプルの確認や検証など、においにまつわる研究や測定の用途に展開します。

 

 

(3)I&SS

・エッジAIセンシングプラットフォームAITRIOS™の有償サービス提供開始

 AIカメラなどのエッジデバイスを活用したセンシングソリューションの効率的な開発・導入を可能にするAITRIOSプラットフォームにおいて、2種類の有償サービスの提供を開始しました。主にアプリケーションデベロッパーやAIデベロッパーによるソリューション開発と運用を支援するConsole Developer Editionと、主に法人顧客のシステム構築を担うシステムインテグレーターを支援するConsole Enterprise Editionです。AITRIOSは、開発に必要なツールやSDK(ソフトウェア開発キット)、開発環境をパートナーや顧客に提供することにより、作業工数の増加や、エンジニアの人員数やスキルの不足など、パートナー企業が抱える課題解決に貢献します。

 

・スマートフォン用SPAD距離センサー

 業界最高の光子検出効率を実現する直接 Time of Flight(dToF)方式のSPAD距離センサー『IMX611』をスマートフォン用に商品化しました。一般的にSPAD画素は、光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間を検出することで距離情報を取得する、dToF方式の受光素子の一つとして活用されています。本製品は、センサーに独自のSPAD画素構造を採用することで、業界最高の光子検出効率を実現しました。光源から対象物に反射して戻ってきた微弱な光子でも検出が可能になることで、対象物を高精度に測距することができます。低照度環境におけるスマートフォンのオートフォーカス性能の向上や、被写体の背景のボケ処理、広角カメラや望遠カメラのシームレスな切り替えなどに活用でき、撮影体験を広げます。また、3次元空間認識、ARオクルージョン、モーションキャプチャー・ジェスチャー認識などが可能になり、今後のメタバースの普及に伴って需要が見込まれるVRヘッドマウントディスプレイやARグラスの機能の進化にも貢献します。加えて、ToF技術により取得可能な深度情報を活用したSDK「ToF AR」の提供も開始しました。目の前の風景にバーチャルな視覚情報を重ねるARアプリケーション開発を加速するためのSDKとして、人の動きの認識に加え、空間認識技術にも応用することで、スマートフォン一つでバーチャルYouTuber体験を可能にし、ゲームなどのアプリケーションでの活用も期待されています。

 

(4)コーポレートR&D

・Mapray™デジタルツインプラットフォーム

 Mapray(マップレイ)は、3次元データと様々な地理空間情報を集約してリアルな世界を再現する、デジタルツインの開発者向けプラットフォームです。大規模な3次元仮想空間をWebブラウザ上で高速・高画質にレンダリングするグラフィックスエンジンmaprayJSと、多様で複雑な3次元地理空間データをクラウド上で最適化して管理・配信するMapray Cloudで構成されています。これらの技術を組み合わせることで、大規模で美しいデジタルツインを誰もが自由かつ簡単に構築できるようにして、そこから様々な感動体験が生み出されることをめざしています。

 

・デジタル空間でリアルな体験を再現するサージカルシミュレーター

 仮想空間において本物のような映像だけでなく、リアルな臓器の変形やその感触までも再現可能な手術シミュレーター技術を開発しました。手術時に医師が見ている世界をより忠実に再現するために、光の屈折や反射などを計算するレイトレーシング技術を取り入れたリアリティのある手術描画と、リアルタイム物理演算による柔軟物操作インタラクションを組み合わせることで、従来のデジタルシミュレーションでは再現が難しかった臓器の特性の違いや処置の際の力加減などを確かめながらトレーニングができるようになりました。

 

・深層生成モデル技術を活用したコンテンツ生成・修復

 ソニーは、AIを活用してコンテンツの生成、修復を行うことのできる深層生成モデルと呼ばれる技術を開発しています。効率的なデータの圧縮法を学習する手法であるVector-Quantized Variational Auto Encoder (VQ-VAE)の学習を向上・安定化させ、一度で安定的に学習できる手法としてStochastically Quantized VAE (SQ-VAE)を開発するとともに、物理法則にもとづく方程式を利用し、より高品質な生成結果をもたらす拡散モデルの新しい学習方法の開発にも成功しました。これらの技術はクリエイターの創作活動を支えるためのものであり、音楽、映画、ゲーム業界において事業を展開し、世界をリードするクリエイターと研究開発者が協働できるソニーならではの機会を通じて、クリエイターのクリエイティビティを解き放つ技術の研究を行っていきます。

 

・遠隔空間を目の前にリアルに再現する3次元高画質化と低遅延伝送技術

 独自開発した3次元高画質化と低遅延伝送技術、大画面かつ高画質な3次元ディスプレイ(Light Field Display)を組み合わせることで、遠隔空間を立体的に再現し、実際に目の前に人がいる/物があるような映像をリアルタイムに専用の眼鏡などを装着せずに体験できるようになりました。これは、遠隔地において、より進化したコミュニケーションが求められる新たな生活様式を実現する技術です。今後は、医療や金融・コンサルティングなどのテレコミュニケーションに加え、建機や車などの遠隔操作や遠隔手術などのユースケースも想定されます。