第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループを取り巻く事業環境は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1) 業績」に記載のとおりでありました。

 

当社グループは、2022年4月7日に、中期経営計画(2022~2025年度)を発表しました。中期経営計画の概要は以下の通りです。

 

■ありたい姿

今回の中期経営計画策定にあたっては、まず2030年のありたい姿をイメージし、その実現に向けて2025年に到達するべき目標を定め、その実現に向けた施策を積み上げています。2030年の社会は、人々の価値観や人生観が変化し、気候変動や資源不足など社会環境が変わり、Industry5.0到来などテクノロジーの革新も続くと予想しております。このようなメガシフトが起こるなか、人間が生活のための“労働”を機械に任せ、より創造的な「自己実現のための仕事」と「価値を追求する消費」に注力できるようになるための「人と機械の共創」が進むものと考えています。

ニコンには、ものづくりを革新するテクノロジーや高度なソリューションをグローバルに広げる力・ブランド、そしてステークホルダーからの支持といった3つの強みがあります。これらを活かし、2030年の「人と機械が共創する社会」に新たな価値を提供し続けたいと考え、2030年のありたい姿を「人と機械が共創する社会の中心企業」としました。これに向けて、まずはお客様としっかり伴走し、お客様の欲しいモノやコトの「本質」を理解した上で、お客様のイノベーションを支える存在を目指します。

 

■全体方針

本中期経営計画は、今年度から2025年度までの4年間を対象期間としています。2030年へ向けて、「お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現」する存在になることを「2025年のありたい姿」に定めました。

このありたい姿を実現する上で、当社は、「完成品販売中心のビジネスからの進化」および「映像・精機事業に並ぶ収益の柱の育成」の2つの経営課題に取り組むため、全社方針として「完成品・サービス・コンポーネント一体の「ソリューション提供」強化」を掲げております。

 


 

まず『「ソリューション提供」の強化』のため、プロダクトアウト的発想から脱却し、お客様に寄り添い、そのニーズを的確に把握し、完成品・サービス・コンポーネントを一体でソリューションとして提供します。また、「主要事業」である映像事業、精機事業につきましては、顧客接点と提供価値を拡大することにより、安定収益の確保に努め、「戦略事業」であるヘルスケア事業、コンポーネント事業等の収益拡大に取り組みます。さらには、それぞれの事業における「成長ドライバー」による利益成長と「サービス・コンポーネント」ビジネスの拡大によって利益の安定化に努めます。

具体的には、光学・EUV関連コンポーネント、材料加工・ロボットビジョン、デジタル露光、映像コンテンツ、細胞受託生産・創薬支援の5つの「成長ドライバー」に注力します。

 

■各事業の戦略

映像事業では、レンズ交換式カメラ市場は縮小傾向ですが、新興国市場や若い世代・女性を含め、プロ・趣味層の市場は堅調に推移するものと想定しており、当社グループは、こうした顧客層に対して、ミラーレスカメラを中心とする高付加価値製品を提供する事業戦略を堅持します。

精機事業においては、FPD露光装置分野では、次世代パネルに対応する技術開発を推進し、高精細化と高生産性を追求することで、メジャープレーヤーとしての地位と安定的な収益を確保します。また半導体露光装置分野では、主要顧客の生産計画に備えるとともに、三次元化などのニーズに個別対応することで新たな顧客の獲得を目指します。また、検査・計測など周辺装置の拡販にも注力します。

ヘルスケア事業においては、生物顕微鏡では、世界の大手光学顕微鏡メーカーとして、さらなるデジタル化などに対応します。また、世界トップクラスのシェアを誇る網膜画像診断機器は、診断の高度化や在宅化・遠隔診断などに対応します。細胞受託生産では、大手製薬企業や有力ベンチャーとのアライアンスを強化して、中長期的な事業成長の基盤を築きます。

コンポーネント事業では、半導体製造の様々な工程において、微細化、高密度化、高耐久性などの要求が高まる中、光学コンポーネント、EUV関連コンポーネントの引き合いは強まっています。着実に需要が拡大していくものと予測しており、顧客のイノベーションを支えながら、ともに成長することを目指します。

デジタルマニュファクチャリング事業では、2030年に向けて、社会において宇宙ビジネス拡大、製造業のデジタル化、カーボンニュートラルなどの変化が予想され、技術面では高出力レーザーや人工知能(AI)、小型・多機能センサーなどの技術革新が想定されています。こうした背景を踏まえ、材料加工とロボットビジョンを成長ドライバーとし、当社グループが持つ光応用技術で、ものづくりの世界に革新をもたらし、売上成長を目指します。

 

■中期経営計画の実行を支える基盤戦略

中期経営計画に掲げた事業戦略を実行するには、経営基盤の強化が極めて重要です。

まずサステナビリティ戦略です。企業理念である「信頼と創造」の言葉をもとに、事業が環境・社会に与える影響を評価・改善し続けることで社会の期待に「信頼」で応えつつ、事業を通じて、より積極的に環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献する価値を「創造」していきます。「信頼」としては、例えば2050年度のカーボンニュートラルに向け、2025年度までに事業所からの温室効果ガスを46.5%削減するという高い目標を掲げ、取り組んでいます。「創造」としては、事業戦略を通じて脱炭素や資源循環、健康といった領域に貢献する技術・製品・サービスなどを提供していきます。また、従業員一人ひとりが日々の業務を通し、社会課題やサステナビリティについて考える機会を増やし、活動していきます。

次に、人的資本経営です。ありたい姿の実現に向けて、人材は最も重要な経営資源です。必要な人材を獲得し、育成、活躍してもらいます。成長戦略実現のための採用戦略、採用ブランディングを強化するなど、優秀な人材のさらなる獲得に向けてこれまで以上に力を入れていきます。そして、若手・キャリア採用者・グローバル人材・専門人材などを組み合わせ、一人ひとりの生産性を高めたいと考えています。従業員にとっては、プロフェッショナルとしての能力を身に付けることができる、それを発揮することで自己実現ができ、充実感が得られる会社でありたいと考えています。

そして、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。ニコンのDXは、お客様視点と従業員視点の両側から展開していきます。お客様との関係では、個人・法人のお客様に対してデジタルを活用したアカウント営業やデジタル・サービスの展開を図り、お客様の満足度を高めるとともに、収益の拡大を目指します。従業員との関係では、業務プロセスのデジタル化を通じて、従業員がより高度な仕事に取り組める環境をつくるとともに、いつでもどこでもフレキシブルに仕事ができるデジタルインフラを整備します。

 

 

■資本配分

当社グループは研究開発型企業として成長することが、ステークホルダーから期待されていると認識しており、配分可能原資の大半を成長投資やR&Dに振り向け、持続的な企業価値向上を目指します。

 


 

戦略投資では、成長加速のためのM&Aに加え、人的資本への投資も行います。

R&Dはソリューション提供強化や成長ドライバーのスケール化に重点的に配分し、設備投資では、EUV関連コンポーネントの増産に向けた対応や細胞受託生産関連の投資を予定しています。

 

■「信頼と創造」の基に

ニコンは、2030年に到来する「人と機械が共創する社会」をしっかりと支える企業を目指しています。本業を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献し、従業員には自己実現の機会を提供します。そして、事業の成長と企業価値の向上を通じて、株主を含む全てのステークホルダーの期待にお応えしていく、そうした未来を目指します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社グループが目指すサステナビリティ

当社グループでは、企業理念である「信頼と創造」を事業活動の中で具現化することで、持続可能な社会に貢献しつつ自社の持続的成長を図ることが、サステナビリティと考えています。

この考えを主文とし、それを支える4つの意志を「サステナビリティ方針」として取締役会で決定しました。この方針のもと、当社グループでは、社会的責任に対する会社の基本姿勢と、それに基づき従業員がとるべき行動の規準を定めた「ニコン行動規範」を定めています。

 

サステナビリティ方針

 

ニコングループは、企業理念である「信頼と創造」を事業活動の中で具現化することで、持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長の双方を目指します。

・ニコンならではの製品・サービスを生み出し、事業活動を通して、環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献することを目指します。

・自らの事業が環境・社会に与える影響を常に客観的に評価し、課題を継続的に改善していくことで、より良い影響を環境や社会にもたらすよう努めます。

・積極的にステークホルダーとの対話を行うことで、社会の変化を的確にとらえるとともに、ステークホルダーからの要請や期待に応え、自らの活動を常に見直します。

・法令等を遵守するにとどまらず誠実・公正に行動するとともに、適切な情報開示を行います。

 

 

(2) ガバナンス

サステナビリティ方針を実効あるものにするため、当社グループでは、サステナビリティ委員会を核として、サステナビリティに関するマテリアリティ(重点課題)の特定、目標設定、進捗管理、評価、改善のプロセスを実施しています。

サステナビリティ委員会は原則として年2回開催しており、同時に専門家による講演や意見交換も行うことで、各委員がグローバルな社会課題やその動向についての知見を高めています。

2022年度は、サステナビリティ委員会を4回開催し、改善のプロセスの一環として、サステナビリティへの取り組みが2022年4月に発表した中期経営計画の「2030年のありたい姿」の実現に繋がるものとなるようにマテリアリティの点検を実施し、一部を見直しました。

サステナビリティ委員会の委員長は代表取締役 兼 社長執行役員、副委員長はサステナビリティ戦略部担当役員、委員は経営委員会メンバーおよび全事業部長/本部長が任命されており、関係部門の部長などがオブザーバーとして参加します。また、審議の内容は、最低年1回、取締役会に報告し、取締役会は活動の妥当性、有効性やリスクについて管理・監督します。

 


 

サステナビリティ委員会では、サステナビリティ方針や社会動向に合致するマテリアリティを審議すると共に、それに即した目標設定に注力しています。

目標設定においては、「人と機械が共創する社会の中心企業」という「2030年のありたい姿」を実現し、人と機械がよりシームレスに共創していく世界で人間の可能性を拡げ、豊かでサステナブルな社会の実現に貢献することを念頭に置いています。

そうした姿を実現し、当社グループの社会に対する価値提供領域を拡大するために、マテリアリティのリスクや機会に対してどう取り組み、どのようなゴールを目指すのかを重視し、戦略や指標・目標を検討しています。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼすリスクに対して適切に対応できるよう「リスク管理委員会」を設置しています。本委員会はリスク管理を統括する組織として、代表取締役であるCROを委員長とし、経営委員会メンバーなどを委員、総務部と業務企画室を事務局とするなど、重大リスクに対してより効果的な対応を図るため、重点対象のリスクについて継続的なモニタリングや、機動的な支援ができる体制を構築しています。

リスク全般についてはリスク管理委員会が管轄していますが、専門的な対応が必要なリスクに対しては、その傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会の3つの委員会で対応を図るとともに、サステナビリティの視点から、サステナビリティ委員会でもマテリアリティを中心としたリスクのモニタリング、および「環境」、「社会・労働」に関するリスクへの対応を図っています。

リスク管理委員会とサステナビリティ委員会はマテリアリティに関するリスクに関して適宜情報を共有し、必要に応じて、両者で連携してリスクへの対応を図っています。

 

(4) 戦略と指標及び目標

当社グループでは、マテリアリティを選定するとともに、それぞれに対する戦略を策定し、サステナビリティに取り組んでいます。持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長を一体のものと考える当社グループにおいて、これらマテリアリティのリスクや機会に適切に対応する戦略を定めて、着実に実行することが経営において重要と考えています。

マテリアリティは、経営ビジョンや事業のバリューチェーンとの関連性が高いサステナビリティの課題を抽出してそれらの影響度を評価し、候補としたものをサステナビリティ委員会で検討し、経営委員会で決定しています。

当社グループでは、IR、顧客とのミーティング、地域社会やNGOとの対話、従業員アンケート、さまざまなESG調査への対応などを通じ、ステークホルダーの意見を収集しています。これらの意見をマテリアリティの決定やそれらに対する戦略に反映しています。

また、マテリアリティに関する施策は、目標管理制度に組み込んで全社に展開することにより、各目標の着実な実行を図るとともに、従業員一人ひとりの業務に、サステナビリティが浸透することをめざしています。こうした活動の進捗を、サステナビリティ委員会において半期ごとに確認するとともに、経営における重要事項として取締役会に報告し、取締役会が目標に対する進捗度合いを管理・監督しています。

さらに、サステナビリティへの取り組みの実効性向上のため、ニコンの役員報酬の業績連動型株式報酬制度を見直し、経営基盤強化に向けた取り組みであるサステナビリティ戦略や人的資本経営への取り組みを評価要素に組み込みました。

 

マテリアリティに関する戦略、指標・目標

マテリアリティ

ありたい姿

戦略

指標

目標

①コア技術による社会価値創造

人と機械が共創する社会の中心企業

成長ドライバー、サービス・コンポーネントの拡大

成長ドライバーの連結営業利益に占める比率

2030年度:40%以上

サービス・コンポーネントの連結営業利益に占める比率

2030年度:50%以上

②信頼に応える品質の維持・向上

安全、環境、セキュリティに配慮した競争力のある製品・サービスの提供

品質マネジメントの高度化と定着

事業環境の変化に対応した品質マネジメントシステムの見直し計画の達成度

毎年度:100%

品質マネジメントシステムの運用状況モニタリング・改善計画の実施率

毎年度:100%

品質に関する基本教育の理解度(事業部、グループ生産会社)

2025年度:80%以上

③脱炭素化の推進※1

2050年度までにサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを実現

Scope1、2、3の削減と再生可能エネルギーの導入加速

Scope1、2削減率

(2013年度比)

2030年度:71.4%

Scope3の3カテゴリ(「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」)削減率

(2013年度比)

2030年度:31%

再生可能エネルギー導入率

2030年度:30%

④資源循環の推進

サプライチェーン全体における資源消費の最小化と資源循環利用の最大化

資源消費量の削減と廃棄物等の削減

廃棄物総排出量削減率

(2018年度比)

2030年度:10%以上

淡水消費量削減率

(2018年度比)

2030年度:5%

製品へのリサイクル材使用率

2030年度:5%以上

⑤汚染防止と生態系への配慮

サプライチェーンにおける人の健康と生態系への負の影響ゼロ

化学物質の適切な使用と生態系への影響・依存の低減

製造プロセスにおける有害化学物質の使用

2030年度:使用ゼロ

製品における有害化学物質の含有

2030年度:含有ゼロ

FSC認証紙または再生紙の比率(カタログ、取扱説明書、梱包箱)

2030年度:100%

⑥レジリエントなサプライチェーンの構築

事業リスクや社会課題に対し、常に健全な状態が保たれたサステナブルなサプライチェーン

サプライチェーンのリスクアセスメントと有事に即応できる仕組み構築

人権デュー・ディリジェンス実施*率(重要な調達パートナー)

*改善完了

2025年度:100%

サプライチェーンのBCP体制把握*

*社数

2025年度:100%

 

 

マテリアリティ

ありたい姿

戦略

指標

目標

⑦人権の尊重

バリューチェーン全体における人権リスクの最小化

ニコン人権方針による人権啓発と人権デュー・ディリジェンスの実施

人権方針浸透度

2030年度:100%

RBA行動規範遵守率(生産系事業所)

2025年度:90%以上

⑧ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン※2

多様性を受容し事業活動に活かす企業文化の実現

ニコン グローバル ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン ポリシーの浸透、多様な人材が活躍できる環境整備と、DEIの事業活動への展開

DEIポリシー浸透度

2030年度:100%

女性管理職比率(㈱ニコン)

2025年度:8.0%以上

⑨従業員の健康と安全※2

安全かつ快適な職場環境下で一人ひとりが心身の健康と豊かさを実感しながら能力を発揮

ニコングループ健康安全方針の浸透と健康安全活動の実施

定期健康診断有所見率(㈱ニコン)

毎年度:前回全国平均以下

*厚生労働省公表の全国平均値(製造業)

業務起因性、業務遂行性の高い労働災害件数

2025年度:60件以下

ストレスチェック高ストレス者率(㈱ニコン)

毎年度:前回全国平均以下

*委託業者公表の全国平均値

⑩コンプライアンスの徹底

コンプライアンス違反の発生ゼロ

ニコン行動規範の浸透

コンプライアンス意識の定着

*意識調査による確認

2025年度:95%以上

内部通報制度の認知度

*意識調査による確認

2025年度:95%以上

⑪コーポレート・ガバナンスの強化

透明性・効率性が高くステークホルダーに信頼されるガバナンス

取締役会の実効性評価の継続実施と多様性向上

取締役会の実効性評価と重点課題対応

毎年度:100%

取締役会のダイバーシティ

毎年度:ステークホルダーの要請に応える取締役会構成の最適化

⑫リスクマネジメントの強化

重要リスクへの対策が適切に講じられている

環境変化と経営戦略に即した全社的リスクマネジメント体制の確立

リスクアセスメントに基づく重要リスクの特定と施策実施の進捗度

毎年度:100%

 

※1 詳細を「(6) 気候変動への対応」の項に記載

※2 詳細を「(5) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、これに関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績」の項に記載

 

当社グループでは、今後も社会や会社の状況に合わせて、サステナビリティに関するマテリアリティ、戦略、指標・目標を見直していきます。またその進捗や実績を本報告書などで開示し、ステークホルダーと対話しながらリスクと機会に対する取り組みを深めることで、2030年のありたい姿を実現するとともに、持続可能な社会の発展に貢献していきます。

 

(5) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、これに関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

① 人材に対する基本的な考え方

当社グループは、「信頼と創造」という企業理念のもと、コア技術である光利用技術と精密技術をベースに製品やソリューションを提供しています。人々や産業の希望や期待に応え、より豊かな社会の実現をサポートするグローバル企業です。

その担い手となるのは、「当社グループで働く多様な人材」です。当社グループはこれまでも、様々な能力や価値観、経験を持つ人材が集まり、その才能を活かし合うことで、創業100年を超える実績と世界に誇る高いものづくり力を築き上げてきました。従業員一人ひとりの成長と、その力を最大限に活かし合うことが、チームや組織力を向上させ、当社グループの成長に繋がっていきます。さらなるグローバル化や価値観の多様化が進む中で、ニコンと、そして社員一人ひとりが社会やお客様から求められる存在になるためには、会社と従業員が共に成長していく関係でなければなりません。

そのために、当社グループは会社の目指す方向性や組織の目標を明確に示し、これに連動した人材戦略を実行することで、多様な従業員がその能力を最大限に発揮し、自身と当社グループの成長を実感できる環境や活躍の機会を提供していきます。従業員に求められるのは、その機会を逃すことなく、主体的・継続的にスキルを磨き続ける姿勢です。当社グループは、成長に向けて挑戦し、努力する従業員を支援するとともに、成果を出し、組織に貢献した従業員には、その活躍に公正かつ公平に報いていきます。

また、変化に対応し、多様化する社会やお客様の課題に応えるためには、当社グループで働く人材が持つ多様な知識や経験、価値観、専門性などを活かす必要があります。共に働くメンバーの個性や能力を認め合い、活かし合うことのできる職場環境や企業文化の醸成に向け、「ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン」(DEI)を推進していきます。

このことが、当社グループの社会やお客様への価値提供力を高め、従業員のやりがいやエンゲージメントを高めることに繋がり、チームのため、自分の成長のために主体的に考え、行動する、自律した「個」の形成へと繋がる好循環を生み出します。当社グループは多様な従業員一人ひとりと共に成長し、企業理念である「信頼と創造」の実現と、持続可能な社会に貢献し続ける企業を目指します。

 

② 中期経営計画と連動した人材戦略

中期経営計画の軸となる方針は、ソリューション提供の強化による「主要事業の安定化」と「戦略事業の収益拡大」です。また、グローバルに存在するお客様の欲しいモノやコトの「本質」を理解し、完成品・コンポーネント・サービスをお客様にとって最適な形で提供していくことは、すべての事業に共通する戦略であり、当社グループのコア技術と他社とのオープンイノベーションを組み合わせるなど、社内外のシナジー強化にも取り組みながらビジネスモデルの変革を進めます。

こうした経営戦略の担い手となる人材には、次のような要素が求められます。

・環境変化に柔軟に対応し、社会・顧客起点の発想や価値提供ができること

・組織やチームの目標達成のために自律的に考え、行動できること

・国・地域・事業を超えて多様な人材や組織と協働できること

・新たな価値観と既存の価値観を掛け合わせ、シナジー創出ができること

特に、成長領域においては、顧客開発とソリューションビジネスの強化をリードする人材の獲得が急務となっています。また、既存領域においては、当社グループの強みである「ものづくり」を支える人材が今後不足する見込みです。

このように、ありたい姿の実現に向けた人材の質的転換と量的確保が求められる中、人材の流動化や獲得競争がグローバルに激しさを増しており、経営戦略を実践する人材の確保への危機意識が高まっています。こうした経営戦略上の要請や現状認識を踏まえ、当社グループでは、人材の「獲得」「育成」「活躍」の3つを人的資本経営の考え方に基づく人材戦略の柱に据え、それぞれ以下の方針のもとで各施策を展開しています。

なお、経営戦略と人材戦略を一体のものとして推進を図るため、求められる人材やスキルの具体的な定義や各施策の検討は、社長執行役員以下のトップマネジメントが中心となり、人事部門と連携のうえ行っています。

 

<人材戦略の3つの柱>

 

方針

重点項目

獲 得

事業運営上必要な人材を安定的に確保する。

経営戦略上獲得が急務な人材については新規採用やM&A等により早期獲得を目指す。

・ビジネス開発人材、技術営業など重点的に獲得

・採用ブランディングの強化

・獲得プロセス・体制の強化

・雇用・労働条件の柔軟化

育 成

業務遂行に必要なスキルや役割、キャリアパスなどを明確化し、自律的な成長を促すための幅広い教育、育成の機会を提供する。

中核人材やグローバル人材については戦略的な登用や配置により計画的に育成する。

・中核人材の早期選抜と計画的な育成

・人材グローバル化に向けた戦略配置

・キャリアデベロップメント、リスキルプログラムの拡充

活 躍

多様な従業員が自律的に成長する姿勢とチームに貢献する意識を持ち、その能力を最大限に発揮できる環境(制度・職場環境・企業文化等)の構築を推進する。

・若手・キャリア採用者が成長・活躍できる環境整備

・ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョンの推進

・実力・意欲重視の抜擢・登用

 

 

③ 人材戦略を支える基盤となる文化・環境
a) ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン

当社グループでは、年齢や性別、国籍等を問わず、多様な従業員一人ひとりが、その能力を最大限に発揮し、活躍することのできる機会の提供と環境整備に取り組んでいます。

2022年度には、従来の「ダイバーシティ&インクルージョン」をさらに一歩進め、「エクイティ(公平性)」の視点を入れた、「ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン」(DEI)として推進を図るべく、マテリアリティのタイトルを改題しました。単に平等なだけでなく、従業員一人ひとりの事情に応じた公平な活躍・挑戦機会の提供を目指します。

また、グローバルでのDEI推進を加速するため、DEIに関する当社グループ共通の考え方を示す基本方針の検討を進め、2023年4月に「ニコン グローバル ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン ポリシー」を制定しました。一人ひとりがチームの一員としての居場所を感じ、個々の能力を活かし合うことのできる職場環境や企業文化の醸成を図るとともに、各地の法令や事業特性などを踏まえた具体的な取り組みを、グループ全体で、または会社・事業毎に推進していきます。

 

<女性活躍推進>

女性活躍推進は日本の社会課題のひとつであり、当社においても重要な課題のひとつに位置づけています。「女性管理職比率」と「新卒採用における女性比率」を具体的なKPIに、活躍推進のための具体的な取り組みを実施しています。

また、女性のみならず、育児や介護など、多様な事情を抱えた従業員がライフステージに応じた柔軟な働き方が選択できるよう、制度や環境の整備にも取り組んでいます。

 

KPI

対象範囲

目標値

2022年度実績

女性管理職比率

株式会社ニコン

2025年度末までに8%以上

6.9%

新卒採用における女性比率

株式会社ニコン

25%以上

32.3%

 

 

b) 従業員の健康と安全

従業員の健康と安全は、企業活動の根幹を成すものです。従業員が心身ともに健康と安全であることを実感して働ける職場環境を整備・提供することが、職場の活力や生産性向上をもたらすことに繋がると考えています。

こうした考えのもと、当社グループでは、毎年、「ニコングループ健康安全活動方針」を策定し、それに基づく各施策を展開しています。また、会社と従業員が一体となって、健康の保持・増進と安全管理の徹底、法令遵守に努め、グループ全体の労働災害の発生防止に努めています。

 

KPI

対象範囲

目標値

2022年度実績

業務起因性、業務遂行性の高い労働災害の発生数

国内グループ会社

40件以下

27件

 

 

(6) 気候変動への対応

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示

当社グループは、気候変動への対応を重要な社会課題と認識し、脱炭素化の推進をマテリアリティ(重点課題)の一つとしています。「脱炭素社会の実現」をニコン環境長期ビジョンと位置づけ、2050年度までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを目指しています。長期ビジョンと連動するニコン環境中期目標では、2030年度までにScope1※1およびScope2※2における温室効果ガス排出量を2013年度比で71.4%削減すること、Scope3※3の「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」における温室効果ガス排出量を2013年度比で31%削減することを目標としています。この目標は、Science Based Targets(SBT)イニシアチブ※4に1.5℃水準として認定を受けています。

これらの目標の達成に向け、当社グループでは製品、事業所、物流などのサプライチェーンの各段階での温室効果ガス排出の削減に取り組んでいます。この姿勢を明確化するため、RE100※5に2021年2月に加盟し、同年3月にはBusiness Ambition for 1.5℃※6に賛同しました。また一方で、気候変動によるビジネスにおける機会を認識しており、社会の脱炭素化に貢献する製品・ソリューションの提供に注力しています。

※1 Scope1 敷地内における燃料の使用などによる直接的な温室効果ガス排出のこと

※2 Scope2 購入した電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出のこと

※3 Scope3 サプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出のこと(Scope1、2を除く)

※4 気候変動など環境分野に取り組む国際NGOのCDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による国際的な共同イニシアチブ。パリ協定の「世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃未満に抑える」という目標に向け、科学的根拠に基づく削減のシナリオと整合した企業の温室効果ガス削減目標を認定している

※5 CDPと非営利組織The Climate Groupがパートナーシップのもと運営する国際的イニシアチブ。事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで調達することを目標としている

※6 国連グローバルコンパクト、SBTイニシアチブ、We Mean Businessの3社が世界の気温上昇を産業革命以前のレベルから1.5℃未満に抑え、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることをめざし、企業に科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するよう呼びかけるキャンペーン

 

① ガバナンス -気候関連リスク及び機会にかかわる組織のガバナンス-

取り組み

●代表取締役 兼 社長執行役員が委員長を務めるサステナビリティ委員会においてリスクと機会を特定、戦略と指標・目標、並びにその実績を審議、脱炭素関連の投資可否を判断

●サステナビリティ委員会傘下の環境部会において、気候変動に関するリスクと機会を検討、戦略と指標・目標の起案および進捗管理を実施

●サステナビリティ委員会での決定に基づき、サステナビリティ戦略部門が全グループの気候変動対応を推進

●サステナビリティ委員会の活動状況を最低年1回取締役会に報告。取締役会は気候変動を含む環境関連の活動の妥当性、有効性やリスクについて管理・監督

2022年度の進捗状況

●サステナビリティ委員会を4回、環境部会を2回開催し、気候変動対応に関する事項を審議・決定

 

 

② 戦略 -ビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の潜在的影響-

取り組み

●マテリアリティ(重点課題)の一つに 「脱炭素化の推進」を設定

●気候変動シナリオ分析を実施し、リスクと機会を特定(P.21参照)

●気候変動対応を含むサステナビリティへの取り組みを、中期経営計画を通して実行

●気候変動対応を含むサステナビリティへの取り組みの評価を役員報酬に反映

2022年度の進捗状況

●ニコン環境中期目標達成に向けた再生可能エネルギーの導入を検討

●気候変動によるリスクと機会を分析

●中期経営計画期間中のビジネス拡大による温室効果ガス排出への影響を検証

 

 

③ リスク管理 -気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスと総合的なリスク管理への統合-

取り組み

●リスク管理委員会がグループのリスクを全社的に管理するとともに、サステナビリティ委員会が専門的見地から気候変動を含む環境リスクについて把握、評価し、対応を協議

●各委員会で審議・承認された内容は取締役会に報告

●特定したリスクの潜在的財務影響額を、中期経営計画の財務シミュレーションにおいて、他の潜在的要素とともに把握・認識

2022年度の進捗状況

●「リスク把握調査」を実施し、結果を影響の規模と発生確率で表す「リスクマップ」を作成。関連部門にフィードバックし、全社的なリスクの認識を共有

●特定したリスクを環境アクションプランなどに反映し、グループ全体に展開

 

 

④ 指標と目標 -気候関連リスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標-

指標

目標

Scope1,2削減率

(2013年度比)

2030年度:71.4%

2023年度:36.5%

Scope3の3カテゴリ(「購入した製品・サービス」「輸送、配送(上流)」「販売した製品の使用」)削減率

(2013年度比)

2030年度:31%

2023年度:
・LCA手法を活用した環境負荷低減

・環境配慮製品創出50%以上

再生可能エネルギー導入率

2030年度:30%

2023年度:25%

 

当社グループでは、2022年度の温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)及び電力の再生可能エネルギー使用率は以下の結果になりました。引き続き、ニコン環境中期目標に沿って脱炭素化の推進に取り組みます。

Scope3の排出量については、サプライヤーの実際の状況をモニタリングすべく、2023年度よりCDPサプライチェーンプログラムに参加し、情報収集を開始いたします。

 


 

気候変動シナリオ分析について

当社グループでは、気候関連リスクと機会について、事業の特性や生産拠点・事業所の立地条件、近年の気候変動起因による自然災害の度合いと頻度、業界の動向、関連する法令の動向、IPCCの気候変動予測に用いられているRCP(代表的濃度経路)シナリオや外部の調査機関による調査結果・シナリオを総合的に考慮した分析を行い、2℃および4℃シナリオ下におけるリスクの評価、特定を行っています。

2℃シナリオにおいては、温室効果ガス排出規制などの強化やそれに伴う市場要求、4℃シナリオにおいては洪水などの自然災害の増加や気温上昇、いずれのシナリオにおいても再生可能エネルギーの移行拡大などのエネルギー技術とコストの変化を認識し、財務への影響を考慮して事業戦略として気候変動への適応対策を行っています。リスク分析は継続して実施し、レベルアップを図っていきたいと考えています。

 

気候変動による当社グループへのリスク

<財務影響> 大:100億円以上、中:10億円~100億円、小:10億円以下

<緊急度> 高:3年以内、中:3~10年、低:10年以上

当社グループへのリスク

財務

影響

緊急度

対応

物理

(急性・

慢性)

台風・水害などの気象災害が増加した場合、主要生産拠点(日本・タイなど)やサプライヤーの拠点の被災、物流網の寸断などにより供給/操業が停止したり資産価値が低下する可能性がある。また、海面上昇によりこれらのリスクの発生確率が高まる可能性がある。

・トータルサプライチェーン マネジメント活動の推進

・事業継続マネジメント(BCM)の推進

平均気温が上昇した場合、冷房などの空調設備の負荷増大により電力コストが増加する可能性がある。特に、精密機器の製造・輸送などの過程で必要な厳密な温度管理が困難になる、または管理コストが増加する可能性がある。

・積極的な省エネ活動の推進

長期的な降水パターンの変化や干ばつの発生により水資源の利用が制約され、操業に悪影響が生じる可能性がある。

・取水量の削減

・水資源のリサイクル促進

 

 

当社グループへのリスク

財務

影響

緊急度

対応

移行

政策・

法規制

・炭素税等のカーボンプライシング政策が導入・拡大された場合、事業コストが増大する可能性がある。また、サプライヤーへの適用により仕入れ価格が上昇する可能性がある。

・事業拠点を有する国のエネルギー政策の変更により、電気料金が上昇し、事業コストや仕入れコストが増加する可能性がある。

・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減

・モーダルシフトや物流ルート改善による温室効果ガス排出の削減

・サプライヤーへの温室効果ガス排出削減の要請

技術

・製品使用時の排出削減、製造法・素材の低炭素化に乗り遅れた場合、販売機会が減少する可能性がある。

・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減

・製品の省エネ性能向上

・新素材・製造法の構築

市場・

評判

・顧客の脱炭素要求に十分に応えられない場合、販売機会が減少する可能性がある。

・脱炭素対応が十分でない場合、評価・評判を損ない、株価や売上に影響する可能性がある。

・省エネの推進、再エネ導入による温室効果ガス排出の削減

・積極的な情報開示の推進

 

 

気候変動による当社グループにとっての機会

<時間的範囲> 短期:3年以内、中期:3~10年、長期:10年以上

ニコングループにとっての機会

時間的範囲

・脱炭素社会の実現に貢献する技術やビジネス展開に対する消費者/機関投資家などからの評価が高まり、売上が増加し株価が上昇する可能性がある。

-社会のエネルギー効率向上に貢献する光を使った付加加工や微細加工

-既存部品の補修などで製品の長寿命化に貢献する付加加工

-ものづくりの効率化に貢献する高度な手や目を持つロボットやデバイス製造プロセス

-光源の省エネルギー化、長寿命化・耐久性の向上による環境にやさしい製品の提供

-時間・空間/現実と仮想を超えて人がつながる社会の実現に貢献する映像制作技術

短期~長期

生産プロセス、物流の効率化や省エネ活動により、将来的な炭素税やエネルギーコストを低減できる可能性がある。

短期~長期

物理的リスクへの備えとして実施するトータルサプライチェーンマネジメントや

自社のBCMの改善により事業体制を強靭化できる可能性がある。

短期

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。

なお、当社グループではグループ経営上のリスク全般につき、潜在リスクの洗い出しと優先順位付けをしたうえで、リスク対応方針の審議決定を行う「リスク管理委員会」により、リスクを整理・管理しています。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 事業環境の急激な変化

映像事業の主要製品であるデジタルカメラは、ミラーレスカメラ市場での厳しい競争に加えて、部品の価格高騰や調達の遅れによる影響が生じており、将来的には市場環境悪化の可能性があります。対応として、生産販売面での最適化、サプライチェーンや物流の改革、徹底したコストダウン、デジタルマーケティングの強化、開発効率化などに取り組み、引き続き事業の収益体質強化を進めています。

精機事業が扱うFPD露光装置の需要は、ディスプレイ市場自体は安定的に需要が見込める市場ですが、大規模設備投資の反動や足元の消費抑制により供給過剰となった場合には露光装置の需要も落ち込む可能性があります。対応として、そのような環境下でも一定の利益を確保するため、新規露光装置及びサービスビジネスによる収益拡大やトータルコスト低減を進めています。

半導体露光装置の対象市場である半導体市場は中長期的に大きく成長が見込まれるものの、先端プロセス開発のEUVLへの移行度合によっては、液浸露光装置の需要が減少する可能性があります。また、当社グループの主要顧客が設備投資計画を変更した場合など、当社グループの収益に影響を及ぼす恐れがあります。対応として、収益性重視の事業戦略の下、既存顧客以外の開拓を積極的に進めるとともに、サービスビジネスを拡大していきます。

また、海外での事業展開においては、政治体制・経済環境の変動、各国間の貿易摩擦・紛争等の影響、暴動・テロ・戦争・災害・各種感染症等による社会の混乱等により、事業活動に大きな障害や損失が生じる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性やその影響レベルについては、社会情勢等により左右されるため、具体的に予測することは困難でありますが、対応として、情報収集及び事業に与える影響の分析を行い、対策を検討、実施しています。

 

② 成長ドライバーの収益拡大

2022年4月に発表した中期経営計画(2022~2025年度)期間において、材料加工・ロボットビジョンは戦略事業「デジタルマニュファクチャリング」の中期成長ドライバーと位置づけています。製造業全体のものづくり変革のスピードによっては、本計画期間である2025年度までに期待される規模への成長に届かない可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループは、デジタル化が進む製造業に対して独自の価値を提供し、新たな市場を形成していきます。また、戦略投資の一つとして、金属アディティブマニュファクチャリングにおける統合ソリューションをグローバルで提供するドイツSLM Solutions Group AGに対して公開買付けを実施し、当社の連結子会社としました。引き続き戦略投資については幅広く取り組み、事業の拡大に寄与させていきます。

 

③ 競争力維持強化のための新製品開発力及び開発投資

当社グループの主力事業は厳しい競争下にあり、高度な研究開発の継続による新製品の開発が常に求められています。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。投資の成果が十分に上がらず新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や、当社グループが開発した技術が市場に受け入れられなかった場合、あるいはゲームチェンジなど抜本的な変化により当社の技術が不要となる場合、企業価値が低下し、収益が減少する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループでは、「技術戦略委員会」にて、これからの社会や市場動向を踏まえ、注力すべき新領域の開拓や、既存事業の競争力向上につながる技術戦略と、その実現に向けた研究開発計画を策定し、グループの技術可視化、適正化を図っています。

 

④ 各種規制等

当社グループはグローバルに事業を展開しているため、多くの国々において、輸出入規制、競争法、労働法、腐敗防止、移転価格税制等、各種法規制の適用や企業の社会的責任を求められています。これら法規制や社会的責任として求められることは大きく変わる可能性があり、その変化により事業活動費用増加や事業の制約、レピュテーションリスク等を受ける可能性があります。

対応として、当社グループでは、「リスク管理委員会」によるリスク整理・管理に加え、専門的な対応が必要なリスクに対しては、その傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会の3つの委員会で対応を図るとともに、サステナビリティの視点から、サステナビリティ委員会でもマテリアリティを中心としたリスクのモニタリングおよび対応を図っています。

 

⑤ 調達

近年、感染症やグローバル規模の異常気象や自然災害、地政学的な影響や国際紛争などさまざまな要因により部品の需給バランスは大きく崩れ、エネルギーや原材料価格も大きく変動しています。加えて、サプライチェーンにおける人権や環境などに関する社会課題へのステークホルダーの関心も高まっており、サプライチェーンの不安定要素・リスクが増加していると考えています。

部品調達や物流においても不確実性と変動性の高い状況が継続するため、当社グループ全体では、このような背景のもと、自社のみならず調達パートナーと同じビジョンを持ち、ともに行動するとともに、社会の声を聞き、これらの社会課題に対応できるレジリエントなサプライチェーンの構築に取り組んでいます。具体的には、調達パートナーと強固な関係を構築し、サプライチェーンの可視化を進め、調達パートナーとともにBCP(事業継続計画)策定・強化、CO2排出量の把握、人権デューデリジェンス対応の強化に取り組み、サプライチェーンのリスクアセスメントと有事に即応できる関係と仕組み構築を行っています。

 

⑥ 人材の確保・情報の流出

当社グループは、高度な技術等や専門知識及び能力を有する社員等、多様な人材によって支えられており、市場での激しい競争に打ち克つにはこうした人材の確保がますます重要になっています。有能な人材を採用・育成できず、あるいは主要な人材が退職した場合、事業への弊害や、知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。対応として、当社グループはありたい姿の実現に向け会社の目指す方向性や組織の目標を明確に示し、これに連動した人材戦略を実行しています。また、具体的なカリキュラムを組み、固有技術・技能の伝承と標準化・共有化を推進しています。

また、当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客またはその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報が漏洩するリスクが顕在化しないよう、これらの情報への外部からのアクセス制御の徹底や保管セキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する規程の整備、従業員教育等を実施しています。

 

⑦ 環境問題

当社グループは、気候変動や天然資源の枯渇、廃棄物問題、有害化学物質による汚染などの環境問題を自社の存続にも関わる問題と捉え、さまざまな対策を講じるとともに、地球環境に配慮した経営を行っています。

気候変動については、それに起因する異常気象や洪水、渇水などの自然災害や感染症の拡大により、開発・生産拠点および調達先などに甚大な損害が生じた場合、操業に影響が生じたり、生産や出荷が遅延したりする恐れがあることから、これらは当社グループが直面しているリスクであると認識しています。また、脱炭素社会に向けた動きが加速する中、各国において炭素税などの政策・法規制の導入または導入検討が進んでおり、これによるエネルギーや原材料のコストが増加するリスクがあります。こうしたリスクを低減するため、対応として、グループ全体で省エネルギー活動や再生可能エネルギーの活用、開発・生産プロセスの効率化などをはじめとしたサプライチェーン全体での温室効果ガス削減やBCP(事業継続計画)の策定に取り組んでいます。

環境政策・法規制等により、基準の順守や情報開示などの対応が求められています。これらは、年々強化される傾向にあり、対応が十分でないと、行政処分などによる生産への影響や課徴金、社会的信用の失墜など会社経営に甚大な損害を与える可能性があります。特に化学物質等に関連する法規制は、必要な材料・副資材の入手が困難になる可能性があるなど、直近のリスクであると考えています。これらに着実に対応するため、社内の規程類を整備し、担当者の教育などを実施することで、サプライチェーンを含めた管理体制を強化するほか、規制の変更などのタイムリーな把握等に努めています。また法規制よりも厳しい自主基準値を設けることで環境汚染の未然防止に努めています。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和される一方で、長期化するウクライナ情勢に伴う資源高や、インフレ抑制のための各国における政策金利上昇等の影響を受けました。

 

事業別では、映像事業においては、デジタルカメラ市場は半導体不足等による部品調達問題が改善し、出荷数量が回復しました。精機事業においては、 FPD関連分野は中小型パネル用、大型パネル用、いずれの設備投資も縮小の動きが見られました。また、半導体関連分野の設備投資は堅調に推移していましたが、第3四半期以降は調整局面に入りました。ヘルスケア事業においては、ライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野で市況は総じて好調に推移しました。コンポーネント事業においては、デジタルソリューションズ事業では、光学部品・光学コンポーネントやエンコーダ関連市場が堅調に推移し、カスタムプロダクツ事業では、EUV関連市場が好調に推移しました。

 

当社グループでは、2022年4月に発表した中期経営計画のもと、主要事業である映像事業、精機事業では、お客様とのタッチポイントの拡大や、顧客ニーズを的確に把握した製品・サービス等の提供による安定収益確保に注力しました。また、戦略事業であるヘルスケア事業、コンポーネント事業などでは、収益拡大のため、有望市場での新たな価値創造を目指したソリューションの提供や新領域、受託事業の拡大に取り組みました。加えて、デジタルマニュファクチャリング事業拡大のため、SLM Solutions Group AG(以下、「SLM 社」)を連結子会社化するなど、M&Aやアライアンスにも取り組みました。
 さらには、経営基盤強化に向けて、サステナビリティ戦略、人的資本経営、顧客・従業員重視のDX戦略に注力してまいりました。

このような状況の下、当社グループの連結業績は、売上収益は6,281億5百万円前期比884億94百万円16.4%)の増収営業利益は549億8百万円、前期比49億74百万円10.0%)の増益税引前利益は570億58百万円、前期比37百万円0.1%)の減益親会社の所有者に帰属する当期利益は449億44百万円、前期比22億65百万円5.3%)の増益となりました。

 

セグメント情報は次のとおりです。

なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント (1) 報告セグメントの概要 (報告セグメントの変更に関する事項)」に記載のとおり、当連結会計年度より報告セグメントに変更があり、以下の前期比較においては、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しています。

 

① 映像事業

プロ・趣味層をターゲットとした中高級機及び交換レンズの拡販に注力し、フラッグシップモデルのフルサイズ ミラーレスカメラ「Z 9」やミラーレスカメラ用交換レンズの販売が好調に推移しました。平均販売単価の上昇や円安効果もあり、当事業の売上収益は2,271億円前期比27.4%増営業利益は422億13百万円、前期比121.4%増となりました。

 
② 精機事業

FPD露光装置分野は、中小型パネル用、大型パネル用、いずれも装置の販売台数が減少したことにより、減収減益となりました。

半導体露光装置分野は、新品装置の販売台数が増加したことにより、増収増益となりました。

これらの結果、当事業の売上収益は2,032億62百万円前期比3.8%減、営業利益は243億86百万円、前期比38.2%減となりました。

 

 

③ ヘルスケア事業

ライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野では、新型コロナウイルス感染症や電子部品等の需給ひっ迫の影響による前期からの商品出荷繰り越し及び好調な受注状況を背景に、また、円安効果もあり、事業全体として大幅な増収増益となりました。

これらの結果、当事業の売上収益は993億94百万円前期比35.7%増営業利益は115億82百万円、前期比164.1%増となりました。

 

④ コンポーネント事業

デジタルソリューションズ事業は、光学部品・光学コンポーネントやエンコーダの販売が好調に推移しました。カスタムプロダクツ事業は、EUV関連コンポーネントの販売が大きく伸び、増収増益となりました。

アディティブマニュファクチャリング(以下、「AM」)を行う米国のMorf3D Inc.の固定資産等の減損損失を計上しましたが、当事業の売上収益は539億67百万円、前期比32.0%増、営業利益は146億71百万円、前期比15.3%増となりました。

 

⑤ 産業機器・その他

産業機器事業は、半導体、電子部品、EV関連市場等の活況を背景に、画像測定システムや工業用顕微鏡、X線/CT検査装置の販売が好調に推移したことにより、増収増益となりました。

SLM社の連結子会社化による増収もあり、産業機器・その他の売上収益は443億82百万円前期比23.1%増営業利益は36億26百万円、前期比22.4%増となりました。

 

(注) 事業別の営業損益には、当社グループ内取引において生じた損益を含んでおります。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前利益570億58百万円、減価償却費及び償却費290億56百万円、減損損失43億89百万円の計上があった一方、前受金の減少、棚卸資産の増加、売上債権及びその他の債権の増加があり、15百万円の収入(前年同期は313億51百万円の収入)となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、SLM社の連結子会社化に際しての株式の取得等による支出が768億77百万円、有形固定資産の取得による支出が231億39百万円、無形資産の取得による支出が98億84百万円あり、1,121億46百万円の支出(前年同期は3億85百万円の支出)となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に自己株式の取得による支出が300億1百万円、配当金の支払が145億22百万円あり、562億10百万円の支出(前年同期は261億51百万円の支出)となりました。

また、現金及び現金同等物に係る換算差額は94億1百万円の増加となりました。

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ1,589億40百万円減少し、2,113億37百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

(百万円)

前期比(%)

映像事業

136,212

28.5

精機事業

95,321

5.2

ヘルスケア事業

36,219

12.7

コンポーネント事業

63,376

30.1

産業機器・その他

22,579

43.7

合計

353,707

20.6

 

(注) 金額は製造者販売価格によって算出し、付属品仕入額を含んでおります。

 

(2) 受注状況

当連結会計年度における受注残高は、次のとおりであります。

なお、精機事業を除いては見込生産を主としておりますので記載を省略しております。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

(百万円)

前期比(%)

精機事業

178,370

△9.4

合計

178,370

△9.4

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

(百万円)

前期比(%)

映像事業

227,100

27.4

精機事業

203,262

△3.8

ヘルスケア事業

99,394

35.7

コンポーネント事業

53,967

32.0

産業機器・その他

44,382

23.1

合計

628,105

16.4

 

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上や、グループ内の会計基準統一による経営基盤の強化を目指し、2017年3月期有価証券報告書における連結財務諸表からIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.見積り及び判断の利用」をご参照ください。

 

(2) 財政状態の分析

当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べて107億1百万円増加し、1兆502億67百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が1,589億40百万円減少した一方、SLM社の連結子会社化に伴うのれん等の増加により有形固定資産、使用権資産、のれん及び無形資産が1,035億78百万円、棚卸資産383億31百万円、売上債権及びその他の債権が236億68百万円繰延税金資産50億44百万円増加したためです。

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べて76億83百万円減少し、4,319億17百万円となりました。これは主に、繰延税金負債120億28百万円未払法人所得税40億75百万円社債及び借入金が39億58百万円増加した一方、前受金が394億64百万円減少したためです。

当連結会計年度末における資本の残高は、前連結会計年度末に比べて183億84百万円増加し、6,183億51百万円となりました。これは主に、自己株式の消却等により資本剰余金394億30百万円自己株式96億86百万円減少した一方、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が262億36百万円、在外営業活動体の換算差額の増加によりその他の資本の構成要素が207億93百万円増加したためです。

 

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(3) 経営成績の分析

当連結会計年度における売上収益は、精機事業を除く全セグメントで大幅増収し、884億94百万円増6,281億5百万円前連結会計年度は5,396億12百万円)となりました。精機事業は、FPD露光装置において顧客の設備投資が縮小したことに伴い販売台数が減少し、79億54百万円の減収となった一方、映像事業は、中高級機カメラへのシフトが進展したことによる平均販売単価の上昇や円安効果もあり、488億66百万円の増収となりました。ヘルスケア事業はライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野の売上拡大が寄与し、261億51百万円の増収となりました。

売上原価は、映像事業における中高級機カメラの販売台数増加や円安影響に伴う増加、ヘルスケア事業におけるライフサイエンスソリューション及びアイケアソリューション分野の売上拡大に伴う増加の結果、353億90百万円増3,389億31百万円前連結会計年度は3,035億41百万円)となりました。

販売費及び一般管理費は、労務費や研究開発費、宣伝広告費及び販売促進費の増加や、SLM社の取得関連費用の計上等により、417億63百万円増の2,312億28百万円前連結会計年度は1,894億65百万円)となりました。

その他営業収益は、前連結会計年度に計上した遊休地の売却に伴う土地売却益の剥落等により、21億13百万円減の32億9百万円となりました。その他営業費用は、主にMorf3Dにおける固定資産及びのれんの減損損失計上により、42億54百万円増62億47百万円となりました。

これらの結果、営業利益は549億8百万円前連結会計年度は499億34百万円の営業利益)となり、49億74百万円の増益となりました。

税引前利益は49億74百万円の営業増益の影響や持分法投資増益の一方、前連結会計年度に計上した投資有価証券評価益の剥落等もあり、570億58百万円前連結会計年度は570億96百万円の税引前利益)となり、37百万円の減益となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用137億75百万円の計上により449億44百万円前連結会計年度は426億79百万円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。なお、当社グループの課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、またセグメント別の分析は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要) (1)業績」をそれぞれご参照ください。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、一定の財務健全性の確保を前提に置きながら、自己資本比率55%~60%を目安として、投資資本の運用効率を重視し、持続的な成長のために資本コストを上回る収益が見込める投資(戦略投資、R&D、設備投資)に資金を活用することで企業価値の最大化を実現すると同時に、安定的な株主還元を実施することで株主の要求にも応えることを資本管理の方針としております。

運転資金や経常的に発生する設備投資資金については、現在保有する現金や預金で賄い、持続的成長に向けた投資については、配分可能な現金や預金、及び営業活動から創出されるキャッシュ・フローを源泉とした資金で賄うことを原則としております。また、機動的な資本配分を実現するため、国内外のグループ会社が保有する資金をグローバル・キャッシュ・マネージメント・システムにより効率的に管理することでグループ内の資金の流動性を高め、これを有効活用しております。

なお、当社は市場の混乱や、当社が事業を遂行する上でのリスクに晒されているため、こうした要因が資金繰りを圧迫する事態への備えとして十分な手元流動性(現預金、コミットメントライン等)の確保に努めており、事業環境に急激な変化を与え得る様々な不確実性を前提としても当面安定的な経営が可能な状態にあります。

 

当社グループの資金状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますとおり、当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは15百万円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは1,121億46百万円の支出であったため、1,121億31百万円のマイナスのフリー・キャッシュ・フローとなりました。また、有利子負債を控除したネットキャッシュ残高は532億40百万円になりました。

なお、当連結会計年度後1年間の設備投資計画は700億円を予定しており、主に生産能力の最適化と設備の維持・更新を図るためのものであります。また、当連結会計年度後1年間の研究開発投資は690億円を予定しております。当該設備投資及び研究開発投資の資金は、主に営業キャッシュ・フローを源泉とした資金の範囲で賄うことを予定しております。設備投資計画の詳細につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

 

以上の記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において判断したものであります。また、分析に記載した実績値は百万円未満を四捨五入して記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

相互技術援助契約

当社が締結している重要な相互技術援助契約は次のとおりであります。

相手先

国名

契約内容

契約期間

ASML Holding N.V.

Carl Zeiss SMT AG

オランダ

ドイツ

露光装置及びデジタルカメラに関する特許実施権の許諾

自 2019年2月18日

至 2029年2月18日

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、全社の技術戦略を統括する役員を選任し、中長期計画と連動した技術戦略を立案し、研究開発の全体最適化を図るとともに、各事業部門の開発担当部門が次世代プロジェクト本部、光学本部、先進技術開発本部、生産本部と連携しながら研究開発を推進しております。

これまで培った「光利用技術」と「精密技術」の2つの中核技術に加え、他社との共同研究開発等を通じて新たな技術を取り入れることで、成長戦略の実現を目指していきます。

当連結会計年度の研究開発投資は70,090百万円でありました。なお、当社グループは開発投資の一部について資産化を行っており、研究開発投資には無形資産に計上された開発費を含んでおります。

当連結会計年度における主な開発状況は次のとおりであります。

 

① 映像事業

レンズ交換式デジタルカメラでは、「ニコン Z マウント」を採用したAPS-Cサイズ/DXフォーマットミラーレスカメラ「Z 30」を開発しました。

「Z 30」は、「ニコン Z シリーズ」で最小・最軽量となるボディーに加え、バリアングル式液晶モニターの搭載、動画を記録していることがひと目でわかる「RECランプ」の採用や、動画最長記録時間125分対応などにより、Vlogをはじめ、日常の撮影からこだわりの撮影までの幅広いシーンでの動画撮影に適したミラーレスカメラです。「ニコン Z 7」に採用した画像処理エンジン「EXPEED 6」と、「ニコン Z fc」に採用したイメージセンサーを搭載し、NIKKOR Z レンズと組み合わせることで、解像感のある優れた描写性能を実現します。動画撮影に配慮したボディー設計など、使いやすさを追求し、ミラーレスカメラを初めて使うユーザーでも簡単に映像表現を楽しむことができます。さらに、多彩な表現が可能な「Creative Picture Control」や、4K UHD/30p動画、スローモーション動画など、よりこだわった映像表現にも挑戦できる機能を搭載したミラーレスカメラです。

交換レンズでは、「ニコン Z マウント」を採用したフルサイズ/FXフォーマットミラーレスカメラ対応の超望遠単焦点レンズ「NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S」、「NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S」、「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」を開発し、158期発売の「NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S」と併せて超望遠レンズのラインナップ拡充を図りました。これらの製品は、SRレンズをはじめとする高機能ガラス材料や「メソアモルファスコート」などを使った最新光学設計技術により高い描写性能を実現しています。AF駆動用モーターには、「シルキースウィフトVCM(ボイスコイルモーター)」を採用、また、強力なレンズ内手ブレ補正(VR)機構の採用で、動きの速い被写体でも決定的な瞬間を逃さない高い捕捉力を持ち合わせています。さらに、PF(Phase Fresnel: 位相フレネル)レンズの採用により従来モデルより大幅な軽量化・小型化を実現し、高い機動性と優れた重量バランスでハイアマチュアからプロフェッショナルフォトグラファーのニーズにお応えする製品開発を行いました。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は18,881百万円であります。

 

② 精機事業

FPD露光装置分野においては、お客様の将来のニーズに応える露光装置やサービスの提供を実現するために、さらなる生産性向上、高精度・高精細化のための様々な技術開発、アプリケーション開発などを進めました。

半導体露光装置分野においては、多点アライメントによる計測と高次補正によって、半導体デバイス構造の三次元化に必要な高い重ね合わせ精度と高生産性を実現する液浸露光装置「NSR-S636E」の開発を継続しました。また、ミドルクリティカルレイヤー向け「NSR-S622D」の後継機種として、生産性を大幅に向上させた「NSR-S625D」の開発を進めました。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は20,979百万円であります。

 

③ ヘルスケア事業

バイオサイエンス分野においては、共焦点レーザー顕微鏡システム「AXシリーズ」を拡張し、高解像で深部観察ができる「NSPARC」を開発しました(2022年11月29日プレスリリース)。創薬開発をはじめ脳科学や免疫学などの研究分野では、生細胞や生体組織や臓器チップなどを顕微鏡で観察し、その微細構造や瞬時の変化を解析するニーズが高まっており、共焦点顕微鏡の基本機能と併用可能な形で、超解像観察を実現できる超解像ユニット「NSPARC」を開発しました。

受光部に「シングルピクセルフォトンカウンター」と呼ばれる素子を25個配列して感度を1.3倍向上させ、スキャンポイントごとの豊富な情報を基に画像処理を施します。これにより、ノイズが発生しやすい深部であっても、コントラストの高い三次元画像を取得でき、標本の微細な構造を観察できるようになりました。さらに、受光感度が高い「NSPARC」と、高速に画像取得するレゾナントスキャナーを搭載する「AX R」を組み合わせることで、高速スキャン中も標本の詳細な情報をとらえ、高解像な画像を取得でき、細胞へのレーザー照射時間を減らしてダメージを抑え、低褪色で低光毒、高解像で安定したライブセルアッセイが可能となりました。

本製品を活用することで、新薬候補化合物の作用機序や、脳神経やがんなどの病気のメカニズム解明に貢献し、研究対象をさらに広げることが可能となります。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は6,441百万円であります。

 

④ コンポーネント事業

カスタムプロダクツ事業ではビジネスが多様化する中、様々なニーズに対応するために、多分野に渡る技術開発を実施しています。

「固体レーザー分野」では、新型の193nm固体レーザーシステムを開発中です。従来の193nm固体レーザーシステムに対して「可搬型」・「小型」・「高出力」の特徴を有する光源となります。

「特注分野」では、各種食品関連の異物検査装置向け技術開発として、紫外照明による蛍光撮影の実用性検証、画像演算などの画像処理技術を用いた異物検出率向上の検討を実施しました。

なお、コンポーネント事業に係る研究開発投資の金額は3,655百万円であります。

 

⑤ 産業機器・その他

産業機器事業においては、大型検査用CT装置「VOXLS 40 C 450」を開発、発売開始しました。

このシステムは、電子部品や自動車部品、宇宙航空部品など小型部品から大型部品まで多様な非破壊検査・測定を可能にします。

さらに今後の需要増加が見込まれる電気自動車(EV)のリチウムイオン電池モジュールの生産など、最先端のものづくりを後押しします。

なお、産業機器・その他の事業に係る研究開発投資の金額は20,337百万円であります。

 

(注) 事業別に記載している研究開発投資の金額には、内部消去額を含んでおります。