文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」を企業理念として掲げ、常に世の中が求める新しい価値、お客様が求める価値の創造に努め、社会に貢献することを目指しています。
この観点から、株主様、お取引先様、従業員などからの信頼と期待に応えることが、会社繁栄の絶対条件と考え日々の事業経営に取り組んでおります。セグメントごとの事業内容は下記のとおりであります。
総合エネルギー事業は、全国のご家庭にMaruiGasブランドとしてお届けしている民生用LPガスや、工場で使用される産業用のLPガス・LNGを販売しています。また、カセットこんろ・ボンベや富士の湧水などの生活関連商品やガス関連機器・都市ガスの保安サービスなどをお客様に提供し、暮らしのインフラを支えています。特に民生用LPガスについてはLPガスの輸入から小売りまで一貫した供給体制をもち、全国展開している日本で唯一のLPガス事業者で、全国に約400ヶ所の拠点を有しており、その販売・物流・保安体制を活かし、きめ細やかで質の高いサービスを全国で提供しています。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガス(酸素・窒素・アルゴン)、水素、ヘリウム、炭酸ガス、半導体材料ガスや医療用ガスなどの産業ガス事業と、各種ガス製造・供給設備、FAシステム、溶接装置、半導体製造装置、環境機器などの機械事業を展開しています。長年培ってきた技術力と、ガス・機械の幅広いラインアップによりお客様のニーズに合わせた提案を行い、産業全体を支えています。
マテリアル事業は、樹脂原料や樹脂製品、ミネラルサンドなどの資源、ステンレスや非鉄金属、二次電池材料等、モノづくりに必要な原料・部材などを取り扱っています。環境商品等の成長分野への拡販や新商品の開発に加え、海外事業の強化に取り組み、事業規模の拡大を図っています。
自然産業事業は、液化窒素などの冷熱を利用した事業・商品開発の一環として冷凍食品の販売を行うとともに、種豚や農業および畜産設備などを販売しています。
2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「PLAN23」では、テーマに「水素エネルギー社会の実現に向けて~事業の枠組みを超えた挑戦~」を掲げ、基本方針を「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」及び「デジタル化の推進」としています。「PLAN23」の経営数値目標としては、収益性や成長性、効率性を測る指標として経常利益、ROE(自己資本利益率)を採用しました。具体的な数値目標は2024年3月期において、経常利益400億円、ROE9%以上としております。また、主要な事業の成長を測る指標として、PLAN20に引き続き「LPガス直売顧客数」、「国内外カセットこんろ・ボンベ販売数量」、「エアセパレートガス販売数量」、「液化水素販売数量」の4指標を重要事業指標といたしました。
なお、2023年3月期の実績は、経常利益470億円、ROE11.2%となり、2024年3月期の経営数値目標を達成いたしました。この状況を踏まえ、2024年3月期を初年度とする新中期経営計画の策定を進めています。


(3) 中長期的な経営戦略
当社は、基本方針の実現に資する取り組みとして、中期経営計画「PLAN23」を策定し、「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」と「デジタル化の推進」に取り組んでおります。
重点的には、基本戦略として、「脱炭素社会に向けた取り組み強化」、「エネルギー生活総合サービス事業者への進化」、「海外事業の拡大」の3項目を掲げ、これらの基本戦略に基づいて、投資や事業戦略を推進しております。

また、当社の利益配分に関する基本方針につきましては、安定的な配当により株主の皆様へ還元すると同時に、成長戦略を支えるための投資等に活用し、企業価値の最大化を図ることで株主の皆様のご期待に応えてまいります。
当社はこれらの取り組みを着実に実行し、「世の中に必要とされる企業」であり続けることにより、当社グループの企業価値の向上、ひいては株主共同の利益の実現に資することができるものと考えております。
今後の見通しにつきましては、不安定な国際情勢や物価上昇により、先行きに不透明感はあるものの、社会経済活動の正常化が進むとともに、脱炭素化やデジタル化への投資が見込まれることから、緩やかな回復が続くと想定されます。
なお、2024年3月期より、会社組織の変更に伴い、事業セグメントの区分方法を見直し、報告セグメントを総合エネルギー事業、産業ガス・機械事業、マテリアル事業の3区分に変更しております。
総合エネルギー事業は、引き続きLPガス直売顧客数の増加と販売数量の増量に努めます。またLPガスや都市ガス顧客に対して、エネルギー関連機器の拡販を行うとともに、脱炭素の流れの中で重油からの燃料転換の促進や、カーボンオフセットLPガスの販売を拡大します。カートリッジガス事業においては、中国に加え、タイの新工場を起点とし、東南アジアを中心に海外事業の拡大に取り組みます。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスの適正な価格転嫁と拡販を図るとともに、引き続いてヘリウムの安定供給に取り組みます。また、脱炭素に関連して、液化水素を始めとするガスや設備の販売を強化します。水素エネルギー社会の実現に向けては、CO2フリー水素サプライチェーン構築の取り組みを着実に推進します。
マテリアル事業は、各種資源・素材価格が下落傾向にある中、資源ビジネスの拡大に向けて、調達数量の確保と新たな権益獲得に向けた取り組みを進めます。環境ビジネスについては、低環境負荷PET樹脂、バイオマス燃料、次世代自動車向け二次電池材料等の拡販に加え、リサイクル事業などの新たな取り組みを推進します。また、機能性フィルムを中心とした先端材料の拡販や、金属加工事業などの海外事業の強化を図ります。
当社は1941年に水素の取り扱いを開始し、長い歴史に基づく経験とノウハウを有しています。液化水素の国内シェアは100%で、圧縮水素を含む水素の国内シェアは約70%となっております。水素事業は将来の資源エネルギー事業であり、大量で安価なCO2フリー水素源の獲得が最も重要だと考えています。当社グループは液化水素製造能力をさらに増強するとともに、再生可能エネルギーからの水素製造や海外からのCO2フリー水素の輸入などに取り組み、企業理念に沿った経営を進めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
(1)サステナビリティ全般に関する方針、ガバナンス及びリスク管理
当社は、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」という企業理念のもと、ガス&エネルギーを軸とした事業を通じて、持続可能な成長と社会課題の解決に取り組んでおります。また、「住みよい地球がイワタニの願いです」をスローガンに、脱炭素社会の実現及び環境との共生をめざす企業活動を行っています。
加えて、サステナビリティに関する基本的な方針として「イワタニ企業倫理綱領」を定めるとともに、「中期経営計画」の中でSDGsの達成に繋がる事業目標を定め、取り組みを推進しております。
当社では、リスクを統合的に管理するため、「危機管理委員会」を設置しています。また、当委員会の傘下には、サステナビリティ推進委員会を始め、コンプライアンス、工場保安などの主要なリスクに対応する個別委員会を設け、リスクへの総合的な対応を行っています。
危機管理委員会は、危機管理委員会委員長のもと、定期的に開催され、関係法令の遵守を含め企業全体のリスク管理に努めています。また、各個別委員会についても定期的に開催され、関連リスクの遵守状況や取り組み状況を確認し、その内容は危機管理委員会に報告されています。危機管理委員会および各個別委員会に関する重要事項については、取締役会に報告を行い、適切な監督を受ける体制となっています。
(2023年3月31日現在)

このような方針、ガバナンス及びリスク管理のもと、当社グループは、地球環境問題を経営の最重要課題として捉え、気候変動を重要なサステナビリティ項目と位置付けています。
(2)重要なサステナビリティ項目
①気候変動
(a)ガバナンス
当社は、TCFD(※)提言に賛同し、TCFDのフレームワークを活用して、気候変動に係るリスクと機会を評価・特定した上で、その対応を検証するとともに、情報を適切に開示していきます。
また、グループ全体のリスクを統合的に管理する「危機管理委員会」の傘下に設置されている「サステナビリティ推進委員会」にて、気候変動に係るリスク・機会、取り組み方針、目標などについての議論や実績の進捗確認を行っています。
(※)TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示などについて検討するため設立された「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。
気候変動に伴うさまざまな外部環境の変化の要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類の上、それぞれの分類ごとに、当社グループの事業におけるリスクと機会を評価・特定しています。


気候変動に関する「リスク」に対応し、「機会」に向けた取り組みを強化していくことで、地球温暖化の解決と持続的な成長の両立を目指します。具体的な取り組み内容については、当社ウェブサイトをご参照ください。
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また、これらの項目は2022年度における将来見通しに基づいたものであり、刻々と変わる社会動向や技術革新など外部環境の変化に合わせて柔軟に対応していきます。
(c)リスク管理
気候変動に関するリスクと機会については、「発生の可能性」と「事業への影響度」の2軸により重要度を評価した上で、気候変動に関する「リスク」への対応と「機会」に向けた取り組みの強化を進めています。また、気候変動に関する事業影響をさらに詳細に把握する為、シナリオ分析を進めており、継続して開示情報の充実を図ってまいります。
(d)指標と目標
2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、そのマイルストーンとして、国内で当社グループが排出するCO2(※)について2030年度に、2019年度比で50%削減することを目指しています。
当社グループのCO2排出量の実績については、当社ウェブサイトをご参照ください。
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なお、2022年度の実績は、2023年9月頃に掲載予定です。
(※)国内の当社グループが排出するスコープ1とスコープ2の合計
スコープ1:事業者自らの温室効果ガスの直接排出分
スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出分
(3)その他のサステナビリティ項目
①人的資本・多様性
<人材の育成に関する方針>
当社は、事業環境の変化に対応した、持続的な成長と企業価値創造のためには「ダイバーシティ&インクルージョン」が必要と考えています。「多様な価値観を受け入れ 互いを尊重し高め合える組織へ」という、社長メッセージを発信し、ダイバーシティ&インクルージョン推進に向けた諸施策を講じています。また当社社員の行動規範となる「イワタニ企業倫理綱領」において、「ゆとりと豊かさを実現するため、多様な価値観を尊重し、能力を充分発揮できる環境をつくる」とし、個性や自立性を活かしたチームワークで、自由な発想と豊かな創造性を発揮できる人材育成に努めるとしております。
<社内環境整備に関する方針>
社内体制としては2017年度からダイバーシティ担当を設置し、女性活躍推進をはじめとした多様な人材の活躍支援を行っております。当社のダイバーシティに関する考え方や方針、取り組みについては、当社ウェブサイトをご参照ください。
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今後も、多様な価値観を受け入れて互いを尊重し高め合える組織に向けて、ダイバーシティ経営をより一層推進します。
(b)指標と目標
<女性の管理職への登用>
・現状では総合コースにおける女性の割合が十分でなく、管理職候補者数が少ない状態です。このため、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画において、「総合コース採用者における女性比率25%以上とする。」という目標を掲げて取り組んでおります。
<外国人の管理職への登用>
・現在、外国人の執行役員を1名登用しております。
・今後も国籍を問わず、職務内容、能力を鑑みて採用・登用してまいります。
<中途採用者の管理職への登用>
・専門的な知識を有する方を中心に中途採用しております。
・今後も社内人材で不足する人材採用を進めてまいります。なお、管理職への登用は新卒採用者、中途採用者と分け隔てなく、職務内容、能力を鑑みて登用しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 季節的な要因及び天候の変動について
LPガスの消費量は、気温や水温の影響を受けますので、当社グループの主力商品であるLPガスの販売量は夏季に減少し、冬季に増加します。このため当社グループは利益が下半期に偏る収益構造を有しています。また、特異な天候の変動によっても、当社グループのLPガス販売量に影響を及ぼす可能性があります。
(2) LPガス輸入価格による影響について
当社はLPガスを中東と米国から輸入しており、輸入価格の変動による影響を平準化するため、多くの卸売先との間で、販売価格をCP(Contract Price)とMB(Mont Belvieu)に連動する価格体系としています。ただし、当社では在庫評価について「先入先出法」を採用しており、LPガスの輸入から販売までのタイムラグが約3ヶ月あるため、輸入価格の上昇時には安い原価の在庫を高く売ることから増益要因となる一方、下落時には高い原価の在庫を安く売ることから減益要因となります。
なお、当連結会計年度は31億円の減益効果(前連結会計年度は79億円の増益効果)が生じております。

(3) 気候変動に係るリスクについて
当社グループは、化石燃料であるLPガスを主力商品としている一方で、水素など脱炭素化に資する商品の普及拡大にも注力しており、今後の気候変動に係る規制等の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、グループ全体のリスクを統合的に管理する「危機管理委員会」の傘下に設置している「サステナビリティ推進委員会」にて、気候変動に係るリスク・機会、取り組み方針、目標などについての議論や実績の進捗確認を行っています。
気候変動に係る詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。
(4) 為替変動による影響について
当社グループは貿易取引において為替リスクを負うことがありますが、為替予約等を行うことにより、為替相場の変動によるリスクを回避しています。なお、急激な為替の変動が起きた場合には、このリスクを完全に排除することは困難であるため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 災害等について
当社グループは、高圧ガス保安法等に基づくLPガス・産業ガス等を取り扱っております。そのため、法律に基づいた定期的な法定検査及び自主的な検査・点検を行っております。ただし、大規模な地震等の天災により基地などの出荷設備やお客様側の消費設備に甚大な被害があった場合や感染症の大規模な流行などにより、安定供給ができなくなる可能性があります。
(6) 規制緩和等による競争激化について
電力・ガス小売事業の全面自由化や国内の人口減少・地方都市の過疎化等に伴い、同業者間及びエネルギー間の競争環境が変化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) カントリーリスクの影響について
当社グループは、貿易取引やアジアを中心とする海外事業展開を行っていますので、その地域における政治・経済情勢の悪化や、予期しない法律・規則・税制の変更、治安の悪化等の状況によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 金利変動による影響について
当社グループは、M&AによるLPガス直売顧客数の拡大や産業ガス事業拡大に向けた設備投資など、戦略的な投資に対する資金需要があり、金利変動が業績に影響を与える可能性があります。ただし、有利子負債の多くは固定金利で調達していることから、金利変動による影響は限定的であります。
(9) 取引先の信用リスクの影響について
当社グループは、取引先に対して様々な形で信用供与を行っており、債権の回収が不可能となるなどの信用リスクを負っております。これらの信用リスクを回避するため、当社グループでは取引先の信用状態に応じて、信用限度額の設定や必要な担保・保証の取得などの対応策を講じております。しかしながら、取引先の信用状態の悪化や経営破綻等により債権が回収不能となった場合などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 保有有価証券価格の変動による影響について
当社グループは、グループ企業の株式を保有するとともに、事業上の関係緊密化を図るために取引先などの有価証券を保有しております。今後の株式市場の変動によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。政策保有の目的で保有する株式については、毎年取締役会において個別に保有の適否を判断しております。
(11) 商品の欠陥について
当社グループが提供する製品・サービスについては、適切な品質管理体制のもと対応しておりますが、製造物責任賠償やリコール等が発生した場合には、当社グループの社会的信用や企業イメージの低下、多額の費用負担が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 個人情報の取り扱いについて
当社グループは、LPガス事業をはじめとした各種事業において多くの個人情報を取り扱っており、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者として、個人情報の取扱状況について適切な管理を行い、法の遵守に努めております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、個人情報の流出が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下、顧客からの損害賠償請求など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) コンプライアンスに係るリスクについて
当社グループは、国内外で各種の法令・規制・社会規範の下で事業を展開していることから、コンプライアンス委員会を設置して遵法体制の強化に努めております。さらに、当社グループの全構成員が遵守すべき規範として「イワタニ企業倫理綱領」を制定・周知するなど、コンプライアンスの徹底を図っております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、法令等に抵触する事態が発生した場合には、当局からの行政処分、利害関係者からの訴訟、当社グループの社会的信用の低下などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における日本経済は、物価上昇や為替変動による先行き不透明感は依然として残るものの、コロナ禍からの社会経済活動の正常化に伴う個人消費の持ち直しに加え、設備投資が堅調に推移したことで、緩やかに回復しました。
このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「PLAN23」の基本方針である「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」と「デジタル化の推進」に取り組みました。
脱炭素社会の実現に向けては、当社が参画する「液化水素サプライチェーンの商用化実証」において、海外の出荷地と国内の受け入れ地が決定するなど、CO2フリー水素サプライチェーン構築に向けた取り組みを着実に推進しました。また、FC商用車向け水素ステーションの建設に向けて、コスモ石油マーケティング株式会社と合同会社を設立しました。
総合エネルギー事業では、カーボンオフセットLPガスなど顧客の脱炭素化を支援する商材の拡販に加え、「イワタニカセットガス」の原材料調達から廃棄までを含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を算定・公表するなど、LPガスの脱炭素化に向けた取り組みを進めました。
産業ガス・機械事業では、再生医療分野において、中央研究所で細胞の製造や輸送、凍結保管に関する研究を進めるとともに、新規顧客の獲得に注力しました。陸上養殖分野においては、同研究所に水産養殖の研究設備を導入し、商品提案力の強化を図りました。
マテリアル事業では、金属加工事業の拡大に向けて、タイの拠点を拡張し、製造設備の増強や太陽光パネルの設置を行うことで、生産能力の拡大とCO2削減に取り組みました。
当連結会計年度の業績は、売上高9,062億61百万円(前年度比2,158億68百万円の増収)、営業利益400億35百万円(同41百万円の減益)、経常利益470億11百万円(同5億98百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益320億22百万円(同20億57百万円の増益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
①総合エネルギー事業
総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が高値で推移したことや、新規連結の影響もあり、LPガスの販売が増加しました。また、カセットガスの販売も堅調に推移しました。
一方、LPガスの収益性は改善したものの、市況要因が前年度比で111億8百万円の減益と大幅なマイナスになりました。
この結果、当事業分野の売上高は3,937億20百万円(前年度比665億45百万円の増収)、営業利益は144億34百万円(同82億21百万円の減益)となりました。
②産業ガス・機械事業
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスについては、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少したことに加え、電力料金の上昇により製造コストが増加しました。水素事業は、水素ステーションの運営費用が増加する中、液化水素や関連設備の販売が伸長しました。特殊ガスについては、半導体ガス等が堅調だったことに加え、ヘリウムは世界的な需給ひっ迫により市況が上昇する中、安定供給に努めました。また、機械設備は、ガス供給設備や半導体関連機器の売上が伸長しました。
この結果、当事業分野の売上高は2,404億3百万円(前年度比560億70百万円の増収)、営業利益は165億61百万円(同40億93百万円の増益)となりました。
③マテリアル事業
マテリアル事業は、ミネラルサンドについてはサプライチェーンの混乱により市況が高止まりする中、引き続き安定供給に努めたことで増収となりました。ステンレスは新規顧客向けに販売が増加し、金属加工品もエアコン向けを中心に堅調に推移しました。また、次世代自動車向け二次電池材料は市況上昇の影響や新規顧客向けの販売により売上が増加し、低環境負荷PET樹脂やバイオマス燃料等の環境商品も伸長しました。
この結果、当事業分野の売上高は2,384億53百万円(前年度比874億78百万円の増収)、営業利益は125億36百万円(同52億81百万円の増益)となりました。
④自然産業事業
自然産業事業は、業務用や一般消費者向け冷凍食品の需要が回復する中、仕入コストおよび物流費上昇への対応を進めました。一方で、畜産の飼料価格高騰に加え、種豚の出荷頭数が減少しました。
この結果、当事業分野の売上高は289億86百万円(前年度比56億9百万円の増収)、営業利益は5億67百万円(同1億8百万円の減益)となりました。
⑤その他
売上高は46億97百万円(前年度比1億63百万円の増収)、営業利益は13億64百万円(同1億5百万円の減益)となりました。
①総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ975億23百万円増加の6,560億3百万円となりました。これは、有形固定資産が216億95百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が192億95百万円、新規連結の影響によりのれん等の無形固定資産が206億89百万円、商品及び製品が100億17百万円、投資有価証券が58億98百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
②負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ656億1百万円増加の3,437億73百万円となりました。これは、社債が200億円、長期借入金が133億64百万円、電子記録債務が100億24百万円、支払手形及び買掛金が65億91百万円、契約負債が62億13百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ282億94百万円増加の1,394億54百万円となりました。
③純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ319億22百万円増加の3,122億30百万円となりました。これは、利益剰余金が271億28百万円、為替換算調整勘定が32億85百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ36億82百万円増加の332億56百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が383億96百万円増加したことにより514億71百万円の収入となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益473億22百万円、減価償却費242億15百万円、仕入債務の増加額71億98百万円等による資金の増加と、法人税等の支払額155億86百万円、売上債権及び契約資産の増加額98億43百万円、棚卸資産の増加額97億94百万円等による資金の減少によるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が283億46百万円増加したことにより602億86百万円の支出となりました。
これは主に、有形固定資産の取得285億11百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得243億67百万円、投資有価証券の取得56億70百万円等による資金の減少によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が29億94百万円増加したことにより110億32百万円の収入となりました。
これは主に、社債の発行による収入200億円による資金の増加と、配当金の支払額48億84百万円、借入金の純減少額19億89百万円等による資金の減少によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。
当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。
当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。
(注) 販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 売上高及び売上総利益
売上高は、前連結会計年度に比べ31.3%増収の9,062億61百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格が高値で推移したことや各種市況上昇への対応を着実に進めたことに加え、新規連結の影響によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。
売上総利益は、LPガス市況要因による大幅なマイナス影響を受けたものの、売上高が増収となったことから、前連結会計年度に比べ11.0%増益の2,129億25百万円となりました。
(b) 営業利益
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ14.0%増加の1,728億90百万円となりました。これは主に、運搬費や新規連結の影響等により人件費が増加したことによるものです。この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ0.1%減益の400億35百万円となりました。
(c) 経常利益
営業外損益は、69億76百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の63億36百万円の収益(純額)に比べ6億39百万円増加しました。これは主に、補助金収入及び持分法による投資利益等が増加したことによるものです。
この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ1.3%増益の470億11百万円となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、3億10百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の4億69百万円の損失(純額)に比べ7億80百万円の増益要因となりました。これは主に、負ののれん発生益を計上したことによるものです。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ6.9%増益の320億22百万円となり、1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の520.98円に対し556.69円となりました。
当社は、中期経営計画「PLAN23」において、最終年度の2024年3月期に、経常利益400億円、ROE9%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN23最終年度目標の経常利益、ROEは次のとおりであります。
(PLAN23との比較)
(第80期業績予想との比較)
(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた経常利益)
(注)第80期業績予想は、2022年11月9日に公表した数値を表示しております。
第80期(2023年3月期)実績は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化に伴う主力商品の販売増加や、各種市況上昇への対応等により、経常利益は470億円、ROEは11.2%となり、PLAN23の最終年度目標を達成しました。
また、主要な事業の成長を測る「重要事業指標」のうち、「LPガス直売顧客数」については、PLAN23の目標を1年前倒しで達成しました。「国内外カセットこんろ・ボンベ販売数量」、「エアセパレートガス販売数量」、「液化水素販売数量」についても、概ね順調に推移しております。
以上の状況を踏まえ、2024年3月期を初年度とする新中期経営計画の策定を進めております。
キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(a) 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。
(b) 財務政策
当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、コマーシャル・ペーパー(CP)により調達を行っております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。
社債については、2021年12月のグリーンボンドに引き続き、2022年9月に普通社債(期間7年・10年、各100億円)を発行いたしました。これらは、株式会社日本格付研究所(JCR)より、債券格付「A」を取得しております。また、CP発行に必要な国内CP格付についても、長期発行体格付「A」に対応する「J-1」を取得いたしました。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ282億94百万円増加の1,394億54百万円となりました。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発は、「ガス&エネルギー」を基軸に当社の基幹事業である総合エネルギー、産業ガスからマテリアル、自然産業までの事業領域を対象として取り組むとともに、「水素のイワタニ」としての地位を強固なものにするべく水素サプライチェーンの構築に向けた技術開発、さらには脱炭素に向けた新技術開発に注力しました。
研究開発活動の中心となる中央研究所(兵庫県尼崎市)は、グループ全体の成長ビジョンを見据え、新事業・新商品の開発に繋がる研究開発に取り組みました。また、お客さまへの技術サービス、当社取扱製品の品質管理、商品開発効率を高めるため、分析を主体とした基盤技術の強化にも取り組みました。
2021年10月に設立した岩谷水素技術研究所では、最新鋭の水素試験研究設備を活用し、極低温の液化水素や超高圧圧縮水素ガスに適合した材料や機器の評価を行いながら、水素ステーション建設コストの低減や保安強化につながる研究開発を加速しました。また新規開発テーマとして、液化水素の冷熱回収技術や将来の液化水素ステーションの実用化に向けた充填技術開発に着手しました。さらに、水素と二酸化炭素からプロパンなどの炭化水素燃料を合成する研究を進めています。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
主な研究開発内容は水素関連で、その金額は351百万円です。その他の研究開発費用をセグメント別に分けると、総合エネルギー事業334百万円、産業ガス・機械事業69百万円、マテリアル事業103百万円、自然産業事業6百万円、その他1,190百万円となっております。その他セグメントが多いのは研究開発拠点である当社中央研究所の共有費用が含まれるためです。
なお、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
(水素エネルギー関連)
水素・燃料電池戦略ロードマップ及び水素基本戦略に基づき、水素ステーションの整備や新たな水素エネルギー・アプリケーションの開発等の水素エネルギーの利用拡大に繋がる活動に取り組みました。さらに、水素エネルギー社会の実現を見据えたCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも重点を置き研究開発を推進しました。
具体的には、経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との取り組みにおいて、豪州の未利用褐炭を用いた大規模水素サプライチェーンを構築する実証事業(HySTRA)に参画し、海上からの受入基地でのローディングアームの試験などを通しエンジニアリングデータを蓄積しました。「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)では、商用水素ステーションや県内施設に設置されている燃料電池への供給を継続するなどの実証試験に取り組みました。また、バス・トラック等の大型車に対応した水素ガス供給に関わる計量管理技術の開発にも取り組みました。
2025年に開催される大阪・関西万博での商用運航を目指し、水素燃料電池船のデザインや仕様を決定し建造を進めるとともに、船舶用水素ステーションの建設にも着手しました。また、日揮ホールディングス株式会社や豊田通商株式会社と共同で、プラスチックを燃料にして水素を製造する技術の調査を進めました。さらに株式会社大林組と共同で、液化水素冷熱を回収し事務所空調などへ適用する研究開発にも着手しました。
(総合エネルギー事業)
カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みの一環として、LPガスの脱炭素化につながるグリーンLPガスの製造技術に関する調査研究を進め、岩谷水素技術研究所にてラボ試験に着手しました。
また、NEDO委託事業として、相馬ガスホールディングス株式会社他と共同で、既存インフラを利用した水素混合LPガスの導管供給の実証試験に向けたF/Sを完了しました。2023年度は相馬ガス株式会社の事業エリアでの実証試験を目指します。
さらに、当社主力のコンシューマープロダクツであるカセットガスの拡販に繋がる新商品の開発に向け、熱電発電素子や燃料電池を使った発電機能を生かした製品開発を進めています。
(産業ガス・機械事業)
再生医療分野に力点を置き、大阪大学との共同研究講座で得られた細胞凍結・解凍プロセスの最適化研究成果を活かし、細胞保管輸送容器の開発や凍結装置の開発を進めました。また、2021年度に「再生医療・バイオ研究開発拠点」として中央研究所内に設置したバイオ研究専用クリーンルームを活用し、細胞保管技術開発を進めています。
陸上養殖分野における酸素ガスなどの事業拡大に向け、2023年1月に中央研究所内に陸上養殖の研究設備を導入しました。当社独自で陸上養殖研究を進めることで、自社での知見やノウハウを蓄積し、同分野での提案力強化につなげていきます。
中央研究所で確立した半導体向け重水素ガス製造技術を基に、2021年度に岩谷瓦斯株式会社三重工場内に重水素プラントを立ち上げ出荷を開始しました。引き続き効率化やロス削減技術を追求し技術移管を進めます。
溶接・溶断分野では、コータキ精機株式会社と共同で水素ガス100%を使用して鋼板を切断する水素切断機を開発し商品化するとともに、銅とステンレスの異種金属接合技術の開発に取り組みました。
(マテリアル事業)
携帯電話やパソコン向けに需要が拡大する積層セラミックコンデンサー(MLCC)に使われるナノニッケルの合成技術に取り組み、大手ユーザーにサンプル出荷を行い評価を受けながら品質を高めるとともに、事業化に向け自動化による生産量のアップや製造コストの削減技術を追究しています。
(自然産業事業)
当社の扱う冷凍食品中の微生物、残留農薬、抗生物質分析技術の向上に注力しながら、輸入食品の自主管理分析を実施しました。また、株式会社桂精機製作所と共同で農業用ハウス暖房における燃料のLPガス化を進める中で、燃焼排ガス中のCO2を回収し農作物の光合成に利用するシステムの開発に取り組みました。