第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 当社グループの経営の基本方針

当社は、東京工業大学で発明された磁性材料フェライトの工業化を目的としたベンチャー企業として、1935年に設立されました。社是である「創造によって文化、産業に貢献する」という創業の精神に基づき、素材・プロセス技術の先鋭化と市場ニーズに応える新製品開発を進めるとともに、M&Aの活用、外部との協業などを積極的に行いながら、グローバル化・多角化を進めてまいりました。その結果、受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品及びエナジー応用製品を主要事業として展開しております。

今後も、常に新しい発想とたゆまぬチャレンジ精神を持ち、グループ各社それぞれの強みを活かしつつグループ全体の力を結集することにより、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーに対し、より高い価値を創造し続ける活力あふれる企業であり続けたいと考えております。

② 当社グループの中長期的な経営戦略

 エレクトロニクスを取り巻く環境は、大きな変革期を迎えており、化石燃料から再生可能エネルギーをベースとする社会への転換(エネルギートランスフォーメーション、EX)及びIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術が社会のあらゆる領域に浸透することによりもたらされる変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)が始まっております。

 当社グループは、このような社会環境の変化を、新たな社会貢献と事業成長の機会と捉えて、2022年3月期から2024年3月期までを対象とした中期経営計画「Value Creation 2023」を策定し、遂行しております。この「Value Creation 2023」においては、社会課題を解決し持続可能な社会の実現に貢献する「Social Value(社会的価値)」の追求をすべての企業活動の起点に置いており、それをもとに「Commercial Value(成長戦略)」と「Asset Value(資本効率)」の増大を実現し、「Social Value」をさらに創造していくサイクルを回してまいります。

 具体的には、お客様に満足していただけるソリューションを提供し、期待を超える体験をしていただく2CX(Customer ExperienceとConsumer Experience)の実現に向けて、2つの大きな社会課題であるDXとEXに貢献することで、価値ある存在となることを目指します。例えば、DXにおいては、高速通信ネットワーク、センサ、自動運転、ロボット用の製品等の供給を通じて、デジタル技術による社会の変革に貢献してまいります。また、EXにおいては、高効率なエネルギー社会の実現に必要なエネルギーの蓄電、変換、制御に関わる製品、電気自動車・再生可能エネルギー関連の製品等の供給により、脱炭素社会の推進に貢献してまいります。

 このように社会に価値ある製品を提供することでビジネスの機会を捉え、同時にスピード重視の経営システムを確立してまいります。そして、企業としての透明性を確保して社会で信頼される存在となり、さらに大きく社会に貢献してまいります。

 SDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際開発目標)や、政治経済、技術、市場等のマクロトレンドを踏まえ、中期経営計画を実現するうえで当社グループが最優先で取り組むべき経営課題として「TDKグループのマテリアリティ(重要課題)」を設定しております。この「TDKグループのマテリアリティ」では、EX、DXを社会的価値創造と企業成長のために当社グループが注力する事業領域と定め、また、「品質管理」、「人材マネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「オポチュニティ&リスクマネジメント」、「権限委譲と内部統制の追求」、「資産効率の向上」を価値創造の基盤となる領域として設定いたしました。

 

 

 

<TDKグループの価値創造サイクルとマテリアリティ(重要課題)>

0102010_001.png

0102010_002.png

 

③ 当社グループの対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染症からの社会経済活動及び生産活動の再開によりエネルギー需要が急回復する一方、化石燃料に対する投資不足等の複合的な要因によるエネルギー価格の高騰や、ロシアによるウクライナ侵攻により世界のエネルギー情勢はますます混迷しております。また、米中間の政治的緊張から、米国が中国への半導体製造設備や技術の輸出を規制するなど、経済分野における米中デカップリング(分断)が進行しております。

 しかしながら、このような社会構造・産業構造の変化の中にあっても、エレクトロニクス市場において、EXやDXの潮流は拡大し、当社グループの事業領域に新たな市場の創造をもたらすことも見込まれます。例えば、EXにおいては再生可能エネルギーや電気自動車の普及、DXにおいては5G(第5世代移動通信システム)の普及とBeyond 5Gへの移行、自動車におけるADAS(先進運転支援システム)の実用化、IoT製品やクラウドサービスのさらなる普及等が、当社グループにおける大きな成長機会であると捉えております。これらの大きな変化に乗り遅れることなく、成長機会を確実に捉えるため、積極的な研究・技術開発を行い、競争力を持つ新製品のタイムリーな投入と需要に応じた生産能力の拡大を行ってまいります。

 

表: EX・DXによる成長機会と対象となる当社グループの事業の例

 

EX

DX

受動部品

 

<産業機器>

再生可能エネルギーの普及

アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、圧電材料部品・回路保護部品、インダクティブデバイス

<自動車>

電気自動車の普及

インダクティブデバイス、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ

<ICT>

5Gの普及・Beyond 5Gへの移行

高周波部品、インダクティブデバイス、セラミックコンデンサ

IoT製品の普及

高周波部品、インダクティブデバイス、圧電材料部品・回路保護部品

<自動車>

ADASの普及

セラミックコンデンサ、インダクティブデバイス

センサ応用製品

 

<自動車>

電気自動車の普及

温度・圧力センサ、磁気センサ

<ICT>

5Gの普及・Beyond 5Gへの移行IoT製品の普及

センサ応用製品全般

<自動車>

ADASの普及

磁気センサ、MEMSセンサ

磁気応用製品

 

<自動車>

電気自動車の普及

マグネット

<産業機器>

再生可能エネルギーの普及

マグネット

<ICT>

クラウドサービスの普及

HDDヘッド、HDD用サスペンション

エナジー応用製品

<自動車>

電気自動車の普及

電源

<産業機器>

再生可能エネルギーの普及

二次電池、電源

<ICT>

5Gの普及・Beyond 5Gへの移行

二次電池

IoT製品の普及

二次電池

 

成長を実現するために、マテリアリティとして設定した「品質管理」、「人材マネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「オポチュニティ&リスクマネジメント」、「権限委譲と内部統制の追求」、「資産効率の向上」の課題への取り組みが重要となってまいります。

例えば「サプライチェーンマネジメント」においては、原材料の安定調達やサプライチェーンにおける人権問題への対応等の各種施策に取り組んでおります。さらに、「資産効率の向上」の一環として、グループの事業ポートフォリオの見直し・再構築に取り組んでおります。また、成長を支える根本は人です。外国人従業員比率が約9割である当社グループにとって、人材の多様さと豊富さが競争力の源泉の一つであり、才能ある人材を惹きつけ、確保するための「人材マネジメント」に関する各種施策に継続的に取り組んでおります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

サステナビリティへの対応

 TDKグループを取り巻く社会には、気候変動をはじめエネルギーや資源の枯渇などの環境問題、高齢化社会や情報格差などの社会問題などさまざまな課題が存在します。TDKはこれらの課題解決、つまり将来世代における持続可能な社会構築に貢献してまいります。

 TDKグループは、経営理念に基づき事業を通じた社会課題解決を目指すことを基本とするとともに、TDKグループ「サステナビリティビジョン」を策定しております。これは、TDK独自のコアテクノロジーとソリューションを最大限活かし、「すべての人々にとって持続可能で幸福な社会を実現する」ことを描いたものです。策定においては、長期的な視点に立ち、改めて取り巻く社会環境を整理するとともに、TDKグループが持つ強みや資源にはどのような可能性があるのかを検討いたしました。その過程では、経営層はもとより社外有識者等へのヒアリングも実施いたしました。今後も、このビジョンをグループ全体で共有しながら事業への落とし込みを図り、幸福な社会の実現に向けた具体的施策を検討・実践してまいります。

 

0102010_003.png

(1)ガバナンス

 社長執行役員直轄に設置したサステナビリティ推進本部が、各本社部門と協働し連携を取りながら、サステナビリティに関する活動方針・施策の立案を行っております。なお、2023年4月からは新たに、Chief People and Sustainability Officer(CPSO)として人材とサステナビリティに関する担当役員(経営会議メンバー)を設置し、サステナビリティ推進本部と協働して、企業価値向上につながるTDKのサステナビリティ戦略を推進してまいります。

 

(サステナビリティ推進本部の機能・役割)

・中国・欧州・米州の地域本社とも連携を取り、事業部門、グループ会社、製造拠点へグローバルに取り組みを促進。

・取り組み状況のモニタリング、サステナビリティに関する情報開示やステークホルダーとの対話などの活動を実施。ステークホルダーとの対話を通じて得られた意見や活動を推進するなかで特定された課題を社内の関係者へフィードバックすることで改善を促進。

・取り組みの進捗を社長執行役員に毎月報告。

 

(サステナビリティに関する事項の審議・決定)

・サステナビリティに関する全社的な議題・テーマは経営会議で審議した上で、取締役会へ報告。それに基づき、取締役会は審議または決議し、適切に執行されているかを監督。

 

0102010_004.png

※経営会議は、社長執行役員が指名した執行役員及び機能責任者により構成される諮問会議体。当社グループの開発・製造・販売・財務状況等の業務執行に関する方針及び施策を審議し、社長執行役員が最終意思決定を行います。

 

(2)リスク管理

 当社グループは、持続的成長を目指す上で、組織目標の達成を阻害する要因(リスク)に対し、全社的に対策を推進し、適切に管理する全社的リスクマネジメント(ERM)活動を実施するため、社長執行役員が指名した執行役員を委員長とするERM委員会を設置しております。同委員会では、全社のリスクの分析評価を行い、対策が必要なリスクを特定するとともに、リスク対策を主導するリスクオーナー部門の割当等、全社的リスクマネジメントを推進しております。個々のリスクに対しては、割り当てられたリスクオーナー部門がリスク対策の実施を主導し、その対策状況については、委員会にてモニタリングを行います。委員会によるリスク分析評価や重要なリスクの対策状況については、経営会議において審議し、取締役会に報告しております。

 企業の社会的責任に関するリスクや、気候変動に関するリスク、人材獲得と人材育成に関するリスクなど、サステナビリティに関連するリスクについても、リスクオーナー部門の割当及び担当執行役員の任命を行っております。

 

 

(3)戦略・指標と目標

 当社グループでは、2021年度からの中期経営計画「Value Creation 2023」において、「2CX実現に向けてDXとEXを加速させ、持続可能な社会のための価値を創造する」という基本方針を掲げております。当社グループのマテリアリティは、「中期経営計画の達成」と「社会のサステナビリティと企業の持続的な成長の両立」のために組織の経営資源を最優先で投資し、対処するべき重要課題と定義づけて特定されました。顧客や調達先、社員を含めたすべてのステークホルダーの長期的な価値創造を前提とした上で、残余利益の受益者たる長期投資家・株主にフォーカスしております。

 特定したマテリアリティに紐づく22項目のテーマについては、関連する本社機能部門にヒアリングを実施し、各項目について企業価値との関連性を「財務的成果×非財務的成果」の2軸で定性評価を実施しました。この結果、KPIの有効性、及び企業価値への影響度合いの観点から、6つのマテリアリティに紐づく厳選KPIを選定しました。

0102010_005.png

 

0102010_006.png

 

 

①Energy Transformation(EX)

テーマ

主管部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2050年CO2ネットゼロ実現に向けたエネルギーの有効利用と再生可能エネルギーの利用拡大

安全環境

グループ

エネルギー起源のCO2排出量を基準年(2014年度)と比較して原単位12%削減(スコープ1、2)している

以下2点の活動項目により、TDK環境ビジョン2035で掲げたCO2排出原単位の半減を目指す

・製造拠点の生産性改善によるエネルギー効率の強化

・再生可能エネルギー利用の拡大

エネルギー起源CO2排出量原単位

2014年度比12%削減

32%削減

※2022年度実績は、第三者検証後にサステナビリティWEBサイトにて公開予定。

※連結ベースで算出しております。

 

 地球温暖化の一因とされる人為起源の温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどっており、2015年12月COP21で採択された「パリ協定」に代表されるように、気候変動への危機感は高まる一方です。とりわけ二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスの76%(IPCC第5次評価報告書より)を占める主要な排出源であり、産業活動においても確実な削減を実施する必要があります。

 TDKでは、環境担当役員が気候変動問題を含むグループ環境活動の責任者となり、サステナビリティ推進本部安全環境グループを中心に、グループ環境活動の推進と支援を行っております。グループ環境活動において経営上重要な内容については、経営会議及び必要に応じて取締役会で審議・意思決定を行っております。具体的な活動の目標として、「TDK 環境ビジョン 2035」を策定し、原材料の使用から製品の使用・廃棄に至る、ライフサイクル的視点での環境負荷の削減に取り組んでおります。

 2022年11月には「RE100※」に加盟しました。国内外の全事業所で使用する電力の50%を2025年までに、100%を2050年までに再生可能エネルギー由来にすることを目指しております。なお、2023年4月1日より東北・新潟エリアの全製造拠点の電力の100%を再生可能エネルギー由来といたしました。また2023年中には日本国内の主要製造拠点全ての電力の100%を再生可能エネルギー由来にすべく、活動を進めております。

 

※国際的な環境NGOである「Climate Group」と「CDP」のパートナーシップのもと運営する国際的なイニシアティブ。事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される。

 

(各スコープ、カテゴリー毎のCO2排出量)

2021年度

スコープ

概要

CO2排出量

(t-CO2)

スコープ1

生産

146,774

スコープ2

生産

1,554,703

※2022年度実績は、第三者検証後にサステナビリティWEBサイトにて公開予定。

※連結ベースで算出しております。

 

2021年度目標と実績、評価と今後の取り組み

2021年度目標

実績

生産拠点のCO2排出量削減

エネルギー起源CO2排出量原単位 前年度比 1.8%改善

前年度比25.2%改善

物流CO2排出量削減

物流CO2排出原単位 前年度比1.0%改善(日本)

前年度比6.7%悪化

製品によるCO2排出削減貢献量拡大

製品によるCO2削減貢献量原単位 前年度比 2.7%改善

前年度比12.3%悪化

 

0102010_007.png

       ※2022年度実績は、第三者検証後にサステナビリティWEBサイトにて公開予定。

       ※連結ベースで算出しております。

 SDGsの達成期限2030年が迫る中、TDKはそれぞれのゴールについて何を目指しどのように寄与するのかを、TDK製品が活躍する社会のイメージとともにご紹介いたします。

0102010_008.png

[ご参考:シナリオ分析に基づく戦略策定]

 TDKでは、2021年度からの中期経営計画「Value Creation 2023」において、「2CX実現に向けてDXとEXを加速させ、持続可能な社会のための価値を創造する」という基本方針を掲げております。中期経営計画を実現するために取り組むべき経営課題として、「TDKグループのマテリアリティ」を設定するとともに、環境を含む気候変動問題を、社会価値創造と自社の成長のためにTDKが注力する事業領域「(EX)電子デバイスでムダ熱とノイズを最小化し、エネルギー・環境問題に貢献」と位置づけ、事業戦略の一環として取り組むこととしております。

 具体的には生産拠点において「2050年CO2ネットゼロ実現に向けた、エネルギーの有効利用と再生可能エネルギーの利用拡大」を進めてまいります。また、「脱炭素社会を実現するためにクリーンエネルギーを創出する製品・ソリューションの提供」「エネルギーの蓄電、変換、制御によって効率的なエネルギー社会を実現する製品・ソリューションの提供」に取り組みます。

 こうした中、TDKでは、気候変動関連問題におけるビジネス上のリスクと機会を分析し戦略に反映させる目的で、シナリオ分析を行いました。

-シナリオ分析結果-

 環境省が公表した、「TCFDシナリオ分析実践ガイド」に沿い、下記の前提条件のもと、シナリオ分析を実施しました。

 <前提条件>

 想定期間  :2030年度

 対象範囲  :TDKグループ全体

 採用シナリオ:2℃シナリオ(IEA-SDS、IEA-NPS)、

        4℃シナリオ(IEA-CPS、STEPS、RCP6.0)

 以下、シナリオ分析を基に特定した、主なリスクと機会になります。脱炭素政策による各国の規制が厳しくなる2℃シナリオ下では、移行リスクが発生し、炭素価格付けの導入や、再生可能エネルギーのコストが増加する可能性を認識しました。それぞれのリスクに対する2030年の財務影響としては、炭素価格では59億円、再生可能エネルギーでは176億円と予測しております。また、TDKの注力市場の一つである、自動車市場において、自動車のEVシフトが進展し、EV関連製品の販売機会拡大や、電池関連のリスク・機会の可能性も認識しました。

 一方、4℃シナリオでは、異常気象頻発による洪水発生リスクがより高まる可能性も認識しました。

 

分類

リスク/機会

主な対応策

移行リスク

炭素価格 / 各国 炭素排出目標

リスク

・生産拠点において「2050年CO2ネットゼロ実現に向けた、エネルギーの有効利用と再生可能エネルギーの利用拡大」を推進など

再エネ比率の増加によるエネルギーコストの上昇

リスク

機会

・生産拠点において「2050年CO2ネットゼロ実現に向けた、エネルギーの有効利用」推進

・再生可能エネルギー向け製品の開発促進など

コバルト・リチウムの価格上昇

リスク

・原材料価格動向のモニタリングと調達時のリスクヘッジ実施

・長期供給契約の実施

・製品中のコバルト・リチウム使用量の削減など

EV市場の拡大による新たなビジネスチャンスの拡大

機会

・EV市場拡大を睨んだ製品開発の促進

次世代電池材料の開発

リスク

機会

・全固体電池の開発促進

RE100に対する顧客の要求の増加

リスク

機会

・顧客の気候変動対応への取り組み分析

・再生可能エネルギーの導入計画の策定など

物理リスク

洪水の増加によるビジネスリスクの増大

リスク

・各拠点において、洪水リスクに応じた対策の実施

・BCP対応推進、BCM体制構築など

 

②人材マネジメント

テーマ

主管部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2022年度

実績

ダイバーシティ&インクルージョン

人財本部

ダイバーシティ&インクルージョン推進活動の意義や目的に対する従業員の理解が深まり、女性管理職候補が継続的に生まれる土壌と人財プールができあがっている。

・ダイバーシティ&インクルージョン推進活動の意義・目的の浸透

・女性管理職候補の育成

・日本の活動事例のグローバルへの共有、同様にグローバルの事例の日本への共有

・女性管理職候補の育成

管理職のワークショップ参加率

70%/年

98%/年

97%/年

管理職候補者に占める女性の割合

4%/年

10.3%/年

8.9%/年

女性管理職比率

3%

 

 

3.7%

(2022年

4月時点)

 

 

4.3%

(2023年

4月時点)

※TDK/日本をベースに算出しております。

 

 TDKグループは、100社以上のグループ構成企業と世界30以上の国において250を超える拠点を展開しております。総従業員数約10万人のうち約90%の従業員が日本以外の国で勤務しており、そのうちの約80%はM&AによってTDKグループに加わりました。

 継続的にイノベーションを創出し、事業ポートフォリオマネジメントによって事業を成長させ、経済的・社会的価値の創出と中期経営計画の達成を実現していくためには、多様なグループ企業や優秀な人財がTDKグループの一員として能力を発揮できる環境を作り、さらなる成長を促すためのTDKグループ共通の基盤に基づいた人財育成の仕組みを整備することが必要です。このような認識のもと、TDKでは人事担当役員としてドイツの現地法人責任者を抜擢し、TDKグループ全体の人的資本価値最大化に向けた多くの取り組みをグローバルで推し進めております。そのリーダーシップのもと、人事ビジョンを「やる気に満ちあふれた社員により、未来に向かって、TDKをさらに強靭な(変化の激しい世界の中でも、しなやかに生き延びる力を持った)会社にします」と定め、実現すべきミッションを「TDKのグループ企業と多様な個性を持った従業員をつなぎ、グループとしての一体感を醸成します」と定めております。

 今後、多様な人財に適材適所で動的に活躍してもらうために、グループ各社人事システムを見直し人財管理・育成方法の一元化を進めるほか、グループ会社間の人材交流を活性化するためのルールや制度を整備しました。併せて各世代のリーダー候補が企業や国の壁を越えて議論し、学びあえるグローバル研修を世界各地域で展開しているほか、全世界の従業員を対象としたエンゲージメント調査も開始しました。加えてこの度TDK健康宣言を制定し、全ての活動の主体である従業員一人ひとりの心身のクオリティを一層高めていくための取組みも始めております。こういった人・環境の両面から取り組むことで、グループ従業員がその国籍・性別・世代・経験・知識に関係なく、お互いを尊重し自由に意見を交わせる風土・環境を構築してまいります。

 

(活動事例の紹介)

・グローバルモビリティレギュレーションの策定

グループ内での国・企業を超えた適材適所を推進するために、本社機能から子会社への出向のみならず、 その逆やグループ企業間の出向を含めたグループ全企業共通の出向の規定を策定しております。

 

・双方向の海外トレーニー制度

日本から海外へのトレーニー派遣のみならず、海外子会社から日本へのトレーニー受け入れも積極的に実施しております。

 

・優秀な外国人社員の積極的な招聘

海外現地法人の優秀な社員を積極的に日本に招聘し、その能力を発揮できるようにしております。これは本人の成長だけでなく、日本人社員への刺激にもつながっております。

 

・次世代リーダー候補者の育成・交流プログラム

将来の経営者や幹部候補の育成と交流を目的とする、4つの「グローバルマネジメント人財育成プログラム」を立ち上げ、経営戦略の立案やワークショップの開催を通じて、候補者のスキルを発揮できる環境を整備しております。

 

・健康経営の推進

TDK健康宣言を制定するとともに日本企業間で設立される「健康経営アライアンス」への参画も決定しました。今後も取組みを継続し、従業員が心身ともに健康に働き続けることができるよう健康推進活動に取り組んでまいります。

 

 

③品質管理

テーマ

主管

部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2022年度

実績

ゼロディフェクトの追求

品質保証本部

4つの品質欠陥(設計/材料/工程/管理)の撲滅のため、事業部門におけるモノづくりが源流管理型へ近づいている。

・設計開発及び製造部門の品質教育強化

・全対象拠点の認定維持管理

・品質意識と改善手法の向上、AI活用による4つの品質欠陥(設計/材料/工程/管理欠陥)撲滅活動

全対象部門での品質教育実施

DXを活用した品質教育のグローバル化推進

DX化した教育コンテンツの学習開始

グローバル人事機能及び海外拠点と協同で、品質教育のオンラインコンテンツの作成と展開

全対象拠点における認証維持管理(ISO9001)

認証維持率

100%

 

100%

 

100%

AI活用によるシステムの開発検討

・装置故障予兆検知システムの開発

 

・AI検索による設計審査の開発検討

・予兆検知の要素技術の検討

 

・Deep Learningによる自動監視ツールの導入

・予兆検知の要素技術の開発として自動不良モード分類システムの開発

 

・設計審査へのAI導入の検討と試作の開発

品質コストの削減

品質保証本部

設計時のデザインレビューの強化、及び製造現場における4M(Man,Machine,Material, Method)改善のための施策が打たれており、事業部門において自律的に改善が進んでいる。

・品質ロス削減(歩留向上)を目指したモノづくり4M改善の推進

・小集団活動の推進

各要因に対する品質改善活動

要因ごとに施策を実施

・工程内異物低減活動による異物の見える化(可視化)推進

・製品に実装するソフトウェアの脆弱性に対応するための解析ツール導入

・本社機能による新規の品質診断(工程・設備)の実施

・小集団活動のマニュアル発行と活動の推進

・異物起因の不良に対する改善活動の実施

・Iot製品における製品セキュリティ対策の仕組み構築(設計審査での確認)

・本社機能による新規の品質診断(工程・設備)の中国地区への展開

・小集団活動のベストプラクティスの水平展開

製品とサービスの品質向上による顧客満足度の最大化

品質保証本部

半導体解析機能の増強・強化などにより品質苦情発生時の対応スピードが向上し、特に重大苦情発生時には全社機能横断で顧客対応を行っている。

顧客満足度向上策を加速するための機能横断活動

満足度「Aランク」率

※お客様から入手したサプライヤー評価を集計し、そのうち満足度「Aランク」(満足している)と評価いただいたお客様の割合

95%以上

96.8%

95.0%

 

(品質管理に取り組むTDKにとっての意義)

 製品の品質及びデリバリーパフォーマンスの向上は、2CX(Customer Experience, Consumer Experience)の満足度を向上させ、既存製品や新規開発プロジェクトへTDK製品を採用いただくことにつながります。その結果、お客様先での使用用途やシェアが拡大し、受注・売上・利益の向上に貢献します。

 同時に、生産現場では工程内不具合(品質失敗コスト)が減少することで、TDKの中期経営計画Value Creation 2023におけるCommercial Value及びAsset Valueの向上に寄与します。

 

(TDKが品質管理に取り組む社会にとっての意義)

 TDK製品は、社是「創造によって文化、産業に貢献する」、サステナビリティビジョン「テクノロジーですべての人を幸福に」の実現を目指して開発・生産され、市場に供給されます。しかしながら、品質不具合の発生は、目的を達成できないだけでなく、お客様の満足度を低下させ、社会に損害を与えてしまう可能性もあります。

 品質への取り組みは、社是及びサステナビリティビジョンの実現に向けた重要な要素であり、SDGsで掲げられた課題への解決にもつながるため、TDKが社会に対して果たすべき役割の一翼を担う、重要な意義を持つ取り組みです。

 ステークホルダーからも、製品の品質に関するリスクを低減させ、安定して高品質な製品を提供し続けることが期待されていると考えております。

 

 

④サプライチェーンマネジメント

テーマ

主管部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2022年度

実績

グローバルでの調達力と仕組みの強化

調達・ロジスティクスグループ

・TDKグループの重要共通サプライヤーの最新情報を共有・活用することにより、継続的なコスト低減が図られている。

・サプライチェーンの最適化により、潜在的リスクも含めた調達リスクが軽減されている。

・定期的なモニタリングと子会社への支援によりグローバル共通規定の適合が図られている。

・ASL(Approved Supplier List)の分析、コスト削減計画の立案、共通サプライヤーとの交渉、情報共有のためのプラットフォームの検討、GPCC(Global Procurement Collaboration Committee)の設置

・高リスク部材の分析と対策の検討、サプライヤーとの交渉によるサプライチェーンの再構築・最適化

・モニタリングの仕組み検討、子会社の状況確認と個別規定制定支援、定期的モニタリング

サプライヤー情報及び購入データの可視化と活用

TDKグループのサプライヤー情報及び購入データを一元的に可視化するためのプラットフォームの構築と調達戦略策定への活用

主要子会社のサプライヤーデータを可視化

グループ内子会社の調達データ連結化実施

高リスク部材の調達リスク低減

サプライチェーン上のリスク分析と対策実施

高リスク部材を抽出

高リスク部材のリスク低減を推進

グローバル共通規定への適合

100%

モニタリングの仕組みの構築と個別規定の制定状況の確認開始

子会社の個別規定の確認と是正を実施

サプライチェーンにおける社会・環境配慮

調達・ロジスティクスグループ

サプライヤーの労働環境がCSRチェックシートの活用により定期的にモニタリングされ、フィードバックやサプライヤーへのガイダンスによって継続的に改善されている。

・サプライヤーの労働環境の適切なモニタリングと改善

CSR適合サプライヤー率

100%

99%

100%

 TDKでは、TDK企業倫理綱領の中で、「国の内外において、人権を尊重し、関係法令、国際ルールおよびその精神を遵守しつつ、持続可能な社会の創造に向けて、高い倫理観を持って社会的責任を果たしていきます。」と定めております。その実現に向けて、TDK企業倫理綱領でも人権の尊重を掲げております。

 またTDKグループでは2016年に「TDKグループ人権ポリシー」を策定しました。国際人権章典、労働における基本原則及び権利に関するILO宣言、OECD多国籍企業行動指針、子どもの権利とビジネス原則などの人権に関する国際規範を尊重・支持するとともに、「ビジネスと人権に関する指導原則」の枠組みに基づいて、グループ内の事業活動はもとより、バリューチェーン全体における潜在的な人権課題を正しく理解し改善するための取り組みを進めております。ビジネスパートナー及びサプライヤーの皆様に対しても、本ポリシーへの理解と支持を期待するとともに、TDKサプライヤー行動規範に沿った対応を求めております。

 

(人権リスクの予防・低減に向けた取り組み)

 2020年に、TDKは、グローバルサプライチェーンにおける社会、環境、倫理面の改善に取り組むRBA(Responsible Business Alliance:責任ある企業同盟)に加盟しました。TDKでは、RBA行動規範を、製造拠点におけるCSR活動の基準として活用し、取り組みを進めております。重点課題として特定した人権リスクに対する予防・低減の取り組みについても、RBAの行動規範やチェック項目、監査の仕組み等を活用しながら活動を推進しております。

 

(責任ある鉱物調達)

 TDKグループでは、米国金融規制改革法が成立した2010年より紛争鉱物対策を開始。2013年4月に、TDKグループの「紛争鉱物」に関するポリシーを制定し、グループ各社にて調査回答体制を構築して対応するとともに、OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスに沿った取り組みを行ってきました。

 近年、紛争のみならず、深刻な人権侵害または環境汚染への加担を抑制するため、紛争地域及び高リスク地域原産の鉱物など責任ある鉱物調達の対象が広がっていることを受け、2019年1月には、TDKグループの「責任ある鉱物調達」に関するポリシーに改定。紛争だけでなく、人権侵害や環境破壊などのリスクや不正に関わるタンタル、錫、タングステン、金、コバルト、マイカなどの鉱物問題に対し、サプライチェーン全体で責任ある鉱物調達を推進することを定めました。

 2022年度もグループ各社にて紛争鉱物調査を実施し、コンゴ民主共和国及び隣接国の武装勢力の資金源への関与が明らかとなった鉱物は確認されていません。また、コバルトについても、コンゴ民主共和国におけるコバルト鉱山での児童労働リスクへの懸念から、製錬所の特定を進めております。さらに、マイカにおいても、インド及びマダガスカルにおけるマイカ採掘時の児童労働や安全でない労働環境に対するリスクへの懸念を踏まえ、製錬所(加工業者)の特定を開始しております。

 

 

⑤権限委譲と内部統制の追求

テーマ

主管部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2022年度

実績

買収会社に対する適切なPMI

経営企画

グループ

買収した会社がシナジーを発揮し、TDKグループのガバナンスのもと、成長・価値向上を実現できる、買収前後のプロセスが整備・実行されている。

・各機能による買収前デューディリジェンスの実施

・買収前後の計画策定、及びそれに基づいたシナジー創出活動のモニタリング

-

-

-

・各機能による買収前デューディリジェンスの実施

 

・新しくグループ会社に加わった会社が遵守する事項とその遵守までの猶予期間をまとめたリストに基づき、2月に買収した米国子会社のPMI活動を実施

 

(権限委譲と内部統制の追求に取り組むTDKにとっての意義)

 権限委譲と内部統制を追求することは、事業判断基準の明確化及び効率的で有効なマネジメントシステムの活用につながり、これらは事業のスピードアップや市場の変化に先んじた事業機会の獲得を実現します。同時に、不適切な事業判断やオペレーションを回避することもできるため、TDKグループの企業価値向上につながる活動であると考えております。

 

(TDKが権限委譲と内部統制の追求に取り組む社会にとっての意義)

 不適切な事業判断やオペレーションを回避することは、環境問題や人権問題など、社会への悪影響を防ぐことにつながると考えております。

 

 

⑥資産効率の向上

テーマ

主管部門

3年間で

目指す姿

主な

活動項目

KPI

中期目標(2021~

2023年度)

2021年度

実績

2022年度

実績

事業ポートフォリオの再構築

経営企画

グループ

諸施策の遂行により資産効率の向上を目指し、一例として以下の指標を達成している。

・営業利益率:12%以上

・ROE:14%以上

・設備投資(3年間):7,500億円

・ビジネスポートフォリオマネジメントに基づく、重点課題事業における改善施策の確実な実行による営業赤字額の削減

・R&Dテーマの新規、継続及び撤退基準の設定によるR&Dコストの最適化による効果的利用

営業利益率

12%以上

8.8%

7.7%

ROE

14%以上

11.6%

8.3%

設備や生産拠点の最適化

・ビジネスポートフォリオマネジメント上のルールに従い、事業の資本収益性と成長性に基づき、各事業の設備投資予算の傾斜配分による最適化

・生産拠点の稼働率改善

設備投資額(3年間)

7,500億円

(3年間)

2,913億円

/年

2,757億円

/年

 

(資産効率の向上に取り組むTDKにとっての意義)

 経営資源の適切な配分を行うことは、TDKグループの成長と資本コストを踏まえた相応の収益を持続的に向上させることにつながります。

 また、中核事業を収益の基盤としつつ、現時点で収益は不十分であっても、将来の成長・発展が期待できる事業に対して適切に経営資源を投入することで、新たな収益事業に成長させることができると考えております。

 

(TDKが資産効率の向上に取り組む社会にとっての意義)

 社会に寄与できる事業へより多くの経営資源を重点的に配分すること、また、中核事業だけでなく課題事業やノンコア事業においても、最適な再建戦略を実現するための諸施策の確実な実行により、社会へより多くの価値を提供することができると考えております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、持続的成長を目指す上で、組織目標の達成を阻害する要因(リスク)に対し、全社的に対策を推進し、適切に管理する全社的リスクマネジメント(ERM)活動を実施しております。当社グループのリスクマネジメントの基本方針は、機会とリスクの適切な把握と対応により、グループ内の各組織が企業価値創造のための適切なリスクテイクを行うこと、かつ企業価値の毀損を防止することの両立を図ることです。

このERM活動に関する施策を検討・実施し、リスクマネジメント活動を強化するため、社長が指名した執行役員を委員長とするERM委員会を設置しております。ERM委員会は、リスクマネジメント活動における各組織の役割を明確化し、リスクの識別~評価、対策の検討~実行~モニタリング、改善までの一連のリスク管理活動のPDCAサイクルの推進を行っております。

0102010_009.png

 

ステップ

活動の目的

リスクの識別

当社グループを取り巻くリスクを洗い出す

リスクの評価

洗い出したリスクのうち、発生した場合の当社グループへの影響の大きさの観点から、特に対策を強化すべきリスクを、経営層(トップダウン)、現場(ボトムアップ)双方の目線で絞り込み、対応優先度を定める

対策の検討

リスクの顕在化を防ぐため、回避、移転、低減、受容等の観点から対策を考える

対策の実行

対策を実行し、リスクの顕在化を防ぐ

モニタリング

対策が適切に機能しているか、顕在化の兆候がないか、をモニタリングする

改善

リスクマネジメント活動の結果の振り返り、及び改善を検討する

 

 

リスクの評価として、毎期、これまでに取られている対策によるコントロール後の残余リスクについて、経営リソースの三要素(ヒト、モノ、カネ)、内部・外部ステークホルダーとの関係、レピュテーション、及びBCPの観点から当社グループに対するインパクトの大きさを算定し、さらにリスクの顕在化する可能性との組み合わせにより、残余リスクヒートマップを作成し、リスクの対策優先度を可視化・評価しております。これらリスクの評価結果や対策状況については、経営会議において審議し、取締役会に報告しております。また、期中においても、ヒートマップの妥当性について1回以上検証し、必要な場合は残余リスクの評価の見直しを行っております。

0102010_010.png

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月22日)現在において判断した記載としております。また、各リスクが顕在化する時期を合理的に予測することは困難です。

(1)経済動向変化によるリスク

 当社グループが事業展開しているエレクトロニクス業界は、最終製品の主たる消費地である米国、欧州、中国を主とするアジア及び日本の社会・経済動向に大きく左右されます。さらに、それらの国または地域には、政治問題・国際問題や経済の浮沈といった様々なリスク要因が常に存在しております。当社グループではこれらの世界のリスク動向を注視し適時対策を講じておりますが、常に十分かつ適時の対策を講じられる保証はなく、またこのような経営環境の変化が予想を超えた場合等において、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 経済動向変化による当社グループの業績へのマイナス影響を最小限に留めるべく、資本効率の向上を中期重点課題の1つとして取り上げ、そのための施策(製造拠点の最適化、設備投資計画の精査、本社業務効率の改善等)を実施しております。

(2)為替変動によるリスク

 当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結ベースでの海外売上高比率は90%を超え、取引通貨の多くは米ドル・ユーロ等、円以外の通貨であります。これらの通貨に対する急激な円高の進行は売上高や利益の減少等、損益に影響を与えますが、当該リスク軽減のため、当社グループでは外貨建原材料購買の増大や海外拠点で消費する資材の現地調達化を進めております。また、海外における投資資産や負債価値は、財務諸表上で日本円に換算されるため、為替レートの変動の結果、換算差による影響が生じます。米ドル、ユーロ、それぞれの通貨が1円円高となった場合の当社グループの営業利益に対する影響は、おおよそ米ドルで20億円の減益、ユーロは6億円の減益と見ております。為替レートの変動に対応するため、外貨建資金調達及び為替予約契約の締結等の対策は講じておりますが、急激または大幅な為替レートの変動等は、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 海外子会社と本社(日本)間の取引は原則として現地通貨で行うことで海外子会社の為替変動リスクを低減し、これを本社に集約し日本から包括的に為替予約等を行うことで為替変動リスクを低減することに努めております。海外子会社も必要に応じて為替予約等を活用し為替リスクを低減しております。また営業利益への為替影響額縮小の為、ドル建て購買、円・人民元建て販売取引を推進しております。

 

(3)金利変動によるリスク

 当社グループはその時々において銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債にかかる金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 支払利息の金利上昇リスクに対しては、社債や銀行借入による低利かつ固定金利の資金調達で、金利変動リスクの低減を図っております。受取利息の金利下落リスクに対しては、元本保証を重視し、運用は定期預金を主とし、金利動向を見ながら金利上昇局面では比較的短期の、金利下落局面では比較的長期の運用を行うことでリスクをコントロールしております。

(4)自然災害及び感染症によるリスク

 当社グループは、国内外において多数の製造工場や研究開発施設を有しております。各事業所では、不慮の自然災害や感染症発生等に対する備えとして、防災・防疫対策や電力不足に対する自家発電設備の導入等を施しておりますが、一方、想定を超えた大規模な地震や津波、台風や洪水、火山の噴火等の自然災害やそれに起因する大規模停電、電力不足等によって大きな被害を受ける可能性があります。それらの影響を受け、製造中断、輸送ルート寸断、情報通信インフラの損壊・途絶及び中枢機能の障害もしくは顧客自身に大きな被害が生じた場合など、受注や供給が長期間にわたって滞り、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルスやその他の感染症の感染拡大によって、景気の悪化や、当社事業所の閉鎖もしくはサプライチェーンの混乱が起こった場合などには、業績に大きな影響を及ぼす可能性も考えられます。

(主要な対応策)

 当社グループでは、有事の際に製造拠点が早急な生産再開をできるよう主要事業ごとにBCP(事業継続計画)の策定とBCM(事業継続マネジメント)活動の推進、定着化を進めており、同様に、営業や本社スタッフ機能においてもBCPを策定し、会社全体としての機能が停止しないような備えを有しております。災害発生時のサプライチェーン確保の面では、大規模な災害により業務継続できなくなった場合でも、BCPで定める手順に則り、供給者への支払いや部材の供給継続等の非常時優先業務について代替拠点での継続ができる準備を進めております。

 また、初動対応に関しては、全世界的に、有事の際の被害状況を迅速に把握する目的で、当社グループ海外現地法人と本社間で迅速に情報共有できるシステムを導入しております。

 なお、新型コロナウイルス感染症に関しては、世界的に新型コロナ関連の規制が撤廃や緩和されており、今後は世の中の「ウィズコロナ」の定着とともに、当社グループ各事業所においても通常の感染対策体制を維持するとともに、クラスター発生時においては新型コロナ感染症対策で培った感染予防体制を実行してまいります。

 

(5)国際的な事業活動におけるリスク

 当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結ベースでの海外売上高比率は90%を超えております。

 対象となる多くの市場や、今後経済発展が見込まれる新興国では、不安定な政情、戦争やテロといった国際政治に関わるリスク、為替変動、関税引上げや輸出入制限といった国内政治・経済に起因するリスク、文化や慣習の違いから生ずる労務問題や疾病といった社会的なリスクが、顕在化する可能性があります。また、商習慣の違いにより、取引先との関係構築においても未知のリスクが潜んでいる可能性があります。こうしたリスクが顕在化した場合、生産活動の縮小や停止、販売活動の停滞等を余儀なくされ、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 特に当社グループの中国向け売上高は連結売上高の50%を超えております。同国へ進出している得意先及び現地企業への供給体制を確立するため、中国に製造拠点を数多く有しており、その結果、中国拠点による生産額は、当社グループ全体の約60%となっております。

 同国にて上記のような政治的要因(法規制の動向等)、経済的要因(成長の持続性、電力等インフラ整備の状況等)及び社会環境における問題事象が発生した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 国際的な事業活動におけるリスクに対しては、本社に設置したガバメントリレーション機能と米州、欧州、中国の各地域本社により各地域のリスク関連情報や各国法規制動向の把握及び分析を行っております。特に、近年の米中関係をはじめとするグローバルな地政学リスクについては、重要リスクと認識し対応を進めております。また、当社グループでは需要地における生産を原則としつつも、生産拠点の配置については、カントリーリスクやその他の要因も考慮し、適宜見直しを行っております。こうした拠点戦略最適化を進める中、中国依存度に関しては、当社グループが中国に保有する有形固定資産は、2022年3月期の5,063億円から2023年3月期には4,164億円へ減少しております。

 ロシアのウクライナ侵攻への対応では、事変発生以来ロシア及びベラルーシでの事業活動凍結を継続しております。

 

(6)企業の社会的責任に関するリスク

 当社グループは、社会の持続可能な発展のために、SDGsを一つの指標として、地球環境への配慮・労働環境の整備・人権の尊重など企業の社会的責任を重要な経営課題と認識しており、サプライチェーンも含むあらゆる事業活動の中で、RBA(Responsible Business Alliance)行動基準に則った自己評価や監査、トレーニングや対話を通じて、課題把握と継続的改善に取り組んでおります。しかしながら、当社グループの努力にもかかわらず、環境汚染、労働災害の発生等の労働安全衛生に係る問題、または児童労働、強制労働や外国人労働者への差別等の人権に係る問題等が生じた場合、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止、または一部事業からの撤退等により、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、関連する様々な法令規則や国際的なイニシアチブ等による規制が大幅に強化された場合等、これに適応するための費用が増大したり、規制の強化や顧客要求に適応できず一部事業からの撤退を余儀なくされたりするなどして、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループの人権問題に対する姿勢としてはTDK企業倫理綱領において人権の尊重にコミットしており、いかなる形の強制労働も明示的に禁止しております。また「TDKグループ人権ポリシー」において人権の尊重に向けた当社のアプローチを明示し、同ポリシーに従いサプライチェーン上の各種調査や監査、ステークホルダーとのコミュニケーション等を実施しております。その過程で企業倫理綱領からの逸脱行為があると判断した場合には、是正に必要な措置を講じます。

 また当社グループは、「TDKグループのマテリアリティ(重要課題)」の一つとして「サプライチェーンマネジメント」を掲げ、 その中のテーマに「責任ある資材調達」と「サプライチェーンにおける社会・環境配慮」を設定し、グローバルに展開しております。自社製造拠点は本社CSRグループが主管となり、年1回のCSRセルフチェックと労働・企業倫理アセスメント及びCSR内部監査、第三者機関によるCSR監査を拠点ごとに頻度を決めて実施しております。特に児童労働防止への取り組みとして、上記に加え、高リスクエリアに所在する自社製造拠点と委託加工先に対し追加のセルフアセスメントを行っております。また人財本部が主管となって、強制労働抑止につながる労働時間管理の徹底をグローバルに推進しております。
 法令規則・規制の変更や強化に関しては、各国法令、環境法規制、社会情勢及び顧客の動向などに注視し、変化に合わせた迅速な対応を実施できる体制を整えリスク低減を図っております。

(7)気候変動に関するリスク

 地球温暖化の一因とされる温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどっており、2015年12月COP21で採択された「パリ協定」に代表されるように、気候変動への危機感は高まってきております。気候変動は当社グループにとって重要な課題であり、2019年5月に賛同を表明したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき、環境担当役員が責任者となって気候変動関連情報の開示を進めるとともに、分析と対策を実施しております。気候変動に関するリスクとしては、以下に示すような移行リスクと物理リスクがあり、これらのリスクが現実化した場合には、当社グループの財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

「移行リスク」(政策及び規制、技術開発、市場動向、市場評価等の変化に起因する間接的損失リスク)

・世界各地での炭素税の導入やその他環境関連法規制の強化による費用の増加

・再生可能エネルギー比率の増大に伴うエネルギー調達コストの増加

「物理リスク」(気候変動がもたらす災害等の直接的損失リスク)

・台風の大型化や突発的な豪雨による想定外の洪水の発生による設備や生産の回復費用の発生

 一方で、当社グループは、再生可能エネルギーの創出に貢献する製品や、最終製品での消費エネルギー削減に貢献する製品を多く製造、販売しており、気候変動リスクに対する社会の関心が高まることは、それら製品の需要の拡大の機会であると考えております。このため「TDKグループのマテリアリティ(重要課題)」の一つとして、「電子デバイスでムダ熱とノイズを最小化し、エネルギー・環境問題に貢献」することを掲げ、EX(エネルギー・トランスフォーメーション)を注力する事業領域と位置付けております。

(主要な対応策)

移行リスクについては、「2050年CO2ネットゼロ実現に向けた、エネルギーの有効利用と再生可能エネルギーの利用拡大」をテーマの一つとして掲げ、製造拠点の生産性改善によるエネルギー効率の強化及び再生可能エネルギー利用の拡大を行っております。この中間目標として、2025年度までにグローバルでの再生可能エネルギー導入率を50%にすることを全社目標とし、具体的な取り組みを推進しております。

物理リスクについては、想定を超えた自然災害が発生しやすくなってきており、リスクのさらなる分析を進め特定したリスクについてはBCP(事業継続計画)の一環として対応しております。

 

(8)税務に関するリスク

 当社グループは、世界各国に製造拠点・販売拠点を有しており、グループ会社間の国際取引も多く発生しております。グループ会社間の国際的な取引価格に関しては、適用される各国の移転価格税制や関税法の観点からも適切な取引価格となるよう細心の注意を払っております。しかしながら、税務当局または税関当局との見解の相違等により、取引価格が不適切であるとの指摘を受け追加の税負担が生じる可能性があります。また、世界各国の租税法令ないしその解釈運用の発効、施行、導入及び改廃等により、当社グループに税負担増が生じる可能性があります。

 また、繰延税金資産については、将来の課税所得の見通し及び税務上実現可能と見込まれる利益計画に従い、回収可能性の評価を定期的に行っております。将来において利益計画が実現できない場合、または租税法令ないし税務執行の発効、施行、導入及び改廃等により回収可能性の評価を見直した場合、回収する可能性が高くなくなった部分を減額することにより、法人所得税費用が増加する可能性があります。

 上記のような事態が生じた場合、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 グループ会社間の国際取引におけるリスクに関しては、四半期ごとに当社グループ内の移転価格モニタリングを行い、リスクが高いと判断されればリスク低減のため方策を講じております。また、商流の変更時や新規取引開始の際にも税務リスク分析を行い、必要に応じて対応を進めております。

 租税法令またはその解釈運用の発効、施行、導入に伴うリスクに関しては、本社と各地域本社の間で情報交換を行い、各国の税制改正の情報を事前に把握し、当社グループへの影響を見極めることに努めております。

(9)技術革新・新製品開発におけるリスク

 当社グループでは、価値ある新製品をタイムリーに世に送り出すことが企業収益向上に貢献し、さらに継続的な新製品開発が企業存続の鍵となるものと確信しております。魅力的で、革新的な新製品の開発による売上高の増加が、企業の成長にとって重要な役割を担っていると考えており、この点を経営戦略の主題として新製品の開発に取り組んでおります。しかしながら、変化の激しいエレクトロニクス業界の将来の需要を的確に予測し、技術革新による魅力的な新製品をタイムリーに開発・供給し続けることができるとは限りません。当社グループの開発部門において実施している市場の動向分析に基づく継続的な研究開発体制の見直しや、開発テーマの選択と集中を進めるための開発マネジメントが有効に機能しない場合等には、販売機会喪失により将来市場はもとより既存市場さえも失うリスクもあります。

 また、当社グループでは、多種多様な製品を世界中の国・地域で開発・生産・販売しており、それら事業活動を通して得たデータは当社の資産と言えます。しかしながら、これらデータを適切に蓄積し、開発・営業・マーケティング部門と連携して魅力的な製品の開発・販売に活用できない場合には、業績及び成長見通しに大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 新製品開発にあたっては、個々の開発テーマの開始、継続、終了までを関係機能参加のもとデータを活用しながら検討し、新製品の市場性を見極めて製品化を進めております。また、2021年4月よりコーポレートマーケティング機能を組織化し、全社横断体制での的確な市場動向の把握と新製品開発への素早いフィードバックを図り、市場変化への対応を進めております。

 さらに、2019年に設立したTDK Venturesを通じて出資したベンチャー企業との協業により新技術の動向を早期に察知し、技術ロードマップを補強して新たな市場への進出に取り組んでおります。

(10)価格競争に関するリスク

 当社グループは、競争が激化しているエレクトロニクス業界において、スマートフォンに代表されるICT市場、今後一層の電装化が進展する自動車市場、太陽光発電・風力発電等のエネルギー関連市場等多岐にわたる市場で電子部品の展開を行っております。同業界においては、価格による差別化が競争優位を確保する主たる要因の一つであり、有力な日本企業や韓国、台湾及び中国等の海外の企業を交えた価格競争は熾烈を極めております。

 当社グループでは、こうした市場競争に対して継続的なコストダウン施策の推進や収益性向上に努めておりますが、市場からの価格引き下げの圧力はますます強まる傾向にあり、こうした価格動向が業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループの各事業において、高付加価値製品の創出により価格競争回避に努めるとともに、コストダウン施策を継続的に実施しております。また、全社的に資本効率及び収益性の向上を図り、価格低下による業績への影響を最小限に留めるよう努めております。

 

(11)原材料等の調達におけるリスク

 当社グループは、原材料等を複数の外部供給者から購入し、適時、適量の確保を前提とした生産体制をとっておりますが、原材料等は代替困難な限られた生産国、供給者に依存する場合があります。例えば、磁気応用製品のマグネットに用いられるジスプロシウム等の重希土類は中国に、エナジー応用製品の二次電池に用いられるコバルトは紛争地域であるコンゴ民主共和国に、その生産を依存しております。これらの原材料等については、複数の調達ルートを確保する他、使用量削減にも取り組んでおります。コバルトを含む紛争地域及び高リスク地域からの鉱物に関しては、「責任ある鉱物調達」に関するポリシーを制定し、持続可能かつ責任ある鉱物だけがサプライチェーンで使われることとなるよう商業上合理的な範囲で最大限の努力をしております。

 しかしながら、各国の輸出入規制や供給者の被災及び事故等による原材料等の供給中断、品質不良等による供給停止、さらに製品需要の増加による供給不足等が発生する可能性があります。また、海外生産拡大に伴う現地調達においては海外の諸情勢に悪影響を受ける場合があり、それらが長期にわたった場合、生産体制に影響を及ぼし、顧客への供給責任を果たせなくなる可能性があります。市場における需給バランスが崩れた場合、原材料価格の高騰や原油をはじめとする燃料価格の高騰による製造コストの増大が想定されます。また、調達した原材料等に、紛争鉱物や児童労働などの問題が潜むことが確認された場合、原材料の変更や調達先の変更などが必要となり、製品の生産や供給に影響を及ぼす可能性があるとともに、社会的な信用が低下する恐れがあります。こうした状況が生じた場合は、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 原材料の調達リスク(供給の中断、停止、不足)については随時モニタリングを行い、関連事業部門と共有化する一方、マルチソース化や長期供給契約の締結等によってリスク回避のための対策を進めております。

 現地調達を進めている材料・装置・部材などについては、材料の源流調査の過程で知り得た商社のネットワークを利用して他国の状況把握に努める一方、他国からの調達可能性を調査検討しリスク回避に備えております。

 紛争鉱物については、“責任ある鉱物調達”の枠組みに沿って精錬所調査を行っております。その他、サプライチェーンにおけるCSR遵守状況(人権、環境、安全衛生等)についても定期的に確認しております。

(12)顧客の業績や経営方針転換等に関するリスク

 当社グループは、主にエレクトロニクス市場や自動車市場の顧客に電子部品を供給する企業間取引をグローバルに展開しております。

 多様な顧客と取引を行うと共に、顧客の信用リスク評価を勘案して取引条件を設定する等のリスク低減を図っておりますが、それぞれの顧客の業績及び経営戦略の転換等、当社グループがコントロールし得ない様々な要因によって大きな影響を受ける可能性があります。また、顧客の業績低迷による購買需要の減少や調達方針の変更による納入価格の強い引き下げ要請や、契約の予期せぬ終了等による過剰在庫の発生や収益性の悪化の可能性があります。

国内外での異業種や競合企業による顧客企業のM&Aにより企業再編が行われた場合、注文が著しく減少し、もしくは取引すべてが消滅する等、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性もあります。

 なお、2023年3月期において、当社グループの連結売上高の10%を超える顧客グループは1グループあります。この顧客グループに対する売上は、主にエナジー応用製品によるものであり、売上高は3,927億円(当社グループの連結売上高に対する比率は18%)です。

(主要な対応策)

 当社側が当該顧客向け専用の設備投資をする場合に、一定量の製品買取責任を課す契約を締結する等リスクの低減を図っております。

 業界再編の動きについては常に感度高く情報収集に努めるとともに、重要顧客が絡む業界再編の動きに対しては、当社が積極的に再編に関与することを含めた複数のシナリオを想定し、リスクの低減・回避を図っております。

 

(13)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、事業展開している国内外において、事業や投資関連、電気及び電気製品の安全性関連、国家間の安全保障及び輸出入関連、また、商行為、反トラスト、特許、製造物責任、環境及び税金関連等の、様々な規制の遵守を求められております。当社グループは、GCCO(グローバル・チーフ・コンプライアンス・オフィサー)及び日本のほか世界4地域のRCCO(リージョナル・チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を任命し、当社グループ及びそれを構成する役員、従業員が世界共通の規範に基づきコンプライアンスに則した行動をするための体制や仕組みの構築を推進するとともに、企業倫理綱領を定め、誠実で公正、透明な企業風土を醸成するよう努めております。しかしながら、このような施策を講じても関連する規制への抵触や、役員、従業員による不正行為は完全には回避できない可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客から取引を停止されたり、または多額の課徴金や損害賠償が請求されるなど、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、将来において、さらなる規制強化が行われる可能性があり、その場合には規制対応のための多額な費用負担や、その規制に適応し得ない場合にはビジネスからの部分的撤退等が必要になるなど、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループでは、コンプライアンスに関するリスク低減とコンプライアンス・カルチャー醸成に向け、以下の活動を実施しております。

 ・外部専門家を活用した社内調査

 ・社長及び各グループ会社責任者からコンプライアンス徹底のメッセージを発出

 ・講義形式及びオンラインによる教育啓蒙の実施

 ・米国司法省の求める基準に基づく社内ルールの策定と運用

(14)製品の品質に関するリスク

 当社グループは、国内外生産拠点において、国際品質マネジメント規格(ISO9001、IATF16949やその他の適用ある規格)や技術革新著しいエレクトロニクス業界の顧客が求める基準に従い、多様な製品の品質マネジメントを行っております。また、独自に保有する品質技術や過去から蓄積する品質トラブルデータを活用し、製品の企画、設計、試作、製造の各段階での設計審査、内部品質監査、購入先監査・指導、工程管理等を通じて製品の信頼性や安全性を確保できるよう、開発上流段階から品質を作り込む品質保証体制の構築を図っている他、各拠点における生産現場での積極的なデジタル活用も推進しております。

 しかしながら、品質上の不具合(規制物質含有を含む)や、それに起因するリコールが発生し得ないとは限りません。当社製品のリコールや製造物責任の追及がなされた場合、回収コストや賠償費用が発生し、また販売量が減少する恐れがあります。さらに当社ブランドを冠した製品の品質上の不具合によりブランドの信用が失墜し、企業としての存続を危うくする事態を招くことも想定されます。このように、重大な品質問題が発生した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループでは、品質不具合(規制物質含有を含む)発生のリスク低減のために、設計、材料、プロセス、管理の視点から、様々な施策を実施しております。

 特にICやソフトウェアを組み込んだ製品が増加していることから、IC解析技術の強化、ソフトウェア脆弱性対策の強化にも取り組んでおります。

 

(15)知的財産におけるリスク

 当社グループは、事業収益に貢献する戦略的知財活動として当社製品の機能、デザイン等に関する特許、ライセンス及び他の知的財産権(以下、「知的財産権」と総称します。)のポートフォリオの管理・取得によるその強化と活用に努めております。

 しかしながら、特定の地域では、その地域固有の事由によって当社グループの知的財産権が完全に保護されない場合があり、第三者が知的財産を無断使用して類似した製品を製造することによって損害を受けることもあり得ます。

 一方では、当社グループの製品・工程等が第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受ける可能性もあります。当社グループがかかる侵害をしたとして第三者から訴えられた場合、訴訟活動や和解交渉が必要になり、そのための費用が発生する他、これらの係争において、当社グループの主張が認められなかった場合には、損害賠償やロイヤリティの支払が必要になることや、市場そのものを失う等の損失が発生する恐れがあります。

 このように、知的財産権についてこれらの問題が発生した場合には、事業展開、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 第三者が当社の知的財産を無断使用するケースに関しては、商取引ウェブサイトにおける当社ブランドの不正使用や模倣品販売を監視する仕組みを構築し運用しております。

 一方、当社グループでは他者が所有する知的財産権を尊重することを全社知財方針として掲げ、製品開発においては事前に調査、予防、解決策を講じることによって知的財産権侵害リスクの低減に取り組んでおります。

(16)情報セキュリティにおけるリスク

 当社グループは、事業を展開する上で、顧客及び取引先の機密情報や個人情報及び当社グループ内の技術情報を含む機密情報や個人情報を有しております。これらの情報は、外部流出や破壊、改ざん等が無いように、グループ全体で管理体制を構築し、徹底した管理とITセキュリティ、施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行しております。しかしながら、外部からの攻撃や、内部的過失や盗難、役員・従業員の故意的な行動等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざんまたは情報システムの停止等が生じる可能性があります。

 このような事態が生じた場合には、信用低下、被害を受けた方への損害賠償等の費用の発生、当社グループが取り扱う製品の優位性の低下、または業務の停止等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループでは、外部からのサイバー攻撃に備え、情報セキュリティ専門業者による脆弱性診断を実施し不具合があれば改善し、管理面ではNIST(National Institute of Standards and Technology:米国標準技術研究所)のフレームワークに基づき、当社グループ全体で情報セキュリティ体制の強化を推進しております。

 当社グループ内部からの情報流出防止対策としては、機密データのフォルダ単位によるアクセス制限、AIを活用した不審なデータの送受信の検知、USBメモリ・SDカード等持ち出し可能媒体の使用制限や、退職予定者による当社グループの機密情報の持ち出し防止のための施策、従業員への情報セキュリティ教育を徹底しております。また万が一、情報セキュリティ上の被害が発生した場合に備え、迅速に復旧にするための体制をグローバルで強化しております。更には、グループ全体を対象としたサイバー保険に加入しております。また、当社グループ内の取り組みに加え、サプライヤー等の取引先からの情報流出を防ぐため、取引先に対して情報セキュリティ管理の改善支援を行い、サプライチェーン全体の情報セキュリティの管理レベルを向上させる取り組みも実施しております。

 

(17)人材獲得と人材育成に関するリスク

 当社グループは、世界中の30以上の国と地域で事業活動を推進しており、日本以外の拠点の従業員数は全従業員数の約90%となっております。変化の激しいエレクトロニクス業界において継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した多様な人材及び経営戦略やグローバルな組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の獲得、育成を継続的に推進していくことが重要となります。

 しかしながら、必要な人材を継続的に獲得し定着させるための競争は厳しく、日本国内においては、少子高齢化や労働人口の減少等、また、中国等の海外拠点においても、雇用環境の変化が急速に進んでおり、人材獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、事業展開、業績及び成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループでは人材獲得のために新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開しております。特に日本においては、様々なタイプの学生や経験者へアプローチする機会を増やすため、新型コロナ感染症が拡大する以前からオンライン面談を採用活動の一環として取り入れていたため、コロナ禍の状況においてもスムーズに採用活動手段の転換ができております。

 また、目標管理制度に基づいた公平な評価・処遇制度の充実などの仕組みの構築により、従業員のエンゲージメントを高め、人材の定着を図っております。さらには、自律型人材やグローバル人材を育成し、当社グループの価値観、知識及びモノづくりのDNAを伝える教育プログラムの充実を図っております。これらの教育プログラムには、現在のグローバルキー人材や将来の経営層候補、その他各階層に対する教育も含まれております。

(18)M&Aにおけるリスク

 当社グループは、競争が激化するエレクトロニクス分野において、企業価値を向上させるために必要な技術やその他の要素の外部からの獲得が、事業の成長を加速させる上で有効な手段となる場合や、市場における優位性の確立に資するといった効果が見込める場合は、必要に応じてM&Aを実施しております。

 M&A実施に当たっては、市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の業績、財政状況、技術優位性や市場競争力、当社グループの事業ポートフォリオ並びにM&Aに伴うリスク分析結果等を十分に考慮し進めるべく努めております。

 しかしながら、事前の調査・検討にもかかわらず、買収後の市場環境や競争環境の著しい変化があった場合や、買収した事業が計画通りに展開することができず、投下した資金の回収ができない場合や追加的費用が発生した場合等において、当社グループの業績や成長及び事業展開等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 個々のM&A案件について、当社グループの目指すべき姿や成長戦略と整合しているか、また実現可能な事業計画であるかを、社外取締役が1/3以上を占める取締役会において様々な視点から検証し決定しております。また、買収後統合を円滑に進め統合シナジーを最大限発揮するために、買収後統合において実施すべき事項とその達成時期の標準的なターゲットを定めております。

 

(19)有形固定資産、のれん及び無形資産の減損損失のリスク

 当社グループは、競争が激化しているエレクトロニクス業界での競争優位性を確保及び確立するため、当社の創業時の事業であるフェライトの生産によって獲得した素材技術とプロセス技術を軸としつつ、時には事業の成長加速のためのM&Aも実施し、事業ポートフォリオを充実させて参りました。また、生産能力向上、品質向上または生産性向上などのため製造設備などの設備投資を継続的に行っております。その結果、有形固定資産、のれん及び無形資産などの資産を多額に有しております。多種多彩な事業や資産を持つことはリスク分散に繋がる一方、事業や資産のポートフォリオの効率性を継続的に改善できなかった場合は、当社グループの収益に多大な影響を及ぼす可能性があります。2023年3月31日現在、当社グループの、有形固定資産、のれん及び無形資産の総額は1兆1,410億円であり、そのうち944億円はHDD用ヘッド事業の有形固定資産であり、824億円はMEMSセンサ事業、180億円はHDD用ヘッド事業に配分されているのれんです。

 有形固定資産及び特定の識別可能で耐用年数を確定できる無形資産については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額に基づく減損テストを実施しております。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年同じ時期に減損テストを実施しており、さらに減損の兆候が存在する場合は、その都度減損テストを実施しております。

 かかるテストの結果、資産、資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(主要な対応策)

 当社グループでは、事業の収益性及び成長性を考慮した事業ポートフォリオ・マネジメントを導入し、選択と集中による投資判断を行い、将来の減損リスク発生を回避するよう努めております。

 また、減損リスクの高い課題事業については、期初よりモニタリングを行い業績改善計画の進捗を確認、該当事業部門と本社部門が連携し事業収益性回復の可能性を検討します。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におきましては、一部地域における新型コロナウイルス感染症の感染再拡大からの社会経済活動及び生産活動の回復傾向は続いているものの、長引くウクライナ危機等に起因するインフレの継続、欧米各国による政策金利上昇等により、世界経済は減速しました。当第4四半期連結会計期間に入り、米国金融機関の破綻や欧州金融機関の経営危機懸念を発端とした金融不安から、世界経済の先行きに対する不透明感がさらに高まりました。また、国内外の金利差が為替相場に大きく影響し、円安が進行しました。

当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場を概観しますと、最終需要の低迷から市場全体の生産は大きく減速しました。ICT(情報通信技術)市場では、スマートフォンの生産台数が前連結会計年度の水準を大きく下回りましたが、一部新モデル向けの需要は堅調に推移しました。また、コロナ禍において旺盛であったノートパソコンやタブレット端末向けの需要は大幅に減少しました。HDD(ハードディスクドライブ)の生産台数は前連結会計年度の水準を大きく下回り、パソコン向けのみならず、データセンター向けの需要も大幅に減少しました。一方、自動車市場においては、一部半導体不足の懸念が残るものの、生産台数は緩やかに回復し前連結会計年度を上回る水準となりました。xEV(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電動車)化の伸展により部品搭載点数が増加し、部品需要は堅調に推移しました。また、産業機器市場においては、エネルギー価格高騰に伴い、再生可能エネルギーや家庭用蓄電システム向けの需要が拡大しました。

 

このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

2023年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ105,374百万円増加し、3,041,653百万円から3,147,027百万円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ53,738百万円減少し、1,737,898百万円から1,684,160百万円となりました。

資本合計は、前連結会計年度末に比べ159,112百万円増加し、1,303,755百万円から1,462,867百万円となりました。

b.経営成績

当社の連結業績は、売上高2,180,817百万円(前連結会計年度1,902,124百万円、前連結会計年度比14.7%増)、営業利益168,827百万円(同166,775百万円、同比1.2%増)、税引前利益167,219百万円(同172,490百万円、同比3.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益114,187百万円(同131,298百万円、同比13.0%減)、基本的1株当たり当期利益301円19銭(同346円44銭)となりました。また、当社は2021年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いました。基本的1株当たり当期利益につきましては、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出しております。

当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、135円46銭及び140円89銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで20.6%の円安、対ユーロで7.9%の円安となりました。これらを含め全体の為替変動により、約2,922億円の増収、営業利益で約689億円の増益となりました。

当社グループの事業は、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。なお、当連結会計年度における組織変更により、従来「その他」に属していた一部製品を「受動部品」及び「センサ応用製品」に区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。

受動部品セグメントの連結業績は、売上高は575,939百万円(同507,826百万円、同比13.4%増)、セグメント利益は95,519百万円(同76,804百万円、同比24.4%増)となりました。

センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は169,543百万円(同130,769百万円、同比29.7%増)、セグメント利益は10,726百万円(同損失281百万円)となりました。

磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は200,573百万円(同248,446百万円、同比19.3%減)、セグメント損失は56,392百万円(同利益4,522百万円)となりました。

エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は1,173,355百万円(同965,345百万円、同比21.5%増)、セグメント利益は147,389百万円(同123,212百万円、同比19.6%増)となりました。

4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は61,407百万円(同49,738百万円、同比23.5%増)、セグメント損失は434百万円(同1,432百万円)となりました。

地域別売上高の状況は、次のとおりであります。
 国内における売上高は、前連結会計年度の149,038百万円から18.4%増の176,436百万円となりました。エナジー応用製品セグメント及び磁気応用製品セグメントが増加しました。
 米州地域における売上高は、前連結会計年度の129,857百万円から33.0%増の172,703百万円となりました。受動部品セグメント及びエナジー応用製品セグメントが増加しました。
 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の175,580百万円から19.8%増の210,321百万円となりました。受動部品セグメント及びエナジー応用製品セグメントが増加しました。
 中国における売上高は、前連結会計年度の1,059,718百万円から12.7%増の1,194,013百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。
 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の387,931百万円から10.2%増の427,344百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少したものの、エナジー応用製品セグメントの増加により当地域の売上高が増加しました。
 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,753,086百万円から14.3%増の2,004,381百万円となり、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の92.2%から0.3ポイント減少し91.9%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得たキャッシュ・フローは、262,772百万円となり、前連結会計年度比83,785百万円増加しました。これは主に、前連結会計年度において長期前渡金が増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用したキャッシュ・フローは、234,402百万円となり、前連結会計年度比47,144百万円減少しました。これは主に、定期預金の預入の減少によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって得たキャッシュ・フローは、14,947百万円となり、前連結会計年度比98,796百万円減少しました。これは主に、社債による調達額の減少によるものです。

これらに為替変動の影響を加味した結果、2023年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比66,846百万円増加して506,185百万円となりました。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

生産実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

588,144

12.4

センサ応用製品

189,289

38.2

磁気応用製品

213,657

△16.8

エナジー応用製品

1,163,450

17.0

その他

58,064

7.0

合計

2,212,604

12.5

(注)1.金額は販売価格により算出しております。

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結会計

年度比増減

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計

年度末比増減

(%)

受動部品

500,621

△21.5

275,107

△19.9

センサ応用製品

141,891

△25.9

71,481

△31.3

磁気応用製品

194,547

△20.8

14,459

△26.9

エナジー応用製品

1,270,291

15.5

245,807

39.5

その他

54,507

3.1

15,757

△6.0

合計

2,161,857

△3.0

622,611

△5.7

(注)金額は販売価格により算出しております。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。

事業の種類別セグメントの名称

販売実績

(百万円)

前連結会計年度比増減(%)

受動部品

575,939

13.4

センサ応用製品

169,543

29.7

磁気応用製品

200,573

△19.3

エナジー応用製品

1,173,355

21.5

その他

61,407

23.5

合計

2,180,817

14.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2023年3月31日現在において判断したものであります。

①重要な判断を要する会計方針及び見積り

重要な判断を要する会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積りを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。

IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債及び収益・費用の報告額並びに偶発資産・偶発負債の開示に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っております。実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。重要な会計方針及び見積りについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断、 3. 重要な会計方針に詳しく開示しております。

当社グループが、重要な判断を要する会計方針として認識した項目は次のとおりであります。

 

有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

2022年3月31日及び2023年3月31日現在、当社グループの有形固定資産、のれん及び無形資産の総額はそれぞれ1,151,424百万円及び1,141,045百万円であり、総資産のそれぞれ37.9%、36.3%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、有形固定資産、のれん及び無形資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。

当社グループは、有形固定資産及び特定の識別可能で耐用年数を確定できる無形資産につき、減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額に基づく減損テストを実施しております。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年同じ時期に減損テストを実施しており、さらに減損の兆候が存在する場合は、その都度減損テストを実施しております。減損テストの結果、資産、資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識します。

経営者は、回収可能価額の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して回収可能価額が当初の見積りを下回った場合、資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や投資の回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。

棚卸資産の評価

棚卸資産は、取得原価または正味実現可能価額のいずれか低い金額で測定しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得原価と正味実現可能価額の差額が棚卸資産の帳簿価額から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、棚卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し帳簿価額の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、棚卸資産の評価に影響を与えます。正味実現可能価額の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、棚卸資産の評価は重要であると認識しております。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、棚卸資産の過剰及び陳腐化に関する棚卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。

過去の見積りの妥当性について、当社グループは四半期ごとに見積りと実績を比較し検討しております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、棚卸資産の陳腐化評価を行い四半期ごとに見直しております。

 

確定給付制度債務

従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異をその他の包括利益として認識し、直ちに利益剰余金に振り替えられるため、包括利益、利益剰余金及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における確定給付費用及び確定給付制度債務に影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ1.4%及び4.2%に設定しております。割引率は、給付が見込まれる期間に近似した満期を有する優良社債の利回りを参照して決定しております。

割引率の減少は、確定給付制度債務の増加をもたらす可能性があります。

繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の認識にあたり、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の一部または全部が、将来の課税所得を減額できるまたは税額を控除できる可能性が高いかどうかを考慮しております。繰延税金資産の最終的な回収可能性は、一時差異、繰越欠損金及び繰越税額控除が将来減算される期間における課税所得の水準により決定されます。当社グループは、回収可能性の評価に当たって将来加算一時差異の解消時期、将来の課税所得の予測及び税務戦略を考慮しております。認識された繰延税金資産については、過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が控除可能な期間における将来の課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の回収可能性評価を変更した場合、回収する可能性が高くなくなった部分を減額することが必要となります。

引当金の認識及び測定、並びに偶発負債の将来の経済的便益の流出の可能性

当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的義務を有しており、義務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高く、かつその義務の金額について信頼性のある見積りが可能な場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要な場合には、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及びその負債に特有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割り引いております。

当社グループは、製品・工程等が第三者の知的財産権を侵害した場合や通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社グループは、専門家と相談の上、こうした偶発負債が重要な影響を及ぼす可能性を評価しており、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合には、当該引当金を計上します。発生した引当金は見積りに基づいており、将来における偶発負債の発展や解決に大きく影響されます。これらの引当金は、期末日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される引当金の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因

当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比14.7%増の2,180,817百万円、営業利益が同比1.2%増の168,827百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益が同比13.0%減の114,187百万円となりました。

 当社グループの連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場においては、特にICT市場における需要の低迷が継続した一方、xEV向けや産業機器等のEX需要が堅調に推移しました。この需要を確実に取り込み、売上高は前期比14.7%の増収、営業利益は同1.2%の増益となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。

 ICT市場においては、コロナ禍で好調だったPCやタブレット端末の需要が期初想定を大きく下回ったものの、スマートフォン新モデル向けに二次電池やセンサの販売が拡大しました。一方、データセンター向け投資は急速に減速し、HDDヘッドやサスペンションの販売が大幅に減少しました。

 自動車市場では、半導体供給不足等サプライチェーン上の制約が継続しているものの、全体で緩やかな回復が見られました。特にxEV比率の高まりやADAS化の進展により部品搭載点数が増加し部品需要が堅調に推移した結果、受動部品やセンサの販売が拡大しました。

 地政学的リスクの高まりにより、世界的にエネルギーの供給不安や価格高騰影響が出ているため、再生可能エネルギーや省エネ関連設備、また家庭用蓄電システムの需要が継続的に拡大しており、中型二次電池や産業機器用電源の販売も拡大しました。

 

 対ドル等の為替変動により、売上高は約2,922億円の増収、営業利益で約689億円の増益となりました。この影響を含み、売上高は2兆1,808億円、前期比2,787億円、14.7%の増収、営業利益は1,688億円、前期比21億円、1.2%の増益、税引前利益は1,672億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,142億円、基本的1株当たり当期利益は301円19銭となりました。営業利益は一時費用357億円の影響を受けております。また、一時費用の多くは税金費用の減少効果がないため、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比で減益となっております。

 為替の感応度については、営業利益において前回同様、円とドルの関係において1円の変動で年間約20億円、円とユーロの関係において約6億円と試算しております。

 

営業利益21億円増益の主な要因は、次のとおりであります。

0102010_011.png

 ICT市場の需要減少の影響を大きく受けているHDDヘッド・サスペンション及び二次電池の販売数量減少により、売上による利益変動は△831億円と大幅減益でした。一方、円安による増益効果689億円によりある程度吸収できたことに加え、二次電池や受動部品を中心とした合理化コストダウンの推進、前期実施の構造改革効果、販管費の効率化により、前期より実質約282億円の増益となりました。

 なお、HDDヘッド等の需要環境が大きく変化していることを踏まえ、第3四半期連結会計期間に加え第4四半期連結会計期間においても構造改革を実施しました。一時費用は通期で357億円計上となり、前連結会計年度比261億円の増加となりました。この結果、営業利益はトータル21億円の増益となりました。

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図るとともに、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2023年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で522,413百万円であり、月平均売上高の2.9ヶ月相当の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染の再拡大、地政学的リスクによる世界経済の不確実性等(米中貿易摩擦問題、ロシアによるウクライナ侵攻等)が当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金の拡充、金融機関からの借入金長期化、コマーシャルペーパーや社債の発行による調達の多様化など、対策を講じております。

当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資やさらなる成長戦略に向けたM&A等によるものです。

資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャルペーパーを基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は752,158百万円となっております。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めております。当社グループは、当社グループ独自の付加価値指標として、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対して最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較するTVA(TDK Value Added)を採用しております。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、2024年3月期を最終年度とする中期3か年計画で14%以上の親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しておりました。しかしながら需要環境が急激に変動したこと等もあり、2024年3月期については9.8%の見通しとなります。

当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の11.6%から3.3ポイント悪化し、8.3%となりました。

前連結会計年度比でのROEの悪化要因の分析として、ROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジの要素に分解して検討すると、総資産回転率、財務レバレッジはおおむね横ばいに推移しており、減損等の一時費用発生によってROSが低下したためとなります。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における組織変更により、従来「その他」に属していた一部製品を「受動部品」のその他受動部品及び「センサ応用製品」に、「受動部品」のその他受動部品に属していた一部製品を「受動部品」のコンデンサ及びインダクティブデバイスにそれぞれ区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。

 

(受動部品セグメント)

受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、売上高は575,939百万円(前連結会計年度507,826百万円、前連結会計年度比13.4%増)、セグメント利益は95,519百万円(同76,804百万円、同比24.4%増)、セグメント資産は804,150百万円(同702,979百万円、同比14.4%増)となりました。

当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。

コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、239,693百万円(同198,145百万円、同比21.0%増)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、198,481百万円(同180,239百万円、同比10.1%増)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、137,765百万円(同129,442百万円、同比6.4%増)となりました。xEV向けを中心とした自動車市場向け販売が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。

 自動車、産業機器向けの売上構成比率が高いコンデンサ、アルミ・フィルムコンデンサ、インダクティブデバイスは増収増益を確保しました。

 一方、スマートフォンへの需要が減少した結果、スマートフォン向け売上構成比率が高い高周波部品は減収減益となりました。今後の需要動向を見据えた生産能力調整のため、構造改革費用約3億円を計上しました。

 圧電材料部品・回路保護部品は増収となりましたが、数量ベースでは販売が減少し、減益となりました。

 

(センサ応用製品セグメント)

センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、売上高は169,543百万円(同130,769百万円、同比29.7%増)、セグメント利益は10,726百万円(同セグメント損失281百万円)、セグメント資産は325,442百万円(同279,479百万円、同比16.4%増)となりました。

 一時費用25億円を含みながらも増収効果により収益が大きく改善し、前連結会計年度比110億円の増益となりました。

 温度・圧力センサは、自動車及び家電向けの販売が数量ベースで減少したうえ、拠点整理等の構造改革費用13億円を計上したため減益でした。

 磁気センサにおいては、ホールセンサの自動車及びスマートフォン向け新製品販売が拡大しました。TMRセンサは、自動車向け売上が堅調に推移していることに加え、スマートフォン向け販売の採用も拡大しました。磁気センサ全体では大幅増収となり、収益も大きく増加しました。収益性も向上しております。

 MEMSセンサは、需要が低調なICT市場向けの売上が減少した一方、自動車及びウェアラブル、ゲーム機向けの販売が順調に増加し増収となりました。在庫処分等による一時費用12億円も計上しておりますが、MEMSセンサ全体の収益は改善に向かっております。

 

(磁気応用製品セグメント)

磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、売上高は200,573百万円(同248,446百万円、同比19.3%減)、セグメント損失は56,392百万円(同利益4,522百万円)、セグメント資産は436,910百万円(同436,787百万円、同比0.0%増)となりました。

 HDD用ヘッド、HDD用サスペンションにおいてはPC向けの需要が減少し、ニアラインHDD向けでも景気減速等の影響によるデータセンター投資が減少、HDDの在庫調整によりHDD総需要も前連結会計年度比で40%弱の減少となりました。この結果、HDD用ヘッド、HDD用サスペンションとも販売数量は前連結会計年度比で大幅に減少し大幅な減収、赤字を計上しました。HDD需要の回復にはしばらく時間がかかることを見越し、ヘッド関連事業全体(ヘッド及びサスペンション、サスペンション応用製品)で減損損失や構造改革にかかる一時費用を第3四半期連結会計期間の10億円と合わせ通期で257億円計上しました。

マグネットはxEV向け販売が増加し増収となったものの、生産性改善の遅れにより減益となり、収益改善も進まず減損損失22億円を計上しました。

 

(エナジー応用製品セグメント)

エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、売上高は1,173,355百万円(同965,345百万円、同比21.5%増)、セグメント利益は147,389百万円(同123,212百万円、同比19.6%増)、セグメント資産は1,672,805百万円(同1,661,860百万円、同比0.7%増)となりました。

 中国スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどモバイル用途向けの販売数量が減少しましたが、スマートフォン新モデル向けの販売は増加したうえ、家庭用蓄電システム向けを中心とした中型電池の売上拡大でカバーしました。営業利益は小型バッテリーの数量減による減益影響があるものの、製品ミックスの好転や販売費及び一般管理費も含めたコスト効率化、中型電池の収益改善により増益を確保しました。なお、スマートフォン旧モデル向け専用設備52億円の除却損を計上しております。

 産業機器用電源は、半導体製造装置等の産業機器及び医療用機器向けで需要が堅調に推移し増収増益となりました。収益性も大きく向上しております。なお、EV用電源については順調に売上を伸ばしてきましたが、コスト改善の遅れや需要動向の変化による受注見込みの減少もあり、減損損失118億円を計上しました。

(その他)

4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、売上高は61,407百万円(同49,738百万円、同比23.5%増)、セグメント損失は434百万円(同1,432百万円)、セグメント資産は67,514百万円(同63,483百万円、同比6.3%増)となりました。

メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が増加しました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場向けの販売が増加しました。

5【経営上の重要な契約等】

クロスライセンス契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

Amperex Technology Limited

Contemporary Amperex Technology Co., Limited

中国

両社の二次電池の技術(年間支払金額:150百万米ドル)

2021年4月28日から

2031年4月27日迄

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、多様化するエレクトロニクス分野へ対応するため、継続的に新製品開発の強化拡大を進めており、DXとEXを支える最先端技術により、持続可能な社会の発展に貢献すべく、マーケティング機能との連携を強化し、今後の成長が期待される製品の開発に注力しております。特に、ICT分野、自動車分野、並びに産業機器・エネルギー分野に注力し、当社グループが強みとしているモノづくり力を最大限に活かした製品開発をおこなうことで電子デバイスの高機能化、小型化、省エネルギー化に貢献しております。これらの注力する3分野の市場の変化を捉えた技術戦略を基に、今後の成長が大いに期待されるセンサ・アクチュエータ、エネルギーユニット、次世代電子部品を成長戦略製品と位置づけて、IoT市場における事業機会獲得を目指して強化に注力しております。センサ・アクチュエータはMEMS技術やソフトウエア技術なども繋げていくことで、お客様に幅広いセンサソリューションを提供することを目指しており、エネルギーユニットについては電池や電源、非接触給電などを組み合わせた製品の開発、またモータ・風力発電向けに拡大している金属磁石の開発にも注力しております。次世代電子部品としては、SESUB(IC内蔵基板)技術、薄膜技術、材料技術、Roll to Roll 技術などを融合させ、多様化する市場のニーズに応える高付加価値製品開発を推進しております。

受動部品事業分野では、コア技術を活かした次世代積層セラミックチップコンデンサやインダクタ製品並びにEMC対策部品などの小型化、高性能化を進めております。また、高周波化が進むモジュール製品に適した部品の開発も強化しております。

センサ応用製品事業分野では、センサエレメントの高精度化に加え、高機能・高信頼パッケージング技術の開発を進めております。

磁気応用製品事業分野では、高性能希土類磁石や次世代フェライト磁石の開発、次世代高記録密度ヘッドの開発及びハイブリッド自動車/電気自動車用デバイスの開発を強化しております。また、省エネルギーが訴求される社会情勢に適した高効率電源の開発にも注力し、二酸化炭素排出量の削減も進めております。さらに希土類元素原料の高騰による販売価格上昇を避けるために、希土類元素使用量の削減と新規磁石材料の開発にも開発資源を投入しております。

エナジー応用製品事業分野では、次世代リチウム電池材料の開発を進めております。

 

本社研究開発機能では、それぞれの市場分野に対応した専門性の高い技術者たちが自由な発想で研究開発を展開できるように、フレキシブルに開発体制を見直しております。これらの研究開発活動については、市場の変化を捉えた技術戦略を基に、上記の重点市場において今後の成長が期待される戦略成長製品(センサ・アクチュエータ、エネルギーユニット、次世代電子部品)の開発に注力するとともに、日本、北米、欧州、アジアの4極に開発拠点を設置し、Time to marketの考えのもと、各地域の最先端企業や研究開発機関との連携による製品開発を展開しております。特に、センサはIoTには欠かせない重要なデバイスであり、その実現に必要な技術資産を有する企業との協業も視野にいれながらセンサ技術とソフトウエアを組み合わせたセンサフュージョンにより、革新的な次世代製品創出、新しいプラットフォームの提供を目指してまいります。一方で、連続的な進化を実現するために、全社共通の基盤技術である素材技術、プロセス技術、製品設計技術、生産技術、評価・シミュレーション技術に磨きをかけ、中長期における全社開発テーマを加速する様に支援いたします。また、『7seas戦略に基づき新しい材料、デバイス、ソリューションを開発することでTDK全社に貢献する』というビジョンを定め、テーマの集中と選択、コーポレートマーケティング&インキュベーション本部、TDK Ventures、生産技術本部との協業を強力に推進し開発を進めております。

今年度の成果として、アクチュエーター用非鉛圧電材料の開発に成功し、実用化に向けた製品化が期待されております。この非鉛がもたらすインパクトは大きく、サステナビリティの面でも世界に貢献できる可能性があります。また、2017年にプレスリリースしました世界初の充放電可能なSMDタイプのオールセラミック固体電池(CeraCharge™)の高容量化を実現する次世代の材料開発に成功し、事業部門での量産化に向けた取組みが開始されました。

当社グループの研究開発活動において、優秀な人材の確保と人材育成、及び最先端技術の導入、そして当社グループが保有していない技術については国内のみならず海外の公的機関、大学、研究機関との産学官アライアンスを積極的に進めております。特に、東京工業大学とは、組織的連携協定を締結し、独自性の高い共同研究などを進めており、卓越大学院プログラム事業にも協賛しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比8.6%増の179,467百万円(売上高比8.2%)であります。