文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において当社が合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、確実性を保証するものではありません。
世の中が変化しても変えてはいけない当社グループが大切にする考え方を示すため、基本理念の表現を「価値共創によって人々を幸せにする会社 ~ Sustainable Value Together ~ 」と改めるとともに、新たにサステナブル経営方針を2020年度に定めました。
・Sustainable Product:人々の豊かな生活を実現する新しい価値を創造し提供します
・Sustainable Process:全てのステークホルダーとともに地球環境と共生する循環型プロセスを構築します
・Sustainable People:多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます
私たちダイセルの経営方針の最上位にあるのが基本理念です。SDGs実現のために「サステナブル経営方針」を基本理念の直下に位置付けました。またこのサステナブル経営方針をProduct、Process、Peopleの3つの要素で実現します。この経営方針を具現化していくために、当社グループで働くすべての役員、従業員の基本的な行動原則を再確認し、私たち一人ひとりが、あらゆる行動において常に意識し実践していく行動指針として「ダイセルグループ行動指針」、多様化するグローバル社会で存続するための必要条件であり、すべての企業活動領域で普遍的に適用する規範として「ダイセルグループ倫理規範」を定めました。そして、それを実現するための戦略が長期ビジョンと中期戦略になります。

当社グループが変わらず大切にする思いとともに、今後大胆に変えなければならないことを、2020年度を開始年度とする長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および中期戦略『Accelerate 2025』で明確にいたしました。2023年度には、さまざまな社会的変化の影響や交易条件など経営環境が大きく変化したことに伴い、必要なアップデートを行っております。
注力するドメイン
サステナブル経営方針の具現化に向け、以下の4つのトリガーと注力する市場で価値を提供し、人々の幸せの実現と、当社グループの持続的な成長を目指します。
長期ビジョン実現への道のり
Operation-I(原ダイセル)では自社の現状の事業に加え、注力するドメインを含めた領域で、事業構造の転換とアセットライト化(徹底したコストダウン)を進めます。
Operation-Ⅱ(新ダイセル)では、既存事業の周辺領域でのM&Aや提携による領域拡大、既存事業の再編や合弁会社の抜本的見直しに取り組むとともに、グループ全体でのアセット・スーパーライト化を目指します。
Operation-Ⅲ(新企業集団)では、グループの枠を超えて、まず垂直統合方向のバリューチェーン(サプライチェーン)を強化し、その共通顧客に対する価値創造(共創)に取り組むとともに、同業他社や大学など、水平方向にも共創を拡大することで、より大きな価値の提供を目指します。

基本理念実現に向けて、以下の基本的な戦略に沿った取り組みを推進することで、既存事業の強化・成長による価値の提供と、「循環型社会構築への貢献」を目指します。
クロスバリューチェーン実現に向けた取り組みとしてバリューチェーンの垂直/水平方向との連携を推進し、新企業集団を見据えた、組織変更に対して柔軟に組み替え可能なバーチャルカンパニーの実現を図り、その基盤となるデジタルアーキテクチャの構築を進めます。
また、事業ポートフォリオとして「健康」「安全・安心」「便利・快適」「環境」における価値提供型事業へシフトし、ビジネスユニット(BU)の特性に応じたKPIの設定とその進捗に応じた資源配分により、売上高、営業利益ともに「次世代育成」事業と「成長牽引」事業のシェアを高めてまいります。
[メディカル・ヘルスケア事業]
・新規腸内代謝物ベースの機能性食品素材(ウロリチン他)の展開
・CPI事業の中国、インドでの拡大
・DDS(ドラッグデリバリーシステム)や医療関連材料などメディカル領域の事業育成
[スマート事業]
・半導体市場への材料供給及び関連事業の拡大
・ダイセルビヨンド㈱の活用による高機能フィルムの拡大
・ドライコーティング技術による新事業創出
[セイフティ事業]
・生産地統廃合によるメリット拡大
・インド、ASEAN市場で連携し、リスクヘッジとシェアアップを両立
・中国企業との関係強化
・EV車向けの電流遮断器量産と中国・欧米での拡販
[マテリアル事業]
・アセテート・トウの加熱式たばこ向け販売増、増設なき増産
・カプロラクトン誘導体・エポキシ化合物の高付加価値用途への拡大
・酢酸セルロースの環境素材市場開拓
[エンジニアリングプラスチック事業]
・欧米市場で拡販(ポリアセタール樹脂(POM)・液晶ポリマー(LCP)の 欧米でのシェア10%)
・中国市場でのビジネス強化(中国企業への販売)
・環境ビジネス創出(リサイクル・バイオ原料使用製品の展開)
また、ポリプラスチックスの完全子会社化に伴うシナジー効果を最大化するために、パフォーマンス・マテリアルズ事業本部を設置しており、さらなるグループ全体の樹脂事業の強化に取り組みます。具体的には、ポリプラスチックスのグローバル展開の加速(将来需要取り込みのための増産投資、欧米市場への拡販)、コストダウンシナジーの実現(ダイセル式生産革新の展開加速、間接部門の効率的運営)、グループシナジーの最大化(ポリプラスチックスのマーケティング力の活用、R&Dリソースの相互活用、触媒効率改善など既存事業の改善および改良)などに取り組み、2025年度までにEBITDAで300億円のシナジー効果を見込んでおります。
事業創出力の向上のため、R(Research:ユーザー目線によるシーズの掘り起こし)とD(Development:事業化力の強化)の自立を図り、Proactive IP(開発、事業化のアンテナ機能)、R、Dの相互作用による事業創出を目ざしてまいります。
生産(プロダクション)については、安全・品質のあくなき追求、究極のアセットライト、現場活躍の基盤強化を実践し、現場の力を結集してバーチャルカンパニーでパートナーに価値を提供することを目指します。
デジタルトランスフォーメーションについては、権限委譲を進める組織改革やそれに伴う働き方改革をサポートすることを主眼に、あらゆる業務領域へのAI、IoTの活用を進めてまいります。
人事については、多様な社員が存在感と達成感を味わいながら成長できる、変える!変わる!人事を目指してまいります。
中期戦略最終年度となる2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。
全社業績:
売上高 6,600億円、営業利益 820億円、親会社株主に帰属する当期純利益 580億円、
EBITDA 1,360億円
経営指標:
営業利益率 12.4%、ROE 17.1%、ROIC 9.3%、ROA 7.7%、CCC 125日
株主還元 中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
また、アセットライト方針に基づき、業容拡大期間においても総資産残高をキープしつつ、自己資本比率45%超、ネットD/Eレシオ 0.5以下を実現し財務安定性強化を図ることにより2026年3月末のバランスシートとして以下をイメージしております。
2026年3月末(ターゲット) (億円)
収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。

世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響からの持ち直しの動きが続くことが期待されるものの、世界的な金融引き締めなどによる海外景気の下振れや、ウクライナ情勢も影響した原燃料価格の上昇など、先行き不透明な状況のうちに推移しております。
政治、経済、社会の様々な環境が激変し続ける中、当社の事業環境も不透明な状況が続いていますが、事業環境は常に変化するものとして想定するリスクを洗い出し、中期戦略実現に向けた取り組みを進めています。
コロナ禍からの回復などにより増加する需要に対しては、サプライチェーンの緊密な連携や、需要に応じた生産体制の構築などにより、販売機会を着実に捉えてまいります。また、原燃料価格の高騰や物流費の上昇に対しては、プロセス革新による原燃料コストの抑制や、販売価格の適切な是正にも取り組んでいます。さらに、聖域を設けることなく全社のあらゆる領域において徹底したコストダウンを実践しています。
また、当社グループ力の更なる強化に向け、2020年に完全子会社化したポリプラスチックス株式会社を中心としたエンジニアリングプラスチック事業の拡大を進めています。需要増加に対応した増産計画を迅速に意思決定するとともに、生産革新手法の横展開や設備建設部門の連携など、グループのシナジー強化、収益拡大に向けた取り組みを進めています。
事業ポートフォリオについては、成長牽引、次世代育成事業を主体にメリハリのある投資を実行するとともに、既存事業の整理や体制変革も実行し、事業の選択と集中を進めてきました。今後は、基盤事業の収益力向上と成長牽引事業の着実な育成を進めながら、長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』において当社が目指す姿「循環型社会構築への貢献」を軸とした「健康、安全安心、便利快適、環境」の4つの注力事業領域での新事業展開を加速します。
その中で、大学や他社との連携によるバイオマスプロダクトツリーやバイオマスバリューチェーンの構築を進めるとともに、生産革新、プロセス革新、エネルギー革新の組み合わせによるサプライチェーン全体でのエネルギー使用量の削減やエネルギー供給の最適化、CO2還元技術の確立などによる、カーボンニュートラルの実現に向けた新たなビジネスモデルの構築にも取り組みます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ全般
当社グループでは社長を委員長とし、CSR関連部門の部門長を委員、全ての専務執行役員・各事業部門・R&D部門および生産部門の担当役員ならびに主要グループ会社の役員がアドバイザーとして参加するサステナブル経営委員会(通常3回/年)を設置しています。
当委員会では、重要課題である循環型社会の推進や気候変動への対応について経営レベルでの議論を行うとともに管理を行います。
取締役会はサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に関連するKPI(重要業績評価指標)の進捗状況など、サステナブル経営委員会からの定期的な報告を受けることにより、当社グループのサステナビリティ推進状況を監督します。
2022年度は計3回サステナブル経営委員会を開催し、主にマテリアリティ選定とそのKPI、気候変動や人権問題への対応などについて討議し、その内容について取締役会で報告いたしました。
引き続きサステナビリティに関連する課題の解決、取り組みのレベルアップに向けて歩みを進めていきます。

ダイセルグループは、価値共創によって人々の幸せを実現するという基本理念のもと、サステナブル経営方針に基づき、事業活動を行っています。中期戦略『Accelerate 2025』の策定にあたり、その実現を促進するサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しました。今後も、事業活動を通じたサステナブル社会の実現を目指していきます。
・マテリアリティ特定の背景と考え方
サステナブル経営方針の製品(Product)・製造プロセス(Process)・働く人(People)の3つの観点から、社会課題の解決に対してダイセルグループの強みを生かしてどのような貢献ができるかを考えるとともに、安全・品質・コンプライアンスなどの最重要基盤に関する項目も取り上げました。
・マテリアリティ特定プロセス

ステップ1 社会課題の抽出
国際的なガイドライン、SDGs、国連グローバル・コンパクト原則、業界団体ガイドラインを参照し、ダイセルグループが取り組むべき課題を抽出しました。
ステップ2 優先順位付け
ステップ1で抽出した項目において、「ステークホルダーにとっての重要度」と「ダイセルグループにとっての重要度」の2軸で、優先順位が高い重要テーマを特定しました。

ステップ3 妥当性確認
ステップ1・2で特定した重要テーマの妥当性について検討を行ったうえで、最高責任者(社長など)を含む取締役会/経営会議で報告し、了承されました。
ステップ4 マテリアリティ・KPI策定
1から3のステップを通じて、15項目のマテリアリティ及びKPIを特定しました。定期的な進捗評価を行うことで、CAPDサイクル※を回していきます。
※CAPDサイクル:計画を起点とした活動では重要な事実を見落としてしまうおそれがあると考え、当社では一般的なPDCAではなく、CAPDを改善サイクルとしています。
特定したマテリアリティとそれぞれの戦略と指標・目標は次のとおりです。
〇ダイセルグループの成長と価値共創に向けたマテリアリティ
〇ダイセルグループの存立とガバナンスの基盤に関わるマテリアリティ
(注)1 特に記載がない限り、表中の目標及び実績については、2021年度の情報に基づいて記載しています。
2 当社グループ(連結)を対象に集計しております。
3 日系自動車メーカー向け製品を対象に集計しております。
4 株式会社ダイセル、ポリプラスチックス株式会社、ダイセルミライズ株式会社の主要樹脂材料を対象に集計しております。
5 提出会社単体を対象に集計しております。
6 2022年度の目標及び実績を「(2) 人的資本・多様性」に記載しております。
7 提出会社単体及び国内グループ会社を対象に集計しております。
8 顧客苦情への24時間以内の1次回答率は株式会社ダイセルの国内製造拠点を対象に集計しております。
9 グループ企業の母数は2022年3月時点の人権デュー・ディリジェンス対象候補の企業数を記載しております。
当社グループは、リスク管理を経営の重要な業務と認識し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応を行うとともに、リスクが顕在化した際の影響の最小化を図っています。
気候変動は、サステナブルな経営における重要なリスクと捉え、当社リスク管理体制の下、リスク評価、対応とその実施状況の確認を行います。重大な課題に対しては、サステナブル経営委員会にて詳細な検討を行います。
(a) 体制
当社は、各組織のリスク管理を統括・推進する組織として、企業倫理室担当役員が委員長を務め、各コーポレートの部門長を委員とするリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会は、各組織のリスク管理活動報告およびリスク棚卸し結果により、リスク対応策の進捗状況の確認を行い、必要に応じて助言や支援を行います。全社的な対応が必要と判断されるリスクにはプロジェクトなどを立ち上げて対策を進めます。また、当社グループが置かれている事業環境や社会情勢を考慮して、再点検すべきリスクを「重点確認ポイント」として設定し、各組織において再確認および対策の見直しなどを行います。
なお、当該委員会で議論された、重点確認ポイントや当社グループの経営に重大な影響を及ぼすリスクへの対応策の進捗状況、次年度のリスク管理の方針、BCPの整備状況、その他重要事項については、年度末の経営会議および取締役会に報告しています。
(b) リスク管理の方法
当社グループでは、当社の各部門・各グループ企業(以下、各組織)がその本来の業務の一部として適切なリスク管理を行うためのCAPDサイクルをまわしています。各組織において、事業目標の達成に重大な影響を及ぼすリスクを特定(Check)、できる限り顕在化させないための対策や、万が一顕在化してしまったとしても被害を最小限にするための対策の検討および計画立案(Act, Plan)、対策の実施(Do)、そして、一定期間後のリスクの再評価(Check)とそれに伴う対策内容の再検討(Act)を行っています。
②戦略に記載の指標・目標・実績を参照
(2) 人的資本・多様性(人の成長のサポート、ダイバーシティ&インクルージョンの推進)
①ガバナンス
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照
②戦略
当社グループは、基本理念の下に「サステナブル経営方針」を置いています。その中で、人についてはサステナブルピープル(Sustainable People)を掲げ、多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます、と方針を定めています。これが当社グループの人に対する考え方、すなわち人事方針です。
「人間中心の経営」は、当社が長年持ち続けている考え方ですが、2020年に始まる長期ビジョンを機に、改めて、多様性や人の幸せをより前面に打ち出し、新たな人事方針として、ダイセルグループ社員へ発信しました。そして、人事方針を軸に、人の成長のサポート、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、働きやすい企業文化の醸成など各種取り組みを進めています。
――― ダイセルグループ人事方針 ―――

(注) 1 提出会社単体について、2022年度に同社の人事部門が主催した研修を対象に集計しております。
2 一人あたり研修時間は、人事部門が主催した総研修時間と事業年度末時点の在籍正社員数から計算しております。なお、2021年度統合報告書で開示している一人当たり研修時間は、人事部門が主催した総研修時間と研修を受講した延べ人数から計算しております。2021年度統合報告書と同様の算出方法を用いた場合の2022年度実績は8.5時間です。
3 提出会社単体について、2021年度に同社のレスポンシブル・ケア部門に報告された情報を対象に集計しております。
4 提出会社単体について、2022年度を対象に集計しております。
③リスク管理
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照
④指標及び目標
上記②戦略における記載を参照
(3) 気候変動
①ガバナンス
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照
②戦略
(a)シナリオ分析実施手順
シナリオ分析は以下の手順で実施しています。
ステップ1 シナリオ分析の対象範囲の設定
ステップ2 各事業における気候変動に対するリスクと機会のリスト化
ステップ3 各事業における外部シナリオに従って、事業シナリオを作成、リスクと機会の大きさを再評価
ステップ4 各事業における財務評価
ステップ5 ダイセルグループ全体としての気候変動に対する影響とその対策まとめ
シナリオ分析の実施状況は、順次開示してまいります。
(b)シナリオ分析の対象範囲の設定
当社グループの主要事業領域としてエンジニアリングプラスチック(ポリプラスチックス株式会社)事業、酢酸セルロースを中心としたアセチル事業(スマート、マテリアルSBU)、セイフティ事業を評価対象とし、気温上昇1.5℃と4℃、時間軸2030年を想定してシナリオ分析を進めています。
1.5℃と4℃シナリオには、TCFDシナリオ分析で一般的に参照されることが多い国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の資料を参照して検討しています。
(c)シナリオ分析の実施状況
現在、ダイセルグループを牽引する事業であるエンジニアリングプラスチック(ポリプラスチックス株式会社)事業についてシナリオ分析を実施中です。
(d)今後の予定
エンジニアリングプラスチック(ポリプラスチックス株式会社)事業のほか、酢酸セルロースを中心としたアセチル事業(スマート、マテリアルSBU)、セイフティ事業のシナリオ分析を順次実施し、ダイセルグループとしての気候変動に対するリスクと機会の集約を行います。
さらに、それぞれのリスクと機会について財務評価を行ってまいります。
GHG排出量削減
当社グループは、「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、マテリアリティ「気候変動への対応」のKPIとしてGHG排出量削減率を掲げました。目標を達成するため、省エネルギー対策をさらに発展させ、GHG排出量削減を推進していきます。
指標:当社グループのスコープ1・2のGHG排出削減率(2018年度基準)
目標:2050年 カーボンニュートラルの実現 ※1
2030年 GHG排出量50%削減(2018年度基準) ※2
2025年 GHG排出量37%削減(2018年度基準) ※2
※1 対象範囲はダイセルグループのスコープ1・2・3
※2 対象範囲はダイセルグループのスコープ1・2
GHG排出量削減推進体制
当社グループの省エネルギーおよびGHG排出量削減の強化を図るため、2020年7月に「省エネ推進委員会」を発展させた社長直轄の「エネルギー戦略委員会」を発足しました。「エネルギー戦略委員会」は、生産本部の担当役員である生産本部長を委員長に、国内の生産部門・エネルギー部門・その他コーポレート部門の代表者で構成しています。省エネルギー推進と管理を行うとともに、GHG排出量削減目標達成に向けて、現行生産プロセスにおけるGHG排出量削減、エネルギー部門のGHG排出量削減、革新的技術によるGHG排出量削減の3つの切り口で、当社グループ全体で地球環境と共生する循環型プロセスの構築に取り組みます。

2021年度の実績
大竹工場の廃タイヤ混焼率向上や蒸気・電力使用率改善など省エネに取り組んだものの、需要回復に伴う生産量増加などにより、当社グループの2021年度のGHG排出量は、前年度比11%増の2,348千トン-CO₂になりました。(スコープ1・2のGHG排出量は1%の増加(2018年度基準))
(※)各年度の対象期間は4月~3月を基本としていますが、ポリプラスチックスグループを除く海外グループ企業は1月~12月を
対象期間としています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
また、将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2023年6月26日)現在において判断したものであります。
経済の変調により需要が急激に減少した場合、また他社による大型プラントの建設等により供給過剰となった場合や競合各社間の競争激化等により当社グループの製品の低価格化が進んだ場合は、当該事業の収益を悪化させる可能性があります。当社グループの製品は多岐にわたる分野に使用されており、特に自動車、電機、半導体、医療などの各業界における需要の変動に大きな影響を受けます。
② 為替変動に係るリスク
為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る交易条件、および海外グループ会社の業績の邦貨換算結果等に対して影響を与えます。
通常、円安は当社グループの業績に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼすと考えております。また、海外グループ会社においては、その所在国通貨と異なる外国通貨との為替相場変動により、業績等に影響を及ぼす可能性もあります。
これら為替変動に係るリスクに対して、先物為替予約取引などを用いてヘッジを行っておりますが、当該リスクを完全に回避できるものではなく、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの海外売上高比率は、2023年3月期において62.7%であります。また、当社の試算では米ドル・円レートが1円変動すると、連結売上高で年間約24億円、連結営業利益で年間約9億円の変動をもたらすと算定しております。
当社グループは、主力製品の酢酸やポリアセタール樹脂の原料として、メタノールを大量に購入しております。長期契約やメタノール製造会社への出資など、比較的安価なメタノールを安定的に購入するための手段を講じておりますが、メタノール市況が上昇した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、常に安価かつ価格の安定した原燃料への転換や、製造方法改善によるコストダウンをはかっております。原燃料の高騰が続く場合には、これらに加えて、製品販売価格への転嫁等によりできる限りの吸収をはかっておりますが、それを超えて高騰が続く場合は、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、中国・アジア地域を中心に、北米・ヨーロッパなど海外事業展開を拡大しつつありますが、海外での事業活動では、予期しえない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の採用・確保の困難、テロ、戦争等による社会的又は政治的混乱等のリスクが存在します。
当社グループは、原材料を複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。しかしながら、複数のサプライヤーからの調達を進めてはいるものの、一部の特殊な原材料については限られたサプライヤーに依存する場合があります。また、サプライヤーの被災、事故、倒産などによる原材料の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、さらなる事業成長を目指し国内外における企業買収・資本提携等に取り組んでおります。これらの投資について予期したとおりの成果が獲得できない場合、また事業環境等の急激な変化により事業計画に大幅な修正が生じた場合には、のれんの減損や投資損失が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの重大な感染症については、感染拡大予防のために経済活動が制限されたり、当社グループや取引先で罹患者が大量に出た場合は、プラントの稼働低下や生産停止、サプライチェーンの分断などが発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主要な生産拠点のひとつであるポリプラスチックス㈱富士工場は「東海地震に係る地震防災対策強化地域」内に立地しており、設備面の対策や地震防災訓練などを実施しております。また、グループの他の事業場においても、防災訓練などの緊急時対応訓練を行っております。
しかし、自然災害により重大な損害を被った場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
環境保全に対する社会要請の高まりにより、環境規制の強化が進み、法令遵守のための設備投資や関連するビジネスの再編成などの事態が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、全てのステークホルダーとともに、地球環境と共生する循環型プロセスの構築を目指し、持続可能な低炭素社会の実現に向けて、生産プロセスの抜本的な見直しや新技術の導入、グループ全体のエネルギー使用最適化など、省エネルギーに努め、GHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組んでおります。
しかしながら、気候変動に伴う異常気象等が当社グループの工場の操業やサプライチェーンに影響を与える物理的リスク、あるいは低炭素社会への移行に対応できずに原燃料価格や電力価格が上昇するリスクは、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保および不具合品の流出防止に努めております。また、万一に備え、賠償責任保険も付保しております。しかし、当社グループが製造した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、保安防災活動に継続的に取り組むなど、日頃から工場の安全確保に努めております。しかし、万一、火災・爆発等の産業事故災害が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループでは、既存事業の強化および新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、技術革新のスピードが速くタイムリーに新製品の開発ができないなど、期待した成果が得られず計画を断念することになった場合には、投下した研究開発費を回収できないため、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人材の確保が不可欠であり、技術者が十分に確保できない場合には当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「知的財産権が重要な資産であることを認識し、その保全・確保に努めるとともに、第三者が保有する知的財産権についてもその権利を尊重します」との行動規範のもと、知的財産関連情報の調査、知的財産権の取得・管理、適切な契約の締結・管理など戦略的な活動に取り組んでおります。しかしながら、当社グループが第三者の知的財産権を侵害している等の予期せぬ警告や訴えを受けたり、第三者に知的財産権を無断で使用される恐れがあります。このような事態が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内外の法令遵守に努めております。しかしながらグローバル、かつ多様な分野で事業を行う中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあり、重要な訴訟等の提起を受ける可能性があります。
裁判等において不利益な決定や判決がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、事業を遂行する上で多くの機密情報や個人情報を保有しております。これらの情報を取り扱うにあたり、管理体制の構築、従業員教育の実施およびIT技術動向の変化に応じたセキュリティソフトの導入・更新などの対策をとっております。
しかしながら、通信ネットワークに生じた障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウエアもしくはソフトウエアの不具合・欠陥、コンピュータウィルス・マルウェア等外部からの不正な手段によるコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為や使用人もしくは委託業者の過誤等により、これらの情報が流出し、または改ざんされる事態が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループが自ら使用、または第三者に貸与する機械及び装置、土地及び建物などは、投資計画どおりに収益が得られず、投資額の回収が見込めないなど資産価値の下落に起因する潜在的な減損のリスクにさらされています。当連結会計年度末において、有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額の合計は2,673億円です。固定資産の減損損失が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ会社のダイセルミライズ株式会社が販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関である Underwriters Laboratories Limited Liability Company(以下「UL」という。)の認証に関し、不適切な行為が判明しました。1980年代後半~2017年6月にかけて、ULの定める難燃性規格に関するフォローアップ工場試験の際に、指定されたロットとは別の試験片を作成し提出していたほか、1980年代~2020年5月にかけて、認証登録時の組成を一部変更した製品を、ULへの申請を行わずに製造・販売していました。(以下「本件不適切行為」という。)
本件不適切行為について、ULに報告を行った結果、一部製品のUL認証が2022年10月31日付で取り消されました。これまでUL認証の取消しとなった製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けておりません。
また、UL認証が取消しとなった製品について、UL認証の再登録申請を進めております。これに関連し、ISO(国際標準化機構)の登録認証機関である一般財団法人日本品質保証機構(以下「JQA」という。)による不定期審査を受審しました結果、株式会社ダイセル広畑工場が取得しているISO9001:2015 (※) について認証範囲が2022年11月18日付で一部取消し・縮小となりましたが、一部取消し・縮小されていた認証範囲につきましては、2023年4月14日付で再認証を受けております。
本件不適切行為を受けて、当社の独立社外監査役と当社と利害関係を有しない社外の有識者から構成される調査委員会を設置し、本件不適切行為の事実関係、当社国内子会社でのUL認証に関連する類似案件の有無を調査するとともに、これらの行為の原因分析及び再発防止策の提言等を委任し、2022年12月16日に同委員会からの調査報告書を受領しました。本調査報告書につきましては、当社ウェブサイト
(https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20230110.pdf)にて公表しております。
同委員会からの再発防止策の提言を受け、以下の取組みを行っております。
当社では、同委員会による調査結果を当社グループ全体で厳粛に受け止め、改めて「安全」「品質」「コンプライアンス」を当社の「モノづくり」の基盤と位置付けるとともに、新たに、「ダイセルグループ行動指針」、「ダイセルグループ倫理規範」を定めました。
また、再発防止のための体制構築も進め、2023年4月1日付で、安全と品質に関する監査と取り組み推進の機能を分離し、それぞれの機能を強化することを目的とした組織変更を実施しました。今後も当社グループの役職員全員が、今一度「モノづくり」の基本に立ち返り、信頼回復・再発防止に全力を挙げて取り組んでまいります。
なお、本件の対象製品に関連する費用が多額に発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(※) 品質マネジメントシステムに関する国際規格
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響からの持ち直しの動きが続いたものの、中国でのロックダウンや半導体不足などの自動車生産への影響、ウクライナ情勢も影響した原燃料価格の上昇や世界的なインフレの進行、物流の混乱、為替の変動など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
このような環境の中、当社グループでも自動車生産や、電子デバイスの需要低下の影響を受け、一部製品の販売数量が減少したものの、需要が伸長する製品については販売機会を着実に捉え販売数量を伸ばすとともに、高騰する原燃料価格や物流費の販売価格への転嫁、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
当連結会計年度の売上高は5,380億26百万円(前年度比15.0%増)、営業利益は475億8百万円(同6.3%減)、経常利益は520億35百万円(同9.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は406億82百万円(同30.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、各事業が負担すべき費用を負担し、グループ全体の利益への貢献に責任を持って事業運営する体制に移行するため、全社共通費用を全て各事業に配賦する方法に変更しています。前年度比較については、前年度の数値を変更後の配賦方法に基づき組み替えた数値で比較しております。
コスメ・健康食品事業は、中国のロックダウンの影響などにより化粧品原料の販売数量が減少したものの、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正や、健康食品素材の販売数量が増加したことなどにより、増収となりました。
ライフサイエンス事業は、キラル関連製品の販売やインドでの分析サービスなどが好調に推移したことや、為替の影響により、増収となりました。
当部門の売上高は、225億18百万円(前年度比15.5%増)、営業利益は、減価償却費の増加等により、6億99百万円(同71.3%減)となりました。
液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、高機能フィルムの販売数量が新規採用により増加したものの、液晶パネルの在庫調整の影響により、酢酸セルロースの販売数量が減少し、減収となりました。
電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、液晶パネル材料向けの販売数量が減少したものの、半導体材料向けの販売数量の増加や、原燃料価格上昇に伴う販売価格の上昇などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、295億99百万円(前年度比8.9%減)、利益面では、販売数量の減少や原燃料価格の上昇などにより、営業損失6億42百万円(前年同期は営業利益40億35百万円)となりました。
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足や中国のロックダウンなどによる自動車減産の影響を受けたものの、自動車生産が前年度より回復し販売数量が増加したことや、為替の影響などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、839億81百万円(前年度比20.9%増)、営業利益は、利益面では、米国での人件費の増加や、物流費の上昇などにより、営業損失1億43百万円(前年度は営業利益25億83百万円)となりました。
酢酸は、定期修繕に伴う販売調整や、前年度高騰した酢酸市況の軟化により、減収となりました。
酢酸誘導体は、電子材料やディスプレイ向けの需要低下により販売数量が減少したものの、販売価格の是正などにより、増収となりました。
アセテート・トウは、加熱式たばこ用の需要増加などによる販売数量の増加、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正、為替の影響などにより、増収となりました。
カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、自動車向け塗料保護フィルム用途などの需要拡大によりカプロラクトン誘導体の販売数量が増加したことや、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、1,548億13百万円(前年度比26.0%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正、為替の影響などにより、219億36百万円(同19.6%増)となりました。
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、日系自動車の下期生産台数減少による自動車部品メーカーの在庫圧縮や、スマートフォンなどの需要低下の影響を受け、新型コロナウイルスの影響からの需要回復で販売数量が急増していた前年度と比較して販売数量が減少したものの、継続的な販売価格の是正や、為替の影響により、増収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、販売数量の増加や、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、2,380億62百万円(前年度比12.2%増)、営業利益は、販売価格の是正や、為替の影響などにより、253億10百万円(同14.5%増)となりました。
その他部門は、防衛関連事業での販売数量が減少したことなどにより、減収となりました。
当部門の売上高は、90億51百万円(前年度比20.7%減)、営業利益は、3億47百万円(同70.9%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、棚卸資産や有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し667億70百万円増加し、7,656億6百万円となりました。
負債は、短期社債や1年内償還予定の社債等の増加により、前連結会計年度末に比し358億78百万円増加し、4,551億70百万円となりました。
また純資産は、3,104億35百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,952億9百万円となり自己資本比率は38.6%となりました。
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し55億6百万円増加し、934億93百万円(前連結会計年度末比6.3%増)となりました。
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、268億47百万円(前年同期は、429億93百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益549億67百万円および減価償却費315億16百万円であり、資金減少の主な内容は、棚卸資産の増減額318億75百万円および法人税等の支払額144億25百万円であります。
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、440億93百万円(前年同期は、465億28百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、投資有価証券の売却及び償還による収入86億77百万円であり、資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出473億86百万円であります。
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、199億56百万円(前年同期は、54億52百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、短期借入金の純増減額134億13百万円や短期社債の純増減額299億98百万円および長期借入れによる収入150億74百万円であり、資金減少の主な内容は、長期借入金の返済による支出131億7百万円や社債の償還による支出100億3百万円および配当金の支払額106億51百万円であります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
受注生産を行っているのは「その他」のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月26日)現在において判断したものであります。
中期戦略『Accelerate 2025』では2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。
全社業績:
売上高 6,600億円、営業利益 820億円、親会社株主に帰属する当期純利益 580億円、
EBITDA 1,360億円
経営指標:
営業利益率 12.4%、ROE 17.1%、ROIC 9.3%、ROA 7.7%
株主還元:中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
本中期戦略の3年目である当連結会計年度は、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は5,380億26百万円(前年度比15.0%増)、営業利益は475億8百万円(同6.3%減)、経常利益は520億35百万円(同9.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は406億82百万円(同30.2%増)となりました。
経営成績
売上高および営業利益
売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益
営業外損益は45億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し21億円悪化いたしました。
主に為替損益の影響などによるものであります。
特別損益
特別利益は55億円を計上いたしました。投資有価証券売却益42億円などによるものであります。
特別損失は26億円を計上いたしました。固定資産除却損15億円などによるものであります。
法人税等
税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は24.2%と、前連結会計年度に比し6.5ポイント減少いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は10億円と、前連結会計年度に比し2億円(19.9%)増加いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は407億円と、前連結会計年度に比し94億円(30.2%)の増益となりました。 また、ROEは14.3%となり、前連結会計年度に比し2.1ポイント改善しました。ROICは5.3%、EBITDAは791億円となりました。
財政状態
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、有利子負債比率は42.1%となりました。
また、2022年11月2日取締役会決議に基づく自己株式の取得を100億円実施しております。
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し155億円増加し、563億円(前連結会計年度比37.9%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し46億円増加し、315億円(前連結会計年度比16.9%増)となりました。
当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し11億円増加し、219億円(前連結会計年度比5.5%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入等による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は3,220億円であります。
利益配分に関しては、中期戦略『Accelerate 2025』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
合弁関係
株式会社ダイセル(当社)
ポリプラスチックス株式会社(連結子会社)
(注)※当社子会社のポリプラスチックス株式会社は、2022年5月12日にグローバルポリアセタール株式会社との間で合弁契約を締結し、2021年12月1日に同社の100%子会社として設立していたピー・ホールディングス株式会社の全出資額の30%について、当該契約上の条件が満たされたとき、グローバルポリアセタール株式会社の出資を受け入れる予定でした。2022年12月26日に当該契約上の条件が満たされたため、2023年1月10日に当該出資を受け入れました。
Daicel (China) Investment Co., Ltd. (連結子会社)
(注) 合弁会社として記載しておりますXi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.は、Ningbo Da-An Chemical Industries Co., Ltd.の100%出資でありますが、同社が西安北方恵安化学工業有限公司(中国)、陜西中煙投資管理有限公司(中国)およびDaicel(China)Investment Co., Ltd.の合弁会社であることから、Xi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.につきましては、合弁会社とみなして記載しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況で特筆すべき内容は、次のとおりでありま す。
・2022年4月には中期戦略『Accelerate2025』で掲げる循環型社会構築のための「4つのシフト(注1)」実現に向けた「産産学学官官」の共創をさらに加速させるため、新たに「バイオマスイノベーションセンター」および「無機複合実装研究所」を設置いたしました。また、医療分野に関連する製品やサービス、研究開発やマーケティング機能を集約し、ニーズ探索の強化と事業シナジー拡大によりメディカル分野のSBU化を目指す「ライフサイエンス事業企画室」を設置いたしました。
(注1)4つのシフト:「新企業集団の形成」「バイオマスプロダクトツリーの実現」「カーボンオフセット、エネルギーオフセットの実現」「健康・安全安心・便利快適・環境といった4つのトリガーによる幸せの提供」
(バイオマスイノベーションセンター)
当社にとって新バイオマスプロダクトツリーの構築やバイオマスバリューチェーン構想の実現は、セルロース事業の更なる発展と、カーボンニュートラルなどの社会課題解決の双方に対して大きい推進力になります。これらの社会実装に向け、関連の取り組みを俯瞰的に管轄する実行組織としてバイオマスイノベーションセンターを新設し、産業・学術・官庁の垣根を越えた共創をより一層加速いたします。
(無機複合実装研究所)
当社は、今後大きな成長が見込まれる次世代パワーデバイスや次世代通信規格6Gに求められる素材として無機有機複合材料に着目し、リサーチセンターにおいて進めてまいりました基礎研究と並行して顧客ニーズに基づく応用研究・開発を進めてまいります。
(ライフサイエンス事業企画室)
当社は、キラルカラム、新規投与デバイス、製剤ソリューションなどダイセルグループが持つ医療関連事業を統合し、それらの事業戦略およびR&D戦略を立案・推進し、世界シェアNo.1を誇るキラルカラムの顧客基盤を活用したグループ内医療関連事業のシナジー追求や、ダイセルグループが持つ製品・技術の特長を生かせる遺伝子治療分野などでの研究開発を加速いたします。
・2022年6月には、国立大学法人神戸大学と当社は、研究・技術の発展と、社会への貢献を目的とした「包括的な産学連携推進に関する協定」を締結いたしました。本協定は、共同研究・受託研究等の企画・実施、組織的連携による人財育成、神戸の立地を生かした産学連携の推進などを定めております。具体的な研究テーマとして、メディカル・ヘルスケア領域で「機能性食品素材の機能評価とメカニズム解明」による健康増進、グリーンケミストリー領域で「水素/メタンのガス分離膜の開発」によるGHG(温室効果ガス)削減への寄与を起点にこれらに続くテーマの検討も進め、イノベーション創出に繋がる研究領域を拡大してまいります。
・2022年10月には、熊本大学産業ナノマテリアル研究所と当社は、「ワンタイムエナジー共同研究講座」を設置いたしました。本研究講座では、熊本大学が培ってきた極限プロセス環境を利用したパルスパワー(注2)などの衝撃エネルギー関連の研究成果と当社が持つ技術「ワンタイムエナジー®」(注3)とのシナジーを発現し、新たな探索研究(注4)を推進することで、まだ世の中にない新たな価値を共創し、物質科学および安全・安心に関わるデバイスの技術の深耕化と医療、ヘルスケア、救命、防災、インフラなど「確実性」や「緊急性」が要求される様々な分野での社会実装を目指します。
(注2)パルスパワー:瞬間的なエネルギーであり、電気エネルギー、化学エネルギー、力学エネルギー、光エネルギー等を時間的又は空間的に圧縮することにより、発生する高エネルギーです。
(注3)ワンタイムエナジー®:世界中で命を守る自動車用エアバッグで培った、ただ一度だけ、安全、確実、瞬時に最適なエネルギーを生み出す技術です。電気自動車の事故時に乗員の感電を防ぐ電流遮断器や薬剤投与デバイス「アクトランザTMラボ」など、今後、様々な領域へ新たな価値を創造・共創してまいります。
(注4)本研究講座の具体的研究テーマ
①ワンタイムエナジーの原理・機構解明及び微生物・細胞等への作用
②ワンタイムエナジー利用による新接合方法(異種材料)
③爆轟法ナノダイヤモンドの構造解析と医工連携研究(医療材料としての研究)
④セイフティデバイスの基礎検討に関する連携研究
セグメント別の活動状況は以下の通りです。
当事業に係る研究開発費は
[ヘルスケアSBU]
ヘルスケアSBUは、ヘルスケア分野において特徴ある素材・技術の開発を進めております。
コスメ事業領域では、サステナブルな素材を化粧品市場へ提供するため、天然原料を使用した酢酸セルロースの真球状微粒子「BELLOCEA® (ベロセア®)」を開発、販売しております。また、ECHA(欧州化学物質庁)の提案するマイクロプラスチック規制に対応可能な高い生分解性と感触を両立する微粒子の開発に力を入れています。
健康食品事業領域では、腸内細菌によって体内で生成される成分(腸内細菌代謝物)に着目した研究・開発を行っております。2021年度はザクロに含まれるポリフェノールの代謝物としてウロリチン-A含有素材を上市したのに続き、ホップ由来ポリフェノールの代謝物の開発を進めております。
[CPIカンパニー]
CPIカンパニーは、キラル事業がターゲットとする低分子合成医薬に加え、成長市場の中・高分子/バイオ医薬市場においてソリューションを提供いたします。新規製品の継続的開発・上市とテクニカルサービスの充実により世界トップシェアを維持しております、光学分割用カラム事業では、新規耐溶剤型キラルカラム第11弾のCHIRALPAK IM製品を上市いたしました。また、既存汎用カラムと差別化した当社独自のアキラルカラムについて、新規カラム開発およびこれらを用いたペプチド、核酸医薬などの中分子医薬のアプリケーション開発を継続しております。バイオ分野では、Daicel Arbor Biosciences社が開発したヒトゲノム解析用検査キット製品(myBaits®)を用いた研究として、14世紀に欧州で大流行した黒死病と免疫遺伝子の調査論文がNature誌に掲載されました。このような優れた製品の開発、継続した新製品投入によってバイオ分野でのプレゼンスを一層高めてまいります。
当事業に係る研究開発費は
スマートSBUは、快適なスマート社会に必要な技術・製品で、ソリューションを提供いたします。ディスプレイ・オプト分野 (偏光板保護フィルムの品質改善、視認性・使用感改善の機能性フィルム、ウエハーレベルレンズ )、IC/半導体分野(半導体並びにフラットパネルディスプレイ製造用フォトレジスト材料、超高純度溶剤、プリンテッド・エレクトロニクス用機能性溶剤、 半導体向けプロセス材料、導体インク)をターゲットにした研究開発を進めております。①ペン入力電子ブックの書き心地を向上させた表面フィルムを新規上市、②ダイキン工業㈱との共同開発で「透湿膜全熱交換エレメント」向け透湿膜シートの生産開始、③EUV向けフォトレジスト材料開発用パイロット設備の本格稼働、④ウエハーレベルレンズの生産設備投資、⑤ 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」先導研究の研究開発テーマが継続となり、技術開発を加速しております。
当事業に係る研究開発費は
セイフティSBUは、一度だけ瞬時に、安全に、確実に、エネルギーを生み出す自社技術並びにその技術を活用した製品群「One Time Energy® DAISI®」と自動車安全領域で培ったノウハウを土台に、新たな安全安心を社会に提供いたします。自動車エアバック用新規ガス発生剤や新規インフレータ、自動車用電流遮断器など産業用アクチュエーター(エネルギーを動きに変える装置)の研究開発を行っております。
[医療向け新規投与デバイス]
「One Time Energy®」というエネルギー制御を基盤とした新規投与デバイスは、2022年度より理化学機器として国内市場において正式に販売を開始いたしました。弊社遺伝子導入デバイスを用いたコロナDNAワクチンの国内臨床試験は終了いたしましたが、日本だけではなく欧米の製薬会社からも問い合わせが増え続けており、日米欧でいくつかのプロジェクトに本デバイスを提供しております。今後、医療機器としての事業化を加速してまいります。
当事業に係る研究開発費は
マテリアルSBUは、ダイセルの原点である素材事業で培った技術で地球規模のニーズに多様なソリューションを提供いたします。アセチルBUでは、アセテート・トウなど、セルロース誘導体の品質、生産性の向上に取り組んできたことにより事業優位性の維持に寄与しております。長年培ったセルロース化学技術を応用し、より生分解しやすい分子構造を見いだし、従来製品の品質を保ったまま、海洋生分解性を向上させた酢酸セルロースCAFBLO®(キャフブロ、Cellulose Acetate for Blue Ocean)を開発いたしました。汎用プラスチック代替を目指した用途開発を加速しており、小売大手等のカトラリー(スプーン、フォーク)への採用が進んでおります。ケミカルBUでは、新規エポキシ樹脂の継続的開発とテクニカルサービスの充実により、脂環式エポキシ樹脂の世界トップシェアを維持しております。耐熱性、光学特性に優れ、かつ、低毒性(変異原性陰性)を特徴とした脂環式エポキシ樹脂「セロキサイド8400」を開発いたしました。すでに特定の顧客にワークを開始し、評価が進んでいる為、スケールアップの検討を進めております。また、ポリカプロラクトンでは、マーケットイン活動の結果から自動車部材に新規採用され、販売を開始しました。さらに、市場が拡大する有望アプリを選定し、活動を継続しております。
当事業に係る研究開発費は
[ポリプラスチックス㈱]
世界に認められるエンジニアリングプラスチックNo.1のソリューションプロバイダーに向け、Post 5G/6Gの最先端通信、次世代自動車、メディカル分野など、エンジニアリングプラスチックの次の成長を実現する市場をターゲットに、当社の価値提供型ビジネスの更なる高度化、長繊維強化材料、PEK等の新事業展開、ファインパウダー等の新たなエンプラ機能の提案、ダイセルグループ内技術とのシナジー創出による新技術開発を行ってまいります。特に急速に高まるカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに関するニーズに応えるべく、環境負荷低減技術開発にも注力いたします。またグローバル市場展開の促進に向け、5拠点の海外テクニカルソリューションセンターとネットワーク体制を形成し、新規市場開発案件の創出、ならびにコンセプト提案を進めております。
[ダイセルミライズ㈱]
コンシューマー事業、レジン事業の二つの事業分野にて、社会や顧客の課題を解決する製品開発を進めております。リチウムイオン電池市場を主体にカルボキシメチルセルロース事業の更なる拡大、モノマテリアルを訴求できる食品包装用新規バリアフィルムの開発、環境対応型樹脂上市に向けたコンパウンド技術の確立、各種環境対応製品の開発、および海外ネットワーク活用による各種製品のグローバル展開を進めております。
当事業に係る研究開発費は
[ダイセン・メンブレン・システムズ㈱]
分離膜および膜装置システムの開発などを行っております。特に、水処理および医薬分野における新規分離膜の開発に注力しております。
当社では、新規事業創出のための研究開発や基盤研究をコーポレート部門が行っております。なお、当連結会計年度よりコーポレート部門に係る研究開発費は、全報告セグメントに配賦しております。
[リサーチセンター]
大学や公的研究機関との産学連携を積極的に進め、有識者との共同研究等により、中長期で求める新しい技術、機能、素材の基礎研究を進めております。2020年4月から東京大学(社会連携講座)と研究開発に取り組んでいるマイクロ流体デバイス技術は、この技術を応用した「マイクロ流体デバイスプラント」を社会実装するために必要な生産技術および量産化技術に関して国立精華大学(台湾)との共同研究へ発展し、さらに開発~生産段階へ進めるために、2022年10月から生産技術部門や事業部門が主導する全社プロジェクトへ移行いたしました。またワンタイムエナジー利用に関する研究では、2022年10月から国立大学法人熊本大学(産業ナノマテリアル研究所)に共同研究講座を開設し、「安全・安心」分野の研究領域拡充を図っております。
[事業創出本部]
2021年4月1日付の組織変更により、コーポレート部門の事業企画と研究開発部門を一体化した事業創出センターと事業創出に必要な評価技術を構築する評価解析センターを設置し、メンバー全員がマーケットに出て、お客様に密着するカスタマーインの取り組みを通じて、事業創出の加速に取り組んでおります。これまで培ってきた計算科学・マテリアルズ・インフォマティクス等の技術、有機合成・触媒技術、評価解析技術、各種加工技術を生かし、各SBUやグループ会社の中長期の研究開発テーマや社外との共創テーマに取り組むとともに、研究開発の初期ステージより工業化技術構築の視点を加え、検討を進めております。また大学・外部研究機関と共同研究体制を構築し、新規素材、新規加工技術、新規生産技術創出の検討を進めております。カスタマーインによる新事業開発の試行事例であるダイキン工業㈱との協業では、マテリアルSBU、スマートSBU、生産技術センターなど課題解決に必要な全部門でその解決にあたり、研究開発の加速と成果の最大化を成し遂げ、短期間で新商品を開発・上市いたしました。また第2弾の新商品開発を、来期上市に向けて進めております。ヘルスケア事業では、当社が得意とする嫌気性培養技術を活用した腸内細菌代謝物に着目した研究・開発を行っており、これまでに、大豆イソフラボンの腸内代謝物(エクオール)、ザクロに含まれるポリフェノールの代謝物(ウロリチン)をヘルスケアSBUとともに上市いたしました。また、スマート事業では、次世代通信(ポスト5G/6G)向け低誘電材料ならびにその特性評価技術の開発をリサーチセンター、スマートSBUならびに大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D実装協働研究所とともに進めており、2021年6月に採択されたNEDO「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」先導研究の開発を進めております。エレクトロニクス実装材料の研究開発、および事業化を加速し、経済産業省およびNEDOが進める我が国のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化に貢献いたします。評価解析技術では、微量有機成分の絶対構造解析技術として「結晶スポンジ法」の獲得、ミクロ・ナノ構造解析技術の強化(電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、X線放射光)を進めております。
[生産本部生産技術センター]
ダイセルグループ横断的な体制で新事業の工業化、既存製品の品質改善、プロセス改善、増産検討、プロセス革新による新規プロセス・技術構築の推進を加速し、地球環境と共生する循環型プロセス構築を図っております。特に酢酸セルロース及び有機主力製品のプロセス革新による大幅なコストダウンおよび省エネルギー化のための技術の開発を進めております。さらに、カーボンニュートラルへの寄与を目指し、マイクロ流体デバイス技術、新規分離膜の開発を大学・外部研究機関と共同で取り組んでおります。また、企画から事業化まで一貫した技術開発を実現し、エンジニアリング業務でのデジタルトランスフォーメーションを強化すべく、プロセスシミュレーション、流体解析、計算科学、品質工学、マテリアルズ・インフォマティクス等AI技術の充足、強化を進めております。
[バイオマスイノベーションセンター]
2050年のカーボンニュートラル達成にむけ、地球環境に優しいプロセスで、日本の豊富な森林資源、農業廃棄物などの余剰バイオマスから高機能・高付加価値な製品を創出する技術の確立と、その技術を基に地域での地産地消のモノづくりによる一次産業の活性化の実現に取り組んでおります。2022年度は金沢大学内に産官学を問わず共創によるオープンイノベーションを目指す研究拠点として、バイオマス・グリーンイノベーションセンターを設置いたしました。自社のセルロースをはじめとするバイオマス素材の溶解、分子設計技術開発戦略から具体的な実績作りを加速しております。2023年度より超穏和溶解技術を基に地域活性化を図るバイオマスラボ(注5)と新バイオマスプロダクトツリー構築をミッションとする技術実装研究所(注6)の体制を取り、課題のスピードアップを図ります。
(注5)バイオマスラボ:木材の穏和な条件での溶解技術は、家具業界、建設業界でのコンセプトモデルの採用と地域連携による余剰バイオマスの活用を推進いたします。
(注6)技術実装研究所:木材の穏和な条件でのセルロース抽出技術およびセルロース誘導体合成・加工技術の工業化検討、サンプル提供を開始し、新規用途(貴金属回収材など)への参入を目指します。
[無機複合実装研究所]
スマート社会実現に貢献する新たな素材を開発することを目的に、2022年4月1日付の組織変更で発足いたしました。今後大きな成長が見込まれる次世代パワーデバイスや次世代通信規格6Gに求められる素材として無機有機複合材料に着目し、探索・基礎研究から顧客ニーズに基づく応用研究・開発まで幅広く取り組んでおります。
<受賞歴>
・一般社団法人近畿化学協会の「第22回 環境技術賞」受賞
2022年5月、ダイキン工業㈱と当社が共同で開発した透湿膜全熱交換エレメントについて、「透湿膜シートを用いた『透湿膜全熱交換エレメント』の開発と製品化」が、一般社団法人近畿化学協会の「第22回 環境技術賞」を共同で受賞いたしました。
環境技術賞は、化学に関連する研究・技術で地球環境との共存ならびにその維持・改善を積極的に意識し、方向付けがなされた新技術・改良技術で興行的・社会的・学術的価値が明らかとなったものについて顕著な業績と認められたものに与えられるものです。
共同開発した「透湿膜シート」は従来の紙製シートの約1/3の薄さで、空気中の熱を効率良く移動させます。またこの透湿膜は水蒸気を選択的に透過させる一方で、菌やウイルス、二酸化炭素といった室内の空気を汚染する物質の遮断性を向上しています。透湿性と耐水性を備えた「透湿膜シート」は洗浄や消毒も可能で、清潔性を維持することができます。「省エネ性」だけでなく、「安全・安心な空間」というコロナ禍で必要とされる価値を提供する商品であることが評価されました。
・一般社団法人繊維学会「第48回 繊維学会賞技術賞 (市場部門) 」受賞
2022年6月、「高生分解性酢酸セルロース (CAFBLO®:キャフブロ®) 」が、一般社団法人繊維学会「第48回 繊維学会賞技術賞 (市場部門) 」を受賞いたしました。
繊維学会賞技術賞は、繊維に関する技術について優秀な研究や発明、または開発を行い、繊維工業の発展に貢献した個人、グループに贈られる賞で、技術部門と市場部門があります。
当社は長年培ったセルロース化学技術を応用し、より生分解しやすい分子構造を見いだし、従来製品の品質を保ったまま、特に海洋での生分解速度をさらに高めた新製品「高生分解性酢酸セルロース (CAFBLO®:キャフブロ®) 」を開発いたしました。化学繊維の洗濯くずによる海洋プラごみ問題に対し、CAFBLO®の海洋生分解性を活かした繊維・不織布用途への取組み等が評価されました。2021年8月に海洋生分解性を証明する国際認証「OK biodegradable MARINE」を取得しております。プラスチック資源循環促進法の施行(2022年4月1日)など市場環境の変化に伴い、汎用プラスチック代替としての酢酸セルロース樹脂に多くの引き合いを頂いており、様々な用途へのグレード開発を加速しております。
・一般社団法人品質工学会「2022年品質工学会研究発表大会実行委員長賞」受賞
2022年6月、当社が開発したシミュレーション技術に関する研究成果「機械学習におけるMT法の立ち位置」ならびに「シミュレーションを用いた品質工学実践ノウハウの可視化」が一般社団法人品質工学会の2022年度研究発表大会実行委員長賞を受賞いたしました。「研究発表大会実行委員長賞」は、品質工学会の重要テーマ「ITとの結合で進化する品質工学」に最も合致すると評価された研究成果に贈られる賞です。特にMTシステム(注7)の活用にメリットのある領域や使い方について貴重な示唆を与えたことが評価されました。従来の品質工学は研究、開発、製造における技術課題の解決に大変有効な手法ですが、長年の習熟や経験によるノウハウを必要とする欠点があります。本研究ではこれまでノウハウで判断してきた手法の優劣や適用条件を、シミュレーション技術を用いて数値化いたしました。
当社は、シミュレーション技術を用いた新しい品質工学を推進し、技術課題解決の加速、品質工学の発展に貢献してまいります。
(注7)MT(マハラノビス・タグチ)システム:工場の稼働異常を事前に検知する、製品検査を無人化する、など正常/異常の判定を行う目的で、品質工学の中で考案された多変量解析の手法の総称です。パターン認識技術、予測・推定技術、特徴量抽出技術を組み合わせて実施されます。
・公益社団法人発明協会 令和4年度中国地方発明表彰「発明奨励賞」受賞
2022年10月、当社の発明「位相差フィルム用セルロースジアセテート」が公益社団法人発明協会主催の令和4年度中国地方発明表彰において「発明奨励賞」を受賞いたしました。「地方発明表彰」は優れた発明を生み出した技術者・研究者に対して行われるもので、1921年からの歴史がございます。このたびの表彰では、発明の実用化による社会的貢献が評価されました。本発明は、液晶表示装置の光漏れを防ぐためのフィルムに用いる樹脂です。従来、2種類以上のフィルムの張り合わせを必要としておりましたが、本発明の樹脂が偏光板保護フィルムと位相差フィルムの機能を兼ね備えた1種類のフィルムとなり、省エネルギーと軽量化を図れます。
<商標帰属先の表示>
・BELLOCEA®は、株式会社ダイセルの日本およびその他の国における商標または登録商標です。
・One Time Energy®は、株式会社ダイセルの日本およびその他の国における商標または登録商標です。
・DAISI®は、株式会社ダイセルの日本およびその他の国における商標または登録商標です。
・CAFBLO®は、株式会社ダイセルの日本およびその他の国における商標または登録商標です。
・myBaits®は、Daicel Arbor Biosciences社 (Biodiscovery LLC) のアメリカ合衆国における商標または登録商標です。