文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの経営理念は、次のとおりであります。
「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」
当社グループの事業の原点は、社名に冠した「空気」と「水」であり、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献していくことが当社グループの使命であります。当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しております。
(2) 中長期的な経営戦略
2030年に向けた目指すべき経営の方向性として、「地球の恵みを、社会の望みに。」をパーパスと定義した上で、「地球環境」と「ウェルネス」の2軸を設定し、2022年7月に2022年度から2024年度の3ヵ年を対象とした中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」を公表しました。将来の成長に向けて、新規事業や海外展開を進めるための投資を積極的に行いながら、国内の既存事業を中心とした収益構造の強化を図ることで、成長と投資の好循環を生み出していきます。また、多様な事業、人材、技術と地域密着の事業基盤を活かした掛け算のシナジーを創出し、部分最適から全体最適によるグループ経営資源の最適化を進めることで、経済価値と社会価値の両面から企業価値を高め、持続可能な成長を目指していきます。

(3) 経営環境、目標とする経営指標及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境は、インフレ抑制を目的とした諸外国の利上げに伴い、世界的な景気の下振れリスクが高まっております。さらに、製造業の先行指標となる半導体需要は、2023年半ばまで在庫調整の継続が見込まれるなど、今後の先行きに対する見通しは一段と不透明さを増しております。
このような事業環境のもと、当社グループは、「売上収益1兆円」という企業ステージに上がったことで、社会からの当社グループに対する期待の高まりを受け、2030年度に目指す姿「terrAWell 30」の実現に向けた取り組みを加速してまいります。
ユニット制によるグループ経営体制の下、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸に沿って、当社グループが保有する「多様な事業、人材、技術」と「地域密着の事業基盤」を最大限に活かし、グループシナジーの創出を追求するとともに、既存事業の収益力に磨きをかける「深堀り」と、次の成長を担う事業機会を発掘・育成する「探索」による「両利きの経営」の実践に努めます。
(既存事業の収益力強化に磨きをかける「深堀り」)
当社グループは、引き続き、各事業領域でグループ会社の統合再編をはじめとした事業構造改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用を推し進めるとともに、総資産の見直しや人員の最適配置に重点を置き、収益力の強化を図ります。また、物価上昇や為替の変動に対応した価格是正を継続するとともに、コストに見合った適正価格を維持することで、収益性の改善に取り組みます。
(成長事業を発掘・育成する「探索」)
産業ガス事業の本格的な海外展開に向け、積極的なM&Aの推進と事業の根幹となるエンジニアリング技術を基軸とした事業基盤の構築を進めます。国内では、地域事業会社3社を主とした地域密着の事業基盤を基に、多様な事業領域と技術開発によるイノベーションを組み合わせることで、地域の社会課題解決に資する新事業の創出を進めてまいります。
(海外における事業部門、事業会社の管理強化)
中期経営計画を実現するには、海外事業の拡大が重要となります。特にインドと北米を重点地域とし、当社グループが保有する優れた機器・エンジニアリング技術を活用して、産業ガスおよび関連機器、エンジニアリング事業の拡大を加速してまいります。また、オンサイトガス供給案件の受注による大口顧客の獲得に加え、自社プラントや充填所などの拠点構築にも注力します。さらに、これらの事業拡大を支える土台として、「組織・体制の強化」を図ります。事業分野毎だけではなく、地域毎に、その地域の特性や環境に応じて事業を管理、運営する新たな組織体制やリスクマネジメントの仕組みを整備します。
(投資の強化と検証)
設備投資、M&Aといった投資については、インドや北米などの海外を中心に、これまで以上に積極的に行い、事業拡大と収益力の向上を実現します。また、環境変化に柔軟に対応し、将来にわたって持続的な成長を実現するために、人的資本や知的財産、ブランド力などの無形資本に対する投資も戦略的に実施してまいります。一方、限られた経営資源を適切に振り向けるために、収益性・成長性を見極め、各事業領域において「選択と集中」を実施するほか、投資案件のモニタリングや検証を実施してまいります。
(環境価値の創出)
当社グループは、全社を挙げて、「脱炭素社会」「資源循環型社会」「人と自然の共存社会」の実現に向けた取り組みを進めており、2030年度までに「GHG排出量30%削減」を達成し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指します。また、「廃棄物リサイクル率80%」や「水使用量原単位10%削減」の目標達成に向け、資源循環や水資源の保全にも注力します。
(積極的な社会課題解決への貢献)
今後も、当社グループは、事業活動を通じて社会課題解決に注力し、人々の暮らしや産業になくてはならない製品・サービスを生み出してまいります。特に、「アグリ&フーズ」では食料安全保障や食料自給率の向上といった昨今の国際情勢を背景とした社会課題、「ヘルス&セーフティー」では超高齢化社会をはじめとした暮らしに関わる社会課題の解決に貢献します。また、2025年に開催される大阪・関西万博への出展も決定しており、当社グループのパーパスである「地球の恵みを、社会の望みに。」を国内外に発信してまいります。
なお、各セグメントの対処すべき課題は、次のとおりであります。
(デジタル&インダストリー)
産業ガス分野では、電力費や物流費をはじめとした産業ガスの製造・供給コストの上昇に対応するため、生産・物流面のさらなる効率化に取り組むとともに、自助努力で補いきれないコスト上昇分については、徹底した価格改定を継続し、コストに見合った適正価格を維持することで、収益性の改善を図ります。
また、世界的に需給タイトな状況が続くヘリウムの安定調達・供給に取り組むとともに、国内製鉄所の統廃合によって将来的にアルゴンの供給が逼迫することが見込まれるため、生産設備の増強をはじめとした安定供給体制の強化を図ります。
エレクトロニクス分野では、国内半導体メーカーの生産能力増強に対応したガス供給設備の設備投資を着実に実施します。また、2023年4月1日付で、当社グループのエレクトロニクス関連事業を産業ガス・特殊ケミカル供給事業と機器装置事業に再編し、新会社の設立や当社からの事業移管、関係会社の統合等を行うことで、機能分化しました。新たな事業運営体制の下、半導体デバイスメーカの需要拡大と多様なニーズに対応していきます。
成長ドライバーと位置付けているインドの産業ガス事業については、政府による積極的なインフラ投資政策を背景に、鉄鋼をはじめとしたガス需要の拡大が見込まれます。川上領域となる鉄鋼向けオンサイト供給案件の新規獲得とともに、川下領域となるローリー・シリンダー事業にかかわる製造・供給拠点の拡充を両輪で進めていきます。
また、産業ガス事業の海外展開や大手半導体メーカーの旺盛な生産増強、装置の大型化に対応できるエンジニアリング体制を構築するため、当社の堺製作所において、プラントの製作能力を増強するとともに、複数の拠点に分散していた産業ガスエンジニアリングの開発・設計・製作・運転・ 保守部門等を集約する「総合エンジニアリングセンター(仮称)」の建設を進めていきます。
(エネルギーソリューション)
国内のLPガス需要は世帯数の減少等を背景に漸減傾向にあります。また、配送や検針業務における人手不足の問題も地方部を中心に顕在化しつつあります。一方で、2021年度から電力料金が大幅に上昇したことによって、消費者のLPガスへの関心が高まるといったトレンド変化が一部で起きています。
こうした中、販売店の商権買収や積極的な増客施策による直売比率の向上を図り、収益力を高めるとともに、LPガスや灯油の残量監視に、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とするLPWA(Low Power Wide Area)を導入し、配送・充填・検針業務の効率化を進めます。
また、当社グループの主要事業エリアである北海道地区の事業構造改革として、配送・充填工場の統廃合、卸直販一体化による重複業務の効率化等に取り組みます。
さらに、低炭素・脱炭素関連では、需要が拡大傾向にあるLNG関連機器の拡販に取り組むとともに、小型CO2回収装置の顧客提案や、家畜ふん尿由来の液化バイオメタン製造など、地産地消型エネルギー供給モデルの構築を通じて、脱炭素ソリューションの社会実装化に注力していきます。また、社会の脱炭素化を背景に国内では製油所を閉鎖する動きが進んでおり、炭酸粗ガスのリソース確保が課題となります。貯蔵設備の増強や新たな原料リソースの確保など、炭酸ガス・ドライアイスの安定供給体制の強化に取り組んでいきます。
(ヘルス&セーフティー)
我が国の医療を取り巻く環境は、超高齢社会に対応した「地域包括ケアシステム」の構築が進められ、在宅医療の重要性が高まっています。また、医療従事者の絶対数は不足しており、医師の労働環境改善・健康確保を目的とした改正医療法の施行が2024年4月に予定されるなど、「医師の働き方改革」の実現に向けた具体的方策の検討が急務となっています。さらに、セルフメディケーションの考え方も浸透し、健康に関心を持つ消費者も増加しています。
こうした中、メディカルプロダクツ事業では、コロナ禍で起きた医療機関や生活者のニーズ変化を踏まえ、今後も必要とされる感染症対策や新たな医療提供の形を見据えた事業体制の構築を進めてまいります。特に、従来の医療という枠に収まることなく、人々の健康増進、医療従事者の負担軽減、在宅患者様のQOL(生活の質)向上につながる医療機器や介護用製品の開発・製造・販売を推進するため、2023年7月1日付で当社グループが保有する人材・技術などのリソースを中核子会社に集約します。これにより、製品の開発から製造、販売、保守の一貫体制によるサービスレベルの向上とともに、使いやすさ・省力化・DX推進など、医療現場の様々なニーズをこれまで以上に的確に捉えた製品開発に注力していきます。
また、衛生材料、注射針、エアゾールなどで構成するコンシューマーヘルス事業では、原材料コストの上昇に対応した価格改定の取り組みを継続するとともに、事業間シナジーによるメーカー機能の強化や生産性の向上に取り組みます。
病院向けの滅菌受託やSPD(病院物品物流管理)を行うサービス事業においては、DXの推進による調達や業務管理の効率化を図り、人手不足の課題にも対応していきます。また、防災事業では、データーセンターの建設を背景に旺盛な需要が続くガス消火設備工事の受注獲得に注力していきます。
(アグリ&フーズ)
各種原材料やエネルギー価格が高止まりする中、消費者マインドの低下や節約志向が高まるなど、厳しい事業環境が継続することが見込まれますが、その一方で、コロナ禍からの行動制限緩和による人流回復などにより、ホテルや外食向けをはじめとした業務用食品の需要は増加傾向にあります。
こうした中、フーズ事業では、コスト上昇に対応した製品の価格改定や量目変更などの継続的な実施により、その影響を低減するとともに、物流の内製化や生産体制の効率化を図り、収益性の確保に努めます。また、成長市場である惣菜分野に対応するために、より加工度の高い商品開発を進め、事業拡大と収益性の向上の両立を目指します。
国内の青果物市場は、健康志向の高まりや人手不足等を背景に、小売・業務用ともにカット野菜・フルーツの需要が拡大するとともに、生産農家の減少、異常気象の頻発、円安による輸入品の高騰等により、消費者ニーズを捉えた青果物の流通加工と安定調達・供給がより重要になっています。こうした中、アグリ事業では、2023年2月に、業界大手の㈱ベジテックと、デリカフーズHD㈱との資本業務提携を開始し、原料調達機能の強化や物流の効率化などに取り組んでいます。当社の主要事業エリアである北海道における農産事業の基盤強化に注力するとともに、3社協業の下、青果物の調達・加工・販売までのバリューチェーンをより強固なものとし、全国をカバーする物流ネットワークを掛け合わせることで、安全・安心な青果物をお客様のニーズに対応した形とタイミングで供給する青果流通加工プラットフォームの構築を目指していきます。
また、飲料製造を行うナチユラルフーズ事業では、脱プラスチック化に向けた紙容器高速ラインへの更新をはじめとした生産性の向上やEC事業の強化に取り組んでいきます。
(その他の事業)
電力事業は、発電燃料となるPKS(パームヤシ殻)や木質ペレット、また、その海上輸送コストの高騰が続いたことに加え、荷揚げ港湾施設の混雑に起因する滞船コストの発生などにより、2022年度の全体業績に大きな影響を与える厳しい状況となりました。2023年は、海上輸送コストがピーク時から低下傾向に推移しており、そのコスト影響は幾分か緩和されてくる見通しです。
また、発電用燃料調達の多様化や荷揚港湾施設の運用改善などによりコストの低減を図ってまいります。
また、北米産業ガス事業は、将来における産業ガス供給事業の展開に向け、現地ガスディスリビューのM&Aなどを積極的に推進し、事業基盤の構築を図っていきます。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの2022年度から2024年度の3ヵ年を実行期間とする中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」における経営目標は以下の通りです。当社グループでは、新たに資本効率性向上のために24年度に於いてROIC7%以上を掲げて取組んでおります。
当連結会計年度は、過去にない規模で資源・エネルギーをはじめとした各種コストが高騰する非常に厳しい環境下で、FIT により発電燃料の高騰分を価格転嫁できない電力事業を除き、全社で徹底的な販売価格の是正を実施し、売上収益は中期経営計画を達成しましたが、営業利益は未達となりました。経営数値目標の達成に向けて、引き続き成長分野と位置付ける海外及びエレクトロニクスを中心に事業拡大に向けた取組を進展させるとともに、資本効率の向上に向けて取り組んでまいります。
※1 親会社所有者帰属持分当期利益率
(親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分(期首期末平均))
※2 投下資本利益率=(営業利益×(1-税率))÷(資本合計+有利子負債)(期首期末平均)
※3 2022年11月9日公表の通期業績予想
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、経営理念「創業者精神を持って空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」の下、「空気」と「水」を事業の原点とし、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献しております。
当社グループは、パーパス(存在意義)である「地球の恵みを、社会の望みに。」をSDGsコミュニケーションコンセプトとして掲げ、空気や水に代表される地球資源を活用し、技術やビジネスモデル、ノウハウを掛け合わせることで、人々の暮らしや産業になくてはならない製品、サービス、ソリューションを生み出してまいりました。当社グループの事業活動を継続するためには、その源泉となる地球環境に対して持続可能な事業活動でなくてはなりません。
そのような中、2019年7月には、2050年の当社グループのあるべき姿として、サステナブルビジョン「地球、社会との共生により循環型社会を実現する」を定め、その実現のために国際社会が目指すSDGsを2030年のマイルストーンとして位置づけ、2021年10月には、「エア・ウォーターグループ環境ビジョン2050」を制定しました。これらの方針の下、気候変動やスマート社会に対応する「地球環境」と、人生100年時代や世界人口の増加に対応する「ウェルネス(健やかな暮らし)」の軸に沿って、経営資源である多様な事業、技術、人材を活かしてグループシナジーによる新事業を創出しながら、経済価値と社会価値の両面から企業価値を向上すべく、事業活動を通じてSDGsに取り組み、社会課題解決への貢献を果たしていきます。
同時に、サステナブルビジョン実現のために、地球、社会とともに将来にわたり持続的に存続、発展するための重要課題として、7つの「成功の柱(マテリアリティ)」である「気候変動への対応」「資源循環の実現」「環境影響物質の抑制」「地域社会との共存共栄」「ウェルネス(健やかな暮らし)」「働く人々のWell-beingの実現」「グループガバナンスの強化」を特定し、KPIとして以下の目標を設定し、取り組みを進めております。
・気候変動への対応
2030年度 GHG(温室効果ガス)排出量 2020年度比 30%削減
・資源循環の実現
2030年度 廃棄物リサイクル率 80%(2021年度 65%)
・環境影響物質の抑制
2030年度 水使用量原単位※ 2021年度比 10%削減
※水使用量原単位:売上高あたりの水使用量
・働く人々の Well-being の実現
2024年度 女性管理職比率 10% (2021年度 4.0%)
2024年度 休業災害度数率※ 0.9以下(2021年度 1.15)
※度数率:100万延労働時間あたりの事故遭遇率人数
当社グループは、気候変動や資源不足などの環境問題、人と自然との共存、進化し続けるデジタル技術の活用、人材の多様性や人的資本への投資、健康寿命の延伸と、サステナビリティに関わる社会の課題に対し、各施策の検討、中長期的な経営課題への対応方針や取組計画等は、代表取締役会長・CEOを議長とした最高経営委員会で審議し、重要な事項は取締役会に報告されます。取締役会は、報告された内容に対し適切に監督する態勢を構築しております。
2022年11月からは、経営戦略と一体化させるために経営企画室の傘下に「SDGs事業推進グループ」を設置し、当社グループのSDGs活動推進のための諸施策を立案・実施しているほか、当社グループ内にSDGsの取り組みの浸透を図るとともに、方針の周知と進捗の確認を行っております。また、SDGsに関わる課題解決の取り組みの具体的な内容については事業グループ・ユニット、地域事業会社にSDGs事業推進担当者を選任し、全社的な推進を行っております。
当社グループでは、経営の健全性・安定性を確保しつつ企業価値を高めていくために、業務やリスクの特性に応じてリスクを適切に管理し、コントロールしていくことを経営上の重要課題の一つとして認識し、リスクマネジメント体制を整備しております。
当社グループは、全社的なコンプライアンス、保安防災、環境保全および人権に関わるリスクについては、「CSR推進室コンプライアンスグループ」が統括部門として「リスクマネジメント検討会」を定期的に開催し、グループ全体におけるリスク管理体制の強化を推進しております。また、気候変動関連リスクについては、「経営企画室SDGs事業推進グループ」がTCFDの推奨するシナリオ分析の手法に基づいて、事業グループのTCFD推進責任者と共に評価・分析する体制としております。
それぞれ統括部門は、重要リスクおよび戦略・対策案について最高経営委員会及び取締役会に付議・報告することで全社のリスクマネジメントプロセスに統合する体制をとっております。
その他情報セキュリティを含むサステナビリティ関連の個別リスクについては、それぞれの担当部門において、社内規程の制定、マニュアルの作成ならびに教育研修の実施などを行うとともに、事前審査や決裁制度を通じて当該リスクを管理しております。
一方、事業グループ、事業ユニットでは、事業に関連するリスクの抽出・検討を行い、事業への影響度の大きい重要リスクを特定し、3か年毎の中期経営計画策定時や年度ごとの年度活動計画に具体的な戦略・対策を立案し、計画の進捗管理によりリスク管理を行っております。
1.気候変動への対応
当社グループは、気候変動への対応は「成功の柱(マテリアリティ)」の一つとして、事業の戦略との統合を図っております。
自社製品・事業の省資源・省エネルギー化および脱炭素化の促進を図るとともに、バイオガス、メタン、水素などのガス供給やCO2回収・利活用といった低炭素・脱炭素に寄与するカーボンニュートラル技術の開発や多様な事業、人材、技術を掛け合わせるシナジーによって脱炭素事業の創出を進めることで社会のGHG削減に<貢献>することを戦略としております。また、自らが排出するGHG削減は<責務>であるとし、①エネルギー使用量の削減、②エネルギーの脱炭素化、③生産プロセスの改革、④技術開発、⑤経営の効率化を基本方針とし、生産工程で使用されるエネルギーの低炭素化、省エネ設備等への投資を含む省エネルギー活動を優先的に進め、段階的な再生可能エネルギーの活用拡大や低炭素な物流事業の構築などにも取り組んでまいります。
また、気候変動という予測困難で不確実な事象に関するリスクと機会を特定し、それらのリスクと機会がどのように事業の戦略に影響を与えるのかを確認するためにシナリオ分析を行っております。2022年度は全ての事業ユニットとその他の主要事業に対象を拡大し、「4℃シナリオ」と「1.5℃シナリオ」を用いて分析を行いました。その結果、リスク、機会共に「1.5℃シナリオ」の方が影響は大きいが、「4℃シナリオ」、「1.5℃シナリオ」のいずれも十分な対応策や機会獲得・拡大を見込んでおり、不確実な長期的な将来に対し、当社の基本戦略は十分なレジリエンスを有していることを確認しました。
※1.5℃シナリオ、4℃シナリオ分析に基づくリスクと機会の詳細については、弊社ホームページを参照。
気候変動のリスク・機会に伴う財務影響評価
① 温室効果ガス(GHG)排出量
当社グループでは、気候関連に係るリスクと機会を測定・管理するための指標として温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1,2,3)を選定しております。GHG排出量の算定にあたっては、2020年度からGHGプロトコルに基づいた算定をしております。
(千t-CO2e)
(注)1 <速報値> GHG排出量の詳細は、弊社ホームページを参照。<確定値>は、10月中旬頃公表予定。
2 2022年度は旧エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口㈱は連結対象外のため算定対象に含めておりま
せん。
GHG排出量の削減状況(2022年度実績)
2022年度のGHG排出量は、バウンダリの構造的変化および製造プロセスの省エネ、燃料転換、オンサイトPPAの導入等により事業成長分の増加を含めて2021年度比で437千t-CO2e減少となりました。目標設定対象排出源である国内エネルギー起源CO2においても、2021年度比で345千t-CO2e減少となり、2020年度比においては、削減率5.6%となっております。
②要因別のGHG排出量
GHG排出量の2022年度の要因別について、産業ガスを製造する工場では原料空気から酸素・窒素・アルゴンを分離・精製するために圧縮機が使われており、電気の使用量が多くなっております。そのため、当社グループのGHG排出量(Scope1,2)のうち、電力使用が8割を占めております。
③GHG排出量の削減目標
当社グループは2021年10月、「エア・ウォーターグループ環境ビジョン2050」を制定しました。その中で掲げている脱炭素社会の実現に向けて、2050年までに自社の事業活動でのカーボンニュートラルの実現とサプライチェーン全体でのGHG削減に取り組むとともに、脱炭素ビジネスにより社会に環境価値を提供していきます。環境ビジョン2050の制定を契機に、そのマイルストーンとなる2030年度のGHG削減目標を2020年度対比で30%削減※することを目標としております。
※GHGのうち、国内連結子会社のエネルギー起源CO2(Scope1・2)が対象
2.人的資本
当社グループは2030年度に目指す姿「terrAWell 30」の実現に向けて、変革への挑戦を強力に促す人事制度への刷新に着手。併せてグループの人的資源活用の最大化を図る改革にも取り組んでおります。求める人材像は、変革・創造へチャレンジし、ビジョン創出と巻き込む力を持って、自立的な変革と成長を果たす人材です。2022年度には当社で年齢・社歴を問わず、変革と創造へのチャレンジを高く評価する「ミッショングレード制度」を管理職層に導入しました。今後、一般職層へは一律で段階的な昇格モデルからの脱却と若手層へチャレンジ機会の提供を拡大し、早期抜擢を可能とする制度改定により、従業員の自立的なキャリア形成を支援するとともに、長期的・持続的な経営人材の育成を進めます。さらに、従業員が個人の能力を最大限発揮できるように安心して働ける職場環境づくりや、従業員一人ひとりの経験・スキルを把握し、多様なグループ人材の活用を進めていきます。並行して、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組み、多様性が生み出す会社と個人の成長を目指し、下記の様な方針を立て、さまざまな取組みを進めております。
① 人材育成方針
当社グループは、「人を活かす経営」の実現に向け、新たな成長を牽引できる経営人材を育成・輩出するとともに、従業員に挑戦の機会を提供し、従業員個人も会社もともに発展できる好循環を創出するための人事制度改革を推進しております。管理職を対象に年齢や社歴に関わらず、従業員と会社が合意したミッションの大きさに応じたジョブグレードにより処遇を決める「ミッショングレード制度」を導入しました。本制度を適用することで、挑戦する意欲と実力があれば20代での管理職登用も可能になります。また、同じ人材が一つのポジションに長期滞留しないよう異動ローテーションを行い、それぞれの従業員が多様な経験を積み、専門性を高めることで活躍の場をグループ全体に拡げていく仕組みとしております。一般職層へは今後、一律的な昇格モデルからの脱却を進めるとともに、チャレンジ機会の提供を拡大し、従業員の自立的キャリア形成を支援。若い人材が積極的に挑戦し、登用・抜擢される風土を醸成していきます。
② 社内環境整備方針
さまざまなライフイベントを迎える従業員が、それぞれの能力を最大限に発揮するためには、「安心して働ける職場環境づくり」が求められます。当社はこれまで、育児中の従業員を支援する育児休業制度、短時間勤務制度、子の看護休暇制度に加え、配偶者転勤時の休職を認める配偶者休職制度、ジョブリターン制度を整備してきました。2020年7月には、当社のワークライフバランス推進に関する取り組みが評価され、くるみんマークを取得しております。一方で、急速な高齢化により、介護保険制度上の要支援・要介護認定者数が急速に増加しているわが国では、介護をしながら働く従業員の就業をいかにサポートしていくかが大きな社会課題となっております。そこで福利厚生制度を見直し、介護により就業が制限される従業員にも多様な就業支援を行い、継続してキャリアを形成できる環境を整備していきます。このほか、柔軟な働き方を通じた生産性の向上を図るため、フレックスタイム制度や在宅勤務制度を導入しております。
◇女性活躍の推進
女性活躍推進については、継続的に安心して働ける職場環境づくりと併せて、自身のキャリアに向き合い、スキル・能力を高める機会を積極的に提供することで女性の更なる活躍を推進しております。当社の目標指標として、2024年度末までに女性管理職比率を10%以上に高めることを掲げ(2022年度末:5.1%)、メンター制度によるキャリア構築支援や女性リーダー育成プログラムの強化を図っております。また、女性管理職の予備軍となる主任・係長層についても積極的に登用を進めており、2017年度末で6.4%に対し、2022年度末で19.1%と着実に育成が進んでおります。

◇男性育児休業・休暇の取得推進
男性の積極的な育児参加を後押しするため、当社は男性の育休取得率を2024年度に40%以上とすることを目標に掲げております(2022年度実績:33.3%)。併せて、育休期間についても本来的な男性の育児参画を実現するための十分な育休期間の取得も継続して促進していきます。この達成に向け、育休制度理解のための社内セミナー、育休取得者と取得希望者との座談会開催等を通じて、対象者への育休取得推奨の働きかけを行っております。また、通常の育児休業に加え、過去の失効有給休暇を育児のための休暇に充当できる制度も設けております。さらに、育休取得者とその上司へ向けた社内情報誌「育休のミカタ」「育休のココロエ」を発行し、全従業員へ育休制度の理解浸透と育休を取得しやすい風土の醸成を図っております。

※上記「育休」には、育児休業(育児・介護休業法第2条に基づく休業)および育児休暇(年休特別積立規則に基づく育児を目的として取得する5日以上の休暇)を含みます。
当社グループの事業展開上、事業の状況、経理の状況等に変動を与え、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社のリスクマネジメント体制
当社グループの事業活動において特に重要なリスクであると認識しているコンプライアンス、保安防災及び環境保全に係るリスクについては、代表取締役の直轄組織である「CSR推進室コンプライアンスグループ」がその統括部門として、当社及び子会社を横断的に管理する体制としております。
情報セキュリティ、知的財産、海外事業展開および契約などに関わる個別リスクについては、それぞれの担当部門において、社内規程の制定、マニュアルの作成ならびに教育研修の実施などを行うとともに、事前審査や決裁制度を通じて当該リスクを管理する体制としております。また、CSR推進室コンプライアンスグループを事務局とするリスクマネジメント検討会を定期的に開催し、当グループにおける主要なリスクの把握とその対策状況についての検討などを行い、グループ全体におけるリスク管理体制の強化を推進しています。海外子会社については、当該会社を管理する事業ユニット・エンジニアリングセンターと連携し、リスクマネジメント体制を構築しています。各海外子会社を対象に、年一回、リスクの特定、影響度合いと発生確率に応じたリスクの分析・評価、リスク対応策の検討という一連のプロセスでリスクアセスメントを実施し、その結果を踏まえてBCP(事業継続計画)を策定しています。CSR推進室コンプライアンスグループでは、これらのリスクアセスメントおよびBCPに対して指導・助言を行うことにより、全社的なグローバルリスクを管理しています。
また、事業活動への影響が大きいと想定されるリスクが発生した場合には、「危機管理規程」に基づき、直ちに危機管理委員会を社内に設置し、発生したリスクに対し迅速かつ適切に対処する体制を整えております。

(2) 事業等のリスク
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の我が国経済は、新型コロナウイルス禍から社会経済活動の正常化が進んだことにより個人消費は回復基調で推移しましたが、エネルギー価格の高騰や世界的なサプライチェーンの混乱に加え、円安の進行による物価の上昇などが大きな影響を及ぼしました。また、年度後半にかけては、諸外国でのインフレや半導体需要の急速な減少等により世界経済の減速懸念が強まるなど、依然として不安定な状況が続きました。
こうした中、当社グループは「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸に沿って事業活動を通じた社会課題の解決に貢献し、持続的な成長と企業価値の向上を目指す2030年度に目指す姿「terrAWell(テラウェル)30」を定めるとともに、2022年度から2024年度までの3ヵ年を実行期間とする中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」を策定しました。また、その実現の布石として、当社グループの強みである「多様な事業、人材、技術」から創出されるシナジーの最大化を図るため、新たに「ユニット制」を導入し、当社本体組織とグループ会社群が一体となったグループ経営体制に移行しました。
新たな経営戦略と組織体制の下、2010年からグループ全社を挙げて取り組んできた「売上収益1兆円」の達成を目指すとともに、成長分野と位置付ける海外およびエレクトロニクス関連事業の基盤構築、グループシナジーの創出と経営資源の最適配分による国内事業の収益構造強化、さらに、次なる成長に向け、従来の事業の枠を越えた着想と積極的な技術開発による新事業の創出を推し進めました。
海外事業は、高炉一貫製鉄所の建設が相次ぐインドにおいて、産業ガスの製造・物流インフラの構築を進めるとともに、北米においてもM&Aを通じて産業ガスの販売事業に参入しました。また、エレクトロニクス関連事業は、国内半導体デバイスメーカーの生産能力増強に対応したガス供給プラントの設備投資に加え、産業ガスとケミカルを融合した新たな事業推進体制の下、先端ニーズに応える素材開発やグループ総合力を活かした顧客との関係強化に取り組みました。
国内の既存事業は、エネルギー価格の高騰に加え、原材料や物流コストの上昇が続く中、生産・物流面の効率化をはじめとしたコスト削減や調達の見直しと同時に、自助努力で補いきれないコスト上昇分については徹底した販売価格の是正を行い、収益性の確保に努めました。また、各事業分野におけるグループ会社の統合再編に加え、農産分野では他企業との資本業務提携を開始するなど、環境変化に柔軟に対応できる事業構造への変革を進めました。
さらに、社会課題解決に貢献する新事業として、地球環境領域では、小型CO2回収装置の開発や、家畜ふん尿由来の液化バイオメタン製造など地産地消型エネルギー供給モデルの構築を通じて、脱炭素ソリューションの社会実装化に注力しました。また、ウェルネス領域では、大学や自治体との連携強化を図るとともに、当社グループの技術やビジネスモデルの融合による新事業創出を目的としたオープンイノベーション推進施設「エア・ウォーター健都」の建設が順調に進展しました。
サステナビリティの取り組みに関しては、CO2排出量の削減目標値を見直し、新たに設定した「2030年度GHG排出量30%削減(2020年度比)」に向け、エネルギー使用量の低減や生産プロセスの改善を進めました。また、多様な事業を担う当社グループの人材が活躍できる環境整備をはじめとしたダイバーシティ&インクルージョンを推進するとともに、自律的なキャリア形成を促す人事制度改革を実行するなど、価値創造の中核を担う人的資本の強化に努めました。
当連結会計年度の業績については、エレクトロニクス関連事業とインドにおける産業ガス供給事業が積極的な設備投資を通じて供給インフラを拡充したことで着実に需要を取り込み、順調に拡大しました。また、コロナ禍における事業環境の変化に対応し、グループシナジーを高めた「ヘルス&セーフティー」が総じて順調に推移し、全社業績を牽引しました。
こうした中、売上面では、ユニット制によるグループシナジーの追求に加え、価格是正や市況連動により販売価格が上昇したことも寄与し、全てのセグメントで増収となりました。
利益面では、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取)制度を利用した電力事業において、発電燃料や海上輸送コストの上昇分を価格転嫁することができず、年度を通じてその影響を大きく受けることとなりました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は1兆49億1千4百万円(前期比113.1%)、営業利益は621億8千1百万円(同95.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は401億3千7百万円(同92.9%)となりました。
セグメントの業績及び概況につきましては、次のとおりであります。
<デジタル&インダストリー>
当セグメントの売上収益は3,425億4千9百万円(前期比118.6%)、営業利益は290億2百万円(同104.3%)となりました。
事業全体では、エネルギー価格の高騰や物価上昇等の影響を受ける厳しい環境となる中、こうしたコスト上昇に対して、生産性の向上や徹底した価格是正に取り組みました。また、インドでの産業ガス供給事業が好調に推移するとともに、年度後半にかけて減速感はあるものの、エレクトロニクス事業が順調に推移した結果、売上・利益ともに前年度を上回りました。
エレクトロニクス事業は、大手半導体メーカー向けのオンサイトガス供給が順調に推移しました。特殊ケミカル材料やその供給機器、ガス精製装置、半導体製造装置向け熱制御機器などの販売は、年度後半から顧客の在庫調整や設備投資の先送りによる影響を受けたものの、堅調に推移しました。情報電子材料分野においては、半導体材料や電子部品の販売が国内外ともに好調に推移しました。
機能材料事業は、石化市況に連動する基礎化学品の価格上昇が増収に寄与しました。また、食品向け日持ち向上剤などに利用される酢酸ナトリウムの販売が回復するとともに、半導体製造装置向けOリング(シール材)や産業用ロボット向け高機能回路製品の販売が増加したことで、精密研磨パッドや電子材料などの需要が減少した影響を補い、事業全体では堅調に推移しました。
インダストリアルガス事業は、鉄鋼や自動車などの生産活動が低調だったことから、ガスの販売数量は前年をわずかに下回りました。また、電力料金や物流コストの上昇が続いたため、鉄鋼向けオンサイトガス供給の販売単価が上昇したことに加え、各種ガス製品の価格是正を実施したことにより、売上収益が増加しました。利益面では、価格是正が適用されるまでの期間影響が一部に残りました。
海外・エンジニアリング事業は、インドにおいて、鉄鋼向けオンサイトガス供給が旺盛な粗鋼生産に連動し高稼働を継続したほか、プラント操業の効率化に取り組み、年度を通じて好調に推移しました。また、ローリー・シリンダーによるガス供給も自動車向けなどの需要が高まり、販売数量が増加しました。
<エネルギーソリューション>
当セグメントの売上収益は919億1千9百万円(前期比108.8%)、営業利益は57億3百万円(同81.4%)となりました。
事業全体では、エネルギーと環境領域を融合し、地域の未利用資源を活用したカーボンニュートラルに寄与するエネルギー供給に向けた新たなビジネスモデルの構築を進めました。輸入価格に連動しLPガスの販売単価が上昇したことで増収となったものの、利益面では、炭酸ガス供給分野において原料ガスの不足等による影響を受け、ドライアイスの販売が停滞したことから、前年を大きく下回る結果となりました。
エネルギー事業は、輸入価格に連動しLPガスの販売単価が上昇したことで増収となりました。利益面では、配送費等のコスト増加に対する価格是正を実施しましたが、在庫量が増える年度後半にかけて輸入価格の変動に伴う在庫評価の影響を受けました。
資源循環事業は、炭酸ガス供給において、原料ガスの不足等による影響からドライアイスの販売が減少し、前年を大きく下回る状況となりました。一方、水素ガスは、半導体・非鉄業界向けのオンサイト供給を中心に順調に推移しました。また、小型CO2回収装置「ReCO2 STATION」やLNG代替燃料として利用可能な「液化バイオメタン」を開発し、CO2回収・利活用や新エネルギーのビジネスモデル構築を進めました。
<ヘルス&セーフティー>
当セグメントの売上収益は2,359億9千2百万円(前期比108.5%)、営業利益は154億8千2百万円(同116.6%)となりました。
事業全体では、コロナ禍による医療機関や生活者を取り巻く環境の変化を踏まえ、今後も必要とされる感染症対策や新たな医療提供の形を見据えた事業体制の構築を進めた結果、医療用酸素の安定供給や病院設備のリニューアル工事、SPD(病院物品物流管理)による病院経営の効率化など、医療現場の様々な需要を着実に取り込みました。また、生活者により近い事業を展開する在宅医療や歯科分野に加え、衛生材料をはじめとしたコンシューマーヘルス分野が順調に推移した結果、売上・利益ともに前年を上回り、全社業績を牽引しました。
メディカルプロダクツ事業は、コロナ対策として酸素濃縮装置の自治体向けリース契約が継続したほか、病院での手術件数の回復などにより、医療用酸素の販売数量が増加しました。また、歯科分野は、CAD/CAM冠用材料が虫歯治療のインレー(詰め物)として保険適用が開始されたことにより、好調に推移しました。
防災事業は、病院設備工事分野においてリニューアル工事が増加したことに加え、大型工事案件の完工により、順調に推移しました。シンガポールの病院設備工事は、行動制限の緩和により工事進捗の改善が進み、順調に推移しました。また、消火設備分野は、発電所やデータセンター向けの需要を着実に取り込み、堅調に推移しました。
滅菌受託やSPDを展開するサービス事業は、人手不足が常態化する病院業務の効率化に向けた積極的な提案活動を通じて新規顧客の獲得が進んだことにより、増収に寄与しました。
コンシューマーヘルス事業は、衛生材料分野において、手術関連製品や自社開発のマスクなど市販用感染対策製品の販売が増加しました。エアゾール分野は、原材料コストの上昇による影響を受けましたが、年度後半にかけて化粧品やUVカットスプレーの製造受託が増加したことで、堅調に推移しました。注射針分野は、ワクチン接種用注射針に加え、海外向けのデンタル針や美容針の販売が回復したことにより、順調に推移しました。
<アグリ&フーズ>
当セグメントの売上収益は1,520億6千9百万円(前期比109.0%)、営業利益は55億2千1百万円(同96.6%)となりました。
事業全体では、年度前半においては、ハム・デリカ製品の販路拡大や業務用食品の需要回復に加え、原材料・エネルギーコストの上昇に対応した価格是正が進展したことで順調に推移しましたが、年度後半には、鶏卵や肥料・資材といった原材料コストがさらに高騰した影響を受けました。なお、M&Aによる新規連結効果が寄与しましたが、土地売却益を前年に計上していた反動から、営業利益は前年をわずかに下回る結果となりました。
フーズ事業は、ハム・デリカ分野において、ホテルや外食向けなどの業務用需要が回復したことに加え、新たな販路開拓と新商品の投入により市販用製品の販売が順調に推移しました。一方、スイーツ分野は、年度後半にかけて、鶏卵をはじめとした原材料費の上昇と物価上昇による消費マインドの低下を受け、厳しい状況となりました。
野菜・果実系飲料などの受託製造を行うナチュラルフーズ事業は、大口顧客へのミネラルウォーターの販売が増加しましたが、利益面では工場動力にかかるエネルギーコストが増加した影響を受け、前年並みとなりました。
アグリ事業は、青果卸・加工分野においては、北海道における農産物の一部が生育不良だった影響を受け、年度後半にかけて青果の卸・販売が低調に推移しました。百貨店等で店舗展開する青果小売分野においては、物価上昇の影響による消費マインドの低下を受けて販売が伸び悩みましたが、関西地区で農産物直売事業を行う㈱プラスの新規連結効果により、事業全体では順調に推移しました。
<その他の事業>
当セグメントの売上収益は1,823億8千2百万円(前期比115.1%)、営業利益は10億6千2百万円(同9.9%)となりました。
物流事業は、自社物流ネットワークの拡充により、主に北海道と東日本を結ぶ幹線輸送の荷扱量が増加しました。食品物流を中心とする3PL事業は、札幌第二低温センターが本格稼働するとともに厚木物流センターでネット通販関連の荷扱量が増加しました。また、受託料金の適正化に取り組んだことで、堅調に推移しました。トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業が車両の納入遅れによる影響を受けましたが、産業・医療系廃棄物の収集運搬において取扱量が増加したことで、その影響を補い、事業全体としては順調に推移しました。
㈱日本海水は、製塩工程におけるボイラー燃料として使用している石炭やLNGの価格高騰に対し、業務用塩を中心に二度にわたる価格是正を実施した結果、売上収益が拡大しました。しかしながら、FIT制度を利用した電力分野において、発電燃料であるPKS(パーム椰子殻)の海上輸送コストなどが高騰した影響を受け、前年を下回る結果となりました。
北米産業ガス事業は、低温機器・エンジニアリング分野において、脱炭素関連需要の高まりを受けて、炭酸ガス関連機器や液化水素タンクなどの受注が堅調に推移したことに加え、貯槽用低温容器の販売が増加しました。一方、利益面では、部材の調達遅れなどによる影響から生産の停滞が発生し、厳しい状況となりました。なお、極低温冷凍システムを手掛けるDohmeyer Holding BVBA、米国ニューヨーク州を地盤とする産業ガス・ディストリビューターのNoble Gas Solutions, LLC.を新たにM&Aしました。高出力UPS(無停電電源装置)事業は、東南アジアにおいて、行動制限の緩和により工事進捗の改善が進み、順調に推移しました。一方、欧米においては、顧客の投資計画延期や資材価格の上昇などによる影響を受け、厳しい状況となりました。
電力事業は、発電燃料となる木質バイオマスや石炭の価格及び海上輸送コストの高騰が続いたことに加え、荷揚げ港湾施設の混雑に起因する滞船コストの発生や設備トラブルによる影響を大きく受けました。FIT制度により、電力の販売価格が固定化されているため、コスト上昇分を価格転嫁できず、年度を通じて厳しい状況で推移しました。なお、2023年1月18日付をもって、当社が保有するエア・ウォーター&エネルギア・パワー山口㈱の株式を中国電力㈱に譲渡しました。これにより、同社は中国電力㈱の完全子会社となり当社の連結子会社ではなくなりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
製品のほとんどが見込生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
総資産は、営業債権及びその他の債権の増加などにより前連結会計年度末に比べて696億1千3百万円増加し、1兆916億4千5百万円となりました。
負債は、社債及び借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べて429億8千8百万円増加し、6,451億6千2百万円となりました。
資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の積み上げなどにより前連結会計年度末に比べて266億2千5百万円増加し、4,464億8千2百万円となりました。
以上の結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,744.42円から1,892.36円に増加しております。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の38.7%から39.4%となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の11.5%から9.7%となっております。
(3)キャッシュ・フロー
① 資本政策の基本的な考え方
当連結会計年度は設備投資の厳選、投資有価証券の売却に取り組み、フリーキャッシュ・フローの創出を意識した経営を行ってまいりました。2010年度からグループ全社を挙げて取り組んできた「売上収益1兆円」を当連結会計年度に達成し、今後はこれまで以上に投資効率や財務バランスを意識し、運転資本の効率化を推進することで営業活動によるキャッシュ・フローの創出に取り組んでまいります。
中長期的には積極投資の回収が進むことに加え、事業規模の拡大からより収益性・効率性を重視した成長戦略を推進してまいります。親会社所有者帰属持分比率の向上とネットD/Eレシオの改善を目指し、安定的にフリーキャッシュ・フローを稼げる収益構造を構築していくことで、親会社所有者に帰属する当期利益の30%を配当性向の目標とし、安定的な配当を継続していくことを基本方針としております。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益及び減価償却費などから法人所得税の支払などを差し引いた結果、前連結会計年度に比べ146億1千9百万円収入が減少し、569億5千3百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出が減少したものの、有形固定資産の取得による支出の増加や投資有価証券の売却による収入が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ179億8千万円支出額が増加し、711億3千5百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金による収入が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べて258億8千万円収入が増加し、192億5千7百万円の収入となりました。
(現金及び現金同等物)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ63億9千万円増加し、659億4千4百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度で売上収益1兆円を達成し、当社グループは大きな節目を迎えました。今後、中長期的に企業価値を高めていくために必要な成長投資の資金については、事業で創出されるキャッシュ・フローを充当し、不足する分は銀行借入或いは社債発行による負債調達を基本としております。
手元資金については、資金効率を重視し事業継続に必要な適正水準を維持する方針としております。
なお、資金の機動的かつ安定的な調達に向け、取引銀行3行との間に総額200億円のシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
成長投資については、経済活動の停滞が長期化した局面に備えて十分な財務の安全性を維持するため、今後のM&A投資及び設備投資は、事業環境の変化を慎重に見極めながら厳選していきます。
株主還元については、配当性向の目標を親会社所有者に帰属する当期利益の30%を目安としており、中長期的な成長のための戦略的投資等に必要な内部留保の充実に留意しつつ、将来にわたって業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
翌連結会計年度の事業環境については、インフレ抑制を目的とした諸外国の利上げに伴い、世界的な景気の下振れリスクが高まっております。さらに、製造業の先行指標となる半導体需要は、2023年半ばまで在庫調整の継続が見込まれるなど、今後の先行きに対する見通しは一段と不透明さを増しております。その前提に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行った結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 非金融資産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としており、資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、 当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当社は、中国電力㈱との合弁会社であるエア・ウォーター&エネルギア・パワー山口㈱(現:エネルギア・パワー山口㈱。)とエア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜㈱(現:エア・ウォーター小名浜バイオマス電力㈱。)について、当社と中国電力㈱との間で、当社が保有するエア・ウォーター&エネルギア・パワー山口㈱の株式(発行済株式総数の51%)を中国電力㈱に譲渡するとともに、中国電力㈱が保有するエア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜㈱の株式(発行済株式総数の49%)を当社が取得する株式譲渡契約を2022年11月28日付で締結しました。なお、2023年1月18日付で取得及び譲渡が完了しております。これにより、エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口㈱は中国電力㈱の完全子会社、エア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜㈱は当社の完全子会社となりました。
当連結会計年度の研究開発活動につきましては、グループテクノロジーセンターを設置し、グループに点在する幅広い領域に跨る技術を横串で管理し、擦合せ統合による新たな価値の創出に取り組んでまいりました。事業成長に向けた投資効率の最大化を目指し、「地域と密着し、脱炭素社会の実現に貢献する環境システム事業領域」、「行政と連携し、社会課題を解決するウェルネス事業領域」を2つの柱として研究開発戦略を策定しております。
さらに、当連結会計年度に、グループの多様な事業領域と世界的な社会課題を踏まえ、「地球環境」と「ウェルネス」の2つの成長軸に沿ってグループの事業群を「デジタル&インダストリー」、「エネルギーソリューション」、「ヘルス&セーフティ」、「アグリ&フーズ」の4つの事業グループに再編しました。これまでに培ったそれぞれの事業グループのコア技術を日々進化させると共に、様々な分野へ応用展開すること、オープンイノベーションによる積極的な技術導入を行うことで、事業の継続的な成長と社会に貢献できる成果の結実に取り組んでまいります。
事業グループごとの研究開発活動につきましては、次のとおりであります。
(デジタル&インダストリー)
基幹事業である産業ガス事業においては、ガス製造プロセスの高度化とコスト削減、ガスを利用するアプリケーション開発について、成果を積み上げております。
・デジタル化の急速な進展に伴い、データセンターの処理能力やデータ通信速度の更なる高速化に対応できる材料のニーズが高まっています。また脱炭素社会の実現に向け、電気自動車の航続距離の伸長や急速充電に対応できる材料が求められています。これに対応するため、半導体や二次電池などのエレクトロニクス分野における幅広い領域を中心として、エア・ウォーターグループ内の技術シナジー発現による差別化商品創出に注力しつつ、新たな材料開発を推進しております。
・エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱においては、高機能を有する電子材料や食品機能材料の開発に注力しております。また分散している開発拠点を集約し、技術の集中・高度化を図るため、新研究棟の建設を2024年完成目途に推進しております。
・脱炭素社会でますます重要となる蓄電デバイスについては、リチウムイオン電池高性能化のための電解液添加剤の開発の他、リチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池でも寿命・容量を向上させる負極用真球状ハードカーボンの材料開発を推進しております。
・パッケージ基板分野では、低誘電特性に優れ5G関連機器用途での採用が期待される材料開発を進めています。ポリイミドに対しても低誘電性改質ポリイミド用の原料を開発し、海外を含め顧客へ提案し、評価を継続しております。
・FILWEL㈱では、ハードディスクドライブ、シリコンウエハなどの精密研磨に使用されるパッド材において、樹脂技術・プロセス技術の高度化及び開発期間短縮のため、MI(マテリアルインフォマティクス)も導入し、顧客の研磨精度向上に対する恒常的な要望にお応えしております。
(エネルギーソリューション)
2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、カーボンニュートラルエネルギー関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。
・世界最高水準の効率で、都市ガスから水素ガスを発生させる次世代型水素ガス発生装置「VHR」を開発、現在までに5機の運用を開始しております。さらに副生ガスとして排出されるCO2の回収・利活用技術の開発も推進しており、今後も鉄鋼・半導体などの底堅い水素需要に対して環境負荷の低いクリーンな水素の拡販を推進してまいります。
・2030年までに2013年と比べて46%削減、2050年までにCO2排出量実質ゼロにするという政府方針に沿って設定した当社グループ目標に沿い、CO2回収・利活用技術の開発に取り組んでおります。当社がこれまで培ってきたガス分離技術ならびにガスアプリケーションを起点に、小型CO2回収装置「ReCO2 STATION」を開発し、第31回地球環境大賞において「環境大臣賞」を受賞しました。さらに、産・官・学と連携した取組みとして、NEDOグリーンイノベーション基金事業において、「Na-Fe系酸化物による革新的CO2分離回収技術の開発」を推進しております。
・地産地消エネルギーによる資源循環モデルの開発施設「地球の恵みファーム・松本」の建設に着手し、実証に向けた取組みを推進しております。地球の恵みファーム・松本は「バイオマスガス化発電」「メタン発酵発電」「スマート陸上養殖プラント」「スマート農業ハウス」の4施設で構成されています。地域で発生する未利用バイオマス資源を有効活用して発電を行うとともに、発電時に発生する熱やCO2を養殖設備や農業に利用します。未利用資源からエネルギーを獲得し、排出される廃棄物を最小化することで、エネルギーの地産地消と資源循環モデルを実現します。
・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。環境省が推進する「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の優先テーマとして、バイオガスを用いて液化バイオメタン(LBM)に加工することでLNGの代替燃料として活用する実証を開始しております。さらに、バイオメタンのコストダウンにつながる技術開発も実施しており、自治体や企業との連携を通じて、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。
(ヘルス&セーフティー)
医療事業において、病院内機器製品やサービスの開発、在宅医療向け機器製品サービスの開発を推進していきます。
・既存事業である、在宅酸素療法の酸素濃縮器事業を軸に在宅医療、遠隔診療用途として肺の呼吸音を可視化および解析が出来る電子聴診器システムを開発しております。これまで主観評価だった呼吸音に対して定量化や可視化・解析が出来るようになり、いち早く病態変化に気づけるよう病院内または在宅で使用出来る機器・サービスを目指してまいります。
・慶應義塾大学発GI型POF(屈折率分布型プラスチック光ファイバー)技術を応用し極細内視鏡の開発を推進しております。極細硬性内視鏡の使用により、患者の関節内を低侵襲で手術前後に直接観察でき、手術後の経過観察を効率よく行うことが可能になり、患者の肉体的負担、医療現場の負担が大幅に軽減されます。
・エアゾール分野については、企画提案、高付加価値戦略の基、顧客・消費者のニーズを先取りする提案型開発研究にて事業の拡大を目指しております。また、衛生用品、家庭用品、塗料、工業・自動車用品など幅広い業界に対し、顧客のニーズに対応した開発研究を実践しております。
(アグリ&フーズ)
農作物の栽培・加工・保存技術や食品・飲料の品質向上、分析・機能性及び新技術・商品開発を推進しております。
・農業従事者の減少と食糧問題への取組であるスマート農業開発において、2020年12月より実施している東京大学との共同研究では主力品のひとつであるブロッコリーの収穫機時期予測プログラムを開発しました。また観察技術とデータ技術を応用して肥料使用適切化の開発にも着手し、生産性・品質向上の両立を目指しております。
・コロナウイルスにより免疫や健康に対する消費者意識が加速的に高まったことから、発酵技術の開発を開始しました。当社事業の強みをさらに高めるため、農産自社資源の活用・分析による機能性研究によって付加価値を与え市場参入を目指しております。北海道大学との共同研究である食肉製品分野において発酵技術による添加物削減技術を開発しました。微生物利用による農業・食品・分析新技術開発と実用化を進めております。
・栽培・食品・飲料・分析の各分野での研究により、かぼちゃ収穫機・生ハム新製法の確立・食品成分の一斉分析法(332成分)、植物性発酵飲料・農作物栄養成分の迅速分析法を開発しました。バリューチェーン全体の技術力向上と、品質向上・新商品開発の取組を進めて参ります。
(その他の事業)
・日本海水㈱では、「海が由来」をキーワードに海水から製塩を行う塩事業を柱として、多角化により様々な技術開発・事業展開を行っております。NEDOの研究開発委託事業に採択された「海水を用いたCO2鉱物化法の開発(ブルーカーボンリサイクル技術の開発)」について、産学官協働で発電所や工場などから排出されるCO2の固定化、資源化に向けた新技術開発と実用化を進めております。また、2050年に向けたカーボンニュートラル宣言,脱炭素化の流れの中,主に排煙脱硫剤として使用されている水酸化マグネシウムスラリーの需要減に対応するため、水酸化マグネシウムスラリーを起点とした新たな事業への展開を図るべく、産学官協働でマグネシウム関連製品の開発を進めております。
なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は