文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社、以下同じ)が判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社グループが現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念の核である「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」というミッションのもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に据えて、事業を通じた社会課題の解決に努め、持続可能な未来を実現するために、地球環境と社会に貢献しながら成長し続ける企業グループを目指します。
当社グループには、これまでの歴史で培ってきた基幹技術、多様な事業領域や強い知的財産、さらには幅広い業界における顧客基盤といった強みがあります。これらの強みを結集し、当社グループ独自のマーケティング活動である「三新活動」(新用途開拓と新製品開発に取り組むことで、新しい需要を創造する活動)と、「ニッチトップ戦略」(成長するマーケットで、先行者のいないニッチ分野を見出し、独自の技術でシェアNo.1を狙う戦略)で、イノベーションを加速させ、地球環境や社会に貢献できる製品やソリューションを創出していきます。
また、気候変動や人権問題等の世界共通の社会課題に対し、企業としての社会的責任を果たし、ステークホルダーとの信頼を構築してまいります。
※「グローバルニッチトップTM / Global Niche TopTM」「エリアニッチトップTM / Area Niche TopTM」は、当社の登録商標です。
(2)中長期的な会社の経営戦略
前中期経営計画「Nitto Beyond 2023」の振り返り
当社グループは、前連結会計年度において、2021年度から2023年度を実行期間とする中期経営計画「Nitto Beyond 2023」を策定し、外部環境の影響を受けにくい強靭な企業体質の構築を実現するために、「ESG経営の推進」「イノベーションの加速」「経営インフラの強化」を重点課題として取り組んでまいりました。当連結会計年度は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を契機としたエネルギーや一次産品価格の高騰、日米金利差の拡大による急激な円安進行、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う都市ロックダウン等の防疫措置によるサプライチェーンの混乱などによって、非常に厳しい事業環境となりましたが、当社グループは、2023年度末における経営上の目標として掲げた、売上収益9,200億円、営業利益1,400億円、営業利益率15%及びROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)12%を1年前倒しで達成することができました。
当該中期経営計画期間では、2件の買収を実行し、重点分野のひとつである「ヒューマンライフ」分野の事業成長に向けた取組みを加速したほか、トランスポーテーション事業部のNVH事業の一部を譲渡するなど、事業ポートフォリオの変革を進めました。
また、当社グループ製品を環境貢献・人類貢献の二つの視点で独自の基準により評価し、特に高い貢献が認められた製品をPlanetFlagsTM(環境貢献製品)、HumanFlagsTM(人類貢献製品)として認定する仕組みを設けました。将来のPlanetFlagsTM/HumanFlagsTM認定が期待できるテーマに開発リソースを優先的に配分することで、事業を通じた社会課題の解決と経済価値の創造の両立を加速しています。
2030年ありたい姿と新中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」の策定
新たな中期経営計画の策定にあたっては、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の観点で2030年に向けた外部環境の変化を想定し、「起きてほしくない変化こそ、想定を超える速さで起こる」ことを念頭に、2030年ありたい姿を、“ニッチトップクリエーターとして驚きと感動を与え続ける「なくてはならないESGトップ企業」”と設定しました。「Nittoらしさ」である、「チャレンジを楽しむ」社風・文化を土壌に、「環境・人類に貢献するニッチトップ」を創出し、お客様に最高の「驚きと感動」を提供することで、豊かな未来に貢献します。当社グループは、お客様やパートナーと共創イノベーションで新たな価値を生み出し、持続可能な地球環境・人類社会になくてはならない存在として、ステークホルダーからの信頼と期待に応えてまいります。
この、2030年ありたい姿「なくてはならないESGトップ企業」を実現するための実行計画として、当社グループは、2023年度から2025年度までを実行期間とする新中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」を策定いたしました。「Nitto for Everyone 2025」では、脱炭素社会・循環経済社会への移行、デジタル技術の高度化などの社会変化に対応するため、重点分野について、「情報インターフェース」を「デジタルインターフェース」へ、「次世代モビリティ」を「パワー&モビリティ」へ見直しました。「デジタルインターフェース」「パワー&モビリティ」「ヒューマンライフ」の3つの重点分野とそれらが交わる領域で、当社グループの強みである技術や顧客基盤などを活かし、なくてはならない存在を目指します。
「Nitto for Everyone 2025」重点項目
① 環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革
経済価値と社会価値の両軸で見極めた“伸ばすもの”に対しては重点投資を進める一方で、将来の成長が見込まれない、環境化学物質規制で製造できなくなる可能性があるなど、“残さないもの”に対しては、撤退・売却も含めた打ち手で構造改革を進めます。M&Aやスタートアップ企業への出資を含む戦略的アライアンスを積極的に活用し、新規領域では、環境ビジネス・ソリューションビジネス創出にもチャレンジすることで、事業ポートフォリオの変革を進めます。
② ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化
当社グループは、独自のイノベーションモデルを進化させ、なくてはならないニッチトップソリューションを創出するためには、「社会課題へのフォーカス」「事業開発力の強化」「ステークホルダーとの共創」の3つが重要であると考えています。社会課題に対してソリューションを提供する差別化技術を磨き、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMを生み出すこと、マーケティング力の強化で事業開発力を高めること、お客様やパートナーとの共創による事業化の加速を進めることで、これまで当社グループが培ってきた勝ち方に加えて、新しい勝ち方の確立を進めていきます。
③ 人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革
当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置付けています。持続的な成長に必要となる新しいイノベーションを生み出すために、チャレンジする機会の拡充と人事・育成制度の変革を行います。また、多様な事業展開や新たな勝ち方の構築を加速するために、事業開発人財や異業種人財を育成・獲得し、その活躍を支えるインクルージョン施策に取り組みます。
全ての従業員が活き活きと働く会社を目指し、「Nittoらしい」人的資本経営を進めてまいります。
④ 変化を先取る経営インフラへの変革
当社グループが目指す「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践には、取り巻く事業環境の変化を先取りすることが必要です。地政学リスクをはじめとしたサプライチェーンリスクへの先見力と対応力の向上や、デジタル活用によるデータドリブン経営の実現、事業を支える強靭な財務体質の維持・向上など、「なくてはならないESGトップ企業」を支える強靭な経営インフラへ、変革を進めます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「Nitto for Everyone 2025」において、2025年度末における経営上の目標を、営業利益1,700億円、営業利益率17%及びROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)15%と定めました。
また、当社グループでは、現時点では未だ財務には至っていないが将来的に財務となり得る要素、あるいは財務に転換していく要素を“未財務”と呼び、前中期経営計画「Nitto Beyond 2023」から継続する3つの未財務指標に加え、「Nitto for Everyone 2025」では「なくてはならないESGトップ企業」の実現に向けて、新たに6つの未財務指標を設定しました。これら未財務指標の目標達成に向けた活動を推進することで変革を加速し、企業価値向上を図ります。
サステナビリティに関する考え方及び取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
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未財務指標 |
2022年度 |
2025年度 |
2030年度 |
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製 品 系 |
継続 |
新製品比率(1) |
41% |
35%以上 |
35%以上 |
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新規 |
ニッチトップ売上収益比率(2) |
47% |
50% |
50%以上 |
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新規 |
PlanetFlagsTM/HumanFlagsTM |
17% |
40% |
50%以上 |
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環 境 系 |
継続 |
CO₂排出量(4) |
571kton/年 |
550kton/年 |
470kton/年 |
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新規 |
廃プラスチック |
46% |
50% |
60% |
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新規 |
サステナブル材料使用率(6) |
17% ※国内 |
20% |
30% |
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人 財 系 |
継続 |
女性リーダー比率(7) |
19% |
24% |
30% |
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新規 |
エンゲージメントスコア(8) |
74 (2021年度) |
78 |
85 |
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新規 |
チャレンジ比率(9) |
42% |
70% |
85% |
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(1)当社グループの競争力の源泉である新製品の創出度合を計る指標
(2)なくてはならないNitto製品の拡大を計る指標
(3)Nitto流ESG経営の根幹であるPlanetFlagsTM/HumanFlagsTM製品の拡大を計る指標
(4)「Nittoグループカーボンニュートラル2050」に向けた取組みの進捗を計る指標
(5)サーキュラーエコノミーに対する取組みの進捗を計る指標
(6)環境やサプライチェーンの人権を考慮したサステナブルな材料の調達度合を計る指標
(7)組織を牽引する女性リーダー増加によるダイバーシティの促進を計る指標
(8)組織の業績成長との関係性が強い、従業員の「帰属意識・貢献意欲」「生産的な職場環境」「心身の健康・活力」の3要素を計る指標
(9)新たな価値創造に向けて自分の経験や可能性を拡げるチャレンジをした従業員の割合を計る指標
(4)各報告セグメントの戦略と取組み
各報告セグメントにおける主な戦略と取組みは、次のとおりです。
・インダストリアルテープ
半導体やセラミックコンデンサー向けの工程用材料は、需要が回復することが見込まれます。自動車材料では、今後の成長が期待されるCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)領域での拡販と新製品創出に取り組みます。また、脱炭素に向けた中長期的な取組みとして無溶剤化を推進し、新たな事業機会を創出することで、インダストリアルテープ全体として安定的に高い利益率を生み出せる事業基盤の構築に取り組みます。
・オプトロニクス
情報機能材料では、スマートフォンを中心にディスプレイ市場が成熟化する中で、光学フィルムとその他周辺部材を合わせたトータルソリューションで、顧客の生産性向上や環境負荷低減に貢献します。一方、新たな成長点として車載やVR向け光学フィルム市場を位置付け、今後の事業拡大に向け、経営資源を投入していきます。
回路材料では、データセンター向けHDD市場において高容量化が一段と進み、需要が再び増加していくことが想定されます。当社グループは、ベトナム拠点に新工場を建設し生産能力を増強するとともに、BCPへの対応を強化し安定的な供給体制を構築していきます。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、国内の拠点において供給拡大に向けた生産能力の増強や生産性向上に取り組みます。
・ヒューマンライフ
ライフサイエンスでは、核酸医薬市場での受託製造において、希少疾患からより多くの患者を対象とした治療薬の商用化が期待されており、当社グループが保有する後期臨床案件の需要が堅調に推移することが見込まれます。また、核酸医薬市場の拡大に伴い、その製造に使用される合成材料(NittoPhaseTM)の需要が増加することが想定されます。これら成長が見込まれる需要に対して、核酸受託製造事業においては、米国マサチューセッツ州の拠点に新設する工場が2023年度上期中に完成する予定です。また、核酸合成材料は国内及び米国カリフォルニア州の拠点に新工場を建設中で、2024年度以降の稼働を計画しています。核酸創薬においては、肺線維症のPhase2の治験結果の解析を進めており、ライセンスアウトの交渉を進めていきます。
メンブレンでは、水不足や各国における環境規制強化を背景に市場は中長期的に成長すると見込んでいます。また、脱炭素市場へ向けた製品開発を進め、環境・人類に貢献する製品ポートフォリオへの変革に取り組みます。
パーソナルケア材料では、おむつ向け衛生材料の新製品を投入し、事業の拡大を目指します。今後は、コア材料である高機能性フィルムや不織布の強みを活かし、環境対応製品の創出と販売エリアの拡大に取り組みます。
・その他
新規事業では、大容量高速通信を可能とするプラスチック光ファイバーについて、市場の高速伝送ニーズに対応するために、全社R&D部門からICT事業部門へ事業移管し、世界各国に向けて本格展開を目指します。また、デジタルヘルス、フレキシブルセンサ、次世代半導体関連等、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMの候補となるテーマに経営資源を集中的に投入し、早期の事業化を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループは、社会課題の解決に積極的に貢献できる企業を目指し、コーポレートガバナンスを構築しています。特に、ESG経営推進の実効性を確保するために、ESG推進の担当役員を任命し、専門機能部署の中に担当部署を設置しています。当該担当部署が社会的重要課題(マテリアリティ)の特定など、サステナビリティに関する提案を行い、これに基づき取締役会・経営戦略会議が意思決定し、取締役会・経営戦略会議のメンバーである代表取締役及び執行役員が、それぞれ担当する事業執行部署及びエリア内のグループ会社に提案内容の実行を指示することにより、ESG経営推進の実効性を確保しています。
②戦略
当社グループは、新たに2030年ありたい姿として“なくてはならないESGトップ企業”を掲げました。それを実践するために、サステナビリティ基本方針に基づく具体的な活動として、サステナビリティ重要課題を特定しています。この重要課題は、製品・サービスを通じて取り組む課題である「イノベーションによる価値共創」と、経営基盤の強化により取り組む課題である「価値共創のための経営品質向上」という二つの側面から構成され、取組みに当たっては、それぞれの課題における機会とリスクを認識し、事業計画へ反映しています。
※GHG(Greenhouse Gas)=温室効果ガス
③リスク管理
④指標及び目標
当社グループは、2030年ありたい姿実現に向け、サステナビリティ重要課題に対する指標と目標を設定するとともに、確実な実行のための適正な進捗管理を行っています。
(2)気候変動
①戦略
当社グループは、気候変動に関するマテリアリティとして「再生エネルギーの普及・省エネの推進」「CO2排出量削減」を挙げています。
2022年「Nittoグループカーボンニュートラル2050」を宣言するにあたり、気候変動による機会やリスクが当社グループにどのような影響を及ぼし得るのかを確認するために、TCFD提言に沿う形でシナリオ分析を行いました。
シナリオから得られた中長期に生じうる5つの将来の外部環境の変化(政策及び法規制、技術、市場、急性的、資源の効率)から、営業利益額に一定以上の財務影響を与えうる機会とリスクを特定し、サステナビリティ共通の戦略に記載する取組みを進めています。
②指標及び目標
気候変動に関する指標及び目標は、サステナビリティの指標及び目標に組み込まれています。
(3)人財の確保と育成
①戦略
当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置づけ、The Nitto Wayを実践できるNitto Personをグローバルで育成しています。
そのために、経営理念を人財面で具現化するものとして「人財マネジメント基本方針」を策定し、Nitto Personの目指す姿を明文化し、個別施策の強力な推進に繋げています。
●国籍・性別・年齢・職歴・障害などの多様性を理解・尊重し、誠実に行動できる人財を育成・活用します。
●従業員を個人として尊重し、自律的なキャリア形成のため、適材適所による成長機会を提供します。
●多様な働き方の推進とオープンな組織風土の下、働きがいのある安全・安心・健康な職場環境を築きます
●失敗を恐れずチャレンジした成果をフェアに評価し、従業員がベストを尽くせる公正な処遇を実現します。
●優秀な人財をグローバルで発掘・育成し、変化を先取りし実現力を発揮できるリーダーを養成します。
当社グループでは、グローバルで一貫したタレントマネジメントを実施しています。
②指標及び目標
当社グループでは、従業員一人ひとりが働きがいをもってチャレンジする組織風土の醸成が重要と考え、下記指標を2030年経営目標と定めました。
(1)基本的な考え方
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識した主要なリスクについて、事業に関わるリスクを「事業リスク」とし、その他当社グループ全般に及ぼすリスクを「業務リスク」として以下に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(2)リスクマネジメント体制
当社グループでは、主要なリスクについて、「内部統制基本方針」に定めたリスクマネジメント体制にて、リスクマネジメントを推進しています。
事業執行部署が「事業リスク」を、専門機能部署が「業務リスク」を管理しています。またグローバルなリスクモニタリングを実現するため、海外主要地域にエリア統括を配置し、エリアごとのモニタリングを実施します。
各責任部署によって管理されるリスク情報については、取締役、執行役員が出席する経営戦略会議で毎月報告され、審議されます。ここでの審議結果は直ちに各責任部署に指示され、対策の実施、統制の強化を速やかに実行し、実行内容、改善状況は再び経営戦略会議に報告されることでグループのリスクマネジメントについて実効性を高めています。
[リスクマネジメント体制図]
(3)各リスクの管理状況
主要なリスクについては、リスクマネジメント担当役員及び担当部署によって、前連結会計年度から継続するリスクに加え、取締役及び各責任部署、監査法人等からの意見聴取、取締役会及び経営戦略会議での議題、審議内容を分析の上、経営戦略会議での審議を経て管理、報告の対象とします。
これらリスクについて、実際に発生・顕在化した場合の事業への「影響度」を縦軸に、実際に起こる「発生可能性」を横軸として、二軸での分析を行い、リスクの重要性を以下のように分類し、各リスクの相対的な重要性を認識しています。
[2022年度のリスクマップ]
当連結会計年度において、経営戦略会議の審議対象となったこれらのリスク(事業リスク・業務リスク)については、当連結会計年度末に実行体制、統制・対策の実行、インシデントの発生と対応などの評価基準に基づき、責任部署が自己評価したものを、リスクマネジメント担当部署及びリスクマネジメント担当役員により独立的に評価し、経営戦略会議及び取締役会に報告します。
各リスクの当期の評価は期初からリスクが増加したか否かを示しています。各リスクの評価結果及び当連結会計年度末の状況は以下のとおりです。
[各リスクの当連結会計年度評価]
※矢印の向きは期初からのリスクの増減を表す(↗:リスク増加、→:増減なし、↘:リスク減少)
[各リスクの当連結会計年度末の状況]
(1)事業リスク
a.海外取引・為替リスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上収益比率は8割を超えており、約40社の関係会社が貿易取引を行っています。
進出国において電力供給や輸送の停止、人件費の上昇、雇用関係の悪化や労働争議などのリスクがあります。また、紛争、感染症の発生などによる世界経済の急変は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、想定を超えた為替レートの変動や金融不安、保護主義の台頭や安全保障上の貿易規制も、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループではサプライチェーンにおけるリスクの可視化、物流BCP(事業継続計画)の構築により物流を管理しています。また、グループ内資金残高、資金繰り、通貨別の資産負債の状況などをタイムリーに把握するとともに、各エリアに資金統括拠点を設置して資金集約や為替リスクヘッジなどに取り組んでいます。
(補足事項)ロシア・ウクライナ紛争
当社グループはロシア、モスクワに現地法人を有しており、日本及び欧州地域から当社製品を輸出し、同地域での販売を行っています。
2022年2月のロシア・ウクライナ紛争ぼっ発後、各国の輸出規制などにより、同現地法人のビジネスは年度を通じ影響を受けましたが、業績への影響は僅少です。この他、紛争が広範囲に及ぼす間接的な影響は、各リスクにおいて説明しています。
当社グループでは、各国の輸出規制など、直接的な動向のほか、紛争の長期化などによる間接的な影響にも引き続き留意しております。
b.顧客の財務状況
当社グループが、売上債権を有するお客様において、事業環境の大きな変化により財務上重大な問題が発生する可能性があります。
特に、変化の激しいエレクトロニクスやライフサイエンス分野における債権の大きいお客様で貸倒れが発生した場合、回収不能額が多額となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、債権管理部署を設け、お客様について十分な信用調査のうえ、取引を行うほか、取引信用保険の付保などによるリスクの軽減も行っています。
c.原材料確保
当社グループは、一部の原材料を特定の購入先に依存しています。
その購入先が自然災害や事故、倒産などの止むを得ない事情により、原材料供給を縮小したり停止した場合、需給バランスがくずれ、必要な原材料の確保ができなかったり、コストの上昇などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、原材料調達先を複数にする、一定期間分の在庫を決めて管理するなど、主要原材料の確保におけるリスクを低減するよう取り組んでいます。当連結会計年度からはサプライチェーンにおける持続可能な調達を目指してサプライチェーンコミッティを発足させました。複数部署を横断したチーム編成で近年高まりつつある地政学リスクや化学物質規制リスクなど、サプライチェーン上流へのリスク対策を講じます。現在課題とするリスクのみならず、潜在リスクへの先見力・対応力を高めるべく活動を行っています。
d.研究開発
当社グループが事業展開する業界は市場変化が激しく、その変化の予測は容易ではありません。
他社の新技術や新製品により、当社グループ製品が突然予期せぬ陳腐化を起こすこともあります。このような状況が生じた場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、特定の事業の動向に左右されないよう「三新活動」を起点とした新技術・新製品の研究開発や、その設備への投資に取り組んでいます。また、知的財産マネジメントの強化を図り、参入障壁を創っています。
e.知的財産権
当社グループは、市場競争力を高める目的から多くの知的財産権を保有し、維持、管理しています。
しかし、第三者から無効を主張される可能性、特定の地域で十分な保護が得られない可能性、模倣される可能性、訴訟を受ける可能性などがあり、知的財産権による保護が大きく損なわれた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは技術知財戦略本部と事業部が一体となり、他社の知的財産権に抵触していないか注意を払う一方で、当社グループの知的財産権に抵触する製品が市場に出回っている場合には摘発する活動を進めています。
各セグメントの事業リスクは、次のとおりです。
f.インダストリアルテープ事業
基盤機能材料は、重点三分野であるデジタルインターフェース、パワー&モビリティ、ヒューマンライフを含む幅広い業界に向けて、多種多様な製品をグローバルに提供しています。現在、各分野でお客様から付加価値の高い製品を要望されることが増えています。
デジタルインターフェース分野では、エレクトロニクス製品や半導体の市況により、業績が変動する可能性を含んでいます。「ニッチトップ戦略」と「三新活動」による「グローバルニッチトップTM」製品・「エリアニッチトップTM」製品創出の取組みの中でPlanetFlagsTM・HumanFlagsTM製品を新たな成長の軸とすることで、市場の影響を受け難い体質作りを進めています。
パワー&モビリティ分野では、自動車の構造接着材料や気密、防水用途のシーリング材料を、グローバル市場に提供しており、自動車生産台数の変動が業績に影響を与える可能性を含んでいます。EV(電気自動車)やCASE(コネクティッド・自動化・シェアリング・電動化)等の成長領域への取組みを進め、既存ビジネスに付加して成長分野でのビジネスを取り込むことで、市場の影響を受け難い体質作りを進めています。成長領域の取組みにおいてはグループ企業間のコラボレーションを強化し、幅広い製品群での対応を推し進めています。
ヒューマンライフ分野では防塵性、耐薬品性などの特徴を持つ特殊エンジニアリングプラスチックを精密加工した機能性フィルムや多孔質材料を展開し、人の暮らしをよりよくするためのソリューション開発を進めています。
なお、インダストリアルテープ事業が対応している市場では、自動車産業やエレクトロニクス産業を始め環境貢献に注力されるお客様が増えています。このため、インダストリアルテープにおいても、環境負荷の少ない製品の開発とモノづくりに取り組むと同時に、お客様の環境対応をサポートするサプライチェーンの取組み等に参画しています。
g.オプトロニクス事業
情報機能材料の主要市場であるディスプレイ業界は、市場の変化が早く、競合との厳しい競争に晒されています。また、当社グループの部材が組み込まれた製品や技術の汎用化、市場の成熟による売上収益の低下、競合の参入による収益性の圧迫などが、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。地政学リスクや環境規制などが、材料価格高騰、安定供給に影響を及ぼす場合、当社グループの生産や製品供給に影響を与える可能性があります。
ディスプレイ業界をリードするお客様の新たなニーズを早期に把握し、技術力を基に新製品の開発、市場投入を継続するとともに、非ディスプレイ市場への製品投入を加速し、自社製品の対象市場を拡大します。また様々な外部環境の変化に対応すべく、安定的な調達先を確保する、生産拠点を分散させるなど、事業のBCP対策を取っています。
回路材料は、データ社会やスマート社会を支える、成長が期待される市場や製品に集中して対応し、高シェア製品を供給しています。地政学リスクの高まりや、米国などの主要市場における景気の停滞が、一時的に業績に影響を及ぼす可能性があります。一方、長期的に市場の成長が維持された場合、製品供給責任のリスクが、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、拠点間のバックアップ体制による生産活動及び材料調達のBCP、人に依存しない生産性改革や日本及び海外への新工場建設など、積極的な設備投資を計画実行し、生産能力の確保を進めています。
h.ヒューマンライフ事業
ヒューマンライフは、ライフサイエンス事業、メンブレン事業、及びパーソナルケア材料事業から構成されます。ライフサイエンス事業は、核酸医薬関連事業を中心に当社グループの新たな事業分野として取組みを強化しています。核酸医薬市場は、後期臨床テーマや新薬承認の増加が見込まれ、今後の拡大が見込まれている市場です。当事業における核酸医薬の受託製造は、お客様が進めている研究開発活動や臨床試験の進捗により需要が変動するため、科学的根拠に基づいてお客様の臨床試験が中断又は中止された場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、お客様の研究開発活動や臨床試験の案件を幅広く受託することで、需要の変動による影響を緩和することに努めています。
一方、ライフサイエンス事業における核酸医薬の創薬は、当社グループで研究開発を進めた後に製薬業界のお客様へ技術を提供します。従って、当社グループの研究開発の進捗によって、業績に影響を及ぼす可能性を含んでいます。
核酸医薬の創薬においては、外部機関との連携を含め、安全性と有効性を確保するために、着実に研究開発活動を進めています。
メンブレン事業は、エネルギー分野の水処理や海水淡水化プラント、各産業における水処理装置向けに部材を供給しています。資材の価格高騰や供給不足の影響で、プラントの建築やお客様の部材調達の計画が遅延する場合、もしくは原材料価格の高騰により原材料の入手が制限される場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
市場の影響を受けにくい体質を作るために、新規市場開拓の強化や新製品の早期投入を進めます。原材料調達においては、調達先を複数にするよう努めるとともに、販売価格の見直しを行っていきます。
パーソナルケア材料事業は、主にオムツ部材を中心に衛生材料を提供しております。当事業では外部環境の変化、例えばエネルギーコスト上昇やインフレによる物価高など価格への影響が懸念されます。
当社グループでは、原価力向上に努め、またお客様と強固な関係を維持しながらニーズの先取りをすることで、新製品創出及び環境対応製品などへの展開に努め、さらなる収益性向上を目指しております。
i.その他
新規事業が計画通りに立ち上がらない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、定期的に当該市場やお客様の状況と当社グループの状況の整合を図りながら、適切な事業推進に努めています。
(補足事項)M&A
当社グループは、企業価値向上に向けた技術の獲得や新たな事業領域への進出、事業の成長を加速させる上で有効な手段となる場合は、必要に応じて、M&Aや業務提携、戦略的投資を実施しております。
しかしながら、市場環境や競争環境の著しい変化などにより、当初想定していた成果やシナジーが得られない、買収した事業が計画通りの収益を確保することができない場合、のれんや固定資産の減損により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、他社との協業に際し、市場動向やお客様のニーズ、相手先企業の経営状況、市場での優位性などを十分に考慮し、判断を行っております。
(2)業務リスク
a.製品安全
当社グループは、業界の品質要求が多様化・高度化される中、厳しい品質管理基準に従い中間材料を中心とする製品を製造し、お客様に納入しています。
製品やサービスに欠陥が生じた場合、その欠陥に対する賠償責任を負うことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、それぞれの業界に準じた厳しい国際的な品質マネジメントシステムを認証し継続的な改善に努めています。
加えて、規制の強化が予想されるPFASの代替製品検討やビスフェノール類・塩化ビニルなどの管理体制の強化に取り組んでいます。
b.環境(CO2排出)
当社グループは、気候変動や自然災害が深刻化する中、モノづくりにおけるCO2排出の削減を行っています。
再生可能エネルギーの価格、炭素税の賦課、排出権取引価格などの高騰が生じた場合、製造コストの上昇が避けられず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、厳格化される関連法令・規則を遵守するとともに、CO2排出に対する社会的要求を満たすべく製造工程における省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を図っているほか、製品やソリューションを通じてお客様のCO2排出量削減にも取り組んでいます。
b.環境(省資源・資源循環)
当社グループは、資源の枯渇やプラスチックによる海洋汚染など、地球環境が危機的状況にある中、主に製造工程で使用しているプラスチックや有機溶剤などの廃棄物の削減を行っています。
プラスチックや有機溶剤などの廃棄物の引き取り拒否や引き取り価格が高騰した場合、廃棄物の処理が困難となり生産活動が停滞し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製品や廃棄物などが不適切に処理された場合、社会的信用の失墜やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、関連法令・規則を遵守するとともに、資源の有効活用やサプライチェーン全体のリサイクル促進を図り、資源循環社会の構築に取り組んでいます。
b.環境(汚染・有害物質の排出)
当社グループは、生態系の破壊、自然資源の減少などに繋がる生物多様性の損失を抑止するため、製造工程で使用している汚染・有害物質の排出削減を行っています。
設備故障などの原因により、揮発性有機化合物が大気や河川などに排出された場合、地域環境汚染が生じ、社会的信用の失墜やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、関連法令・規則を遵守するとともに、独自により厳しい管理基準を設け汚染・有害物質を管理するとともに、使用量の削減にも取り組んでいます。
c.情報セキュリティ
当社グループにとって、情報システムは事業活動のあらゆる側面において非常に重要な役割を担っております。一方、サイバーテロが巧妙化するなど人為的リスクが高まっています。
当社グループで情報システムに障害が発生した場合や、過失、故意を問わず、技術情報、お客様情報、取引情報、個人情報などの情報流出や不正使用が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、サイバーテロに対する、多層防御、早期検知・対応体制「CSIRT」整備などのハード・ソフト両面で様々な情報セキュリティ対策を実施しています。また、情報流出や不正使用などの過失防止のため、役員・従業員への情報セキュリティの重要性を説く教育や標的型メール訓練を、頻度を上げて実施し意識向上を図っています。
d.法規制の変化とコンプライアンス
当社グループでは、法規制や社内ルールを遵守することのみならず、社会規範や倫理への適合も含めて、コンプライアンスを推進しています。一方、当社グループは28の国と地域で事業展開を行っており、それぞれの法規制、社会規範や倫理観などに対応するため、コンプライアンスの対象が多面化しています。
企業によるコンプライアンス違反は、企業価値に影響を与えるだけではなく、お客様の調達や消費、サプライヤーの生産、地域住民の日常生活などステークホルダーへも影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスの基礎と位置付けている、「Nittoグループビジネス行動ガイドライン」を17言語に翻訳し、グループ全役員・従業員へ周知しています。その上で、内部通報制度の整備も進めており、当社グループ内だけでなく外部機関に通報できる仕組みを構築し、運用しています。2022年度は、公益通報者保護法の改正に沿い、国内における対応従事者の体制を整備しました。
e.海外グループ会社のガバナンス
当社グループは、世界28の国と地域で当社、子会社98社及び関連会社4社により、グローバルに幅広い分野で事業展開を行っています。
これら関係会社の役員・従業員による不正行為や、経営方針に従わない取引や判断により、ガバナンスや内部統制が機能せず、当社グループに損失を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは5つの事業執行部門(当連結会計年度より、基盤機能材料、情報機能材料、ICT、ヒューマンライフソリューション、アドバンストフィルムソリューション)などによる事業軸、海外を7つの地域に分けたエリア軸、人事、経理などの専門機能部署については機能軸という、3つの軸が互いに補完、協力して経営を行う、3軸経営を推進しています。事業軸はガバナンスと内部統制体制を構築し、エリア軸と機能軸は、その状況を適切に監査・モニタリングしています。業務上のリスクや課題を発見・指摘し、これらの改善を実施することで緊密なガバナンス、内部統制の強化を図っています。
f.自然災害・気候変動
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、日本国内及び海外に複数の生産拠点及び販売拠点を有しています。
国内外で発生する、気候変動により激甚化する台風や、地震などの自然災害により、当社グループの拠点や施設が被災する可能性があります。これに加えて、電力・ガスなどのインフラに被害が発生し、その結果広範囲にわたるサプライチェーンの分断が起これば、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、お客様、サプライヤーに大きな被害が生じ、受注や供給が長期間にわたって滞り、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「安全をすべてに優先する」方針のもと、事故や災害に備えた、各拠点での避難訓練や災害対策本部設立時の意思決定訓練を実施しているほか、事業機能停止を防止する対策として、BCP(事業継続計画)を策定し、このBCPの確実な運用、定期的な見直しを実施しています。
g.感染症
新型コロナウイルスによる感染症は、当社グループが事業を展開する国にも大きな影響を与えています。
2022年度、当社グループ内でも罹患者数の急増、政府指示による操業停止が発生しましたが、防疫施策や代替生産など事業継続計画に基づいた対応を行い、生産への影響を最小限に抑制しました。
当社グループでは、新型コロナウイルスに対する各国規制緩和にともない、一部の防疫施策を緩和いたしますが、感染力の高い変異株や新興感染症への対策として、引き続き感染拡大防止手順や事業継続計画を定めて、当社グループにおける感染拡大の防止に努めています。
h.人財確保
当社グループの事業活動を推進するためには、研究開発・製造・販売・管理など様々な分野において人財の確保と育成が必要です。従業員一人ひとりが働きがいをもってチャレンジする組織風土の醸成が重要であり、併せて急激な事業環境の変化に対応するためにDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進が必要です。加えて、グローバルでの人財獲得・競争が激化する中、人事制度、処遇水準の見直しが継続的な課題となっています。
人財の継続的な獲得と流出の防止ができない場合、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、従業員のエンゲージメント向上に取り組むとともに、インターンシップの取組みの強化、海外へのトレーニー派遣制度(公募型研修)、ジョブポスティング(公募型人事異動)などを実施し、様々な分野でチャレンジできる環境整備と、多様な人財の採用と育成に取り組んでいます。また、競争力のある報酬水準となるように、賃金の引き上げ等を実施しています。
i.労働安全衛生
当社グループは、「あらゆる事故災害ゼロ」を目指し、安全をすべてに優先したモノづくりを行っています。
死亡・後遺症が残る又はそれらに準じる怪我や疾病が発生した場合や、生産に影響が出る火災が発生した場合には、社会的な信用が低下するとともに、操業停止、お客様からの取引が停止することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、怪我や疾病につながるリスクや火災につながるリスクの低減に向け、予見可能なリスクを漏れなく抽出し、リスクの低減策に努めるとともに、ルール順守など維持管理策にも取り組んでいます。
j.人権
昨今、企業の人権に対する取組みは、ステークホルダーにおいて関心が高まっています。2011年に国連人権理事会で承認された、「ビジネスと人権に関する指導原則」では、人権尊重に関するコミットメント、救済・是正への取組みは、企業の責任として定められています。また、企業の責任範疇は自社内だけではなく自社のサプライチェーン全体に及んでいます。
企業が児童労働、強制労働、外国人労働者への差別など、種々の人権に係る課題をマネジメントする仕組みを構築していない場合、お客様やサプライヤーは取引の継続を控え、株式市場では投資を見送る傾向が高まっています。
当社グループでは、Nittoグループ人権基本方針を日本語、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ロシア語、トルコ語で公開し、人権尊重に関する方針をステークホルダーへ伝えております。また、人権啓発推進委員会を人権・労働・倫理協議会に発展させて推進活動とリスク低減活動に取り組んでいます。
一方、サプライヤーには、労働・人権の尊重など順守すべきルールを示した「CSR調達ガイドライン」に基づいて、年1回「CSR調達アンケート」を実施しています。アンケート実施後にはリスク評価を行い、ハイリスクと判断したサプライヤーに対しては、改善提案を実施し、その後に改善状況を確認しています。人権リスクの高い原材料を扱うサプライヤーに対しては、原産地調査と人権ポリシーに関するアンケートへの回答を依頼し、原材料調達における人権配慮への理解・協力を仰いでいます。
k.確定給付負債
当社グループの確定給付負債は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回りなどに基づき計算されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金や年金制度の変更などにより、認識及び計上される債務に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、市場変動の影響を受ける年金資産の運用は、年金ALM(アセットライアビリティマネジメント)分析なども踏まえた長期的な政策的資産構成割合を定め資産の分散投資を行う事に加え、下方リスクも考慮した安定的なリターン獲得を目指しています。その執行には、財務、人事担当責任者及び資産運用経験者を基金理事として任用し、外部コンサルタントも起用することで、適切な運用及び管理体制を構築しています。また、一部で確定拠出年金を導入することで追加拠出リスクを低減するなど、退職金や年金制度変更の検討においては、退職給付債務への影響を十分に考慮して行っています。
経営成績等の状況の概要
(1)財政状態
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べ59,178百万円増加し、1,153,647百万円となりました。流動資産は45,548百万円減少の677,189百万円、非流動資産は104,726百万円増加の476,457百万円となりました。
流動資産の減少は、現金及び現金同等物が32,079百万円減少したこと、売上債権及びその他の債権が27,695百万円減少したこと、棚卸資産が12,783百万円増加したこと、その他の金融資産が2,798百万円減少したこと、売却目的で保有する資産が5,232百万円増加したこと等によるものであります。
非流動資産の増加は、有形固定資産が46,153百万円増加したこと、のれんが54,012百万円増加したこと、無形資産が7,762百万円増加したこと、持分法で会計処理されている投資が1,592百万円増加したこと、金融資産が3,271百万円減少したこと等によるものであります。
当期末の負債合計は、前期末に比べ21,910百万円減少し、250,452百万円となりました。流動負債は20,241百万円減少の188,248百万円、非流動負債は1,669百万円減少の62,204百万円となりました。
流動負債の減少は、仕入債務及びその他の債務が10,964百万円減少したこと、その他の金融負債が2,183百万円増加したこと、その他の流動負債が13,277百万円減少したこと、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が1,436百万円増加したこと等によるものであります。
非流動負債の減少は、その他の金融負債が1,212百万円減少したこと、確定給付負債が4,109百万円減少したこと、繰延税金負債が3,847百万円増加したこと等によるものであります。
当期末の資本合計は、前期末に比べ81,088百万円増加し、903,194百万円となりました。
これは、利益剰余金が、親会社の所有者に帰属する当期利益、配当金等により前期末に比べ80,359百万円増加したこと、その他の資本の構成要素が18,464百万円増加したこと等によるものであります。
(2)経営成績
当連結会計年度における経済環境は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を契機としてエネルギーや一次産品価格の高騰が進みました。また、米国を中心にインフレ抑制に向けた金融引締めにより、一部の銀行が経営破綻に陥り、金融不安が広がりました。中国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して都市ロックダウンなどの厳しい防疫措置が取られるなど、世界経済は主要な地域で成長率が大きく低下しました。なお、為替相場においては、日米金利差の拡大により、急激な円安が進行しました。
このような中、当社グループが注力するハイエンドスマートフォン向け製品や近年、進化の著しい車載ディスプレイ向け製品は、需要が増加しました。また、自動車材料は、自動車生産台数の回復とともに需要が緩やかに増加しました。一方、欧米諸国においてCOVID-19に対する行動制限の撤廃が進んだことにより、巣ごもり需要が一巡し、これまで好調であったハイエンドノートパソコンやデータセンター向け製品の需要が減少しました。また、COVID-19感染者数の落ち着きによりワクチン向け核酸アジュバントの需要が減少しました。
なお、当連結会計年度の対米ドル為替レートは、前連結会計年度と比較し20.5%円安の1ドル134.7円となり、円安による影響は、営業利益で695億円の増益要因となりました。
以上の結果、売上収益は前連結会計年度と比較し、8.9%増(以下の比較はこれに同じ)の929,036百万円となりました。また、営業利益は11.3%増の147,173百万円、税引前当期利益は10.9%増の146,840百万円、当期利益は12.4%増の109,264百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は12.4%増の109,173百万円となりました。
セグメント別の経営成績
① インダストリアルテープ
基盤機能材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。自動車材料は、半導体不足の影響が緩和し、自動車生産の回復により需要が増加しました。一方、電子機器に使用される半導体やセラミックコンデンサー向けの工程用材料は、市況の悪化により需要が減少しました。また、原油価格上昇による原材料や輸送コスト高騰に対して、価格転嫁や生産合理化などを進め、その影響を軽減しました。なお、自動車材料において、NVH(Noise, Vibration, Harshness)事業の一部を株式会社パーカーコーポレーションへ譲渡することを同社と合意し、関連する資産の一部について減損損失を計上しました。
以上の結果、売上収益は339,433百万円(6.3%増)、営業利益は27,553百万円(27.1%減)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。次なる成長点として注力する車載向け光学フィルムの需要が増加する一方、TVやハイエンドノートパソコン向け光学フィルムは、市況の悪化により需要が減少しました。また、バーチャルリアルティ―(VR)向け光学フィルムは、今後の事業拡大に向けて生産能力を増強しました。なお、2022年10月4日に発生した連結子会社の韓国オプティカルハイテック社での火災に関する損失を計上しました。
プリント回路は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、搭載機種の増加により業績を牽引した一方、CIS(Circuit Integrated Suspension)はデータセンター向けHDD(ハードディスクドライブ)市場の調整により需要が減少しました。
以上の結果、売上収益は482,432百万円(5.0%増)、営業利益は129,867百万円(34.4%増)となりました。
③ ヒューマンライフ
ライフサイエンスは、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。核酸医薬市場の拡大を背景に、核酸受託製造とその製造に使用される合成材料(NittoPhaseTM)の需要が増加しました。一方、COVID-19ワクチン向け核酸アジュバントは、世界的なワクチン需要の減速を受けて、第2四半期連結会計期間から新規受注がストップし、需要が減少しました。なお、核酸医薬の創薬については、肺線維症及び難治性の癌治療薬の治験に、引き続き取り組んでおります。医療関連材料は、経皮吸収薬や医療用テープなどがCOVID-19による需要の低迷から回復しました。
メンブレン(高分子分離膜)は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。特に、産業用途において需要が増加しました。
パーソナルケア材料は、2022年7月より買収したMondi社のパーソナルケア事業と既存の衛生材料事業を統合した新組織(アドバンストフィルムソリューション事業部)にて事業を開始しました。主力製品である衛生材料等機能性フィルムは、ベビーケア、大人用おむつ、フェミニンケアなどの用途へ展開しております。
以上の結果、売上収益は133,377百万円(44.7%増)、営業利益は840百万円(88.4%減)となりました。
④ その他
当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。主なテーマであるプラスチック光ファイバー・ケーブルは、第4四半期連結会計期間にVRヘッドセット用途向けに製品の出荷を開始しました。
以上の結果、売上収益は4百万円(143.4%増)、営業損失は5,655百万円(前年同期は営業損失5,932百万円)となりました。
当連結会計年度において、「ヒューマンライフ」を新設したため、報告セグメントの分類に一部変更があります。変更点は以下のとおりです。
1.「ヒューマンライフ」には、従来の「ライフサイエンス」と「その他」にあった「メンブレン」が含まれます。また、当連結会計年度に買収が完了したMondi社のパーソナルケア事業を「ヒューマンライフ」の「パーソナルケア材料」として新設し、「インダストリアルテープ」から一部の関連事業を移管しました。
2.「その他」には、「新規事業」が含まれます。
当該変更を反映した組替後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は329,966百万円となり、前連結会計年度末より32,079百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は181,702百万円(前連結会計年度は144,489百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前当期利益146,840百万円、減価償却費及び償却費57,362百万円、減損損失4,036百万円、確定給付負債の増減額1,270百万円、売上債権及びその他の債権の増減額44,492百万円、利息及び配当金の受入額1,283百万円による増加、棚卸資産の増減額2,230百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額15,779百万円、前受金の増減額17,420百万円、法人税等の支払額又は還付額38,748百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は159,906百万円(前連結会計年度は57,594百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出65,921百万円、関係会社株式の取得による支出1,703百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出95,263百万円による減少、投資有価証券の売却による収入2,675百万円による増加の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は57,627百万円(前連結会計年度は36,639百万円の減少)となりました。
これは主に、リース負債の返済による支出5,567百万円、自己株式の増減額18,008百万円、配当金の支払額34,046百万円による減少の結果であります。
なお当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
|
親会社所有者帰属持分比率(%) |
74.8 |
74.1 |
75.0 |
78.2 |
|
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) |
80.6 |
144.9 |
119.3 |
108.1 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.2 |
0.2 |
0.2 |
0.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
190.1 |
188.3 |
269.8 |
337.4 |
(注)1 各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
親会社所有者帰属持分比率(%) 親会社所有者帰属持分÷総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) 株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) 有利子負債÷キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) キャッシュ・フロー÷利払い
2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
インダストリアルテープ |
207,176 |
98.7 |
|
オプトロニクス |
508,872 |
120.3 |
|
ヒューマンライフ |
119,482 |
140.2 |
|
その他 |
7 |
- |
|
合計 |
835,540 |
116.4 |
(注)1 金額は、売価換算値によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当連結会計年度において、「ヒューマンライフ」を新設したため、報告セグメントの分類に一部変更があります。前年同期比は、当該変更を反映した前連結会計年度の数値に基づき算定しております。
(2)受注実績
当社グループは、おおむね需要動向から見た見込み生産を行い、それ以外の製品については一部受注生産を行っておりますが、受注生産高の売上高に占める割合の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
インダストリアルテープ |
334,456 |
105.9 |
|
オプトロニクス |
469,330 |
103.8 |
|
ヒューマンライフ |
123,974 |
147.6 |
|
その他 |
1,275 |
105.7 |
|
合計 |
929,036 |
108.9 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対応する割合は、販売実績が総販売実績の100分の10以上の相手が無いため記載を省略しております。
3 当連結会計年度において、「ヒューマンライフ」を新設したため、報告セグメントの分類に一部変更があります。前年同期比は、当該変更を反映した前連結会計年度の数値に基づき算定しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度(以下「当期」という。)は、売上収益は前連結会計年度(以下「前期」という。)と比べて8.9%増の929,036百万円となりました。これは基盤機能材料、プリント回路等の売上収益が増加したこと等によるものです。
売上原価は、前期比7.4%増の591,592百万円となりました。売上収益に対する売上原価の比率は、前期比0.9ポイント減の63.7%となりました。
販売費及び一般管理費は、前期比12.2%増の145,436百万円となりました。売上収益に対する販売費及び一般管理費の比率は、前期比0.5ポイント増の15.7%となりました。研究開発費は、前期比7.8%増の40,175百万円となりました。売上収益に対する研究開発費の比率は、前期より0.1ポイント減少し4.3%となりました。
以上の結果、営業利益は前期比11.3%増の147,173百万円となりました。
税引前当期利益は前期比10.9%増の146,840百万円となりました。
法人所得税費用は、前期の35,143百万円から、当期は37,576百万円となり、税効果会計適用後の法人税等の負担率は25.6%(前期は26.5%)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比12.4%増の109,173百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期比12.6%増の738円77銭となりました。
なお、経営成績の概況及びセグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」に記載しております。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、変化の激しい事業環境下においても継続的に企業価値を向上させていくために、資金の使途を①設備投資、②配当、③M&A、④自社株買いと順位付けし、経営の目安としています。
当社グループの資金の源泉は、主として自己資金であり、トレジャリーマネジメントシステムを活用し、グループ内資金をタイムリーに漏れなく把握するとともに、各エリアに設置した資金統括拠点へ配当やキャッシュ・プーリングを活用して集約し、資金効率の向上に努めています。
なお、当連結会計年度末の連結借入金総額は前連結会計年度末に比べ31百万円増加し、272百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は329,966百万円となっております。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針の要約 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
当社は、2022年12月26日開催の取締役会において、2023年4月1日を効力発生日として、当社の完全子会社である三重日東電工株式会社(以下「三重日東」といいます。)を吸収合併することを決議しました。
(1)合併の目的
三重日東は当社の完全子会社であり、当社製品の部材製造を事業としております。このたび、当社は、経営資源の集約による経営効率化を目的として、三重日東を当社へ吸収合併することといたしました。
(2)合併の要旨
① 合併の日程
取締役会決議日 2022年12月26日
合併契約締結日 2023年1月10日
合併の効力発生日 2023年4月1日
(注)本合併は、当社においては会社法第796条第2項に基づく簡易合併であり、また三重日東においては会社法第784条第1項に基づく略式合併であるため、両社において合併契約承認のための株主総会は開催いたしません。
② 合併の方式
当社を存続会社とする吸収合併方式で、三重日東は解散いたします。
③ 合併に係る割当の内容
当社は三重日東の全株式を保有しているため、本合併に際して一切の対価の交付はありません。
④ 引継ぎ資産・負債の状況(2023年3月31日現在)
資産合計 1,342百万円
負債合計 448百万円
⑤ 吸収合併存続会社となる会社の概要(2023年3月31日現在)
名称 日東電工株式会社
資本金 26,783百万円
事業内容 工業用材料、電子材料、機能材料の製造・販売
当社グループにおける研究開発は、「イノベーションによる社会課題の解決」を基本方針に掲げ、地球の環境保全・改善や、人々の生活の質の向上のための新製品や新サービス、新規事業を創造することを目指しています。「粘接着」「薄膜形成」「光学設計」「回路形成」「分離」「多孔」「ドラッグデリバリーシステム」「核酸合成」の8つの基幹技術をベースに様々な技術を組み合わせて新たな価値を提供しています。
全社技術部門は、研究開発本部、新規事業本部、核酸医薬開発本部の3つの部署と技術知財戦略本部が密接に連携し、将来の事業とそれを支える技術を育成しています。研究開発拠点として、2016年3月に大阪府茨木市に開設した“inovas”(イノヴァス)を中核に、海外にNitto Denko Technical Corporation(U.S.A.-Oceanside)、Nitto BioPharma, Inc.(U.S.A.-San Diego)、Nitto Bend Technologies, Inc.(U.S.A.-Farmington)、Nitto Denko Asia Technical Centre Pte. Ltd.(Singapore)を配置しています。
当社グループではオープンイノベーションに積極的に取組み、様々な新技術や新製品の開発を行っています。当連結会計年度、Bend Labs, Inc.をグループに統合し、Nitto Bend Technologies, Inc.(U.S.A.-Farmington)として活動を開始いたしました。今後、同社が培ってきたセンサデバイス技術と当社グループの強みを融合した新製品を開発するとともに、センサで取得したデータを活用した新規事業の創出を目指します。
また、当社グループでは特許戦略を重視して研究開発を進めており、研究開発で確立した技術を戦略的な特許出願で支えながら着実に事業につなげています。この活動の結果として、当連結会計年度「クラリベイト Top 100 グローバル・イノベーター2023」に選出されました。これは、クラリベイト・アナリティクス社が「数量」「影響力」「成功率」「グローバル性」「希少性」の5つの基準から優れた研究開発活動、知的財産管理を行っている企業や研究機関100社を選出したもので、2012年の開始からNittoは10度目の受賞となります。
当連結会計年度の研究開発部門の人員は、当社単体で1,063名、グループ全体で1,720名です。また、当社グループの研究開発費の総額は
セグメント別の研究開発活動成果は下記のとおりです。
(1)インダストリアルテープ
当社グループの持続的成長と持続可能な環境・社会の実現にCO2排出削減は不可欠です。そのため、有機溶剤を使用しない新製品の開発を拡大して生産活動におけるCO2排出削減に取り組んでいます。さらにサプライチェーン全体のCO2削減にもつながるようバイオマス粘着剤や資源循環によるリサイクル材料の活用も始めています。
新製品開発はパワー&モビリティ、デジタルインターフェース、ヒューマンライフの3つを重点分野として、お客様のご要望に応える新製品開発、そして製品ラインアップの拡充を進めています。
パワー&モビリティ分野では、加速する電動車市場の拡大と技術の変化への対応を進めています。リチウムイオンバッテリーの安全性・性能向上にかかわる新製品開発に加え、燃料電池やモーター/オルタネータ用の絶縁材料、電装部品用の内圧調整材料、車載デバイスの熱マネジメント材料などのラインナップ拡充を進めています。
デジタルインターフェース分野では半導体や電子部品などの製造工程、さらに次世代ディスプレイの製造工程などでご使用いただくプロセステープの開発を進めています。高品質を追求し続けるお客様の製造工程において生産性向上に貢献してまいります。
また、ハイエンドスマートフォン用の接合材料では、接着性や衝撃吸収性だけでなく再剥離性を付与することも進めています。デジタルインターフェース製品の修理やリサイクル促進によるサステナビリティ向上にも貢献してまいります。
ヒューマンライフ分野では特殊エンジニアプラスチックを精密加工した医療用包装フィルムや多孔質材料により、人の暮らしをよりよくするためのソリューションを開発してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(2)オプトロニクス
情報機能材料関連では、スマートフォンをはじめ、各種ディスプレイが液晶ディスプレイ(LCD)から有機ELディスプレイ(OLED)への切り替えが加速する中、偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムに加えて、OLEDパネル生産時に使用する工程材、機能性フィルム等の開発にも注力しています。偏光フィルムだけではなく、ディスプレイとその周辺部材含めたトータルソリューションをお客様へご提案し、様々な価値提供を行っています。
自動車業界では自動運転技術の発展により車内のエンタメ・快適性が重視され、車内ディスプレイ数の増加及び大型化が進んでいます。それに伴い、使用される偏光フィルムも大型化し、従来品より耐熱性、耐紫外線(UV)性、低収縮性が要望されており、これらの要望に応える製品を開発しています。
新規デバイスとして注目を集めているVRデバイス向けの製品開発も行っています。VRゴーグルに映し出される仮想空間のリアリティ向上が求められており、超高品質光学フィルムの製品開発を行っています。
ディスプレイ以外では、ITOフィルム製膜に用いているスパッタ技術を活用し、自動車の調光ルーフや様々なセンサ向けの電極フィルムの製品開発も行っています。
上述のような今後の開発品においては、環境への影響を配慮し、無溶剤化製品の開発や、リサイクル材料、バイオベースの材料を取り入れた新製品開発を加速させています。
回路材料関連では、データセンターで使用されるハードディスク(HDD)向け回路基板の需要が増加しており、今後もHDDの記録密度向上に貢献するため、微細配線技術や新規メッキ技術の開発を進めています。また、HDD向け回路基板を応用したスマートフォン向け「高精度基板」を展開しており、プリント回路基板における生産能力拡大を進めています。
新しい市場への挑戦では、当社グループ独自の多孔化技術を用いた低誘電回路基板材料を開発中で、お客様へ提案を行っています。
環境配慮に対する取組みでは、回路基板製造時の環境負荷低減を可能にする新たな廃液処理技術を開発し、自社製品への適用を推進してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(3)ヒューマンライフ
ライフサイエンス関連では、核酸プロセス材料の需要拡大に備えた製造能力増強に必要なプロセス開発とともに、使用する溶剤を削減する取組みを行っています。溶剤削減の取組みは、核酸プロセス材料だけではなく核酸医薬品原薬の製造プロセスにおける環境負荷物質を減らす、代える、無くす中長期の技術開発テーマにも着手しました。
医療材事業では製品やパッケージに至る環境負荷物質の低減を図るとともに、医療領域の変化点を見据えた予防・早期治療に繋がる技術開発の取組みを推進しています。
分離膜・メンブレン関連では、滋賀事業所において、2018年より5年間の計画で、逆浸透膜製造工程で生じる排水を再利用する取組みを始め、2022年度末に目標値である再利用率90%を達成いたしました。この取組みの過程で開発された製品の一部はPROシリーズとして上市され、中国、インドなどの排水規制の厳しい地域で工場からの排水・廃液のゼロ化(ZLD;Zero Liquid Discharge)に貢献しています。
今後も社会的ニーズにあわせた製品開発を進めるとともに環境に優しい分離技術で水資源の循環、お客様の生産工程での省エネ、CO2排出量削減に貢献していきます。
パーソナルケア材料関連では、フィルム技術と不織布技術をコア技術とし、おむつ部材などの衛生材料製品の開発を行っています。地球環境に貢献できる完全無溶剤の接着・ラミネーションや加工技術を用い、消費者様がより快適に、より安全にお使いいただける衛生材料のイノベーションに寄与できるよう、市場の最先端で挑戦してまいります。
また、機能性フィルム・不織布の製造技術を社内外へ用途展開することで、衛生材料以外の事業展開を積極的に促進いたします。製品設計活動を社内で密接かつ迅速におこなえることから、新事業の開拓並びに事業成長のシナジー活動に注力してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(4)その他
新規事業関連では、情報通信領域において高速大容量通信を変革するプラスチック光ファイバーケーブルを開発し、当連結会計年度、量産体制を整えVRゴーグル用途向けに出荷を開始しました。
また、デジタルヘルス領域において、使い切り仕様のホルター心電計を開発し、当連結会計年度、アステラス製薬株式会社、株式会社エムハートと共同でパイロット販売を開始しました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は4,842百万円です。