第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、技術立脚の提案型企業として、時代が要請する新たな価値と優れた品質の提供により、顧客や社会から高い信頼を得られるリーディングカンパニーを目指すとともに、社員の個性と能力を十分発揮できる環境を整え、絶えず前進する積極的な姿勢とスピーディな行動で企業価値を高め、株主の期待に応えることを基本としています。

(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

 ①『2030 長期経営計画 日特BX』 及び新中期経営計画(2021年度~2024年度)

『2030 長期経営計画 日特BX』で目指す姿を見据え、2021年度から2024年度までの4年間を「変えるために、壊す。」「変わるために、創る。」として、組織を変革する期間に位置付けた新中期経営計画を策定いたしました。本中期経営計画においては、次の基本方針及び重点課題を掲げ、各種取組みを実行してまいります。

 

基本方針:「既存事業」と「新規事業」が独立しながら、両輪で走る

 

(重点課題)

■成長事業及び新規事業への投資・人財ポートフォリオ転換の促進

■ROIC経営による稼ぐ力のさらなる強化

 

・重点課題に基づく具体的な取組みの一つとして、2021年4月には社内カンパニー制への移行と一部事業部門の分社化を実施いたしました。事業部門、事業サポート部門、コーポレート部門の各組織において権限と責任を明確にし、独立自営の体制のもと、機動的な意思決定の実現と収益性の可視化によるさらなる成長を推進してまいります。

・ROICを用いた事業別の目標管理・事業ポートフォリオマネジメントの仕組みの構築・運用及び不採算事業の撤退基準を明確にすることで、経営資源の最適配分を実現し、投資対効果の最大化を図ってまいります。

・事業ポートフォリオの転換に不可欠な人財ポートフォリオの転換を実現するため、成長事業・新規事業への人財の積極的な転換に取り組むとともに、「自律創造人財」の育成・創出を推進します。

 

(事業別の取組み)

事業ポートフォリオ転換の達成に向けて、自動車関連事業では、キャッシュ創出を最大化し、成長事業・新規事業へ積極的な経営資源の再配分を図ってまいります。

 

(ⅰ)自動車関連事業

自動車関連事業においては、超効率化によりキャッシュ創出の最大化を図ります。具体的には、高付加価値製品におけるシェアの向上、生産性の向上による投資の抑制、在庫圧縮による資本効率の向上により、利益及びフリーキャッシュフローの最大化に取り組みます。

 

(ⅱ)成長事業

成長事業においては、各事業において市場成長率を超える事業成長を目指します。半導体製造装置用部品事業では、生産性の向上や世界的な半導体需要に対する旺盛な設備投資により当社販売も堅調に推移していますが、今後も独自技術で競合との差別化を図り、顧客からの最先端のニーズに応えることで、同分野でのトップサプライヤーを目指します。また、呼吸器関連事業では、グローバルでの患者様のQOL改善に貢献するため、製品群の拡充と販売地域・販売チャネルの拡大に取り組みます。

 

 

(ⅲ)新規事業

新規事業においては、新たな事業の柱となる新規事業の実現、及び、事業創出サイクルの短縮化を目指します。新規事業の創出については、「Smart Health」「Decentralized Utility」「Smart Mobility」を注力領域として、コーポレートベンチャーキャピタルを通じたベンチャー企業との連携やM&Aの活用により、持続可能な成長に向けた新市場の獲得を目指します。燃料電池事業では、2021年より販売を開始しています。引き続き、競争力の向上と事業規模の拡大に取り組み、生産コストの低減を進めるとともに、燃料電池の技術を応用した水素製造技術の確立により、カーボンニュートラル社会に貢献することを目指します。

 

②持続的成長に向けた取組み

企業の持続的成長を図っていく上では、重要な社会的課題に正面から向き合い、その解決に挑んでいくという基本姿勢が求められます。当社グループは、グローバル企業として持続可能な社会作りに寄与するため、ESG各分野の社会的課題のうち、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社にとっての重要性」の2軸からサステナビリティにおける重要課題を特定しました。「相互信頼を深め、未来を見つめた新たな価値を提案し、世界の人々に貢献します」という企業理念のもと、今後も「社会のよき一員」として企業活動を推進し、社会全体に貢献できるよう努めてまいります。

 

③コンプライアンスの徹底

当社グループはコンプライアンスを重要な経営課題と位置付けており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、コンプライアンスの徹底及びリスクマネジメントに対する積極的な取り組みを行うことが必要であると考えております。

過去に生じた競争法違反の再発防止策の徹底、独占禁止法違反、環境その他に関する諸外国を含めた法令違反の可能性に備え、全社に対するコンプライアンス教育、啓発活動を継続的に実施しております。また、コンプライアンス違反の通報や相談の窓口として社内外に内部通報窓口を設置し、早期対応、未然防止に向けた活動を推進してまいります。

 

④アフターコロナの働き方改革

当社では新型コロナウイルス感染症拡大の初期段階から対策本部を立ち上げ、さまざまな感染防止策を実施してまいりました。職場における感染リスクを低減するため、在宅勤務や時差勤務の積極的な推奨、WEB会議の活用、分散出勤を目的としたサテライトオフィス設置など、コロナ禍での従業員の雇用・健康・安全確保を最優先とする運営体制を確立いたしました。特に在宅勤務に関しては働き方改革の側面からも従業員が利用しやすい環境を整えるために、IT 環境を刷新いたしました。2021年8月に小牧工場内に竣工した新オフィス棟では、非在席勤務率30%以上を主な取組みのひとつとして掲げ、定着させることができています。

2022年度には新型コロナウイルス感染症の流行が収束に向かい、約3年間続いた新型コロナウイルスへの対応から通常の社会活動に向けて大きく変わりはじめました。2023年度には5類移行に伴い、法令に基づく対策や措置は終了となりました。しかしながら、コロナ禍で進んだ価値変容、行動変容は新型コロナウイルス感染症の収束後の社会にも定着するとの想定から、感染回避行動を織り込んだ生活様式は引き続き取り入れてまいります。また、それらの働き方の変化に伴い、リモート状況下での適切な労務管理、人財育成方法の整備、組織内外のコミュニケーション方法の改善など、各職場で働き方の変化にあわせたマネジメントの在り方を継続的に検討し、自律的に業務を遂行できる組織をつくるよう努めるとともに、あらゆる事業環境下で、企業価値、株主価値を最大化していけるよう、企業体質を強化してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社の企業理念、CSR・サステナビリティ憲章には、世界の人々に「新たな価値を提案」、「貢献」といった言葉があり、事業を通して社会的課題の解決に貢献したい、というサステナビリティにつながる思いが込められています。その思いに基づき、様々な社会的課題解決に資する製品、サービスを生み出していくことが、我々の使命であり、存在意義であると認識しています。

持続可能な社会の実現に向けて、推進体制を構築し、事業を通じた社会的課題の解決を基軸に、国連グローバル・コンパクト、ISO26000、SDGs、TCFDなどの国際的な規範や目標、ガイドラインに賛同する意思表明を行うと共に、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関する「優先的に取り組む課題」を特定するなど取り組みを進め、ステークホルダーの皆様に、わかりやすい形でその内容を発信していきます。変化が大きく先行き不透明な時代だからこそ、Niterraグループは経営の透明性を一段と高めることによりステークホルダーの皆様から信頼を得ながら、持続可能な社会の実現に寄与することで、企業価値の向上を目指します。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは社会と共に持続的に成長していくため、CSR・サステナビリティ委員会を設置し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の各分野で優先的に取り組む課題を特定した上で、その課題解決に向けた活動を推進しています。

CSR・サステナビリティ委員会は取締役会の諮問機関として、取締役会からの諮問に対して答申・提言する機能と、各専門委員会を監督する機能の2つを担います。取締役会からの諮問に対しては、ゲスト委員として外部有識者を招いて知見・視座を高め、長期を見据えたサステナビリティ経営の推進を図るべく多角的に議論を行い、答申・提言しています。また、各専門委員会がそれぞれ専門の業務執行が有効に機能していることをモニタリングし、CSR・サステナビリティ委員会はそれを監督しています。CO2削減の進捗やリスク評価などの各専門委員会の重要な情報はCSR・サステナビリティ委員会にも共有されています。

なお、各専門委員会での重要決定事項は、業務執行における重要事項を審議・決定・監督する経営会議を通じて取締役会に報告されています。

 

(2) リスク管理

事業の目標達成や存続を阻害する可能性を低減もしくは回避するため、グローバルな視点を持ちグループを取り巻く経営環境の変化やリスクの多様化に適応したリスクマネジメントを推進することで、企業価値の向上に努めます。リスクマネジメントの最高責任者を代表取締役社長、推進責任者をビジネスマネジメント室管掌役員として、リスクを未然に防ぐ「リスク管理」と、重大なリスクが発現したときに対処する「危機管理」を一元化させたリスクマネジメント体制の整備と運用を図っています。

また、リスクマネジメントの最高責任者が任命した執行役員を委員長とするリスクマネジメント委員会を専門委員会の一つとして設置し、CSR・サステナビリティ委員会の監督のもと、全社的なリスクマネジメントの実践、維持、改善を推進しています。

リスクマネジメント委員会では、リスクについて、全社的見地で事業存続や目標達成に大きな影響を及ぼすか否かを、影響度と発生可能性、及びその対策状況を分析して評価しています。重点的な対応が必要と評価されたリスクは「優先リスク」として主管部門を定め、リスクマネジメント委員会で低減活動の状況を確認し、気候変動や人権をはじめとするESGに関するリスクについても併せて評価しています。一方で、重要な機会については、CSR・サステナビリティ委員会で確認し、必要に応じて経営戦略や優先的に取り組む課題に反映しています。

なお、当社グループはグローバルかつ多くの分野で事業を展開しており、事業ごとにさまざまなリスクと機会があることから、事業ごとにリスクと機会を把握し、それぞれに対応しています。気候変動に関するリスクと機会についても、規制動向などを注視して事業への影響をそれぞれに評価し、対応しています。

 

(3) 戦略

(気候変動)

気候関連のリスクについては、主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関するリスク」と、世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動による物理的変化に関するリスク」について、TCFDの分類に沿ってサステナビリティ部門で起案し、サステナビリティ部門の管掌役員及び関係部門と協議・検討しました。

また、主要な事業拠点を対象に、現状の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査を行い、想定される被害の程度や頻度を勘案した結果、深刻な被害が発生する可能性は低いことを確認しました。

今後は、将来のリスクの変化も踏まえた評価を含め、物理リスクの把握を引き続き実施し、必要な対策を行います。

事業については、現在、売上収益の約8割を占める内燃機関に関連する事業が大きな変革を迫られていること、一方で、脱炭素社会の実現に向けて、水素関連をはじめとして新たなニーズや市場が期待されていることから、「2030 長期経営計画 日特BX」において、今後注力する事業分野の一つに「環境・エネルギー」を掲げ、2040年に向けて事業ポートフォリオ転換(売上収益構成比率:内燃機関事業40%、非内燃機関事業60%)を進めていきます。

自動車関連事業は2℃シナリオ下において、規制強化により将来的に売上減少が見込まれるため、事業ポートフォリオ転換が必要となります。その他の事業については、2℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し、柔軟かつ戦略的に事業を展開しており、中・長期の観点からも高いレジリエンス性を有していると見ています。

 

(人的資本)

当社は、「2030 長期経営計画 日特BX」において「セラミックスのその先へ、想像のその先へ」を2040年の目指す姿(ビジョン)として掲げています。その中核メッセージは、「志を持った多様な人財と共生する企業になる」であり、「セラミックスで何ができるか」にこだわらず、セラミックスの領域を越え、世の中や私たちの想像を超えた挑戦のため経営戦略として、多様かつ自律した従業員の獲得と育成を掲げています。

具体的には、2021年1月に多様な働き方を推進する「働き方改革宣言」を表明し、同年4月には社内カンパニー制の導入や分社化を実施しました。各事業の役割、職務に対する責任と権限を明確にするとともに、事業の特性を発揮しやすい環境を整備しています。一部カンパニーでは、従業員の個性や能力を把握し、興味ある分野の仕事とマッチングする仕組みを運用しています。そのほか、次世代経営人財育成プログラム「HAGIプログラム」や、女性の活躍を推進する「Raise UPプログラム」も継続して実施しており、若い世代の育成にも力を注いでいます。社外に目を向ければ、「Venture Lab」など、産官学、もしくは海外の先進技術やその集団との接続を意図するオープンイノベーションを積極的に推進しています。人財の多様性という面では、当社グループは数値目標として2030年までに管理職の女性・外国籍・キャリア採用比率を25%、取締役の女性・外国籍比率を30%以上と定めています。2022年度末時点で前者が20%、後者が45%という結果となっています。これら指標は、性別や国籍だけにこだわる意図で設定されているものではなく、彩り豊かな個性と特性を受け入れ、活かす組織につながると確信し、経営としてコミットし取り組んでいるものです。

さらに、2022年4月からは人事制度についても変更を加え、中期経営計画のテーマである「変えるために、壊す」「変わるために、創る」ことが実現できる「自律創造人財」の創出を加速させるため、当社グループ共通で目指す人財施策の方向性を明示した「グループ人財方針」へ落とし込むことで、これまでよりさらに、年齢などの背景にとらわれず、成果と挑戦に報いる公平性の高い人事制度を設計しています。

また、当社グループの持続的な発展のためには、従業員が心身共に健康に働くことが必要不可欠と考え、「健康経営」を推進しています。毎年実施している従業員意識調査に加え、2019年度から上長・部下の1on1ミーティングのトライアル運用をスタートし、各職場のライン長が確認可能なエンゲージメントの見える化ツールを導入しています。さらに、2020年に立ち上げた新会社 ignArtが開発した、気持ちを色で表し、職場などで共有するシステム「GOOD MORNING COLOR」も一部の部門で導入し、働く人のセルフケアと職場のコミュニケーション向上にも積極的に試行中です。

知と知を組み合わせ、これまでの延長線上にない未来を目指すため、当社グループでは今後もダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを経営戦略として取り組んでいきます。

 

(環境に配慮して設計した製品の提供)

将来世代に限りある地球の資源を残すためには、現世代が利用する製品・サービスの環境負荷をできるだけ小さくすることが不可欠です。当社グループは、製品・サービスの使用時や廃棄時なども含めたライフサイクル全体を俯瞰し、環境負荷がより小さい製品・サービスを提供することで、社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。特に、自動車部品において製品使用時のCO2排出量が大きいため、省燃費タイプのスパークプラグ、排ガス用酸素センサによるCO2削減量を増やすべく、これら製品の販売を促進していきます。

 

(社会的課題の解決に寄与する技術・製品・事業の開発)

当社グループは、世界が抱える課題に向き合い、その解決に資する新たな価値を提供することで、より良い社会の実現に寄与したいと考えています。気候変動や食料不足など、世界が直面する課題は様々ですが、当社グループの技術と蓄積した経験を活かして、世界の人々に新たな価値を提案していきます。CO2フリー水素利用を視野に入れた高効率分散型電源となる燃料電池の普及、有鉛圧電材から無鉛圧電材への代替促進、陸上養殖用の水質管理システムなどのセンシングIoTソリューション、セラミック技術を応用したCO2回収、水素製造からの合成燃料(メタン)製造システム、またこれらソリューションの提供等を推進していきます。

 

(4)指標・目標

(気候変動)

2050年カーボンニュートラル達成を目指すことを前提に2030年に向けてCO2排出量の削減目標を掲げ、まずは直接管理が可能なスコープ1、2の削減に取り組みます。目標はパリ協定で目指す「産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑える」ためのwell-below2℃水準(2℃を十分に下回る水準)と整合的なもの、「2030年度:2018年度比30%削減」とし、2050年のカーボンニュートラルも見据えて、全社で積極的な削減活動を展開します。また、サプライチェーンも含めたスコープ3の削減も推進していきます。スコープ3においては、まずはカテゴリ1「購入した製品・サービス」、カテゴリ4「輸送、配送(上流)」の一部、カテゴリ11「販売した製品の使用」の各カテゴリで2030年度 30%削減(2018年度比)を目指します。

 

(人的資本)

人財は企業活動の将来を左右する重要な位置づけであり、最重要の経営資源との認識のもと、自律創造人財が育ち、活躍する各種施策を立案し、展開しています。とりわけ、従業員一人ひとりの個性を活かし、能力を存分に発揮できることが企業の成長と個人の幸福に繋がると考え、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに取り組んでいます。

その中で、いくつかの指標を注視し、活動促進に向けて対策を講じています。採用及び登用においては、従業員における女性・外国籍・キャリア採用数と女性管理職者の比率(2022年度末4.2%)を、処遇については、男女間賃金格差(男性一般労働者の給与水準を100%としたときの女性一般労働者の給与水準2022年度68%)を、人事制度の運用に関しては、男性の育児休業取得率(2022年度52%)を定期的に把握しています。

具体的な検討として、男女間賃金を例にすると、制度設計上は格差がないとの分析を行っていますが、残業時間の違いや時間短縮勤務の適用など、男女間で異なる働き方や制度運用の実態を反映すると格差が顕在化します。制度運用の実態から、制度利用に対する阻害要素があると仮定し、誰もが利用しやすい環境を作り、多様性豊かな人財が活躍できる風土づくりをしていくように取り組んでいきます。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績は、今後起こり得る様々な要因に影響を受ける可能性があり、事業展開上のリスク要因と考えられる主な事項は以下のとおりですが、これらを認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 世界情勢・為替変動に関するリスク

当社グループは、売上の約80%が海外市場であり、海外生産の展開も合わせて国際的な事業運営を行っているため、経営成績は世界的な政治・経済情勢の変化の影響を大きく受けます。ロシアのウクライナ侵攻、米中貿易摩擦及びこれらに起因する物流の混乱や燃料価格高騰の影響、中東をはじめとした地政学リスク、世界各国の法令・規制の変更、労働環境の変化等、予想外の環境変化が当社グループ又はその顧客の需給に影響を与える可能性があります。

さらに、米ドル、ユーロ等主要通貨に対する日本円の変動は、当社グループの製品の価格面での競争力に影響を及ぼす他、連結海外子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。当社グループでは、短期的な為替変動に対して機動的な為替予約等によりリスクヘッジを図る一方、主要通貨の変動及び事業への影響については、執行役員・カンパニープレジデント会でモニタリングを行い、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています。

(2) 事業環境に関するリスク

自動車関連事業の新車組付用製品の販売量は、自動車メーカーの生産計画による影響を受けます。また、補修用スパークプラグの販売に関しては、潜在的成長性を有する発展途上の国々における需要が期待できる反面、先進国では長寿命プラグの採用を指向する傾向にあり、販売量の拡大が継続しない可能性があります。また、世界各国のエネルギー政策や環境配慮型規制の進展により、設計・試験・製造バランスの変化に対応するための費用が営業成績に影響を与える可能性があります。特に昨今では、各国の自動車メーカーにおいて電気自動車への移行が進み、次世代製品の開発が急速に求められています

セラミック事業における半導体部品や半導体製造装置用製品は、移動体通信機器や半導体製造装置をはじめとする情報通信産業・機械等設備産業の事業環境により影響を受けます。当社グループは、事業活動の進捗状況を執行役員・カンパニープレジデント会でモニタリングし、必要に応じて事業への影響を軽減する対策を検討しています

(3) 製品品質に関するリスク

当社グループは調達先を含めて各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造していますが、全ての製品について欠陥が無く、将来においてリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。特定の製品に直接的・間接的に起因する市場クレームが発生した場合、当該製品を回収し、顧客とともに当該製品に変更を施し、又は対策費用の支出による場合も含め、財政的な負担を負わなければならないだけでなく、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、品質問題の予防に向け、製品品質のみならず、すべての業務において品質の向上を意識した取り組みを進めてまいります。

(4) 技術開発に関するリスク

当社グループが提供する製品市場は、技術の急速な進展及びニーズの変化や新興勢力との差別化をその特徴とし、新技術及び新製品の開発においては、短期間での開発、安定した量産に対応する製法の構築のために、市場への導入に先立って設備投資を行うことが必要とされます。このような新製品は、開発資源の増大や競合他社による新技術の開発の結果、想定していた新規性やコスト面での優位性を有しなくなったり、既存の製品の市場性を低下させたりすることで、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、開発速度を上げるようオープンイノベーションを推進し、外部技術との連携を図る仕組みも整備しています。

 

(5) 知的財産に関するリスク

当社グループは新商品を保護するために知的財産権の取得等の方策を講じていますが、不正利用の防止・類似技術の取得の抑制に対して完全とは言い切れない可能性があり、特許侵害で係争となることやライセンス費用又は和解費用を負担することで、経営成績に影響を与える可能性があります。それらのリスクを抑えるため、開発段階から量産段階における第三者の知的財産権調査と、各種契約の知財条項の適否確認に注力します。合わせて、知的財産の社員教育も推進し、「ものづくり企業」として知的財産の管理を強化していきます。一方で、当社製品の模倣品が新興国を中心に出回っています。こうした模倣品は購入された方の安全を脅かす可能性もありますので、世界各国の税関・行政機関等とも連携して摘発・排除活動を実施しています。

(6) 原材料調達に関するリスク

当社グループは、適時・適量の原材料等の確保を前提とした生産体制をとっていますが、主要原材料・重要な工程委託の中には代替品あるいは代替ルートの確保が困難なものが存在しており、仕入先における事故、廃業、あるいは海外調達品の場合は当事国間の規制変更等により、安定調達に関わるリスクがあります。当社グループでは、複数購買を推進し、サプライヤーとの連携を密にしながら、リスク低減に努めています。

また、主要製品に使用する貴金属が世界的な需給逼迫により価格高騰が続く場合、経営成績に影響を与えることがあります。当社グループでは、原価低減や価格転嫁等の施策を行い、その影響を軽減する対策を都度検討しています

(7) 自然災害に関するリスク

当社グループは、日本における生産拠点及び研究開発拠点を東海地方に集中して配置しており、大地震や風水害等の自然災害が東海地方に発生した場合は、操業停止やサプライチェーン寸断等が発生し、生産や出荷活動の低下を招き、当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自然災害を想定した設備対応と定期訓練を実施して緊急事態に備えるとともに、災害発生時には社長を本部長とする緊急対策本部を立上げ、初動対応と復旧対応を行う事業継続計画(BCP)を実行できる体制の整備を推進しています。

(8) 気候変動に関するリスク

当社グループは、気候変動への対応に世界的な関心が高まる中、気候変動を含む環境問題を重要な経営課題であると認識しています。気候変動リスクには、自然災害の深刻化や慢性化等の物理的リスクのほか、炭素税導入や環境規制強化等の移行リスクがあり、いずれも当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、こうしたリスク認識を踏まえて、2030年を見据えた「エコビジョン2030」を策定しました。その中で「気候変動への対応」を重要課題とし、2050年に向けてカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、2030年度までに「CO2排出量30%削減(2018年度比)」という目標を掲げ、社内炭素税と社内環境ファンドの導入によりCO2削減の取り組みを進めています

(9) 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業の円滑かつ効率的な遂行のため、ITシステムを利用していますが、システムの高度化・複雑化によって利便性が向上する一方で、ITインフラのシステムダウン、不正アクセス、コンピュータウイルス感染等により、生産や販売等の基幹システムの不具合、故障・停止が発生した場合には、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、こうしたリスクに対し、ITシステムのセキュリティ水準を向上させるとともに、コンピュータセキュリティに関する事故対応チーム(CSIRT)や全社横断的なITセキュリティ委員会を運営し、万が一の発生時の早期収拾、未然防止に向けた活動を推進しています。

(10) 人財確保に関するリスク

当社グループは、持続的な成長を担う人財の確保・育成に努めていますが、各分野で必要とする専門性を持つ人財や組織を先導する人財を適切に配置できない場合は事業活動が停滞し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、キャリア採用により専門性を持つ人財の確保を進めるとともに、リーダー育成・配置にあたり、経営層をメンバーとする人財委員会で育成プログラムや人財配置を計画的に進めています

 

(11) 法令・規制・訴訟に関するリスク

当社グループは、事業を遂行するうえで各種の法令・規制等の適用を受けていますが、これらが変更された場合や見解の相違があった場合、また予見できない新たな法令・規制等が設けられた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは継続的なコンプライアンスの実践に努めていますが、独占禁止法違反、環境その他に関する諸外国を含めた法令違反の可能性に関連して、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります

当社グループでは、役員、従業員に対して教育プログラムを設定し、コンプライアンス意識の醸成に努めるとともに、コンプライアンス違反の通報や相談の窓口として社内外に内部通報窓口を設置し、早期対応、未然防止に向けた活動を推進しています。

(12) 事業投資に関するリスク

当社グループは、事業戦略の一環として、既存事業の拡大や新たな事業への進出等を目的として他社との事業提携・資本提携及び企業買収等を行うことがあります。これらの意思決定に際しては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な調査及び検討を行っていますが、期待した収益や成果を充分に得られず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。重要な投資に対しては、経営会議でモニタリングを行い、必要に応じて投資計画改善の対策を検討しています。

(13) 感染症に関するリスク

新型コロナウイルス、新型インフルエンザ等の感染症の大流行により、世界的な移動制限や地域によっては防疫強化のための経済活動抑制が行われ、当社グループの主要な顧客である自動車メーカーにおいて生産調整を余儀なくされる場合は、当社グループもその影響を受ける可能性があります。

また、当社グループの製造拠点が所在する国・地域においてロックダウン等の規制が強化され、事業活動が制限された結果、生産停止・減産により顧客への供給に影響が生じる可能性があります。また、当社グループのサプライヤーである原材料・部品の仕入先や加工委託先等においても、緊急事態宣言やロックダウン、またそれに伴う経営環境の悪化にともない事業継続が困難となり、当社グループへの供給に影響が生じる可能性があります。

当社グループは、顧客・サプライヤーとの連携を密にして製品の安定供給及び原材料・部品の安定調達を行ってまいります。さらに、社内感染予防策として、事業継続計画(BCP)を策定しており、断続的な感染拡大あるいは新たな感染症の発生に備えています。

(14) 人権侵害に関するリスク

当社グループ又はサプライチェーン上の人権侵害又はその兆候・課題に対して、適切な対応が取られていない場合顧客との取引停止や行政罰等のペナルティ、またブランドに対する社会的信頼の喪失につながる可能性があります。

当社グループは、強制労働・児童労働、差別・ハラスメント等、あらゆる形態の非人道的・搾取的労働慣行や行為を当社の事業及びサプライチェーンから排除するため、人権方針を公表し、人権尊重の取り組みを推進しています。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績等の状況

① 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、米国及び欧州では、年度前半においては家計の過剰貯蓄、財政支援策等が個人消費を下支えし、景気は一部底堅い動きが見られたものの、年度後半にかけては根強いインフレ圧力や政策金利の引き上げが景気を下押ししています。

中国においては、ゼロコロナ政策の解除を機に景気の回復が期待されましたが、年度後半では急激なコロナの蔓延による経済活動のストップ、米中貿易紛争による半導体関連の低迷などから厳しい状況となっています。

わが国経済においては、年度前半では活動制限の緩和を受けて景気は持ち直しの動きを見せたものの、感染再拡大を受けて回復ペースは鈍化しました。年度後半においては、供給制約の緩和、個人消費やインバウンド需要の回復等の下支えを受け、底堅く推移しており、世界経済の減速や長引く物価高などが今後の大きな不透明材料となっています。

当社グループの主要な事業基盤である自動車業界における新車販売台数は、特に年度前半において、米国及び欧州で車載向け半導体の供給不足や原材料価格の高騰、中国でゼロコロナ政策による部品供給の混乱等のマイナス要因が影響を与えましたが、徐々にマイナス要因に改善の兆しが見られ、通期では前年度比で増加する結果となりました。中国においては経済活動の再開以降、各地での持続的な消費促進政策が打たれましたが、自動車関連ではEV車の伸長による増加は見られたものの、内燃機関搭載車は前年度比で下回る結果となりました。

半導体製造装置業界においては、ウクライナ問題やインフレの高進、供給網の混乱による部品不足は一部継続しているものの、大手ロジック・ファウンドリーの積極的な投資姿勢が第3四半期までは維持されました。結果、半導体製造装置市場としては通年で前年度に比べ拡大基調となっていますが、メモリーの余剰・米中貿易紛争などの影響から第4四半期に入り景気停滞感が出ています。

その結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は5,625億59百万円(前連結会計年度比14.4%増)、営業利益は892億19百万円(前連結会計年度比18.2%増)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は662億93百万円(前連結会計年度比10.1%増)となりました。

売上収益営業利益率(営業利益/売上収益)は前連結会計年度15.4%に対して0.5ポイント上昇15.9%となりました。親会社所有者帰属持分利益率(親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分)は前連結会計年度末の12.5%から12.3%0.2ポイント低下し、基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の296円04銭から326円09銭30円06銭増加しました。

  セグメント別の業績は次のとおりです。

セグメントの名称

 

前連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

当連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

 

売上収益

営業利益又は
営業損失(△)

売上収益

営業利益又は
営業損失(△)

自動車関連

(百万円)

387,775

74,342

443,980

93,260

セラミック

(百万円)

95,461

14,683

110,754

11,005

新規事業

(百万円)

4,600

△13,605

4,487

△17,092

その他

(百万円)

5,934

92

5,303

2,045

調整額

(百万円)

△2,038

△1,966

 

 

<自動車関連>

当事業は、補修用製品の販売が昨年の高水準からは落ち着きをみせる一方で、半導体供給不足の一部改善による自動車生産の回復が見られ、中国のロックダウンの影響を受けつつも新車組付け用製品の販売は底堅く推移しています。また、為替市場における円安の高進も当社利益を押し上げる要因となっています。

この結果、当事業の売上収益は4,439億80百万円(前連結会計年度比14.5%増)、営業利益は932億60百万円(前連結会計年度比25.4%増)となりました。

 

<セラミック>

当事業は、自動車関連向け機械工具の出荷が回復基調である一方、半導体製造装置用部品については、汎用向けでは投資の抑制により需要に陰りが見られます。当社取り扱い製品においても年度後半にかけて需要に陰りが見られるものの、世界的な半導体需要に対応する旺盛な設備投資により通期では堅調に推移しました。

この結果、当事業の売上収益は1,107億54百万円(前連結会計年度比16.0%増)、営業利益は110億5百万円(前連結会計年度比25.1%減)となりました。

 

<新規事業>

新規事業については、売上収益は44億87百万円(前連結会計年度比2.5%減)、営業損失は170億92百万円(前連結会計年度は136億5百万円の営業損失)となりました。

 

<その他>

その他の事業については、売上収益は53億3百万円(前連結会計年度比10.6%減)、固定資産の売却等により営業利益は20億45百万円(前連結会計年度比2,117.3%増)となりました。

 

② 財政状態

資産合計は、9,031億2百万円であり、前連結会計年度末比799億20百万円9.7%)増加しました。これは主に有形固定資産が減少した一方、棚卸資産並びに現金及び現金同等物が増加したことによるものです。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

 

 

(百万円)

(百万円)

(百万円)

 

現金及び現金同等物

172,585

 

201,628

 

29,043

 

 

営業債権及びその他の債権

123,944

 

123,620

 

△323

 

 

棚卸資産

156,811

 

192,308

 

35,496

 

 

有形固定資産

244,652

 

223,028

 

△21,624

 

 

のれん及び無形資産

20,162

 

45,006

 

24,843

 

 

使用権資産

9,955

 

10,441

 

486

 

 

その他

95,069

 

107,068

 

11,999

 

 

資産合計

823,181

 

903,102

 

79,920

 

 

負債合計は、3,393億63百万円であり、前連結会計年度末比341億69百万円11.2%)増加しました。これは主に退職給付に係る負債が減少した一方、借入金が増加したことによるものです。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

 

 

(百万円)

(百万円)

(百万円)

 

有利子負債

165,268

 

198,222

 

32,954

 

 

未払法人所得税

19,215

 

15,133

 

△4,082

 

 

繰延税金負債

1,690

 

3,208

 

1,518

 

 

その他の負債

119,018

 

122,798

 

3,780

 

 

負債合計

305,193

 

339,363

 

34,169

 

 

資本合計は、5,637億39百万円であり、前連結会計年度末比457億50百万円8.8%)増加しました。これは主に非支配持分が減少した一方、当期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替換算調整の影響によりその他の資本の構成要素が増加したことによるものです。

これらにより1株当たり親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末の2,530円01銭から2,772円61銭となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して為替相場の変動による換算差額13億63百万円を加算し、売買目的で保有する資産への振替に伴う現金及び現金同等物の増減額24億77百万円を減算した純額で290億43百万円増加し、2,016億28百万円となりました。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

 

(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

(自 2022年4月1日
 至 2023年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

71,910

69,305

投資活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

10,234

△37,375

財務活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

△53,827

△1,772

現金及び現金同等物の期末残高

(百万円)

172,585

201,628

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から26億4百万円減少693億5百万円となりました。これは、主に税引前利益の増加により資金が増加した一方、法人所得税の支払並びに棚卸資産の増加により資金が減少したことによるものです。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は102億34百万円の収入に対し、373億75百万円の支出となりました。これは、主に有形固定資産の売却による収入が増加した一方、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が増加し、また、関係会社株式の売却による収入が減少したことによるものです。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動によるキャッシュ・フローにより支出した資金は、前連結会計年度から520億54百万円減少の17億72百万円となりました。これは、主に親会社の所有者への配当金の支払による支出が増加した一方、長期借入による収入が増加し、また、長期借入金の返済による支出が減少したことによるものです。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。

 

 ④ 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

自動車関連

460,535

+8.3

セラミック

114,027

+18.9

新規事業

4,443

△18.9

合計

579,006

+10.0

 

(注) 1 金額は売価換算により計算されています。

2 生産高には委託生産高を含んでいます。

 

 ⑤ 受注実績

自動車関連の製品のうち、新車組付用は自動車メーカーの生産計画を基準とし、また、補修用は自動車の稼動台数、その他市場の動向、過去の販売実績、代理店の意向等を勘案してそれぞれほぼ確実な見込み生産を行っています。

セラミックの製品の大部分及び新規事業の製品は注文生産品であり、その受注状況は次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

セラミック

80,220

+0.4

22,373

△8.2

新規事業

4,100

△18.4

173

△69.0

合計

84,321

△0.7

22,547

△9.6

 

 

 

 ⑥ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

売上収益(百万円)

前年同期比(%)

自動車関連

443,980

+14.5

セラミック

108,787

+16.4

新規事業

4,487

△2.5

その他

5,303

△10.6

合計

562,559

+14.4

 

(注) 金額は外部顧客への売上収益を示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。

この連結財務諸表の作成に当たり、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。当社グループは、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。当社グループが採用した重要な会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (6) 見積り及び判断の利用」に記載しています。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析、検討内容

経営成績等の状況に関する分析、検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況」に記載しています。

 

  ③ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは円滑な事業運営を支えるための運転資金の確保、及び持続的な成長の実現を目的とした他社との連携やM&A、設備投資等、将来の機動的な投資活動を可能にするための中長期的資金への計画的準備を図ることにより、安定的経営と変化への対応に備えることを財務方針としています。そのため、資金計画に基づく当座資金の維持管理をはじめ、債権債務・棚卸資産の効率性を上げるための継続的取り組みを行うとともに、投資リスク軽減のための決裁規程等の整備、経営会議等の各種組織運営に注力しています。

資金調達の方法としては、内部留保資金の他、短期資金需要に対しては銀行借入、コマーシャルペーパー発行等による調達を行っています。また中長期的資金需要に対しては銀行借入やシンジケートローン等を通じた間接金融及び社債発行等の直接金融による調達に加え、必要に応じてエクイティファイナンスも検討いたします。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手先の名称

相手先の所在地

契約内容

契約締結年月

日本特殊陶業㈱
(当社)

三菱日立パワーシステムズ㈱(現:三菱重工業㈱)

日本

固体酸化物形燃料電池分野における製造及び販売を目的とする合弁会社CECYLLS㈱の設立等

2019年7月

日本特殊陶業㈱
(当社)

㈱ノリタケカンパニー

リミテド

TOTO㈱

日本ガイシ㈱

森村商事㈱

日本

固体酸化物形燃料電池分野における研究、開発、製造及び販売を目的とする合弁会社 森村SOFCテクノロジー㈱の設立等

2019年8月

日本特殊陶業㈱
(当社)

IMC International Metalworking Companies B.V

オランダ

機械工具事業におけるNTKカッティングツールズ㈱の合弁会社化による資本業務提携等

2022年10月

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、企業理念に立脚し、最善の技術と蓄積した経験を活かした新たな価値の創造に向けて行われています。その活動の主体は、本社機構である研究開発本部及び各事業の技術部門で行っており、国内外の学会・協会への積極的な参画、大学・公的研究機関との共同研究等により最新技術を入手・導入することでレベルアップを図っています。

なお、当連結会計年度における研究開発に係る費用は総額27,887百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。

<自動車関連>

自動車エンジンの開発は、環境への配慮とそれに伴う低燃費・低エミッションの規制に対応すべく加速的に進化しており、自動車メーカー各社は、エンジンの小排気量化・直噴化・過給化・希薄燃焼化・バイオエタノール等の多種燃料対応化等燃費向上に向けた技術開発を積極的に進めています。当社はそれに応えるべく、スパークプラグの分野では耐熱性・耐電圧性・着火性を高めるとともに、より一層の小径・長尺化を推し進め、材料開発から製品設計、製造方法まで一貫して開発を行っています。当連結会計年度においては、エンジンの燃焼速度を高速化し燃費向上に貢献することを目的としたプレチャンバープラグの開発を進め、要素開発が完了しています。また、カーボンニュートラル社会に貢献するために、内燃機関から排出される温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラル燃料用のスパークプラグの開発を進めています。

センサの分野では、環境保全の見地から益々厳しくなる排気ガス規制に対応すべく、検知精度の向上、及び、高温、熱衝撃、振動、被水等の環境耐久性を向上するとともに、環境に配慮した省資源タイプのセンサ開発を行っています。当連結会計年度においては、今後の環境規制の厳格化を見据え、4輪向け酸素センサとNOxセンサの最新製品の開発を進めています。また、新規センサの分野では、自動車業界で培ったコア技術を応用し、非自動車への事業領域の拡大を進めています。

なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、10,032百万円です。

 

<セラミック>

機械工具の分野では、自動車部品、航空機や発電機用のエンジンに用いられる難切削材、電子機器部品や医療用ネジ等小型製品に用いられる各種製品を加工する切削工具の開発を行っています。当連結会計年度においては、自動車部品加工用では市場で高い評価を得ている小型自動旋盤用工具シリーズについて、顧客の製造ラインの自動化や省人化、小型精密化に貢献できる振動切削用の工具や刃具交換システム等を開発し、発売・発表しました。航空機エンジン部品用については、難削材の高速・高能率加工を更に進めるため商品シリーズを拡充する開発を行っており、小径のセラミック製エンドミル等を開発し、発表しました。

産業用セラミックの分野では、超音波振動子等の開発・製品化を行っています。当連結会計年度においては、環境に配慮した無鉛圧電セラミック製品の超音波振動子やアクチュエーターの開発と製品化を進めています。

半導体分野では、半導体製造装置用部品の開発・製品化を行っています。当連結会計年度においては、半導体製造装置用部品の要求仕様の高度化に対し、製品の性能向上や新規製品の開発に取り組みました。また、半導体パッケージの分野では、産業用デバイス向けや通信関連、LED,LD用セラミックパッケージ、半導体検査装置に使用される大型プローブカード用基板等、幅広い製品の開発を行っています。当連結会計年度においては、セラミックの特徴を生かした高放熱用基板など要求仕様にあった製品開発、量産化を進めています。

医療分野では、酸素濃縮装置を製造し複数のプロバイダーに販売しています。当連結会計年度においては、NTKメディカル社が新型コロナ需要による増産、コストダウン及び安定供給のため製品開発・改良に取り組んでいます。また、CAIRE社では、小型化や軽量化と言った市場ニーズに合わせた次世代の携帯型の酸素濃縮装置等の開発を進めています。

なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、9,168百万円です。

<新規事業>

新規事業関連では、エネルギークリーン化への対応として期待の大きなテーマである燃料電池関連の開発に取り組んでいます。現在、独自の機能性セラミックスの材料技術とプロセス技術を活かし、高効率でクリーンな発電システムとして期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発と事業の立ち上げを進めています。当連結会計年度においては、森村グループ各社による合弁会社「森村SOFCテクノロジー株式会社」にて、従来他社より小型・軽量・高効率のスタックを展開し、高効率分散電源への適用や脱炭素社会に向けた新規用途への採用に向け活動を進めております。また、業務・産業用のSOFCセルスタックの今後の量産拡大や家庭用の採用を視野にいれ、生産拠点の集約を完了し設備投資による量産体制の構築を進めています。円筒形セルスタックは三菱重工業株式会社との合弁会社「CECYLLS株式会社」にてセルスタックの量産を開始しました。しかし脱炭素化の加速の流れを受け、円筒形SOFC事業は当初の計画を見直す必要が出てきました。今後は構築した量産技術を生かし、水素製造で脱炭素社会に貢献できるSOECセル事業への適用可能性につき検討を進めて参ります。また、平板形の固体酸化物形燃料電池(SOFC)を応用した固体酸化物形電解セル(SOEC)の事業化を目指し、開発を推進しています。その他新規事業関連の分野では、セラミック技術とセンシング技術を利用したオゾン発生器(澄風)、アフターマーケット商流に繋がる独立系修理工場と車両ユーザーをデジタル技術で繋いだプラットフォームサービス、「ドクターリンク」の機能性・信頼性向上と認知度向上に努めています。その他にも環境・エネルギー・モビリティ・メディカル分野を中心に様々な新規事業の開発に国内外で取り組んでおります。

なお、当セグメントの研究開発に係る費用の金額は、8,686百万円です。