(経営方針)
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献することを企業理念に掲げて事業を行っています。
<日本製鉄グループ企業理念>
基本理念
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。
経営理念
1.信用・信頼を大切にするグループであり続けます。
2.社会に役立つ製品・サービスを提供し、お客様とともに発展します。
3.常に世界最高の技術とものづくりの力を追求します。
4.変化を先取りし、自らの変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
5.人を育て活かし、活力溢れるグループを築きます。
(経営環境)
中長期的な環境変化については、次のとおり想定しています。
世界の鉄鋼需要については、インドも含めたアジア地域を中心に確実な成長が見込まれます。また、カーボンニュートラルに向けた新規ニーズを含め高級鋼の需要は拡大が見込まれます。一方で、国内の鉄鋼需要については、人口減少・高齢化や需要家の海外現地生産拡大等に伴い引き続き減少していくことが想定されます。また、製造業における地産地消・自国産化の傾向が、グローバルに繋がっていた市場の分断を進展させると考えられます。さらに、世界の鉄鋼生産量の5割強を占める中国における需要の頭打ち等により、海外市場における競争が一層激化することが想定されます。
世界的に気候変動に関する問題意識が高まるなか、カーボンニュートラルの実現は官民を挙げた総力戦となり、他国に先駆けたカーボンニュートラルスチールの製造技術の確立が、今後の鉄鋼業界における競争力、収益力、ブランド力を決める鍵となると考えています。
2023年度においては、世界の鉄鋼需要に好転が見込めない状況です。中国は不動産市況の低迷が継続し、内需の回復も見通せておらず、欧米においても先行きの不透明感が払拭できていません。また、製品価格が低迷するなか、原料価格は依然として高水準で推移すると想定され、海外一般市況分野におけるスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)の改善も見込めない状況です。
(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
当社グループは、製鉄事業を中核として、鉄づくりを通じて培った技術をもとに、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しています。製鉄セグメントは、当社グループの連結売上収益の約9割を占めています。
当社は、2020年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き価格の是正、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、海外グループ会社の収益力の向上等により、外部環境に関わらず高水準の事業利益を確保し得る収益構造の構築に取り組んできました。2023年度においては、前述の事業環境のもと、従来の収益構造対策等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けて、さらに厚みを持った新たな事業構造への進化を図り、外部環境に関わらず、さらなる高収益を計上できる基盤の構築を目指していきます。
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」の概要と進捗は次のとおりです。
<日本製鉄グループ中長期経営計画(2021年3月5日公表)の概要と進捗>
当社は、「総合力世界No.1 の鉄鋼メーカー」を目指し、日本製鉄グループ中長期経営計画を定め、その4つの柱である「国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化」、「海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進」、「カーボンニュートラルへの挑戦」及び「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」の実現に向け、諸施策に着実に取り組んでいます。
1.国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化
「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として、国内製鉄事業の最適生産体制を構築するとともに、競合他社を凌駕するコスト競争力の再構築と適正マージンの確保による収益基盤の強化を推進しています。
短期的な環境好転如何によらず、生産設備構造対策を着実に推進し、さらに強固な収益基盤を確立することを目指し、当期においては、関西製鉄所和歌山地区の第3鋳造機の一部設備、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)の第1溶融亜鉛・アルミめっきライン、東日本製鉄所鹿島地区の第1酸洗ライン等を休止するなど、競争力のあるラインへ生産を集約しました。また、2012年の経営統合後のピークに比べ、単独粗鋼生産量が3割減少するなかで、限界利益の単価改善と固定費の大幅削減により損益分岐点を抜本的に改善することで、数量に頼らない収益構造の構築に取り組んできました。具体的には、生産能力削減に伴い商品を取捨選択することで「注文構成の高度化」を行うとともに、電磁鋼板・超ハイテン等高付加価値商品の需要拡大に対応した能力増強対策も実施してきました。また、紐付き価格交渉方式を見直し、適正化を図ることにより「紐付きマージンの改善」も実現しています。さらに、持分法適用関連会社であった日鉄物産㈱の子会社化・非公開会社化により、鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大することを決定しました。今後は、商社機能のグループでの効率化・強化、営業ノウハウ・インフラを一体活用した直接営業力強化、サプライチェーンのさらなる高度化等、新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいく方針です。
2.海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進
世界の鋼材消費は、2025年さらに2030年に向けて引き続き緩やかな成長が見込まれています。当社は、規模及び成長率が世界的に見ても大きいアジアを中心に事業を展開しており、マーケットの規模や成長を当社の利益成長につなげ得るポジションにあります。
このような環境のもと、需要の伸びが確実に期待できる地域において、当社の技術力・商品力を活かせる分野で、需要地での一貫生産体制を拡大し、現地需要を確実に捕捉することで、日本製鉄グループとして、「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指しています。
不採算事業からの撤退を完了し、付加価値の高い一貫製鉄事業に注力するなど、「選択と集中」を図ることにより、収益力向上・拡大を目指してきました。当期は、インドのArcelorMittal Nippon Steel India Limitedにおいて、高炉2基新設をはじめとする一貫能力増強投資及び港湾・電力等のインフラ会社・重要資産買収の決定や、下工程拠点の買収、新たな一貫製鉄所建設に向けた検討開始等、積極的な施策を展開してきました。在庫評価差等の一過性の影響等により当期は対前年度減益となったものの、今後も主要な海外市場における一貫生産体制拡大による収益力の向上を目指していきます。
3.カーボンニュートラルへの挑戦
脱炭素社会に向けた取組みにおいて欧米・中国・韓国との開発競争に打ち勝ち、引き続き世界の鉄鋼業をリードするべく、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営の最重要課題として諸対策を検討・実行しています。
カーボンニュートラル化を通じて当社が提供する2つの価値として「社会におけるCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術~『NSCarbolex® Solution』」と「鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を削減したと認定される鉄鋼製品~『NSCarbolex® Neutral』」をブランド化し、カーボンニュートラル社会実現とお客様の競争力向上に貢献することを発表しました。また、エコカー駆動モーター等の効率化に貢献する無方向性電磁鋼板の能力・品質向上のための投資等に向け、グリーンボンドによる資金調達を行うことを決定し、2023年3月に発行しました。電気エネルギーのロスを削減する高効率の電磁鋼板の供給拡大を通じて、当社はお客様の最終商品でのCO2削減に貢献していきます。当社は、鉄鋼プロセスの脱炭素化に向けて「高炉水素還元」、「大型電炉での高級鋼製造」及び「水素による還元鉄製造」という3つの超革新技術を開発し、一部残るCO2についてはCCUS(※)でオフセットするという複線的なアプローチで、2030年までにCO2総排出量を30%削減し、2050年にカーボンニュートラルを目指しています。このうち「高炉水素還元」について、当社は、世界初となる4,500㎥の大型高炉実機での高炉水素還元実証試験を開始することを決定し、2023年2月に公表しました。今後、本格的吹き込み試験(グリーンイノベーション基金事業)に向け、東日本製鉄所君津地区における水素系ガス吹込実証設備の導入を進めていきます。
(※)Carbon Capture, Utilization and Storage:CO2を分離・回収し、直接ないし他の物質に変換して利活用する、あるいはCO2を地中に埋めて貯留する技術。
4.デジタルトランスフォーメーション戦略の推進
デジタルトランスフォーメーション戦略に5年間で1,000億円以上を投入し、鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指しています。
データとデジタル技術を駆使した業務・生産プロセス改革を進めてきました。具体的な取組みとしては、無線IoTセンサ活用プラットフォームである「NS-IoT」の適用を拡大することで、多拠点のデータを集約し、さらなる高度な分析・監視の実現を目指しています。東日本製鉄所君津地区及び鹿島地区においては、設備の早期異常検知を目的とした実運用を2022年4月より開始しており、今後も一層の適用拡大に向け、北日本製鉄所室蘭地区・名古屋製鉄所・関西製鉄所和歌山地区・九州製鉄所八幡地区及び大分地区での2023年度稼働開始を目指し、計画を前倒しする投資を決定しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「日本製鉄グループ中長期経営計画」の収益・財務体質目標等については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。
(注) 上記(経営環境)と(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)の記載には、2023年5月10日決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれている。これらはその発表又は公表の時点において当社が適切と考える情報や分析、一定の前提等に基づき策定したものであり、かかる見積りに固有の限界があることに加え、実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性がある。かかる要因については、後記「3 事業等のリスク」を参照されたい。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
当社は、日本製鉄グループ企業理念において「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献」する旨を定めており、サステナビリティ課題への対応が当社グループの存立・成長を支える基盤であると認識しています。
当社は、このような認識のもと、取締役会において、安全衛生、環境(気候変動対策を含む)、防災、品質、ダイバーシティ&インクルージョンや人材育成等、サステナビリティ課題におけるマテリアリティ(重要課題)を定め、それぞれの主管部門が中心となって取組みを推進しています。リスク及び機会を含めたこれらの取組み状況については、目的・分野別に副社長を委員長とする全社委員会等で審議した後、経営会議・取締役会に報告されています。また、各分野のリスク管理に関する事項等を含む内部統制全般については、内部統制担当の副社長を委員長とし、四半期毎に開催する「リスクマネジメント委員会」において、取組み状況を審議・確認し、重要事項については経営会議・取締役会に報告されています。当社の取締役会は、これらの仕組みを通じて、経営上の重要なリスク管理の監督を行っています。なお、当社のガバナンスの仕組みについては、「
当社は、気候変動対策を経営の最重要課題と位置付け、当社独自の取組みとして「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表し、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてチャレンジしています。当社グループのCO2排出量は当社が9割以上を占めることに加え、グループ各社の事業特性により気候変動対策は異なることから、以降は当社の取組みについて記載します。
当社は、気候変動対策について、全社委員会として設置したグリーン・トランスフォーメーション推進委員会及び環境政策企画委員会で報告・審議を行っています。グリーン・トランスフォーメーション推進委員会では主にカーボンニュートラル推進に係る重要な諸案件を、環境政策企画委員会では環境政策全般に係る事項や気候変動対策の実績評価等を主な議題としており、リスクの認識、諸施策の進捗確認、方針決定等を行っています。各委員会は、各委員会が主管する事項を担当する副社長が委員長を務め、少なくともそれぞれ年2回以上開催されています。それぞれの委員会における審議内容のうち、重要な事項については、経営会議・取締役会に報告されています。取締役会は、定期的に報告を受けることにより経営上の重要なリスク管理の監督を行っています。
当社は、2050年カーボンニュートラル社会実現に向け、2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表しました。当社は、2050年カーボンニュートラルの実現にチャレンジし、「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」及び「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」という2つの価値を提供することで、サプライチェーンでのCO2削減の実現を目指します。

当社は、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、2030年にCO2排出量を2013年比30%削減する目標を掲げています。これについては、大型電炉での高級鋼製造、高炉水素還元(COURSE50)、既存プロセスの低CO2化、効率生産体制構築等により実現を目指しています。
2050年に向けては、電炉による高級鋼の量産製造、Super COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じたCO2排出の抜本的削減、水素による還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策等も含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指します。


なお、CO2排出量の前期の確定値及び当期の暫定値については、2023年9月頃発行予定の
これらの取組みを通じて、当社が提供する「社会全体のCO2排出量削減に貢献する製品・ソリューション技術」を総称するブランドとしてNSCarbolex®を立ち上げました。NSCarbolex®は、当社が提供する2つの価値を表すNSCarbolex® Neutral と NSCarbolex® Solutionの2つのブランドにより構成されます。
「NSCarbolex® Neutral」は、当社が実際に削減したCO2排出量をプロジェクト毎に把握し、マスバランス方式を活用して任意の製品に割り当てた鉄鋼製品で、この排出削減量、任意の製品への割当量は、ともに第三者機関の保証を受けたものです。社会における脱炭素ニーズが急速に高まるなか、いち早く脱炭素化に取り組むことは、お客様の競争力を高めることに繋がるものと考えています。当社は、NSCarbolex® Neutralの安定的な供給体制を早期に構築することで、お客様の脱炭素化に貢献していきます。
また、「NSCarbolex® Solution」は、社会におけるCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術です。自動車の製造時・走行時のCO2排出量削減に寄与する「NSafe®-AutoConcept」、モーターの高効率化や送配電網におけるエネルギーロス削減に寄与する「高効率電磁鋼板」、建設現場の生産性向上等に寄与する建材ソリューションブランド「ProStruct®」、水素社会の実現に寄与する高圧水素用ステンレス鋼「HRX19®」などの高機能製品・ソリューション技術を通して、社会の様々な場面においてCO2排出量の削減に貢献していきます。

(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標
当社グループは「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献する」ことを基本理念に掲げています。また、経営理念において「人を育て活かし、活力あるグループを築きます。」と掲げ、従来から重要なテーマとして人材育成に取り組んでいます。
当社グループでは、事業戦略を共有しグループ一体となった経営を行いつつも、人材育成及び社内環境整備については、グループ各社の事業特性を踏まえた取組みを各々で実施しているため、以降は当社の取組みについて記載します。
上記基本理念を実現すべく、当社では人材育成基本方針として、人材育成における上司の役割の重要性及びOJT(On the Job Training)が人材育成の基本であるとの位置づけを社内に明示し、上司・部下間の対話を基軸とした人材育成を行っています。
また、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指して成長し続けることを念頭に、中長期経営計画の4つの柱の諸施策に加え、外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への転換にも取り組んでおり、これらを着実に実行するための育成施策を推進しています。
・操業整備系人材育成
操業整備系社員の人材育成については、長期雇用を前提とした技術・技能の蓄積を弛みなく実践するために、習得すべき技能の一覧を「技能マップ」として明確にしたうえで、OJTによる育成PDCAを回しています。
また、OJTを補完するOFF-JTについては、基礎技能習得を行うとともに、現場発の知恵(=現場技術)の創出力を引き上げるための職場リーダー教育や技能伝承を狙ったベテラン層教育も行っています。

・スタッフ系人材育成
スタッフ系社員の人材育成についても、企業理念・社員行動指針や組織戦略をもとに個人別の育成計画を策定し、1年間の具体的な計画に基づき上司・部下間の対話を基軸としたOJTを行っています。
OFF-JTについては、各役割・役職に求められる知識やスキルを各人が習得し、社員全体の能力向上を図る階層別教育、各人の育成ニーズに応じた選択型研修に加え、経営戦略の実現を支える育成施策を織り込み、人材育成を進めています。
具体例としては、海外事業の深化・拡充に向けて、社員として到達すべき英語力の基準を設定し底上げを図るとともに、業務上必要性の高い社員については、海外で自立的に業務を遂行できるレベルへ引き上げるプログラムを用意し、英語力強化を行っています。さらに、現地事業を担う派遣者の赴任前教育、現地従業員の育成にも力を入れています。
また、DX戦略の推進のため、2030年までにスタッフ系社員の約20%を「データの高度利用ができる」シチズンデータサイエンティストに育成するデータサイエンス教育に加え、管理者がDXを牽引するための意識改革を促すデジタル・マネジメント教育の2つの軸で育成を行い、データとデジタルを駆使した生産・業務プロセス改革を推進しています。


人材が活き活きと働くための社内環境整備として、当社では、多様な社員が、生産性高く、持てる力を最大限発揮し、誇りとやりがいをもって活躍できる企業の実現を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを行っています。
当社では、この取組みを強化すべく、5つの主要推進項目を立て、取組みを促進する専任組織を設置し、各種施策の推進を図っています。

・女性活躍の推進
従来から法定水準を上回る制度の導入や24時間対応可能な保育所等、女性従業員が働きやすい労働環境を整備するとともに、採用の拡大に取り組んできました。
より一層の活躍推進に向けて、女性管理職数の中長期目標を設定し、キャリア研修の新設等、ライフイベントを見越した育成施策の充実、社内の風土醸成のためのダイバーシティマネジメント及びアンコンシャスバイアスに関わる教育等を進めています。
・多様な事情を抱える人材が活躍できる働き方・休み方の追求
柔軟で多様な働き方を追求すべく、テレワーク制度の積極活用、コアタイムを廃止したコアレスフレックス制度の拡大等を行ってきましたが、社員がさらに活き活きと生産性高く持てる力を最大限発揮する働き方を追求することで、生産性の向上およびワークライフバランスの実現を目指しています。
また、個々の事情に合わせた柔軟な休み方の実現に向けた環境整備も進めています。年次有給休暇の取得促進に加え、育児期の子を持つ男性社員の積極的な育児参画を促す観点から、配偶者が出産した男性社員全員に、育児休業・関連休暇の取得を推奨する取組みを進めています。さらに、高齢化が進展するなかでの仕事と介護の両立支援制度や様々な用途で利用できる失効年休積立て制度等を設けるとともに、社員が制度を利用し易い風土の醸成にも努めています。
・65歳までの能力最大発揮を目指した健康マネジメントの展開
「安全と健康はすべてに優先する最も大切な価値であり、事業発展を支える基盤である」という当社グループの安全衛生基本方針のもと、当社では、65歳に引き上げた定年退職まで、社員一人ひとりが心身ともに健康で最大限のパフォーマンスを発揮しながら働き、活力溢れる会社になることを目指し、疾病の未然予防及び早期発見・早期治療を確実に実行する健康推進施策に取り組んでいます。具体的には、「こころとからだの健康づくり」推進として、健康診断メニューの充実、検診受診の促進・受診後のフォロー強化及び脳心疾患対策としての生活習慣改善保健指導等の取組みを行っています。
また、グローバル事業展開を支えるため海外で勤務する社員が安心して働けるよう、帯同家族も含めた定期的なフォロー、当社産業医の海外事務所巡回、現地の医療機関や生活環境の調査及び海外勤務者との面談等により必要なアドバイス等を実施し、施策の充実を図っています。
上記戦略を着実に推進するため、女性活躍、働き方・休み方、健康推進及び人材育成に関するKPIを設定し、取組みを加速していきます。当社グループではグループ各社の事業特性を踏まえた各々の取組みを実施しており、連結グループとしての目標設定は実施していないため、当社の指標及び目標を記載します。
*1 各年度の昇格実施日現在の数値である。
*2 鉄鋼需要の大幅減に伴う減産への対応として実施した臨時休業の影響があった。
*3 2021年度より集計を開始した。
*4 定量目標を設定していない。
*5 新型コロナウィルス感染まん延下での研修の一部中止・延期の影響があった。
*6 新型コロナウィルス感染まん延下での研修の一部中止・延期継続、新入社員減少の影響があった。
*7 2022年度実績は2023年9月頃発行予定の
nipponsteel.com/csr/report/)。
本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、下記各項のものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況」の他の項目、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」の各注記、その他においても個々に記載していますので、あわせて御参照ください。
なお、当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、本報告書「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりの企業統治体制を整え、内部統制システムを整備・運用し、各社・各部門が自部門における事業上のリスクの把握・評価を行ったうえで、組織規程・業務規程において定められた権限・責任に基づき業務を遂行しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
<経営環境(鉄鋼市場)に関するリスク>
(1)日本及び海外の経済状況の変動等
製鉄事業を中核とする当社グループにおいては、連結売上収益の約9割を製鉄事業が占めています。自動車、建設、エネルギー、産業機械等、鋼材の主要な需要家が属する業界と同様に、製鉄事業は国内及び海外のマクロ経済情勢と相関性が高く、日本や世界経済の景気に大きく影響されます。
当社は、資産の多くを日本に保有しており、日本の政治的、経済的又は法的環境が大きく変わると、その資産価値が大きく変動するリスクがあります。また、日本は、当社グループの最も重要な地理的市場の一つであり、国内売上収益が当期末の連結売上収益の約6割を占めます。先行きを見通すことは困難ですが、日本の経済が悪化すれば、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループは、グローバル戦略の深化・拡充を事業戦略の一つに掲げており、当社グループの海外売上収益は、連結売上収益の約4割を占めます。海外では政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)、日本との外交関係の悪化、経済情勢の悪化、商習慣、労使関係や文化の相違から生じる不測のリスクが生じる可能性があります。これに加えて、鋼材需要の減退、価格競争の激化、大幅な為替レート変動、自然災害の発生、感染症の拡大、保護主義の台頭、投資規制、輸出入規制、為替規制、現地産業の国有化、税制や税率の大幅な変更等、海外各国における事業環境が大きく変化する場合は、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。2023年度については、世界の鉄鋼需要は現状からの好転が見込めない状況下にあります。中国は不動産市況の低迷が継続し、内需の回復も見通せておらず、欧米においても先行きの不透明感が払拭できていません。また、製品価格が低迷するなか、原料価格は依然として高水準で推移すると想定され、海外一般市況分野におけるスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)の改善も見込めない状況にあります。こうした状況に対して、当社は従来の収益構造対策等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けて、さらに厚みを持った新たな事業構造への進化を図り、外部環境に関わらず、さらなる高収益を計上できる基盤の構築を目指していきますが、今後の様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。
(2)鋼材需給の変動等
鋼材の国際的な需給の変動が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。特に、中国における鉄鋼の過剰生産能力問題は、十分な解決には至っておらず、過剰供給に起因する世界市場での厳しい競争は、世界の鋼材価格の引下げ要因となり、当社グループの事業活動、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原油・天然ガス等の価格変動も、販売先のひとつであるエネルギー分野の鋼材需要の変化につながることから、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの製鉄事業における需要家の多くは、鋼材を大量にかつ長期にわたり購入しており、主要な需要家が事業戦略や購買方針を大幅に変更した場合や、鋼材等の販売先である商社・需要家等において与信リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(3)原燃料価格の変動等
当社グループは、鋼材の生産に必要な鉄鉱石、石炭等の主原料の大半をオーストラリア、ブラジル、カナダ、米国等の海外から輸入しています。また、当社グループは、主原料をはじめ、合金、スクラップ、天然ガス等の原燃料の調達に際し、調達ソースの分散等を通じて安定調達に努めていますが、その価格や海上輸送にかかる運賃は国際的な需給状況により大きく変動しており、市況が高騰した際に、当社グループがこれを鋼材の販売価格に転嫁できなければ、当社グループの事業活動、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原燃料生産国における大きな自然災害、ストライキやトラブルの発生、政治情勢の悪化や戦争・テロ、感染症の拡大等により、原燃料の生産量や出荷量が減少すると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)為替相場の変動
当社グループは、製品等の輸出及び原燃料等の輸入において外貨建取引を行っており、また外貨建ての債権債務を保有しています。製品等の輸出による受取外貨を原燃料等の輸入の際の支払外貨に充当することにより為替変動影響の大部分を排除したうえで、実需原則に基づいて先物為替予約を実施していますが、為替相場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。円高が進んだ場合、鋼材を中心とする当社国内製品の輸出競争力が損なわれることや、自動車、家電、エネルギー、産業機械等、製鉄事業の主要な需要産業の輸出競争力も損なわれて国内鋼材需要が減退することにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。一方、円安が進んだ場合、輸出市場においては相対的に価格競争力が増しますが、原燃料等の価格が高騰している状況においては、急速な円安によるコスト影響が従来以上に大きくなる可能性があります。
(5)他素材との競合
鉄鋼製品は、アルミニウム、炭素繊維、ガラス、樹脂・プラスチック、複合材、コンクリート及び木材のような他の素材と常に競合しています。近年、特に電気自動車(EV)の普及等により素材へのニーズが多様化している自動車向け用途においては、当社グループも独自に鋼材のさらなる軽量化や高機能鋼材の研究・開発・製造等を進めていますが、需要家がアルミニウム、樹脂、炭素繊維複合材等の他素材への転換を選択し鋼材の需要が減少すると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業戦略・計画の遂行に関するリスク>
(1)中長期経営計画の遂行
当社グループは、2021年3月に「日本製鉄グループ中長期経営計画」(本項において、以下「中長期経営計画」といいます。)を策定し、その計画に掲げた具体的諸施策を推進しています。これらの計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されていますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれています。今後、事業環境の悪化や本「事業等のリスク」として記載したすべての事項を含めたその他の要因により、期待される成果の実現に至らず、「中長期経営計画」で掲げた投入計画、財務目標も達成できない可能性があります。
(2)カーボンニュートラル実現に向けた取組み
当社は、2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、2050年に向けて電炉による高級鋼の量産製造、Super-COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じたCO2抜本的削減、水素による直接還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策等も含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指すこととしました。こうした極めてハードルの高いイノベーションに対し、当社は約5,000億円の研究開発費、設備実装に約4~5兆円の投資が必要であることに加え、2050年段階での外部条件を含むベストケース想定でも大幅なコストアップになると想定しています。これに対し、非連続的イノベーション等の研究開発や設備実装に対する長期かつ継続的な政府の支援、莫大なコストを社会全体で負担する仕組みの構築等、政府をはじめとする関係部門に対して要望していますが、十分な支援を受けられない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、産業界に不利となる制度変更、研究開発の成果が得られない等の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。
(3)コスト改善の取組み
当社グループは、「中長期経営計画」に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として最適生産体制の構築を進めることとしています。そのうち生産体制のスリム化・効率化については、2020年2月に決定した生産設備構造対策による効果とあわせ、2025年までに2019年度対比で1,500億円/年の構造対策効果を見込んでいます。しかしながら、様々な外部要因や内部要因等により、国内製鉄事業において計画している鉄源工程や製品製造工程のスリム化・効率化の進捗が遅れるなど、コストを計画通り改善することができない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)設備投資
製鉄事業は資本集約的産業であり、継続的に多額の設備投資及び設備修繕支出を必要とします。当社グループは、高炉・コークス炉改修を含む設備の新鋭化・健全性維持並びに成長分野の需要捕捉に向けた瀬戸内製鉄所及び九州製鉄所におけるハイグレード無方向性電磁鋼板能力対策や名古屋製鉄所における次世代熱延ライン新設を含む生産対応等を推進するために必要な設備投資を計画的に実施していますが、減価償却費が増加するほか、当初想定した効果が十分に得られないこと等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは「中長期経営計画」に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針に、2021年度から2025年度までの5年間で約2兆4,000億円の設備投資を実施し、その投資効果の最大化に取り組んでいます。
(5)組織再編、海外投資等
当社グループは、2017年3月の日新製鋼株式会社の子会社化(2020年4月に吸収合併)、2018年6月のスウェーデン Ovako AB社の買収、2019年3月の山陽特殊製鋼株式会社の子会社化、2019年12月のインド エッサールスチール社のアルセロールミッタル社との共同買収、2020年12月のAM/NS Calvert LLCにおける電気炉の新設の決定、2022年2月のタイ G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedの買収、2023年4月の日鉄物産株式会社の子会社化等の組織再編・投資によって成長をしており、今後も国内及び海外において、合併や買収、合弁会社の設立等の組織再編や投資を継続する可能性があります。当社グループは、慎重な事業評価、契約交渉、社内審議等のプロセスを経たうえで投資等の実行を判断し遂行していますが、当初計画通りにシナジー効果が創出されなかったり、連結財政状態計算書に計上したのれんに減損が生じたりする場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。特に、海外での投資案件は、様々な要因(適切な投資対象を見つけられない可能性や合弁事業におけるパートナーとの関係等も含む)から不確実性が高まります。
(6)事業構造・生産体制の見直し
国内鉄鋼需要の縮小や海外鉄鋼市場における競争激化及び主要生産設備の老朽化に対応すべく、国内製鉄事業においては、商品と設備の取捨選択による集中生産等を基軸とした、体質強化の徹底的な推進を目的に、設備の休止や不採算品種からの撤退等の生産設備構造対策を実施していますが、今後の経営環境の変化や収益動向等を踏まえ、さらなる対策を実施する可能性があります。海外においても、既存の事業についてこれまでに選択と集中を積極的に推進し、当社が継続する合理性のない事業からの撤退を概ね完了しつつありますが、経営環境の悪化等により、将来的に収益回復の見込みがない不採算事業や投資目的が希薄化した事業を中心に、引き続き再編・撤退を行う可能性があります。これらのさらなる再編・撤退等を実施する場合、減産や一時的な損失の発生等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期においては、事業再編損として328億円の損失を計上しています。
(7)人材確保・育成、ダイバーシティ&インクルージョンへの取組み、省力化対策
当社グループの将来の成長は、有能な人材の確保及び育成に依拠する部分も大きいことから、仕事と生活の調和の取れた働き方の実現や関連諸制度の浸透・定着等によって就労環境の整備を図りつつ、育成体系の整備等を行いながら、安定的な人材確保と人材競争力の強化に努めています。また、有能な人材の確保及び育成とともに、会社人生で発生し得るライフイベントや健康に起因する労働損失を最小化し、様々な事情を抱える多様な人材が生産性高く、誇りを持って活躍できる働き方を実現するために、ダイバーシティ&インクルージョンへの積極的な取組み等を通じ、多様な従業員が誇りとやりがいを持って活躍できる企業を実現していくべく、具体的な取組みの強化に努めています。加えて、人口減少による人手不足に対応するべく、省力化対策の設備投資を進めています。当社グループは、有能な人材の確保と育成、また省力化対策の設備投資の確実な実行に努めていますが、計画通り達成できない場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業運営に関するリスク>
(1)設備事故、労働災害等
当社グループの中核事業である製鉄事業の生産プロセスは、高炉、コークス炉、転炉、連続鋳造機、圧延機、発電設備等の特定の重要設備に依存しています。当社グループは、安定生産の確保を図るため、製鉄所等の強化・再建を基本経営課題に据えて、設備と人材の両面で製造実力の強化策を推進していますが、これらの設備において、電気的又は機械的事故、火災や爆発、労働災害等が生じた場合、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(2)品質問題等
当社グループは、鉄鋼製品をはじめ、様々な製品・サービスを顧客に提供しています。当社は、「品質は生産に優先する」という基本的なものづくりの価値観のもと、一般社団法人日本鉄鋼連盟が定めた「品質保証体制強化に向けたガイドライン」等に沿った様々な取組みを実施していますが、製品やサービスに欠陥が見つかり品質問題が生じた場合は、顧客等から代品の納入や補償を求められるほか、製造・品質管理オペレーションの中止や見直しを行う必要が生じたり、当社グループ又は当社グループの製品やサービスに関する信頼が損なわれて売上が減少すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(3)知的財産権の保護
当社グループは、知的財産を活用した事業活動における競争優位性確保のため、技術開発等により得られた知的財産について、特許権や商標権等の産業財産権による保護を受けるための権利化や、営業秘密としての秘匿化の徹底に努めていますが、当社の知的財産について第三者による権利侵害や無断使用が行われた場合、権利化範囲や営業秘密としての管理が十全性に欠けたために必要な法的保護が受けられない場合、第三者によって権利が無効化された場合等には、当社グループの競争優位性の喪失を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、第三者による権利侵害等の場合は、速やかに法的措置等を検討・実施するものの、訴訟状況等の諸般の事情から損害の回復が十分になされない可能性もあります。
当社グループは、各国・地域における知的財産に関する法令や規制に基づく事業活動を展開していますが、第三者から知的財産の侵害クレームや訴訟提起等を受け、当社グループに不利な判断がなされた場合や知的財産関連法規制に違反したと認定された場合には、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)情報システムの障害、情報漏洩等
当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、また、自社及び顧客・取引先の営業機密や個人情報等の機密情報が情報システムに保管されています。当社においては、技術情報をはじめとする機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムのセキュリティ強化に加えて、業務ルール、社員教育等の対策を推進していますが、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃等により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<その他のリスク>
(1)自然災害、戦争・テロ・感染症等
当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。製鉄所をはじめとするこれらの各拠点においては、台風、地震、津波、洪水等の自然災害、戦争やテロ行為が生じた場合に備え、ハード面(設備対策)、ソフト面(事業継続計画の策定等)において、一定の対策を施していますが、大規模な自然災害等に見舞われた場合は、各拠点の設備、情報システム等が損害を被り、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生したり、原料・製品・燃料の輸送手段等のインフラが停止すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、当社グループの拠点の有無にかかわらず、大規模な自然災害や戦争・テロ行為が生じた場合や強力な新型インフルエンザ等の感染症が世界的に流行した場合には、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。また、これに伴い、需要家の活動水準の低下やサプライチェーンの混乱等の影響による景気の急速な悪化等を通じて、当社グループの生産活動及び販売活動等に支障をきたす可能性があります。
(2)事業活動にかかる環境規制
当社は、製鉄所毎に異なる環境リスクへのきめ細かな対応や各地域の環境保全活動を通じた環境リスクマネジメントを推進し、グループ全体での環境負荷低減に取り組んでいます。当社グループは、事業活動を行う日本及び海外各国において、大気・水・土壌の汚染、化学物質の利用、廃棄物の処理・リサイクル等に関する広範な環境関連規制の適用を受けており、今後、これらについて、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
また、当社グループは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つのゴールに掲げられた気候変動対策にも貢献すべく、世界最高レベルの資源・エネルギー効率で鋼材を生産し、中長期的なCO2排出量削減の観点から革新的な技術開発と長年培った技術の海外への移転・普及にも積極的に取り組んでいますが、今後、CO2の排出や化石燃料の利用に対する新たな規制等が導入された場合には、製鉄事業を中心に当社グループの事業活動が制約を受けたり、費用が増加したりする可能性があります。
(3)非金融資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、製鉄所設備等の有形固定資産や無形資産等の多額の非金融資産を所有していますが、経営環境の変化等に伴い、その収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなった場合には、将来的な回収可能性を踏まえて非金融資産の帳簿価額を減額し減損損失を計上するため、当社グループの業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。当期末における有形固定資産の残高は3兆1,836億円、無形資産の残高は1,574億円となっています。
また、当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づき繰延税金資産を計上していますが、経営環境の変化等に伴い将来課税所得の見積りの変更が必要になった場合や税率等の税制変更があった場合、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,032億円となっています。
(4)有価証券等の保有資産(制度資産を含む。)価値の変動
当期末において、当社グループは株式等の資本性金融商品、関連会社・共同支配企業に対する投資を合計1兆6,656億円保有しています。このうち、取引先や提携先の政策保有株式については、すべての株式を対象に、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を確認しており、時価が一定額を超える政策保有株式については、取締役会において毎年検証しています。しかしながら、投資先の業績不振、証券市場における市況の悪化等により、評価損が発生する可能性があります。また、上記のほかに、当期末において、制度資産(退職給付信託財産を含みます。)が当社グループ合計で4,773億円あり、この資産を構成する国内外の株式、債券等の価格変動や金利情勢の変動が財政状態等に影響を与える可能性があります。
(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化
当期末における当社グループの連結有利子負債残高は、2兆6,993億円であり、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、事業資金を金融機関からの借入及び社債の発行等により調達しています。当社グループは、「中長期経営計画」に掲げた親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(劣後ローン・劣後債資本性調整後D/Eレシオ)0.7以下を目標とし、健全な財務体質の維持に努めていますが、金融市場が不安定となり又は悪化した場合、金融機関が貸出を圧縮したり格付機関が当社の信用格付の引き下げをしたりした場合等においては、必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できず、資金調達コストが増加することにより、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。その結果として、「中長期経営計画」に掲げた上記目標を達成できない可能性もあります。
(6)海外の主要市場における関税引上げ、輸入規制
これまで当社グループにおける一部の鋼材の輸出取引において、米国や東南アジア諸国等から反ダンピング税等の特殊関税を賦課されています。当社グループは、輸入規制を受ける可能性を認識のうえ輸出取引を行うなど、適切に対応するよう努めていますが、将来、海外の主要市場国において関税引上げ、特殊関税の賦課、数量制限等の輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受けることにより、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(7)会計制度や税制の大幅な変更
当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され又は当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社は、グローバル展開の一層の推進による企業価値の向上と資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的に、連結財務諸表において国際会計基準(IFRS)を任意適用しています。
(8)各種法的規制、訴訟等
当社グループの事業活動はグローバルに展開しており、日本及び海外各国・地域の法令や規制に従って事業活動を行っています。法規制には、商取引法、競争法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、個人情報保護関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な政府の許認可及び経済安全保障に関連する規制等があります。今後、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施していますが、当社グループが何らかの法規制に違反したと認定された場合には、課徴金等の行政処分、罰金等の刑事処分を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループの広範な事業活動から、様々な第三者から訴訟を提起される可能性があり、重要な訴訟において当社グループに不利な判断がなされた場合には、事業活動の停止・制約、補償等により、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当期における当社グループの経営成績の状況の概要は、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
② 当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー
当連結会計年度末における資産、負債、資本については、下記のとおりです。
連結総資産は9兆5,670億円と、前連結会計年度に比べて8,147億円増加しました。負債は4兆9,206億円と、前連結会計年度に比べて653億円増加しました。資本は4兆6,464億円と、前連結会計年度に比べて7,494億円増加しました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は4兆1,811億円となり、有利子負債は当期末2兆6,993億円となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.65倍(劣後ローン・劣後債資本性調整後0.51倍)となりました。
(総資産)
現金及び現金同等物は、前期末(5,510億円)から1,193億円増加し、当期末6,704億円となりました。これは、高水準の事業利益による営業活動キャッシュ・フローの収入等によるものです。
棚卸資産は、前期末(1兆7,565億円)から3,293億円増加し、当期末2兆859億円となりました。これは、原料価格上昇等によるものです。
有形固定資産は、前期末(3兆526億円)から1,309億円増加し、当期末3兆1,836億円となりました。これは、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3高炉改修や瀬戸内製鉄所広畑地区における電気炉の新設等を実行したこと、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、名古屋製鉄所における次世代型熱延ライン新設工事を実行したこと等によるものです。
持分法で会計処理されている投資は、前期末(1兆790億円)から1,314億円増加し、当期末1兆2,105億円となりました。これは、持分法による投資利益(1,029億円)等によるものです。
(負債)
有利子負債は前期末(2兆6,533億円)から460億円増加し、当期末2兆6,993億円となりました。これは、次期以降の経済情勢・調達環境見通し等を勘案した借入金の調達、社債の発行等による増加があった一方で、長期借入金の返済を実行したこと等による減少があったことによるものです。
営業債務及びその他の債務は、前期末(1兆5,267億円)から654億円増加し、当期末1兆5,921億円となりました。これは、主に未払金の増加によるものです。
未払法人所得税等は、前期末(1,099億円)から580億円減少し、当期末519億円となりました。これは、主に未払法人税等の減少によるものです。
(資本)
利益剰余金は、前期末(2兆5,147億円)から5,643億円増加し、当期末3兆791億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益(6,940億円)等による増加があった一方で、配当金の支払いによる減少(1,659億円)があったことによるものです。
その他の資本の構成要素は、前期末(1,969億円)から1,442億円増加し、当期末3,411億円となりました。これは、為替相場の変動による、在外営業活動体の換算差額の増加(939億円)、金利の変動等による、キャッシュ・フロー・ヘッジの公正価値の純変動(338億円)等によるものです。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは6,612億円の収入となりました(前期は6,156億円の収入)。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,665億円の支出となりました(前期は3,788億円の支出)。
この結果、フリーキャッシュ・フローは2,946億円の収入となりました(前期は2,367億円の収入)。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,976億円の支出となりました(前期は613億円の支出)。
以上により、当期末における現金及び現金同等物は6,704億円(前期は5,510億円)となっています。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益8,668億円に、減価償却費及び償却費(3,401億円)の加算等による収入があった一方、棚卸資産の増加(3,095億円)、法人所得税の支払(2,144億円)、持分法による投資損益(1,029億円)の控除の調整等による支出がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入(886億円)等があった一方、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3高炉改修や瀬戸内製鉄所広畑地区における電気炉の新設等を実行したことに加え、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、名古屋製鉄所における次世代型熱延ライン新設工事を実行したこと等による有形固定資産及び無形資産の取得による支出(4,700億円)等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前期末及び当第2四半期末の配当(1,659億円)等による支出がありました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は製造原価による。
2 上記の金額には、グループ向生産分を含む。
当連結会計年度における受注状況をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注)1 上記の金額には、グループ内受注分を含まない。
2 「製鉄」、「ケミカル&マテリアル」は、多種多様な製品毎に継続的かつ反復的に注文を受けて生産・出荷する形態を主としており、その受注動向は、生産実績や販売実績に概ね連動していく傾向にあり、また、需要動向等についても、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載していることから、金額又は数量についての記載を省略している。
当連結会計年度における外部顧客に対する販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 前連結会計年度及び当連結会計年度における輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
2 主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりである。
(注) 総売上収益に対する割合が10%未満の場合は、当該連結会計年度の記載を省略し、「-」表示している。
当連結会計年度において、生産及び販売の実績金額が著しく増加しています。なお、生産、受注及び販売等に関する特記事項については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」等に記載しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当期の世界経済は、ウクライナ情勢によるインフレの進行や欧米の金融引締め等の影響による下押し圧力があったものの、全体的に底堅い動きとなりました。日本経済については、緩やかに持ち直したものの、円安等の影響により、大幅にインフレが進行しました。
鉄鋼需要については、上期は中国においてロックダウン解除後もサプライチェーン正常化に時間を要し需要回復が遅れました。また、米国・欧州ではインフレが進行し、新興国では通貨安で景気が悪化するなど、鋼材市況は急速に減速しました。下期は、中国においてはゼロコロナ政策終了により経済が回復基調にあったものの、米国では金利政策により景気が後退し、欧州・新興国では景気悪化が継続するなど、世界的な鋼材需要は低迷しました。こうした状況において、世界粗鋼生産量は過去に例を見ない長期間かつ大規模な減少が継続し、当社単独粗鋼生産量も2012年の経営統合後ピークの4,900万トンレベルから、当期は3,425万トンに著しく減少しました。
当期の連結業績については、極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、通期の売上収益は7兆9,755億円(前期は6兆8,088億円)、事業利益は9,164億円(前期は9,381億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は6,940億円(前期は6,373億円)となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。当社グループは、製鉄事業を中核として、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しており、製鉄セグメントが連結売上収益の約9割を占めています。
(当期のセグメント別の業績の概況)
<製鉄>
製鉄セグメントの売上収益は7兆2,455億円(前期は6兆1,536億円)、セグメント利益は8,614億円(前期は8,710億円)となりました。
製鉄セグメント利益の前期に対する増減△96億円の主な要因は次のとおりです。
極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、当社は従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、生産・出荷数量の減少により1,350億円の減益となったものの、マージン改善による600億円の増益、コスト改善効果による500億円の増益等により、前期並みのセグメント利益となりました。
<エンジニアリング>
日鉄エンジニアリング㈱においては、カーボンニュートラル社会への貢献と災害に強いレジリエントな街づくりに関連する事業の成長に向けて、廃棄物発電・洋上風力発電事業等及び免制震デバイスや橋梁商品の開発・販売等の拡大に取り組んでいます。また、安定収益事業の強化・拡大のため、M&Aにより廃棄物処理O&M(運転・維持管理)事業やガス導管事業を取得し、洋上風力発電施設のO&M事業に関しては、専門企業や作業船保有企業との協業を開始しました。当期は環境・エネルギーセクターを中心に各セクターとも、前期までに積み上がった受注プロジェクトを着実に遂行したことにより、売上収益、事業利益とも増加しました。エンジニアリングセグメントの売上収益は3,522億円(前期は2,792億円)、セグメント利益は116億円(前期は63億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
製鉄プラントセクターは、高炉改修の大型案件が完工したこと等により、538億円と前期(415億円)に対して増加しました。環境・エネルギーセクターは、廃棄物発電、バイオマス発電、洋上風力発電、海外海洋等の事業で大型案件の工事が進捗し、2,374億円と前期(1,823億円)に対して増加しました。都市インフラセクターは、免制震デバイスや橋梁商品、大型物流施設の建設等において堅調な売上を計上し、690億円と前期(603億円)に対して増加しました。
<ケミカル&マテリアル>
日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、原燃料価格の高騰や年央からの半導体等の需要減少等により、前期比で減益となりました。ケミカル&マテリアルセグメントの売上収益は2,745億円(前期は2,498億円)、セグメント利益は161億円(前期は253億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
コールケミカル事業では、タイヤ向けカーボンブラックの販売は好調に推移しましたが、黒鉛電極用ニードルコークスは需要の低迷が継続し、620億円(前期は390億円)となりました。化学品事業では、ベンゼン市況は概ね安定的に推移しましたが、スチレンモノマーやビスフェノールAは中国での生産設備の新増設が進む一方、需要低迷が続き、1,250億円(前期は1,200億円)となりました。機能材料事業では、半導体関連材料、ディスプレイ関連材料の急速な需要減が進み、販売数量が減少しました。複合材料事業では、インフラ更新の需要は継続する見通しながら、着工の遅れから、主力の土木・建築向け補強材料の販売数量は減少しました。一方、スポーツ分野向けを中心に炭素繊維の販売は好調を継続し、機能材料と複合材料をあわせて880億円(前期910億円)となりました。
<システムソリューション>
日鉄ソリューションズ㈱においては、今後の日本企業のDX本格展開を見据え、お客様との関係性を深化させながら、全社を挙げてDXニーズを最大限に捕捉し、事業拡大に取り組んでいます。注力領域の一つであるデジタル製造業領域では、無線IoTセンサ活用プラットフォーム「NS-IoT」や統合データプラットフォーム「NS-Lib」を構築し、当社のDX推進に取り組むとともに、製薬企業と共同で統合データ利活用基盤を構築するなど製造業のDX推進支援に取り組みました。また、AI領域、業務プロセスのデジタル化支援、データ利活用領域、豊富なDX人材リソース等、それぞれ強みを有する各企業との資本業務提携や戦略的パートナーシップ契約の締結に加え、電力業界、金融業界及び食品業界向けの新規ソリューション開発を行うなど、DXニーズへの対応力の強化に取り組みました。システムソリューションセグメントの売上収益は2,925億円(前期は2,713億円)、セグメント利益は321億円(前期は308億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
業務ソリューションは、産業、流通・サービス分野におけるプラットフォーマー向けの増加に加えて、公共公益分野での官公庁向け大型基盤構築案件により、1,898億円と前期(1,757億円)に対して増加しました。サービスソリューションは、ITインフラ分野におけるクラウド事業を中心とした増加に加えて、鉄鋼分野における当社及び当社グループ向けの増加により、1,019億円と前期(947億円)に対して増加しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」に掲げた収益・財務体質目標、株主還元とそれに対する当期の状況は以下のとおりです。
2022年度の連結業績につきましては、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組み、通期の売上収益は7兆9,755億円(うち上期3兆8,744億円、下期4兆1,011億円)、事業利益は9,164億円(うち上期5,417億円、下期3,747億円)、ROSは11.5%(うち上期14.0%、下期9.1%)となりました。
(*) 劣後ローン・劣後債資本性調整後
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー」 に記載しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(資本政策)
一定水準の財務健全性が維持されることを前提として、当社グループは投下資本の運用効率を重視し、投資先への資本の投入(資本的支出、R&D、M&A含む)によって企業価値を最大化する資本政策を推進しています。それは、資本コストを超過する収益の創出が期待され、持続的な成長を可能にすると同時に、株主への利益還元によって株主の要求を満たすものです。
当社グループは、上記資本政策の達成に必要な資金を、主として「稼ぐ力」の維持と向上によって生み出される営業キャッシュ・フローから獲得することに加え、必要に応じて銀行借入や社債の発行等、外部からの資金調達も実施しています。
また当社グループは、ROS、ROE及びD/Eレシオを中長期的な収益の成長と財務体質の健全性を達成する上での主要な経営管理指標としています。
剰余金の配当等につきましては、本報告書「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しています。
また、自己株式の取得については、機動性を確保する観点から、定款第33条の規定に基づき取締役会の決議によることとします。取締役会においては、機動的な資本政策等の遂行の必要性、財務体質への影響等を考慮したうえで、総合的に判断することとしています。
(資金需要の動向に関する経営者の認識と資金調達の方法)
1)中長期経営計画の実行状況
2021年3月に公表した「日本製鉄グループ中長期経営計画」では、成長の実現に向けた経営資源投入として、5年間で2兆4,000億円規模の設備投資と6,000億円規模の事業投資に加え、カーボンニュートラル生産の実現に向けた研究開発や設備投資の実行、デジタルトランスフォーメーション戦略への資金投入を計画しています。これら経営計画に必要な投資を実行する前提で、2025年度断面では、D/Eレシオ(※)0.7以下を実現することを目標としています。
(※)劣後ローン・劣後債資本性調整後
上記方針のもと、設備投資については、強靭な国内生産体制を再構築するための投資や戦略商品の対応力強化に資する投資等を積極的に進めてきました。具体的には、自動車業界において一層高まっていくと想定される車体の軽量化・高強度化ニーズに応えるべく、超ハイテン鋼板等の高級薄板の生産体制を抜本的に強化するため、戦略的な投資として約2,700億円を投入し、自動車鋼板製造の中核拠点である名古屋製鉄所に次世代熱延ラインを新設することを2022年5月に決定しました。また、電磁鋼板についても、カーボンニュートラルに向けた社会的ニーズを踏まえ、既決定投資に加え、新たに約900億円を投入し、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)・九州製鉄所八幡地区においてハイグレード無方向性電磁鋼板の能力対策を実施することを2023年5月に決定しました。
また、事業投資については、将来的なグローバル粗鋼1億トン体制及び外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への進化に向けた施策を推進しています。2022年度においては、2022年9月に、ArcelorMittal Nippon Steel India Limitedのハジラ製鉄所での鉄源拡張、及び、港湾・電力等重要インフラの買収を通じた、同社における製鉄事業基盤強化施策の実施を決定しました。2022年12月には、鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大するため、持分法適用関連会社であった日鉄物産株式会社に対する公開買付け及び子会社化を決定し、2023年4月に公開買付けが完了・成立しました。
環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました(支援規模:1,935 億円)。
2)資金調達
上記経営計画に関して多額の資金所要が見込まれるなか、調達コストを抑制しながら成長投資資金を確保し財務基盤を強化することを目的として、2021年10月に転換社債型新株予約権付社債3,000億円を発行しました。2023年3月には、脱炭素社会に向けた取組みを推進していくための所要資金を調達する手段として、グリーンボンド(無担保社債)500億円を発行しました。
また、フリーキャッシュ・フローの状況に応じて、調達環境、金利条件等を勘案して、最適なタイミングで資金調達面での対応を図ります。
2023年3月末における劣後ローン・劣後債資本性調整後のD/Eレシオは0.51倍となり、2025年中長期経営計画の目標である0.7倍以下を維持しています。中長期的に機動的かつ確実な成長戦略の遂行を継続するため、財務規律を重視した キャッシュ・マネジメントを引き続き実行していきます。
(流動性管理及び資金調達の方針について)
当社グループの円滑な事業活動に必要な資金を確保するため、手許資金及び外部借入を有効に活用しています。手許資金については、実需に見合った最低限の現預金を保有する方針としており、過去及び将来の資金繰りを勘案し、最適な保有残高を志向しています。外部借入については、安全性・安定性・柔軟性を担保する観点から基本的な調達の枠組みを決定しています。具体的には、不測の事態発生時における、当社の支払余力を確保すべく、適正な長期固定適合比率を維持するとともに、安全性の補完のためにコミットメントライン(当社連結:6,109億円)契約を締結しています。
また短期資金と長期資金のバランスを踏まえた有利子負債残高の設計により自由度を確保しており、当該枠組みの範囲内で、最適な資金調達の実現を志向しています。
③会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、本報告書「第一部企業情報 第5 経理の状況」に記載しています。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、引当金の計上、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っています。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社が特に重要と判断している会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下です。
a.非金融資産の減損
当社グループは、資産が減損している可能性を示す兆候のいずれかが存在する場合、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額を回収可能価額として見積り、回収可能価額が資産又は資金生成単位の帳簿価額を下回る場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しており、使用価値は見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算出しています。当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでいます。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想されます。なお、当期末における有形固定資産の残高は3兆1,836億円、無形資産の残高は1,574億円となっています。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定に基づいて算定された将来における課税所得の見積り等の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識していますが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正などにより回収可能額が変動する可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,032億円です。
(注) 上記「契約会社名」及び「相手方当事者」の欄には、開示上重要でない者については記載していない。
*1 Ternium Investments S.à r.l.等(以下「テルニウム社等」という。)とのUsinas Siderúrgicas de Minas Gerais S.A. – USIMINAS (以下「ウジミナス社」という。)に関する株主間協定については、ブラジル独占禁止当局の承認等の前提条件が充足され、当社等が保有するウジミナス社株式のテルニウム社等への一部譲渡が完了した日をもって、ウジミナス社の運営体制等に関して、改訂する予定である。
*2 契約内容を一部改訂のうえ、契約期限を延長した。
当社は、需要家のニーズや環境・エネルギー等に対する社会的ニーズが多様化するなかで、「技術先進性」の拡大を通じた利益成長とカーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した製鉄技術構築に資する研究開発分野に対し、重点的に経営資源を投入しています。鉄鋼研究所、先端技術研究所及びプロセス研究所の3つの中央研究組織と各製鉄所に配置した技術研究部が強固な連携体制を構築し、「リサーチ・アンド・エンジニアリング」の理念のもと、基礎基盤研究から、応用開発、エンジニアリングまでの一貫した研究開発を推進しています。
当社の強みは、①研究開発とエンジニアリングの融合による総合力及び開発スピード、②需要家立地の研究開発体制と需要家ニーズに対する的確なソリューション提案力、③高度な基盤技術に基づく新技術の開発力、④製鉄プロセス技術を基盤とした環境・エネルギー課題への対応力、⑤産学連携、海外アライアンス及び需要家との共同研究です。当社はこれらの強みを活かし、鉄を中心とした新しい機能を持つ商品開発をはじめ、カーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した革新的生産プロセスの創出と迅速な実用化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会の発展に貢献していきます。
当連結会計年度における当社及び連結子会社全体の研究開発費は
(製鉄)
当セグメントに係る研究開発費は
当社は、3地点の研究開発センター(富津市、尼崎市、波崎市)を軸に、①鉄鋼研究所では、鉄鋼材料・商品と利用技術・ソリューション研究開発、②先端技術研究所では、共通基盤技術研究及びCO2の分離回収や再利用に関する研究、新素材事業を中心とした製鉄以外のセグメント事業支援開発、③プロセス研究所では、設備エンジニアリングと設備保全技術開発を担当する設備・保全技術センターと密接な連携を図りながらCO2削減も考慮した製鉄プロセス関連の研究開発に取り組み、開発の短期化・効率化を目指し、鉄源コストの削減・基幹ラインの生産性の抜本的向上・省CO2化等の研究開発の加速化を進めてきました。
<薄板>
・当社は、マツダ㈱(以下、「マツダ」)と共同で、1.8GPa級及び1.3GPa級アルミめっきホットスタンプ鋼板(以下、AL-HS鋼板)を使用したTWB(テーラードウェルドブランク)構造の軽量Bピラー開発に取り組み、このたびマツダ新型ラージSUVに採用されました。当社とマツダは本軽量Bピラーの実車適用を目指し、当社のNSafe®-AutoConcept(NSAC)技術である「直水冷ホットスタンプの実機設備化に向けての流体解析等による最適化」及び「衝突解析、多機能衝突試験等による板厚最適化」を活用し取り組みました。これまでAL-HS鋼板をTWB技術で接合すると、溶接部へアルミニウムが混入し継手強度が低下する課題や、異強度・異厚のTWBは部品の品質精度にばらつきが生じる課題があり、自動車車体への適用は困難でした。このたび九州製鉄所八幡地区で事業化した当社独自開発のTWB接合技術は、高い継手強度を実現しており、TWBレーザ接合技術の自動車車体への適用が可能となりました。さらに本軽量Bピラーでは、TWBと部分パッチワーク技術の適用により、従来の一体型Bピラーからレインフォース部品の省略が可能となり、34%の軽量化と衝突安全性の向上を実現しています。当社は、NSAC技術の適用することが、社会的共通課題である自動車安全性能の向上とカーボンニュートラル社会を実現する解決策の一つだと考えています。今後も、自動車の一層の軽量化、衝突安全性能向上及び温室効果ガス排出量の削減に貢献していきます。
・当社は、このたび、電磁鋼板及びニッケルめっき鋼板(商品名:スーパーニッケル™)において、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の「SuMPO環境ラベルプログラム」に基づく「エコリーフ宣言」の認証を取得しました。電磁鋼板は、電動車・各種電気機器のモーター・発電機中の鉄心や、送配電に使われる変圧器中の鉄心等に使用される鋼材です。電動車用モーターの需要拡大に加えて高性能要求や変圧器の高効率化の規制強化の動きがあるなか、相反するニーズを高レベルでバランスさせた最適材料の提案、能力・品質向上対策の推進を通じ、国内外のお客様から高い評価を得ています。スーパーニッケル™は、脱炭素社会の実現に向けて重要性を増す蓄電池(二次電池)のほか、乾電池(一次電池)や文房具等のコンシューマー商品、自動車等の分野で使用される薄板製品です。当社が提供するスーパーニッケル™の特徴である優れた加工性、厳格な介在物管理、めっき密着性及び豊富な素材メニューを基に、スーパーニッケル™を使用されたお客様の製品の長寿命化、生産性向上、高強度化等が図られ、これによりCO2削減及び環境負荷低減に貢献しています。
<厚板>
・当社は国立研究開発法人海上/港湾/航空技術研究所及び今治造船㈱と共同で、公益社団法人発明協会による令和4年度全国発明表彰において「高延性厚鋼板(商品名 NSafe®-Hull)を用いた衝突安全性に優れた船体構造の発明」にて「発明賞」を受賞しました。タンカーからの油流出による海洋汚染が問題となり、船殻幅の拡大や構造変更による安全性の向上が検討されましたが、これらの構造対策は施工コストや船体重量の増加等、地球温暖化につながるうえ、船主負担増大も招きます。そこで、船体構造変更によらない有効で経済的な代替手段が期待されました。本発明者らは、上述のような船体構造変更ではなく、衝突による船舶の損傷を軽減する材料技術を発明しました。事故統計等も踏まえ、船舶の損傷を軽減するため、船側部の外板及び内板、さらにそれらに付随する補強部材に、国際船級協会連合の統一規格で規定された全伸びの値の1.4倍以上の全伸びを有する高延性厚鋼板を使用することで、十分に厳しい衝突速度(12ノット)でも超大型原油タンカーの破口発生を低減することが可能となりました。本発明により、船舶衝突に伴う人命の損失や積荷の逸失を防ぐことに繋がることはもちろんのこと、油漏洩による海洋生態系や漁業への影響を低減することは、国連のSDGs「海の豊かさを守ろう」にも整合します。すでに数多くの船舶に採用され、実装が進んでいます。
・当社の開発したCORSPACE®は令和4年度に2件の表彰を受けています。経済産業省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の4省連携により2005年に創設された、第9回「ものづくり日本大賞」において「鋼橋/港湾設備のライフサイクルコスト縮減に貢献する塗装周期延長鋼CORSPACE®の開発」が優秀賞を受賞しました。さらに、公益財団法人市村清新技術財団より、第55回(令和4年度)市村産業賞において、「鋼橋/港湾設備の長寿命化に資する塗装周期延長鋼」が貢献賞を受賞しました。重要な社会インフラである橋梁の多くは、高度経済成長期に建設され、老朽化が進行しています。老朽化した橋梁の補修・維持管理費用の縮減や少子高齢化に伴う労働人口の減少に対応可能な橋梁のミニマムメンテナンス化・長寿命化技術の構築が課題となっています。鋼橋の多くは塗装防食が施されていますが、塗装の傷部や部材鋭角部等の塗装欠陥部において鋼材の腐食が集中・進展することから、塗装寿命が著しく短縮する課題がありました。そこで、当社は塗装の弱点である塗装欠陥部の腐食抑制機能を有する新たな耐食鋼の開発に取り組みました。大気環境下での塗装欠陥部の腐食は薄い水膜中で進みます。当社が独自に考案した腐食計測手法により、大気環境下での塗装欠陥部の腐食は、水溶液が乾燥する過程で溶け出した鉄イオンと塩化物の化学反応による酸性溶液中で進行することを初めて解明しました。本知見を基に、酸性溶液で鉄が溶け出る反応を遅らせる元素を鋭意探索し、鋼材に微量のSnを添加することで、溶け出したSnイオンにより鉄の溶解反応を抑制し、塗装欠陥部の塗膜剥離面積を従来鋼に対して半減させる塗装周期延長鋼CORSPACE®を開発しました。CORSPACE®は、従来鋼に比べて塗装欠陥部の塗膜剥離面積を半減し、橋梁の塗装塗り替え期間を約2倍に延長でき、橋梁のライフサイクルコストを大幅に低減可能です。塗替え回数の削減により塗料製造に伴うVOC排出も抑制できることから、地球環境負荷の軽減にもつながります。塩害の厳しい沿岸部だけでなく、融雪塩を散布する積雪地域等を中心に、国内で50超の橋梁に採用され、また港湾クレーン等にも展開されています。CORSPACE®は、今後も国土強靭化や東日本大震災の復興に貢献し、持続的な社会の実現と安心安全な社会構築に大きく寄与します。
<鋼管>
・当社は化学工業プラント用の低炭素オーステナイト系ステンレスシームレス鋼管「NEXAGE®347AlPha」を新たに開発し、このたび需要家から初めて受注しました。NEXAGE®347AlPhaは低炭素オーステナイト鋼の特徴である耐食性と溶接部で発生する応力緩和割れの抑制効果に加え、汎用鋼の347Hに比べて高強度な独自開発鋼です。天然ガスから水素を製造するプラントでの使用にも適した材料であるため、カーボンニュートラル分野で貢献できることを期待しています。当社は過酷な環境用途に独自のオーステナイト系ステンレス鋼/Ni基合金を開発し、次世代のマテリアルソリューション「NEXAGE®」シリーズとして販売を開始しています。そのなかでも耐食性に優れた低炭素オーステナイト鋼のラインナップは特に過酷な環境である原油やガス等を高温に加熱して分解・改質する化学プラントにおいて、メンテナンス性向上とランニングコスト削減に貢献できる製品です。
<棒線>
・当社は2022年2月に「棒鋼製品」及び「線材製品」にて、一般社団法人サステナブル経営推進機構の「SuMPO環境ラベルプログラム」に基づく「エコリーフ宣言」を品種包括的に取得しておりましたが、棒鋼工程省略鋼、線材工程省略鋼において追加で認証を取得しました。棒鋼工程省略鋼はお客様での複数・多岐にわたる鋼材加工工程の一部を省略することができます。最終製品や部品としての品質要求を満たすため、鋼材加工工程においても相応のエネルギーを消費し、CO2が排出されます。当社はその課題解決のため、当社製造段階において独自の熱処理や製造工程の特別管理、微量元素添加等により鋼材特性を引き出すことで、鋼材加工における熱処理等の一部の工程省略を実現しています。CO2排出量削減が社会・市場から求められていくなか、今回エコリーフ宣言を取得した棒線工程省略鋼の活用によるCO2削減アクションは、お客様自身のGHGプロトコル・スコープ1削減を市場にPRいただくことを可能にします。
<建材>
・当社は、2020年4月に圧延H形鋼としては世界最大のウェブ高さ1200mm・フランジ幅500mmの断面を持つメガハイパービーム®を販売開始し、これまで大型物流施設や工場、超高層ビル案件等を中心に採用いただいています。2022年7月には、ウェブ高さ800mm~1050mm・フランジ幅450mm~500mmのサイズを新たにラインナップに追加しました。これによりメガハイパービーム®の製造シリーズが18シリーズから30シリーズへ拡大し、フルラインナップとなりました。今回のメガハイパービーム®の製造シリーズ拡大により、建築物の大型化に伴う鉄骨の大断面化、深刻化する人手不足を背景としたさらなる工期の短縮化のニーズに最大限にお応えできるとともに、荷重が大きくかかる箇所でも梁の長さ・高さを変えずに設計が可能になるなど、需要の高まる大型物流倉庫やデータセンター等でのさらなる採用拡大が期待されます。
・当社は、建物やインフラ構造物の建設市場に対して高度なソリューションを提供するブランド「ProStruct™(プロストラクト)」を立ち上げ、2022年10月より運用を開始しました。ProStruct™は建設市場の様々な課題に応えるために、当社の持つ高性能な鋼材製品と高度な鋼構造技術を組み合わせた「鋼材×利用技術」パッケージを材料から設計・施工までの総合技術サポートとともに提供することを目指します。当社は、大断面の形鋼や強度・靱性に優れた高性能な鋼材製品に加え、その性能を最大限引き出すための工法や設計・施工技術等の利用技術を開発し、建設市場における様々な課題の解決に貢献してきました。ProStruct™は、自然災害に対して「強く・安全」な構造物を「早く・経済的」に建設するために「使いやすく・確実」な鋼材×利用技術パッケージ(ソリューション)を提供することによって、構造物の強靱化・高機能化、工期短縮及びコスト削減に貢献します。さらに、これら3つの強みにより実現される構造の最適化・資材の低減及び鋼材加工・組立の高度化による現場施工の生産性向上は、構造物建設プロセスにおけるCO2排出量の削減にもつながり、「環境にやさしく・持続的」な社会の実現にも貢献します。当社は、建設分野においても市場環境の変化に対応すべく新しい鋼材製品や利用技術を開発し続けており、これらを順次「ProStruct™」に追加していく予定です。
<チタン>
・当社は東邦チタニウム㈱(以下、「東邦チタニウム」)と共同で、第69回(令和4年度)大河内賞において、「直接スラブ鋳造と表層組織制御によるチタン薄板の新製造プロセスの開発」にて大河内記念生産賞を受賞しました。大河内賞は、故大河内正敏博士の功績を記念し、公益財団法人大河内記念会が生産工学、生産技術、生産システムの研究開発及び実施等に関するわが国の業績で、学術の進歩と産業の発展に大きく貢献した個人、グループまたは事業体を表彰する伝統と権威のある賞です。チタン薄板の製造過程にて発生する結晶組織由来の欠陥を低減して品質と生産性を向上させることを目的に、製錬・溶解を行う東邦チタニウムと、圧延を行う当社が共同で「直接スラブ鋳造と表層組織制御」に関わる技術開発に取り組み、スラブ形状に鋳造したチタンインゴット(直接スラブ鋳造)の表層付近の凝固結晶方位を制御することで圧延時の欠陥発生を最小化できることを見出しました。インゴットを製造する溶解炉にて電子ビーム照射条件や引き抜き速度を調整して、鋳型内での初期凝固シェルの成長方向や厚さを最適化し、凝固結晶の方位を狙いの方向に一定程度制御することが可能となりました。さらに、凝固後のインゴットの表面および表層には鋳肌欠陥等の無害化を図る表層処理を施しています。これらの処理により、従来実施していたインゴットからスラブを製造する熱間工程の省略を可能にするとともに、圧延時の疵を低減しています。その結果、トータル歩留まりとエネルギー効率の大幅な向上等が実現でき、品質・価格ともに国際競争力のある高品位チタン薄板の生産に成功しています。さらに、工程省略によるCO2排出量削減につながり、環境負荷軽減にも貢献しています。
<交通産機品>
・当社のインドにおける鍛造クランクシャフト製造・販売会社であるSMI Amtek Crankshaft社は、㈱豊田自動織機のインドにおけるトヨタ車向けエンジン生産子会社Toyota Industries Engine India Pvt. LTDより、2021年度のBest Quality Supplier Award、Zero Defect Supplies Award及びBest Target Achieved Supplier in Deliveryの最優秀品質・製品欠陥ゼロ・最優秀デリバリー各賞をトリプル受賞しました。これまで6年連続で受賞してきたDeliveryに加え、Best QualityとZero Defectを初めて同時受賞したことは、安定的に高品質の製品を継続供給してきたことに加えて、グローバルモデルのさらなる品質改善・レベルアップに貢献したことが高く評価されたものです。
<製鉄プロセス>
・当社は日鉄ソリューションズ株式会社、日鉄テックスエンジ株式会社と共同でLPWA(省電力長距離無線通信)とクラウド技術を用いて、各製鉄所製造拠点データを一元管理する無線IoTセンサ活用プラットフォーム「NS-IoT」を構築し、東日本製鉄所君津地区と鹿島地区において設備の早期異常検知を目的とした実運用を2022年4月より開始しました。各製鉄所製造拠点では、それぞれセンサデータを収集/保持しており、それぞれの知見によって特異点検出など生産管理に活用しています。NS-IoTを導入することで、各製鉄所製造拠点に導入したセンサから取得するデータの管理を一元化し、他拠点から収集した統合ビッグデータが設備の異常検知やトレンド監視へ活用可能となります。また多拠点共通のエンジニアによる監視が可能となるため労働生産性の向上にもつながります。先行して導入した君津地区や鹿島地区における設備の早期異常検知を目的に実証したなかで現場作業での点検負荷の低減を確認しており、今後は全製鉄所製造拠点やグループ会社への適用拡大、さらにはパッケージとして他の製造業などへの展開も視野に入れています。
<スラグ・セメント>
・当社は、北海道増毛町において増毛漁業協同組合と共同で、2004年から磯焼け対策、水産振興を目的に当社が開発した海域向け施肥材ビバリー®ユニットによる海藻藻場の造成に取り組んできました。2014年からは、増毛町別苅海岸にて、海岸線300mにも渡る大規模事業へと展開しました。別苅海岸での造成時から毎年実施している調査で、主にホソメコンブの藻場面積を測定し、造成1年後の2015年0.6haから8年目の2022年には3.3haと5.5倍に拡大していることを確認しました。造成された海藻藻場では大気中のCO2がブルーカーボンとして長期間貯留されることがすでに科学的に証明されていることから、海藻藻場の造成はCO2削減策として注目されています。今回、当社と増毛漁業協同組合が共同で、Jブルークレジット®に申請し、直近5年間の2018年から2022年に吸収・固定化されたCO2量(ブルーカーボン)として、49.5t-CO2の認証を経てクレジットの発行を受けました。これは、北海道のコンブ藻場で初めての認証であり、漁業協同組合と民間企業との共同申請も初めての事例です。今後も、増毛町での取組みを継続するとともに、全国で藻場造成活動を拡大していくことで、当社の技術を活かし、ブルーカーボンによるCO2削減に貢献していきます。
(エンジニアリング)
当セグメントに係る研究開発費は
日鉄エンジニアリング㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・製鉄プラント分野 当社との共研を中心とした先進的製鉄プロセス関連の開発
・環境・エネルギー分野 廃棄物・バイオマス発電プラント競争力強化、コージェネレーションの高効率化、
カーボンリサイクルに向けた研究開発
・海洋分野 洋上風力発電施設の開発、海底パイプライン敷設の開発
・都市インフラ分野 免制震デバイス商品の開発、次世代商品の探索、土壌浄化技術の開発
・陸上パイプライン分野 陸上パイプライン溶接技術の開発
(ケミカル&マテリアル)
当セグメントに係る研究開発費は
日鉄ケミカル&マテリアル㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・コールケミカル製品、化学品、機能材料、複合材料等に関する研究開発
(システムソリューション)
当セグメントに係る研究開発費は
技術進化・ビジネストレンド・社会環境・人々の価値観の変化等の不確実な状況を踏まえ、新技術の探索、評価・検証、顧客企業への新技術導入支援等において長年にわたって蓄積してきた経験とノウハウを基に、社会全体の「サステナビリティ」の実現に向けた将来像を3つの「未来目標」を設定し、取り組みました。
・未来目標1「究極のデジタルツイン(注)」 - すべてをデジタルな世界に転写して再現しよう
・未来目標2「業務を理解・実行できる人工知能」 - 機械の知的能力をとことん人間に近づけよう
・未来目標3「サステナブルな企業情報システム」 - 変化への対応力があり長持ちするシステムにしよう
(注) デジタルツイン:工場の設備・製品等の実世界のオブジェクトをデータとしてデジタルな空間に転写・再現することで、リモートからの監視・制御や、過去の状況の再現・未来の予測シミュレーション等を可能にすること。