第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、インターネットの進展による世界的なコンテンツ流通革命の中で、顧客が満足する新しい価値を創造し、世界規模のデジタルコンテンツ提案型のビジネスを目指すことを経営の基本方針としています。

 

(2)経営戦略等

 当社グループの基本的な経営戦略は、次のとおりです。

 デジタルコンテンツのアグリゲーションに関する戦略等

・高品質なデジタルコンテンツを安定的に収集し、全世界の顧客のニーズにマッチした形で提供できるように最適化する

・販売力が高いオリジナルコンテンツを安定的に供給できる体制を構築し、構造分析に基づく分業化とAIによる効率化を図る

・デジタルの特長(動画、音声、双方向性等)を活かした次世代コンテンツとサービスを開発し、新たな付加価値を創出する

 デジタルコンテンツのディストリビューションに関する戦略等

・顧客ごとに最適なデジタルコンテンツを提供できる販売プラットフォームを、AI等の技術も活かして構築し、デジタルコンテンツ販売高第1位を目指し、社会的・経済的にグループの価値を最大化する

・インターネットを通して、国内だけでなく、英語圏、中国語圏等の全世界の顧客を対象としたグローバルなデジタルコンテンツ販売プラットフォームへと発展させ、コンテンツの販路拡大を目指す

 

(3)経営環境

 当社グループが行っている電子書籍事業は、通信環境の整備やデバイス性能の向上に伴い、電子書籍の普及が進み、市場規模が拡大していますが、比較的、参入障壁が低いため、市場参入企業も多く、市場シェアの獲得競争が激化しています。

 当連結会計年度においては、戦争の長期化や歴史的な円安を背景とした物価高騰等による、ユーザーの消費行動の低下、個人情報保護法の改正に伴うターゲティング広告の規制強化等の影響により、経営環境は、さらに厳しいものとなっています。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① ユーザーが使い易い総合電子書店サービス

 従来から採用しているクラウド型配信方式を拡大し、複数の端末で利用可能なマルチデバイス展開を継続しつつ、スマートフォンやタブレットユーザーをターゲットとした販売の強化を目指します。

 また、ユーザーの声に基づいた、サイト機能、アプリ、ビューア等の利便性の向上や顧客サポートの強化等の改良を行い、サービスを一層充実させる方針です。

 さらに、AIの実用化を行い、検索機能等のユーザビリティの向上を図ります。

 

② コンテンツの拡充

 出版社等との契約をさらに増やし、掲載コンテンツの品揃えを充実させ、ユーザー層の拡大を図ります。

 また、スマートフォン向けに最適化した、タテ読みフルカラーコミック「タテコミ」のコンテンツ数を増加させ、普及促進を強化します。

 合わせて、デジタルならではの演出を加えた次世代コンテンツの開発強化を図ります。ⅰ)コミックを動的演出で見せる「コミックシアター」、ⅱ)小説の文章を短く区切り、画像を追加した「絵ノベル」、ⅲ)「タテコミ」にアニメーション効果を付加した「タテコミMove!」、ⅳ)「タテコミMove!」に人気声優によるボイスを付加した、スマホで見るタテ型マンガアニメーション「アニコミ」、ⅴ)3DCGゲームをタテコミ形式にコミカライズした新コンテンツ「Gamtoon」等の開発・改良を進め、制作体制を強化します。

 さらに、オリジナルコンテンツの制作体制を強化し、自社レーベルを通じて、掲載数の増加を目指します。

 

③ 認知度の向上

 TVCM等のマス広告を実施し、ユーザー層の拡大を図ります。集客のためのプロモーション強化を積極的に行うとともに、広告効果を継続的に検証し、AIを活用しながら広告効率の向上を図り、会員数の増加と当社グループが運営する電子書籍販売サイトの認知度向上に努めます。

 また、各種キャンペーンやニュースリリースを積極的に行うとともに、SNSを活用してユーザーと対話する機会を増やしていきます。

 

④ 販売システム及び電子書籍制作掲載体制の合理化及び構築

 販売システムについては、次々と発表される新端末に迅速に対応するため、システムの統一化、応用性の向上を図ります。

 また、データ量の増加による回線負荷への対応や、有事の際のサービス継続性強化のため、サーバー及び回線の増強や、バックアップ体制の強化等、運用保守の改善に努めていきます。

 電子書籍制作掲載体制については、電子書籍素材の一元管理による効率的な制作体制の強化、制作関連システムの自動化や合理化を進めていきます。

 

⑤ 海外での電子書籍販売

 海外での電子書籍販売については、翻訳をはじめとし、様々な課題を抱えていますが、国内に比べてコンテンツ市場が大きく、また、拡大が見込まれています。英語圏、中国語繁体字圏、中国語簡体字圏、韓国語圏に向けて電子書籍事業を展開し、国外での事業拡大を目指します。

 

⑥ ブランドの確立

 社会的な認知が広がるとともに、市場参入業者も多く、厳しい競争が続く電子書籍業界の中で、ユーザーから選ばれる電子書籍販売サイトを目指し、ブランド構築を進めていきます。

 運営サイトの統合、代替がきかないオリジナリティの高いサイト構築等を行い、競合他社との差別化を図り、競争優位性があるブランドの確立を目指します。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、日本国内における電子書籍販売売上高シェア第1位を目標として経営を行っており、電子書籍販売売上高を、目標の達成状況を判断するための指標としています。

 また、同時に、全世界での電子書籍販売売上高の向上も目標としており、海外での電子書籍販売売上高を、目標の達成状況を判断するための指標としています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、顧客第一主義のもと、イノベーションの創出を実現し、世界規模のデジタルコンテンツの普及と発展を推進することを経営の基本と考え、サステナビリティ経営に取り組んでいます。

 サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視・管理するため、IR関連業務の担当者をサステナビリティ推進担当者として任命しています。サステナビリティ推進担当者から、国際サステナビリティ基準審議会の公表情報及び対応事例情報等について、当社の社長を議長とするIR対応会議にて定期的に報告を受けています。

 

(2)リスク管理

 IR対応会議において報告された情報を参考に、当社グループのリスク・機会を評価・識別しています。対応が必要と判断された場合、適切な対応策が講じられる体制となっています。

 

(3)戦略

(気候変動に関する情報)

 当社グループが営む電子書籍事業は、印刷物・配送が不要になることにより、紙資源(森林資源)の消費減少、印刷機械の稼働による電力の節減、環境悪化の抑制につながるため、サステナビリティの取組みは、当社グループの事業の発展・拡大に努めることを基本方針としています。

 

(人的資本に関する情報並びに指標及び目標)

 当社グループは、人的資本が重要な経営資本であると認識しており、人材の多様性の確保と人材育成の強化を進めるために、企業価値の持続的な成長が実現できるような人材育成及び社内環境整備の方針を定め、人員計画と経営計画を策定します。また、戦略会議を定期的に開催し、多様な人材が活躍できる職場環境の構築に取り組んでいます。

 なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難です。このため、下記の女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等についての目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。

 

<管理職の構成比>

対象

目標

実績(2023年3月31日現在)

女性

30%超

28.6%

外国人

20%超

14.3%

中途採用

50%超

100.0%

 

 また、人材育成及び社内環境整備の方針は下記のとおりです。

 ① 採用

管理職の構成比目標を踏まえた採用を実施する

 ② 教育

ⅰ、管理職の構成比率を踏まえ、管理職候補者を認識し、対象者に対して、OJTと外部セミナー等により

  リーダー的な業務教育を実施する
ⅱ、管理職の構成比率を踏まえ、リーダー任命の対象者を選抜する。リーダー任命者には、OJTと外部セ

  ミナーを通じて、管理業務教育を実施する

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)競合他社の影響について

 電子書籍販売事業には、特許等による特別な参入障壁が存在していないため、多数の企業が参入しています。

 競合他社が、当社グループに比べて、ユーザーに支持されるサービス提供や効果的な集客施策を実施した場合は、当社グループの収入及び収益が減少するリスクがあります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 当連結会計年度以前から、競合他社との競争は激化しており、リスクは既に顕在化しています。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 競合他社に比べて、当社グループが運営する電子書籍販売サイトがユーザーに支持されない、または、有効な集客施策を実施することができない場合は、当社グループの収入が減少し、収益も減少します。

③ リスクへの対策

 当社グループは、以下のリスクへの対策を実施しています。

ⅰ.広告宣伝、販売促進の集客施策の積極的な実施

ⅱ.広告宣伝施策において、継続的な効果測定を行うとともに、AIの導入を進め、効果の向上に努める

ⅲ.ユーザーニーズを調査し、ユーザビリティの向上を目的とした、恒常的なサイト改良の実施

ⅳ.コンテンツ検索機能の向上を目的としたAIの導入の促進

ⅴ.既存の電子書籍の販売強化を行うと同時に、デバイス、通信インフラ環境の発展・普及に合わせて、ユーザーにとって魅力的な次世代コンテンツの開発

ⅵ.国内市場だけでなく、海外市場への積極的な進出

④ リスクの重要性・水準の変化

 参入障壁が存在しない電子書籍市場では、2010年の電子書籍元年以前から、競合他社との激しい競争が続いています。そのため、リスクの重要性・水準は、当連結会計年度末現在においても大きな変化はありません。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 当社グループの経営方針・経営戦略は、当該リスクを踏まえて決定されています。また、経営戦略と整合したリスク対策が実施されています。

 

(2)海賊版サイトについて

 電子書籍は、電子データであるため、違法配信リスクが存在しています。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 リスクが顕在化する可能性や時期については、予測することが困難です。国内外を含めて海賊版対策の強化を図ることで、将来的にはリスクが低下する可能性があります。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 リスクが顕在化した場合の影響を想定することは困難です。過去に影響があった「漫画村」による電子書籍業界に与えた被害額は3,200億円(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構による試算)と推定されています。

③ リスクへの対策

 海賊版サイトをはじめとしたさまざまな電子書籍事業に関する問題に対応するため、読者への正規版購入と著者への収益還流を推進することを目的とし、電子書店5社(株式会社アムタス、株式会社イーブックイニシアティブジャパン、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社、株式会社パピレス、株式会社ビーグリー)が発起人となり、「日本電子書店連合」を発足し、運営しています。

 「日本電子書店連合」は、正規の電子書店の公認マーク(「ABJマーク」)の策定や海賊版対策及びSTOP!海賊版の啓発活動等を行っている、一般社団法人ABJに協力しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 リスクの重要性・水準は、電子書籍の市場規模に比例して大きくなっていると判断しています。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針・経営戦略と直接的な関連性はありませんが、その前提である電子書籍市場の健全な発展に悪影響を与えるリスクとして認識しています。

 

(3)システム障害について

 当社グループが行っている電子書籍事業を営むためには、コンピューターネットワークシステムの構築及び運用が不可欠なものとなっています。

 当社グループが構築・運用しているコンピューターネットワークシステムに障害が発生した場合は、障害の規模に応じて当社グループの収入及び収益が減少するリスクがあります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 リスクの顕在化を防止するため、当社グループで予測可能なリスクについて、対応策を実施しています。

 ただし、予測不可能な、ハードウェアの不具合、通信回線の障害、新たなコンピューターウィルスのほか、自然災害、火災、停電等によるリスクが顕在化する可能性の程度や時期を推定することは非常に困難です。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 リスクが顕在化した場合の影響を推定することは困難です。システム障害の規模に応じて、当社グループの事業運営が阻害されるため、収入及び収益が減少します。

③ リスクへの対策

 当社グループ内に、コンピュータネットワークシステムの構築及び運用の専門部署を設けて、障害発生の抑止に努めています。

 社外データセンターへのサーバ分割設置、無停電電源装置の導入、回線の二重化等の冗長化を継続的に実施し、不慮の事故を想定したシステム対策を行っています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 コンピュータネットワークシステムに障害が発生した場合は、その程度によっては当社グループの営業活動が停止する可能性があり、リスクの重要性は高いものとなっています。

 当該リスクの水準については、コンピュータネットワークシステムの冗長化を強化し、低減に努めています。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 コンピュータネットワークシステムの構築及び運用は、当社グループの経営方針の達成及び経営戦略の実行のための前提要件となっています。

 

(4)著作権利用料について

 当社グループは、掲載コンテンツに関して、出版社等と著作権利用契約を締結し、著作権利用料を支払っています。

 著作権利用料は、契約によって支払料率が決定されていますが、契約支払料率が変動した場合や契約の更新に支障をきたす何らかの事情が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 当社グループは、電子書籍販売事業を長年営んでおり、出版社等のコンテンツホルダーと長年直接取引を行ってきました。

 電子書籍業界の発展を第一に考え、電子書籍書店と出版社等のコンテンツホルダーの双方にメリットがある著作権利用契約を締結して、協力して事業を行っています。

 ただし、一部の大手出版社とは、紙書籍事業との兼ね合い等の外的要因もあり、厳しい契約交渉を続けています。

 一部の大手出版社との間の著作権利用契約については、支払料率の上昇や契約が継続できない事態が発生する可能性があります。

 当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を予測することは困難です。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 著作権利用に対する支払料率が上昇した場合は、売上原価の売上高比率が上昇し、収益が減少します。

 著作権利用契約が継続できない場合は、収入は減少しますが、収益は増加する可能性があります。

③ リスクへの対策

 出版社等コンテンツホルダーと、電子書籍業界の発展のために、協力して事業を行うことで、良好な関係の構築に努めています。

 同時に、既存の紙書籍を電子化するのではなく、当社グループで、デジタルボーンコンテンツを制作する体制を強化しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 出版社等のコンテンツホルダーとの著作権利用契約は、当社グループの事業にとって重要です。

 ただし、当社グループは、多くの出版社等のコンテンツホルダーと直接取引を行っており、一部取引先との間でリスクが顕在化した場合でも、経営に与える影響は限定的なものであると判断しています。

 当該リスクの水準については、出版社等のコンテンツホルダーの電子書籍事業に対する依存度の上昇に伴い低下する可能性があります。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針及び経営戦略のデジタルコンテンツのアグリゲーションと、特に密接な関連性があります。

 また、リスクへの対策は、オリジナルコンテンツの制作体制の構築及び、次世代コンテンツの開発と関連しています。

 

(5)広告宣伝費について

 当社グループが営むイーコマース事業にとって、広告宣伝費は、集客を図り、売上高を増加させるための重要な費用です。

 広告宣伝費の費用対効果は、当社グループの収入及び収益に大きな影響を与えます。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 広告宣伝費の支出に関しては、広告効果を継続的に検証し、最適な広告宣伝を実施するように努めていますが、広告戦略が想定した効果をあげることが出来ないリスクがあります。

 当社グループの広告戦略の費用対効果が低下するリスクが顕在化する可能性の程度や時期については、広告施策を、当社グループの最重要施策として位置づけ、十分な効果検証を行い、その顕在化を防ぐことに努めています。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 費用対効果が低下した場合は、当社グループの収入及び収益が減少します。その影響は、費用対効果の低下に比例します。

③ リスクへの対策

 広告効果について、その分析を広告代理店に任せるのではなく、当社グループにおいてデータを収集し、継続的に効果分析を実施しています。

 広告施策は、社会情勢の変化等及び広告技術の進化により、常に最適な施策が変化するため、広告戦略に則して、様々な広告施策をトライアンドエラーで試験的に実施し、その効果検証を行ってきました。

 過去からの効果検証データの積み上げによって獲得した、広告施策に関するノウハウに基づき、広告戦略を立案し、実施することで、最適な広告施策が行える体制を構築しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 当社グループが営むイーコマース事業にとって、広告宣伝費は、事業の発展と継続に欠くことが出来ない費用です。

 その費用対効果は、収入及び収益に直接的な影響を与えるため、リスクの重要性は非常に高いものとなっています。

 リスクの水準は、基本的には変化はありませんが、事業規模の拡大に伴い、広告宣伝に依拠しないユーザーからの収入が積み上がるため、収入及び収益に与える影響は低減します。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針及び経営戦略のデジタルコンテンツのディストリビューションと、特に密接な関連性があります。

 国内におけるデジタルコンテンツの販売高についての戦略及び国外でのグローバルなデジタルコンテンツ販売プラットフォームの発展についての戦略の達成に、重要な関連性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、長期的な経済活動の抑制の影響や、戦争の長期化等を原因とする世界的な物価高騰(インフレ)の影響を受けています。さらに、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクが存在しています。

 電子書籍の市場規模は、「インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2022』」によると、2021年度は5,510億円(うち電子書籍市場規模は5,257億円、電子雑誌市場規模は253億円)と推計されていますが、参入企業も多く、厳しい競争が続いており、コンテンツ需要の増加による、出版社等のコンテンツホルダーからの仕入コストが上昇しています。

 さらに、個人情報保護法の改正に伴うターゲティング広告の規制強化によって広告効率が低下し、ユーザーの消費行動への下押し圧力が依然として高まっていることによって、販促効果も弱まり、売上は減少する厳しい状況となりました。

 このような環境の中で、当社グループは、顧客第一主義の基本理念に基づく、サービスの向上施策及び他社との差別化を図るためのブランド戦略施策を実施しました。

 サービス向上施策は、レンタル販売方式の拡充を進めました。

 ブランド戦略施策は、中長期的な事業拡大を目的とした広告宣伝を、先行投資として、積極的に行っています。

 また、ユーザーへの還元を目的とした販売促進施策も積極的に実施しました。

 さらに、将来市場が拡大すると予測される英語圏や中国語圏を中心とした海外事業への投資強化、及び今後市場に普及していく5G端末向けの次世代コンテンツの開発並びにオリジナルコンテンツの増産を図っています。

 この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は18,626百万円(前年同期比10.0%減)、営業利益は425百万円(前年同期比55.5%減)、経常利益は537百万円(前年同期比55.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は657百万円(前年同期比12.4%減)となりました。

 当社グループの事業は、電子書籍事業のみであり、重要な事業拠点も当社のみとなっているため、報告セグメントはありません。

 以下、当連結会計年度における主な事業活動を報告します。

 

(集客施策)

 割引やポイント還元等が適用されるクーポンの配布、及び人気作品がお得に読めるRenta!限定レンタルキャンペーンを実施した結果、「Renta!」の会員数は850万人を突破しました。

 また、草彅剛さんと神木隆之介さん共演の新TVCM「Renta!レンタルチェック」篇の放映及びRenta!提

供のミニ番組「マンガ、鬼ほど好きなんで」の放送を開始しました。

 さらに、オリジナルアニメーションコミック「アニコミ」のYouTubeチャンネルを開設しました。

 

(サイト改良施策)

 割引やポイント還元などが適用されるクーポンサービス機能をリリースしました。

 

(オリジナルコンテンツ施策)

 「Rentaコミックス」のオリジナルマンガレーベル「COMICスピア」よりリリースする作品について、「小説家になろう」と共同で、「コミカライズ原作大賞 第2回」コンテスト及び「ムーンライトノベルズ」と共同で、「オトナ女子コミカライズ原作大賞」コンテストを実施しています。

 また、オリジナルフルカラー縦スクロールコミック『魔寄せ宮女、孤高の祓魔師に拾われました』の独占先行配信を開始しました。

 

(次世代コンテンツ開発施策)

 5G端末向けの縦スクロール型のコミック「タテコミ」の拡充及びマンガにモーションと音声を付加し、スマートフォンでの視聴に最適のタテ型アニメーション形式の動画コンテンツ「アニコミ」の制作体制の強化を進めています。

 また、3DCGゲームをタテコミ形式にコミカライズした新コンテンツ「Gamtoon」の配信を開始しました。

 

(海外展開施策)

 海外直営販売サイトの「英語版Renta!」、「中国語繁体字版Renta!」の売上拡大を目指して、集客、サイト改良、コンテンツの拡充を進めています。

 また、海外取次会社AAG(アルド・エージェンシー・グローバル株式会社)を通して、英語、中国語及び韓国語のコンテンツ取次販売を行っています。直営以外の63の海外販売サイトにも展開し、販路拡大が進んでいます。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は12,376百万円となり、前連結会計年度末に比べ469百万円減少しました。これは主に、現金及び預金が546百万円減少したことによるものです。

 固定資産は1,019百万円となり、前連結会計年度末に比べ34百万円増加しました。これは主に、繰延税金資産が125百万円増加したことによるものです。

 この結果、資産合計は13,395百万円となり、前連結会計年度末に比べ434百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は3,962百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,095百万円減少しました。これは主に、買掛金が1,030百万円、未払法人税等が96百万円減少したことによるものです。

 固定負債は1百万円となり、前連結会計年度末に比べ0百万円増加しました。

 この結果、負債合計は3,964百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,094百万円減少しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は9,431百万円となり、前連結会計年度末に比べ659百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益657百万円の獲得によるものです。

 この結果、自己資本比率は69.9%(前連結会計年度末は62.9%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益537百万円(前年同期比55.5%減)を獲得したものの、仕入債務の減少等の要因により、前連結会計年度末に比べ594百万円減少し、当連結会計年度末には8,742百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は613百万円(前年同期比501.3%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益537百万円、売上債権の減少額154百万円、仕入債務の減少額1,030百万円、法人税等の支払額340百万円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果獲得した資金は101百万円(前年同期は541百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出1,622百万円、定期預金の払戻による収入1,621百万円、敷金及び保証金の回収による収入100百万円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は151百万円(前年同期比87.2%減)となりました。これは主に、配当金の支払額93百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出60百万円等によるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.仕入実績

 当社グループでは、実際に利用された電子書籍の利用価格及び販売数に応じて、出版社又は著者等に対し、一定割合の著作権料の支払いが発生します。当該著作権料が仕入に当たります。

 当連結会計年度における仕入実績は、次のとおりです。

 

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

著作権料(百万円)

8,695

90.6

 

b.販売実績

 当連結会計年度の電子書籍事業の形態別販売実績は、次のとおりです。

 

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

① 電子書籍販売(百万円)

18,473

90.3

② その他(百万円)

153

66.0

合計(百万円)

18,626

90.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は18,626百万円(前年同期比10.0%減)、売上原価は9,869百万円(前年同期比7.0%減)、売上総利益は8,756百万円(前年同期比13.2%減)、販売費及び一般管理費は8,331百万円(前年同期比8.7%減)、営業利益は425百万円(前年同期比55.5%減)、営業外収益は117百万円(前年同期比53.6%減)、営業外費用は5百万円(前年同期比158.5%増)、経常利益は537百万円(前年同期比55.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は657百万円(前年同期比12.4%減)となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、売上高と売上原価及び広告宣伝費があります。

 売上高は、前連結会計年度に比べて減収となっています。これは、広告施策の効果が低下していることによります。新型コロナウイルス感染症拡大防止のための経済活動の抑制及び、資源価格高騰や円安による物価上昇並びに個人情報保護法の改正によるターゲティング広告の規制強化等が広告効果に影響を与えています。

 売上原価は、前連結会計年度に比べて発生金額が減少しています。これは、売上高の減少に伴う著作権利用料の減少によるものです。

 広告宣伝費は、前連結会計年度に比べて発生金額が減少しています。これは、「Renta!」ブランドの認知度の向上とユーザー層の拡大を図るため、一般層に向けてTVCM等のマス広告を継続的に実施していますが、ターゲティング広告の規制強化等に関する影響を勘案し、広告施策を抑制していることによるものです。

 

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、国内及び海外での電子書籍販売売上高を、達成状況を判断するための指標としています。

 売上高は、当連結会計年度の事業計画に比べて14.8%の不利差異となっています。

 

②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度末における財政状態は、流動資産は12,376百万円(前連結会計年度末比3.7%減)、固定資産は1,019百万円(前連結会計年度末比3.5%増)、資産合計は13,395百万円(前連結会計年度末比3.1%減)、流動負債は3,962百万円(前連結会計年度末比21.7%減)、固定負債は1百万円(前連結会計年度末比25.7%増)、負債合計は3,964百万円(前連結会計年度末比21.6%減)、純資産合計は9,431百万円(前連結会計年度末比7.5%増)、自己資本比率は69.9%(前連結会計年度末は62.9%)となりました。

 

 当社グループは、運転資金及び設備資金について、内部資金を充当しています。現在の事業規模に比して十分な事業運営資金を有しています。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純利益の獲得、売上債権の減少、仕入債務の減少、法人税等の支払等により613百万円の使用(前年同期比501.3%増)となっています。

 投資活動によるキャッシュ・フローについては、定期預金の預入による支出、定期預金の払戻による収入、敷金及び保証金の回収による収入等により101百万円の獲得(前年同期は541百万円の使用)となっています。

 財務活動によるキャッシュ・フローについては、配当金の支払、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出等により151百万円の使用(前年同期比87.2%減)となっています。

 

④資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、著作権料、コンテンツ制作費用及び広告宣伝費用です。投資を目的とした資金需要は、重要なものはありません。

 当社グループの資本の財源は、ほぼ利益剰余金となっています。

 資金の流動性については、当社グループは、重要な設備等を必要としていないため、総資産の構成は、大部分が流動資産であり、また、流動資産の大部分が現金及び預金となっています。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。

 会計方針は、当社グループの財政状態及び経営成績を正しく示すことができると判断したものを選択及び適用しています。

 会計上の見積りを行うに際して使用した重要な仮定は、時価による測定を含め、合理的であると判断しています。

 なお、当社グループが選択及び適用した会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しています。

5【経営上の重要な契約等】

合弁契約による子会社の設立

契約締結先

内容

出資額

合弁会社名

設立年月

劉 惠貞

中華民国における電子書籍販売事業

当社

7,000千TWD

巴比楽視網路科技股份有限公司

(資本金10百万TWD)

2014年9月

劉 惠貞

3,000千TWD

株式会社アムタス

海外向け電子書籍取次販売事業

当社

66,600千円

アルド・エージェンシー・グローバル株式会社

(資本金50百万円)

2019年7月

株式会社アムタス

33,400千円

(注) 合弁会社「巴比楽視網路科技股份有限公司」に関する合弁契約は、当連結会計年度において解消されています。当該契約について、出資額及び資本金は、設立時の出資額及び資本金を記載しています。契約解消時の出資額及び資本金は、以下のとおりとなっています。

「出資額」    当社       174,000千TWD

         劉 惠貞      6,000千TWD

「資本金」             120,000千TWD

 

当社は、合弁会社「巴比楽視網路科技股份有限公司」の契約締結先である劉 惠貞氏より、当該合弁会社の同氏の持分株式を譲渡したい旨の要請を受け、2022年11月15日の取締役会において、劉 惠貞氏との合弁契約を解消し、合弁会社「巴比楽視網路科技股份有限公司」の同氏の持分株式を、株式評価会社が算定した価格で譲り受けることを決議しました。

ⅰ.合弁契約解消日

2022年11月21日

ⅱ.劉 惠貞氏の持分株式を譲受に関する事項

譲渡株式数

600,000 株

一株当たり譲受価格

23TWD

譲受価格総額

13,800千TWD

譲受後の当社の出資額

187,800千TWD

 

6【研究開発活動】

 当社グループの属する電子書籍業界は、今後さらに成長していくことが予想されますが、技術革新が急速に進むインターネットインフラ環境や表示端末の新機種対応等に、継続的に対応していく必要があります。

また、新技術に対応するため、当社グループで利用している各種情報システムについても、継続的に整備を行っていく必要があります。

このため、当社グループでは、専門的知識を有し、専属的に研究開発業務を行う開発部員が、電子書籍の配信及び閲覧に関する新技術の開発及び既存システムの改良・改善等を積極的に行っています。

当連結会計年度の研究開発費の総額は81百万円となっています。