第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

2023年1月26日、当社は「2030年度に向けた成長戦略説明会」を行いました。

当社は、お客様の立場になった「価値ある製品」づくりをモットーに、モノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」、柔軟さ・素早さ・チャレンジ精神を忘れない「中小企業型経営」、机上の空論を排した「現場・現物・現実」の三現主義で行動し、スズキらしい2030年度に向けた成長戦略を進めてまいります。

 

(1) 成長戦略の骨子

当社は2030年度に向け、主要事業地域である日本・インド・欧州を核にして、カーボンニュートラル社会の実現とインド・ASEAN・アフリカなどの新興国の経済成長に貢献してまいります。お客様の立場になった製品・サービスづくりと進出国・地域とともに成長するというスズキらしい解決策に取り組んでまいります。

 

(2) 2030年度に向けた主な取組み

<カーボンニュートラル>

当社は、各国政府が掲げる達成目標時期に基づき、日本・欧州で2050年、インドでは2070年のカーボンニュートラルの達成を目指してまいります。これからもお客様の選択肢を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、地域ごとのカーボンニュートラル目標の達成に取り組んでまいります。

 

~ 製品分野 ~

〇四輪車

日本では、2023年度の軽商用バッテリーEVの投入を始めに、小型SUV・軽乗用などの投入を予定しており、2030年度までに6モデルを展開いたします。

また、軽自動車や小型車向けに新型ハイブリッドを開発し、バッテリーEVと併せることでお客様に多くの選択肢を提供してまいります。

 

欧州では、2024年度よりバッテリーEVを投入し、SUV・Bセグメントなどに広げていき、2030年度までに5モデルを展開いたします。欧州各国の環境規制やお客様ニーズに合わせて柔軟に対応してまいります。

 

インドでは、「Auto Expo 2023」で発表したバッテリーEVを2024年度に投入し、2030年度までに6モデルを展開いたします。バッテリーEVだけではなく、当社はあらゆる製品・サービスを提供すべく、ハイブリッド車・CNG・バイオガス・エタノール配合の燃料などを使用したカーボンニュートラルな内燃機関車も継続的に投入してまいります。

 

〇二輪車

通勤・通学や買物など生活の足として利用される小型・中型二輪車は、2024年度にバッテリーEVを投入いたします。2030年度までに8モデルを展開し、バッテリーEV比率25%を計画しております。趣味性の強い大型二輪車については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。

 

 

〇船外機

湖沼や河川で多く使われる小型船外機は、2024年度にバッテリーEVを投入いたします。2030年度までに5モデルを展開し、バッテリーEV比率5%を計画しております。海洋で使われる大型船外機については、カーボンニュートラル燃料での対応を検討しております。

 

~ 製造分野 ~

日本国内の工場は、2035年度のカーボンニュートラル達成に挑戦してまいります。

 

〇スマートファクトリー創造

世界の生活の足を守り抜く企業であり続けるために、2030年度のものづくりのあるべき姿を描き、スズキ・スマートファクトリー創造を進めております。スズキのモノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」とデジタル化の推進を組み合わせることで、データ・モノ・エネルギーの流れを最適・最小化、簡素化し、徹底的にムダをなくして、カーボンニュートラルへ繋げてまいります。

 

〇国内工場での取組み

国内最大の生産拠点である湖西工場では、塗装設備の刷新と塗装技術の向上により、使用するエネルギーを効率化/最適化し、塗装工場のCO2排出量30%削減に取り組んでおります。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーからグリーン水素を製造し、その水素をエネルギー源として荷役運搬車両を走らせる実証実験を2022年末に開始いたしました。

二輪車の生産拠点である浜松工場は2030年のカーボンニュートラル達成を宣言しておりましたが、エネルギー使用量の削減や太陽光発電設備の増設など再生可能エネルギーへの転換により、カーボンニュートラル達成を2027年度に前倒しいたします。浜松工場のノウハウを他工場にも展開することで、2035年度の国内全工場のカーボンニュートラル化に取り組んでまいります。

 

~ インドのバイオガス事業 ~

2030年度に向けて、インド市場は今後も成長を見込んでおりますが、製品からのCO2排出量を削減しても、総排出量の増加が避けられない見通しです。これからもインドとともに成長していくために、販売台数の増加とCO2総排出量の削減の両立に挑戦してまいります。

そのための当社独自の取組みとして、インド農村部に多い酪農廃棄物である牛糞を原料とするバイオガス燃料の製造・供給事業へ挑戦してまいります。このバイオガス燃料は、インドCNG車市場シェアの約70%を占める当社のCNG車に使用することができます。

当社は、インド政府関係機関の全国酪農開発機構、アジア最大規模の乳業メーカーであるBanas Dairy社とバイオガス実証事業を実施することで覚書を締結しました。また、日本で牛糞を原料としたバイオガス発電を手掛ける合同会社富士山朝霧Biomassに出資し、知見の蓄積を始めております。

インドにおけるバイオガス事業は、カーボンニュートラルへの貢献だけではなく、経済成長を促し、インド社会に貢献するものと考えております。また、将来的にアフリカやASEAN、日本の酪農地域など他地域に展開することも視野に入れております。

 

インド自動車産業のリーディング企業である当社が、新興国のカーボンニュートラルと経済成長に貢献することは、先進国と新興国が協調してCO2排出量を削減するパリ協定の趣旨にも合致するものであり、全世界のステークホルダーに対して貢献できると信じて取り組んでまいります。

 

 

<研究開発体制・外部連携>

スズキ本社、横浜研究所、Suzuki R&D Center India Private Limited、Maruti Suzuki India Limitedが連携し、将来技術、先行技術、量産技術の領域分担をしながら、効率的に開発してまいります。また、当社がインドに徹底的に根付くため、スズキイノベーションセンターが探索活動を行っております。さらに、スタートアップ企業、スズキ協力協同組合、日本・インドの大学との共同研究による産学官連携などグループ外とも連携しながらモノづくりの力を高めてまいります。

トヨタ自動車株式会社とは、競争者であり続けながら協力関係を深化させ、持続的成長と自動車産業を取り巻く様々な課題克服を目指してまいります。自動運転や車載用電池などをはじめとした先進技術開発、将来有望な新興国でのビジネス拡大、インドでのカーボンニュートラルに向けた取組み、また環境に配慮した循環型社会の形成に向けて協業してまいります。

 

2022年に設立したコーポレートベンチャーキャピタルファンドのSuzuki Global Ventures, L.P.では、企業及び既存の事業の枠を超えスタートアップとの共創活動を加速しております。日本のみならず海外においても、お客様や社会の課題解決に資する領域に投資をし、スタートアップとともに成長するエコシステムの発展に貢献してまいります。

 

<研究開発・設備投資>

2030年度までに研究開発に2兆円、設備投資に2.5兆円、あわせて4.5兆円規模を投資してまいります。4.5兆円のうち、電動化関連投資に2兆円、そのうち5,000億円を電池関連に投資してまいります。

研究開発への投資は、電動化、バイオガスなどのカーボンニュートラル領域や自動運転などに2兆円を計画しております。

設備投資は、バッテリーEV工場の建設や再生可能エネルギー設備などに2.5兆円を計画しております。

 

<連結売上高目標>

当期の連結売上高は過去最高の4.6兆円となりました。さらに、次期は4.9兆円以上を目指してまいります。これからも、新興国の成長に貢献することで、当社もともに成長していきたいと考えております。2030年度には7兆円規模を目指して挑戦を続けております。

 

<基盤強化に向け取り組むべき課題>

○法令違反に関する再発防止

2016年の燃費・排出ガス試験問題及び2018年の完成検査問題を風化させないための毎年の取組みである「リメンバー5.18活動」を、社長をはじめ役員及び従業員全員が参加する形で実施しており、コンプライアンス意識とコミュニケーションの向上により不正が起きない職場風土の醸成に努めております。

当社の全ての本部・工場・拠点に社長が直接訪問し、法令遵守や新たな業務の取組みについて従業員と意見を交わす職場対話を実施しております。

 

<人に関する取組み>

詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組み(2)」をご参照ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)当社のサステナビリティに関する取組み

 

①ガバナンス

代表取締役及び関係役員が出席する経営会議において、サステナビリティに関する課題や方針、対策等について議論しています。特に重要な議題については取締役会において議論されます。経営と一体となった、実効性のある活動の推進を目指しています。

具体的な施策については、経営企画室に設置したサステナビリティ推進の専門部署を中心に、社会課題の解決に向けた取組みを社内横断的に推進していきます。

 

②リスク管理

a. マテリアリティ(重要課題)の特定

2021年2月に発表した中期経営計画の策定に伴い、事業を取り巻く環境の変化を踏まえて2015年に特定した当社のマテリアリティの見直しを実施しました。

 

(特定のプロセス)

ステップ1 GRIスタンダード、SASBマテリアリティ・マップなど、ESGガイドラインが定める各種指標を参考に、課題項目を抽出。

ステップ2 経営企画室を中心とするサステナビリティ関連部門において中期経営計画で取り組む課題との整合性を確認。

ステップ3 ESG投資家や環境NGO、ESG評価機関とのエンゲージメントを通じて、ステークホルダーから見た重要度を検討し、その妥当性や網羅性を確認。

ステップ4 経営会議において課題項目の妥当性や網羅性を審議しマテリアリティを特定。重要度については課題の性質によって整理し開示する方法を確認。

ステップ5 取締役会の審議、承認を経て決定。

 

 

(マテリアリティ・マトリックス)

特定したマテリアリティは、社是「お客様の立場になって」を念頭に、課題解決によって社会やお客様にどのように貢献していくかを意識し、「事業を通じて解決する課題」とそれらを支える「事業基盤の強化のための課題」に大きく分類しました。

特定・整理したマテリアリティを当社のサステナビリティ方針の基本として、今後の取組みを推進していきます。また、マテリアリティは事業を取り巻く環境の変化に応じて、項目の見直しを定期的に実施していきます。

 


 

b. CO2排出量の低減に向けた取組み

マテリアリティのうち、特に重要な課題である「CO2排出量の低減」に向けた取組みについて、ステークホルダーに分かりやすい情報開示を進めるとともに、気候変動に対する強靭性をより強化するため、シナリオ分析の高度化や開示情報の充実化に努めています。

 

(ⅰ)気候関連リスクと機会、シナリオ分析

当社は、持続可能な事業活動を進めるために事業リスクや機会の特定を進めています。特に、気候変動の影響は根源的に不確実であるため、将来を幅広に捉えた上でリスク・機会の影響度を評価し、適切に対応することが重要であると認識しています。

この認識のもと、気候変動の物理影響が顕著になる「4℃シナリオ」とパリ協定の実現に向けて気候変動対策が加速する「1.5℃/2℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、リスクと機会の影響の差異を評価しました。シナリオの想定にあたっては、IEA※1やIPCC※2等の科学知見に基づく、外部シナリオを参照しました。

※1 IEA:International Energy Agencyの略。国際エネルギー機関。

※2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Changeの略。気候変動に関する政府間パネル。

 

 

(ⅱ)当社の気候関連リスクと機会

気候変動の緩和策として、排出ガスやCO2・燃費規制などさまざまな法規制の強化が進められる中、これらの規制を遵守するための開発費用の負担増加は当社の業績に大きな影響を与える可能性があります。一方で、当社が得意とする「小さなクルマ」は、生産に必要な材料やエネルギーが少なく、また使用時のCO2排出量も抑えることができます。こうした当社独自の強みを活かし、リスクに適切に対処していくことで機会の創出につなげていくことができると考えます。

気候変動によるリスクの低減や回避、将来の機会獲得や競争力強化に向け、今後も引き続き十分な検討を重ね事業戦略への反映を進めていきます。

 

■当社の気候関連リスクの一覧とシナリオ別の影響差異

 


 

■特に重要なリスク項目の詳細と創出機会、当社の対応状況

 

 

リスク

機会

当社の対応状況

自動車のCO2

燃費規制の強化

·カーボンニュートラル技術(電動化等)・コストの対応遅れによる市場シェア消失

 

·カーボンニュートラル技術の開発投資の増加

 

·カーボンニュートラル技術の生産設備投資(電池等)の増加

 

·規制未達による罰金発生や販売機会の逸失

·ライフサイクルでCO2排出が少ない「小さなクルマ」による競争力の維持・強化、企業価値の向上

 

·お求めやすい電動車及びカーボンニュートラル燃料対応車の開発による販売機会の獲得

 

·インドや新興国で電動化及びカーボンニュートラル燃料対応を牽引することによる、サステナブルな経済発展への貢献

·電動化技術を集中的に開発、ハイブリッドシステムの搭載拡大、軽自動車EV・小型車EVの開発の推進

 

·インドの電動化の推進(電動車市場投入、電池工場投資等)

 

·トヨタ自動車株式会社との提携の深化

 

·インドでバイオガス実証事業を開始

炭素税等の

導入・強化

·カーボンニュートラル技術を実装した生産設備投資の増加

 

·炭素税や排出枠取引、国境炭素調整措置等による操業コストの増加

·「小・少・軽・短・美」の特長を活かした省エネ技術をグループ・お取引先様へ展開

 

· インドや新興国で再生可能エネルギー利用等を牽引することによる、サステナブルな経済発展への貢献

·施行中のCO2削減施策の推進

 

·カーボンニュートラルなエネルギー創出

 

·インドで再生可能エネルギー由来電力を調達

 

 

 

c. その他の事業リスク等

気候関連リスク以外の事業リスク等については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

③戦略

2023年1月26日、当社は「2030年度に向けた成長戦略説明会」を行いました。

当社は、お客様の立場になった「価値ある製品」づくりをモットーに、モノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」、柔軟さ・素早さ・チャレンジ精神を忘れない「中小企業型経営」、机上の空論を排した「現場・現物・現実」の三現主義で行動し、スズキらしい2030年度に向けた成長戦略を進めてまいります。

当社は2030年度に向け、主要事業地域である日本・インド・欧州を核にして、カーボンニュートラル社会の実現とインド・ASEAN・アフリカなどの新興国の経済成長に貢献してまいります。お客様の立場になった製品・サービスづくりと進出国・地域とともに成長するというスズキらしい解決策に取り組んでまいります。

 

成長戦略の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載をご参照ください。

 

④指標及び目標

a.2030年度に向けた当社の成長戦略

当社は、各国政府が掲げる達成目標時期に基づき、日本・欧州で2050年、インドでは2070年のカーボンニュートラルの達成を目指してまいります。これからもお客様の選択肢を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、地域ごとのカーボンニュートラル目標の達成に取り組んでまいります。

 

b.スズキ環境ビジョン2050、マイルストーン2030

当社は、気候変動や水不足、資源の枯渇等といった地球規模の環境課題に対する取組みにも、「小・少・軽・短・美」の理念が当てはまると考えます。

次の100年も「社会に貢献し、世界中で愛され、信頼されるスズキを目指して」、2050年に向けた羅針盤となる「スズキ環境ビジョン2050」を定めました。

テーマ

スズキ環境ビジョン2050

マイルストーン2030

製品
CO2

・2050年までに、Well to Wheelで新車四輪車が排出するCO2「2010年度比90%削減」を目指す。

・2030年までに、Well to Wheelで新車四輪車が排出するCO2「2010年度比40%削減」を目指す。

事業活動
CO2

・2050年までに、事業活動から生じるCO2を販売台数あたり原単位で「2016年度比80%削減」を目指す。

・2030年までに、事業活動から生じるCO2を販売台数あたり原単位で「2016年度比45%削減」を目指す。

 

 詳細は、ウェブサイト「サステナビリティ」の取組みをご参照ください。

 

c.スズキ環境計画2025

「スズキ環境ビジョン2050/マイルストーン2030」で掲げた新たな目標の達成に向け、2021年度から2025年度までの具体的な実施事項や目標を設定し、PDCAによる業務管理と継続的改善を行い、環境負荷を低減する事業活動を推進していきます。

 

2025年度の具体的な実施事項・目標

2021年度の主な実績

製品からの

CO2の削減

四輪車

2010年度比 30%削減

2010年度比 23.7%削減

二輪車

2010年度比 15%削減

2010年度比 12%削減

船外機

2010年度比 15%削減

2010年度比 13%削減

事業活動からの

CO2の削減

生産活動

2016年度比 25%削減

全体

2016年度比  4.8%増加(0.352t-CO2/ 台)

海外

2016年度比 16.0%増加(0.327t-CO2/ 台)

国内

2016年度比 10.4%削減(0.420t-CO2/ 台)

 

 詳細は、ウェブサイト「サステナビリティ」の取組みをご参照ください。

 

(ご参考)バリューチェーン全体が排出する温室効果ガスの開示(スコープ1・2・3)

(単位:万t-CO2

 

2019年度

2020年度

2021年度

バリューチェーン全体(スコープ1・2・3の合計)

7,178

6,910

7,558

 企業活動による直接排出(スコープ1※1

53

38

40

 エネルギー起源の間接排出(スコープ2※1

63

67

71

企業活動による排出(スコープ1・2の合計)

116

105

111

 製品の使用による排出(スコープ3_カテゴリー11)

6,109

5,703

6,249

 その他の排出(スコープ3_カテゴリー11以外)

953

1,102

1,198

その他の間接排出(スコープ3※2の合計)

7,062

6,805

7,447

 

集計対象範囲 当社及び国内製造・非製造子会社67社、

海外製造・非製造子会社32社(海外製造子会社9社の非生産拠点を追加)

※1 CO2換算係数:電力は、国内は各電力子会社が公表する調整後係数、海外はIEA(Emissions Factors 2021)の換算係数を使用、

電力及び都市ガス以外はIPCC2006(2006 IPPC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories)の換算係数、

都市ガスは供給会社の公表値を使用

過去データを一部修正(海外製造子会社9社の非生産拠点の追加、及び国内非製造子会社の一部過去データ修正による)

※2 スコープ3の算定に使用する排出係数のデータベース、係数を見直して一部過去データを修正、カテゴリー8の算定を追加

 

 詳細は、ウェブサイト「サステナビリティ」をご参照ください。

 

 

(2)人的資本に関する取組み

 

①戦略

当社の社是は企業の社会的使命を果たすことへの努力目標(製品づくり)、自分が所属する会社という組織に対する努力目標(会社づくり)、自分自身に対する努力目標(人間づくり)として、当社グループの全従業員が理解し実践すべき三つの努力目標を掲げています。この努力目標に基づき、社長自らが「人材開発は会社の一丁目一番地」との思いで、先頭に立って人材開発に関する諸改革をリードし、2022年10月には組織体制を人事総務本部から人材開発本部へと改編し、社是や行動理念を体現できるスズキらしい人間づくりに注力しています。

そして社会的使命であるカーボンニュートラル社会の実現、CASEと呼ばれる100年に一度の大変革期においては、従来の自動車メーカーのままでは到底達成できない大きな変化に対処するために、新しいことに果敢に挑戦する人材、新たな発想を産み出す多様な経験・価値観を持つ人材、高度な専門性を持つ人材、グローバルに活躍できる人材など、多様な人材を採用、育成することに努めています。

また、社是にあるとおり、高い目標への挑戦と自身の努力を促す風土醸成により、一人ひとり個性の異なる人材が共通の目標に向かって能力を発揮し、より付加価値の高い成果を創出し、働き甲斐・やりがいを感じながら、活き活きと働き続けることができる会社づくりに取り組んでいます。

直近では、これまで以上に社員の声を吸い上げ、労使で丁寧な対話を重ね、抜本的に人事制度の変更、大胆な業務改廃・働き方変革、労働諸条件の改善など、人事総務諸施策の改革を進めて、社員一人ひとりが、スズキで働いて良かったと思える会社にしてまいります。

 

②指標及び目標

a. コンプライアンス

・2016年に犯した燃費不正にかかる法令違反、並びに2019年の完成検査不正の問題によりお客様へ多大なご迷惑をおかけしました。その事実を決して忘れることなく後世へと伝え、毎年5月18日を全従業員が改めて自部門に関わる法令を総点検し、その遵守を再認識する日としました。2017年に技術部門より開始し2018年以降は社内の全ての部門で自分達に関連する法令の棚卸しと総点検する活動を実施しています。

 

b. エンゲージメント(職場コミュニケーション)

・2021年より、社長自らが社内全職場(本部・工場・拠点)現場に足を運び、全社員を対象に意見交換会(2022年:41職場)を実施しています。社長自らが従業員に直接思いを伝え、また従業員は日々の困りごとを打ち上げ、諸問題を共有し、協力一致して解決に取り組んでいます。特に若手から中堅の従業員にとっては、自分の思いを、自分の言葉で直接社長まで届けることができる機会となり、また社長のみならず経営陣は現場のこうした声に耳を傾け、柔軟かつ素早く改善に取り組んでいます。

・2023年度より各本部の業務計画は達成のために必要工数を可視化し、各個人レベルまで落とし込み割付けることで業務遂行を通じた人材育成と工数のバランスをとる様にしました。これまでは、業務量と工数(人数×能力)のバランスを一部欠いた計画があり、その結果、従業員の育成につながるどころか、過度な業務量に追われることが仕事の質の低下につながり、結果として仕事の手戻りが多く発生、計画の修正や遅れを生み、疲弊してしまったという反省があります。一人ひとりが成長実感を得られるように、上司と部下が日々コミュニケーションを密にしながら業務のPDCAサイクルを回しています。

 

 

c. 多様性

・多様な人材を確保するべく新卒採用に加え、近年はキャリア採用に注力しています。2022年度の実績105名(前年度比244%(43名))となっており、2023年度は既に84名(4月末時点)と、スピード感をもって、社外の力を獲得しています。また、一部社内に全くない知見・経験をもった人材の方を対象に、既存の人事制度の枠にとらわれない雇用形態を新設し、2023年6月より導入しています。

・次世代技術開発に向けたデジタル人材の採用に注力しています。2018年よりインド工科大学の卒業生を直接採用(2023年4月時点10名)しており、当社が得意とするインド市場において、Maruti Suzuki India Limitedとともに更なる競争力の向上に取り組んでいます。

・これまで以上に女性が活躍できる会社となるよう、2015年からは女性の新卒採用者数の増加、2020年からは係長以上の女性役職者数を2025年に2015年度比3倍とする計画を掲げ、管理職候補者である女性役職者数の増加に取り組んでいます。その効果もあり、2022年度の女性役職者は2015年度比で2.94倍の156名まで増加しました。

 一方で、女性管理職数は2022年度時点で21名(女性比率1.6%)となっています。役職、職系、性別に係わらず、全ての従業員に対して能力に応じて仕事を任せ、処遇できているか人事制度の再点検を進めています。当社は一般・役職者・管理職など各役職における男女比率がいずれも近似であることが公平性の観点から合理的であると考えます。全従業員に占める女性比率(2022年度は12.4%)を、達成すべき管理職の女性比率の将来目標とし、2025年度目標を2.0%として、人事制度改革や環境整備、人材育成に取り組んでまいります。

 また、自動車産業の女性比率が低いことも課題と捉え、生産工場をはじめとする社内の全ての職場が、性別、年齢、障がいの有無などを問わず、全ての人にとって働き易いものとなるよう、生産技術の革新による根本的な作業環境の改善等、働きやすさの実現にも取り組んでまいります。

 なお、「(2)人的資本に関する取り組み ①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理ととともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。

・また、仕事と子育ての両立ができるよう、短時間勤務制度の条件を緩和しました。これまでは小学校3年生までの子供を養育する従業員を対象としておりましたが、2023年より小学校6年生までに拡充しました。また、次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と子育ての両立に関する幾つかの要件を満たした「子育てサポート企業」として、2022年当社は厚生労働大臣の認定である(くるみん認定)を取得しています。

・60歳以上の従業員は5.9%(2023年3月時点)おりますが、こうした方々の過去の経験や知見を活かし、ご自身の体力・健康を配慮しながら、活き活きと活躍できるよう、管理職の再雇用制度を改定しました。職務内容が60歳以降も同等レベルであれば、定年前と同じ処遇に改善しています。今後は組合員まで広げることで、役職を問わず経験豊富な人材の活躍を促してまいります。

 

 

d. 人材育成

・業務遂行において表面的な原因分析と拙速な対処が散見され、業務の手戻りやムダな作業が発生しており、工数不足に拍車をかけていました。問題の真因特定とその解決力を向上させ、従業員一人ひとりの課題解決能力向上を図るべく、2021年6月より全社共通の問題解決手法の導入を開始しました。プロジェクトチームで同手法の展開と浸透・定着を図っており、2022年度からは全社研修においても取り入れております。

・当社本来の「困難に立ち向かい自ら切り開く起業家精神」に立ち返り、視野・知見を広げ、従業員一人ひとりが社外へのアンテナを高めることを目的に、若手人材のスタートアップ企業への派遣を開始しました。国内では、2020年より株式会社エムスクエアラボへ、また2022年8月より株式会社SkyDriveへは、『空飛ぶ車』を、四輪・二輪・マリンに次ぐ新たなモビリティ事業の一つとするために、種をまき、育成することを目的に派遣しています。海外では、デジタル化が急速に進んでいるインドに、2022年11月よりSIC(スズキ・イノベーション・センター)を通じて社内各本部の若手を派遣し、人々の日常にある課題解決を目指し、インド工科大学の学生と当社従業員とがアイディアを出し合いITプロダクトを開発、社会貢献に繋げるイノベーション創出活動を開始しています。

・CASE対応を始めとする新分野については主に日本で取り組み、一方の既存領域についてはインドに移管を進めています。これまで以上にインド人の教育を進めるためにも、Maruti Suzuki India Limitedを始めとする現地インド人材と日本人材が混然一体となって業務に取り組むことで、インドの開発能力を向上させスズキ全体の競争力も向上させています。

・2017年9月よりシリコンバレーにて、問題解決手法『デザイン思考』を学び、失敗を恐れず挑戦する“ベンチャー精神”の体得を目的で派遣を開始しました。当社の社是の精神である『お客様のために』を体現している現地スタートアップ企業から学ぶべく、これまでに16回、延べ173名をシリコンバレーへ派遣、コロナ感染拡大以降はオンラインにより更に10回、延べ103名に対し研修を実施しました。社長自らも参加するなど、役員から若手に至る多様な役職・階層が研修に参加し、研修の後現地で学んだデザイン思考や、失敗を恐れず挑戦するマインドセットを日々の業務や新規プロジェクト、人材育成に活かしています。

・デジタルを活用して課題を発掘・解決する動きが急激に加速しており、当社においてデジタルに関する様々な取組み・意思決定が急増していることから、役員・本部長をはじめ全社員に、デジタルの目的・リテラシー・知識・スキルを具備できるように取り組んでいます。

 

<デジタル教育の主な取組み>

(1)経営層自らが意識ではなく行動を変える(例:紙資料からデジタル資料へ)

(2)SimpleWork!というスローガンでのデジタルを活用した間接業務50%削減

(3)データドリブン経営を目指し基幹業務システムの刷新(ERP導入)

(4)データ活用を促進するための全社教育の実施

(5)あらゆる顧客接点で当社とお客様とつながり、お客様のニーズにこたえる

(6)デジタル化対応のスピード向上のために、社内でデジタル化内製人材の育成・配属

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクは以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです

 

<リスク管理体制>

取締役会の下に、コーポレートガバナンス委員会を設置しています。コーポレートガバナンス委員会は、コンプライアンスの徹底やリスク管理に関する施策を展開し、また、関係部門との連携により組織横断的な課題への取組みを推進しています。

詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

<事業等のリスクのうち、現在特に大きな影響があるもの>

(1) 取引先からの部品調達上の課題

当連結会計年度においては、取引先との連携強化及び設計変更による台当りの半導体使用数の削減等の取組みにより、前連結会計年度に比べ減産影響を縮小しました。しかし、半導体含む部品不足は依然継続しており、2024年3月期に入っても計画通りの生産が出来ない状況が続いています。この状況は2021年3月期から長期に渡り続いており、その間バックオーダーが増加してきました。

2024年3月期は生産が正常化に向かうよう、さらに取引先との連携を行ってまいります。しかしながら国内外で積みあがっているバックオーダーの解消には長期間かかる見通しであり、注文して頂いたお客様をお待たせしている問題を解決できておりません。

 

(2) 原材料・部品価格の上昇

当連結会計年度において、鋼材等原材料の価格は上昇しました。取引先から仕入れる部品の価格についても原材料やエネルギー等の値上がりを背景に上昇しました。その結果、前連結会計年度に対して939億円の減益影響がありました。さらに、2024年3月期においても、当連結会計年度に対して200億円の減益影響を見込んでいます。当社グループはコストアップに対し、原価低減や価格転嫁等により収益確保を図っていますが、まだ十分に克服てきていない状況です。

 

(3) 他社との競争激化

当社グループはインドの乗用車市場で50%以上のシェアを目標としています。当市場でのSUVの人気が高まる中、当社グループは当連結会計年度において新型ブレッツァ及びグランドビターラのSUV2モデルを投入しました。しかしながら、他社も相次いでSUVを投入したことにより、SUVセグメントのシェアは12.1%に留まり、その結果、乗用車全体のシェアも41.3%に留まりました。

2024年3月期においては、フロンクス及びジムニー5ドアを新たに投入し、競争力強化を図ります。さらに、インド市場の成長を見据えた生産能力の増強を計画通り進めており、シェア50%に向けて取り組んでまいります。

 

 

<事業等のリスク>

(1) 事業に関するリスク

 ① 気候変動及び低炭素社会への移行

気候変動リスクは、日本及び世界各国で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、低炭素社会への移行リスク及び気候変動による物理リスクが含まれます。

低炭素社会への移行リスクのうち、当社グループが特に重要度の高いリスクと認識しているものは、自動車のCO2・燃費規制の強化に伴う罰金発生や販売機会の逸失、規制遵守のための研究開発費用の負担増加等、及び炭素税等の導入・強化に伴う操業コストの増加等です。これらは、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客様の嗜好や投資家行動の変化による企業価値低下等の可能性があります。

気候変動の物理リスクには、平均気温の上昇に伴うエネルギーコストの増加等、及び水資源リスクの変化に伴うサプライチェーンの停滞や生産コストの増加等の長期的な気候変動による影響と、自然災害の頻発・激甚化に伴う事業拠点の被災や事業活動の停止等の突発的な気象変化による影響の両方が含まれます。当社グループはBCPを策定していますが、気候変動の物理的リスクは当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

 ② 新商品の開発・投入力

お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化を的確に捉え、お客様に満足していただける魅力的な新商品を適時に開発して市場に投入することは、四輪車・二輪車・船外機メーカーにとって大変重要です。国内外における景気の低迷による需要の減少、環境性能への関心の高まり、先進技術搭載車の急速な普及等、急激に変化するお客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化を捉えることが従来にも増して重要になっています。

また、新商品の投入は、お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化を的確に捉えることだけでなく、具体的な商品の開発力、将来に向けた先進技術の開発力、さらには継続的に商品を生産する能力が必要になります。

さらに、当社グループがお客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化を的確に捉えることができても、技術力、部品の調達、生産能力、優秀な人材の確保、その他の要因により、対応した新商品を適時に開発することができない可能性があります。お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化を的確に捉えた商品を適時に市場に投入することができない場合、販売シェアや売上の低下につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ コンプライアンス

当社グループでは役員及び従業員が健全に職務を遂行するための「スズキグループ行動指針」の制定、コーポレートガバナンス委員会の設置、業務に関連する法令等の遵守、承認・決裁手続、他部門による確認手続の定めを含む業務規程・マニュアル類の整備、コンプライアンス研修や個別の法令等の研修の実施、内部通報窓口(スズキグループ・リスクマネジメント・ホットライン)の設置など、法令等の遵守については違反の未然防止の対策並びにコンプライアンス案件に速やかに対応する体制を講じています。しかしながら、不測の事態により法令違反の事実や不十分な対応があった場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人材確保及び人材育成

電動化技術、先進安全技術、デジタル技術の強化等の専門領域の人材を中心として、日本国内のみならずインドを含め、これまで以上に積極的な採用を行うとともに、採用後の人材育成にも力を入れています。

また、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、性別・年齢・国籍・人種・宗教等の多様性を尊重するとともに、分け隔てなく登用し、働きやすい職場環境の整備に努めています。併せて、人事制度の改革にも力を入れています。

しかし、労働市場のひっ迫、人材獲得競争の激化等により、人材の確保ができない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。同様に、人材の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された職場環境が実現できない場合においても、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 取引先からの部品調達上の課題

技術力、品質、価格競争力などの要素により、部品によっては調達が特定の取引先に依存しているものがあります。また、当社グループが一次取引先を分散していたとしても、一次取引先が部品調達を二次以降の特定の取引先に依存しているものがあります。これらの部品について、市況、災害、経済安全保障の動向、人権侵害の発覚等により、継続的・安定的に確保できない場合、当社グループの生産に遅延や休止又はコストの増加を引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 品質保証

当社グループは、高品質な製品づくりを重要な経営課題の一つとしており、中期計画の中でも優先的な取組み事項の一つとしています。一方で、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ デジタル情報技術化の課題

当社グループでは、設計開発・生産・販売や会計など事業活動のあらゆる場面において、電子データの形で作成・処理・蓄積を行うとともに、必要に応じてシステムの更新・変更を行っています。また、製品においても様々な電子制御装置が搭載され、車両や搭載装備の制御を行っています。これらに対しては、安全対策が施されているものの、ハッカーやウィルスによるサイバー攻撃や、システムトラブル、電力停止などのインフラ障害などが発生する可能性があります。特に、サイバー攻撃は脅威を増しており、標的にされるおそれがあります。その結果、業務の中断や、データの破損・喪失、機密の漏洩が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 特定の事業及び市場への集中

当社グループは、当連結会計年度の業績において連結売上高の25%を国内四輪事業が、37%をインド四輪事業が占めています。そのため、これら2つの事業に関わる需要や市況、同業他社との競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの業績及び財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 他社との提携

当社グループは、研究開発、生産、販売、金融等、国内外の自動車メーカーをはじめ、他社と様々な提携活動を行っていますが、提携先固有の事情等、当社グループの管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 情報の漏洩

当社グループは社内外の個人情報や、経営・業務・技術等に関する機密情報の漏洩を防止する体制を取っていますが、不測の事態により当該情報の流出・不正使用があった場合、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払義務などが発生することが考えられ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 市場に関するリスク

 ① 経済情勢の変化、市場の需要変動

長期間の景気低迷、世界経済の悪化や金融危機、お客様の購買意欲低下は、四輪車、二輪車、船外機等の当社グループ製品の需要の大幅な低下につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、特に、アジア地域の新興国を中心とした海外生産工場への依存度も年々高まってきています。これらの市場での経済情勢の急変などの不測の事態は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、各国の税制や金融政策などの予期せぬ変更や新たな適用が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

 ② 他社との競争激化

当社グループは、事業を展開する世界各国の市場において他社との競争にさらされています。世界の四輪車・二輪車・船外機産業の国際化及び異業種参入が今後ますます進展することによって、競争はより一層激化する可能性があります。他社との競争は、製品の品質、安全性、価格、環境性能等のほか、製品の開発・生産体制の効率性や販売・サービス体制の整備、販売金融など様々な項目が挙げられます。

当社グループは、競争力の維持・向上のための施策に取り組んでまいりますが、将来において優位に競争することができないことにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金融・経済のリスク

 ① 為替及び金利の変動

当社グループは、日本から世界各国へ四輪車、二輪車、船外機並びにそれらの部品などを輸出するとともに、海外の生産拠点からも、それらの製品や部品を複数の国々へ輸出しています。現在では連結売上高に占める海外売上高の割合は約7割にのぼっています。特に、新興国を中心とした海外生産工場への依存度が高く、為替変動に左右されやすく、また、資金の多くを低金利が続く日本で調達していることから、金利変動にも左右されやすい構造にあります。

当社グループは、為替及び金利変動リスクの軽減を図るため、為替予約等のヘッジや、生産拠点を分散してグローバルに最適化を図るなどの対策を行っています。しかし、全てのリスクをヘッジすることは不可能であり、為替及び金利の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 原材料・部品価格の変動

原材料及び部品の購入価格の上昇は、製品コストの上昇につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク

 ① 政府規制等

排出ガス、燃費、騒音、安全性及び製造工場からの汚染物質排出レベルに関して、四輪車、二輪車及び船外機業界は、様々な法規制の適用を受けています。これらの規制は強化される可能性があります。

また、当社グループは、消費者保護規制、労働規制、独占禁止法令などの内外の広範な法規制の適用を受けております。

これらの規制の改正により費用負担が増加し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 知的財産の保護

当社グループは、他社製品との区別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を蓄積しており、その保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権侵害防止の対策を講じています。しかしながら、当社グループの知的財産が不法に侵害され、あるいは第三者から知的財産侵害の指摘を受け訴訟、製造販売の中止、損害賠償等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③ 法的手続

当社グループは、訴訟、関連法規に基づく様々な調査、法的手続を受ける可能性があります。現在係争中、又は将来の法的手続で不利な判断がなされた場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

 ④ 世界各国での事業展開

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、また、いくつかの国においては、その国の法律上又はその他の要件に従い、現地企業との間で合弁による事業を行っています。これらの事業は、各国の様々な法律上その他の規制(課税、関税、海外投資及び資金の本国送金に関するものを含みます。)を受けています。これらの規制、又は合弁相手の経営方針、経営環境などに変化があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

また、多くの政府は、関税の賦課や、価格管理規制及び為替管理規制を定めています。当社グループは、これらの規制を遵守するために費用を負担してきており、今後も負担することになると予想しています。新たな法律の制定又は既存の法律の変更によっても、当社グループが更なる費用を負担する可能性があります。さらに、各国の税制や景気対策等の予期せぬ変更や新たな適用が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 自然災害・疫病(発生・まん延)・戦争・テロ・ストライキ等の影響

日本では、地震、台風、洪水などの自然災害や原子力発電所の予期せぬ事故など様々なリスクにさらされています。特に、当社の本社をはじめとする主要施設や研究開発拠点、主要生産拠点は周期的な巨大地震が発生する可能性が高い静岡県に集中しています。当社グループでは、東海地震・東南海地震などの自然災害による被害の影響を最小限に抑えるべく、建物・設備等の耐震対策、防火対策、事業継続計画の策定、地震保険への加入等、様々な対策を講じていますが、災害等の規模がその想定を超える場合には業績及び財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

海外においても、当社グループは世界各国において事業を展開しており、海外での事業展開に関連する様々なリスクにさらされています。

これら国内外のリスクには自然災害、疫病の発生・まん延、戦争、テロ、ストライキ、さらには政治的・社会的な不安定性や困難に起因するもの等があります。これらの予期せぬ事象が発生すると、原材料や部品の調達、生産、販売及び物流やサービスの提供などに遅延や停止が生じる可能性があります。これらの遅延や停止が起こり、長引くようであれば、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

新型コロナウイルス感染症につきましては、足元では収束に向かいつつあるものの、再拡大した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境につきましては、日米金利差拡大に伴う円安の進行が業績への追い風となった一方、半導体不足に伴い計画通り生産・販売が出来ないこと、及び原材料価格の高騰は、前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度も通年に渡り課題となりました。半導体不足に関しては、取引先様との連携強化を通した調達力の強化、及び設計変更をはじめとする対応力の強化を図り、四輪車・二輪車ともに生産・販売は前連結会計年度を上回りました。また、原材料価格高騰に関しては、海外におきまして値上げを実施することで、収益の確保に努めてまいりました。

当連結会計年度の業績につきましては増収増益となりました。売上高は4兆6,416億円となり前連結会計年度に比べ1兆733億円(30.1%)増加しました。営業利益は3,506億円となり前連結会計年度に比べ1,591億円(83.1%)増加しました。なお、増益のうち、為替円安は1,006億円の増益効果がありました。経常利益は3,828億円となり前連結会計年度に比べ1,199億円(45.6%)増加、親会社株主に帰属する当期純利益は2,211億円となり前連結会計年度に比べ608億円(37.9%)増加しました。

 

事業別セグメントの業績は、次のとおりです。

 

① 四輪事業

売上高は、4兆1,622億円と前連結会計年度に比べ9,573億円(29.9%)増加しました。営業利益は2,791億円と前連結会計年度に比べ1,263億円(82.6%)増加しました。海外での値上げ等に伴う売上構成変化等の改善、国内外での販売増加、為替円安効果等が寄与しました。

 

② 二輪事業

売上高は3,332億円と前連結会計年度に比べ797億円(31.4%)増加しました。営業利益は293億円と前連結会計年度に比べ185億円(170.2%)増加、営業利益率は過去最高の8.8%となりました。

 

③ マリン事業

売上高は1,346億円と前連結会計年度に比べ366億円(37.3%)増加、営業利益は394億円と前連結会計年度に比べ154億円(64.2%)増加し、売上高・利益とも過去最高となりました。北米での大型船外機販売の堅調な推移、為替円安効果等が寄与しました。

 

④ その他事業

売上高は118億円と前連結会計年度並みとなり、営業利益は27億円と前連結会計年度に比べ11億円(28.3%)減少しました。

 

生産、受注及び販売の状況は、次のとおりです。

 ① 生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度(千台)

前年比(%)

四輪事業

3,210

+13.8

二輪事業

1,304

+10.8

マリン事業

162

+1.5

 

 

 ② 受注実績

当社グループは主に見込み生産を行っているため、受注生産について該当事項はありません。

 

 

 ③ 販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度(億円)

前年比(%)

四輪事業

41,622

+29.9

二輪事業

3,332

+31.4

マリン事業

1,346

+37.3

その他事業

118

△2.5

合計

46,416

+30.1

 

(注) 販売実績は外部顧客への売上高を示しています。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の財政状態は、総資産は4兆5,777億円(前連結会計年度末比4,226億円増加)となりました。負債の部は、2兆691億円(前連結会計年度末比1,776億円増加)となりました。純資産の部は、2兆5,086億円(前連結会計年度末比2,449億円増加)となりました。

借入金につきましては、半導体を含む部品供給不足の影響が依然として不透明なことや世界的な景気後退リスクの高まりを踏まえ、現在の借入水準を当面維持していく考えです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュフローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は8,821億円となり、前連結会計年度末に比べ241億円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー

2,866億円の資金増加となりました。増益により、前連結会計年度の2,213億円の資金増加に比べ、654億円の増加となりました。

 

(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー

3,027億円の資金減少となりました。有形固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度の1,535億円の資金減少に比べ、1,492億円の減少となりました。

これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは160億円の減少となり、前連結会計年度の677億円の資金増加と比べ、838億円の減少となりました。

 

(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー

316億円の資金増加となり、前連結会計年度の1,546億円の資金減少に比べ、1,862億円の増加となりました。これは、借り換えの返済と借入の期ずれに伴い、前連結会計年度比としては借入金が増加したこと等によります。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、経営環境を考慮しつつ、適切な手元資金水準を維持しながら、資金調達計画を経営会議において審議し、戦略的投資と研究開発費等の成長に向けた経営資源の適切な配分を安定的に行っています。当社グループの資金の流動性管理にあたっては、資金繰り計画を作成し、適時に更新するなどによりリスク管理を行っているほか、急激な外部環境変化に対応できるよう、一定水準の手元流動性を確保する方針としています。また、国内や欧州において資金を一元管理し、キャッシュプールを通してグループ内での相互貸借機能を保有することで、流動性リスクに対し機動的に対応できる体制を構築しています。加えて、当社は取引銀行6行と総額3,000憶円のコミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性を確保する手段を保有しています。なお、当連結会計年度末においてコミットメントラインは未使用となっています。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物8,821億円は、月商比2.3ヶ月に相当し十分な流動性を確保しています。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものの内容及び金額は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

2017年2月

トヨタ自動車株式会社と業務提携に向けた覚書を締結。(2019年8月に資本提携)

 

2021年7月

 

トヨタ自動車株式会社、いすゞ自動車株式会社、日野自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社と商用事業における協業に関する共同企画契約を締結。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は主に当社が行っています。

モノづくりの根幹である「小・少・軽・短・美」、お客様の立場になった「価値ある製品」づくりをモットーとし、世界中のお客様の日々の移動を支え、環境にも優しく、いつも身近にあって頼れる生活のパートナーとなる製品・サービスの提供に挑戦しながら、下記のように取り組んでいます。

 

 生産、技術、調達、IT一体の「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)~「小・少・軽・短・美」~」の基本理念「世界の生活の足を守り抜く」を主眼にお客様に価値ある製品・サービスを提供するため、AIを活用した品質向上・保証とデータ活用基盤の強化などに挑戦しています。これらは製品の電動化、製造領域のカーボンニュートラル対応と結びつきスズキスマートファクトリーの体系となり取り組んでいます。電動化の製造技術は、量産が視野におさまり、製造領域のCO2排出削減は、排出量の多い塗装設備の刷新計画の開始や水素活用で燃料電池を動力とする荷役運搬車の実証実験など技術活用を進めています。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は2,056億円であり、セグメントごとの活動状況は以下のとおりです。

 

 (1)四輪事業

① 新商品の開発状況

[国内市場]

 2022年4月に「エスクード」にハイブリッドシステムを搭載し発売しました。高い走破性と低燃費を両立しました。

 2022年6月に「アルト ラパン」を一部仕様変更し、安全装備や快適装備の充実を図りました。また、新たに「アルト ラパン LC」を設定し発売しました。「アルト ラパン LC」は、エクステリアはどこか懐かしさを感じるデザインとし、インテリアは落ち着きのある空間としました。

 2022年8月に、「ワゴンR」、「ワゴンR スティングレー」を一部仕様変更し、安全機能の充実を図りました。また、新たに「ワゴンR カスタムZ」を設定し発売しました。「ワゴンR カスタムZ」は専用のヘッドランプ、フロントグリル、フロントバンパーを採用し、精悍なデザインに仕上げました。

 2022年8月に新型軽商用車「スペーシア ベース」を発売しました。「遊びに仕事に空間自由自在。新しい使い方を実現する軽商用バン」をコンセプトに、商用車の積載性や広い荷室空間、使い勝手のよさと、乗用車のデザインや快適性、運転のしやすさを融合しました。

 2022年12月にハイブリッドを搭載した小型乗用車「ソリオ HYBRID S」、「ソリオ バンディット HYBRID SV」を発売しました。WLTCモード走行での燃費値22.3km/Lを実現しています。

[海外市場]

 2022年6月に、インド子会社Maruti Suzuki India Ltd.(以下、マルチ・スズキ)は、新型「ブレッツァ」をインド国内で発売しました。フードやベルトラインを強調することで、SUVらしい大胆でスポーティーな力強いエクステリアを進化させました。全方位モニターやヘッドアップディスプレイなどの先進装備を採用するとともに、コネクテッドサービス「スズキコネクト」に対応しました。

 2022年7月に、マルチ・スズキは、グローバルにおけるSUVのフラッグシップモデルである新型「グランドビターラ」を発表しました。トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車(株))と当社の業務提携に基づく協業のひとつであるグローバルでの車両のOEM相互供給契約のもと、当社が開発し、トヨタ・キルロスカ・モーターにて8月より生産を開始しました。インド国内での販売をはじめ、アフリカなど海外への輸出も開始しました。

 2022年8月に、マルチ・スズキはインドで新型「アルト」を発売しました。軽量・高剛性のプラットフォームに1.0Lガソリンエンジンを搭載することで、優れた低燃費と高い走行性能を実現しました。

 

② カーボンニュートラルへの対応

 当社は、お客様の選択肢を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、事業・地域毎のカーボンニュートラル目標の達成に取り組んでいます。ハイブリッドシステムの性能向上はもちろんEVの開発・製品化に向けた電動化技術開発や、内燃機関の更なる改善にも力を入れています。

 ハイブリッド車としては、小型乗用車「ソリオ HYBRID S」及び「ソリオ バンディット HYBRID SV」に一定速走行時などでEV走行可能な当社独自のハイブリッドシステムを搭載し、2022年12月より販売を開始しました。コンパクトながら瞬間的に大きな力を発揮する駆動用モーターとコンパクトで伝達効率に優れたオートギヤシフト(5速AGS)を組み合わせた当社独自のハイブリッドシステムを採用した他、6Ahのリチウムイオンバッテリーとの組み合わせを採用しました。

 コンパクトSUV「エスクード」に搭載したハイブリッドシステムは、ハイブリッドシステムの電圧、リチウムイオンバッテリーの容量、モーターの最大出力、トルクの変更により、EV走行が可能な時間や速度の範囲を拡大※1し、WLTCモード走行での燃費値19.6km/Lを実現しています。また、ブレーキをかけた際に効率よくバッテリーが充電できる回生協調ブレーキ、後退時のEV走行※2を採用しました。

 新型「グランドビターラ」のパワートレインにはマイルドハイブリッドのほか、ハイブリッドシステム「インテリジェントエレクトリックハイブリッド」を設定しました。トヨタ自動車(株)との協業を通じて、両社それぞれの強みを持ち寄ることで、お客様に幅広い電動化技術を提供することが可能となり、インドにおける電動化の加速と、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

 電気自動車の取組みについては、当社はお客様のニーズと利用スタイルに対応した適所適材のEVを開発し、適切な時期に市場に投入していく方針です。

 日本では、2023年度の軽商用バッテリーEVの投入を皮切りに、小型SUV・軽乗用などの投入を予定しており、2030年度までに6モデルを展開します。また、軽自動車や小型車向けに新型ハイブリッドを開発し、バッテリーEVと併せることでお客様に多くの選択肢を提供していきます。

 また、電気自動車の開発では、2022年3月より開始した、プロトタイプ車を用いた一般のドライバーに通勤や休日に使用していただく中でデータを収集するテストを継続しています。インド・グジャラート州への投資など、インドでのEV生産の準備を進めており、これらのテスト結果を、現在トヨタ自動車(株)と共同で開発しているEVにもフィードバックしていきます。

 2022年7月に、当社、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車(株)、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社の4社は、カーボンニュートラルの実現に貢献するために、2023年度に商用軽バン電気自動車(以下、BEV商用軽バン)の導入を目指しています。現場での使い方、走り方等を調査し、「Commercial Japan Partnership」プロジェクトで足並みを揃えながら開発を進めています。

 欧州では、2024年度よりバッテリーEVを投入し、SUV・Bセグメントなどに広げていき、2030年度までに5モデルを展開します。欧州各国の環境規制やお客様ニーズに合わせて柔軟に対応していきます。

 インドでは、2023年1月に開催された「Auto Expo 2023」のマルチ・スズキのブースにおいて、EVコンセプトモデル「eVX」を世界初公開しました。2025年までに市販化を計画している当社のEV世界戦略車第一弾のコンセプトモデルです。このコンセプトモデルをベースとした商品を2024年度に市場投入し、2030年度までに6モデルを展開します。バッテリーEVだけではなく、当社はあらゆる製品・サービスを提供すべく、ハイブリッド車・CNG・バイオガス・エタノール配合の燃料などを使用したカーボンニュートラルな内燃機関車も継続的に投入する計画です。

 さらに、インドでは多様なニーズに応える環境性能に優れた技術を搭載する自動車をラインナップするための技術として、CNG燃料に対応した自動車をマルチ・スズキと共同で開発、既に100万台以上をインド市場にて販売しました。加えて、当社が支援しマルチ・スズキが開発した高エタノール混合ガソリン対応エンジン(E20-E85に対応)を搭載したプロトタイプ車の開発も進めていきます。

 また、燃料を「つくる」プロセスの効率化を研究することを目的とした「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」に参画し、カーボンニュートラル社会実現のため、バイオマスの利用、生産時の水素・酸素・CO2を最適に循環させて効率的に自動車用バイオエタノール燃料を製造する技術研究を進めています。

 

③ 新興国への取組み

 マルチ・スズキは、2023年1月9日にインド国内累計販売2,500万台を達成しました。

 現在、インドでは17モデル※3が生産・販売されており、近年では成長著しいSUVモデルの投入に加え、ハイブリッドやCNG仕様車の普及にも取り組んでいます。また、インド国内市場のみならず、アフリカをはじめとする新興国市場への輸出にも積極的に取り組んでいます。

 マルチ・スズキは、これからも安全で信頼性が高く、環境に配慮した商品を提供し、自動車市場の持続可能な発展に貢献していきます。

 

④ 安全・安心技術の開発

 当社は、小さなクルマで大きな安心をお届けするため、誰もが安心して乗れる運転のしやすさを考えた基本安全技術、事故そのものを未然に防ぐ予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」、万一の衝突被害を軽減する衝突安全技術を培い続けています。安心して楽しく車に乗っていただくために、事故の無い未来に向けてさらなる技術の進化と普及に努めていきます。

 新型「スペーシアベース」では、夜間の歩行者も検知する「デュアルカメラブレーキサポート」を搭載した「スズキ セーフティ サポート」を全車に標準装備したほか、XFには全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(以下、ACC)を採用しました。また、すれ違い支援機能を搭載した全方位モニター用カメラをメーカーオプションとして設定しました。また「ワゴンR」、「ソリオ」において、ACCや車線逸脱抑制機能の装備を拡充しました。

 

⑤ 情報通信技術の開発

 2021年12月より国内向け新型「スペーシア」、2022年2月よりインド向け新型「バレーノ」、2022年8月より欧州向け新型「Sクロス」へコネクテッド技術を搭載し、「スズキコネクト」※4サービスの提供を開始しました。コネクテッド技術を活用して、緊急時の迅速かつきめ細やかなお客様サポートや、離れた場所で車両の状態確認や操作を可能とするリモート機能など、より安心・快適・便利なカーライフをお客様へ提供しています。今後は、他地域への展開や他モデルへの搭載を順次進めるとともに、コネクテッドデータを活用した品質向上や設計支援の促進、次世代の通信技術を採用した新たなコネクテッド機能の開発を進めていきます。

 また、2023年3月より法人向け車両管理サービス「スズキフリート」を開始しました。コネクテッド技術を活用し、車両を日々活用されている法人企業の車両運行管理や社員の安全運転啓発などの業務を支援します。簡易装着可能な通信機を活用することで、法人企業が既に所有されている車両にも装着することが可能です。今後は、走行データを分析することで、各業種・企業に適したカスタマイズサービスを提供することや、カーボンニュートラル対応のEV導入を支援するサービスへ展開することを進めていきます。

 2016年より進めている「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」では、浜松市内で第3回目の実証実験を行いました。自動運転システムの技術レベルが向上し自動走行可能な領域を広げることができました。また、自動運転を活用したサービスとして労働力不足が深刻になっている農業分野において、作物の圃場から集荷場の自動搬送を目的とした自動運転軽トラックの開発に取り組んでいます。内閣府のSIP施策に参加し埼玉県鴻巣市で行われたフォーラムで農道での自動搬送デモを実施しました。今後も地域や様々な業種のニーズを捉え、人や社会に役立つ自動運転の開発に取り組んでいきます。

 当連結会計年度における四輪事業の研究開発費は1,862億円です。

 

※1 スイフト HYBRID SZに搭載されているハイブリッドシステムと比較。

※2 後退前にエンジンがかかっている場合やアクセルの踏み込み具合、バッテリーの残量等により、EV走行しない場合があります。

※3 2023年1月30日時点

※4 メーカーオプションとして設定しています。(別途ご契約が必要な有料サービス)

 

 

 

 (2)二輪事業

 二輪事業では、カーボンニュートラル達成に向けた技術、お客様の立場になった「価値ある製品」を提供する技術の開発を行っています。カーボンニュートラル達成に向けた、より環境にやさしい電動二輪車の開発では、電動二輪車の共通仕様バッテリーシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」を利用した電動スクーター「e-BURGMAN」での実証実験を開始しました。実証実験において種々のデータを収集し、今後の電動二輪車の開発を行います。

 また、新型大型二輪車「V-STROM800DE」及び「GSX-8S」向けに、新たに775cm3の2気筒エンジンを開発しました。新開発の「スズキクロスバランサー」を採用し、エンジンの振動を抑えながら、軽量・コンパクト化を実現しました。

 当連結会計年度における二輪事業の研究開発費は145億円です。

 

 (3)マリン事業 

 マリン事業では、マリン製品における環境や利便性向上に関わる技術開発を行っています。

主な成果として、「マイクロプラスチック回収装置」を標準装備した船外機「DF140BG」、「DF115BG」、「DF140B」、「DF115B」、「DF100C」を開発しました。

 「マイクロプラスチック回収装置」は、水面付近のマイクロプラスチックを回収することを可能とした装置です。近年、正しくリサイクルや回収されずに海に流れ込む大量の海洋プラスチックごみは環境問題となっており、それらが自然環境下で微細に破砕されたマイクロプラスチックは生態系への影響が懸念されています。この問題への対応として、船外機がエンジン冷却用に大量の水を汲み上げ、冷却後にその水を戻す構造であることに着目し、戻り水ホースに取り付け可能なフィルター式の「マイクロプラスチック回収装置」を開発しました。この装置は冷却後の戻り水を活用するため船外機の走行性能に影響しません。お客様はフィルターを確認することが可能で、回収できるマイクロプラスチック量は多くはありませんが、その存在を身近に感じ、SDGsの14「海の豊かさを守ろう」の意識をさらに高めていただけるものと考えます。

 その他環境面として、この装置が標準装備された船外機は、定評のある「スズキリーンバーン(希薄燃焼)システム」の採用、高圧縮比化による熱効率向上、吸入空気温度上昇を抑制したエアインテークによる燃焼室内流入空気温度の低減の効果により優れた燃費性能を有しています。また、利便性の向上として、スムーズで確実なシフト操作、素早く正確なスロットルコントロールを実現する電子式シフトと電子式スロットルを備えた「スズキプレシジョンコントロール」を採用したモデルも設定しました。

 当連結会計年度におけるマリン事業の研究開発費は45億円です。

 

 (4)その他の事業

 その他代表的なものとして、小型低速電動モビリティ事業において高齢者の生活を支援する新たな商品と、電動車いすの技術を応用した電動台車の技術開発に取り組んでいます。

 具体的には、2021年11月に実施したはままつフラワーパークでの電動アシストカート「KUPO(クーポ)」の試験運用に続き、2022年11月に屋内商業施設での有用性を検証する試験運用を実施しました。「KUPO」は、歩行を補助する電動アシストカートから、乗って移動できる電動車いすにもなり、生活を支援し歩く嬉しさを提案する「歩く・広がるモビリティ」として開発を進めてきた活動支援モビリティです。

 また、2023年3月に自動配送ロボットの開発・提供・サービス運用を手掛けるスタートアップ企業であるLOMBY株式会社と自動配送ロボットの共同開発契約を締結しました。当社は電動台車の設計・開発を担当し、当社が長年築き上げてきた電動車いす技術の流用と部品の共通化を図ることにより、自動配送ロボットの量産化における品質確保と製造コスト低減に取り組んでいます。

当連結会計年度におけるその他事業の研究開発費は4億円です。