タケダの企業理念と「私たちの約束」
当社の企業理念は、当社が誰であるか、何を行うか、どのように行うか、なぜそれが重要なのかというタケダの豊かなストーリーを伝えています。当社は、240年以上前の創業から現在に至るまで、社会にも役立つ誠実さで患者さんに貢献しています。当社は、「私たちの価値観」(バリュー)に基づき、「私たちの約束」を果たすことを通じて「私たちが目指す未来」(ビジョン)と「私たちの存在意義」(パーパス)を実現することを目指しています。「私たちの約束」とは、データ、デジタルおよびテクノロジー(DD&T)の力を活用し、「Patient」(すべての患者さんのために)、「People」(ともに働く仲間のために)、「Planet」(いのちを育む地球のために)に取り組むことです。
私たちの存在意義(パーパス)
「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」
私たちが目指す未来(ビジョン)
当社のビジョンは、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために。私たちはこの約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続けること」です。
私たちの価値観(バリュー):タケダイズム
タケダイズムとは、まず誠実であること。それは公正・正直・不屈の精神で支えられた、当社が大切にしている価値観です。当社は、これを道しるべとしながら「1.患者さんに寄り添い(Patient)、2.人々と信頼関係を築き(Trust)、3.社会的評価を向上させ(Reputation)、4.事業を発展させる(Business)」を日々の行動指針とします。
私たちの約束(インペラティブ)
当社には、患者さん、ともに働く仲間、そして地域社会に対して果たすべき責任があります。この「私たちの約束」は「私たちの存在意義」と「私たちが目指す未来」を実現するために欠かせない要素です。
すべての患者さんのために
・私たちは、倫理観をもってサイエンスの革新性を追求します。そして、人々の暮らしを豊かにする医薬品の創出に取り組みます。また、私たちの医薬品を、より多くの人々に迅速にお届けします。
ともに働く仲間のために
・私たちは、理想的な働き方を実現します。
いのちを育む地球のために
・私たちは、自然環境の保全に寄与します。
データとデジタルの力で、イノベーションを起こします
・データを活用して導き出された成果をもとに、もっとも信頼されるバイオ医薬品企業として、これからも変革し続けます。
当社は、最も信頼される、データ主導型で成果に重きを置いたデジタルバイオ医薬品企業に変革することを目指しています。当社は、中核とする事業を通じて、患者さん、株主、社会に対して長期的な価値を提供するとともに、ともに働く仲間や地域コミュニティ、さらには地球に対して良い影響を与えることができるように努めています。
事業環境
世界の製薬産業においては、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっており、がん免疫療法、細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術の登場によってさらに促進されていると考えています。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が契機となり、世界中の人々に命を救うワクチンや治療薬を驚異的な速さで提供するといった新しいイノベーションの時代が到来しました。このような医療イノベーションによる成果が現れてきた一方、高齢化や生活スタイルの変化、複合疾患に対するより高度で先進的な治療法の利用等によってヘルスケアに対する投資額はここ10年、先進国の国内総生産や国内総所得を上回る速度で増加してきました。
このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっています。各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。また、英国の償還価格決定制度に見られるように予測不能で急激な支払率の引き上げは、イノベーションに対する影響が懸念されます。さらに、医療アクセスの格差が拡大していることから、医療の公平性に対処するための医療アクセスの改善や政策に対する必要性が高まっています。当社は、現在主流の「出来高払いの診療報酬モデル」から、成果に基づく支払と品質の確保を目指す「価値に基づく保険医療モデル」への移行により、医療費の増加のペースを抑えるとともに、対象となる患者さんを拡大し、公平性を改善することができると考えています。
地政学的な視点では、地域紛争や多国間紛争により世界経済の先行きが不透明となる中、グローバル企業はさらなるリスクに晒されており、リスクが一段と高まっていると考えています。長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による影響と、これらの地政学的要因とが相まって、主要産業における供給の途絶、エネルギー価格の上昇、労働市場における圧力の上昇が引き起こされています。しかしながら、世界的なパンデミックが経済や健康に及ぼす影響を認識しつつも、次のパンデミックに備えた世界の取り組みの進展は依然として十分ではありません。新たに世界的なパンデミックが生じた場合、計画や対策不足の結果、最も脆弱な人々が被害を受けることになります。さらに、公衆衛生は気候変動が及ぼす影響と密接に結びついており、気温上昇に伴い拡大する疾患や影響を受ける地域の患者さんの医療アクセスに関連した課題が生じます。
現在のこのような事業環境の下では、当社の患者さんへのコミットメントと、患者さんをサポートするための取り組みは、これまで以上に重要になっています。
Patient(すべての患者さんのために)
当社は、患者さんやコミュニティに高品質の医薬品やワクチンをできる限り早くお届けするために、希少疾患とより一般的な疾患の両方において、最も高いアンメットニーズに集中して取り組んでいます。私たちは、患者さんの人生を変え得る科学の力を追求し、開発の加速と承認取得に繋げるデータを創出し、イノベーションを推進するためにデジタルの規模を拡大しています。当社の研究開発プログラムは、ヒトにおけるバリデーションがなされたターゲットに基づき、多様なモダリティ(創薬手法)を網羅するものであり、細胞治療やデータサイエンスの領域で蓄積された研究能力を活用して進められています。 当社は、パイプラインの開発加速から、品質と効率性の向上を図るための製造工程におけるデジタル化、医療従事者や患者さんの対応に至るまで、データ、デジタルおよびテクノロジー(DD&T)を幅広く活用しています。DD&Tには、当社の事業に変革をもたらし、患者さんの人生を変え得るより良い治療経験と治療結果を生み出す可能性があると考えています。
パイプラインには成果が現れています。2022年度には、デング熱ワクチンのQDENGAが流行国を含む多くの国で承認されました。当社は、当社の価値観に基づき、疾病負荷が最も高く、医薬品やワクチンへのアクセスの障壁が特に複雑な国を優先しています。さらに、当社の段階的な価格設定戦略に沿って、より広範なアクセスを確保するため、各国の経済発展段階や医療制度の成熟度に応じて当ワクチンの価格を調整することに取り組んでいます。主要な研究開発活動の内容および進捗の詳細については、「6 研究開発活動」をご参照ください。
QDENGAの製造施設では、デジタル技術が製品品質と生産性の向上に役立っています。ドイツのジンゲンでは、ワクチン生産を強化するために、最新の工程設備を備えたワクチン施設を建設しました。また、偽造防止技術を活用し、正規のサプライチェーンに入るすべての製品が真正品であること、偽造ワクチンを容易に特定できることを保証し、ワクチンの信頼性と接種の向上を支援しています。
People(ともに働く仲間のために)
当社は、科学や技術がどれだけ進歩しても、意義のある変革をもたらすことができるのは人の力であることを認識しています。私たちは、どこでも、いつでも、どのようなときでも、患者さんのためにイノベーションを加速することを支援する、特別で包括的な職場環境を作ることを目指しています。私たちは、柔軟性の確保、定期的な対面での交流によるインクルージョンの促進、データや知見に重点を置いた働き方を進化させることでこれを行っています。また、ピープルリーダーは、チームにとって最善の働き方を実行するため率先して取り組んでいます。
当社は、このような取り組みの一環として、当社オフィスを従業員の心身の健康の維持(ウェルビーイング)と学びを中心とした 「タケダ・コミュニティスペース」 に変革しています。これらの空間は対面での交流を最大化するために設計されており、持続可能な環境において人々が集中し、協力し、より密接につながることができるものとなっています。
また、従業員のスキルアップやケイパビリティを開発し、持続的な成長に向けて、機動的で柔軟な組織を構築しています。当社のオンラインの学習プラットフォームであるBloomは、従業員が専門的な学習計画を設計することを可能にし、個人の能力の最高に到達できるよう、生涯学習の文化を醸成することを支援しています。
健康改善への取り組みの一環としては、当社は行動保健プラットフォームであるThriveと提携し、従業員の全体的なウェルビーイングの改善、精神的回復力の構築、生産性の向上を支援しています。
これらは、ウェルビーイングを促進し業績を向上させ、柔軟性を受け入れて定期的な対面での交流の価値を重視することにつながるなど、従業員の理想的な働き方の実現を支援する取り組みであるとともに、変革を推進することで当社の競争優位性にもなり得るものと考えています。
Planet(いのちを育む地球のために)
当社は、地球温暖化や環境汚染が人々の健康に影響を及ぼすことを認識しており、環境課題に対する高い意識とリーダーシップをもって取り組んでいます。「私たちの存在意義」(パーパス)を実現するためには、人々の健康には健全な地球環境が必要であり、人々の健康に貢献するだけでは充分ではないと考えております。当社では、環境負荷を低減するためにクリーンエネルギーを優先的に使用するだけでなく、ネットゼロの達成およびバリューチェーン全体で温室効果ガス排出を無くすべく取り組んでいます。具体的には、当社の環境サステナビリティの取り組みとして、Science Based Targets initiative (SBTi)企業ネットゼロ基準に従った2040年までのネットゼロの達成、天然資源の保全、サステナビリティ原則を念頭に置いた製品の設計に注力しています。
当社は、温室効果ガス排出量削減の目標に向けて顕著な進展を遂げています。2022年9月に米国のEnel North America社と締結した12年間のバーチャル電力販売契約では、当社の現在の事業活動におけるスコープ1および2の温室効果ガス排出量の約20%に相当する最大で年間35万メガワット時(MWh)の再生可能エネルギークレジットを創出する見込みです。
当社はまた、2023年3月に、当社初のポジティブ・エネルギーを達成したビルをシンガポールに開設したことを公表しました。建物のエネルギーの少なくとも115%は現地の再生可能電源から供給されており、消費量よりも多くの電力を発生させています。
財務実績
当社の財務実績は、当社が新たな局面を迎えるにあたり、持続的な推進力を有していることを示しています。財務規律により創出されるフリー・キャッシュ・フロー、利益率の向上、およびレバレッジ低下策の推進などを通じて、当社は、成長ドライバーやパイプラインの強化に向けたさらなる投資が可能となり、株主還元も実施しています。また、将来予測に基づき、当社の財務プロファイルを計画・管理することによって、インフレ耐性を高め、金利上昇に対するエクスポージャーを最小限に抑えています。このような財務状況のもと、当社は、現在、臨床段階にある約40の開発プログラムについて、社内の研究開発エンジンおよび200社以上との提携を通じて多様なパイプラインの拡充に向けた取り組みを進めています。さらに、長期的な成長力を獲得するため、社内外の投資機会に戦略的に投資を行っています。
TAK-279は、乾癬や炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスを含む複数の免疫介在性疾患において、ベスト・イン・クラスになり得る高度に選択的な経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬であり、非常に大きく成長する可能性を有しています。当社は2025年度から2027年度にかけて、乾癬を適応症として当局に承認申請を行っていくことを目指しており、さらに、今後10年の成長に向けた取り組みを強化してまいります。
短期的には、2023年度に主に米国の注意欠陥/多動性障害治療剤「VYVANSE」の独占販売期間が満了することにより逆風に晒されることが想定されますが、中長期的には、タケダの成長製品・新製品*が売上収益の成長を牽引していくことを見込んでいます。2022年度には、当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ENTYVIO」(国内製品名:「エンタイビオ」)について、グローバル売上の持続的な成長見通しとバイオシミラー参入時期の想定の見直しに基づき、将来売上予測のレンジを引き上げました。今後の新製品の上市も売上収益の伸長をさらに加速させるものと見込んでいます。
中長期的には、当社は競争力のある利益率を維持し、潤沢なキャッシュ・フローを創出してまいります。当社は、研究開発、血漿分画製剤事業や新製品の上市に対して、また、株主還元のコミットメントに向けて引き続き資金を配分してまいります。
* タケダの成長製品・新製品(2023年度以降)
消化器系疾患:ENTYVIO、アロフィセル
希少疾患:タクザイロ、LIVTENCITY
血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRUを含む免疫グロブリン製剤、
HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤
オンコロジー:アルンブリグ、EXKIVITY
その他:QDENGA
(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響軽減のための当社の取り組み)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が発生してから3年が経過し、多くの国でCOVID-19に対するワクチンや治療薬が広く普及し、移動制限などの厳格な感染拡大防止策が緩和されてきています。当社は、当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、従業員の健康と安全や当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供を確保するため、新しい変異株を含め、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、当年度、Novavax社からライセンス供与と技術移転を受けた組換えスパイクタンパクを抗原としたCOVID-19ワクチン「ヌバキソビッド筋注」を当社の光工場において製造し、日本国内において供給を行いました。当社は、Novavax社と協力しオミクロン株を含む変異株に対応したワクチンの開発を進めています。また、Moderna社との提携を通じて、引き続き、COVID-19に対するmRNAワクチンである「スパイクバックス筋注」(オミクロン株対応の二価ワクチン)の日本国内における流通支援を行ってまいります。
(ウクライナとロシアにおける事業について)
すべての患者さんと従業員を大切にするという私たちの変わらぬ約束は、危機の中において、より重要なものとなっています。当社は従業員の安全を確保し、ウクライナや周辺地域の患者さんに必要な医薬品を提供し続けるために、あらゆる努力を重ねています。
当社は、患者さんへの医薬品の安定供給を維持するために必要不可欠な活動を除き、ロシアにおける活動を中止しました。これには、すべての新規投資の中止、広告・宣伝活動の中止、新規の臨床試験を実施しないこと、および進行中の臨床試験への新規患者登録の中止が含まれております。当社はタケダイズムと患者さんを中心に考えるという私たちの価値観、そして私たちの医薬品や治療法を必要とするウクライナやロシア、周辺地域の患者さんへの倫理的な責任に基づいた必要不可欠な活動に注力します。それと同時に、当社はロシアに課せられたすべての国際的な制裁を遵守しています。
また、ウクライナで被害を受けた方々への寄付金や医薬品の無償提供などの人道的支援活動を実施しました。そして、地域の患者さんに対する支援についても検討を続けます。
当年度のロシア/CISにおける売上収益は、連結の売上収益4兆275億円の2.2%でした(「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容、①当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容、(a)当年度の経営成績の分析、(iii)当年度における業績の概要」の地域別売上収益をご参照ください)。これら国々における危機による当年度の当社業績に対する重大な影響はありませんでした。しかしながら、今後の事態の進展によっては、当社の業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
[主要製品一覧]
消化器系疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・ENTYVIO(ベドリズマブ):「ENTYVIO」(日本の製品名:エンタイビオ)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「ENTYVIO」は、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2023年3月期の当社グループの売上トップ製品です。現在、「ENTYVIO」は世界70カ国以上で承認されています。当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得を進め、さらなる適応症の開発を行うとともに、皮下注射製剤の開発を行います。2023年3月期における「ENTYVIO」の売上収益は7,027億円となりました。
・アロフィセル(ダルバドストロセル):「アロフィセル」は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者さんにおける、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった複雑痔瘻に対する治療薬です。「アロフィセル」は、2018年に欧州の中央審査により販売承認(MA)された、欧州初の同種異系幹細胞療法であり、日本でも2021年に承認されました。2023年3月期における「アロフィセル」の売上収益は27億円となりました。
・タケキャブ/VOCINTI(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。「タケキャブ」(中国の製品名:VOCINTI)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2023年3月期における「タケキャブ/VOCINTI」の売上収益は1,087億円となりました。
・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。成人用および小児用の効能を有する「GATTEX/レベスティブ」が米国、欧州、日本において承認されました。2023年3月期における「GATTEX/レベスティブ」の売上収益は931億円となりました。
・DEXILANT (dexlansoprazole):「DEXILANT」は、全グレードのびらん性逆流性食道炎の治療およびその維持療法、症候性非びらん性胃食道逆流症(GERD)に伴う胸やけの緩和・治療など、胃酸関連疾患の治療薬です。当年度において一時的に売上が伸長しましたが、後発品の市場参入により、売上は引き続き減少傾向にあると見込まれます。2023年3月期における「DEXILANT」の売上収益は694億円となりました。
希少疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・タクザイロ(ラナデルマブ):「タクザイロ」は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。「タクザイロ」は、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「タクザイロ」は2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2023年3月期における「タクザイロ」の売上収益は1,518億円となりました。
・LIVTENCITY (maribavir):「LIVTENCITY」は、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35 kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売され、2022年11月に欧州において承認されました。「LIVTENCITY」はpUL97プロテインキナーゼとその天然基質を標的として阻害する経口投与可能な最初で唯一の抗CMV治療薬であり、発売当初から売上が順調に伸長しています。2023年3月期における「LIVTENCITY」の売上収益は105億円となりました。
・エラプレース(イデュルスルファーゼ):「エラプレース」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2023年3月期における「エラプレース」の売上収益は853億円となりました。
・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):「リプレガル」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α‑ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2023年3月期における「リプレガル」の売上収益は667億円となりました。
・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):「アドベイト」は、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2023年3月期における「アドベイト」の売上収益は1,182億円となりました。
・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):「アディノベイト/ADYNOVI」は、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。「アディノベイト/ADYNOVI」は遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2023年3月期における「アディノベイト/ADYNOVI」の売上収益は666億円となりました。
血漿分画製剤(免疫疾患)領域における主要製品は以下の通りです。
・GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG(静注用人免疫グロブリン10%製剤):「GAMMAGARD LIQUID」は、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、「GAMMAGARD LIQUID」は、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の続発性免疫不全症患者さん、ならびに成人のMMN患者さんへの使用が承認されています。
・HYQVIA(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%)):「HYQVIA」は、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。「HYQVIA」は、米国では成人PID患者さんへの使用、また欧州においてPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用が承認されております。
• CUVITRU(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):「CUVITRU」は、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。
2023年3月期における「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は5,222億円となりました。
・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン」は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2023年3月期における「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)」を含むアルブミン製剤の売上収益は1,214億円となりました。
オンコロジー領域における主要製品は以下の通りです。
・アルンブリグ(ブリグチニブ):「アルンブリグ」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、2017年に米国で迅速承認され、2018年に欧州において、2021年に日本において、販売承認を取得しました。2020年5月に米国で初めて、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加され、2022年3月に中国において承認されました。2023年3月期における「アルンブリグ」の売上収益は206億円となりました。
・EXKIVITY(mobocertinib):「EXKIVITY」は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬であり、2021年9月に米国において迅速承認制度のもとで承認され、2023年1月に中国の国家薬品監督管理局(NMPA)により承認されました。発売以来、高度医療機関および開業医において売上が急速に伸長しています。2023年3月期における「EXKIVITY」の売上収益は37億円となりました。
・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):「リュープリン/ENANTONE」は、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症、不妊の治療や、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。リュープロレリンの特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2023年3月期における「リュープリン/ENANTONE」の売上収益は1,113億円となりました。
・ニンラーロ(イキサゾミブ):「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2023年3月期における「ニンラーロ」の売上収益は927億円となりました。
・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、Seagen社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2023年3月期における「アドセトリス」の売上収益は839億円となりました。
ニューロサイエンス領域における主要製品は以下の通りです。
・VYVANSE/ELVANSE(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):「VYVANSE/ELVANSE」は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2023年に米国において後発品が市場に参入することにより、今後売上は減少することが見込まれます。2023年3月期における「VYVANSE/ELVANSE」の売上収益は4,593億円となりました。
・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/Sと共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2023年3月期における「トリンテリックス」の売上収益は1,001億円となりました。
売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。
当社の取締役会は、ビジネスリスクおよび財務開示に関連するものを含め、当社の業務運営を監督する責任を有しています。取締役会は、一定の意思決定権を当社の経営幹部に委譲しています。社長兼チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(以下、「社長CEO」)および当社グループ各機能を統括する責任者から構成されるタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)のメンバーは、ビジネス&サステナビリティ・コミッティー(BSC)およびリスク・エシックス&コンプライアンス・コミッティー(RECC)を含む特定の経営幹部レベルの委員会において、当社における重要事項について意思決定を行います。BSCは、当社のサステナビリティ戦略および関連する目標、コミットメントを監督する責任を有しています。RECCは、重要なリスクに対する緩和策を含む当社のエンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)プログラムおよびグローバル・モニタリング・プログラムに関連する監視および決定事項にかかる責任を有しています。取締役会は、社長CEO、その他のTETメンバーおよび各経営会議体から定期的に最新情報を入手しています。
当社のガバナンス体制のさらなる詳細については、
ネットゼロ戦略は、当社の企業理念に則しており、私たちの約束:「PLANET いのちを育む地球のために」によって運用されます。これは、現在、環境面での持続可能性の観点から、様々な側面に特化した3つのプログラムにより構成されています。
•気候変動対策プログラム
当社の気候戦略の実行および運用を担い、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量の削減を進めます。
•サステナビリティ・バイ・デザイン(環境配慮設計)
製品デザインのライフサイクル・シンキングを研究開発段階から取り入れることによって、バリューチェーン全体で環境に対する影響を最小限に抑えることを目指します。
・天然資源保全プログラム
ウォーター・スチュワードシップ、責任ある廃棄物処理、生物多様性保全活動などを通じて、当社の事業が環境に直接与える影響の削減を目指します。
リスク管理は、当社で働く人材、資産、社会的評価・評判(レピュテーション)を守り、当社の成長と成功に向けた長期的な戦略を支える柱となります。
全体的なリスク管理プロセスは、取締役会の監督のもとチーフ・エシックス&コンプライアンス・オフィサーが統括しています。また、主要な全社的リスクおよびそれらのリスクの発生防止・低減措置の実効性は、RECCおよび取締役会によって毎年承認されています。
リスクマネジメントは全社的な事業体制に組み込まれており、全社的リスク評価プロセスによって、サステナビリティに関連するリスクを含めたリスクを特定、評価し、またそのリスク低減施策を実施しています。このプロセスは、リスクの全体像を把握し、リスクに基づいた意思決定を行う企業風土を醸成するようデザインされています。関連する各部門は、担当領域ごとに主要なリスクとその対応への責任を担っています。
当社のリスク管理プロセスのさらなる詳細については、
戦略、指標および目標
当社は、私たちの価値観(バリュー)に基づく影響を通じて、持続的な成長を実現します。そして当社のバイオ医薬品企業としての強みと能力を活かして、患者さん、株主の皆様、および社会のための長期的な価値を創造することによって、従業員、地域社会、および地球に対して好影響を与え続けることで存在意義を果たしていきます。
当社は、「存在意義(パーパス)」を「目指す未来(ビジョン)」および「価値観(バリュー)」と融合させることで、永続的なバリューに基づく持続的成長を目指しています。当社は、ビジョンとパーパスを達成するためにどこに注力をするべきかを示す「私たちの約束」および「優先事項」を定めています。私たちの約束は、当社およびステークホルダーにとって戦略的に重要な非財務的課題に関するESGの重要課題の特定に基づいて、「PATIENT すべての患者さんのために」、「PEOPLE ともに働く仲間のために」、および「PLANET いのちを育む地球のために」の大きく3つの柱に分けられており、これらはデータやデジタル、テクノロジーを活用しながら実行されています。
PATIENT すべての患者さんのために
当社は、科学的根拠に基づき、治療選択肢の限られた患者さんや地域社会にとって、暮らしが豊かになる医薬品の創出に取り組んでいます。これは、当社の存在意義(パーパス)の根幹となるものです。当社の研究開発(R&D)パイプラインは、主要な治療領域に焦点を当て、高度に多様化されています。私たちは、研究所の専門的な研究開発能力、社外とのR&Dパートナーシップ、患者団体との連携、健康の公平性への取組み、およびデータ、デジタル、テクノロジーの活用などを通じて、当社製品を患者さんに提供しています。
私たちは、患者さんに高品質な医薬品を途切れることなく供給する責任があることを理解しています。この責任を果たすために、柔軟なグローバルなサプライチェーンシステムを構築しています。戦略上、重要な製品および原薬については複数の調達先からの購入を行い、調達方針についても地政学的リスクを考慮した戦略を有しています。
治療を最も必要とする患者さんに我々の医薬品を十分にお届けできなければ、科学的なイノベーションは大きな意味を成しません。訓練を受けた意識の高い医療従事者やインフラの整備に加え、資金、力強い保健システム、科学的根拠に基づく政策によって認められた医薬品、テクノロジー環境がそろっていなければ、患者さんに医薬品をお届けすることはできません。そのため、当社では次のことを実施しております。
・患者さんの医薬品アクセスを促進するために包括的な戦略を実施し、価値に基づく医療(バリューベース・ヘルスケア)を促進するグローバルな政策やプログラムを支援しています。私たちは、医学的・経済的な価値のある医薬品が公平に評価されるような、革新的な医薬品の持続的かつ公平なアクセスを促進するエコシステム構築に賛同しています。
・当社のグローバル製品(成長製品・新製品)を、患者さんにより早くお届けできるように上市しています。国の経済レベルや医療制度の成熟度に応じた価格調整を実施し、すべての医薬品に異なる価格帯を設定しています(ティアード・プライシング)。また、治療費を支払うことができない患者さんにも必要な医療を提供するために、医薬品アクセスプログラムを含む患者支援プログラムを提供しています。
・グローバルCSRプログラムを通じて、グローバル団体やNGO、NPOと連携して、低・中所得国の医療システム強化を支援しています。
私たちの医薬品はグローバルに上市されていますが、各エリアや国ごとに、状況に応じた最適な戦略を検討しています。私たちの価値観(バリュー)はグローバルで行う事業活動全体で浸透しているため、一刻を争う場合であっても、各地域の従業員は、患者さんに最も近いところで価値観(バリュー)に沿った意思決定を行い、私たちの医薬品をタイムリーに提供することができています。
当社の患者さんに対する取り組みの詳細は、2023年7月に当社ウェブサイトに掲載を予定している
PEOPLE ともに働く仲間のために
人材育成および人材の多様性
当社は、科学技術がどれほど進歩しても、重要な変化は常に人によってもたらされることを認識しています。私たちの従業員はイノベーションの源泉であり、企業文化を形成し、当社が、患者さん、株主、社会のために長期的な価値を創造することを可能にしています。私たちはボトムアップ・カルチャーを重視しております。ボトムアップ・カルチャーを醸成するために、定期的に開催されるタウンホール形式の質疑応答で全従業員が経営陣に直接質問することが奨励され、グローバルCSRプログラムのパートナー選定に全従業員が参加するなどの取り組みを行っています。また、私たちは人材を育成し、多様性、公平性、包括性(DE&I)の取り組み、従業員が心身ともに健康な職場環境の構築、生涯学習に投資し、従業員が公私ともに充実感を得られるように支援しています。
当社では、さまざまな方法で人材育成を行っています。優れた人材を発掘し、パフォーマンス向上と能力開発を行うためにオープンかつ継続的なディスカッションを行ったり、「クオリティ・カンバセーション」フレームワークを用いて、マネージャーとチームが頻繁にコミュニケーションをとることで信頼を築き、ビジネスに好影響を及ぼすことができるようにしたりしています。また、高い潜在能力を持つ人材には新たな機会を与えることで、次世代リーダーの候補者拡充を行っています。
生涯学習は従業員のやる気や専門性を高め、新しい発想につながり、結果的に患者さんへの価値創造につながります。私たちはすべての従業員に向けて厳選された能力開発および学習の機会を提供しています。当社は、従業員がひとつの場所でさまざまなことを日々学び続けることができるような、新しいテクノロジーにも投資をしています。
当社には、80を超える国と地域でさまざまな経歴や経験を持つ人々が集まっており、多様性に富んだ文化があります。その中で、従業員一人ひとりが多様な価値観や意見に触れながら、皆が力を発揮できることを望んでいます。グローバルDE&Iカウンシルの設立など、DE&Iへの投資を加速させ、グローバル規模での健康格差や不平等さを認識し、それに対処するためのステークホルダーとの信頼関係構築やプログラム支援に注力しています。当社の各事業部門や拠点では、グローバルDE&Iの目標やロードマップに沿ってそれぞれ独自のDE&I目標や戦略、プログラムを設定して事業運営に反映させています。
2023年3月31日時点で、グローバル全体における管理職に占める女性の割合は42%となっています。当社は、今後も管理職を含めて人材の多様性の促進に努めてまいります。
社内環境整備方針
「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」という当社の存在意義(パーパス)は従業員が心身ともに健康であることを前提に実現されるものです。当社は、身体面、精神面、社会面、経済面の4つの分野から従業員の心身の健康に焦点を当てています。自己回復力を強化するための新しい学習プログラムも展開し、部下をもつ管理職を中心にメンタルヘルスについての会話を促すためのツールを提供しています。また、ワーク・ライフ・インテグレーションは従業員が新しい勤務形態に適応する上で最も考慮すべき点であり、オンサイトとリモートのハイブリッドなワーキングなど、多様な働き方をサポートしています。具体的な勤務形態はチームによって異なりますが、オフィスの空間デザインにも工夫を凝らし、必要に応じて対面での協働をサポートするなど、働き方改革を加速させています。
当社の人材育成、人材の多様性および社内環境整備にかかる方針のさらなる詳細は、2023年7月に当社ウェブサイトに掲載を予定している2023年統合報告書「PEOPLE ともに働く仲間のために」をご参照ください。
PLANET いのちを育む地球のために
気候変動や環境汚染、生物多様性の損失が患者さんや人々の健康に影響を及ぼす中、当社は環境への取り組みにおいて産業界をリードできるように継続的に取り組んでいます。当社は、当社の事業活動およびバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量を最小化すること、天然資源および生物多様性を保全すること、ならびに持続可能性に配慮した製品設計を行うことに重点を置いて、環境サステナビリティ活動に取り組んでいます。当社は、気候変動に関連し識別したリスクや機会に対してレジリエンス(回復力)の強化に積極的に取り組んでいます。当社は、深刻な物理的リスクを軽減する当社における取り組みとして、エネルギーや水の保全、また、可能な場合には再生可能エネルギーへの移行を通じて、温室効果ガスによる環境への負荷を抑える活動を推進しています。また、サプライチェーンにおける物理的リスクに対しては、許容できないリスクがサプライチェーンにもたらされることがないよう、主要サプライヤーの気候変動関連リスクの審査を行っています。
当社は、気候変動に関する戦略を実施し、主要業績評価指標(KPI)や測定基準を決定、それらの進捗を管理するため「気候変動対策プログラム」を導入しています。この気候変動対策プログラムでは、サプライチェーン全体でのカーボン・ニュートラルを維持しつつ、直接的、間接的およびサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の最小化、再生可能エネルギーへの投資と利用拡大、効果的な炭素隔離と除去プロジェクトの支援など、様々な目標に重点を置いています。
当社は、スコープ1および2の温室効果ガス排出量を、2025年度までに2016年度基準から40%削減する目標を2020年に設定し、この目標はSBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)の認証を取得しました。また、2022年には、2035年までに当社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量(スコープ1および2)を、2040年までに当社のバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(スコープ3の温室効果ガス排出量の見積もり(注1)を含む)をネット・ゼロ(注2)にする新しい目標を公表しました。当社は今後、これらの目標についてSBTi認証の申請を行う予定です。
(注1)実際のスコープ3の排出量は測定が困難であり不透明性が残ることからも、これらは取り組みを進めていく上で今後克服すべき重要な課題です。
(注2)当社は、SBTiの企業ネットゼロ基準に従ってネット・ゼロ排出量を定義しています。
当社の環境への取り組みのさらなる詳細は、2023年7月に当社ウェブサイトに掲載を予定している2023年統合報告書「PLANET いのちを育む地球のために」をご参照ください。
当社の業績は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、リスクの顕在化により予期せぬ業績の変動を被る可能性があります。以下では、当社が事業を展開していくうえで直面しうる主なリスクを記載いたします。なお、以下に記載したリスクは当社の全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外の潜在的かつ不確実なリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
当社のグローバルリスク管理ポリシーについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3.業務執行に係る事項 <内部統制システムに関する基本的な考え方およびその整備状況> ③ 損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。
なお、本項目に含まれる将来に関する事項およびリスクは、当年度末現在において判断したものです。
(1)研究開発に関するリスク
当社は、持続的成長を実現するために、最先端の科学で革新的な医薬品を創出することを目指しています。当社は、研究開発機能の向上および社外パートナーとの提携等により研究開発パイプラインを強化すると共に、世界各国の市場への一日も早い新製品の上市を目指し、質の高い革新的な研究開発パイプラインを構築することで研究開発の成功確率を高める等により効率的な研究開発活動に努めております。しかしながら、医薬品は、自社創製候補物質、導入候補物質にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
研究開発の途上において、当該候補物質の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該候補物質の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。
(2)知的財産権に関するリスク
当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されております。
当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、当社が事業を行う市場における知的財産権や第三者からの侵害状況を継続的にモニタリング、評価および分析し、知的財産権に関するリスクの回避と、受けうる影響の低減を図っていますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が大幅に失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には製造販売の差止めおよび損害賠償等を請求される可能性があります。
(3)特許権満了等による売上低下リスク
当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしておりますが、多くの製品について、特許または規制上の独占権の喪失・満了による後発品の市場参入は避けられず、米国や欧州では後発品が参入すれば通常、短期間で先発品から後発品へ切り替わり、先発品の収益が大きく減少します。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品のさらなる価格引下げが行われています。これに加え、競合品の特許権満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。
なお、特許権満了時期等の詳細については「第2 事業の状況 6 研究開発活動 知的財産」をご参照ください。
(4)副作用に関するリスク
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て発売されます。当社は発売後の医薬品について安全性情報を収集し有効性とリスクのバランスを評価することを含め、安全性監視活動とリスク最小化活動を実施し、ファーマコビジランス活動を推進し、副作用に関するリスクの回避と受けうる影響の低減に努力しておりますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、添付文書の「使用上の注意」への記載を行う、使用する対象患者を制限する、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、重篤なケースが認められた場合には、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は製造物責任を負うとともに、金銭的、法的および社会的信頼に関する損害を負う可能性があります。
(5)薬剤費抑制策による価格引き下げのリスク
医薬品市場では、多くの国々において医療予算の削減が推進され、医療技術評価および国際価格を参照する政策により医薬品価格が低下しています。最大市場である米国では、医薬品価格を下げるための医療計画や仲介機関による取り組みに加え、継続的な法令および規制の制定により先発品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。日本においては、政府による一層の後発品の使用促進に加え、医療保険制度における多くの製品の公定薬価が、毎年引き下げられております。欧州においても、薬剤費を抑制し、価格透明性を高め、国際価格を参照する政策により、医薬品価格が低下しております。当社は、各国の薬剤費抑制策の詳細な分析やモニタリングを行い、医薬品の価格状況を管理する組織体制を構築することでリスクの回避と影響低減の努力を行うと共に、各国政府や医療サービス供給者・保険者等と協力して、革新的な医薬品に対する適切な報酬制度を確立するために、価値に基づく新しい価格設定モデル等の解決策を追求しておりますが、これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げにより、当社製品の価格が影響を受け、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
(6)企業買収に関するリスク
当社は、持続的な成長を加速させるため、必要に応じて企業買収を実施しております。世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商慣習の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果当初想定した買収効果や利益が実現されない可能性があります。取得した資産の価値が下落し、評価損等が発生した場合や、買収した事業の統合から得ることが期待されている利益が実現されない場合には、のれんおよび無形資産等の減損損失の計上等により、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、過去の企業買収に関連する金融機関からの多額の借入れを含め、当社は多額の債務を負っております。当社は、利益の創出および選択的な非中核資産の売却等を通じてレバレッジの速やかな低下を進めておりますが、将来の当社の財務状況が悪化した場合には、信用格付けが引き下げられ、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れ、その他資金調達の条件にも影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の債務には制限条項が付されているものがあり、かかる制限条項に抵触した場合には、債務の早期返済等により当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)安定供給に関するリスク
当社は、販売網のグローバル化に確実に対応するとともに、当社製品への需要に対し適切な供給量を確保していくため、供給ネットワークと品質保証体制を強化しており、具体的には、製造設備への適切な投資、必要に応じて複数のサプライヤーと適切な在庫水準を確保するための製造供給戦略の策定、代替サプライヤーの選定、当社内の製造ネットワークに係る危機管理規則の制定、事業継続管理システムの導入および定期的な内部監査等を行っています。しかしながら、当社または委託先の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、原材料の不足、想定を超える需要、または自然災害の発生や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の新興感染症の流行、進出国における紛争等により、製商品の安定的供給に支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。
(8)IT セキュリティ及び情報管理に関するリスク
当社は、顧客ニーズに合致したデジタルビジネスモデルへ移行するためデジタル変革を加速しております。また、事業の特性上、センシティブな個人情報を含む大量の機密情報を取り扱っており、データ保護の重要性がいっそう高まっております。大規模かつ複雑なIS/IT システム(アウトソーシング企業のシステムを含む)の利用は、従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為、あるいは悪意をもった第三者による攻撃(サイバーアタック)により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生する可能性があります。当社は、これらのリスクを低減するため、包括的なポリシーや手続きを整備するとともに、リスク評価を通じた事業リスク分析および監査や第三者によるリスク低減テストを通じて、セキュリティ戦略の形成とクラウド活用を前提とした事業変革の推進を含む効果的なテクノロジーへの投資を行うことによりセキュリティの継続的な強化に努めておりますが、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生した場合、当社の事業活動への悪影響、個人情報や知的財産等の重大な機密情報の流出や喪失、業績および財務状況の悪化、法的な損害ならびに信用の失墜を招く可能性があります。
(9)コンプライアンスに関するリスク
当社は事業の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法等の様々な法的規制やGMP (Good Manufacturing Practice)、GQP(Good Quality Practice)、GCP (Good Clinical Practice)、GLP (Good Laboratory Practice)等のガイドラインの適用を受けています。また、当社は多数のエージェント、サプライヤーや卸売業者等の第三者と協力関係にあり、当社の事業活動はこれらの第三者による業務遂行の影響を受けています。さらに、当社はソーシャルメディア・プラットフォームを含むデジタルプラットフォームの使用が増加しておりますが、これらが法令および社内規定に遵守しない方法により使用される可能性があります。当社は、グローバルエシックス&コンプライアンス部門を設置し、グローバルでコンプライアンスを推進する体制を整備し、当社および当社が関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されていることをモニタリングしていますが、当社の従業員や、当社が関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の提起を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があります。
(10)進出国および地域におけるカントリーリスク
当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の新興感染症の拡大、社会混乱、各国・地域間における地政学的緊張の高まり等によるリスクにさらされています。当社は、各部門の連携のもと、これらのリスクが当社の事業に与える影響の分析や各地域における社会情勢のモニタリング等を通じてリスクに対応する体制を構築しており、患者さんの医薬品へのアクセスを保護することを優先事項として、リスクの抑止策や発生時の対処法を検討する等のリスク管理に努めております。しかしながら、当社または当社と協力関係にある第三者が事業を行っている地域において、不測の事態が生じた場合には、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、ウクライナおよびロシアにおける事業については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(ウクライナとロシアにおける事業について)」をご参照ください。
(11)為替変動、金利変動およびインフレーションに関するリスク
当社の当年度における海外売上収益は3兆5,154億円であり、連結売上収益全体の87.3%を占めており、そのうち米国での売上収益は2兆1,038億円にのぼり、連結売上収益全体の52.2%を占めております。従って、売上収益については円安は増加要因である一方、研究開発費をはじめとする海外費用が円安により増加するため、利益に対する影響は双方向にあります。また、機能通貨以外で実行される事業上の取引、金融取引および投資に関して為替変動リスクにさらされています。さらに、金利変動による資金調達コストの上昇や、世界的なインフレーションの進行が当社の利益を圧迫する可能性があります。当社は為替および金利リスクを集約的に管理し、これらの財務リスクをヘッジするためにデリバティブ取引を行うとともに、取引先との契約条件の見直し等により潜在的な影響の緩和を図っておりますが、経済環境や金融市況が当社の想定を超えて変動した場合には、当社の業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。
(12)訴訟等に関するリスク
当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、係属中の重要な訴訟の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
(13)環境に関するリスク
環境保全に対する責務の遂行は、当社の事業の発展に不可欠であり、当社の価値観(バリュー)に沿うものです。これは、単に正しい行いをするというだけではなく、患者さんの命を救い、人生を変えうるような医薬品やワクチンを責任をもってお届けできるようにするものです。そのために、当社は、ステークホルダーからの期待に沿いつつ法規制への準拠を実現する厳格な環境マネジメントシステムおよび社内プログラムを整備するとともに、これらが有効に運用され、期待する結果を達成していることを確認するための内部監査手続を定めております。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染や法規制への不適合、不十分な環境保全活動が顕在化した場合には、社会的信頼を損なうとともに、行政措置の対象となり、保険の適用範囲外または補償金額を超える支払義務を伴う改善措置の実施や法的責任を負うことにより、当社の事業活動に悪影響が生じる可能性があります。また、環境法規制の改正や社会の期待の変化により、より厳しい要請への対応が課せられ、当社の研究、開発、製造その他の事業活動に影響がおよぶ可能性もあります。かかる要件の遵守や課題への対応が行われない場合には、法規制上の責任を負い、当社の社会的信頼に影響を及ぼすとともに、当社の業務遂行能力に悪影響が生じ、ステークホルダーに対する魅力が低下する可能性があります。
当社は、気候変動を、人々の健康に大きな影響を及ぼす深刻なグローバル課題であるとともに、当社の事業に財務的なリスクをもたらす可能性のある課題であると認識しております。2021年度に、当社は気候変動リスクの評価を完了しました。当該評価は当社の一定の直接的な事業活動のみを対象としており、当社は、2030年度までの時間軸と2050年度までの時間軸について、気候変動に対する全世界における対応状況によって異なる3つの気候変動シナリオ(すなわち、「未対応(No Action)」「対応中(Middle of the Road)」「大幅に低減(Aggressive Mitigation)」)を設定しました。この評価プロセスにより、当社に直接該当する気候変動リスク・カテゴリーを特定することができました。これには、地域社会への影響や、当社の血漿分画製剤事業におけるドナー提供の潜在的な減少に繋がる疾病の増加や感染症蔓延等の地理的な拡大、コスト増加に繋がるエネルギー/カーボンの価格付けと政策、気候変動に関する目標を達成できないことによる社会的信頼への悪影響、異常気象や類似の事象に当社の施設等がさらされていることによる直接的な物理的リスク、当社の重要なサプライヤーを通じた間接的な気候変動リスクが含まれます。当社は、現在識別されているリスクはいずれも、短期的に当社に重要な財務影響を与え得るものではないものの、私たちの社会が現在の気候変動の傾向に適切に対処できない場合には、状況が変わる可能性があることを認識しております。また、リスク評価から最大の効果を得るため、継続的に評価の前提条件を見直すとともに、気候変動関連リスクの評価範囲を拡大する必要性も認識しています。 当社は、引き続き、予測分析とリスク軽減のための施策の精度を向上させ、起こりうる気候変動関連リスク要因の理解を深めるために取り組んでいきます。このように、気候変動関連リスクの現在の評価は限定的ですが、当社は、現在までに識別されている気候変動関連リスクに対処し、特定された機会を追求する状況に十分にあると考えております。また、当社は、気候変動関連リスクを全社的リスク管理体制に組み込み、潜在的な影響を緩和するため、低炭素型事業への移行を進めております。当社は、2020年以降(2019年度の排出量について)カーボンニュートラルを達成しており、社内での省エネルギー施策、施設の電化、再生可能エネルギーの調達、再生可能エネルギー証書と高品質な第三者検証済のカーボンオフセットへの投資による二酸化炭素排出量の削減に継続的に取り組んでおります。
当社の重要なステークホルダーは当社に対して優れた環境保全活動を遂行することを期待していると認識しており、当社は自社の製品および事業活動から生じる環境への影響を緩和するための方策を継続的に模索しております。そのため、当社は、気候変動対策戦略を補完するものとして、ウォーター・スチュワードシップ、責任ある廃棄物処理、生物多様性保全活動を含む天然資源保全の領域に引き続き注力するとともに、製品のライフサイクルを通じて環境への影響を最小限に抑えるため、製品の開発段階から持続可能性に配慮した取り組みを実施しています。これらの取り組みにより成果が得られた場合には、地球の生態系と人々の健康を守りながら、当社に対する社会的評価の向上と当社事業の強化に繋がることとなり、患者さんに貢献するという当社の揺るぎない使命を果たし続けられることになります。一方で、当社が掲げている持続可能性の高い目標に基づいた行動を実施できない場合や、ステークホルダーの期待に沿う結果が得られない場合には、当社に対する社会的信頼が損なわれ、その結果、従業員の採用・維持や顧客や投資家との関係の構築において問題が生じ、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
(14)人材の採用および定着に関するリスク
当社の長期的に持続可能な成長には、人材の獲得競争の激しい市場や地域において、事業を支える適切な人材の採用と定着が重要であると認識しております。当社は、組織の有効性、文化、価値観を維持しながら、働き方の柔軟性をより高め、職場環境をより良くし、多様性、公平性、包括性(DE&I)を促進する施策を実施するとともに、継続的なキャリア開発機会の提供やエンゲージメントの推進を図り、従業員に対して魅力的な価値を提案することで、人材採用における競争力の強化と人材の定着を促進しております。しかしながら、計画通りに採用や定着が進まない場合は、人材の喪失や不足を通じて、当社の競争力が低下し、その結果、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。
なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を
省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。
③ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当年度における生産実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 生産実績金額は、販売価格によっております。
(b) 受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しており、一部の受注生産における受注高および受注残高の金額に重要性はありません。
(c) 販売実績
当年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、総販売実績に対する割合が100分の10未満となっている年度については記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(a) 当年度の経営成績の分析
(ⅰ) 当社グループの経営成績に影響を与える事項
事業の概況
当社は、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社は、幅広い医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、およびグローバルでの販売を主要な事業としており、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスしております。研究開発においては、消化器系・炎症性疾患(注)、ニューロサイエンス、オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。当社は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。当社は、約80の国と地域で医薬品を販売しており、世界中に製造拠点を有するとともに、日本および米国に主要な研究拠点を有しています。
当社はこれまで、地理的拠点の拡大、オンコロジー、消化器系疾患ならびにニューロサイエンス領域を強化するとともに、希少疾患および血漿分画製剤での主導的地位を構築し、パイプラインの拡充にも取り組んできました。販売においては、米国、欧州および成長新興国におけるプレゼンスを飛躍的に向上させました。また、当社は事業運営をより効果的かつ効率的に行い、より大きなイノベーションを創出し、ステークホルダーに価値を提供することに繋げるため、データとテクノロジーの活用促進に集中して取り組みました。
当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2023年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ4兆275億円および4,905億円であります。
(注)本疾患領域名は、従来の「消化器系疾患」から「消化器系・炎症性疾患」に名称変更しています。詳細は「6 研究開発活動」をご参照ください。
当社グループの経営成績に影響を与える事項
当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。
特許保護と後発品との競争
医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しております。例えば、米国において当社グループの最大の売上製品の一つであるベルケイドに含まれる有効成分のボルテゾミブの特許権が満了したことにより、ボルテゾミブを含む競合製品が販売されています。これにより、2022年にベルケイドの売上が減少し、その結果、競合品がさらに市場に参入することにより売上がさらに大幅に減少する可能性があります。VYVANSEに対する特許保護は、2023年8月に米国において失効する予定であり、また、2023年2月にアジルバの後発品が日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)により承認されたことを受け(競合品の薬価収載は2023年6月に承認)、関連する国・地域において、VYVANSEおよびアジルバの売上が減少すると予想しております。後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。
買収
当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業または資産を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。
2023年2月、当社グループは、高度に選択的な経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬TAK‑279に関連する知的財産権およびその他の関連する資産を所有または支配する、Nimbus Therapeutics, LLC(以下、「Nimbus社」)の完全子会社であったNimbus Lakshmi, Inc.の全株式を取得しました。契約条件にもとづき、当社グループは一時金として40億米ドルを本取引完了後に支払い(注1)、また、「TAK‑279」(Nimbus社における旧「NDI‑034858」)のプログラムから開発された製品の年間の売上高が40億米ドルと50億米ドルとなった場合には、それぞれにつき10億米ドルのマイルストンを同社に支払います。さらに、本取引に関連して、当社グループは、Nimbus社とBristol‑Myers Squibおよびその子会社である Celgene Corporationとの間の2022年1月の和解契約におけるNimbus社の義務である「TAK‑279」のプログラムから開発された製品の開発、薬事規制上の承認、および売上に関するマイルストン支払い義務を引き受けることに合意しました。
これらの買収は企業結合または資産の取得として会計処理されております。企業結合の場合、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産の公正価値の増加や、取得した有形固定資産および無形資産の償却費により影響を受けます。また、資産の取得の場合、取得した資産は取引価格で計上されております。企業結合または資産の取得の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。
買収および上記の影響により、当社グループの業績は期間比較ができない可能性があります。
(注1)当社グループは、一時金40億米ドルのうち、2023年2月に30億米ドル、2023年4月に9億米ドルを支払っております。残額の1億米ドルは2023年8月に支払を予定しております。
事業売却
買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しました。2022年3月期から2023年3月期および本報告書提出日時点における主要な事業売却は以下となります。
• 2021年4月、当社グループは、日本における当社の非中核資産である一部の製品を、総額1,330億円で、帝人ファーマ株式会社に資産譲渡しました。2022年3月期において税引前当期利益に対する1,314億円の増益影響を計上しました。
• 2022年3月、当社グループは、中国で販売する当社の非中核資産である一部の医療用医薬品を、総額230百万米ドル(307億円(注1))でHasten Biopharmaceutic Co., Ltd. (China) に資産譲渡し、2022年3月期において56億円の譲渡益を計上しました。
(注1) 2023年3月31日期末為替レートである1米ドル133.5円を用いて日本円に換算しております。
原材料の調達による影響
重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、調達および外部との契約を強化し、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、および規制当局から承認を受けることに成功するための取り組みを行っております。
外国為替変動
2023年3月期において、当社グループでは日本以外の売上が87.3%を占めております。当社グループの収益および費用は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。とりわけ、2023年3月期において、他の通貨に対する円安により、当社の売上収益はプラスの影響を受けました。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。以下は、2023年3月期の売上収益を2022年3月期における同一の為替レート(CER)で換算し、2022年3月期の売上収益と対比させたものです。
(単位:億円、%以外)
前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、IFRSに準拠して作成された指標ではありません(以下、「非IFRS指標」)。投資家におかれましては、当社グループの過去の財務諸表全体を確認し、IFRSに準拠して表示されている指標を当社グループの業績、価値、将来の見通しを評価する際の主要な指標として使用し、非IFRS指標を補足的な指標として使用することを強く推奨します。前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益に対して最も直接的に比較可能な指標は、IFRSに準拠して作成された売上収益であります。上表には、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益から売上収益への調整が示されております。
当該指標が、当社グループの事業に対する為替レートの影響をよりよく理解し、為替レートの変動の影響を除外した場合に、当社の経営成績が対前年度でどのように変動したかを理解するために、投資家にとって有用であると考えられるため、当社グループは前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益を表示しております。当該指標は、当社グループの経営者が、当社グループの経営成績を評価するにあたって使用する主要な方法であります。また、証券アナリスト、投資家、その他のステークホルダーが、当社グループが属する業界の同業他社の経営成績を評価する際、類似する業績指標を使用することが多いため、投資家にとっても有用な指標であると考えています。
前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、ある会計年度において、当会計年度の売上収益を、対応する前会計年度の為替レートで換算した売上収益として定義されます。ただし、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は、前会計年度においてIFRSに基づき表示された売上収益の算定に用いられた為替レートと同一の為替レートを用いて算定されていますが、当該会計年度中に締結された取引が同一の為替レートで締結された、または計上されたとは限らないという点で、この表示の有用性には重要な限界があります。当社グループの業界の同業他社が類似する名称の指標を使用している場合であっても、同業他社が当該指標を当社グループとは異なって定義し、異なる算定を行っている可能性があるため、指標が直接的に比較可能ではない場合があります。したがって、前年度と同一の為替レートによる換算の売上収益は単独で検討すべきではなく、またIFRSに準拠して作成、表示される収益の指標としてではなく、当該指標の代替的指標としてみなされるべきです。
為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、主に先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションを利用しヘッジを行っております。
季節的要因
当社グループの売上収益は、2022年3月期および2023年3月期において第4四半期に減少しています。これは、卸売業者は年末年始休暇に向けてあらゆる国・地域における在庫数を増やす傾向にあること、年間にわたって価格が上昇していること、暦年の年初の米国における保険の年間免責額の改定等によるものです。
(ⅱ) 重要な会計方針
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下の通りであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
収益認識
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針 (5) 収益」をご参照ください。
のれんおよび無形資産の減損
当社グループは、のれんおよび無形資産について、資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。のれんおよび償却開始前の無形資産については、年次および減損の兆候を捕捉した時点で減損テストを実施しております。2023年3月31日時点において、当社グループはのれんおよび無形資産をそれぞれ4兆7,907億円および4兆2,697億円計上しており、これは総資産の64.9%を占めております。
上市後製品に係る無形資産は特許が存続する見込期間または見込まれる経済的便益に応じた他の指標に基づき、3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。開発中の製品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。
のれんおよび無形資産は、通常、連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。無形資産にかかる回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。のれんの減損テストは単一の事業セグメント単位(単一の資金生成単位)で実施しており、これはのれんを内部管理目的で監視している単位を表しています。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
·将来キャッシュ・フローの金額および時期
·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)
·規制当局からの承認の取得可能性
·将来の税率
·永続成長率
·割引率
将来キャッシュ・フローの金額および時期を見積るための重要な仮定には、研究開発プロジェクトの成功見込みおよび製品に係る売上予測があります。特にのれんにかかる回収可能価額の見積りにおいては、特定の製品に係る売上予測が重要な仮定となります。これらの仮定に影響を与える事象としては、開発の中止、大幅な上市の遅延、規制当局の承認が得られないことによる研究開発プロジェクトの失敗、もしくは一般的には新たな競合製品の販売開始や供給不足による、一部の上市後製品にかかる売上予測の低下があげられます。これらの事象が発生した場合、プロジェクト獲得以降に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない、もしくは見積った将来キャッシュ・フローが回収できない可能性があります。
これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれんおよび12 無形資産」をご参照ください。
訴訟に係る偶発事象
当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。当社グループが関与する重要な訴訟のうち、それらの最終的な結果により財務上の影響が見込まれる場合であっても、その額について信頼性のある見積りが不可能な訴訟等については、引当金の計上は行っておりません。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2023年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について643億円の引当金を計上しております。
法人所得税
当社グループは、税法および税規制の解釈指針に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づいた見積額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。法律および様々な管轄地域の租税裁判所の判決に伴う法改正により、不確実な税務ポジションに関する負債の見積りの多くは固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと結論を下した場合に、当社グループは、税務上の不確実性を解消するために必要となる費用の最善の見積り額を認識します。また、未認識の税務上の便益は事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の大幅改正、税務当局による税制または解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき適切かつ十分であると判断しております。
また、各報告期間の末日において繰延税金資産の回収可能性を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予想される将来加算一時差異の解消スケジュール、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。収益力に基づく将来課税所得は、主に当社グループの事業計画を基礎として見積られており、当該事業計画に含まれる特定の製品に係る売上収益の予測が変動した場合、認識される繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。過去の課税所得の水準および繰延税金資産が認識できる期間における将来の課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと予想される税務上の便益の額を算定しております。2023年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除はそれぞれ1兆1,818億円、2,598億円、および112億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。
事業構造再編費用
当社グループでは、費用削減に関連した取り組みおよび買収に係る事業統合に関連して事業構造再編費用が発生します。退職金が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金については、事業構造再編に係る詳細な公式計画を作成した時点で計上しております。当該計画の対象となる従業員については、根拠のある予想に基づき、計画が実施されると見込まれます。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、事業再編により影響を受ける従業員数等の見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。
当社グループは、将来において買収および売却に関連した事業統合に係る追加の事業構造再編費用を計上すると見込んでおります。2023年3月31日現在において、当社グループは、事業構造再編に係る引当金を90億円計上しております。詳細および事業構造再編に係る引当金の推移は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 23 引当金」をご参照ください。
(ⅲ) 当年度における業績の概要
当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(注1) 「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
〔売上収益〕
売上収益は、前年度から4,585億円増収(+12.8%、CERベース増減率:△0.8%)の4兆275億円となりました。これは主に、為替相場が円安に推移したこと、および事業が好調に推移したことによる増収影響が、前年度に売上収益に計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの帝人ファーマ株式会社への譲渡価額1,330億円の減収影響を上回ったことによります。
主要な疾患領域(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患))の売上収益は、前年度から6,280億円増収(+21.3%)の3兆5,729億円となりました。円安による増収影響、および各疾患領域における好調な業績があったことにより、オンコロジーを除き、それぞれ全社の売上収益の増収に貢献しました。オンコロジーにおいては、円安による増収影響により一部相殺したものの、一部の製品が後発品の参入や競争の激化による影響を受けました。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、前年度に非定常的な売上収益として計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円が当年度はなくなったことを主な要因として、前年度から1,696億円減収(△27.2%)の4,546億円となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
(注1) 「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2) 前年度は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を含みます。
(注3) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各領域における主要製品の売上は以下のとおりです。
(注1)「(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2)国内製品名:エンタイビオ
(注3)配合剤、パック製剤を含む。
(注4)一般名:pantoprazole
(注5)国内製品名:ビバンセ
(注6)前年度においては、2021年4月1日に売却した日本における糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)の帝人ファーマ株式会社への譲渡価額1,330億円を含む。
各疾患領域における売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。
- 消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年度から2,189億円増収(+25.0%、CERベース増減率:+8.7%)の1兆945億円となりました。
当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ENTYVIO」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年度から1,810億円増収(+34.7%)の7,027億円となりました。米国における売上は、円安による増収影響、および炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者が引き続き増加したことにより、前年度から1,424億円増収(+40.7%)の4,919億円となりました。欧州およびカナダにおける売上は、皮下注射が新たに複数国で上市されたこと、および円安による増収影響により、前年度から265億円増収(+19.5%)の1,625億円となりました。また成長新興国における売上は、主にブラジルにおける伸長により、前年度から99億円増収(+39.6%)の349億円となりました。
逆流性食道炎治療剤「DEXILANT」の売上は、米国におけるオーソライズド・ジェネリックの売上の伸長、および円安による増収影響により、前年度から186億円増収(+36.7%)の694億円となりました。
短腸症候群治療剤「GATTEX/レベスティブ」の売上は、主に日本における上市以降に市場への浸透が進んだこと、小児適応の需要が増加したこと、および円安による増収影響により、173億円増収(+22.9%)の931億円となりました。
酸関連疾患治療剤「タケキャブ/VOCINTI」の売上は、主に中国における増収により、前年度から63億円増収(+6.2%)の1,087億円となりました。日本においては、処方量は増加したものの、2022年4月に適用された市場拡大再算定による価格引き下げの影響のため、前年度から減収となりました。
「その他」に含まれる、潰瘍性大腸炎治療剤「PENTASA」の売上は、米国において2022年5月から後発品が参入したことにより、118億円減収(△58.3%)の84億円となりました。
- 希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年度から1,122億円増収(+18.4%、CERベース増減率:+4.8%)の7,234億円となりました。
希少血液疾患領域の売上収益は、210億円増収(+7.4%、CERベース増減率:△5.1%)の3,047億円となりました。
血友病A治療剤「アディノベイト/ADYNOVI」の売上は、58億円増収(+9.6%)の666億円、血友病Aおよび血友病B治療剤「ファイバ」の売上は、21億円増収(+5.4%)の413億円となりました。いずれも、主に円安による増収影響が米国における競合品による減収影響を相殺し、伸長しました。
希少血液疾患領域のその他の製品の売上合計は、主に効能追加や新たに連結した製品、および円安による増収影響により、前年度から増収となりました。
希少遺伝子疾患およびその他の疾患領域の売上収益は、912億円増収(+27.9%、CERベース増減率:+13.4%)の4,187億円となりました。
遺伝性血管性浮腫治療剤「タクザイロ」の売上は、引き続き米国において需要が増加したこと、販売エリアが拡大したこと、および円安による増収影響により、486億円増収(+47.0%)の1,518億円となりました。
ファブリー病治療剤「リプレガル」の売上は、2022年2月のライセンス契約の終結に伴い、日本における製造販売権を当社が承継したこと、および成長新興国において需要が増加したことを主な要因として、前年度から150億円増収(+29.1%)の667億円となりました。
その他の酵素補充療法のハンター症候群治療剤「エラプレース」およびゴーシェ病治療剤「ビプリブ」の売上は、主に円安による増収影響により、それぞれ122億円増収(+16.7%)の853億円、60億円増収(+14.1%)の484億円となりました。
2021年12月に最初に米国で上市し、その後、複数の国でも上市した移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療剤「LIVTENCITY」の当年度の売上は105億円となりました。
- 血漿分画製剤(免疫疾患)
血漿分画製剤(免疫疾患)領域の売上収益は、前年度から1,715億円増収(+33.8%、CERベース増減率:+15.3%)の6,784億円となりました。
免疫グロブリン製剤の売上合計は、前年度から1,363億円増収(+35.3%)の5,222億円となりました。原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」および皮下注製剤である「CUVITRU」と「HYQVIA」の三つのグローバル製品の売上は、パンデミックによる下方圧力が緩和した米国を中心に引き続きグローバルに需要が堅調に推移し供給量が増加したこと、皮下注製剤は静脈注射に比べ投薬の利便性が高いこと、また円安による増収影響により、前年度から2桁台の売上収益増収率となりました。
主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「HUMAN ALBUMIN」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は、米国と中国における需要が増加したことにより、また、円安による増収影響もあったことから、前年度から314億円増収(+34.9%)の1,214億円となりました。
- オンコロジー
オンコロジー領域の売上収益は、前年度から300億円減収(△6.4%、CERベース増減率:△14.4%)の4,387億円となりました。これは米国において、多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の後発品が急速に浸透したことによります。
「ベルケイド」の売上は、2022年5月から複数の後発品が米国市場に参入したことにより、前年度から823億円減収(△74.8%)の278億円となりました。
悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、アルゼンチンやイタリア、日本などで好調に伸長し、前年度から147億円増収(+21.3%)の839億円となりました。
白血病治療剤「アイクルシグ」の売上は、米国において堅調に伸長したことと円安による増収影響もあり、前年度から123億円増収(+35.4%)の472億円となりました。
非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、欧州諸国や中国をはじめとする成長新興国、および日本における需要増加により、前年度から69億円増収(+50.7%)の206億円となりました。
「その他」に含まれる、卵巣がん治療剤「ゼジューラ」の売上は、カプセル製剤に加えて新たに錠剤を2022年6月に日本で上市したことが寄与し、前年度から49億円増収(+61.7%)の129億円となりました。
子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープリン/ENANTONE」は、主に円安による増収影響により、前年度から49億円増収(+4.6%)の1,113億円となりました。
多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、円安による増収影響を、主に米国における競争激化の影響や需要減少の影響が一部相殺し、前年度から15億円増収(+1.6%)の927億円となりました。
2021年9月に最初に米国で上市し、その後、複数の国でも上市した非小細胞肺がん治療剤「EXKIVITY」の当年度の売上は37億円となりました。
- ニューロサイエンス(神経精神疾患)
ニューロサイエンス領域の売上収益は、前年度から1,554億円増収(+32.2%、CERベース増減率:+12.1%)の6,377億円となりました。
注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「VYVANSE/ELVANSE」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、主に米国において、「ADDERALL」の後発品である競合他社の即放性製剤の供給不足の影響もあり、成人向け市場が拡大したこと、および円安による増収影響により、前年度から1,322億円増収(+40.4%)の4,593億円となりました。
大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、日本における処方の増加、および円安による増収影響により、前年度から178億円増収(+21.6%)の1,001億円となりました。
「その他」に含まれる、ADHD治療剤「ADDERALL XR」の売上は、主に後発品である競合他社の即放性製剤の供給不足による本剤に対する増収影響、および円安による増収影響により、前年度から77億円増収(+36.9%)の286億円となりました。
〔売上原価〕
売上原価は、前年度から1,372億円増加(+12.4%、CERベース増減率:△0.1%)の1兆2,441億円となりました。この増加は主に当年度における円安の為替影響を受けたことによるものです。
〔販売費及び一般管理費〕
販売費及び一般管理費は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から1,109億円増加(+12.5%、CERベース増減率:△0.9%)の9,973億円となりました。
〔研究開発費〕
研究開発費は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から1,072億円増加(+20.4%、CERベース増減率:+3.5%)の6,333億円となりました。
〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、主に当年度における円安の為替影響により、前年度から695億円増加(+14.7%、CERベース増減率:△3.2%)の5,424億円となりました。
〔その他の営業収益〕
その他の営業収益は、主に条件付対価契約に関する金融資産及び金融負債の公正価値変動による評価益および特定の訴訟に係る和解金等の受取額を前年度に計上した影響により、前年度から177億円減少(△41.0%、CERベース増減率:△44.2%)の254億円となりました。
〔その他の営業費用〕
その他の営業費用は、前年度から138億円減少(△8.7%、CERベース増減率:△21.1%)の1,452億円となりました。この減少は主に、Shire社との統合が実質的に前年度において完了したことに伴い事業構造再編費用が減少したこと、および承認前在庫に係る評価損が減少したことによるものです。これらの減少は、主に提携契約に伴い当社グループが認識したオプション権に係る評価損を含む、その他の評価損および引当金繰入額の増加および当年度における円安の為替影響により一部相殺されております。
〔営業利益〕
営業利益は、上記の要因を反映し、前年度から297億円増益(+6.4%、CERベース増減率:△1.8%)の4,905億円となりました。
〔金融損益〕
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,068億円の損失となり、前年度の1,429億円の損失から361億円減少(△25.3%、CERベース増減率:△28.8%)しました。この損失の減少は主に、当社が株式を保有する企業のワラントにかかるデリバティブの再測定によるプラスの影響によるものです。
〔持分法による投資損益〕
当年度の持分法による投資損益は、前年度の持分法による投資損失から67億円減少(△43.8%、CERベース増減率:△50.6%)の86億円の損失となりました。この損失の減少は、主に武田ベンチャー投資Inc.が保有する株式にかかる投資の損失を前年度に計上したことによるものです。
〔法人所得税費用〕
法人所得税費用は、前年度から144億円減少(△19.8%、CERベースの増減率:△18.0%)の581億円となりました。この減少は主に、前年度に認識した、2014年にShire社がAbbVie社からの買収申し出の取下げに関連して受領した違約金に対するアイルランドでの課税を巡る税務評価から生じた税金および利息の合計と関連する税務便益5億円との純額654億円、ならびに当年度における繰延税金資産の認識による税務便益の増加によるものです。これらの減少は、税引前当期利益の増加に加え、前年度の米国における州税の適用税率の変更による影響と一部相殺されております。
〔当期利益〕
当期利益は、上記の要因を反映し、前年度から869億円増益(+37.7%、CERベース増減率:+23.3%)の3,170億円となりました。
(ⅳ) 当年度におけるCore業績の概要
Core財務指標とCERベースの増減の定義
当社は、業績評価において「Core財務指標」の概念を採用しています。本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
Core売上収益は、売上収益から重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除して算出します。
Core営業利益は、当期利益から、法人所得税費用、持分法による投資損益、金融損益、その他の営業収益及びその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、非定常的な事象に基づく影響、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。
Core EPSは、当期利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算出します。
CER(Constant Exchange Rate:恒常為替レート)ベースの増減は、当年度の財務ベースの業績もしくはCore業績について、前年度に適用した為替レートを用いて換算することにより、前年度との比較において為替影響を控除するものです。
Core業績
〔Core売上収益〕
当年度のCore売上収益は、前年度から6,069億円増収(+17.7%、CERベース増減率:+3.5%)の4兆275億円となりました。前年度のCore売上収益は、主に非定常的な日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を控除し3兆4,205億円でした。当年度においては、売上収益から控除した重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響はなかったことから、Core売上収益は財務ベースの売上収益と同額でした。タケダの成長製品・新製品(注)は、前年度から4,358億円増収(+37.6%、CERベース増減率:+18.8%)の1兆5,948億円となり、好調に推移した事業を牽引しました。なお、タケダの成長製品・新製品には、当年度に欧州やインドネシア、ブラジルなどで承認を取得し、幾つかの非流行国において上市したデング熱ワクチンのQDENGAを含めています。
(注)当年度のタケダの成長製品・新製品
消化器系疾患:ENTYVIO、アロフィセル
希少疾患:タクザイロ、LIVTENCITY
血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRUを含む免疫グロブリン製剤、
HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤
オンコロジー:アルンブリグ、EXKIVITY
その他:スパイクバックス筋注、ヌバキソビッド筋注、QDENGA
〔Core営業利益〕
当年度のCore営業利益は、主要な疾患領域の売上が増加したこと、および当年度における円安の為替影響により、前年度から2,332億円増加(+24.4%、CERベース増減率:+9.1%)の1兆1,884億円となりました。
〔Core EPS〕
当年度のCore EPSは、前年度から134円増加の558円(+31.5%、CERベース増減率:+13.9%)となりました。
〔資産〕
当年度末における資産合計は、前年度末から7,797億円増加し、13兆9,578億円となりました。無形資産は、償却による減少があったものの、主にNimbus Lakshmi Inc.の取得および為替影響により4,511億円増加しました。のれんおよび有形固定資産は、主に為替換算の影響により、それぞれ3,830億円および1,084億円増加しました。さらに、棚卸資産が1,333億円増加しております。これらの増加は、現金及び現金同等物の減少3,162億円と一部相殺されております。
〔負債〕
当年度末における負債合計は、前年度末から1,086億円増加し、7兆6,031億円となりました。仕入債務及びその他の債務は1,329億円増加し、引当金は686億円増加しました。社債及び借入金は、当年度に社債の償還があったものの、主に米ドル建ておよびユーロ建て債務における為替換算の増加影響により前年度末から369億円増加の4兆3,823億円(注)となりました。これらの増加は、繰延税金負債の減少1,809億円と一部相殺されております。
(注)当年度末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆6,583億円および7,240億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
借入金:
当社グループは、2015年6月に発行した米ドル建無担保普通社債219百万米ドルについて、2022年6月23日の償還期日に先立ち、2022年4月23日に繰上償還を実行しました。2022年10月27日には、2018年11月に発行した米ドル建無担保普通社債の残高1,000百万米ドルについて、2023年11月26日の償還期日に先立ち繰上償還を実行しました。2022年11月21日には、2018年11月に発行した変動利付のユーロ建無担保普通社債の残高750百万ユーロについて満期償還を実行しました。2023年3月31日には、バイラテラルローン750億円について満期返済を実行するとともに、同日に2029年3月30日を返済期限とする新たなバイラテラルローン契約750億円を締結しました。さらに、コマーシャルペーパー400億円を発行しました。
〔資本〕
当年度末における資本合計は、前年度末から6,711億円増加し、6兆3,547億円となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が5,739億円増加したことによるものです。利益剰余金は、主に2,783億円の配当金を支払ったものの、当期利益の計上により、614億円増加しております。
資金の調達および使途
当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。
当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2022年3月期および2023年3月期において、それぞれ2,399億円および8,987億円であります。また、2023年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは153億円であります。加えて、2023年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記32 コミットメントおよび偶発債務」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。
当社の配当金の支払額は、2022年3月期および2023年3月期において、それぞれ2,842億円および2,808億円であります。これまで1株当たり年間配当金額を180円(中間配当金および期末配当金それぞれ90円)としてきましたが、2024年3月期については、中間配当金および期末配当金をそれぞれ94円ずつとし、年間188円とすることを目指しています。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2023年3月31日現在において、1年内に必要となる利息の支払額および負債の返済額は、それぞれ1,042億円、3,404億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。
当社グループの資金の主な調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャル・ペーパー、コミットメントラインによる借入、グローバル資本市場における社債発行を含む長期債務による資金調達であります。さらに、当社グループは、コンティンジェンシーの調達源として、2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において、金融機関から極度額1,500億円および750百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。
当社グループは、引き続き、資金調達の状況について注視しており、短期的には、一般的な市況による資金調達不足または流動性不足は現在見込んではおりません。なお、必要に応じた市場およびその他の供給源からの追加の資金調達力に加えて、当社グループの資本支出計画を必要かつ適切な範囲で見直すことによって、資金調達および流動性の需要を管理する場合があります。
2023年3月31日現在において、当社グループは、ワクチン運営および売上債権の売却プログラムに関係して当社が第三者に代わり一時的に保有していた制限付き預り金1,258億円を含む、5,335億円の現金及び現金同等物と、7,000億円の未使用のバンク・コミットメントライン契約を保有しており、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。また、当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度の1兆1,231億円から1,459億円減少の9,772億円となりました。これは、主に仕入債務及びその他の債務の変動により、営業活動に関連する資産および負債の純増減における減少影響があったこと、および法人税所得税等の支払額の増加によるものです。これらは、非資金項目およびその他の調整項目を調整した後の当期利益の増加と一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△1,981億円から4,090億円減少の△6,071億円となりました。これは主に、事業取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)が497億円減少したものの、主に当年度におけるNimbus Lakshmi Inc.の取得(注)により無形資産の取得による支出が4,302億円増加したことによるものです。
(注)当社グループは、一時金40億米ドルのうち、2023年2月に30億米ドル、2023年4月に9億米ドルを支払っております。残額の1億米ドルは2023年8月に支払を予定しております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△1兆703億円から3,611億円増加の△7,091億円となりました。これは主に、社債の償還及び長期借入金の返済による支出(借換に伴う社債の発行及び長期借入れによる収入と相殺後)の減少2,791億円、およびコマーシャル・ペーパー発行額の増加400億円によるものです。また、前年度と比較して当年度に実施された自己株式取得金額が減少したことに伴い、自己株式の取得による支出は506億円減少しております。
有利子負債および金融債務
2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において社債および借入金はそれぞれ4兆3,454億円、4兆3,823億円であります。これらの有利子負債は、当社が発行した無担保社債、普通社債、バイラテラルローン、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債、借り換えた負債を含み、連結財政状態計算書に計上されております。当社の借入金は主に買収関連で発生したものであり、季節性によるものではありません。
当社グループは、2015年6月に発行した米ドル建無担保普通社債219百万米ドルについて、2022年6月23日の償還期日に先立ち、2022年4月23日に繰上償還を実行しました。2022年10月27日には、2018年11月に発行した米ドル建無担保普通社債の残高1,000百万米ドルについて、2023年11月26日の償還期日に先立ち繰上償還を実行しました。2022年11月21日には、2018年11月に発行した変動利付のユーロ建無担保普通社債の残高750百万ユーロについて満期償還を実行しました。2023年3月31日には、バイラテラルローン750億円について満期返済を実行するとともに、同日に2029年3月30日を返済期限とする新たなバイラテラルローン契約750億円を締結しました。さらに、2022年3月31日現在においてはコマーシャル・ペーパーを発行しておりませんでしたが、2023年3月31日現在、400億円のコマーシャル・ペーパーを発行しております。
2023年3月31日時点において、当社グループは一定の財務制限条項の含まれる長期融資契約を保有しております。当該財務制限条項の重要な条項は、毎年3月末および9月末において連結財政状態計算書における純負債の過去12か月間の調整後EBITDA(調整後EBITDAは契約書にて定義されたもの)に対する比率が一定水準を上回らないことを求める財務制限条項が含まれています。2023年3月31日時点においては、2022年3月31日時点と同様に、当社グループは全ての制限条項を遵守しております。また、2019年に設定された7,000億円の未使用のコミットメントラインからの借入を制限する事象はありません。当コミットメントラインは、現在の期限は2026年9月であります。
当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャル・ペーパープログラムを保有しております。2022年3月31日現在においてはコマーシャル・ペーパーは発行しておりませんが、2023年3月31日点現在、400億円のコマーシャル・ペーパーを発行しております。当社グループは、さらに2022年3月31日時点および2023年3月31日時点において、極度額1,500億円および750百万米ドルの短期アンコミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。
借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
信用格付け
当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。
(注1) ムーディーズは、2023年6月26日に長期発行体の信用格付をBaa2からBaa1に、アウトルックをポジティブから安定的にそれぞれ改訂しております。
この格付けは、社債の購入、売却、保有を推奨するものではありません。この格付けは指定された格付機関によって適宜改訂あるいは撤回される可能性があります。それぞれの財務の健全性レーティングは、独立評価されたものであります。
契約上の負債
2023年3月31日現在における契約上の負債は以下のとおりです。
(単位:億円)
(注1) 2023年3月31日現在における日本円以外の通貨建債務は、期末為替レートで日本円に換算しており、為替レートの変動により金額が異なる可能性があります。
(注2) 当社グループが関連する金融商品の財務制限条項違反を行った場合、返済義務が早まる可能性があります
(注3) 利息支払義務を含みます。
(注4) 社債の契約額のうち、「1年超3年以内」の金額には、劣後特約付きハイブリッド社債(以下、「ハイブリッド債」)元本全額を2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があるため、当ハイブリッド債の元本5,000億円が含まれています。ハイブリッド債の元本および利息の詳細については、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
(注5) 2024年4月以降の年金および退職後給付制度への拠出額については、拠出の時期が不確実であり、利率、運用収益、法律およびその他の変動要因に依存するため、確定することはできません。
(注6) 確定給付債務、訴訟引当金および長期未払法人税等、時期を見積もることができない契約上の負債、また、金額が公正価値の変動により変化するデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債は含まれておりません。なお、2023年3月31日現在のデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債の帳簿価額は、それぞれ407億円および81億円であります。また、特定の将来の事象の発生に左右されるマイルストン支払いも含んでおりません。
(注7) 通常の事業活動における購買に関する発注は含んでおりません。
オフバランス取引
マイルストン支払
新製品の開発に係る第三者との提携契約に基づき、当社グループは、パイプライン品目の開発、新製品の上市および上市後の販売等にかかる一定のマイルストン達成に応じた支払義務が生じる場合があります。2023年3月31日現在における潜在的なマイルストン支払の契約金額は1兆4,556億円であります。これらは、潜在的なコマーシャルマイルストン支払を除いた金額であります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13 共同研究開発契約およびライセンス契約 および 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
Nimbus Lakshmi, Inc.の取得
当社グループは、2022年12月13日付で、Nimbus Therapeutics, LLC(以下、「Nimbus 社」)の完全子会社であるNimbus Lakshmi, Inc.(以下、「Lakshmi社」)の全株式を取得するため、Nimbus社との間で株式譲渡契約を締結しました。 Lakshmi社は、経口アロステリックTYK2阻害薬(Nimbus社の社内コード「NDI-034858」)に関する知的財産権および他の関連する資産を保有またはコントロールしています。本契約にもとづき、当社グループはNimbus社に一時金として40億米ドルを本取引完了後に支払うことに合意しております(注)。また、「TAK-279」(旧Nimbus社の社内コード「NDI-034858」)のプログラムから開発された製品の年間の売上高が40億米ドルと50 億米ドルとなった場合には、それぞれにつき10億米ドルのマイルストンを同社に支払います。本取引は、2023年2月8日に完了しました。 さらに、本取引に関連して、当社グループは、Nimbus社とBristol-Myers Squibおよびその子会社である Celgene Corporationとの間の2022年1月の和解契約におけるNimbus社の義務である「TAK-279」のプログラムから開発された製品の開発、薬事規制上の承認、および売上に関するマイルストン支払い義務を引き受けることに合意しました。
(注)当社グループは、一時金40億米ドルのうち、2023年2月に30億米ドル、2023年4月に9億米ドルを支払っております。残額の1億米ドルは2023年8月に支払を予定しております。
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (a)当年度の経営成績の分析 (i)当社グループの経営成績に影響を与える事項 当社グル―プの経営成績に影響を与える事項 買収」をご参照ください。
当年度の研究開発費の総額は
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、ライフサイクルマネジメント、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、日本では厚生労働省(MHLW)、中国では国家薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相(P-1)試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相(P-2)試験
少人数の志願患者さんを被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験はP-2aとP-2bの2つのサブカテゴリーに分割されることがあります。P-2a試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、P-2b試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相(P-3)試験
大人数の志願患者さんを被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)、生物製剤承認申請(BLA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市が可能となります。NDA、BLA、MAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患)には未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在し、当社はベスト・イン・クラスあるいはファースト・イン・クラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図っています。また、当社はデータとデジタル技術を活用し、イノベーションの質を向上させ、実行を加速させています。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っています。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
• グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発サイトは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに位置しています。本サイトは当社のグローバルでの消化器系・炎症性疾患領域、オンコロジー、ならびに希少遺伝子疾患および血液疾患領域の研究開発の中心であり、加えて血漿分画製剤やワクチンなど他の疾患領域の研究開発や免疫調節および生物学的製剤の研究も支援しています。最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。さらに当社は、ケンドール・スクエアに新たに建設中の約60万平方フィートの最新鋭の研究開発およびオフィス施設について、15年間のリース契約を締結し、2026年より入居する予定です。
• 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所を外部に開放する形で、2018年に設立された日本初の製薬企業発サイエンスパークであり、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。当社はより多様なパートナーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、2020年に信託設定、2023年には湘南アイパークの運営事業を当社が設立した会社に承継しました。当社は、アンカーテナントとして今後も日本におけるライフサイエンスの研究活性化に注力します。
• サンディエゴ研究開発サイト:米国カリフォルニア州サンディエゴにある当社の研究開発拠点であり、消化器系・炎症性疾患およびニューロサイエンス領域における研究開発を支援しています。本研究サイトは、バイオテックのような形態で研究を行う拠点であり、構造生物学および生物物理学などの社内技術を駆使し、社内外で行われる研究を促進します。
• オーストリア ウィーン研究開発サイト:オーストリア ウィーンに位置する当社の研究開発サイトであり、研究開発および血漿分画製剤のプログラムを支援しています。本研究サイトは、生物学的製剤の研究開発に注力するとともに血漿分画製剤の製造施設を備えています。
当社の2022年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
消化器系・炎症性疾患
消化器系・炎症性疾患において、消化管疾患、肝疾患およびその他の免疫介在性の炎症性疾患の患者さんに革新的で人生を変えうるような治療法をお届けすることにフォーカスしています。炎症性腸疾患(IBD)においては、「ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)」に関する皮下注射製剤の開発および活動性の慢性回腸嚢炎をはじめとする適応症拡大を含め、フランチャイズのポテンシャルを最大化しています。加えて、「GATTEX/レベスティブ」および米国への地理的拡大のために臨床第3相試験を実施中の「アロフィセル」により当社の消化器系疾患におけるポジショニングの拡大を目指しています。また、当社は、自社創製、社外との提携および事業開発を通じて炎症性疾患(IBD、セリアック病、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスおよびその他疾患)、厳選した肝疾患、消化管運動関連疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。そのうち後期開発段階にある「fazirsiran(TAK-999)」は、社外との提携を通じたパイプライン構築の一例であり、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファースト・イン・クラスのRNA干渉治療薬となる可能性があります。また、後期開発段階にあり、炎症性疾患治療薬としてベスト・イン・クラスとなる可能性を有する経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「TAK-279」も、事業開発を通じて獲得した候補物質の一例です。
注)本疾患領域名は、消化器系疾患領域における重点分野の拡大とともに、現時点のパイプラインおよび免疫介在性疾患に対する当社の幅広い取組みをより適切に反映するため、「消化器系・炎症性疾患」(旧名称は「消化器系疾患」)となりました。
[ENTYVIO/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2023年2月、当社は、臨床第3相「GRAPHITE試験」の最新データを2023 Tandem Meetingsにおいて発表しました。本試験において、「ベドリズマブ」が同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後180日目までに下部消化管における急性移植片対宿主病(aGvHD)非発症生存の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を達成し、プラセボと比較して安全性プロファイルに重要な差が認められなかったことが示されました。無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同臨床第3相「GRAPHITE試験」は、血液悪性腫瘍の治療として血縁関係のないドナー由来のallo-HSCTを受ける患者を対象に、腸管aGvHD発症抑制における「ベドリズマブ」の有効性および安全性を検討しました。本試験において「ベドリズマブ」は、allo-HSCT後180日目までの腸管aGvHD非発症生存においてプラセボと比較し統計学的に有意な改善を示しました(「ベドリズマブ」群 85.5%、プラセボ群 70.9%(HR=0.45; 95%信頼区間:0.27、0.73; p<0.001))。安全性プロファイルについて「ベドリズマブ」群とプラセボ群の間に相関する差は認めず、新たな安全性シグナルも確認されませんでした。治療に関連した有害事象は、プラセボ群の24.8%に対し「ベドリズマブ」群は28.4%に発現し、重篤な有害事象はプラセボ群の8.5%に対し「ベドリズマブ」群で6.5%に発現しました。
- 2023年3月、当社は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)を効能・効果として、「エンタイビオ皮下注108mgペン/同皮下注108㎎シリンジ」(「エンタイビオSC」)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、「エンタイビオSC」の維持療法としての有効性および安全性を評価した国際共同臨床第3相試験である「MLN0002SC-3027試験」および「MLN0002SC-3030試験」に基づくものです。「エンタイビオSC」は、皮下注射として使用できることにより、点滴静注製剤で必要とされている薬液調製のための人員、器具、設備および時間の削減が可能となり、さらに薬液調製時または投与時の過誤等のリスクを低減することが期待できます。また、点滴静注製剤と比較して簡便に取り扱うことができると考えられ、かつ投与1回あたりの所要時間も短くすることが可能となります。
- 2023年3月、当社は、慢性回腸嚢炎の治療薬としての「ベドリズマブ」の臨床第4相「EARNEST試験」の良好な結果が、the New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたことを公表しました。今回公表した結果では、臨床第4相「EARNEST試験」がmodified Pouchitis Disease Activity Index(mPDAI)を用いた臨床的および内視鏡的寛解である有効性の主要評価項目を達成し、14週時点においてプラセボ投与群では10%(51名中5名)に対し、「ベドリズマブ」投与群では31%(51名中16名)であったことが示されました(95%信頼区間:5-38パーセンテージポイント[p.p.]差、p=0.01)。プラセボとの比較におけるこのような転帰の改善は、34週時点における有効性の副次評価項目でも認められました(mPDAIによる寛解達成率はプラセボ投与群では18%[51名中9名]に対し、「ベドリズマブ」投与群では35%[51名中18名]でした[95%信頼区間:0-35 p.p.差])。重篤な有害事象は、「ベドリズマブ」群の6%(51名中3名)、プラセボ群の8%(51名中4名)で発生しました。新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
- 2023年4月、当社は、「ENTYVIO」点滴静注製剤による導入療法後の成人の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎に対する維持療法として、「ENTYVIO」皮下注射製剤の生物学的製剤承認申請(BLA)を米国食品医薬品局(FDA)に再提出し、受理されたことを公表しました。今回の再提出は、2019年12月の審査完了報告通知(CRL)におけるFDAの指摘内容に対応することを目的としています。CRLの受領以降、当社はFDAと緊密に連携し、当局の指摘内容に取り組んでまいりました。今回の再提出パッケージには、「ENTYVIO」皮下注射製剤の使用について検討するために収集した追加データが含まれています。同通知の内容は、「ENTYVIO」点滴静注製剤、臨床安全性および有効性データ、ならびに「ENTYVIO」皮下注射製剤のBLAを支持する検証試験である「VISIBLE1試験」の結論とは関連していませんでした。「VISIBLE1試験」では、0週および2週時点に非盲検下にて「ベドリズマブ」点滴静注製剤を2回投与後、6週時点で臨床的改善が得られた中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎の成人患者216名を対象に、「ENTYVIO」皮下注射製剤の維持療法としての安全性および有効性を評価しました。主要評価項目は、52週時点における臨床寛解であり、これは完全Mayoスコアが2ポイント以下、かつすべてのサブスコアが1以下と定義しました。当社は、2023年中にFDAから審査結果の結論が得られるものと見込んでいます。
[開発コード:TAK-999 一般名:fazirsiran]
- 2022年6月、当社とArrowhead Pharmaceuticals Inc.(Arrowhead社)は、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患(AATD-LD)の治療薬として開発中の「fazirsiran」の臨床第2相試験「AROAAT-2002」の結果がthe New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載され、欧州肝臓学会(EASL)の年次会議であるThe International Liver Congress 2022において口頭発表したことを公表しました。本剤は、変異型α-1アンチトリプシン蛋白(Z-AAT)の産生を低減する目的で設計されたファースト・イン・クラスの薬剤となる可能性のあるRNA干渉(RNAi)治療薬候補で、希少な遺伝子性疾患であるAATDによる肝疾患の治療薬として現在開発中です。「fazirsiran」はAATDの治療薬候補として、米国食品医薬品局(FDA)より2021年7月にブレークスルーセラピー指定(BTD)、2018年2月に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)指定を受けています。
- 2023年1月、当社とArrowhead社は、「fazirsiran」の臨床第2相「SEQUOIA試験」のトップライン結果を公表しました。「SEQUOIA試験」は、AATD-LDの患者42名を対象に「fazirsiran」の安全性、忍容性および薬力学的作用を評価するプラセボ対照反復投与臨床第2相試験です。試験開始時に肝線維化がみられた患者16名に「fazirsiran」を25mg、100mgまたは200mgの用量で投与したところ、Z-AATの血清中濃度が用量依存的に減少し、48週時点の平均低下率はそれぞれ74%、89%および94%でした。3用量群いずれにおいても肝臓内のZ-AATは劇的に減少し、ベースライン後の肝生検実施時の減少率の中央値は94%でした。また、組織のPAS-D検査で評価するZ-AAT蓄積度の指標である肝内封入体のスコアの平均値は、ベースライン時の5.9からベースライン後の肝生検実施時には2.3に低下しました。門脈炎症も42%の患者で改善し、悪化がみられた患者の割合はわずか7%でした。肝線維化については、50%の患者でMETAVIRスコアが1ポイント以上改善しました。これに対し、プラセボ群のうちベースライン時点で線維化がみられた患者9名の48週時点の評価では、血清中Z-AAT濃度に意義ある変化はなく、肝臓内のZ-AATは26%増加、PAS-D評価の肝内封入体に意義ある変化はありませんでした。プラセボ群で門脈炎症が改善した患者はおらず、44%で悪化しました。ベースライン後の肝生検実施時には肝線維化は22%で悪化、38%で改善を認めました。「fazirsiran」の忍容性は良好で、本報告時点で確認されている試験治療下で発現した有害事象は「fazirsiran」群とプラセボ群で同等でした。いずれの群においても、試験薬の投与中止、投与中断や試験中止に至る試験治療下で発現した有害事象は認められませんでした。「fazirsiran」を1年間投与した患者の呼吸機能検査の所見には、プラセボ群との比較において用量依存的な変化や臨床上意義ある変化はみられませんでした。両社はまた、当社とArrowhead社が共同で計画し、当社が実施中の臨床第3相試験の概要も公表しました。
[開発コード:TAK-625 一般名:maralixibat chloride]
- 2022年12月、当社は、「maralixibat chloride」が、アラジール症候群(ALGS)および進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を取得したことを公表しました。日本では、ALGSまたはPFICを適応とする医薬品は現時点において承認されていません。「maralixibat」は日本国内においてALGSおよびPFICを対象とした臨床第3相試験段階にあります。
[開発コード:TAK-279]
- 2022年12月、当社は、Nimbus Therapeutics, LLC(Nimbus社)より「TAK-279」(Nimbus社の旧「NDI-034858」)に関する知的財産権およびその他の関連資産を所有または支配する、同社の完全子会社であるNimbus Lakshmi, Inc.(Lakshmi社)の全株式を取得する決定について公表しました。「TAK-279」は、高度に選択的な経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬であり、乾癬を対象とした臨床第2b相試験の結果に続き、複数の自己免疫疾患の治療薬として評価が行われています。2023年2月、当社は、Lakshmi社の全株式および乾癬や炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスを含む複数の免疫介在性疾患において、ベスト・イン・クラスの有効性および安全性ならびに利便性を示す可能性を有する「TAK-279」の取得を完了しました。今回の取得は、拡大する当社の後期開発パイプラインを強化し、ポートフォリオと患者へのインパクトを拡大する可能性とともに、当社のグローバル規模での中長期的な成長基盤を強固にするものです。
- 2023年3月、当社は、中等度から重度の尋常性乾癬の患者を対象とした「TAK-279」の臨床第2b相試験の良好な結果を公表しました。本試験では、12週時点で、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75、90、100を達成した患者の割合が、「TAK-279」の5mg、15mg、30mgの各投与群でプラセボ投与群と比較して統計学的に有意に高く、主要評価項目と副次評価項目を達成しました。これらのデータは、米国皮膚科学会(AAD)年次総会のLate-Breaking Sessionにおいて発表されました。本試験では、5mg以上の投与群では12週時点のPASI 75達成率が有意に優れていたことが示されました。「TAK-279」の最高用量投与群では、12週時点で患者の46%がPASI 90、33%がPASI 100を達成し、皮膚病変のほぼ完全または完全な消失を示しました。有害事象(AE)の頻度は、治療群で53~62%、プラセボ群で44%でした。多くの事象は軽度から中等度でした。1例(15mg)で2件の重篤なAEが発生しましたが、治験薬投与との関連はなしと判断されました。臨床検査値パラメータの変化は、アロステリックTYK2阻害薬の既知の作用と一貫していました。当社は、これらの臨床第2b相試験の結果に基づき、乾癬を対象とした「TAK-279」の臨床第3相試験を2023年度に開始する予定です。2023年度に乾癬性関節炎を対象とした臨床第2b相試験のトップライン結果の取得を見込んでおり、全身性エリテマトーデス(SLE)や炎症性腸疾患(IBD)を含む他の複数の免疫介在性疾患を対象として「TAK-279」を評価する予定です。また、今後さらなる適応症を探索する予定です。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資を集中させ、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は希少神経疾患、特にオレキシン2受容体作動薬フランチャイズ(「TAK-861」、「danavorexton(TAK-925)」など)によるナルコレプシーや特発性過眠症などの睡眠・覚醒障害、「soticlestat(TAK-935)」による希少てんかん、および「pabinafusp alfa (TAK-141)」によるハンター症候群の中枢性および身体症状の治療薬の開発に注力しています。当社はさらに、神経筋疾患、神経変性疾患および運動障害のうち患者セグメントを明確に定義できる疾患に特化した投資を行っています。
注)「pabinafusp alfa(TAK-141)」および「TAK-611」は、中枢神経系に関する専門性を活かし、2023年度第1四半期よりニューロサイエンス(神経精神疾患)領域において開発が継続されます。
[開発コード:TAK-994]
- 2022年6月、当社は、「TAK-994」のベネフィット・リスクプロファイルを評価した結果、本プログラムの開発を継続しないことを決定しました。「TAK-994」の臨床第2相試験(「TAK-994-1501試験」および「TAK-994-1504試験」)において安全性シグナルの存在が明らかになったことにより、2021年10月に2つの臨床第2相試験を予定より早く終了することを決定していました。
[開発コード:TAK-611]
- 2022年6月、当社は、遺伝子組換えヒトアリルスルファターゼA(recombinant human arylsulfatase A :rhASA)「TAK-611」が、異染性白質ジストロフィー(Metachromatic Leukodystrophy:MLD)を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を取得したことを公表しました。日本では、MLDの効能・効果を有する治療法は現時点においてなく、「TAK-611」はMLDに対する酵素補充療法を目的としたrhASAであり、現在、国際共同臨床第2b相試験などが進行中です。
オンコロジー
オンコロジー領域では、患者さんを通じて得られるインスピレーションおよびあらゆるイノベーションを活用することで、がんの治癒を目指しています。本疾患領域では、(1)既発売品(「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」など)およびパイプラインプログラムを通じた血液がん領域におけるさらなるプレゼンスの構築、(2)肺がんを対象とした既発売品(「アルンブリグ」、「EXKIVITY」)および大腸がん治療薬候補「フルキンチニブ(TAK-113)」を含むその他のがんを対象とする開発プログラムによる固形がん領域の拡充、(3)自然免疫を活用した最先端のパイプラインの進捗の3つの分野にフォーカスしています。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2022年5月、当社は、「アドセトリス」について、CD30陽性ホジキンリンパ腫における小児の一次治療に対する用法用量について、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。
- 2022年5月、当社とSeagen Inc.は、「アドセトリス」と化学療法の併用を検討した臨床第3相試験である「ECHELON-1」の全生存期間(OS)のデータを公表しました。本データは第59回米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)および第27回欧州血液学会議年次総会(EHA)のオーラルセッションにおいて発表されました。未治療のⅢ期またはⅣ期の成人古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とした「ECHELON-1試験」において、「アドセトリス」、「ドキソルビシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(A+AVD)は、「ドキソルビシン」、「ブレオマイシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(ABVD)に対して統計学的に有意なOSの改善を示しました。約6年間の観察期間(中央値73ヵ月)において、A+AVDの併用療法を受けた患者群は死亡リスクが41%低下し(ハザード比[HR]0.59;95%信頼区間[CI]:0.396-0.879)、推定全生存率は6年時点で93.9%(95%信頼区間[CI]:91.6-95.5)でした。「アドセトリス」の安全性プロファイルはこれまでの臨床試験の結果と一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
- 2023年2月、当社は、「アドセトリス」について、再発又は難治性のCD30陽性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に対する効能効果及び用法用量に関する製造販売承認事項一部変更承認の申請を日本において行ったことを公表しました。今回の申請は、再発又は難治性のCTCLの患者を対象とし、「アドセトリス」の海外臨床第3相試験である「ALCANZA試験(C25001試験)」における有効性および安全性を評価した結果ならびに国内臨床第2相医師主導試験である「SGN-35-OU試験」における日本人に対する有効性および安全性を評価した結果に基づくものです。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2022年6月、当社は、「ベクティビックス」のRAS遺伝子野生型で化学療法未治療の切除不能進行再発大腸がんの日本人患者を対象とした国内臨床第3相試験である「PARADIGM試験」に関するデータを、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のPlenary Sessionにおいて発表しました。「PARADIGM試験」は、RAS遺伝子野生型で原発巣占居部位が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)である大腸がん患者における適切な治療を世界で初めて前向きに検証しました。主要評価項目である全生存期間(OS)において、原発巣占居部位が左側および全体、いずれの集団でもmFOLFOX6+「ベクティビックス」併用療法がmFOLFOX6+「ベバシズマブ」併用療法に対し、統計学的に有意な延長が認められました(左側 OS中央値:37.9 vs. 34.3 HR=0.82 [95.798% CI: 0.68-0.99] p=0.031、全体 OS中央値:36.2 vs. 31.3, HR=0.84 [95% CI:0.72-0.98], p=0.030)。なお、本試験における「ベクティビックス」投与時の安全性プロファイルはこれまでに公表された臨床試験結果と同様の内容でした。2023年4月、本試験に関する論文が、Journal of the American Medical Association(JAMA)に掲載されました。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
- 2022年11月、当社は、無作為化臨床第3相「PhALLCON試験」が主要評価項目を達成し、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)と新たに診断された成人患者において強度減弱化学療法併用下での「アイクルシグ」の投与により、「イマチニブ」と比較して高い微小残存病変(MRD)陰性の完全寛解(CR)率を示したことを公表しました。「PhALLCON試験」は、未治療の成人Ph+ALL患者を対象に、フロントラインにおける強度減弱化学療法併用下での2つのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の有効性および安全性を比較した、最初で唯一の無作為化非盲検多施設共同国際臨床第3相直接比較試験です。本試験において、新たな安全性シグナルは認められませんでした。
[EXKIVITY 一般名:mobocertinib]
- 2023年1月、当社は、「EXKIVITY」について、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した、上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する治療薬として中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。「EXKIVITY」はEGFRエクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がんの患者において臨床的に意義のある持続的な奏効が示されており、現在、中国でこの患者集団に対して使用できる最初で唯一の治療薬です。エクソン20挿入変異を選択的に標的とするよう設計された経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である「EXKIVITY」は、NMPAのブレークスルーセラピープログラムの一環として審査を受けました。今回の承認は、プラチナ製剤ベースによる治療歴を有する患者集団を対象に実施した「EXKIVITY」の臨床第1/2相試験に基づくもので、本適応症の完全承認は、検証試験における臨床的有用性の確認が条件となる可能性があります。
[開発コード:TAK-113 一般名:フルキンチニブ ]
- 2023年1月、当社は、HUTCHMED(China)Limitedおよびその子会社であるHUTCHMED Limited(HUTCHMED社)と、中国本土、香港およびマカオを除く全世界を対象とした「フルキンチニブ」の開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したことを公表しました。2018年に中国で承認された「フルキンチニブ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に高い選択性を有する阻害薬です。「フルキンチニブ」は、バイオマーカーの状態にかかわらず、難治性の転移性大腸がん(mCRC)の様々なサブタイプで使用される可能性がある経口治療薬です。2022年9月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において、難治性mCRCを対象とした「フルキンチニブ」の臨床第3相国際共同「FRESCO-2試験」の有用性を示す結果が発表されました。「FRESCO-2試験」は、mCRC患者における全生存期間(OS)の改善という主要評価項目を達成し、概ね良好な忍容性を示しました。また、「フルキンチニブ」は、2020年に米国食品医薬品局(FDA)よりmCRC患者に対する治療薬としての開発についてファストトラック指定を受けています。2022年12月、HUTCHMED社はFDAに対して「フルキンチニブ」の新薬承認申請(NDA)の段階的申請を開始し、2023年3月に申請を完了しました。これに続き、欧州医薬品庁(EMA)への製造販売承認申請(MAA)、および厚生労働省(MHLW)への製造販売承認申請が予定されています。
- 2023年5月、当社とHUTCHMED(China)Limited(HUTCHMED社)は、治療歴を有するmCRCの成人患者の治療薬として、VEGFR 1/2/3に高い選択性を有する阻害薬である「フルキンチニブ」のNDAが、FDAより優先審査に指定されたことを公表しました。承認された場合、「フルキンチニブ」は治療歴を有するmCRC患者の治療薬として、3種類のVEGF受容体すべてに対して高い選択性を有する米国で承認された最初で唯一の阻害薬となります。本申請には、中国で実施された臨床第3相「FRESCO試験」のデータとともに、米国、欧州、日本およびオーストラリアで実施された臨床第3相「FRESCO-2試験」から得られた結果を含めています。本申請において、FDAが設定した処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく審査終了目標日は2023年11月30日です。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、希少遺伝子疾患および血液疾患において、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に注力しています。遺伝性血管性浮腫においては、「タクザイロ」をはじめとするライフサイクルマネジメントプログラムへの継続的な研究開発投資を通じて、既存の治療パラダイムの変革を目指します。希少血液疾患においては、「アドベイト」、「アディノベイト/ADYNOVI」に加えて、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(iTTP)および先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)治療に対するパイプラインである「apadamtase alfa/cinaxadamtase alfa(TAK-755)」の開発を通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しています。また、「LIVTENCITY」においては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しています。当社は、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療の探索および前臨床の取り組みを中止することを最近決定しましたが、引き続き希少疾患の患者さんに対し革新的な医薬品を届けるという当社のビジョンを実現するための取組みを継続します。
[タクザイロ 一般名:ラナデルマブ]
- 2022年4月、当社は、2歳以上12歳未満の患者を対象とした臨床第3相試験である「SPRING試験」において、「タクザイロ」の安全性プロファイルおよび薬物動態の評価が終了し、主要評価項目を達成したことを公表しました。安全性プロファイルはこれまでに公表された12歳以上の小児患者を対象とした臨床プログラムと一致し、重篤な有害事象および有害事象による脱落はありませんでした。また、本試験において、2歳以上12歳未満の小児を対象とする遺伝性血管性浮腫(HAE)の発症抑制における「タクザイロ」の臨床活性および臨床アウトカムを評価し、本剤の薬力学を特徴付ける副次評価項目も達成しました。
- 2022年7月、当社は、ハイブリッド形式で開催された2022年欧州アレルギー臨床免疫学会議(EAACI)において、「タクザイロ」の臨床第3相「SPRING試験」の最新データを発表しました。多施設共同非盲検臨床第3相試験である「SPRING試験」の主要評価項目は、2歳以上12歳未満のHAE患者を対象とした「タクザイロ」の安全性および薬物動態(PK)です。また、副次評価項目として、HAE発作抑制の臨床効果を評価しています。本試験では、本剤150mgを2歳以上6歳未満の患者では4週毎に、6歳以上12歳未満の患者では2週毎に投与しました。「タクザイロ」は投与開始時と比較して小児患者におけるHAEの発作発症率を平均94.8%低下させ、投与期間における発作は1ヵ月あたり1.84回から0.08回になりました。患者の大多数(76.2%)は52週間の投与期間中に無発作となり、平均99.5%の日数が無発作日となりました。本試験中に報告された死亡または重篤な有害事象(TEAEs)はなく、TEAEsにより試験を中止した患者はいませんでした。これらの結果は、成人および12歳以上の小児患者を対象に既に実施された試験結果と一貫していました。これらのデータは、「タクザイロ」の低年齢の患者への適応拡大に向けて、世界各国の規制当局に提出される予定です。
- 2023年2月、当社は、「タクザイロ」について、米国食品医薬品局(FDA)より、2歳以上12歳未満の小児患者を対象としたHAE発作抑制治療薬としての対象年齢の拡大に関する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の承認を取得したことを公表しました。本申請はFDAより優先審査に指定されていました。sBLA承認は、12歳以上18歳未満の患者を含む臨床第3相試験である「HELP試験」の有効性データの外挿と、2歳以上12歳未満のHAE患者を対象とした非盲検臨床第3相試験である「SPRING試験」における成人と小児患者の類似した薬物曝露を示す追加の薬物動態分析および安全性と薬力学データに基づきます。これまで2歳以上6歳未満のHAE小児患者に対して承認された発作抑制薬はなく、「タクザイロ」は本承認によりこの年齢集団にとって初の発作抑制薬となります。
[LIVTENCITY 一般名:maribavir]
- 2022年4月、当社は、米国ユタ州ソルトレークシティにて開催されたTandem移植・細胞治療学会およびポルトガルのリスボンにて開催された第32回欧州臨床微生物感染症学会議(ECCMID)において、「LIVTENCITY」に関する4つの抄録を発表しました。発表演題には、移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症患者において、「LIVTENCITY」投与群では従来の抗ウイルス療法群と比較して、入院率の低下(34.8%、p=0.021)と入院期間の短縮(53.8%、p=0.029)を示す臨床第3相「SOLSTICE試験」の探索的解析が含まれます。また、臨床第3相「SOLSTICE試験」のサブグループ別の事後解析では、CMVのDNA濃度が定量検出限界以下(<LLOQ)となることが最初に確認されるまでの期間が、従来の抗ウイルス療法群と比較して「LIVTENCITY」投与群で短縮することが示され、これまで報告された試験結果と一致していました。
- 2022年11月、当社は、欧州委員会(EC)より、造血幹細胞移植(HSCT)または固形臓器移植(SOT)後の、既存療法(「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「シドフォビル」、「ホスカルネット」のいずれか1つ以上の前治療)に抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のCMV感染/感染症の成人患者を対象とした治療薬として、「LIVTENCITY」の販売承認を取得したことを公表しました。中央審査による販売承認は、すべてのEU加盟国ならびにアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーおよび北アイルランドで有効であり、HSCTおよびSOT移植後の既存療法のいずれか1種類以上に対して抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性の成人患者の治療薬として、従来の抗ウイルス療法(「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「シドフォビル」または「ホスカルネット」)に対する「LIVTENCITY」の安全性および有効性が評価された臨床第3相「SOLSTICE試験」に基づいています。
- 2022年12月、当社は、HSCT後患者におけるCMV感染治療薬として「バルガンシクロビル」と比較した「LIVTENCITY」の有効性および安全性を評価する無作為化ダブルダミー実薬対照二重盲検多施設共同臨床第3相「AURORA試験」において、「LIVTENCITY」はCMV血症の消失において臨床的意義のある有効性を示したものの、事前に規定した非劣性マージンである7%に基づき、「バルガンシクロビル」との非劣性を検討した主要評価項目を満たさなかったことを公表しました(「LIVTENCITY」69.6%[190/273]vs「バルガンシクロビル」77.4%[212/274]、調整群間差:-7.7%、95% CI:-14.98、-0.36)。主要評価項目は、治療期終了時(8週目)の「バルガンシクロビル」投与群との比較において、「LIVTENCITY」単独投与後にCMV血症の消失(血漿CMV DNAがLLOQ未満:<137 IU/mL)が確認された患者の割合と定義しました。重要な副次評価項目として、投与終了から8週後の16週目において、8週目に達成したCMV血症の消失および症状コントロールを維持した患者の割合は、「LIVTENCITY」群で52.7%であり、「バルガンシクロビル」群の48.5%に対し数値的に上回りました。「LIVTENCITY」による維持効果は、12週目(「LIVTENCITY」59.3%、「バルガンシクロビル」57.3%)および20週目(「LIVTENCITY」43.2%、「バルガンシクロビル」42.3%)における治療期終了後評価で確認されました。また、「バルガンシクロビル」の試験治療下での好中球減少症発現率が高いこと(「LIVTENCITY」の21.2%に対して63.5%)および好中球減少症による投与の早期中止率が高いこと(「LIVTENCITY」の4%に対して17.5%)より、「LIVTENCITY」の良好な安全性プロファイルを本試験において再確認しました。「LIVTENCITY」で最も多く報告された有害事象は、悪心(27.5%)と味覚不全(25.6%)でした。当社は引き続き移植領域に注力し、「AURORA試験」のアウトカムを検討するために規制当局と連携しています。
[アディノベイト/ADYNOVI 一般名:ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)]
- 2022年6月、当社は、「アディノベイト」について、定期補充療法の用法・用量に関する製造販売承認事項一部変更承認申請を日本において行ったことを公表しました。今回の申請は、主に国際共同臨床第3相試験である「CONTINUATION試験」および「PROPEL試験」の成績に基づいて行っています。
[フィラジル 一般名:イカチバント]
- 2022年8月、当社は、「フィラジル」について、厚生労働省より2歳以上の小児の遺伝性血管性浮腫(HAE)に対する用法および用量の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。本承認は、主に2歳以上18歳未満の小児HAE患者に「フィラジル」を皮下注射したときの安全性、有効性および薬物動態を評価した国内臨床第3相非盲検試験ならびに海外臨床第3相非盲検試験に基づきます。
[開発コード:TAK-755 一般名:apadamtase alfa/cinaxadamtase alfa]
- 2022年12月、当社は、「TAK-755」が、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を取得したことを公表しました。「TAK-755」は、TTPを標的とした初めての遺伝子組換えADAMTS13製剤(rADAMTS13)であり、先天性TTP(cTTP)および後天性(免疫性)TTP(iTTP)の治療薬としてグローバルで開発中です。
- 2023年1月、当社は、「TAK-755」について、ピボタル臨床第3相試験において事前に計画した中間解析より得られた包括的なエビデンスから、cTTPに対する酵素補充療法薬としての有効性および安全性が支持されたことを公表しました。本試験では無作為化クロスオーバー法により、「TAK-755」を現在の標準治療(SoC)である血漿製剤を用いた治療と比較して評価しました。中間成績から、「TAK-755」がSoCと比較してcTTPの重要な疾患活動性マーカーである血小板減少症事象の発現率を60%(95%信頼区間:30%~70%)低減させることが示されました。また、治療と関連性がある有害事象が発現した被験者の割合は、SoCを受けている被験者(47.7%)と比較して、「TAK-755」が投与された被験者(8.9%)で実質的に低い結果でした。臨床第3相試験の中間解析から得られたこれらのデータに基づき、当社は、患者にとって大きなアンメット・ニーズが存在する疾患であるcTTPに対して初のrADAMTS13補充療法薬として「TAK-755」の製造販売承認申請を目指しています。
- 2023年5月、当社は、ADAMTS13欠乏性疾患のcTTPに対する酵素補充療法としての「TAK-755」について、米国食品医薬品局(FDA)により生物学的製剤承認申請(BLA)が受理されたことを公表しました。本申請は5月16日に受理され、FDAにより優先審査指定を受けています。また、「TAK-755」はFDAよりcTTPに対する希少小児疾患(RPD)指定も受けています。本剤は既に、cTTPを対象としたファストトラック指定および希少疾病用医薬品指定も受けています。このたびのBLAは、cTTPを対象とした初の無作為化対照試験から得られた有効性、薬物動態、安全性および忍容性データから示される包括的エビデンスおよび継続試験から得られた長期の安全性と有効性のデータに基づきます。「TAK-755」が承認された場合、大きなアンメットニーズが存在するcTTPに対して初めてかつ唯一のrADAMTS13補充療法薬となります。なお、「TAK-755」については、iTTPに対する安全性、有効性および薬物動態に関する臨床評価も実施中です。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しています。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(「HYQVIA」、「CUVITRU」、「GAMMAGARD」および「GAMMAGARD S/D」)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しています。血液製剤およびスペシャリティケアのポートフォリオにおいては、「PROTHROMPLEX(4F-PCC)」、「ファイバ」、「CEPROTIN」および「ARALAST」における効能追加や剤型追加の開発機会の追求を優先しています。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、「20% fSCIg」(「TAK-881」)や「IgG Low IgA」(「TAK-880」)といった次世代の免疫グロブリン製剤の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補(高シアル化免疫グロブリン(hsIgG)を含む)の開発を行っています。
[HYQVIA 一般名:遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ含有皮下注(ヒト)免疫グロブリン10%]
- 2022年7月、当社は、「HYQVIA」を慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)に対する維持療法として評価する無作為化プラセボ対照二重盲検臨床第3相「ADVANCE-1試験」において、主要評価項目を達成したことを公表しました。本試験では、投与前の少なくとも3ヵ月間、静注免疫グロブリン(IVIG)療法の用法・用量に変更がなかったCIDPの成人患者132名を対象として、「HYQVIA」の有効性、安全性、忍容性を評価しました。INCATスコアを指標とした主要評価項目の解析では、「HYQVIA」を事前のIVIGと同じ用量および用法で投与した場合、プラセボと比較してCIDPの再発を減少させました[それぞれ9.7% vs 31.4%、p値 = 0.0045]。本試験において患者の大半が「HYQVIA」の4週間投与レジメンでの治療を受けました。「HYQVIA」による治療を受けた患者62名のうち、治験薬と関連のある有害事象の大半が軽度または中等度であり、「HYQVIA」による新たな安全性リスクは報告されませんでした。CIDPにおける「HYQVIA」の安全性プロファイルは、同薬効で最長となる6年間の長期臨床試験で、一部の患者に対して進行中の「ADVANCE-3試験」のデータによって、さらに裏付けられる予定です。全データ解析が完了し、2022年度に米国およびEUの規制当局へ「HYQVIA」の申請を行いました。
- 2023年4月、当社は、「HYQVIA」について、米国食品医薬品局(FDA)より、原発性免疫不全(PI)治療薬として対象年齢を2歳から16歳までの小児患者へ拡大する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の承認を取得したことを公表しました。FDAによる小児PI患者の治療薬としての「HYQVIA」の承認は、2歳から16歳までの44名の小児PI患者を対象に実施したピボタル前向き非盲検非対照臨床第3相試験のエビデンスに基づきます。「HYQVIA」は、主要評価項目である急性の重篤な細菌感染症(aSBIs)の発現率につき、12ヵ月の治療期間において有効性が確認されました。年間の平均aSBI発現率は0.04であり、事前に設定された達成規準である被験者1名あたりの年間aSBI発現率1未満に対し統計学的に有意に低率(片側上限99%信頼区間 0.21、p<0.001)であったことから、小児PI患者に対する「HYQVIA」の有効性が確認されました。すべての患者が12ヵ月間(1年間の観察期間)の試験参加期間を完了した時点で行われた中間解析の結果では、成人と同様な安全性プロファイルが確認されました。
[CUVITRU 一般名:皮下注(ヒト)免疫グロブリン20%]
- 2022年10月、当社は、「20%皮下注用ヒト免疫グロブリン製剤」について、無又は低ガンマグロブリン血症を予定される効能・効果として、厚生労働省に対し製造販売承認申請を行ったことを公表しました。本申請は、主に原発性免疫不全症候群(PID)の日本人患者を対象とした臨床第3相試験、およびPID患者を対象とした2つの海外臨床第2/3相試験に基づいています。これらの試験において、「20%皮下注用人免疫グロブリン製剤」は無又は低ガンマグロブリン血症の治療薬として有効性と安全性が確認されました。
[CEPROTIN 一般名:乾燥濃縮ヒトプロテインC(開発コード:TAK-662)]
- 2023年4月、当社は「乾燥濃縮ヒトプロテインC(TAK-662)」について、先天性プロテインC欠乏症に起因する静脈血栓塞栓症、電撃性紫斑病の治療および血栓形成傾向の抑制を予定される効能・効果として厚生労働省に対し製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の製造販売承認申請は、主に日本人の先天性プロテインC欠乏症患者を対象とした国内臨床第1/2相試験および先天性プロテインC欠乏症患者を対象とした2つの海外臨床第2/3相試験(「IMAG-098試験」、「400101試験」)に基づくものです。これらの試験において、「TAK-662」は先天性プロテインC欠乏症の治療薬として有効性と安全性が評価されました。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱(「QDENGA(開発コード:TAK-003)」)、新型コロナウイルス感染(COVID-19)(「ヌバキソビッド筋注」)、ジカウイルス感染(「TAK-426」)など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[スパイクバックス筋注(旧販売名:COVID-19ワクチンモデルナ筋注) 開発コード:mRNA-1273(日本での開発コード:TAK-919)]
- 2022年5月、当社とModerna, Inc.(Moderna社)は、2022年8月1日付で「スパイクバックス筋注」の製造販売承認を当社からモデルナ・ジャパン株式会社(モデルナ・ジャパン)に承継することを公表しました。承継後モデルナ・ジャパンは、日本における「スパイクバックス筋注」の輸入、薬事、開発、品質保証および情報提供活動などのすべてに責任を持つことになります。当社は、当面の間、新型コロナウイルス感染症にかかわる特例臨時接種の枠組みの下、米国Moderna社の新型コロナウイルスワクチンの流通を引き続き担います。
[ヌバキソビッド筋注 開発コード:NVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019)]
- 2022年4月、当社は、組換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナウイルス感染症ワクチン 「ヌバキソビッド筋注」について、18歳以上を対象として、厚生労働省より初回免疫および追加免疫に対する製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、当社が実施した国内臨床第1/2相試験における中間結果、Novavax社が実施した英国ならびに米国およびメキシコで実施した2つのピボタル臨床第3相試験、オーストラリアおよび米国における臨床第1/2相試験の安全性と有効性のデータ、申請後に追加提出した海外の安全性および有効性のデータに基づいています。国内臨床第1/2相試験の中間結果は良好で、これまで実施された臨床試験の結果と一致していました。国内臨床試験において本ワクチン投与群に重篤な有害事象は認められませんでした。また、米国およびオーストラリアで実施した臨床第1/2相試験ならびに南アフリカで実施した臨床第2相試験において、初回接種から約6ヵ月後に本ワクチンを1回追加接種したところ、追加接種前と比較して顕著な抗体価の上昇が確認され、安全性に関する大きな懸念は認められませんでした。
- 2022年5月、当社は、「ヌバキソビッド筋注」について、予防接種法で定められた新型コロナワクチンの臨時予防接種に係る法令等の改正を経て、特例臨時接種として初回免疫(1、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)を行う場合に使用するワクチンに指定されたことを公表しました。「ヌバキソビッド筋注」は、多くの医療用医薬品やワクチンと同様に冷蔵保存(保管温度:2-8℃)であり、通常のワクチンにおけるサプライチェーンを利用して輸送・保管することが可能です。
[QDENGA 一般名:4価弱毒生デング熱ワクチン(開発コード:TAK-003)]
- 2022年6月、当社は、「TAK-003」がグローバル臨床第3相試験である「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」において、ワクチン接種後4年半(54ヵ月)にわたる継続したデング熱の予防効果を示し、安全性について大きな懸念が認められなかったことを、第8回Northern European Conference on Travel Medicine(NECTM8)で発表しました。4年半を通して、「TAK-003」はデングウイルス感染症による入院に対して84.1%のワクチン有効性(95%信頼区間:77.8, 88.6)を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では85.9%の有効性(78.7, 90.7)、血清反応陰性者では79.3%の有効性(63.5, 88.2)を示しました。また、ウイルス学的に確認されたデングウイルス感染症に対して61.2%(95%信頼区間:56.0, 65.8)の全体的な有効性を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では64.2%の有効性(58.4, 69.2)、血清反応陰性者では53.5%の有効性(41.6, 62.9)でした。有効性は血清型によって異なっていましたが、この結果はこれまでに報告された結果と一貫性のあるものでした。「TAK-003」の忍容性は概ね良好であり、重要な安全性リスクは特定されませんでした。また、54ヵ月間の探索的解析からは、疾患増強のエビデンスは認められませんでした。
- 2022年8月、当社は、デング熱ワクチン「QDENGA」が、インドネシア国家医薬品食品管理庁(Badan Pengawas Obat dan Makanan:BPOM)により、いずれかのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的に、6歳から45歳を接種対象として承認されたことを公表しました。「QDENGA」は、デングウイルス感染歴を問わず、またワクチン接種前検査を必要としない唯一のデング熱ワクチンとしてインドネシアで承認されました。本承認は、進行中の臨床第3相試験である「TIDES試験」のワクチン接種後3年間の結果に基づくものです。
- 2022年10月、当社は、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、欧州連合(EU)およびEU-M4all制度に参加しているデング熱流行国における「QDENGA」の承認を推奨したことを公表しました。2022年12月、当社は、「QDENGA」が欧州委員会(EC)により、EUにおける4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的として、4歳以上を接種対象者として販売承認を取得したことを公表しました。ECによる承認は、28,000人以上の小児および成人を対象にした19件の臨床第1、2、3相試験の結果により裏付けられています。これには、グローバル臨床第3相「TIDES試験」の4.5年の追跡調査データが含まれています。当社は、アジア諸国およびラテンアメリカの他のデング熱流行国においても規制当局への申請を継続して進めています。
- 2022年11月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)が「TAK-003」の生物製剤承認申請(BLA)を受理し、優先審査に指定したことを公表しました。米国において「TAK-003」は、4歳から60歳を接種対象とした4種すべてのデングウイルス血清型によって引き起こされるデング熱の予防を目的として審査されています。「TAK-003」のBLA申請は、グローバル臨床第3相試験である「TIDES試験」の安全性および有効性データに基づいています。
- 2023年3月、当社は、「QDENGA」がブラジルにおいて国家衛生監督庁(ANVISA: National Health Surveillance Agency)より、4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的として、4歳から60歳までを接種対象として承認を取得したことを公表しました。「QDENGA」は、デングウイルス感染歴を問わず、またワクチン接種前の感染歴検査を必要としない、ブラジルで承認された唯一のデング熱ワクチンです。本承認は、28,000人以上の小児および成人を対象にした19件の臨床第1、2、3相試験の結果に基づいており、これには、グローバル臨床第3相「TIDES試験」の4.5年の追跡調査データが含まれています。
パイプラインの現状
当社グループの各疾患領域および事業分野における研究開発活動の概要は、以下に示すとおりです。後出する主要な疾患領域および事業分野において開示されている当社グループパイプライン上の治療薬の候補物質は、それぞれ異なる開発段階にあり、現在開発中の候補物質の開発中止や新たな候補物質の臨床ステージ入りにより、パイプラインの内容は今後変わる可能性があります。以下に示す候補物質が製品として上市に至るかは、前臨床試験や臨床試験の結果、様々な医薬品の市場動向、規制当局からの販売承認取得の有無など、様々な要因に影響されます。本表では当社が承認取得を目指しているパイプラインの主な効能および承認されたパイプラインを掲載しています。掲載している効能以外にも、将来の効能・剤型追加の可能性を検討するために臨床試験を行っています。以下の表記載は、米国・欧州・日本・中国に限定していますが、当社グループはその他の地域でも開発活動を行っています。以下、「グローバル」の表記は、米国・欧州・日本・中国を指します。下記の表にあるパイプラインのモダリティは、「低分子」、「ペプチド・オリゴヌクレオチド」、「細胞および遺伝子治療」、「生物学的製剤他」のいずれかに分類しています。
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループの消化器系・炎症性疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Arrowhead Pharmaceuticals社との提携
(注2)Mirum社との提携
(注3)Zedira社およびDr. Falk Pharma社との提携
(注4)COUR Pharmaceuticals社からTAK 101の開発および製品化の権利を獲得。旧名TIMP GLIA
(注5)被験者登録中
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループのニューロサイエンス(神経精神疾患)領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)JCRファーマとの提携、開発は同社が実施
(注2)Neurocrine社との提携、開発は同社が実施
(注3)AstraZeneca社との提携、パーキンソン病対象のP-Ⅰ試験を完了
(注4)Denali Therapeutics社との提携、P-Ⅰ試験は同社が実施
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループのオンコロジー領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)米国食品医薬品局(FDA)の審査は、FDA オンコロジー・センター・オブ・エクセレンス(腫瘍研究拠点:OCE)の取り組みである、国際的なパートナーとの間でオンコロジー製品の同時申請・同時審査を行う枠組みを提供するProject Orbisに基づいて行われました。現時点において、英国(2022年5月)、スイス(2022年6月)、オーストラリア(2022年7月)、韓国(2022年7月)およびブラジル(2023年3月)で承認を取得
(注2)欧州医薬品庁(EMA)との議論を踏まえ販売許可申請を取り下げることを決定
(注3)HUTCHMED社との提携
(注4)Seagen社との提携
(注5)Exelixis社との提携
(注6)中外製薬との提携、P-Ⅲ試験は当社が実施
(注7)Teva Pharmaceutical Industries社との提携
(注8)The University of Texas MD Anderson Cancer Centerとの提携
(注9)Noile immune Biotech社との提携
(注10)Memorial Sloan Kettering Cancer Centerとの提携
(注11)Maverick Therapeutics社買収を通じて取得
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループの希少遺伝子疾患および血液疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)GlaxoSmithKline社との提携
(注2)IPSEN社との提携
(注3)KMバイオロジクス社との提携
(注4)再発・難治性の多発性骨髄腫の試験は試験終了まで継続
(注5)2023年5月、米国において申請済み
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループの血漿分画製剤のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Halozyme社との提携
(注2)2023年5月、当社は、TAK-880の新薬承認申請(NDA)に対し、米国食品医薬品局(FDA)より審査完了報告通知(CRL)を受領。当社はCRLの内容を精査中であり今後のステップを検討中
(注3)データ収集のための非介入試験が継続中
2023年5月11日(決算発表日)における当社グループのワクチンのパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Novavax社との提携
(注2)インドネシア(2022年8月)およびブラジル(2023年3月)においてQDENGA(TAK-003)の承認取得
(注3)当社は欧州連合(EU)における承認とEU-M4all制度を通じてのEU域外の国々における承認を目的とした医薬品に適用される欧州医薬品庁(EMA)が実施する並行審査に参加。2022年10月に、EMAの欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、欧州およびEU-M4all精度に参加しているデング熱流行国におけるTAK-003の承認を推奨
(注4)米国政府Biomedical Advanced Research and Development Authority(BARDA)との提携
開発中止品目
2022年4月1日以降に中止したプロジェクトは以下のとおりです。
(注)当社はアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療の探索および前臨床の取り組みを中止することを決定。
ライセンスおよび共同研究開発契約
①ライセンスおよび共同研究開発契約の概要
当社は通常の事業において、製品開発および商業化のために第三者とライセンス契約や業務提携を行うことがあります。当社の事業は、こうした個々の契約に大きく依存するものではありませんが、これらの契約は全体として、社内外のリソースを組み合わせて活用することで新製品の開発や上市を可能にするという当社の戦略の一部を構成しています。これまで製品上市に寄与してきた契約の一部に関する概要は以下の通りであります。
- アドセトリス:2009年、当社はSeagen, Inc.(旧シアトルジェネティクス社)(以下、「Seagen社」)と、「アドセトリス」のグローバル共同開発および世界各国(同社が本剤を販売している米国、カナダを除く)における販売の提携契約を締結しました。本提携関係に基づき、当社は薬事規制上の承認申請の進捗に関するマイルストンおよび販売の進捗に関するマイルストンを支払うことが求められています。また、契約対象地域における「アドセトリス」の正味売上高に基づき10%台半ばから20%台半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。当社とSeagen社は、本提携関係のもとで実施される選択された開発活動の費用を均等に共同で負担しますが、2023年3月31日現在、当社の「アドセトリス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。本提携関係は、いずれか一方の当事者による正当な事由または両者の合意をもって解除することができます。当社は本提携関係を自由に解除でき、Seagen社は一定の状況において本提携関係を解除できます。両社により提携解除がなされなかった場合、本契約は全ての支払い義務の満了をもって自動的に終了します。2023年3月に、Seagen社は、Pfizer Inc.(以下、「ファイザー社」)とファイザー社の子会社との間で、最終的な合併契約書を締結した旨を公表しました。これにより、慣習的なクロージング条件に従った取引のクロージング後に、Seagen社は、ファイザー社の完全子会社となります。
- トリンテリックス:2007年、当社はH. Lundbeck A/S(以下、「ルンドベック社」)とライセンス、開発、供給および販売契約を締結し、同社の保有する気分障害・不安障害治療薬パイプライン上の複数の化合物について米国および日本における独占的な共同開発および共同販売権を取得しました。本契約に基づき、当社とルンドベック社は、米国および日本で「トリンテリックス」を販売しており、また、開発資金の大部分を当社が負担することとし、関連化合物の共同開発に合意しました。「トリンテリックス」による収益は当社が計上し、当社はルンドベック社に対し正味売上高の一部に加え、当社による本剤の売上に基づき10%台前半から半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。また、本提携関係に基づき、当社はルンドベック社に対し、開発および販売の進捗に関して一定の開発および販売マイルストンを支払うことに合意しておりますが、2023年3月31日現在、当社の「トリンテリックス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。本契約は無期限に存続しますが、両者の合意または正当な事由をもって解除されます。
②将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
- 2022年10月、当社とZedira GmbH(Zedira社)およびDr. Falk Pharma GmbH(Dr. Falk Pharma社)は、セリアック病治療薬として臨床第2b相試験を実施中の「ZED1227/TAK-227」の開発に関する提携・ライセンス契約を締結したことを公表しました。セリアック病はグルテンを摂取すると小腸に炎症や損傷を引き起こす重篤な自己免疫疾患であり、「TAK-227」はセリアック病患者のグルテンに対する免疫反応を予防することで、ファースト・イン・クラスの治療薬となる可能性がある候補物質です。現在、同疾患に対して承認された治療薬はありません。「TAK-227」は、胃や腸組織におけるグルテンの分解過程で免疫原性のあるグルテンペプチドの産生に関与する組織トランスグルタミナーゼ(TG2)という酵素を選択的に阻害する、経口投与可能な低分子化合物です。「TAK-227」は、調節不全の状態にあるトランスグルタミナーゼを標的とすることで、グルテンに特異的なT細胞の活性化を介した疾患の発症プロセス、すなわちグルテンに対する免疫反応を防ぎ、小腸の粘膜損傷を予防します。本契約に基づき、当社とDr. Falk Pharma社は、セリアック病に対する「TAK-227」のグローバル臨床試験を実施します。当社は、米国とその他の国々(欧州、カナダ、オーストラリアおよび中国を除く)における「TAK-227」の独占的開発・販売権を取得します。
③研究開発における提携
下表では、「①ライセンスおよび共同研究開発契約の概要」以外の、研究開発における当社の提携および外部化提携を記載しており、全ての共同研究開発活動を記載しているものではありません。「内容/目的」欄の記述は、別途記載されていない限り契約締結時点のものを示しています。
消化器系・炎症性疾患領域
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域
オンコロジー領域
希少遺伝子疾患および血液疾患領域
(注1)当社は本研究提携およびライセンス契約を2023年7月30日をもって終了することをPoseida Therapeutics社に通知しました。
(注2)当社は本研究提携およびライセンス契約を2023年7月25日をもって終了することをSelecta Biosciences社に通知しました。
血漿分画製剤
ワクチン
その他/複数の疾患領域
知的財産
特許や登録商標を用いて可能な限り自社の製品や技術を守ることは、当社グループの事業戦略において重要な部分を占めています。当社グループが市場競争力を維持し高めるためには、営業秘密、当社独自のノウハウ、技術的イノベーションおよび第三者との契約の取り決めが欠かせません。当社がビジネス上の成功を収めることが出来るかどうかは、強固な特許を取得し行使する能力や、営業秘密を保護し続ける能力、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を行う能力、付与されたライセンスの条件を遵守する能力に依存する場合があります。新薬の開発は長期間にわたり、研究開発は多くの費用を必要とします。また、治療薬候補のうち上市されるものはごくわずかであることから、知的財産の保護は新薬の研究開発への投資の回収において重要な役割を担っています。
当社グループは米国、日本、欧州の主要国において可能な限り当社独自の技術の特許保護を求めていきます。その他の国々についても、可能な国々において、選別したうえで特許保護を求めていきます。いずれの場合にも特許保護自体を取得するか、ライセンサーを通じて特許出願をサポートするよう努めています。特許は、当社グループが使用する技術を保護するための主要な手段です。特許は、他社による医薬品に関する発明の使用を排除する権利を特許権者に付与します。当社グループの医薬品を保護するために、有効成分をカバーする物質特許、薬の用途、製造方法、製剤に関する特許等、様々な種類の特許を使用しています。当社グループの低分子化合物医薬品は、主に物質特許によって保護されています。通常は物質特許の存続期間終了をもって当該医薬品の市場独占権は失われますが、その後も当該物質の用途、用法、製造方法、新規組成物または剤型に関する特許等の非物質特許によって、商業利益が保護されることがあります。物質特許が満了した場合でも、各国の関連法規制によるデータ保護制度により対象製品が保護されることもあります。
当社グループのバイオ製品は1件以上の物質特許によって保護されることがありますが、製品によっては物質特許以外の特許または規制当局によるデータ保護、またはその両方が適用されることもあります。しかし、競合会社によって、同じ疾患に対する類似製品および(または)バイオシミラーが当社グループの特許を侵害することなく開発され、販売されることがあることから、バイオ製品にとって特許による保護の重要性は伝統的な医薬品に比べて低い場合があります。
米国では、原則として出願から20年で特許は満了しますが、米国特許商標庁の審査遅延による特許の発行遅延があ った場合は特許期間の調整が行われる可能性があります。また、製品、製品を使用した治療法、製品の製造方法に関する米国の医薬特許は、米国食品医薬品局(FDA)による製品の承認審査期間に応じて特許期間延長の対象となる場合があります。このような場合の存続期間の延長は5年を上限としており、製品の承認取得から14年を超える延長は認められません。FDAの遅延に基づく期間延長が認められるのは、1製品につき1件の特許のみです。FDAは、新規化合物またはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に対しては、特許による独占権に加えて、データあるいは市場の独占権を追加付与することがあり、これらは既にある特許保護期間と並行して存続します。データ保護規制またはデータ独占権は、ジェネリック医薬品を発売し得る競合他社が、先発品の安全性および有効性を確立する際にスポンサーが作成した臨床試験データを新規化合物については5年間、オーファンドラッグについては7年間使用できないようにするものです。市場独占権は、同一薬剤を同効(同じ適応症)に 対して販売することを禁止するものです。
日本では、有効成分については、特許庁により特許が付与されます。用量や投与方法など治療法については、日本では特許の対象となりませんが、特定の投与方法・用量にて使用する医薬組成物や、医薬組成物の製造方法については、特許の対象となります。日本では原則として出願より20年で特許は満了します。医薬特許は、承認までの審査に要した時間により、5年を限度として延長されることがあります。また、日本ではデータ保護制度として「再審査期間」を設けており、その期間は新有効成分含有医薬品については8年、新効能・新医療用配合剤については4年から6年、オーファンドラッグについては10年となっています。
欧州連合(EU)では、欧州特許庁(EPO)または欧州各国で特許を申請することができます。EPOの制度では、EU全体およびスイス、トルコ等のいくつかのEU非加盟国での特許を一括申請することができます。EPOが特許を付与すれば、特許権者が指定する国々において特許が有効となります。EPOまたは欧州諸国のいずれかが認める特許の存続期間は、延長や調整があり得ますが、原則として出願から20年です。医薬品の特許は、補充的保護証明書(SPC)制度のもと、さらに追加の独占期間を付与されます。SPCは、特許権者が欧州医薬品庁または各国の規制当局から販売承認を受けるのに要した時間を補償する制度です。SPCにより、特許期間とあわせて、欧州で最初の販売承認を取得した日から最長15年の独占権を与えられます。ただし、SPCの最長期間は5年です。認可された小児臨床試験計画(PIP)によるデータが提出された製品であれば、6ヶ月の小児用医薬品に係るSPCの追加延長が認められます。SPC制度を含め、承認後の特許は、各国の法制度により運用されています。特許およびSPCに関する規制はそれぞれ欧州特許庁およびEUのレベルで作られましたが、国ごとの運用の違いにより、例えば、EU各国の国内裁判所で無効申立てされた場合など、必ずしも同じ結果にはつながりません。また、EUは承認されたヒト用医薬品につき、特許保護と並行してデータ独占権を与えています。現在承認されている医薬品に関する制度は、通常「8+2+1」と呼ばれています。これは、まず初めに競合他社が関連データに依拠することができないデータ保護期間が8年間、続いて競合他社が販売承認申請のために当該データを使用できるものの、競合品を上市することができない市場独占期間が2年間、さらに、スポンサーが最初のデータ保護期間8年間の間に、他の治療薬が存在しない適応症か「既存治療薬に比べて有意な臨床的有効性」が認められる新たな適応症を追加した場合、追加で1年間の市場独占権を認めるものです。これは各国での承認にもEUの中央審査による承認にも当てはまります。また、EUには米国に類似したオーファンドラッグの独占制度があります。医薬品がオーファンドラッグとして指定された場合、10年間の市場独占権が与えられ、この間当該医薬品と同じ適応症を持つ同様の医薬品には販売承認が付与されません。特定の条件下では、小児臨床試験計画の完了によるさらに2年間の小児用医薬品に係る延長が認められます。
当社グループ製品の関連特許満了後の後発品の市場参入や、競合他社によるOTC医薬品の発売等、当社グループは世界中で知的財産に関わる課題に直面しています。当社グループのグローバルジェネラルカウンセルは、法務ならびに知的財産権の業務についても監督責任を負っています。当社グループの知的財産部は、下記3つの優先事項に注力することにより、当社グループの全社的な戦略をサポートしています。
・疾患領域別ユニットの戦略に沿った自社製品および研究開発パイプラインの価値の最大化および関連する権利の保護
・パートナーとの提携サポートによる外部イノベーションのよりダイナミックな活用の促進
・新興国市場を含む世界各国での知的財産権取得および保護
当社グループの知的財産権が侵害されることは、それらの権利から得ることが期待される収益が失われるリスクとなるため、当社グループは特許やその他の知的財産を管理するための内部プロセスを整備しています。当該プロセスでは、第三者からの侵害に継続的に警戒するとともに、当社グループの自社製品および活動が第三者の知的財産権を侵害しないよう、研究開発段階から注意を払っています。
通常の事業活動において、当社グループの特許は第三者から無効の申し立てを受ける可能性があります。当社グループは、当事者として知的財産権に関する訴訟等に関与しております。継続中の重要な訴訟の詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
下表では、記載された製品について、対象地域ごとに、存続している物質特許およびデータ保護期間(以下、「RDP」)(米国およびEU)もしくは再審査期間(以下、「RP」)(日本)ならびに満了日を記載しております。RDPとRPについてはそれらの制度的な独占期間が特許満了日後にも与えられる場合にのみ記載しています。特許期間の延長(PTE)、補充的保護証明書(SPC)、小児用医薬品に係る独占期間(PEP)は当局により認められたものについては満了日に反映され、申請手続中で認められていないものについては、延長された満了日を別途記載しています。
当社グループのバイオ医薬品は、下記の特許満了期間に関わらず、同じ適応症に対する類似製品またはバイオシミラーを製造する他社との競争に直面するか、今後直面する可能性があります。また、欧州の特許の一部は、SPCにより、いくつかの国で下表に記載の満了期限を超えて対象製品に追加的な保護が付与されます。
(注1) 表中の「—」は物質特許の満了または該当なしを表します。
(注2) 日本では、後発品の承認申請は、先発品の再審査期間終了後に行われ、規制当局による審査の後、承認、薬価収載されます。したがって、後発品は再審査期間の満了後から一定の期間を経て市場に参入します。
(注3) 本製品は、第三者への導出契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。
(注4) 本製品は、特定の地域限定で第三者からの導入契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。詳細については「ライセンスおよび共同研究開発契約」をご参照ください。
(注5) 2023年3月時点で発売された後発品はありません。GATTEX/レベスティブの後発品の正確な参入時期について現時点では定かではありません。
(注6) これらの医薬品は血漿分画製剤です。
(注7) 当社グループは、ENTYVIOの製剤、投与方法、製造工程といった様々な項目について特許権を保有しており、そのうち一部は2032年に満了する予定です。なお、2032年より前にバイオシミラーの上市を目指す場合には、特許権侵害や関連するすべての特許の有効性を確認する必要があるため、バイオシミラーの正確な参入時期について現時点では定かではありません。