第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2023年6月27日)現在において判断したものです。

 

(1) 会社経営の基本方針

 当社は創業以来、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」ことを経営基本方針の中心に据えて事業を進めてまいりました。今後も、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、社会課題に正面から向き合って、現在と未来に対する不安の払拭に挑戦し、新しい価値を創造することを目指してまいります。地球環境問題をはじめ、さまざまな社会課題に正面から向き合い、社会の発展や課題解決に大きな貢献を果たすとともに事業競争力を強化し、株主の皆様や投資家、お客様、取引先、従業員をはじめとするすべての関係者の皆様にご満足いただけるような価値提供を通じて、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 会社の経営戦略と対処すべき課題

 2023年度の世界経済は、ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクの高まりやインフレ、金融引き締めの影響などが懸念され、先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、コロナ禍からの消費の回復やインバウンド効果による景気の下支えが期待されますが、世界経済の動向が懸念材料です。

 このような経営環境のもと、当社は2021年度から取り組んできた2年間の競争力強化の期間を経て、グループとして向き合う社会課題を起点に、2023年度は成長に向けたフェーズチェンジを果たしていきます。当社の使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けては、喫緊の課題である地球環境問題を筆頭に、様々な社会課題を解決しなければなりません。そこで、当社は以下2つをグループ共通の戦略として「地球環境問題の解決」と「お客様一人ひとりの生涯にわたる健康・安全・快適」の領域において競合を超えるお役立ちを果たしてまいります。

 

<中期経営指標(KGI:Key Goal Indicator)と進捗>

 事業の競争力を徹底強化し、キャッシュ創出力を向上。

 ・累積営業キャッシュ・フロー :2.0兆円(2022-2024年度)

 ・ROE(株主資本利益率)    :10%以上(2024年度)

 ・累積営業利益        :1.5兆円(2022-2024年度)

 2022年度の経営成績は、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。2022年度は営業キャッシュ・フロー 5,207億円、ROE 7.8%、営業利益 2,886億円でした。今後これまで以上に企業を取り巻く環境が急激に変化していくことが予測されますが、中期経営指標を維持し、手綱を緩めることなく、競争力を徹底強化してまいります。

 

<グループ戦略のポイント>

①地球環境問題の解決

 当社は、地球環境問題解決を最重要経営課題ととらえ、2022年4月に発表した長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」の達成に向けて必要な投資を行い、グループとしての成長を目指します。(「マテリアリティの特定」及び「PGI」については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。)全ての事業の活動におけるCO排出をゼロにすることには責務として取り組むことを前提に、この領域では、電化・省エネ・エネルギー転換にかかる知見と技術力を活用し、社会へのCO削減貢献量を拡大することでお役立ちを果たします。

 

・車載電池事業

 この先10年を見据えて、グループ全体のCO削減貢献量の6割を占める車載電池へ重点的に投資をしてまいります。モビリティの電動化はカーボンニュートラル社会に向けた効果が最も大きい領域の一つであり、EV市場はグローバルに急速な拡大が見込まれます。当社が注力する北米においては、米国政府の国策を背景に車載電池生産への強い要請があり、当社は円筒形車載電池と北米市場にフォーカスして事業拡大を目指します。

 この車載電池事業によるGREEN IMPACTの効果としては、2030年度のCO自社排出の実質ゼロ化に加え、原材料調達におけるCO削減があります。またサプライチェーンの構築は材料輸送距離の短縮にもつながります。さらに、EV用車載電池の供給能力の拡大によって、モビリティの電動化を促進し、2030年度には2022年度と比較して5倍の5,900トンのCO削減貢献を目指します。

 

・空質空調事業

 欧州は環境トップランナーであることに加えて、近年、急激に脱ガスが進んでいます。この市場において、エネルギー源をガスから電気に変え、CO排出削減に寄与するヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water)を軸に事業を拡大していきます。欧州冷媒規制に対しても日系メーカーとして初めて自然冷媒の製品を投入しました。安全に自然冷媒を取り扱うための製品設計やメンテナンスのノウハウを、規制強化を先取りして蓄積し、将来にわたる競争優位性の構築を図っていきます。

 

・サプライチェーンマネジメント事業

 当社の連結子会社である米国ソフトウェア会社Blue Yonder Holding, Inc.は、サプライチェーン全体をカバーする豊富なソフトウェアソリューションパッケージや高精度な全体最適解を導出する技術と3,000社を超える強固な顧客基盤を有しています。これらの強みを活かし、サプライチェーン上の在庫や輸送を最適化することで、当社は環境負荷の軽減に貢献していきます。まずは、サプライチェーンマネジメントソフトウェアの基盤強化に取り組みます。そして、パナソニック コネクト(株)の強みである現場のエッジデバイスから得られる様々なデータとの連携による自律化ソリューションによって、さらなるお役立ちを果たしてまいります。

 

②お客様一人ひとりの生涯にわたる健康・安全・快適

 グループの持つ、多様な販売ルートでの顧客接点と様々な商品やサービスでの顧客接点を統合し、お客様一人ひとりの「くらし」を最も理解し、お客様に真に寄り添ったお役立ちを果たします。

 例えば、当社のお役立ちをお届けする建材のショウルームや販売店などのチャネルや、家電・電材・建材などの商品や関連するサービス、さらには修理サポートなどの顧客接点があります。このようなお客様との多様なつながりとデジタルの活用を掛け合わせて、多様なお客様一人ひとりにあった価値を提案できる「くらしソリューション・プロバイダー」となることを目指し、グループのシナジーを創出してまいります。このグループ横断の取り組みを加速するため、当社に次世代事業推進本部を設立しました。

 

<事業ポートフォリオ>

 各事業の長期にわたる競争力の獲得と、グループとしての成長に向けて、2023年度からは事業構成の組み替えの判断軸を明確化し、戦略的に見直しを進めます。株主の皆様やお客様、お取引先様、従業員を含む全ての利害関係者の幸せとグループの価値向上に向けて、1つ目の判断軸にグループ共通の戦略との適合性を、2つ目の判断軸に将来の変化を見越した事業の立地・競争力と事業の成長性・収益性を置き、事業構成の組み替えを進めてまいります。

 

 車載電池事業、空質空調事業、サプライチェーンマネジメント事業は、それぞれエナジーセグメント、くらし事業セグメント、コネクトセグメントの事業です。なお、セグメント毎の成長戦略については、2023年6月にPanasonic Group事業会社戦略説明会2023を開催し、説明資料を当社ウェブサイトに掲載していますのでご参照ください。
https://holdings.panasonic/jp/corporate/investors/presentations.html

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2023年6月27日)現在において判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理(マテリアリティの特定)

 当社グループは、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」ことを経営基本方針の中心に据えており、この方針の実践こそがサステナビリティ経営であると考えています。2022年度は、2022年1月に発足したサステナビリティ経営委員会を毎月開催し、当社グループの重要課題について議論しました。

 当社グループは、財務及び社会への影響の視点で、重要な機会とリスクをマテリアリティとして特定しています。このマテリアリティをもとにサステナビリティの取り組みを推進し、新たな事業機会の活用とリスクの低下を通じて、サステナビリティ経営の向上を図っていきます。また特定したマテリアリティは今後の環境変化やステークホルダーとの対話を踏まえ、適切に見直していきます。

 マテリアリティの特定にあたっては、まず、社会からの要請や予見される将来課題等から、機会及びリスクになる課題を抽出しました。次にこれらについて、当社グループ及びステークホルダー視点で重要度評価を行い、最重要課題及び重要課題を抽出しました。このプロセス及び抽出したマテリアリティについて社外の専門家との対話を通じて妥当性を確認し、当社グループのサステナビリティ経営委員会、グループ経営会議、当社取締役会での議論を経て、マテリアリティを特定しました。

 

 サステナビリティ経営の推進体制は、当社グループのサステナビリティデータブック2022の「サステナビリティ経営の推進」に掲載していますのでご参照ください。

 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/pdf/sdb2022j-structure.pdf

 

 なお、サステナビリティデータブック2023年3月期版は2023年9月頃に下記のウェブサイトに掲載予定です。

 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/data-book.html

 

(2) 重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)

 上記のプロセスを経て特定した当社グループにおけるマテリアリティは、以下のとおりです。

 

<8つの最重要課題>

 地球温暖化進行と資源の枯渇

 お客様一人ひとりの生涯の健康・安全・快適

 ビジネスインテグリティ

 自社のサプライチェーンマネジメント

 社員のウェルビーイング

 コーポレート・ガバナンス

 人権の尊重

 サイバーセキュリティ

 

<3つの重要課題>

 地政学リスクへの備え

 感染症・パンデミックへの備え

 自然災害への備え

 

 なお、取り組みの進捗を管理する指標及び目標については、現在検討中です。

 

(3) サステナビリティに関する取り組み紹介

①地球環境問題

 当社グループの経営基本方針は「事業を通じて社会課題を解決する」ことであり、世界の喫緊の課題が気候変動を含む地球環境問題と考え、2022年4月に長期環境ビジョン「PGI」を発表しました。PGIでは当社グループの責務としてスコープ1~3(注)1にあたる当社グループバリューチェーン(注)2の排出量を実質ゼロにする「OWN IMPACT」に加え、バリューチェーンの外側にある社会や顧客のCO排出削減に貢献する削減貢献量を拡大していくことを約束しています。削減貢献量には、既存事業による削減貢献である「CONTRIBUTION IMPACT」と新技術・事業による削減貢献である「FUTURE IMPACT」があり、これら3つのインパクトを合わせて、2050年までに現時点の全世界CO総排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。この実現に向け環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN

 

(GIP)2024」を策定しました。GIP2024では3つのインパクトに加え、欧州で進むサーキュラーエコノミー(CE)(注)3の潮流を踏まえ、CE型事業モデルの創出や循環型モノづくりの進化においても目標を設定しています。

 OWN IMPACTに関しては、自社の生産活動により排出されるスコープ1、2のCOゼロ工場の推進を進めており、2030年までに全事業会社での達成に取り組む中、2023年1月パナソニック オートモーティブシステムズ㈱が事業会社で初めて国内外の子会社を含む全14拠点においてCO排出量実質ゼロ化を達成しました。

 CONTRIBUTION IMPACTでは、電化、省エネ、水素を軸に取り組んでいます。電化の取り組みとして、欧州では環境意識の高まりやエネルギー事情により急速にガス・石油から電気への転換が進んでおり、ヒートポンプ式温水給湯暖房機のチェコ工場での増産によりガス・石油機器の電化製品への置き換えを推進、また世界的な自動車のEVシフトに対応するため北米カンザス州に車載電池の新工場建設を決定するなど環境車の普及に貢献します。

 FUTURE IMPACTでは、次世代の太陽電池と呼ばれるペロブスカイト太陽電池や、水素社会の実現に向けてグリーン水素生成技術の開発を進めています。

 一方、この削減貢献量が、企業の製品・サービスを通じた社会へのお役立ちとして適切に評価されるよう、IEC(国際電気標準会議)での国際規格化やWBCSD(持続可能な発展を目指すグローバル企業団体)及び経済産業省のGXリーグ(注)4でのガイドライン策定に参画しています。また社会的認知拡大に向け、経済産業省主催の国際GX会合(注)5やCOP27(注)6でのセミナー、国際市場協会と日本証券業協会共催のシンポジウム、CES(注)72023の記者発表などでグローバルに発信しました。

 PGIの推進を通じて「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を目指し、持続可能な世界のカーボンニュートラル社会実現に幅広く貢献していきます。

 

 なお、当社グループは、マテリアリティ特定プロセスを経て、地球温暖化進行を当社グループにおける最重要課題とし、気候変動に関するリスクと機会の特定にあたっては、TCFD(注)8提言を踏まえ、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントを実施することを想定し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。

 当社グループのサステナビリティデータブック2022の「環境」に掲載していますのでご参照ください。

 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/pdf/sdb2022j-eco.pdf

 

 サステナビリティデータブック2023年3月期版は2023年9月頃に下記のウェブサイトに掲載予定です。

 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/data-book.html

 

 なお、当社グループは2019年5月にTCFD提言への賛同を表明しています。

 

(注)1 スコープ1~3

 

 

 

 

 

 

 

 

国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告の基準である「温室効果ガス(GHG)プロトコル」の中で設けられている排出量の区分。スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ 1、2以外の事業者の活動に関連する他社の排出

  2 バリューチェーン

 

 

原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスにいたるまでの企業の一連の事業活動

  3 サーキュラーエコノミー(CE)

 

 

 

 

循環経済。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化したり、モノのシェアリングやサービス化などで資源の有効活用を図る経済システム

  4 GXリーグ

 

 

 

 

 

 

カーボンニュートラルにいち早く移行するための挑戦を行う企業群が官・学・金と一体となり経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)のための議論と新たな市場創造を実践する場として経済産業省が設立した枠組み

  5 国際GX会合

 

 

「削減貢献度」などGXの実現に向けた未解決の課題を取り扱う国際会議。G7から5カ国、2つの国際機関、12の大学・研究機関・民間企業が参加

  6 COP27

 

 

第27回 国連気候変動枠組条約締約国会議。気候変動問題解決に向けた国際会議として197カ国・地域が参加

  7 CES

毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市

  8 TCFD

 

 

Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けて、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、2017年に提言を公開

 

②人事戦略

 当社グループは、創業以来、人材を重要な資本として捉える「人的資本経営」の考え方を大切にしてきました。それは一人ひとりが自主責任感に基づき挑戦する社員稼業と、互いに言うべきことを言い知恵を出し合う衆知経営からなる自主責任経営です。私たちはこの経営基本方針の実践をグループ共通の経営戦略とした上で、事業会社が競争力を磨き上げることで「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を具現化していきます。

 今般、社員一人ひとりの更なる経営基本方針の実践に向け、社員に求める行動指針として「Panasonic Leadership Principles(PLP)」を制定しました。私たちは具体的な行動を通じて、より高い付加価値を社会に創出していきます。

 そしてこの付加価値を高める重要な4つの要素が、「ケイパビリティ(階層別の能力開発)」「社員エンゲージメント(自発的な挑戦意欲)」「社員を活かす環境(能力を活かし、働きやすい環境)」「多様な人材」です。

 私たちは、これらの要素の源泉は一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」であると考え、自主責任経営の前提として位置付けています。

 この実現をグループ共通の人事戦略とし、「安全・安心・健康に、はたらく。」、「やりがいを持って、はたらく。」、「個性を活かしあって、はたらく。」の3つの柱で取り組みを推進し、付加価値を創出します。付加価値は財務指標を用いた生産性指標でモニタリングします。

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 なお、上述した4つの要素のうち、特に「社員エンゲージメント」と「社員を活かす環境」を最重要と考え、毎年グローバル約15万人が参加する従業員意識調査にて肯定回答率(%)を測定し、これを評価指標としています。調査結果は年々上昇傾向にあり、2022年度の肯定回答率は「社員エンゲージメント」67%、「社員を活かす環境」65%でした。今後もグローバル最高水準を目指して3つの柱の取組みを推進していきます。

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(a)安全・安心・健康に、はたらく。

― 安全・安心・健康な職場づくり

 安全・コンプライアンスは事業運営の大前提です。労働安全衛生については、モノづくり現場における重篤・重大災害の防止に向けて、設備安全基準の教育の展開・浸透を図るとともに、リスクアセスメントに基づき非定常作業時における安全確保の徹底を図っています。

 また、衛生管理においても今般の法改正を踏まえ、化学物質管理の自律化に向けた人材育成と職場管理体制の強化に取り組んでいます。健康については、グループ全体に「健康メッセージ」を発信しています。社員のウェルビーイングの実現に向けた健康投資を強化する方針を明確化するとともに、各事業会社においても従来からの会社、労働組合、健康保険組合が一体となった「健康パナソニック活動」に加え、独自の取り組みにも着手しています。定期健康診断や従業員意識調査、ストレスチェックなどの結果をレビューし、成果の確認を行うとともに、更なる改善と強化につなげていきます。

 また、コンプライアンス遵守においては、あらためて社員自らの関わる事業・地域に関する法規制についての教育を実施しています。加えて、グローバルホットライン「EARS」等を活用し、 問題の早期発見・未然防止について周知徹底を図ると同時に、あらゆるハラスメントの根絶に向けた啓発活動の強化に取り組んでいます。

 

 

(b)やりがいを持って、はたらく。

― 自発的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援

 当社グループは、一人ひとりが社会へのお役立ちに向かって自発的に挑戦する機会を提供し最大限支援していくことが重要であると考えます。2022年度はグループ横断の公募異動(転籍)や社内複業(他部門の業務を兼務)などに約2,000名の社員が手を挙げ、うち約500名が挑戦しました。

 また、こうした一人ひとりの成長や挑戦を支援する取り組みの1つに、本人と上司との対話の「質」と「量」を高め、一人ひとりの想いを引き出す 1on1 Meetingがあります。2022年度は日本地域では実施率78%、満足度84%となっています。

 さらに、組織と個人の2つの視点から成果の最大化を目指して、働き方に対する取り組みも進めています。まず組織の視点においては、各事業の状況や各人の携わるフィールドに応じて、出社/リモートの働き方のバランスを最適化することで、生産性の向上につなげます。次に個人の視点でウェルビーイングを実現するため、働く「時間」と「場所」の選択肢を拡大していきます。

 

<経営者づくり>

 当社グループの持続的な成長を実現するためには、事業を牽引する多様な経営者が必要不可欠であり、そのために中長期にわたる後継者のパイプラインづくりを推進しています。具体的には、パナソニックホールディングス(株)執行役員および事業会社社長等の26の重要ポストを対象とし、後継者の早期発掘と「適所適材」を基本に、国籍や職歴、性別、年齢等の属性に限らない多様性あふれる経営者づくりを推進しています。そのためにグループ全体最適視点で後継者の発掘・育成・配置・モニタリングを複眼的に議論・推進するグループタレントマネジメントコミッティーを設置し、現在100名規模の後継者のキャリア開発に取り組んでいます。

 

<PX、GXを推進する人材の育成>

 PXとはPanasonic Transformationの略です。お客様サービスと事業オペレーションの2つの側面から形成されるパナソニックのデジタルトランスフォーメーションをPXと称し、IT変革、オペレーティングモデルの変革、カルチャー変革を推進しております。経営層も含め、社員一人ひとりが各々の現場で、データ・テクノロジーを利活用し、付加価値創出ができるよう知識・スキルの向上を支援していくとともに、PXを推進する専門人材の採用・育成に注力していきます。また、GXとは国が提唱・推進する「Green Transformation」の略です。当社グループは、環境に関する長期ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発信し、サステナブルな地球環境の実現に向けてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどに関わる知見を有する人材の育成を推進しています。

 

 

(c)個性を活かし合って、はたらく。

― Diversity, Equity & Inclusion(DEI)の推進

 Panasonic Group DEI Policyを軸に、3つの視点でDEIを推進しています。1つ目はトップコミットメントです。これは、経営者自らがDEI推進にコミットし、事業戦略に織り込んで推進することです。グループDEI推進委員会を定期的に開催し、経営者と社員の対話を通じてアクションを決定し、取り組みを加速させていきます。2つ目はインクルーシブな職場環境づくりです。これは、社員の多様な個性に気付き、それを活かすマネジメントや組織環境をつくっていくことです。例えばアンコンシャス・バイアストレーニングを各地域で推進しています。3つ目は社員一人ひとりへのサポートです。これは、多様な個性を持つ一人ひとりが、それぞれの挑戦に向き合えるよう支援することです。様々な個性に応じたコミュニティの活動展開の支援や制度・仕組みの構築、運用の見直しなどを実施しています。

 

<ジェンダーの公平性の取り組み>

 当社グループでは報酬体系上、性別による格差はありません。一方で、とりわけ日本地域では、上級の管理職や意思決定をする職位において、より多くの女性を登用する必要があることを認識し、多様性の確保に注力しています。このため、前述のインクルーシブな職場環境づくりに加え、評価や登用のあり方について公平性の観点から見直しを図っています。また、女性社員向けの勉強会、女性リーダー向けのキャリアアップセミナーの開催、ロールモデルの価値観や仕事観にふれる機会づくりなどにも取り組んでいます。

 さらに、希望する誰もがライフイベントとキャリアを両立できるよう制度の整備と職場風土の醸成に取り組んでおり、男性の育児休業の取得促進策もその1つです。具体的には有給の育児休暇の新設や、育児休業制度の一定期間の有給化等です。また、全ての社員が不安なくスムーズに育児休業に入れるよう、育児関連制度に関する本人・パートナー・上司向けの動画コンテンツの提供や説明会の定期開催等の環境整備も進めています。そして、復職後の両立支援策として定時・短時間勤務に加え、リモートワーク制度の拡充や働く場所と時間の選択肢の拡大にも取り組んでいます。

 

3【事業等のリスク】

当社グループでは、リスクを的確に把握し、適切な対策を講じることによって、事業目的の達成と持続的かつ安定的な発展をより確実なものにすることを経営における重要課題と位置づけ、「パナソニックグループリスクマネジメント基本規程」に基づきグループのリスクマネジメント活動を推進しています。

リスクマネジメントの専任部門であるパナソニック ホールディングス㈱(以下、「PHD」)のエンタープライズリスクマネジメント室(以下、「PHD ERM室」)がリスクマネジメント活動を推進し、グループ・チーフ・リスクマネジメント・オフィサーを委員長、PHDの各機能部門のトップを委員とした「PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会」(以下、「PHD ERM委員会」)を定期的に開催しています。

当社グループは、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるオペレーション上の「損失」や「脅威」となる事象を「オペレーショナルリスク」と定義しています。当社グループでは年1回のサイクルで、外部要因・内部要因の変化等を踏まえて想定されるオペレーショナルリスクを網羅的に洗い出すことで「リスクインベントリー」を更新し、インベントリー上の全てのリスクを対象として、財務・非財務両面の評価軸によるリスクアセスメントを実施しています。PHD ERM委員会では、当該評価を基礎として、当社グループの経営・事業戦略と社会的責任の観点から審議を行い、グループ経営上の重要リスク(以下、「グループ重要リスク」)を決定します。決定したグループ重要リスクについては、当該リスクを担当する機能部門が中心となって、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングを実施することで、継続的な改善に向けて取り組んでいます。

オペレーション上のリスクマネジメントに加えて、当社グループでは、経営・事業戦略の立案・意思決定に際して、中長期的に事業目的の達成上の「機会」又は「脅威」となりうる不確実な事象を「戦略リスク」として捉え、リスクの度合いに応じて適切なリスクテイクを推進する活動にも取り組んでいます。戦略リスクに関しては、当該リスクを担当する複数部門が連携し、予め設定した先行指標に基づき定期的なモニタリングを行うことで、把握したリスクの大きさに応じ、講じている対応策の適時の見直しを図っています。当該活動を通じて、従来推進しているオペレーション上のリスク管理との両輪でリスクマネジメントの強化を図っています。

PHD ERM委員会は、これらのリスクマネジメントのPDCAサイクルに基づき、グループ重要リスクや対応策の進捗状況等を定期的に取締役会及びPHD戦略会議に報告しています。また、内部監査機能が連携し、リスクアセスメント結果に基づき選定したテーマによる監査を実施しています。

また、各事業会社においても、自主責任経営のもと「事業会社ERM委員会」を設置し、PHDと同様のPDCAサイクルで各事業会社グループのリスクマネジメント活動を推進しています。各事業会社では、グループ共通のリスク項目に当該事業会社特有のリスクを追加したリスクインベントリーを用いて、グループ共通の評価軸で評価を行い、事業会社経営上の重要リスク(以下、「事業会社重要リスク」)を決定します。各事業会社のリスクアセスメント結果及び事業会社重要リスクはPHD ERM室を通じてPHD ERM委員会に報告され、グループ重要リスクの決定にあたり活用されています。

そして、各事業会社では、決定されたグループ重要リスク及び事業会社重要リスクに基づき、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングを実施します。特にグループ重要リスクに関しては、各リスクを担当する事業会社の機能部門はPHDの機能部門と連携し、グループ共通の対応策に加えて、事業会社の事業等の特性に応じた独自の対応策を策定・実行します。PHDの機能部門は各事業会社におけるグループ共通及び独自の対応策の進捗状況をモニタリングすることで、当社グループ全体での対応を徹底しています。

このような枠組みにより、PHDでは当社グループ全体のリスクマネジメントの推進及び高位平準化を図っています。

 

     [リスクマネジメント体制図]

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     [リスクマネジメントプロセス]

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なお、当社グループの2023年度の主なグループ重要リスクと、それらの「3 事業等のリスク」における記載箇所は下記のとおりです。

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事業活動に影響を与える可能性のあるリスク(グループ重要リスクを含む)のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。当社グループの事業、業績及び財政状態は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりです。なお、下記「(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク」及び「(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク」については、事業活動に影響を与える可能性の程度に応じて、「特に重視しているリスク」及び「重視しているリスク」に分けて記載しています。また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2023年6月27日)現在において判断したものです。
 

(1) 経済環境に関するリスク

経済状況の変動

当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国又は地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。2023年度の経営環境は、日本においては、コロナ禍からの回復やインバウンド効果による下支えが期待されますが、世界経済の先行きが見通しにくい状況が続きます。ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクやインフレ、金融の引き締めによる影響等が懸念され、当社グループはこうした影響を少なからず受けるとみられます。このようなリスクに対処するため、新たに事業構造改革の実施が必要となった場合、それによる費用増大等の可能性があります。

原材料価格や物流費の高騰、半導体や部材の不足については、製品・サービスの価格改定や調達先の複数化により、当社への影響は概ね解消する見通しです。しかしながら、オートモーティブやインダストリーの車載向け半導体等で供給不足が継続することが見込まれ、その場合には当社グループ顧客の生産計画に影響を及ぼし得るため、今後の需要動向を注視してまいります。

世界経済が想定以上に悪化する場合や、急激な社会の構造的変化、消費者の消費行動変化が起こる場合等には、当社グループを取り巻く経営環境が現在の予想よりも厳しくなる可能性もあり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

このような経営環境の変化に対して、当社グループは今後も影響を見極めつつ適切な対応策を取ってまいります。

 

為替相場の変動

外貨建てで取引されている製品・サービス等のコスト及び価格は為替相場の変動により影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。加えて、海外の現地通貨建ての資産・負債等は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、為替相場の変動による影響を受けます。当社グループでは総じて、現地通貨に対する円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響を及ぼしますが、一部通貨に対する円安は、輸入商品価格の上昇を通じて、事業によっては業績に悪影響を及ぼすこともあります。

2022年度は、前年度と比較して、ドルやユーロに対して円安に動いたことにより輸出でのプラス影響がありましたが、中国元に対する円安が悪影響となる等、全体としては業績に対する大きな影響はありませんでした。また2023年度については、年間を通してドルやユーロに対して円高、中国元に対してやや円安に動くと想定しており、全体としては業績に対して一定の悪影響が生じることを見込んでいます。しかしながら、為替相場に過度な変動があった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、事業活動を通じて得た外貨を同一外貨建ての支出に充てる「為替マリー」や、将来における外貨の売却価格もしくは購入価格と数量を事前に契約しておく「為替予約取引」、消費地に近い地域で製品の生産を行う「地産地消型製造」等により、経営への影響の軽減を図っています。

 

金利の変動

金利の変動により支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値が影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループは事業資金等を円及び他通貨での有利子負債等により調達しており、国際的な政情不安等による経済情勢の変化を受けた金融市場の不安定化や、金融政策の変化等により金利が上昇した場合、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

資金調達環境の変化

当社グループは、事業資金等を社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。当社グループは、国際的な政情不安等、様々な外的要因により金融市場が不安定となり、又は悪化した場合、あるいは格付機関による当社の信用格付の引下げ等の事態が生じた場合、必要な資金を必要な時期に適当と考える条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループでは、事業の競争力強化や運転資本の圧縮等を通じて、事業からのキャッシュ・フロー創出力向上を図るとともに、保有資産の見直し等のバランスシートからの資金創出に継続的に取り組む等、資金創出力の強化に努めています。なお、2021年6月に複数の金融機関との間で期間を3年間とする総額6,000億円のコミットメントライン契約(注)を締結しており、現金及び現金同等物の残高とあわせて十分な流動性を確保することで経営への影響の軽減を図っています。

(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約

 

株式価値の下落

当社グループは、金融資産の一部として国内外の企業等の株式を保有していますが、株価下落等の株式価値の減少により、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。

 

(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

国際的な事業運営における障害

 当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略のひとつとしていますが、海外では為替リスクに加え、政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む)、経済動向の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。また、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入規制や外国為替規制の変更、税率変更等を含む税制改正及び移転価格課税等の国際課税リスク、海外での商慣習の差異といったさまざまな政治的、法的その他の障害に遭う可能性があります。

 特に、昨今の貿易規制・経済制裁に関する各国の法規制の変更は、グローバルに生産拠点を持ち、製品を供給している当社グループの事業に大きな影響を与えます。当社グループはこうした動向を注視し、グローバルで連携して日々情報収集を行うことにより、当社グループの事業に影響のある新たな貿易規制・制裁を早期に把握し、グローバルポリシー、ガイダンスを適宜更新する等の対応や、新たな規制分野で対象となる貨物・技術の該非判定を徹底して実施しています。また、社内への周知徹底、取引リスク回避のための対応策の発信等、国内外の従業員啓発にも取り組み、さらなるコンプライアンス強化に努めています。

 また、経済安全保障問題については、各国で産業基盤強化の支援、先端的な重要技術の研究開発、機微技術の流出防止や輸出管理強化等の施策の推進・強化が進められる中、我が国でも2022年に「経済安全保障推進法」が成立し、段階的に施行しています。今後の経済安全保障政策の拡充に向けた動向が当社グループの事業に与える影響を絶えず注視しながら対応をしてまいります。

 地政学リスクについては、国際情勢や欧米諸国、中国等の政策・法規制の動向に関するモニタリングを通じて、当社グループの事業への影響の把握及び適時の対応に努めています。ロシア・ウクライナ情勢に関しては、これまでの当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微でしたが、エネルギー・原材料価格のさらなる高騰等によって、今後、事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、米中対立に関しては、貿易摩擦に端を発する市場のデカップリングや各国の経済安全保障政策の強化、世論の対極化等に起因する事業環境の急激な変化によって、グローバルに生産拠点や市場を有している当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、中長期的視点でのサプライチェーンの複線化や製品の地産地消も見据えた生産体制の点検・再構築に取り組んでいくとともに、こうした動向について、事業に対する脅威及び経済安全保障政策に基づく税制関連措置の活用等の機会も含めて引き続き注視してまいります。

 

環境問題・気候変動

 当社グループでは、気候変動を含む地球環境問題の解決は、当社グループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」という遠大な使命の中で最優先で取り組むべき課題であると考えています。

 特に重視しているリスクとして、環境問題への意識の高まりに伴う、国際社会での環境規制・政策の導入・拡大があげられます。2023年3月に国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、パリ協定に基づく世界のCO₂排出削減量の達成に向けたさらなる段階的な目標を示したことで、企業の取り組みにも一層の加速が求められています。また、欧米をはじめとした、電気・電子機器に関するリサイクル及び「修理する権利」の法制化により、修理を前提とした製品の長寿命化や原材料の再資源化等に応えるビジネスモデルへの変革が喫緊の課題となっています。これらの動向を注視し、環境重視の政策・環境規制に対応した新規技術・事業開発の機会の拡大や、サステナブル・エシカル消費といった消費者の意識変化による環境志向型の製品やサービスの需要拡大を見据えた事業活動を実施してまいります。一方で、炭素税や排出権取引制度等のカーボンプライシングの導入等によりエネルギー調達コストが増加すること、排出権の購入を余儀なくされること、環境負荷の低い材質への切り替えにより製造コストが増加すること、低炭素製品のコモディティ化等により、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、こうした環境問題対策が遅れることにより欧州をはじめとする各国市場への事業進出機会の喪失や取引停止等による事業機会の喪失につながる可能性があります。加えて、各国のエネルギー安全保障、気候変動対策に関連する法制度に基づく税控除、補助金等を活用した事業機会への参入にあたり、想定通りの効果が得られず、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、資源不足・資源制約によるサーキュラーエコノミーの進展により、再生可能エネルギーの積極利用による企業価値の向上が図れる機会が増大すると同時に循環資源を用いた低炭素製品の需要拡大も見込まれます。一方で、循環資源(再生材・再利用原材料)の価格上昇・供給不足による生産コストの増大や生産の遅延が頻発・常態化する可能性があります。脱炭素循環型社会への移行状況について、EUにおける炭素国境調整メカニズム(CBAM)、米国におけるグリーンニューディール政策その他の各国の関連法令等に関する動向を中心に注視してまいります。

 2021年5月に、当社グループは「2030年にグループのCO₂排出を実質ゼロ」を目標とすることを発表しました。また、2022年1月には、グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発信し、私たちが提供する商品を通じてお客様が排出するCO₂も含めた自社バリューチェーン全体の1.1億トンのCO₂排出に見合う削減の責務を果たすことに加え、さらに幅広い事業領域を活かして、社会へのCO₂削減貢献量を拡大するとの方針を示しています。その目標として、2050年までにグループの事業活動を通じて、現時点の全世界のCO₂総排出量の「約1%」にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。特に大きなCO₂削減貢献目標を掲げている事業である環境車向け車載電池事業や欧州での空質空調事業による貢献に向けた取り組みに加えて、エネルギーの地産地消を目指し、水素及び太陽光発電で燃料電池工場の稼働に必要な電力の100%を再生可能エネルギーでまかなう「RE100ソリューション」の実証施設の稼働を2022年にスタートさせています。

 また、当社グループでは、2022年7月に、2050年の目標に向けたマイルストーンとして2024年までの環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」を策定し、自社バリューチェーンにおけるCO₂排出の削減量(OWN IMPACT)、既存事業による社会へのCO₂排出の削減貢献量(CONTRIBUTION IMPACT)、サーキュラーエコノミー領域のそれぞれにおいて、2024年までに実現する具体的な行動計画と2030年の目標をあるべき姿からのバックキャスト(逆算)で定めています。この2024年までに、当社グループでは37拠点でCO₂排出の実質ゼロ化を実現することを計画していますが、2022年度までにすでに28拠点が達成し、オートモーティブでは全14拠点のゼロ化を実現しました。一方で、現時点において共通的な算定方法が確立されていない削減貢献量について、当社グループが現在採用している方式と異なる算定方法が標準化された場合には、当該時点において削減貢献量の見直しを行う可能性や、目標の達成状況が変動する可能性があります。

 当社グループは、地球温暖化の進展による特定の商品・サービスに対する需要の変化や、環境問題への意識の高まりによる国際社会での環境規制・政策の導入・拡大を見据えながら、関連ビジネス市場を通じてこうした活動を強化し、環境問題、気候変動問題に取り組んでまいります。

 

情報セキュリティ及びサイバーセキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業の過程で、顧客等のプライバシーや信用に関する情報(顧客の個人情報を含む)や、他社等の機密情報を入手することがあります。また、顧客や他社等の情報以外に、当社自身の営業秘密(当社グループの技術情報等)を取り扱っています。これらの情報は、システムの不正アクセスやサイバー攻撃を含む意図的な行為や従業員や業務委託先の過失等により外部に流出する可能性があります。

 また、当社の製品・サービス、生産設備、管理システムは、インターネットを利用するものが増加しており、製品・サービスへのネットワークを介した予期せぬ侵入、不正操作等による外部への機密情報・個人情報の漏洩、外部への情報流出、サービス停止、工程への影響等が発生する可能性があります。さらに、当社の製品・サービスにサイバーセキュリティ上の脆弱性が発見された場合、当社製品の大規模なリコールや製品・サービスの長期間の提供停止等に発展することに加えて、多大な対策費用等が発生する可能性があります。また、製造業である当社グループにおいては、サイバーセキュリティインシデントの発生による当社グループへの原材料、部材の供給停止又は当社グループが提供元となる提供先への悪影響等、いわゆるサプライチェーンにおけるサイバーセキュリティリスクも当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、より高度な情報セキュリティレベルを実現するために、IT環境の健全性の確保及びサイバーレジリエンスの向上に取り組んでいます。特に、国内のみならず海外子会社のインフラを含むネットワーク、サーバ、パソコン等を対象としたさらなる異常監視の拡大及び工場内部のセキュリティ監視との一体化と、グローバルかつ一元的なセキュリティ監視体制の強化のための対策を実施しています。また、従前より当社グループの製品やサービスのセキュリティを検査、担保する体制を整備し、運営のさらなる強化に努めています。さらに、技術的な対策に加えて、情報セキュリティ教育プラットフォームの構築及びグローバルの従業員に対する定期的な教育実施、システム運用等の委託先に対する定期的なセキュリティチェックの取り組み等、人的な対策も強化・推進しています。各国の個人情報保護又はサイバーセキュリティに関する法令・規制については、その動向を外部専門家とともに調査したうえで、当社規程等へ反映、社内へ周知する仕組みを運営することによって、法令・規制等への対応を進めています。

 2022年度はサイバーインシデント対応の強化に向けた取り組みとして、インシデント発生時の対応プロセスの見直しと合わせて、組織横断によるインシデント対応訓練を実施しました。また、情報、製品、工場セキュリティに対する複合的なサイバーセキュリティリスクへの対応やサプライチェーン全体への一元的・横断的な対応を推進するため、2023年4月に当社に新たな組織として「サイバーセキュリティ統括室」を設置するとともに、各事業会社に複合的なサイバーセキュリティリスクへの対応を管掌するサイバーセキュリティ統括責任者を設置しています。

 一方で、当社として最大限の防御策は講じるものの、激化・巧妙化するサイバー攻撃を完全に防御できず、その結果、事業活動の停止・中断や当社グループのイメージ・評判の低下により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

有能な人材確保における競争

当社グループは「企業は社会の公器である」という考え方を経営の基本とし、人材についても社会からお預かりした貴重な経営資源として、「社員稼業」と「衆知経営」を実践し、事業の創出と成長の源泉及び組織活力の維持を担う人材の継続的な確保に努めています。

このような理念のもと、2023年3月に新たな採用ブランドスローガンとして「誰かの幸せのために、まっすぐはたらく。」を制定しました。当社グループにおける幅広い事業領域や職種を有するパナソニックグループの「多様な挑戦の機会」、「人づくり」を大切にする風土のもと、「誰かの幸せのために、まっすぐはたらきたい」と思える仲間と共に、これからの幸せをつくりたいという想いを込めています。

また、当社グループでは、一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」の実現をグループ共通の人事戦略として、「安全・安心・健康な職場づくり」、「自律的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援」及び「Diversity, Equity & Inclusionの推進」に取り組んでいます。2022年度以降、順次「働く時間」「働く場所」の選択肢の拡大のための制度を部分的に導入しています。社会環境の急速な変化や価値観の多様化が進む中、社員一人ひとりの多様なニーズにきめ細かく対応し挑戦を後押しするために、今後も取り組みを加速していきます。

一方で、有能な人材の確保をめぐる競争は激化しています。上記の取り組みが進まず、在籍している社員の流出防止や、経営戦略の推進に必要な人材の獲得ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

労働安全・労働時間管理

 当社グループは、職場作業環境や作業手順の不備、不適切な労務管理により従業員や関係者が肉体的、精神的な被害を受ける可能性があります。また、不適切な労働時間管理により、従業員の健康被害、職場における士気の低下等の可能性もあります。

 当社グループは、各種法令や当社の経営基本方針に基づき、労働安全衛生ポリシーや安全衛生管理規程を制定し、従業員の安全と衛生の確保、快適な職場環境の実現と労働災害防止の基準を定め、安全衛生活動を展開しています。また、グループ安全衛生管理部門を責任者とした中央安全衛生委員会を設置し、その傘下に事業会社・事業場の安全衛生組織を設置し、安全衛生管理に係る重要な方針や政策を審議・決定し、活動やモニタリングを実施しています。加えて、各事業会社における自律的な安全衛生管理の取り組みを推進するため、当社グループの各事業会社の安全衛生担当者が参加する「健康・安全衛生フォーラム」や、経営層を対象とした研修等を開催し、知見の共有及び意識醸成に努めています。また、適正な労働時間の把握・管理については、昨今のリモートワーク拡大も踏まえ労働時間に関する客観的データの収集・活用方法を刷新するとともに、従業員に対する継続的な意識啓発、勤務管理システムの拡充等により過重労働の防止に努めています。

 

b.重視しているリスク

競合他社との競争

 当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発・生産・販売を行っており、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の専門企業まで、さまざまなタイプの企業と競合しています。当社グループは、戦略事業への投資を推進していますが、特定の事業に対する投資を、競合他社と同程度に、又はタイムリーに、場合によっては全く実施できない可能性もあります。また、競合他社がそれぞれの競合事業において当社グループよりも大きな財務力、技術力及びマーケティング資源を有している可能性があります。

 そうした競合環境の中、当社グループでは、長期視点で戦略を再構築し、競争力強化を目指しています。まず、喫緊の課題である環境問題の解決に向けた取り組みを強化することで、お客様へのお役立ちを通じて競争力の強化を図ってまいります。また、キャッシュの獲得を前提として、事業会社のみならずグループとしても強みを持つ事業に戦略的に投資してまいります。

 次に、競争力の強化には、事業のあらゆる現場において、ムダや滞留を撲滅し事業のスピードを高める「オペレーション力」が不可欠です。当社グループでは、正味付加価値を生まない業務のIT活用による効率化を推進すると同時に、事業の競争力強化テーマ、開発設計、製造・販売、調達等グループ共通でスケールメリットのあるテーマについてビジネスプロセスの変革に取り組んでいます。加えて、デジタル技術の活用と業務改善活動の積み重ね、職場のあらゆるムダと滞留、手戻りを排除する活動を展開することにより、コストを削減し、競争力強化を図っています。

 

他社との提携・企業買収等の成否

 当社グループは、新しい製品やサービスの提供等を目指し、他社との業務提携や合弁会社設立、他社の買収等を行っており、これら戦略的提携や企業買収の重要性は増加傾向にあります。当社グループでは、重要な戦略的提携については、検討の段階に合わせて所定の審議を実施しており、事業戦略との整合性、検討の抜け漏れの有無確認、価格や契約内容の妥当性、リスクの洗い出し、統合プラン等の検証を実施していますが、相手先とのコラボレーションが円滑に進まない可能性や、当初期待した効果が得られない可能性、投資の全部又は一部が回収できない可能性があります。また、事業展開の過程で相手先が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があります。加えて、これらの相手先が事業戦略を変更した場合等には、当社グループは提携関係を維持することが困難になる可能性があります。企業買収については、買収にかかる多額の費用が発生する可能性や、買収後の事業統合・再編等にあたり、期待した成果が十分に得られない、又は予期しない損失を被る可能性があります。

 当社グループは、2021年9月にBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)の80%分の株式を追加取得し同社を完全子会社化しています。当社グループは、Blue Yonderの様々なサイバー分野でのケイパビリティを取り込むことで、現場プロセスイノベーションの実現を加速し、また、両社のシナジー最大化に取り組んでいます。しかしながら、キーマネジメントメンバーを含めた優秀な人材の保持及び従業員の士気の維持ができない場合、事業環境や競合状況の変化等により、Blue Yonderの競争力が大きく低下する場合、重要な顧客やその他関係者との良好な関係を維持できない場合等により、これらの期待した効果が十分に得られない可能性があります。また、完全子会社化に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、事業環境や競合状況の変化等により期待した効果が得られないと判断され、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、又は適用される割引率が高くなった場合は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(詳細は「(6)その他のリスク」の「非金融資産の減損」を参照)。これらのリスクに対して、2022年7月に就任した新CEOを含む新たなBlue Yonderの経営陣と共に、成長戦略に伴う重点施策等を着実に推進し、Blue Yonderの事業競争力を更に強化することで、リスク軽減を図っていきます。

 なお、Blue Yonderを中心としたサプライチェーンマネジメント(以下、「SCM」)事業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業のSCMソリューションに対する期待が高まり、市場拡大が見込めるとともに、研究開発活動(R&D)やM&A等の投資競争が激化しています。そのような中、SCM事業の競争力を強化するためには、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適であると判断し、当社が議決権の過半数を保有する重要な連結子会社と位置付ける事を前提に、Blue Yonderを中心としたSCM事業の株式上場に向けた準備を開始することを、2022年5月11日に公表しています。株式上場に関しては、証券取引所その他の関係当局の承認や許認可等を得られることが前提となり、株式上場の準備過程における検討の結果次第では、当社グループの組織再編が必要な場合やSCM事業は株式上場しないという結論に至る可能性もあります。

 当社グループは、Blue Yonderの事業成長及び両社のシナジー最大化に向けて、PMI(買収後の経営統合)を着実に推進しています。具体的には、両社間において新たな経営体制・協業プランを推進し、本件取引完了後のリスク軽減を図っています。

 

事業再編の成否

 当社グループは、多くの子会社及び関連会社等を有していますが、経営の効率化と競争力の強化のため、グループ事業体制を再編(他社への事業又は株式の譲渡や、グループ内の組織又は拠点再編等を含む)することがあります。しかし、現在及び将来における再編において、当初期待した成果が十分に得られない可能性や適切な事業ポートフォリオ・マネジメントが実行できない可能性があります。

 当社グループは、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化に向けて、2022年度から当社を持株会社とする事業会社制へ移行しました。各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計等を通じて、競争力のさらなる強化に取り組む一方、当社は、持株会社として各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、当社グループの成長戦略を立案・推進し、グループとしての企業価値向上に努めています。しかしながら、事業会社制における組織の多層化による意思決定スピードの低下や、各社で独立した管理業務が発生することによるコスト増加等により、当初期待した成果が十分に得られない可能性があります。

 事業会社制において多層化による意思決定スピードが低下するリスクに対処するため、必要な権限は事業会社へ委譲することで、意思決定の専門性とスピードを強化し、2022年度は多くの決裁を事業会社で完結する運用となりました。人事制度についても、事業会社毎に経営状況、競争力、従業員エンゲージメント等を踏まえた取り組みを推進しました。また、当社取締役の一部が事業会社取締役を兼務するなど、これまで実施してきた当社グループとしてのガバナンス強化の視点は変えずに、適切な情報収集を行いそれに基づくガバナンスの実行を目指しています。

 各社で独立した管理業務が発生することによるコスト増加のリスクについては、間接機能の重層化や機能の重複を解消し、軽量化するため、プロフェッショナルサービス(間接部門)を担う会社を新たに設置しました。プロフェッショナル機能及びオペレーション機能として間接機能の提供価値をグループで見える化するとともに、間接業務の効率化・高度化を推進することで、間接固定費の高効率化に努めています。

 2023年5月に、成長フェーズに向けて、当社グループの事業ポートフォリオ見直しや入れ替えも視野に入れた経営を進めていくことを発表しました。しかしながら、判断や意思決定に時間を要し、事業構成の組替がスムーズに進まない可能性があります。グループ内で将来にわたってお役立ちを果たせる事業か、あるいはグループ外での競争力獲得が事業の成長のスピードに寄与するかを見極める具体的な判断軸を用いて、事業ポートフォリオの見直しを進めていきます。

 

原材料等の需給・輸送の混乱、価格高騰

 当社グループの製造事業にとって、十分な品質の原材料、部品、機器、サービス等をタイムリーに必要なだけ入手することが不可欠であり、当社グループは、信頼のおける供給業者を選定しています。しかし、災害・事故、感染症の拡大や供給業者の倒産等により、供給が不足又は中断した場合や業界内で需要が増加した場合には、供給業者の代替や追加、他の部品への変更が困難な場合があります。加えて、当社グループが部材を納入している取引先においてこれらの事象により生産の中断・停止、生産規模の縮小が生じた場合、当社グループの販売数量が減少する可能性があります。これらの事象により当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 また、昨今では、原材料・燃料費の高騰に加え、コンテナ輸送費用の高騰や国内・海外双方でのドライバー不足等が続いています。当社グループでは、原材料・部材の高騰に対しては、先物予約ヘッジを積極的に推進し、グループでの集中購買をさらに加速し、価格上昇の抑制や安定確保に取り組んでいます。また、物流費の上昇については、積載効率向上による使用コンテナ本数の削減、海上輸送ルートの複線化、中長期的なコンテナスペースの確保に加え、出荷平準化の推進等の合理化活動の強化に取り組んでいます。

 このように、原材料の高騰や物流費の上昇をはじめとする生産コスト増に対する取り組みを継続していますが、内部努力だけでは当該影響を吸収しきれない状況であることから、当社グループでは、2022年8月以降、国内向けの家電製品の出荷価格を改定しています。今後は、商品価値に見合った適正価格に基づき、安定した販売を実現することで、お客様のニーズに沿った製品開発による「お役立ち」につなげてまいります。しかしながら、こうした価格改定が適時に実現できないことや、価格改定によって製品への需要が減少することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立の激化による各国の経済制裁や物流の混乱が深刻化した場合、さらにコストが上昇し、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。

 

製品価格の下落

 当社グループは、国内外の市場において激しい競争にさらされており、当社グループにとって十分に利益を確保できる製品価格を設定することが困難な場合があります。当社グループはコスト削減、高付加価値商品の開発に取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力は、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与える可能性があります。BtoC(一般消費者向け)分野のうち、国内向けの家電機器については、従来型の取引形態に起因する販売価格の下落が製品のライフサイクルの短縮化を引き起こし、顧客志向の開発や製品の競争力に影響を及ぼしています。当社グループでは、2020年より販売店との取引形態の見直しと新たな「指定価格制度」の導入に取り組んでおり、販売価格の維持及びより付加価値の高い製品の開発につなげる試みを始めています。他方で、当該制度が販売店・一般消費者を含む国内の家電機器市場で受け入れられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。一方で、BtoB(企業向け)分野においては、依存度の高い特定の取引先からの企業努力を上回る価格下落圧力や製品需要の減少・設備投資圧力等により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

技術革新・業界標準における競争

 当社グループは、新製品やサービスをタイムリーに開発・提供していく必要があります。当社グループの主要事業においては、BtoC(一般消費者向け)分野及びBtoB(企業向け)分野のいずれにおいても技術革新が重要な競争要因になっており、当社グループが将来の市場ニーズを把握しきれず、これに応えるための新技術を正しく予想し開発できない場合や、当社グループが開発・提供した技術が業界において主流とならず、競合他社が開発した技術が業界標準となった場合には、新しい市場での競争力を失う可能性があります。

 

(3) 将来の見通し等の未達リスク

 当社グループは、2022年度からスタートした中長期戦略の2年目を迎え、2023年5月に、中長期で目指す姿として、地球環境問題の解決を最重要の経営課題ととらえて必要な投資を進めていくことや、お客様一人ひとりの生涯の健康・安全・快適にお役立ちを果たすべく、グループのシナジーを発揮していくことを発表しました。また同年6月には各事業会社による戦略を発表し、これらの実現に向けた具体的な施策を推進しています。これらの戦略は、設定時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定しています。

 2023年度の世界経済は、ゼロコロナ政策撤廃を背景とした中国経済の回復が期待されるものの、地政学リスクやインフレ、金融の引き締めによる影響等が懸念され、先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、コロナ禍からの回復やインバウンド効果による下支えが期待されますが、世界経済の動向が懸念材料です。今後、こうした世界経済の影響、その他の要因により、期待される成果が実現に至らない可能性があります。中長期戦略の推進にあたっては、世界経済や事業環境の動向を踏まえ、定期的な進捗管理と課題の見極めや適時適切な対策の検討・実践等を通じて、未達リスクの最小化に努めてまいります。

 

(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク

a. 特に重視しているリスク

コンプライアンスリスク

 当社グループでは、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」において、「社会の公器」として公正な事業慣行に取り組むことを定め、法令と企業倫理の順守を明記して、当社の基本姿勢を全社員に共有・徹底するとともに、「独占禁止法・競争法違反」や「贈収賄・腐敗行為」等の重大なリスクに対しては、グローバル規程に基づくコンプライアンスの徹底のための研修や、贈収賄・腐敗行為に関するリスクベースアプローチによるコンプライアンス監査等の取り組みを通じて未然防止、早期発見に努めています。また、従業員に対しては、年間を通じて、各種リスクに対応したコンプライアンスの取り組みを実施し、倫理・法令順守意識の強化に努めています。さらに、一元的な内部通報窓口として、国内外の拠点や取引先からも通報ができるグローバルホットラインを設け、適切な社内調査を通じて問題の早期発見と是正を図っています。

 また、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」では私たちの社会的責任のひとつとして「人権の尊重」を掲げています。当社グループの事業活動は、グループで働く社員はもとより、製品・サービスをご利用いただいているお客様、調達・販売等に関わっていただいているお取引先様、さらにはビジネスパートナーの皆様など、多くの方々に支えていただくことで成り立っていることを前提に、こうしたすべての人びとの心身の健康や幸せな人生に少しでも貢献するために、「パナソニックグループ人権・労働方針」及び「人権・労働コンプライアンス規程」を制定しています。国際連合や国際労働機関が提唱する人権に関する国際規範や法令の順守に取り組むと共に、多様な人材がそれぞれの力を最大限に発揮できる働き甲斐のある労働環境を実現するため、基本方針と社員が果たすべき役割について規定しています。当社は、国連の世界人権宣言、労働の基本原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言、OECD多国籍企業行動指針の基本原則を支持し、人権・労働に関する重要な法的要請の変更等については、情報を収集して各拠点に徹底し、コンプライアンス強化に努めています。

 これらのコンプライアンス強化に向けた取り組みについては、追加的な費用や支出が生じることにより当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があるほか、このような取り組みに関わらず、万が一、当社グループにおいてコンプライアンス違反行為が発生したり、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性があります。

 

サプライチェーンに係るリスク

 当社グループは、グローバルで約13,000社以上の購入先様と取引をしています。近年、サプライチェーンにおける企業の社会的責任の要請は日増しに強くなっており、こうした流れは法規制の動きにも表れ、特に人権分野を中心に新たな規制の制定や発動が行われています。当社グループでは、「サプライチェーン・コンプライアンス規程」を制定し、グループの調達活動及びサプライチェーンにおけるコンプライアンスに関する基本的事項並びに各組織の役割及び責任を明確にし、取締役及び従業員が果たすべき役割を定め、責任ある調達活動を推進するための体制及び基本方針を規定しています。

 当社グループでは、購入先様と共に責任ある調達活動を実践できる人材を育成するため、調達業務に従事する社員に対するグローバルでの教育・研修を実施し、汚職・腐敗防止等のコンプライアンス、サプライチェーン上での人権・労働、安全衛生等の課題を含むCSR(企業の社会的責任)に関する基礎知識等の定着を図っています。また、購入先様には、順守頂きたいCSRの要請項目(人権・労働、安全衛生、地球環境保全、情報セキュリティ、企業倫理等)について、法令並びに国際規範・基準に基づき定めた「パナソニック サプライチェーンCSR推進ガイドライン」を発行しています。当社グループでは当該ガイドラインに基づいて、購入先様にパナソニックグループのCSR調達の考え方をお伝えし、CSR自主アセスメントや監査等の取り組みを推進することによって、共にサプライチェーンにおけるコンプライアンス順守のための実践をしています。さらに、購入先様に当該ガイドラインの要求事項を二次以降の購入先様にも伝達し、順守状況の確認を要請することで、サプライチェーン全体でのCSRの徹底を図っています。

 しかしながら、サプライチェーンにおける責任ある調達活動への取り組みによって期待した成果が得られない場合、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 重視しているリスク

製造物責任や補償請求による直接・間接費用の発生

 当社グループでは、製品安全に対する知見や不安全事象の未然防止策を、グループの安全規格へ盛り込むと共に、日々のリスク管理を行っています。しかしながら、製品の欠陥による品質問題(不安全事故等)が発生した場合、欠陥に起因する損害(間接損害を含む)に対して、当社グループは生産物賠償責任保険で補償しきれない賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用を負担する可能性があります。また、当該問題が生じることにより、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

知的財産権に関連した損害

当社グループは、事業に対する知的財産起点での戦略提案、グローバルな知的財産の獲得・保護・活用及び知的財産に係る紛争の予防と解決により、現在と将来にわたる事業の優位性と安全の確保を目指すとともに、近年では社会課題の解決への貢献も視野に入れて、知的財産活動を推進しています。当社グループは、上記方針のもと、事業戦略及び研究開発戦略を踏まえた知的財産戦略に基づき、自ら研究開発を行うとともに、他者とも共創関係を構築することによって、グローバルな知的財産ポートフォリオの構築に努めています。しかしながら、当社グループが出願する特許及びその他の知的財産については、国・地域によって当該知的財産に対して権利が付与されない場合や、知的財産権が十分に保護されない場合があります。

当社グループは、必要に応じて弁護士、弁理士、外部コンサルタント、取引関係者、政府機関等の協力を得ながら、当社グループの保有する特許、ブランド、デザイン及びその他の知的財産に関する侵害品・模倣品の監視及び排除に努めています。しかしながら、当該知的財産が第三者によって侵害され、当該侵害品・模倣品が出現した場合には、当社グループの正規品の販売に対する悪影響やブランドイメージの毀損等が発生する可能性があります。また、当社グループは、戦略的に当該知的財産のライセンス等を付与する場合があります。ライセンス等の付与にあたっては、適切な条件の下で行うよう努めていますが、当社グループにとって不利な条件で当該知的財産のライセンス等をせざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが自らの知的財産を保護又は活用するために相当の費用及び経営資源を費やして訴訟等を提起しなければならない場合があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

加えて、当社グループは、第三者の知的財産を尊重するための社内規程を定め、従業員全員が順守するように定期的な教育を行っており、また、第三者の知的財産を利用する必要があるときは適切なライセンスを取得するよう努めています。しかしながら、第三者が保有している知的財産権については、当社グループが当該知的財産のライセンスを取得できないこと、取得していたライセンスが継続できないこと、又は不利な条件でライセンスを取得及び継続せざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産に関して訴訟等を提起されることがあり得ます。当該訴訟等には、多額の費用及び経営資源が費やされることがあり得ます。また、当該訴訟等において当社グループの主張が認められない場合には、当社グループが特定の技術等を利用できなくなることや損害賠償責任を負う可能性があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

その他の法的規制等による不利益及び法的責任

当社グループは、日本及び諸外国・地域の規制に従って事業を行っています。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、製造物責任、環境保護、消費者保護、労使関係、金融取引、内部統制及び事業者への課税に関する法規制に加え、事業及び投資を行うために必要とされる政府の許認可、電気通信事業及び電気製品の安全性に関する法規制、国の安全保障に関する法規制及び輸出入に関する法規制等があります。より厳格な法規制が導入されたり、当局の法令解釈が従来よりも厳しくなったりすることにより、技術的観点や経済的観点等から当社グループがこれらの法規制に従うことが困難となり、事業の継続が困難と判断される場合には、当社グループの事業は制限を受けることになります。また、これらの法規制等を順守するために当社グループの費用が増加する可能性があります。さらに、当社グループがこれらの法規制等に違反し、又は法令遵守のための内部統制体制が不十分であったと当局が発見又は判断した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性があります。

 

(5) 災害・事故等に関するリスク

a.災害・事故等一般に共通するリスク

当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。地震、津波、洪水等の自然災害(気候変動によって発生するものも含む)や火災・爆発事故、戦争、テロ行為、感染症の流行等が発生した場合に、当社グループの拠点の従業員、設備、情報システム等が大きな損害を被り、その一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延する可能性及び損害を被った設備等の修復費用が発生する可能性があります。加えて、これらの災害・事故等が、部品等の供給業者や製品納入先等といった当社グループのサプライチェーンにおいて発生した場合には、供給業者からの部品等の供給不足・中断、製品納入先における生産活動の休止又は低下等により当社グループの生産活動・販売活動等が大きな悪影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、こうしたリスクを低減するため、サプライチェーンも含めたBCP(事業継続計画)の見直しを定期的に実施しています。また、「グループ緊急対策規程」を制定し、緊急事態発生時に速やかに対応できるよう、対応方針、組織体制やそれぞれの機能の役割等を具体的に規定しています。2022年度は、「事業継続マネジメント(BCM)ガイドライン」の改定を行い、内閣府の南海トラフ地震及び首都圏直下型地震の最新の被害想定並びにそれに対応した防災・減災対策を織り込むとともに、調達、物流、IT等それぞれの機能におけるBCPとの連携を明確化するなど、実効性向上に努めています。

 

b.自然災害

 自然災害については、平時における備えを強化するとともに、緊急事態時には迅速に緊急対応体制に移行できるよう、当社グループ全体で「防火・防災対策委員会」を設置しています。「防火・防災対策委員会」では、地震、津波、洪水の分科会を設置し、災害別の対策強化を図っています。特に、過去の災害時には電力需給のひっ迫が生じたことも踏まえ、事業継続のための非常用電源設備等をBCPに取り入れています。さらに、毎年緊急時を想定した訓練を実施し、グループ緊急対策本部における対応や事業会社緊急対策本部との連携を確認しています。2023年1月には南海トラフ地震を想定したグループ防災訓練を実施しました。災害の被害が甚大であるために、グループ緊急対策本部メンバーの参集が難しいという想定に従って、公共交通機関を使わずに参集可能な「近隣メンバー」によりグループ緊急対策本部を立ち上げる想定での訓練を実施しました。

 さらに、当社グループは、リスクマネジメントの取り組みの一環として、災害・事故等の中でも当社グループの事業への影響が甚大であると想定される南海トラフ地震、首都圏直下地震をストレス事象とし、その影響分析を実施しています。当社グループでは、分析結果に基づき必要な対策の強化を図るとともに、当社グループにおける適切なリスク認識の構築、リスクコミュニケーションの強化に取り組んでまいります。

 

c.感染症リスク

2022年度は、新型コロナウイルス感染症による当社グループ全体への大きな悪影響は発生しませんでした。本感染症については国内外での制限緩和が進み、国内でも感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上の「5類感染症」へ移行しました。これに伴い当社グループにおいても、基本的な感染対策は継続しつつも行動制限等については順次緩和しています。

これまで当社グループは、新型コロナウイルス感染症について前述の「グループ緊急対策規程」に基づき2020年1月に全社緊急対策本部を発足、社員の人命・健康の安全確保を最優先とし、各事業会社の対策本部と連携を図りながら、経営、調達、広報等の各機能が対策本部下において課題への対応を行いました。現時点では、感染状況の収束に伴って緊急対応から平時対応の体制へと移行しています。一方で、今後も本感染症に係る対策や行動制限の緩和による市中感染の増加や変異株の発生、本感染症以外の新たなパンデミックの発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。引き続き国内外の感染状況や各国の行政の動向を注視し、適切に対応していきます。

また、当社グループでは、感染症全般に対する平時における備えとして、各事業会社における感染症版BCPの策定及びマスクや消毒用アルコール、体温計等の適切な備蓄確保を推進することにより、全従業員の健康・安全及び事業継続体制の維持に取り組んでいます。

 

d.テロ・戦争・暴動・政情不安

当社グループが拠点を有する国・地域における政情不安、軍事的緊張が顕在化した場合やテロ・暴動が発生した場合は、事業継続への支障が生じ、事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。ロシア・ウクライナ情勢に関しては、現時点では、当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微と見込んでいますが、東アジア地域の政情が不安定化した場合は、当社グループに甚大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、人命を最優先とした有事対応の強化のため、地政学リスク対応も踏まえたBCPの整備や各機能による平時の安全対策の取り組みを進めています。
 

 

(6) その他のリスク

非金融資産の減損

 当社グループは、有形固定資産、のれん、無形資産及び使用権資産等、多くの非金融資産を保有しています。非金融資産(棚卸資産及び繰延税金資産等を除く)については、当該資産又は資金生成単位(以下、「当該資産」)の減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がある場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。なお、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎期減損テストを実施しています。減損テストの結果、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識する可能性があります。

 

退職給付に係る負債

 当社グループは、一定の受給資格を満たす日本国内の従業員について外部積立による退職年金制度を設けています。当社及び一部の国内子会社は、確定給付年金制度から、各々の移行日以降の積立分(将来分)及び移行日以前の積立分(過去分)の一部について確定拠出年金制度へ移行していますが、確定拠出年金制度に移行していない部分については、今後も金利の低下により確定給付制度債務に関する割引率を引き下げる必要が生じる可能性や、株価の下落により制度資産の公正価値の減少をもたらす可能性があり、その結果、退職給付に係る負債が増加し、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。

 

繰延税金資産の認識

当社グループは、繰延税金資産について、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。認識された繰延税金資産については、期末日に見直しており、税務便益が実現する可能性が高くなくなった部分を減額することにより、法人所得税費用が増加する可能性があります。

 

持分法適用会社の業績・財政状態

当社は、複数の持分法適用会社の株式を保有しています。各社は各々の事業及び財務に関する方針のもとで経営を行っており、当社はその方針決定に関与することができる重要な影響力を有していますが、支配には至らないため、通常、方針そのものの決定は行いません。これらの持分法適用会社の業績・財政状態の悪化により、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。

重要な会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表の注記「3.重要な会計方針」に記載しています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。

なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

2022年度の世界経済は、ウクライナ情勢、上海ロックダウン、原材料価格の高止まり、部材不足、インフレや金利の上昇などの下押し影響を受け、減速しました。日本においては、急速な為替変動なども景気の下押し要因となりました。

当社は2022年4月1日より、持株会社と事業会社からなる新しいグループ体制に移行しましたが、このような経営環境のもと、2022年度は各事業会社の自主責任経営を徹底し、競争力強化の取り組みを進めるとともに、中長期戦略の初年度として立案した戦略を実行してきました。

競争力強化については、PX(Panasonic Transformation)の取り組みとして、データドリブン経営のための基盤構築が進展しています。現場革新の取り組みでは、各事業会社の代表拠点を中心にサプライチェーン全体のオペレーション力強化が進んでいます。

また、グループ長期環境ビジョンであるPanasonic GREEN IMPACTの実現に向けた3つの成長領域において、パナソニック コネクト㈱が展開するサプライチェーンマネジメント事業では、その事業特性・市場環境を考慮し、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適と判断し、それに向けた準備を開始することを2022年5月に決定しました。また、パナソニック エナジー㈱が展開する車載電池事業では、7月に、車載電池工場の建設計画に関し米国カンザス州より投資誘致補助金制度「Attracting Powerful Economic Expansion」の申請が承認され、10月に当社取締役会にて同工場の建設を決定しました。さらに、パナソニック㈱が展開し欧州で需要が拡大しているヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下、「A2W」))事業では、生産体制強化に向けたチェコ工場への投資を9月に発表し、また、スウェーデンの大手空質空調機器メーカーであるSystemair ABの業務用空調事業を2023年2月に買収しました。

 

①売上高

当年度の連結売上高は、8兆3,789億円(前年度比13%増)となりました。半導体不足による生産・販売への影響などはありましたが、A2Wや、自動車生産の回復を受けた車載機器、車載電池などの販売増に加え、Blue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)の新規連結や為替換算の影響もあり、増収となりました。

 

②営業利益

営業利益は、2,886億円(前年度比19%減)となりました。原材料価格高騰や固定費増加などの影響を、増販益や価格改定などの取り組みでカバーできず、前年の一時益の反動などもあり、減益となりました。

 

③税引前利益

金融収益は490億円(前年度221億円)、金融費用は211億円(前年度193億円)となりました。この結果、税引前利益は、3,164億円(前年度3,604億円)となりました。

 

④親会社の所有者に帰属する当期純利益

法人所得税費用は、359億円(前年度950億円)となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、2,655億円(前年度2,553億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、113円75銭(前年度109円41銭)となりました。

 

⑤セグメントの経営成績

当社グループは、経営管理上、事業の成果を「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しています。

なお、2022年4月1日付の再編に伴い、2021年度のセグメント情報については2022年度の形態に合わせて組み替えて算出しています

 

a くらし事業

 当セグメントの売上高は、前年度比で10%増加し、3兆4,833億円となりました。

 当年度は、国内は家電事業が減収となりましたが、欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)や北米のショーケース、海外電材事業などが好調に推移し、為替換算の影響もあり、全体では増収となりました。

 主な分社の状況は、くらしアプライアンス社では、グローバルでの需要減速、国内での競争激化、上海ロックダウンの影響を受けましたが、価格改定や為替換算の影響もあり全体では増収となりました。

 空質空調社では、国内のルームエアコンの需要減はありましたが、欧州のA2Wが好調に推移し、増収となりました。

 コールドチェーンソリューションズ社では、北米のショーケースが堅調に推移し、増収となりました。

 エレクトリックワークス社では、海外を中心とした電設資材の販売が好調に推移し、価格改定の効果もあり、増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、1,031億円となりました。重点事業の欧州空調、国内・海外電材、北米ショーケースでの増販益はありましたが、国内家電が価格改定等の効果はあるものの減販影響をカバーしきれず、また、空質空調社でのリコール費用などの影響もあり、前年度から51億円の減益となりました。

 

b オートモーティブ

 当セグメントの売上高は、前年度比で22%増加し、1兆2,975億円となりました。

 当年度は、新型コロナウイルス感染症の影響や、世界的な車載半導体および部材のひっ迫が継続していることなどにより、自動車生産が当年度年初の見通しに比べて減少し、当セグメント売上高への影響がありました。しかしながら、前年度からは自動車生産が回復、また為替換算の影響や、新たな領域の製品やサービス事業などに取り組んだこともあり、車載コックピットシステム事業、車載エレクトロニクス事業ともに増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、162億円となりました。車載半導体などの部材ひっ迫による価格の高騰、増産などに伴う固定費増加の影響、また円安によるマイナス影響などがありました。しかしながら、増販益に加えて、部材価格の高騰や為替影響に対する価格改定、コストダウン、またオペレーション力強化などの取り組み効果があり、上期は固定費増加や部材価格の高騰影響などにより赤字だったものの、下期は販売回復とともに黒字化、上期から大きく利益を伸ばしました。セグメント全体では、前年度から148億円の増益となりました。

 

c コネクト

 当セグメントの売上高は、前年度比で22%増加し、1兆1,257億円となりました。

 当年度は、パソコン・スマートフォン関連の投資減速により、実装機が影響を受けましたが、アビオニクス事業や海外向け堅牢モバイル端末事業が伸長したことに加え、Blue Yonderの連結化もあり、増収となりました。

 主な事業部の状況は、モバイルソリューションズ事業部では、海外向け堅牢モバイル端末や国内向けノートパソコンが好調に推移したことで、増収となりました。

 プロセスオートメーション事業部では、溶接機は需要が堅調に推移し増収も、中国での新型コロナウイルス感染症拡大などによる顧客のパソコン・スマートフォン関連投資減速の影響を受けた実装機が低調に推移し、全体では減収となりました。

 メディアエンターテインメント事業部では、欧州や中国の市況は低迷したものの、米国のプロジェクター需要が堅調に推移したことで、増収となりました。

 パナソニック アビオニクス㈱では、世界的な旅客需要の回復、航空会社の財務改善による投資の再開などにより、機内エンターテインメント・通信システムおよび機体メンテナンス・リペアサービスがともに好調に推移し、増収となりました。

 Blue Yonderでは、欧米での景気不透明感に伴う投資先送りの影響があるものの、着実なSaaS(注)受注推進でリカーリング販売が堅調に成長し、増収となりました。

 当セグメントの営業利益は、209億円となりました。アビオニクス事業などの増販益はありましたが、前年度に一時益を計上したこともあり、前年度から319億円の減益となりました。

 

(注) SaaS:Software as a Serviceの略。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが必要な機能を利用できるサービス

 

d インダストリー

 当セグメントの売上高は、前年度比で2%増加し、1兆1,499億円となりました。

 当年度は、ICT(情報通信)端末市場、環境車を除く自動車市場、および中国FA市場の低迷に加え、半導体事業譲渡に伴う商流変更の影響がありましたが、為替換算の影響もあり全体では増収となりました。

 主な事業の状況は、制御機器事業では、電源や産業用リレーなどが好調に推移した他、価格改定もあり、増収となりました。

 FAソリューション事業では、産業用モーター等の拡販を継続的に行ったものの、半導体や一般産業分野での投資意欲減退による中国FA市場減速の影響を受け、減収となりました。

 電子デバイス事業では、ICT端末市場において、ノートパソコンの生産台数が大幅に下振れしたことによる減販があったものの、継続的な環境車用コンデンサーの需要拡大による増販や価格改定および為替換算の影響により増収となりました。

 電子材料事業では、価格改定および為替換算の影響もあった一方で、半導体市況低迷の影響を受け、減収となりました。

 当セグメントの営業利益は、668億円となりました。原材料価格の高騰による影響を価格改定や合理化でカバーし、円安効果もあった一方で、急速な市況悪化に伴う減販損により、前年度から164億円の減益となりました。

 

e エナジー

 当セグメントの売上高は、前年度比で26%増加し、9,718億円となりました。

 当年度は、世界的に旺盛な電気自動車の需要拡大が継続し、北米を中心に車載電池の販売が好調に推移したことに加え、為替換算の影響もあり、増収となりました。

 主な事業の状況は、車載事業では、各国の政策を通じた脱炭素化への要求の高まりなどから、旺盛な電気自動車需要が継続しました。加えて、北米電池工場の生産性向上も寄与したことで、車載用リチウムイオン電池の販売が好調に推移し、増収となりました。

 産業・民生事業では、中国の新型コロナウイルス感染症対策や世界的なインフレ進行による市況悪化の影響で、特に下期以降、ICT・動力など民生機器向けリチウムイオン電池の需要が急減し、BtoB向けリチウム一次電池も世界的な需要減の影響を受けましたが、為替換算の影響により増収を確保しました。

 当セグメントの営業利益は、332億円となりました。円安効果はありましたが、産業・民生事業の減販損に加え、原材料価格高騰の影響や将来の成長に向けた開発費などの固定費増加もあり、前年度から336億円の減益となりました。

 

f その他(報告セグメントに含まれない事業)

 その他の事業については、ハウジングが堅調に推移し、売上高は、1兆1,994億円(前年度比3%増)、営業利益は、前年度に比べ増益の567億円(前年度比51%増)となりました。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3.事業等のリスク」に記載しています。

 

(5)財政状態及び流動性

①流動性と資金の源泉

 当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。

 

(資金)

 当年度末の現金及び現金同等物の残高は8,195億円となり、前年度末に比べ3,864億円減少しました。2022年4月1日の持株会社化に伴う吸収分割実施にあたり、金融機関から3,000億円の借入を2022年3月31日に実施しましたが、当該借入は各事業会社へ借入債務として分割継承されたうえで、2022年4月1日に全額の返済を完了しました。加えて、2022年7月に米ドル建無担保普通社債10億米ドル(2019年7月発行)を償還しました。

 これらの結果、当年度末の円建無担保普通社債の残高は6,000億円、円建無担保ハイブリッド社債(劣後特約付社債)(注)の残高は4,000億円、米ドル建無担保普通社債の残高は15億米ドルとなりました。

(注)ハイブリッド社債(劣後特約付社債):資本と負債の中間的性質を持ち、利息の任意繰延、超長期の償還期限、清算手続き及び倒産手続きにおける劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有した社債

 

(有利子負債)

 有利子負債は、金融機関からの借入の返済や、米ドル建無担保普通社債の償還等を行ったため、前年度末の1兆8,973億円から当年度末には1兆4,571億円へと減少しました。なお、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2021年6月に複数の取引銀行と期間を3年間とするコミットメントライン契約(注)を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額6,000億円ですが、借入実績はありません。

(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約

 

(格付け)

 当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。

 R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期)

 S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期)

 ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:安定的)

 

②キャッシュ・フロー

 当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。

 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,207億円、投資活動により減少したキャッシュ・フローは3,440億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、1,767億円(前年差7,202億円の良化)となりました。

 なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,207億円(前年度は2,526億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、棚卸資産増減および営業債権増減の良化や、法人所得税の支払額の減少などによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により減少したキャッシュ・フローは3,440億円(前年度は7,961億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、設備投資の増加や資産売却収入の減少はありましたが、前年度にBlue Yonderの子会社化に係る支出があったことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により減少したキャッシュ・フローは6,070億円(前年度は589億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、前年度末に新体制への移行に伴う一時的な借入を実施し、当年度に返済したことなどによるものです。

 

 これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は8,195億円となり、前年度末に比べ3,864億円減少しました。

 

③設備投資額と減価償却費

 当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の2,371億円から720億円増加し、3,091億円となりました。主要な設備投資は、「くらし事業」における家庭用電化機器・電設資材等の生産設備、「エナジー」における車載用のリチウムイオン電池(日本・米国)等の生産設備、「インダストリー」における電子部品・制御機器等の生産設備、「オートモーティブ」における車載機器等の生産設備、「コネクト」におけるB2Bソリューション事業関連機器等の生産設備です。

 減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の1,809億円から157億円増加し、1,966億円となりました。

 

④資産、負債及び資本

 当年度末の総資産は8兆595億円となり、前年度末に比べ359億円の増加となりました。これは主に、前年度末の一時的な借入の返済などによる現金及び現金同等物の減少はありましたが、棚卸資産の増加や円安による為替変動の影響などによるものです。

 負債は、前年度末に比べ4,068億円減少し、4兆2,696億円となりました。これは、主に一時的な借入の返済などによるものです。

 親会社の所有者に帰属する持分は3兆6,184億円となり、前年度末に比べ4,534億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益およびその他の包括利益の計上などによるものです。また、非支配持分を加味した資本合計は3兆7,900億円となりました。

 この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の39.4%から増加し、44.9%となりました。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

クロスライセンス契約

相手先

国名

契約の内容

契約期間

Koninklijke Philips Electronics N.V.

オランダ

携帯電話・AV製品に関する特許実施の相互許諾

自 2007年3月

至 特許満了日

 

6【研究開発活動】

当社グループは、成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、一人ひとりのくらしや社会の持続可能(サステナブル)な発展とともに心身が豊かな状態(ウェルビーイング)を目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,698億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,398億円、「オートモーティブ」999億円、「コネクト」1,088億円、「インダストリー」606億円、「エナジー」251億円です。

 

各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。

(1) くらし事業

 主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。

主な成果としては、以下のとおりです。

・自然冷媒(R290)に対応したヒートポンプ技術を開発

 フロン類に比べて、はるかに温室効果の低い冷媒であるR290(プロパンガス)を用いた冷凍サイクルを開発するとともに、冷媒が可燃性であることを考慮し、冷媒自体を室外に配置することで、万が一冷媒が漏れた場合でも、お客様のいる室内への被害を発生させず、室外機中の電気部品に冷媒が接触しない密閉構造により、室外での発火リスクも最小限にしたヒートポンプシステムを新たに開発しました。

 熱を運ぶ役割を担う冷媒は、これまで地球温暖化やオゾン層破壊への影響が大きいことが指摘されてきましたが、本技術により、低環境負荷な自然冷媒への切り替えが可能となりました。

 今後も、技術開発を通じて地球温暖化対策に貢献してまいります。

・電気自動車と蓄電池の連携で、より多くの太陽光発電を家庭内で有効活用できる住宅用V2H(自動車から家へ)蓄電システムを開発

 業界初となる電気自動車と蓄電池による同時充放電を実現し、より多くの太陽光発電の電気を家庭内で自家消費することが可能な技術を開発しました。家庭内のさまざまな家電や住宅設備機器をつなぐHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連携すれば、日々の電力使用量と翌日の日射量予報を元に余剰電力量を予測し、蓄電池の充放電を自動制御することで、自家消費効果を従来の約50%から約90%に大きく向上させ、CO排出量では年間1.0トンの削減向上に貢献します。また、停電発生時でも業界トップクラスの自立出力6kVAに対応することで、温かい食事や快適な空調環境で普段に近いくらしをご提供します。

 今後も、エネルギーソリューションの提供を通して、快適で豊かなくらしの実現に貢献してまいります。

 

(2) オートモーティブ

 主に車載向けのコックピットシステム、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、先進運転支援システム(ADAS)などの研究開発を行っています。

 主な成果としては、以下のとおりです。

・車の次世代コックピットシステム向け仮想化セキュリティソリューションを開発

 家電・モバイルなどで培ったセキュリティ組み込み技術を車の領域に展開し、次世代コックピットシステムへのサイバー攻撃に対抗する仮想化セキュリティソリューションを開発しました。次世代コックピットシステムでは、複数ECU(電子制御ユニット)の搭載機能を一つのECUへ集約、車両制御機能なども統合され、新たなセキュリティリスクが生まれます。高い堅牢性と拡張性を有する本ソリューションを、仮想化プラットフォームへ適用し、プラットフォーム上の機能間の通信を監視することで、不正アクセスやサイバー攻撃へのセキュリティ対策を可能にします。

 日米欧の特許分析の結果、当社は、この領域の技術力において圧倒的な優位性が示されており、今後も業界のセキュリティレベルの強化に貢献するとともに、安全・安心なモビリティ社会の発展に寄与してまいります。

・コックピットHPC(ハイパフォーマンス・コンピュータ)プラットフォームを開発

 車のSDV(ソフトウェア定義型自動車)化におけるソフトウエアシステムアーキテクチャの革新に向け、当社は車の電子プラットフォームの進化に重要な仮想化技術を確立しました。次世代CDC(コックピット・ドメイン・コントローラー)/統合システム(HPC)のプラットフォームを実現するとともに、その技術進化を支えるエコシステム構築のための標準化活動で業界を牽引しています。また、SDV化によるヒューマンインターフェースの革新に向け、シニア層への運転支援機能や、画像・音を適切な状態でドライバーへ提供する機能も開発しました。このような技術を用いて、よりエンドユーザに寄り添った安全でわかりやすい豊かなUX(ユーザエクスペリエンス)開発を進めます。

 今後も、車室空間の進化に必要となる基盤技術を確立し、SDV化の進展に貢献してまいります。

 

(3) コネクト

 主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。

主な成果としては、以下のとおりです。

・小売店の「ロボットフレンドリーな環境」の実現に向けた新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の商品情報データベースの研究開発に参画

 NEDOが実施する、ロボットが人工知能を活用して効率的に商品画像を認識し、小売店における入荷検品・棚卸しや商品の陳列、決済などを自動化するための商品情報データベースを構築する技術開発事業に参画しました。事業内容は入荷検品などに必要な学習用の商品画像データの他、ロボットが形状などに応じて商品を適切に把持するために必要な動作支援用の画像データを、重量などの商品の各種基礎データとひもづけて、小売店やメーカー、卸業者などの各事業者で共有するための仕組み作りになります。この中で、当社は商品画像・データを生成する撮像・計測装置試作開発、関連ソフトウェア・データベースの構築、またそれらを活用した実証実験を進め、各事業者における現場課題解決に取り組みます。

 今後も、食品や日用品などを対象としたデータベースを整備し、継続的に更新・運用する仕組みを構築することで、ロボットの活用を早期に実現することを目指してまいります。

・米国国立標準技術研究所(NIST)の顔認証ベンチマークテストで世界1位の評価を獲得

 Vision Transformerと呼ばれる最新のディープラーニングに独自改良を加え、経年変化・顔の向き・照明変動といった厳しい環境下で高精度に顔認証できる技術を開発しました。これにより、NISTが実施する顔認証ベンチマークテスト(NIST FRVT 1:1)において、経年変化を含む評価データで本人認証時のエラー率(本人拒否率)0.206%を達成し、世界1位の評価を獲得しました。また、顔の向き・照明変動を含む評価データにおいても世界最高水準の評価を得ました。これにより、当社の顔認証技術は本人確認で求められる厳格性と入退管理で求められるユーザビリティとを兼ね備えた現場に強い技術であることが認められました。

 今後は、カメラ画像利活用におけるプライバシー配慮や個人情報保護の知見を生かしながら、より安全・安心な技術を開発し、お客様やパートナー企業との共創で、社会の課題解決や新しい価値創造に貢献してまいります。

 

(4) インダストリー

 主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。

主な成果としては、以下のとおりです。

・人工嗅覚センサ-を用いた呼気による個人認証技術の原理実証を産学官連携で成功

 開発中の人工嗅覚センサ-を用いて人間の呼気をセンシングし、得られたデータ-を人工知能で分析することにより、被験者20人に対する個人認証技術の原理実証に正答率97%の高い精度で成功しました。本研究成果は東京大学、九州大学、名古屋大学との共同研究で、科学技術振興機構が支援したものです。

 この方法は、種類が膨大で、かつ本人以外に再現困難な呼気分子群の化学情報を利用するため、偽造やなりすましが極めて困難な生体認証技術の実現に繋がると期待されています。

・アルミニウム比270分の1の超軽量電磁波遮蔽材料の共同研究を産学官連携で開始

 航空宇宙分野における人工衛星・探査機などの宇宙機やドローン・eVTOL(電動垂直離着陸機)などの電動航空機の軽量化と電磁波策の両立が求められる中、カーボンナノチューブを用いた超軽量材料と、当社が保有する熱硬化性樹脂の配合設計の組合せにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウムの270分の1の軽さ(かさ密度0.01g/cm3レベル)を実現しながら同等の電磁波遮蔽性能を有する「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の開発を開始しました。この新材料は材料組成を変更することで遮蔽電磁波の周波数帯域設定も可能で、今後、航空宇宙分野や次世代高速通信分野などに使用される様々な機器への採用が期待されており、2024年の実用化を目指しています。

 なお、本研究は名古屋大学、山形大学、秋田大学とともに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で実施しています。

 

(5) エナジー

 主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。

主な成果としては、以下のとおりです。

・コバルトフリー電極材料やリサイクル材料の利活用技術で環境負荷低減と高性能・高信頼性を両立させるリチウムイオン電池を開発

 材料インフォマティクスを最大活用し、レアメタルであるコバルトを使用しない正極材料としたコバルトフリー電池を開発しました。レアメタルは鉱物中に含まれる量が少ないため、精製の際により多くのCO2を排出します。このためレアメタル使用の削減は、レアメタルそのものの省資源化に加え、CO2削減にも大きく寄与します。

 また、正極材や銅箔にはリサイクル材料の活用で原料精製時のCO2を削減、加えて工場のカーボンニュートラル化にも取り組み、脱炭素社会の実現に大きく貢献してまいります。

 

(6) その他

エンターテインメント&コミュニケーション

 主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。

主な成果としては、以下のとおりです。

・石膏ボードの壁にもスッキリ掛けられるウォールフィットテレビの開発

 これまでのテレビの構造を見直す事で、ディスプレイ部の薄型化と軽量化を実現するデザインに進化させるとともに、石膏ボードの壁に細いピンで固定可能な専用金具を新たに開発。当社独自の4K放送無線伝送技術を活用し、ディスプレイ部とチューナー部を分離し、部屋内のアンテナ取り出し口の位置に縛られることなく、壁とディスプレイが一体となったスタイリッシュな壁掛け設置が可能なテレビを実現しました。

 今後も、映像・音響・通信の技術で、人々に新しい「感動と安らぎ」を提供してまいります。

 

ハウジングシステム

 主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。

 主な成果としては、以下のとおりです。

・業界初の植物油脂由来塗料を採用したリサイクル木材活用の床材「サステナブルフロアーTM」を開発

 近年、ウッドショックや国際情勢による基材の入手困難、森林破壊などさまざまな課題を抱えている中、家屋解体の際に出る廃材や森林の未利用材などをリサイクル材として再利用し、2007年より業界に先駆けて床材に採用してきました。今回、施工性向上のための床材構造技術を新たに開発。塗料メーカーとも協業し、バイオマスマークを取得した植物油脂由来の塗料を業界で初めて床材表面に採用しました。この床材で1坪当たり約38kgの炭素を貯蔵(CO2換算)できます。

 今後も、こうした環境配慮型製品を市場に投入してまいります。

 

技術部門

 主に技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術開発などを行っています。

 主な成果としては、以下のとおりです。

・完全生分解性のセルロースファイバー成形材料を開発

 植物由来のポリ乳酸を含む複数の生分解性樹脂を適正な添加剤を加えブレンド、これにセルロースファイバーを高濃度添加することで、1mmの薄肉成形と高弾性率を両立する完全生分解性成形材料を開発しました。また、着色自由性が高い白色の樹脂ペレット化にも成功、素材そのものを褐色化させることで、木目調のようなデザイン性の高い表現も可能です。

 今後も、本成形材料の特徴である高強度とデザイン性を活かし、さまざまな商品の外装・部材などへの展開を進め、持続可能社会の実現に貢献してまいります。

・AI・ロボティクス分野のトップカンファレンスに最先端の研究開発成果が採択

 当社では、くらしや社会課題の解決を目指し開発した、先進AI技術の研究成果について、分野発展への貢献とともに、技術を客観的に評価するため、積極的に学会・論文誌へ投稿しています。昨年度は、AI・コンピュータ-ビジョンのトップ国際会議 ECCV(European Conference on Computer Vision)2022、およびロボティクスのトップ国際会議 IROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems)2022に、5つの研究開発成果をはじめ多くのテーマが採択されました。

 今後も、こうした対外発表や、製品やサービスへの技術適用を通じて、お客様の幸せに貢献してまいります。