第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

横河ブリッジホールディングスグループは、「社会公共への奉仕と健全経営」の理念のもと、誠実なモノづくりを行い、良質で安全な社会インフラの整備等を通じて社会に貢献してまいります。また、当社グループが有する豊富な人材と高い技術力を活かし、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現させることで、ステークホルダーからの信頼を獲得してまいります。さらに、企業活動を進めるにあたっては良き企業市民としての自覚を持ち、法令や社会規範等を遵守するとともに、働く人々が信頼感で結ばれ、安全で安心して生活できる企業づくりに努めてまいります。

(2)経営環境

橋梁事業につきましては、新設橋梁の発注量は伸び悩んでおりますが、高速道路の大規模更新・大規模修繕に加え、国土強靭化対策や大阪湾岸道路西伸部などが今後の需要として見込まれます。土木関連事業につきましては、リニア中央新幹線などの大型プロジェクトが見込まれます。システム建築事業につきましては、経済の正常化やサプライチェーンの国内回帰、在来工法からのシフトにより需要が見込まれると想定しております。

(3)会社の優先的に対処すべき課題、中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標

当社グループは、2022年度を初年度とする第6次中期経営計画(2022年度から2024年度まで)を策定し、最終年度の数値目標を売上高1,870億円、営業利益183億円、1株当たり当期純利益290円といたしました。当期の業績は概ね順調に推移しており、目標達成に向けて各事業別課題への取り組みを継続してまいります。

(橋梁事業)

新設橋梁の発注量は横這いを見込んでおりますが、引き続き技術提案力や工事成績の向上に注力するとともに、保全事業への対応強化により事業の拡大に努めてまいります。

(エンジニアリング関連事業(システム建築事業))

サプライチェーンの国内回帰や輸送業界の2024年問題による工場・倉庫の需要を取り込むことに加え、店舗・事務所への取り組み強化により、中期経営計画最終年度の目標達成に向け受注の拡大を図ってまいります。また、弾力的な価格設定やICT技術の活用によるDX推進を通じた受注・生産の拡大ならびにコスト縮減を図りながら、利益の確保に努めてまいります。

また、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から、当社グループとして優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定し、持続可能な社会の実現に向けた社会的課題の解決に積極的に取り組んでまいります。喫緊の課題といたしまして、2024年度より適用されます時間外労働の上限規制につきましては、現場業務の効率化や生産性の向上により適切に対応し、働き方改革を進めてまいります。

なお、当社グループの経営上の最大のリスクは重大事故の発生であり、現場工事の安全確保につきましては引き続き最重要課題として取り組んでまいります。安全性・施工性の向上に寄与する架設機材の開発、保有機材の改良、ICT技術の活用に関する研究開発を推進します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

① 基本的な考え方

 当社グループは、「社会公共への奉仕と健全経営」という企業理念のもと、経営ビジョンとして「長期的な橋守り」「多角的な鋼構造エンジニアリング」「強靭な社会環境づくりと自然環境との共生」「強固な経営基盤の構築」の実現と持続的な拡大を目指しています。本ビジョンに基づき、良質な製品をつくり、守り、次世代につなぐことで社会の発展に貢献することをサステナビリティの基本的な方針とします。

 社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ課題の解決に対し、リスクの減少のみならず、新たな収益機会にもつながると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、積極的かつ能動的に取り組みます。

② サステナビリティの推進体制

 気候変動への対応を含むサステナビリティならびにESGに関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートガバナンスの方針・戦略に関する議案は、取締役会の諮問機関として設置された「サステナビリティ委員会」で検討を行い、重要な方針や施策については経営会議での審議を経て、取締役会へ報告され、審議・決定がなされます。

 同委員会の下部組織である「サステナビリティワーキンググループ」は、決定された方針や施策を事業活動に落とし込み、各事業会社や客先・取引先と連携・協力しながら具体的な取り組みを推進しています。

 

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 サステナビリティ委員会の構成と実績

構成メンバー

委員長

主要な事業会社の執行役員

委員

監査役、事業会社執行役員・幹部社員

2022年度活動

3回

・マテリアリティ(重要課題)の特定とKPI設定について

・CO₂排出量算定(スコープ1・2・3)と削減について

・TCFD開示対応                   など

 

 

 

(2)戦略

① マテリアリティ(重要課題)と施策

 当社グループでは、サステナビリティ課題のうち、当社グループとして優先的に取り組むべきものをマテリアリティとして特定し、中期経営計画に反映させています。マテリアリティの特定については、サステナビリティ委員会で審議を行い、取締役会で承認とモニタリングを行います。また、個別のサステナビリティ課題についての目標と取り組みの進捗状況については、取締役会がモニタリングを行います。

 「第6次中期経営計画」においては、「100年先を見据えた強固な経営基盤を確立する」を基本方針の1つとして掲げ、DX戦略、技術戦略、人材戦略を考慮してESGそれぞれについてマテリアリティを設定しました。

 

マテリアリティ

施策

気候変動や自然災害による物理的リスクへの対応

事業継続可能な体制構築

事業活動での環境負荷の低減

災害に強い製品開発の要望への対応

被害の低減に資する製品、工法の開発

国土強靭化へ向けた更新サービスやメンテナンス要望への対応

道路ネットワークの整備、保全および更新に係る技術、製品の開発

製品の安定供給

生産と施工体制の強化

品質の確保

品質不適合の再発防止

災害復旧支援

迅速な支援体制の強化

労働安全衛生の確保

重大災害の徹底的な防止

グローバルな健康課題への対応

感染症対策と健康づくりの環境整備

優秀な人材の獲得とダイバーシティの推進

採用広報活動の推進

多種多様な人材の活用

タレントマネジメントの充実

自律的なキャリア構築の支援

労働生産性の向上

ICTを基軸とした技術の活用と業務プロセスの改善

従業員やパートナー、サプライヤーの人権尊重

相互尊重の徹底

過重労働の防止とワークライフバランスの推進・同一価値労働同一報酬

着実な時短推進と休暇取得の促進

適切な待遇の堅持

公正な取引活動と腐敗防止

法令遵守と取引の記録管理の徹底、コーポレートガバナンス、リスクマネジメントの徹底

情報セキュリティ管理

企業秘密漏洩の防止

 

 マテリアリティ特定のプロセス

  1. 検討すべきマテリアリティ候補項目の洗い出し

  2. マテリアリティ候補項目の優先順位づけ・重みづけ

  3. サステナビリティ委員会での審議と経営メンバーレビューによるマテリアリティの特定

 

② 気候変動に起因する主なリスク・機会と事業への影響とその対応策

 気候変動が当社グループの事業・財務にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、分析を行いました。分析対象範囲は当社の主要な事業(橋梁、エンジニアリング関連、先端技術)とし、分析対象期間は現在から2050年頃としました。

 当社グループが提供する橋梁やシステム建築では、鋼材やセメント等、製造時に多くのCO₂排出を伴う素材を使用します。また、それら原材料・建築資材の運搬や建設時の重機稼働に伴うCO₂も発生します。加えて、主要顧客である自治体や民間企業からの環境配慮要請も年々強まっていることから、グループ全体で低炭素施工やローメンテナンス製品等の技術開発、鋼材リサイクル率100%の追求等を行っています。

 これらの事業特性から、CO₂排出の規制強化や炭素税導入による鋼材価格の上昇・品薄、慢性的な気温上昇に伴う建設現場の労働生産性の低下、異常気象の増加・激甚化よるサプライチェーン寸断・自社施設損傷等を主なリスクとして特定しました。

 また、機会側面としては、国土強靭化、防災、減災、保全市場の拡大等を特定しました。

 

 

 

分類

リスク・機会と事業への影響

影響を受ける事業(注)1

時間軸(注)2

影響の大きさ

対応策

リスク

低炭素技術導入による鋼材価格の上昇・品薄

橋・エ

長期

・鋼材メーカーの脱炭素技術の開発への協力

・FRPバルサ材や木材、低炭素型コンクリートなどの新素材の当社グループ事業分野への応用

気温上昇による熱中症の増加や作業効率の低下、熱中症対策コスト増

橋・エ

現在

・労働環境と健康管理に関わるICT技術の導入と活用

・溶接作業等のロボット化やICT技術の活用による省人化の推進

・作業場における空調服などの支給

・BCP投資と設備および人員の強化

・BCPの策定とその確実な運用および訓練の継続

・想定外の被災でも早期に復旧が可能な製品と工法の活用

異常気象による調達網への影響、工事が中断または遅延

橋・エ・先

現在

異常気象による自社施設の損傷

橋・エ

現在

機会

国土強靭化、防災、減災、保全市場の拡大

橋・エ

現在

・DXを活用した生産管理システムと営業管理システムの整備による受注拡大および生産拡大への対応

・橋の架け替えや施設移転の需要の的確な把握と技術提案力の強化

・建設DXの推進による災害現場での安全性・施工性の向上に寄与する技術の開発

・津波や高潮による被害を低減する「防災用プレキャスト防潮堤」の提供

・豪雨災害に対する備えである地下河川向けの内水圧対応型トンネルセグメントの提供

・老朽化した道路橋床版の取替工法に関する技術の提供

・アルミ、ステンレス製の維持管理関連製品の提供

・鋼材と木材のハイブリッド製品の提供

・電炉鋼材、低炭素型コンクリート、環境配慮型塗料などの有効な要素技術の応用

・脱炭素型加工機械(電気・水素)の新技術の活用

・プレキャスト化や急速施工法による現場の工期短縮化などの技術開発の推進

(注)1.橋:橋梁事業、エ:エンジニアリング関連事業、先:先端技術事業

    2.時間軸は、現在、短期(2~3年後)、中期(2030年頃)、長期(2050年頃)で検討

 

 

③ 人的資本に関する方針

 a.人材育成方針

 当社グループでは、サステナビリティの基本方針として「良質な製品をつくり、守り、次世代につなぐことで社会の発展に貢献すること」を掲げており、企業運営において最も大切なのは「人」と位置付けております。その上で、会社の持続的な成長と企業価値の向上を実現させるには、多様かつ高度化するニーズに対応できる幅広い経験とスキルを蓄積した人材の育成が極めて重要と考えています。そこで、そうした高い専門性を身に付けるため、多様な従業員一人ひとりが継続的に成長できるように中長期的な観点で育成することを方針とし、以下のような取組を行っております。

 • 企業理念、事業に惹きつけられた新たな人材の獲得

 • 自身の希望を伝えるための自己申告

 • 着実にスキルを積み上げるための体系的な研修

 • スキルを裏打ちする資格取得の推進

 • 広範な業務理解、部門間連携、適材適所の実現を支える人事交流・ジョブローテーション

 b.社内環境整備方針

 当社グループのように「ものづくり」を展開する会社においては、働く人の安心・安全の確保は持続的な企業活動において重要な課題です。また、高い安全意識の積み重ねにより心理的・身体的な安心感が醸成され、部門を越えて協力しやすい風土であることも重要です。そうした風土が品質の高い建造物に繋がり、社会に対して安心・安全を届けることにも波及すると考えています。そのため、働く人の安全と心身の健康を守り、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境を確保することを方針とし、以下のような取組を行っております。

• 継続的な安全面での改善活動

• コンプライアンス、各種ハラスメント研修

• 長時間労働の是正

• 各種休暇制度の充実、利用促進

• ライフイベントを見据えた人事制度・両立支援

• 公平性のある評価制度

 

(3)リスク管理

 マテリアリティを含む事業に関するリスクの洗い出し、対応策の実施・評価・改善は、事業会社から報告された内容について内部統制システムの実効性をモニタリングし、リスク管理部門が全社的な取りまとめや評価を行い、取締役会・監査役会に報告しています。

 気候変動に起因する現在から中長期のリスクの洗い出しと事業への影響の評価はサステナビリティ委員会において実施しています。識別したリスクについては、サステナビリティ委員会と実務を担うサステナビリティワーキンググループとが連携し、対応策を含め検討します。特に重要な課題については取締役会で審議します。

 2023年度からは、多様な経営リスクに対応するために、取締役会の諮問委員会である「コンプライアンス委員会」にリスク管理機能を追加した「コンプライアンス・リスク管理委員会」を新たに設置し、全社的なリスクを把握し、未然予防・早期発見に努めるとともにグループ全体で再発防止策などPDCAを回しながら、さらに実効性を高めたリスク管理体制を構築していく予定です。

 

 

 

(4)指標及び目標

① マテリアリティとKPI

 

マテリアリティ

KPI

2022年度目標

2022年度実績

気候変動や自然災害による物理的リスクへの対応

BCP訓練の実施

年20回以上

20回

災害に強い製品開発の要望への対応

研究開発費

8億円

5億円

国土強靭化へ向けた更新サービスやメンテナンス要望への対応

橋梁保全事業売上高

240億円以上

267億円

製品の安定供給

設備投資額(2022~2024年度合計180億円以上)

34億円

人員体制(2024年度2,150名)

(注)1

2,017名

労働安全衛生の確保

死亡災害件数

0件

0件

グローバルな健康課題への対応

健康経営優良法人の申請

申請

申請→認定

優秀な人材の確保とダイバーシティの推進

年度における採用計画の達成

採用計画55名

達成率100%

採用計画53名

採用58名

達成率109.4%

育休復職率

100%

100%

公正な取引活動と腐敗防止

重大なコンプライアンス違反件数

0件

0件

グループ内部統制システムや監査規程に基づく、グループ各社の全部門での自主監査および、事象の把握と予防・改善措置、再発防止策の実施

年1回

年1回

監査部門の人員体制および内部統制に関する教育の実施率

人員31名

教育実施率100%

人員38名

教育実施率100%

グループの監査役と監査室長の会議の実施

年2回

年2回

情報セキュリティ管理

重大な情報セキュリティ事故件数

0件

0件

災害時のデータ保全に関する訓練の実施

年1回

年1回

  (注)1.持分法適用会社を含む

 

② CO排出量の削減目標

 CO排出削減目標につきましては、2022年5月に「2050年のカーボンニュートラル達成」を気候変動対応の長期目標として公表すると共に、その実現に向けたマイルストーンとして短期・中期のCO排出量削減目標も併せて策定しました。

 これらの目標は、2022年度から開始した第6次中期経営計画(2022年度~2024年度)において「100年先を見据えた強固な経営基盤の確立」を実現するための「経営基盤戦略」の一つとして位置付けており、中期経営計画と併せてグループ全体で強く推進していきます。

 併せて、スコープ3排出量の削減についても、サプライヤーや顧客等の関係者と協力しながら、削減に努めていきます。

 

CO₂排出量削減目標

基準年

目標年

目標

スコープ1・2排出量

2020年度

2024年度

20%削減

2030年度

50%削減

2050年度

カーボンニュートラル

 

CO₂排出実績(t-CO₂)

2020年度

2021年度

2022年度

スコープ1

2,539

4,856

2022年度の実績につきましては当社ウェブサイトにて、2023年9月発行予定の統合報告書の中で公表いたします。

スコープ2

10,779

10,647

スコープ1・2合計

13,318

15,503

スコープ3

332,518

361,007

スコープ1・2・3合計

345,836

376,510

 

③ 人的資本に関する指標及び目標

 当社グループでは、上記において記載した、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

2023年度目標

実績(当連結会計年度)

人材育成

有資格者数(注)1

1,320名

1,244名

資格取得支援実施率

100%

100%

社内環境整備

4日以上休業災害件数(注)2

0件

7件

コンプライアンス、各種ハラスメント研修の実施率

100%

97.1%

定着率(新卒3年目)

100%

90.5%

 (注)1.技術士/一級建築士/1級土木施工管理技士/1級建築施工管理技士/建設業経理士(1・2級)

   2.目標達成のため最新の情報化技術の活用など安全対策の強化を実施してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①事故などの安全上のリスクについて

橋梁に代表される鋼構造物工事の工程は、大きく工場製作、輸送および現場施工に分かれます。各工程とも、製品である製作物が非常に重く大きいため、一旦事故が起きてしまうと重大な影響を受けるリスクを抱えています。万が一事故を起こした場合、事故による直接的な損害に止まらず、当社グループの社会的信用を失墜させるとともに各発注機関からの指名停止措置などの行政処分を受け、受注に重大な影響を与える可能性があります。重大事故の発生を撲滅するために、過去の事故や災害の事例の周知はもとより、作業手順の改善、安全設備の創意工夫、安全装置の二重化、作業監視のシステム化等について継続的に取り組み、安全対策の実効性を高めてまいります。

②公共事業への依存について

当社グループの主力事業である橋梁事業は、その大半が国および地方自治体からの発注で占められているため、社会インフラに関連する政策の大きな変更や財政の急速な悪化などにより、特に今後の新設橋梁の発注量が想定を大きく下回る場合、受注高及び売上高の減少等、業績に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを低減するため、保全事業の対応力強化により新設と合わせた橋梁事業の維持拡大と最適化を図るとともに、トンネルセグメントに代表される土木関連事業等、鋼構造物に関係する事業について多角化を進めてまいります。

また、同時に民需関連事業の拡大を図り、特にシステム建築事業の成長に注力してまいります。

③建築市場の動向によるリスクについて

当社グループの成長の柱であるシステム建築事業は、その大半が民間からの発注で占められているため、国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合には、受注高及び売上高の減少等、業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、販路拡大やコスト縮減などに継続的に取り組んでまいります。

④法的規制によるリスクについて

国内外問わず、建設業法、独占禁止法等の法令に則り事業を行っていますが、それらに違反することとなった場合、刑事罰、行政処分等を受け、受注高及び売上高の減少等、業績に影響を及ぼすリスクが発生する可能性があります。そのようなことがないよう、当社グループはコンプライアンスをグループ経営の根底に据え、適正な事業活動を行うこととしています。

⑤瑕疵に対する対応について

当社グループが施工した鋼構造物に関する瑕疵については、契約に基づく担保責任を負っています。万が一何らかの理由で瑕疵が発見された場合、客先からの瑕疵担保請求のあるなしにかかわらず、危険回避のため応急回復処置に努めるとともに、原因究明・再発防止に注力します。このため瑕疵の状況によっては、多額の手直し費用が発生するリスクを抱えています。そのようなことがないよう、当社グループは公共財産の建設を託された者として、良質な製品を経済的に提供する責任を強く認識するとともに、品質管理などにも細心の注意を払って業務に当たっています。

⑥カントリーリスクについて

当社グループは、ODA(政府開発援助)案件の橋梁事業など、アジアを中心に海外事業を展開しています。また、橋梁事業やシステム建築事業の設計業務の一部は中国やフィリピンの子会社が行っています。当該国の政治、経済情勢等に著しい変化が生じた場合は、業務の継続が困難になり業績に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクに備えて、従業員の安全を確保する手段や非常時の危機管理体制の確立に努めるとともに、国内も含めた業務の補完体制を構築し、必要に応じて日本政府や現地日本大使館等、関係者との連携を図ってまいります。

⑦大規模災害のリスクについて

地震、津波、風水害等の大規模な自然災害が発生した場合は、工場や工事現場に被害が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。こうした事態に備えてその影響を最小限に抑えるべく、事業継続計画の整備や非常時を想定した訓練等を実施しています。

 

⑧貸倒れに関するリスクについて

当社グループの主力事業である橋梁事業については、貸倒れリスクのない官公需が大半を占めていますが、エンジニアリング関連事業および先端技術事業については、取引先の大半を民間企業が占めています。そのため、取引先の信用不安により予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、貸倒損失の発生や追加的な引当の計上が必要となるなど、業績に悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、民間企業との取引に際しては、事前に十分な信用調査を行うとともに、売掛債権等に対して一定の貸倒引当金を設定しています。

⑨新型コロナウイルス感染症のリスクについて

新型コロナウイルス感染症の拡大により、工事の中断や事業所の閉鎖などで工程への影響やコストの増加が発生する可能性がありますが、感染防止に細心の注意を払い、状況に応じて発注者との協議を行うなど、適切に対応してまいります。また、テレワークや時差出勤の環境を整備し実施するなど、感染予防と感染拡大防止策を推進してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

当期における我が国経済は、各種政策による経済活動の再開によって国内需要が回復基調にあるものの、世界的な金融引締めや物価高騰により依然として不透明な状況が続いています。

建設市場につきましては、土木分野は高い水準の公共投資に支えられ堅調に推移するとともに、建築分野も企業収益の改善を背景に底堅く推移しました。

このような状況の下、当期の受注高はほぼ前期並みの1,569億9千万円(前期比11億2千万円減)となりました。業績につきましては、売上高は1,649億6千万円(同280億3千万円増)と大幅に伸長し、2018年3月期からの横這い状況を脱することができました。また、営業利益は152億1千万円(同4億6千万円増)、経常利益は154億5千万円(同4億5千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は112億4千万円(同1億9千万円増)となり、それぞれ増益となりました。

セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。

(橋梁事業)

国内橋梁事業は、発注計画の後ろ倒しにより新設橋梁の発注量が伸び悩み、大型保全工事も発注の端境期のため低調となりました。このような状況の下、当社グループは高速道路の4車線化をはじめとする大型の新設橋梁の好調な受注により、橋梁事業全体の受注高は818億9千万円(前期比56億2千万円減)となり、前期を下回ったものの、年度計画は達成いたしました。主な受注工事といたしましては、新設工事は、東北地方整備局・西大橋、関東地方整備局・三坂新田高架橋上部その3、上郷高架橋上部その3、尾羽根川橋、中部地方整備局・大安2高架橋4、東日本高速道路・広内川橋、新利根川橋東、新利根川橋西、柳橋高架橋、中日本高速道路・政田第二高架橋他1橋、西日本高速道路・富野高架橋、永井谷ジャンクション高架橋他3橋、阪神高速道路・豊崎インターチェンジ橋(その1)、鉄道・運輸機構・尻別川橋りょう、群馬県・龍ヶ鼻橋、広島県・広島はつかいち大橋など、保全工事は、東日本高速道路・滝川橋床版取替、西日本高速道路・中谷橋(下り線)他1橋耐震補強などであります。

業績につきましては、売上高は過去最高の870億1千万円(同105億9千万円増)となり、営業利益は設計変更の多かった前期は下回りましたものの、年度計画をほぼ達成し、89億5千万円(同20億5千万円減)となりました。主な売上工事といたしましては、新設工事は、関東地方整備局・東扇島水江町線主橋梁、中部地方整備局・1号島田金谷新大井川橋、302号庄内川橋、東日本高速道路・下万田高架橋、牛久高架橋、境高架橋、横町高架橋、首都高速道路・東扇島水江町線高架橋、高速大師橋更新、中日本高速道路・岐阜インターチェンジ中央本線東橋他7橋、岐阜インターチェンジ中央本線西橋他9橋、阪神高速道路・海老江ジャンクションなど、保全工事は、東日本高速道路・越河橋床版取替、阿能川橋床版取替、首都高速道路・上部工補強3-213、上部工補強2-204、西日本高速道路・中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新(その2)などが売上に立ちました。

(エンジニアリング関連事業)

エンジニアリング関連事業の受注につきましては、システム建築事業において、建設コスト上昇等による計画の延期や見直しの動きが散見されましたが、価格見直しの効果により、受注金額は過去最高を更新することができました。通期の事業全体の受注高も713億8千万円(前期比63億4千万円増)となり過去最高を更新いたしました。

業績につきましては、システム建築事業において、高騰した鋼材価格を反映した案件の生産が進み、損益が改善したことに加え、土木関連事業においても生産が回復したことにより、通期の事業全体の売上高は729億3千万円(同185億円増)、営業利益は67億8千万円(同30億6千万円増)となり過去最高をそれぞれ大幅に更新いたしました。

(先端技術事業)

先端技術事業につきましては、精密機器製造事業の受注が伸び悩み、受注高は37億1千万円(前期比18億3千万円減)となりました。業績につきましても、受注の減少により売上高は43億8千万円(同10億3千万円減)、営業利益は6億3千万円(同4億7千万円減)に止まりました。

(不動産事業)

不動産事業につきましては、売上高は前期とほぼ同額の6億2千万円、営業利益は3億6千万円(前期比8千万円増)となり、当期も安定的な収入と利益を確保いたしました。

b.財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ219億円増加し、1,944億5千万円となりました。流動資産は、「受取手形・完成工事未収入金等」が増加したこと等により239億9千万円増加し、1,333億5千万円となりました。固定資産は、投資有価証券の売却等により「投資その他の資産」が減少したため20億8千万円減少し、611億円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べ150億4千万円増加し、768億円となりました。その主な要因は、「短期借入金」や「長期借入金」が増加したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べ68億6千万円増加し、1,176億5千万円となりました。その主な要因は、「親会社株主に帰属する当期純利益」の計上や配当金の支払い等によるものです。この結果、自己資本比率は58.8%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて16億8千万円増加し、251億4千万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、使用した資金は43億5千万円(前連結会計年度は170億7千万円の獲得)となりました。これは、主に売上高の増加により「受取手形・完成工事未収入金等」の売上債権が増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は18億4千万円(前連結会計年度は34億7千万円の使用)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、獲得した資金は78億5千万円(前連結会計年度は97億7千万円の使用)となりました。これは、主に借入れによる収入があったことによるものです。

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

回次

第155期

第156期

第157期

第158期

第159期

決算年月

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

自己資本比率

56.3%

58.6%

59.6%

62.5%

58.8%

時価ベースの

自己資本比率

52.6%

53.4%

49.8%

46.5%

45.5%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

2.8年

1.3年

85.0年

0.6年

-年

インタレスト・

カバレッジ・レシオ

56.9倍

138.1倍

1.9倍

236.7倍

-倍

※ 自己資本比率:自己資本/総資産

 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

a.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

b.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

c.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

d.2023年3月期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」および「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載しておりません。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

数 量

(トン)

前年同期比

(%)

金 額

(百万円)

前年同期比

(%)

橋梁事業

50,328

114.9

87,018

113.9

エンジニアリング関連事業

85,625

123.5

72,933

134.0

先端技術事業

4,388

80.8

合計

135,954

120.2

164,340

120.6

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

受注残高

数量

(トン)

前年同期比

(%)

金額

(百万円)

前年同期比(%)

金額

(百万円)

前年同期比

(%)

橋梁事業

51,511

116.4

81,895

93.6

152,607

96.8

エンジニアリング関連事業

67,164

81.3

71,382

109.7

61,734

97.5

先端技術事業

3,718

66.9

1,200

64.2

合計

118,675

93.6

156,996

99.3

215,542

96.7

(注)セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

金 額

(百万円)

前年同期比

(%)

橋梁事業

87,018

113.9

エンジニアリング関連事業

72,933

134.0

先端技術事業

4,388

80.8

不動産事業

628

97.1

合計

164,968

120.5

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路株式会社

15,266

11.1

15,533

9.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりです。

(財政状態)

流動資産は主に「受取手形・完成工事未収入金等」の増加により239億9千万円増加しましたが、固定資産は投資有価証券の売却等により20億8千万円減少しました。その結果、総資産は1,944億5千万円(前期末比219億円増)となりました。負債合計は主に短期借入金等の有利子負債の増加により768億円(同150億4千万円増)となりました。純資産は利益の獲得により過去最高の1,176億5千万円(同68億6千万円増)となりました。自己資本比率は58.8%(前期末は62.5%)となり、若干低下したものの十分な水準にあると考えております。

 

(経営成績)

受注高は1,569億9千万円(前期比11億2千万円減)、売上高は1,649億6千万円(同280億3千万円増)、営業利益は152億1千万円(同4億6千万円増)、経常利益は154億5千万円(同4億5千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は112億4千万円(同1億9千万円増)となりました。

受注高については橋梁事業と先端技術事業の減少をエンジニアリング関連事業の増加が補い、ほぼ前期並みの水準を確保することができました。一方売上高については大幅増となり、2018年3月期から続いた1,400億円前後での横這いから脱することができました。営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益もそれぞれ前期を上回り、5年ぶりに増収増益とすることができました。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

<橋梁事業>

当初の計画は受注高790億円、売上高832億円、営業利益90億円です。

受注については、保全事業が大型案件の端境期となり前期に対して減少となりましたが、新設橋梁については4車線化事業など複数の大型工事の受注で前期比増とすることができました。その結果、受注高は818億9千万円(前期比56億2千万円減)となり、年度計画は達成することができました。

売上高については手持ち工事が順調に進捗したため計画を上回り、過去最高の870億1千万円(同105億9千万円増)となりました。営業利益は設計変更が多かった前期からは減益の89億5千万円(同20億5千万円減)となりましたが、ほぼ計画通りとすることができました。

<エンジニアリング関連事業>

当初の計画はエンジニアリング関連事業全体の受注高760億円、売上高750億円、営業利益66億5千万円であり、そのうちシステム建築事業は受注高566億円、売上高574億円です。

それに対し、エンジニアリング関連事業の受注高は713億8千万円(前期比63億4千万円増)、売上高は729億3千万円(同185億円増)、そのうちシステム建築事業の受注高は526億5千万円(前期比43億7千万円増)、売上高は545億9千万円(同158億5千万円増)となりました。何れの数字も当初計画には届かなかったものの、過去最高を更新することができました。採算面については鋼材費が高騰する中、上半期においてシステム建築事業の価格転嫁が遅れたため低調となりましたが、下半期から大きく改善することができました。その結果、エンジニアリング関連事業の営業利益は当初計画をやや上回る67億8千万円(同30億6千万円増)となり、過去最高となりました。

<先端技術事業>

当初の計画は受注高52億円、売上高52億円、営業利益9億円です。先端技術事業のうち精密機器製造事業の受注が振るわず、受注高は37億1千万円(前期比18億3千万円減)となりました。業績についても精密機器製造事業の受注の減少により売上高は43億8千万円(同10億3千万円減)、営業利益は6億3千万円(同4億7千万円減)と、何れも計画未達となりました。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの主な資金需要は材料費、外注費、労務費、工場並びに現場の直接経費・間接経費などの運転資金と工場生産設備を中心とする設備投資資金です。資金調達はフリー・キャッシュフロー及び間接調達で確保しております。また、長期大型工事の竣工間際など一時的に立替額が大きくなる場合に備え、コミットメントライン契約と当座貸越契約により財務の安定性及び流動性を補完しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、橋梁事業に関連する鋼構造の基礎技術の取得および革新を中心とし、さらに、保有する要素技術をエンジニアリング関連事業や先端技術事業に応用し、商品開発や新技術開発を実施しています。また、グループ各社が保有する環境や情報処理等の分野における固有技術に関連して、事業化や商品化につながる研究開発を実施しています。

研究開発の体制は、当社の総合技術研究所が基盤技術の調査研究や事業化前の研究開発を行い、各事業会社が自社商品の改良開発や事業化検討を行うことを基本としています。さらに、当社グループとしての研究開発全体を統括し、方向性、予算、実施状況を管理する機関として、技術総括室を設置しています。なお、当社グループの研究開発スタッフは52名であり、全従業員の2.6%に相当します。また、当連結会計年度のセグメント別研究開発費は、橋梁事業410百万円、エンジニアリング関連事業134百万円、先端技術事業30百万円となり、総額は575百万円です。

当連結会計年度における主要な研究開発活動は次のとおりです。

(1)橋梁事業に関する研究開発

① 高速道路を中心に大規模更新・修繕事業が最盛期となっており、現場の安全性向上や工期短縮に有効な技術の需要が高まっています。これに応える新技術として、床版取替工法「STEEL-C.A.P.工法」(日本製鉄(株)との共同開発)や中小スパン橋梁の架替工法「NYラピッドブリッジ」(日鉄エンジニアリング(株)との共同開発)を開発しました。STEEL-C.A.P.工法は北九州市の緑川橋でパイロット工事を実施し、狭隘な施工条件での急速施工が実現可能であることを確認しました。NYラピッドブリッジは、中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新工事の小浜ランプ橋での適用が決定し、現地施工を進めています。

② 鋼橋の建設現場の生産性向上、床版取替工事における交通規制時間短縮の要望に応える技術として、「プレキャスト合成床版」の開発を進めています。施工性に優れた合理的な継手構造を採用し、過年度に実施した性能試験や実物大施工試験に加えて、輪荷重走行試験や主桁を含んだ大型の載荷試験を実施し十分な性能を確認しています。今後は、採用が決定している新設橋梁の工事で施工性の向上効果の確認を行います。

③ 既設RC床版の大規模更新工事における施工の効率化と急速施工を目的としたプレキャスト壁高欄(商品名:ラピッドガードフェンス)の開発を継続して行っています。これまでに標準部と鉛直接合部についてはプレキャスト製品の基準試験に合格していますが、場所打ち仕様としていた端部構造についてもプレキャスト化のニーズが高まったため、プレキャスト化の構造改良を行い必要な性能試験が完了しました。

④ 場所打ちコンクリート床版の品質向上を目的として、バイブレータで締固めた位置の履歴を記録することが可能なコンクリート締固め管理システムを開発しました。締固め作業者および施工管理者がリアルタイムで締固め位置を確認できるため、コンクリート床版を確実に均等に締め固めることが可能となり、コンクリート床版の品質が向上します。本技術は、実橋のコンクリート床版工事にて採用されました。

⑤ ステンレス鋼材の橋梁への適用検討として、鋼橋の防食上の弱点である桁端部などに、防食性の高いステンレス鋼材を部分的に適用することを目的とした検討を実施しました。昨年度実施した性能試験に加えて、今年度は異種材料溶接部の疲労試験を行い、実橋への適用が可能であることを確認しました。

⑥ 吊橋や斜張橋などにおけるケーブル張力を簡易にモニタリングすることを目的として、高精度のワイヤレス加速度計を使用し、常時微動からケーブル張力を自動推定するシステムを開発しました。架設または供用時のケーブル張力を定期的に把握することができ、異常があった場合には管理者に通知が自動発信され迅速な対応ができるため、施工時や供用時の安全性が向上します。

(2)エンジニアリング関連事業に関する研究開発

① システム建築(商品名:yess建築)については、物流倉庫や工場等の生産施設の他、店舗・事務所など商業施設に向けた用途拡大と2階建て建物の販売拡大の強化を図っています。従来の2階建て建物は個別に設計するオーダーメイド型でしたが、事務所を有する工場、倉庫等に向けた、総2階建てと部分2階建てを標準化することで工期短縮を実現しました。また、北海道等の多雪地域の市街地近郊で要望の多い、屋根からの落雪が無く防水性の高い屋根工法をyess建築に導入し受注拡大を図っています。この他、外装部材の見映えや仕上りの改善および外装部材の防火性能評価の取得、2階建て向け構造部材の開発、yess建築に適した基礎工法「1本杭工法」の取り組みを進めています。商品開発の取り組みに加え、設計仕様や製作方法の標準化を推進し、工場および施工現場での生産性および施工性の向上と商品の品質改善に取り組んでいます。

② シールドトンネル工事では施工延長の増大に伴い、施工の省力化、時間短縮が求められています。これらのニーズに応える商品として、ボルトレス継手を適用した六面鋼殻合成セグメントを商品化しました。セグメント組み立てと同時に継手嵌合が完了することで組み立て時間を大幅に短縮し、急速施工が可能になります。商品化にあたり、実物大の載荷試験を行い、継手の挙動や破壊状態を確認し、実工事への適用が可能であることを確認しました。

③ 近年、地下鉄の新線建設工事の増大が予想されています。その駅舎となる地下空間を支える鋼管柱についても、多量の需要が見込まれています。これらの需要に安定的かつ確実に応えられるよう、鋼管柱の支承板に鋼板を2枚以上重ね合わせた積層構造(鋼製積層型支承板)を適用した新型鋼管柱を東京地下鉄(株)と共同で開発・商品化しました。

④ 防食性能に優れ高強度が特徴の二相ステンレス鋼を適用した新商品の検査路「NSスマート検査路」は、河川の管理橋や工場内点検通路での採用の他、橋梁用の検査路についても引き合いを頂き、徐々に実績を積んでいるところです。

⑤ 新型の船舶上架施設の開発を継続しています。新構造のリフターテーブルを組み込んだ試作機を用いて性能試験を実施しています。今後も顧客の要望に応えられるより良い製品を目指し改善を継続してまいります。

(3)先端技術事業に関する研究開発

① 国の基準である道路橋示方書に対応した鋼橋設計システムにおいて、各種設計計算例や関連規定等への対応を進めております。また、システムの適用範囲の拡大やユーザから寄せられる要望へ応えるため、機能追加・改善を続けています。

② DX推進の取り組みに向けた要請が高まっています。当社グループでは、製作部門の生産性向上を目指し鋼橋設計システムから鋼橋製作情報システムへのデータ連携機能の開発に取り組んでいます。これは、国交省が推進し、建設業全体で取り組んでいる設計から維持管理までのデータ連携、活用に対応するものです。その他、3Dモデルデータなどを活用した施工計画業務の支援システム、VR(複合現実)、AR(拡張現実)や画像認識AI(人工知能)技術による検査システムなど、施工部門の生産性向上や品質確保を支援するシステムの検討および開発を進めています。