文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、2019年4月1日、「企業理念」、「コアバリューズ」、「テルモグループ行動規範」からなる新たな企業理念体系を制定しました。全社員がこの企業理念体系に基づいた事業活動を行うことで、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。
企業理念:「医療を通じて社会に貢献する」
創立時から持ち続け、未来にわたって希求する、企業の不変の目標、社会的使命です。
コアバリューズ:「Respect(尊重)-他者の尊重」、「Integrity(誠実)-企業理念を胸に」、「Care(ケア)-患者さんへの想い」、「Quality(品質)-優れた仕事へのこだわり」、「Creativity(創造力)-イノベーションの追求」
企業理念実現のための活動において、アソシエイト(社員)が行動の基礎とする共通の価値観、信念です。
テルモグループ行動規範
アソシエイトが高い倫理観をもって正しく行動するために守るべき行動原則です。
医療は大きな変化の途中にあります。世界的な高齢化と生活水準向上の帰結として、糖尿病などの慢性疾患が増えるなど「疾病構造」の変化が起きています。このような慢性疾患の増加は、長期の時間軸での患者管理など、「医療の時間軸」に変化を与えています。また、バイオ医薬や細胞・遺伝子治療、再生医療へのシフトと、デジタル・AI技術の発展は「医療を支える技術」に変化をもたらしています。これらの変化はいずれも、テルモが真剣に取り組むべき課題であり、その課題解決に向けて、GS26を策定しました。
5カ年成長戦略「GS26」
1)中長期を見据えたビジョン
テルモはGS26を、次の10年超を見据えた5カ年成長戦略とし、そのビジョンを「デバイスからソリューションへ」と掲げました。具体的には、この中で3つの“D”に取り組みます。
1つ目はDeliveryです。心臓血管カンパニーの成長ドライバーである「ラジアル・アプローチ(TRI)」を支えるカテーテルなど、強みである生体内へのアクセス・デリバリーという機能とそれを支える技術を指します。今後の新しいソリューション開発においても、これらの技術は最大の武器です。
2つ目はDeviceuticalsです。これは、テルモが目指す、Device(機器)とPharmaceuticals(薬剤)の融合を表した造語です。テルモの機器が、薬剤の利用や製造に、付加価値を提供することを目指します。血液・細胞テクノロジーカンパニーが新たに参入した原料血漿の分野も、この一例です。
最後にDigitalです。データを活用した効率改善や、診断・治療の最適化に活用するデジタル技術など、医療機器の分野においても不可欠なものになってきました。糖尿病の患者さんに提供するアプリ開発など、「デジタルペーシェントジャーニー」のソリューションが、具体的な例です。
2)カンパニー別成長戦略
<心臓血管カンパニー>
GS26のビジョンとして、「患者さんに寄り添い、変わりゆく治療の未来を共に創造する」ことを掲げます。これを実現するための戦略として、以下の3つを実行します。
①新製品ローンチを通じた治療事業の拡大
脳血管・大動脈・下肢動脈の疾患や、がんの治療セグメントに向けた新製品を発売することでパイプラインを 拡充し、大きな市場で高い成長を実現していきます。同時に、デジタル技術を用いた個別化医療へのソリューション提供を進めます。
②疾病横断でのラジアル手技の普及
これまでは心臓血管を中心に実施されてきたラジアル手技(患者さんの負担がより少ない手首の血管からのカテーテル治療)を、下肢血管・腹部血管・脳血管など、全身の血管に拡げていきます。並行して、蓄積した治療成績のビッグデータに基づき、ラジアル手技のメリットを明確にすることで、個々の患者さんにとって最適な治療方針をドクターに提案していきます。
③成長を支えるオペレーションの進化
心臓血管カンパニーの全事業にわたって、グローバルで最適地生産を進めていくことで、需要の拡大に備えた増産体制を構築すると同時に、コストダウンを図ります。また、DXによる生産の効率化も進めていきます。これらによって、高付加価値製品へのシフトにとどまらない収益性の改善を実現します。
<メディカルケアソリューションズカンパニー>
GS26のビジョンとして、「独自の技術を融合した患者本位のソリューションを通して医療の質向上と変革に貢献する」ことを掲げます。この実現に向けて、以下の4つの戦略を実行します。
①ホスピタルケアソリューション
院内における医療機器とデータの管理や、医療安全、さらには病院経営の効率化などの価値を提供します。例えば、薬剤の投与情報を院内の部門システムとつなげることにより、記録やバイタルの管理、誤投与の防止に貢献します。また、感染対策のソリューションについては、単なる製品の販売にとどまらず、現場での使用状況を解析し、さらなる改善に向けた提案をしていきます。
②ライフケアソリューション
慢性疾患の患者さんへの個別化医療を支えるデータや、モニタリングの仕組みを作ります。糖尿病領域では、血糖測定やインスリン投与の情報を管理するシステムや、食事・運動・服薬などの情報と併せて解析し、医師による、個別の患者さんへの最適な指導や治療を支援する仕組みを作ります。さらに、インスリンポンプと持続血糖測定器を投与アルゴリズムで連動させることで、グルコース濃度の細かな調整が期待できる、インスリン自動投与制御(AID)システムを提供していきます。
③ファーマシューティカルソリューション
製薬会社に対して、薬剤の価値を最大化させるユニークなデバイスやサービスを組み合わせたソリューションを提案します。薬剤の安全・効率に資するソリューションから徐々にステップアップし、パッチポンプや皮内投与デバイスによって薬剤の効果を向上させることを目指します。また、核酸医薬、遺伝子治療の効果にフォーカスしたデバイス開発により、中枢・循環器・がん領域への展開を目指します。
④海外ビジネスソリューション
東南アジアでは高機能の薬剤投与システム、北米ではBtoBを活用した静脈アクセス製品の販売を拡大します。糖尿病領域では、欧州でのインスリンポンプ販売を徐々に拡大させるとともに、巨大市場となりつつある中国で事業展開の礎を築きます。また、製薬会社とのビジネスでは、強みであるプラスチック製の薬剤充填用シリンジ「PLAJEX」のグローバル展開を図ります。
<血液・細胞テクノロジーカンパニー>
GS26のビジョンとして、「血液と細胞の可能性を活かして、治療効果の向上とアンメットニーズに応えるイノベーションをグローバルに展開する」ことを掲げます。この実現に向けて、以下の4つの戦略を実行します。
①Blood and Beyond(血液からの発展)
採血業務の効率化に寄与する原料血漿採取システムを米国からスタートさせ、さらにこれを米国以外の市場にも展開させることを目指します。また、細胞処理の領域では、フォーカス領域を拡大し、細胞治療を受ける患者さんと、細胞治療のプロセス全体にアプローチします。そして、血液治療の領域では、選択的血漿交換療法へ進出し、この療法が有効な患者さんの治療に貢献します。
②Equipment and Beyond(機器からの発展)
全血の製剤化プロセスの自動化や、サービス・ソフトウェアなどの強みを生かして、血液センターをはじめ、顧客の業務効率化を支援します。また、新たに参入する原料血漿市場においても、技術と技術を補完するサービスを共に展開する、デジタルエコシステムを導入することを目指します。
③地域展開
中国、中南米、アフリカなどの成長著しい地域において製品ポートフォリオを拡充し、より複合的なソリューションを提供します。
④オペレーショナル・エクセレンス
フレキシブルなグローバル供給体制の構築、改良改善文化の浸透、そして、マーケティング活動のレベルアップを図り、より高いサービスの提供を目指します。
3)コーポレート戦略
①イノベーション
ソリューション開発の3つの方向性について、目指すべき長期的なゴールを設定しています。
Deliveryでは、低侵襲治療の普及率が60%にとどまっていることに対して、高度な疾患治療における高付加価値な生体アクセス・デリバリーにより、低侵襲治療100%の世界を目指します。
Deviceuticalsでは、薬剤治療効果が高められない原因として、医薬品とデバイスのコンビネーション製品が少ないことを課題と認識し、デリバリー技術のイノベーションで、コンビネーション製品の進化を加速させます。
また、Digitalについては、患者さんの長期的なQOL向上を妨げる要因として、慢性疾患の治療の継続が難しいことを課題と認識し、デジタルを駆使して治療の完遂率100%を目指します。
これらの長期的な課題解決と、各カンパニーの提供する中期的なイノベーションとのシナジーを創出することで、将来の成長を牽引します。
②デジタルトランスフォーメーション(DX)
社内に有するDX機能を強化し、データ分析、遠隔モニタリング、ロボティクスなどの具体的なテーマに沿った検討を進めます。同時に、M&Aや提携の機会を積極的に探索することで、他社に負けないスピードでこれを実現していきます。
③人財
中長期のビジョンを実現する上で重要なスキルを特定し、その獲得・強化を目指すことによって、グローバルでの適所適材を実現します。また、変革を推進するためには、アソシエイト一人ひとりが、新しいことに挑戦することで成長できるというマインドを持つことが重要と考え、これを「Growth Mindset」と呼んで推進していきます。
④全社収益改善
生産、調達、ロジスティクス、定型管理機能の4つの機能領域に注力し、グローバルでの最適化を図ります。グループ内のコラボレーションを通じて、将来の成長を支える強固な基盤を構築し、企業価値を高めます。
⑤生産
コスタリカ、日本、ベトナムの三極生産体制を強化し、グローバル生産の最適化に努めます。また、コストの効率化にとどまらず、個別の工場で獲得した自動化、省力化、デジタル化のノウハウをグローバルに展開することで、生産イノベーションを推進します。
⑥CSV/ESG
財務目標だけでなく、サステナビリティ経営にもコミットします。事業活動を通じて実現するCSV(社会への価値創造)と、それを支える基盤としてのESG(環境、社会、ガバナンス)という2つのカテゴリーを構成し、CSVでは、「医療技術・サービスの普及、医療アクセスの向上」、「一人ひとりの人生に寄り添う医療の提供」、「持続可能な医療システムの共創」という3つの重点領域において、各カンパニーの具体的なテーマを設定しました。ESGについては、環境、社会、ガバナンスのそれぞれについて、重点テーマを抽出し、具体的な数値目標を設定しています。
当社グループでは、2021年12月に次の5カ年を対象とする成長戦略を策定し、成長性、収益性、効率性においてそれぞれ以下の目標を掲げ、達成に向けて取り組んでいきます。
想定為替レート:USD=107円、EUR=128円
※ 新規M&Aの影響を除く
(1) サステナビリティ全般
テルモは、取締役会で決議した経営の基本方針に基づき業務執行に関する意思決定を行う経営会議の下部組織として、代表取締役社長CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を2023年4月に設置しました。当委員会は関連部門や各グループ会社と連携してサステナビリティに関わる活動方針の立案、CSV・ESGに関する重点活動テーマやKPIの設定を行い、グループ全体の活動を促進する役割を担っています。テーマ毎の活動状況やKPIの進捗は委員会でモニタリングし、経営会議および業務執行の監督機能を担う取締役会へ定期報告を行うとともに、経営会議や取締役会での指摘内容を関連部門やグループ会社にフィードバックし、活動の改善・拡充を図っています。また、サステナビリティに関するリスク管理については、リスクと機会をタイムリーに把握して活動方針や計画に反映するため、サステナビリティ委員会が中心となって社外のサステナビリティに関する動向を調査し、当社グループとの関連性の識別や影響度の評価を行った上で、経営会議・取締役会に報告・提言を行っています。
サステナビリティ推進体制

テルモは、持続可能な社会の実現とテルモグループの持続的成長の両立に向けて長期的視点でサステナビリティ経営を推進するため、2021年12月に「テルモグループ サステナビリティ基本方針」を制定し、併せてサステナビリティ重点活動テーマを改定しました。基本方針では、テルモの企業理念に基づき、パーパスである「医療の進化」と「患者さんのQOL向上」への貢献を通じた「社会価値創造」(CSV)をサステナビリティ経営の最重要活動テーマと位置付けました。さらに、社会価値創造を支える基盤としての活動をESGと定義し、活動テーマを設定してCSVとともに推進しています。
サステナビリティ重点活動テーマ

重点活動テーマの特定プロセス
以下のプロセスを経て、テルモグループの重点活動テーマを特定しました。
ステップ1 課題の抽出
GRI(Global Reporting Initiative)やSASB(Sustainability Accounting Standards Board)などが公表しているサステナビリティ関連のガイドラインや基準などを参照し、テルモグループに関連のあるサステナビリティ課題を網羅的に抽出。
ステップ2 優先順位づけ
抽出した課題について、ステークホルダーにとっての重要度と、企業理念との関連性などテルモグループにとっての重要度を評価し、双方にとって重要度の高い課題を抽出。
ステップ3 重点活動テーマの特定
抽出された重要度の高い課題の内容を基に、テルモグループにおける現状の取り組みも考慮しながら、重点活動テーマを特定。特定されたテーマを経営会議、取締役会で審議し、妥当性を確認。

2022年度からの5カ年成長戦略「GS26」では、CSV・ESGに関するモニタリング項目・KPIを設定し、役員で分担して推進するとともに、役員の業績評価・報酬に反映される仕組みを導入しました。
GS26 CSVモニタリング項目
注:GS26公表後に内容を一部見直しております。
GS26 ESG KPI
注:GS26公表後に内容を一部見直しております。
(2) 人的資本
人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
戦略
性別、国籍、職務、役職等において多様性のあるアソシエイトで構成されるグローバルDE&Iカウンシルを2021年7月に発足させ、テルモグループ共通のDE&Iフィロソフィー・ガイディングプリンシプル・ガイドラインを策定しており、多様性の確保に向けた人財育成方針、社内環境整備方針を定めております。また取り組み事例として、グループ横断選抜型の育成プログラムやグローバルタレントレビューの実施、育成計画、サクセッションプランを通したグループワイドな人財登用の整備を行っております。さらに、2023年にはDE&Iを推進するための4つの重点分野を選定し、グループ各社で活動を進化させております。
[4つの重点分野の主な取り組み]
●帰属意識・一体感:グループ各社におけるARG(Associate Resource Group)設置の促進
●インクルーシブリーダーシップ:各経営役員による具体的な取り組み目標の宣言と実行
●制度・手法:DE&Iの観点より、グループ各社の人事に関する制度・手法の見直し
●コミュニケーション:社内外コミュニケーションの強化(例:テルモ DE&I Weekのグローバル実施)
指標及び目標
<目標値を設定している指標>
- テルモ株式会社
5か年成長戦略(GS26)で掲げている目標:2026年度末までに女性管理職比率13%を目指す
<指標の内容と実績>
・女性管理職
- テルモグループ 女性管理職比率:30.8%(2023年3月31日現在)
- テルモ株式会社 女性管理職比率:9.6%(2023年3月31日現在)
・外国人管理職
- テルモグループ 経営役員外国人比率:33.3%(2023年3月31日現在)
- テルモグループ グローバル・キーポジション外国人比率:54.0%(2023年4月1日現在)
・中途採用者管理職
- テルモグループ 経営役員中途採用比率:50.0%(2023年3月31日現在)
- テルモ株式会社 管理職中途採用比率:21.5%(2023年3月31日現在)
(注)1.上記指標のうち、テルモ株式会社の女性管理職比率以外の指標は各国や地域によって状況が異なるた
め、モニタリングのみを実施しており、目標値は設定しておりません。
2.人的資本に係るガバナンスとリスク管理につきましては、「(1)サステナビリティ全般」の「ガバナ
ンス・リスク管理」をご参照ください。
(3) 気候変動への対応
2022年3月、テルモは、金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。TCFDのフレームワークに基づき、気候変動に伴うテルモの事業活動への影響と取り組みを以下に開示します。
「Scope」については、GHG(Greenhouse Gas)プロトコルによる以下の区分で報告しています。
Scope1:直接排出(燃料燃焼などの自社の排出)
Scope2:購入した電気などのエネルギー生産に伴う間接排出(電力事業者などの排出)
Scope3:Scope2以外の間接排出(原料生産、輸送、廃棄などの他社の排出)
事業に影響を及ぼすリスク
事業に影響を及ぼす機会
4℃シナリオ、1.5℃シナリオそれぞれにおいて、上記のリスク・機会がテルモの事業に与える影響度を分析した結果、以下のリスクが比較的影響度が大きいと推定されました。
<4℃シナリオ>
自然災害が発生した場合の事業所の建物・設備・在庫への被害、操業の一時停止により製品の供給に支障が生じた場合の機会損失
<1.5℃シナリオ>
自然災害が発生した場合の事業所の建物・設備・在庫への被害、操業の一時停止により製品の供給に支障が生じた場合の機会損失
炭素税が導入・強化された場合のエネルギーコストや原材料費の増加
自然災害など事業継続に関わるリスクへの対応については、テルモグループ共通の基本的な考え方および体制・対応事項を「グループ事業継続マネジメント(BCM)規程」で定めています。平時においては、各生産拠点、原材料調達や物流などに携わる本社機能部門、各カンパニー、海外子会社のリスク担当者が連携し、有事の際に事業を中断しないため、また万が一中断しても早期に復旧・再開させるために、BCP(事業継続計画)を策定しています。事業継続に関わるリスクが発生した場合は、テルモ株式会社の代表取締役社長を対策本部長として「対策本部」を設置し、迅速に対応を行います。テルモグループのサプライチェーンや業務が一定期間停止することが判明した場合には、早期の復旧を図ります。エネルギーコストや原材料費の増加に対しては、エネルギー効率の高い生産設備の導入や、より少ない原材料やエネルギーで生産できる製品の開発などに継続的に取り組んでいきます。
当社は、内外で発生する種々のリスク事象に対応するため、「グループリスク管理規程」を制定し、組織体制の整備及び各事象への対応を行っています。当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。



[業績等の概要]
当社グループでは、2021年12月に5カ年成長戦略「GS26」を策定しました。高齢化社会における慢性疾患との共生や、ゲノム医療とAIの進化による個別化医療の本格普及といった、医療のパラダイムシフトに対応するための中長期ビジョンとして、「デバイスからソリューションへ」を掲げました。製品軸から顧客軸へフォーカスを移し、医療のエコシステム全体とより積極的にかかわることで、顧客の課題に複合的なソリューションを提案できる企業を目指して経営を推進しています。
初年度となった当期の連結業績は以下のとおりです。
≪連結業績≫
セグメントの業績は以下のとおりです。
(注) 調整後営業利益は、営業利益から買収に伴い取得した無形資産の償却費及び一時的な損益を調整した利益です。
<心臓血管カンパニー>
日本は、COVID-19の再拡大の影響を受け、需要の減少が見られたものの、薬剤溶出型冠動脈ステントや胸部大動脈ステントグラフト等の新製品が売上を伸ばし、増収となりました。
海外は、医療需要の順調な回復と成長軌道への回帰が見られ、米国で相次いで新製品を発売し売上を拡大した血管事業を中心に、全事業が好調でした。
その結果、心臓血管カンパニーの売上収益は前期比21.0%増の4,806億円となりました。

<メディカルケアソリューションズカンパニー>
主要な市場である日本においては、COVID-19の再拡大の影響を受けましたが、ホスピタルケアソリューション事業の癒着防止材やプレフィルドシリンジ製剤の新製品が売上を伸ばしました。また、製薬企業との提携ビジネスであるファーマシューティカルソリューション事業の売上が、グローバルで好調に推移しました。
その結果、メディカルケアソリューションズカンパニーの売上収益は前期比3.5%増の1,917億円となりました。

<血液・細胞テクノロジーカンパニー>
日本は、血液センター向け製品において、血液バッグの需要が減少し、減収となりました。
海外は、アジア他における輸血需要の回復や、北米における成分採血装置の好調な需要が牽引し、大幅な増収となりました。
その結果、血液・細胞テクノロジーカンパニーの売上収益は前期比22.4%増の1,476億円となりました。

≪キャッシュ・フロー計算書概要≫
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,175億円となりました。税引前利益1,161億円、減価償却費及び償却費702億円、棚卸資産の増加393億円、法人所得税の支払額277億円が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、591億円となりました。生産設備等への投資に伴う有形固定資産の取得による支出527億円、新ITシステムへの投資等に伴う無形資産の取得による支出195億円が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、866億円となりました。自己株式の取得による支出501億円、配当金の支払額279億円が主な要因です。
また、上記に加えて、現金及び現金同等物に係る換算差額により102億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より179億円減少し1,873億円となりました。
[生産、受注及び販売の状況]
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.報告セグメントに含まれる製品は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 5.セグメント情報 (1) 報告セグメントに関する基礎」をご覧ください。
3.当連結会計年度の仕入製品の仕入実績は、当連結会計年度平均販売価格算出で、34,858百万円です。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1.調整額243百万円は、報告セグメントに帰属しない外部向け人材派遣による収入等です。
2.報告セグメントに含まれる製品は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 5.セグメント情報 (1) 報告セグメントに関する基礎」をご覧ください。
[財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月28日)現在において判断したものです。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので将来生じる実際の結果と差異が生じる可能性があります。
<連結業績について>
売上収益は、前期比16.6%増の8,202億円となりました。
日本は、COVID-19の影響を受けて医療需要の回復が遅れたものの、製薬企業との提携ビジネスであるファーマシューティカルソリューション事業や、血管事業の新製品売上が好調に推移し、前期比0.6%の増収となりました。
海外は、中国等においてCOVID-19の局地的な影響はあったものの、全体では医療需要の回復が進み、血管事業を中心に全カンパニーが二桁伸長した結果、前期比23.3%の増収となりました。
なお、地域別の売上収益及びその前期比は、下図のとおりです。

② 利益
売上総利益は、マクロ環境の悪化による製造費の増加を、増収効果と販売価格の値上げにより一部相殺し、前期比13.0%増の4,174億円となりました。
調整後営業利益は、販売費及び一般管理費が円安の影響で増加したものの、費用コントロールの厳格化により一部相殺し、前期比2.7%増の1,380億円となりました。
同様に、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、いずれも増益となりました。
なお、当社グループは、当社グループが適用する会計基準であるIFRSにおいて定義されていない、調整後営業利益という業績管理指標を追加的に開示しております。調整後営業利益は、営業利益から買収に伴い取得した無形資産の償却費及び一時的な損益を調整した利益であり、セグメント利益と一致しています。
調整後営業利益は、当社グループが中長期的に持続的な成長を目指す上で、各事業運営の業績を把握するために経営管理に利用している指標であり、財務諸表の利用者が当社グループの業績を評価する上でも、有用な情報であると考えております。
セグメントごとの業績の概況については、「業績等の概要(1) 業績」に記載しております。
<主要財務指標>
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,285億円増の1兆6,022億円となりました。
これは主に、為替相場が円安に推移した影響及び事業規模の拡大等により棚卸資産が511億円増加、同様の為替の影響及び生産設備や新ITシステムへの投資等により、有形固定資産が370億円増加、のれん及び無形資産が234億円増加した一方で、自己株式の取得等により現金及び現金同等物が179億円減少したことによるものです。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ298億円増の4,912億円となりました。
これは主に、上記同様の為替の影響等により社債及び借入金が59億円増加、為替の影響及び原材料仕入等により営業債務及びその他の債務が162億円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ987億円増の1兆1,111億円となりました。
これは主に、当期利益の計上により893億円増加、上記同様の為替の影響等に伴うその他の包括利益の計上により871億円増加した一方で、自己株式の取得により501億円減少、剰余金の配当により279億円減少したことによるものです。
なお、キャッシュ・フローの状況については、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」に記載しております。
当連結会計年度の「業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。
当社グループは、資本政策の基本方針として「事業オペレーション改善などを通じた資産効率の向上と、財務健全性も考慮した適正な資本構成の構築を図りつつ、売上成長・利益率改善に加えて、投下資本利益率(ROIC)及び株主資本利益率(ROE)の改善を目指します」を掲げております。
運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料、部品購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。研究開発費は営業費用の一部として計上されます。また、持続的な成長のため、設備投資をはじめ、企業買収による投資などへの投資資金需要が発生します。
当連結会計年度における重要な資本的支出の予定とその主な財源は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、資本政策の基本方針に沿って、内部資金、借入、社債等により調達しております。具体的には、年度事業計画にもとづく資金調達計画を策定・更新するとともに、定期的に手元流動性及び有利子負債の状況等を把握・集約しております。また、欧米・アジア・中国の拠点とキャッシュマネジメントシステムを運用し、グループ内余剰資金を活用するなど資金効率の向上に努めています。
さらに、金融機関には十分な借入枠を有しており、内部資金、資金調達と併せ、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備等投資資金を調達することは可能であると考えています。中長期的な成長投資は継続しつつ、さらにM&Aに関しても持続的かつ収益性のある成長に資する案件は、今後も継続し追求します。一方、不急とみなすことのできる経費や投資案件は見直していきます。
また、利益配分につきましては、「安定した増配に加えて、自己株式取得による還元も活用し、総還元性向として50%水準を目指す」を基本方針としており、当期の年間配当金を1株につき40円(うち中間配当金19円)と6円増配します。また、次期の年間配当金につきましては1株につき44円(うち中間配当金22円)と増配を予定します。
なお、当連結会計年度の有利子負債の残高については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 15.社債及び借入金」に記載のとおりです。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。
2023年度は、医療需要が成長軌道に回帰しつつあり、欧米に加えて中国、日本においても売上収益の拡大が見込まれます。マクロ環境は一部で好転する兆しが見える一方、依然、原材料価格や電気・ガス等のエネルギー関連費用のさらなる高騰等、厳しさが続くと見られています。このような環境下において、業績予想には、価格政策のさらなる見直し(値上げ)や費用の効率的な運用、コスト削減策の前倒し等の対策を盛り込みました。一方で、成長が見込まれる分野においては、生産能力の拡大を中心とする設備投資を積極的に進めます。また、医療従事者の人員不足や業務効率化の推進等、医療現場の課題やニーズに向き合い、より複合的なソリューションの提供に挑戦していきます。
企業経営としては厳しい環境にありますが、これを機会と捉え、企業価値の向上にも積極的に取り組みます。2023年2月には4つの追加的な施策を打ち出しました。M&Aの積極化、収益性改善の加速、資本政策の強化、そしてサステナビリティ経営の推進です。サステナビリティ経営については、サステナビリティ委員会を2023年4月に発足し、GS26において掲げたESG・CSVの重点テーマにおける具体的な指標の設定と、その実行の後押しを担います。設定した指標は役員の業績報酬にも連動する仕組みを導入し、その実効性をさらに高めていきます。
当連結会計年度の研究開発費は
心臓血管カンパニー
TIS事業では、米国において2つの臨床試験の結果を発表しました。手首の動脈からのアクセス(ラジアル手技)によって行う、下肢カテーテル治療(R2P、Radial to Peripheral)と腹部カテーテル治療(R.A.V.I.、Radial Access for Visceral Intervention)の臨床試験です。R2Pの臨床試験では、R2Pは入院日数の短縮や合併症の低減をもたらすことが示唆され、結果の詳細は、2022年9月に米国で行われたカテーテル治療学会Transcatheter Cardiovascular Therapeutic(TCT)で発表されました。R.A.V.I.の臨床試験では、多くの腹部カテーテル治療において、従来から行われてきた太ももの動脈からアクセスする手技に代わり、ラジアル手技が第一選択になりうることが示されました。研究内容は、2023年3月に開催された、米国最大級のインターベンショナル・ラジオロジー(画像下治療)の学会であるSociety of Interventional Radiology(SIR)にて発表されました。
血管事業では、胸部大動脈用ステントグラフト「RelayPro」の適応が拡大され、従来の胸部大動脈瘤への適応に加えて、日本と米国において胸部大動脈解離、米国において外傷性胸部大動脈解離への適応を取得しました。Relay Proは、ステントグラフトを収納して血管内を運ぶデリバリーシステム(シース)を細径化したことで、血管アクセスがしやすくなり、簡便な操作が期待できる製品です。
当事業に係る研究開発費は
メディカルケアソリューションズカンパニー
ホスピタルケアソリューション事業では、留置針の新モデル「サーフローZERO」を日本で発売しました。独自開発した「3D針」を採用し、穿刺時に血管を捉えやすい針のデザインと、血管確保を視認できる仕組み「OKフラッシュ」を搭載することで、留置成功率の向上を目指しています。
ライフケアソリューション事業では、日本で販売中の持続血糖測定器「Dexcom G6 CGMシステム」の保険適用区分に、「C150 血糖自己測定器加算」が追加されました。これにより、糖尿病の病型に関わらず、インスリン自己注射を1日に1回以上行っている全ての方に、保険診療下でDexcom G6をご利用いただくことができるようになりました。本製品は、Dexcom社(米国)が開発・製造しており、テルモは2018年に同社と提携、持続血糖測定器の日本での独占販売権を取得しています。
ファーマシューティカルソリューション事業では、協和キリン株式会社と共同開発したコンビネーション製品「ジーラスタ®皮下注3.6mgボディーポッド」が日本で発売されました。ジーラスタ®皮下注3.6mgは、薬剤の投与が自動で行われるため、がん化学療法と同日に使用することで、翌日に投与するための通院が不要となり、患者さんの通院負担と医療従事者の業務負担の軽減に繋がることが期待されています。
当事業に係る研究開発費は
血液・細胞テクノロジーカンパニー
細胞・遺伝子治療分野のプロセス開発から商業生産までをサポートするバイオリアクター「Quantum Flex Cell Expansion System」を米国で発売しました。Quantum Flexを使用することで、開発者は、製造に使用するのと同じプラットフォーム上で初期のプロセス開発を完了させ、細胞が増殖するための培養環境を作り出すことができます。早期のプロセス開発により、臨床試験の後期段階におけるコストや予期せぬプロセス逸脱のリスクを低減できる可能性があります。
米国コロラド州オーロラにあるCSL Plasma社(米国)の血漿採取センターで、原料血漿採取システム「Rika」を使用した、初のドナーからの血漿採取が完了しました。Rikaは、2022年3月にFDA認証を取得した原料血漿採取システムで、拡大する血漿分画製剤の需要に応えることを目的に開発されました。現在、Rikaは限定上市の段階で、今後、米国にある他のCSL Plasmaの血漿採取センターへシステムを順次導入する予定です。また、血漿採取センターの運営業務を支援するソフトウェアなどを通して一連のプロセスの効率を向上し、原料血漿採取に革新をもたらすエコシステムを提供していくことを目指します。
当事業に係る研究開発費は
その他
カンパニーや事業の枠を超えた全社的な連携を推進するR&D部門では、自社開発による戦略的ポートフォリオの構築や競争優位の源泉となるコア技術の深化・応用展開に加え、必要技術獲得のための外部投資やオープンイノベーション(社外との連携)にも取り組んでいます。2022年度は、5カ年成長戦略「GS26」で掲げている、技術軸のCenter of Excellence(CoE、組織を横断する取り組みを継続的に行う際に中核となる部門)を導入しました。技術CoEのメンバーがあらゆる開発テーマに横断的に参画することで、全社の技術やノウハウを蓄積、発展させながら開発の成功確率やスピードの向上を図ります。
加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)については、2021年4月に発足したDX推進室が、各カンパニーやオペレーション部門が進めるDX関連プロジェクトに関する情報を集約し、その連携を促すなど、「事業創出のDX」と「オペレーションのDX」の2つを推進しています。2022年度には、グローバルの経営役員が集まるGlobal Leadership Meetingを「One Terumo DX」をテーマに開催しました。また四半期に一度、全社的なDXの方向性を定めるためのDXディレクション会議の開催を開始。全社的な協働を促し、各プロジェクトをより強力に推進する体制を構築しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用81億円が含まれております。