第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」の経営理念に基づき、安全で高い品質の社会インフラ、サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、誠実・公正で透明性のある企業活動と社員一人ひとりの高い倫理観に基づいた行動を通じて、あらゆるステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力してまいります。さらに、安定的な受注と利益を確保し、市場競争力の維持・強化に努め、新しい成長領域の構築に向けた投資を推進しながら、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2)経営環境

セグメント

経 営 環 境

鉄 構

(橋梁事業)

○市況

・新設鋼製橋梁の発注量は、長期的には緩やかな減少傾向を見込むも、暫定2車線で開通している高速道路の4車線化や関西方面での大型案件などがあり、当面は堅調な事業環境を想定

・大規模更新・大規模修繕については高速道路会社を中心に発注量は増加傾向

○競合他社との差別化

・橋梁に関する技術と経験ある人材を多く保有し、長大橋や複合橋梁の実績が豊富

・グループ内に業界トップクラスのプレストレスト・コンクリート橋梁会社を有していること

(鉄骨事業)

○市況

・首都圏においては大型再開発プロジェクトが再始動し、発注量の増加が見込まれており良好な事業環境

・西日本地区においても大阪・関西万博と大阪IR関連施設や九州における都市再開発と半導体工場建設など堅調な事業環境

○競合他社との差別化

・超高層建築物の柱材として使用される極厚4面ボックスの製作

・工場製作から現場施工(建方含む)までの一括請負

・他社製作鉄骨の現場施工(建方含む)を含めた現場総合マネジメント力

土 木

○市況

・新設プレストレスト・コンクリート橋梁の発注量は減少傾向

・高速道路会社による大規模更新・大規模修繕の発注は高水準を維持

〇競合他社との差別化

・長年の首都高速道路における保全工事を通じて蓄積してきた各種保全技術ノウハウ

・グループ内に業界トップクラスの鋼製橋梁会社を有していること

建 築

○市況

・建設技能労働者不足や建設資材高騰などにより在来工法からのシフトでシステム建築の需要が拡大

・ネット通販等の拡大による大型物流施設の需要が旺盛

・冷蔵・冷凍施設、再生可能エネルギー関連施設をはじめ働きやすく災害に強い持続可能施設(環境性能)、非常用電源設備付き施設の需要も高い

○競合他社との差別化

・鉄のエキスパートとして企画・提案から設計・施工・アフターメンテナンスまでONE STOPサービス

 

 

 

セグメント

経 営 環 境

ソリューション

(ソフトウエア関連事業)

○市況

・防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策などにより建設コンサルタント市場は伸長

・国土交通省が推進するBIM/CIMが進展し、建設業におけるDX化に対する投資が伸長

○競合他社との差別化

・建設業BIM/CIMに対応した土木関連ソフトウエアの創出と提供

・建設DX推進に対応したシステムインテグレーションサービスの展開

(ロボット関連事業)

○市況

・電気電子産業界をはじめ業種を問わず生産・製造における自動化ニーズは高まりつつあり、人手不足、生産性向上等のための対策として、協働ロボットの導入ニーズは増加傾向

○競合他社との差別化

・双腕とビジョン、コントローラ、ソフトウエアが一つのパッケージになったオールインワンタイプの人のパートナーとなりうるヒト型協働ロボット

 

(3)会社の優先的に対処すべき課題

 当社グループは、『グループの総合力で進化を遂げ最強企業集団になる』の実現に向けて、2023年5月に第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定・公表いたしました。

 中期経営計画の主な内容は、以下のとおりであります。

テーマ

KAWADA VISIONの実現を目指し、レジリエント企業に変貌する

方針

①基幹事業の持続的成長

②成長事業の拡大・創出

③サステナビリティ経営の推進

④資本効率経営への転換

主な数値目標

①売上高(3か年累計※)

 3,910億円

②営業利益(3か年累計※)

 186億円

③当期純利益(3か年累計※)

 156億円

④自己資本当期純利益率ROE(最終年度)

 8.0%以上

※当社グループは複数年に亘る建設工事を行っており、工事の進捗や設計変更の獲得状況などにより年度の数値が変動するため

 

 中期経営計画の達成のため、各セグメント別課題を設定し、取り組んでまいります。

 

 

 

セグメント

対処すべき課題

鉄 構

(橋梁事業)

・製作部門をはじめ、コスト競争力の更なる強化

・土木・海洋構造物など新規分野への継続的な取り組みによる新たな収益源の開拓

・DXによる生産性の向上(時間外労働削減)とGXによる地球環境対応

・大規模更新工事を主とした保全工事への対応の促進

(鉄骨事業)

・超高層建築物における中堅ファブリケーターとの競合(コラム化への対応)

・鉄骨以外の工場製作物(制振壁等)への営業・生産体制の強化

・地球環境を考慮した生産設備の構築

・DXによる品質向上と省力化

土 木

・ICTを活用した技術開発やCIM/DXの活用による生産性向上(時間外労働削減)

・全国エリアごとに、新設、更新、保全工事を設計・施工できる体制の確立

・グループ連携による床版取り替えを中心とした大規模更新案件への対応

建 築

・設計と見積/積算力の向上による営業力の強化と採算性の改善

・新たな建築工法の習得

・「システム建築」の差別化商材の開発

・協力会社の拡充による販売体制及び施工体制の整備

ソリューション

(ソフトウエア関連事業)

・既存事業の実績拡大と生産性向上による成長

・DXに対応したシステムインテグレーションサービスの展開強化

(ロボット関連事業)

・販売代理店との連携の強化による拡販体制の確立

・APIソフトウエアを活用した新市場の開拓

・事業複線化に向けた体制構築

各セグメントが展開する事業戦略と一体化した持続可能な社会の実現への取り組みの推進

 

 また、上記の各セグメントの課題への取り組みとともに、持分法適用会社との事業シナジーの拡充にも従来以上に取り組み、企業価値の向上に努めてまいります。

 なお、各セグメント及びその他事業を通じて、「安全は全てに優先される」という強い認識のもと、事故などの根絶に向けた不断の努力を継続してまいります。また、2024年4月からの建設業や運送業における時間外労働の上限規制の適用に向け、法令遵守のもとで、適正かつ生産性の高い事業運営を目指してまいります。

 このような取り組みの中から生み出される社会インフラ、サービスについては、高い品質とともに提供していけるよう取り組んでまいる所存です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。

 なお、本文書は、提出日時点での情報に基づいて作成されています。ただし、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在での当社グループの判断に基づいています。

 

<全般>

 当社グループは、グループ理念である『安心で快適な生活環境の創造』を基に、『八方よし』(※)の精神に則り、全てのステークホルダーとの対話や共創を通じて、「持続可能な社会の実現」と「グループの持続的な成長」を目指し、以下のサステナビリティ基本方針を制定しています。

 

 ※「八方よし」とは、近江商人の心得と言われる「三方良し」を独自に、さらに拡張し、ステークホルダー全てに利をもたらす企業グループを目指すという考え方です。

〇サステナビリティ基本方針

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 当社グループは、企業経営と社会課題の長期的なトレンドを重視し、事業環境や社会・地球的な課題の長期的な展望やビジョンを検討することにより、様々なリスクと機会を抽出しています。また、業界として期待される役割や社会的使命にも目を向け、企業が果たすべき役割を考えています。さらに、組織全体で共有する企業理念や価値観を明確化し、それに基づいた行動を求めています。これらの要素を考慮し、組織としての持続可能性に関わる最も重要な課題(マテリアリティ)を特定しました。また、組織や個人がリソースの最適化や効果的な時間管理を行い、重要課題の解決に向けた取り組みが行えるよう重点課題を設定しています。

 

〇マテリアリティ                  〇マテリアリティの定義

 

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〇重点課題

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 これらへの取り組みは、当社グループ各社が展開する事業戦略と一体化した形で推進しています。

 

(ガバナンス)

 取締役会の諮問機関として、サステナビリティ推進委員会を設置しています。委員長は取締役であるサステナビリティ推進室長が務め、取締役会が選任する委員で構成されます。委員会は原則として毎月開催され、サステナビリティ課題に関するリスクや機会について幅広く議論し、対応策を検討し、定期的又は必要に応じて取締役会に報告・答申を行います。

 取締役会は重要な方針や課題についての審議・決定を行い、その後、サステナビリティに関する重要な方針や課題についてモニタリングを行います。また、指揮・監督の責任も担い、サステナビリティへの取り組みが適切に進められているかを確認します。

 このように、サステナビリティ推進委員会と取締役会の役割分担を通じて、そしてそれらが有機的な連携を行うことで、サステナビリティ経営を着実に推進してまいります。

 

〇サステナビリティ推進体制

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(リスク管理)

 サステナビリティ推進委員会は、当社グループ各社の取締役や経営幹部に対する意識調査を実施し、サステナビリティ課題として高い関心を持っていることを確認するとともに、重要なリスクや機会を網羅的に抽出します。さらに、外部専門家の助言を活用し、専門知識に基づいた重要なリスクや機会の特定を行っています。

 特定されたリスクは、取締役会に報告され、審議・決定の対象となります。取締役会の関与により、組織全体のリスク管理の透明性と責任を確保しています。さらに、取締役会はリスクのモニタリングを行い、適切な指揮・監督を行っています。組織の柔軟性と能動性を確保するために、変化する状況や新たなリスク要因に対応するための努力を継続的に行っています。

 

<気候変動>

 国際連合「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えられない場合、異常気象や生物多様性の損失などのリスクが大きく高まると警鐘を鳴らし、その実現のためには温室効果ガス排出量を2035年に2019年比で60%減らす必要があると提言しています。当社グループは、マテリアリティとして「地球環境の保全・改善」を掲げています。地球温暖化を含む気候変動問題は、当社グループのステークホルダーを含め、この地球に暮らす全ての人々にとって喫緊の課題となっています。

 2023年6月、当社グループはTCFD(※)の提言への賛同を表明し、気候変動問題への取り組みとTCFDの提言に沿った情報開示を進めるとともに、気候変動に関するリスクと機会に適切に対応し、「カーボンニュートラル社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を目指しています。

※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

G20の要請を受け、2015年に金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなり、国際金融に関する監督業務を行う機関)により設置された組織。金融市場の安定化を図ることを目的に、企業等に対して気候変動リスク及び機会の財務的影響の把握と情報開示を促している。

 

(戦略)

 当社グループは、気候変動問題をリスクと機会の両面で捉えており、非常に重要な社会課題と認識しています。そして、移行リスクについては1.5℃以下シナリオ(※)、物理的リスクについては4.0℃シナリオ(※)を活用し、2030年代までを中心に、事業への影響度を勘案し、当社グループの全ての事業を対象にリスクと機会を検討・分析しました。以下に特定したリスクと機会を示します。

 

※1.5℃以下シナリオ

2050年までに地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ。

政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2022」の「NZE2050シナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠。

※4.0℃シナリオ

現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ。

政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「STEPSシナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠。

 

 

〇気候変動に関するリスクと機会

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これらへの対応については、当社グループのマテリアリティの中の重点課題である

・地球温暖化対策の推進

・自然災害や通信障害に強いインフラ構築と社会のレジリエンスの強化

・技術革新と規制改革への対応

・持続可能性を重視したエネルギー・天然資源の活用

・社会・技術インフラを支える人財育成とテクノロジー開発

・リスク管理・BCP強化

への取り組みの中で解決していきたいと考えています。

 

(指標と目標)

 当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を管理するための指標として、環境負荷に関する重要なリスクである温室効果ガス排出量を考えています。GHGプロトコルの基準に基づき、自社の製造プロセス・事業活動における軽油・重油・ガス等燃料使用による直接排出であるScope1と他社からの電力・熱の購入等による間接的な排出であるScope2について、2022年度を基準年度として、当社とその連結子会社8社を対象とした温室効果ガスの排出量の算定を行いました。今後、Scope1、Scope2以外の間接排出(当社グループの活動に関連するサプライチェーンの排出)であるScope3についても早期に算定を進める予定です。

 なお、当社グループの2022年度の温室効果ガス排出量は、22,070.3t-CO2となっています。今後は、サステナビリティ推進委員会が中心となって、当社グループ各社と協働で温室効果ガスの排出量削減策の検討を行い、それに基づいて削減目標の設定を行う予定です。

 

〇温室効果ガス排出量内訳

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<人的資本>

 当社グループは、マテリアリティとして『安心で公正な労働環境の整備』を掲げており、今後は人材育成方針や社内環境整備方針の制定に取り組み、重要な指標と目標の設定にも注力していきます。

 なお、当社グループは、『グループの総合力で進化を遂げ最強企業集団になる』の実現に向けて、2019年1月から「働き方改革」や「モチベーション向上」の促進を図り、職場づくりと人材づくりに注力してきました。具体的な課題、あるべき姿、そして、その達成に向けた事業会社における取り組みは以下のとおりです。

 

〇課題、あるべき姿、事業会社での取り組み

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※えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、女性の活躍を推進している企業が取得できる制度です。

※くるみん認定とは、一定の基準を満たす子育てサポート企業に対し、厚生労働大臣が与える認定です。

 

 その一方で、2019年から企業経営を取り巻く環境は、グローバル化、デジタル化、少子高齢化・人生100年時代、そして感染症への対応など大きく変化しています。これに伴って人材戦略上の優先課題も変化してきていると感じています。そしてまた、これらの変化に対応した新しい経営管理手法が必要となってきていると考えています。

 当社グループは、従業員が企業の最も重要な資産であり、彼らの成長と幸福感を尊重し、そして共有することが組織の成功につながると信じています。今後も従業員のキャリアパスの構築やリスキリング、多様性の確保、福利厚生制度の充実や健康経営の推進など、人的資本の育成と活用に向けた取り組みを積極的に推進していきます。

 なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

市場リスク

 鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業(以下「橋梁事業」)は、その相当部分が国、地方自治体、高速道路会社からの発注であり、政策や財政状況の悪化などにより発注量が想定を大きく下回る可能性があります。

 また、橋梁事業においては、市場が新設から補修・保全にシフトしてきており、工場製作を中心とした事業から現場施工を中心とした事業へと変わりつつあり、この変化に適切に対応できない場合、業績に影響が出る可能性があります。

 鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントにおける建築事業は、その相当部分が民間からの発注であるため、景気後退等により設備投資が減少する可能性があります。建設市場の著しい縮小により、受注が低迷した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、「第3次中期経営計画」に掲げる各種施策を推進し、橋梁事業においては、新設事業の受注活動強化を図るとともに、新たな市場として拡大が見込まれる更新、保全事業への対応力強化を推し進めてまいります。

 鉄骨事業と建築事業においては、競争力強化に向けた新たな技術開発や設備投資による効率化を図り、生産性向上に取り組んでまいります。また海洋構造物に代表される鋼構造物への取り組みを加速させるなど、事業領域の拡大を通じた収益源の多様化にも取り組んでまいります。

収益変動リスク

 当社グループのコア事業である橋梁事業や鉄骨事業、建設事業は請負事業のため、請負契約後の工事期間中に鋼材等の原材料や輸送費、労務費の上昇リスクが内在しており、請負金額に反映することが困難となった場合には、採算性が悪化するリスクがあります。

 またロボット等の製造において、半導体不足やサプライチェーンの混乱による部品調達の長期化及び価格高騰等調達面に制約が発生し、生産計画を見直す状況になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、早期の調達や多様な調達先の確保を図ることで採算性の悪化リスクを回避・軽減してまいります。また発注者との契約に物価スライド条項を含めるなど、コスト増加分を請負金額に転嫁できる契約内容にするとともに、発注者と情報共有を図り、交渉を早期に進めるなどの対策を実施しています。

事故によるリスク

 当社グループのコア事業である橋梁事業や鉄骨事業、建設事業においては、工場製作及び現場施工が大半を占めています。万が一事故が発生した場合には、事故による直接的な損害と補償費用が発生するだけでなく、指名停止等の処分や工事成績評点への影響などで、その後の受注活動に影響が生じ、業績にも影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、安全管理の専門部門を設置し、労働災害の撲滅に向けた全社的な安全管理体制を構築するとともに、労働災害事例の水平展開や役職員のパトロールにより重大労働災害に繋がるリスクについて、複数の視点で管理することにより未然防止に努めています。

品質不具合による瑕疵等のリスク

 当社グループで製作している製品及び現場施工の品質につきまして、万が一重大な瑕疵が発生した場合には、その是正・回復費用や損害賠償費用だけでなく、顧客からの信頼失墜や風評リスクで、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、国際マネジメントシステムの国際認証であるISO9001を取得し、厳格な品質マネジメント体制を構築するとともに、品質管理の専門部門を設置し、品質不具合事例の水平展開や役職員のパトロールにより品質不具合に繋がるリスクについて、複数の視点で管理することにより未然防止に努めています。

 

 

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

工事遅延リスク

 橋梁事業に関して、鋼材等の原材料や資機材、購入品が当初予定した時期に納品されない場合に工程が遅れる可能性があります。また実際の架設現場の状況が想定と異なった場合や下部工工事に遅れなどが生じた場合、発注者と協議のうえ架設工法を見直すケースがあります。その場合、原価の発生時期と架設工法変更に係る設計変更契約の締結時期にずれが生じ、原価が先行することで一時的に収益が悪化するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、工事の遂行にあたってはフロントローディングを確実に実施し、工事リスクの早期把握によりリスクの低減を図るとともに、架設工法変更等に伴うコスト増加分は、その設計変更内容を発注者と情報の共有を図り、早めに協議を行うことで原価先行の影響を低減してまいります。

法令等に関わるリスク

 当社グループの事業は、建設業法や労働安全衛生法等の各種法的規制を受けます。万が一法令違反が発生した場合には、指名停止、営業停止等の処分により業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、事業推進に密接な関わりを持つ法令や規則等を遵守するため、法務部門による講習会を実施し啓蒙活動を行うとともに、監査部門による内部監査や安全品質環境本部長又は事業部長による全現場パトロールの実施により法令遵守の徹底に努めています。

取引先の信用リスク

 当社グループでは、発注者・協力業者などの取引先に信用不安が発生した場合には、貸し倒れの発生や引当金の計上、工程の遅延などにより業績が悪化する可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、新規の発注者の際は、発注者の与信並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り、協力業者と新たな取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで発注することでリスクの軽減に努めています。

為替の変動リスク

 当社グループの持分法適用会社は海外での事業を行っているため、外貨建の債権債務が発生します。このため大幅な為替変動が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、請負工事代金の受領通貨と工事原価の支払い通貨を現地通貨で一致させ、入出金の時期も概ね一致させるなどの対応によりリスクの軽減に努めています。また事業を行うことで累積する収益部分の預金については、為替の変動リスクの影響を軽減するために、現地の資金状況に応じて適宜円転し、リスクの軽減に努めています。

担い手不足によるリスク

 当社グループの主要セグメントが属しています建設業界におきましては、建設業従事者の数が減少すると予測されています。加えて建設業では2024年4月から時間外労働の上限が規定され、これを見据えた「働き方改革」が、業界各社の緊喫の課題となっています。 今後、担い手不足が解消できなかった場合に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、人材の確保・育成をより一層強化していくとともに、業務効率を高めるためのDXを推進し、生産性向上による残業時間の削減等、労働条件・環境の改善を図ってまいります。また担い手不足を補うため、ロボット技術等を活用した業務効率の改善や店社による現場支援体制の強化も進めています。

自然災害等大規模災害によるリスク

 当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントにおいて全国5か所に工場を保有しています。それらが所在する地域におきまして大規模災害等で操業に支障が出た場合は事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、橋梁事業や建築事業の現場は屋外での作業が中心となりますので、季節や天候などの自然条件の影響を受ける可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、影響を最小限に抑えるべく、災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、大地震を想定した実践的なBCP訓練を実施しています。その中で従業員等の安否や施工中の現場の被害状況を確認するなど、企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組んでいます。

固定資産の減損に関わるリスク

 当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントの事業に係る固定資産として全国5か所に工場を保有しています。今後、工場における採算性が悪化した場合には減損損失を計上する必要性が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、各工場において製造できる製品の多様化や製造工程の効率化・コスト削減等で採算性の維持・向上を目指すとともに、設備投資については将来的な市場環境並びに投資対効果の検証を綿密に行い、減損リスクの回避に努めています。

 

 

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

有利子負債への依存と金利変動によるリスク

 当社グループには相当額の有利子負債(借入金、私募債)が存在します。橋梁事業や鉄骨事業につきましては、その事業形態から運転資金の立て替えが恒常的に発生し、特に近年の橋梁事業では案件の大型化や長期化が進んでいることからその傾向が強まっています。将来において資金調達に支障が出た場合や調達金利が上昇した場合には事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、運転資金は金融機関からの借入金(銀行引き受けの私募債含む)により調達しており、2023年3月末時点での借入金は合計338億円となっています。当社グループでは取引銀行14行との当座貸越契約の弾力的な運用と年度計画に沿った長期借入金の調達で対応しており、平素より当社グループの事業計画や業績見込等を適時適切に説明し、円滑な調達に努めています。

情報セキュリティに関わるリスク

 当社グループにおきましては、業務の効率化のためICT化、ネットワーク化を進めていますが、その社内システムに対し外部からのサイバー攻撃や従業員の不正等により保管しているデータが消失・損壊した場合や個人情報、機密情報が漏洩した場合、その復旧費用や損害賠償だけではなく、事業遂行に大きな影響や社会的な信用が失墜し、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、「情報セキュリティポリシー」を制定し、情報管理体制を確立するとともに、リスクの変化に応じた技術的な対策及び教育・啓発等の人的マネジメント対策を継続的に実施することで、個人情報、機密情報の漏洩防止に努めています。

不適切な財務報告リスク

 従業員の不正や誤謬等により財務報告が適正に行われなかった場合には、ステークホルダーからの信用が失墜し、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備し、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリングを行うとともに、正確な財務報告に関する啓発教育を継続的に行い、内部統制の実効性確保に努めています。

気候変動問題に係るリスク

 当社グループは、製造過程で多くの温室効果ガスを発生させる鋼材を主たる材料とする鋼橋事業や鉄骨事業、並びに航空燃料を使用する航空機使用事業を営んでいます。今後将来に向け温室効果ガスの発生量を実質ゼロに向けて圧縮することが求められている中、適切に対応できない場合には事業遂行に制約が出る可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、サステナビリティ課題に取り組むため、2021年にサステナビリティ推進室を設置し、2022年にサステナビリティ基本方針を制定しました。また2023年に重要課題(マテリアリティ)を特定するとともに、TCFDの提言に賛同し、気候変動問題への取り組みとTCFDの提言に沿った情報開示を進め、カーボンニュートラル社会の実現を目指してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 ① 財政状態の状況

 当連結会計年度末における「資産の部」は162,158百万円となり、前連結会計年度末に比べ28,820百万円(+21.6%)増加しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が20,527百万円、流動資産のその他(未収消費税等)が3,333百万円、現金預金が1,985百万円、リース資産が1,939百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 また、「負債の部」は85,460百万円となり、前連結会計年度末に比べ24,045百万円(+39.2%)増加しました。これは主に、短期借入金が14,663百万円、支払手形・工事未払金等が10,331百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 一方、「純資産の部」は76,697百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,775百万円(+6.6%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の53.2%から46.6%となりました。

 

 ② 経営成績の状況

 当社グループは、2020年6月に「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を策定し、基本方針に基づき、その実現に向けて各種施策に取り組んでまいりました。その計画期間中の当社を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響や鋼材をはじめとした資材価格の高騰、半導体不足など厳しい状況が続きましたが、基幹事業における市場環境は底堅く推移しました。

 その結果、数値目標については、売上高は目標に届かなかったものの、営業利益と自己資本比率については目標を達成することができました。

 しかしながら、今後の当社グループを取り巻く事業環境は、主要原材料である鋼材価格については一時期に比べると落ち着いているものの、今後の動向は依然不透明な状況であり、また電力使用料や労務費は引き続き上昇傾向が続くことが予想され、コストの増加は避けられないものと考えています。市場環境といたしましては、公共投資である鉄構セグメントの鋼製橋梁事業や土木セグメントのPC橋梁関係は、更新・保全市場の拡大に加え、現在計画されている大型プロジェクトの発注が見込まれていることなどから、概ね堅調に推移すると思われます。また鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントの民間投資についても首都圏大型再開発案件が今後一定程度見込まれていることや当社グループがターゲットとしている物流施設等に底堅い需要が見込まれています。

 このような事業環境に対し、2023年5月に「第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)」を策定し、基幹事業における収益力強化と成長事業における事業規模拡大に努めることで利益水準の向上を図るとともに、資本コストを意識したROE向上を目指した経営を推進してまいります。

 その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高118,086百万円(前連結会計年度比13.8%増)、営業利益5,025百万円(同21.6%減)、経常利益6,298百万円(同18.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,231百万円(同18.3%減)となりました。受注高につきましては127,657百万円(同6.8%増)となりました。

 

 なお、セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)

 

(鉄構セグメント)

 当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注高は前連結会計年度において高速道路会社の大型工事の受注があった反動で若干下回る結果となったものの、内容的には国土交通省や地方自治体の大型案件を積み上げることができ、特に国土交通省関連では、ターゲットとする案件の発注が無かった地方整備局を除き、全ての地方整備局から受注することができました。売上高は大型特定更新工事のピークが超えたことや一部工事において下部工等の遅れにより工程が遅延したことなどにより前連結会計年度より減少いたしました。営業利益は一部の大型工事において設計変更を獲得できたものの、当連結会計年度は竣工を迎えた工事が相対的に少なく、結果として前連結会計年度に計上した設計変更額の水準までには至らなかったことで前連結会計年度を下回りました。

 鉄骨事業につきましては、受注高は九州地区での半導体関連施設の受注に加え、当第4四半期におきましても首都圏の再開発案件をはじめとした大型工事を積み上げることができたことで前連結会計年度を上回りました。売上高は首都圏の再開発工事に加え、九州地区での半導体関連施設の進捗が概ね順調に推移したことで前連結会計年度を上回りましたが、営業利益につきましては、前連結会計年度を上回ったものの、一部に採算性が悪化した案件が発生したことで売上ボリューム増加による利益増を縮小させる結果となりました。

 セグメント全体では売上高56,071百万円(前連結会計年度比12.1%増)、営業利益4,097百万円(同24.5%減)となりました。また、受注高は63,192百万円(同7.1%増)となりました。

(土木セグメント)

 土木セグメントにつきましては、受注高は当第4四半期においても高速道路会社発注の大型更新工事の受注を積み上げることができたことで36,879百万円(前連結会計年度比17.4%増)と前連結会計年度を上回りました。

 売上高は、新設事業の進捗が順調に推移したことに加え、当第4四半期に保全事業の設計変更を計上できたことにより35,035百万円(同6.0%増)となりました。営業利益につきましては、新設、保全事業については採算性の改善が図られた工事があったものの、更新事業において工期や進捗状況等の関係で発注者との設計変更協議までには至らず原価が先行する工事が多かった影響で2,067百万円(同13.2%減)と前連結会計年度を下回る結果となりました。

(建築セグメント)

 建築セグメントにつきましては、受注高は期初に受注した大型冷凍冷蔵倉庫案件の計画中止による受注取消があった影響や当第4四半期の受注が伸び悩んだことで、12,719百万円(前連結会計年度比19.1%減)と前連結会計年度を下回りました。売上高はシステム建築をはじめとした大型工事が概ね順調に推移したことで14,158百万円(同47.4%増)と前連結会計年度を上回ることができたものの、損益面につきましては多層階物流倉庫の複数案件で資機材などの調達コストの上昇を受け、採算性の改善を図るべく発注者と協議を重ねてまいりましたが、コスト上昇分をカバーするまでには至らず、営業損失423百万円(前連結会計年度は営業利益56百万円)という結果になりました。

(ソリューションセグメント)

 ソリューションセグメントにつきましては、当連結会計年度においても、国土交通省がDX政策の一環として取り組んでいるBIM/CIMの推進を追い風に、ソフトウエア関連事業の売上を伸ばすことができたことに加え、サブスクリプション化による販売効率の向上が図られ、その結果、収益率の改善が図られたことにより、受注高6,992百万円(前連結会計年度比11.4%増)、売上高6,371百万円(同13.7%増)、営業利益2,047百万円(同63.5%増)といずれも大幅に改善いたしました。

(その他)

 その他につきましては、航空機使用事業において新型コロナウイルス感染症の影響で売上が落ち込んでいた離島定期路線や伊豆諸島間を結ぶヘリコミューター「東京愛らんどシャトル」の売上が回復したことやヘリコプターの整備事業の売上が伸びたことにより、売上高は7,989百万円(前連結会計年度比11.6%増)となり、損益面は営業損失162百万円(前連結会計年度は営業損失297百万円)と損失幅が縮小しました。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,986百万円増加し15,661百万円(前連結会計年度比+14.5%)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、9,673百万円の資金減少(前連結会計年度は20,391百万円の資金増加)となりました。これは主に、売上債権の増加等による資金の減少があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,504百万円の資金減少(前連結会計年度は1,948百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得等による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、12,213百万円の資金増加(前連結会計年度は15,811百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の増加等による資金の増加があったことによるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄構

63,192

7.1

84,990

9.1

土木

36,879

17.4

49,100

3.9

建築

12,719

△19.1

16,526

△8.0

ソリューション

6,992

11.4

3,355

22.7

その他

7,873

9.6

391

△22.9

合計

127,657

6.8

154,364

5.5

(注) セグメント間の取引については、相殺消去していません。

 

b.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

鉄構

56,071

12.1

土木

35,035

6.0

建築

14,158

47.4

ソリューション

6,371

13.7

その他

7,989

11.6

合計

119,626

13.5

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しています。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路㈱

16,504

15.9

16,620

14.1

中日本高速道路㈱

11,416

11.0

 

 

 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。

 

 なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。

 

a.生産実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

49,830

55,590(11.6%増)

建築

9,506

14,136(48.7%増)

その他

147

153( 4.1%増)

合計

59,484

69,881(17.5%増)

(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。

2 生産高には、外注生産高が含まれています。

 

b.受注実績

期別

セグメントの名称

前期繰越工事高(百万円)

当期受注工事高(百万円)

(百万円)

当期完成工事高(百万円)

次期繰越工事高(百万円)

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

鉄構

68,896

58,948

127,845

49,975

77,869

建築

11,857

15,715

27,573

9,607

17,965

その他

156

156

156

合計

80,754

74,821

155,575

59,740

95,835

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

鉄構

77,869

63,062

140,931

55,919

85,012

建築

17,965

12,719

30,684

14,158

16,526

その他

186

186

186

合計

95,835

75,968

171,803

70,264

101,538

(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。

2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額70億円以上の主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路㈱

中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事

2024年6月完成予定

首都高速道路㈱

高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事

2025年7月  〃

㈱大林組

品川開発プロジェクト(第1期)4街区 本体鉄骨 北棟A工区

2024年4月  〃

清水建設㈱

鉄骨関連その他工事

2023年5月  〃

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 高槻高架橋西(鋼上部工)工事

2027年2月  〃

 

 

c.販売実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

49,975

55,919(11.9%増)

建築

9,607

14,158(47.4%増)

その他

156

186(18.9%増)

合計

59,740

70,264(17.6%増)

(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。

首都高速道路㈱

(修)上部工補強工事1-207

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 大西南第二高架橋他10橋(鋼上部工)工事

国土交通省

平成30-32年度 新町川橋上部工事

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 上粕屋高架橋他5橋(鋼上部工)工事

当事業年度の完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。

㈱竹中工務店

八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事 A-1街区

清水建設㈱

東急MILANO再開発新宿 雑鉄骨工事外注

大成建設㈱

長崎TEC増強工事 第6DI棟

㈱竹中工務店

阪神阪急梅田一丁目一番地 D2 附帯鉄骨(F工区全節)

東洋エンジニアリング㈱

蒲郡バイオマス発電設備建設工事 燃料貯蔵棟工事一式

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

 西日本高速道路㈱ 9,590百万円 16.1%

当事業年度

 西日本高速道路㈱ 9,162百万円 13.1%

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態

 財政状態の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましては、資産の部では売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が20,527百万円増加し、これに対応する形で負債の部では支払手形・工事未払金等が10,331百万円、短期借入金が14,663百万円、いずれも前連結会計年度に比べ増加しました。

 この要因といたしましては、鉄構セグメントの中の鋼橋事業と土木セグメントにおいて複数年に跨る大型案件で工期途中の案件が増加し、当連結会計年度の中盤から運転資金が膨れ上がったことによるものと分析しています。近年の傾向として、橋梁事業において大規模更新事業や大規模補修案件の増加により、案件の大型化が顕著となり、結果として当該年度における竣工案件の多寡が運転資金に影響を及ぼしてきています。

 次に、総資産は28,820百万円増加の162,158百万円となり、純資産比率は前連結会計年度末比6.6%低下の47.3%となりました。これは上記運転資金の膨れ上がりに加え、投資有価証券が前連結会計年度に比べ1,152百万円、関係会社株式が同じく454百万円増加したことが主な要因ですが、前者は保有投資有価証券の評価額の上昇によるもの、また後者は持分法適用会社に係る持分法による投資利益を計上したことによるものであります。

(ロ)経営成績

 当連結会計年度は2020年度をスタートとした第2次中期経営計画の最終年度でした。結果として、売上目標は達成できませんでしたが、収益目標や財務体質の強化に関わる目標は達成することができました。

〔第2次中期経営計画目標実績(カッコ内は計画値)〕

売 上 高(3年平均)     1,124億円(1,160億円)

営業利益(3年平均)          56億円(42億円)

自己資本比率(19年度比)   3.6%改善(3.0%以上改善)

 売上高に関しては、当計画期間を通して新型コロナウイルス感染症が民間設備投資に係る建築事業や航空機使用事業関連に影響を及ぼしたことが要因と分析しています。利益に関しては、公共投資に係る橋梁事業や都内再開発に係る超高層ビルや半導体工場向け鉄骨が底堅く推移したことが主な要因と考えています。

 

当経営計画期間中の経営成績に係るポイントと考えられる事象は次のとおりであります。

(a)「新設」から「補修・保全」へのシフト

橋梁事業(鋼製及びPC橋梁)において「補修・保全」へのシフトは顕著になってきており、PC業界においては発注の半分以上を占めるまでになっています。これに対して当社グループは一定の対応はできているものの、案件の大型化などへの対応に課題を抱えています。

(b)工場稼働の平準化・安定化

鉄構セグメントのビル用鉄骨については、民間設備投資に左右される部分があり、案件の発注状況、受注案件の進捗状況によって工場の稼働へ影響が出てくるケースがあります。今後、影響が出る可能性の把握体制や出た場合の対応策、軽減策を整備・強化していく必要があると考えています。

(c)受注体制の強化

建築セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響もあったものの、計画期間を通じて受注の伸び悩みが顕著となりました。リピーター顧客の投資計画で受注が左右される傾向が強い状況にあります。得意とするシステム建築の市場環境自体は悪くない状況の中での受注が低迷した要因分析を行い、今後の改善に繋げていく必要があると考えています。

 なお、当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境や経営成績、セグメントごとの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は次のとおりであります。

 鉄構セグメントにおける鋼橋事業及び土木セグメントにおけるPC橋梁事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業及び建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。

 また、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に大きく影響を与える可能性があります。

 その他の影響を与える要因やリスクにつきましては「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について

 当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は関西方面での大型案件や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に係る道路の4車線化に向けた発注等が見込まれることから、一定程度の発注量が見込まれていますが、新設は長期的には緩やかな減少が想定されています。そのため、今後ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力や積算精度を向上させ、適正な事業量と収益の維持・拡大を目指します。また、新設鋼橋市場の縮小により工場製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋構造物市場等への展開にも取り組んでまいります。

 次に同セグメントの鉄骨事業では、首都圏を中心とした大型再開発案件を中心に事業展開を行っていますが、長引いていた五輪後の大型案件までの端境期が漸く終わり商談が本格化してきています。当社といたしましては、市場拡大に向けた工場ラインの増強や効率化投資を行ってきており、今後、鉄骨の製作とともに鉄骨建方まで一貫して対応できる強みを生かしつつ、事業ボリュームと収益の拡大を目指してまいります。

 土木セグメントではPC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注確保、原価低減、固定費圧縮の徹底を図っています。

 そのような中、高速道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場は近年急速に拡大したことに伴いゼネコンの進出が顕著となってきており、また案件の大型化に伴い、選別受注を余儀なくされる事態となっています。

 今後はJVでの受注も視野に受注戦略を再検討するなど、受注の安定的な確保と採算性の向上で一層の収益拡大を目指してまいります。

 建築セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受けていました。そのような中、これまで新たなターゲット市場として位置付けていた大型多層階倉庫を複数受注することができました。しかしながら、その後のロシアのウクライナ侵攻に端を発した原材料価格の上昇の波を受け、大幅な採算悪化を招き、当連結会計年度の損益に影響を及ぼす結果となりました。当社といたしましては、今回の件を糧とし、受注力の強化、施工体制の見直し等を行い、収益性の高いセグメントの再構築を目指してまいります。

 ソリューションセグメントにつきましては、国土交通省が推進するDX化の流れに乗って、設計から工事までのBIM/CIMが本格化する中、3次元CADを基軸とした当社グループの製品群が好調に推移したことに加え、これまで行ったM&Aの効果等もあり好調に推移しました。この事業環境は当面続くと想定されることから、当社グループといたしましては引き続き成長分野と位置付け、積極的に取り組んでまいります。

 その他では航空機使用事業は新型コロナウイルス感染症の影響で業績の低迷が続きましたが、徐々に改善してきています。また、受注の伸び悩みで業績が悪化した橋梁付属物販売事業につきましては今後受注の確保と固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・キャッシュ・フロー

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益が5,933百万円、減価償却費が2,874百万円あったにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローは9,673百万円のマイナスとなっています。これは、鉄構セグメントの中の鋼橋事業と土木セグメントにおいて複数年に跨る大型案件が工期途上となり、当連結会計年度の中盤から運転資金が膨れ上がったことが主な要因です。これに伴い、短期借入金を14,663百万円増加させるなどで対応しましたので、財務活動によるキャッシュ・フローは12,213百万円のプラスとなりました。

・資金需要

 当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。

 運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては上述のとおり特に鉄構セグメントと土木セグメントで増加いたしました。

 設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空機使用事業を営むに必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で4,087百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。

・財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入(金融機関引き受けによる私募債含む)を中心とした資金調達を行っています。

 運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関14行との間で総額298億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。

 金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と弾力性を確保しています。

 また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。

・経営資源の配分

 当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローについては将来に向けての「設備投資」と「株主還元」、「財務体質強化」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そのような中で、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画の実績は以下のとおりとなりました。(カッコ内は計画値)

営業キャッシュ・フロー(3年間計)                       208億円(150億円)

 

設備投資  99億円(100億円)

株主還元(※)22億円(15億円)

財務体質強化 87億円(35億円)

(※)株主還元に関しましては、損益状況やキャッシュ・フロー、また昨今の上場企業を取り巻く状況等を鑑み、2023年2月より、配当方針をこれまでの「安定した配当」方針に加え、「連結配当性向30%を目途」とする方針へ変更しています。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

契約会社名

相手方の名称

契約品目

契約内容

契約期間

川田建設㈱

(連結子会社)

極東鋼弦コンクリート振興㈱

フレシネー工法

1.フレシネージャッキの有償借入

2.PC鋼材及び定着装置・ケーブル付属品の有償購入

1977年10月11日より

1982年10月11日まで

以後2年毎更新

㈱橋梁メンテナンス

(連結子会社)

S.A.S FPC

(フランス国)

シーペックジョイント

同製品の国内製作・販売ライセンス契約

2015年7月11日より

2018年7月9日まで

以後3年毎更新

(注) 上記の技術受入契約においては、それぞれロイヤルティとして、資・機材の利用あるいは売上に対して一定額を支払っています。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、社会のニーズに高い技術で応えることができるよう、研究開発活動を積極的に推進し新しい技術の開発や知見の獲得に努めています。研究開発体制としては、川田テクノロジーズ㈱がグループを跨いだ生産性向上技術や新しい市場を目指した技術開発を担当し、グループ各社が事業活動に直結する研究開発を担当しています。

 当連結会計年度における研究開発費は1,006百万円であり、セグメント別の主な内容は次のとおりであります。

 

(鉄構セグメント)

 主に川田工業㈱の橋梁事業部が、鋼構造・複合構造に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は399百万円であり、材料・構造・施工・保全などに関する新技術の開発・改善を行っています。主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 複合構造に関する研究開発

 当社グループが得意とする鋼材とコンクリートの複合構造物では、鋼・コンクリート合成床版やプレビーム合成桁等の製品で多くの実績を収めてきました。合成床版に関しては、施工性や耐久性を大幅に向上させた「SCデッキ・スタッドレス」の採用が増加し、安定した受注に繋がっています。また、施工効率をより一層高めるため、構造面での改善も進めています。さらに、ニーズが高まっている橋梁の架け替えに適した製品に関しても、SCデッキ・スタッドレスで培った技術の活用を進めるなど、競争優位性をさらに高めるためのリニューアルを進めています。

② 橋梁保全技術に関する研究開発

 高速道路の高架橋から地方自治体の一般橋梁まで、「最小限の労力と費用で適切な維持管理が可能な保全アイテムの創造」をコンセプトに継続的な開発を進めています。鋼床版桁や鋼製橋脚の疲労き裂抑制対策として開発した補強工法では、今後の拡販に向けた試験施工や実工事への展開を行いました。また、歴史的鋼橋に多く採用されているリベット接合の取替需要に対し、開発済のリベット加熱装置に加え、より安全で効率の良いリベット打設工法の開発にも取り組み、施工機器のさらなる改良を進めています。今後迎える保全事業を主体とした時代を見据え、多種多様なニーズに応えるためのラインナップを整えています。

③ 生産技術に関する研究開発

 溶接施工においては、低スパッタ・低コストの新たなMAG溶接法の開発、溶接部の疲労強度を高める施工法の開発、溶接の可視化による溶接現象の解明と理解、及びこれを通じた最適溶接条件の検討などを進めています。また、川田テクノロジーズ㈱と共同で、ハイダイナミックレンジ画像処理技術を用いた溶接技量評価技術の開発も進めています。本技術は当連結会計年度に、「3Dデジタル溶接マスクシステム」として、製品販売を開始しています。さらに工場製作においては、最新の点群データ取得機器(レーザートラッカー、3Dスキャナー)の利用において、レーザーによる計測精度が向上しており、その特長を活かして出来形の高精度な計測と管理による仮組立作業の省力化を進めています。

④ 生産性向上に関する研究開発

 製品の品質や工事の安全性を高めながら、より一層の生産性向上を図るため、様々な現場作業の機械化、自動化を進めています。既設構造物に隣接して行う橋梁架設工事を安全かつ効率よく行うため、クレーンで吊り上げた長尺な橋桁の回転を、人力によらず機械的に制御する装置を川田テクノロジーズ㈱と共同で開発しました。また、工場や現場での各種の品質・出来形管理に関しても、IoTやクラウドサービスを利用した自動化技術の開発を進めています。これらの機械化、自動化の促進により、製品品質の向上と現場の生産性向上を両立させ、顧客満足度の向上を図っていきます。

 

(土木セグメント)

 川田建設㈱が、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は112百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 新設構造物の品質・耐久性向上技術に関する研究開発

 各種施工管理システムの高精度化・全自動化を目的として研究開発を推進しています。ジャッキの油圧ポンプ操作を含めてタブレットで集中管理できる全自動緊張管理システムをNEXCO発注の工事で適用し施工中(工期:2022年4月~2024年8月)です。また、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを配合した高品質・高耐久性コンクリートの研究開発を継続実施しており、高炉スラグ50%置換の配合は凍結融解抵抗性や塩化物浸透に対する抵抗性が良好なことを確認できましたので、さらに高置換率の配合について検討していきます。

② 更新技術に関する研究開発

 今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、更新用プレキャストPC床版とPC中間定着システムの研究開発を継続して推進しています。前者についてはNEXCOでの工事が施工中を含めて21件と実績を伸ばしており、競争力向上のために開発を進めていた繊維補強軽量プレキャストPC床版は輪荷重走行試験が完了し、NETIS登録を申請しているところです。後者についてはPC鋼線やPC鋼棒の種類ごとの定着金具のラインナップを広げ、鉄道駅舎の改築工事等で採用されました。

③ 保全技術に関する研究開発

 既設PC橋梁の維持管理をターゲットにした非破壊検査技術、延命化・長寿命化技術について工法化を目指して、大学や専門会社と共同して基礎的な研究開発を継続しています。非破壊検査技術として塩害劣化したプレキャスト桁におけるPC鋼材の破断検知の研究を継続し、長寿命化技術としてKKグラウト注入工法が完成し、予防保全技術として簡易な塩分除去工法を研究中です。また、補修工事における作業環境改善対策として、川田テクノロジーズ㈱と共同で、超短焦点プロジェクタを使った罫書作業省力化技術の開発を行っています。首都高速道路の保全工事での罫書き作業時間の削減が期待されています。

 

(建築セグメント)

 川田工業㈱建築事業部が、川田工業㈱事業企画部と連携して研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は33百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 床組構法に関する研究開発

 鉄骨床組の躯体数量を低減できる床組構法は2021年度に構造評定を取得しました。多層階物流倉庫の実施物件に採用が増えており、構造設計の効率化が望まれていました。当連結会計年度は構造設計の電算化を行い、スピーディーな検討と設計が可能となりました。多層階物流倉庫の設計に活用し受注拡大を目指します。

② 耐火断熱仕様の外壁材の研究開発

 多層階建物や都市部に建設する建物の外壁には耐火性能が要求されます。また、倉庫・工場建築においては室内の温度環境を重視する案件が少なくなく、外壁に断熱性能も求められます。これら耐火性能と断熱性能を併せ持つ新たな耐火断熱仕様の外壁材を開発しました。当連結会計年度は耐火構造の外壁材として国土交通大臣の認定を取得しました。今後システム建築の外壁ラインナップに加えて拡販を進めていきます。

③ 環境事業に関する研究開発

 水やりが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」は、インド、フィリピンにおいて新たな実験施工を行い、北アメリカ、インドにおいては現地材料調達調査を行っています。海外における施工済みの実験場のモニタリングを継続的に実施し、実験結果に基づく研究開発を引き続き行うことで、香港に続く海外市場の開拓を目指します。

 また、「みどりちゃん」が有する機能を壁面緑化に応用したローメンテナンスでデザイン性に優れた新しい壁面緑化システム「Stand by みどりちゃん」の実証実験を前年度に引き続いて国内で実施しました。そしてこの実証実験結果から得た課題に基づき、ユニット形状を一部変更したうえで、製品リリースを行いました。今後国内外において市場開拓を行ってまいります。

 さらに、都市緑化機構の「先駆的な緑化関連技術開発のための実証調査」に「屋上緑化(当社みどりちゃん)における再生木炭の利用による雨水貯留及び流出遅延に対する効果検証試験」が採択されました。人工降雨に対する供試体の排水遅延時間と質量変化等を調査し、再生炭の保水効果、流出遅延効果を評価することができました。

 

(ソリューションセグメント)

 川田テクノシステム㈱が建設向けソフトウエアソリューションに関する研究開発を、カワダロボティクス㈱が産業用双腕ロボットに関する研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は332百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 3D点群ヒートマップ表示に関する研究

 発注者の出来形検査を効果的に実施することや施工誤差を確認するため3D点群と3Dモデルを重ね合わせヒートマップを作成します。点群は加工が難しいことからその情報の真正性も担保して実施できるものとして、昨年度、国土交通省からも着目された技術です。

② 土工のCIMに関する研究

 地中埋設物の干渉を勘案した設計CADシステム及び矢板掘削に関する3Dモデルと設計が連動したシステムのサービスを開始しました。インフラ工事を請負う会社や官公庁向けの情報管理システム、設計システムとして幅広い、利用性と発展性が期待できるものとなっています。

③ DXルームの設立

 DXが国全体で推進される中、モーションキャプチャを使用した3Dモデルが表現できる大型ビジョン施設を構築しました。災害時における広域の情報把握や大型工事の情報把握を現地に行かず、この施設を用いて情報確認できます。

④ 双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発

 双腕ロボット関連では、川田テクノロジーズ㈱と共同で「NEXTAGE」のハードウエア及びソフトウエアの性能・機能、拡張性向上を目的とした要素技術開発を実施しています。成果として、当連結会計年度では、NEXTAGEシリーズの新型ロボット「Fillie」のAPIソフトウエア及び研究向けOPEN機が市場リリースされました。

⑤ 外部研究機関との共同開発

 国際的な先端研究機関であるエディンバラ大学(イギリス)とのビジュアルフィードバックや感覚フィードバックの共同開発や、テクナリア(スペイン)を含む欧州の15の研究機関と共同でEU HORIZON PROJECTに参加するなど、双腕ロボットの市場価値を高めるための技術開発を継続して実施しています。

 

 この他、特定のセグメントに関連付けされない研究開発も実施しています。これらの当連結会計年度における研究開発費は128百万円であります。主な研究開発の状況は次のとおりであります。

 川田工業㈱では、非平衡プラズマによる気相化学反応を利用した水素製造やCO₂分離還元技術の研究開発に国立大学法人東海国立大学機構(岐阜大学)と共同で取り組んでいます。当連結会計年度には、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO₂有効利用拠点における技術開発」プロジェクトに対して、「大気圧プラズマを利用する新規CO₂分解・還元プロセスの研究開発」のテーマが岐阜大学と共同で採択されました。また、川田テクノロジーズ㈱では、㈱オリィ研究所(本社:東京都中央区、代表取締役:吉藤健太朗)と共同で、外出困難者の社会参加を目指した遠隔操作ロボットの開発を行っています。当連結会計年度は双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」を応用した分身ロボットシステム「Tele-Barista」の継続運用に加えて、子ども向けの接客に用いる作業や操作者による遠隔サインなど、遠隔作業の試作及び実際のターゲット顧客への実証実験のバリエーションを増やし、可能性の追究を実施しました。

 当社グループでは引き続きサステナブル社会の実現に向け、関係機関と協力しながら研究開発を続けてまいります。