第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

〔経営の基本方針〕

当社グループの事業経営は、創造と効率を両輪として生み出されたすぐれた製品を提供することにより、社会に進歩と充実をもたらすことを理念としております。また、全ての面で国際的水準において優位に立ち、企業価値を高めることで株主を始め皆様の期待に応えることを基本方針としております。

 

〔経営環境及び会社の対処すべき課題〕

当社グループを取り巻く事業環境は、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済の分断に起因したLMEニッケル価格の急激な変動や原材料価格の高騰、東アジアの過剰設備等を背景にした輸入ステンレス鋼材の国内マーケットへの流入等、近年大きく変化しており、乗り越えるべき課題が顕在化しております。

再生可能エネルギー分野など環境分野については中国をはじめ引き続き底堅い需要が見込まれますが、その他の高機能材やステンレス市場全般の在庫調整や需要の動向については、依然として先行き不透明な状況が継続することが予想されます。

こうした事業環境を踏まえ、2025年の当社創立100周年を越えてその先も持続的な成長を遂げるため、2023年度を初年度とする3か年計画「中期経営計画2023」を策定いたしました。

本中期経営計画に基づく諸施策を着実に実行し、中長期的な企業価値向上に向けて財務基盤の強化と収益力向上に取り組んでまいります。

 

〔中長期的な会社の経営戦略〕

当社グループは、2023年度を初年度とする3か年計画「中期経営計画2023」を策定いたしました。

「中期経営計画2023」の概要

1.「中期経営計画2023」での目指す姿

「『製品と原料の多様化』を追求し、ニッケル高合金・ステンレス市場におけるトップサプライヤーとして地球の未来に貢献」

 

2.「中期経営計画2023」の基本戦略

①高度化する市場ニーズを追求し新たな価値を生み出す産業素材の開発・提供

<主要施策>

・成長分野(環境・脱炭素など)、ターゲット市場(中国・インドなど)への高機能材(※)の拡販

・中国合弁会社を主軸にアライアンスの深化・拡大による製品アイテムの拡充(鋼種・サイズ)

・一般ステンレス事業における輸入材との差別化領域を拡大し安定的な収益基盤維持

※ 当社の高機能材はニッケル高合金を中心に一般ステンレスよりも機能性が高いアイテム

②技術の優位性を高め市場環境の変化に対応する効率的な生産体制の構築

<主要施策>

・多様な高機能材の安定的な増産を実現する製造技術の開発・確立

・新設設備の最大能力発揮と既存設備の強化による操業安定化・生産性向上

・カーボンニュートラルに資する将来の製造技術の優位性確保(カーボンレス・ニッケル製錬など)

・原料調達の多様化により継続的なコスト競争力強化

③環境変化にも揺らぐことのない持続可能な経営基盤の確立

<主要施策>

・中長期的な視点での人的資本・研究開発・設備投資計画の立案・実行(年間100億円以上)

・DX推進による経営リソースの効率的活用

・「信用格付A格」取得を視野に入れた財務基盤の強化

・グループ経営プラットフォームの共通化による経営基盤強化

 

 

3.「中期経営計画2023」の設備投資計画

川崎製造所における高機能材増産対応とカーボンニュートラル関連の戦略投資を中心に設備効率とコスト競争力強化に向けて、年間100億円規模の設備投資を継続してまいります。とりわけ、戦略投資の投資判断に際しては、インターナルカーボンプライスを設定しカーボンニュートラル実現に向けて積極的な設備投資を実行してまいります。

但し、設備投資全体の運営としては、優先度や実施時期について市場環境の変化に合わせて適宜見直すとともに、実行段階においては投資案件ごとの精査をおこない投資金額の削減を図るなど効率的かつ効果的な設備投資を実行してまいります。

<設備投資金額(3か年合計)>

内訳

決裁ベース

 検収ベース

戦略投資

 115億円

 176億円

コーポレート基盤強化(注1)

 55億円

49億円

更新投資

90億円

77億円

グループ会社

50億円

42億円

合計

310億円

344億円

 

(参考:減価償却費3か年合計185億円)

(注)1.コーポレート基盤強化:研究開発、環境対応、システム関連等

 

4.「中期経営計画2023」の目標数値

「中期経営計画2023」達成目標

 

2025年度

「中期経営計画2020」実績平均

高機能材売上高比率(単体)

50%

41%

EBITDA(連結)

200億円以上

202億円

ROE(連結)

10.0%

17.2%

総還元性向(連結)(注1)

35%

25.3%(2022年度見込み)(注2)

CO2削減率(2013年度対比単体)(注3)

▲46%以上

▲44.8%(2022年度見込み)

(参考)ネットD/Eレシオ

0.5~1.0

0.93(2022年度)

 

(注)1.価値向上の為に戦略設備投資を積極的に行うことで「稼ぐ力」を高めるとともに、株主還元として安定的かつ継続的な配当を実施し、必要に応じて自己株式の取得を機動的に行うなど、総還元性向35%を目指します。

2.2022年度実績 通期配当+自己株式の取得(5月9日開示)により、「中期経営計画2020」目標の総還元性向25%程度を達成する見込みです。

<ご参考>総還元性向実績:2019年度 17%(「中期経営計画 2017」最終年度)

3.既に発表していますカーボンニュートラル計画で掲げた2030年度達成目標を前倒しすることにいたしました。

 

 なお、中長期的な視点で、時価総額1,000億円超をターゲットに、企業価値向上に向けて財務基盤強化と収益力向上に取り組んでまいります。そのために、「中期経営計画 2023」で達成目標として掲げている「資本コストを上回る自己資本利益率(ROE)の水準10%」を上回る水準を確保するとともに、キャッシュフロー創出力を高め、持続的な企業成長に資する戦略設備投資と株主還元を実施し、市場からの評価を得ることで「株価純資産倍率(PBR)≧1」を確保すべく努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、目指すべき姿として強靭でしなやかな「レジリエントカンパニー」の実現を掲げ、持続可能な社会の構築を目指すとともに、当社グループ自らの持続可能性を高める取り組みを進めております。加えて、足元ではSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルなど社会のサステナビリティに対する要求が高まるなど、外部環境が大きく変化しています。そこで、これに対応すべく当社が今後取り組むべき課題を抽出し「重要課題」として特定しております。当社はこれらの重要課題を企業の成長戦略と捉えるとともに、課題解決を通じて持続可能な社会の実現を推進いたします。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

重要課題1

社会に貢献する商品の提供

重要課題2

事業活動を通じた地球環境への負荷低減

重要課題3

安全で安定したモノづくりの実現

重要課題4

全ての人に平等で働きがいのある職場づくり

重要課題5

持続可能なパートナーシップの構築

重要課題6

社会環境に適合したコーポレート基盤の進化

 

 

1.気候変動

当社は、気候変動問題への対応を経営課題の一つと捉えており、サステナビリティ推進会議を中心に推進しております。具体的には、シナリオ分析を行い、気候変動に伴うリスクと機会を評価し、その結果をサステナビリティレポート等で開示しております。

 

(1)ガバナンス

当社は、サステナビリティに関わる重要課題を全社的取り組みとして推進するため、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置しております。サステナビリティ推進会議は、サステナビリティに関わる重要課題について特定するとともに、各部門および各常設委員会(環境委員会、開発委員会、コンプライアンス委員会、IR委員会、NASグループ品質保証委員会、規制輸出等管理委員会)のサステナビリティに関わる重要課題について、トップマネジメントとして全社横断的に、活動内容の評価、戦略の推進を行うことで、当社のサステナビリティの取り組みを牽引しております。

 


 

気候変動に関しては、前年度のCO2排出量実績(スコープ1+2)、スコープ3の算定、TCFDシナリオ分析結果等について報告し、また適宜取締役会でも報告しております。

スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出

スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

(2)戦略

①カーボンニュートラルへのロードマップ

当社では、2050年度を見据えたカーボンニュートラルへのロードマップを策定しております。スコープ1では、大江山製造所のリサイクル原料の使用拡大と、カーボンレス操業技術の確立を目指しております。燃料に関しては当面はLNGなどへの燃料転換を進め、その後は合成メタンや水素など新しい燃焼システムの導入を図ってまいります。スコープ2では、まず2022年1月に稼働した高効率電気炉設備(E炉)の省エネ効果の刈取りを行っております。またインバーター化など、エネルギー効率化に向けての設備更新と並行して、グリーン電力の活用を検討しております。そして、あらゆる省エネを行った上で生産プロセス上削減できないCO2については、カーボン・オフセットも検討いたします。

 

②取り組み状況

当社は、事業活動のあらゆる面で徹底した省エネを推進しております。川崎製造所では、設備のインバーター化、照明のLED化などに加え、省エネ性能に優れた高効率電気炉設備を導入しました。2021年度から電力需給変動に対応してフレキシブルに操業パターンを変更する、いわゆるデマンドレスポンスの運用を始めました。また2022年度から、CO2排出量の増減を伴う設備投資について、社内で炭素価格を設定し、CO2排出量を仮想的に費用換算するインターナルカーボンプライシング(ICP)制度の運用を始めております。

また大江山製造所では、ステンレスの原料となるフェロニッケルを製造していますが、「カーボンレス・ニッケル製錬への挑戦」を公表し、リサイクル原料(都市鉱山)の使用拡大による燃料原単位の改善や、CO2排出量の抑制を進めております。

      ※「カーボンレス・ニッケル製錬への挑戦」の内容の詳細につきましては、

当社ウェブサイト(https://ssl4.eir-parts.net/doc/5480/tdnet/2099171/00.pdf)をご参照下さい。

 

 

(3)リスク管理

気候変動に伴うリスクと機会は、当社が持続可能であるためにも重要な課題であると認識しております。そこで気候変動財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という)の提言に沿ったシナリオ分析を行った結果、カーボンプライシングの追加負担発生による製造コストの増加や、電力や燃料価格の上昇は、当社にとって大きなリスクと評価されました。今後も、IEA  World Energy Outlookなど最新の情報を入手し、年1回を目処にサステナビリティ推進会議にて議論し、必要に応じて見直しを行ないます。なお当社は、2022年9月にTCFD提言への賛同を表明しております。

 

インパクト

評価項目

影響評価

リスクと機会

対応策

4℃

1.5℃

移行

リスク

カーボンプライシングの導入

 

大きい

・カーボンプライシングの追加負担発生による製造コストの増加

・省エネ、カーボンニュートラルへの設備投資と操業改善の推進

・水素、アンモニア、合成メタン、バイオ燃料などへの燃料転換

・カーボンレスなニッケル製錬技術の開発

カーボンニュートラルを目指した社会への移行

 

大きい

・電力や燃料価格の上昇

・原料価格・輸送費などの調達コストの上昇

・操業における省エネ施策の推進(エネルギー原単位向上)

・コストを勘案した適正な製品価格形成

・CO2排出量削減のための設備投資額増加

・環境負荷低減効果も織り込んだ投資判断の実施

・投資コストを勘案した適正な製品価格形成

・CO2排出量の多い需要分野の縮小または消滅(低効率石炭火力用FGD、ボイラー、EGRなど)

・顧客のニーズに合わせた環境適合型商品の開発

・水素、再エネ、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、二次電池、CCUSなど新規需要捕捉に向けたソリューション営業

 

 

大きい

・環境・エネルギー分野など新たな需要の取り込み

・リサイクル原料の需給タイト化

・高効率電気炉設備によるリサイクル原料利用の多角化

・安価な調達ソースの確保(大江山製造所)

物理的リスク

異常気象による事業への影響

大きい

・自然災害(豪雨・強風・高潮など)が多発かつ激甚化による生産停止、サプライチェーンの分断、物流停止

・自然災害対策(設備点検、強化、BCP対応など)の検討、実行

・生産受委託など他社との設備の相互有効利用

・国内資源の活用、物流(販売・調査)ソースの安定確保などサプライチェーン整備、多様化

気温上昇に伴う職場環境の悪化

・感染症・熱中症など健康被害の発生リスクの増大

・作業環境改善、省力化投資の実行

・感染症、熱中症対策BCPの強化

 

▼:リスク、▲:機会、-:影響がないまたは小さい

 

(4)指標及び目標

①CO2排出量削減目標

当社は、気候変動の影響による自然災害の深刻化やそれに伴う脱炭素社会への移行の世界的な流れを踏まえ、2030年度CO2排出量削減目標(スコープ1+2)を46%(2013年度対比)と設定しております。またカーボンニュートラル社会の実現に向け、2050年度実質ゼロを目指してまいります。またNASグループ全体としても、2030年度CO2排出量46%削減を達成できるよう推進してまいります。

 

②CO2排出量実績(スコープ1+2)

2021年度のCO2排出量は、川崎製造所と大江山製造所を合わせた当社(単体)は411千t-CO2、NASグループ全体では443千t-CO2となりました。CO2排出量は、生産量の影響を大きく受けますが、原単位を着実に下げていくことで、削減目標を達成すべく取り組んでまいります。

 

CO2排出量実績(スコープ1+2)

 

2013年度

(千t-CO2

2021年度

(千t-CO2

当社単体

768

411

当社グループ(当社を除く)

44

32

 

 

販売量1t当たりの原単位

 

2013年度

(t-CO2/t)

2021年度

(t-CO2/t)

当社単体

3.03

1.83

 

 

サプライチェーン全体のCO2排出量(スコープ3)

事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するサプライチェーン全体のCO2排出量を把握するため、環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.4)」に基づいて、当社のスコープ3排出量の試算を行いました。

スコープ3の合計は669千t-CO2で、当社のスコープ1+2のおよそ1.5倍となりました。またカテゴリー別ではカテゴリー1「購入した製品・サービス」が全体の75%を占めております。

CO2排出量(スコープ3)

カテゴリー

CO2排出量

(千t-CO2

構成比

1.購入した製品・サービス

502

75%

2.資本財

39

6%

3.スコープ1,2に含まれない燃料およびエネルギー活動

38

6%

4.輸送、配送(上流)

89

13%

5.事業から出る廃棄物

0.7

0%

6.出張

0.1

0%

7.雇用者の通勤

0.3

0%

669

100%

 

排出原単位の出典:①サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.2)、②IDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)

 

なお、CO2排出量の2022年度実績は集計中であり、2023年9月末発行見込の統合報告書2023にて開示する予定であります。

※統合報告書の詳細につきましては、当社ウェブサイト(https://www.nyk.co.jp)をご参照下さい。

 

 

2.人材育成方針及び社内環境整備方針

(1)人材育成方針

直面する様々な経営課題に取り組み、さらなる企業価値の向上を実現するため、当社の行動指針を体現できる人材を育成いたします。

<当社の行動指針>

Ⅰ.法令を遵守し、社会ルールを尊重し、社会的良識を以って行動をする。

Ⅱ.変化には、知力を凝らし、進取の精神を以って挑戦する。

Ⅲ.目標は、万難を排し、勇気を以って遂行する。

Ⅳ.多様と異質を尊重し、協和の心を以って総合力を発揮する。

 

具体的には、以下のような多様で充実した学ぶ機会を提供いたします。

様々な業務経験と個々の力量に応じた職場OJT、階層別教育

業務に係わる知識および技能習得のための定期的な研修

自分の得意分野や興味のある分野を学ぶための自己啓発支援

高い技術力や専門性を高めることに加えて社外における幅広い経験を得るための、海外派遣や国内大学等で学ぶ機会

 

(2)社内環境整備方針

従業員一人一人が自己の能力を十分に発揮し、やりがいをもって伸び伸びと業務に取り組むため、安心して働ける社内環境を整備いたします。

具体的には、以下のような施策に取り組んでまいります。

性別、年齢等の異なる属性の従業員が働く中、職場のコミュニケーションを円滑にするための制度

学歴や入社経緯に関わらず能力を十分に発揮するため、様々なキャリアに挑戦できる制度

ハラスメント防止、育児・介護休業制度の整備

従業員のライフステージが変化することを踏まえた、労働時間を含めた働き方改革

 

 

3 【事業等のリスク】

本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、以下に記載した事項の他に現時点では予測できない事象が、当社グループの業績及び財政状態、キャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

また、当社のリスク管理体制の整備状況については「第4 提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等」の記載、対応策等については「サステナビリティレポート2022」(当社ホームページ https://www.nyk.co.jp に掲載)もあわせてご参照下さい。

 

1.当社グループは、経営方針、事業戦略にもとづき、市場や経済の環境変化に対応すべくリスクコントロールを行い、事業経営を進めております。これについて、以下を重要なリスクと認識しております。

 

(1)製品需給における市場環境の変動リスク

①ステンレス特殊鋼業界における供給過剰リスク

ステンレス特殊鋼業界においては、特に中国をはじめとするアジア地域における一般材の生産能力の増加により、需給バランスや製品価格の動向等が影響を受けるリスクがあります。

②ステンレス特殊鋼製品の需要及び販売価格動向のリスク

当社グループが販売するステンレス特殊鋼製品の需要及び価格動向は、国内の景気動向や取引先の需要動向、海外各地域の政治・貿易施策・経済情勢の変動、国内外メーカーの当該市場への拡大・強化による競争の激化等により影響を受けるリスクがあります。

③国際的な鉄鋼貿易を巡る保護主義の台頭及び地政学的リスク

国際的な政治、経済情勢の変化や各国の通商政策の変化に伴い、鉄鋼貿易に係る関税や数量規制等が一部地域で保護主義に向かう動きがあります。また、国際情勢をめぐる地政学的リスクの高まりにより、鉄鋼貿易の需給構造も影響を受けるリスクがあります。

当社グループが注力する高機能材は、売上の約70%を海外市場に依存しており、こうした保護主義的な貿易政策の動きや国際的な政情不安により、高機能材の輸出が影響を受けるリスクがあります。

以上のような外部環境変化のリスクに対応するため、「中期経営計画2023」に掲げた諸施策を着実に実行することで、当社グループの戦略分野である高機能材事業の拡大、開発製品の多様化、事業基盤の強化に努めてまいります。「中期経営計画2023」の詳細につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 〔中長期的な会社の経営戦略〕」をご参照下さい。

 

(2)原材料の価格及び調達環境、並びに為替レートの変動リスク

①レアメタルの価格及び調達環境の変動リスク

当社グループ製品の主要な原材料には購入屑の他、ニッケル、クロム、モリブデン等のレアメタルを含み、これらの安定調達のために調達ソースの多様化に努めておりますが、価格及び調達環境については、国際的な需給バランス、原産国の資源政策、国際紛争、投機的取引等に起因する相場変動の影響を受けるリスクがあります。

②為替レートの変動リスク

当社グループは、ステンレス特殊鋼製品の輸出や原材料の輸入等で外貨建て取引を行なっており、為替相場の大幅な変動により影響を受けるリスクがあります。

以上のような価格及び為替の相場変動による当社グループの業績への影響は、状況により損益両面を備えておりますが、相場変動リスクをヘッジするため、社内規程である「ヘッジ取引規程」に基づき、必要に応じて商品デリバティブ取引や為替予約取引を利用しております。また、当社の生産インフラの特徴を生かし、社会から排出されるリサイクル原料(都市鉱山)多様化と使用拡大を進めることで、リサイクル原料比率をより一層上げてまいります。

 

(3)設備事故及び労働災害の発生リスク

当社グループの主要設備において重大な事故や労働災害が発生した場合、生産活動が停滞するリスクがあります。

当社においては、安全衛生活動を組織的、体系的に運用管理する仕組みとしてOSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)を導入して安全衛生レベルの向上に取り組んでおり、働く人全てが健康で安全に働ける職場の形成を目指しております。また、「中期経営計画2023」に掲げた戦略設備投資を実行することにより安定・安全稼働、作業環境改善を図ってまいります。

 

(4)設備投資に関するリスク

当社は「中期経営計画2023」において高機能材増産対応とカーボンニュートラル関連の戦略投資を中心に設備投資を継続してまいります。工事の進捗遅れ等の不具合が生じたり、想定した投資効果を十分に得られなかった場合、当社グループの業績や財政状態が影響を受けるリスクがあります。

当該設備投資計画は、今後の経営環境の変化を見据え、経営資源の最適配分をすべく慎重に検討を重ねたものでありますが、遂行過程においても状況変化を的確に捉え、必要な見直しを適切に行ってまいります。

 

(5)大規模な自然災害等の発生リスク

想定を超える大規模な自然災害(台風、地震等)や感染症の流行が発生した場合、当社グループの主要設備の操業停止、主要取引先の被災、物流・通信・情報システムの混乱等が生じるリスクがあります。

当社グループが販売する製品の主要な製造拠点は当社川崎製造所内に集中しており、製造拠点の一点集中は効率的な生産が可能になる等の利点がある反面、同製造所が被災した場合、生産活動に甚大な影響を及ぼし、販売収益の大幅な減少や顧客への供給不足、多額の設備復旧費用や外部委託費用の発生等が生じるリスクがあります。

上記のような不測の事態の発生に備え、大規模地震等を想定したBCP(事業継続計画)を作成し、その訓練と見直しを継続的に行うことにより、事業活動への影響を最小限に止めるための取り組みを進めております。また、感染症流行時の対策として、職場での感染防止対策の徹底やテレワーク体制の整備、WEB会議システムの導入等を実施しております。

 

(6)金融市場及び資金調達環境の変動リスク

金利情勢やその他金融市場の変動が当社グループの借入金金利や資金調達コストに影響を及ぼすリスクがあります。

また、当社グループの借入金には財務制限条項を付したシンジケート・ローンが含まれており、当社または当社グループの財務状況悪化等により当該財務制限条項に抵触した場合、期限の利益を喪失するリスクがあります。

金利変動によるリスクをヘッジするため、必要に応じて金利スワップ取引を利用しております。また、ヘッジ取引の利用にあたっては、社内規程である「ヘッジ取引規程」に基づき運用しております。

 

(7)気候変動への対応リスク

当社グループはエネルギー多消費型産業である鉄鋼業の一員であり、カーボンニュートラルに積極的に取り組んでおりますが、将来的なカーボンプライシングの負担発生、電力をはじめとしたエネルギーコストの増加、CO2排出量の多い需要分野の縮小や新たな需要の取り込みの遅れ等が生じるリスクがあります。

当社においては、従来の輸入ニッケル鉱石および石炭を主体としたニッケル精錬から脱却し、リサイクル原料を主体とした「カーボンレス・ニッケル精錬への挑戦」を進め、カーボンニュートラルへのロードマップの取り組みを着実に進めてまいります。また、脱炭素社会の実現へ向け、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った気候変動に伴うリスクと機会の分析を行い、2022年9月にTCFD提言への賛同を表明しました。

 

 

2.当社グループは、持続的発展が可能な企業であり続けるために、グループ横断的に各部門のリスク認識を定期的にモニタリングしております。このうち以下を重要なリスクとして特定しています。

 

(1)環境規制に関するリスク

当社グループの事業活動は、大気・水質・土壌等の汚染、化学物質の使用、廃棄物処理等に関して、様々な環境規制を受けており、これらはより厳格に適用される方向にあります。このため、規制遵守に係るコスト増加や環境負荷低減に向けた社会的責任が増加する傾向にあります。

当社グループにおいては、様々な環境規制を遵守し、環境負荷を低減させるための諸施策を実施しております。また、「中期経営計画2023」に掲げた戦略設備投資を実行することにより環境配慮型の製造所を構築してまいります。

 

(2)品質保証に関するリスク

当社グループが注力する高機能材は、厳しい使用環境下での高い信頼性を求められるものも多く、品質問題が発生した場合は、補償金の支払い、信用失墜による売上減少、品質保証の規格認証の取消等が生じるリスクがあります。

当社においては、JIS Q 9001/ISO 9001及びJIS Q 9100の要求事項に合致した品質マネジメントシステムを確立し、この実施と継続的改善に取り組んでおります。また、品質監査部門によりグループを通じた品質管理体制強化のための方針を定め、監査活動等を通じてグループ全体のレベルアップを図っております。

 

(3)情報システムセキュリティに関するリスク

当社グループが運用する情報システムや、情報システムが保有する技術情報・経営情報等の社内情報が、外部からのサイバー攻撃や情報システム機器・ネットワーク等の物理的な破壊により、情報システムの運用停止や社内情報等が流出・逸失する可能性があります。このような事態の発生により、生産・販売等のあらゆる企業活動が制約される他、情報の流出に係る損害賠償金の支払い等が発生するリスクがあります。

上記に備えた当社の情報管理体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等 (1)コーポレートガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 Ⅰ内部統制システムに関する基本的な考え方 2.業務の適正を確保するための体制の運用状況 ・上記③については、」をご参照下さい。

 

(4)人材確保に関するリスク

国内の労働人口の減少に伴い、当社グループが必要とする人材の確保が困難になった場合は、長期的に安定した事業活動、組織の活性化や健全な発展を阻害するリスクがあります。

当社は異なるバックグラウンドを持つ多様な考え方が組織の健全な発展に資すると考えており、多様な人材の雇用、グループを通じた人材の交流、職場環境の改善、省力化投資等を進め、当社グループの安定的発展を担う人材の育成と定着を図っております。また、適正な労働時間管理やハラスメント相談窓口の設置等により、適切な労務管理に努めております。

 

(5)法令違反に関するリスク

当社グループの事業は、独占禁止法や下請法、品質・環境保全・安全衛生・産業廃棄物処理等に関連する様々な法令等の適用を受けておりますが、これらの法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループに対する社会的信用の低下や損害賠償金の支払い等が生じるリスクがあります。

上記に備えた当社のコンプライアンス体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等 (1)コーポレートガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 Ⅰ内部統制システムに関する基本的な考え方 2.業務の適正を確保するための体制の運用状況 ・上記①及び②については、」をご参照下さい。

 

(6)人権に関するリスク

当社グループ製品の主要な原材料には海外から調達しているものも多く、これらのサプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、価格及び調達環境の悪化、信用失墜による売上減少等が生じるリスクがあります。また、従業員、取引先に対する性別・信条・身体的条件・社会的身分等による不当な差別やハラスメント行為が発生した場合、人材の流出、取引停止、訴訟、組織の活性化や健全な発展の阻害等が生じるリスクがあります。

当社は2022年6月に「パートナーシップ構築宣言」を公表し、サプライチェーン全体の共存共栄を目指しておりますが、サプライチェーンにおける人権問題についても、紛争鉱物管理等の人権侵害リスク低減のための諸施策を実施し、取引先と適切な関係を築くことにより共存共栄を図ってまいります。今後、「ビジネスと人権」に関して更に良い体制の構築を目指してまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、欧州における地政学的リスクの長期化や世界的なインフレとそれに対する欧米の金融引き締め、為替の大幅な変動など、不安定な状況が続きました。

ステンレス特殊鋼業界におきましては、年度前半には堅調に推移していたステンレス一般材需要が自動車等の輸送機器分野での回復の遅れや半導体分野での減速等から市中流通在庫が余剰となり、年度後半より調整局面となりました。

当社グループの戦略分野である高機能材につきましては、米国の住宅着工件数の減少などから家電製品向けシーズヒーターやバイメタル等の耐久消費財分野は調整局面が継続する一方、中国での太陽光発電向けなど再生可能エネルギー分野は堅調に推移しました。

また、原料・資材・エネルギー・電力価格は引き続き上昇基調にあり、慢性的なコストアップ要因となりました。

当社グループではこのような外部環境に対し、「中期経営計画2020」で掲げた施策を着実に遂行し、原材料価格の上昇に対応したロールマージンの確保および徹底したコストダウンを実施してまいりました。その結果、当連結会計年度の販売数量につきましては前年度比3.9%減(高機能材9.7%減、一般材2.7%減)となりましたが、売上高は199,324百万円(前年度比50,398百万円増)となりました。また、利益面につきましては、営業利益29,256百万円(前年度比15,289百万円増)、経常利益27,738百万円(前年度比14,931百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益19,703百万円(前年度比11,231百万円増)となりました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は222,294百万円となり、前連結会計年度末比34,801百万円増加しております。これは主として棚卸資産の増加(23,179百万円)、機械装置及び運搬具の増加(3,534百万円)、売上債権の増加(2,833百万円)及び建設仮勘定の増加(1,644百万円)によるものであります。

当連結会計年度末における負債の額は142,675百万円となり、前連結会計年度末比17,351百万円増加しております。これは主として長期借入金の増加(8,952百万円)によるものであります。

当連結会計年度末における純資産の額は79,619百万円となり、前連結会計年度比17,450百万円増加しております。これにより自己資本比率は35.8%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(27,831百万円)、棚卸資産の増加(23,179百万円)、売上債権の増加(2,833百万円)等により、3,649百万円の収入(前連結会計年度比4,346百万円の収入増加)となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(13,131百万円)等により、13,035百万円の支出(前連結会計年度比2,620百万円の支出減少)となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の調達(16,669百万円)及び返済(5,654百万円)等により、8,530百万円の収入(前連結会計年度比6,520百万円の収入減少)となりました。

以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて11,797百万円となり、前連結会計年度比748百万円減少いたしました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比増減(%)

ステンレス鋼板及びその加工品事業

139,793

26.5

 

(注)1.金額は製品製造原価によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比増減

(%)

金額(百万円)

前年同期比増減

(%)

ステンレス鋼板及びその加工品事業

194,449

16.2

28,721

△14.5

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比増減(%)

ステンレス鋼板及びその加工品事業

199,324

33.8

 

(注)1.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

当連結会計年度の経営成績に関する分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。

 

※連結損益計算書概要

 

 

 

単位:百万円、%

 

当連結会計年度

2023年3月期)

前連結会計年度

2022年3月期)

前年度対比

増減率

売上高

199,324

148,925

50,398

33.8

営業利益

29,256

13,966

15,289

109.5

経常利益

27,738

12,807

14,931

116.6

親会社株主に帰属する当期純利益

19,703

8,471

11,231

132.6

 

 

 

b.財政状態

当連結会計年度末時点の資産の状況は、機械装置及び運搬具が3,534百万円増加したこと及び棚卸資産が23,179百万円増加したこと等により、総資産の金額は前年同期比34,801百万円増加222,294百万円となりました。

負債につきましては、将来の設備投資資金及び実際の資金需要の動向に見合った資金調達を借入金の新規借入により調達したため、借入金及び社債の合計残高が11,703百万円増加したことにより、負債の総額は前年同期比17,351百万円増加142,675百万円となりました。

以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比17,450百万円増加79,619百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は35.8%となり、前年同期比で2.7%上昇しました。

 

※連結貸借対照表概要

 

 

 

単位:百万円、%

 

当連結会計年度

2023年3月期)

前連結会計年度

2022年3月期)

前年度対比

増減率

現金及び預金

11,910

12,646

△736

△5.8

受取手形及び売掛金

29,829

26,996

2,833

10.5

棚卸資産

72,828

49,649

23,179

46.7

固定資産

104,741

95,654

9,087

9.5

その他資産

2,986

2,549

437

17.1

資産合計

222,294

187,494

34,801

18.6

支払手形及び買掛金

21,627

23,917

△2,290

△9.6

借入金及び社債

86,124

74,421

11,703

15.7

その他負債

34,924

26,986

7,938

29.4

負債合計

142,675

125,324

17,351

13.8

純資産合計

79,619

62,169

17,450

28.1

自己資本比率

35.8

33.2

2.7

 

 

c.キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(27,831百万円)、棚卸資産の増加(23,179百万円)、売上債権の増加(2,833百万円)、仕入債務の減少(2,287百万円)等により、3,649百万円の収入となり、前年同期比で4,346百万円の収入増加となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(13,131百万円)等により13,035百万円の支出となり、前年同期比で2,620百万円の支出増加となりました。

以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、△9,386百万円となり、前年同期比で6,967百万円増加しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金及び社債の増加による収入(11,649百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計150円の配当金の支払による支出(2,255百万円)等により、8,530百万円の収入となり、前年同期比で6,520百万円の収入減少となりました。

 

 

※連結キャッシュ・フロー計算書概要

 

 

単位:百万円

 

当連結会計年度

2023年3月期)

前連結会計年度

2022年3月期)

前年度対比

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,649

△697

4,346

税金等調整前当期純利益

27,831

7,058

20,774

減価償却費

5,029

4,123

906

売上債権の増減額(△は増加)

△2,833

△7,404

4,571

棚卸資産の増減額(△は増加)

△23,179

△16,711

△6,469

仕入債務の増減額(△は減少)

△2,287

7,464

△9,751

その他

△912

4,773

△5,685

投資活動によるキャッシュ・フロー

△13,035

△15,656

2,620

有形・無形固定資産の取得による支出

△13,131

△16,028

2,897

その他

96

372

△277

フリー・キャッシュ・フロー

△9,386

△16,353

6,967

財務活動によるキャッシュ・フロー

8,530

15,049

△6,520

借入金及び社債の純増減額(△は減少)

11,649

16,912

△5,263

配当金の支払額

△2,255

△1,056

△1,199

その他

△865

△807

△59

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△748

△1,283

535

 

 

②資本の財源及び資金の流動性の状況

当社は「中期経営計画2023」の基本戦略の1つである「技術の優位性を高め市場環境の変化に対応する効率的な生産体制の構築」に向けて、戦略的設備投資を実行してまいります。

この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。

資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。

 

 

③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容

 当社グループは、社会の サステナビリティに対する要求が高まる中、レジリエントかつ持続的な成長を進めていくために、2020年度からの3か年の「中期経営計画2020」において目指すべき姿を「業界トップレベルの品質・納期・対応力で信頼され続けるグローバルサプライヤー」として、具体的施策を実行してまいりました。

さらに、サステナビリティに関する重要課題として「事業活動を通じた地球環境への負荷低減」を掲げ、2050年度を見据えたカーボンニュートラルや資源循環型社会の実現に向けて取り組みを進めております。

その結果、最終年度の2022年度は連結営業利益293億円と「中期経営計画2020」達成目標「90億円以上}を大幅に上回る収益を計上いたしました 。

一方で、この3年間においては、計画初年度に発生した新型コロナウイルス感染症による世界経済の低迷、2022 年2月のロシアのウクライナ侵攻による世界経済の分断、それに伴う当社製品の主原料であるニッケル価格の乱高下、原燃料の供給不安や価格高騰 など経済環境が激変しました。本中期経営計画期間中においても、足許の中国経済の減速に加え、欧米における金融引き締めによる金融システムへの影響、さらに不透明な政治情勢や地球環境問題など、様々な事業環境の変化が 想定されます。

こうした事業環境の変化や予測困難な経営環境を踏まえつつ、2025年の当社創立100周年を越えてその先も持続的な成長を遂げるために、2023年度からの今後3年間で着手、実施していく施策を3か年計画「中期経営計画2023」として取り纏めました。

 

※「中期経営計画2023」の詳細につきましては、1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 〔中長期的な会社の経営戦略〕に記載の通りであります。

 

「中期経営計画2020」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。

 

高機能材売上高比率(%)

営業利益(連結)

(百万円)

ROE(連結)(%)

ネットD/Eレシオ(連結)(倍)

総還元性向
(連結)(%)

中計目標
(注1)

45.0

9,000以上

10.0以上

1.0未満

25.0程度

2022年度実績

42.4

29,256

27.8

0.93

(注2)20.1

2021年度実績

41.1

13,966

14.4

0.99

24.9

2020年度実績

40.5

6,145

7.1

0.79

24.8

 

(注)1.中計目標は「中期経営計画2020」の最終年度である2022年度における達成目標であります。

2.2022年度の総還元性向は、2022年度に実施した合計200円の配当に加え、2023年5月10日~2023年5月31日に実施した自己株式取得を加味した数値であります。自己株式取得の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載があります。

 

2022年度実績を踏まえた「中期経営計画2020」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。

・高機能材売上高比率につきましては、目標値には若干届かなかったものの、一定の評価に値する結果と認識しております。今後も引き続き「中期経営計画2023」に則り、販売力の強化・コストダウン施策を着実に推進していくほか、世界的な需要構造の変化等についても注視しながら、高機能材の拡販を進めてまいります。

・連結の営業利益につきましては、上述の通り一定の成果をあげることができたと評価しております。

・財務指標の達成目標(ROE・ネットD/Eレシオ)につきましては、順調に改善が進捗し、中計で掲げた最終年度における目標を達成することができました。

・総還元性向につきましては、剰余金の配当と自己株式取得により目標数値並みの実績となりました。

・設備投資計画につきましては、中計の施策に従い、競争力の強化・事業基盤の強化・ESG課題への対応に資する案件を順次実行しております。

 

今後につきましては、今般新たに策定された「中期経営計画2023」において掲げた諸施策を着実に実行し、「『製品と原料の多様化』を追求し、ニッケル高合金・ステンレス市場におけるトップサプライヤーとして地球の未来に貢献」を目指してまいります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性の判断にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

b.退職給付債務の算定

当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、予想昇給率等の様々な計算基礎があります。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (5)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

c.固定資産の減損処理

当社グループは事業用資産については各事業単位、遊休資産については個別物件単位に資産のグルーピングを行っております。収益性の低下等により、投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。事業用資産の回収可能価額につきましては正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額となりますが、正味売却価額につきましては主として不動産鑑定評価額、使用価値につきましては割引前将来キャッシュ・フローに基づき算定しております。遊休資産の回収可能価額につきましては、正味売却価額により測定しており、固定資産税評価額を基に算定しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(技術受入契約)

契約会社名

相手先の名称

国名

契約内容

契約期間

日本冶金工業株式会社(当社)

大同特殊鋼株式会社

日本

真空精錬装置(VCR)に関する特許権実施許諾

2006年3月9日から許諾特許権有効期間最大2024年まで

 

 

(生産委託契約)

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約期間

日本冶金工業株式会社(当社)

新日鐵住金ステンレス株式会社(注)

高機能材及びステンレス鋼厚板製品の委託生産

2013年4月1日から
2013年9月30日までと
し、その後は1年毎に
自動延長

 

(注)新日鐵住金ステンレス株式会社は、2019年4月1日付けで日鉄ステンレス株式会社に商号変更されました。

 

(合弁事業契約)

契約締結先

事業内容

合弁会社名

設立年月

南京鋼鉄股份有限公司

(中国)

江蘇三鑫特殊金属材料股份有限公司

(中国)

高機能材の仕入販売、委託圧延・委
託加工、技術及び品質保証サービス

南鋼日邦冶金商貿(南京)有限公司

(出資金 10百万人民元)(注)

2018年1月

 

(注)南鋼日邦冶金商貿(南京)有限公司に対する各社の出資比率は以下の通りであります。

・当社 60%

・南京鋼鉄股份有限公司 37%

・江蘇三鑫特殊金属材料股份有限公司 3%

 

(その他)

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約期間

日本冶金工業株式会社(当社)

JFEスチール株式会社

ステンレス素材のバーター販売をはじめとする多面的相互協力

2002年9月2日から
2003年9月1日までと
し、その後は1年毎に
自動延長

日本冶金工業株式会社(当社)

新日鐵住金株式会社
新日鐵住金ステンレス株式会社
日新製鋼株式会社(注2)

当社のステンレス冷延製品の製造・販売事業の拡大・強化への協力に関する基本合意(注1)

2016年12月27日から
2022年3月31日まで

(クロム系ステンレス製品のみ2024年3月31日まで(注3))

 

(注)1.新日鐵住金株式会社(当時)による日新製鋼株式会社(当時)の子会社化に係る公正取引委員会の審査における指摘に対応した問題解消措置の一環として申し出を受け、これを当社が受諾したものであります。

2.新日鐵住金株式会社及び新日鐵住金ステンレス株式会社は、2019年4月1日付けで日本製鉄株式会社及び日鉄ステンレス株式会社に商号変更されました。また、日新製鋼株式会社との契約は会社吸収分割により事業継承会社となった日鉄ステンレス株式会社に承継されました。

3.当社のステンレス冷延製品の製造・販売事業の拡大・強化への協力に関する基本合意(注1)のうち、クロム系ステンレス製品のみ2年間の契約延長を実施しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発部門の主な業務は、戦略分野として位置づけている高機能材のプロセス技術開発、新製品開発、及び顧客への技術支援です。グループ全体の研究開発も担っており、各社と協力し開発を進めおります。いずれもサステナビリティの観点をアプローチに加えるように努めております。

プロセス技術開発では、中期経営計画2020のコンセプトである、業界トップレベルの品質・コスト・納期・対応力で信頼され続けるグローバルサプライヤーを目指し、顧客ニーズへの対応、要望に対応した製造可能範囲拡大・新商品開発に注力してきました。当社グループ会社のナストーア(株)とは、独自設計した中規模実験設備を活用し高機能材の高効率溶接技術の開発を共同で進めております。ここまでの検討で、溶接が難しい高機能材において、品質と生産性を両立する溶接条件を見出しました。今後、適用板厚、鋼・合金種の拡大を図り、早期の実用化を目指しテストを重ねてまいります。

新製品開発では、ソリューション営業部と連携する他、当社グループ会社のナス鋼帯(株)とも連携し、今後一層その重要性を増してくると見られるエネルギー・環境・化学分野に多用される高耐食材、高耐熱材、高強度材、電子材の開発に注力しております。

市場開拓の一環である顧客への技術支援として、当社製品の耐食性と溶接性等に加え、水素環境に関するデータベースの拡充を図り顧客ニーズへの対応力強化を図っております。

 

当連結会計年度における技術開発の主な成果は以下のとおりであります。

 

1.高機能材の製造可能範囲拡大

高機能材と呼んでいる高ニッケル耐食合金、耐熱合金を生産性に優れる連続鋳造法により製造しています。これら合金は鋳造工程で割れなどの欠陥が発生し易く、広幅化に制限がありました。プロセスを精緻に制御することで、昨年のNAS625(UNS N06625)に続いてNASNW276(UNS N10276)5フィート幅での連続鋳造に成功しました。さらに、中国合弁会社を活用することで、板厚50mm、幅3900mmと板厚、幅ともに世界最大サイズの極厚板の製品化に成功しました。化学プラントなどへの販売を目指しています。

 

2.カーボンレスニッケル製錬技術への挑戦

大江山製造所では、Ni鉱石やリサイクル原料を製錬しフェロニッケルを製造しておりますが、その過程で多量の石炭を使います。石炭は還元反応を起こすために必要ですが、カーボンニュートラルの観点からは削減、最終的には石炭を使わない新しいプロセスを目指す必要があります。一昨年から実施している大規模実験の一つとして、廃プラスチックの活用、LNGへの燃料転換を試験・評価し、一定量の石炭削減が可能であるとの目途を得ました。設備投資へとつながる有用な知見が得られましたので、設備設計など実用化の検討を開始しています。

 

研究開発活動には、全体で38名のスタッフが携わっており、これは総従業員の約2%にあたります。また、当連結会計年度における研究開発費は956百万円であります。