文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、企業活動を行う上での軸・拠り所として企業理念「JGC's Purpose and Values」を制定しております。
「JGC's Purpose and Values」は日揮グループのパーパス(存在意義)及びValues(価値観)の2つの要素から構成され、日揮グループのパーパス(存在意義)として、「Enhancing planetary health」を掲げ、当社グループ共通のValuesとして、4つのちから、即ち、「挑戦」、「創造」、「結集」、「完遂」を定め、さらに「尊重」、「誠実」を2つの誓いとして明らかにしております。
当社グループは、企業理念「JGC's Purpose and Values」に基づき企業活動を進めていくことで、企業価値の一層の向上を図り、以て人と地球の健やかな未来づくりに貢献してまいります。
当社グループは、2021年度から2025年度の5ヶ年を長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ、挑戦の5年間と位置づけ、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025(BSP2025)」において、「EPC事業のさらなる深化」、「高機能材製造事業の拡大」、「将来の成長エンジンの確立」を重点戦略とし、戦略投資に積極的に取り組むことで収益の拡大、多様化を進めております。財務目標として、2025年度に売上高8,000億円、営業利益600億円、親会社株主に帰属する当期純利益450億円、自己資本利益率(ROE)10%を掲げております。
ご参考:BSP2025「3つの重点戦略」
BSP2025の計画2年目となる2022年度においては、「EPC事業のさらなる深化」では、海外プラント市場の中長期的な拡大を見据えたプロジェクト遂行キャパシティ拡大の一環としてインドにオペレーションセンターを設立したほか、アジア市場のさらなる拡大に向けて、東南アジアの統括拠点としてJGCアジアパシフィック社の取組みを本格始動し、フィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシアのグループ内エンジニアリング子会社との連携を強め、営業・プロジェクト遂行体制の強化に取り組みました。さらに、遂行中の複数の大型EPCプロジェクトにおいて、データ統合管理システムを適用し、デジタル技術を活用したプロジェクト遂行(EPC DX)を本格化させました。
「高機能材製造事業の拡大」では、セラミックス事業の拡大に向けて、昭和電工マテリアルズ株式会社から事業譲受したセラミックス事業部門が、2022年7月にJFCマテリアルズ株式会社として事業を開始したことに加え、顧客の需要増に対応するために半導体製造装置用セラミックス及び高熱伝導窒化ケイ素基板の生産設備増強を実施しました。
「将来の成長エンジンの確立」では、海外EPC事業会社である日揮グローバル株式会社に海外における低・脱炭素分野のEPCプロジェクトを手掛ける専門組織として「サステナブルソリューションズ」を新設したことに加え、2022年4月に東洋エンジニアリング株式会社と燃料アンモニア製造プラント及びアンモニア受入基地のFS(フィージビリティスタディ)、FEED(基本設計)、EPCプロジェクトの受注・遂行に関するアライアンス契約を締結しました。また米KBR社ともアンモニア製造プロセスに関するライセンス契約を締結し、当社グループ、東洋エンジニアリング株式会社及び米KBR社共同で、北米や中東・北アフリカなどで検討が進む案件獲得に向けて、営業活動を推進しました。
東洋エンジニアリング株式会社とは、2023年3月に国内のSAF製造プラントのFEED及びEPCプロジェクト受注・遂行に関するアライアンス契約も締結し、今後国内において増加が見込まれるSAFプラント建設プロジェクトに対して共同で営業活動及びプロジェクト遂行を行い、より多くの案件に対応していく方針です。
また、当社、コスモ石油株式会社、株式会社レボインターナショナルの3社で廃食用油を原料とした国産SAFの製造・供給事業※1を推進していくため、合同会社 SAFFAIRE SKY ENERGY を設立し、2024年度下期から2025年度初めの運転開始を目指しています。再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術実証プロジェクト※2では、2024年度の運転開始を目指して福島県浪江町と実証プラントの立地に関する基本協定を締結しました。加えて、岩谷産業株式会社及び豊田通商株式会社とともに、愛知県名古屋港近郊における廃プラスチックガス化設備を活用した低炭素水素製造事業の事業化検討を開始したほか、帝人株式会社及び伊藤忠商事株式会社とともに、ポリエステル製品をケミカルリサイクルする技術のライセンスを目的とした合弁事業会社、株式会社RePEaT(リピート)を設立し、中国企業向けに最初のライセンス契約を締結するなどポリエステル製品のリサイクル事業を推進しました。
※1 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築」 に採択
※2 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に採択
総合エンジニアリング事業のエネルギーソリューションズ分野及びサステナブルソリューションズ分野においては、長引くインフレーションや金融引き締め策等によって、世界経済が減速し、先行き不透明な事業環境が続くことが懸念されます。一方で、世界的な脱ロシアの動きによるエネルギー不足や調達先の多様化などによって、低・脱炭素社会の実現に向けた移行期間における安定的なエネルギー源、すなわちトランジションエネルギーとして重要性が再確認された天然ガス及びLNGを中心に、中長期的なエネルギーの安定確保を見据えた顧客の設備投資計画が、引き続き着実に進展していく見通しです。加えて、世界的な低・脱炭素化の潮流を受け、水素・燃料アンモニアやSAFをはじめとする低・脱炭素分野、資源循環分野においても多くの設備投資計画が実現していくことが期待されます。
ファシリティインフラストラクチャーソリューションズ分野においても、新興国を中心とする人口増加と経済成長、さらには脱炭素化のニーズを背景に、産業インフラや先端産業における顧客の設備投資計画が拡大、着実に実行されていくことが期待されます。
国内分野においては、既存製油所の保全工事、ヘルスケア・ライフサイエンス、ケミカル分野を中心とした産業インフラ分野への設備投資が継続的に行われるとともに、政府が掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた水素・燃料アンモニアやSAFなどの低・脱炭素関連分野や資源循環分野での顧客の設備投資が拡大していく見通しです。
機能材製造事業では、触媒分野においては、FCC触媒の国内シェア拡大及び海外展開に加え、水素化処理触媒の協業先企業との体制維持と収益性向上、ケミカル触媒の新規案件獲得、拡大するカーボンリサイクルやケミカルリサイクル分野に対応する新規ケミカル触媒の製品化、再生可能エネルギー発電向け環境保全触媒の材料開発などを目指します。ファインケミカル分野においては、主力であるエレクトロニクスや半導体市場の事業環境悪化の影響が懸念されるものの、シリカゾルの新規研磨材の立上げ、機能性塗料材の拡販及び多用途展開、化粧品材のプラスチックビーズ代替拡大とオプト材の拡販、多用途展開に注力してまいります。
ファインセラミックス分野においても、引き続き半導体製造装置市場の事業環境悪化の影響が懸念されるものの新規顧客獲得や新分野参入のほか、高熱伝導窒化ケイ素基板のさらなる受注拡大に取り組んでまいります。
当社グループは、企業理念である「JGC's Purpose and Values」に基づき、サステナビリティに関する取組みを通じて企業価値の持続的な向上を図るために、「サステナビリティ基本方針」を定め、環境、社会、ガバナンス、品質、安全、健康の分野での活動において、サステナビリティを積極的に追求しております。また、環境調和型社会、世界各地域における共創共生、人権の尊重・働きがい、エネルギーアクセス、生活の質の向上、ガバナンス・リスク対応をマテリアリティとし、経営方針の策定や事業活動の展開を行う上で基本となる重要な課題と位置付けています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、代表取締役会長を委員長とするサステナビリティ委員会を設け、気候変動や人的資本を含むサステナビリティ分野に関する方針や行動計画の策定、並びに活動状況の評価・推進に係る審議を行うとともに、内容に応じ取締役会への附議・報告を行っております。また、代表取締役社長が委員長を務めるグループリスク管理委員会を設け、グループのリスク全体の把握・整理、リスク管理システムの維持・構築、改善の提案・審議を行っており、気候変動等サステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会と連携を図って対処しております。これら委員会の詳細については、「
(2)重要なサステナビリティ項目
上記のガバナンス及びリスク管理を通じて特定された当社グループにおいて重要と考えるサステナビリティ項目別の対応は以下のとおりです。
① 気候変動への対応
持続可能な社会の実現に向けて、気候変動への対応は世界的な課題となっています。当社グループはマテリアリティの一つに「環境調和型社会」を掲げ、事業活動を通じ気候変動への対応を図るとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインを踏まえて事業戦略を検討・策定、これに基づいた開示を行っております。
当社グループの気候変動対応の責任者は代表取締役会長であり、上記サステナビリティ委員会の主宰等を通じ、気候関連のリスクと機会を評価・管理するとともに、当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負っています。また、上記グループリスク管理委員会等の枠組みのもと、気候変動を含む様々な具体的なリスクに対して、サステナビリティ委員会とも連携しつつ、低減と未然の防止に努めています。
当社グループでは、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」や中期経営計画「BSP2025」の策定過程において、国際エネルギー機関(IEA)の複数のシナリオ等を前提に行った分析を踏まえ、気候変動関連のリスクと機会を認識し、これらビジョン・計画に反映させ、エネルギートランジション、資源循環などを未来に向けたビジネス領域と位置付けております。具体的には、従来の化石資源関連ビジネスの低炭素化に注力するとともに、カーボンニュートラルに向けて、アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)、持続可能な航空燃料(SAF)、プラスチックのリサイクル、電気自動車(EV)関連の高機能材、洋上風力等再生可能エネルギーなどの分野を機会と認識してこれらのビジネス化に積極的に取り組んでいます。さらに、「BSP2025」において、グループ企業の自社拠点での事業活動に伴う温暖化ガス(GHG)排出量(Scope1+2)について「2050年ネットゼロ」を宣言するとともに、2030年度までの売上高当たり排出量の2020年度比30%削減を目指すこととしています。実績については、2021年度(2021年4月~2022年3月)のScope1+2のGHG排出量は133,573トンCO2で、売上高ベースで前年度から2%の増加となりました。同じく2021年度のScope3排出量は702,873トンCO2でした。なお、排出量実績はいずれもグループ内の6社 (当社、日揮グローバル株式会社、日揮株式会社、日揮触媒化成株式会社、日本ファインセラミックス株式会社及び日本エヌ・ユー・エス株式会社)による排出量であり、前提や内訳など詳細については国際的な気候変動関連の情報開示の枠組みであるCDPへの当社からの2022年7月の報告をご参照ください。
また、気候変動に伴う機会を踏まえ、BSP2025において上記の各分野を念頭におき、「将来の成長エンジンの確立」を目標として掲げております。
② 人的資本への取組み
人的資本を重要な経営基盤と位置付ける当社グループにおいては、経営戦略と連動する人財戦略は重要テーマです。本テーマに対し、取締役会の指名を受け戦略的な人事施策の策定と実装を牽引するCHRO (Chief Human Resource Officer) のイニシアチブのもと、経営戦略や事業戦略実現のために必要な人財要件や人財数を特定するための人財ポートフォリオ策定のほか、ポートフォリオ実現のための採用・育成、エンゲージメント向上、Inclusion & Diversityの推進等、重点課題を定め、グループ全体でそれら重点課題の解決に戦略的に取り組んでおります。
当社グループのパーパス(存在意義)を実現するために必要な組織像を「変化し続ける様々な社会課題に対し、解決に貢献し続けることができる組織」、「深化と探索、そして探索の結果を進化させるサイクルが形成された組織」として定め、この組織像を実現するため、「自ら変化を起こし続ける人財」を継続的に輩出することを人財育成方針とし、国籍・人種・年齢・障がい・ジェンダー・宗教等の違いにかかわらず、すべての従業員に対して能力開発・キャリア開発の機会を公平に提供することとしております。また、指標の一つに管理職に占める女性労働者の割合を用いており、その実績は「
さらに当社グループでは、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」のもと、事業環境の変化に合わせ、ビジネス領域、ビジネスモデル、組織のトランスフォーメーションを進めており、日揮グループで働く従業員が、今後益々多様化していくことを想定しております。2023年3月に策定した「Inclusion & Diversity基本方針」においては、多様化する従業員一人ひとりが、能力と活力を最大限に発揮して自分らしく活き活きと働くことができるよう、「日揮グループに集うすべての人に敬意をもって接し、国籍・人種・年齢・障がい・ジェンダー・宗教などを問わず、異なる意見・経験を尊重」すること、「多様な人財一人ひとりの能力と活力を最大限に引き出す風土を大切にし、それを可能にする制度を拡充」すること等を掲げ、社内環境整備を含めこれらを推進しております。指標の一つに男性労働者の育児休業取得率を用いており、その実績は「
③ 人権対応
当社グループは「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等の国際的に認められた人権原則に基づき、当社グループの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重することが、ビジネスの基盤であると認識しています。当社グループでは、代表取締役会長が委員長を務めるサステナビリティ委員会のもと、グループ横断型の人権対応分科会において、当社ガバナンス統括オフィスコンプライアンスユニットが中心となって、人権を尊重する体制を推進しています。その上で、グループ各社の役職員に対し、「日揮グループ行動規範」及び「日揮グループ人権基本方針」を以って人権の尊重を要求しているほか、外部講師を招いて人権に関する研修を実施するなど、社員の意識醸成も図っています。さらに当社グループは、人権デューデリジェンスプロセスの構築にも積極的に取り組んでおります。総合エンジニアリング事業においては、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した人権課題の特定、リスク評価、及びリスク低減措置の整備を進めております。今後は同取組みの機能材製造事業への展開を通じ、当社グループ社員をはじめ協力会社で働く労働者、サプライヤー、パートナー、顧客等、すべてのステークホルダーの人権侵害リスクの排除、その維持、侵害が発見された場合の早期の救済に努めることとしております。また、上述のプロセス構築に加え、人権方針遵守に関する具体的な行動指針を示した規程の整備など、より一層の取組みを充実させてまいります。
④ 品質マネジメントに関する取組み
当社グループは、プラントなどの施設の安全運転や安定生産を実現するために、品質マネジメントを極めて重要な要素と位置付けており、ISO9001に準拠した品質マネジメントシステムを構築し、長年に亘って蓄積してきた知識や技術、教訓を結集し、システムと人財をグローバルに活用して、品質確保に取り組んでいます。具体的には、各主要グループ会社において、社長の下に品質保証委員会などの会議体が設置されており、品質マネジメント活動が社長のレビューにて総括される品質マネジメント体制が構築されています。またこれら各社では、上記品質マネジメントシステムに基づき、品質方針を策定しています。組織の各階層が方針に基づく品質目標を設定して組織の課題を明確化し、品質目標とアクションプランのPDCAサイクルを回すことにより、継続的なパフォーマンス改善を図っています。その上で、上記の品質保証委員会などの会議体が定期的に開催され、高品質のプロダクトやサービスを提供するため、品質上の問題の根本原因を究明、有効な再発防止策を含めた改善活動を推進し、その成果を評価して継続的な改善を実践しています。こうした品質マネジメントの活動は、各社において年に一度、社長によるマネジメントレビューを実施して総括し、品質保証に関わる枠組みの整備と改善を継続的に実施しています。
⑤ 労働安全衛生
当社グループでは、Health(衛生)、Safety(安全)、Security(セキュリティ)、Environment(環境) (以下、HSSEという。)を常に追求すべき企業価値と捉え、当社グループのみならず協力会社も含め、国内外事業所や建設現場などで働くすべての人を対象に「すべての人が、健康で安心して働き、家族のもとへ無事帰る」というグループ共通のHSSE基本理念を制定し、グループを挙げてHSSEの推進に取り組んでいます。本理念に基づき、グループ各社が安全衛生方針を掲げ、安全衛生委員会あるいはHSSE委員会を設置し労働安全衛生管理体制を構築しており、HSSEに係る重要テーマに関して審議し、対処しております。また、グループ各社の安全衛生委員会あるいはHSSE委員会は、安全衛生上のリスクを低減する活動を展開しております。重大災害があった場合は各グループ会社の労働安全衛生管理部門が迅速に対処するとともに、当社関連部門に対して緊急連絡し、必要に応じて当社が支援する体制を取っています。労働安全衛生のパフォーマンス向上については、安全衛生意識の向上と安全衛生知識・技術の向上という二つの側面から取り組んでおります。意識向上においては、当社代表取締役社長主催のグループ全体のHSSE大会など各種イベントの開催、知識・技術の向上においては、新入社員や初めて現場赴任する従業員への安全衛生環境教育、国内外の建設現場に対するHSSE監査などを実施しております。HSSE委員会では、国内外の建設現場において、休業災害度数率、記録災害度数率をはじめHSSEに関するパフォーマンスを測定する複数の指標を定め、モニタリングすることで、継続的なHSSE管理の徹底と向上に努めています。
⑥ 情報セキュリティに関する取組み
当社グループは、情報及び情報システムは会社の重要な資産であり、顧客や取引先からの信頼を獲得・維持する上で必須であることを踏まえ、情報セキュリティは事業活動に係る重要な経営課題と認識しています。「日揮グループ情報セキュリティ方針」及び「日揮グループ情報セキュリティ指針」のもと、情報セキュリティマネジメントシステムを構築し、継続的な見直し、改善、向上を図っています。主要グループ会社それぞれにおいて、各社のトップマネジメントを中心に、情報セキュリティの推進・維持を行う情報セキュリティシステム推進体制を構築しており、法令・規則等に準拠した情報セキュリティ関連規定の策定、各社に配置した情報セキュリティ統括責任者及び情報セキュリティモニタリング責任者を通じた情報セキュリティマネジメントシステムの確立、導入、計画、運用、モニタリング、継続的改善に取り組むPDCAサイクルを実施しています。加えて各社の責任者間で情報共有を行い、コミュニケーションを密に連携することで、グループ横断での適切な情報セキュリティの維持及び向上を図っています。また、当社代表取締役社長が委員長を務めるグループリスク管理委員会において、情報セキュリティに関わるリスク管理について審議しています。さらに、情報セキュリティリスクに対処する具体的な取組みとして、あらゆる技術的サイバーセキュリティ対策を講じているほか、継続的な情報セキュリティ教育や訓練を通じ、グループすべての従業員の情報セキュリティへの意識向上に取り組んでいます。
⑦ コンプライアンスに関する取組み
当社グループでは、企業理念としての「JGC's Purpose and Values」において、社員が共有すべき価値観の一部として「尊重」と「誠実」を掲げ、コンプライアンスを経営の基軸に据えています。当社グループが国際社会の一員として持続可能な事業展開を図っていくためには、国内のみならず海外関係国の法令を遵守し、さらに、企業倫理に則って公平・公正にビジネスを行うことが必要不可欠です。この認識のもと、企業理念を実践する際に守るべき重要な事項を「日揮グループ行動規範」に定め、社員一人ひとりに遵守を義務付けています。これらに基づき、当社グループでは、グループ各社が高い倫理観のもとに事業活動を行えるよう、グループコンプライアンス体制を構築しています。主要なグループ会社にコンプライアンス責任者を配置し、指揮下のコンプライアンス部門担当者とともに、各社の実情に合った施策を立案・実施しています。また、グループ会社間の垣根なくコンプライアンスの情報共有を行う場としてグループ横断型のコンプライアンス・コミッティーを設けています。当社ガバナンス統括オフィスコンプライアンスユニットが、当社グループ全体を対象としたコンプライアンス推進のための総合的な施策策定や調整等の機能を担っています。また、コンプライアンス向上に向けた取組みとして、階層別及び目的別(腐敗防止も含む)の各種コンプライアンス研修の実施や、コンプライアンスに関する社内及び取引先などの相談・通報窓口として、専門の第三者機関が受付を担当する相談・通報窓口の整備・運用など、コンプライアンス上のリスクの未然防止や早期発見に資する取組みも実施しています。贈賄防止においては、当社グループ贈賄防止関連諸規定の整備及びこれらに基づく贈賄防止プログラムを展開し、当社グループと取引を行うステークホルダーに対するコンプライアンス上の事前審査や契約書への贈賄防止文言の反映等の取組みを行っています。
当社グループの事業その他に関する主要なリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。これらのリスクは、予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を及ぼす可能性があります。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、当社グループは、これらのリスクに対処するため、必要なリスク管理体制を整え、リスクの管理及び対応を行っておりますが、それらの対応が有効に機能しない等により、これらのリスクを回避できない可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① プロジェクトの受注及び遂行に関するリスク
総合エンジニアリング事業においては、オイルメジャーや国営石油会社が顧客となる国際的な大規模プロジェクトを遂行しております。このようなプロジェクトにおいて設計、調達及び建設する各種プラントは、数多くの異なる要素や機能で構成される複雑なシステム総合体であり、また、契約締結からプラント引渡しまで長期間にわたるプロジェクトも多いため、その間の政治・社会情勢の変化、政策の変更その他顧客を含む取引先の状況等の変化による受注後のプロジェクトの計画変更、中止、中断又は延期等のリスクを含む総合エンジニアリング事業におけるリスクの見積りには複雑性を伴い高度な技術力及び豊富な経験を要します。上記のリスクが顕在化した場合、代金回収並びにプロジェクトの遂行、特に納入品の性能及び品質又は納期の遅延等に起因するプロジェクトの採算に大きな影響を与えることがあります。また、パートナー企業と責任を分担するジョイントベンチャー又はコンソーシアムを組成し、受注することがあります。この場合、パートナー企業のプロジェクト遂行能力の不足、分担業務の不履行やパートナー企業の財政状態の悪化等が生じた場合、当社がパートナー企業の債務を負担することとなり、大幅な追加費用の負担が発生し、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、事業会社において、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ⑦ リスク管理体制の整備の状況<プロジェクトリスク管理>」に記載のとおり、見積・応札段階においては、コーポレート部門及び各事業部門によるプロジェクトリスクレビュー会議等でプロジェクト固有のリスク分析を行い、見積方針を策定するとともに、遂行段階においては、コーポレート部門及び各事業部門によるプロジェクトレビュー等の会議にてプロジェクトの進捗、採算状況等をモニタリングする等リスクの低減に努めております。また、事業会社は、当社取締役会に対し、上記各段階における主要なリスクに係る報告・審議を必要に応じて実施しております。
② カントリーリスク
仕向地や現地工事を行う国や地域で不安定な政情、戦争、革命、内乱、テロ、経済政策・情勢の急変、経済制裁等のいわゆるカントリーリスクが顕在化した場合、総合エンジニアリング事業においては、プロジェクトの中止、中断又は延期、工事従事者の動員及びプラント建設に要する資機材調達の遅れ等によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業においては販売取引の減少及び売上債権を回収できないこと等により、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、貿易保険の利用、カントリーリスクに関する情報の収集及び不可抗力条件等、顧客との契約条件設定等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。また、テロ、紛争等に対する海外駐在員の安全対策については、危機管理基本規程に基づき、危機管理統括部が中心となり、平時の情報収集・分析の強化、各種予防策の拡充、有事における対応等、危機管理機能の更なる強化に努めております。
③ 自然災害・疫病等に関するリスク
当社グループが事業活動を展開する国や地域において、地震、豪雨、暴風雨等の想定を超える自然災害や感染症の世界的流行(パンデミック)に見舞われた場合、総合エンジニアリング事業において建設工事の中断又はやり直し等によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業において事業所・工場の操業停止や生産能力低下等が発生し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループ各社の本社、建設現場、事務所・工場等の拠点ごとに自然災害発生時の対応手順を規定化し、安否確認システムの導入及び防災訓練等を実施するほか、リスクに関する情報の収集及び不可抗力条件等の顧客との契約条件の設定等の対策を実施する等、リスク低減に努めております。
また、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)については、今後も感染状況や政府・自治体の要請も踏まえ、都度必要な措置を講じるとともに、各国の情勢や規制に応じ、安全状況を確認したうえで事業活動を継続してまいります。なお、感染が世界的に拡大したCOVID-19及びそれに対する各国政府の措置の影響を受けて、総合エンジニアリング事業においては、遂行中のプロジェクトの海外工事従事者の移動や物資の輸送が制限され、そのため資機材の調達や建設工事に遅延等の影響が生じました。COVID-19に起因する上記の状況は依然として完全には払しょくされておらず、当社は、顧客に対して必要な納期や契約金額の調整を求めて交渉を行っており、今後も引き続き必要な対応を行ってまいります。
当社グループは、当社グループ役職員をはじめとする関係者の安全の確保を最優先とする方針のもと、顧客等とも密に連携し対応してまいりますが、COVID-19の収束時期や最終的な影響については予測が難しく、顧客等との協議の結果、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
④ 為替変動リスク
当社グループは、海外売上高のほとんどが外貨建て契約となっており、為替レートが急激に変動した場合、当社グループの受注、売上及び損益に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、複数通貨建てによるプロジェクトの受注契約をはじめ、海外調達、外貨建ての発注及び為替予約等の対策を状況に応じて実施し、リスクの低減に努めております。
⑤ 工事従事者の不足、賃金高騰リスク
総合エンジニアリング事業においては、プラント建設地において工事従事者が不足した場合、工事従事者の賃金が高騰した場合には、建設工事の遅延及び建設工事費用の増加によりプロジェクトの採算が悪化し、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、主要プラントマーケットにおける建設労働力動向をモニタリング・予測するとともに、モジュール工法を採用し現地工事を最小化するほか、現地建設工事に豊富な実績を有する企業と協業する等により、リスクの低減に努めております。
⑥ 資機材・原燃材料費等の高騰リスク
総合エンジニアリング事業においては、プラント建設に要する資機材費の見積後、発注までにタイムラグがあるため、この間に資機材・原燃材料費及び輸送コストが高騰した場合、資機材の調達費用及び輸送コストの増加によりプロジェクトの採算が悪化するほか、機能材製造事業においては、原燃材料価格が高騰した場合に利益率が低下する可能性があります。更に、国際輸送の混乱、部材供給不足等に起因して資機材・原燃材料の調達費用及び輸送コストが高騰するとともに、資機材・原燃材料の調達及び供給スケジュールが遅延する恐れがあり、このような状況が続いた場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、価格動向のモニタリング・予測、予測精度向上に向けた取組み、早期発注、調達先の多様化、製品価格への転嫁、並びに契約面での対応等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。
直近では、経済制裁措置によるエネルギーなどの需給逼迫により、世界経済がインフレーションに転じる兆候が見られており、特にそのようなリスクを慎重に見極めて適切に対処することとしております。
⑦ 投資に伴うリスク
当社グループは、既往のインフラ事業、メディカル事業、ヘルスケア事業への投資に加え、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025」に基づく施策としてデジタルやM&A、生産設備、事業開発、商業実証、研究開発などの形態で成長戦略投資の取組みを行っております。これらの投資を実行する中で、投資先やパートナーの業績や財政状態を含む事業・投資環境に想定を超える事態が生じた場合、期待通りの収益が上げられないリスク、投資の一部又は全部が損失となる、あるいは追加資金拠出が必要となるリスクがあります。また、パートナーとの経営方針の相違、投資の流動性の低さ等により、当社グループが希望する時期や方法で撤退できないリスクがあります。
このリスクに対して、新規投資の実行に当たっては、審査基準を設け投資の意義・目的を明確にしたうえで、取締役会やグループ投融資委員会による審議を経るとともに、既存投資のモニタリングを更に強化する等、リスクの低減に努めておりますが、リスクが顕在化した場合、当社グループの事業、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
⑧ 法令及び規制に関するリスク
当社グループは、事業活動において税法、建設業法等の事業関連法規、国内外の環境に関する各種法令、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、汚職等の腐敗行為防止のための諸法令、人権保護に関する法令及び原則、事業及び投資に対する許認可等の制約を受けております。当社グループは、これらの国内外の法令及び規制等を遵守するため、コンプライアンス・プログラム並びにグループ方針及び規程の整備、実施、モニタリング及び改善を継続的に行っておりますが、係る取組みが奏功する保証はありません。当社グループによる各種法令等違反が生じた場合や、関係する各種法令等の大幅な変更又は予期しない解釈の適用が行われた場合には、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、当社グループに対する過料・課徴金・罰金等の制裁、当社グループの社会的評価の毀損等により、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑨ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業活動における技術情報や顧客から入手した個人情報等の機密情報を保有しており、停電、災害、ホストコンピューター、サーバー又はネットワーク機器の障害や紛失・盗難、外部からの攻撃やコンピューターウイルスの感染等によりこれらの情報が流出あるいは消失した場合、これらに対応するために多額の費用負担が生じるほか、顧客からの信用の失墜により当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループは情報セキュリティ方針を制定し、重要な情報システム、ネットワーク設備及びIT資産については、外部からの不正アクセスの防止、ウイルス対策及び暗号化技術の採用等のセキュリティ対策を講じるとともに、役員・従業員への教育研修及び訓練を通じた情報セキュリティの重要性の周知徹底等の適切な措置により、情報セキュリティの強化を図り、リスクの低減に努めております。しかしながら、このような対策を行ったとしても、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピューターウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備の損壊・通信回線のトラブル等による情報システムの停止等のリスクを完全に回避できるものではなく、被害の規模によっては将来の当社グループの事業及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
⑩ 品質に関するリスク
当社グループは、調達品等の品質不良、不具合の発生防止を含め、納入品の品質確保に努めていますが、納入品の性能、品質に起因して顧客、取引先又は製品使用者から国内外で請求を受け、また訴訟等を提起された場合、大規模な納入品回収や損害賠償責任の発生等に加え、当社グループの社会的評価に影響を及ぼすことが考えられ、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
このリスクに対して、当社グループは品質保証を所管する組織を設置し、品質マネジメントシステムの活動を推進するとともに、製造物責任賠償保険(以下、「PL保険」という。)に加入する等の対策を講じていますが、上記のリスクの発生を完全に回避できる保証はなく、また、PL保険には損害補償額等の制約に服するため損害の全てを回避できない可能性があります。
⑪ マクロ経済環境、社会・国際情勢の変化に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、当社の業績も海外諸国の経済動向、社会・国際情勢の変化、地政学的情勢、経済制裁、保護貿易の状況等の影響を受けます。特に原油や天然ガス等のエネルギー価格は世界の景気動向に加えて、資源輸出国の生産動向、各国のエネルギー政策、更にはロシア・ウクライナ情勢及び関連する経済・金融制裁の動向によって今後も上下する状況が続くとみられます。エネルギー資源の価格の変動が世界的な景気後退につながる場合には、当社グループの顧客企業の設備投資の低下を招き、開発案件数の減少による競合企業との競争の激化等により、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。総合エンジニアリング事業においては、世界的な景気後退により、顧客企業、パートナー企業、資機材発注先、現地建設工事会社等の取引先の財政状態の悪化等が生じ、プロジェクトの計画変更、中止、中断又は延期等及び現地建設工事又は資機材調達の遅れによるプロジェクト遂行への悪影響、並びに取引先からの代金回収に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 気候変動に関するリスク
気候変動に関するリスクとしては、建設現場及び製造現場などで自然災害リスクが高まるほか、パリ協定の長期目標を踏まえた脱炭素化社会の実現に向けた動きが加速する中、今後各国における気候変動政策の強化、環境関連法規等の変更・新規導入が実施され、想定を上回るスピードで化石燃料及び化石燃料由来の製品需要が減少した場合、顧客企業の化石燃料関連への投資抑制、顧客企業の事業内容自体の変更実施等、当社グループの顧客企業の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これにより、開発案件数の減少及び限られた案件の受注を巡る競合企業との競争の激化等による価格低下が起こる可能性があります。当社グループがこうした事業環境の変化に対応できない場合には、当社グループの事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクに加えて、社会や産業全般の変化等当社グループを取り巻く事業環境が変化するリスクに対して、足元の事業環境の変化に対応しつつ、当社グループが持続的に成長していくための取組みを推進してまいります。なお、当社グループは、2021年5月に公表した「2040年ビジョン」に基づき、地球環境と人類の健康に関わる課題解決への貢献を目的とし、ビジネス領域をエネルギートランジションやヘルスケア・ライフサイエンス等の幅広い領域へトランスフォーメーション(変革)させていくほか、ビジネスモデルのトランスフォーメーション、更にそれらを支える基盤としてグループ内の組織のトランスフォーメーションに取り組んでおります。また、国内外で実績を上げ始めている非化石燃料、資源循環、再生可能エネルギーなどの分野のプロジェクトの受注、遂行に加え、これらトランスフォーメーションを通して当社グループは、脱炭素社会の実現に向けた取組みをこれまで以上に推進し、持続的な成長を図ってまいります。
当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)の影響が和らぐなかで世界経済は回復傾向にあったものの、ウクライナ情勢等に伴う資源価格をはじめとする物価上昇の長期化に加えて、これを抑えるための各国中央銀行による金融引き締め等が継続され、世界経済は後退の動きを見せ始めるなど先行き不透明な状況が高まりました。
このような状況のなか、当社グループの総合エンジニアリング事業の海外マーケットにおいては、エネルギーソリューションズ分野(石油精製、石油化学・化学、ガス処理、LNG等)では、世界各地での経済活動の再開に伴ってエネルギー需要の回復が進み、さらにエネルギー安全保障と低炭素化の両立の観点から、環境負荷が比較的少ない天然ガス(液化天然ガス(LNG)を含む)の重要性が高まり、産油・産ガス諸国で多くの設備投資案件が着実に進展しました。また、ファシリティインフラストラクチャーソリューションズ分野(発電、受入基地、医薬、医療、水処理、鉄道等)では、世界的な低・脱炭素化の動きを背景に、アジア地域を中心に再生可能エネルギー発電や産業インフラ関連の投資計画が進捗しました。サステナブルソリューションズ分野(水素・燃料アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)、スペシャリティケミカル、ケミカルリサイクル、グリーンケミカル等)では、同様に世界的な低・脱炭素化の潮流を受け、水素・燃料アンモニアなどを中心に低・脱炭素関連案件が着実に前進しました。
同事業の国内マーケットにおいては、既存製油所の改修・保全のほか、ライフサイエンスやヘルスケア、ケミカル分野を中心としたインフラ分野への設備投資が継続的に行われるとともに、政府が掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた水素・燃料アンモニアやSAF(持続可能な航空燃料)などの低・脱炭素関連案件で進展がみられました。
機能材製造事業においては、触媒・ファインケミカル分野では、COVID-19の影響が和らぐなかで世界各地で経済活動が再開し、触媒を中心に顧客の製品需要は総じて堅調に推移したものの、供給過剰や世界的なインフレーションの進行に伴う消費者の購買意欲の減退によって、半導体やエレクトロニクス市場におけるファインケミカル製品の事業環境に悪化がみられました。ファインセラミックス分野では、活況であった半導体関連市場において景気の減速感が強まっているものの、電気自動車やハイブリッド車向けのパワー半導体関連製品の需要については引き続き好調に推移しました。
なお、当社グループは引き続き、激変する外部環境を注視し、適宜情報収集及びリスク対応を実施するとともに、COVID-19の感染拡大の防止に努め、当社グループ社員をはじめとする関係者の安全に配慮して事業を遂行しました。
以上のような経営環境のもと、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。
経営成績
受注高
この結果、当連結会計年度末の受注残高は、為替変動による修正及び契約金額の修正・変更を加え、1兆5,710億円となりました。
なお、当連結会計年度の連結財政状態の概況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は5,394億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ61億49百万円の増加となりました。これは主に未収入金が387億12百万円減少したものの、現金預金が447億92百万円増加したことによるものです。固定資産は1,736億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ127億2百万円の増加となりました。これは主に有形固定資産が27億円、無形固定資産が13億49百万円、投資その他の資産が86億53百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は7,131億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ188億52百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における流動負債は2,722億6百万円となり、前連結会計年度末に比べ183億69百万円の増加となりました。これは主に1年内償還予定の社債が200億円減少したものの、支払手形・工事未払金等が267億47百万円、流動負債その他が97億94百万円増加したことによるものです。固定負債は429億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ98億36百万円の減少となりました。これは主に社債が100億円減少したことによるものです。
この結果、負債合計は3,151億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ85億33百万円の増加となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,979億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ103億18百万円の増加となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を306億65百万円計上した一方、自己株式の取得により200億円減少したことによるものです。
この結果、自己資本比率は55.7%(前連結会計年度末は55.8%)となりました。
当連結会計年度の連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較し447億46百万円増加し、3,327億55百万円となりました。また、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益488億11百万円に加え、未収入金の減少などにより、結果として1,107億69百万円の増加(前連結会計年度は193億11百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより114億71百万円の減少(前連結会計年度は76億95百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出などにより612億88百万円の減少(前連結会計年度は1億48百万円の減少)となりました。
(注)金額は販売価格によっております。
(注)当連結会計年度より、受注実績の集計方法を変更し、機能材製造事業の受注高を含めております。
(注)売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、以下のとおりであります。
(注)前連結会計年度のサウスリファイナリーズ社については、当該割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(単位:百万円)
(注)1.当連結会計年度より受注高の集計方法を変更し、機能材製造事業の受注高を含めております。
2.総合エンジニアリング事業の「当連結会計年度末受注残高」は、当連結会計年度における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額83,238百万円を含んでいます。
3.その他の事業の「当連結会計年度末受注残高」は、当連結会計年度における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額44百万円を含んでいます。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 当連結会計年度の概況」に記載のとおり、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高6,068億90百万円(前期比41.7%増)、営業利益366億99百万円(前期比77.4%増)、経常利益505億60百万円(前期比68.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益306億65百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失355億51百万円)となりました。
売上高及び営業利益は、海外の大型プロジェクトの順調な進捗及び円安の影響等により前連結会計年度と比較して増収・増益となりました。経常利益は、主に金利上昇による受取利息の増加により、前連結会計年度と比較して増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度については特別損失としてイクシス関連損失を計上し純損失となりましたが、当連結会計年度は黒字転換しております。
当連結会計年度のセグメント別の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりです。
総合エンジニアリング事業
総合エンジニアリング事業においては、海外では北米での大型LNGプロジェクトや中東での製油所近代化プロジェクト、国内ではライフサイエンス関連プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトの進捗が順調に伸びたことにより、売上高は前連結会計年度と比較して増収となりました。セグメント利益は、プロジェクトの着実な遂行、プロジェクト終盤案件での採算改善、円安影響等により、前連結会計年度と比較して増益となりました。
機能材製造事業
触媒分野においては、燃料需要が徐々に回復したことから、FCC触媒を中心に、国内外で触媒の需要が堅調に推移しました。ファインケミカル分野においては、半導体やエレクトロニクス市場の事業環境悪化の影響を受け、シリカゾルの需要が減少したものの、化粧品材の需要は堅調に推移しました。ファインセラミックス分野においては、半導体関連市場の需要が悪化し始めた一方で、電気自動車やハイブリッド車向け高熱伝導窒化ケイ素基板の需要は引き続き旺盛でありました。この結果、売上高は前連結会計年度と比較して増収となりました。セグメント利益は半導体関連の需要悪化に加え、燃料費や材料費の高騰の影響等により、前連結会計年度と比較して減益となりました。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の改善に加え、過去終了プロジェクトの係争終結に伴う未収入金の回収などにより営業活動によるキャッシュ・フローは1,107億69百万円の増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形、無形固定資産の取得による支出等により114億71百万円の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出、自己株式の取得等により612億88百万円の減少となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末から増加し3,327億55百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりです。
(資金需要)
総合エンジニアリング事業は、キャッシュ・フローや採算の変動が大きく、プロジェクトの安定的な遂行のために十分な運転資金を必要としています。機能材製造事業では、主として製造設備の拡張・更新のための設備投資を効率的かつ継続的に行っています。また、中期経営計画「BSP2025」において計画している戦略投資を進めてまいります。
(資金調達)
当社グループは、資金需要に対して、営業活動によるキャッシュ・フローから得た資金及び手元資金に加え、状況に応じて有利子負債などによる調達資金を充当しています。有利子負債は、金融市場の環境等を鑑み、社債発行や金融機関からの借入など最適な手段によることとしております。なお、当社は株式会社日本格付研究所から信用格付を取得しており、報告書提出時点において長期発行体格付がA+、コマーシャルペーパーがJ-1となっております。
(財務戦略)
当社グループは、顧客からの信頼獲得及び長期にわたる大型プロジェクトの円滑な遂行の観点から、短期的な市場動向に左右されない強固な財務基盤を維持するとともに、戦略投資に対する機動的な資金調達余力を確保するため、自己資本比率については50%以上を安定的に維持することを目標としています。また、市場混乱時にも事業を継続するために十分な流動性を常時確保する方針としており、手元資金に加え取引金融機関とのコミットメントライン契約未使用枠300億円を有しています。手元資金については、効率的な運用・配分を実現するため、グループ内のキャッシュ・マネジメントの最適化に取組んでいます。当社は、戦略投資に機動的に対応しつつ強固な財務基盤を維持するとともに株主還元を着実に実施し、企業価値・株主価値の向上に努めてまいります。
(株主還元)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題として位置付けております。具体的な株主還元方針の内容については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、日揮グローバル株式会社との間で2019年10月1日を効力発生日とする吸収分割契約において承継の対象とならなかった海外における各種プラント・施設のEPC(Engineering, Procurement and Construction:設計・調達・建設)事業の一部の経営を、日揮グローバル株式会社に対して委託し、日揮グローバル株式会社はこれを受託することについての経営委任に関する覚書を締結しております。
当連結会計年度は、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ「挑戦の5年間」と位置付ける中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure (BSP2025)」の2年目として、引き続き3つの重点戦略①EPC事業のさらなる深化、②高機能材製造事業の拡大、③将来の成長エンジンの確立に注力してきました。その結果、将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした実証事業の推進の継続に加えて新たな実証事業の推進、事業推進のための特別目的会社の設立、事業化推進のための関係者との連携構築、新たな産学の連携を促進することができました。なお、研究開発費については、当社で行っている各セグメントに配分できない研究開発費用2,096百万円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
現地セキュリティや自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にある中で、当社グループは大型モジュール工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践しています。さらに新しい工法(ロボット化、自動化、3Dプリンター導入、小型モジュール工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計にAIやBIM導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などを図り実装することによって、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減することを目指しています。同時にこうした取組みが当社グループの競争力強化にもつながると考えEPC事業会社を中心に全社的な活動を展開しています。
IT/DX関連
1. EPC効率向上を目指して行っているもの
(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER®
プラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられています。したがって複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でしたが、当社グループのIT戦略「ITグランドプラン2030」においてAI設計イノベーションを掲げ、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER®を開発しました。Auto Plot PATHFINDER®による設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER®により、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)へ変革し、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。2022年度ではPreFEED業務に初実装し、複数のプロットプラン案の定量評価が客先説明時に好評だったことから、今後のFS(フィージビリティスタディ)やFEED(基本設計)業務に適用していきます。
(2) Data Centric EPC遂行、AWP
Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなプロジェクト遂行手法であり、プロジェクト遂行におけるリスクを低減し品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されています。当社グループにおけるData Centric EPC開発においては、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しています。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在進行中の複数プロジェクトにおいて、建設工事に実装したほか、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めています。また、当社グループでは、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (Digital Project Delivery) へも取り組んでいます。
2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの
(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)
アセットインフォメーションは、顧客が安定したプラント操業を維持するために重要な情報です。近年は本分野の顧客要求の高まりもあり、複数のプロジェクトでアセットインフォメーションマネジメントの実装が進み、当社グループにおける技術の蓄積が進んでいます。設計・調達・建設(EPC)の各フェーズの中で生成されるプラントを構成する各種のアセットのインフォメーションに関し、一貫性をもって管理・統合するため、当社グループではデジタルツイン技術への取組みを進めています。社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しています。これにより遂行したプラントの完成・引渡し後に顧客がスムーズに運転・保全に移行し、アセットやプラントのオペレーション&メンテナンス(O&M)コストの低減という付加価値を提供し、顧客の事業価値向上に貢献しています。
(2) スマート保全ビジネス
プラントの高経年化が進む中で重要性が増している保全業務に資するべく、当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MISTM)の販売・運用を行ってきました。また、このシステムを包含する情報プラットフォームを構築し、IoTやビッグデータを活用した統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めています。
INTEGNANCE®では、検査結果や運転情報などをもとにしたプラントのAI予兆保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行います。
また、3Dビューア「INTEGNANCE® VR」(以下、「本ビューア」という。)を開発、デジタルツインの構築・運用を行う事業会社「ブラウンリバース株式会社」を設立し、2022年9月より有償提供を開始しました。本ビューアでは、既存プラント全体を撮影した360°パノラマ写真上にアノテーション(関連データをタグ登録)することで、各機器や部材の関係を可視化するいわば“プラントのストリートビュー※”を実現、プラント内のあらゆる情報に視覚的に迅速にアクセスすることで実務者の運用・保守業務の大幅な効率化を可能にしています。
さらに、英国の原子力業界をはじめ、高度かつ確実な安全管理が求められる分野で幅広く利用されている事故想定シナリオ管理手法「フォルトスケジュール」をベースに開発したスマート保安の最適化を支援するリスクマネジメントソフトウェア(Coresafety®)の提供を2023年3月より開始いたしました。
※ストリートビューは、Google LLCの登録商標です。
天然ガス分野
昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社グループではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げています。
CO2-EOR(原油増進回収)においては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、当社グループは特殊なゼオライト膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州での実証試験を継続して実施中です。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国、企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供していく方針です。
さらに、「尼国グンディガス田におけるCCUSのJCM実証に向けた準備調査」において、現在、大気放散されているCO2を近郊の圧入井までパイプライン輸送して、地下に圧入・貯留するCCS実証プロジェクトの事業化調査を完了しました。今後、実証設備の基本設計、建設を経て、2020年代後半を目途にCO2の圧入、モニタリングを開始することを想定しています。本プロジェクトが実現すれば、アジア地域におけるCCS事業のモデルになるものと期待しています。
また、温室効果ガスの中でもメタンの排出量は、既往の計算では精度高く求めることが困難とされており、欧州や米国などではセンサーによる実測が求められつつありますが、実際に計測をしている企業は多くありません。精度の高いメタン排出量の計測がなされていないために、排出源が特定されておらず、正しいメタン削減ソリューションにつなげられていない現状があります。当社は石油・天然ガス設備からのメタン排出を想定した「メタン排出計測技術評価設備」を技術研究所に建設し、国内外の計測器メーカーなどと幅広い協働を通じて計測技術を向上させることにより、一層効果的なメタン排出対策を実現していきます。今後、メタン排出量削減が温室効果ガス削減に向けて重要であることを引き続きアピールし、優れた温室効果ガス測定技術とエンジニアリング技術を駆使し、温室効果ガス排出の少ない設備の実現を目指していきます。
さらに、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に操業改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しています。例えば空冷式LNGプラントの場合、生産量減退の要因となるHot Air Recirculationに対しFoggingを適用しLNG増産につなげた試みのほか、アジアの国営石油会社向けにHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。増産量を正確に把握するため、機械学習やシミュレータを利用したデジタルツインの開発も行っています。また、その他複数社のLNGプラントオーナー向けに、月次で運転ビッグデータ解析から解析結果・改善案を提供するサブスクリプション型サービスをLNG3 Envisionとして提供しています。
オフショア分野
世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。
FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、並びに操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。また、当連結会計年度では、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズの高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、以下2点に取り組んできました。
1. 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回収するゼオライト膜の経済性検討(既存別技術との比較)を実施しています。
2. 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、遠隔で操業状況を監視するシステムのパイロット運用を実施し、自動化・省力化・遠隔操作に関連するデジタルテクノロジーの運用方法の検討を進めています。
低炭素・脱炭素化分野
温室効果ガス排出量削減に向けた取組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル、及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っています。
CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが国内で着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。特に変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成システムを開発しています。
再生可能エネルギー由来の水素を利用したグリーンケミカルの普及に際しては、天候・時刻・季節によって変動する再生可能エネルギーを利用し、いかにして安定的・効率的にケミカルを製造するかが課題になります。その課題解決のためには、統合制御システムの開発が必須となります。
当社グループは、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)で製造される水素利用を想定したアンモニア製造プラントの基本設計や、統合制御システムの要件定義を行ってきました。当連結会計年度には、この統合制御システムを組み込んだ再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術の実証プラントを福島県浪江町に建設することが決まり、技術実証に向けて大きく進展しました。当社グループは、本実証プロジェクトを通じて、再生可能エネルギー由来の水素を原料とするグリーンアンモニア製造技術の確立を引き続き目指していきます。
資源循環分野
中期経営計画「BSP2025」において、ケミカルリサイクルを注力分野の一つと位置づけており、ガス化(EUPガス化ケミカルリサイクル)、油化、モノマー化(廃繊維リサイクル)を含め、幅広いプロセス技術を通じてケミカルリサイクルを推進し、循環型社会の構築に貢献していくことを目指しています。
廃プラスチックのケミカルリサイクルは、リサイクルが困難な異種素材や不純物を含むプラスチックを分解し、様々な化学物質に再生することが可能であり、リサイクル率の大幅な向上をもたらす技術として期待されています。
当社グループは、荏原環境プラント株式会社とUBE株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、株式会社レゾナック・ホールディングスから量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備並びにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、及び③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っています。このEUPは、2003年より稼働を続けているガス化設備で、世界で唯一の長期商業運転実績を有する極めて信頼性が高いプロセスです。さらにEUPでは混合プラスチックや不純物を含むプラスチックの活用が可能となります。2022年度から岩谷産業株式会社、豊田通商株式会社と共同で国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業にて、都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査を実施し、その調査結果として、3社は、廃プラスチックガス化設備を活用した低炭素水素製造に関して、愛知県名古屋港近郊での協業を検討する基本合意書を締結するにいたりました。今回の基本合意書の締結により、早期に基本設計業務を開始し、2020年代中頃での水素製造開始を目標として取り組んでいます。廃プラスチックの活用並びに地産地消水素の製造により水素社会の実現にも貢献してまいります。
プラスチックのケミカルリサイクル技術の一つに油化技術があり、当社グループは、10年間の運転実績を有する国内大型商用装置をベースに、廃プラスチックの油化ケミカルリサイクルに関する自社ライセンス(Pyro-BlueTM)の開発・提供を推進しています。当社グループの油化技術は、他の油化プロセスでは事前除去する必要があるPVC(塩化ビニル)やPET(ポリエステル)を含む混入プラスチックの処理が可能です。顧客が処理したい廃プラスチックを試験的に処理し、サンプル油を提供できるベンチ装置も完成しました。今後、処理できるプラスチックの種類拡大、装置の大型化による経済性向上、効率化等を進め、プラスチックの資源循環社会の実現に貢献していきます。
繊維産業においては、製造工程における大量のCO2排出や衣類の大量廃棄が課題となっています。使用済繊維製品の利用は、現状、熱利用を目的とする「サーマルリカバリー」や別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」が一般的ですが、「ケミカルリサイクル」は繊維製品を再び繊維の原料へ化学分解することにより、繊維 to 繊維のリサイクルができる画期的な方法です。
PET(ポリエステル)は、繊維製品だけではなく、ボトルをはじめ、フィルムや食品トレーなど多くの製品に使用されています。当社グループが提供するケミカルリサイクル技術は、着色されたポリエステルから染料や不純物を除去できるため、添加物、付着物等の影響によりメカニカルリサイクルできないポリエステル製品の受け皿としても機能するため、製品を限定せず素材としてのポリエステル全体の資源循環を目指すことが可能な技術です。本技術のライセンスを提供する目的として「株式会社RePEaT(リピート)」を設立しました。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、航空分野における脱炭素化として、「空のカーボンニュートラル」の機運が高まっています。中・大型機に対しては、機体の軽量化、効率化もほぼ限界と言われています。そして、空のカーボンニュートラル達成のためには、実質的にはSAF(Sustainable Aviation Fuel, 持続可能な航空燃料)が切り札とも言われており、その利用拡大は急務となっています。当社グループは使用済食用油を原料としたSAF製造体制の確立とバリューチェーンを構築していくことを目指しています。具体的には、国内初の国産SAF大規模生産に向けて「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立し、2025年に年間3万キロリットルのSAFの国内供給を目指します。個人や自治体、企業がSAFの原料となる使用済食用油の提供を通じて、国内における資源循環の促進に直接参加ができる場として「Fry to Fly Project」を開始しました。今後とも、国内において脱炭素化に向けた資源循環の促進に積極的に参加できる機会の創出、これらの活動を通じて、市民・自治体、企業の行動変容につなげていくことを目指しています。
今後も自動車・交通需要の増加に伴い、タイヤ需要の増加が見込まれています。将来、資源の枯渇やCO2排出量の増加による気候変動などの問題に直面する可能性が指摘されている中、今後もより持続可能な形でタイヤを提供し続ける必要があります。当社グループは、関係する企業とバイオマス由来の原料(エタノール)を使用してタイヤの原料となるブタジエンを製造するプロセス開発に取り組み中です。当社グループは、競合技術より「タイヤ原料のブタジエン選択率が高い」独自の触媒を保有しています。今後、関係する企業と2023年までに実証試験を終了し、技術を確立し、持続可能な社会実現への貢献を目指します。
バイオ分野
CO2削減やサステナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社グループでは、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオエタノールやバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を進めています。バイオマス原料の変換技術としては、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)や木質資源(木材やパルプ等)を効率よく糖に変換するための前処理技術の開発、及びこれらの糖に含まれる発酵阻害物質を除去するための糖精製技術の開発に注力しております。現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。
日本は、国土の約7割を森林が占めています。その森林の未利用バイオマスを化石燃料の代替原料として活用する「グリーンリファイナリー」の機運が高まっています。森林の未利用バイオマスは、化石燃料と同じ炭素と水素を持っているため、森林の未利用バイオマスを化石燃料の代替として利用できれば、製品の炭素を固定することになり、再生可能な取組みとなります。「バイオリファイナリー」実現のために、具体的なプロセス選定(急速熱分解)のみならず、川上(森林)から川下(製造)までのプレーヤーインテグレーション&バリューチェーン構築が進みつつあります。当社グループは、今まで培ってきたプロセスエンジニアリング力を活かして、「森林×化学」で化石燃料に頼らない暮らし、つまり、脱化石燃料社会の実現を引き続き目指していきます。
今年度は、株式会社カネカ、株式会社バッカス・バイオイノベーション、株式会社島津製作所と共同で国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」に共同提案し、採択されました。このプロジェクトは日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」におけるカーボンリサイクルの実現に貢献するものです。4社がこれまで培ってきた知見や技術を結集し、化石資源に依存しない循環型バイオものづくり技術の実現を目指してまいります。
ライフサイエンス・ヘルスケア分野
医薬品業界では、これまでの低分子合成医薬品に加え中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品、再生医療等製品の開発が増加傾向であり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、当社グループは、合成医薬品製造に関して、高薬理活性物質の製造に適応するための新たな封じ込め技術の確立と高度な封じ込め測定手法を含めた技術強化、中分子医薬品製造に関しては独自製造設備の更なる展開、医薬品業界の注目度が高まっている連続生産に関しては知財戦略を含めた製造技術の開発など、多角的に技術開発を進めています。バイオ医薬品製造に関しては、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、大量培養に向けたスケールアップ技術開発、製造DXシステム開発、連続生産に向けた技術開発等を進めています。再生医療等製品に関しては、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、効率的な細胞・組織培養環境基準の構築、及び関連要素技術の高度化を進めています。固形製剤、無菌製剤製造工場ではロボット活用による無人(塵)化の実現、スマート工場化の開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、当社グループが建設するプラント・施設への導入事例も増えており、当社グループの技術差別化につながっています。
さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図るとともに、ICTの活用により利便性、効率性を高め、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、病院と地域を情報ネットワークで結び、住民が安心して生活できる病院を核にしたまちづくり「ヘルスケアシティ」の構築を目指した取組みを始めています。
原子力分野
当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係わるプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。
国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、水素や再生可能エネルギーと並び、脱炭素社会の実現への貢献が期待できること、NuScale Power, LLC(ニュースケール社)の技術が他のSMR技術に先駆けて、2020年8月に米国初の設計認証を取得し、米国原子力規制委員会によりその安全面が認められ、商業化に最も近いSMR技術であることから、SMRプラントのEPC事業への進出を目指し、当社グループは2021年3月に米国の特別目的会社を通じてニュースケール社に出資しました。さらに2022年4月には株式会社国際協力銀行(JBIC)が出資し、日本政府としてニュースケールSMRの実現を後押ししています。現在、米国アイダホ国立研究所敷地内に米国初のニュースケールSMR実証プラントを建設するCarbon Free Power Projectが始まっており、2029年の運転開始に向けて米国フルア社/ニュースケール社等が建設運転一括許可申請(COLA)とEPC準備業務を実施中です。当社グループは、2022年度からフルア社の設計部門とプロジェクト管理部門組織への当社エンジニア人員の派遣を開始しています。
当社グループは、SMRの将来的な市場拡大に加えて、SMRが中長期的には海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトを受注・遂行していくことを視野に入れ活動していくほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備、海水淡水化設備とのインテグレーションも検討していく予定です。
洋上風力発電分野
国内の洋上風力発電は、現在進行中の港湾区域に続いて一般海域の促進区域におけるプロジェクトが動き出しています。今後、国内の洋上風力発電は毎年複数案件が継続的に開発される見通しであり、当社グループも主力EPCプレーヤーを目指し、事業性検討や基本設計など早い段階から関与しながら将来のEPC受注と遂行を目指しています。最近では電力ケーブルの最適設計技術を確立しました。また、今後特に成長が期待されている浮体式洋上風力分野に関しては、これまで既に浮体式実証設備の撤去実証事業や今後の事業開発に関するフィージビリティスタディ、浮体の要素技術の検討などに取り組んできており、継続して技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体の最適化を目指して取り組んでまいります。
知財・無形資産に関する活動
当社グループでは、パーパス(存在意義)である「Enhancing planetary health」の実現を目指し、事業戦略・開発戦略・知財戦略の3つを連携させることで、深化・探索領域の技術開発と事業化を推進しています。
コア技術領域となるEPC(設計・調達・建設)事業では、設計やプロジェクトマネジメントのデジタル化、建設工法最適化等の受注競争力向上に役立つ知財・無形資産の確保に注力するとともに、各種技術契約を重要視し、円滑なビジネスパートナリングに努めています。
また、将来の成長エンジンとなる成長事業領域では、ケミカルリサイクル等の資源循環技術、ブルー水素・燃料アンモニア等の新エネルギー分野でのビジネス創出を支援すべく、ノウハウ・特許・商標等の知財ミックスによる保護に取り組んでいます。
さらに、2040年ビジョンにおける5つの注力分野及びDX等の分野における特許出願比率を段階的に増やしていく計画です。
特に重要な技術開発テーマでは、技術開発から事業化までを複数のステージに分けてステージ移行時にゲート審査を実施するとともに、知財戦略のPDCAサイクルを用いて必要なアクションをモニタリングしています。
なお、当事業での研究開発費は
石油精製分野
石油精製企業は、新型コロナ禍からの経済回復による燃料需要増加への供給対応と、カーボンニュートラルに向けたエネルギーシフトに対応する製油所の事業変革、両面からの対応が求められています。当社グループは、石油精製分野において、これら顧客のニーズ変化に対応する触媒及び触媒素材開発に取り組んでいます。FCC触媒は顧客ニーズを取り込んだ改良型触媒で海外大型案件の継続採用や国内採用を果たしました。また、今後拡大が期待されるケミカルリファイナリー用に開発したFCC触媒は、海外で石化型FCC装置にトライアル採用が決定しました。水素化処理触媒は海外石油会社と共同開発した水素化分解触媒が、海外石油会社で採用され良好な実績を上げており、今後同社での採用拡大が期待されています。
水素化分解触媒に用いられるゼオライトや無定形シリカアルミナ材は、当社グループの触媒開発技術を活用して開発された触媒素材であり、これら触媒素材は石油精製分野だけでなくケミカル分野にも広く展開が期待されています。触媒素材販売拡大に向けてゼオライト生産設備の生産能力を増強し、製品種の拡大や用途開拓に取り組んでいます。
石油化学分野
ケミカル分野は汎用樹脂原料の需要低迷により、ケミカル製品種の見直しや事業再編の動きが活発化する一方、競争力のある、高効率なプロセスや高機能ケミカル製品への転換が進められています。また循環型社会の実現に向けたCO2・ケミカルリサイクルやバイオマス由来原料、生分解性プラスチックへの原料転換の検討が進められています。当社グループにおいては、顧客の高効率プロセスニーズに対応するケミカル触媒や吸着剤開発に取り組んでいます。今後拡大が期待される水素化触媒の開発のため、実機プロセスを模擬したラボ反応評価設備の導入と、反応生成物の構造解析を行うための分析装置を導入しました。それらの分析結果を機械学習ソフトにより解析しながら、製品開発の迅速化にも取り組んでいます。
今後ケミカルリサイクルプロセスでも必要とされる、炭化水素中の塩素を高効率で除去可能な新規の塩素吸着剤の開発を完了し、実証段階に入っています。さらに塩素除去に加え硫黄除去、酸素除去等のケミカルリサイクル前処理材の開発にも取り組んでいます。今後も新たなニーズに対応する触媒や吸着剤の拡充を図っていきます。
環境保全分野・クリーンエネルギー分野
環境保全・クリーンエネルギー分野では、カーボンニュートラルに向けた、CO2削減のためのバイオマス混焼及び専焼用の発電所向けに、排ガス中のアルカリ成分に耐性のある脱硝触媒の開発に取り組み、高い劣化抑制能を有する触媒を開発しました。現在、幾つかのバイオマス専焼発電所での実証試験を開始しており、早期の実商化及び拡販を目指しています。
また、クリーンエネルギーとして期待されているアンモニアを、燃料として混焼させた時に排出される窒素酸化物を効率的に除去するための新規触媒の開発に着手しています。さらに、CO2回収・利用・貯蔵(CCUS)やクリーンな水素利活用等に使用される、新規材料の探索にも着手しました。
生活関連・化粧品分野
プラスチック眼鏡レンズはレンズ厚の薄肉化・軽量化のため高屈折率化傾向は継続して進行しています。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された高屈折率チタニアナノ粒子の需要も着実に増加しています。また、耐光性を大幅に向上させた開発品は大手メーカーで良好な評価結果を得られており、量産化検討段階に進捗しました。さらに、高屈折率酸化物ナノ粒子と短時間硬化マトリックスを組み合わせたハードコートラッカー材は、プロセスの低エネルギー化に寄与しうることに加えて顧客のプロセス短縮ニーズとマッチして採用評価が進んでいます。
化粧品やサニタリー分野では、マイクロプラスチックビーズ代替としての独自の感触用シリカ材は既に一部の顧客に採用されていますが、スクラブ材や化粧品への採用検討が引き続き加速しています。それと並行して、シリカ素材以外のラインナップとして米澱粉粒子など植物由来のボタニカルな新商品開発にも顧客の期待が大きく寄せられ、環境と人に優しい化粧品材料開発に取り組んでいます。
電子材料分野
半導体関連製品の需要は中長期な成長が見込まれており、当社グループのシリコンやHDD基板用研磨砥粒において、次世代用の研磨面品質と研磨効率を両立した開発品の顧客評価は活発に進んでいます。このため、市場回復への備えや次期展開に向けて、シリカゾルの生産能力増強を進めています。また、新たに参入を目指しているCMP研磨用途では微細化・多層化に伴い多様化するニーズに対して独自の無機複合型研磨砥粒を中心に、純度や形状制御された砥粒でラインナップを揃え、顧客評価を進めています。
光学フィルム用機能性光学材料では、有機ELテレビやQLEDテレビの高画質化のトレンドは変わらないと見込まれ、顧客による視認性向上のための反射防止フィルム用低屈折率粒子の採用検討が継続しています。当社グループは、多用途展開として車載用ディスプレイ向けにも低屈折粒子の開発を行うなど新用途開拓に取り組んでいます。
新規開発材による用途開拓として、高速通信用低誘電率、高誘電率材料開発への取組みを継続しています。重要顧客を中心に活動しており商品化に向けた検討ステージが着実にステップアップしています。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきています。その要求に応えるため、当社グループは国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性を持つ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発並びに事業化を推進してきました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産性向上を実現しながら、更なる高性能品開発にも取り組んでいます。
通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gが本格導入され、今後、更なるデータ量の増大に向けたBeyond5Gなどの無線通信や光通信回線の大容量化・高速化が必須になります。当社グループは、最先端の無線通信技術、光通信技術に対応できる薄膜回路基板、単板コンデンサなどの性能・信頼性向上などの開発・製造・販売を行っています。
今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について国立大学法人東北大学などとの共同研究を継続しています。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品、次世代Liイオン2次電池や燃料電池用部材など、先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでいます。
なお、当事業での研究開発費は
また、総合エンジニアリング事業及び機能材製造事業に加え、その他の事業において