文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。
当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、新たな未来を支えるモノづくり、持続可能な社会への貢献に取り組んでいます。
また、企業存続の根幹である「コンプライアンス・安全・環境」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守、労働災害リスク撲滅、環境事故防止等を全役員・全従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けています。
2022年5月、経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」という当社グループの存在意義(パーパス)を策定しました。
当社グループの事業の核は、大切な財産である「森林」です。森林を適切に育て、管理することは、二酸化炭素の吸収固定や生物多様性保全、水源涵養、土壌保全等、森林が持つ様々な公益的機能を高めることに繋がり、森林資源を活用した製品群は、化石資源由来の素材・製品を置き換えていくことが可能です。今後も森林資源に根付いた事業活動を通じて環境問題・社会課題への対応に尽力していきます。
また、当社グループのあるべき姿の実現に向け、「成長から進化へ」を基本方針とする2030年までの長期ビジョンを策定し、「環境問題への取り組み」、「収益向上への取り組み」、「製品開発への取り組み」の3つの柱を掲げ、企業価値の向上に取り組んでいます。
・環境問題への取り組み
石炭使用量ゼロに向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス排出量削減や、植林地を取得・拡大し、有効活用することにより森林による二酸化炭素純吸収量の拡大を図り、環境問題に対する取り組みを進めていきます。
・収益向上への取り組み
コスト削減や操業改善等により既存事業を掘り下げ深化させていくことに留まらず、戦略投資やM&A等を通じて、既存の有望事業や環境配慮型製品等により事業を伸ばしていきます。
・製品開発への取り組み
環境配慮型素材・製品の開発、プラスチック代替品の商品化等、木質由来の製品を新しく世に出していきます。
これらの取り組みを通じて、2030年度までに売上高2.5兆円以上を目指し、また、2030年度に2018年度対比で温室効果ガス排出量70%以上の削減を目標とする「環境行動目標2030」を達成し、企業価値の向上と社会への貢献をしていきます。
この2030年までの長期ビジョンのマイルストーンとして、2022年度から2024年度までの中期経営計画を策定し、以下の数値目標を設定しています。
※ ネットD/E=純有利子負債残高/純資産
具体的には以下の取り組みを行います。
需要が底堅く推移する段ボール事業について、生産体制再構築や原紙加工一貫生産化を進めると同時に、新工場建設・M&Aを通じ一層の事業拡大に努めています。
海外では、東南アジア・インド・オセアニアでのパッケージング事業のさらなる強化を図ります。2022年度にはマレーシアとベトナムで3つの段ボール新工場が稼働し、さらに2023年度上期にベトナムで新たに1工場が稼働する予定です。国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される首都圏を中心とした段ボール事業の拡大・強化を図っています。2023年2月には栃木県において段ボールの原紙加工一貫工場が稼働しました。
加えて、環境意識の高まりに伴い、紙製品への期待が一層集まる中、国内外で脱プラスチック製品の開発・拡販を一段と進めていきます。
液体紙容器事業では、既にチルド市場においては原紙製造から加工、販売に至る一貫体制を実現していますが、2023年5月にイタリアの液体紙容器事業会社であるIPI社を買収し、アセプティック市場においても、原紙製造から加工、販売及び充填機の製造、販売までを行う総合一貫体制を確立し、国内外での事業拡大を目指します。
段ボールの加工技術を応用したフィルター製造販売事業では、衛生意識の高まりにより拡大する空気清浄機の需要に応じ、「用途別脱臭フィルター」を開発しました。今後も国内外でさらなる事業拡大を目指します。
家庭紙事業では、国内において「ネピア」ブランドのブランディング強化・拡販に取り組んでいます。森を守るために業界に先駆けてFSC®認証を取得し、また、バイオマスインキの使用、パッケージフィルムの紙化、ティシュ取り出し口の紙化やフィルムレス化等を行った環境配慮型製品や、「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品を展開しています。また、2022年8月、王子ネピア江戸川工場内に自社物流倉庫が竣工し、家庭紙加工拠点と配送拠点の一体化により関東圏での競争力強化を図っています。
紙おむつ事業の子供用分野では、国内外での統一ブランド「Genki!」の販売を通じて、「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。国内では、2023年4月にパンツタイプのリニューアルとテープタイプの新発売を行いました。赤ちゃんの快適さを追求し、環境負荷軽減にも配慮する薄型化を実現しています。海外では、マレーシア・インドネシアにおいて周辺国を含め一層の事業拡大を、中国において現地消費者のニーズを取り込んだ製品の拡販に取り組み、海外における拡大・強化を進めています。大人用分野では、要介護・要支援人口の増加に伴い成長が見込まれていることを受け、2022年9月に王子ネピア福島工場で新たな加工機が稼働しました。高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する製品の開発を進めていきます。
環境配慮型素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、お客様の期待を超える製品やサービスを迅速に提供できるよう、新たな事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいます。
海外では、感熱製品の世界市場での拡販と印刷・加工を含めた競争力強化を進めています。南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、ブラジルで生産能力を倍増させたほか、ドイツにおいても感熱紙の生産設備の増強(2024年1月稼働予定)に取り組んでいます。2022年9月には、東南アジア及び中国の6か国に事業拠点を有する高機能ラベル印刷加工会社Adampakグループを買収しました。タイで展開する感熱紙・粘着紙事業、マレーシアの高機能ラベル印刷・断裁加工事業に、新たにAdampakグループが加わり、原紙から加工までの一貫生産が可能となりました。東南アジア・南米・中東・アフリカ等の経済発展に伴い事業の拡大を進めるとともに、既存拠点での競争力強化を図っていきます。
国内では、高機能・環境対応製品の積極的な開発に継続的に取り組んでいます。また、生産体制の継続的な見直しを行い、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し電動車が急速に普及していることを受け、王子エフテックス滋賀工場で、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備増設を進めており、2023年に1台が稼働し、2024年にも1台の稼働を予定しています。
「総合パルプメーカー」として世界的なパルプ事業の拡大・強化に加え、森林資源を活かしたバイオマス発電事業や木材加工事業等の拡大に注力しています。
パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤作りのため、主要拠点での戦略的収益対策を継続して実施しています。また、国内では、成長性のある溶解パルプ事業で増産・拡販を進めるとともに、高付加価値品の生産拡大による収益力向上を図っています。
エネルギー事業では、再生可能エネルギーの利用拡大を目指し、さらなる事業拡大を進めており、2022年12月には、伊藤忠エネクス株式会社との合弁によるバイオマス発電設備が徳島県で稼働しました。また、国内外の拠点を活かし、エネルギー事業の拡大に合わせたバイオマス燃料の調達・販売強化を進めています。
植林事業では、国内外に保有する社有林において、森林の健全な育成・管理に取り組み、持続可能な資源活用を図っています。また、「環境行動目標2030」に掲げる「海外植林地面積を250千ヘクタールから400千ヘクタールに拡大する」という目標に向けて持続可能な森林資源の取得を推進しています。
木材加工事業では、国内外で製材・木材加工製品の生産能力増強、販売強化に取り組んでいます。また、国内では建築資材分野での拡販等を通じ、収益力の強化を図っています。
需要動向を見極め、引き続きコストダウンを徹底すると同時に、保有するパルプ生産設備・バイオマス発電設備等の資産を最大限有効活用し、当社グループ全体としての最適生産体制再構築等を通じて、収益力・競争力の強化に取り組んでいます。2021年10月には、王子製紙苫小牧工場の新聞用紙生産設備1台を段ボール原紙生産設備に生産品種を転換しました。また、2022年4月には、同工場において王子マテリア名寄工場から移設した特殊ライナー・特殊板紙生産設備も稼働しました。さらに、王子製紙米子工場では既存のパルプ生産設備に連続工業プロセスを導入し、高品質な溶解パルプの生産を行っています。加えて三菱製紙株式会社との業務提携を継続し、提携メリットの最大化に努めています。
中国では、数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを徹底して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。
創業当時から紙づくりや森づくりで培ってきた多様なコア技術と、国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。現在は、三つのテーマを中心に進めています。
まず、「木質由来の新素材開発」として、石油由来のプラスチックからの脱却に向けた木質由来のバイオマスプラスチック(ポリ乳酸など)の開発や、化石燃料由来の温室効果ガス排出量削減に向けたバイオマスプラスチックフィルムの製造に取り組んでいます。また、木質由来のエタノールの製造開発を進め、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として供給する可能性を検討しています。その他、セルロースナノファイバーやセルロースマットなど、循環型社会の実現に向けて木質由来の新素材を開発していきます。
次に「メディカル&ヘルスケア領域への挑戦」として、木材の主要成分を用いた医薬品の開発や、高品質な国産の漢方薬原料の安定供給、再生医療の発展に向けた細胞培養基材の開発などにも取り組んでいます。未来の医療を見据え、従来の事業を超えた新たな領域に挑戦しています。
そして、「環境配慮型製品の開発」として、既存のプラスチック製品を紙製品に置き換える脱プラスチックソリューションを進めています。また、植物由来のポリ乳酸を使用したラミネート紙や、現行の紙リサイクルシステムで再生可能な紙コップ原紙などの開発を進め、温室効果ガス排出量削減や脱プラスチックにつながる取り組みを行っています。
王子グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD※)に2020年12月に賛同し、本タスクフォースが推奨する気候関連情報開示に取り組んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
※TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures
G20財務大臣・中央銀行総裁会合の要請を受け、金融安定理事会(FSB)によって設立されたタスクフォースです。2017年6月、投資家の適切な投資判断のために、気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響について情報開示を促す提言を公表しています。
(1)サステナビリティ
王子グループは気候変動問題を含むサステナビリティへの取り組みを経営の重要課題の一つとして認識しています。気候変動を含むサステナビリティ全般の取り組みを強化するため、代表取締役社長(グループCEO)を委員長とし、全カンパニーのプレジデント(当社取締役)及びグループCEOの指名する取締役を委員とする「サステナビリティ推進委員会」並びに、グループ各社のサステナビリティに関する取り組みを統括する「サステナビリティ推進本部」を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、グループ一体となったサステナビリティについての取組を目的として、気候変動リスクや持続可能な森林経営に関する事項、サプライチェーンリスク、環境リスク、人権リスク、インクルージョン&ダイバーシティの推進等のサステナビリティに関する重要課題等を協議し、必要に応じてグループ経営会議へ付議します。付議された重要事項はグループ経営会議の審議を経て、取締役会において執行決定を行います。
2022年度は、委員長により指名された独立した社外取締役をサステナビリティ推進委員会の委員に加えるとともに、本委員会を2回開催しました。

気候関連のリスクと機会は、社外の専門家の協力を受け、サステナビリティ推進委員会事務局が、グループ横断的に事業インパクトなどを中期(2030年)、長期(2050年)にて整理し、サステナビリティ推進委員会にてプライオリティ・重要度を審議します。気候関連問題による、事業・戦略・財務に与える影響は、1.5℃(2℃)、4℃の複数のシナリオを活用して、定量的、定性的に評価します。当社グループは、1.5℃(2℃)シナリオの移行リスク(炭素税等政策・規制リスク)、4℃シナリオの物理的リスク(降水・気象パターンの変化等)を重要と認識しています。王子グループは、脱炭素社会への移行に対応するため、環境ビジョン2050にて「ネット・ゼロ・カーボン」を、そのマイルストーンとして、2030年度に2018年度対比温室効果ガス排出量を70%削減する環境行動目標2030を策定しています。目標達成に向けて代替燃料による石炭使用量削減、プラスチック代替の木質由来製品の開発などに取り組んでいます。リスク分析結果では、継続して取り組んできている徹底した省エネルギー、非化石燃料の導入推進、保有する森林によるCO2吸収・固定量の拡大を継続することにより、脱炭素社会に向けた移行リスクによる事業へのインパクトは、限定的と認識しています。今後も、リスク分析を継続し、森林面積の拡大とレジリエンス強化に取り組んでいきます。
気候関連リスクは、社外の専門家の協力を受け、サステナビリティ推進委員会の事務局が重要度、プライオリティ、事業への影響などを含めてグループ横断的に整理し、年2回開催されます。さらに、重要性に応じてグループ経営会議・取締役会に付議・報告され、全社的なリスク管理と統合します。


パリ協定における1.5℃目標及び環境ビジョン2050、環境行動目標2030を踏まえ、以下の目標を設定し、取り組んでいます。また、国際エネルギー機関(IEA)のネット・ゼロ・エミッション(NZE)シナリオを参照し、ICP(内部炭素価格)を設定しています。目標の達成確度を上げるため、石炭使用量削減等による温室効果ガス排出量の削減、森林によるCO2固定量の増加についてサステナビリティ推進本部を中心に積極的に取り組んでいます。

(2)人的資本に関する戦略(人材育成方針、社内環境整備方針)及び具体的な取組
王子グループは、グローバル企業として「領域をこえ 未来へ」歩むとともに、「成長から進化」を目指し、経営理念・存在意義(パーパス)・経営戦略(長期ビジョンを含む)を実践していきます。
これらを実践していく上で、また、世の中に求められる企業として存続していくために、最も重要な要素は、「人」であると考え、「企業の力の源泉は人材(人的資本)にあり」という大原則の下、王子グループ人材理念に従って、人材確保、人材育成に取り組んでいます。
王子グループ人材理念として、まず、従業員一人ひとりに、高い倫理観を持つことを求めています。その上で、経営理念・存在意義・経営戦略を理解し、実践すること、変革意識を持ち挑戦すること、自己を研鑽し、組織の成長・進化に貢献すること、そして、世界を意識して行動することを求めています。
人的資本強化における目指す姿は、この王子グループ人材理念を体現する人材の確保、育成になりますが、その大前提となるものが、「コンプライアンス・安全・環境の徹底」、「人権の尊重、インクルージョン&ダイバーシティ」、「人材活用(実力主義に基づく公正な処遇とエンゲージメント向上)」であり、この3つこそが、人材育成、社内環境整備方針の基盤となります。
この3つの基盤をしっかりと整えた上で、従業員一人ひとりの意識(行動)の改革や、管理職による部下の成長・進化を促すマネジメントを通じ、多様な人材の能力開発・キャリア形成及びワークライフマネジメント向上を促していきます。
これらにより、価値創造の源泉となる従業員一人ひとりが活躍し、能力を最大限に発揮することや、従業員の多様な価値観・発想からクリエイティブな成果を通じてイノベーションを実現させることで、王子グループ人材理念を体現する人材の確保、育成に繋がり、この一人ひとりの人材が、経営理念、存在意義(パーパス)、経営戦略(長期ビジョンを含む)を実践することで、持続的な企業価値の向上を目指していきます。

①コンプライアンス・安全・環境の徹底
コンプライアンスの遵守、安全の絶対優先、環境面における基準遵守は、企業活動の根幹をなすものであり、経営の最優先・最重要課題と認識しています。
職場における良好なコミュニケーションや働きやすさ、仕事へのモチベーションを通じ、すべての従業員が「健全な常識」「おかしいと思う感性」「行動する勇気」を持ち、法令遵守は当然ながら、社会一般のルールを守り、誠実な態度を持って日々の職務に努めています。
<コンプライアンス>
王子グループは、「国連グローバル・コンパクト」の人権、労働、環境、腐敗防止の原則を織り込み、2004年に「王子グループ企業行動憲章」及びこの憲章の行動指針である「王子グループ行動規範」を制定し、2020年度にSDGs等の社会環境及び、経営理念を反映させて改訂し、より時代の要求に即した内容としました。
企業行動憲章・行動規範の改廃は取締役会の決議事項であり、取締役会の関与の下、活動の規範として、グループ拠点のある各国の言語に翻訳され、グループに属するすべての役員及び従業員に周知されています。すべての役員及び従業員は、この企業行動憲章と行動規範を正しく理解し、実践することに努め、もし、反する行為を行っている場合、もしくは違反が疑われる場合は、速やかに上司あるいは会社・職場のコンプライアンス担当窓口、または企業ヘルプライン(グループ内部通報)窓口に通報、相談することとしています。
グループ全体にわたるコンプライアンス意識の醸成のために、国内外グループ会社では、コンプライアンス責任者、コンプライアンス推進リーダーが推進活動の中心となり、半期ごとのコンプライアンス会議を実施するなど、コンプライアンス活動を推進しています。
コンプライアンス会議
・目標:参加率100%
・実績:参加率97.2%(2022年10月1日~2023年3月31日)
<安全>
王子グループでは「安全絶対優先の基本原則」の方針の下、従業員一人ひとりが基本原則を実践・遵守し、働く仲間の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成の促進、より良い職場安全風土の構築等、安全な環境で安心して働くことができる企業を目指し、取り組んでいます。
王子グループは死亡・重篤災害ゼロ、労働災害度数率削減を目標としていますが、2022年は、残念ながら3件の死亡災害(国内2件、海外1件)が発生、また災害件数が14件増加したことでグループ全体の労働災害度数率は昨年比で0.14上昇し1.11となりました。
グループを挙げて設備の安全化を推進し、全ての従業員に安全ルールを確実に守り・守らせることで労働災害防止を図り、重点目標である「死亡・重篤災害ゼロ」を達成する取り組みを展開しています。

死亡・重篤災害
・目標:ゼロ
・実績:3件(国内2件、海外1件)(2022年1月1日から12月31日)
労働災害度数率の減少
・目標:2030年までに2018年(0.89)対比50%削減
・実績:1.11(連結子会社)(2022年1月1日から12月31日)
(参考) 2022年 労働災害度数率 製造業1.25、パルプ・紙・加工品製造業1.59
(厚生労働省 労働災害動向調査、事業所規模100名以上)
<環境>
王子グループは、気候変動問題を経営上の重要課題と認識しており、この問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の構築に貢献していきます。
この方向性を明確に示すため、当社グループが目指す姿「ネット・ゼロ・カーボン」を中核とする、2050年に向けた「環境ビジョン2050」と、そのマイルストーンとして「環境行動目標2030」を2020年9月に制定しました。
毎月すべての役員及び従業員に対して、王子グループの気候変動問題への対応、豊かな森づくりと資源循環、生態系への配慮、ステークホルダーとの信頼関係の醸成について、分かりやすく社内発信する等、従業員の王子グループ環境経営への理解の促進と、環境意識の向上を図っています。
②人権の尊重、インクルージョン&ダイバーシティ
王子グループは、人権の尊重に一層努めるとともに、個々人の多様な価値観を尊重し、能力を最大限に発揮できる社会の実現に貢献します。
<人権の尊重>
王子グループは、人権を尊重する責任は、重要なグローバル行動基準と考え、人権尊重の取り組みをより一層推進・実践するため、2020年8月「王子グループ人権方針」を制定しました。
「王子グループ人権方針」は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「国際人権章典」等の国際規範を支持、尊重しており、王子グループのすべての役員及び従業員に適用し、すべての事業活動に反映されるとともに、すべての王子グループのステークホルダーに対し、本方針の理解と遵守を期待するものです。また企業活動に関連する人権への負の影響を特定・防止・軽減・救済するための「人権デュー・ディリジェンス」の仕組みを構築し、人権尊重の責任を果たしていきます。
2021年度には、「王子グループ人権方針」の多言語化(10ヶ国語翻訳版を追加)、コンプライアンスニュースでの連載等でグループ内の人権意識向上に努めました。
2022年度には、国内外グループ企業、及び国内外主要取引先に対する「人権デュー・ディリジェンス」を開始し、以後、継続的な影響評価と定期的な開示を実施予定です。
また、人権方針の理解や人権意識の向上を図るため、2022年度に、新任管理職研修等での人権教育(受講者数164名)を実施し、また、人権に関するWeb研修(グループ会社毎に時期を区切り、2021年11月から2022年7月にて実施)を国内主要グループ会社の管理職が受講(受講者数2,640名)しました。
人権教育
・目標:受講率100%
・実績:受講率97.9%(2021年11月1日から2022年7月31日)
<インクルージョン&ダイバーシティ>
王子グループでは、全ての従業員に対して、経営理念、存在意義(パーパス)、人材理念など、核となるものについては、共通の価値観を求めています。さらに、王子グループは、人種、国籍、民族、出身地、思想信条、価値観、宗教、年齢、性別、性的指向、性自認、障がい、社会的身分、社内的地位等に関わらず従業員一人ひとりの多様な価値観、発想、能力を最大限に活用し互いに成長することで企業の競争力強化に結びつく「個人・組織の活性化」に向け「インクルージョン&ダイバーシティ」を推進しています。
「サステナビリティ推進委員会」において、半期ごとに、グループを横断したダイバーシティ推進方針・目標の共有を行うとともに、グループCEOを最高健康責任者とし、健康経営に取り組んでいます。
[女性管理職、新卒採用女性総合職]
女性活躍推進については、従業員数301名以上の国内連結子会社16社を対象に、女性管理職比率5.5%(2025年3月末)を目標に取り組んでいます。
また、王子グループ主要会社の新卒採用総合職は、優秀人材の確保や業務効率化の観点より、2018年度入社者から、王子マネジメントオフィス㈱にて一括で採用しており、新卒採用女性総合職比率30%を目標とし、将来の女性管理職候補の人材確保に努めています。併せて、性差の無い育成を目指し、管理職手前の男女総合職を対象とした「キャリアアップ総合職研修」などを実施し、育成を図るとともに、保育園「ネピア ソダテラス」の開設(東京都江戸川区)や、早期育児休職復帰者への保育所補助制度などにより、従業員の仕事と育児の両立を支援しています。
保育園「ネピア ソダテラス」は、上述の従業員の仕事と育児との両立支援の他、企業の社会的責任から待機児童対策に寄与することも目的としており、当社グループ従業員だけでなく、地域住民の方々にもご利用いただいています。(2023年3月末現在 従業員子女4名、地域住民子女9名)

女性管理職比率
・目標:5.5%(2025年3月末 従業員301名以上の国内連結子会社16社)
・実績:3.6%(2023年3月末 従業員301名以上の国内連結子会社16社)
その他実績:王子グループ全体女性管理職比率(2023年3月末)
国内連結子会社 4.1%(内、王子ホールディングス(単体)9.7%)
海外連結子会社 31.7%
連結子会社計 13.2%
新卒採用女性総合職比率(王子マネジメントオフィス(株)一括採用(スポーツ採用者除く))
・目標:30.0%
・実績:37.7%(2023年4月1日入社)
[男性の育児休業等取得率]
王子グループでは、従業員301名以上の国内連結子会社16社を対象に、男性の育児休業等取得率100%を目標に掲げ、男性の家事・育児への参加を積極的に推進しています。2022年度では、3交替の製造現場もあわせて、98.8%となっています。
男性の育児休業等取得率(従業員301名以上の国内連結子会社16社)
・目標:100%
・実績:98.8%(2022年度)
[障がい者雇用比率]
障がい者雇用については、2007年7月に知的障がい者を主体とした障害者雇用促進法の特例子会社「王子クリーンメイト(本社ビル清掃業務)」を設立する等、積極的に取り組んできました。「グループ適用制度(関係会社特例)」が適用される6社(王子HDを含む)での障がい者雇用率は法定雇用率(2.3%)を達成しています。今後も、さらなる障がい者の雇用拡大を推進していきます。
障がい者雇用比率
・目標:法定雇用率達成(2022年6月1日時点2.3%)
・実績:グループ適用6社 2.35%(2022年6月1日時点)
グループ82社 2.10%(2022年6月1日時点)
[外国籍従業員]
多様性の実現において、グローバル人材の育成を重要なテーマとして、位置付けています。王子グループ国内主要会社の新卒総合職は、優秀人材の確保などの観点より、王子マネジメントオフィス㈱にて一括で採用しており、国内グループ会社の将来の管理職候補として、2023年度は3名の外国籍総合職を採用しています。今後も一定数を継続して採用し、管理職への登用も進めていきます。2023年3月末時点の外国籍総合職は23名で、そのうち8名が管理職として海外グループ会社の運営管理等を行っています。また、外国籍従業員同士のコミュニケーションの場や、人事担当者等に相談しやすい環境を整備するなど、各自が能力を発揮しやすい環境づくりに努めています。
王子グループの従業員37,845名のうち、海外グループ会社従業員比率は57%(2023年3月末)となっており、海外グループ会社の経営者や管理職は現地採用者が中心となっています。2019年には外国籍従業員を当社のグループ経営委員として登用しました。
[キャリア採用]
経営戦略の迅速な実現に向けた人材の確保を目的に、キャリア採用を継続的に実施しており、2022年度に18名(王子マネジメントオフィス㈱による採用者)を採用し、うち6名が管理職として活躍しています。今後も一定数を継続して採用し、管理職への登用も進めていきます。
また、アルムナイ人材(定年退職者以外の退職者で再入社した者)の活用として、社外で有効な経験を積んだ人材の登用も進めています。
[総労働時間]
2014年度より、働き方改革の一環として、生産性の向上、労働時間の長さに捉われない働き方の実践を目的に、業務効率化、フレックスタイム制・在宅勤務の活用、年休取得の推進により、総労働時間の削減に取り組んでいます。
現在は、年間総労働時間1,850時間を目標(王子グループ本社地区26社)とし、取り組みを進めています。

総労働時間(王子グループ本社地区26社)
・目標:1,850.0 時間
・実績:1,830.2 時間(2022年度)
[健康経営]
2020年10月に「王子グループ健康宣言」を制定し、最高健康責任者(グループCEO)の下、従業員の健康の確保に取り組んでいます。会社とグループの各健康保険組合・労働組合、各事業所の産業医が連携して健康増進活動を推進し、従業員が健康で生き生きと活躍できる職場づくりを目指した取り組みを行っています。
2023年3月に、2021年度より引き続き3回目となる健康経営優良法人2023(大規模法人部門)の認定を受けています。
健康経営の取り組み事例
・健康診断、ストレスチェックの実施
・健康相談窓口の設置
・インフルエンザワクチン(職域接種、費用補助)
・通院のための保存休暇の時間単位利用
③人材活用(実力主義に基づく公正な処遇とエンゲージメント向上)
価値創造の源泉となる人材を活用し、経営理念・存在意義(パーパス)を実践し、経営戦略(長期ビジョンを含む)に沿った課題を確実に遂行するため、実力主義に基づく公正な処遇と、エンゲージメント向上を目指しています。
<人事・賃金制度(役割等級制度、定年延長、研究員の裁量労働制)>
「実質的年次」から「役割期待」及び「成果」を基準とする実力主義の人事制度として、「役割等級制度」を適正に運用し、従業員一人ひとりが、その保有する能力を通じて発揮した役割の大きさに応じて、処遇しています。
また、高年齢者にも、生き生きと活躍してもらうことを目的に、2017年度より、会社生活で培った知識、技術、技能を存分に発揮し、意欲をもって働けるよう、国内主要グループ会社にて、「65歳定年制」を導入し、また、2023年度より、一定の条件を満たす従業員を対象に、最長67歳までの再雇用制度を導入しました。
特に高度な専門知識を有する研究員には、「認定研究員制度」や「クリエイティブ人材育成制度」により、働き方の裁量を与え、研究に集中できる環境を提供することで、多様な価値観・発想からクリエイティブな成果を通じたイノベーションの実現を推進しており、2022年度より、それ以前と比較し、「クリエイティブ人材育成制度」の対象者を、約2倍に拡大しています。
<研修>
王子グループ人材理念に沿って人材育成を進めるため、キャリアのステージに応じた王子グループ内研修を充実させており、中でも経営戦略の完遂に向けてグローバル人材の育成に積極的に取り組んでいます。
静岡県富士宮市に新設した人材交流・育成拠点「王子グループ富士研修センター」は2023年2月より運営を開始しており、グループ横断的な研修だけでなく、各事業会社が主催する研修も実施しています。この研修センターで実施する研修では、必ず、コンプライアンス・安全・環境、長期ビジョン・存在意義(パーパス)について、受講者に教育することで、徹底と浸透を図っています。
また、コロナ禍のため、中止していたグローバル人材育成研修について、2023年度より、内容を見直した上で再開するとともに、DX人材育成を進める上で、まずは、デジタルリテラシーの底上げに注力する予定です。
(主な研修体制)

(王子グループ富士研修センター外観)

<グループ内公募制度>
従業員の意思にもとづく自律的なキャリア形成を促進し、意欲の高い人材の適正配置、有効活用により、事業の強化、組織の活性化、従業員のエンゲージメント向上を図ることを目的として、2022年度に、国内グループ会社正規従業員及び海外駐在員を対象として、新たに、公募制度を開始しました。
公募対象部門は、2022年10月に、王子マネジメントオフィス㈱に新設した「グループ事業開発本部」の各部門や、インドの海外駐在員などを対象に実施し、多数の応募の中から選考の結果、19名の従業員が異動することとなりました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、これらはすべてのリスクを網羅的に記載したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらのリスクが投資家の判断に影響を与える可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
また、リスク管理の体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等」に記載しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞していた経済活動の再開による需要の回復やパルプ市況の上昇、また足元の原燃料価格高騰影響を受けた価格修正の実施により、前期を2,365億円(16.1%)上回る17,066億円となりました。なお、当社グループの海外売上高比率は前期を4.1ポイント上回る37.6%となりました。
営業利益は、上記の価格修正の取り組みに加え、販売量も増加しましたが、原燃料価格高騰影響が大きく、前期を353億円(△29.4%)下回る848億円となりました。経常利益は、外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の減少もあり、前期を401億円(△29.7%)下回る950億円となりました。税金等調整前当期純利益は前期を446億円(△34.5%)下回る846億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期を310億円(△35.5%)下回る565億円となりました。
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」、「機能材」、「資源環境ビジネス」、「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメントは、「その他」としています。なお、第2四半期連結会計期間より、「生活産業資材」、「その他」に区分していた一部の事業について「資源環境ビジネス」に区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。
生活産業資材・・・・・段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、家庭紙事業、紙おむつ事業
機能材・・・・・・・・特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業
資源環境ビジネス・・・パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業
印刷情報メディア・・・新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業
その他・・・・・・・・商事、物流、エンジニアリング、不動産事業 他
○生活産業資材
当連結会計年度の売上高は前期比11.7%増収の7,805億円、営業利益は同274億円減益の12億円の損失となりました。
国内事業では、段ボール原紙・段ボール、白板紙、家庭紙等、多くの品種において価格修正に取り組んでおり、売上高は前年に対し増収となりました。また、紙おむつの売上高は前年並となりました。
海外事業では、段ボール原紙・段ボールは主に東南アジア・インドでの販売増、値上げの浸透に加え、マレーシアにおいて2021年10月から段ボール原紙の新マシンが稼働したことにより、売上高は前年に対し増収となりました。
○機能材
当連結会計年度の売上高は前期比19.0%増収の2,199億円、営業利益は同1.5%増益の155億円となりました。
国内事業では、特殊紙は販売数量が前年に対し減少しましたが、価格修正を実施したことにより前年に対し増収となりました。感熱紙は新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い減少した需要が回復傾向にあったこと、また価格修正の実施により、売上高は前年に対し増収となりました。
海外事業では、感熱紙は国内事業と同様、需要の回復傾向や価格修正の実施に加え、ブラジルにおいて設備増強・増設工事を実施し2022年1月から稼働したことにより、売上高は前年に対し増収となりました。
○資源環境ビジネス
当連結会計年度の売上高は前期比32.2%増収の4,238億円、営業利益は同24.1%増益の685億円となりました。
国内事業では、パルプ事業は市況の上昇を受け、売上高は前年に対し増収となりました。エネルギー事業は2022年12月から徳島県でバイオマス発電所が新たに稼働したことにより、売上高は前年に対し増収となりました。
海外事業では、パルプ事業は販売が好調に推移したことに加え、市況の上昇により、売上高は前年に対し増収となりました。
○印刷情報メディア
当連結会計年度の売上高は前期比14.9%増収の2,810億円、営業利益は同226億円減益の48億円の損失となりました。
国内事業では、新聞用紙は需要の減少傾向が継続しているものの、価格修正の実施により売上高は前年並となりました。印刷用紙は輸入紙の減少により国内品への需要が高まっていることに加え、価格修正の実施により、売上高は前年に対し増収となりました。
海外事業では、江蘇王子製紙有限公司において、売上高は前年に対し増収となりました。
○その他
当連結会計年度は、商事事業、物流事業等で増収となり、売上高は前期比9.3%増収の3,181億円、営業利益は同18.0%増益の84億円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 生産高は自家使用分を含めて記載しています。
当社グループは、エンジニアリング等一部の事業で受注生産を行っていますが、その割合が僅少であるため、記載を省略しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) セグメント間取引については相殺消去しています。
当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産、売掛金、棚卸資産等の増加に加え、円安の進行による為替換算差もあり、前連結会計年度末に対し2,423億円増加し、22,960億円となりました。負債は、有利子負債等の増加により、前連結会計年度末に対し1,532億円増加し、13,315億円となりました。純有利子負債残高(有利子負債-現金及び現金同等物等)は、前連結会計年度末に対し1,366億円増加し、7,313億円となりました。純資産は、為替換算調整勘定や利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末に対し891億円増加し、9,646億円となりました。
上記の結果、ネットD/Eレシオ(純有利子負債残高/純資産残高)は0.8倍となりました。
当社グループでは、市場が縮小している事業では、生産体制再構築等によってコスト削減を徹底し、キャッシュ・フローの確保を図る一方、需要の伸びが期待できる国内事業や海外の経済発展が見込まれる地域へ投資を行い、ポートフォリオの拡充を図っています。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、568億円(前連結会計年度末は555億円)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に対して1,253億円収入が減少し、183億円(前連結会計年度は1,436億円の収入)となりました。主なキャッシュの増加は、税金等調整前当期純利益に減価償却費を加えた1,577億円(前連結会計年度は1,951億円)であり、主なキャッシュの減少は、売上債権の増加439億円(前連結会計年度は210億円の増加)、棚卸資産の増加426億円(前連結会計年度は260億円の増加)及び法人税等の支払額469億円(前連結会計年度は223億円の支払い)によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出等により、1,233億円の支出(前連結会計年度は926億円の支出)となりました。有形及び無形固定資産の取得による支出の主な内容は、能力増強・更新や品質改善、省力化、生産性向上、安全及び環境のために必要な設備投資です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの発行による収入等により、1,018億円の収入(前連結会計年度は1,360億円の支出)となりました。
当社グループの営業活動に関する資金需要は、生産・販売活動のために必要な運転資金(製品製造のための原燃料の購入・製造費や人件費、製品の輸送・保管費等)や研究開発費等が主な内容です。投資活動に関する資金需要は、経営戦略の遂行に必要な投資や品質改善・省力化・生産性向上・安全・環境のために必要な設備投資等が主な内容です。
今後も海外事業や有望な事業等の成長分野に対しては、M&Aや設備投資、研究開発投資等を積極的に行っていく予定であり、また、「環境行動目標2030」の達成に向けて、石炭ボイラの燃料転換や植林地の取得等を進めていきます。これら所要資金の調達については、自己資金と外部調達との最適なバランスを検討し実施していきます。
営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローは配当及び投資資金に充当し、有利子負債残高を適正水準に保ちながら、不足資金については借入金やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等による資金調達を行い、余剰資金については有利子負債の削減に充当します。
なお、長期借入金や社債等の長期資金については、中期経営計画に基づく資金需要見通しや金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断して実施することとしています。
当社は、主要連結子会社との間でグループファイナンスを行い、資金の一元管理を行うことにより、運転資金の効率的な運用を図っています。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、創業当時から森づくりや紙づくりで培ってきた多様な技術と国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。
グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。
当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,498件、海外747件です。また、保有商標権の総数は国内937件、海外1,015件です。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1) 生活産業資材
産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。
パッケージング関係の紙容器関連事業では、国内でミルクカートン原紙の生産を開始し、抄紙から飲料パッケージングまでの国内一貫生産を実現しました。これら日本国内での一貫した生産体制を基盤に、大きな需要が期待される海外での事業も拡大していきます。
段ボール事業では、インターネット通販市場の急速な拡大に伴うさまざまな業界での梱包・物流に関する課題解決に向けて、次世代の包装ソリューション「OJI FLEX PACK'AGE」の提供を行っています。「OJI FLEX PACK'AGE」では、当社グループの連続段ボールシート「らくだん」を使用した、商品のサイズにあわせた梱包を可能とする「3辺可変システム」等のラインアップを取り揃えており、顧客やパートナーに企業との連携を含め販路拡充を進めています。
当事業に係る研究開発費は
(2) 機能材
機能材事業では、温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献する環境配慮型素材及び製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。
特殊紙関連の環境配慮型素材及び製品としては、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材にヒートシール性、透明性、遮光性などの機能を有する製品を追加し、「SILBIOシリーズ」としてのラインアップを拡充しました。その他、医薬用包材や衛生材料関連素材など、成長市場に向けた製品開発も進めています。
粘着関連では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能粘着フィルムの開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイなどへの採用が進んでいます。また、透明性と高い遮熱性能を両立した遮熱ウィンドウフィルムを開発しました。自動車フロントガラス用のフィルムとして販売中で、建材用途にも展開検討を進めています。
フィルム関連では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、バイオプラスチックフィルムの開発を進めています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し、電動車が急速に普及しています。電動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。また、バイオプラスチックフィルムでは、植物由来原料のポリ乳酸樹脂を配合した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発し、バイオマスマーク認定商品の「アルファンG(グリーン)」として、営業生産を開始しています。
当事業に係る研究開発費は
(3) 資源環境ビジネス
資源環境ビジネス事業では、王子製紙株式会社米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在は高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。
当事業に係る研究開発費は
(4) 印刷情報メディア
印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。
当事業に係る研究開発費は
グループ内の関連部門と連携しながら、イノベーション推進本部では、「木質由来の新素材開発」や「メディカル&ヘルスケア領域への挑戦」、「環境配慮型紙製品の開発」の三つのテーマを中心に研究開発活動を進めています。
まず「木質由来の新素材開発」では、石油由来の燃料やプラスチックからの脱却に向けて、非可食の「木質由来エタノール」や「木質由来糖液」の製造を検討しています。木質由来エタノールは航空業界向け燃料(SAF)や化学業界における基礎化学品製造の原料として、また、木質由来糖液はポリ乳酸などのバイオマスプラスチックをはじめとした様々なバイオものづくりの基幹原料として、ニーズ拡大が見込まれます。今後、王子製紙米子工場にパイロット製造設備を導入し、実用化を見据えたユーザー様に対してエタノール・糖液を提供していくとともに、継続した技術改良を行い、将来の事業化に向けた取り組みを加速させていきます。
木質由来素材のセルロース・ナノ・ファイバー(CNF)は、従来の石油や鉱物由来の機能材からの置き換えにより、環境負荷低減への貢献が期待されています。CNFを天然ゴムと複合させることにより補強効果(硬さ)と伸びの両立に成功し、石油由来の既存補強材であるカーボンブラックを木質由来に置換えた新規ゴム素材としての可能性を見出しました。将来的にはCNFの使用量が見込めるタイヤ用途への採用を見据え、開発・実用化を進めていきます。さらに、CNFで培ったノウハウを活かし、ガラス繊維強化に匹敵する衝撃強度を持つ、セルロースを補強材とした樹脂ペレットを開発し、顧客への提供を進めています。
また、生分解性プラスチックと木質由来のセルロース(パルプ)を複合化した樹脂材料の「リソイルグリーン」を開発しました。生分解性プラスチックの強度や剛性などの特性を向上させることができ、構成するすべての原料が土中の微生物によって分解されるため、通常のプラスチックに比べ、環境への負荷を減らすことが出来ます。現在は、幅広い用途での採用を目指しています。
次に「メディカル&ヘルスケアへの挑戦」として、未来の医療を見据えて、新たな領域へ事業を展開しています。木材の主要成分の一つであるヘミセルロースを用いた医薬品創薬の開発や、高品質な国産の漢方薬原料を安定供給するため、薬用植物の大規模栽培を進めています。また、再生医療への応用が期待される配向性細胞培養基材(CellArray-Heart)の開発も進めています。
そして、「環境配慮型紙製品の開発」では、既存のプラスチック製食品トレイなどに紙素材を活用した脱プラスチックソリューションを提供しています。また、植物由来のポリ乳酸を使用したラミネート紙や現行の紙リサイクルシステムで再生可能な紙コップ原紙などの開発を進め、二酸化炭素排出量削減やプラスチック使用量の低減に繋がる取組みを行っています。
水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた技術や操業ノウハウを活かし、国内外の顧客に水処理システムを提供することで、水資源の有効活用に貢献しています。
その他の研究開発活動に係る研究開発費は5,127百万円です。
なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。