第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

  当社は、社是「科学技術で社会に貢献する」、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」のもと、永年の事業で培った技術、ノウハウを活かし、複雑化・多様化する社会の課題や要請に応える製品・サービスの提供、それを基にした社会課題解決の仕組み作りを行い、ステークホルダーからの信頼の獲得と、企業価値の向上に努めています。

  また、社是・経営理念に基づく事業活動を通してサステナブルな社会を実現するために、「島津グループサステナビリティ憲章」を制定しました。グループ全体で、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指して、サステナビリティ経営を実践していきます。

  これからも、地球・社会・人との調和を図りながら、“事業を通じた社会課題の解決”と“社会の一員としての責任ある活動”の両輪で企業活動を行い、明るい未来を創造します。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題

1) 経営環境および中期的な成長戦略

  世界的な物価高と金融引き締めによる景気下振れリスクの拡大や、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、米中対立の激化などにより依然事業環境は厳しい状況にあります。

  世界では新型コロナウイルスとの戦いを経て人の命と健康への意識が高まり、また、気候変動の影響を社会課題として捉え対策を行う動きが加速しています。当社は、これらの課題解決に貢献すべく、「人と地球の健康」の追求を掲げ、事業活動を強化します。

  今年度から開始した新中期経営計画において、「人の命と健康への貢献」、「地球の健康への貢献」、「産業の発展、安心・安全な社会の実現への貢献」を当社のミッションとし、そのミッションを果たす事業領域をヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーと定め、当社の技術開発力と社会実装力の両輪で課題解決に貢献し、持続的な成長を目指します。

 

2) 2023-2025 中期経営計画の取り組み

  新中期経営計画では、お客様中心の課題解決型企業への変革を進めるとともに、事業と社員の成長を目指します。世界のお客様の目指すところに耳を傾け、課題を先取りし、実現のための課題を解決するための体制を築くべく、「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーへ」を新中期経営計画のコンセプトとしています。そして技術開発力と社会実装力を両輪とし、お客様にトータルソリューションを提供することで、持続的な成長を目指すことを基本方針として取り組みます。具体的には、以下の5つの事業戦略と7つの経営基盤強化策を実行します。

 

3) 5つの事業戦略

① 重点事業の強化

  ヘルスケア領域では、液体クロマトグラフ(LC)、質量分析システム(MS)で、トータルソリューション提供を目指します。基幹製品の競争力を強化するとともに、お客様が行われる分析プロセス全体の自動化、AIの活用、インフォマティクスとの融合による効率化を追求し、求められるデータを提供する体制を構築します。

  グリーン領域では、バイオモノづくり、水素の社会実装、代替エネルギー、CO2利活用分野で高速分析を実現し、計測トータルソリューションの提供に貢献します。

  マテリアル領域では、試験機等の計測機器の自動化とインフォマティクスを用いた複合計測・解析により革新素材開発・製造へ貢献します。

  また、これらの領域では、お客様の要望をもとに製品開発に取り組み、開発段階から標準化を指向していきます。産学官連携を通じて、特に海外市場においてお客様と協働して市場拡大を目指します。

  インダストリー領域では、半導体分野でターボ分子ポンプのトップシェアを維持し、油圧機器は電動化技術と組み合わせ、周辺機器を合せて生産プロセスの効率向上に貢献する新たな価値を提供します。

 

 

② メドテック事業の強化

  健康長寿に向け、健康管理、検査、診断、治療、予後管理において、成分分析や画像解析技術等を用いたソリューションの提供をメドテック事業と位置づけます。メドテック事業では、AI、IoTによるX線画像解析技術のトランスフォメーションと、メカトロニクス技術で医療への更なる貢献を目指します。質量分析システム、培地関連技術、微生物検査技術を強化し幅広い商品とサービスを臨床検査領域に提供していきます。分析技術の向上により超早期検査を実現し、病気の可能性がある場合にはX線技術を使って診断することを可能としていきます。これらを臨床プラットフォームとして、さらに試薬等の商品を拡大しトータルソリューションの提供を目指していきます。

 

③ 海外事業の拡大

  最重要地域として北米を中心に、世界各地で事業拡大を図ります。北米では、LC、MSの先進技術を有する重要顧客との共同研究・開発の推進を目的に北米R&Dセンターを開設します。さらに米国東西に開発センターを設置し、製薬分野等のお客様と協働してメソッド開発を行う機能を拡充します。またアプリケーション開発力、サービス対応力も強化して成長を図ります。

  その他の地域では、市場特性に応じて、拡大する事業に対応した最適なトータルサポートを提供できる体制を整備します。

 

④ リカーリングビジネスの強化、拡大

  保守部品・メンテナンスと、試薬・消耗品の両輪でビジネスを拡大します。DX、IoTを使ったリモートモニタリング機能や、ソフトウェアを定額で提供するサブスクリプションサービスで、顧客のメリットを訴求していきます。また、試薬、培地、カラムなどの消耗品ビジネスの拡大も目指します。グループ会社と連携し、試薬と消耗品の開発力を強化していきます。またサービス体制の強化と、検査機関等とのパートナーシップにより社会実装を進めていきます。

 

⑤ 新事業・将来事業の創出

  臨床検査プラットフォームや自律型実験システム、がん治療支援、銅加工技術、感性計測システム等でオンリーワン技術、ナンバーワンソリューションをお客様と開発し新技術・新事業の創出を目指します。長期視点では、量子技術や光技術を用いた新たな計測、インフォマティクスとの融合による材料開発支援などで将来事業の創出に取り組みます。

 

4) 7つの経営基盤強化策

  事業戦略の実現を支える経営基盤の強化策として「ガバナンスの強化」、「開発スピード強化」、「国際標準化・規制対応力の強化」、「グローバル製造の拡大」、「DX推進」、「人財戦略:島津人の育成」、「攻めの財務戦略」の7つの施策を実施します。

  ガバナンス強化を経営における最重要課題と位置付け、「コンプライアンスは全てに優先する」を基本として、グループガバナンスの強化を進めます。グループマネジメント基本規定をベースに内部統制・リスクマネジメント・モニタリングを強化します。

  開発スピード強化では、アジャイル開発手法を導入するとともに、公的機関との連携を通して標準化・規制対応の強化も図っていきます。グローバル製造拡大によるBCM(事業継続管理)強靭化、DXによるプロセス改革の実施、そして全ての事業活動を支える人財の育成を強化します。また、戦略投資、成長投資計画を立て、攻めの財務戦略を展開していきます。

 

5) 環境経営と健康経営

  環境経営では、環境問題の解決を通じた事業活動と企業価値の拡大を目指して「気候変動対応」、「循環型社会の形成」、「地球環境保全に配慮した製品開発」、「生物多様性の保全」、「社員ひとり一人による環境保全活動の推進」の5項目に重点を置いて取り組みを進めます。

  健康経営の取り組みとして、業界を超えたアライアンスを組み、ヘルスケアデータを活用し、社員の生活習慣病由来の脳・心血管疾患や腎疾患、メンタル不調といった重症化の予測ができる疾病リスクの対処に取り組みます(健康経営アライアンス)。成功事例は、アライアンス外にも展開し、アカデミアや省庁とも連携しながら社会実装や海外展開を目指します。

 

  事業別の対処すべき課題として中長期で目指すこと、および中期経営計画の中で実施する主な取り組みテーマは、以下の通りです。

 

・計測機器事業

  ヘルスケア領域では、製薬やフードテック市場向けにLC、MSを主軸に、IT技術を活用してトータルソリューションを提供します。臨床市場では、臨床診断・微生物検査・細胞関連に注力して事業を展開します。また、北米を最注力地域としてR&Dセンター設立など事業拡大を図ります。

  グリーン(GX)領域では、バイオものづくり、水素の社会実装など、新たな産業創出へ貢献するために、新たな規制を含めた分析方法の標準化をグローバルで進めていきます。

 

・医用機器事業

  当社が強みとするイメージング技術(画像処理、画像転送、画像認識技術)とメカトロニクス技術を活用し、X線撮影による医療への更なる貢献を目指す「イメージングトランスフォーメーション」を展開します。また、地域特性に対応したシニアヘルスケア事業の拡大、アフターマーケット事業を推進し、収益基盤の拡大を目指します。

 

・産業機器事業

  半導体製造分野では主力のターボ分子ポンプに加え、モニタリング技術を展開し業容拡大を目指します。xEV分野、エネルギー分野では関連部品の製造、高精度測定・検査の効率化に貢献する製品を提供します。また、高品質・高付加価値サービスの持続的提供により顧客満足度を向上させサービス事業を拡大します。油圧機器分野ではコア製品の収益力向上と電動化に対応して事業を強化します。

 

・航空機器事業

  前中期経営計画からの「選択と集中」の基本方針のもと、収益改善の取り組みを継続することで、長期に安定した成長・収益が確保できる事業を目指します。また、保有技術を活かし、主にモビリティと社会インフラ分野で新たな事業を創出し、「安心・安全な社会の実現に貢献する事業」となることを目指します。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  当社グループは、3ヵ年の中期経営計画において、連結売上高5,500億円以上、営業利益800億円以上、営業利益率14.5%以上、株主利益重視の観点から自己資本利益率12.5%以上を、最終年度である2026年3月期の目標数値としています。

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(サステナビリティ全般)

 当社は、社是「科学技術で社会に貢献する」、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」のもと、「島津グループサステナビリティ憲章」を制定し、サステナビリティ経営を推進しています。

 “事業を通じた社会課題の解決”と“社会の一員としての責任ある活動”の両輪で、グループ一体となった企業活動を行い、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指して、サステナビリティ経営を実践していきます。

 

<ガバナンス>

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 当社グループにおけるサステナビリティ経営を推進するための組織として、社長を議長とするグループサステナビリティ会議を設置しており、年2回開催しています。会議の構成メンバーは、会長、社長、役付執行役員、常勤監査役、事業部長、全社部門長、国内外の関係会社の代表者などで、事務局は経営戦略室が担っています。会議では、当社グループのサステナビリティ経営に関わる重要な社内外の課題の共有、重要な取り組みの実施方針・計画と各KPIの進捗状況などについての討議を行うと共に、モニタリングを行っています。さらに専門部会として、ガバナンス・コンプライアンス・リスクマネジメントについてはリスク・倫理会議、環境経営全般に関しては環境会議が設置されており、より専門的な課題やテーマに関する討議・報告を行っています。

 また、会議の結果は取締役会にも報告されており、取締役・監査役からもサステナビリティ経営の推進やさらなる展開に向けた提言を得ています。

 

<戦略>

 当社グループは、創業以来、社是・経営理念に基づき、永年に渡って培ってきた科学技術やノウハウを活用し、①「人の命と健康への貢献」、②「地球の健康への貢献」、③「産業の発展、安心・安全な社会の実現への貢献」に向けて、事業活動を通じて取り組んでいくことを目指しています。

 この3つの事業貢献テーマを推進していくためには、④「科学技術の進歩と高度化」に向けて、今後もさらなる研鑽を重ねながら、イノベーションを創出することが求められます。そのために、知的財産の戦略的活用や、国際標準化などの制度や仕組みの構築を図っていきます。また、グローバルレベルで社会課題を捉えながら、迅速に新たな技術・事業を開発し、地政学リスクにも対応した強靭なサプライチェーンを構築して、必要とされる製品を供給することで、⑤「開発・製造能力の向上」を図っていきます。

 これらの事業活動を支える経営基盤として、組織の仕組みである企業倫理・コンプライアンスを含めたリスクマネジメントの体制やモニタリングの仕組みをより強固なものとすることにより、当社グループにおける⑥「ガバナンスの強化」を図ります。さらに、以上の取り組みを支えていくために、人財の多様性を広げながら、グローバルな視野でリーダーシップを持った⑦「人財の育成」を進めていきます。

 上記の7つの重要テーマをマテリアリティとする「島津グループサステナビリティ憲章」を実践するために、中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定して取り組みを進めていきます。既存の事業部や製品を軸とした事業活動に留まらず、顧客が必要とするデータを届けるようなトータルソリューションを提供する企業に変革し、社会課題の解決を通じた事業拡大を図ります。その結果として、組織としてのさらなる持続性を高めていきます。

 

 

<リスク管理>

 当社グループは、リスクマネジメント(事業に関わるリスク対策)と、コンプライアンス・内部統制(職務執行上のリスク対応)を有機的・一体的に機能させながら、経営戦略や事業目的などを達成することで企業価値の最大化を図っていきます。

 この統合リスク管理の仕組みは以下の4つの取り組みから構成されています。

(1) リスクマネジメント
(事業に関わるリスク対策)

事業に関わるリスクを適正に管理するための活動として、リスク発現の未然防止に取り組むこと、また危機事象が発生した場合に早期解決へその損失影響を最小化する措置および真因究明・再発防止の水平展開を行うことを「島津グループリスクマネジメント基本規定」として定め、実践しています。

(2) コンプライアンス

当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、競争法など、世界各国・地域の法令や行政による許認可、規制の適用を受けており、その遵守に努めています。これらの法令遵守のみならず、国際規範に則り行動するとともに、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定め、「コンプライアンスは全てに優先する」を実践しています。

(3) 内部統制
(職務執行上のリスク対応)

役員および従業員の職務執行が法令および定款に適合すること、およびその業務が適正かつ効率的に行われることを確保するための内部統制体制を整備しています。違反行為などが発生した場合は、当社グループでその内容と処分などを速やかに共有し、類似行為の発生を抑止しています。加えて、個人情報の保護や秘密情報の厳正な管理のもと、広報・IR活動やWEBサイトにより、適宜適切な対外情報発信・開示を行っています。

なお、財務報告に係る内部統制の構築は、金融庁の実施基準に基づき、「財務報告に係る内部統制体制の構築に関する基本規定」にて、内部統制の基本的な枠組みを定め、業務の有効性および効率性の向上、財務報告の信頼性の確保、事業活動に係る法令等の遵守の促進および資産の保全により、事業活動の目的達成を図っています。

(4) モニタリング

リスクマネジメント・内部統制・コンプライアンスの全てが有効に機能していることを、事業部門・管理部門・監査部門の3ラインの各段階で、組織的かつ継続的に検討・評価します。2023年度より、業務監査方針を策定し、グローバル地域(欧州、米州、中国、アジア)毎に監査を実施します。監査頻度を増やして、当社グループ各社の事業部門(第1ライン)と管理部門(第2ライン)へ日常的に適切なモニタリングを促します。

 

 

<指標及び目標>

 当社グループは、「島津グループサステナビリティ憲章」における主要テーマと担当部門を下位規定の中で定めると共に、具体的なKPIを設定して、サステナビリティ経営を実践しています。中期経営計画(2023年度~2025年度)において、特に重要な指標及び目標として、以下を掲げており、他のKPIと共にグループサステナビリティ会議のもとで進捗をモニタリングしながら、サステナビリティ経営を着実に実行していきます。

地球の健康への貢献

<気候変動対策>

・事業活動と製品仕様に伴うCO2排出量の削減

自社排出量:2025年度 1.0万t-CO2、2050年 実質ゼロ

削減貢献量(*1):2025年度 1.2万t-CO2(自社排出量を上回る量)

<持続可能な資源利用>

・製品へのサステナブル素材(*2)の採用

2025年度 10件以上

・国内製造開発拠点の資源循環

2023~2025年度 リサイクル率99.6%以上維持

ガバナンスの強化

<CSR調達の推進>

・CSRセルフアセスメントを実施しているサプライヤの拡大

2025年度 100%(協力会社発注額に占める割合)

<グループガバナンスの強化>

・グローバルでの網羅的な内部監査(業務監査)の実施

2025年度 100%(グループ会社内部監査のカバー率)

人財の育成

<女性のさらなる活躍の推進>

・女性管理職比率(連結)

2025年度 12%、2030年度 15%

*1 当社エコプロダクツPlus制度認定製品を利用したことによる顧客のCO2排出の削減量

*2 バイオ由来またはリサイクル由来の樹脂素材

 

 このうち、気候変動対応への取り組みおよび人的資本については、以下に詳細を記載しています。

 

(気候変動対応への取り組み)

 当社グループは、「島津グループサステナビリティ憲章」のもと、「地球の健康への貢献」に向けて、事業活動を通じた気候変動対応に取り組んでいます。

 当社グループは、環境問題を最重要経営課題の一つとして位置付けており、中でも、気候変動問題に対して、バリューチェーンを含めた事業活動におけるCO2排出量の抑制や、環境いわゆるグリーン領域におけるイノベーション創出に貢献する製品およびソリューションの提供に取り組んでいます。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言に賛同し、関連情報の開示に努めています。

 

<ガバナンス>

 当社グループは、気候関連のリスク・機会および経営課題解決に向けた施策について、環境問題に関する専門部会である「環境会議」(議長:代表取締役社長、年2回開催)で討議しています。

 討議内容は執行役員会に報告されるとともに取締役会に報告・付議がなされており、取締役会による監視・監督体制が適切に確保されています。さらに、取締役会では当社グループの環境経営に関わる重要な事項について審議決定が行われます。

 

<戦略>

1. 気候変動リスク・機会の特定

 当社グループの事業・戦略・財務に影響を及ぼす気候関連リスク・機会の特定にあたり、①脱炭素化が進展する1.5℃の世界観、②成り行きで温暖化が進行する4℃の世界観を整理し、それぞれの世界において、当社事業への影響度が大きいと想定される気候変動起因のドライバーを抽出・整理しました。

 

当社の「社会価値創生領域」に関する気候変動起因のドライバー

その他の気候変動

起因のドライバー

ヘルスケア

グリーン

マテリアル

インダストリー

1.5℃の世界

 

・脱化石燃料化、CO2フリー燃料の普及

・再生可能エネルギー比率の上昇

・EVシフト

・CO2回収・利用の実用化

・バイオマス資源活用の拡大

・素材の軽量化・高強度化

・蓄電池・蓄電システム需要の拡大

・モーダルシフト、物流の脱炭素化

・カーボンニュートラルに向けた社会の電化とデジタルインフラの強靭化

・カーボンプライシングの導入・強化

・エネルギー集約度が高い産業の製品高騰

・環境配慮製品の浸透・需要増大

・技術開発競争の激化

4℃の世界

・気温上昇に伴う感染症の増加

 

 

・社会インフラの強靭化

・風水災の頻発化・激甚化

 

 これを起点とし、IEA(国際エネルギー機関)の気候変動シナリオ等を参考に、様々な産業分野でカーボンニュートラルに関する研究や技術開発等の進展が予想される中、当社事業に関連する主なリスクや機会を整理し、シナリオ分析を行いました。

 

2. 気候変動シナリオに基づく事業・戦略・財務への影響について

 脱炭素シナリオ(1.5℃)、現行シナリオ(4℃)に照らした分析の結果、当社の事業・戦略・財務への影響について、以下のように評価・整理しました。

1.5℃の世界

化石燃料を使用するエネルギー、発電、輸送機などの産業においては、脱炭素社会への移行に伴い当社製品の需要減少が懸念されます。一方で、様々な産業において、クリーンエネルギー、バッテリー、新素材等に関する研究開発や生産設備・インフラへの投資が進み、研究開発関連の分析計測機器など、当社製品の需要拡大が期待されます。

4℃の世界

物理的リスクの影響が大きくなるため、社会インフラの強靭化が喫緊の課題となり、その補強・更新に向けた各種試験機器の開発・供給ニーズの高まりが予想されます。また、気温上昇に伴う媒介性感染症の発症地域の拡大など、医用分野の市場環境にも変化が予想されます。他方、物理的リスクに起因するサプライチェーンの途絶により、当社の事業活動が停止に追い込まれるなどの悪影響を受ける事態も想定されます。

 

・気候変動シナリオに基づく当社の事業・戦略・財務への影響について

 当社は、積極的な省エネ推進や再エネ活用により、事業活動におけるCO2排出量の削減に努めるとともに、使用電力の再生可能エネルギー100%を目指す国際的な環境イニシアティブ「RE100」にも加盟しています。また、医薬・医療・環境・エネルギー・半導体・素材など様々な産業に製品・サービスを提供しており、お客様の産業の裾野が幅広いという特徴を有しています。このため、特定の産業の規模縮小といったリスクの発現が当社の財務に甚大な影響を及ぼす可能性は小さいと考えます。

 また、気候変動による機会については、「1.5℃の世界」「4℃の世界」のいずれにおいても様々な産業・分野で想定されますが、「1.5℃の世界」の実現に向けた取り組みが社会全体のリスク低減につながると認識しており、当社も1.5℃目標を実現させるべく事業活動を通じて取り組んでいます。具体的には、当社はすべての製品を省エネなど環境に配慮した設計にするとともに、特に環境性能に優れた製品である「エコプロダクツPlus」の売上比率を引き上げ、かつ気候変動への緩和・適応に貢献する製品の開発投資・供給を継続します。

 総じて、当社の事業・戦略・財務は、次項の移行計画に沿った対応や取り組みの推進を通じて、気候変動の機会を適切に捉え持続的成長を実現していくことにより、気候変動に対しレジリエント(強靭)な状態を維持することが可能であると考えます。

 

3. 脱炭素社会に向けた移行計画

・気候変動の緩和(1.5℃目標の達成)

 当社グループは、パリ協定に整合した1.5℃目標の達成に向けて、事業活動からのCO2排出量を2050年に実質ゼロとする目標を設定し、CO2排出量の削減に積極的に取り組んでいます。また、サプライチェーンでのCO2排出量の削減に向けて、「お客様先での当社製品使用時のCO2排出量」に関する削減目標を設定しています。

 

・機会の獲得と最大化

 気候変動の緩和・適応に資する製品を戦略的に開発・供給し、お客様の事業における脱炭素の取り組みに貢献していくことで、持続的な成長につなげていきます。また、当社製品需要の変化に応えるべく、開発基盤や供給体制の強化を進めていきます。

 

<リスク管理>

 当社グループの事業・戦略・財務に影響を与えうる気候変動リスクは、環境経営統括室が主体となって各事業のリスクの洗い出しを行い、気候変動シナリオを参考に、重要度が高いリスクを特定しています。特定・評価した結果は、「環境会議」において討議・確認しています。

 

<指標と目標>

(1) CO2排出量削減について

当社グループは、2050年までに事業活動で排出するCO2を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることを目指します。

・2050年目標

事業活動で排出するCO2を実質ゼロとする。

使用電力の再生可能エネルギー比率を100%とする。

・2040年目標

事業活動で排出するCO2を2017年度比で90%以上削減する。

・2030年目標

事業活動で排出するCO2を2017年度比で85%以上削減する。(*)

当社グループが販売した製品使用時のCO2排出量を2020年度比で30%以上削減する。

(2) 環境配慮認定製品の開発・普及について

当社グループは、地球環境への負荷低減を目指して製品のエコ化に努めています。従来の機種と比較して、環境性能に優れた製品を「エコプロダクツPlus」と認定し、2030年度までに製品の売上高に対するエコプロダクツPlusの比率を30%とする目標を掲げています。

* 島津グループの2030年度CO2排出量の削減目標は、科学的根拠に基づいた削減を促す国際イニシアティブ「SBT(Science Based Targets)」から、パリ協定における「産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃未満に抑える水準と整合した目標」として認定されています。

 

(人的資本)

<戦略>

1. 島津人財戦略

 人は会社にとって最大の財産であり、島津グループの競争力の源泉は人財の力にあります。

 社員が社是である「科学技術で社会に貢献する」を実践し、技術開発力と社会実装力の両輪で世界のパートナーと共に社会課題の解決に取り組むことで、持続的な企業価値の向上を目指します。人財戦略では、Leadership&Diversityのスローガンのもと、多様なパートナーと社会課題解決に向けてイノベーションをリードする人財の創出・獲得を目指します。

・求めるマインドを全社員に教育し、社員が自律的に取り組み、挑戦し、常に学び成長する企業文化を醸成します。

・事業戦略・経営基盤の強化に必要な人財を定義し、成長に向けた学びや経験を支援する環境を準備して育成します。

・多様な人財を獲得し、『個』の力が発揮できる人事制度、働く環境づくりとDE&Iを推進します。

 

2. 人財育成方針

 当社が求める人財を、高潔な倫理観を持ち、多様な視点や専門性を活かし、果敢に挑戦し、やり遂げ、自ら成長する人財と定義し、その育成に取り組みます。育成の方法として、事業戦略の実現、経営基盤強化のため、経営幹部候補育成や高度専門人財育成、ビジネスリーダー育成を推進し、学びと経験を実践する場として『島津アカデミー』を開校します。

企業文化の醸成

当社では、社員が事業や文化・歴史を学ぶ機会を設けて、企業文化の醸成に取り組んでいます。今後はすべての社員が島津人に必要とされるマインドを持ち、Diversityを理解し、様々な場面でLeadershipを発揮できる人財となれるよう島津Leadership&Diversity研修を展開します。また、これらに加えて、必要なスキルである戦略思考や分析力などを身に付けるための取り組みを実施します。

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事業戦略・経営基盤強化のための人財育成

・経営幹部候補育成

事業戦略、経営基盤の強化を推進する上で、経営幹部の育成は当社の重要テーマです。当社では1997年より「経営塾」を始めとし、島津グループの成長を牽引する経営幹部候補の育成に取り組んで来ました。今後これまでのプログラムを刷新して、知識の習得に加え国内外のグループ会社や社外、また部門横断的な経験など、実践を通じて成長を促す経営幹部候補の育成を推進していきます。

・高度専門人財育成

当社の成長のためには、日々の技術力向上と高い専門性が不可欠であり、世界の優れた専門家と協業し新たな技術や事業機会を生み出す専門人財や、高品質の新製品を生み出すための開発・設計力をもつ専門人財、高難度の管理業務を遂行する専門人財、DX人財の育成が必要です。当社は、REACHプロジェクトに代表されるように大学と連携して博士号の取得に力を入れているほか、資格取得奨励制度や教育研修を通じて専門人財の育成に取り組んでいます。今後は活動をグローバルに広げて世界各国での専門人財の育成を目指していきます。

・ビジネスリーダー育成

当社では、高度な技術を社会実装していくため、ビジネス課題を解決しメンバーを統率して事業を牽引していく「ビジネスリーダー」育成の重要性が増しています。これまで本社・海外グループ会社のマネージャー層を対象に状況対応型リーダーシップ研修を実施しており、今後、社内講師育成にも取り組み、国内グループ会社へ展開していきます。また、このほか、海外現場研修、省庁への派遣、グローバルマネジャートレーニングなど、若手社員も含め幅広く「ビジネスリーダー」の育成に取り組んでいます。

 

3. 社内環境整備方針

 当社は、多様な人財が、健康で働きがいを感じ、夢と成長の実現に向けた新たな挑戦ができる職場を「Well-Beingな職場」と定義し、目標とする職場づくりのため、多様性を活かす組織風土、挑戦マインドを育む人事制度、健康で安全な職場、コンプライアンス徹底の実現に向けた施策を推進します。

多様性を活かす組織風土づくり(DE&Iの推進)

・多様な人財の獲得と活躍

当社は、国籍・性別・経験に関わらず多様で優秀な人財の獲得と活躍の実現を目指しています。新卒採用のみならずキャリア採用を強化しているほか、博士課程対象のジョブ型研究インターンシップや技術系インターンシップなど、優れた人財の確保のため様々な採用手法を導入しています。また、女性社員の積極採用やキャリアデザイン研修を通じて、女性管理職比率の向上に取り組んでいます。当社が事業を行う多くの国・地域から本社への受入制度を整備し、海外人財の受け入れを拡大しています。

項目

目標

2022年度実績

正社員に占める女性の割合

-

20.8%

(30歳未満での女性の割合)

-

(31.6%)

新卒採用数に占める女性の割合

毎年 30%以上

26.9%(*)

女性の育児休業取得率

毎年 100%

100%

女性の育児休業からの復帰率

毎年 100%

100%

管理職に占める女性の割合

12%(2030年)

4.8%

* 2022年度の採用活動実績

・柔軟な勤務制度

当社は、生産性の向上や育児・介護など社員一人ひとりの事情に応じた働き方を実現するため、フレックスタイムやテレワークといった柔軟な勤務制度を導入しています。今後はグループにおける多様な人財獲得・定着の観点から、グループ会社にも柔軟な勤務制度を展開していきます。

挑戦マインドを育む人事制度づくり

・人事制度改革/評価制度改革

当社は、社内公募制や全社業績表彰などの各種表彰制度を通じて、社員が自律的に挑戦していくことを奨励しています。今後、人事制度・評価制度の改革に取り組み、社員の挑戦マインドと働きがいの向上を目指します。

健康で安全、コンプライアンスを徹底する職場づくり

・健康経営

当社は、健康増進イベントや自社技術に基づく乳房専用PET検査や軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査の社員への還元をはじめとした健康経営施策に取り組んでおり、2023年まで健康経営銘柄を3年連続で取得しています。今後は健康増進アプリを活用したイベントなど、海外拠点とも連携したグローバルな健康増進活動に取り組み、社員のWell-Being向上に取り組んでいきます。

・安全衛生

当社は、法定の安全教育だけにとどまらず、各職場でのチーム学習における動画を使った安全教育や危険体感研修を通じた安全意識の涵養と、職場巡視活動を通じた安全リスクの低減に取り組んでいます。今後はこの活動をグループ会社に広く展開して休業災害ゼロの実現に向けて取り組んでいきます。

・コンプライアンス

当社では、社員の行動指針である「島津グループ企業倫理規定」の内容を詳解する「島津グループ企業倫理行動規範ハンドブック」を作成し、企業倫理意識の浸透を図っています。また、本社・国内グループ会社において、毎年e-learningまたは学習冊子による企業倫理教育を実施しているほか、集合研修等によるコンプライアンス研修、ハラスメント防止研修を実施しています。

 

 

<指標及び目標>

(1) 人財育成方針に関する指標及び目標

 

指標

目標(2025年度)

実績(2022年度)

①島津Leadership&Diversity研修

全グループ会社に

展開

-

②経営幹部候補育成プログラム参加者数

130人

98人(*1)

(旧プログラム)

③高度専門人財数

(博士号・高度資格保有者(*3))

500人

324人(*1)

④ビジネスリーダー育成研修修了者数

1,000人

559人(*1)

⑤DX研修修了者数

3,000人

725人(*2)

*1 当社在籍者の数値

*2 当社および国内グループ会社在籍者の数値

*3 博士号のほか難易度の高い国家資格等保有者(技術士、弁理士、機械設計技術者1級、第1種・第2種電気主任技術者、IT系資格レベル4相当、弁護士、公認会計士、税理士、MBA等)

(2) 社内環境整備方針に関する指標及び目標

 

指標

目標

実績

(2022年度)

①女性管理職比率

当社およびグループ会社

2030年度

15%以上

10.9%

当社

2030年度

12%以上

4.8%

②新卒総合職採用に占める採用目的でのインターンシップ実施件数の割合(*1)

2025年度

20%

(30件)

10%

(12件)

③柔軟な勤務制度導入グループ会社数

2025年度

国内24社

(100%)

国内12社

(50%)

④従業員エンゲージメント肯定的回答率(*1)

2025年度

85%以上

82.7%

⑤健康増進イベント年間参加者数

2025年度

5,000人以上

3,237人

⑥休業災害件数

2025年度

0件

15件

⑦企業倫理コンプライアンス研修受講率(*2)

2025年度

100%

国内97.4%

⑧ハラスメント防止研修受講率(*2)

2025年度

100%

国内98.6%

*1 当社の状況です。

*2 当社および国内グループ会社の状況です。

*3 その他は当社およびグループ会社の状況です。

 

 

3 【事業等のリスク】

  当社グループでは、リスクマネジメントの最高責任者である社長の下、審議機関として半期ごとに「リスク・倫理会議」を開催し、当社が優先して対策を講じるべきリスクやコンプライアンスに関わるリスクに対する取組について報告し必要事項を決定しています。

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

  なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 国内外の市場の動向

  当社グループは、当社(日本)と世界各地の子会社が密接に連携し、各地域の市場規模や産業構造に応じて販売戦略を策定・実行しています。しかしながら、日本を含む世界各国の政策や景気動向、設備投資動向などにおいて、戦略策定時には予期できなかった変化が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、戦争やテロ行為、疫病の蔓延等がもたらすサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰は世界各国の経済活動を停滞させ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 海外での事業活動

  当社グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上高の増加、コストの削減および収益性の向上を目指しています。海外での事業活動を支える経営基盤を強化し、適正かつ効率的な運営を実現するため、「島津グループマネジメント基本規定」を制定して必要な統制、管理を行っています。さらに各地域の主要な子会社に域内のガバナンスを統括する機能を持たせ、各地域におけるリスクの把握と適切な対応に努めています。最近の国際情勢変化に対しては、社内外のリソースを活用して情勢をモニタリングし、グループ内で情報を共有・周知し、変化に対応しています。しかしながら、海外での事業活動には、予期できない法律や規制および政策の変更、産業基盤の脆弱性、国家間の貿易制限措置および報復措置、テロ、戦争その他の要因による社会的または政治的混乱といったリスクがあるため、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 製品品質

  当社グループは、ISO規格の認証を受けた品質システムを構築し、「品質保証基本方針」を定め、開発・製造・販売・サービスなど製品ライフサイクルの各段階での絶え間ない改善を通して、優れた品質で顧客にとって最大の価値を生み出す製品・サービスを提供するように努めています。また、顧客の満足を得る上で、基本的かつ重要である製品安全性のさらなる向上を目指した「製品安全基本方針」により、グループ一丸となって顧客の安全と信頼を最優先に行動することを宣言しています。しかしながら、想定が難しい多様な環境下での製品使用による品質トラブルや製品安全への懸念などが発生する場合には、当社グループの信頼性やブランド力の低下にも繋がり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

  当社グループの事業は、専門性が高く、高度な技術力を必要とします。そのため、新製品・新技術の研究開発には多額の投資を行っていますが、商品化遅れや、市場ニーズを満たす新製品を開発できない場合には、競合力の低下や市場トレンドに沿ったビジネスの取り込みが進まないことにより、将来の事業成長と収益性が低下し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 購買調達

  当社グループは、品質および環境面で当社グループの要求を満たす原材料やサービスを安定的に入手するため、信頼のおける調達先を選定しています。また、重要な原材料等について一定の在庫を確保するとともに、代替調達先の選定、特定調達先に依存しないよう自社における生産能力獲得等を実施しています。しかしながら、自然災害や疫病、事故、調達先の倒産などにより、原材料等が不足または供給量が制限され当社グループの生産活動に影響を及ぼす場合があります。また、長期にわたる原材料等の供給悪化や、急激に調達価格が高騰する場合には、機会損失の発生や製品の価格競争力の低下、利益率の悪化等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人材確保

  当社グループの事業成長に必要な人材は、研究開発に従事する人材をはじめ、製造業各社にとっても必要な人材候補と重なるため、採用活動においては企業間の獲得競争になることがあります。特に当社の研究開発部門の多くが所在する日本では、今後、少子高齢化、労働人口の減少を背景に、社内需要を充足出来なくなるリスクがあります。また、当社における人材定着率は比較的安定していますが、日本の労働市場における人材流動化が一層進展した場合、社員の離職が増加するリスクがあります。多様な採用活動を通じて、グローバル人材、博士等の専門人材、即戦力人材の採用に力を入れるとともに、人材流出を防ぐための魅力的な処遇への改善や柔軟な勤務制度の整備、自律的なキャリア形成を支援する社内公募制の実施、人材再配置や活用のためのグローバルタレントマネジメント強化を通じて、事業への影響を低減させるべく取り組んでいますが、有能な人材の確保が出来ない場合や、人材流出を防止出来ない場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 法令・規制

  当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、独占禁止法令など、国内外の各種法令、行政による許認可および規制の適用を受けており、その遵守に努めています。また、当社グループでは、法令の遵守のみならず、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定めています。集合研修やEラーニングなどの教育活動により、当該規定の内容を啓発・浸透させることでコンプライアンス上の問題発生の予防に取り組むとともに、上記法令等への対応状況を適時にモニタリングすること、相談・通報窓口を社内外に設置し、問題発生時の報告体制を整備することなどにより、当社グループにおけるコンプライアンスの実効性を担保しています。しかしながら、法令・規制に対する理解が不十分、または予期せぬ変更への対応が適切でない場合等には、コンプライアンス違反と判定され、過料、課徴金等による損失や営業停止等の行政処分、または信用の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 知的財産権

  当社グループは、現在の事業活動および将来の事業展開に有用な知的財産権を取得できるよう、研究所、事業部、知的財産部が一体となり知的財産創出活動を行っています。一方、他社知的財産権の調査・検討体制を整備し、問題発生を未然に防止するよう努めています。また、技術者を対象とした知的財産研修会を定期的に開催することにより、技術者の知的財産に対するスキルの底上げを図っています。しかしながら、権利範囲の解釈によっては他社との間に知的財産紛争が生じる場合があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 環境規制・気候変動への対応

  当社グループは、気候変動、水質汚濁、大気汚染、騒音、土壌汚染、廃棄物、使用する有害化学物質などにおいて、国内外の様々な環境法令および規制等の適用を受けており、その遵守に努めています。さらに、ISO14001の国際規格に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、第三者認証を受けています。「TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同し、気候変動対策を含めた環境情報の適切な開示を行うとともに、環境課題の解決に向けてリスクや機会を踏まえながら適切に取り組んでいます。しかし、将来、環境規制への適応が極めて困難な事象や不測の事態が発生する場合には、環境対応に関する費用の増加や事業活動の停止など、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティ

  当社グループは、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報などの機密情報を保有しています。当社グループでは、IT資産の盗難・紛失などを通じた情報漏洩や、サイバー攻撃による改ざん・流出・システム停止等の被害を防ぐため情報セキュリティ推進体制を構築し、「情報セキュリティポリシー:セキュリティ基本方針」を定め、外部からの不正侵入防止、データの暗号化、社外向けWEBサイトの情報漏洩・改ざん防止などのセキュリティ対策を実施しています。また、ネットワークやIT資産に対するセキュリティ対策はもとより、従業員への定期的な情報セキュリティ教育も実施しています。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃や、予期せぬ不正利用などにより、重要情報や個人情報の漏洩や事業活動停止などの被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 自然災害等

  当社グループは、大規模地震を始めとする災害や新型インフルエンザ等の感染症の発生等を想定し、必要とされる安全対策の実施、早期復旧のための事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、防災訓練等の対策を講じています。また、新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、感染症の感染拡大防止のための様々な知見を獲得しました。しかしながら、当社グループの事業活動はグローバルに展開されていることから、新たな感染症の流行、自然災害等が発生する場合のリスクを全て回避・管理することは困難であり、想定外の規模の被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 為替変動の影響

  当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、外国通貨建て取引にかかる事業活動は為替変動によるリスクに晒されています。為替変動リスクは、現地生産体制や、為替予約等により、最小限に抑える努力をしていますが、影響を完全に排除することは困難です。また、連結財務諸表の作成においては、各地域の現地通貨建ての項目を円換算しているため、換算時の為替レートにより、換算後の価値が変動します。通常、他の通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響となり、過度な為替相場の変動は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 国際税務

  当社グループは、グローバルに事業を展開しており、グループ内でも相互に取引を行っていることから、移転価格税制等の国際税務リスクが伴います。各国の税法に準拠した適正な納税を行っており、国際税務リスクについて細心の注意を払っていますが、各国の税制の変化や税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4  【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要はつぎのとおりです。

 

① 経営成績の状況

  当連結会計年度の経営成績は、売上高4,822億4千万円(前年度比12.6%増)、営業利益682億1千9百万円(同6.9%増)、経常利益708億8千2百万円(同8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益520億4千8百万円(同10.1%増)となりました。

 

  セグメントごとの経営成績はつぎのとおりです。

 

・計測機器事業

  売上高3,146億6千8百万円(前年度比13.4%増)、営業利益576億1千5百万円(同8.8%増)となりました。

 

・医用機器事業

  売上高758億7千6百万円(前年度比13.4%増)、営業利益55億3千8百万円(同8.9%減)となりました。

 

・産業機器事業

  売上高629億8千2百万円(前年度比11.0%増)、営業利益54億2千2百万円(同9.3%減)となりました。

 

・航空機器事業

  売上高239億8千5百万円(前年度比7.6%増)、営業利益13億8千9百万円(同1,070.9%増)となりました。

 

・その他の事業

  売上高47億2千6百万円(前年度比0.0%減)、営業利益5億9千7百万円(同52.4%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ15億8千4百万円減少し、1,537億3千4百万円となりました。

  当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況はつぎのとおりです。

 

・営業活動によるキャッシュ・フロー

  営業活動によるキャッシュ・フローは、483億3百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ150億6千4百万円減少しました。その主なものは、棚卸資産の増減による減少109億3千8百万円、法人税等の支払額の増加50億7千8百万円です。

 

・投資活動によるキャッシュ・フロー

  投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ284億6千4百万円支出が増加し、345億9百万円の支出となりました。その主なものは、設備投資による支出168億3千8百万円、子会社株式の取得による支出139億9千6百万円です。

 

・財務活動によるキャッシュ・フロー

  財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ37億6千万円支出が増加し、194億1千8百万円の支出となりました。その主なものは、配当金の支払額147億4千5百万円、リース債務の返済による支出45億2千8百万円です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ. 生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

計測機器

324,786

15.0

医用機器

77,888

17.2

産業機器

65,271

15.5

航空機器

23,161

7.5

その他

4,699

△1.4

合計

495,807

14.8

  (注) 金額は、販売価格によっています。

 

ロ. 受注実績

  当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

計測機器

344,695

17.5

114,906

35.4

医用機器

76,038

4.6

22,812

0.7

産業機器

67,896

12.9

18,175

37.1

航空機器

40,647

59.8

49,008

51.5

その他

5,704

52.9

2,851

52.2

合計

534,981

17.5

207,754

34.0

 

ハ. 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

計測機器

314,668

13.4

医用機器

75,876

13.4

産業機器

62,982

11.0

航空機器

23,985

7.6

その他

4,726

△0.0

合計

482,240

12.6

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容はつぎのとおりです。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ. 財政状態

  当連結会計年度末は、前連結会計年度末に比べ棚卸資産が214億4千7百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が93億1千1百万円、有形固定資産が85億6千2百万円増加したことなどにより、総資産は583億4千1百万円増加し、6,188億6千9百万円となりました。純資産は、利益剰余金が373億7百万円増加したことなどにより、423億3千5百万円増加し、4,234億9千9百万円となりました。

 

ロ. 経営成績

  当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立が進み、サプライチェーンの混乱が徐々に収束の兆しを見せるものの、インフレ抑制に向けた各国の金融引き締めによる景気下振れリスクの拡大、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等、依然不透明な状況が継続しています。

  このような経営環境のもと、当社は、「世界のパートナーと社会課題の解決に取り組む企業」を目指す中期経営計画に取り組みました。感染症対策プロジェクトでは、新型コロナウイルス検出試薬キットや全自動PCR検査装置を迅速に提供しました。加えて、企業・大学・医療機関等と協力して感染症対策の仕組み作りにも注力する等、安心・安全な社会の実現に向けて継続的に取り組みを進めました。

  4つの成長戦略として、重点事業、海外事業、リカーリング事業、成長4分野の強化・拡大を図りました。重点事業では液体クロマトグラフ、質量分析システムが医薬・食品安全等のヘルスケア分野向けを中心に増加しました。海外事業では、パートナーとともに課題解決を推進した結果、主要地域全てで増収となり、海外売上高比率は56.2%(前年度比3.2pt増)となりました。リカーリング事業では、保守・メンテナンス・サービス契約の拡大に加え、2022年10月より日水製薬株式会社(2023年4月から島津ダイアグノスティクスに商号変更)を連結子会社化したことで、リカーリング比率が向上しました。

  成長4分野では、ヘルスケア、環境・エネルギー、マテリアル、インフラの各分野で事業拡大を推進しました。

  新たな技術とイノベーションの創出に向けて、2023年1月「Shimadzu Tokyo Innovation Plaza」を開所し、アプリケーション開発機能強化を図りました。羽田空港から近い好立地を活かし、国内外の研究機関や顧客と共同研究やオープンイノベーションを通じて、新しい価値創出と社会課題の解決を目指すべく、研究開発体制を強化しました。

  以上の結果、当連結会計年度の業績につきましては、部品・部材不足や価格高騰、中国の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、為替の円安進行による押し上げ効果もあり、売上高は4,822億4千万円(前年度比12.6%増)となり、営業利益は682億1千9百万円(同6.9%増)、経常利益は708億8千2百万円(同8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は520億4千8百万円(同10.1%増)となり、3期連続過去最高の業績を達成しました。

  なお、2022年9月、当社は、当社の子会社である島津メディカルシステムズ株式会社において、取引先である医療機関に設置したX線撮影装置の保守点検業務に関する不適切行為が行われていたことが判明したことを公表し、2023年2月に外部調査委員会からの原因分析および再発防止策等の提言に基づき、速やかに具体的な再発防止策を策定、実行することを公表いたしました。当社は、外部調査委員会からの提言を真摯に受け止め、リスクマネジメント推進、内部統制、モニタリングの強化等を図り、組織風土の変革を進め、グループ全体で再発防止に取り組みます。当社は、本件を深く反省し、今後このような事態を二度と起こさないよう「コンプライアンスはすべてに優先する」を基本とし、グループガバナンスを更に強化して、信頼の回復に努めてまいります。

 

  セグメントの経営成績は、つぎのとおりです。

 

・計測機器事業

  計測機器事業は、国内、海外ともに増収となりました。グローバルで創薬の研究や医薬品の自国生産が進んだこともあり、医薬を中心とするヘルスケア分野向けに、主力の液体クロマトグラフが増加しました。加えて北米の環境分野、欧州の臨床分野における規制対応の強化に伴い、質量分析システムが増加しました。また、日水製薬株式会社(2023年4月1日より島津ダイアグノスティクス株式会社へ商号変更)を連結子会社化したことも業績に貢献しました。

  なお、半導体等の部品・部材不足や、中国の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、製品の生産・据付遅延が発生しましたが、2023年に入り解消の兆しが見られます。

  この結果、当事業の売上高は3,146億6千8百万円(前年度比13.4%増)となり、営業利益は売上の増加等により、576億1千5百万円(同8.8%増)となりました。

 

  なお、売上高についての各主要地域別の状況は下記のとおりです。

 

前連結

会計年度

(百万円)

当連結

会計年度

(百万円)

 

増減率

(%)

概況

日本

113,631

121,137

6.6

ヘルスケア分野向けに質量分析システムや、グリーンイノベーション分野の需要増に伴い、ガスクロマトグラフ等が増加。また、連結子会社化した島津ダイアグノスティクスの業績も貢献。

北米

29,465

33,292

13.0

一部大手顧客向け需要や新型コロナウイルス検出試薬キットが減少したものの、医薬向けに液体クロマトグラフや、飲料水に関する環境規制対応や臨床向けに質量分析システムが増加。

欧州

28,561

32,686

14.4

ロシア以外で、臨床分野で強化された規制強化対応向けに液体クロマトグラフや質量分析システムが増加。

中国

63,248

74,103

17.2

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、医薬向けに液体クロマトグラフが増加。加えて、下半期から政府補正予算によりアカデミア向け需要が増加。

その他のアジア

31,283

39,134

25.1

医薬品の自国生産強化等により、インドや東南アジアで液体クロマトグラフが増加。東南アジアでは官公庁向けにガスクロマトグラフ、韓国では食品安全向けに質量分析システムが増加。

 

 

・医用機器事業

  医用機器事業は、国内、海外ともに増収となりました。医療機関による設備投資の回復に伴い、業界最小かつ豊富な機能を搭載したX線TVシステム、世界初のAIによる画像処理技術を搭載した血管撮影システムの新製品や、パワーアシスト機能搭載の一般撮影システム等のX線装置が貢献しました。

  この結果、当事業の売上高は758億7千6百万円(前年度比13.4%増)となりましたが、営業利益は部品・部材価格高騰の影響等により、55億3千8百万円(同8.9%減)となりました。

  なお、売上高についての各主要地域別の状況は下記のとおりです。

 

前連結

会計年度

(百万円)

当連結

会計年度

(百万円)

 

増減率

(%)

概況

日本

37,969

40,600

6.9

医療機関による設備投資の回復に伴い、X線TVシステム、血管撮影システムが増加。PET装置は、頭部と乳房に特化した世界初のTOF-PET装置「BresTome」が増加。

北米

8,495

10,714

26.1

米国市場向けに開発した近接操作型X線TVシステム、呼吸器疾患の診断に有効な一般撮影システムが増加。

欧州

3,481

4,258

22.3

東欧向けに一般撮影システムが増加。

中国

4,674

4,946

5.8

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、年後半では政府補正予算による病院の設備投資が増え、回診用X線撮影装置が増加。

その他のアジア

6,230

7,048

13.1

東南アジアでX線TVシステムと一般撮影システムが増加。加えて、インドで血管撮影システムが増加。

 

 

・産業機器事業

  産業機器事業は、国内、海外ともに増収となりました。ターボ分子ポンプが半導体製造装置向け、建材ガラス、薄膜太陽電池等の薄膜製造装置向けに増加しました。また、プラスチック強化材向けガラス繊維の需要拡大に伴い、ガラスワインダが増加しました。油圧機器は一部顧客による生産調整の影響があったものの、産業車両・建設機械分野の需要が堅調に推移しました。

  この結果、当事業の売上高は629億8千2百万円(前年度比11.0%増)となりましたが、営業利益は部品・部材価格高騰の影響等により、54億2千2百万円(同9.3%減)となりました。

  なお、売上高についての各主要地域別の状況は下記のとおりです。

 

前連結

会計年度

(百万円)

当連結

会計年度

(百万円)

 

増減率

(%)

概況

日本

26,623

26,818

0.7

半導体製造装置向けターボ分子ポンプは増加。一方、前年大口案件の反動により工業炉が減少したことに加え、一部顧客の生産調整により油圧機器が減少。

北米

7,837

8,267

5.5

半導体需要の減少に伴い、半導体製造装置向けターボ分子ポンプが減少したものの、産業車両向けに、油圧機器が増加。

欧州

3,074

4,173

35.7

半導体製造装置向けにターボ分子ポンプが増加したことに加え、産業車両向けに油圧機器が増加。

中国

13,536

17,662

30.5

半導体および建材ガラス・薄膜太陽電池の各製造装置向けにターボ分子ポンプ需要が拡大。また、EVの放熱板向けに工業炉が増加。

その他のアジア

5,531

5,833

5.5

韓国や台湾で半導体製造装置向けターボ分子ポンプが増加。

 

・航空機器事業

  航空機器事業は、国内では防衛分野向けが減少しました。一方、海外では各国の入国制限の撤廃や緩和による航空旅客需要増に伴い、民間航空機分野向けが増加しました。

  この結果、当事業の売上高は239億8千5百万円(前年度比7.6%増)となり、営業利益は売上の増加や収益改善により、13億8千9百万円(同1,070.9%増)と2期ぶりに増加に転じ、黒字を確保しました。

  なお、売上高についての各主要地域別の状況は下記のとおりです。

 

前連結

会計年度

(百万円)

当連結

会計年度

(百万円)

 

増減率

(%)

概況

日本

18,214

17,847

△2.0

防衛分野向け修理案件が減少。

北米

3,822

5,346

39.9

航空旅客需要増に伴い、民間航空機分野向けが増加。

 

・その他の事業

  当事業の売上高は47億2千6百万円(前年度比0.0%減)となり、営業利益は5億9千7百万円(同52.4%減)となりました。

 

(注) セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでいません。

 

  当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする2020-2022中期経営修正計画において、最終年度の目標数値として、売上高4,700億円以上、営業利益680億円以上、営業利益率14.5%以上、自己資本利益率10.0%以上を設定し、取り組んできました。最終年度である当連結会計年度の結果は、売上高4,822億4千万円、営業利益682億1千9百万円、営業利益率14.1%、自己資本利益率12.9%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ. キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要  ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

ロ. 資金需要

  当社グループの資金需要のうち営業活動については、当社グループ製品製造のための材料や部品の購入のほか、製造費、販売費および一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費および研究開発費です。

  投資活動については、生産能力の拡大・効率化、研究開発環境の整備、ITインフラの強化を目的とした設備投資・研究開発投資が主な内容です。今後、成長分野に対しては必要な設備投資・研究開発投資等を継続していく予定です。

 

ハ. 財務政策

  当社グループは、売上債権および棚卸資産の圧縮等資金の効率を高め、内部資金を生み出すことにより、財務基盤の健全化を進めてきました。当連結会計年度末の借入金等の残高は、前連結会計年度末に比べ1億7千8百万円減少し、15億3千2百万円となりました。

  当社グループは、営業活動によりキャッシュを生み出す能力を持っていることなどから、当社グループの成長を維持するために将来必要となる運転資金および設備投資資金を創出・調達することが十分に可能であると考えています。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。

  連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したうえで行っています。特に重要な見積りを伴う会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入契約

提携先

国名

対象製品/技術

Boeing Intellectual Property Licensing Company

アメリカ

F-15 ジェット戦闘機用ヘッド・アップ・ディスプレイの製造、補修技術

Honeywell International Inc.

アメリカ

F-15 ジェット戦闘機用空気調和装置、第二次動力装置の製造、サービス、修理およびオーバーホールの技術

F-15 航空機近代化改修用装備品の製造および改修の技術

P-3C 対潜哨戒機、EP-3 航空機およびUP-3 航空機用空気調和装置、エンジン始動装置等の製造、サービス、オーバーホール、修理の技術

Rockwell Collins Inc.

アメリカ

航空機のコックピットに搭載するプロジェクション方式マルチ・ファンクション・ディスプレイ装置に関する技術

Vision Systems International, LLC

アメリカ

固定翼航空機装備品の製造および修理の技術

  (注) 上記は、すべて当社との契約であり、連結子会社において該当する契約はありません。

 

(2) その他の経営上の重要な契約

 当社は、2022年5月31日開催の取締役会において、日水製薬株式会社を完全子会社化することを企図して、日水製薬株式会社の普通株式を公開買付けにより取得することを決議し、日本水産株式会社(現株式会社ニッスイ)および日水製薬株式会社との間で、基本契約書を締結しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」に記載のとおりです。

 

6 【研究開発活動】

  当社グループの研究開発活動は、主として当社が行っており、先端的および基盤的な技術の研究開発と、製品化技術の研究開発を、総合的・有機的に連携させ運営しています。すなわち、コア要素技術である先端分析、革新バイオ、脳五感、AIと、製品基盤技術である機器制御設計、システム統合の領域で研究開発に取り組むことで、基盤事業としての計測機器事業、医用機器事業、産業機器事業、航空機器事業に対する新製品開発を推進しています。

  また、子会社においては、独自に研究開発を行うほか、欧州および中国の研究開発子会社において次世代の当社製品の核となる基盤要素技術の研究開発を行うなど積極的な研究開発に取り組んでいます。

  なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、11,031百万円です。セグメントで見ますと、計測機器事業では5,497百万円、医用機器事業では1,304百万円、産業機器事業では1,290百万円、航空機器事業では340百万円であり、その他の事業では256百万円です。また、上記事業区分に配賦しない基礎的研究費等は2,340百万円です。

  当連結会計年度における主要な研究開発成果にはつぎのものがあります。

 

<計測機器事業>

  計測機器事業では、クロマト分析システム、質量分析システム、光分析システム、熱分析システム、ライフサイエンス関連分析システム、Ⅹ線分析システム、表面分析・観察システムなどの開発に注力しています。

  質量分析システムとして、分析時間を従来の半分に短縮しつつ信頼性の高いデータ提供を可能にした、当社最高級モデルの高速液体クロマトグラフ質量分析計を開発しました。本製品により製薬の新薬開発や化学の新素材開発用途にて、より簡単に信頼性の高い分析データが取得できる環境を実現します。また、卓上型のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型質量分析計にて、質量分析イメージングを可能とする卓上MALDIイメージングキットを開発しました。医薬・臨床分野において患部にどの程度の疾患バイオマーカーが存在するかの確認や、化学分野での樹脂中の添加剤の分布確認をはじめとした研究に貢献します。

  光分析システムとして、世界で唯一、赤外分光法とラマン分光法の一台二役を実現した赤外ラマン顕微鏡を開発しました。赤外分光法とラマン分光法という2つの分析手法を同一の装置で行うことで、化学や電機・電子、機械・輸送機などにおける微小異物解析や品質管理だけでなく、マイクロプラスチックといった社会課題の解決にも利用が期待されます。また、原子吸光分光光度計では、世界最小の設置面積かつ様々な分析用途に対応できる汎用性、初心者でも安心して使える安全性・操作性を備えると共に、ネットワーク接続による遠隔でのデータ解析を可能な装置を開発しました。

  Ⅹ線分析システムとして、国産初の位相コントラストX線CTシステムを開発しました。一度の撮影でX線の吸収像・散乱像・屈折像という3種類の画像を撮影可能とすることで、従来のX線CTシステムでは困難だった繊維強化樹脂(FRP)や複合材料、生体材料などを観察可能とし、カーボンニュートラルを目指した新素材の研究開発に貢献します。また、出力160kVで世界最小・最軽量の卓上X線CTシステムを開発しました。製品開発・品質評価における詳細な観察から加工現場での検査まで幅広い用途に対応可能なシステムとして、低価格・小設置面積・高い操作性にて「誰でもすぐ検査」を可能としました。

 

<医用機器事業>

  医用機器事業では、X線TVシステム、X線撮影システム、血管撮影システム、PETシステム、放射線治療装置用動体追跡システム、近赤外光イメージングシステム、医療情報システムなどの開発に注力しています。

  X線撮影システムとして、電動アシストの独自技術を搭載することで滑らかで小回りの利く軽快な操作と、海外で要望のあるDR(デジタル・ラジオグラフィ)を組み合わせた新タイプの回診車を開発しました。

  血管撮影システムとして、AIのディープラーニング技術とX線照射条件の最適化により従来の40%以上線量を削減し、低線量下における治療デバイスの視認性を向上させたシステムを開発しました。医療施設での低線量運用と、患者の負担減につながる治療デバイスの微細化を支援し、低線量下でも安全なカテーテル治療を可能とします。

  医療情報システムとして、受付機に診察券を挿入または患者のリストバンドのバーコードを読み取らせることにより、放射線科で受ける検査への受付が可能な無人受付システムを開発しました。患者に快適な受付フローを提供し、医療スタッフの業務効率向上、人的ミスの回避、人手不足対策に貢献します。

 

<産業機器事業>

  産業機器事業では、ターボ分子ポンプ、油圧ギヤポンプ、コントロールバルブ、パワーパッケージ、高速スパッタリングシステム、動釣合試験機(バランシングマシン)、ヘリウムリークディテクタ、工業炉、ガラスワインダ、液送ポンプなどの開発に注力しています。

  工業炉として、セラミックス製造の脱脂工程において高温・大流量の過熱蒸気を炉内へ導入する技術を開発し、処理時間と消費電力を従来比で約50%に削減しました。さらに、炉内の脱脂状況を可視化する業界初のガスモニターでガス発生量を監視することで、カーボンニュートラルに向けた製造業の生産改革への貢献が期待されます。

 

  今後も、当社の先端的および基盤的な技術と、製品化技術を用いた研究開発を活かして、社会課題の解決に役立てるよう取り組みます。