第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社は、グループ経営の方向性を明確にするために、当社グループが事業を通じて果たすべき役割・責任や社会に存在する意義を示した「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としています。

「グループ経営理念」の内容は以下のとおりです。

<グループ経営理念>

1  経営理念

小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。

2  行動指針

私たちは、経営理念の実現のため、3つの精神を忘れることなく、お客さまに「上質と感動」を提供します。

(真摯)

私たちは、安全・安心を基本にすべての事業を誠実に推進します。

(進取)

私たちは、前例や慣習にとらわれず、よりよいサービスの追求に挑戦します。

(融和)

私たちは、グループ内に留まらない外部との連携、社会・環境との共生に取り組みます。

 

当社グループでは、「グループ経営理念」を実現するため、財務健全性の確保やアフターコロナの事業環境への適応等を目指した経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」を策定し、グループ価値・沿線価値の向上に努めています。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響が経営ビジョン策定時の想定より長引いていることや、体質変革の取り組みおよび今後の成長投資の効果を反映した成長イメージを描く必要があることを踏まえ、経営ビジョンで掲げている飛躍期の最終年度を2026年度から2030年度に延長しました。

 

経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」

① 全体方針

「地域価値創造型企業にむけて」

私たちは、小田急沿線や事業を展開する地域とともに成長するために、

既成概念に捉われず常に挑戦を続けることで、お客さまの体験や環境負荷の低減など

地域に新しい価値を創造していく企業に進化します。

 

② 変革の取り組み

2021年度から2023年度までを体質変革期、2024年度から2030年度までを飛躍期と定めます。体質変革期では、飛躍期に向けて3つの経営課題と3つの発想を通じた事業の変革に取り組み、経営状況の回復を図るとともに、既存のビジネスモデルを見直します。飛躍期では、地域価値創造型企業として新たな価値を生み出します。

 

 

体質変革期(2021~2023年度)

■ 変革に向けた3つの経営課題

飛躍期に向けて、「利益水準の回復」と「有利子負債のコントロール」を進めて財務の健全化※を図るとともに、「事業ポートフォリオの再構築」を行い、既存事業の選択と集中により収益力を強化し、投資余力を確保のうえ、新たな収益機会の創出を推進します。

※ 財務健全性の回復の目安として、2023年度における有利子負債残高7,000億円、有利子負債/EBITDA倍率7倍台を目指します。

 

■ 3つの発想を通じた事業の変革

すべての事業で「DX」「共創」「ローカライズ」の3つの発想を徹底し、業務やサービスに対する考え方の変革を進めるとともに、既存事業の成長や新規事業の創出を図ります。

 

飛躍期(2024~2030年度)

未来の小田急の持続的な成長につながる事業創造や拡大を進め、地域価値創造型企業として次の100年を歩むため新たな価値を生み出します。

 

③ 飛躍的成長を実現する3つの柱

ア サステナビリティ経営を推進

 グループ経営理念および経営ビジョンを踏まえて選定した6つのマテリアリティ(重要テーマ)を経営の中心に据え、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現していきます。

マテリアリティ

1.安全・安心

・安全・安心を最優先した公共交通サービスの提供

・誰もが安心して暮らせる社会の追求

2.まちづくり・地域社会

・職,住,商,学・遊、ウェルネスを兼ねそなえたまちづくりの実現

・地域資源を活かしたまちの発展

3.日々のくらしと観光体験

・テクノロジーを活用したゆたかなライフスタイルの推進

・その地域ならではの観光体験の提供

4.環境(カーボンニュートラル)

・省エネ、再エネ、電動化、地域との連携による脱炭素社会の実現

・「Beyond Waste」を目指した資源循環社会の実現

5.価値創造型人財の育成

・すべての社員が自分らしく働ける企業風土の醸成

・持続可能な経営を実現するための人財育成

6.ガバナンス

・すべてのステークホルダーの期待に応える最適なガバナンス体制の

実現

 

イ ビジネスの主戦場をシフト

 地域の成長ポテンシャルを最大限引き出すため、中核都市それぞれを“地域経済圏”単位で捉え、郊外⇔都心の輸送を中心とした沿線周辺での事業展開から、中核都市を中心に地域全体を対象とした事業展開への移行を推進します。また、「交通」「不動産」「デジタル」「生活サービス」の4つの事業領域を設定し、自治体や地域のキープレイヤーと連携したうえで、地域の特色に合わせた施策を通じて人流の拡大と地域全体の活性化を図り、地域と当社グループの持続的成長を実現します。

 

ウ 事業ポートフォリオを刷新

 4つの事業領域において、不動産領域を収益の第一の柱としてリソースを重点的に配分し、収益性を高めつつ利益規模を拡大するとともに、デジタル領域を新たな成長領域と位置付けます。また、交通領域は、効率化を進めて収益性を回復するとともに、突発的な利用者減少等のリスクへの耐性を強化します。さらに、生活サービス領域では、事業の再編等を進めるとともに、他の事業領域とのシナジーを高める施策を推進します。

 

④ 連結財務目標

 サステナビリティを経営の根幹として、当社沿線や事業を展開する地域とともに成長していく「地域価値創造型企業」を目指すことで、利益成長を実現するとともに、財務健全性を確保しつつ、社会的価値と株主価値の向上を図ります。

 

重要指標

2026年度

2030年度

 

長期方針

利益の成長

営業利益

460億円

600億円+α

 

持続的な

利益成長

財務健全性の

確保

有利子負債/

EBITDA倍率

7倍台維持

7倍程度

 

利益成長に

よる改善

資本コストを

意識した経営

ROE※

7%

 

さらなる向上

※ 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)

 

(参考)経営計画体系

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(2) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

① 経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」の実現

当社グループでは、経営ビジョンの実現のため、事業環境の変化に対応した中期経営計画(2023~2026年度)を策定しました。中期経営計画では、4つの重点施策に取り組むとともに、3つの戦略により経営基盤の強化を推進します。

 

② 重点施策

ア 交通領域の進化

すべての事業領域の土台となる交通において、持続可能な運営体制の確立と安定的な利益創出に向けた進化を続けます。

今後の具体的な取り組みとして、少人数での鉄道事業運営体制の構築を目指し、箱根登山線(小田原駅~箱根湯本駅間)における2025年度での試験運用開始等に向けて、ワンマン運転に関する検討の深度化を図るとともに、各種業務の効率化を進めます。加えて、耐震補強工事の推進や「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用したホームドアの設置により、安全対策を強化しつつ、大野総合車両所の移転をはじめとした老朽化設備の更新を推進するなど、持続可能な運営体制の強化に努めます。また、鶴川駅および藤沢駅の改良工事を、自治体による自由通路整備事業と連携して実施することで、利便性、安全性、回遊性を向上させるとともに、まち全体の賑わいを創出します。

 

イ 不動産領域の強化・沿線の再開発

新宿駅西口地区開発計画に加え、沿線中核都市を中心に、自社資産をフックにした周辺再開発を地域と連携して推進するとともに、投資手法・フィールドの拡大により、資産効率や収益力の向上を図ります。

今後の具体的な取り組みとして、新宿駅西口地区開発計画において、東京地下鉄㈱および東急不動産㈱とのパートナーシップのもと、同計画を深度化するとともに、小田急百貨店新宿店本館の解体工事をはじめとした各種工事を推進し、2029年度の竣工を目指します。あわせて、地域イベント等のソフト施策を組み合わせて実施し、西新宿エリアの魅力向上を図ります。また、町田エリアおよび新百合ヶ丘エリアにおいて、将来的な多摩都市モノレールや横浜市営地下鉄の延伸計画を見据え、駅周辺の当社グループ資産を活用した再整備やまちづくり構想を検討します。このほか、SPC(特別目的会社)への投資や回転型投資を通じて、短期的な収益サイクルを向上させるとともに、豪米を中心とした海外への投資の拡大を進めます。

 

ウ デジタルを活用した新規事業の探索

地域課題を起点としてデジタル領域の新規事業を生み出し、沿線内外の自治体や企業に展開することで、収益化を着実に推進します。

今後の具体的な取り組みとして、資源・廃棄物の収集運搬の最適化に向けたコンサルティングサービス等を提供するウェイストマネジメント事業「WOOMS(ウームス)」において、沿線を中心とした全国の自治体への営業活動を強化し、収益規模の拡大を図ります。また、鉄道やバス等の交通データやデジタルチケットの予約・決済機能を有する共通データ基盤「MaaS Japan」や「EMot」等のMaaSプラットフォームについて、沿線内外の交通事業者や自治体等への提供に努めるほか、スマートフォンでの決済・利用シーンの拡大を進め、駅務機器への投資の効率化に貢献します。

 

エ コロナ後に対応した観光/生活サービス

観光需要の回復を確実に収益へ結び付けるとともに、新たなライフスタイルに適合した生活サービスを推進します。

今後の具体的な取り組みとして、箱根の自然体験を地域事業者とともに創り、発信するプロジェクト「HAKONATURE」を始動したほか、藤沢市立鵠沼海浜公園改修事業(Park-PFI)等を通じて江の島エリアの活性化を図るなど、沿線観光地の魅力向上を目指します。また、箱根、江の島・鎌倉エリアを中心に、クレジットカードのタッチ決済や「EMot」のQR認証に対応した新たな改札認証機器を導入するなど、観光シーンでのDXによる利便性向上に努めます。このほか、国内旅行やインバウンド需要の回復に伴う観光業界の人手不足を捉え、㈱ヒューマニックが営む観光人材サービス事業の拡大を図ります。

 

③ 経営基盤の強化

 

戦略の概要と取り組みの例

DX戦略

DXの推進に向けた基盤整備およびデジタルを活用したビジネスの事業変革の取り組みを加速します。

●デジタルを活用した新規事業や鉄道の保守管理の効率化等に資するデジタル関連投資を2023~2026年度総額で約100億円実施

●専門人財の育成に向けて、デジタル知識のレベルに応じた基礎・専門知識の教育機会を提供

環境戦略

行動指針「小田急グループ カーボンニュートラル2050」に基づき、当社グループのCO排出量削減を進めます(2030年:2013年比50%削減、2050年:実質0)。

●電動バスの導入・拡充、PPA(電力販売契約)による太陽光発電の推進(海老名地区)

●「GXリーグ(経済産業省主催)」における参画企業間でのCO排出量取引等を通じた脱炭素への取り組みの加速

●Scope3を含むサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の集計・開示

人財戦略

経営ビジョンの実現に向けた価値創造の担い手となる人財育成を推進します。

●経営戦略と連動した採用・配置の実施

●リスキリングをはじめとした学びの機会拡充

●風土・意識改革による働きがいの向上

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

 当社グループは、経営ビジョン「UPDATE 小田急」において、「飛躍的成長を実現する3つの柱」の1つとして「サステナビリティ経営の推進」を掲げており、グループ経営理念および経営ビジョンを踏まえて選定した6つのマテリアリティ(重要テーマ)を経営の中心に据え、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現していきます。

 

マテリアリティ

1.安全・安心

・安全・安心を最優先した公共交通サービスの提供

・誰もが安心して暮らせる社会の追求

2.まちづくり・地域社会

・職,住,商,学・遊、ウェルネスを兼ねそなえたまちづくりの実現

・地域資源を活かしたまちの発展

3.日々のくらしと観光体験

・テクノロジーを活用したゆたかなライフスタイルの推進

・その地域ならではの観光体験の提供

4.環境(カーボンニュートラル)

・省エネ、再エネ、電動化、地域との連携による脱炭素社会の実現

・「Beyond Waste」を目指した資源循環社会の実現

5.価値創造型人財の育成

・すべての社員が自分らしく働ける企業風土の醸成

・持続可能な経営を実現するための人財育成

6.ガバナンス

・すべてのステークホルダーの期待に応える最適なガバナンス体制の

実現

 

① ガバナンス

 当社グループは、環境や社会の持続性に配慮しながら事業の継続・発展を実現するサステナビリティ経営をグループ全体で浸透・推進するとともに、お客さま・社会・市場・従業員等のさまざまなステークホルダーとの強固な信頼関係の構築を通じて企業価値の向上を実現します。

 そして、サステナビリティ推進に関する施策の企画立案や推進等に関する事項の協議や推進指標の設定・進捗確認等を行う機関として、サステナビリティ担当取締役が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。取締役会・執行役員会および取締役社長は同委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況やリスク・機会等を監視し、必要により指示を出すことにしています。同委員会で協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進します。

 

(サステナビリティ推進委員会体制図)

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② 戦略

 沿線人口の頭打ち、交通弱者の増加、テレワークの拡大、あらゆるサービスのデジタル化、自然災害の激甚化、地域の持続可能性への関心の高まりなどの環境変化も踏まえ、以下のようにリスク・機会を整理しています。

 

リスク

機会

・生活様式の変化やデジタル化による各事業の利用者

 減少

・少子高齢化による沿線人口・生産年齢人口の減少

・自然災害による事業影響

・燃料費・物価の上昇

・適正な労働力確保に対する懸念

 

・交通弱者の増加に伴う公共交通の利用ニーズ拡大

・デジタルの活用によるリアルサービスの質的転換、

 価値向上

・地域の社会課題解決を通じた事業領域の拡大、居住

 エリアの役割の多様化

・感染症の収束

・インバウンドの回復

 

 当社グループは日本屈指の観光地や中核都市を複数持ち、さまざまな需要回復の影響を大きく享受することが期待できるほか、一定の人口を持つ都市が集積する小田急沿線は、多様な地域特性を有するがゆえに数多くの社会課題が存在しており、これらをビジネスとして解決することで新しい事業機会につなげるとともに、個性を持ったまちの形成を通じて新たな価値を創出していきます。

 なお、マテリアリティとして選定した各項目において向き合う主な社会課題は以下のとおりです。これらの社会課題を解決することを通じて、マテリアリティの実現、ひいてはサステナビリティ経営の推進につなげます。

 

マテリアリティ

向き合う主な社会課題

1.安全・安心

公共交通の安全・安心/バリアフリーな社会/サイバー犯罪、自然災害

2.まちづくり・地域社会

少子高齢化/地域社会の活力低下/都市・地域間競争の激化/技術革新

3.日々のくらしと観光体験

ライフスタイルの多様化/交通弱者の増加/技術革新/オーバーツーリズム、インバウンド

4.環境(カーボンニュートラル)

気候変動への対応(地域の脱炭素・資源循環)/環境負荷の低い公共交通へのシフト/森、里、川、海の保全

5.価値創造型人財の育成

ダイバーシティ&インクルージョン/人手不足/働き方の多様化

6.ガバナンス

非財務情報の開示/持続可能な企業経営

 

③ リスク管理

 地域価値創造型企業として地域に価値を提供し続けるために、環境変化を的確に捉え、社会課題を解決していくことが求められています。サステナビリティ推進委員会の事務局となる経営戦略部が主体となって、マテリアリティの進捗状況を確認し、その見直しを検討するなかで、各部・室、グループ会社と連携してリスク・機会に関する精査を行い、検討内容を同委員会で協議するとともに、必要に応じて取締役会・執行役員会および取締役社長に報告します。

 

④ 指標及び目標

 「(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) ④ 指標及び目標」「(3) 人的資本・多様性 ② 指標及び目標」に記載しています。その他のマテリアリティにおける指標及び目標については、2023年度内に設定し内容の拡充を図っていきます。

 

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

 当社グループでは気候変動問題を含む環境対応は重要な経営課題として位置づけ、2021年9月に「小田急グループ カーボンニュートラル2050※」を策定するとともに、TCFDへの賛同を表明しました。また、これらに基づきカーボンニュートラルへの取り組みを進めるとともに、当社グループの「TCFD提言に基づく情報」を取りまとめました。なお、リスクと機会については、運輸業と不動産業を対象として検討を行いました。今後もTCFD提言に基づく情報開示を進めるとともに、気候変動問題等の環境対応に積極的に取り組みます。

 ※ 当社ホームページ

   https://www.odakyu.jp/sustainability/carbon-neutral/

 

① ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ担当取締役が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。その中で、環境長期目標を含めた行動指針「小田急グループ カーボンニュートラル2050」推進に関する事項の協議および気候関連のリスク・機会についての特定等を行っています。

 また、取締役会・執行役員会および取締役社長は同委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況や気候関連のリスク・機会等を監視し、必要により指示を出すことにしています。同委員会で協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進しています。

 

② 戦略

 ア リスクと機会

 当社グループにおいて運輸業と不動産業の重要なリスクおよび機会について検討した結果は次のとおりです。なお、気候変動がもたらすリスクは、TCFD提言に合わせて、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク、主に1.5℃シナリオ※1)と物理的な影響に伴うリスク(物理的リスク、主に4℃シナリオ※1)に分類し、検討しました。検討においては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)等のシナリオを参照しました。

 

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 イ リスク・機会への対応

 当社グループでは、重要なリスク・機会に対し「小田急グループ カーボンニュートラル2050」とともに、以下の表のとおり対応しています。

 

対応策

移行リスク

省エネ車両・設備の導入/新規物件への先進技術導入/EV・FCVバスの導入/再生可能エネルギーの導入

物理的リスク

異常気象時における鉄道施設への安全対策/車両避難に備えた体制の確立/防災訓練の実施

機会

回生電力の更なる有効活用/ゼロカーボンロマンスカーの運行等環境優位性のPR/シームレスかつ利便性の高いMaaSの推進/ウェイストマネジメント事業「WOOMS」の推進/再生可能エネルギー関連事業への拡大・参入

 

③ リスク管理

 「小田急グループ カーボンニュートラル2050」の実現に向けて、サステナビリティ担当取締役が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会においてCO₂排出量を削減するための施策の計画・立案・進捗管理を四半期に1回程度行っています。また、戦略において特定した気候変動によるリスクと機会について、分析内容の更新や取り組みの進捗を同委員会で協議するとともに、必要に応じて取締役会・執行役員会および取締役社長に報告します。協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図っています。

 なお、自然災害等発生したリスクに対しては、危機管理規則および事業継続計画(BCP)に基づき対応を行います。これらはリスクマネジメント担当取締役が委員長を務めるリスクマネジメント委員会にて定期的に見直しを図り、レジリエンス強化に努めています。

 

④ 指標及び目標

 「小田急グループ カーボンニュートラル2050」の中で環境長期目標を設定しています。

 

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(3) 人的資本・多様性

① 戦略

 ア 人財に関する基本的な考え方

 当社グループでは、経営ビジョン「UPDATE 小田急」の実現に向けたマテリアリティ(重要テーマ)の一つに「価値創造型人財の育成」を選定しています。その中で、目指すべき人財像として「価値創造型人財」を掲げ、人財に関する各施策を推進しています。

 

 

価値創造型人財

小田急で働くすべての人が「UPDATE 小田急」につながる新しい価値を創造していく

■ 大切にしたいこと

 ・自分の仕事を通して地域に「価値」を生み出していくこと

 ・「価値」とは、お客さまや共に働く仲間たちの心を動かし、会社やビジネスパートナーの発展

  に寄与し、そして地域とともに自分自身の成長を生み出していくこと

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多様かつ持続的に価値の総和が積みあがることで、

「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」の実現につながっていく

 

■ 価値創造型人財の行動原理

 地域に新しい価値を生み出す人財とは?

 1.「顧客とは?社会とは?」を自分ごととして問い続け、自ら学び続ける

 2.顧客や社会にとっての価値を内部のみではなく、外部に積極的に発信して、共鳴、共感を得る

 3.自前主義、委託主義を脱却し、最適なパートナーとともに、多様な視点から共創し、価値を創造していく

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 イ 人財育成

 当社では、「価値創造型人財」の育成を目指し、資格・役割に応じた各種研修を計画的・体系的に実施しています。また、事業運営上必要な資格の保有者の確保にとどまらず、自己啓発意欲を高め、従業員の能力開発に資することを目的として、「資格取得支援制度」を2012年に制定しました。直近ではDX推進に向けてデジタル関連の対象資格を拡充するなど、社員へ学びの機会を提供し支援を推進しています。

 

 ウ 風土づくりと挑戦を引き出す制度の推進

 当社では、経営理念や経営ビジョンのもと、創りたい未来の実現に向けて基盤となる風土づくりと、社員の挑戦を引き出す制度を両輪とした総合的な変革の取り組みを進めています。

 部門ごとの年度計画策定を所属員全員参加で行う「未来創造会議」をはじめ、社員同士の対話機会を多く設けることで、目標への納得感醸成と関係の質向上等を図っています。また、社員の挑戦を引き出す制度として、新規事業のアイデア公募制度や、労働時間の20%を所属部門の枠を越え社内プロジェクトに参画できる制度を構築し社員の自主性に基づく挑戦を促進しています。

 既に新規事業4件が事業化されるとともに、これまで本社社員の延べ15%が社内プロジェクトに参加するなど、継続的に成果が出ています。

 

社内プロジェクト参加人数

141名

 

 

 エ ダイバーシティ&インクルージョンの基本的な考え方

 当社では、2018年2月に「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」の発表を行い、健康経営とワークライフバランスを土台に、生産性向上、体質変革の取り組み、配置・評価・育成のシナジー効果を引き起こすことによって風土や意識を改革し、一人ひとりの価値創造やイノベーションの創出につなげます。

 

小田急電鉄 D&I宣言

「認め合う 活かし育む 創り出す」

~多様性を認め合い、個の力を活かし育み、新たな価値を創り出す組織へ~

■ D&I宣言に込めた思い

 1.一人ひとりの、属性を超えた「価値観」「考え方」「ライフスタイル」「能力」「経験」を大切にし、お互いを認め合いながら協働していきます。

 2.一人ひとりが成長し、個の力をチームで活かし育むことにより、いきいきわくわく働くことのできる職場環境の実現を目指します。

 3.あらゆる視点を最大限に活かし、新たな価値を創り出すことで、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。

 

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 オ 女性活躍の推進

 当社では、女性活躍推進に関する数値目標を設定し、その実現に向けて取り組んでいます。2021年4月には初の女性執行役員を登用、2023年4月にはグループ会社社長に初めて女性が就任したほか、女性管理職数も着実に増加するなど、年々成果が上がっており、今後も女性のキャリア促進に積極的に取り組みます。

 

■ 女性活躍に資する風土づくり施策

プレママ面談

産休前に、休業中の過ごし方や復職後の働き方について考える目的で、本人・上司・人事部の三者で面談を実施しています。

育休者懇談会

復職セミナー

スムーズな復職や仕事と育児の両立に向けて、育休者同士や先輩社員との交流等の機会を設けています。

女性活躍セミナー

ライフイベントを経ても意欲的に働き続けることを目指し、セルフマネジメントを学ぶワークショップや各種啓発施策等を開催しています。

 

 カ ワークライフバランスの推進

 当社では、多様な人財が仕事と家庭を両立しやすい環境を整えるために、法定を上回る内容でさまざまな両立支援制度を導入し、制度の理解・浸透・活用促進を進めています。

 

■ 主な両立支援制度

育児

育児休業:最長で子が3歳に達するまで最大6回に分割して取得可能

育児短時間勤務:小学校4年を終了するまで取得可能

配偶者出産休暇:5日間の有給休暇を付与 等

介護

被介護者1人につき、連続休業、指定日休業、短時間勤務を最大3年取得可能 等

治療

休務・休職制度

がん等の治療短時間勤務 等

啓発・

その他

監督者向けD&I・両立支援研修

育児者向けセミナー・介護者向けセミナー

妊活・産婦人科・小児科相談窓口の整備、情報発信 等

 

 キ 人財確保・定着の取り組み

 業界最高水準の初任給設定等、若年層を中心とした処遇改善のほか、入社後の独身寮でのフォロー体制や帰省交通費支援制度等の社会的・経済的な自立支援等により、優秀な人財の獲得と定着に向けた取り組みを継続的に推進しています。

 

■ 数値効果(2022年度実績)

女性育休取得率復職率

100.0%

年次有給休暇取得率

88.5%

離職率

1.4%

入社3年後定着率(新卒)

91.0%

 

② 指標及び目標

■ 女性活躍推進に関する当社の目標

目標一覧

2022年度実績

本社部門:2025年度までに、女性管理職比率を6.0%とする。

5.5%

現業部門:2025年度までに、女性役職者(主任クラス以上)比率を2013年度の2倍以上と

     する。

2.7%

2025年度までに女性従業員(正社員)比率を10%まで引き上げる。

9.7%

2025年度までに男性育児休業取得率を2018年度の2倍以上とする。

73.8%※

毎年1回以上、ダイバーシティ&インクルージョンに関する社内向けセミナーを実施する。

随時開催

※ 「第1 企業の概況」の「5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 ① 提出会社」における男性労働者の育児休業取得率とは異なり、育児目的休暇の取得は含めていません。

3【事業等のリスク】

当社グループでは、「小田急グループリスクマネジメント方針」に基づきグループ全体のリスクマネジメント体制を構築し、企業経営に重大な影響を与えるリスクの対策を検討・推進する取り組みを行っています。これらを通じて把握したリスクのうち、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものです。また、以下のリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありませんのでご留意ください。

(1)災害等

① 大規模な地震・津波の発生

大規模な地震等が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備が損傷するなどの直接的被害のほか、電力不足等による営業への制約、消費マインドの冷え込みによる収益の減少といった間接的被害により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの事業エリアの一部は東海地震に関する地震防災対策強化地域に含まれています。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)の制定、建物・設備の耐震補強工事を推進するとともに、一部の駅において災害発生時の避難場所を示した案内や外国語案内の掲出、行政機関と連携した異常時対応訓練を行い、さらに、全ての駅・関係施設において災害備蓄品を整備するなどの諸施策を実施しています。

② 自然災害の発生

当社グループでは、集中豪雨および暴風等、大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備の損傷、被害箇所の復旧等に伴う費用の増大等のほか、列車運休等の営業上の制約、消費マインドの冷え込み等による収益の減少により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、防災計画に基づいた警戒体制、運行規制の徹底、各種構造物に対する防護工事や雨量計、風速計の設置、危険箇所への定点観測カメラによる監視等を実施しています。

③ 感染症の流行

当社グループは、鉄道・バス・商業施設等多数のお客さまが利用されるサービスを展開しています。当社グループの事業エリアにおいて、新型インフルエンザ等の感染症が大規模に流行した場合、施設を利用されるお客さまの減少や、従業員の感染が多発することで、鉄道の列車運行等の事業運営に支障をきたし、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)を制定し、マスクやアルコール消毒液等の備蓄、情報収集体制の構築等の諸施策を実施しています。

なお、新型コロナウイルス感染症について、今後大きく病原性の異なる変異株が出現するなどにより感染が再拡大した場合、当社グループを利用されるお客さまの減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事故等

① 事故等の発生

当社グループの各事業において、人為的なミスや機器の誤作動、テロ等の不法行為等によって大きな事故や火災等が発生した場合、人的被害や事業の中断等が生じるとともに、被害者に対する損害賠償責任や施設の復旧等に伴う費用が発生する可能性があります。また、顧客の信頼および社会的評価の低下により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)の制定、リスク事案の共有、計画的な設備更新・点検、各種訓練・教育の充実等により類似事案の発生防止・対応力強化を図っています。

② 保有資産および商品の瑕疵・欠陥

当社グループが保有する資産に、瑕疵や欠陥が見つかった場合または健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、改善・原状復帰、補償等にかかる費用が発生する可能性があります。また、当社グループにおいて販売した商品等について瑕疵や欠陥が見つかった場合についても、改善および補償等に伴う費用の発生や信用低下等に伴い当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、構造物への法令に基づく各種検査、商品への衛生検査・表示検査・細菌検査、外部機関による監査等の諸施策を実施しています。

③ システム障害の発生

当社グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。そのため、事業活動に不可欠なシステムやネットワークの安定稼働に必要な対策を実施していますが、コンピューターウイルス等の第三者による妨害行為、自然災害および人為的ミス等により重大な障害が発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、ネットワークの耐障害性向上施策、ファイアウォール等の不正アクセス対策、情報セキュリティ体制の構築、近年増加するサイバー攻撃の脅威情報や最新のセキュリティトピックスを共有する取り組み等を実施しています。

(3)コンプライアンス等

① コンプライアンス

当社グループでは、コンプライアンスを「法令、社内規則、社会通念等のルールを守るとともに、誠実に事業活動を実践していくための考え方およびその取り組み」と定め、推進していますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、法令等に基づく制裁や社会的制裁等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、コンプライアンスアンケートの実施とその結果に基づく活動計画の策定・運用の推進、問題の早期発見・対応のためのコンプライアンス・ホットライン整備、各種研修やセミナーの充実等の諸施策を実施しています。

② 機密情報管理

当社グループはクレジットカード事業を行っているほか、各種事業において顧客情報等の個人情報を含む機密情報を保有しています。機密情報については厳正に管理していますが、何らかの理由で情報の漏洩等の事態が生じた場合、損害賠償や信用の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)を制定し、情報に係る規程類やマニュアルの整備、セキュリティ対策、定期的な研修・資格取得支援等の諸施策を実施しています。

③ 情報開示

人為的ミス等により不適切な情報開示等があった場合、顧客の信頼および社会的評価の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、それぞれの事業特性に応じた内部統制の整備、運用に努めることで、適時適切な情報開示に取り組んでいます。

(4)経営環境等

① 人材の確保

当社グループの事業は労働集約型の事業が多く、労働力として質の高い人材の確保が重要となります。そのため、優秀な人材を確保、育成し、働きやすい職場環境の確保と健全な労働環境の維持に努めていますが、これを達成できない場合、当社グループの事業展開が制約され、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、採用WEBサイトの整備、中途採用や多様な採用手法の推進、36協定の順守や福利厚生の充実、業務のシステム化や見直しによる業務効率化等の諸施策を実施しています。

② 法的規制

当社グループは、鉄道事業法、道路運送法、大規模小売店舗立地法、建築基準法等の各種法令や排ガス規制をはじめとした公的規制のもとさまざまな事業を展開していますが、これらの法令・規制、特に東京都・神奈川県における諸制度の変更は当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、鉄道事業における運賃制度については以下のとおりです。

鉄道運送事業者は、旅客の運賃の上限を定め、または変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更ならびに特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項および第4項)。

当社グループでは、法改正等に適切かつ迅速に対応するため、定期的な法令改正情報の共有や法令改正に対応した各種研修・セミナーの充実等の諸施策を実施しています。

③ 金利の変動

当社グループは鉄道事業を中心に継続的な設備投資を行っており、借入金や社債等により資金を調達しています。よって、金利の変動および当社の格付の変更が、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、有利子負債に占める長期・固定金利の割合を高く保つことで、金利が大きく変動した場合でも支払利息が急激に増えることのないよう努めています。

④ 重要な訴訟

当社が当事者となる重要な訴訟はありませんが、通常の業務の過程において第三者から訴訟その他の法的手段を提起されたり、行政等から調査を受けたりする可能性があります。これらの対応の負担に加え、仮に当社に不利な判決、決定等が下された場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクを回避するために、訴訟リスクの低減や法務対応力強化に向けて、契約書様式の制定・活用や顧問弁護士との連携強化、法務教育の充実等の諸施策を実施しています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当期のわが国経済は、資源価格上昇の影響等を受けて一部に弱さがみられたものの、企業収益や雇用・所得環境が改善する中で個人消費も緩やかに増加するなど、全体として緩やかな景気の持ち直しが続きました。

このような状況のもと、当社グループでは鉄道業やホテル業等において、前期に比べ利用者数が回復したことなどにより、営業収益は395,159百万円(前期比10.1%増)、営業利益は26,601百万円(同332.4%増)となったほか、経常利益は25,119百万円(同434.5%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、小田急第一生命ビル持分の売却に伴い固定資産売却益を計上したことなどにより、40,736百万円(同236.2%増)となりました。

セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

ア 運輸業

鉄道事業では、輸送面において、本年3月、朝方ラッシュ時間帯の江ノ島線や、ホームドアの設置が予定されている特急停車駅における、ゆとりを持った運行計画への変更を目的としたダイヤ修正を実施しました。また、通勤車両5000形3編成を増備したほか、通勤車両3000形について、環境面に配慮したリニューアルを実施し、2編成が営業運転を開始するなど、輸送サービスの向上を図りました。

営業面では、昨年4月、PASMOでの当社線利用により小田急ポイントを付与する新サービス「小田急おでかけポイント」を開始するなど、利便性の向上を図りました。また、昨年10月、特急ロマンスカーの快適な移動サービスを将来にわたり提供していくため、特急料金を改定するとともに、各種オンラインサービスで発売する電子特急券について、通常の特急料金よりも全区間一律で50円安く設定した「チケットレス特急料金」を導入しました。さらに、昨年11月、特急ロマンスカーを定額で利用できるサブスクリプションチケット「EMot(エモット)特急パスポート」を期間限定で発売するなど、MaaSアプリケーション「EMot」を活用した諸施策を引き続き実施しました。

施設面では、列車運行の安全性を一層高めるため、本厚木駅(1、2番ホーム)にホームドアを設置したほか、大規模地震による被害を抑制すべく、町田駅~相模大野駅間等の橋梁での耐震補強工事を実施しました。また、本年3月、バリアフリー設備の整備と更新を持続的に推進すべく、「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づく運賃改定を実施しました。このほか、本年3月、「子育て応援ポリシー」に基づき、下北沢駅等の7駅において、お子さまのおむつ替え等にご利用いただけるベビーケアルームの展開を開始しました。

バス事業では、小田急バス㈱および箱根登山バス㈱において、昨年10月、バスの効率的な運用を図るべく、営業所の移転・再編を実施しました。また、箱根登山バス㈱等において、運賃を改定したほか、各社でお客さまのニーズに対応したダイヤ改正等を実施しました。

以上の結果、当社の鉄道事業において、行動制限が解除され定期・定期外ともに輸送人員が前期を上回ったことなどにより、営業収益は151,704百万円(前期比15.6%増)、営業利益は8,463百万円(前期 営業損失5,491百万円)となりました。

 

 

(提出会社の鉄道事業運輸成績表)

種別

単位

当連結会計年度

(2022.4.1~2023.3.31)

 

対前期増減率(%)

営業日数

 

365

0.0

営業キロ

 

キロ

120.5

0.0

客車走行キロ

 

千キロ

173,079

△9.0

 

定期

千人

381,658

9.1

輸送人員

定期外

266,998

15.7

 

648,656

11.7

 

定期

百万円

37,804

6.1

旅客運輸収入

定期外

63,229

19.3

 

101,034

14.0

運輸雑収

 

3,004

△11.0

運輸収入合計

 

104,038

13.1

乗車効率

 

40.6

(注) 乗車効率の算出方法

乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100

 

イ 流通業

百貨店業では、㈱小田急百貨店新宿店において、新宿駅西口地区開発計画の進捗による本館営業終了に伴い、「食品」「化粧品」「ラグジュアリーブランド」を中心とした新宿西口ハルクでの売場再編工事を実施し、昨年10月、同店がリニューアルオープンしました。加えて、リニューアル第二弾として、昨年12月、新宿駅西口地下街「小田急エース」北館において、オリジナルベーカリーやバラエティ豊富な食材を揃えた専門店等が出店する新しい食品売場「SHINJUKU DELISH PARK(シンジュク デリッシュ パーク)」をオープンし、百貨店の強みである「デパ地下」の更なる魅力向上に努めました。

ストア・小売業では、小田急商事㈱が運営するスーパーマーケット「Odakyu OX」において、相模原店がリニューアルオープンしたほか、各店で買い回りしやすい売り場づくりに努めるなど、お客さまの利便性向上を図りました。

以上の結果、百貨店業において利用者数は回復傾向にあったものの、昨年10月に新宿店本館の営業終了に伴い売場面積が大幅に縮小したことに加え、ストア・小売業において昨年2月末にベーカリー事業の営業を終了したことなどにより、営業収益は96,156百万円(前期比4.7%減)、営業利益は866百万円(同48.9%減)となりました。

 

 

ウ 不動産業

不動産分譲業では、小田急不動産㈱において「リーフィア世田谷桜丘ザ・ブルーム」等の戸建住宅や、「リーフィアレジデンス杉並 井草森公園」をはじめとしたマンションを分譲するなど、収益の確保に努めました。

不動産賃貸業では、「下北線路街」の最終開発エリア「NANSEI PLUS(ナンセイ プラス)」において、世田谷区と連携し一体的に整備した広場が完成するとともに、広場に面する園芸ショップやアートギャラリーがオープンし、昨年5月、全13エリアからなる「下北線路街」が全面開業しました。加えて、昨年10月、海老名駅前において、「ウェルネス」のコンセプトのもと、フィットネスクラブやクリニックモールとともに、飲食、物販等の店舗を備えた複合施設「ViNA GARDENS PERCH(ビナ ガーデンズ パーチ)」がグランドオープンしたほか、本年3月、新築賃貸マンション「リージア新百合ヶ丘サウスコート」が開業するなど、各エリアの開発計画を鋭意推進しました。また、新宿駅西口地区開発計画において、昨年10月、小田急百貨店新宿店本館の解体工事に着手しました。

以上の結果、不動産分譲業において投資用不動産を売却したことや、不動産賃貸業において海老名駅間地区の新規開業物件が寄与したことなどにより、営業収益は84,034百万円(前期比3.8%増)となりました。一方、営業利益は、不動産賃貸業において新規開業物件に係る費用が増加したことなどにより、18,047百万円(同2.8%減)となりました。

 

エ その他の事業

ホテル業では、当社および㈱小田急リゾーツにおいて、昨年9月、全客室に温泉露天風呂を完備し、プライベート感を高めたホテル「はつはな」をリニューアルオープンするなど、事業基盤の強化に努めました。また、当社グループが運営する各ホテルにおいて、入国規制の緩和や全国旅行支援の開始にあわせて、積極的な営業施策を展開し、宿泊需要の取り込みを図りました。

レストラン飲食業では、㈱小田急レストランシステムおよびジローレストランシステム㈱において、新規業態の開発や新規出店を実施するなど、集客力の強化を図りました。

以上の結果、ホテル業やレストラン飲食業における利用者数の回復等により、営業収益は90,716百万円(前期比22.4%増)、営業損失は821百万円(前期 営業損失8,668百万円)となりました。

② キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益58,767百万円に減価償却費等を加減した結果、62,928百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ、14,311百万円の資金収入の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入等により、34,712百万円の資金収入となりました。

この結果、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは97,641百万円の資金収入となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、51,056百万円の資金支出と、前連結会計年度に比べ、20,483百万円の資金支出の増加となりました。これは、借入金の返済や社債の償還による支出が増加したことなどによるものです。

なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ45,622百万円増加し、67,474百万円となりました。

③ 生産、受注および販売の実績

当社グループの主たる事業は、鉄道事業を中核とする運輸業、百貨店業を中核とする流通業、建物の賃貸、土地および建物の販売を行う不動産業およびその他の事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産および受注の実績を金額あるいは数量で示すことはしていません。

そのため生産、受注および販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収入・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものです。

また、連結財務諸表の作成における会計上の見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

ア 棚卸資産の評価

当社グループは、多くの棚卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2008年9月26日)を適用しています。これらのうち、分譲土地建物については原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)を採用しており、市場価格が下落した場合には、簿価の切り下げにより費用が発生する可能性があります。

イ 有価証券の減損

当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しています。これらのうち、市場価格のない株式等以外の有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。

これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性があります。

ウ 固定資産の減損

当社グループは、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

エ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少または増加した場合には、評価性引当額の追加計上または取崩しが必要となる場合があります。

オ 退職給付債務および費用

従業員の退職給付債務および費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務および費用に影響する可能性があります。

② 財政状態および経営成績

(財政状態)

総資産は、現金及び預金が増加したものの、固定資産の減価償却が進んだことなどから、1,279,976百万円(前連結会計年度末比5,253百万円減)となりました。

負債の部は、社債の償還等に伴い有利子負債が減少したことなどから、891,485百万円(同44,486百万円減)となりました。

純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、388,490百万円(同39,233百万円増)となりました。

(経営成績)

ア 営業収益および営業利益

当連結会計年度における営業収益は395,159百万円(前期比10.1%増)、営業利益は26,601百万円(同332.4%増)となりました。なお、各セグメントの営業収益および営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しています。

イ 営業外損益および経常利益

営業利益の改善に伴い、経常利益は25,119百万円(同434.5%増)となりました。

ウ 特別損益および親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益に小田急第一生命ビル持分の売却に伴う固定資産売却益を計上したことなどにより、税金等調整前当期純利益は58,767百万円(同153.0%増)となり、ここから法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40,736百万円(同236.2%増)となりました。

③ 資本の財源および資金の流動性についての分析

ア 設備投資による資本の投下

当社グループは、鉄道事業において、安全防災対策に積極的に取り組みながら、快適かつスピーディーな鉄道運行の実現に努めているほか、他の事業においても、沿線の魅力を高めることを目指して継続的な設備投資を行っています。当連結会計年度は総額52,889百万円の設備投資を実施しました。

なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しています。

イ 資金需要の主な内容と動向

当社グループの主要な資金需要は、安心・便利・快適に鉄道をご利用いただくために不可欠な設備や施設への投資や、沿線価値の向上に資する開発への投資等の設備投資の支出ですが、その他に人件費等の事業運営のための運転資金の支出があります。また、今後の動向としては、設備投資が資金需要の中で最も高い割合を占める状況が続くと考えています。

ウ 資金調達

当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しています。

なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、資金繰りの波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グループ内資金を活用するほか、適宜、コマーシャル・ペーパー(CP)の発行等により緊急時の流動性を確保しています。

エ 資金の流動性

当社グループは、鉄道事業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。

 

④ 経営指標

当社グループでは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営の基本方針 ④ 連結財務目標」に記載のとおり、営業利益、有利子負債/EBITDA倍率、ROEを重要指標としています。

なお、当連結会計年度については、以下のとおりです。

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

営業利益

6,152

26,601

有利子負債/EBITDA倍率

13.6倍

9.5倍

ROE(注)

3.7%

11.6%

(注) 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)

 

(参考)

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

借入金・社債等

690,022

647,473

鉄道・運輸機構長期未払金(注1)

66,515

59,005

有利子負債計(注2)

756,537

706,479

EBITDA(注3)

55,515

74,468

(注) 1 鉄道・運輸機構長期未払金は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表〔借入金等明細表〕」における鉄道・運輸機構長期未払金の額とは異なり、上表では消費税等相当額を加えています。

2 リース債務および社内預金は除いています。

3 EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものです。

5【経営上の重要な契約等】

(固定資産の譲渡および連結子会社の異動を伴う株式譲渡)

 当社は、2023年3月23日開催の取締役会において、当社が保有する「小田急第一生命ビル」の持

分を第一生命保険株式会社(以下「第一生命」という。)等が出資する国内法人に、「小田急セン

チュリービル」をKohlberg Kravis Roberts & Co. L. P.またはその関

係会社が運用もしくは投資アドバイザーを務める特定のファンド(以下、総称して「KKR」とい

う。)とその共同事業者が出資する特定目的会社に、株式会社ホテル小田急(以下「ホテル小田

急」という。)の全株式をKKRおよび共同事業者が出資する特定目的会社に譲渡することを決議

し、2023年3月24日に売買契約を締結しました。

 (1) 譲渡の理由

当社は、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」に則り、小田急沿線や事業を展開する地域との持続的な成長を目指し、変革に向けた3つの経営課題である「利益水準の回復」「有利子負債のコントロール」「事業ポートフォリオの再構築」に取り組んでいます。今般、その一環として、小田急センチュリービルの土地・建物およびホテル小田急の

株式の譲渡を決定しました。

 

 (2) 当社による小田急第一生命ビル持分の譲渡の概要

① 譲渡資産の内容

ア 名称

小田急第一生命ビルの持分

イ 所在地

東京都新宿区西新宿2丁目7番1号

ウ 資産の種類(現況)

建物及び構築物、土地(事務所)

エ 譲渡価格

契約上の守秘義務により、公表を控えさせていただきます。

オ 譲渡益

361億円

(注) 当社は、本件不動産の所有権を信託銀行に移転したうえで、同日付で本件不動産に信託

受益権を設定するとともに、当該受益権を上記相手先へ譲渡するものです。

② 譲渡の相手先の概要

 譲渡の相手先は、第一生命等が出資する国内法人1社ですが、相手先の了解が得られないため、詳細の公表を控えさせていただきます。なお、当社と当該会社との間には資本関係、人的関係、取引関係および関連当事者として特筆すべき事項はありません。

③ 譲渡の日程

2023年3月31日に引き渡しを実施しました。

 

 (3) 小田急センチュリービルおよびホテル小田急株式の譲渡

 詳細は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等〔注記事項〕(追加情報)(固定資産および子会社株式の譲渡)」に記載のとおりです。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、グループ経営理念および経営ビジョンを踏まえて選定した6つのマテリアリ

ティ(重要テーマ)を経営の中心に据え、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を目指していま

す。

なかでも、社員が自由に提案できる公募制度「climbers(クライマーズ)」では、社会課題起点で顧客と社会に新しい価値を提供する事業の立ち上げを推進しています。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は269百万円です。