第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社は、2023年5月26日に「中期経営計画(2023~2025年度)」を策定・開示しており、以下の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、当該「中期経営計画(2023~2025年度)」に基づき記載しております。したがって、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在ではなく、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、理念体系にある経営理念、ビジョン、行動指針に基づき、新しい価値創造へのこだわりと挑戦を続けるとともに、お客様の期待に応える商品やサービスの提供をはじめとして、ステークホルダーとの約束を実現することを事業運営における基本方針としています。当社グループは、経営理念、ビジョン、行動指針の実践を通じて、社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出しグローバルトップのソリューションパートナーを目指してまいります。


 

(2) 経営環境

当社グループの各報告セグメントの経営環境についての認識は、次のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

当社の顧客である流通小売業においては、消費者の行動変化によるネットショッピングや決済手段の多様化への対応、生産性向上のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)対応、人手不足に対する省人化等に加え、廃棄ロス削減、販売機会ロス削減等の多様な社会課題を解決するソリューションが求められています。

当事業においては、国内外に幅広く顧客基盤及び販売網を有し事業を展開しておりますが、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境にあります。
 

(ワークプレイスソリューション事業)

新型コロナウイルス感染拡大によって始まった働き方の変化により、主力商品であるオフィス向け複合機の販売や保守サービスに影響がありましたが、経済対策等の効果により、販売は段階的に回復しています。

当事業においては、国内外に幅広く販売網を有しておりますが、需要の鈍化や競合他社との競争激化が続くなど厳しい事業環境にあります。
 

 

(3) 中長期的な経営戦略と目標

上記の経営環境下において、当社グループは、2023年5月26日に策定した「中期経営計画(2023~2025年度)」の基本戦略のとおり、グローバルトップのソリューションパートナーを目指し、事業転換と企業変革を実行し、社会課題解決へ貢献してまいります。具体的施策は、以下のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

流通業界における省人化ニーズへの高まり、DXの推進及び多様な社会課題等の事業環境の変化は、当社グループが社会に貢献できる大きな事業機会に繋がっています。これらの事業機会に対して、圧倒的なグローバル顧客基盤を活用した「マーケットイン発想」の事業構想と実行及び「業界トップのグローバルプレイヤーならではの充実した戦略的パートナーシップ」により、当社ならではの高収益新規事業拡大を加速し、収益性の向上を図ります。

・グローバル連携によるデジタル人財強化

多様化するDXソリューションの要望に迅速に対応していくため、2022年に米国テキサス州ダラス近郊に開設したInnovation & Incubation hubを中心に、グローバル連携によるデジタル人財強化を図ります。これにより、日米でのシームレスな開発体制を構築します。

・グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」によるソリューションビジネスの拡大

クラウド環境でのデータ一元化と制御が可能な「ELERA」の構築により、購買データの収集とそのデータを活用したマイクロサービスを展開し、パートナーとともにエコシステムを形成することで、店舗変革の加速を実現してまいります。

・顧客の課題を解決するソリューションパートナー

データを利活用してソリューションを提案する提案型ビジネスへの転換を図るとともに、当社グループが持つ強固な顧客基盤及び店舗を起点に、顧客の現場の課題を解決するソリューションパートナーを目指してまいります。特に、変化の激しい市場に対応すべく、パートナー企業との共創により、新規事業の拡大に注力してまいります。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

2020年に実施した構造改革により、強靭でスリムなグローバル・オペレーション体制を構築し、収益性の改善に邁進しています。「中期経営計画(2023~2025年度)」の期間においては、㈱リコーとの複合機等の開発・生産を担う合弁会社組成により高付加価値商品ラインナップの拡充を図るとともに、協業により成長領域への集中と提供価値の変革を加速させます。

・㈱リコーとの合弁会社組成

オフィス向けプリンティング機器の開発・生産に関する両社の技術的な強みを持ち寄り、企画・設計開発機能の拡充を図ります。また、部品や材料の共同購買や生産拠点の相互活用を進めるとともに、地政学リスクの高まりに柔軟に対応するレジリエントなサプライチェーンの構築を進め、より一層強いものづくりの実現を目指します。

合弁会社の組成により両社の保有するリソースをイノベーションの領域や個々の差異化領域により注力できるようにシフトし、競争力を高めて事業基盤の強化を図ります。さらに、東芝テックが持つバーコードプリンタやRFID等を活用した自動認識技術と、リコーが持つカメラやプロジェクター等の光学・画像処理技術を融合し、顧客のDXを支援する新たなソリューションの共同企画・開発に取り組みます。

 

当社グループは、「中期経営計画(2023~2025年度)」において、当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、営業利益、営業利益率(ROS)、親会社株主に帰属する当期純利益、営業活動によるキャッシュ・フロー、投下資本利益率(ROIC)を掲げており、最終年度である2025年度に、売上高は5,200億円、営業利益は390億円、営業利益率(ROS)は7.5%、親会社株主に帰属する当期純利益は210億円、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス530億円、投下資本利益率(ROIC)は17.5%を達成することを目標として定めております。なお、当該目標値は、当社が有価証券報告書提出日現在において入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上記の経営方針及び経営戦略を実行するに当たっては、各事業におけるバランスある利益の実現と長期的収益体制の構築が必要であり、その実現のために当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、次の重要施策の実行を加速することであると認識しております。

・新規事業拡大の加速

リテールイノベーションへの積極投資として、購買体験・店舗の変革需要の高まりを支援するための投資拡大を実施します。

新規事業拡大の加速を支える4つの取り組みとして、デジタル人財強化、「ELERA」の進化、共創の場の充実、パートナー連携強化を実施します。

・高付加価値ビジネスへの移行

リテールソリューション事業において、より付加価値の高いソリューションサービスへのシフトを進めることにより、収益性の拡大を目指します。

・グローバルリテールソリューション事業の競争力強化

保守サービスの拡大、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」を軸としたソリューションビジネスの拡大を通して、既存顧客の維持及び新規顧客の獲得、さらに収益性の高いリカーリングモデルにシフトしてまいります。

・ワークプレイスソリューション事業の収益性回復

㈱リコーとの合弁会社組成により強靭でスリムなオペレーション体制の構築を進めるとともに、ソリューションの競争力を高めることで更なる収益性向上を目指します。

 

また、上記の重要施策に加え、外部環境の変化による経営への影響を低減するため、これまで実施した構造改革の効果を継続的に維持することに加え、更なる業務の効率化や間接経費のコントロール、製造原価改善等のコスト削減施策とともに、市場動向を踏まえた売上拡大施策を実施いたします。

 

 

(5) 次期の見通し

今後の世界経済は、各国における経済対策等の効果により景気は緩やかに回復していくとみられるものの、海外における金融引締め、原材料価格の高騰、長期化するロシア・ウクライナ問題等の影響により、景気は先行き不透明な状況が続くものと予想されます。

このような状況下におきまして、当社グループは、「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」の基本方針の下で、持続的な成長の実現に向けて、各種施策の実行にグループ一丸となって取り組む所存でございます。

具体的には、当社のフィジカルアセットであるグローバルな顧客基盤と営業・保守網を活かし、パートナーとの共創によりエコシステムを構築し付加価値の高いソリューションの提案を進めることで、社会課題の解決に貢献するとともに、企業価値向上を目指してまいります。

 

2023年度(第99期)における各報告セグメントの主要施策は、以下のとおりでございます。

 

(リテールソリューション事業)

主力商品である国内及び海外市場向けPOSシステム、国内市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品の拡販と、DXの推進によるトータルソリューションの提供に向けて、当社グループにおけるグローバルリソースの連携強化を加速してまいります。具体的には、パートナーとの共創及びグローバルな開発体制強化によるソリューション開発の加速、地域に即した営業・マーケティングの展開、リカーリングビジネスの強化、販売サービス網の最適化等、それぞれの施策におけるグローバル連携を強化し、収益力の向上、新規事業領域の拡大及び新規顧客の獲得を図ってまいります。更に、Innovation & Incubation hubを活用し、高いIT技術を持つソリューションパートナーの発掘や新規ソリューションの開発、そして未来技術の創出を目指してまいります。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

主力商品である国内及び海外市場向け複合機、海外市場向けオートIDシステム、国内及び海外市場向けインクジェットヘッド、並びにそれらの関連商品の拡販と、幅広い商品群を活かしたトータルソリューションの提供を行ってまいります。また、戦略的新商品の開発・投入、地域に即した営業・マーケティングの展開、販売サービス網の最適化、新興国事業の強化を行います。それらにより、強靭でスリムなグローバル・オペレーション体制を構築し、収益体質の強化に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、持続的成長と企業価値向上を実現し、社会課題の解決に貢献するため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

当社グループでは、全社的なリスク管理は、半期に1回の頻度で開催されるリスク・コンプライアンス委員会において行っておりますが、サステナビリティに関するリスク及び機会の識別、評価、優先順位付けについては、代表取締役社長が議長を務める経営会議の中でより詳細な検討を行い、共有しております。

サステナビリティに関する重要な課題、特に当社グループの経営に影響を及ぼすリスク及び機会に係る重要な課題については、経営会議において対応方針及び実行計画等が協議・決議されるとともに、取締役会にも報告されます。

取締役会は、サステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、経営会議で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての討議・監督を行っております。また、取締役会において討議された対応方針及び実行計画等は、当社グループの経営戦略に反映されるとともに、経営会議においてその進捗管理が行われ、定期的に取締役会にも報告されております。

なお、気候変動を含む環境関連の課題への対応方針や実行計画等については、経営会議での協議・決議に先立ち、代表取締役社長が責任者である「地球環境会議」で議論されております。本会議は半期に1回の頻度で開催され、各事業部門の環境経営責任者、環境推進責任者、コーポレートスタッフ部門長及び環境戦略室が参画しております。

 

(2) 戦略並びに指標及び目標

当社グループは、理念体系に基づき、サステナビリティに関する基本方針を定めており、その内容は次のとおりであります。

 

東芝テックグループ サステナビリティ基本方針

東芝テックグループは、「ともにつくる、つぎをつくる。~いつでもどこでもお客様とともに~」という経営理念に基づき、社会の一員として持続可能な社会の実現を目指します。

この社会の実現のために、私たちは事業活動において環境への配慮を優先し、高い倫理観と遵法の精神をもち、各国及び地域社会に対する責任を果たすと共にその文化・歴史を尊重します。

また、お客様にとっての価値創造を原点に発想し、積極的な投資に努め、透明性の高い経営により持続的な企業価値の向上を目指します。

 

当社グループは、上記の基本方針の下でサステナビリティ経営の推進を図るべく、上記(1)のガバナンス及びリスク管理を通して、環境・社会・ガバナンスの3つの視点からなる10項目の重要課題(マテリアリティ)を特定するとともに、各マテリアリティに対するKPI(Key Performance Indicator)並びに各KPIの数値目標及び目標達成のための施策を設定しております。

<マテリアリティ>

環 境

社 会

ガバナンス

・気候変動への対応

・循環経済への対応

・生態系への配慮

・人材の確保・維持・育成

・従業員の安全健康

・人権の尊重

・持続可能な調達活動の推進

・イノベーション創出のための

研究開発の強化

・ガバナンスの強化

・サイバーレジリエンスの強化

 

 

上記に加え、気候変動への対応、人権の尊重、人的資本(人材の多様性を含む)に関しては、以下のとおり戦略並びに指標及び目標を定めております。

①気候変動への対応

当社グループは、当社グループの事業に関わる気候変動関連のリスク及び機会を把握するためのシナリオ分析を実施しており、シナリオ分析で特定・評価されたリスク及び機会への対応策については、今後の事業戦略に活かしてまいります。

また、当社グループは、カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度の目標(対2019年度比較)を以下のとおり定めております。

・当社グループの事業活動による温室効果ガス排出量を100%削減

(注)カーボン・クレジットの購入を含めた目標、カーボン・クレジットの購入を除いた場合の目標は97%削減に設定

・当社グループが販売する製品・サービスの電力使用による温室効果ガス排出量を14%削減

また、当社グループは、東芝グループ「環境未来ビジョン2050」に基づき、「気候変動への対応」「循環経済への対応」「生態系への配慮」と「環境基盤活動」の分野からなる2021年度から2023年度を活動期間とする「第7次環境アクションプラン」を策定し、年度ごとの目標値を設けて活動を推進しております。

 

②人権の尊重

当社グループは、人権に対する姿勢や取り組みをより明確化するため、理念体系及びサステナビリティ基本方針を補完する位置付けとして「東芝テックグループ人権方針」を定め、当社ウェブサイトで公表するとともに、国内及び海外の子会社を含む全ての従業員に周知しております。

また、当社グループは、事業展開する業界や国のバリューチェーンにおける人権リスクを特定し、事業領域ごとの人権リスクの把握も行っております。今後、特定されたリスクに対する改善・救済活動と、継続的な人権リスクの特定、評価及び改善・救済活動を推進してまいります。

 

③人的資本(人材の多様性を含む)

1) 人財育成

当社グループは、「社員一人ひとりを尊重し、それぞれの能力向上に努め、公正かつ適切な評価・処遇を実践する」ことを経営理念に掲げ、会社の成長・発展のために「挑戦し続ける強いプロ集団」を形成する競争力に優れた有能な人財を、計画的に確保・育成し続けることを目指しております。そのために、研修制度・教育体系、キャリア形成支援制度、社外留職(レンタル移籍)制度といった各種制度を設けるとともに、公正な人事諸制度を構築することで、多様な従業員がそれぞれの能力を発揮して活躍できる環境を整えております。

 

2) ダイバーシティマネジメントの推進

当社グループは、性別・年齢・国籍等に捉われることなく、キャリア採用者を含めた多様な人財を活かすことが、イノベーションの創出と市場変化や想定外課題へ応変する力の涵養、更にはグローバル競争力を高めることにつながると考え、多様な人財の確保・活用に努めております。

そのため、当社は、女性役職者比率、新卒女性採用比率、男性育児休業等取得率の将来目標を掲げ、その達成を目指すとともに、留学生採用、海外の大学を卒業する学生を採用するグローバル採用、キャリア採用を積極的に実施するなど、多様な人財の確保・活用に取り組んでおります。

<多様性確保の状況>(2023年3月末実績)

・女性役職者比率   :3.1%

・新卒女性採用比率  :23.8%

・男性育児休業等取得率:24.0%

・外国籍従業員    :23名(2023年4月)

・キャリア採用者   :40名(2022年度)

<2025年度目標>

・女性役職者比率   :7%

・新卒女性採用比率  :30%

・男性育児休業等取得率:前年度以上

(注)上記の指標に関するデータ管理及び具体的な取り組みは、当社では行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていません。このため、上記の指標に関する実績及び目標は、当社グループにおいて主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

また、当社グループは、ダイバーシティ経営を経営戦略の根幹と捉え、経営幹部のコミットメントの下、人財戦略ビジョン『全ての事業領域で、顧客価値の創造に資する人財と組織力があり、一人ひとりがプロとして「互いを尊敬し」強い「信頼関係」で結ばれている』の実現に向けて、「働き方改革の実現で創造性・生産性向上」、「成長と変化を生み出す多様な自律人財の活躍」、「ともにつぎを目指せる働きがいある組織風土の醸成」を進めております。そのための具体的な取り組みとして、女性活躍推進、女性比率向上に向けた採用活動、外国籍従業員の採用・活躍推進、障がい者雇用推進、ワーク・スタイル・イノベーション、シニア活躍推進といった各種施策を実施しております。

 

なお、戦略並びに指標及び目標に関する詳細な情報については、下記の当社ウェブサイトに掲載している「統合報告書 2022」をご参照下さい。また、2023年8月には、最新の情報を記載した「統合報告書 2023」を下記ウェブサイトに掲載する予定ですので、併せてご参照下さい。

https://www.toshibatec.co.jp/company/csr/report/

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している特に重要なリスク及びその他の主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、万全なリスク管理体制により、このようなリスクの発生を回避するとともに、事業継続計画(BCP)の整備等により、リスク発生時における影響の極小化に最大限努めてまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、原則として、当連結会計年度末現在において当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1) 物流費高騰影響

新型コロナウイルス等の影響に伴い、世界的な原油高騰及び港湾の混雑・港湾労働者の不足・海上輸送リードタイムの長期化等の影響により、当社グループも輸送費上昇等の影響を受けました。

当社グループは、これらに対する諸施策を実施し、今後、その影響は低減する見通しでありますが、供給制約が想定を超えて悪化した場合には、当社グループの経営に影響を及ぼすリスクがあります。

対策として、海上輸送スペースの年間契約レートでの優先確保や早期予約、輸送ルート変更による荷揚げ港の一部シフト並びに航空輸送抑制等、適時対策を進め、輸送費用の抑制・削減、輸送リードタイムの短縮に取り組んでまいります。

 

(2) リテールソリューションの事業環境

当事業における市場の状況は、顧客である大手流通小売業において、店舗運営効率化や顧客の購入形態の多様化、新型コロナウイルス感染拡大の影響による販売形態の変化等に伴い、セルフレジをはじめとする店舗従業員との接触を抑えた形のチェックアウト機器や、ソフトウェア及びサービス分野への投資比重が増えております。このような市場構造の変化により、従来型のハードウェアPOSへの投資優先度が低下傾向にあることや、独立系ソフトウェアメーカー及び大手ソリューションベンダーとの競合が厳しくなることから、当社製品の販売に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、当該リスクを最小限に抑えるべく、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」の市場投入等により、収益の改善を目指してまいります。なお、具体的な施策等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

(3) ワークプレイスソリューションの事業環境

当事業は、コロナ禍以降の働き方の変化によりコア事業であるオフィス領域での需要減少傾向が継続するリスクがあります。当該リスクが顕在化した場合には、複合機の販売台数の減少や保守サービスの売上減少等により、当事業の収益が悪化する可能性があります。

また、当事業の主力製品である複合機は、主に海外の1製造拠点において生産されており、政治・経済情勢の変化、電力供給等のインフラ環境悪化または社会問題等により、当該拠点での生産が縮小または中断された場合には、在庫の確保が困難となり、販売・保守サービスの売上減少に繋がる可能性があります。

当社グループは、当該リスクを最小限に抑えるべく、㈱リコーとの合弁会社組成により新たなソリューションの共同企画・開発につとめるとともに、地政学リスクの高まりに柔軟に対応するレジリエントなサプライチェーンの構築を進めてまいります。なお、具体的な施策等については、「第2 事業の状況1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

 

(その他の主要なリスク)

(1) 新事業開拓・新商品開発

当社グループは、先端的なエレクトロニクス技術、システム・ソフト技術等を活用して顧客ニーズに応えてまいりました。引き続き、新たな事業の形成に至る新技術や、各国の環境保護規制に対応する新技術等、積極的に新事業開発や新商品開発への対応に努めてまいりますが、これらに関しては不確実要素も多々あり、想定外の事項の発生が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 世界情勢

当社グループは、グローバルに事業を展開していますが、各地域の政治・経済情勢の変化や各種の規制、急激な為替レートの変動等が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 大規模災害等

当社グループは、グローバルに販売・サービス、生産・調達拠点を有しておりますが、それぞれの地域において大規模災害、テロ、感染症等が発生した場合、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) グローバル生産体制

当社グループは、コスト競争力を確保し、為替リスク等に対応するために、海外生産を強化しております。日本、中国、シンガポール、マレーシア及び米国等、地域的に分散したリスク対応も図っておりますが、中国での生産規模が当社海外生産高の半数程度を占めるため、人民元の切り上げ等の為替変動、政治・経済情勢、電力供給等のインフラ環境及び社会問題、感染症の発生等が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備えるために、あらゆる視点からグローバル生産体制の検討を実施しております。

 

(5) 品質問題

当社グループは、製品の設計・部品調達・製造・試験・検査等全ての部門で品質及び安全性の検証体制を構築し、最新・最良の技術で優れた商品を提供することに注力しています。また、保守を伴う事業を展開しており、点検等により製品の品質と安全にかかわる大きな問題発生を未然に防ぐ努力をしております。しかしながら、システム・ソフト対応の増大及び製品機能の高度化に伴う不確実要因等、開発・製造・保守サービスの一連のプロセスにおいて、想定外の品質問題発生もあり得るため、これらが当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) コンプライアンス・内部統制関係

当社グループは、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に係る法令等の遵守並びに資産の保全という観点から内部統制システムの充実に努めております。コンプライアンスについては、グループ共通の行動規範として「グループ行動基準」を制定し、社員一人ひとりがこの行動基準を遵守し、法令・社会規範・倫理に則した行動を行うよう、周知徹底に取り組んでおります。また、「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、この委員会の統括下でコンプライアンスの徹底にグループ一体となって取り組んでおります。

しかしながら、コンプライアンスを始めとした内部統制システムには一定の限界があるため、その目的の達成を完全に保証するものではありません。このため、将来において法令違反等が生じた場合は、当社グループ業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 情報セキュリティ

当社グループは、技術情報、営業情報、個人情報、会社の経営に関する情報等、事業遂行に関連する多数の情報を有しております。当社グループは、関連法令を遵守し、情報の漏洩防止に万全を期すために、情報の管理体制や適切な取り扱い方法等を定めた各種社内規程を制定するとともに、社員教育、情報管理施策を継続して実行するなど、情報保護の徹底に努めております。また、サイバーセキュリティリスクへの対応強化策として、製品面、情報セキュリティ面各々につき、専門チームを設置しております。

しかしながら、予期せぬ事態により情報が流出し、第三者がこれを不正に取得、使用する可能性があり、このような事態が生じた場合、この対応のために生じる多額の費用負担や企業の信頼低下が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業活動において情報システムの役割は極めて重要であり、当社グループは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、コンピュータウイルス、サイバー攻撃、ソフトウェアまたはハードウェアの障害、災害、テロ等により情報システムが機能しなくなる可能性が皆無ではありません。

 

(8) 退職給付債務等

当社グループは、退職給付債務については優良社債の利回りを考慮して計算しておりますが、社債利回りが現在の水準より低下する場合、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、年金資産は、企業年金設計上、相応の運用収益を期待して運用しておりますが、諸因により運用実績が悪化する場合は、当社グループ業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、従業員の定年後のライフプラン支援及び退職給付の多様なニーズへの対応を目的として、当社を含む国内グループ会社を対象に2015年10月1日から順次東芝グループ企業型確定拠出年金制度に加入いたしました。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(1) 経営成績
 ① 事業全体の状況

当連結会計年度の世界経済は、各国における新型コロナウイルス感染防止対策と経済活動の両立が進み、景気回復に向けた環境が整いつつありましたが、急激な物価上昇、原材料価格の高騰及び供給制約に加え、海外における金融引締めの加速や、ロシア・ウクライナ問題等の影響もあって、景気は依然として先行き不透明な状況が続きました。

このような状況下で、当社グループは、中期経営計画(2022~2024年度)の基本方針「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」の下で、社業の発展に向けた各種施策の実行に鋭意注力するとともに、店舗・オフィス・物流・製造各領域の課題解決に貢献するソリューションパートナーとして、お客様とともに、SDGs(Sustainable Development Goals)達成に向けた取り組みを推進し、持続可能な社会への貢献に努めてまいりました。

売上高については、海外市場向けPOSシステム及び海外市場向け複合機の売上が為替の影響や米州での伸長等により増加したことなどから、5,107億67百万円(前連結会計年度比15%増)となりました。なお、売上高の前連結会計年度からの増加額654億50百万円の内、為替の影響による増加額は約492億円であります。損益については、部品及び国際貨物輸送の需給逼迫・価格高騰の影響等はあったものの、複合機の損益が改善したことなどから、営業利益は160億78百万円(前連結会計年度比39%増)、経常利益は131億49百万円(前連結会計年度比29%増)となりましたが、特許係争事案に関する「訴訟損失費用」を特別損失に計上したこと及び繰延税金資産の一部取り崩しを行ったことなどから、親会社株主に帰属する当期純損失は、137億45百万円(前連結会計年度は53億81百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

 ② 各報告セグメントの状況

(リテールソリューション事業)

国内及び海外市場向けPOSシステム、国内市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品等を取り扱っているリテールソリューション事業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響や、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境の中で、「流通業界でグローバルトップのソリューションパートナーに」を目指して、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」及び戦略的パートナーシップによるソリューションビジネスの拡大、成長領域(データサービス・次世代店舗・決済・SCM)への集中投資、海外市場におけるサービス事業の拡大等に取り組んでまいりました。

国内市場向けPOSシステムは、小売業・飲食業等の投資意欲が回復傾向にあるものの、部品の供給制約、物価上昇等の影響により依然として厳しい状況が続いたことから、売上は減少しましたが、新型コロナウイルス対策を意識して、決済端末、セルフオーダーシステム、スマートレシート等の拡販に注力するとともに、販売価格の改定にも取り組んだことから、売上に回復の兆しが見えました。

海外市場向けPOSシステムは、為替の影響や、米州で販売が増加したことなどにより、売上は増加いたしました。

国内市場向けオートIDシステムは、特定顧客向けを中心にバーコードプリンタの販売が増加したことなどから、売上は増加いたしました。

この結果、リテールソリューション事業の売上高は、2,969億51百万円(前連結会計年度比11%増)となりました。また、同事業の営業利益は、円安に伴うコスト上昇及び部品の需給逼迫・価格高騰といったマイナス影響により国内市場向けPOSシステムの損益が悪化したことから、91億96百万円(前連結会計年度比13%減)となりました。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

国内及び海外市場向け複合機、海外市場向けオートIDシステム、国内及び海外市場向けインクジェットヘッド、並びにそれらの関連商品等を取り扱っているワークプレイスソリューション事業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響や、部品及び国際貨物輸送の需給逼迫・価格高騰、ポストコロナの働き方改革・オフィスのDX推進による印刷量の減少、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境の中で、「市況変動への対応力強化」に同時に「事業全体での体質強化」を進め、強靭でスリムなグローバル・オペレーション体制を構築し、目標達成により目標達成に向け注力するとともに、成長領域での事業拡大に向けて、DMS(Document Management System)をはじめとしたソリューション、オートID事業、クラウドサービスの強化等に取り組んでまいりました。

複合機は、部品不足の影響は改善されましたが、国際貨物輸送の需給逼迫の影響による製品供給不足が続く中で、輸送手段・経路の変更や販売価格の改定施策等に注力したことにより、米州、欧州、アジア等の海外地域で販売が堅調であったことに加え、為替の影響もあって、売上は増加いたしました。

海外市場向けオートIDシステムは、米州、欧州、アジア等の各地域で販売が増加したことや、為替の影響により、売上は増加いたしました。

インクジェットヘッドは、海外顧客向けの販売が増加したものの、国内顧客向けの販売が減少したことから、売上は減少いたしました。

この結果、ワークプレイスソリューション事業の売上高は、2,176億72百万円(前連結会計年度比20%増)となりました。また、同事業の営業利益は、部品及び国際貨物輸送の需給逼迫・価格高騰の影響が改善しつつあることに加え、製品供給量の回復や販売価格の改定等に伴う売上高の増加や徹底した固定費削減等により、68億82百万円(前連結会計年度比59億24百万円増)と大幅増益を達成いたしました。

(注)オートIDシステムとは、ハード・ソフトを含む機器により、自動的にバーコード、ICタグ等のデータを取り込み、内容を識別・管理するシステムをいいます。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 ① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

リテールソリューション

66,952

3.3

ワークプレイスソリューション

119,793

21.1

合計

186,746

14.1

 

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 2.金額は、販売価格によっております。

 

 ② 受注実績
当連結会計年度におけるリテールソリューション事業の国内ストア・オートメーション向け「個別ユーザー対応物件」分野の受注状況は、次のとおりであります。
なお、他の分野においては、当社と販売会社との間で行う需給予測を考慮した見込生産を主体としているため、記載を省略しております。

区分

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

(リテールソリューション)
個別ユーザー対応物件

58,199

△13.9

9,295

5.2

 

 (注)金額は、販売価格によっております。

 

 ③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

リテールソリューション

296,915

11.3

ワークプレイスソリューション

213,851

19.8

合計

510,767

14.7

 

 (注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(3) 財政状態

当連結会計年度における資産は、前連結会計年度に比べ4億36百万円増加し、3,106億92百万円となりました。これは、流動資産の「グループ預け金」が69億36百万円、投資その他の資産の「繰延税金資産」が68億72百万円減少しましたが、流動資産の「現金及び預金」が40億42百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」が34億47百万円、「商品及び製品」が28億10百万円、「その他」が48億10百万円増加したことなどによります。

負債は、前連結会計年度に比べ158億92百万円増加し、2,084億86百万円となりました。これは、流動負債の「未払金」が55億81百万円、「未払法人税等」が23億31百万円、「前受収益」が21億29百万円、「その他」が15億57百万円、固定負債の「その他」が29億84百万円増加したことなどによります。

純資産は、前連結会計年度に比べ154億56百万円減少し、1,022億6百万円となりました。これは主に、「為替換算調整勘定」が23億12百万円増加しましたが、「利益剰余金」が親会社株主に帰属する当期純損失により137億45百万円、配当金の支払いにより22億13百万円、「退職給付に係る調整累計額」が25億19百万円減少したことなどによります。

 

(4) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度と比べ28億94百万円減少438億15百万円となりました。

なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは29億89百万円の収入となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動については、税金等調整前当期純利益が47億10百万円であり、法人税等の支払額62億51百万円となりましたが、減価償却費167億55百万円となったことなどから、151億6百万円の収入(前連結会計年度は100億37百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動については、有形固定資産並びに無形固定資産の取得による支出、投資有価証券の取得による支出などにより、121億17百万円の支出(前連結会計年度は141億84百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動については、ファイナンス・リース債務の返済や配当金の支払いなどにより、81億3百万円の支出(前連結会計年度は54億96百万円の支出)となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 

当社グループの運転資金は、主に製品製造に係る原材料や部材の調達のほか、製造費、販売費及び一般管理費等に計上される財・サービスに費消しております。設備投資資金は、有形固定資産や無形固定資産の取得、投資等に費消しております。

これらの必要資金は、当社グループ内の内部留保による確保、及び資産の圧縮や資産効率の向上により創出される自己資金を基本として流動性を確保しつつ、必要に応じて金融機関等からの資金調達を実施してまいります。

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因や当該事項への対応並びに新型コロナウイルス感染拡大の影響については、上記「(1) 経営成績」から「(4) キャッシュ・フロー」まで、並びに「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しているとおりであります。

当社グループは、2023年5月26日に策定した「中期経営計画(2023~2025年度)」において、最終年度である2025年度に、売上高は5,200億円、営業利益は390億円、営業利益率(ROS)は7.5%、親会社株主に帰属する当期純利益は210億円、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス530億円、投下資本利益率(ROIC)は17.5%を達成することを目標として定めております。

 

当連結会計年度においては、売上高は5,107億67百万円、営業利益は160億78百万円、営業利益率(ROS)は3.1%、親会社株主に帰属する当期純損失は137億45百万円、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス151億6百万円、投下資本利益率(ROIC)は8.2%となりました。

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計処理基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、より重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

① 債権の回収可能性

当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権の貸倒に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

  ② 棚卸資産の評価減

当社グループは、商品、製品及び半製品は先入先出法による原価法(連結貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切下げの方法により算定)、仕掛品及び原材料は移動平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切下げの方法により算定)、貯蔵品は最終仕入原価法を採用しております。回収可能価額の評価を行うに当たっては、商品、製品及び半製品について正味売却価額に基づき収益性の低下を検討しております。将来における実際の需要または市況が見積りより悪化した場合には、追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

 ③ 固定資産の減損判定

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候があるかどうかの判定を実施し、減損の兆候があった場合、資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定に用いられる割引前将来キャッシュ・フローでの見積り及び仮定について将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。

 

④ 投資有価証券の減損判定

当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関等の株式を保有しています。これらの株式には市場価格のない株式等以外のものである上場会社の株式と市場価格のない株式等である非上場会社の株式が含まれます。当社グループは、市場価格のない株式以外のものの株式の減損処理にあたっては、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、市場価格のない株式等である非上場株式の減損処理にあたっては、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、追加の減損損失が発生する可能性があります。

 

 

 ⑤ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。

収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

 ⑥ 退職給付債務の算定

当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、長期期待運用収益率、昇給率等の様々な計算基礎があります。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 和解契約

当社及び国内子会社1社は、セミセルフレジに関する特許権に関連して、㈱寺岡精工から訴訟の提起及び仮処分命令の申立てを受けておりましたが、2022年11月30日に和解により解決いたしました。この和解契約の主な内容は以下のとおりです。

(和解契約の主な内容)

和解は、当社が㈱寺岡精工に対して、解決金として69億00百万円を支払うこと、当社が2024年5月以降、当社が提供してきたセミセルフPOSシステム(下記(注)参照。以下「所定のセミセルフPOSシステム」という。)の販売を終了すること、販売終了までの一定期間に限り㈱寺岡精工から特許等につき有償のライセンスを受け、所定のセミセルフPOSシステムを販売すること、㈱寺岡精工が東京地方裁判所に提起した特許権侵害訴訟及び仮処分命令の申立てを取り下げること、及び当社が東京地方裁判所に提起した仮処分命令の申立てを取り下げることを主な内容としております。

(注)店員が消費者の購入商品の登録を登録機で行い、複数の会計機のうちから店員によって選択された会計機で消費者が会計を行うセミセルフPOSシステムであって、消費者が会計に使用する会計機と登録機の間の商品登録データの転送につき、当社POSソフトウェアPrimeStore Rev.1~34と同じ方式をとるもの。

 

(2) 事業統合契約及び株主間契約

㈱リコーと当社は、2023年5月19日、会社分割等により複合機等の開発・生産に関する事業を統合(以下「本事業統合」という。)するに当たっての諸条件を定めた事業統合契約及び本事業統合に係る株主間契約を締結することを両社の取締役会で決議し、同日に、これらの契約を締結いたしました。

本事業統合の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照下さい。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、お客様にとっての価値創造を原点に発想し、世界のベストパートナーとともに、優れた独自技術により、確かな品質・性能と高い利便性をもつ商品・サービスをタイムリーに提供することを基本理念として、グループ各社の研究部門及び開発設計部門とが密接に連携しながら先行技術開発、要素技術開発、製品開発に鋭意取り組んでおります。

当連結会計年度の研究開発費の総額は24,531百万円であり、各報告セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

当事業分野では、「流通業界でグローバルトップのソリューションパートナーを目指す」という経営方針のもと、戦略パートナーとの共創によるサブスクリプションモデルのグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」を国内・海外共同で研究開発しています。また、これ以外にもPOSシステム、オーダーシステム、画像スキャナ等の研究開発を行っております。主な研究開発の成果は以下のとおりであり、研究開発費は13,842百万円となりました。

・セルフレジ「SS-NEX」シリーズの発売

消費者自身で商品の登録から支払いまでを行う、セルフレジ「SS-NEX」シリーズを開発し、キャッシュレス会計専用セルフレジを2022年9月、現金決済・キャッシュレス会計とも対応可能なセルフレジを2022年12月に発売しました。本機は、従来機同様のスキャナにサブスキャナを加えることでバーコードスキャンの読み取り率を向上させるとともに、袋詰めスペースを見直すことにより、商品登録から袋詰めをするまでの作業負担を軽減しました。

・新型多機能決済端末「CT-6100」シリーズの発売

新型多機能決済端末「CT-6100」シリーズを2022年12月に発売しました。従来機「CT-5100」の豊富な機能・操作性・当社製POSシステムとの親和性等の特長を踏襲しつつ、さらにピンパッドと非接触リーダライタを一体型にしました。磁気カード・接触IC・タッチ決済・電子マネー・バーコードの読み取りが1台で行えるため、レジ周りの省スペース化を実現しました。

フードコート向けモバイルオーダーシステム「SkipOrder(スキップオーダー)」の発売

フードコートなど複数テナントで運営している施設向けに、複数テナントまとめて注文、決済ができるモバイルオーダーシステム「SkipOrder(スキップオーダー)」を2022年6月に発売しました。消費者がスマートフォンで注文、決済を行うことで、テナントは接客対応の負担が軽減されるとともに、呼びベルの管理も不要になりました。

生鮮画像認識アプリケーション「ELERA™ Produce Recognition」の発売

北米向けに、コンピュータビジョンとAIを活用し、バーコードのない商品(青果物等)を簡単に登録できるアプリケーション「ELERA™ Produce Recognition」を2022年7月に発売しました。画像認識AIを搭載したセルフレジにより、取引時間を短縮し、商品の誤認に関連する損失を削減します。生鮮食品の登録プロセスを自動化することにより、買い物客の利便性を向上させ、セルフレジの採用を促進します。

・次世代POSアプリケーション「ELERA™ Point-of-Sale」の発売

北米専門店向けPOSアプリケーション「ELERA™ Point-of-Sale」を2022年5月に発売しました。マイクロサービスアーキテクチャの採用により、新しいユースケースの迅速な開発を可能にします。またツールの提供により、お客様自身でも必要な機能を開発できるようになり、よりスピーディなビジネス展開を実現します。

 

  (ワークプレイスソリューション事業)

当事業分野では、デジタル複合機、オートIDシステム、プリンタ等の電子写真技術、光学設計技術、原稿送り機構技術、プリントコントローラ技術、画像形成技術、クラウド関連技術、インクジェットヘッド技術等の研究開発を行っています。主な研究開発の成果は以下のとおりであり、研究開発費は10,688百万円となりました。

高速レンジA3サイズ複合機e-STUDIOシリーズの開発

  高速レンジA3サイズフル機能複合機e-STUDIOシリーズを開発し、2023年度に発売します。新シリーズでは、モノクロ機は複写/プリント速度を最大で毎分90ページへ高速化し、カラー機は人感センサー採用により省電力モードからの復帰時間短縮が可能となります。また、新シリーズの全機種で、重送検知機能付き自動両面原稿読取装置や外付け大容量給紙装置の容量増加等の基本性能向上に加え、故障予測機能の追加、セキュリティ強化を行います。

 

・A3サイズ複合機e-STUDIOシリーズへの新機能搭載とクラウドストレージサービス連携

  テレワーク、モバイルワークが浸透し、クラウドを利用したサービスを活用する機会が増える中、FAX受信文書を自宅・外出先から確認したいというお客様の要望に応えるため、2022年に発売したA3サイズ複合機e-STUDIOシリーズに対し、受信したFAXをデータ化した際に、発信電話番号ごとに振分けて保存する機能、及び当社クラウドストレージサービス「Collastorage(コラストレージ)」と連携させるオプションを開発し、2023年2月に発売しました。

複合機e-STUDIOシリーズ用の音声操作ナビゲーション機能を開発

  音声による操作ナビゲーションとシンプルなパネル操作指示により、視覚に頼らずデジタル複合機の操作を可能にするアプリケーション「e-BRIDGE Plus for Voice Guidance」を開発しました。視覚障がい者が一般的に使用している機器の使い勝手と親和性のある操作方法を模索し、よりわかりやすく、親しみやすいUIを目指して開発し、2022年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

中小企業向けクラウド印刷ソリューションを開発

  IT管理者の確保が難しい中小企業のオフィス環境クラウド化や働き方の多様化に応えるため、当社がデジタル複合機の開発で蓄積した、ネットワーク、クラウド、モバイル、セキュリティ技術を活用し、時間や出力する複合機を意識せず、簡単で便利に”ロケーションフリー印刷”が可能になるクラウドベースプリントサービス「e-BRIDGE Global Print」を開発し、2022年7月に北米市場からサービス提供を開始しました。

環境に配慮した特殊紙への印刷対応を強化

  持続可能な社会を実現するため、当社が持つデジタル複合機での特殊紙印刷のノウハウを駆使し、製造時の環境負荷が少ない石灰石を主原料とし耐水性や耐久性にも優れたLIMEX素材の用紙やクリアファイルへの印刷を実現しました。

耐候性に優れたカラーラベルプリンタを製品化

  海外市場から要望の強い、高速・高品質・高耐久性の産業用カラーラベルプリンタ「BC400P」を製品化し、2023年4月に欧州市場から発売を開始しました。新製品では、耐候性に優れた顔料インクを採用するとともに、1200dpi、300mm/秒の高精細かつ高速で最大4インチ幅の印字を実現しました。

 

(注)「LIMEX」は㈱TBMの登録商標です。