第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

 ステンレス鋼線並びに金属繊維(ナスロン®)を主力製品とする当社グループは、長年にわたり培ってきた技術力と新しい分野への挑戦により、お客様にとって価値のある商品とサービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを経営の基本理念としております。

 産業構造が環境・エネルギーのクリーン化、デジタル化へと進むなか、ステンレス分野への期待はさらに高まり、「より細く、より強く、より精密な」方向が求められています。ステンレス鋼線のトップメーカーとして、これらの期待に適応すべく『Micro & Fine Technology』をスローガンに掲げ、次世代素材、技術開発をこれからもリードし続けてまいります。

 また、株主並びにお客様など、内外の関係先からの信頼と期待に応えるため、常に市場の変化に迅速に対応できる柔軟な経営体制の構築を通じて、安定した収益基盤の維持・拡大を図るべく事業活動を展開してまいります。

 

(2)中長期的な経営戦略及び目標とする指標

 当社グループは2021年4月より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の比率を一層高め、企業価値向上に努めてまいります。NSR23の経営目標として連結経常利益42億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年度CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を掲げESG経営を推進しています。なお、NSR23の基本方針については、後述(4)中期経営計画(NSR23)に記載しています。

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NSR23目標

連結売上高(百万円)

42,000

連結経常利益(百万円)

4,200

連結ROS(経常利益/売上高)

10.0%以上

連結ROA(経常利益/総資産)

10.0%以上

連結ROE(純利益/株主資本)

8.0%以上

連結配当性向(配当/税引後利益)

40%程度

高機能・独自製品連結売上高比率

70%以上

CO2排出量削減率(2030年度目標)※

▲30%

※2013年度比

 高機能・独自製品とは、当社グループで独自開発した技術を用いることなどにより実現可能となったシェアナンバーワンやオンリーワンの製品群となります。高機能・独自製品は、お客様の製品に高い付加価値をもたらす役割を担っています。

 

《高機能・独自製品の一例》

 

製品名

説明

ばね用材

「ステンレス鋼線」とは、ステンレス鋼線材に対して二次加工を施し、表面性状、線幅、線径、機械的特性などの精度の高い機能を付加し、それを保証したワイヤーの総称をいい、ばね・ねじ・金網などに加工されます。

当社のばね用材については、高強度や高耐熱、超非磁性などのお客様のニーズに応じ、線ぐせや光沢などを調整したオーダーメイド製品を提供しています。医療関連や精密電子機器、次世代の水素社会を支える素材となります。

極細線

線径100μm未満の製品を総称し、フィルター用途やスクリーン印刷用途に用いられています。細径化ニーズに対応してきた結果、現在11μmという単線としてはステンレス鋼線の極限の細さを実現しており、スクリーン印刷用途で用いられる極細線は、高精度・高細密が要求される太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスに欠かせない素材となります。

金属繊維(ナスロン®)

当社が独自の技術で開発したステンレス鋼繊維であり、その線径は1~50μmと非常に細く柔軟性を有します。金属の性質を保持しながら有機繊維と同様にニット状やフェルト状などへの加工が可能となります。このナスロン®を用いた高機能メタルフィルターは、より高強度、より高耐熱で耐食性も優れており、フィルムや樹脂、炭素繊維などの製造の濾過プロセスで利用されています。

超精密ガスフィルター(NASclean®)

金属繊維(ナスロン®)をもとに製作した薄層のメタルメンブレンフィルターであり、半導体・フラットパネルディスプレイ、太陽電池パネル等の生産過程に用いられるガスの濾過に用いられ、半導体製造装置などに組み込まれています。社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けたより高性能な半導体が必要となるに伴い、超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要も高まっています。

 

(3)サステナビリティ経営

当社グループは、中期経営計画スローガン「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を基に、環境問題、人権尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などの重要な経営課題に対して計画的に取り組んでいます。

製造業である当社では、生産プロセスで排出されるCO2や廃棄物の削減といった社会的な責務を意識しており、その中でも、事業活動に伴うCO2排出削減の目標(2030年目標30%削減(2013年度比)、2050年目標:カーボンニュートラル)を設定し持続可能な社会の実現を目指しています。また、当社グループの製造する高機能・独自製品は、最終製品の付加価値を高めるために不可欠な素材であり、サステナビリティ追求の潮流を大きなビジネスチャンスとして位置づけています。

また、当社グループは、ビジネス規範に対するコンプライアンス教育の徹底、健康・安全や生産性向上など働きやすい環境の整備、多能工化やスキルマトリクス評価による人的資本の質の向上など、人的資本への投資を通じて持続的成長の基盤を培っています。知的財産の活用・拡張に対しても、伸線加工や金属繊維ナスロンなどのコア技術を活かした新たな高機能・独自製品の創出のほか、水素関連などのサステナビリティ成長分野に対する中長期視点での研究開発の推進に取り組んでいます。

当社グループは、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を決議・表明し、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、リスクと機会を特定するとともに、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントにも資するよう、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を含め、同提言に沿った情報開示を当社ウェブサイトにて行っています。「TCFD提言への賛同」に関する詳細な情報は、「サステナビリティ報告書2022」(17頁から18頁)をご参照ください。「サステナビリティ報告書2022」は、当社ウェブサイト(URL:https://www.n-seisen.co.jp/sustainability/report/)に掲載しております。

 

 ※ TCFD:(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

 

(4)中期経営計画(NSR23)

①中期経営計画の基本方針

NSR23においては、以下の4つの基本方針を掲げています。

a.日本精線リニューアル計画の継続・推進

b.新製品開発と新市場開拓 : サステナブル社会に貢献

c.水素を巡る新事業の探索

d.コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの充実

 

a.日本精線リニューアル計画の継続・推進

 前中期経営計画から取り組んできました日本精線リニューアル計画(NSR)を継続推進し、高機能・独自製品の機能・能力増強と持続的成長のための生産基盤の強化を図ります。具体的には、東大阪工場の酸洗設備に関する第2期合理化計画を通じて生産能力増強や作業安全性・環境負荷軽減を推し進めるほか、さらなる細径化ニーズに応えるべく極細線及びばね用材の機能・能力増強を図ります。金属繊維部門においても老朽化した製造設備のリフレッシュ投資により生産基盤強化や品質改善を計画しており、半導体関連市場の需要増に対し超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定したサプライチェーンの構築にも注力いたします。

 また、THAI SEISEN CO., LTD.の機能を強化し、ステンレス鋼線部門の国内外の最適生産体制の構築を進めるとともに海外マーケット(中国・東南アジアなど)の取引深耕を図ります。具体的には、ばね用材、極細線、電磁SUSといった高機能・独自製品の機能強化に向けた投資を推進し、重要製品の枚方工場代替生産拠点としての位置づけも確立してまいります。金属繊維部門についても、耐素龍精密濾機(常熟)有限公司と韓国ナスロン株式会社との連携によって海外市場への拡販を推し進めてまいります。

 

b.新製品開発と新市場開拓 : サステナブル社会に貢献

 環境、エネルギー、5Gなどサステナビリティ成長分野に、極細線、高機能ばね用材や超精密ガスフィルター(NASclean®)など当社の高機能・独自製品を提供し、製品を通じてサステナブル社会に貢献してまいります。例えば、極細線の細径化は太陽光パネルの発電効率向上に大きく貢献しています。また、超精密ガスフィルター(NASclean®)の性能をいっそう向上させた新製品を市場投入することで半導体製造装置の高性能化ニーズに応えてまいります。半導体製造プロセスにおいてEUV(極端紫外線)露光技術が採用されたことによって半導体チップの微細化がさらに進展するなか、1.5ナノまでのパーティクル(粒子)の除去ができる当社製品の濾過精度に対するニーズは高まっています。また、ステンレス鋼短繊維を材料とする当社ガスフィルターは低圧損(注)という特長があり、これまで培ってきた技術の優位性をさらに向上させてまいります。結果として、高機能・独自製品の比率を高めるとともに、新製品の競争優位性をもって収益性の高い製品ポートフォリオの維持・向上を目指します。

 

(注)

低圧損とは、ガスが濾過フィルターを通過する際の圧力損失が少ないこと。結果として、同じ濾過精度かつ同じ流量のガスの精製のために消費するエネルギーを削減できます。

 

製品を通じたサステナブル社会への貢献(一例)

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c.水素を巡る新事業の探索

 水素エネルギーを活用する水素社会においては、安全な水素の運搬・貯蔵方法の確立が必要不可欠となっています。水素を多く含むことができる常温で液体である『有機ハイドライド(MCH:Methylcyclohexane)』は取扱いが比較的容易であるため既存のガソリンスタンドをインフラとしての活用が展望できる方法として注目されています。当社では、独自に開発したモジュールを用いて、水素キャリアであるMCHから水素を回収することに取り組んでいます。さらに、水素のみを透過できるPd合金膜による水素分離膜モジュールを介することによって、水素濃度を超高純度(9N)に高めることができます。この中期経営計画においては、再生可能エネルギーを用いた小型プラント実証実験によって高純度のグリーン水素を回収することに取り組み、将来の新事業開拓への展望を見極めてまいります。

 

d.コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの充実

 コーポレート・ガバナンスの充実によって持続的な利益成長と企業価値の向上につながるとの認識のもと、コーポレート・ガバナンスとその根幹であるコンプライアンス経営を重要課題の一つと位置付け、引き続き改善・充実を図ってまいります。また、CGコード改訂(2021年6月)や東証市場再編(2022年4月)を踏まえたガバナンスやリスク管理などの体制強化に鋭意取り組んでまいります。

 また、前述したようにコロナ禍を機に事業継続マネジメント(BCM)を抜本的に見直し、大規模災害等の不測の事態に見舞われた場合でも迅速に事業再開できる体制を整備し、当社がステンレス鋼線のトップメーカーとして供給責任を果たしていく取り組みを推し進めてまいります。また、with/afterコロナ禍におけるテレワーク定着と働き方改革推進を図っていきます。

 さらに、事業活動に伴うCO2排出削減の目標を設定し持続可能な社会の実現を目指してまいります。2050年のカーボンニュートラルを最終目標とし、2030年のマイルストーン目標としてCO2排出量を2013年度比30%削減に設定しました。具体的には、省エネ・生産性向上に引き続き努めるとともに、化石燃料エネルギーを直接消費する設備の電化(電気炉への更新)や新技術エネルギー炉の採用(水素、アンモニア、メタネーション)を計画的に進めてまいります。また、環境負荷低減に向けた取り組みなどサステナビリティ経営に関する情報開示にも注力してまいります。

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②中期経営計画の進捗状況

中期経営計画の基本方針に則り、2年目となる2022年度の各施策を着実に展開しました。

 

a.日本精線リニューアル計画の継続・推進

ステンレス鋼線部門においては、高機能・独自製品の機能・能力増強に資する設備投資を計画どおり展開しています。枚方工場では、ばね用材や極細線の増産投資を行い生産能力の上方弾力性確保を進めています。東大阪工場では、酸洗設備に関する第2期合理化計画や耐震補強工事に関する投資に着手しました。また、太径伸線機の配電盤の更新にも着手し浸水へのBCPを進めています。さらに、両工場ではCO2排出の削減を図るために蒸気配管改善や廃熱回収ボイラーの設置を進めています。その他、タイ精線では、ばね用材の高機能化を目的にニッケル鍍金設備が完成し、アジア地域で需要の高まってきたニッケル鍍金ばね用材の提供が可能となりました。また、極細線の増産投資の完成によって、枚方工場を補完する生産体制を構築できました。

金属繊維部門においては、老朽化した製造設備のリフレッシュ投資を推進しています。リーフフィルター向け自動超音波洗浄装置を導入し生産性向上や防音対策などの作業環境の改善が実現できました。老朽化した熱処理炉の更新投資など金属繊維事業の持続的成長に向けた生産基盤強化に向け計画的に取り組んでいます。

 

b.新製品開発と新市場開拓 : サステナブル社会に貢献

ステンレス鋼線部門においては、シングルμmへの挑戦を続けています。試作品の品質評価及び設備改良を推し進めてきた結果、9μmの超極細線をお客様にサンプル提供し性能評価を頂くとともに内製ダイスの量産化にも着手しました。新製品としては、船舶のディーゼルエンジンは排気ガスのクリーン化のために燃焼温度の高温化が求められることから、耐熱性や耐摩耗性に優れた材料を用いた溶接線を開発しました。船舶の定修時にエンジンバルブをリユースできることから省資源化への貢献も期待されています。

金属繊維部門では、より低圧損かつ高い濾過精度を有する超精密ガスフィルター(NASclean®)の新製品開発と拡販に注力しています。具体的には、1.5ナノmまでのパーティクル(粒子)の除去ができる大流量フィルターや、腐食性ガスを使用する工程で採用される高耐食性合金の集積フィルターが評価され、国内外の半導体製造装置に採用されました。また、従来より開発してきた新製品も完成し、製品ラインナップの拡充を実現しました。

 

c.水素を巡る新事業の探索

当社では、独自に開発したモジュールを用いて、水素キャリアである有機ハイドライド(MCH)から水素を回収する技術(水素貯蔵回収モジュール)を開発しました。本技術を基に連続運転が可能な小型プラントを用いて有機ハイドライド(MCH)から水素を回収する実証実験を行うため、2021年度に水素吸蔵回収モジュールの小型プラントへの投資を進めてきましたが、2023年度中での実験開始に目途がつきました。水素の品質や反応器の耐久性、安全性を検証し、水素コスト等を検証するとともに、回収した水素は工場内で活用することを計画しています。

また、当社が保有する金属フィルター加工技術、並びに特殊な独自の接合技術により開発した水素分離膜モジュールを用いることによって、超高純度の水素を精製することができます。水素製造装置における水素精製装置(PSA「Pressure Swing Adsorption」)代替や、半導体産業で使用される超高純度水素ガス精製分野など、極めて高い純度の水素ガスを要求される用途としての貢献に期待されています。

 

d.コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの充実

当社グループは、東証市場区分再編に際しプライム市場を選択し、プライム市場上場企業に求められる改訂CGコードのフルコンプライに向け、2022年1月25日に大同特殊鋼株式会社の形式支配力基準による連結子会社となり、同社関係者の役員派遣の制約が外れました。2022年度は、社外取締役3名体制(うち女性取締役1名)として独立社外取締役の選任割合を増やしガバナンス体制の強化を実現しました。さらに、大同特殊鋼株式会社を親会社とする当社では、独立社外取締役及び独立社外監査役全員を構成員とする特別委員会を設置し、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引行為について審議・検討を行う体制を導入しました。

また、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重などサステナビリティ課題への取り組みを組織的に推進しており、2022年度の「CDP気候変動質問書」に初めて回答し、2022年12月に「B」評価を取得しました。また、2023年5月に「サステナビリティ報告書2022」を創刊し、株主・投資家をはじめとする様々なステークホルダーに対する非財務情報の開示充実に取り組んでいます。

 

(注)

CDPとは企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。CDPは2003年以来、世界の主要企業を対象に、温室効果ガスの排出や気候変動による事業リスク・機会などの情報開示を求める質問書を年1回送付し、その回答をもとに企業の気候変動問題への対応を「A」から「D-」の8段階で評価しています。

 

健康・安全や生産性向上など労働災害の撲滅や働きやすい環境の整備にも注力し、ダイバーシティの推進にも努めています。2023年3月に、「日本精線グループ人権方針」を制定し、4年連続での「健康経営優良法人」認定などの実績を残すことができました。

事業継続マネジメント(BCM)の推進で認識した耐震対策や受配電設備等の補強を計画的に取り組みました。引き続き、コロナ影響の再拡大や大地震、水害等の自然災害など不測の事態が発生しても、従業員の健康・安全の確保と製品供給責任を果たせるように計画しています。

 

③目標とする経営指標

当社グループは、以下の数値を目標とする経営指標として設定しています。中期経営計画2年目の結果としては、下表のとおりの実績となりました。

引き続きこれらを重要指標と認識し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

 

2021年度

2022年度

NSR23目標

連結売上高(百万円)

44,795

49,055

42,000

連結経常利益(百万円)

4,599

4,317

4,200

連結ROS(経常利益/売上高)

10.3%

8.8%

10%以上

連結ROA(経常利益/総資産)

9.5%

8.2%

10%以上

連結ROE(純利益/株主資本)

9.4%

8.6%

8%以上

連結配当性向(配当/税引後利益)

40.5%

41.7%

40%程度

高機能・独自製品連結売上高比率

63.0%

64.0%

70%以上

注)比率(%)については小数点第2位を四捨五入

 

(5)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①経営環境

2022年度の世界経済は、コロナ禍の収束によって経済活動の正常化が期待されましたが、ロシアによるウクライナ侵攻がサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰を引き起こし、欧米ではインフレ対策のための利上げによる景気の減速傾向が現れてきました。中国でもゼロコロナ政策転換による感染症急拡大が経済活動の大きな制約となりました。日本経済においても、コロナ感染症の抑制と経済活動の再開によって持ち直してきましたが、世界経済の減速、資源・エネルギーや食料品などの価格上昇の影響を受け、さらに円安影響により景況感の先行きに対する不透明感が大きくなってきています。

中長期的な視点では、世界的に気候変動に対する問題意識が高まりカーボンニュートラルに向けたリスクとビジネス機会を意識した取り組みが求められています。炭素税導入による調達・操業コストの増加や内燃機関車用部品材料の需要減少などのリスクへの対策の準備が必要となっています。一方、太陽光パネル製造で必要となる極細線やIT社会を支える半導体の製造装置に組み込まれる超精密ガスフィルター(NASclean®)など、当社の高機能・独自製品はサステナブルな社会において底堅い需要があります。高機能・独自製品の提供によってサステナブル社会に貢献しつつ収益機会の拡大に取り組んでいきます。

 

②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後については、米中露や中東等での地政学リスクが資源価格高騰や先端半導体の輸出制限等の経済安全保障上の制約となることのほか、欧米金融機関の経営悪化や中国の不動産市場の調整等を発端とする景気の下振れリスク等、多くのリスクシナリオを認識しています。

当社グループの主力製品であるステンレス鋼線は、中国や韓国のステンレス鋼線メーカーとの競争激化による収益低下などの懸念があり、同様に、金属繊維(ナスロン®)も化合繊維向け等の一般汎用製品については競争が激しくなっています。

このような経営環境を踏まえ、当社グループは2021年4月より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の比率を一層高め、企業価値向上に努めています。NSR23の経営目標として連結経常利益42億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年度CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を掲げESG経営を推進してまいります。

具体的には、ステンレス鋼線部門において、販売面では環境、エネルギー、5Gなどサステナビリティ成長分野に極細線、高強度ばね用材など当社グループの高機能・独自製品の拡販に努めるとともに、成長性のある海外マーケットを開拓してまいります。生産面においては、前中期計画から取り組んできました日本精線リニューアル計画(NSR)を継続推進し、高機能・独自製品の機能・能力増強と持続的成長のための生産基盤の強化を図ります。また、THAI SEISEN CO., LTD.の機能を強化し、国内外の最適生産体制の構築を進めてまいります。

金属繊維部門においては、中国、韓国の現地法人の活用による海外市場への拡販、高精度化する需要に応える商品開発を進めるとともに、半導体関連市場の需要増に対し、超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定したサプライチェーンの構築を進めてまいります。

サステナビリティ経営における課題としては、生産プロセスで排出されるCO2や廃棄物の削減といった社会的な責務を意識し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。また、高機能・独自製品の安定提供を通じてサステナブル社会に貢献することも当社の責務と認識しています。さらには、将来の水素社会を展望した研究開発を進めるとともに、事業継続マネジメント(BCM)の再構築や働き方改革など、リスク管理やガバナンスなどの体制強化にも鋭意取り組んでまいります。

以上の諸施策を確実に実行することにより、収益の一段の向上を図るとともに、事業のグローバル化推進や高度化・多様化する顧客ニーズへの対応、サステナブル社会への貢献を通じ、『さらなる企業価値の向上』にグループ一丸となって取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります

 なお文中の将来に関する事項は有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであります

 

(1)サステナビリティ

 当社グループは、ステンレス鋼線のトップメーカーとして、これまでも経営理念ならびに環境方針基本理念に基づき社会の発展へ貢献してまいりました。これからも全てのステークホルダーと共にサステナブル社会の実現に向けて貢献し続けます。

 なお、当社グループのサステナビリティ経営の取り組みや当社独自の価値創造プロセスについて、2023年5月に「サステナビリティ報告書2022」を創刊し、株主・投資家をはじめとする様々なステークホルダーに対する非財務情報の開示充実に取り組んでいます。

 「サステナビリティ報告書2022」は、当社ウェブサイト(URL:https://www.n-seisen.co.jp/sustainability/report/)に掲載しております。同書の記載の対象期間は、2021年度(2021年4月から2022年3月。一部過去の実績、2022年4月以降の情報も含みます。)でありますが、2023年9月に「サステナビリティ報告書2023」として、2022年度にかかる情報を反映したものに更新する予定です。

 

《経営理念》

私たちは、お客様にとって価値のある商品とサービスの提供を通じて社会の発展に貢献します。

私たちは、情報を重視し、世界の変化に素早く適応するため、技術・知識・行動の革新に挑戦し続けます。

私たちは、利益ある発展と、創造性豊かでいきいきとした企業風土の確立を目指します。

 

《環境方針基本理念》

日本精線はステンレス鋼線の国内トップメーカーとして、環境への負荷の少ない生産・販売活動を追求し、

従業員一人一人の行動を通じて、地球環境の保全・向上に積極的に取り組みます。

 

①戦略並びに指標及び目標

 当社グループは2021年4月より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、未来の高機能・独自製品を生み出し続けることを通して社会に貢献し、持続可能性を高める活動を進めています。加えて、足元ではSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルなどの外部環境が大きく変化しており、これに対応すべく当社の今後の取り組むべき課題を抽出し重要課題(マテリアリティ)を下記のとおり特定し、その指標及び目標を設定しました。

 

 

マテリアリティ

 

2023中期目標・KPI

地球環境の保護

(事業活動)

①気候変動への取り組み

●省エネルギー・脱炭素技術によるCO2排出量削減

●2030年度 当社Scope1・2

 2013年度比 CO2排出量30%削減

 

●供給責任の全う

●BCM達成のためのインフラ整備完了

②環境影響の低減

●管理化学物質の使用量削減

●管理化学物質移動量・排出量(PRTR法)削減

●有害物質等の漏出防止

③サーキュラーエコノミーへの移行

●廃棄物量低減、リサイクルへの取り組み

●副産物 リサイクル率向上

 

●水資源の保全

 

 

●水資源使用量削減

●上水使用比率削減

●各工場排水基準合格

地球環境の保護とQOLの向上

(製品提供)

④エネルギーの効率改善と技術革新

●新エネルギーに貢献する製品・技術の提供

●極細線(太陽光電池パネル印刷用) お客様要求量の供給

●ナスロンフィルター(風力発電用炭素繊維) お客様要求量の供給

 

●高性能半導体・電子部品の製造プロセス革新に貢献する製品・技術の提供

●超精密ガスフィルター(保証度精度1.5nm) お客様要求量の供給

●ナスロンフィルター(MLCC離型フィルム用) お客様要求量の供給

 

●モビリティ革新に対応する製品・技術の提供

●ナスロンフィルター(LiBセパレータ用) お客様要求量供給

●磁性材料 販売開始

 

●省エネルギー化に貢献する製品・技術の提供

●耐熱ボルト用材 お客様要求量の供給

●耐熱ばね用材 お客様要求量の供給

 

 

●船舶エンジンバルブ 補修用溶接線 販売開始

●積層造形用材料(3Dプリンタ)  販売開始

 

●水素社会に対応する製品の提供

●耐水素脆性材料『HYBREM-S』 お客様要求量の供給

●水素貯蔵回収モジュール 実証実験実施

 

 

●水素吸蔵モジュール 基礎研究

●水素分離膜モジュール お客様要求量仕様対応

⑤資源の有効活用

 

 

 

 

●資源の有効活用に貢献する製品・技術の提供

 

 

 

●ナスロンフィルター(リサイクルPET・中空糸) お客様要求量の供給

●ナスロンフィルター再生洗浄 受託加工 お客様要求量の対応

●ハーキュリー®(高強度 省資源) お客様要求量の供給

●302HS(高強度 省資源) お客様要求量の供給

⑥QOLの向上

●高機能な医療用材料の提供

●能動型内視鏡、カテーテルガイドワイヤ用 お客様要求量の供給

●歯列矯正用ワイヤ お客様要求量の供給

 

 

●インシュリン自己注射用ばね用材 お客様要求量の供給

●医療針用 お客様要求量の供給

 

 

●医療用ステンレス鋼線INS304V

社会への責任と貢献

⑦人権の尊重

●様々な価値観・属性を受容し、人権を尊重する企業風土の醸成

●人権方針の制定・浸透

●活動展開・仕組みの整備

⑧労働災害の撲滅

●災害0を目指したソフト・ハード改善

●重大災害件数0件

●労働災害の度数率0.2以下

⑨健康経営の推進

●従業員の健康増進

●健康経営の推進

●疾病/メンタル不調の早期発見

●治療の推進、健康意識向上

⑩ダイバーシティの推進

●多様な人材の確保・育成

●女性活躍推進:定着率、管理職比率の向上

 

●「働きがい」を感じる職場環境づくり

●障がい者の継続的な採用活動実施

●働きがい意識調査

●働きがい創出支援活動

 

 

●IT活用による場所・時間を問わない効率的・柔軟な働き方構築

⑪ステークホルダー・エンゲージメント

●地域社会とのコミュニケーション促進

●操業地域の環境保全と改善の推進

 

●株主・投資家とのコミュニケーション促進

●地域社会とのコミュニケーション深耕

 

ガバナンスの強化

⑫コーポレート・ガバナンスの強化

 

●取締役会、委員会等の体制強化とコーポレート・ガバナンス各種取り組みの推進

●形式支配力基準による大同特殊鋼との連結関係維持

●意志決定の迅速化、中長期的な企業価値の向上→ガバナンス強化に向けた体制・機能強化

●実効性と透明性の向上

⑬リスクマネジメントとコンプライアンスの強化

●リスクの特定と重点リスクの対応

●リスクマップ活用によるリスク評価の徹底

 

●コンプライアンス徹底推進

●全従業員に対するコンプライアンス浸透

 

⑭高品質な製品の安定供給

●徹底した品質管理・品質改善

●品質重大事故0件

 

②ガバナンス

 当社グループは、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などサステナビリティ課題を重要な経営課題であると認識し、これら課題への取り組みを組織的に推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ担当役員を選任いたしました。同委員会の場でサステナビリティに関する諸課題への取り組み報告や議論を継続的に行ってまいります。サステナビリティ委員会は原則として6ヶ月に1回、その他必要に応じて随時開催します。その内容を取締役会に報告・審議し、承認を得る仕組みとしています。

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③リスク管理

 当社グループは、リスクとは経営基本方針(「経営理念・行動規準」)や経営計画(事業方針、中期経営計画、予算)等の達成を阻害する要因であると考えています。事業経営に伴って生じるリスクと、外部環境によって発生するリスクの状況を正確に把握し、適切な管理を行うための体制の整備と、その効果的な運用を実現することで、企業の健全性の確保、ひいては企業の存続可能性の維持に努めています。

 当社グループの事業推進に伴う損失の危険に関しては、執行役員がそれぞれの担当部署のリスクを認識、統括・管理しています。子会社の損失の危険に関しては「関連会社管理規程」に基づき経営企画部が主管部署となり管理し、都度必要な指導を行っています。それら内容については「コンプライアンス・リスクマネジメント委員会」並びに取締役会に報告しています。事業運営上のリスクは、影響度と対策度合によってリスクマップという形で整理しています。

 突発的危機発生時は、経営危機管理規程に基づき、対外的影響を最小限にするための対応策を協議・実施します。

 また、当社グループにおいては、サステナビリティに関するリスクに関しても、①ガバナンスに記載のサステナビリティ委員会における検討・議論の対象としております。

 マテリアリティごとのリスク及び機会への対応に関する詳細な情報はサステナビリティ報告書2022(9頁から10頁)をご参照ください。

 

(2)気候変動

 製造業である当社は、生産プロセスで排出されるCO2や廃棄物の削減に取り組んでまいります。同時に、当社の高機能・独自製品の供給を通じ持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)サステナビリティ経営」に記載のとおり、当社は2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を決議・表明し、気候変動が事業に与えるリスクと機会の両面に関して、「戦略」、「リスク管理」、「ガバナンス」、「指標と目標」の観点から、さらなる情報開示の充実に取り組んでいます。「TCFD提言への賛同」に関する詳細な情報は、「サステナビリティ報告書2022」(17頁から18頁)をご参照ください。

 また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中期経営計画(NSR23)」に記載のとおり、2022年度の「CDP気候変動質問書」に初めて回答し、2022年12月に「B」評価を取得しました。

 

①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスと同様であります。詳細については「(1)サステナビリティ ②ガバナンス」をご参照ください。

 当社では2021年度から2023年度の中期経営計画内において、CO2排出量に関して2030年度に2013年度比30%削減、2050年度カーボンニュートラル達成を目標としています(ともにScope1・2対象)が、更なる取り組み強化のため、2021年9月よりカーボンニュートラル会議を創設し、CO2排出量削減に向けた取り組みについての議論や実施項目のフォローアップを進めています。また、気候変動影響への適応策としての事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)にも取り組んでいます。

 こうした活動を含めて、「(1)サステナビリティ ②ガバナンス」にて前述のとおり、サステナビリティ委員会において、気候変動対応に関する諸課題への取り組みが報告され、議論することとされています。

 

②戦略

 中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃以下シナリオおよび4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社への影響を考察し、国内鋼線事業を中心にシナリオ分析を実施しました。

 当社におけるCO2排出量の削減については、①エネルギー使用効率向上、②漏れ・放熱などのロス低減、③排熱などを回収して利用する再利用、④使用するエネルギーをCO2フリー化、の4つの手段を主に考えています。

(注)

2℃以下シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ

4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ

 

《気候変動に関する主なリスクと機会及び対応》

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「気候変動に関する主なリスクと機会及び対応」の表は、「サステナビリティ報告書2022」(18頁)に記載しています。

 

③リスク管理

 TCFD提言への賛同表明を検討するにあたり、気候変動リスクに関するワーキンググループを設置してシナリオ分析を実施しました。かかる分析の結果については、「サステナビリティ委員会」における審議を経て、取締役会に報告され、これらを踏まえて、当社取締役会において、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)サステナビリティ経営」に記載のとおり、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を決議・表明しております。気候関連リスクの優先順位付けとして、リスク・機会の発生可能性と影響度の理由から、上記の影響度の高い事項に注力して取り組みます。現在は、気候関連リスクの管理プロセスとして、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候関連リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践しています。「サステナビリティ委員会」で分析・検討した内容は、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行っています。

 地球温暖化の進展に伴う気候変動リスクのうち、当社事業活動に最も大きな影響をもたらす事象として、局地的豪雨による水害発生を想定した対策など総合的なBCM(Business Continuity Management)を計画立案し、万一の災害時における影響の最小化対策や、生産活動の早期復旧などに必要なインフラ整備・改善を実施中であり、レジリエンス向上に向けた努力を継続しています。

 

④指標及び目標

 当社では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)の総排出量を指標として削減目標を設定しています。CO2排出量に関して2030年度に2013年度比30%削減、2050年度カーボンニュートラル達成を目標としています。

 なお、現在の目標設定の対象会社は日本精線株式会社単体ですが、CO2排出量の実績は連結子会社も個別に管理しています。

 当社では、限りある資源を有効活用するために、従来より省エネ投資を行ってきました。これにより2021年度におけるCO2排出量は2013年度対比16%減、CO2排出原単位は31%減となりました。引き続き省エネ投資を行ってまいります。なお、2023年9月に公表予定の「サステナビリティ報告書2023」において、2022年度の実績を記載する予定です。当社におけるCO2排出量の削減については、①エネルギー使用効率向上、②漏れ・放熱などのロス低減、③排熱などを回収して利用する再利用、④使用するエネルギーをCO2フリー化、の4つの手段を主に考えています。当社におけるCO2排出量は都市ガスを燃料としたバーナーを用いて加熱を行う熱処理炉からが約16%を占めており、この炉における高効率化とロス低減が大きな課題となっています。気候変動への取り組みに関する詳細な情報は、「サステナビリティ報告書2022」(13頁から18頁)をご参照ください。

 また、当社グループの製造する高機能・独自製品は、最終製品の付加価値を高めるために不可欠な素材であり、サステナビリティ追求の潮流を大きなビジネスチャンスとして位置づけています。例えば、太陽電池パネル印刷用の極細線や風力発電用炭素繊維の製造プロセスで用いられるナスロンフィルターは、新エネルギー領域で貢献しています。高性能半導体や電子部品の製造プロセスに用いられる超精密ガスフィルター(NASclean®)やナスロンフィルターは、エネルギー効率の改善を支える製品となります。こうした高機能・独自製品の提供を通じて、地球環境の保護に貢献していきます。

 

(3)人的資本

①多様性の確保についての考え方

 当社グループでは性別国籍採用形態で区別せず多様な価値観を有する人材の採用を進めています2023年3月末現在当社の管理職における女性比率が1.0%同外国人の比率が2.1%同中途採用者の比率が9.4%となっております多様性を持った社員が活躍できる場を創造できるようこれらの比率の向上に努めてまいります

 

②人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針、社内環境整備方針

・人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

 企業にとって最も重要な財産は人であると考えます

経営戦略上必要となる多様な人材を計画的に採用するとともにその雇用条件のみならず安全及び健康にも意を用いることにより定着を図っております

また社員一人ひとりが日の業務を通じて学びな研修を通じて成長しそのような人材が集うことで企業の成長と発展があるものと考えますその具体策として下記の4項目からなる教育体系を構築し社員に計画的な学びの機会を創出・支援しています

 a.階層別教育 b.目的別教育 c.自己啓発支援 d.若手社員研修

 こうした施策は女性外国人中途採用者等の属性を問わず実施しておりますこれらの結果社内に多様な人材が確保され会社の持続的な成長に繋がっていくと認識しております

 

・社内環境整備方針

 様なライフイベントが発生する際でも仕事と両立できるよう制度を整えることで女性外国人中途採用者等の属性を問わず全ての社員が継続して働きやすい職場となるよう環境整備を進めております具体的には社員のワークライフバランスの向上と生産性の向上を同時に実現させるためにフレックスタイムや時差出勤在宅勤務制度を導入しておりますまた他にも育児休職制度の拡充や短時間勤務制度有給休暇取得促進などな制度や環境を整備しており多様な人材が仕事と生活を両立し安心してキャリアを積んでいける会社を目指しています

 

③各項目の実績と今後の進め方等

 上記②人材の多様性確保を含む人材の育成に関する方針、社内環境整備方針」において記載した人材の育成に関する方針、社内環境整備方針に関する指標の内容、当該指標に関する実績は、以下のとおりであり、今後、これらの数値を高めていくように努めてまいります。なお、これらの指標について、当社では、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載は困難であります。このため、以下の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む当社のものを記載しております。

 

・人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針に係る指標目標及び実績

イ.昇給率

当社では一般職(組合員)の昇給率を指標として用いており継続的・安定的な昇給を行うことを目標としておりますその実績は以下のとおりです

 

2021年

2022年

2023年

一般職の昇給率(%)

2.31

3.14

3.02

 

ロ.採用者数

当社では採用者数を指標として用いており景況等に左右されず継続的に採用を行うことを目標としておりますその実績は以下のとおりです

 

2020年

2021年

2022年

新   卒(人)

8

9

16

中   途(人)

6

5

6

うち女性比率(%)

21.4

21.4

31.8

 

ハ.入社10年後の定着率

当社では入社10年後の定着率を指標として用いており継続的にその指標を向上させることを目標としておりますその実績は以下のとおりです

 

2011年入社

2012年入社

2013年入社

入社人数(正社員)

30

16

8

10年後退職者人数

6

2

1

定着率(%)

80.0

87.5

87.5

 

ニ.健康経営への取り組み

働きがい(ワーク・エンゲージメント)生産性(相対的プレゼンティーズム)働きやすさ(社内コミュニケーション指数)を指標として用いており継続的にその数値を向上させることを目標としておりますその実績は以下のとおりです

 

2020年度

2021年度

2022年度

ワーク・エンゲージメント

2.9

2.8

相対的プレゼンティーズム

1.01

1.04

社内コミュニケーション

5.9

ワーク・エンゲージメントについてはユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(9項目版)を用いており、「活力」「熱意」「没頭等の因子を数値化しこの数値を高めていくことを目指しております

相対的プレゼンティーズムについてはWHO-HPQを用いておりこの数値を高めていくことを目指しております

社内コミュニケーションについては社員アンケートを数値化したものを指標としておりこの数値を高めていくことを目指しております

 

ホ.多様性の確保

管理職における女性労働者外国人中途採用者の割合と障がい者雇用率を指標として用いており継続的にその比率を向上させることを目標としておりますその実績は以下のとおりです

 

2021年3月末

2022年3月末

2023年3月末

管理職に占める女性労働者の割合

1.0%

1.0%

1.0%

管理職に占める外国人労働者の割合

2.1%

2.1%

2.1%

管理職に占める中途採用者の割合

7.2%

9.4%

9.4%

障がい者雇用率

3.0%

2.7%

3.0%

 

・社内環境整備方針に係る指標目標及び実績

イ.フレックスタイム制度

フレックスタイム制度が適用される対象者数を指標として用いております2023年3月末日時点の実績としては173名で継続的にその数値を向上させることを目標としております当社は社員が始業・終業時刻を自ら決めることによって生活と仕事の調和を図りながら効率的に働くことができるコアタイム無しのフレックスタイム制度を導入しております

 

2020年度まで

2021年度

2022年度

対象者(人)

170

171

173

 

ロ.有給休暇取得促進

有給休暇取得率を指標として用いており継続的にその比率を向上させることを目標としておりますその実績は以下のとおりです法令で使用者に義務付けられる年次有給休暇の確実な取得(年5日)を上回る取得率となっています

 

2020年度

2021年度

2022年度

取得率(%)

44.2

49.3

70.6

平均取得日数(日)

8.5

9.5

13.7

 

ハ.育児休業制度

育児休業取得率を指標として用いており継続的にその比率を向上させることを目標としておりますその実績は以下のとおりです改正育児・介護休業法の施行にあたり全管理職への教育を実施するなど職場における育児休業制度の理解促進を進めるなどの施策に取り組んでいます

 

2020年度

2021年度

2022年度

 

対象者数

取得者数

取得率

対象者数

取得者数

取得率

対象者数

取得者数

取得率

男性

12

2

16.7%

9

1

11.1%

21

3

14.3%

女性

1

1

100.0%

2

2

100.0%

2

2

100.0%

合計

13

3

23.1%

11

3

27.3%

23

5

21.7%

 

ニ.短時間勤務制度

短時間勤務制度の利用者数を指標として用いておりその実績は以下のとおりです育児中の従業員が短時間勤務制度を利用しやすい職場環境とすべく各職場における短時間勤務制度の理解促進を進めるなどの施策に取り組んでいます

 

2020年度

2021年度

2022年度

利用者(人)

9

9

9

 

ホ.在宅勤務制度

在宅勤務制度の実施率を指標として用いておりその実績は以下のとおりです新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2023年5月8日から5類に移行されたこと等に伴い直近の実施率が低下しておりますものの当社では恒久的な制度として在宅勤務制度の整備を行っています

 

2021年2月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

 

第2回緊急事態宣言下

第3回緊急事態宣言下

2類相当

5類移行後

営業部門

(管理職除く)

66.4%

66.2%

37.0%

19.0%

管理部門

(営業管理職含む)

39.0%

38.5%

24.0%

13.0%

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスク及びその対応状況について、以下に記載いたします。
 当社グループでは、こうしたリスクの可能性を認識した上で、発生を回避し、または、発生した場合の影響を抑制する観点から、現状想定し得るリスクを洗い出し評価した上で、事業運営上のリスクについては経営会議にて、また、コンプライアンス上のリスクについてはコンプライアンス・リスクマネジメント委員会において、サステナビリティに関するリスクについてはサステナビリティ委員会においても、それぞれ優先順位に応じて具体的な対策を講じ、定期的にその妥当性について協議・検討を図っております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)自然災害などの不可抗力や外部からの攻撃によるリスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はワクチンの普及もあり収束に目途が付いてきましたが、オミクロン株と大きく病原性が異なる変異株の出現など、新たな感染症の拡大によって、再度、経済活動の自粛を求められることも想定しなければなりません。国内外の工場内での感染発生による製造ライン停止やサプライチェーンの寸断によって、お客様に製品が供給できないリスクを認識しています。また、従業員のほか、お客様や協力会社などの生命・健康を脅かす虞もあります。さらに、工場休業に伴う補償や操業度悪化が損益や資金繰りに与える影響も生じます。

 激甚化する気象災害など気候変動リスクがクローズアップされ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界的に加速しています。炭素税導入による調達・操業コストの増加や内燃機関車用部品材料の需要減少などのリスクへの対策の準備が必要となっています。また、当社グループの提供する素材は、お客様の製品を通じてグローバルに提供されることとなるため、世界各地における環境関連法令の適用に対応することが求められます。地球温暖化防止など、環境規制は厳格化の傾向にあり、ひいては当社グループの製造コストを増加させるリスクがあると認識しております。

 当社グループは、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、健康経営、公正な取引、事業継続マネジメント(BCM)などサステナビリティ課題を重要な経営課題であると認識し、これら課題への取り組みを組織的に推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ担当役員を選任いたしました。同委員会の場でサステナビリティに関する諸課題への取り組み報告や議論を継続的に取り組むガバナンス体制を整備しました。特に、地球環境の保護に対する事業活動の取り組みとしては、『中期経営計画(NSR23)』において事業活動に伴うCO2排出削減の目標を設定し持続可能な社会の実現を目指してまいります。また、当社グループの製品は、エネルギー効率の向上、各種のフィルター機能の提供や水素社会の基盤技術の開発など、高機能・独自製品を通じてサステナブル社会への貢献を図ってまいります。

 南海トラフの巨大地震や当社事業拠点周辺の断層による直下型地震リスクがあり、海外拠点においても当該地毎に大規模災害等のリスクが存在しています。当社グループの生産拠点において大規模災害やテロなどが発生した場合には、生産設備の破損やサプライチェーンの機能停止に伴い操業停止や資産価値の減損を強いられる虞があります。当社グループでは、人命最優先を基本方針としています。安否確認システムやマニュアル整備などの事業継続計画(BCP)については、コロナ禍を教訓に見直しを図るとともに、万が一の際に事業継続計画書が実効的に機能するように日頃からの安全在庫の管理・運用を徹底するとともに、復旧のボトルネックと必要な事前対策をリストアップし、耐震補強・浸水対策や受配電設備等の整備、ITシステムの運用見直しを計画的に推進してまいります。また、地震発生などの際に、誤操作・誤動作による障害が発生した場合にも制御できるように設備のフェイルセーフ化も進めています。事業継続マネジメント(BCM)の取り組み方針・施策の決定や拠点の活動確認などについては、年1回以上コンプライアンス・リスクマネジメント委員会に報告する体制を整備しました。

 さらに、当社グループでは、製造ノウハウや顧客情報、各種設計図など生産・営業・開発に関して多くの営業的な秘密を保有しています。また、従業員やお客様に関する個人データを保有していますが、一般消費者との取引がないため、データ量は限定的となります。コンピュータウィルスや不正アクセスなど社外からのサーバー攻撃によって、情報が流出し、第三者がこれを不正に取得・使用するような事態が生じると、お客様からの信用力や製品競争力など、当社グループの事業基盤を脅かす虞が認められます。さらに損害賠償責任を負う可能性も含め財務上のリスクもあります。こうしたリスクを抑制するために、従業員へのセキュリティポリシーの徹底や、常に最新のセキュリティ技術を用いた未然防止策を図るとともに、日々のセキュリティログのチェックで被害拡大回避に努めております。

 

(2)外部環境変化に伴うリスク

 当社グループの付加価値の源泉である高機能・独自製品については、その一部のアイテムの販売先が、自動車、エネルギー、IT・半導体、化学製品など先端技術分野の産業・業種に依存する構造となっています。そのため、その業界に属するお客様の需給環境や投資計画、流通在庫の多寡によって、当社グループの受注環境が変動するリスクがあります。

 また、グローバル化しているお客様においては、その販売先のカントリーリスクが間接的に当社グループの受注環境に影響を与えています。またコロナ対応で傷んだ各国の財政問題、米中貿易摩擦の長期化や中東の地政学的リスクが顕在化すると、当社グループの受注減少につながるリスクを認識しています。例えば、半導体関連の禁輸・制裁問題が超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売減を引き起こす虞なども想定しています。同様に、為替水準の変動は、お客様の製品・サービスの価格競争力を押し下げる効果があるため、為替リスクも間接的に当社の受注環境に影響いたします。なお、当社グループにおける外貨建て取引は僅少であり直接的な為替リスクは大きくありません。

 このような外部環境の変化による受注・販売の減少リスクに対しては、多能工化などフレキシブルな生産体制で固定費抑制を図るほか、多様な業種・業界のお客様に提供できる製品ポートフォリオの充実によって受注変動リスクの分散を図っています。

 一方、当社グループの材料調達については、主力のステンレス鋼線部門の原材料は主成分であるニッケルやクロムなどのレアメタル相場の影響を受けます。原産国のカントリーリスクの発現などによりレアメタルの需給がひっ迫すると国際市況価格が高騰し当社の調達コストも増加しますが、為替変動リスクも含めた原材料の価格変動に連動してステンレス鋼線の販売価格を変更したり、契約に基づくサーチャージ制度により、原材料変動リスクの影響は限定的となります。ただし、ニッケル価格が極端に高騰すると、お客様が安価な代替品へ移行するリスクを認識しています。同様に、異業種企業や技術革新等により、当社グループのステンレス鋼線や金属繊維製品を代替するような素材や構造などが開発されるリスクもあります。当社グループでは、技術交流会や展示会などを通じて、お客様やマーケットのニーズの変化を的確に捕捉し、タイムリーに新製品の市場投入や品質改善活動に努めています。また、材料調達の大部分を一部の国内大手メーカーに依存しています。主要材料については調達できないというリスクは限定的ですが、メーカー指定の独自鋼種の材料調達に関しては、当該メーカーの生産停止などにより影響を受ける虞があります。

 

(3)安全・健康、品質やヒューマンエラーなどによるリスク

 当社グループにおいては、1トンに及ぶ重量物を取り扱うことや伸線機などの回転する危険な設備があることのほか、健康被害をもたらす特定化学物質の取扱い工程があるため、従業員の安全と健康を脅かす労働災害のリスクがあります。当社グループでは、安全と健康が幸せの原点と捉え、作業者による誤操作・誤動作による障害が発生した場合にも制御できるように設備のフェイルセーフ化を継続的に投資するとともに、人間ドックの費用補助や健康維持向上活動に積極的な支援を行い、働きやすい職場環境づくりに努めています。その結果、4年連続して「健康経営優良法人」に認定されています。

 また、当社製品は、半導体製造装置・医療・自動車関連などの素材として利用されています。そのため、当社製品の欠陥に起因して、重大事故が起きたり、ユーザーの生命・健康に害を及ぼすリスクがあり、当社グループには損害賠償を求められる虞を認識しています。損害保険加入などの対策のほか、異材や疵などの不適合製品の流出防止に向け、品質関連の教育を徹底するとともに、誤入力や識別異常の防止など検査工程のシステム化投資を継続的に実施しています。また、検査データの不正や改ざんによって、お客様や社会からの信頼を失墜し、当社の事業基盤を失うリスクについても重く捉えています。当社グループでは、検査データ不正防止に向け、測定データの自動取込みシステムを導入するとともに、規格外や仕様登録のない材料や製品を取り扱うことのできない仕組みを運用しています

 そのほか、(1)自然災害などの不可抗力や外部からの攻撃によるリスクで記述したとおり、当社グループでは生産、営業、開発などに関して多くの営業的な秘密や個人データを保有しています。過失などによって情報漏洩するリスクがあり、その影響は不正アクセスによる漏洩と同様と認識しています。当社グループでは、機密情報へのアクセスを制限したり、ソフトウェアなどで外部データ持ち出しを防止するほか、定期的にIT監査を通じて牽制を図っています。また、外部メールの運用ルールや重要情報の公開時の手続きの明確化にも努めています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

2022年度の世界経済は、コロナ禍の収束によって経済活動の正常化が期待されましたが、ロシアによるウクライナ侵攻がサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰を引き起こし、欧米ではインフレ対策のための利上げによる景気の減速傾向が表れてきました。中国でもゼロコロナ政策転換による感染症急拡大が経済活動の大きな制約となりました。日本経済においても、コロナ感染症の抑制と経済活動の再開によって持ち直してきましたが、世界経済の減速、資源・エネルギーや食料品などの価格上昇の影響を受け、さらに円安影響により景況感の先行きに対する不透明感が大きくなってきています。

このような事業環境の中で、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)は、資源価格の高騰や電気料金などの製造コストの増加を販売価格へ転嫁するとともに、高機能・独自製品の拡販に努めました。

結果として通期の売上高は、過去最高の490億55百万円(前期比9.5%増)となりました。損益については、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)や太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線に代表される高機能・独自製品に対する需要の強さが継続したものの、ステンレス鋼線の流通在庫の調整による販売量減少が操業度損増につながり減益を余儀なくされました。営業利益41億79百万円(同9.1%減)、経常利益43億円17百万円(同6.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益30億86百万円(同2.9%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高の相殺消去前の金額を記載しています。

 

[日本]

生産面では、極細線やばね用材の機能能力増強のための投資や東大阪工場の耐震対策を推し進めました。また、金属繊維部門では老朽化した製造装置に対するリフレッシュ投資を推し進め、安定した生産基盤の確保と品質向上を図りました。販売面では、ニッケル価格の高騰によるステンレス鋼線部門の販売単価が上がったことから、売上高は438億74百万円(前期比9.8%増)となりました。極細線や超精密ガスフィルター(NASclean®)といった高機能・独自製品の販売も堅調に推移したものの生産数量減少に伴う操業度損が響き、セグメント利益は36億72百万円(同11.4%減)となりました。

 

[タイ]

電磁SUSや極細線など、高機能・独自製品の生産・販売が堅調に推移したことから、売上高は58億92百万円(前期比3.4%増)、セグメント利益は3億79百万円(同5.5%増)となりました。

 

[中国・韓国]

コロナ禍で落ち込んだ衣料品販売が回復し化合繊維用途の需要が好調に推移したほか高機能フィルム用途のナスロン®フィルターの販売を順調に伸ばし、売上高は17億27百万円(前期比31.7%増)、セグメント利益は1億76百万円(同26.1%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は540億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億23百万円増加しました。流動資産は棚卸資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ16億47百万円増加しました。固定資産は有形固定資産が増加したことなどにより、11億76百万円増加しました。

負債は164億48百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億71百万円増加しました。流動負債は支払手形及び買掛金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1億25百万円増加しました。固定負債は長期借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べ5億45百万円増加しました。

純資産は利益剰余金が増加したことなどにより376億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億52百万円増加しました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は141億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億6百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは18億61百万円の収入となり、前期に比べ26億11百万円収入が減少しました。これは棚卸資産が増加したことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは17億81百万円の支出となり、前期に比べ81百万円支出が増加しました。これは有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは10億46百万円の支出となり、前期に比べ2億91百万円支出が減少しました。これは長期借入れによる収入が増加したことなどによるものです。

 

(キャッシュ・フロー指標)

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。

 

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

自己資本比率      (%)

   71.7

   70.7

   68.2

   68.5

時価ベースの自己資本比率(%)

   41.9

   47.2

   53.3

   52.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

    0.3

    0.2

    0.1

    0.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

   379.8

   769.7

   954.3

   534.6

     ※ 自己資本比率:自己資本/総資産

       時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

             キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

             インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

      (注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

          2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により計算しております。

                  3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

         4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

日   本(百万円)

40,904

8.5

タ   イ(百万円)

5,792

6.5

中国・韓国(百万円)

1,720

44.0

合計(百万円)

48,417

9.2

(注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日   本

42,365

2.4

5,407

△20.4

タ   イ

3,854

△3.7

472

1.7

中国・韓国

1,334

8.6

199

△38.3

合計

47,554

2.1

6,079

△19.8

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

日   本(百万円)

43,874

9.8

タ   イ(百万円)

5,892

3.4

中国・韓国(百万円)

1,727

31.7

 消    去(百万円)

△2,439

12.3

合計(百万円)

49,055

9.5

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

 

大同興業株式会社

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

 

10,037

22.4

11,175

22.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

なお、見積り及び判断・評価につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億23百万円増加し、540億54百万円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ6億71百万円増加し、164億48百万円となりました。

当連結会計年度は、ニッケル価格高騰の影響を受けステンレス鋼線の仕入・販売単価とも上がったために売上債権(前連結会計年度末比1億40百万円増)、棚卸資産(同比24億18百万円増)、買入債務(同比1億89百万円増)とも増加し、運転資金が23億69百万円増加しました。一方、減価償却費以上の設備投資を実施したこともあり固定資産は11億76百万円増加しました。純資産は、利益剰余金が前連結会計年度末に比べ11億95百万円増加し、376億5百万円となりました。結果として、増加運転資金をキャッシュの取り崩しによって賄い、現金及び預金の残高は前連結会計年度末に比べ9億82百万円減少しました。

利益の積み上がりによって自己資本比率は68.5%(前期比0.3ポイント増)に高まりましたが、総資産の増加によってROA(経常利益/総資産)は8.2%(前期比1.3ポイント減)となりました。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は490億55百万円(前期比9.5%増)となり、前連結会計年度に比べ42億59百万円増加しました。

高機能・独自製品が売上高全体に占めるシェアは64.0%(前期比1.0ポイント増)となりましたが、高機能・独自製品の売上高は前期比12.2%増加しました。高機能・独自製品の売上高増加の主な要因は、細径の極細線や超精密ガスフィルター(NASclean®)が好調に推移したことによるものです。

 

0102010_006.png

(注)2021年度のタイ精線は12ヵ月分に補正

 

事業部門別の売上状況は、次のとおりとなります。

 

[ステンレス鋼線]

ステンレス鋼線においては、2022年度上半期の販売量はニッケル価格上昇を見込んだ駆け込み需要が発生し月当たり3,412トンと高水準の推移を維持するも、下半期は自動車用途や建材用途の荷動き鈍化が鮮明となり過剰在庫の調整が生じたことから、第3四半期月当たり3,023トン、第4四半期月当たり2,887トン(第3四半期比4.5%減)と下半期平均2,955トン(上半期比13.3%減)となりました。一方、高強度ばね用材や太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線など高機能・独自製品の販売は、年度を通じて堅調に推移しました。

なお、LMEニッケル価格については、2020年度第1四半期から右肩上がりの傾向となっていましたが、ウクライナ情勢の影響もあり2022年度の平均価格がポンド当たり11.63ドル(前期比平均に比してポンド当たり2.28ドル上昇)と急激に上昇したことに加え、円安進行の影響もあり円貨ベースでの価格高止まりが継続しました。

結果として、通期におけるステンレス鋼線全体の月平均販売数量が3,184トンと減少(前期比399トン減、同11.1%減)したもののニッケル価格上昇に伴う単価値上げにより、売上高405億25百万円(同9.2%増)となりました。

海外現地法人であるTHAI SEISEN CO., LTD. および大同不銹鋼(大連)有限公司についても、ステンレス鋼線の販売数量の減少はあったもののニッケル価格上昇を受け売上高の減収幅は僅少に留まりました。

 

[金属繊維(ナスロン®)]

金属繊維においては、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)が好調に推移しました。その背景には、第5世代移動通信システム(5G)の立ち上がりやデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及によりデータセンター向けの半導体の需要が高水準で推移していることに加え、社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けた高性能な半導体に対する需要が高まり、超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売が伸びました。但し、経済先行きに対する減速懸念の高まりやDRAMやNAND型フラッシュメモリの価格低迷を背景として半導体メーカーが設備投資を先送りしはじめた影響が第4四半期から表れました。

ナスロン®フィルターについては、アジア向けのポリエステルフィルム用途の大口案件や国内のMLCC製造プロセスで用いられる離型フィルム用途の案件を獲得できたことから、前期比増収となりました。特に、海外現地法人である耐素龍精密濾機(常熟)有限公司において、コロナ禍で落ち込んだ衣料品販売が回復し化合繊維用途の需要が好調に推移したほか高機能フィルム用途のフィルターの販売を順調に伸ばし、売上高は過去最高となりました。

結果として、金属繊維部門の当期における売上高が85億29百万円(前期比11.1%増)と過去最高となりました。

 

(経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における経常利益は43億17百万円(前連結会計年度比6.1%減)となり、前連結会計年度に比べ2億82百万円減少しました。経常利益率は8.8%となり前連結会計年度比1.5ポイント下がりました。結果として、親会社株主に帰属する当期純利益は30億86百万円(同2.9%減)となりました。

経常利益が前期比減益となった主な要因は、高機能・独自製品の極細線や超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売は好調であったもののステンレス鋼線の数量減少による工場操業度損増加を強いられたことにあります。

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③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資金需要

成長投資への支出については、当社グループ中期経営計画の「高機能・独自製品の上方弾力確保・拡販と持続的成長のための生産基盤強化を目指す」を実現するために、主力の製造拠点である国内工場及びタイ、中国の在外子会社における生産効率向上や増産を目的とした設備投資を図ってまいります。また、お客様のニーズに対応した新製品開発と新市場創出に向け研究開発にも注力してまいります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務健全性の維持と資本コストを意識しつつ、積極的に対応していくことを方針としています。

運転資金としては、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費用や営業費用が必要となります。事業運営上の必要資金に加え、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧に備えるために、後述の退職給付債務の支払い原資の控除後、月商3ヵ月分の現金及び現金同等物の流動性確保を目途としています。

株主還元への支出については、連結業績や財政状態などを総合的に勘案し、連結配当性向40%程度を目途に配当を行うことを基本としています。

なお、当社グループでは退職一時金制度のみを採用しており、退職給付債務47億39百万円(2023年3月末現在)の支払い原資を、現金及び現金同等物にて実質的に保全しています。

 

c.資金調達

当社グループの運転資金及び投資資金は、原則として営業活動により獲得したキャッシュ・フローにより充当することを基本方針としています。ただし、有事の場合など、必要に応じ銀行借入による資金調達ができるように、取引金融機関との取引関係の維持強化に配慮した財務政策に努めています。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、主として、当社の研究開発部を核として、製造部門の技術スタッフとの協業で行われております。ステンレス鋼線では、コア技術を基盤に競争力を強化するための新技術開発とともに、顧客ニーズを迅速に捉えた新製品の開発を行っております。金属繊維では、既存製品群の更なる生産技術の向上と品質改善並びにその応用製品である金属フィルター製品群は、高分子・化学工業分野向けの高機能フィルター及び半導体・液晶産業分野向けの超精密フィルターなどの高付加価値の新製品の研究開発を行っております。

当連結会計年度における研究開発は、すべて「日本」セグメントに属しております。

なお、当連結会計年度の研究費の総額については特定の製品群に区分できない基礎研究費等を含め588百万円となっており、当連結会計年度における主要な新製品の研究開発活動の状況を示すと次のとおりであります。

(1)ステンレス鋼線

①超高強度ばね材(商品名:ハーキュリーEH)の開発

②高強度導電ばね材(商品名:エレメタル e-Fine)の開発

③高強度高耐熱材料(商品名:タフステン)の開発

④耐水素脆性ばね材(商品名:ハイブレム-S)の開発

⑤高精度スクリーン用極細線の開発

⑥医療用ステンレス鋼線(商品名:INS304V)の開発

⑦2相系ステンレス鋼線の開発

⑧耐熱ばね材の開発

⑨耐熱ボルト材の開発

⑩高耐熱溶接材の開発

 

(2)金属繊維

①半導体プロセスガス用小型精製器の開発

②ポリマー用高機能複合フィルターの開発

③半導体ガス用高耐食低圧損フィルターの開発

④半導体プロセスガス用超高精度フィルターの開発

 

(3)その他

①水素分離膜モジュールの開発

②水素貯蔵回収モジュールの開発

③水素吸蔵モジュールの開発

④環境対応車(xEV)への磁性材料、及び抵抗材料による用途開発