第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

1.経営方針

 NSGグループ経営指針「Our Vision」は以下のとおり、「使命:NSGの存在意義」、「目指す姿:NSGのなりたい姿」、「コアバリュー:働き方の基盤となる価値観」から構成されています。

 

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 当社グループは、Our Visionを経営の指針とし、お客様と社会が求める多種多様なニーズに対して従来のガラスを超えるプラスアルファの価値やサービスを迅速かつ適切に提供することにより、持続的成長可能な社会の実現を目指しています。

 

2.マテリアリティ

 当社グループでは、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題として、以下の表の通り5項目のマテリアリティを設定しました。この5項目は、「社会にとってのインパクト」と「当社グループにとってのインパクト」を2軸に、マトリクス上で影響度を評価して重み付けを行い決定しました。

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 これ以外に、コーポレートガバナンス、および財務基盤の確保は会社へのインパクトが極めて強く、会社の基盤ともなるものであり、マテリアリティ選定とは別建てとして当社グループとして重点的に取り組む課題としています。

 

3.NSGグループの中期ビジョン

 NSGグループの使命である「快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く」を実現するべく、当社グループは、進むべき方向性として、中期ビジョン「高付加価値の『ガラス製品とサービス』で社会に貢献するグローバル・ガラスメーカーとなる」ことを新たに掲げました。

 これに基づいて、当社グループが「目指すべき貢献領域」として、以下の3分野を設定しています。

①快適空間の創造:快適で安全・健康な「人にやさしい生活空間」を創造する

②地球環境の保護:再生可能エネルギーの活用拡大や冷暖房負荷の軽減などを通して「地球にやさしい環境」を創造する

③情報通信分野: 人々の暮らしをより便利にし、社会の進化をささえる情報通信関連分野に貢献する

 

 また、企業の「ありたい姿」として以下の2項目を設定しています。

・常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループであり続ける

・事業活動を通じて、従業員が「成長」し、「働く喜び」を得られる企業グループであり続ける

 

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4.「中期ビジョン」実現のためのロードマップ

 当社グループは、持続的な成長を目指せる事業体質を構築するため、2022年3月期から2024年3月期までの3年間を期間とする、新中期経営計画「リバイバル計画24(RP24)」を2021年5月13日に公表しました。

 中期ビジョンの実現に向けて、ステップI(RP24、2022年3月期~2024年3月期の構造改革期)およびステップII(2025年3月期以降の持続的な成長サイクルの確立期)に分けて施策に取り組みます。RP24期間については構造改革期と位置づけ、収益構造の改革、財務基盤の回復、事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組み、抜本的・本質的な施策を完遂することを基本方針としています。

 

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5.新中期経営計画「リバイバル計画24 (RP24) 」における施策と目標

 

(1)RP24の主要施策

 RP24では、以下の「3つの改革」と「2つの重点施策」を断行し、持続的成長が果たせる強い事業体質を構築します。

 

 3つの改革:

① コスト構造改革

本質的なコスト構造改革(人員削減、固定費削減、購買コスト削減等)に取り組み、一層のコスト低減を図る

② 事業構造改革

高付加価値事業の拡大、新規成長分野の育成、投資・資産効率の重視により、成長を重視したメリハリのある事業構造への変革を図る

③ 企業風土改革

「顧客重視」、「迅速な意思決定とアクション」、「困難な課題の克服」を

重視し、常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループへの変革を図る

 

 2つの重点施策:

① 財務基盤の回復

・ 成長のための投資は戦略上の中核事業に絞り、優先順位をつけて実施

・ 徹底的なコスト見直しと生産性向上により、持続的に利益とフリー・

キャッシュ・フローを創出できる事業体質を構築

・ フリー・キャッシュ・フローと純利益の積み増しによる自己資本の改善を

目指すとともに、中長期的視点での財務基盤の強化も機動的に検討

② 高収益事業への

ポートフォリオ転換

・ 戦略上の非中核事業は大胆な縮小・撤退を検討

・ 投資・資産効率を重視し、限られた経営資源を成長・高付加価値分野に集中

・ 事業の高収益化とマネジメントコストの圧縮により、持続的成長基盤を構築

 

(2)財務目標

 当社グループにとって喫緊の課題である、持続可能な財務基盤への回復を期し、毎期の安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローの創出により、自己資本比率10%以上への早期回復を図ります。さらに、中長期的視点で財務基盤の強化についても機動的に検討します。

 

・ 営業利益率改善: コスト構造改革・事業構造改革・ポートフォリオ転換による稼ぐ力の強化

・ 投資の選択と集中:設備投資総額の抑制、資産効率と成長性・付加価値性を重視した優先順位づけ

 

 RP24期間の最終年度(2024年3月期)における財務目標は以下のとおりです。

営業利益率 ※1

8%

純利益 ※2

3年累計

300億円以上

自己資本比率

10%以上

フリー・キャッシュ・フロー

100億円以上

※1 個別開示項目前営業利益率

※2 親会社の所有者に帰属する当期損益

 

 

6.RP24の進捗状況

(1)RP24の主要施策

 2023年3月期はRP24の2年目となりますが、当年度における主要施策の進捗は以下の通りです。

 

3つの改革

①コスト構造改革

・主に欧米の自動車用ガラス事業を中心に拠点、製造ラインを統廃合することに伴う人員削減は2022年3月期で大部分を実施

・「改革・革新」活動を通した直接費低減の推進を継続

②事業構造改革

・米国、ベトナムにおける太陽電池パネル用ガラス事業が収益寄与と同時にCO2削減による地球環境の保護にも貢献

・マレーシアの既存フロート窯に、太陽電池パネル用ガラスを製造するためのオンラインコーティング設備を新設 (2024年3月期より生産開始予定)

・米国でも太陽電池パネル用ガラスの拡大に向けて検討中

・アルゼンチン2基目の新フロート窯建設完了、第3四半期から生産開始、市場拡大が続いている南米での事業拡大を推進

・高輪ゲートウェイ駅構内で透明太陽光発電窓パネルを使用した実証実験を開始

・英国でフロート板ガラスと型板ガラス共有の溶融窯への投資決定(2024年8月までに稼働予定)

③企業風土改革

・全従業員意識調査“Your Voice” Surveyで従業員の声をグローバルに収集、調査結果を踏まえて企業風土改革をトップから推進すべく「リーダーシップ行動憲章」を策定

・「Inclusion & Diversity (I&D)」を「Diversity, Equity & Inclusion (DEI)」に発展、個々の従業員のキャリアパス開発、エンゲージメント向上を志向

・取締役会の多様性課題に対応して取締役を選任

 

 

2つの重点施策

①財務基盤の回復

・自己資本比率は10%超を維持

・フリー・キャッシュ・フローは139億円を計上

②高収益事業へのポートフォリオ転換

・中国の大手自動車用ガラスメーカーと中国の自動車用ガラス事業を統合

 

(2)財務実績

 2023年3月期及び2022年3月期における財務数値は以下のとおりです。営業利益率および純利益については今後より一層改善の必要がありますが、自己資本比率およびフリー・キャッシュ・フローについては2年連続で目標を達成しています。

 

 

2023年3月期

2022年3月期

営業利益率 ※1

4.6%

3.3%

純利益 ※2

純損失338億円

純利益41億円

自己資本比率

10.2%

15.5%

フリー・キャッシュ・フロー

139億円

223億円

※1 個別開示項目前営業利益率

※2 親会社の所有者に帰属する当期損益

 

 

7.経営環境及び対処すべき課題

(1)当社グループを取り巻く経営環境

 2023年3月期は、期中はかつてないほど高騰した欧州の天然ガスを中心に投入コストが高騰し、また当社グループが事業を行う市場環境は事業により濃淡がありましたが、下半期にはエネルギー関連の投入コストも下落し、市場環境も概ね安定してきました。建築用ガラス市場は、下半期以降欧州で需要がやや軟化したものの多くの地域で需要に支えられ、高騰した投入コストを価格転嫁で吸収し、好調でした。自動車用ガラス市場は、半導体を中心とした自動車部品不足による自動車生産制約の影響が下半期以降徐々に緩和し、また第2四半期以降多くの取引先との価格交渉が進捗した結果、販売価格改善により高騰した投入コストの影響を軽減しました。高機能ガラスは、下半期には新型コロナウイルスに関連した中国におけるロックダウンとIT市場の減速の影響を受けましたが、全般的に安定していました。ただ、金利上昇による潜在的な景気後退のリスクにより市場環境は依然不透明です。またエネルギー関連の投入コストは下落したものの、再び高騰するリスクはあります。世界的なインフレ拡大等で原材料や運送費や人件費等その他コスト増加は継続しており、引き続き、生産コストの更なる引き下げと製品価格への転嫁に取り組み、収益力の回復を進めていく必要があります。

 

(2)対処すべき課題

 当社グループが対処すべき重要な課題は、早期の収益力の回復、そして、事業構造の転換の加速です。

コロナ禍からの経済回復の過程でサプライチェーンが混乱し、原燃材料価格が高騰した後、燃料価格については一旦落ち着きを見せましたが、引き続き注意が必要です。また、インフレ拡大に伴う原材料や運送費や人件費等その他コストの増加、金利上昇に伴う潜在的な景気後退リスクなど事業環境は常に大きく変化しています。これらの変化に早期に対応し、収益力の回復を果たさなければなりません。RP24の財務目標のうち営業利益率、純利益については達成することができておらず、これには自動車ガラス事業の収益力改善が非常に重要です。同事業では、2023年3月期はコスト削減、付加価値製品の拡大、価格転嫁により下半期以降収益が改善し通期黒字を達成しましたが、引き続き収益力の改善に取り組みます。

 2023年4月より新たな代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の下での経営体制がスタートしましたが、このためにRP24における3つの改革である「コスト構造改革」、「事業構造改革」、「企業風土改革」に引き続き注力していくことに変わりはありません。

 「コスト構造改革」では、本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)に引き続き取り組んでまいります。DX(デジタルトランスフォーメション)はその推進に不可欠のものと考えており、全社横断で進めて行く予定です。

 「事業構造改革」については、建築用ガラス事業では、メガソーラー向け太陽電池パネル用ガラスの拡大やビル・住宅向け建物一体型太陽光発電パネルの開発に取り組んでおり、汎用窓ガラス事業から高付加価値ガラス事業への転換を進めています。高機能ガラス事業では、コンタクトイメージセンサーに使用されるSELFOC® Lens Arrayの産業用検査機用途等デジタル市場への展開を図っています。脱炭素社会を背景に伸びる複合材市場への新たなソリューションとして上市した高弾性・高強度ガラスファイバー「MAGNAVI®」は、輸送機の構造部材として多くの引き合いを受けています。

 「企業風土改革」では、「コスト構造改革」「事業構造改革」を成し遂げていくため、4(=3+1)つの「F」(Flatな組織、Frankなコミュニケーション、Fastな意思決定+職場におけるFun)と人材の多様化により、事業改革をスピードアップしていきます。

 以上のRP24における3つの改革の推進を踏まえ、将来に向けた戦略として、4つの「D」(Decarbonisation (脱炭素化)、Digital(デジタル)、Development (新規事業・製品開発)、Diversity(多様化))をキーワードに取り組んで行きます。「Decarbonisation (脱炭素化)」と「Digital(デジタル)」は、当社グループ事業の成長のためだけでなく、コスト削減等オペレーションにおいても極めて重要です。また脱炭素化とデジタルという市場トレンドを掴みビジネスにつなげるため、新技術、新商品、新しいビジネスモデルの「Development (新規事業・製品開発)」を目指していきます。そして事業の発展に欠かせない、新しいアイデアの源泉として「Diversity(多様化)」をより一層進めていきます。

 これらの改革と戦略の実行により、早期の収益力の回復と事業構造の転換の加速を実現し、安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローを創出する持続的成長が可能な事業体質への変革を進めていきます。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

1.サステナビリティ全般

 当社グループは、サステナビリティへの取り組みは、環境や社会課題の解決、および事業の持続的な発展を両立させる重要な活動であると位置づけ、サステナビリティ活動を通じて社会と共に成長することを目指します。

 当社取締役会は、このような取り組みに関する経営の基本方針として「NSG グループ サステナビリティ基本方針」を策定しました。また、当社グループは中期経営計画策定の過程において、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題として、「環境」「社会シフト・イノベーション」「安全で高品質な製品・サービス」「倫理・法令遵守」「人材」という5項目のマテリアリティを設定しました。これらは上記基本方針の下に位置付けられるものでもあり、この基本方針のもと、サステナビリティへの取り組みを行っています。

 

(1)ガバナンス

 取締役会は、当社グループのサステナビリティ活動の基本方針と目標を定めています。サステナビリティに関する取り組みについては、サステナビリティ委員会を中心に推進し、取締役会へ定期的に報告し、そこで示された取締役会の意見をさらに以降の取り組みに反映するようにしています。2023年3月期は9月と3月に、気候変動やサステナビリティ全般の進捗について取締役会に報告しました。サステナビリティ委員会は、当社グループのサステナビリティ戦略を設定し、その活動を統括するとともに、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを確実なものとすることを目的としております。同委員会は、CEO、会長、CFO(最高財務責任者)、CAO(最高管理部門責任者)兼CRO(最高リスク責任者)、CLO(最高法務責任者)兼CE&CO(最高倫理・コンプライアンス責任者)、CHRO(最高人事責任者)、サステナビリティ部統括部長、及び関連グループファンクション部門長、事業部門長により構成され、CEO又はその指名した者が議長を務めます。サステナビリティ委員会には、エネルギーや脱炭素への取り組みについて議論するエネルギー&カーボン委員会をはじめ、安全衛生、人材、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン等の各分野において、それぞれ下部委員会が設置されています。2023年3月期にサプライチェーン上の課題について議論するサプライチェーン委員会が新たに設置されました。目標設定、進捗管理、施策について、関連部門の代表者および都度指名された者が出席し議論しています。

 

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(2)リスク管理

 当社グループは、ISO31000に基づき、戦略的リスク委員会(SRC)が企業リスク管理(ERMプロセス)を実施しています。戦略的リスク委員会は、グループ活動に関連するリスク選好度と許容範囲を定義し、戦略達成のためのリスクを特定し評価するプロセスを定期的に行っており、サステナビリティに関連するリスクは、当戦略的リスク委員会で管理されます。2023年3月期は9月と3月に、気候変動、製品品質不良、人材に関するリスクについて同委員会で報告されモニタリングされました。戦略的リスク委員会の構成については第4 提出会社の状況 4「コーポレート・ガバナンスの状況等」(1)コーポレート・ガバナンスの概要 を参照ください。

 

2.気候変動

 気候変動対策が人類共通の課題となった今日、エネルギー集約型・炭素集約型の製造業である当社グループにとって気候変動への取り組みは必要不可欠であり、当社製品を通じて脱炭素社会に貢献することにより「快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く」という当社グループの使命を果たすためにも、優先度の高い経営課題であると認識しております。当社グループはTCFDに賛同しており、2022年5月にスコープ1、2、3全ての温暖化ガス削減目標についてSBTi認証を取得しました。気候変動を当社グループのマテリアリティの一つである「環境」領域における重要課題と定め、積極的な活動を進めています。

 

(1)ガバナンス

 気候関連のリスクと機会は取締役会によって監督されており、グループCEO及び取締役会は、気候変動を含むグループのサステナビリティ活動の基本方針と目標を定めています。気候変動関連の課題は、すべてのサステナビリティ目標の達成と、関連するすべての事業につなげることを目的として、経営会議、サステナビリティ委員会、戦略的リスク委員会で議論されています。これには、企業の成長と積極的な社会貢献の双方を達成するためのリスク分析と機会分析に基づく戦略や行動などが含まれます。ESG分野の専門家である取締役が、意見と指導を提供します。各事業部におけるエネルギーやCO2排出量削減状況など、それぞれの分野での活動や進捗は、サステナビリティ委員会の下部委員会において管理されています。詳細については、「1.サステナビリティ全般 (1)ガバナンス」を参照ください。

 

(2)戦略

 当社グループでは、短期、中期、長期の気候変動に関連するリスクと機会について、次の3つの主要シナリオに従ってリスク分析を行い、2100年までのタイムスケールにおける物理リスクと移行リスクを特定しました。

 

・低炭素世界シナリオ(<2℃)

低炭素経済への移行を目指し、今後30年間に炭素排出量を抑制するための積極的な緩和策を講じるシナリオ。

・RCP 4.5 中位安定化 (2-3℃の温度上昇)シナリオ

現在の政策、誓約、目標が達成されることを想定した、中間的シナリオ。

・RCP 8.5 高位参照シナリオ(>4℃)

物理的リスクを回避するための施策をほとんど何も行わず、排出量を増やし続けた結果、世界の気温は大幅に上昇し続け、壊滅的な結果を迎えるシナリオ。

 

 特定されたリスクと機会には、次の影響が含まれます。

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 特定されたリスクと機会は、当社グループの標準的なリスク管理フレームワークによって定量化され、分類され、それに応じて優先順位がつけられました。それには、ポリシーと法的側面、技術側面、市場側面、評判の側面における影響も含まれます。

 

 特定されたリスクのうち、影響度や緊急度が高い例は、以下の通りです。

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 このように特定されたリスクと機会は、当社グループの事業戦略である「リバイバル計画24(RP24)」の中でさらに強化され、盛り込まれた結果、例えば、サプライチェーンにおけるCO2排出量を含むさまざまな持続可能性の側面に焦点をあてた「サステナブルサプライチェーン」プロジェクトの発足や、温室効果ガス排出量削減に向けた研究・技術開発への投資、社会の脱炭素化を支える新製品の開発などにつながりました。このような活動は、「快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く」という当社グループの使命と一致しています。

 また、前述した複数の温暖化シナリオに基づき、気候変動に対するレジリエンスの定量的・定性的な分析と、今後実施すべき行動の優先順位付けも行いました。その結果、当社グループにとって最も影響度が高く可能性も大きいリスクは、GHG排出量の価格に関連するコストの増加であるとの分析結果に基づき、中長期にわたるグループの脱炭素目標を策定しました。当社グループが策定した削減目標は2019年にSBTにより認定されましたが、2022年には、パリ協定の2℃を十分に下回る温暖化シナリオに沿った、より野心的な目標に更新されました。

 この目標を遵守することで、気候変動に関する物理リスクと移行リスク双方に対するグループのレジリエンスが向上します。

 

(3)リスク管理

 気候関連のリスクは、戦略的リスク委員会が特定・監視するリスクに含まれ、財務への影響、事業への影響、コンプライアンスへの影響、外部評価への影響の4つのベクトルについて定量的基準で評価されます。戦略的リスク委員会は、リスクに対応する統制と緩和策を評価し、必要に応じて追加措置の実施を指示します。リスクオーナーは、グループの許容範囲内でリスクを管理するために、決められたアクションプランに対応する進捗状況をモニターし、報告する責任を負います。個々の統制と対策は、各事業部(SBU)およびグループファンクション内で進捗管理され、経営会議およびサステナビリティ委員会に報告されます。戦略的リスク委員会に報告された特定のリスクと機会は、リスクマネジメントと事業戦略の統合を確実にするため、定期的に(最低6か月に1回以上)経営会議に報告されます。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、グループ内(スコープ1、2)、サプライチェーン(スコープ3)および顧客(スコープ3)全体に影響を与えるすべての温室効果ガス(GHG)排出量をモニターしています。

当社グループのSBTの基準年度(1月から12月の1年間合計)におけるCO2排出量は以下の通りです。

スコープ1

スコープ2(マーケット基準)

3,103千トン

891千トン

 

 最新年(2022年1月から12月の1年間合計)の3つのスコープのCO2排出量は以下の通りでした。

スコープ1

スコープ2(マーケット基準)

2,910千トン

542千トン

 

 

 

 また、2018年から2021年までのCO2排出量の推移は以下の通りです。

二酸化炭素排出量

二酸化炭素

(千トン)

 

2018年

2019年

2020年

2021年

スコープ1

3,103

2,970

2,817

3,028

スコープ2ロケーション基準

1,050

885

728

749

スコープ2マーケット基準

891

790

530

622

スコープ3

2,513

2,819

2,952

3,556

※CO2排出量は各年度1月から12月の1年間合計

 

 また、ガラス製造工程における単位生産量当たりの温室効果ガス排出量を、2018年3月期比で2024年3月期までに8%削減するという目標を立てて取り組んでいます。2022年3月期の進捗状況は、2021年度対比で7%改善し、2018年3月期対比で2%改善しており、順調に推移しております。

 

 当社グループは、スコープ1とスコープ2のCO2排出量を2030年までに21%削減するという目標について、2019年にSBT認証を取得しましたが、2021年にこの目標を見直し、より野心的な目標に引き上げると共に、スコープ3の目標を設定しました。この改訂された目標は、スコープ1とスコープ2、およびスコープ3のCO2排出量を2030年までに2018年対比で30%削減するというものであり、2022年5月にSBT認定されました。また、2050年のカーボンニュートラルの達成をコミットしました。以下に掲げるロードマップの実施により、CO2排出量の削減、ひいては環境貢献製品の継続的な開発と当社事業に関連する機会の拡大につなげます。

 

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3.人的資本及び多様性

(1)ガバナンス

 人材戦略については、サステナビリティ全般を推進するサステナビリティ委員会のもと、テーマごとの下部委員会にて具体的な戦略を設定し、活動内容を統括し、進捗状況を共有しております。

 活動はグループ全体で共通の仕組みを導入して推進されています。具体的には、人材情報管理システム、職務評価に基づく報酬設定、パフォーマンス管理、サクセッションプラン、教育体系・ツール等をグループ全体で導入し、CEO、CHROをはじめ事業部門長やグループファンクション部門長が参加するGlobal Talent Reviewで議論されています。また多様性については、個々の従業員に寄り添いそれぞれの環境・状況に応じた最適な機会を提供することを重視して、グローバルInclusion & Diversity(I&D)運営委員会をグローバルDiversity, Equity & Inclusion(DEI)運営委員会と改称し、主に女性活躍について議論しています。それらの結果に基づき、アクションのグループ全体への展開を図っています。

 

(2)戦略

 2024年3月期における経営重要テーマの実行を支える戦略として、6つの柱を策定しています。具体的には「シニアマネジメント層の強化およびOne Team化」「オープンで透明な対話型の組織運営」「リスキリングを含めた成長機会の提供」「“新しいアイデアの源泉”としての人材多様性の推進」「Groupへの絆を深めるコミュニティー意識の醸成」「人材の確保・育成・採用に資する評価・報酬体系の構築」です。

 当社グループは中期経営計画「リバイバル計画24(RP24)」において、「3つの改革」の1つとして「企業風土改革」に取り組んでまいりました。2022年1月に実施した従業員サーベイの結果を受けて、2023年3月期の人事施策のフォーカスエリアを「タレントマネジメント」「社員エンゲージメント」「企業文化の創造」と設定しており、2024年3月期はそれをより経営テーマに即した課題として6つの柱に具体化しています。

 

(3)リスク管理

 当社グループの変革と将来の成長は有能な人材の確保と育成に大きく依存します。当社グループでは、人材確保・育成・リテンションのための各種施策に取り組んでいますが、技術者を中心とする人材獲得競争はさらに激化しており、適切なタイミングで優秀な人材が計画通り確保できない、確保した人材の育成が計画通り上手くいかない、又は育成した優秀な人材を維持できず社外流出が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

 リスクオーナーであるCHROは人材不足リスクをグループの許容範囲内で管理するために、決められたアクションプランに対応する進捗状況をモニターし、戦略的リスク委員会に報告する責任を負います。戦略的リスク委員会に報告された特定のリスクと機会は、リスクマネジメントと事業戦略の統合を確実にするため、定期的に(最低6か月に1回以上)経営会議に報告されます。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、グローバルDEI運営委員会においてグループ全体の女性管理職比率を2021年6月末実績の12.7%から2024年3月期までに各事業部門・各ファンクション部門にて現状比+1ポイントとすることを目標としています。2022年12月末時点での実績は14.4%となり、目標を上回る1.7%の改善となりました。引き続きベストプラクティスを共有し、さらなる向上を目指します。

 なお、提出会社及び国内連結子会社における人的資本経営に関連する各種指標の2023年3月期の実績は、第1 企業の概況 5「従業員の状況」(4)多様性に関する指標 をご参照下さい。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、経営指針「Our Vision」の下、「中期経営計画(RP24)」に沿って、持続的成長による企業価値の向上を目指しています。一方で、当社グループを取り巻く事業環境はますます複雑でダイナミックな変化を見せています。当社グループは、このような事業目標の達成に影響を及ぼす内部、外部の要因による不確実性をリスクと捉えています。そのマイナスの影響を最小化し、成果を最大化するため、重要なリスクについて識別、評価し確実に管理するリスクマネジメントは重要な経営基盤の一つと位置付けられます。

 

 当社グループのリスクマネジメントは、会社法やコーポレートガバナンス・コードの原則に基づき、取締役会で決議された「内部統制システム等に関する基本方針」に準じています。また、企業活動上発生するリスクへの具体的な対処については社内規程「リスクマネジメントに関するグループポリシー」に定めています。

 

 当社グループのリスクマネジメント体制は、日々の業務のなかに十分に活かされ、「3つのディフェンスライン」として機能します。第1のディフェンスラインは、それぞれの事業部門や間接部門(ファンクション部門)そのものの中に存在し、日々の業務として当社グループの全ての業務内に存在するリスクを識別、評価、管理することで、当該リスクを統制し、軽減します。第2のディフェンスラインは、ファンクション部門や経営陣によって担われ、業務やリスクマネジメントの方針や基準を定めるだけでなく、効果的なリスク統制活動をモニターします。第3のディフェンスラインは、内部監査部門によって担われ、独立して統制の有効性やリスクマネジメントプロセスを評価します。

 

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 全社的リスクマネジメント体制の中心として(主として第2のディフェンスライン)、当社グループは、トップダウンアプローチである戦略的リスク委員会(SRC)とボトムアップアプローチである全社的リスクマネジメントチーム(ERMT)を組み合わせたハイブリッド型の二層式リスクマネジメント体制を採用しています。いずれも経営会議の監督の下で運営され、その運営状況は取締役会に報告されます。

 

SRCストラクチャーとその目的 – トップダウンリスクレビュー

 SRCの議長は、最高リスク責任者(CRO)が務め、SRCは、CEOをはじめとする執行役及び他の関連幹部社員によって構成されます。

 SRCは、当社グループ全般にわたるリスク管理ポリシーや枠組みを決定し、その枠組みに従ってグループの戦略的リスクを特定のうえ、各戦略的リスクにつきリスクオーナーを定め、リスク軽減策の進捗等を含めモニターします。

 

ERMTストラクチャーとその目的 – ボトムアップリスクレビュー

 ERMTの議長は、最高財務責任者(CFO)が務め、ERMTは各事業部門のトップや部長、経理、人事、法務といったファンクション部門のトップから構成されます。毎年それぞれの業務の遂行に付随する重要なリスクについて識別、評価、優先順位付けを行い、必要なリスク軽減策を講じることでリスクマネジメントの実効性の向上を図っています。これらのリスクやその軽減策については、状況に応じて都度見直され、とりわけ重要なリスクについては、SRCによってモニターされます。ERMTは、定期的に又は必要に応じて開催され、SRCに報告します。

 

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 上記の枠組みにより、当社グループでは、各連結会計年度末時点における事業活動の状況及び財政状態に照らして、主要な財務上及び事業運営上のリスク要因につき、定期的な見直しを行っています。当連結会計年度末時点において、当社グループが認識している主要な財務上及び事業運営上のリスクは、以下に記載の通りです。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見しがたいリスク又は重要とみなされていないリスクが顕在化した場合には、これらの影響を将来的に受ける可能性があります。

 なお、文中における将来事項に関する記述は、当連結会計年度末時点における、当社グループの合理的な判断に基づくものです。

 また、当社グループが将来にわたって事業活動を継続する前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は、当連結会計年度末時点において存在していません。

 

(1)経済状況、地政学上の影響、事業環境

 当社グループは、日本を含むアジア、欧州、米州等、世界各国・地域で事業展開しています。このため、通貨インフレやエネルギー価格の上昇といった世界経済の変化、新型コロナウイルス感染症等の感染症の拡大の影響を含む世界各国における顧客の事業環境の変化、及びグローバルにつながるサプライチェーンの断絶や米中貿易戦争、ロシアによるウクライナ侵攻など世界各地における地政学上の問題が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 また、南米等の新興市場については長期的には先進国・地域の市場を上回るペースで成長するものと考えていますが、当社グループが事業を展開している先進国・地域の市場に比べてより大きな潜在的リスクがあると考えています。

 

(2)特定の産業・分野への依存

 当社グループの売上高の90%以上が、建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業におけるものであり、当連結会計年度では、それぞれ外部顧客への売上高の48%及び47%を占めています。また、当社グループの外部顧客への売上高は、主に建設、住宅産業及び自動車産業の顧客に対するものです。これらの業界では、これまでも消費者マインドの周期的な動きに連動して需要が変動してきました。需要の変動のみならず、顧客のサプライチェーンが、今後当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、相対的に利益率が高く、将来市場の大きな成長が見込まれる高付加価値製品の売上の増大に努めています。これらの製品は、一般的な製品に比べて価格の変動は通常小さいと考えられ、経済状況が悪化した場合の影響を受けにくいと考えられています。しかしながら、これらの製品が高い利益率を維持し続ける、又はこれらの製品の市場が製品全体の平均を上回るペースで成長し続けるという保証はありません。更に、他のガラスメーカーが技術的な優位を有する製品を市場に投入する結果、当社グループの製品との競合が高まり、高付加価値製品であるにもかかわらず利益率が低下する可能性があります。

 また顧客が当社グループに不利な形に戦略を見直す可能性があります。その場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があり、特定の顧客向けの高付加価値製品では影響がより大きい可能性があります。なお、自動車用ガラス事業では、自動車産業における企業間の合従連衡の結果、当社グループの顧客である自動車メーカーの購買力の上昇や販売先上位のメーカーへの顧客ベースの集中が生じる可能性があります。また、自動車産業においては、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の進展など歴史的な産業構造の変化が起こっており、サプライチェーンにも重大な変化をもたらす可能性あります。当社グループは、これらの変化に対応するため、更なる生産性の向上、コスト低減、リソース配分の選択と集中を進めていますが、こうした対応が功を奏さず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)競争

 当社グループは、日本及び海外のガラスメーカーと競合関係にあります。また、プラスチックや金属をはじめ、建築分野、自動車分野及び情報電子分野等で使用される各種素材メーカーとも競合関係にあります。当社グループでは、独自技術や独自製品の市場への提供により競争力の確保に努めていますが、市場ニーズの変化、製品を低コストで提供するメーカーの台頭、あるいは強固な顧客基盤や高い知名度を有するメーカーの参入等によって、当社グループの競争優位を維持できない場合、又は当社グループが獲得できないような政府による助成制度を競合他社が受けている場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(4)製品の開発及び技術革新

 当社グループは、既存の事業分野における独自技術や独自製品の開発に注力するとともに、既存分野以外の新しい分野における新製品の開発に注力しています。近年の急速で大きな技術の変化にタイムリーかつ適切に対応することは、製品、サービス、更にはデジタライゼーションやオートメーションといった製造プロセスにおける当社グループの技術優位性を高め、維持するために必要です。そのためには、顧客ニーズを把握するとともに、気候変動等の環境問題対応にかかる技術を含め、関連マーケットや製造業界における技術変化を先読みし、当社グループが強みを持つ技術領域に選択的・重点的にリソースを投入することで、技術開発、商品化、事業化を効果的に実現することが重要となります。しかしながら、新製品や新技術の開発プロセスは相当な時間と支出を要する可能性があり、また新製品の販売による収益や新技術の貢献が得られるまでに、多くの投資が必要となる可能性があります。

 また、競合他社が当社グループより先んじて技術開発を行い、特許権等の知的財産を確保し、商品化、事業化を成功させ、早く市場に製品を送り出した場合や、代替技術や代替製品が市場に受け入れられた場合には、当社グループによる製品開発のための投資は、当初想定した利益をもたらさない可能性があります。更に当社グループが技術革新を予測できない場合や、これに迅速に対応できない場合、あるいは顧客のニーズに適応した新製品の開発に成功しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(5)将来の必要資金

 当社グループは、①新製品の発売、②事業計画や研究開発計画の実行、③生産能力の拡大、④補完的な事業、技術又はサービスの取得、⑤コスト削減策やリストラクチャリング計画の実行、⑥期限を迎えた負債の返済やA種種類株式の償還等の目的に充当するため、将来において追加的な資金の調達が必要となる可能性があります。また、負債の借入契約に規定される財務制限条項等の条件に抵触することにより想定外のタイミングで当該負債の返済が必要となり、そのために追加の資金調達等が必要になる可能性もあります。当社グループが、借換えのための資金や新たに必要となる資金を想定する条件で調達できない又は全く調達できない場合、既存の製品及びサービスの拡充と改善や新事業開発のための投資を行うことが困難となり、その結果として競合他社よりも高い競争力を確保することが困難となる、又は資金調達コストが増加することなどにより、当社グループの事業活動、業績及び財務状況にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(6)海外における事業

 当社グループは、日本、アジア、欧州、北米、南米等、世界各国・地域に生産設備及び販売拠点を有しています。更に当社グループは、南米、ロシア、中国等の新興国・地域において、子会社、ジョイント・ベンチャー、出資、提携といった様々な形態により事業運営を行っており、これらは当該国・地域における当社グループの生産、販売能力を維持するうえで重要な役割を担っています。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、当社グループは、2022年3月以降、ロシアにおける当社グループ合弁会社とのすべてのガラス取引、及び同社における主要新規投資の承認を停止するとともに、ロシア企業とのすべての通商取引を停止しています。ロシアにおける投資の見通しの不透明さに鑑み、2022年3月期において、当社グループは、ロシアで事業を操業する会社を所有するオランダの持分法適用会社SP Glass Holdings B.V.に対する投資の一部につき、約34億円の減損損失を計上しました。更に、ロシアにおいて資本規制が課され、ロシアの事業会社による返済が制限されていることを踏まえ、SP Glass Holdings B.V.のロシアの事業会社に対する金融債権について、約34億円の減損損失を計上しました。

 しかし、当連結会計年度末後に、SP Glass Holdings B.V.は当該ロシアの事業会社を売却することにつき合意し、その後、連結財務諸表発行承認日時点において、当該譲渡取引は、ロシア関係当局の承認を経て、法的に完了しています。なお、当該譲渡取引の完了により、上記の減損損失については戻入益が発生し、当該譲渡取引については、全体として約50億円の利益計上が見込まれます。

 これらの国・地域の市場環境が更に悪化する場合には、将来において追加の減損損失が発生する可能性もあります。また、ジョイント・ベンチャーのパートナー等との間での事業運営等の方針の相違により、事業の継続が困難になるような場合やその他の要因によっては、投資に対する想定外の損失が発生する可能性があります。

 

(7)事故・自然災害等による生産中断等のリスク

 当社グループは、生産活動の中断により生じる潜在的な影響を最小限に抑えるため、設備に対して定期的な防災点検や保守を行っています。それに加え、生産設備に対する自然災害等(地震、台風、洪水、停電及び当社グループ又は顧客の生産を停止させるその他の事象等)の影響を抑えるべく、主要拠点では事業継続計画(BCP)を策定しています。しかしながら、事故、自然災害、新型コロナウイルス感染症等の感染症の大流行などによる当社グループの生産設備等の被害や生産活動の中断等の影響を完全に予防又は低減できない可能性があります。また、当社グループの特定の設備で生産される製品を、他の設備で生産できない場合もあります。したがって、地震及びその他の事象により、当社グループのいずれかの設備において生産の中断があった場合には、特定の製品の生産能力が著しく低下する可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、このような事態を想定して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの損害が補償されるわけではなく、保険の対象外である場合又は保険の限度額を上回る損害が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(8)為替及び金利の変動

 当社グループは、世界の多くの国々や地域で事業活動を展開しており、こうした国々や地域において為替レートの変動及び金利の変動のリスクを有しています。また、海外子会社の現地通貨で表示される資産・負債等については、連結財務諸表の作成のために円換算される過程において、為替レートの変動によるリスクも有しています。更に金利の変動は、支払利息や受取利息、あるいは金融資産や金融負債の金額に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは為替予約契約や金利スワップ取引等によりこれらのリスクのヘッジに努めていますが、為替レート及び金利の変動は、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)原燃材料の調達及び製品供給

 ガラスの製造や販売の過程においては、珪砂やソーダ灰等の原材料、重油や天然ガス、電気等のエネルギー、物流や保管、また国や地域によっては温室効果ガス排出権の状況が大きな影響を持ちます。当社グループでは、商品デリバティブ取引やスワップ取引により、原燃料の価格変動リスクをヘッジしていますが、これらの手法によって原燃料価格の上昇による影響を完全に除去できるわけではありません。当連結会計年度において欧州の天然ガス価格は下落傾向にあるものの、依然として高水準にあり、その他世界的なインフレ傾向等により原材料その他のコストは増加しています。これらの調達コストや価格の上昇や変動は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、原燃材料の調達に関して、仕入先との間で長期間に及ぶ固定価格での購入契約を締結する場合があります。また、当社グループの製品は、当社グループ独自の販売ルートに加え、当社グループ以外の第三者を通じて販売されています。何らかの理由により、主要な仕入先や販売先との関係の終了や重要な変更が生じ、又は主要な仕入先が契約上の義務を履行できなくなった場合には、現在よりも不利な条件での契約の締結が必要となり、又は原燃材料の仕入れや製品の流通に支障が生ずる可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(10)退職給付債務

 当社グループでは、多数の企業年金制度や退職者向け医療給付制度を運営しています。年金資産の時価が大きく変動した場合、又は年金債務計算に使用される割引率や死亡率等が大きく変動した場合には、当社グループの退職給付制度に対する追加的な資金拠出や保全措置が必要となる可能性があります。

 当社グループでは、従業員に対して適切な退職給付制度を提供する一方で、追加的な資金拠出が必要となるリスクを低減するため、退職給付債務について定期的に見直しを行っています。過去数年間にわたって、当社グループでは、年金資産の運用構成の見直し、年金受給者に関する長寿リスクのヘッジ、及び現役従業員に関する年金給付額算定のベースとなる給与額の上昇に対する上限の設定等の対応を行ってまいりました。しかしながら、こうした対応によって、将来における当社グループの年金制度に対する資金拠出増加のリスクを完全に除去できない可能性があります。

 

(11)法的制約

 当社及びその子会社、並びにジョイント・ベンチャー及び関連会社では、投資や輸出入に関する規制、公正な競争に関する規制、環境保護に関する規制並びにその他商取引、労働、退職年金、知的財産権、租税、通貨管理、支払い、資本、制裁等に関する所在国・地域の各種法令規則及び国際規則・条約の適用を受けています。これらの法令規則又はその運用の変更は、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課、又はこれに派生する民事賠償請求等によって、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 また、当社グループは、当社グループの役職員が職務遂行に際し法令及び定款に適合することを確保するため、「NSGグループ倫理規範」を制定し、倫理・コンプライアンス部を設置して継続的に倫理・コンプライアンスに関する周知、教育活動を行っていますが、当社グループ会社又はそれら役職員による法令違反が発生した場合には、当社グループの社会的評価、事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(12)事業戦略

 当社グループの事業戦略は、経済、法制環境、原料価格、為替レート、新技術や新製品の開発や提供、現在締結されている又は将来締結される契約の条件等の様々な要因により影響を受けます。そのため、当社グループの事業戦略が成功し、想定した成果を収めることができるという保証はありません。更に当社グループの事業計画の遂行が想定した効果を生まない、あるいは期待された効果を実現できない可能性があります。

 当社グループは、競争優位を維持するため、利益率の低い製品から高付加価値製品へのシフトを目的に新技術や新製品の開発に努め、投資を行っています。しかしながら、当社グループが、競合他社に先駆けてより高度な技術の開発やその事業化に成功し、又は結果的に競合他社よりも高い競争力を維持できるという保証はありません。

 1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、当社グループは、中期経営計画「リバイバル計画24」の下、収益構造の抜本的改革、財務基盤の回復、及び事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組みます。本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)の推進にあたっては、DX(デジタルトランスフォーメション)が非常に重要です。しかし、こうした取り組みが計画通りにいかない結果、さらなるリストラクチャリングや事業売却、そのための追加資金調達や金融支援が必要となる可能性があります。

 

 

(13)知的財産権

 特許権等の知的財産権は、当社グループの事業において競争力をもたらす重要な要素です。しかしながら、当社グループが有する知的財産権を常に保護できるという保証はなく、当該知的財産権の競争優位性が失われる可能性もあります。また、当社グループは世界各国・地域で事業を行っているため、知的財産権に関する第三者との紛争のリスクも高まっています。このような知的財産権に関する侵害や紛争が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(14)民事賠償責任

 当社グループの製品の欠陥により第三者に損害が発生した場合、当社グループは製造物責任に基づく賠償請求を受ける可能性があり、また、これにより当社グループの社会的評価に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような賠償責任に対して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの賠償責任が補償されるわけではなく、当該賠償責任の内容が保険の対象にならない場合や保険の限度額を上回る場合もあり得ます。

 また、当社グループでは、高品質の製品の製造に注力していますが、予期しない品質問題が生じた場合、大規模なリコールの実施が必要となる可能性があります。その場合は、当社グループの社会的評価が毀損し、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)気候変動や環境に関する法規制その他の要請への対応

 当社グループは、気候変動対策を始めとする持続可能な社会への取り組みに注力しています。地球環境に与える負荷を低減するため、温室効果ガス排出削減、省エネ・創エネ、廃棄物削減、有害物質の不使用・除去等の環境課題に取り組み、環境に関する様々な法令規則を遵守しています。しかしながら、環境に関する法令規則やその運用に関する変更が行われた場合には、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課等によって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。また、社会やステークホルダーから企業に対して気候変動や環境への対策及びその開示を求める要請は年々高まっており、それらについての十分な対応又は開示ができないことによって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。気候変動に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」2.気候変動をご参照ください。

 

(16)貸借対照表に計上された資産の評価及び減損等

 当社グループは、貸借対照表において、減損テストの実施を毎年必要とする多額の資産項目を計上しています。これらの資産には、ピルキントン社買収により発生したのれんや無形資産が含まれますが、これらに限定されるものではなく、各国・地域における税務上の繰越欠損金等に対して認識された繰延税金資産も含まれます。

 当社グループは、当連結会計年度において、2006年のピルキントン社買収に伴って発生した欧州における自動車用ガラス事業ののれん及び無形資産残高488億円全額について減損損失を計上しました。これは、主に減損テストで使用する割引率が大幅に上昇した結果、減損損失を認識したことによるものです。

 当社グループの資金生成単位について、将来において減損損失が全く発生しないという保証はありません。当社グループの今後の業績が以前に減損テストを実施した際の想定通りに改善しない場合には、将来において減損損失が発生する可能性があります。更に、経済状況に応じて事業の縮小・撤退を決める場合には、上述以外の資産を減損する可能性もあります。

 当社グループは、年度末に回収可能性を検討し繰延税金資産を再評価しますが、繰延税金資産の算定に使用される適用税率が低下すれば、将来において繰延税金資産の評価減が発生する可能性があります。貸借対照表上の価値は、利益の減少や為替市場の変動リスクといった要素の影響を受け、連結資産価値の減少や資産の評価減、償却を伴う可能性があります。そのような要素は、更に株主資本を減少させ、資金調達や取引活動、ひいては当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)情報セキュリティ

 当社グループでは、事業活動に関して様々な機密情報やデータを保有・使用しており、適切な情報の管理や効率的な業務の遂行のための情報システムのアップデートやコントロールの重要性はますます高まっています。当社グループは、外部専門サービスによるサポートを得たり、従業員に対する教育を行ったりするなど機密情報・データや情報システムの十分な保護に向けた施策に努めていますが、自然災害、通信トラブル、コンピューター・ウイルスの感染、サイバー攻撃等の事象により情報システムや事業活動の中断や機密情報の漏えい等の事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

(18)人材の確保

 当社グループの変革と将来の成長は有能な人材の確保と育成に大きく依存します。当社グループでは、人材確保・育成・リテンションのための各種施策に取り組んでいますが、技術者を中心とする人材獲得競争は更に激化しており、適切なタイミングで優秀な人材が計画通り確保できない、確保した人材の育成が計画通り上手くいかない、又は育成した優秀な人材を維持できず社外流出が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。人的資本に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」3.人的資本及び多様性をご参照ください。

 

 

(19)A種種類株式

 A種種類株式には、普通株式を対価とする取得請求権が付されていますが、かかる取得請求権については、当社とA種種類株主との間で締結した引受契約において、2020年7月1日以降においてのみ行使することができるとの転換制限が付されていました。しかしながら転換制限解除事由の発生により、2020年5月22日以降、A種種類株主は当該取得請求権を行使することが可能となっています。今後、A種種類株式が普通株式に転換された場合には、当社の普通株式の発行済株式総数が増加し、また、かかる株式が市場に流入することにより、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化するとともに、当社株式の取引及び株価に悪影響を及ぼすおそれがあります。A種種類株式は、引受先から第三者へ譲渡されることがあり得ます。こうした転換や譲渡があった場合には、引受先や譲受先が当社の主要株主に該当する可能性がありますが、その議決権行使及び保有株式の処分等の状況により、当社の事業運営及び当社株式の需給関係に影響を及ぼす可能性があります。

※ A種種類株式: 詳細については、後掲の第4 提出会社の状況 1「株式等の状況」をご参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

(単位:百万円)

 

売上高

個別開示項目前

営業利益

税引前利益

当期利益

親会社の所有者に帰属する

当期利益

当連結会計年度

763,521

34,812

△21,933

△31,017

△33,761

前連結会計年度

600,568

19,980

11,859

6,759

4,134

増減率

27.1%

74.2%

 

1)全体の状況

 2023年3月期第4四半期において当社グループが事業を行う市場環境は、概ね安定していました。建築用ガラス市場は、欧州での需要は引き続きやや軟調に推移しましたが、その他の地域では比較的堅調でした。エネルギーに関連する投入コストは当第4四半期において下落しましたが、過去の水準と比較すると依然として高い水準にあります。原材料も含めた投入コスト高は、引き続き販売価格の上昇により吸収しました。太陽電池パネル用ガラスの需要も堅調でした。自動車用ガラス市場は、半導体を中心とした自動車部品不足の影響から引き続き緩やかに回復しました。また、上昇した投入コストの取引先に対する転嫁もさらに進展しました。高機能ガラス市場は当第4四半期においてやや減速しました。

 

2)セグメント別の状況

 当社グループの事業は、建築用ガラス事業、自動車用ガラス事業、高機能ガラス事業の3種類のコア製品分野からなっています。

 「建築用ガラス事業」は、建築材料市場向けの板ガラス製品及び内装外装用加工ガラス製品を製造・販売しており、当連結会計年度における当社グループの売上高のうち48%を占めています。太陽電池パネル用ガラス事業も、ここに含まれます。

 「自動車用ガラス事業」は、新車組立用及び補修用市場向けに種々のガラス製品を製造・販売しており、当社グループの売上高のうち47%を占めています。

 「高機能ガラス事業」は、当社グループの売上高のうち5%を占めており、ディスプレイのカバーガラスなどに用いられる薄板ガラス、プリンター向けレンズ及び光ガイドの製造・販売、並びにエンジン用タイミングベルト部材などのガラス繊維製品の製造・販売など、いくつかの事業からなっています。

 「その他」には、全社費用、連結調整、前述の各セグメントに含まれない小規模な事業、並びにピルキントン社買収に伴い認識された無形資産の償却費が含まれています。

 

 セグメント別の業績概要は下表の通りです。

 

(単位:百万円)

 

売上高

個別開示項目前営業利益

 

当連結会計年度

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度

建築用ガラス事業

365,947

281,816

33,557

28,130

自動車用ガラス事業

354,693

276,246

4,052

△7,908

高機能ガラス事業

38,754

39,770

8,733

9,907

その他

4,127

2,736

△11,530

△10,149

合計

763,521

600,568

34,812

19,980

 

建築用ガラス事業

 当連結会計年度における建築用ガラス事業の売上高は3,659億円(前連結会計年度は2,818億円)、個別開示項目前営業利益は336億円(前連結会計年度は281億円)となりました。販売価格の改善及び円安の影響を受け、売上高・営業利益ともに前年度から増加しました。

 欧州における建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の43%を占めています。売上高は、販売価格の上昇と為替影響の結果、大幅に増加しました。営業利益は、高騰したエネルギーに関連する投入コストを販売価格の改善により吸収し、前年度と同水準でした。当第4四半期ではエネルギー価格は下落しましたが、燃料サーチャージ制の影響もあり販売価格も低下したためその恩恵を受けることはできませんでした。また、当第4四半期ではインフレの進行と金利上昇により企業の景況感や消費者マインドが悪化し、販売数量はやや減少しました。

 アジアにおける建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の27%を占めています。売上高・営業利益ともに前年度を上回りました。市場環境は販売数量増加と販売価格上昇に伴い改善し、安定した操業とともに、投入コスト増加の影響を相殺しました。

 米州における建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の30%を占めています。売上高・営業利益ともに前年度比で増加しました。北米では、需要は好調だったものの上半期は販売数量が物流の制約の影響を多少受けましたが、下半期にはその制約も緩和されました。また、第3四半期からアルゼンチンで2基目のフロート窯が生産を開始しました。

 

自動車用ガラス事業

 当連結会計年度における自動車用ガラス事業の売上高は3,547億円(前連結会計年度は2,762億円)、個別開示項目前営業利益は41億円(前連結会計年度は79億円の損失)となり通期でも黒字となりました。これは、営業利益が当第4四半期においてもさらに改善したためです。販売数量は引き続き徐々に増加するとともに取引先に対する販売価格上昇も合意に達し、高騰した投入コストを相殺しました。

 欧州における自動車用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の42%を占めています。売上高は増加しましたが、一部為替の影響によるものもあります。販売数量は自動車メーカーにおける半導体等部品不足の影響を受けましたが、下半期において徐々に緩和しました。収益性は引き続き投入コスト上昇の影響を受けましたが、第2四半期以降多くの取引先との価格交渉が進捗し、販売価格が改善したため、その影響を大きく軽減しました。補修用市場向けの販売数量は好調でした。

 アジアにおける自動車用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の20%を占めています。売上高及び営業利益は前年度比で増加しましたが、これは投入コスト上昇の影響を緩和するために取引先との価格改善交渉を進めた結果です。

 米州における自動車用ガラス事業の売上高はグループ全体における当事業売上高の38%を占めています。売上高は為替の影響を受けて前年度比で増加しましたが、営業利益は減少しました。北米での需要は、多くの取引先で引き続きサプライチェーンの問題の影響を受けましたが、自動車メーカーによる在庫の積み増しの影響を受け好調でした。南米での需要は比較的堅調で、ブラジルとアルゼンチンでは販売数量が改善しました。

 

高機能ガラス事業

 当連結会計年度における高機能ガラス事業の売上高は388億円(前連結会計年度は398億円)、個別開示項目前営業利益は87億円(前連結会計年度は99億円)となりました。売上高・営業利益は前年度にバッテリーセパレーター事業を譲渡したためわずかに減少しました。バッテリーセパレーター事業譲渡による売上高・営業利益への影響は、存続している事業の好調な市場環境により概ね相殺されていますが、下半期には新型コロナウイルスに関連したロックダウンと景気減速の影響を受けました。

 ファインガラス事業では、景気減速の影響を一部受けましたが、継続的なコスト削減による事業基盤の強化により、業績は引き続き安定していました。情報通信デバイス事業では、取引先における半導体等部品不足の影響から徐々に回復したため売上高は安定していましたが、プリンター用レンズの需要は北米や欧州でのインフレの影響によりわずかに減少しました。エンジンのタイミングベルト用グラスコードの潜在的需要自体は安定しているものの、販売数量は引き続き取引先におけるサプライチェーンの問題による影響を受けました。メタシャイン®の売上高は、自動車塗料及び化粧品向けでわずかに改善しました。

 

 

その他

 当連結会計年度におけるその他の売上高は41億円(前連結会計年度は27億円)、個別開示項目前営業損失は115億円(前連結会計年度は101億円)となりました。

 このセグメントには、全社費用、連結調整、前述の各セグメントに含まれない小規模な事業、並びにピルキントン社買収に伴い認識された無形資産の償却費が含まれています。

 

持分法適用会社

 持分法で会計処理される投資に係る利益には、持分法による投資利益及び持分法投資に関するその他の利益(損失)が含まれており、当連結会計年度においては、純額で58億円(前連結会計年度は41億円)となりました。

 

 持分法による投資利益(純額)は前年度を上回りました。これは主に、当社グループのロシアにおけるジョイント・ベンチャーに対する投資について減損額が減少したためです。前連結会計年度において、投資の一部について減損損失を認識したことに伴い、当連結会計年度におけるロシアのジョイント・ベンチャーに対する持分法による投資利益を即時減損しています。前連結会計年度及び当連結会計年度に計上した減損損失は連結損益計算書では、持分法投資に関するその他の利益(損失)として表示しています。

 

(2)会計方針並びに重要な会計上の見積り、判断及び仮定

 連結財務諸表において採用している重要な会計方針については、第5〔経理の状況〕の1(1)連結財務諸表の「⑤連結財務諸表注記」に記載されている通りです。なお、これらの会計方針に基づく連結財務諸表上の資産・負債並びに収益・費用の額の決定に際しては、当該取引の実態や過去の実績等に照らし合理的と思われる見積りや判断を要することがあります。

 当連結会計年度末に実施したのれんの減損テストについては、⑤連結財務諸表注記 16.「のれん」をご参照ください。また、貸付を含むジョイント・ベンチャーへの長期的な投資の回収可能性については、注記 21「持分法で会計処理される投資」をご参照ください。

 

(3)財政状態の分析

 当社グループでは、今後の予測・見通しを踏まえて、既存の融資枠の範囲内で引き続き事業継続が可能なものと判断しています。当社グループは、既存の融資については、返済期限を迎える前にその更新を金融機関との間で交渉する方針としています。将来の借入条件に関する金融機関との交渉において、当社グループが受諾可能な条件での融資が不可能と想起させるような事実は発生していません。こうした状況を検討し、当社取締役会は、当社グループが予測可能な将来において継続事業として存続するのに十分な経営資源を引き続き有するという、合理的な見通しを持っています。従って、当社グループは、引き続き継続企業の前提に基づいて、当連結会計年度の連結財務諸表を作成しています。

 

1)総資産

 当連結会計年度末の総資産は9,514億円となり、前連結会計年度末より121億円増加しました。総資産の増加は主に円安影響によるものですが、ピルキントン社買収に伴い認識したのれん及び無形資産の減損により一部相殺されました。また、販売数量増加及び販売価格上昇の結果売上債権が増加し、エネルギー価格の上昇により棚卸資産も増加しました。

 

2)ネット借入残高

 2023年3月末時点のネット借入残高は、2022年3月末より428億円増加して4,079億円となりました。ネット借入の増加は、主に為替影響とエネルギーに関連したデリバティブ金融資産の減少によるものです。為替影響によるネット借入の増加は159億円でした。また、総借入残高は4,951億円となりました。当社グループは2023年3月31日時点で未使用の融資枠を462億円保有しており、これに加えて未引き出しのコミット型タームローンが83億円あります。

 

3)資本

 当連結会計年度末時点の資本合計は1,249億円となり、前連結会計年度末の1,694億円から445億円減少しました。

資本合計の減少は、主にのれん及び無形資産の減損損失の認識に伴うものです。

 

(4)経営成績の分析

1)売上高

 当連結会計年度の売上高は、建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業の増収により前年度比27%増の7,635億円(前連結会計年度は6,006億円)となりました。為替の影響を除くと売上高は前年度比21%増となりました。

 

2)個別開示項目前営業利益

 個別開示項目前営業利益は348億円(前連結会計年度は200億円)となりました。

 

 

3)税引前損失

 当連結会計年度の税引前損失は219億円となりました(前連結会計年度は119億円の利益)。

 税引前損益の悪化は、主に第2四半期に計上したのれん及び無形資産の減損損失488億円を含む個別開示項目費用452億円(純額)の特別損失によるものです。これは、2006年のピルキントン社買収に伴い認識した当社グループの欧州における自動車用ガラス事業ののれん及び無形資産残高全額について減損損失を計上したものです。

 

4)親会社の所有者に帰属する当期損失

 親会社の所有者に帰属する当期損失は、多額の個別開示項目費用を計上した結果、338億円(前連結会計年度は41億円の利益)となりました。

 

5)1株当たり指標

 連結会計年度の基本的1株当たり当期損失は393.06円となり、前連結会計年度の基本的1株当たり当期利益24.07円より悪化しました。基本的1株当たり当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益からA種種類株式に係る配当金を控除した金額を、発行済普通株式の加重平均数で除して算出しています。当連結会計年度において、A種種類株式に係る配当20億円(前連結会計年度は20億円)がこの計算に含まれています。

 

(5)キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、485億円のプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による377億円の支出等により346億円のマイナスとなりました。以上より、フリー・キャッシュ・フローは139億円のプラス(前年度は223億円のプラス)となりました。

 財務キャッシュ・フローと為替換算影響を考慮した後のベースで、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて85億円増加し、685億円となりました。

 

(6)生産・受注及び販売の実績

1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

建築用ガラス事業

380,634

130.4

自動車用ガラス事業

356,846

125.5

高機能ガラス事業

44,354

106.4

  報告セグメント計

781,834

126.5

その他

3,034

138.0

合計

784,868

126.5

(注)1.金額は、販売価格によっています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

2)受注実績

 受注生産形態をとらない製品が多く、セグメント毎に示すことは難しいため記載していません。

 

3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

建築用ガラス事業

365,947

129.9

自動車用ガラス事業

354,693

128.4

高機能ガラス事業

38,754

97.4

  報告セグメント計

759,394

127.0

その他

4,127

150.8

合計

763,521

127.1

(注)1.上記の金額には消費税等は含まれていません。

2.販売実績の「主な相手先別」は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載は行っていません。

3.セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの製品とサービスの付加価値化を進め、新たな成長の柱を確立するためには、研究開発の強化が必要不可欠です。中期経営計画「リバイバル計画24(RP24)」は翌連結会計年度が計画期間の最終年度となることを見据え、実績の評価と今後の対応を検討すると同時に、事業戦略に基づき、以下の分野の研究開発活動に注力しています。

 

1)快適空間の創造:快適で安全・健康な「人にやさしい生活空間」を創造する

2)地球環境の保護:再生可能エネルギーの活用拡大や冷暖房負荷の軽減などを通して「地球にやさしい環境」を創造する

3)情報通信分野: 人々の暮らしをより便利にし、社会の進化をささえる情報通信関連分野に貢献する

 

 研究開発部門は、NSGグループの将来の成長にとって重要となる多くの取り組みを主導しており、その中には、脱炭素化、製品開発、デジタル化などが含まれます。

 各事業部門は、地域レベルやグローバルレベルで、研究開発プロジェクトの優先順位決定や計画策定に積極的に関与しています。さらに経営レビューというプロセスにおいて、経営会議や取締役会でも、当社グループにおける研究開発活動の貢献度をモニターし、方向性を決めています。

 当連結会計年度において、日本の伊丹事業所に研究開発用の新棟を建設しました。各種試験設備の集約を図ることで研究メンバー同士の協働につながり、今後、イノベーションの一層の促進が期待できます。

 

 当社グループにおける当連結会計年度の研究開発費は、91億円となりました。

 

 セグメント別の研究開発費は下表の通りです。

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

建築用ガラス事業

2,843

自動車用ガラス事業

2,677

高機能ガラス事業

1,003

報告セグメント計

6,523

その他

2,570

合計

9,093

 

(1)建築用ガラス事業

 建築用ガラス事業では、住宅や商業用建物向けのガラス製品の拡充に引き続き努めています。顧客ニーズに応えるべく主要な分野で技術革新を行っており、例えば断熱ガラスやソーラーコントロール(遮熱)ガラス、内装用の装飾ガラスの品揃え強化や真空ガラス「スペーシア®」の改良があげられます。

 また液体コーティングにおける長年の経験を活かし、防眩、指紋付着防止、抗菌、帯電防止など様々な特性を有するコーティングの新規開発を行っています。

 欧州ではHomeComfort™という新規領域の事業を開始しました。当連結会計年度に発売したこの領域初の製品は、発熱する複層ガラスと装飾ガラスのユニットによる暖房ヒーターです。

 太陽電池パネル用ガラス事業も建築用ガラス事業に含まれます。太陽光発電に使われるガラスの市場は、エネルギー市場の不確実性、気候変動、各国政府による奨励策などが後押しとなり、急速に伸びています。当社グループの製品は、Cd-Te太陽電池や急速に存在感を増しているペロブスカイト太陽電池、プラズモニック太陽電池などの薄膜太陽光発電技術を利用する顧客から高い評価を受けています。

 研究開発部門は、既存顧客と共同で太陽光発電効率を向上させる新しい材料の開発を継続的に行うとともに、次世代の太陽光発電技術に取り組む開発者に広くアプローチしています。自社開発および世界有数の大学との共同研究を通じて、最新の材料探索技術を駆使し、新しい材料の特定を行っています。

 

 以上により、建築用ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は28億円となりました。

 

(2)自動車用ガラス事業

 当社グループは、競争優位の源泉であるコア技術に基づき、新製品の開発や核となる製造工程の継続的改善に重点を置いた研究開発を進めています。自動車産業界が求める、安全やセキュリティ、環境、快適さや利便性、スタイルといった領域で技術革新を進めています。「CASE」(Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))と呼ばれる新しい潮流により、新たなビジネスの機会が増えています。

 

 当連結会計年度の継続的なテーマの中には以下のものがあります。

・ガラス上に光学センサーを装着した部位における透明性の向上

・PDLC(高分子分散型液晶)を搭載し、調光機能により車内温度の快適さを提供する大型複合ルーフライト

・進化を続けるヘッドアップディスプレイ技術における新モデルの立ち上げ段階での支援

 

 既に公表された通り、当社グループは、中国国内の自動車用ガラス事業について、中国の大手自動車ガラスメーカーであり、当社の関連会社であるSYP Kangqiao Autoglass Co., Ltd.と統合しました。これにより、同社と協力して成長著しい同国内の自動車メーカーのニーズに対応した事業の強化をさらに進めていく方針です。また、当社グループの自動車用ガラス技術を中国市場に広めるとともに、中国の自動車メーカーとのより緊密な関係から新しい機会を得ることができます。

 

 以上により、自動車用ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は27億円となりました。

 

(3)高機能ガラス事業

 高機能ガラス事業では、光学設計、ガラスファイバー、ガラスフレーク等のガラス繊維製品など、当社のコア技術を活用した多くの成長分野で事業を行っています。

 超情報化社会の到来により、データストレージや高速・大容量通信に関連する製品の需要が飛躍的に高まっています。

 イメージセンシング技術を用いた産業用検査機や物流ロボット、ドローンなどへの応用は小型で高精度の光学部品へのニーズを拡大し、加速します。

 高機能ガラス事業部門では、ICTを中心に、市場ニーズの変化に合わせた独自性の高い製品の開発・商品化を加速することを研究開発の方針としています。

 当社グループは、顧客と緊密に連携しながら、新規の顧客基盤の構築のため積極的に活動しています。

 研究開発部門は、顧客のニーズに合わせた新しいガラス組成の開発により、この活動を支えています。また、グループ内に蓄積されたノウハウを活かして、コンタクトイメージセンサーに広く使用されている当社のSELFOC®などの製品に応用できる新しい機能性ガラスコーティングも開発しています。

 

 以上により、高機能ガラス事業における当連結会計年度の研究開発費は、10億円となりました。

 

(4)その他

 研究開発部門は、各事業部門に特化した業務テーマに加え、すべての事業部門を横断する技術にも取り組んでいます。

 当社グループは、「インキュベーター活動」にも取り組んでいます。基礎研究や新技術の調査を行うため、外部のパートナーとの協業も強化しています。協業の形態は、優れた大学との長期的な連携や、スタートアップ企業への当社グループ施設の提供など多岐にわたります。

 当連結会計年度においては、リバプール大学と長期の契約を結びました。日本の大学とも長期的な契約に向けて検討を進めています。これらの大学は国際的に認知されている大学であり、当社グループのイギリスと日本の研究開発拠点にも近いため、共同開発活動の促進が期待されます。

 脱炭素化研究開発チームは、2030年のCO2削減目標を達成するためのワークプログラムを開始しました。これにはAIの活用や、バイオ燃料、水素などの低炭素燃料の使用はもちろんのこと、電気溶融の活用も含まれます。翌連結会計年度において、当社グループは、フロートガラス製造では初とみているCO2回収設備を設置することを目指しています。

 デジタル化については、いくつかのコアプロセスに機械学習を導入することに成功し、製品品質と工程管理を改善させています。

 

 以上により、その他における当連結会計年度の研究開発費は26億円となりました。