当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、2021年度を初年度とした5カ年の「中期経営計画2025」を策定しています。10年後の2030年を見据え、経済価値と社会価値を両輪として企業価値向上を図り、部品メーカーとして存在意義のあるポジションを獲得するためのマイルストーンとして2025年を位置付けています。
当社グループのミッションは、「おもしろ科学で より大きく より社会的に」です。体系化された知識や経験に加え、わくわくする体験や思いがけない発見、驚きなどをもたらす「おもしろ科学」で、人びとの安心・安全で、快適・便利な暮らしを支えるエレクトロニクス技術の進化を支え、社会に貢献していきます。
当社グループの経営理念は、「従業員の幸福」、「地域社会への貢献」、「株主に対する配当責任」です。太陽誘電の創業者は、従業員とその家族が幸福に豊かな生活ができるようにすることで企業の社会性や公益性、公共性を全うすることができると考え、これらの経営理念を掲げました。当社グループ共通の価値観として、従業員は日々、これらを実践することを意識して業務を遂行しています。
また、当社グループのビジョンは、「すべてのステークホルダーから信頼され 感動を与えるエクセレントカンパニー」になることです。顧客、取引先、株主、地域社会、従業員などの期待や要求に応えて信頼を獲得し、さらにはその期待や要求を上回る価値を提供することで感動を与えられる企業であり続けることを目指します。このビジョンを実現するために、市場のニーズに合った安全で高品質なスマート商品を開発・生産・販売し、労働・人権・安全衛生・環境・倫理という取り組みにおいても責任を持ち、活動を継続していきます。
(2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
当社グループは、2021年度を初年度とした5カ年の「中期経営計画2025」を策定しています。「中期経営計画2025」では、経済価値と社会価値それぞれの目標を以下のとおり定めこの実現に向けた活動を通し、さらなる企業価値向上を目指していきます。
経済価値目標を実現するため、自動車、情報インフラ・産業機器を中心とした注力すべき市場の売上比率を50%に高めることを目指します。また、需要拡大に対応するための継続的な能力増強に加え、環境対策やIT整備に向けた積極的な取り組みを実施し、5年間で3,000億円規模の設備投資を計画しています。
また、社会価値については、ESG(環境、社会、ガバナンス)それぞれにおいて目標を定めて取り組みを強化しています。環境面では、地球規模の課題である気候変動対策のため、GHG(温室効果ガス)排出量削減の目標を定めて取り組みを強化するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿い、事業活動における気候関連のリスクと機会を評価し、積極的な情報開示に努めていきます。社会面としては、引き続き安全第一を根幹とした事業活動を行うとともに、働き方改革やダイバーシティ経営を推進していきます。ガバナンスにおいては、事業の成長を支える経営品質の向上とBCM(事業継続マネジメント)の構築と進化に取り組んでいきます。
(3)会社の対処すべき課題
当社グループは、中長期の観点から自動車、情報インフラ・産業機器市場において電子部品の需要が拡大し、今まで以上に高い品質、高い信頼性が求められると想定しています。また、スマートフォン等の通信機器市場においては、機器の高機能・高性能化、通信方式の進化、電子部品の高密度実装化に伴い、小型・薄型で特性の良い最先端の電子部品が数多く求められると考えられます。
このような市場に対して当社グループでは、機器の技術進化に貢献できる競争優位性の高い最先端商品をいち早く開発しています。自動車、情報インフラ・産業機器を注力すべき市場と位置付け、高信頼性商品の販売推進、システムソリューション提案の強化、商流の拡大と多角化に努めています。また、安定的な供給を実現するために国内外の生産能力を増強するなど、将来の成長に不可欠な投資を継続していきます。さらに、ものづくり力の向上や分散生産の体制構築、AIなどを活用した生産効率の改善にも努めていきます。
一方で、不透明さが増す国際情勢、新型コロナウイルスの世界的大流行、大規模な自然災害の発生などにより、社会の在り方や経営環境に急激かつさまざまな変化が生じています。特に、国際情勢の混乱激化や世界経済が大きく後退した場合には、電子部品需要の低迷、資源価格の高騰による仕入価格の上昇、原油価格の高騰及び航空輸送の経路変更による物流費の上昇などの影響を受ける可能性があります。当社グループでは、引き続き情報を多角的に収集し、顧客やサプライヤー等と連携を密にすることで影響を最大限抑えられるように努めていきます。
なお、当社グループは871億97百万円の現金及び預金を有し、自己資本比率は63.1%と健全な財務体質を維持しています。また、複数の金融機関との間で総額300億円のコミットメントライン契約を締結するなど、不測の事態への対応手段を確保して事業を継続していきます。
当社グループは、これからも経済価値を高めると同時に、ステークホルダーからの要求や期待に応えることにより社会価値を高めることで、企業価値向上を目指していきたいと考えています。「中期経営計画2025」では、SDGs目標と紐づけたマテリアリティ(重要課題)を設定しています。特に、気候変動への対応としてGHG(温室効果ガス)排出量削減、ダイバーシティの実現に向けた対応として新卒女性採用率や女性管理職比率などの数値目標を掲げて、社会価値向上への取り組みを加速しています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは、「おもしろ科学で より大きく より社会的に」をミッションとしております。このミッション実現のため、当社グループにおける様々な課題の中からより重要なものをマテリアリティ(重要課題)として特定しております。マテリアリティに関しては、中期経営計画2025において、経済価値と社会価値を向上するための具体的な施策と数値目標を定め、取り組みを進めております。
サステナビリティ活動を推進するためのガバナンス体制としては、社長執行役員が委員長を務め、業務執行取締役、本部長職の執行役員及びサステナビリティ担当執行役員で構成し、社外取締役及び監査役がオブザーバーとして出席するサステナビリティ委員会を年4回開催しております。マテリアリティの設定や課題の共有及び課題解決に向けた施策に関する審議を行い、審議内容は委員長である社長執行役員より取締役会へ報告し、適切に審議しております。
一方、気候変動や安全衛生等のサステナビリティに関連するリスク対策については、順守すべき法規制や事業活動に影響を与えるリスクをリスト化し、法規制の順守手順やリスクの低減対策を立案・実施し、リスクの発生予防及び最小化に努めております。その内容については、グループマネジメントシステムに従った活動を行い、コンプライアンス部会とリスク管理部会を通して内部統制委員会へ報告し、適切に審議しております。
(2)重要なサステナビリティ項目
当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。なお、下記項目は、マテリアリティとして特定し、具体的な施策と数値目標を定めた活動を推進しております。
・気候変動
・人的資本
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
①気候変動(TCFD提言への取組)
頻発する風水害など気候変動が社会に及ぼす影響が甚大になる中で、脱炭素社会の実現に向けて企業が果たすべき役割はより重要になっており、当社は気候変動への対応強化を重要な経営課題として捉えております。
地球規模の課題である気候変動について当社では、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すため、脱炭素思想に基づくものづくりを推進する中で、徹底した省エネ・創エネ・再エネを実行しております。なお、GHG排出絶対量削減はSBT(Science Based Targets)に準じた目標値を設定しております。
当社は、SDGsやパリ協定で示された国際的な目標達成への貢献を目指し、当社グループ各社と連携の上、幅広いステークホルダーとの協働を通し、これに取り組んでおります。また、当社は、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、TCFDに賛同するとともに、TCFDに沿った情報開示の拡充を行っております。
[ガバナンス]
環境推進委員会において気候変動問題に対応するための定量目標に対する取組及び実績のモニタリングを実施し、目標に対して未達成もしくは未達成の可能性が考えられる場合には、その原因と改善に向けた追加施策等(投資と効果を含めた)を求め、改善を指示しております。この環境推進委員会での審議・決定内容は、上位委員会であるサステナビリティ委員会へ報告しております。
[戦略]
a.リスク・機会の特定
当社グループの事業に影響を及ぼす気候関連リスク・機会の特定にあたり、IEA、IPCC等の気候変動シナリオを参考にして、当社事業における気候関連リスク・機会を抽出し、それらの性質を定性的に評価しました。
b.シナリオ分析
抽出・整理した気候関連リスク・機会について、事業への影響度、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、当社として「重要度が高い」と評価した次のテーマについてシナリオ分析を実施しました。
[リスク管理]
当社は、グループ会社を含めた気候変動におけるリスクについて、安全環境を担当する副社長執行役員を責任者として定め、グループマネジメントシステムに従い、コンプライアンス部会とリスク管理部会を通して内部統制委員会にて報告・審議を行っております。気候変動に関するリスクを把握する手法としては、社会状況の分析、顧客やサプライヤーからの聞き取り調査、投資家とのESGに関するエンゲージメント活動などを参考としながら、リスクを抽出しております。それらの項目については、財務的影響や経営戦略との関連を合わせて検討し、インパクト評価を実施しております。
[指標及び目標]
当社グループでは、自社の事業活動でのGHG排出量について2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すため、2030年度までに2020年度比でGHG排出量を42%削減することを目標として設定しております。
上記目標の達成に向けて、省エネ活動の推進、創エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用等を通したGHG排出量削減への取り組みを着実に進めてまいります。
②人的資本
[戦略]
当社は、創業の理念を基本に、あらゆる人材の多様性を理解し、人格・個性を大事にすることで、従業員の豊かさの実現を目指しています。そのため、異文化を経験し経営戦略の実現を担うことができるグローバル人材や、専門性・創造性を高め、社会に貢献できる新しい価値を生み出すことのできるイノベーション人材の輩出を継続して進めます。また、「人と組織の未来をつくる」の人事ミッションのもと、すべてのグループ人材・組織が活躍できる環境を整え、人材育成を加速させていきます。社会の一員として、グループ人材が誇れる会社づくりを目指した人事ガバナンスと、グループ人材のパフォーマンス最大化を目指した人材開発により、従業員一人一人の成長と企業価値の向上を図ります。
人材開発の加速として、若手社員の拡充を図るため、好不況にかかわらず毎年100名規模の採用を継続する方針で採用活動を行っています。入社後の人材育成については、人事部が求める人材像である「意味づけられる」「きっかける」「魅せられる」人材の育成を目指し、そのための各種教育・研修を実施しています。さらに、太陽誘電の強みをより伸ばし、弱みを補強するための教育プログラムを展開しています。
幹部候補育成として、当社の将来を担う人材層の厚みを増していくため、幹部候補人材を200名育成することを中期目標とし、リーダー層を対象とした教育プログラムを展開しています。
働き方改革として、一人一人がパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。勤務制度改革によるワークライフバランス向上を目指し、新たな制度として勤務間インターバル制度や在宅勤務制度を導入しました。
健康経営として、当社は従業員が心身ともに健やかに働くことができる職場づくりに継続して取り組み、組織の活力や生産性を向上させ、企業価値向上へつなげたいと考えています。このため、社長執行役員を健康管理最高責任者(CHO)とし、組織的な推進体制を通じて健康増進支援と健康意識向上を図るとした「太陽誘電グループ健康経営宣言」を行い、健康経営の実現に取り組んでいます。
[指標及び目標]
・指標:ワークエンゲージメント 目標:2.5以上
ワークエンゲージメントとは、仕事に対して誇りややりがいを感じるかどうかの心理状態を表す指標です。毎年、従業員に対してストレスチェック(全80問)を実施し、その中のある設問(2問)についての回答結果から数値を導き出す設計です。
従業員が能力を最大限に発揮できる人材育成と職場づくりに活用し、生産性向上につなげていきます。当事業年度の結果は2.28でした。
・指標:新卒女性採用率 目標:30%以上
・指標:女性管理職比率 目標:2030年度までに10%以上
当社は、世の中が変化しても持続的に発展していくためには、国籍・文化をはじめ性別や世代、社歴など、様々な違いをもつ多様な人たち同士が交わり、これまでになかった考え方やアイデアが次々に生まれることが必要不可欠であると考えています。
女性活躍に関しては、多くの意欲ある女性が活躍できる雇用環境整備を行うため、女性活躍推進行動計画を策定し実行しています。
2023年4月1日時点の結果は、新卒女性採用率が35%、女性管理職比率が4.2%でした。
*4月1日時点
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)ロシア・ウクライナ情勢に関するリスク
当社グループにおけるロシア・ウクライナ向け売上高は僅少であり、業績に与える直接的な影響は軽微であります。また、当社グループはロシア・ウクライナに営業・生産拠点を有しておりません。ただし、ロシア・ウクライナ情勢の混乱が長期化した場合には、以下の間接的な影響を受ける可能性があります。
・景気減速による自動車市場の低迷
・資源価格の高騰による仕入価格の上昇
・原油価格の高騰及び航空輸送の経路変更による物流費の上昇
(2)感染症によるリスク
感染症の世界的拡大により経済活動が抑制され、急速に世界景気が減速し、当社グループの受注に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、各国行政当局の活動制限措置や当社グループの従業員の感染などによる生産への影響、物流も含めたサプライチェーンの停滞などの影響を受ける可能性があります。当社グループはBCP(事業継続計画)に基づき、従業員や取引先など関係者の皆さまの健康と安全の確保を最優先しつつ、供給責任を果たすための各種対応策を実施しております。
(3)取引先と業界の商慣行
当社グループは、世界の主要な電子機器メーカーをはじめとして、多くの電子機器メーカーと直接取引があります。電子機器の市場は厳しい競争下にあり技術の変化が早く、機器のモデル毎にヒット商品と売れない商品が明確に分かれ、なおかつ商品ライフサイクルは、従来に比べ極めて短くなってきております。そのため顧客の在庫と生産計画は大きく変動し、当社グループの受注はそれによって大きく影響を受ける可能性があります。
(4)電子部品の価格低下
電子機器の市場競争は激しく、電子部品市場でもセットメーカーからの値下げ要請と部品メーカー間の企業競争から電子部品価格は下落傾向にあります。原価低減と生産プロセスの改善に取り組んでおりますが、部品市場の需給動向によっては、それを上回る価格低下が起こる可能性があります。
(5)海外事業に伴うリスク
当社グループは、グローバルな分業体制を敷いており、海外販売会社をエリア毎の顧客セールス拠点、海外生産会社を最適化された量産拠点と位置付けております。当社グループの事業の遂行のための拠点は、世界各地に所在しており、中には政治的あるいは経済的に不安定な地域があります。これらの地域におけるテロ、戦争、疫病等社会的混乱の発生、ストライキ、社会インフラの未整備による停電等の予期せぬ事象が発生した場合、当社グループの事業活動に障害を与える可能性があります。また、それらの事象が当社グループの取引先において発生した場合、当社グループの事業活動にも影響が生じる可能性があります。
なお、当社グループは、経済発展が著しい中国で生産と販売の拠点展開をしております。当社グループの取引先の多くも中国に生産拠点を展開しており、その事業運営は中国の経済成長の影響を受ける可能性があります。中国経済の急速な発展と中国政府が推進している多くの経済改革は、法令等の改正、経済成長の減速、為替相場、電力供給等の予測できない事象により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)顧客の信用リスク
当社グループは、世界各国の電子機器メーカーを中心に取引をしておりますが、電子機器市場は事業環境の変化が激しく、顧客の業績が悪化した場合、売上債権の回収に影響を及ぼす可能性があります。売上債権及び顧客財務状況の定期的な確認、また新規取引時には顧客の信用リスクに応じた取引条件の設定等を行い、売上債権の回収リスクの低減に努めてまいります。
(7)資材調達によるリスク
当社グループでは、原材料の調達において複数購買化を促進し、安定調達及び原価低減に努めておりますが、一部の原材料については特定のサプライヤーからの調達に依存しており、これらの調達が困難となった場合、供給が困難になる可能性があります。特定のサプライヤーへの集中度が高い原材料については、サプライヤーとの長期供給契約により安定供給が図れる体制を構築してまいります。
しかし、各国の情勢悪化や輸出入規制による供給不足、需要拡大による原材料価格の高騰が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)品質に関する影響
当社グループは、優れた最先端技術を積極的に開発し、新製品に応用して早期に市場投入すると同時に、ISO9001の認証取得を含む品質保証体制の確立及びレベルの高いサービス体制の確立にも努め、その結果、当社グループの製品を多くの顧客に採用していただいております。しかしながら、当社グループの製品が最先端技術製品である等の原因によって、未知の分野の開発技術も多く存在し、予期せぬ不具合が発生すること等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)研究開発
当社グループは、素材技術を根幹としたセラミック技術、積層技術、回路設計技術、ソフトウェア技術、生産システム技術及び評価・シミュレーション技術等の最先端技術について積極的な研究開発投資及び研究開発活動を継続的に実施しております。研究開発によって最先端の要素技術を創造するとともに、当該技術を用いた新製品を早期市場投入することによって上位の市場シェアと高い利益率を達成してきております。しかしながら、新製品投入のタイミングによっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)資金調達によるリスク
当社グループは、金融市場の状況を踏まえて様々な調達手段を検討しておりますが、現時点では主に金融機関からの借入により事業資金を調達しております。金融市場の不安定化による金利上昇、及び当社信用格付けの格下げ等が発生した場合には、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
不測の事態に備え、手元流動性の確保や複数の金融機関との間での総額300億円のコミットメントライン契約締結等の対応を行っております。
(11)為替リスク等
当社グループは、事業の積極的な海外展開により、海外への売上高比率が高くなっております。当社グループ間の取引は米ドル建てを基本としており、一部は為替予約を実施し、為替変動リスクの軽減に努めております。しかし、海外での事業活動では外貨建取引や多くの外貨建資産も存在し、急激な為替変動、株価、金利の変動に関わるマーケットリスクにさらされております。市場での変動が大きい場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)税務に関するリスク
当社グループは、積極的な海外展開を進めており、その結果クロスボーダー取引が増加しております。当社グループでは、税務管理部門を設置して、グループ各社の税務関連情報を収集し、外部専門家の検討を加えることによりリスクの把握と低減に努めております。また、各国の適切な利益配分をグループ間の取引によって管理しており、必要に応じて税務当局への事前確認制度も活用しております。しかし、各国の税務当局との見解の相違や税務法規の改正等により、税務リスクが顕在化した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)法的規制等
当社グループは、事業を展開する各国において、事業・投資の許可、税制及び国家安全保障等による輸出制限等の政府規制の適用を受けるとともに、通商、独占禁止、環境・リサイクル関連の法的規制を受けております。当社グループではこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、規制が急激に変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)知的財産権
当社グループの製品は最先端技術製品であり、電子機器の市場は厳しい競争下にあることから、特許をはじめとする知的財産権の確保は競争力を左右する極めて重要なポイントと考えております。しかし、一部の国では、知的財産が完全に保護されない場合があります。このような国においては、他社が当社グループの製品を模倣し販売する可能性があり、当社グループ製品の販売機会の逸失、劣悪な品質の模倣製品が当社グループの製品に対する信頼を低下させる等の恐れがあります。また、当社グループの製品又は技術について、他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。
(15)環境規制におけるリスク
当社グループは、事業を展開する各国において、製品中の有害物質、産業廃棄物の処分、水質・大気・土壌の汚染防止について様々な環境関連法令の規制を受けております。
当社グループではこれらの規制に対応するため有害物質の使用全廃、処理設備の導入等を行っております。しかしながら、規制は年々厳しくなっており、環境対応投資の増加、事業活動の制約等につながる可能性があります。
(16)気候変動リスク
当社グループは、事業活動に伴う温室効果ガス(以下、GHG)の発生に関して、環境中期目標の実行を通し、GHG排出量の適切な把握や継続的な省エネ施策の実施等によるGHG排出削減に取り組んでいます。しかし、顧客や取引先等のステークホルダーより、対応が困難な水準の気候変動対応を要求された場合には、再生可能エネルギーの導入・調達や設備投資等に伴う想定を超える対策費用が発生する恐れがあります。また、要求水準を満たさないことによる機会損失の恐れもあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)人材確保に関するリスク
当社グループの業績は、研究開発、生産、販売、経営管理等において優秀な人材の貢献に大きく依存しております。優秀な人材の確保における競争は激しく、在籍している従業員の流出の防止や新たな人材の獲得ができない可能性があります。優秀な人材を確保できない場合には、非効率的な経営に陥り、製品の競争力が低下する可能性があります。
(18)情報セキュリティにおけるリスク
当社グループは、事業遂行上、様々な機密情報(取引先情報、個人情報、営業秘密情報など)を保有しています。当社グループでは、サイバー攻撃や内部過失などの脅威から、これら情報の漏えいや改ざんなどを防止するため、また事業活動の停止を回避するため、グループ全体のセキュリティ管理体制の強化、定期的な従業員教育の実施、またソフトウェアや機器によるセキュリティ対策の実施などに取り組んでいます。しかしながら、予想を超えるサイバー攻撃や予期せぬ不正行為などにより、これら情報の漏えいや重要業務の停止などの事態が発生する可能性があります。その結果、当社グループの社会的信用や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(19)自然災害、事故の発生によるリスク
当社グループは、地震、台風、洪水等の自然災害、ストライキ等の労働争議、事故の発生により操業の停止や製造設備に多大な損害を受ける可能性があります。これらの災害等による損害に備えるため保険に加入しておりますが、発生した全ての損害を補償できない可能性があります。加えて、当社グループの取引先や供給業者が災害等により損害を被った場合にも、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、当社グループは、電子部品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
(1)経営成績
当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)における当社グループを取り巻く経営環境は、世界景気は緩やかな持ち直しの動きが見られたものの、地政学リスクの増大などによる原材料費、物流費の上昇や、新型コロナウイルス感染症対策として一部地域で実施された大規模ロックダウンによって社会経済活動が停滞した時期がありました。先行きについては、国際情勢、世界的な金融引締めが進む中での金融資本市場の変動や需要環境の動向を注視する必要があります。
当社グループは、中期経営計画2025に掲げた目標の実現に向けて自動車、情報インフラ・産業機器を中心とした注力すべき市場の売上比率を50%に高めることを目指しています。さらに、ハイエンド商品、高信頼性商品を中心とした高付加価値な電子部品を創出し、主力事業の積層セラミックコンデンサのさらなる成長に加え、インダクタと通信デバイスを強化してコア事業として確立していきます。また、需要拡大に対応するための継続的な能力増強に加え、環境対策やIT整備に向けた積極的な取り組みを実施し、5年間で3,000億円規模の設備投資を計画しています。
当連結会計年度の連結売上高は3,195億4百万円(前年同期比8.6%減)、営業利益は319億80百万円(前年同期比53.1%減)となりました。経常利益は為替差益11億36百万円などにより348億32百万円(前年同期比51.7%減)となりました。また、子会社のエルナー株式会社にかかる独占禁止法関連損失など特別損失39億2百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は232億16百万円(前年同期比57.3%減)となりました。一部地域におけるロックダウン、世界経済の減速懸念などによるパソコンやスマートフォン、データセンターなどを中心とした生産台数の減少や在庫調整などにより、売上高及び各段階利益が減少しました。
当連結会計年度における期中平均の為替レートは1米ドル134.20円と前年同期の平均為替レートである1米ドル111.56円と比べ22.64円の円安となりました。
製品別の売上高は次のとおりであります。
[コンデンサ]
積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、自動車向けの売上が前年同期比で増加しましたが、民生機器、情報機器、通信機器、情報インフラ・産業機器向けの売上が前年同期比で減少したことにより、売上高は2,081億15百万円(前年同期比9.7%減)となりました。
[インダクタ]
巻線インダクタ、積層インダクタなどの各種インダクタ商品が含まれます。
当連結会計年度は、情報インフラ・産業機器向けの売上が前年同期比で減少しましたが、民生機器、情報機器、通信機器、自動車向けの売上が前年同期比で増加したことにより、売上高は528億66百万円(前年同期比8.1%増)となりました。
[複合デバイス]
モバイル通信用デバイス(FBAR/SAW)、回路モジュールなどが含まれます。
当連結会計年度は、モバイル通信用デバイス(FBAR/SAW)、回路モジュールの売上が前年同期比で減少したことにより、売上高は325億81百万円(前年同期比33.2%減)となりました。
[その他]
アルミニウム電解コンデンサ、蓄電デバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、自動車向けを中心にアルミニウム電解コンデンサの売上が前年同期比で増加したことにより、売上高は259億41百万円(前年同期比20.5%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
|
製品別 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
205,881 |
△12.5 |
|
インダクタ |
54,160 |
7.6 |
|
複合デバイス |
26,452 |
△28.7 |
|
その他 |
24,914 |
34.5 |
|
合計 |
311,409 |
△8.8 |
(注) 金額は、期中の平均販売単価を用いております。
②受注実績
当連結会計年度における受注実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
|
製品別 |
受注高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
179,333 |
△21.3 |
39,708 |
△42.0 |
|
インダクタ |
50,869 |
2.0 |
7,175 |
△21.8 |
|
複合デバイス |
28,885 |
△35.0 |
10,565 |
△25.9 |
|
その他 |
22,959 |
△18.6 |
13,079 |
△18.6 |
|
合計 |
282,047 |
△19.5 |
70,527 |
△34.7 |
③販売実績
当連結会計年度における販売実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
|
製品別 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
208,115 |
△9.7 |
|
インダクタ |
52,866 |
8.1 |
|
複合デバイス |
32,581 |
△33.2 |
|
その他 |
25,941 |
20.5 |
|
合計 |
319,504 |
△8.6 |
(注) 主要な販売先は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(2)財政状態
① 資産
当連結会計年度末における総資産の残高は5,034億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ289億40百万円増加しました。流動資産は82億11百万円減少しており、主な要因は、商品及び製品の増加51億91百万円、仕掛品の増加26億42百万円、受取手形及び売掛金の減少162億12百万円、現金及び預金の減少53億73百万円であります。また、固定資産は371億51百万円増加しており、主な要因は、有形固定資産の増加356億53百万円であります。
② 負債
当連結会計年度末における負債の残高は1,849億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ107億48百万円増加しました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金の増加139億22百万円、短期借入金の増加100億円、未払金の増加91億22百万円、未払法人税等の減少124億16百万円、支払手形及び買掛金の減少98億15百万円であります。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は3,184億78百万円となり、前連結会計年度末に比べ181億92百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益232億16百万円と剰余金の配当105億91百万円による、利益剰余金の増加126億24百万円、及び円安等の為替影響による為替換算調整勘定の増加48億40百万円であります。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは394億60百万円の収入(前年同期比41.4%減)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益311億2百万円、減価償却費349億3百万円、売上債権の減少額195億56百万円、法人税等の支払額230億61百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは604億38百万円の支出(前年同期比19.4%増)となりました。主な要因は、固定資産の取得による支出633億38百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは144億85百万円の収入(前年同期は147億11百万円の支出)となりました。主な要因は、短期借入金の増加額100億円、長期借入れによる収入200億円、長期借入金の返済による支出40億49百万円、配当金の支払額105億73百万円であります。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して44億85百万円減少し、841億24百万円となりました。
当連結会計年度末の外部からの資金調達は、短期借入金302億円、1年内返済予定の長期借入金179億58百万円、長期借入金507億77百万円からなっております。借入金は原則として日本において固定金利で調達しております。更に、財務の安定性のため期間3年、300億円のコミットメントライン借入枠を設定しておりますが、2023年3月末現在未使用であります。
当社グループは、健全な財務状態と営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力を有しており、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。
(4)経営上の目標の達成・進捗状況
当社グループは、2021年度を初年度とする「中期経営計画2025」を策定しており、目標とする経営指標は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標」に記載のとおりであります。当連結会計年度における連結売上高は3,195億4百万円、営業利益率は10.0%、ROE(自己資本利益率)は7.5%、ROIC(投下資本利益率)は5.9%となりました。連結売上高の目標4,800億円は、最終年度である2025年度までの達成を目指し、事業成長や経営の効率化に取り組んでまいります。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
特記すべき事項はありません。
当社グループは、素材の開発から出発して製品化を行うことを信条とし、創業以来培ってきた当社グループ独自の要素技術にさらに磨きをかけ、エレクトロニクス機器の進化に貢献する電子部品を創出するべく、研究開発活動を進めています。ミッションである「おもしろ科学で より大きく より社会的に」のもと、材料技術やプロセス技術の強みを活かし、当社グループの中長期的な成長を支えるための技術開発を行っております。また、高品質で環境負荷の低減を実現するスマート商品の開発と安定供給に取り組んでいます。研究開発活動を通じて、スマート商品をより高い水準で実現することにより、「すべてのステークホルダーから信頼され 感動を与えるエクセレントカンパニーへ」というビジョンの実現を目指しています。
当社は、自動車、情報インフラ・産業機器を注力市場と位置付けています。特に、電子化・電動化が進行する自動車向け、IoTの進展に伴い高性能化が進む基地局通信装置やデータセンターなどの情報インフラ向けでは、大型・高耐圧などの高信頼性商品の開発に注力しています。また、通信機器向けでは、主にスマートフォンのハイエンドモデルに搭載され、機器の高機能・高性能化、電子部品の高密度実装化に寄与する最先端商品の開発を推進しています。
コンデンサでは、小型、薄型、大容量、高信頼性の積層セラミックコンデンサの開発に注力しています。誘電体の材料技術、薄層・大容量化技術及び超小型品生産技術等を高度化することにより、最先端の積層セラミックコンデンサを開発し続けています。
インダクタでは、小型、薄型、大電流対応品に加え、自動車や情報インフラをターゲットとした大型、高信頼性品の開発に取り組んでいます。金属系磁性材料を始めとした材料開発、巻線・積層プロセス技術を高度化させることで、競争力ある商品を開発しています。
複合デバイスでは、広帯域に対応する通信デバイスの開発や、より高い周波数に適した次世代商品の開発を推進しています。
その他、注力市場向けの導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの商品開発や、社会課題解決に貢献するソリューションの創出にも注力しています。
なお、当連結会計年度の当社グループにおける研究開発費は
また、当社グループは、電子部品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。