当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人間の創造性発揮のための環境づくりを通して豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念のもと、株主の皆様、取引先、従業員をはじめとする社会の全てのステークホルダーに信頼と満足を得られる企業となることを目指してまいります。
コーポレートビジョンを「情報の価値化と知の協創をデザインする」と定め、お客様の成長を支援し続けることを当社グループの存在理由とし、社会への貢献と企業価値の向上を目指します。
(2)利益配分に関する基本方針
当社は、長期的かつ総合的な株主価値の向上を図るため、健全なる持続的成長を目指します。株主様への還元につきましては、安定的な配当を前提に「財務基盤の充実」と「中長期的な会社の経営戦略の実現に向けた投資」とのバランスをとり、その一層の充実を目指すことを基本方針としております。
(3)目標とする経営指標
自己資本当期純利益率(ROE)については、将来の市場変化に対応するための自らの変革を推進しながら、安定的に10%前後の水準を継続できる経営基盤づくりを目指します。
(4)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
内田洋行グループの構造変革は、リーマンショック後の低迷から抜け出せない状況にあった2015年から始まりました。目的は二つです。一つ目は日本全体の回復に追随できていない状況から脱することです。二つ目は、日本において2020年代中頃には少子化の進行による社会への影響が顕著になるという、将来の日本社会と内田洋行の両方にとっての大きな課題に対処することでした。
一つ目のリーマンショック後の打開策が、第14次中期経営計画(2016年7月期~2018年7月期)においての大きなテーマとなりました。まず従来の三本部を解体し、セグメントの枠組みを越えてリソースの共有を進め、成長の芽となる事業がリソースを活用して拡大できるようにスタッフ組織を流動化することから始めています。そのうえで、ICTと環境構築の事業の軸と、民間と公共の市場の軸で四つのマトリクスを設定し、従来の三つの本部に内在していた各事業をSBU(スモールビジネスユニット)として分類、マトリクスにプロットして俯瞰的に事業ポートフォリオを眺め、市場との整合性を図りながら、各事業がリソースを最大限に活用できるマネジメントへと視点を転換しました。その視点から、まず最初に大きな本部に埋没していた成長が予測される事業を従来のセグメントから独立させ、将来を支えるICT基盤に関する組織を優先して、ノウハウやスキルをもつ機能の統合を推進し集約化しました。
これらの改革を段階的に進める中で状況は好転し、第15次中期経営計画(2019年7月期~2021年7月期)では成長市場に向けて戦力を集中できるようになり、ビル建設ラッシュが進む首都圏市場やWindows10の更新需要、情報化が次の段階へと歩みだした学校市場で大きな成果を得ます。この共通するノウハウやスキルをもつ機能の再編は、その後のパンデミックとなったコロナ禍における、教育ICTのGIGAスクール構想案件や大手民間企業のIT投資拡大などにも大いに効果を発揮しました。
現在の第16次中期経営計画期間(2022年7月期~2024年7月期)では、第15次中期経営計画時のWindows10の更新需要や学校市場でのGIGAスクール構想特需などの特別な需要はなくなったものの、構造変革による各事業の競争力の向上により、特需を差し引いた実質のベースラインが底上げされ、第16次中期経営計画当初の目標を大きく上回る形で二年目を終了しています。
二つ目の大きな課題は、日本社会の大きな構造変化への対処です。2018年からの18歳人口減少期の到来は、コロナ禍の収束期に入る2022年には大学での大きな問題となり、2023年には少子化が政府の最重要課題として取り上げられ、社会全体の問題に発展しています。直近の少子化の進行状況は、政府推計値よりさらに速まっており、2027年以降は労働人口の急速な減少時期に突入します。これを克服するには、早期に出生率を高め、日本の人口を20年後に定常状態に持ち込む根本的解決を進めなくてはいけません。それまでの間を支えるためには、社会全体のスマート化による生産性向上が必須となります。
すでに官公庁・自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)は本格的に動き出し、今後はAIを含めた官民のDXの拡大がより求められることになります。しかしながら、DXにおいて、日本は世界より大きく出遅れており、トランスフォームを実行する「人」と、人が基になる「データ」活用への投資の強化が急務となっています。この真の意味でのDXの実現には、データを活かすデジタル社会の担い手の育成が最も高い優先事項であり、働き方変革、学び方変革を標榜しつづけてきた内田洋行グループのこれからの成長機会は、この社会変化への対応を迫られるお客様をご支援することにあります。
お客様の社会構造変化への対応をご支援するためには、これまで進めてきた内田洋行単体中心でのリソースの共有をグループ全体にまで拡げて、リソースの結集を図ることが必要となります。当社自身が従来の延長である事業枠から完全に脱却し、グループ全体のリソースを生かした経営への転換を速め、将来に向けてさらにベースラインを上げるために、第16次中期経営計画を中長期の新たな取り組みの準備を加速させる時期としました。
具体的には、いくつかの部署を横串する統括の設置により、内田洋行での組織再編をさらに進め、公共でのICT組織の連携強化、地方におけるセグメントを超えた組織の合体に続き、本年は東名阪での大手企業向け体制の強化、ICTスキルと環境構築スキルを合体させたユニークな競争力強化のモデル創りを開始しました。また、今後の競争力の源泉となる内田洋行グループのICT基盤の充実のため、エンジニアの組織の再編強化をグループまで進めるとともに、第16次中期経営計画一年目に、現地での保守運用を担うウチダエスコ株式会社の完全子会社化を実現し、二年目となる当連結会計年度では、連結子会社の株式会社ウチダテクノを完全子会社化したほか、非連結子会社のスマートインサイト株式会社の吸収合併や、ルクセンブルクのソフトウェア開発ベンチャーであるOpen Assessment Technologies S.A.の子会社化を実施しております。
並行して、グループ共通の情報システム投資を第15次中期経営計画期間中に開始しました。第16次中期経営計画一年次に第一グループが終了し、順次、グループに展開をしており、第17次中期経営計画期間中期には完了する予定です。これにより、グループ全体でのリソースの活用や再編が容易となります。
このような将来に向けての対応から構造改革をグループ全体に拡げ、当社が掲げるコーポレートビジョン「情報の価値化と知の協創をデザインする」をICTと環境構築の両方のスキルとノウハウで進めることで、2030年以降も社会に貢献できる体制を継続して構築してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは、企業理念に基づき、お客様における社会構造変化への対応を、「働き方変革」、「学び方変革」においてご支援すること、および事業活動において社会・環境問題をはじめとするサステナビリティをめぐる課題に対応することを、持続的成長を土台としたサステナビリティの基本的な考え方とし、第16次中期経営計画(2022年7月期~2024年7月期)を策定し、デジタル社会の実現、「人」と「データ」への投資の強化、新たな地方創生という大きな社会課題への挑戦を進めております。
気候変動対応については、環境関連担当役員を委員長、社長をオブザーバーとするサステナビリティ小委員会において気候変動による事業、経営への影響を四半期毎に議論しています。議事内容は、経営会議に報告され、重要事項に関しては取締役会に報告・共有をしております。なお、リスク管理については取締役会および経営会議の監督、指導のもと、ISOで規定された環境マネジメントシステム推進体制により社内各機能組織から関連情報を集約し、気候変動関連リスクの選定と重大性の特定を行い、対応策の計画と検討を実施します。
人的資本への投資については、当社グループが持続的に成長していくための特に重要なテーマと位置付けて、人員構成に関する議論、人材育成・研修計画、マネジメント体制などの重要なテーマおよびリスクについて社長を含むすべての社内取締役から構成される経営会議に報告、付議されます。重要事項に関しては必要に応じ取締役会に報告・共有をしております。
(2)気候変動への取り組み
① 戦略
当社グループの事業範囲において想定し得るリスクと機会を抽出し、影響の大きさと発生の可能性の2軸からそのインパクトを評価して重点となる項目を絞り込み、対策を整理しています。なお、分析にあたりIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の示す以下の2つのシナリオを参照しています。
●1.5℃未満シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ( IEA-NZE )
●4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ( IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP8.5)
分析の結果、リスクについて、1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会への移行に向けてカーボンプライシング等の政策や環境規制の強化が想定されており、当社グループにおいては、原材料や製品の調達価格の上昇が予想されます。これに対しては、グループ内に留まることなく外部サプライヤーとの脱炭素に向けた協働を進めることを含め対処して参ります。加えて、環境意識が高まる中、気候変動対策や中長期目標の進捗に遅れが生じた場合、お客様をはじめとする様々なステークホルダーからの信頼が低下し、購買基準が厳格化したお客様を中心に顧客離れが進み、売上の減少等につながる恐れがあります。
また、4℃シナリオにおいては、台風等風水害の激甚化が想定される中、異常気象や自然災害による当社工場や倉庫、営業所等の拠点、調達先の被災により、営業活動の停滞や在庫等の毀損、ひいてはお客様からの信頼低下や逸失利益の発生につながる恐れがあります。これらリスクに対して、当社グループは既に一定程度のレジリエンスを持つものと認識しておりますが、今後も最新の動向や技術を把握しつつ、その強化に努めて参ります。
一方、機会については、1.5℃シナリオと4℃シナリオの両方において想定されます。お客様における気候変動対策を、ICTと環境構築の両面でご支援するなかで、その獲得を目指して参ります。
リスクと機会、および取り組みの方向性の一覧につきましては、以下のURLからご参照ください。
<リンクアドレス>
https://www.uchida.co.jp/company/csr/environment/10.html
② 指標と目標
当社グループでは、気候変動のリスクと機会に対応することを目的として、昨年2022年にCO2排出量削減の中長期目標を設定しています。再生エネルギーや将来の新たな技術なども活用することで、目標達成に向けて引き続き努めて参ります。なお、本年において、この中長期目標に変更はありません。
<CO2排出削減目標>
・削減目標:2030年までに基準年比50%削減、2050年までに100%削減
・基準年:2022年7月期
・対象スコープ:Scope1およびScope2
・対象地域:国内および海外
・対象企業範囲:本体および連結子会社
<現在のCO2排出量>
当社グループでは国内外すべての連結子会社を対象として、Scope1およびScope2の排出量の算定を行っています。
・算定対象期間:2023年7月期(2022年8月度~2023年7月度)
Scope1 :2,081 t- CO2 (前年比98.2%)
Scope2(マーケット基準) :4,708 t- CO2 (前年比98.3%)
Scope1+2(マーケット基準)合計 :6,789 t- CO2 (前年比98.3%)
<ご参考>
Scope2(ロケーション基準) :4,272 t- CO2 (前年比94.1%)
Scope1+2(ロケーション基準)合計:6,353 t- CO2 (前年比95.4%)
目標達成に向けた削減初年度にあたり、エネルギー効率の良い営業車両への切り替え、オフィス・倉庫・工場照明のLED化等の施策をグループで推進した結果、活動量が昨年度より増加している状況下においてScope1,2の削減を実現しました。
<Scope3排出量の算定について>
本年、内田洋行本体を対象としてScope3の算定を開始しました。2023年7月期のScope3排出量につきましては、算定が完了次第の公開を予定しています。
(3)人的資本に関する考え方及び取り組み
① 戦略
<人材育成方針>
外部環境の急激な変化に対応できる思考・行動様式を持ち、主体的にキャリアを切り拓く人材の育成を進めており、人材開発を専門とするグループ会社とも緊密に連携しながら研修を強化しております。研修は特に、管理職、管理職候補、女性社員、若年層、またICT事業の基盤となるシステムエンジニアの育成に力を入れています。
イ 管理職
マネジメント力強化を目的に役職別研修や選抜型研修、外部プログラムへの派遣を行い、より広い視野・高い視座の獲得を進めております。
ロ 管理職候補
管理職候補の育成の場として選抜型の研修を行うとともに、研修を通じたアセスメントや外部機関のテストを用いた適性評価も進めております。
ハ 女性社員
女性社員を積極的に採用しつつ、研修や外部ネットワークを活用した啓発機会を設け、就業意識の向上とリーダーマインドの醸成を図っております。
ニ 若年層
入社から5年間にわたる長期研修プログラムを設け、将来を支える若年層の能力強化に取り組んでおります。
ホ システムエンジニア
システムエンジニア向けの技術研修の実施、公的資格取得の支援を行っております。また、当社独自の育成計画として体系的な知識・技術の習得を進めるため、様々な市場や事業のプロジェクトを2年以上かけてローテーションするプログラムを設け、広範囲に専門性を発揮できる人材の育成に取り組んでいます。
<社内環境整備方針>
社員がキャリアを形成していくうえで、仕事と生活を両立できる環境を整備することは企業の社会的責任であり、人材の定着・確保に加えダイバーシティを推進するうえでも必要な施策と考えます。特に育児や介護によってキャリアを中断することなく安心して働き続けられるよう、各種制度の充実に努めております。
また、企業が従業員の健康に配慮し、高い生産性や創造性を安定的に発揮できる環境を整えることは、企業の業績向上にもつながる戦略的な取組みであると捉え、産業医・内田洋行健康保険組合と緊密に連携し、より健康的で働きやすい職場づくりを推進しております。
なお、人的資本をめぐる課題への取り組みについてはCSRレポートに記載し、当社ホームページ上で公表しております。
② 指標と目標
|
項目 |
目標 |
2023年7月期実績 |
|
10事業年度前に採用された女性の継続雇用割合の男性継続雇用割合に対する比率 |
80.0%以上 |
100.0% |
|
新卒採用における女性割合 |
40.0%以上 |
43.9% |
|
管理職に占める女性労働者の割合 |
5.0%以上 |
6.1% (注)1 |
|
育児休業取得率 |
女性:育児休業取得率 80.0% 男性:育児休業等+育児目的休暇取得率 50.0% |
女性100.0% 男性86.6% |
(注)1 管理職に占める女性労働者の割合については、2023年7月21日時点の数値となります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、下記記載のリスク項目は、当社グループの事業に関するすべてのリスクを網羅したものではありません。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)国内外の経済動向による影響について
当社グループの事業は、国内市場に大きく依存しており、国内経済の動向により影響を受けます。
企業収益の悪化により企業の設備関連投資が減少した場合、また、政府及び地方自治体の財政状態の悪化により公共投資が削減された場合、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(2)製品およびサービスの欠陥について
当社グループは品質管理に十分な意を尽くしておりますが、提供する製品およびサービスに欠陥が生じるリスクがあります。当社グループの製品およびサービスには、顧客の基幹業務の遂行等、高い信頼性が求められる状況において使用されているものがあり、その障害が顧客に深刻な損失をもたらす危険性があります。その場合、当社グループは、製品またはサービスの欠陥が原因で生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。さらに、製品またはサービスに欠陥が生じたことにより社会的評価が低下した場合は、当社グループの製品およびサービスに対する顧客の購買意欲が低減する可能性があります。これらの場合、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(3)情報管理に関するリスク
お客様やお取引先の個人情報や機密情報を保護することは、企業としての信頼の根幹をなすものであります。当社グループでは、社内管理体制を整備し、従業員に対する情報管理やセキュリティ教育など、情報の保護について数々の対策を推進しておりますが、情報の漏洩が全く起きないという保証はありません。万一、情報の漏洩が起きた場合、当社グループの信用は低下し、お客様等に対する賠償責任が発生するなど、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(4)取引先、提携先等に関するリスク
当社グループの事業は、多くの取引先や、提携先など他社との関係によって成り立っています。従って、これらの取引先等との関係に著しい変化が生じた場合には、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(5)公的規制等に関するリスク
当社グループは、事業許認可、独占禁止、消費者、環境・リサイクル、租税等に関する法令や、輸出入に関する制限や規制等の適用を受けております。これらの法令・規制等を遵守できなかった場合、事業許可の取り消しや入札停止などにより事業活動に制限を受け、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(6)自然災害に関するリスク
地震、風水害などの自然災害により事務所・設備・社員とその家族などに被害が発生した場合には、事業継続計画(BCP)の策定、防災訓練、社員安否システムの整備などの対策を講じておりますが、被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(7)気候変動に関するリスク
当社グループでは、気候変動問題への対応を重要な課題として捉えております。今後、環境関連法規制の強化により、脱炭素社会に向け、地球環境保全に関連する費用が増加した場合は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会移行への要求の高まりに対して当社グループの対応が遅れた場合には、販売機会の損失等による企業価値低下が発生し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8)知的財産権に関するリスク
当社グループの製品または技術について、他社の知的財産権を侵害しているとされるリスク、また、第三者のソフトウェアその他の知的財産の使用に際し、何らかの事情により制約を受けるリスクがあります。これらの場合、当社グループの業績および財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(9)人的資本に関するリスク
当社グループの成長と利益は、人材に大きく依存するため、必要とする人材を採用及び育成するとともに、人材が継続して働くことができる環境を整備することが重要です。人材を採用または育成することができない場合、流出を防止できない場合や重大な労務問題が発生した場合は、当社グループの成長や利益に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度のわが国の経済は、輸出拡大など製造業の企業業績は好調に推移していますが、年明け以降の新型感染症の制限の緩和から、非製造業でも輸送、宿泊、飲食といった対面型サービスが戻り、インバウンド需要の再開もあるなど、全般において設備投資が増大しています。しかしながら、世界的な金融引き締め等が続くなか、今後は海外経済の減速などにより景気は下振れする懸念もあります。
内田洋行グループの第16次中期経営計画期間(2022年7月期~2024年7月期)においては、第15次中期経営計画期間中にあったWindows10の更新や学校市場でのGIGAスクール構想特需などの特別な需要はなくなるものの、第14次中期経営計画および第15次中期経営計画のなかで進めてきた構造改革による各事業の競争力が向上したことから、特需を差し引いた実質のベースラインが底上げされており、第16次中期経営計画当初の目標を大きく上回る形で推移しています。
一方、直近の日本の少子化の進行は、政府推計値よりさらに加速化し、2027年以降は労働人口の急速な減少時期を迎え、社会全体のスマート化による生産性向上は必然となります。官公庁・自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)は本格的に動き出し、AIを含めた官民のDX投資がより必須となることから、今後はトランスフォームを実行する「人」と基になる「データ」への投資の強化がよりいっそう大切なこととなります。
しかし真の意味でのDXの実現には、データを活かすデジタル社会の担い手の育成が最も高い優先事項であり、働き方変革、学び方変革を標榜し続けてきた内田洋行グループのこれからの成長機会は、この社会変化への対応を迫られるお客様をご支援することにあります。そのためにはグループのもつリソースを結集させることが必要となり、当社自身が従来の延長である個々の事業枠から脱却し、グループ全体のリソースを生かした経営への転換の速度を速めることが求められることから、第16次中期経営計画では、グループ共通の情報システム投資を推進、グループを含めた大きな再編に着手し、未来に向けて中長期の取り組みの準備を加速させています。
このような状況のなか、当連結会計年度では、引き続き大手企業の投資意欲が高く、ネットワーク案件やソフトウェアライセンスの受注が大きく伸長しました。また中堅中小企業でもICT投資が急速に回復したことで食品業を中心にシステム受注が急拡大したほか、2023年10月から開始するインボイス制度へのシステム対応案件も拡大しております。加えて、企業のR&D部門の大型投資や出社率の回復によりオフィスリニューアル案件の拡大や、自治体のネットワーク案件や大学関連の案件の増加もあったことから、売上高は、2,465億4千9百万円(前連結会計年度比11.1%増)となり、全てのセグメントで前連結会計年度の実績を大きく上回りました。
利益面では、賃金水準のベースアップや処遇改善、顧客接点強化のためのマーケティング活動やグループ共通システムの構築など、将来のための投資を強化していることによる販売費及び一般管理費の増加、また第1四半期における教育ICTでの前年度の高収益案件の反動の影響が当期は大きくありましたが、好調なオフィス家具および中堅中小企業でのICTビジネスの拡大で収益も大幅に改善し、大手民間企業向けのクラウドを中心としたサブスクリプション型のネットワークライセンスも想定以上に拡大したことから、営業利益は84億3千6百万円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
経常利益では、前連結会計年度にあった連結子会社ウチダエスコ株式会社の完全子会社化の関連で計上した営業外費用の減少があるため、前連結会計年度比16.8%増の91億6千1百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、同社の完全子会社化により非支配株主持分がなくなることに加えて、当第4四半期会計期間に行った非連結子会社の吸収合併による法人税等の一時的な減少もあり、前連結会計年度比42.2%増の63億6千6百万円となり、自己資本当期純利益率(ROE)は13.0%(前連結会計年度は9.8%)となりました。
以上のことから売上高と営業利益、経常利益では、国の超大型補正予算にともなうGIGAスクール案件のあった2021年7月期の実績を除いて過去最高の水準となり、当期純利益においては、GIGA時を超えて過去最高益を更新することとなりました。
※GIGAスクール構想・・・「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な入り口)」を意味する。文部科学省によって提唱された、1人1台端末、及び高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する構想。
なお、当第4四半期会計期間には、欧米各国でのタブレットなどの端末を活用した学習到達度調査で採用され、OECDが実施する世界学力調査(PISA調査)の次回2025年での採用も決まるなど、Computer Based Testing(CBT)で世界をリードするプラットフォームを開発するOpen Assessment Technologies S.A.社(本社:ルクセンブルク)の全株式を取得しました。内田洋行グループは、わが国での政府や自治体等での学力調査にこのCBTシステム導入を数年前から進めており、今後は両者で将来に向けての製品開発を進め、国内CBT市場の拡大並びに相互のノウハウを活用して世界での学習デジタルエコシステム構築に取り組みます。
セグメント毎の経営成績は以下のとおりであります。
<公共関連事業>
公共関連事業分野では、大学分野で学部新設にともなう整備や学習環境構築案件が広がり、自治体においてもネットワーク強靭化案件や図書館システム案件が拡大しました。また、競争力が発揮される複合化した教育ICT構築の大型案件が前年度第1四半期に集中した反動が大きくあったものの、当第2四半期以降は、GIGAスクール後に対応した大型ネットワーク案件やタブレット端末を活用しやすい教室改修案件などの獲得が進んでおります。以上から、売上高は807億8百万円(前連結会計年度比8.0%増)となりました。営業利益は34億2千6百万円(前連結会計年度比20.0%減)となりました。
<オフィス関連事業>
オフィス関連事業分野では、首都圏の大手企業を中心に出社率の回復から、より良いオフィス環境にするためのリニューアルが増加し、ハイブリッド型の働き方に対応した改装など新たな需要が拡大しています。また投資の方向が競争力の源泉である研究開発部門へ移行したことによるR&D関連のオフィス構築の大型案件の獲得で、生産工場の伸長や物流配送効率も上昇したことから、売上高は510億9千2百万円(前連結会計年度比5.6%増)、営業利益は10億7千1百万円(前連結会計年度比118.7%増)となり、大きく伸長しました。
<情報関連事業>
情報関連事業分野では、地方景気の回復が顕著となり、食品業を中心に中堅中小企業の基幹システム商談の獲得が大きく伸長しました。また、大手企業のネットワーク構築、クラウドを中心としたサブスクリプション型のライセンス契約の拡大が続いており、売上高は1,137億2千1百万円(前連結会計年度比16.4%増)、営業利益は36億4千9百万円(前連結会計年度比39.9%増)となりました。
<その他>
主な事業は教育研修事業であります。売上高は10億2千7百万円(前連結会計年度比0.0%増)となり、営業利益は2億6千5百万円(前連結会計年度比34.5%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ9億9千万円減少し、255億7千2百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローは72億6千9百万円増加いたしました(前連結会計年度は54億1千4百万円の減少)。これは主に、税金等調整前当期純利益92億円(前連結会計年度は79億6千5百万円)、仕入債務の増加27億3千5百万円(前連結会計年度は8億円の減少)、減価償却費18億9千7百万円(前連結会計年度は18億2千3百万円)、契約負債の増加6億5百万円(前連結会計年度は9億4千2百万円の減少)等の増加に対し、法人税等の支払額35億7千1百万円(前連結会計年度は43億3千2百万円)、棚卸資産の増加28億1千万円(前連結会計年度は7億1千6百万円の増加)、未払金の減少19億4千7百万円(前連結会計年度は23億6百万円の増加)等の減少によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローは48億5千7百万円減少いたしました(前連結会計年度は21億9千8百万円の減少)。これは主に、投資有価証券の取得による支出28億9千6百万円、ソフトウェア開発等に係る投資支出12億3千6百万円、および有形固定資産の取得による支出7億2千4百万円等の減少によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローは35億2千1百万円減少いたしました(前連結会計年度は86億3千2百万円の減少)。これは主に、前連結会計年度末に未払いとなっていた連結子会社ウチダエスコ株式会社株式に対する公開買付けに伴う、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出等17億5千3百万円、および配当金の支払額13億7千6百万円等の減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
公共関連事業 |
1,189 |
93.7 |
|
オフィス関連事業 |
3,347 |
91.2 |
|
情報関連事業 |
8,065 |
114.0 |
|
合計 |
12,601 |
104.9 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 記載の金額の表示は販売価格によっております。
ロ 受注実績
当連結会計年度における上記生産に係る受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
公共関連事業 |
1,125 |
117.7 |
241 |
78.9 |
|
情報関連事業 |
7,443 |
92.3 |
2,119 |
77.3 |
|
合計 |
8,568 |
95.0 |
2,360 |
77.5 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 オフィス関連事業は、見込生産を行っているため受注実績の記載を省略しております。
ハ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
公共関連事業 |
80,708 |
108.0 |
|
オフィス関連事業 |
51,092 |
105.6 |
|
情報関連事業 |
113,721 |
116.4 |
|
その他 |
1,027 |
100.0 |
|
合計 |
246,549 |
111.1 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の主要な販売先はありませんので、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表]注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び同「注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
②経営成績の分析
イ 売上高
前連結会計年度に引き続き大手企業の投資意欲が高く、ネットワーク案件やソフトウェアライセンス受注が大きく伸長し、中堅中小企業でもICT投資が急速に回復したことで食品業を中心にシステム受注が急拡大したほか、2023年10月から開始するインボイス制度へのシステム対応案件も拡大しました。また、企業のR&D部門の大型投資や出社率の回復によりオフィスリニューアル案件の拡大や、自治体のネットワーク案件や大学関連の案件の増加もあったことから、売上高は、2,465億4千9百万円と前連結会計年度に比べ246億9千3百万円(11.1%)の増収となっております。
なお、セグメン卜別の概況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。
ロ 営業利益
売上の増加等により、営業利益は84億3千6百万円と前連結会計年度に比べ5億4千6百万円の増益となりました。
ハ 経常利益
経常利益は91億6千1百万円となり、営業利益と同様の理由に加え、前連結会計年度にあった連結子会社ウチダエスコ株式会社の完全子会社化の関連で計上した営業外費用の減少等があるため、前連結会計年度に比べ13億1千7百万円の増益となっております。
ニ 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は92億円となり、前連結会計年度に比べ12億3千4百万円の増益となっておりますが、主に経常利益と同様の理由によるものです。
ホ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は63億6千6百万円となりました。主に税金等調整前当期純利益と同様の理由によるものですが、非支配株主持分がなくなることに加えて、当第4四半期連結会計期間に行った非連結子会社の吸収合併による法人税等の一時的な減少もあり、前連結会計年度に比べ18億8千9百万円の増益となっております。
③財政状態の分析
イ 資産
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ75億4百万円増加し、1,330億8百万円となりました。流動資産は、棚卸資産の増加28億4千7百万円等により前連結会計年度末に比べ32億3千9百万円増加し、983億3千1百万円となりました。また固定資産は、非連結子会社の株式取得等による投資有価証券の増加40億2千万円等により前連結会計年度末に比べ42億6千4百万円増加し、346億7千6百万円となりました。
ロ 負債
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ15億1百万円増加し、808億8千6百万円となりました。流動負債は、仕入債務の増加27億4千4百万円、未払法人税等の増加7億5千6百万円、契約負債の増加6億5千6百万円、および未払金の減少36億1百万円等により前連結会計年度末に比べ22億5千3百万円増加し、703億3千1百万円となりました。また固定負債は前連結会計年度末に比べ7億5千1百万円減少し、105億5千4百万円となりました。
ハ 純資産
当連結会計年度末の純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益63億6千6百万円による増加、上場有価証券の時価評価に伴うその他有価証券評価差額金の増加9億2千7百万円、および剰余金の配当13億7千6百万円による減少等により、前連結会計年度末に比べ60億3百万円増加し、521億2千1百万円となりました。以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の36.4%から2.6ポイント上昇し、39.0%となりました。
④キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は以下のとおりとなっております。
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2021年7月期 |
2022年7月期 |
2023年7月期 |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (有利子負債/営業キャッシュ・フロー) |
0.3年 |
- |
0.7年 |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ (営業キャッシュ・フロー/利払い) |
255.9倍 |
- |
120.0倍 |
(注)1 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
2 2022年7月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
⑤資本の財源および資金の流動性の分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、仕入高、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましても、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
⑥経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、第16次中期経営計画(2021年7月21日〜2024年7月20日)を策定いたしました。同計画においては、連結売上高2,200億円、連結営業利益60億円を最終年度に達成すべき数値目標として定めておりましたが、現時点では2024年7月期の連結売上高は2,550億円、連結営業利益は86億円としております。
また、目標とする経営指標として、自己資本当期純利益率(ROE)を10%前後とし、安定的に当該水準を継続できる経営基盤の確立を目指します。
該当事項はありません。
研究開発費の総額は
なお、主な研究開発活動の内容については、次のとおりであります。
主な研究開発
(1)大規模テストに対応可能な安定的かつ柔軟なCBTシステム運用技術の研究開発
CBT(Computer-Based Testing)については、民間分野の各種資格試験への採用のほか、司法試験への採用が検討されるなど着実な広がりを見せています。また、学校教育分野においては、令和5年度全国学力・学習状況調査における英語話すこと調査が初めてCBT方式で実施されるなど、急速に利用が進みました。
当社では、国際技術標準であるQTI(Question and Test Interoperability)(※1)等に対応したオープンソースソフトウェア(※2)「TAO」を活用し、これまでCBTシステムの開発を行ってまいりましたが、「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」に採用されるなど導入実績が着実に増加しています。合わせて、小規模なテストから、同一時間帯に数万人が同時受検するような大規模な調査まで様々な規模のテストに対し、クラウドコンピューティング技術を高度に適用することで、安定的かつ柔軟にシステムを運用する技術開発を進めています。
また、2023年5月には、「TAO」の開発会社であるOpen Assessment Technologies S.A.社(本社:ルクセンブルク)を完全子会社化しました。今後は両社の連携を更に強め、ノウハウを活用して国内のCBT市場の拡大と学習デジタルエコシステム構築に取り組んでいきます。
(※1) QTI…テスト項目の相互利用を可能とする国際技術標準
(※2) オープンソースソフトウェア(OSS)…ソースコードを無償で公開し、誰でも自由に改良・再配布ができるようにしたソフトウェア
(2)「SmartOfficeNavigator」等による、働き方と働く場の最適化を支援するための統合プラットフォームの研究開発
働き方や働く場の変容はコロナを経験することで一気に進みましたが、当社はコロナ禍以前より、「SmartOfficeNavigator」を中核として、人と場に関するデータを基に働き方と働く場を最適化するための統合プラットフォームの研究開発に取り組んできました。この「SmartOfficeNavigator」により、人の居場所やこの先の予定を把握し、会議室の予約状況や様々な場の利用状況・混雑状況等を会議室予約システム「SmartRooms」や在席検知システム「RoomSense」とも連携させる事で、統一されたユーザーインターフェースでオフィスワーカーに提供できるようにしています。また、設備制御やAV制御システムとも連携する事で、働く場の環境情報を把握し、照明や空調の制御を行う事も可能にしました。加えて、位置情報を活用して、省エネにつながる行動を促すナビゲーション機能の研究開発も進めています。
ハイブリッドワーク時代の多様な働き方を支える統合プラットフォームとして、「SmartOfficeNavigator」をさらに進化させていくべく取り組んで参ります。
(3)オフィスにおける生産性・創造性を高める場を構成する製品の研究開発
在宅ワークやオンラインワークが拡大したコロナ禍を経て、オフィスの在り方に対する経営者の関心が高まるなかで、個々のワーカーの生産性とチームの創造性を高める場を構成する製品の研究開発を行いました。
期中に発表した「TeamBase(チームベース)」において躍動的なコラボレーションを促すツール「Puller(プラー)」シリーズの拡張開発と、仕事の内容に応じてレイアウト変更が容易な可動式デスク「Felvect(フェルベクト)」開発を行いました。いずれもワーカー自身が柔軟にオフィス空間を使用できるよう、可動性や配線機能に注力して設計を行った製品です。
また、積極的なオフィス回帰の流れのなかで、個々の社員がより快適に働くためのチェア「Reflek(リーフレク)」を開発しました。姿勢の自由度を妨げない背部の独自機構、着座感を高める座部の3層構造、および異硬度成型技術の開発に数年を費やし、トップクラスの座り心地を持つチェア製品となっております。
(4)学習eポータル「L-Gate」の利用拡大に伴うシステム基盤強化と国際技術標準への対応
文部科学省のGIGAスクール構想によって整備された1人1台端末を活用したICT利用学習を促進するためのプラットフォームとして、当社は学習eポータル「L-Gate」を開発し、自治体・学校に提供しています。文部科学省CBTシステム「MEXCBT」への接続は、学習eポータル経由での接続となります。
令和5年度の全国学力・学習状況調査の一部が「MEXCBT」で実施されたこともあり、「L-Gate」は、約730団体9,300校、約350万アカウントまで利用が拡大しています(2023年7月時点)。これらの急激な利用拡大に伴うアクセス集中に柔軟に対応するため、クラウド基盤の強化を図り、本学力・学習状況調査も大きな障害なく終了させることが出来ました。
また文部科学省が進める教育システム・データの相互運用性を確保するための教育データ標準策定の中で、1EdTech(※1)の定める国際技術標準「OneRoster」を用いて校務支援システムから児童生徒の氏名・クラス・出席番号等の名簿情報を連携する仕様が示されました。令和4年度のデジタル庁「教育関連データのデータ連携の実現に向けた実証調査研究」では上記に基づき、校務支援システム、学習eポータル各社との相互接続検証に参画し、名簿情報の連携機能を実現しました。
さらに、いくつかの地方自治体においても、校務支援システムを起点として名簿情報を学習eポータルや学習系システムに連携し、年度更新作業の負担軽減に加えて、転出入等の随時連携を目指した実証研究を行ってきました。今後は地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化も契機として、学齢簿から校務、学習系までつないだ教育データ利活用の推進に貢献してまいります。
(※1) 1EdTech…教育関係の国際技術標準を定めるNPO団体
(5)地方自治体基幹システム統一・標準化と地域共生社会に向けた福祉システムの開発
国が「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」に基づいて推進している地方自治体の基幹業務システムの統一・標準化では、福祉総合システムとして「障がい者福祉」「児童福祉3業務(児童手当、児童扶養手当、子ども・子育て支援)」の4業務が対象となっており、2025年度末までに全地方自治体が標準準拠システムへの移行に対応するため、次期福祉総合システムの開発を進めています。今回の開発では、ウチダグループ内で二種類存在する「障がい者福祉システム」製品を統合し、開発投資の効率化を行うとともに、ウチダグループの開発リソ-ス集約とノウハウ共有を実現します。
また、厚生労働省等は住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域とともに創っていく『地域共生社会』の実現に向けて取り組んでいます。その中で高齢者介護を対象とした地域包括ケアシステムの2025年度実現に向けて科学的介護情報システム(LIFE)の構築や事業者間におけるケアプランデータ連携の仕組み化など制度の整備を進めており、絆高齢者介護システムでは登録したデータをそれらのシステムに自動連携する機能や、利用者様のバイタル情報や動作情報を介護記録に連動する血圧計や体温計、ベッドセンサーなど連携対象機器を拡大し、市場で販売されている多くの計測機器に対応する機能を実装しました。今後も、介護・福祉サービスを提供するサービス事業者様の質の高いサービス提供と業務の生産性向上に貢献してまいります。
(6)証明書自動発行システム「パピルスメイト」を中核とした学生向けサービス基盤の研究開発
1994年の発売以来、大学における証明書発行システムとして、長年トップシェアを維持している「パピルスメイト」について、更なる市場競争力の向上にむけ機能強化開発を行いました。課金装置を高機能化することで集金作業の自動計量機能を実現し、ICカードの学生証に加え、顔画像やデジタル学生証のQRコード認証機能の追加など、学生サービス向上に寄与するサービスの提供も開始しました。
また、これまで学内に限っていた証明書発行が、学外発行サービスの導入によりコンビニエンスストアでの証明書印刷が普及してきている事に対しては、新たなニーズへの対応として、各種申込機能の追加、証明書発行機との連携によるログの一元化など、学内・学外の証明書発行に関する提供サービスの向上、拡大を実現しました。
なお、デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省が2022年に策定した「教育データロードマップ」において「学びの成果の可視化」実現に向けた工程が掲示され、学修歴証明書のデジタル化を普及・定着させるための周知・活用促進と、デジタルバッチの在り方の検討が開始されています。「パピルスメイト」においてもデジタルバッチの今後の普及に向けた調査・研究を行いながら、対応に向けて取り組んでまいります。
(7)「こどもデータ連携」の実現にむけた調査研究
こどもや家庭に関する教育・保育・福祉・医療等のデータを、分野を越えて連携させることを通じて情報を分析し、個人情報の保護に配慮しながら、真に支援が必要なこどもや家庭を見つけプッシュ型の支援を届ける取組みへの期待が高まっています。この取組みを支援するために、データを集約して活用しやすい形にまとめる「こども見守り共有データベース」の構築と、データを可視化する「ダッシュボード機能」、データを組み合わせて潜在的に支援が必要なこどもや家庭の早期発見や施策立案に活用する「リスク判定・データ分析機能」で構成した「こども見守りシステム(仮称)」の開発を進めています。
令和5年度のこども家庭庁「こどもデータ連携実証事業」に採択された埼玉県戸田市様及び神奈川県開成町様を実証フィールドとして、データの収集、加工・蓄積、可視化・分析のプロセスに関する調査研究を行い、不登校、いじめ、貧困に関連するデータ因子を洗い出し、リスク判定ロジックの改善を行い、見守り対象者の抽出精度向上を図ってまいります。またダッシュボード機能においては、利用する職員の評価等を踏まえて見せ方の改善や機能の拡充にも努めてまいります。