第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、1965年の創業以来「かけがえのない生命のために」という創業精神の下、「医療を必要とする人と支える人の架け橋となり、健康でより豊かな生活に貢献することですべての人々を笑顔にします」という企業理念を実現するため、医療現場の課題を的確に捉え、その解決に真に役立つ価値の創造と提供に努めております。こうした企業活動を通じて、株式会社として適正かつ効率的な運営を図り、健全な利益を確保して企業価値を高め、株主・患者さん・医療従事者・取引先・地域住民等すべてのステークホルダーの皆様の利益・幸せを実現することを当社グループの経営方針としております。

 

(2)経営環境

当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルスを起因とした需要停滞からの回復に加え、高齢化の進展や慢性疾患の増加、新興国の医療インフラの整備などを背景に、医療機器市場は安定的な成長が見込まれます。その一方で、医療機器の安全性に対する規制がより強化される傾向にあり、新たな規制への対応が求められるほか、医療現場における人材不足も課題となっております。

このような環境下において、在宅医療、診断・治療支援等、高度な医療ニーズに対応する製品の需要が高まっております。特に、遠隔・在宅医療のオンライン診療や収集・分析したデータの活用等による医療現場の負荷軽減及びAI(人工知能)等を活用した医療サービスの効率化など、医療のデジタル化が求められており、医療機器とデジタル技術の融合による最適なソリューションの提供が市場で重要性を高めていくと予想されます。

 

(3)中期経営戦略

当社グループは、ありたい姿として、「常に医療現場の課題解決を目指し、製品・サービスを開発するソリューションカンパニー」になることを定め、その実現を目指しております。

2024年5月に「未来をつくるための変革と挑戦」をテーマとした中期経営計画2027を策定しました。短期的な収益性向上のみならず、社会の様々な要請に応えて中長期的に企業価値を高め、長期的耐久性を備えた会社へと変革を図るとともに、ステークホルダーの皆様と協働して持続可能な社会づくりにチャレンジしてまいります。その実現に向けて次のとおり基本方針と取組みを定め、対応を進めてまいります。

 

基本方針

1.収益構造の改革

投下資本効率を踏まえたグループ収益構造の抜本的見直しにより体質改善を図るとともに、国内外の市場環境に適応した事業戦略を遂行し、安定的な利益創出を実現する。

 

2.グローバリゼーションの推進

拡大する海外需要の取込みに向けて経営資源の重点配分と体制の強化を図り、顧客課題を解決する力を高めて、グローバル展開を加速する。

 

取り組み

基本方針のもと、4つの取組み「事業ポートフォリオマネジメントの強化」、「構造改革による経営基盤の強靭化」、「グローバルな事業収益の拡大」、「サステナビリティ経営の推進」を進めてまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの事業活動としましては、輸液・栄養領域、透析領域、外科治療領域、血液・細胞領域の4つの領域を中心に事業を展開し、製品の開発、生産、販売を進めております。

(2)の経営環境を踏まえ、(1)及び(3)に記載の、経営方針及び中期経営戦略を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は領域別に次のとおりであります。

 

(輸液・栄養領域)

医療安全、低侵襲に対するニーズは引き続き高まり、また、診療報酬改定に伴う医療機器へのコスト削減要求は加速しております。そのため、各事業領域でのアライアンスを活用しつつ、輸液領域では、医療DXに寄与する輸液ポンプを中心に院内感染制御、注入制御、医療事故対策の課題を解決する製品をトータルシステムで提供することで、栄養領域では、栄養管理からリハビリ・回復までの栄養療法のトータルコーディネーターとなることで、医療現場での揺るぎない信頼を確立してまいります。また、オンコロジー領域への経営資源の集中による国内シェア拡大や海外展開の推進を加速させ、グローバルな主力事業として収益拡大を目指してまいります。

 

(透析領域)

地域の包括的な支援・サービスの提供体制が推進され、在宅医療へのシフトが進もうとしている中、透析領域では、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上と医療現場の省力化・効率化に貢献する安全、安心かつ高度な透析医療を提供する企業を目指しております。国内では、血液透析と腹膜透析の両システムの品揃えによる選択療法の啓発に加え、透析情報システムを中核とした医療DXを推進するほか、海外では、日本の優れた透析医療を中国に普及させるとともに、慢性腎臓病が増加しているアジア諸国へ販売を進めております。

 

(外科治療領域)

診療報酬の継続的な引き下げ等により、機能別・診療特化の病院再編が進む中、外科治療領域に加え救命・集中治療分野において、自社開発から製造、販売による高い信頼性の強みを活かした独自の製品及びサービスに、アライアンスにより強化した製品ポートフォリオを加えたトータルシステムで顧客ニーズに的確に応え、人々の健康寿命の延伸に貢献すべく、安全、安心の提案を進めております。

 

(血液・細胞領域)

血液領域では、高品質な製品の製造と販売を通じ、「採血から輸血まで」の各プロセスで欠くことのできないメーカーになることを、細胞領域では、血液や細胞の「採取から投与まで」に必要とされるデバイスを開発し、細胞・再生事業におけるイノベーションマネジメント企業になることを目指して活動を進めております。

 

(5)目標とする経営指標

当社グループは、中期経営計画2027において、最終年の2027年3月期に目標とする経営指標として、収益性では営業利益25億円、資本効率ではROIC(投下資本利益率)3.5%の達成を目指してまいります。

なお、本中期経営計画では構造改革フェーズとして、選択と集中による事業及び製品ポートフォリオの再編を進めるため、成長性(売上高)に捉われない目標設定といたしました。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 (1) ガバナンス

当社は、企業理念である「私たちは医療を必要とする人と支える人の架け橋となり、健康でより豊かな生活に貢献することですべての人々を笑顔にします。」を実現させるため、企業指針の1つに「私たちは持続可能性に配慮し、社会価値の向上に貢献します」を掲げており、社員一人ひとりがこの考え方・姿勢を実践しております。

当社のサステナビリティに係る重要なリスクと機会につきましては、取締役会又は業務執行の意思決定機関である役員会において適宜、協議・決定しております。2020年4月以降の中期経営計画《GAIN-RG 2023》にて「持続可能な社会の実現」を重要な取り組みの1つに位置づけ、その実現を目指して2022年4月にサステナビリティ準備委員会を編成し、以下の活動に取り組んでまいりました。その取り組みの成果物につきましては、取締役会又は役員会において協議を重ねて決定しております。また、2024年4月以降は、新たな中期経営計画2027において定めた4つの重要な取り組みの1つである「サステナビリティ経営の推進」の実現に向けて、アクションプラン及び評価指標(KPI)を実行するフェーズに移行しております。サステナビリティ経営を着実に進めていくために、サステナビリティ準備委員会は、各部門の取り組み内容のモニタリング及び進捗管理を行い、その内容を定期的に取締役会又は役員会へ報告し、社外への情報開示に努めてまいります。

 

① 重要課題(マテリアリティ)の特定

中長期的な視点で当社が認識すべき課題を特定するために、事業活動におけるリスク及び機会をステークホルダーごとに特定し、環境・社会課題に対して当社が提供できる価値を結び付けて課題の候補を抽出し、取締役及び外部有識者(ESG専門家、環境専門家、人権専門家、投資家、同業者)によって「当社が環境・社会課題に与える影響」と「環境・社会課題が当社に与える影響」の2つの視点で重要度を評価して、「4つのテーマと19の重要課題(マテリアリティ)」を特定いたしました。

 


 

② 価値創造プロセス図の策定

2050年にむけて当社がステークホルダーの皆様に提供し続けたい価値を創造するために、ビジネスモデル及び経営基盤を形成する財務・非財務資本などの在り方について協議を重ねてまいりました。当社の企業理念である「私たちは医療を必要とする人と支える人の架け橋となり、健康でより豊かな生活に貢献することですべての人々を笑顔にします。」を、また長期ビジョンである「常に医療現場の課題解決を目指し、製品・サービスを開発するソリューションカンパニー」を、そして4つのマテリアリティテーマとして「環境課題への貢献」「環境・社会課題解決に向けたインパクト創出」「価値創造を支える多様な自律型人材」「健全なガバナンス体制の構築」を実現するために、当社が価値を創造するプロセスモデルを表したフレームワーク「価値創造プロセス図」を策定いたしました。


 

③ アクションプラン及び評価指標(KPI)の策定

サステナビリティ経営を推進するために、重要課題(マテリアリティ)に対するアクションプラン及び評価指標(KPI)の検討に着手いたしました。具体的には4つのマテリアリティテーマと、これらに紐づく19の重要課題(マテリアリティ)ごとに協議を重ね、企業及び社会の持続可能性に寄与するアクションプランと評価指標(KPI)を策定いたしました。

 

④ サステナビリティ基本方針の策定

2022年4月以降の活動内容を踏まえ、持続可能な社会を実現するためのサステナビリティ経営の基本的な姿勢や考え方について協議を重ねてまいりました。そして、当社のサステナビリティ経営における基本方針として「ジェイ・エム・エスは、すべての人々が笑顔で健やかに暮らせる持続可能な社会の実現のために、医師であった創業者の思いを受け継ぎ、時代とともに変化する環境・社会・ガバナンスに対応し、未来の医療に貢献するソリューションを世界中に提供していきます。」を策定いたしました。

 

 (2) 戦略

当社における人材の多様性の確保を含む人材育成の方針並びに社内環境の整備及び環境負荷の低減に関する取り組みは以下のとおりであります。

 

① 人材育成方針

社員一人ひとりが新しいことに挑戦でき、当社グループと、社員自らが持続的に成長していくことを目指します。

・組織のニーズに基づく「社内求人」に対し、希望する社員が自ら手を挙げる社内公募制度の導入

・選抜人材育成プログラム(グローバル人材、高度IT人材、女性管理職人材)の導入

・階層別教育をはじめ、職能固有の分野について専門的知識・技術を習得する職能別教育の実施

・社員一人ひとりが業務に関連する知識・技術を自ら進んで習得する環境の整備

 

② 社内環境の整備

社員のエンゲージメントを向上させ、一人ひとりのワーク・ライフ・バランスを整えながら社員の定着率を向上させるための働きやすい職場作りに取り組んでおります。

・有給休暇取得の推進

・男性従業員の育児休業取得の推進

・ストレスチェックの実施

・全社員向けハラスメント研修の実施

・障がい者雇用勉強会の実施

・健康経営に係る各種取り組み

・管理部門へのフレックスタイム制度の導入

・ホームオフィスの導入

・JMS WAY、品質文化の醸成活動の実施

 

③ 環境負荷の低減

事業活動における温室効果ガスの削減、省エネルギー化、省資源化に取り組んでおります。

・太陽光発電システムの導入

・購入電力の一部を再生可能エネルギー由来の電力に切替え

・ハイブリット車の導入

・生産設備で生じるエネルギーロスの軽減対策

・生産設備の省エネルギータイプへの更新

・LED照明への切替え

・事業所のエネルギー消費量の把握管理

・製品個包装の使用量削減

・プラスチック廃棄物の再利用検討

 (3) リスク管理

当社において、リスク管理は役員会の協議を経て戦略に反映され、取締役会にて報告、監督がされております。

 

 (4) 指標及び目標

当社では、上記(2)戦略において記載した人材の多様性の確保を含む人材育成の方針及び社内環境の整備について、次の指標(当社行動計画)を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。但し、これらの指標、目標及び実績につきましては、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。そのため、目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性従業員の割合

82026年3月末まで

5.2

男性従業員の育児休業取得率

302026年3月末まで

85.7

有給休暇取得日数

122026年5月末まで

12.7

 

 

なお、今後実施していく重要課題(マテリアリティ)に関するアクションプラン及び評価指標(KPI)につきましては、順次公開していく予定としております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 品質に関するリスク

当社製品の製造及び販売を行うにあたっては、製造及び販売先国の関連する医薬品及び医療機器等の法令・規則を遵守し、品質管理システムの構築と継続的な改善を行っております。しかしながら、各国規制の変更や予測できない環境変化にタイムリーに対応できなかった場合、当社製品の品質上の問題が発生した場合等により製品を提供できなくなるリスクがあります。
 このリスクが顕在化する可能性は常にあると認識しており、このリスクが顕在化した場合、当社グループの社会的信用の低下、発生した損害に対する賠償金の支払い、回収等による業務負担の増加、検査作業負担増加による生産性低下等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。
 上記リスクに対しては、法令・規則を遵守し医療現場の期待に応える製品とサービスが提供できるよう、品質に関する仕組みを適宜改良することを「品質方針」に掲げ、常に品質の向上を図っております。さらに、製品の不良等により万が一重大な損害を発生させた場合に備え、生産物賠償責任保険をはじめとする保険に加入しリスクの低減を図っております。

 

(2) 市場価格に関するリスク

当社グループが提供する製品は、先進国における医療機関の医療費抑制策に伴う診療報酬、医療保険等の公定価格の引下げや、新興国における医療市場の拡大に伴う新規参入企業の増加等、国内外ともに競争の激化によって市場価格低下のリスクがあります。

このリスクが顕在化する可能性は常にあると認識しており、このリスクが顕在化した場合、他社製品への切り替えによる売上高の減少、利益の低下等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。

上記リスクに対しては、各国の医療制度改革をはじめ行政機関が公開する情報等を注視し、経営戦略等に適宜反映させるとともに、顧客起点の事業運営の深化により医療現場のニーズを的確にとらえた付加価値の高い製品を開発・提供するほか、当社グループ全体で最適生産をさらに推し進め価格競争力を強化してまいります。

また、当社における売上高には、顧客の販売実績に応じた値引額が含まれております。この販売実績にかかる未確定の値引額は見積りにより計上しておりますが、実際の販売実績との差異は、売上高の減少や利益の低下等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。

このリスクに対しては、顧客別製品別に過去の値引率及び販売実績額等を基に値引額を合理的に見積ることで、確定値引額との差額の縮小に努めております。
 

(3) 生産活動に関するリスク

当社グループは、日本国内の工場及び海外拠点のうちシンガポール、インドネシア、中国、フィリピン、韓国において、医療機器・医薬品の生産を行っております。これらの工場における突然の製造設備の故障等及びこれらの国における、予期しない法規制等の変更や政情の変化、地震や火山噴火等の自然災害、疫病等の発生により、原材料の調達や製造要員の確保等が困難となり、生産が減少もしくは停止するリスクがあります。

このリスクが顕在化する可能性は常にあると認識しており、このリスクが顕在化した場合、製品の供給責任を果たせなくなるとともに、売上高の減少や利益の低下等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。

上記リスクに対しては、製造設備の定期的な点検や保守、代替材料や代替購入先の検討による依存度の分散、当社グループ内での調達や代替生産等、事業継続計画(BCP)を含むフェイルセーフの取り組みを進めてまいります。

 

(4) 原材料の価格変動に関するリスク

当社グループが提供する製品の多くは、石油製品であるプラスチックを主原材料としており、地政学的な要素も含めた産油国の状況等により原油・ナフサ価格が高騰した場合、原材料購入価格が上昇するリスクがあります。

このリスクが顕在化する可能性は常にあると認識しており、このリスクが顕在化した場合、製造原価の上昇による利益の減少等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。

上記リスクに対しては、調達先の多様化を含めた安定供給先の確保及び原油・ナフサの国際市況を注視し、適切なタイミングでの価格交渉等によりリスクの低減を図っております。

 

(5) 為替相場に関するリスク

当社グループには、海外を拠点とする子会社があり、現地通貨建ての損益及び資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算されるため、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が変動するリスクがあります。また、海外への製品販売取引や海外からの仕入取引等において、外貨建取引を行う場合もあり、為替相場の変動リスクがあります。

このリスクが顕在化する可能性は常にあると認識しており、このリスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

上記リスクに対しては、取引通貨毎の取引バランスを図るとともに、為替予約の実行等により為替リスクの低減に努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度において、経済環境は、新型コロナウイルス感染症からの経済活動の正常化による景気回復への期待が高まったものの、ウクライナ情勢不安や中国の景気減速、原材料・エネルギー価格の高騰や急激な円安進行など、先行き不透明な状況が続きました。当社グループは、医療機器の安定供給確保に取り組む中で、想定を超える物価上昇が企業経営を圧迫しております。

このような状況を受け、当社グループは、2024年5月に「未来をつくるための変革と挑戦」をテーマとした中期経営計画2027を策定しました。「収益構造の改革」と「グローバリゼーションの推進」を基本方針として掲げ、4つの取り組み「事業ポートフォリオマネジメントの強化」、「構造改革による経営基盤の強靭化」、「グローバルな事業収益の拡大」、「サステナビリティ経営の推進」を定めました。この中期経営計画2027のもと、物価高騰に伴うコスト高の影響を吸収するよう価格転嫁や更なる原価低減を進める等、短期的な収益改善に取り組むとともに、社会の様々な要請に応えて中長期的な企業価値を高め、長期的な耐久性を備えた会社へと変革を図ってまいります。

 

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

 

 当連結会計年度の売上高は、円安による円貨換算額の増加も加わり、前連結会計年度に比べ15億51百万円増加の652億92百万円(前連結会計年度比2.4%増)となりました。

 利益につきましては、増収効果はあるものの、原材料費や電力費の高騰のほか、需要拡大に備えた労務費の増加や、研究開発費も増加したことに加え、棚卸資産の評価減及び廃棄損も影響し、営業損失は2億68百万円(前連結会計年度は営業利益7億24百万円)となりました。また、持分法による投資利益や補助金収入の計上などにより、経常利益は1億45百万円(前連結会計年度比75.1%減)となりました。これに法人税等を加減した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は36百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益2億81百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(日本)

薬剤調製・投与クローズドシステムやニードルレスアクセスポート付輸液セット、中国向け血液透析装置の販売が堅調に推移したものの、医療用手袋や栄養セットの販売が減少したほか、欧州向けAVF針(血液透析用針)の販売が顧客の在庫調整で減少したことにより、売上高は428億99百万円(前連結会計年度比3.8%減)となりました。また、セグメント利益については、補助金収入や子会社からの受取配当金が増加したことにより、6億1百万円(前連結会計年度比59.1%増)となりました。

 

(シンガポール)

停滞していた海外需要の回復を受けて、北米向け成分献血用回路や、アジア及びアフリカ向けの血液バッグの販売が増加したことに加え、円安による円貨換算額の増加もあり、売上高は241億80百万円(前連結会計年度比7.2%増)となりました。また、セグメント損益については、増収効果はあるものの、原材料費や電力費等の高騰に加え、需要拡大に備えた労務費の増加もあり、2億80百万円の損失(前連結会計年度は1億59百万円の利益)となりました。

 

 

(中国)

市場成長による需要の拡大傾向は変わりないものの、顧客の在庫調整等によりAVF針や急性血液浄化回路の販売が減少したことから、売上高は36億90百万円(前連結会計年度比9.7%減)となりました。また、セグメント損益については、原材料費の高騰に加え、労務費などの増加もあったため、84百万円の損失(前連結会計年度は79百万円の利益)となりました。

 

(フィリピン)

AVF針やアジア向け血液バッグの販売が増加したことにより、売上高は37億28百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。また、セグメント損益については、原材料費や電力費の高騰に加え、労務費や設備投資に伴う減価償却費の増加もあり、2億45百万円の損失(前連結会計年度は85百万円の利益)となりました。

 

(ドイツ)

欧州向けAVF針や血液バッグの販売が好調に推移し、売上高は42億50百万円(前連結会計年度比13.3%増)となりました。また、セグメント利益については、増収効果により、4億85百万円(前連結会計年度比171.6%増)となりました。

 

(その他)

北米向けAVF針や翼状針の販売が減少したことにより、売上高は40億42百万円(前連結会計年度比24.8%減)、セグメント利益については、11百万円(前連結会計年度比91.8%減)となりました。

 

 

 

当連結会計年度の財政状態の概要は次のとおりであります。

 

a.資産

当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度末に比べ103億1百万円増加の847億9百万円となりました。

 

セグメントごとの資産は、次のとおりであります。

 

(日本)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ52億7百万円増加の592億7百万円となりました。この主な要因は、借入金の増加により現金及び預金が増加したためであります。

 

(シンガポール)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ44億26百万円増加の208億35百万円となりました。この主な要因は、ジェイ・エム・エス医療科技(張家港)有限公司の出資持分を譲り受けたことにより関係会社出資金が増加したためであります。
 

(中国)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ1億36百万円増加の43億58百万円となりました。この主な要因は、設備投資により機械装置及び運搬具が増加したためであります。

 

(フィリピン)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ3億61百万円増加の64億43百万円となりました。この主な要因は、円安による円貨換算額の増加によるものであります

 

(ドイツ)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ5億28百万円増加の26億22百万円となりました。この主な要因は、売上拡大に伴い売掛金が増加したためであります。

 

(その他)

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ18億61百万円増加の61億8百万円となりました。

 

 

 

b.負債

流動負債は、前連結会計年度末に比べ74億92百万円増加の299億29百万円となりました。この主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が増加したためであります。
 固定負債は、前連結会計年度末に比べ7億61百万円増加の140億31百万円となりました。この主な要因は、リース債務が増加したためであります。

 

c.純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ20億47百万円増加の407億47百万円となりました。この主な要因は、為替換算調整勘定の変動によるものであります。
 なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.9ポイント低下の47.9%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度に比べ39億79百万円増加の103億4百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
  

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ6億54百万円増加の31億40百万円となりました。この主な要因は、売上債権の変動によるものであります。
 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ5億48百万円増加の42億39百万円となりました。この主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社出資金の取得に係る支出によるものであります。

 
 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ42億50百万円増加の47億75百万円となりました。この主な要因は、借入金の収支差額によるものであります。

 

当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりであります。

 

第55期
(2020年3月期)

第56期
(2021年3月期)

第57期
(2022年3月期)

第58期
(2023年3月期)

第59期
(2024年3月期)

自己資本比率(%)

48.6

50.4

51.4

51.8

47.9

時価ベースの自己資本比率
(%)

32.0

34.6

20.7

17.2

15.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

5.2

4.9

4.3

7.9

8.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

17.9

21.2

27.3

14.7

16.8

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後期末発行済株式総数により算出しております。

※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

 

 

生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

25,325

+2.7

シンガポール

24,166

+8.3

中国

3,580

△4.4

フィリピン

3,561

+4.8

ドイツ

その他

1,849

△2.5

合計

58,483

+4.1

 

(注) 1 生産実績金額の算定基準は、平均販売価額によっております。

2 セグメント間の取引については、相殺消去前の金額を記載しております。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

7,618

+6.8

シンガポール

17

+276.8

中国

77

△14.0

フィリピン

ドイツ

934

+5.5

その他

403

△15.9

合計

9,052

+5.3

 

(注) 商品仕入実績金額は、仕入価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.受注実績

当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

40,220

△0.9

シンガポール

14,888

+27.1

中国

1,865

△18.7

フィリピン

27

+81.7

ドイツ

4,248

+13.4

その他

4,042

△24.8

合計

65,292

+2.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

HAEMONETICS CORPORATION

6,566

10.3

8,891

13.6

 

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

・経営成績等及びセグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容、並びに中期経営計画の数値目標及び実績

「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

・経営成績に重要な影響を与える要因

「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要  キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

・資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として合理化設備への投資やICT投資の資金を営業活動によるキャッシュ・フローからの資金、及び財務活動によるキャッシュ・フローからの資金で充当します。この財務活動からの資金については、主に金融機関等からの借入を考えております。

また、株主還元については、株主各位に対する長期的かつ安定的な利益還元を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は26,925百万円であり、現金及び現金同等物の残高は10,304百万円であります。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 業務・資本提携

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約期間

(株)ジェイ・エム・エス

(当社)

 

(株)カネカ

医療機器及びその関連分野における業務提携並びに資本提携

2023年4月1日から
2024年3月31日まで

 

(注)(株)ジェイ・エム・エスと(株)カネカとの医療機器及びその関連分野における業務提携並びに資本提携契約は、2025年3月31日まで更新されております。

 

(2) 出資持分の取得による企業結合

    当社の連結子会社であるジェイ・エム・エス・シンガポールPTE.LTD.は、2023年7月14日に、旭化成メディカル株式会社から同社の子会社にあたる旭化成医療科技(張家港)有限公司の出資持分の全てを譲り受ける旨を決定し、出資持分譲渡契約を締結しました。当該契約に基づき、2023年11月28日付で出資持分の全てを譲り受けたジェイ・エム・エス医療科技(張家港)有限公司を連結子会社にしております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載の通りであります。

 

6 【研究開発活動】

外科医でもあった創業者の現場視点での課題解決ポリシーを受け継ぎ、コロナ禍により一層厳しさを増した医療現場の課題を捉えた製品開発に注力しました。特に近年課題となっている医療事故、医療従事者の働き方改革にも着目、IoT、AI等の最新技術を活用し、医療機器の情報の一元化の推進等にも努めました。

 

区分

分野

輸液・栄養領域

輸液、経腸栄養、摂食嚥下 等

透析領域

透析(血液透析、腹膜透析) 等

外科治療領域

人工心肺、カテーテル、急性血液浄化 等

血液・細胞領域

血液・細胞分離、細胞関連デバイス(培養、搬送) 等

その他

組織再生、生分解性材料、IoT・AI技術 等

 

 

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は1,518百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 日本

当連結会計年度における研究開発費は1,518百万円であります。

 

① 輸液・栄養領域
輸液領域では、患者さんはもとより、医療従事者の安全、並びに医療業務の省力化に供する輸液製品システムの構築に主眼を置き、昨年度に引き続き抗がん剤等の安全な調製、投与に寄与する「薬剤調製・投与クローズドシステム」の拡充に努めました。また本システムの簡便確実な着脱機構を応用したコネクトシステムは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が公募した「定型化細胞培養装置クイックコネクトディスコネクト(QCD)」に採択され、国際宇宙ステーションを構成する「きぼう」日本実験棟での細胞生物学実験での使用が予定されています。

また、栄養領域では、摂食嚥下障害に対する舌圧トレーニング効果の高まりを受け、舌圧トレーニング機能を付与した訓練用舌圧測定器の提供を開始しました。

 

② 透析領域

透析領域では、血液透析と腹膜透析の双方を取り扱う唯一の国内企業として、患者さんのQOL向上を念頭に、より安全確実に、また、より効率の高い透析システムの提供に努めました。血液透析では、透析効率の向上を図るべく、新機能を追加した血液透析装置「GC-X01」の提供を開始するとともに、日々患者さん自身が在宅で施行する腹膜透析において、患者さん視点に立った操作性の追求と、DX推進を意識した遠隔通信による医療機関からのモニタリング機能により、さらに信頼性を高めた自動腹膜灌流用装置「APD装置 PD-Relaxa」の提供を開始しました。本装置はこの観点が高く評価され、2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。

 

③ 外科治療領域

外科治療領域では、当社が持つ急性血液浄化分野と循環器分野双方の特長を生かし、集中治療における術後管理の利便性の向上を図る製品開発に努めました。多くの機材が配置される手術室、集中治療室の環境で、医療従事者の視点に立ってより安全、確実に操作できる装置の改良に努めております。

 

④ 血液・細胞領域

血液・細胞領域では、当社の持つ閉鎖系バッグ技術を生かし、有用性が期待される血液成分を閉鎖的、かつ、簡便に分離できるデバイスの開発に注力するとともに、分離した有用成分は、本分野での見識の高いアカデミア、企業とも連携、次世代の細胞培養技術の醸成に向け努めております。

 

⑤ その他

引き続き少子高齢化、医療従事者の働き方改革等、近年の医療を取り巻く環境変化を迅速に捉え、潜在するニーズを具体化し、価値ある医療ソリューション、デバイスを提供すべく、産学官連携協力による先端技術の活用にも注力しております。

 

(2) 日本以外

シンガポール、中国、フィリピン、ドイツ、その他のセグメントについては、既存製品の改良等に取り組んでおります。