第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。

 

(2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標

 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.4兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約9,500億円です。

 

“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標)

 

2024年度実績

中期目標

(2026年目途)

当期純利益

4,777億円

2,000~3,000億円

ROIC

13.2%

6.5%以上

ROE

17.2%

8.0~10.0%

 

 

(株主還元策)

 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向30%を目安に1株当たりの配当下限金額を年間100円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。現在推進中の中期経営計画(対象期間:2024年3月期~2027年3月期)の公表から2年が経過し、公表時に前提としていた当社の財務・投資進捗状況、中長期的な利益水準の目安及び外部環境等にも変化が見られる中、中期経営計画で示す事業運営の大きな方向性は維持しつつ、足元の変化に機動的に対応し、株主・投資家の皆様の期待に応えるべく、2026年3月期以降の配当方針を以下の通り変更することといたしました。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。

 

 

変更前

変更後

連結配当性向

30%

40%

1株当たり配当下限金額

100円

200円

 

 自己株式の取得については、2024年5月8日及び2024年11月6日の取締役会決議に基づき、2025年4月4日までに26,898,400株(取得価額の総額 約1,300億円)の取得を完了しました。なお、取得した自己株式は2025年5月30日に全株消却しました。翌連結会計年度(2026年3月期)においては、取得価額の総額(上限)を1,500億円、取得する株式の総数(上限)を48百万株、株式取得期間を2025年5月9日から2026年4月30日として自己株式の取得を決定しました。また、取得した自己株式は全株消却することを予定しています。

 

(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題

① 中期経営計画の遂行

 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、「物流を止めない」を合言葉に、エネルギー、医療物資や生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく、 “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画  “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。

 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営の変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。

 

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■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み

 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます

 

 ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築

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アンモニア燃料タグボート「魁」

AFMGC本船デザイン

 

 当社グループは2023年11月にNYK Group Decarbonization Storyを発表し、2030年までにScope1+2で2021年度比45%の温室効果ガス(GHG)排出量削減、2050年までにネットゼロ達成という野心的な目標を掲げ、その達成に向け取り組んでいます。目標達成に向けた船舶燃料転換シナリオに基づき、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からグリーンイノベーション基金事業として助成を受けて開発したアンモニア燃料タグボート「魁」が2024年8月23日に竣工しました。同船は、アンモニア燃料船として世界初となる実運航中の実証試験・解析を行い、重油使用時と比較して最大約95%の温室効果ガス(GHG)排出量削減を達成しました。

 また、2025年2月にはアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)として世界初の定期傭船契約を世界最大級のアンモニアプレーヤー、Yara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAと締結しました。当社は今後もアンモニアの海上輸送に留まらず、多様な側面からアンモニアサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。

 

 ◆成長分野と位置付ける物流分野への投資拡大

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Parts Express B.V.社

 

 当社グループは中期経営計画において物流事業を中核事業と位置付けており、成長エンジンである物流事業への積極投資を続けています。

 特に今後も成長が見込まれる自動車やヘルスケア、リテールなどのサービスを強化しており、2024年4月には当社グループの郵船ロジスティクス株式会社のオランダ法人が自動車部品の配送に強みを持つオランダの物流会社Parts Express B.V.を買収しました。郵船ロジスティクス株式会社オランダ法人はベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)のお客様を中心に、さまざまなサプライチェーン・ロジスティクスサービスを展開しており、この買収により自動車産業に特化した配送、クロスドックサービスをより深化させます。

 また、2024年7月にはベルギーで医薬品倉庫の稼働を開始しました。同倉庫は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robots)や無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、自動仕分けシステムなどを導入したことで、効率的な保管と省人化を実現しました。欧州における医薬品輸送のハブでもあるベルギーで新たに医薬品倉庫を稼働することで、最先端の医療・医薬品物流をリードし、お客様のニーズに応える高付加価値サービスの提供を目指します。

 

 ◆脱炭素社会に向けた洋上風力関連事業での貢献

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作業員運搬船「Transporter」

 

 当社では、洋上風力発電事業を、脱炭素化だけでなく「エネルギーの安定確保」、「地方創生と国際競争力の復活」という、日本が直面する課題の解決に取り組む重要事業と位置付けています。当社は洋上風力発電も含めた再生可能エネルギー事業の推進と関連人材の育成をはじめ、港湾活用、船舶関連人材の育成、観光振興、環境保全などの地方創生に取り組んでおり、2024年12月には秋田曳船株式会社と洋上風力事業に必要な船舶保守管理サービスを提供する合弁事業会社としてジャパンオフショアサポート株式会社を設立しました。

 海外市場においては2025年1月に、洋上風力発電での作業員輸送船(Crew Transfer Vessel、以下「CTV」)運航の先駆企業であり、スウェーデンに本社を置くNorthern Offshore Group ABの過半数株式を取得し、連結子会社化しました。

 これに加えて、2025年3月に台湾の洋上風力発電関連企業である國際海洋股份有限公司(IOVTEC Co.,Ltd.)が新規に発行する普通株式を引き受けました。台湾の洋上風力発電市場はアジアにおいて先行しており、同社はこれまでこの市場における数多くのプロジェクトに携わり豊富な実績を積み上げてきました。

 当社は、外航海運で得た知見や海外パートナーとの提携を活用するとともに、CTVやトレーニングセンター等の事業を通じ、地域密着の強みを生かした洋上風力発電関連事業を進めています。

 

 ◆循環型社会の実現に向けた取り組み

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洋上回収イメージ図

オオノ開發 知多解体事業所イメージ

 

 当社は、循環型社会の実現に向けて本業である海運業で培った技術や知見を新しい分野で生かす取り組みを続けています。

 宇宙関連事業においては(1)洋上でのロケット打ち上げ、(2)打ち上げたロケット1段目の洋上回収、(3)衛星データの利活用、の3つの領域で事業化を目指しています。再使用型ロケットの洋上での回収プロジェクトについては、2024年12月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業の1つとして採択されており、今後本格的に研究開発を進めていきます。

 また循環型社会の実現を目指し、2024年9月にオオノ開發株式会社と国内で船舶や大型海洋建造物を解体し、鉄スクラップ等のリサイクルを行う船舶リサイクルの事業化を目指して共同検討していくことに合意しました。

 今後も当社のコアコンピテンシーを生かし、様々なパートナーと協力し合いながら循環型社会の実現を目指します。

 

 ◆2025年7月から客船2隻運航体制へ、またオリエンタルランドとクルーズ事業における業務提携に向けた基本合意書を締結

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「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社

 

 客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月20日に就航を予定しており、「飛鳥Ⅱ」との2隻体制による運航に向けた準備を着実に進めています。

 LNGを含む3種類の燃料に対応したエンジン及び陸上電力受電装置を採用し、環境に配慮した飛鳥Ⅲは、飛鳥クルーズが日本において培ってきたクルーズ文化、和のおもてなしを継承しながらも、多彩なダイニング、エンターテイメント、ウェルネスなど心身を満たすプログラムを備え、より自由により豊かに、新たなる時代のクルーズ価値を創造します。

 また、当社、郵船クルーズ株式会社、株式会社オリエンタルランドの3社は、株式会社オリエンタルランドが日本を拠点として2028年度の就航を目指すクルーズ事業において、業務提携に向けた基本合意書を締結しました。

 当社グループは、貨物輸送や飛鳥クルーズなどを通じて長年にわたって積み重ねてきた運航実績や高い安全技術を様々な形で活用し、中核事業としての持続的な成長を目指します。

 

 ◆NYK Energy Ocean株式会社発足

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NEO社ロゴ

LPG船「SUNNY VISTA」

 

 当社は2025年4月1日、ENEOSオーシャン株式会社の原油タンカー以外の海運事業を承継する新会社NYK Energy Ocean株式会社(以下「NEO社」)株式の80%を取得し、NEO社が発足しました。

 NEO社はENEOSオーシャン株式会社から承継したLPG船、ケミカルタンカー・プロダクトタンカー、貨物船の計47隻を運航します。

 LPG船は当社で現在運航している15隻と合わせて33隻になり、当社グループは世界最大規模のLPG船運航事業者になります。

 当社グループは、エネルギー輸送事業において成長事業と位置付けるLNG及びLPG船事業を中心に取り組みを強化するとともに、安定的なエネルギー輸送の責務を果たすことを目標としており、今回のNEO社の子会社化はこの戦略に沿ったものです。ENEOSオーシャン株式会社から承継した100名以上の優秀な人材と47隻の良質な船隊、そしてエネルギー事業を幅広く手掛けるENEOSグループとの連携強化によってシナジーを創出し、エネルギー輸送事業のさらなる成長を目指します。

 

 ◆電気推進タグボートの運航開始に向けて

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モータードライブシステム

 

 当社グループはリチウムイオンバッテリー搭載の電気推進タグボートを建造し、2026年末に運航を開始します。電気推進船で中核となるモータードライブシステム(※)は、これまで舶用向けでの国産化が進んでいませんでしたが、パワーエレクトロニクス分野で業界トップクラスの技術力を持つ株式会社TMEICと協議を重ね、本船向けに新たに開発される技術を採用します。これにより、本船は国内メーカー製モータードライブシステムを搭載する日本初の電気推進タグボートとなります。さらに、本船には国内のタグボートとしては初めて船舶定点保持システム(DPS)を導入し、船体を自動的に一定エリアに留められるようにすることで、乗組員の心理的負担を軽減します。この取り組みは、国土交通省の内航変革促進技術開発支援事業の対象事業に採択されています。また、設計・建造・運航までの船舶バリューチェーンを当社グループ内で一貫して担い、電気推進船に必要な幅広い知見を集積していきます。将来的には、こうして培った知見を広く海事産業へ還元し、人手不足や脱炭素といった日本が抱える社会課題の解決に貢献していきます。

※ パワーエレクトロニクス技術を利用したドライブ装置とモーターによる駆動方式

 

 ◆「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」の実現

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 当社グループは2023年に、CX2030ビジョンを実現するための「CX Story」を発表し、「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を実現するために、Diversity & Inclusion(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、以下「D&I」)を経営戦略の重要な柱と位置付けています。

 まず、2024年9月にはD&Iについて、当社グループの姿勢を明確にするため、「D&I Promise」を策定しました。また、特に、「Gender」「Marine」「Global」の観点からインクルージョンを進めています。「Gender」については、女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、組織として最大限の能力を発揮できる環境を整えていきます。「Marine」については、海技者の活躍促進プロジェクト「CX NEO(NYK Empowering Oceans)」を立ち上げ、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現していきます。「Global」については、引き続き海外人材の本社での活躍促進や、グローバルでの人材公募を進め、適所適材の人材戦略を実行します。

 当社グループは今後も人材の多様性と、それを尊重し歓迎するインクルーシブな組織風土の醸成に努め、企業の持続的成長を目指します。

 

 ◆「DX銘柄2025」に3年連続選定

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 当社は2025年4月に経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」において「DX銘柄」に選ばれました。当社がDX銘柄に選定されるのは3年連続となります。今後もデジタルの力を活用して当社グループの中期経営計画を推進し、グループミッション“Bringing value to life.”を追求していきます。

 

② 遵法の徹底

 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。

・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置

・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置

・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続

・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施

・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書やコーポレート・ガバナンスガイドライン、2023年3月に発表した中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 A Passion for Planetary Wellbeing -”、2023年11月に発表した「NYKグループESGストーリー2023」、「NYK Group Decarbonization Story」にて示されており、その内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 ①サステナビリティに関するガバナンス

 当社グループはサステナビリティ経営を「実装」するために、サステナビリティ戦略本部を、また同本部内にサステナビリティ経営グループと脱炭素グループを設置しています。

 更にサステナビリティ戦略委員会を設け、長期的視点のもと当社グループの持続可能性の追求のため審議・討議を行っています。委員長はサステナビリティ戦略本部長が務め、委員は各本部を代表する執行役員やグループ長、外部有識者で構成されています。サステナビリティ戦略委員会において部門横断的な視点で討議されたサステナビリティ課題のうち、重要な事項に関して、サステナビリティ戦略本部から経営会議へ付議します。取締役会は、気候変動リスクを含むサステナビリティ課題に関して報告を受けると同時に、経営会議における審議を経て取締役会での決議を要する事項を決議します。取締役会は執行体制を監督することで、当社グループにおける中長期的な企業価値向上に寄与する体制を構築しています。

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 ②気候変動に関するガバナンス

 当社グループは気候変動を重要な経営課題の一つであると認識しています。当社グループでは、サステナビリティ経営を実装する組織としてサステナビリティ戦略本部を設置し、リスク管理委員会と連携して気候変動リスクを管理するとともに、これを全社リスクに統合し、取締役会へ年2回報告しています。サステナビリティ戦略本部は、各本部を代表する執行役員・グループ長や外部有識者で構成されるサステナビリティ戦略委員会を招集し、気候関連課題を含む様々なサステナビリティ課題について部門横断的な視点から討議を行います。重要な事項についてはサステナビリティ戦略本部から経営会議へ付議し、経営会議での審議を経た上で、取締役会で決議を行います。また、中・長期脱炭素目標の達成に向けた執行を取締役会が監督します。

 

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(2)戦略

 ①サステナビリティに関する戦略

 当社グループはグループ企業理念である “Bringing value to life.” のもと、企業の持続的成長及び中長期的な企業価値の創出と社会・環境課題解決の両立を可能とする「サステナビリティ経営」を推進することで、株主をはじめとした、従業員、顧客、取引先及び地域社会などの様々なステークホルダーに価値を届ける存在になることを目指しています。

 2023年3月に発表した中期経営計画の中では「ESG経営を中核に据えた成長戦略」を掲げており、既存中核事業の深化・新規成長事業の開拓を通じ、社会に貢献するとともに持続的成長を続ける企業グループを実現します。

 

②気候変動に関する戦略

 当社グループはサステナビリティを経営戦略に統合し、長期的な視点で社会・環境問題への貢献を目指しています。中期経営計画策定にあたり、2050年の事業環境を見据えて超長期目線でのシナリオと戦略を議論しました。既存中核事業の深化と新規成長事業の開拓を進める「両利きの経営」を基軸戦略に目指し据えて各事業の収益性を高め、「お客様への価値提供」「持続可能な社会への貢献」「投資と収益の両立」の実現を通じて持続的な成長を目指します。

 また、2023年11月に当社グループは「NYKグループESGストーリー2023」、「NYK Group Decarbonization Story」を発表しました。気候変動に関するリスクと機会を分析し、持続的な成長を可能にするための戦略、新たに求められる環境価値について、その詳細を記載しています。

 特に、「NYK Group Decarbonization Story」では、持続可能な社会の実現に向けて世界の脱炭素化を牽引するとの決意のもと、高い志と脱炭素化のための取り組みを積極的に推進していく姿勢を力強くグループ内外に明示しています。当社グループのGHG排出量削減に向けた一連の取り組みやその方向性、目標設定、移行計画などに加え、持続可能な成長に向けたコンセプトを策定しました。

 2024年10月には「Progress Report 2024 as annex to NYK Group Decarbonization Story」を発表し、当社グループが「NYK Group Decarbonization Story」を発表して以降の約1年間の進捗や具体的な取り組みについて数値を交えて説明しています。

 

 ③人的資本に関する戦略

 中核事業の深化と新規事業の進化を両輪とする中期経営計画(基軸戦略)実現のため、支えの戦略としての人材戦略(CX Story)を進めています。「A Japanese Company Operating Globally」(海外で幅広く事業展開しているが、主要な意思決定は日本でなされている組織)から「A Global Company Headquartered in Japan」(日本に本社があり、多様なバックグラウンドを持った社員が意思決定に参画する組織)へ変革する、という長期ビジョンのもと、

・人材育成方針(人材の強化)としてタレントマネジメント及びダイバーシティ&インクルージョン

・社内環境整備方針(組織の強化)として組織開発

を推進します。その実現のため、2024年度にはグローバル人事体制の強化に取り組みました。

 

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■人材育成方針 (人材の強化)

 当社グループでは、中期経営計画におけるビジョンを達成するため、日本郵船グループに求められる力として、以下の5つを新たに定義し、育成を進めていきます。1) 変革を支える現場力 2) 新しい発想やアプローチ 3) 戦略成長領域に係るスキル・知見・経験 4) 強力に変革をリードできる力 5) 事業を構築・運営できる力

 

<タレントマネジメント>

 両利きの経営を実現するためには、従来の枠組みを超えた価値創出が必要です。そのため、均質的な人材育成から、それぞれに特徴のある職務遂行スキルを軸として持つ「軸のあるジェネラリスト」を育成する方向へと大きく舵を切ります。これにより、人材を強化し、企業の成長を加速させます。具体的には、

1)海技者が船上にとどまらず陸上でも活躍する領域を拡大するなど、職種を超えて人材を登用し、人材の持つポテンシャルを最大限引き出します

2)グループ内公募を拡大し、挑戦する機会を拡充することで自律的なキャリア形成を推進します

3)グループ経営を担う次世代リーダーを戦略的に準備します

4)事業に精通した海外人材を登用することでグループ会社経営の現地化を推進し、多様な視点を組み入れた意思決定を実現します

 

<ダイバーシティ&インクルージョン>

 ダイバーシティ&インクルージョン推進のため、下記の具体的施策を進めます。

1)2024年度に日本郵船グループのD&Iに関する姿勢を示す「D&I Promise」を策定し、グループ全体でダイバーシティ&インクルージョンを進める上での行動規範としました

2)女性活躍推進をグループ全体で進め、女性社員比率や女性管理職比率を向上し意思決定の多様化を図ります そのために、女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、パイプライン拡充のため、経営レベルの意思決定経験を積むプログラムを開始しました

3)競争力の源泉である、「海技者の活躍」を促進するためプロジェクトを推進し、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現します

4)日本郵船も含めたグループ・グローバル間で、人材交流を活発化させ、組織内で人材の多様化を進めます

 

■社内環境整備方針(組織の強化)

 ありたい組織像として「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を目指し、組織開発を進めます。

 

<組織開発>

 創業からの歴史に紐づいたミッションや、バリューの浸透、社員エンゲージメントの向上を図り、中期経営計画のビジョン実現の土台を作ります。具体的には、

1)約140年の歴史に紐づいたミッションムービーを作成し、グループ内外への浸透を図るとともに、ミッションの自分ゴト化を促すためのワークショップをグループ内で開催します

2)エンゲージメントサーベイの結果を分析し、各組織においてアクションプランを策定、実行に移します

3)グローバルでエンゲージメントサーベイを定期的に実施し、PDCAを継続することで組織改善を図ります。2022年度に引き続き、本年度サーベイを実施予定です

 

(3)リスク管理

 ①サステナビリティに関するリスク管理

 サステナビリティ戦略本部は、気候変動を含むサステナビリティに関するリスク及び機会を特定しています。特定した気候変動を含むサステナビリティに関するリスクは、全社リスクに含めて管理しています。当社グループはリスク管理方針及びリスク管理規則に基づき、代表取締役社長を委員長、各本部長をメンバーとするリスク管理委員会を年2回実施しています。当委員会では、当社グループの経営に大きな影響を与え得る重要リスクの管理状況の報告と評価を行い、その結果を取締役会に報告しています。

 リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 ②気候変動に関するリスク管理

 「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)リスク管理 ① サステナビリティに関するリスク管理」に加え、気候変動のリスク及び機会を特定する際は、当社グループ直接の事業活動だけでなく、関連するバリューチェーンでの活動(燃料の調達や貨物に関わる産業構造の変化等)も考慮に入れた上で、短期的な視点だけでなく、中長期的な視点でも捉えています。特定したリスク及び機会については、対応する本部を管掌する執行役員がリーダーとなり具体的な対応を事業計画へ落とし込みます。

 リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 最重要リスク (5) 気候変動リスクへの対応について」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 ①サステナビリティに関する指標及び目標

 当社グループはサステナビリティ経営の根幹にあるマテリアリティ(重要課題)を「安全」「環境」「人材」と定めており、マテリアリティは事業に直結するものとして従業員もその重要性を認識しています。

 それぞれのマテリアリティにおいては「ありたい姿」を策定し、「ありたい姿」を実現していくための「重要テーマ」を設定しています。これらの「ありたい姿」の実現を目指して様々な取り組みを行っています。

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 当社グループはマテリアリティに基づいた非財務指標を設定し、中期経営計画で財務指標(ROIC、当期純利益、ROE)とともに発表しました。また脱炭素目標に関しては「NYKグループESGストーリー2023」、「NYK Group Decarbonization Story」で改訂しました。

 現在、当社グループでは非財務指標の深化や追加指標の策定を検討しており、今後開示する予定です。

 

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 「安全」は、当社グループのすべての事業活動の基盤であり、何よりも優先すべき事項であることは言うまでもありません。船舶、航空機、ターミナル、トラックなど、あらゆる現場での安全を最優先に、安定したサービスの提供に努めています。

 非財務指標・KPI目標として、当社グループは「重大事故ゼロ」を掲げています。当社グループが携わるすべての事業において安全を確立することで、命と環境を守ります。(2024年度重大事故件数実績0件)

 当社グループは、船舶の安全運航の達成度を計測するため、ダウンタイム(衝突・座礁・機関事故等により本船サービスが停止したすべての時間)を指標として取り入れ、1隻当たりのダウンタイムを10時間以下とすることを目指し取り組んでいます。

 ダウンタイムを最小限にする手段の一つとして、IoTやビッグデータ活用による船舶機器の故障予知・予防の研究を進め、陸上からも安全運航をサポートしています。船舶の機関事故や漏電、火災等につながる可能性のある事象をいち早く検知することを目的に、SIMS(注1)で収集した機関系データの異常値分析を進めています。

 

 (注1) SIMS (Ship Information Management System:船舶パフォーマンスマネージメントシステム)エンジンや各種機器のデータをはじめ、船舶の速度や揺れ、風速や潮流といった気象情報まで、詳細な実海域データをリアルタイムにモニタリングし、船上と陸での情報共有が可能。

 

 ②気候変動に関する指標及び目標

 当社グループは気候変動対応における中期目標として2030年にScope1・Scope2を対象に2021年度比45%総量削減を掲げています。この削減目標はパリ協定の1.5℃目標に整合しています。

 また長期目標としては2050年に当社グループすべてのScopeを対象にネット・ゼロエミッションとすることを掲げています。上記の中・長期目標は取締役会で決議されています。

目標年

対象

目標

 2030年

 Scope1・Scope2

 -45%[2021年比] (注1)

 2050年

 Scope1・Scope2・Scope3

 ネット・ゼロエミッション

 

 当社グループは、GHG排出量並びに削減目標を総量で把握・管理しており、中期目標達成に向けた進捗状況は下表のとおりです。

指標 (ton-CO2eq)

変化率

年度

2021

2022

2023

2021年度比

Scope1+ Scope2

12,724,086

11,331,299

11,473,705

-9.80%

(注1) 総量目標。パリ協定1.5℃目標に整合。

詳細は当社HPにて開示している「NYK Group Decarbonization Story」をご覧ください。

 

 ③人的資本に関する指標及び目標

 長期ビジョンである「A Global Company Headquartered in Japan」へ移行するためダイバーシティの確保から、インクルージョンの推進へと軸足を移してきています。特に、「Gender」「Marine」「Global」の観点から、Inclusionを進め、一体感のある組織を作ります。

 「Gender」については、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、組織として最大限の能力を発揮できる環境を整えていきます。2030年に単体及び連結での女性管理職比率30%を目指します。(2024年度女性管理職比率実績 単体13.9%、連結26.3%)単体での女性の海外勤務経験者数、女性管理職育成のための社外派遣型研修への参加人数、男性の育児休業取得率、女性比率 等を指標として進捗確認を行っていきます。

 「Marine」については、海技者の活躍促進プロジェクト CX NEO(NYK Empowering Oceans)を立ち上げ、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現していきます。海上職の人的資本投資額、エンゲージメントサーベイスコア、商船大学NYK-TDG MARITIME ACADEMY(NTMA)卒業生数 等を指標として進捗確認を行っていきます。

 「Global」については、引き続き海外人材の本社での活躍促進や、グローバルでの人材公募を進め、個々の能力を活かした適所適材の人材戦略を実行します。クロスボーダーアサインメント件数、公募での異動件数、海外現地法人のMDにおける現地化比率 等を指標として進捗確認を行っていきます。

3【事業等のリスク】

当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他事業の事業活動において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、リスク管理方針及びリスク管理規則に基づき、リスク管理委員会を年2回実施し、当社の経営に大きな影響を与えうる、重要リスクの管理状況の報告と評価を行い、その結果を取締役会に報告します。当社グループは、「当社グループの継続的成長にとって影響を与えうる不確実性」をリスクと定義し、社長を委員長、本部長をメンバーとするリスク管理委員会において各本部からの報告を基に重要リスクを特定し、重要リスク毎にリスク対応の推進役となる本部を決定し、グループ全体のリスク低減活動を推進します。

当社グループの事業継続に重大な影響を与えうる「最重要リスク」には、コンプライアンスリスク、重大事故などのオペレーションリスク、サイバーリスク、自然災害などの災害や気候変動への対応に関するリスクがあります。また、当社グループの経営に大きな影響を与えうる「重要リスク」には、戦略リスクや市況変動リスク、オペレーショナルリスク、財務と会計リスク、人権リスク、感染症リスク等があります。なお、毎年、リスク管理委員会において、「重要リスク」の中から「最重要リスク」を選定します。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(最重要リスク)
(1)コンプライアンスリスクについて

 世界的にさまざまなルールの強化が進むなかで、企業にはより一層高いコンプライアンス意識が求められています。当社グループは、コンプライアンスを推進、強化するための体制の整備及び、重要方針に関する事項等を審議・決議するための場として、年2回コンプライアンス委員会を開催しています。また、毎年9月を当社グループのコンプライアンス総点検月と定め、役員・従業員自らの行動・業務プロセスを見直し、コンプライアンス推進活動を実施しています。同活動では、「コンプライアンスDAY」と定めた日にNYK Chief Compliance Officer 自らコンプライアンスについてのメッセージを発信し、また、当社グループで発生した事例を取り上げ、弁護士によるコンプライアンス研修を行っています。

 更に、遵法活動徹底委員会を設置し、独占禁止法、贈収賄関連法令、経済制裁などの特定の法令のみならず、法令全般及び各種許認可等も含めた遵法の徹底を図っています。

 しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(2)重大な事故等による影響について

 当社グループは、「Bringing value to life.」という企業理念のもと、海・陸・空にまたがる幅広い物流事業を展開しています。船舶や航空機等の安全運航及び環境保護対策を最重要課題と認識しています。

 当社グループの海上運送事業においては、独自の安全規格である「NAV9000」によるアセスメントを実施するなど、安全運航に努めています。船舶をはじめ各現場での実行状況は、社長を委員長とする「安全・環境対策推進委員会 」で定期的にレビューされ、安全品質レベルを更に向上・改善させるシステムが構築されており、また、緊急事態に際しては、適切な対応ができる体制を整えています。しかしながら、もし不測の事故、特に油濁その他の環境汚染、乗組員、乗客、及び荷役関係者を含む訪船者の死傷、船舶の喪失又は損傷等につながる重大な事故等が発生した場合、また、船内における感染症の発生、感染症の世界規模の蔓延による検疫強化、もしくは海賊・テロ事案等保安事件が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループの航空運送事業においては、活動範囲が世界各地に及んでおり、「安全は全てに優先する」という安全方針に基づき、全社的安全推進体制を構築し、安全運航の確保に努めています。しかしながら、乗務員の死傷、航空機の喪失又は損傷等につながる重大な航空機事故が発生した場合、航空機の安全性を著しく損なう問題が発生した場合、航空機の稼働を著しく低下させる事由が発生した場合、もしくは各々の地域における政情不安、テロ、新型コロナウイルス感染症等の疫病の流行、及び自然災害等が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、航空機の安全性が確認できない場合、自主的に機材の運航を見合わせ、安全性が確認できるまで点検等の整備を行うことがあります。

 航空機を運航する当社グループ会社は、航空運送事業者として国際条約、二国間協定、IATA(国際航空運送協会)の決定事項その他の国際的取り決めに従って国際航空運送事業を営んでおり、当社グループの航空運送事業は運賃及び料金の設定に関し独占禁止法の制約を受ける場合があります。また、米国を中心に世界規模で航空保安強化に係る法規制が進むなか、保安対策費用の増加が見込まれます。加えて、民間国際航空の分野では環境負荷低減の取り組みが着実に進行しており、規制強化などによって対策費用が増加した場合は、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(3)本社及び主要な事業会社(拠点)の事業運営に重大な影響を与える自然災害等のリスクについて

 地震、津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能が麻痺するリスクや本社の管理機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクや、主要な事業会社のオペレーション機能が麻痺することによる事業継続リスクがあります。

 災害や社会混乱などで被害を受けた際に、重要な機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にもできるだけ早急に復旧できるように、主要な事業ごとに「事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)」を策定しています。しかしながら、自然災害等が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(4)情報システムセキュリティに関するリスクについて

 当社グループにおいてITの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっており、地震・火災等の罹災に際しても、システムの安全及び安定稼動の確保に努めています。また、サイバー攻撃に対しても、ゼロトラストセキュリティモデルを念頭においたセキュリティ対策の強化に加え、ダメージの最小化及び早期復旧にも重点を置き、定期的な訓練の実施やグローバルでの管理体制の構築を進めています。しかしながら、これらの対策を講じても、サイバー攻撃の高度化・巧妙化により完全にリスクを排除することは困難であり、システムダウンによる当社の業務の一時的な停止、顧客情報の流出、信頼の毀損、損害賠償、監督当局からの指導・制裁、対応コストの発生等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(5)気候変動リスクへの対応について

 当社グループはサステナビリティ要素の一つである「気候変動」を重要な経営課題の一つとして認識しており、2023年3月に発表した中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の中で経営戦略としてのEX(エネルギー転換)の位置づけを再定義、財務影響を含めた具体的な取り組みを策定しました。

 この内容を更に補強する形として同年11月に「NYK Group Decarbonization Story」を発表、2050年に向けた脱炭素戦略を公表しました。

 最新の科学的知見である1.5℃目標水準に準じた野心的なGHG削減目標を設定、脱炭素社会の達成を目指し当社グループ全体のGHG排出量削減に努めます。

 一方、本長期目標を達成するためには、アンモニアや水素等のゼロエミッション燃料の実用化が不可欠であり、そのためには現時点の水準から大きな技術革新が必要です。

 大型外航船の使用期間は15年から20年程度であるため、仮に革新的技術が利用可能となったとしても、全世界の船舶に普及するまでには、相当の時間とコストが発生すると見込まれています。

 このような認識の下、技術革新と具現化の途上においては、世界の持続的な成長に必要な輸送需要に、その時々において最も環境負荷が低いソリューションで応えつつ、社会に対して相応の負担への理解を得る必要があると考えています。

 今後、当社グループが気候変動リスクに適切に対応できなかった場合には、顧客離れ、地域社会との関係悪化や船舶に対する融資が得られないなどの事態が生じ、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(重要リスク)

(6)経営戦略に関するリスクについて

 当社グループは、中期経営計画に基づき、「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」というビジョン達成に向けた具体的施策に取り組んでいます。しかしながら、事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みを実行する際には、以下に記載したリスクがあります。

① 投資計画に係る影響について

 当社グループは、船隊の整備等に係る投資を計画し、実行していますが、今後の世界経済の状況や海運市況及び公的規制等の動向によって、これらが計画どおりに進捗しない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 新造船の発注から竣工までには数年の年月を要し、その間の需要の変化も一つの要因です。造船スケジュールの遅延や、造船所における労働争議、造船所の経営難など造船所自体に関わる要因によっても左右されます。

 また、鋼材価格の高騰等により新造船の価格が上昇し、それを適切に運賃等に反映させることができない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

② 運航船舶等の処分に関する影響と市況悪化による固定資産の減損損失について

 当社グループは、海運・空運市況の著しい変動、運航する船舶や航空機の新技術開発・導入に起因する陳腐化あるいは安全規制・諸規則の変更等による物理的使用制限等により、当社グループが保有する船舶や航空機を売却する場合、又は当社グループが傭船する船舶の傭船契約解約等を実施する場合があります。その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 船舶又は航空機を売却する際、常に有利な条件で売却できる保証はなく、また売却できない可能性もあります。市況が低迷し、船舶及び航空機の市場価格が下落しているときに、減価償却が済んでいない船舶及び航空機を簿価より低い価格で売却しなければならない場合もあり、その場合売却損を被る可能性もあります。また、売却をしない場合でも、市場低迷が回復せず、又は更に悪化した場合、船舶、航空機その他の固定資産の収益性低下により投資額の回収が見込めなくなる場合があります。この場合資産価値が下落して減損損失が発生し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 傭船契約を解約又はそれに準じる行為を行う場合は、船主と協議の上、違約金等を支払う可能性があります。

 

③ 他社との提携戦略について

 当社グループは、コンテナ船事業において、他の海運会社との戦略的提携であるプレミア・アライアンスのメンバーとなっています。当社グループは、コンテナ船事業の効率的かつグローバルなネットワークを保つために、かかるアライアンスが必要であると考えています。しかしながら、アライアンスの活動には、均一の安全・運航基準及び管理方針・手続を維持する難しさ、アライアンス統合及び解散の可能性、アライアンスに加盟している会社の撤退又はアライアンスによって必ずしも期待していた結果が得られない可能性、また各国規制等によりアライアンス自体が認められなくなる等のリスクを伴います。当社グループがかかる要因に適切に対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

④ 長期安定的な収益基盤の維持・構築について

 当社グループは、長期の安定契約に重点を置いており、船隊の多くを船舶の保有又は長期傭船により調達しています。しかしながら、その船隊規模に見合った貨物の長期契約が十分に獲得できない場合、それら船舶は短期契約による運航に供することとなり、運賃水準が大幅に下落すると、船舶の運航により得られる収益が、保有船及び長期傭船の固定費用を十分にまかなうことができず、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループのドライバルク事業部門及びエネルギー事業部門においては、取引先との長期契約に重点を置いています。かかる長期契約には、決定された運賃、使用船腹量及び費用調整条項が定められ、市場環境の変化による影響を軽減するのに役立っています。しかしながら、当社グループが長期契約を結んでいる一部の取引先の経営状態等が悪化し、取引先が契約条項の全部又は一部の履行を継続できなくなる可能性があります。一方当社グループは、かかる長期契約上の義務を履行するにあたって、第三者からの傭船によって船舶を調達する場合があります。船主が、傭船期間終了前に当社グループとの契約を履行できなくなる可能性があり、これによって他の船舶を調達するための費用が発生する可能性もあります。今後このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。なお、長期契約は市況の変動による影響を軽減する効果がありますが、市況の上昇局面においても直ちに運賃に反映できなくなる可能性があります。

 当社グループの重要な取引先には、自動車メーカー、製鉄会社、製紙会社、公共事業会社、電機メーカーや小売業者等が含まれています。仮に、重要な取引先との間の取引規模が縮小したり、重要な取引先を失うようなことがあれば、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(7)市況変動に関するリスクについて

① 海運市況・荷動き等の変動による影響について

 当社グループは、海運市況の変動に左右されない安定的な営業収益の確保に努めていますが、世界の経済動向、国際間の荷動き、競争激化、船腹需給バランス等の影響により、運賃収入及び傭船料収入などが大きく変動する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 特に、海上運賃は、船腹需給の不均衡により大幅に変動する傾向にあります。一方、船腹の供給が需要を上回ると、市場における傭船料の水準が下落する可能性があります。

 なお、船腹の需要に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

 ・世界的、地域的な紛争、政治動向及び経済状況

 ・世界的な感染症の蔓延

 ・当社グループが輸送するエネルギー資源、原材料及び商品の需要及び在庫水準

 ・工場のグローバル化

 ・海上輸送及びその他の輸送方法の変化並びに代替輸送手段の発展

 ・環境及びその他の規制の動向

 一方、船腹の供給に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

 ・新造船の竣工により増加する船腹量

 ・老齢船の解撤により減少する船腹量

 ・港及び運河の混雑又は閉鎖

 ・環境規制及び船舶の耐用年数を制限する可能性のあるその他の規制の変更

 航空貨物の運賃は、貨物を輸送するスペースと荷動きの不均衡により大幅に変動する可能性があります。航空業界の競争環境と景気動向からもたらされる大幅な航空運賃の変動又は、取扱い貨物量の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 また、フォワーディング等の物流事業においても、海上・航空貨物と同様にスペース供給と需要の不均衡により、運賃が大幅に変動する可能性があります。物流事業での大幅な運賃の変動や取扱貨物量の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

② 為替レートの変動による影響について

 当社グループの事業においては、外貨建て取引の収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。収入と費用の通貨を一致させる施策を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響の軽減に努めています。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外子会社等の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

③ 燃料価格の変動による影響について

 当社グループは、世界中で当社グループが運航する船舶及び航空機に使用される燃料を常時購入しています。

 燃料費は、当社グループの定期船事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業及び航空運送事業における費用の大きな割合を占めています。燃料の価格水準及び入手可能量は、世界的な原油・天然ガス需給、外国為替市場の変動、産油国やOPEC及び産ガス国の動向、環境規制の状況、戦争その他の多くの要因により変動し、これらの動向を正確に予測することは困難です。当社グループとして、燃料調達地域の分散及び燃料サーチャージの適用、ヘッジ手段としてのデリバティブ取引の利用、燃料の消費量節減等の対策を講じて業績に与える影響の軽減に努めていますが、価格の変動又は供給不足から十分に影響を軽減できない可能性があります。

 

④ 金利動向による影響について

 当社グループは、船舶や航空機、輸送関連施設等の取得に係る設備投資需要や事業活動に係る運転資金需要に対し、内部資金を充当する他、外部から資金を調達しています。

 これらの外部資金については、現在、変動金利調達と固定金利調達があり、金利環境を勘案の上その割合を注視し金利変動による影響の軽減に努めていますが、将来の金利変動によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(8)投資有価証券における評価損による影響について

 当社グループは、有価証券の評価基準及び評価方法として、その他有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについては決算期末日の市場価格等に基づく時価法を採用しています。株式市況の変動等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(9)人権問題について

 当社グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、多様な価値観や異文化を認め合い、尊重することを当社の行動規準でも謳い、その責務を果たす指針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「日本郵船グループ人権方針」を2022年11月に定めました。社内委員会を設置し、専門的知見を有する第三者機関からの助言を定期的に受けつつ、人権デュー・ディリジェンスをはじめとした人権尊重の取り組みを推進しています。

 また、企業活動が社会にもたらす影響の重要性への認識が高まる中、当社グループはサプライチェーン全体で、強制労働、児童労働、環境破壊行為などによる人権・環境への負の影響を防止・軽減するため、サプライヤーの皆さまと共に目指す基準を示す「日本郵船グループ サプライヤー行動規範」を2025年1月に策定しました。

 しかしながら、当社グループの事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(10)感染症(新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ等)の流行によるリスクについて

 新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを含む感染症の蔓延は、依然として、当社グループの全ての事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは引き続き社内外への感染拡大防止と社員の安全確保を最優先に、船舶の安全運航を継続し、生活を支えるエネルギー、資源、その他物資の安定輸送に従事します。客船では、従前からの感染症対策プランに則り手洗い、手指消毒などを実施し、商業クルーズを実施しています。

 しかしながら、特定の事務所において従業員の病欠者が増加し、サービスの提供が一時的に滞ることや、個別の船舶等において感染拡大することによって運航に影響が出ること、また、感染拡大地域へのサービスの提供に影響が出ることなど、当社グループの事業運営、業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(その他経営全般に係るリスク)

(11)当社グループの重要課題「安全」「環境」「人材」について

 当社グループの船舶の安全な運航のためには、優秀な船員を確保することが特に重要となります。当社グループは、優秀な船員を確保するために、教育と訓練の提供及び多様な国からの採用など、様々な手段を取ってきましたが、将来において、適切な費用で必要な技術水準を持った船員を十分に確保できるという保証はありません。例えば、2008年のリーマン・ショック前の数年間、海上輸送への需要が高かった時期においては、船員を雇用するための人件費が大幅に増加しました。新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症等の発生により、必要な船員を合理的な費用で雇用、維持、あるいは交代できない場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループが事業を行う各地域において、当社グループの船舶は安全運航及び海難事故の防止に関する国際法を遵守する必要があります。加えて、環境保護に関する地域固有の法令及び規制を遵守する必要があります。

 当社グループは、環境保全活動及び物流サプライチェーンの安全・保安対策の重要性を認識しつつ、グローバルに事業を展開・拡大しています。例えば、アンモニアや水素など将来代替燃料に向けた研究開発促進、LNG/LPG/メタノール/アンモニア燃料船建造の拡大、LNG/アンモニア燃料供給船建造の拡大、省エネ運航や風力利用によるCO2排出量削減、バラスト水管理のための処理装置の搭載、藻、貝類等の船体付着物の移動防止に関する規制への対応、サイバーセキュリティ対策導入などを実施しています。

 今後、これらに関連する対策費用が増加した場合や、特定の地域における法令又は規制を遵守することが困難となった場合には、当該地域における当社グループの事業運営が制限され、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(12)グローバルな事業展開による影響について

 当社グループの活動の範囲は、世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。

 ・政治的又は経済的要因

 ・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響

 ・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響

 ・戦争、暴動、テロ、海賊、感染症、ストライキ、サイバー攻撃、その他の要因による社会的混乱

 ・地震、津波、台風等の自然災害の影響

 ・各国規制・制裁などの把握不全

 これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部コンサルタント起用等を通じ、その予防・回避に努めていますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。船員を含む当社グループの従業員の一部は、労働組合に所属しており、当社グループの従業員によってストライキ、業務停止又はサボタージュが行われた場合、さらには北米の港湾施設など当社グループ従業員以外の第三者によるストライキ又は業務停止によっても、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。加えて、戦争や政治的な要因も、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、中東を含め世界中の紛争やテロ及びロシア・ウクライナ情勢等による治安・情勢不安・各国規制・制裁の強化等の影響を受けます。海賊被害は近年減少していますが、今もなお海賊行為が発生するマラッカ・シンガポール海峡、西アフリカ沿岸及びソマリア海賊襲撃エリアであるアラビア海、インド洋などを航行しています。なお、ホーシ―派の攻撃により、情勢が緊迫化している紅海・アデン湾においては、当社グループ船舶の航行を停止しています。当社グループでは、関係機関からの情報収集を行い海賊行為について対策を講じていますが、テロ及び海賊の襲撃を受けた場合、あるいは政情不安及び戦闘などが起こった場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。今後、これら水域が通常の戦争保険除外地域として指定された場合(一部水域は既に指定されています。)には、保険料の水準及び保険会社による保険金の支払いに影響を与える可能性があります。紅海・アデン湾・ソマリア沖における保険料率は情勢に応じ変動しうる状況です。また、物流事業等、特定の国において行う事業活動は、当該事業を行う国の治安・情勢不安等による事業環境の悪化により、事業の縮小、廃止、撤退等を決定する場合があり、その場合当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。2025年1月に発足したトランプ米政権の通商政策等により世界経済の不確実性が高まっており、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(13)訴訟その他の法定手続の発生について

 当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他事業の事業活動において、各種の訴訟や規制当局による調査及び処分に関するリスクを有しています。以下の事例も含め、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、2012年9月以降完成自動車車両等の海上輸送について、主要自動車船社と共同して運賃を設定したとして、請求金額を特定しないまま損害賠償及び差し止め等を求める集団民事訴訟を、一部の地域にて提起されていますが、現時点ではこれらの訴訟の結果を合理的に予測することは困難です。

 

 なお、上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。

(1)経営成績の状況

 

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

売上高

23,872

25,887

2,014

8.4%

売上原価

19,739

21,193

1,453

7.4%

販売費及び一般管理費

2,385

2,585

199

8.4%

営業利益

1,746

2,108

361

20.7%

経常利益

2,613

4,908

2,295

87.8%

親会社株主に帰属する当期純利益

2,286

4,777

2,491

109.0%

 

平均為替レート

143.82円/US$

152.73円/US$

8.91円 円安

平均消費燃料油価格

US$620.83/MT

US$618.78/MT

US$2.05安

 

(概況)

 当連結会計年度の業績は、売上高2兆5,887億円、営業利益2,108億円、経常利益4,908億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,777億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として2,933億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は2,471億円となりました。

 

<セグメント別概況>

 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。

(単位:億円)

 

 

売上高

経常利益

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

増減率

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

ロラ

ジイ

スナ

テ|

ィ&

定期船事業

1,923

1,804

△119

△6.2%

678

2,743

2,064

航空運送事業

1,611

1,857

245

15.2%

57

210

153

物流事業

7,022

8,121

1,098

15.6%

259

212

△46

自動車事業

4,909

5,323

414

8.5%

1,058

1,133

75

ドライバルク事業

5,733

6,072

339

5.9%

180

181

0

エネルギー事業

1,733

1,785

51

3.0%

463

461

△2

その他事業

2,226

2,046

△180

△8.1%

36

69

33

 当社グループにおける経営管理体制の一部見直しに伴い、報告セグメントについて再考した結果、当連結会計年度より、従来の「不定期専用船事業」を、「自動車事業」「ドライバルク事業」「エネルギー事業」に分割して表示する方法に変更しています。また、「不動産業」については、その相対的な事業規模を勘案し、「その他事業」に含めて表示する方法に変更しています。

 これに伴い、前連結会計年度の数値を変更後の区分に合わせて組替再表示しています。

 

<定期船事業>

 コンテナ船部門:新造船竣工による船舶供給量の増加は続いたものの、堅調な荷動きや紅海情勢及び港湾混雑等に起因する需給の逼迫がみられ、市況は第3四半期まで好調に推移しました。第4四半期の市況は低調で推移しましたが、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。ONE社においても、前連結会計年度比で運賃が上昇した結果、利益水準は前連結会計年度を上回りました。

 

 ターミナル関連部門:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が増加しました。

 海外ターミナルでは、2023年9月末に北米西岸ターミナルの関係会社株式を売却した影響により、前連結会計年度比で取扱量が減少しました。

 

 以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。

 

<航空運送事業>

 主としてアジア発欧米向けの旺盛なEコマース需要や、半導体製造装置、自動車関連貨物の需要に支えられ、貨物取扱量は前連結会計年度比で増加しました。また、需給の引き締まりにより運賃単価も高い水準で推移しました。他方、燃料単価は前連結会計年度比で下落しました。

 

 以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で増収増益となりました。

 

<物流事業>

 航空貨物取扱事業:アジア発の活発な荷動きに加え、第3四半期にはスポット貨物需要もあり、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。

 

 海上貨物取扱事業:アジア域内航路を中心とした堅調な荷動きに加え、米国における関税引き上げに伴う出荷の前倒し需要により、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。

 

 ロジスティクス事業:北米や東南アジアにおいて事業は堅調だったものの、欧州と東アジアにおいては減速しました。また、前連結会計年度に実施した成長投資に関連する一時的な費用が発生し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。

 

 以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。

 

<自動車事業>

 海上輸送においては、中東情勢の影響等による港湾混雑や航路変更が継続する中、最適な配船計画と本船運航により、堅調な輸送需要を取り込みました。

 

 自動車物流においては、ターミナル事業を中心に旺盛な需要を取り込むことで業績は堅調に推移しました。

 

 以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。

 

<ドライバルク事業>

 ケープサイズの市況は第1四半期及び第2四半期には好調を維持しましたが、12月から季節的調整局面に入りました。パナマックスサイズ以下の市況は年末に向かって軟化しましたが、好調だった第1四半期及び第2四半期に支えられました。

 

 以上の結果、ドライバルク事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。

<エネルギー事業>

 VLCC(大型原油タンカー):中国での需要減退や米国からアジア地域への長距離輸送が減少したことを受け、市況は前連結会計年度を下回りました。また入渠船増加により稼働率が低下しました。

 

 VLGC(大型LPGタンカー):新造船の竣工やパナマ運河の渇水の影響が緩和したことに伴う船腹供給の増加により、市況は前連結会計年度を下回りました。

 

 石油製品タンカー:中国等での景気減速による需要減退を受け、市況は前連結会計年度を下回りました。

 

 LNG船:安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。

 

 海洋事業:FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが安定的に推移しました。

 

 以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。

 

<その他事業>

 船舶・技術事業:船用品・船用資材販売事業等は好調でしたが、燃料油販売事業は販売数量が減少しました。

 

 客船事業:世界一周クルーズを6年ぶりに催行しました。また、夏季および第3四半期のクルーズを中心に全体として前連結会計年度比で高い乗船率を維持しました。

 

 以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて50億円増加し、1,498億円となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益5,154億円、減価償却費1,546億円、持分法による投資損益△2,933億円、利息及び配当金の受取額1,892億円等により5,107億円(前年同期4,014億円)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△597億円(前年同期△2,856億円)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、短期及び長期借入金の返済、自己株式の取得や配当金の支払い等により△4,277億円(前年同期△1,634億円)となりました。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。

 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

定期船事業

180,424

93.8

航空運送事業

185,723

115.2

物流事業

812,148

115.6

自動車事業

532,392

108.5

ドライバルク事業

607,256

105.9

エネルギー事業

178,565

103.0

その他事業

204,634

91.9

2,701,145

107.4

消去

(112,444)

87.2

合計

2,588,700

108.4

(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)財政状態及び経営成績等の分析

 当連結会計年度末の総資産は、投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ654億円増加し、4兆3,202億円となりました。有利子負債は、短期借入金の減少等により1,753億円減少して7,384億円となり、負債合計額も2,111億円減少し、1兆3,502億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,877億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が2兆9,188億円となり、これに非支配株主持分510億円を加えた純資産の合計は、2兆9,699億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.25に、また自己資本比率は67.6%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。

 

(2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2024年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性

① キャッシュ・フローの状況

 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

② 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には2,078億円の設備投資を行いました。

 

③ 財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。

 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2025年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は5,202億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2025年3月31日現在990億円となっています。

 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2025年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。

 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2025年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

 

① 収益の認識

 当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。

 

② 貸倒引当金

 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

③ 投資の評価について

 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。

 

④ 減価償却資産の償却

 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。

 

⑤ 退職給付

 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。

 

⑦ 固定資産の減損

 当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。

 

(5)今後の見通し

<定期船事業>

 コンテナ船部門:紅海情勢に起因する喜望峰ルートの利用が継続することを想定していますが、引き続き新造船の竣工が予想され、船腹需給の軟化を見込んでいます。

 

<航空運送事業>

 2025年5月19日の適時開示のとおり、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期を2025年7月1日と予定しています。2026年3月期第1四半期連結会計期間の実績および今後の業績予想につきましては、同株式交換の実行時期をふまえ適切に開示する予定です。

 

<物流事業>

 航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加するものの、運賃の低下により利益水準は低下することを見込んでいます。

 

 ロジスティクス事業:北米や東南アジアを中心に堅調な需要を見込んでいます。一方で、当連結会計年度に引き続き成長投資に伴う一時的な費用が発生することを想定しています。

 

<自動車事業>

 新造船の竣工が継続する中で、現在の非常に引き締まった船腹需給が若干軟化することを見込んでいます。

 

<ドライバルク事業>

 全船型について、船腹需給の環境は大きく変わらず、市況は概ね当連結会計年度と同水準となることを見込んでいます。

 

<エネルギー事業>

 VLCC:新造船の竣工量が限定的であることを想定し、市況は当連結会計年度の水準を若干上回ることを見込んでいます。

 

 VLGC:堅調な北米での生産や極東地域での需要はあるものの、先行きの不透明感から市況は当連結会計年度の水準を下回ることを見込んでいます。

 

 LNG船:中長期契約による安定収益に支えられ、堅調に推移する見通しです。

 

 以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で減収減益を見込んでいます。
 

 なお、各事業において米国をはじめとする各国の関税措置や、米国の新たな海事政策等の外部環境の変化に伴う影響を注視しています。

 

 

5【重要な契約等】

 当社は、2023年7月10日の取締役会において、当社の連結子会社である日本貨物航空株式会社の全株式の譲渡について、ANAホールディングス株式会社を株式交換完全親会社、日本貨物航空株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換により実施することを決議し、同日付でANAホールディングス株式会社と株式交換に関する合意書を締結しました。その後、競争法上の手続等、譲渡に向けた対応を進めています。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、㈱MTIを核とし、㈱日本海洋科学を始めとするグループ会社、社外パートナー、顧客、取引先、船級等も含めたサステナビリティ経営に資するような最先端の研究を日々行っています。日本海事産業がもつ設計・建造・運航時における標準化されたリアルかつ莫大なデータをデジタル化し組み合わせることで、より精度高く、開発スピードをあげた研究開発を行っています。具体的には脱炭素化に向けた新技術や環境規制対応、自律運航船、船舶電化、サイバーセキュリティ、データ活用による効率運航等の研究開発を行い、DX化やEX化を推し進めています。また東京大学内における社会連携講座への参画に加え、大阪大学内にも共同研究講座を設置するなど、産学連携のさらなる発展を目指し、高度な知識を有する人材の育成や獲得にも力を入れています。

 また、アンモニアを含む低・脱炭素燃料の導入及びサプライチェーンの構築、液化二酸化炭素の海上輸送、洋上風力関連事業について社外パートナーとともに複数の研究開発と事業開発案件を進めています。

 特に脱炭素化の長期目標として当社が掲げる2050年の「ネット・ゼロエミッション」達成に向けた研究開発として、2021年より社外パートナーとともにアンモニア燃料船舶の研究開発に取り組んでいます。同研究開発は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーンイノベーション基金事業助成を受けています。同助成を受けて開発を進めてきたアンモニア燃料タグボートは、2024年8月に竣工し、世界初のアンモニア燃料商用船として横浜港で運航を開始しています。そして、同船の実運航を通じ、アンモニアを焚くことがGHG排出量の大幅な削減に繋がること、そして安全を確保できること、ひいてはアンモニアが次世代の船舶燃料として非常に有効であることが確認できました。また、アンモニア燃料タグボートの開発および運航を通じて獲得した知見は、2026年度に竣工予定のアンモニア燃料アンモニア輸送船の建造に向けて活用されています。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は4,934百万円です。