第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社は2022年5月9日より、当社グループの目指す姿として「企業理念」、「ビジョン」及び「大事にする価値観」を以下のとおり掲げています。

<企業理念>

~グローバルに信頼される 0102010_001.png

海運業を主軸とする物流企業として、人々の豊かな暮らしに貢献します。

<ビジョン>

全てのステークホルダーから信頼されるパートナーとして、グローバル社会のインフラを支えることで持続的成長と企業価値向上を目指します。

<大事にする価値観>

 ・お客様を第一に考えた安全で最適なサービスの提供

 ・たゆまない課題解決への姿勢

 ・専門性を追求した川崎汽船ならではの価値の提供

 ・変革への飽くなきチャレンジ

 ・地球環境と持続可能な社会への貢献

 ・多様な価値観の受容による人間性の尊重と公正な事業活動

 

当社は、海運業を主軸とする物流において、自社と社会の低炭素・脱炭素化の推進を通じて企業価値向上を図り、その実現のための新たな成長機会を追求していくことを基本方針としています。

 

(2)中期的な会社の経営戦略

事業環境が大きく変化しているなか、当社グループは2022年5月9日に2022年度から2026年度までの5か年の中期経営計画を公表しました。当社グループならではの強みである専門機能を磨き上げ、2050年に向けた自社と社会の低炭素・脱炭素化の実現と、収益成長を両立させるための長期経営ビジョンを達成していくため、足元の5年間で実行する施策を中期経営計画において明確化しました。船隊の代替燃料船への移行と並行してエネルギーインフラの転換を進めると同時に、この事業機会を確実に捉え、収益性と成長性を高めていくためにも、経営資源の集中と顧客とのパートナーシップの強化により企業価値の持続的な向上につなげてまいります。その実現のため、事業戦略の実行、事業基盤の構築及び資本政策の明確化に取り組みます。

 

企業価値向上への取組みを定量的に管理していくための経営指標及び目標はそれぞれ以下のとおりです。

経営指標

2026年度目標

ROE

10%以上

ROIC

6.0~7.0%

収支

経常利益1,600億円

最適資本構成

・ 事業リスクを意識した財務健全性と資本効率の両立を図りつつ、引き続き成長投資と株主還元のキャッシュアロケーションの分配を意識した事業運営に努める

・ 自営事業及びコンテナ船事業に必要な資本レベルを検証する

株主還元方針

・ 当社は業績動向を見極め、最適資本構成を常に意識し、企業価値向上に必要な投資及び財務健全性を確保のうえ、適正資本を超える部分についてはキャッシュ・フローを踏まえて積極的に自己株式取得を含めた株主還元を進めることを株主還元方針としている

・ この還元方針に基づき、2024年5月公表時から1,000億円増の8,000億円以上の株主還元を計画

・ 2024年度までに約6,100億円を実施し、残りの中期経営計画期間では、2025年度に1株当たり120円(基礎配当40円、追加配当80円)、2026年度に1株当たり100円(基礎配当40円、追加配当60円)の年間配当を予定している

・ また、残りの中期経営計画期間において、足元から500億円以上の更なる機動的な追加還元を計画

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

・事業戦略

当社グループは、2022年5月に公表した5か年の中期経営計画にて定めた、海運業を主軸とした当社グループの強みを生かしたポートフォリオ戦略に基づき、事業ごとの役割を明確化し、各事業の特性に応じたメリハリのある資源配分により事業の収益性を強化し、企業価値の更なる向上に努めます。

「成長を牽引する役割の事業」である鉄鋼原料、自動車船、LNG輸送船事業へは、環境対応を機会として成長を実現し全社収益の柱となることを目的とし、経営資源を集中的に配分して事業成長を実現します。「スムーズなエネルギー転換をサポートし新たな事業機会を担う役割の事業」である電力炭、油槽船、LPG船事業では、事業リスクの最小化を図りながらも、新エネルギー輸送需要への対応を推進します。「稼ぐ力の磨き上げで貢献する役割の事業」であるバルクキャリア、近海内航、港湾・物流事業では、市況耐性を高め、安定収益確保に努め、シナジーを追求した事業戦略を進めます。「株主として事業を支え収益基盤を安定させる役割の事業」では、コンテナ船事業を当社の重要な主要事業の一つととらえ、持分法適用関連会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(以下、「ONE社」という。)の持続的な成長と発展のために、株主としての支援強化を目的とし、継続的な人的支援と経営ガバナンスへの関与を通じた企業価値の最大化を目指します。「新規事業領域」では、液化CO2輸送事業や洋上風力発電支援船事業など、グループ会社間の専門領域を磨き上げ、シナジーを追求し、当社グループの強みを生かせる事業領域の拡張を目指します。

 

・機能戦略

社会・自社の環境対応の目標と、その実現のための選択肢が具体的に進展し、新たな顧客ニーズ、事業機会・収益機会が出現するなか、顧客・パートナーに選ばれるため、当社の強みである3機能(環境・技術、安全・船舶品質管理、DX)を更に強化し成長戦略を進めます。3機能に加え当社グループの提供価値の源泉である人材・組織の事業基盤を強化することで、選ばれる能力とリソースを備え事業の獲得に繋げていきます。

 

・資本政策

最適資本構成を意識したキャッシュアロケーションにより資本効率と財務健全性を両立し、成長のための投資を行ったうえで積極的な株主還元を行い、企業価値向上を進めます。

最適資本構成では、事業リスクを意識した財務健全性と資本効率の両立を図りつつ、引き続き成長投資と株主還元のキャッシュアロケーションの分配を意識した事業運営に努めます。投資計画では、中期経営計画に基づき、「成長を牽引する役割を担う事業」と「環境対応」に重点を置き、事業・目的に応じたリスク・リターンを鑑みて投資規律を効かせ、好況の時は抑制的に、市況が悪化した折には戦略的に投資を実行していきます。株主還元政策では、中期経営計画期間の業績動向を見極め、最適資本構成を常に意識し企業価値向上に必要な投資及び財務健全性を確保のうえ、適正資本を超える部分についてはキャッシュ・フローを踏まえて積極的に自己株式取得を含めた株主還元を検討します。また、経営管理の更なる高度化により、事業ごとの資本コスト及びキャッシュ・フローを意識した経営管理の導入及び事業投資マネジメント導入による投資規律の維持・強化により、資本効率を最適化し、企業価値の更なる向上を目指します。

 

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)基本的な考え方

当社は創業以来、海運を主軸とする物流企業として国際的な社会インフラを担ってきましたが、人々の生活や経済を支えるライフラインとしての使命を果たしてゆくには、経営にサステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)の視点が重要です。また、急速に変化する事業環境のなかで持続的な発展により企業価値を向上させてゆくには、気候変動問題やSDGsなどに代表されるグローバル社会の要請やお客さまのニーズの変化を的確に捉え、経営戦略を機動的に打ち出す必要があります。当社グループが大事にする価値観のひとつである「地球環境と持続可能な社会への貢献」を体現すべく、サステナビリティへの主体的な取組みを通じて、社会課題の解決に貢献しつつ、成長機会の追求と企業価値の向上に努めます。

 

(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス

グローバルな価値観や行動の変容が加速し、地球温暖化による環境負荷の低減に対する意識が高まるなか、当社グループは、サステナビリティ経営を中長期的な企業価値向上の実現に向けた重要課題の一つとして捉え、取締役会において継続的に議論しています。

サステナビリティに重点を置いた経営を強化するため、代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」及び「GHG削減戦略委員会」を設置しています。

このうち「サステナビリティ経営推進委員会」は、当社グループのサステナビリティ経営方針、推進体制の審議・策定を通じて、企業価値向上を図っています。

その下部組織である「サステナビリティ専門委員会」は、当社グループが特定しているマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の各課題に対する管掌部門のグループ長が委員として参加しており、マテリアリティに関する取組みの実践状況をモニターし、その進捗状況を定期的に上部組織であるサステナビリティ経営推進委員会に報告しています。

もう一つの下部組織である「環境専門委員会」は、「川崎汽船グループ環境憲章」及び国際標準化機構(ISO)の規格に則って構築された「環境マネジメントシステム(EMS)」を機能的に運用するとともに、その他の環境に関わる活動を推進しています。

一方、「GHG削減戦略委員会」は、各種環境対応が急務ななか、当社グループの燃料転換を主体としたGHG削減戦略を策定するとともに、総合的な対応戦略、機器選定等の技術対応・円滑な運用準備などの方針を策定し、実施を統括しています。具体的には、下部組織として「CII・2030年環境目標対応プロジェクトチーム」「次世代代替燃料推進プロジェクトチーム」「安全環境支援技術プロジェクトチーム」の3つのプロジェクトチームを置き、喫緊の課題であるEEXI(Energy Efficiency Existing Ship Index、既存の大型外航船の燃費性能規制)やCII(Carbon Intensity Indicator、燃費実績の格付制度)への組織的対応を強化するほか、LNG燃料焚き船・LNG燃料供給事業への取組み加速と次世代燃料や新技術の検討、環境規制への技術面も含めた対応方針の策定を担っています。なお、2024年度はGHG削減に関して集中的に討議する「次世代燃料船推進タスクフォース」を組成し、討議結果を経営会議へ報告しました。

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(2024年度委員会開催実績)

委員会

開催月

主な議題

サステナビリティ経営推進委員会
(全2回)

7月

・マテリアリティKPI設定の件

・サステナブル調達 体制構築進捗報告

・グループ企業行動憲章・川崎汽船企業行動憲章実行要点改正の件

・企業版ふるさと納税制度を活用した藻場再生プロジェクト参加の件

12月

・グループ企業行動憲章・川崎汽船企業行動憲章実行要点改正の件

・サステナブル調達 体制構築進捗報告

・サステナビリティ情報開示義務化の動きについて

・FuelEU Maritime運用方針案

・TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークに基づく情報開示アップデート

・2024年度投資評価に適用するカーボンプライシング再評価

サステナビリティ専門委員会

(全2回)

6月

2024年7月開催のサステナビリティ経営推進委員会と同じ

12月

2024年12月開催のサステナビリティ経営推進委員会と同じ

環境専門委員会

(全2回)

12月

・環境マネジメントシステム(EMS)内部監査結果

・環境マネジメントシステムマネジメントレビュー

・環境負荷推移報告(当社運航船のCO2排出効率推移)

・環境負荷推移報告(国内外グループCO2排出総量推移)

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)及びTNFDに基づいた開示

・MEPC82の審議結果と今後の見通し

・EU-ETS進捗状況及びFuelEU Maritimeセットアップ(報告)

3月

・2024年 環境目標達成状況(報告)

・2025年 環境目標設定(審議)

・EU-ETS進捗状況 及び FuelEU Maritimeセットアップ(報告)

・ISWG-GHG 18 審議結果と今後の見通し(報告)

・環境マネジメントシステム DNV外部監査結果(報告)

・DRIVE GREEN NETWORK監査結果(報告)

・環境負荷推移(トンマイル当たりのCO2排出量)(報告)

GHG削減戦略委員会

(次世代燃料船推進タスク

フォース)

(全12回)

5月~8月

・次世代燃料船船隊整備計画

・次世代燃料導入プラン

・IMO環境規制の想定と追加コスト

・FuelEU Maritime 対応方針

 

(3)サステナビリティ全般に関するリスク管理

当社はサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程の一環として、必要に応じてマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の見直しを行っています。

直近に実施した2022年度の見直しでは、新たに5分野、12項目のマテリアリティを特定しました。

マテリアリティの特定に際しては、ISO26000やOECD多国籍企業行動指針など、主として CSR(企業の社会的責任)に関連する各種ガイダンスを参考に、SDGsなどで掲げられる社会課題を考慮しつつ、事業戦略との整合性や価値創造の観点なども加味して、「自社にとっての重要性」(ビジネス視点での重要性)と「社会にとっての重要性」(ステークホルダー視点での重要性)という2軸から、マテリアリティの分析・評価を行いました。

 

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マテリアリティ分析のステップ

Step1 社会課題リストの作成

        ・SDGsなどを中心に社会課題をリストアップ(社会課題のロングリスト作成:全115項目)

        ・自社事業との関連性並びに海運特有の社会課題を加味して社会課題の絞り込みを実施(社会課題のショート

          リスト作成:全50項目)

 

Step2 社会課題の評価(自社にとっての重要性評価、社会にとっての重要性評価)

        ・Step1で絞り込まれた全50項目の社会課題に対して、以下の観点でその重要性評価を実施

     – 自社にとっての重要性

        ・各社会課題について、リスクと機会の観点から自社の企業価値への影響度を評価。当社グループ役職員への

          アンケートも実施し、当社グループが優先的に対処すべき社会課題について意見を聴取

     – 社会にとっての重要性

    ・各社会課題について、当社グループにとって重要なステークホルダー(顧客、投資家、従業員、地域社会、

          国際社会)に与える影響度を、それぞれのステークホルダーの立場に立脚して分析

 

Step3 マテリアリティの特定

        ・Step2において、自社、ステークホルダーそれぞれに対して重要性の高い項目を、自社の企業価値への

          影響度が高い社会課題と位置付け、さらにこれらを「社会課題解決へのアクション」として全12項目に

     集約し、マテリアリティ案を作成

        ・外部有識者と当社経営陣によるダイアログを実施し、マテリアリティ案について意見交換

        ・ダイアログを踏まえて最終化されたマテリアリティ案を、サステナビリティ経営推進委員会で討議し、

          経営会議での協議を経て、取締役会に報告

 

(4)マテリアリティ

当社グループはマテリアリティを、中期経営計画に基づいて企業理念やビジョンを実現するために取り組むべき

重要課題と位置付けています。当社が特定したマテリアリティ12項目は、中期経営計画で掲げる機能戦略の4本柱である「安全・品質」「環境・技術」「デジタライゼーション推進」「人材」と、それらの土台としての「経営基盤」の5分野に分類して整理されています。

 

分野

社会課題解決へのアクション

=マテリアリティ

基本方針

経営基盤

人権の尊重

グループの事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重に向けた取組みを推進する。

コーポレートガバナンスの強化

企業の社会的責任を果たし、株主等ステークホルダーの負託に応え、持続的に成長していくために、グループ全体に企業倫理を徹底しつつ、有機的かつ効果的なガバナンスの仕組みを構築し、収益・財務体質の強化と相まって企業価値を高めるよう継続して努力していく。

コンプライアンスの推進・強化

国内外の法令や社会規範を遵守し、公正、透明、自由な競争及び適正かつ誠実な取引を行う。

安全・品質

安全運航の推進

船舶の安全運航及び乗組員と貨物の安全確保に最優先課題として取り組むとともに、顧客を第一に考えた、より高品質で安全かつ最適なサービスの提供に努める。

環境・技術

自社の低炭素化・脱炭素化

グループ方針である2050年GHG排出ネットゼロに向けて、サプライチェーン全体で環境負荷の低減活動を推進し、地球規模の脱炭素社会の構築に貢献する。

社会の低炭素化・脱炭素化支援

自社からの海洋・大気への環境影響の限りないゼロ化

事業活動におけるあらゆる環境リスクを考慮し、その対策に取り組むとともに、生物多様性の保全と持続可能な社会の実現への取組みを推進する。

イノベーションの促進

低炭素・脱炭素社会の構築に取り組むため、安全・環境・品質面でのイノベーションの追求に取り組む。

デジタライゼーションの推進

DX対応の強化

情報・業務プロセス及び船舶のデジタライゼーションを一層進め、データやデジタル技術の活用により、安全・環境・品質のコアバリューを磨き上げ、競争力の源泉として付加価値を向上する。

人材

ダイバーシティ&

インクルージョンの促進

多様性を「競争力の源泉」と位置付け、国籍、大学、学部、性別、職種(事務系・技術系)を問わない一括採用・キャリア採用を実施している。また、それによって生み出される価値観の多様性も尊重している。さらに、男性の育児参加を促進するとともに、“K”LINE UNIVERSITYを通じた海外現法スタッフとの一体感の醸成・融合など多様性の更なる促進に取り組んでいる。

労働環境の整備・

健康経営の促進

グループ従業員の人格、個性及び多様性を尊重し、安全で働きやすい職場環境の整備・向上を図るとともに、ゆとりと豊かさの実現をめざして、育児介護休業制度、コンプライアンス相談窓口の設置、過重労働対策、ストレスチェック、メンタルヘルスセミナーの実施などの施策に取り組んでいる。

人材の確保・育成

社会的価値及び経済的価値の向上に向けて各事業ポートフォリオの需要に応じた人材の量的・質的な確保・育成に取り組んでいる。新卒採用に加えて通年でのキャリア採用も実施しており、「事業の持続的成長・変革をリードしていく人材」、「事業環境変化に柔軟に対応できる人材」の育成を目的に多様な研修プログラムを実施している。

 

(5)重要分野への対応

当社グループは、マテリアリティの中でも「環境・技術」や「人材」を特に重要な分野として捉えています。

これらの分野に関する具体的な方針や対応は以下のとおりです。

 

  ①気候変動への対応(自社の低炭素化・脱炭素化、社会の低炭素化・脱炭素化支援)

   「TCFDフレームワークに基づく情報開示」

   a)考え方

     当社グループは、地球規模での気候変動対策を国際社会全体で強化すべき課題として捉え、「2050年GHG排出ネットゼロへの挑戦」を2021年11月に宣言しました。また、2022年5月公表の中期経営計画における長期ビジョンとして、持続的成長と企業価値向上に向けて、自社・社会のスムーズなエネルギー転換にコミットし、低炭素・脱炭素社会の実現に向けた活動を推進しています。2024年8月には、刻々と変化する最新の状況を踏まえ、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が提言するシナリオ分析を見直すとともに、そこで特定された「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目における気候変動リスクと機会に関する財務インパクトの試算を実施し、開示内容を拡充しています。

 

   b)ガバナンス

     ※「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス」をご参照ください。

 

   c)リスクと機会

     社内へのサーベイ調査、関連部門へのインタビューを基に気候変動によるリスク・機会項目の発現可能性、発現時期、財務インパクトを整理し、当社事業への重要度を分析しました。そのうえで、各リスク・機会項目に対して、事業への影響に対する考察・対応策を整理しました。

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気候変動という長期にわたる不確実な課題に対する経営戦略の持続可能性・強靱性を評価する観点から、「2.4℃シナリオ」、「1.7℃シナリオ」、「1.4℃シナリオ(財務インパクト評価:1.5℃以下シナリオ)」の3つのシナリオを想定し、気候変動によるリスク・機会項目が実際に起こったと仮定して、財務への定量的な影響を把握、対応策を検討しています。また、物理的リスクにおいては、2.4℃よりも温度上昇の高いシナリオ(3.0 ℃以上、RCP8.0相当)を想定してリスク分析を行っています。

(財務インパクト評価の結果)

どのシナリオにおいても、低炭素・脱炭素化に向けた取組みを行わなければ、当社へのマイナスインパクトが長期にかけて発生し続けることをあらためて再認識しました。また、当社事業を持続的に発展させ、人々の豊かな暮らしに貢献し続けるためには、どのシナリオにおいても当社の自助努力にもかかわらず、カバーできない低炭素・脱炭素施策におけるコスト増加を、収入への反映を通して社会全体で負担する必要があると定量的なインパクトとしても認識することとなりました。

 

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なお、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムの運用により、環境マネジメントシステム関係者による各部門・グループ会社におけるリスクと機会の抽出・評価を年一回実施、認識されたリスクと機会については、必要に応じて「環境専門委員会」若しくは「サステナビリティ専門委員会」を通じて代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」へ報告され、対応について審議・指示が行われます。

 

   d)指標と目標

 2030年に向けては、これまで「“K”LINE 環境ビジョン2050」で掲げてきた中期マイルストーンの目標達成に向けて、アクションプランを着実に推進し、2050年の目標としては、GHG排出ネットゼロに挑戦していきます。

 

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   e)戦略と取組み

 2050年GHG排出ネットゼロに挑戦する過程において、まずは2030年中期マイルストーン達成に向けた取組みとして、自社の低炭素・脱炭素化という観点から、LNG燃料船、LPG燃料船、アンモニア/水素燃料等ゼロエミッションの新燃料船への転換を進めていきます。また自動カイトシステム「Seawing(風力推進)」や統合船舶運航・性能管理システム「K-IMS」などの活用によるCO2排出削減の取組みも推進していきます。

 2024年5月には、当社初のLNG燃料ケープサイズバルカー、CAPE HAYATEが竣工しました。

 

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       当社グループの気候変動に対する具体的な取組みにつきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。

       「サステナビリティ」>「環境」>「気候変動への対応」>「戦略と取り組み」

        https://www.kline.co.jp/ja/sustainability/environment/climate_change.html#005

 

   f)温室効果ガス排出実績

 

  (目標に対する進捗)

 

2008年(基準年)

2024年

基準年比改善率

CO2排出効率

7.21g-CO2/トンマイル

4.20g-CO2/トンマイル

42%

CO2排出総量

1,368万トン

692万トン

49%

 

2024年において当社グループの事業に伴う温室効果ガスの排出量(GHG Protocolによる算定・報告の基準による)は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)6,923,162トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)5,582トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)4,602,610トン、バイオ燃料使用に伴う温室効果ガスの排出量は29,327トンという結果となりました。

 

 

   (スコープ別排出量一覧)

カテゴリ

GHG排出量(ton)

スコープ1

6,923,162

スコープ2 *Location Base

9,994

スコープ2 *Market Base

5,582

スコープ3

4,602,610

<スコープ3の内訳>

購入した物品・サービス

63,383

資本財

459,729

燃料・エネルギー関連

422,670

事業から発生する廃棄物

1,900

出張

643

従業員の通勤

2,332

13

下流のリース資産

60

15

投資

3,651,893

Outside of scopes(バイオ燃料使用に伴うGHG排出量)                29,327

 

②生物多様性保全への対応(自社からの海洋・大気への環境影響の限りないゼロ化)

「TNFDフレームワークに基づく情報開示」

   a)考え方

     当社グループの事業は、海洋を主とした自然資本に依存する事業であり、気候変動問題のみならず、海洋を中心とした生物多様性保全への取組みは、当社の事業活動において重要なテーマの一つと捉えています。

        当社は、TNFDフレームワークに基づく情報開示の一環として、当社事業における環境リスクや自然関連の影響を評価、適切な対応の検討を目的にTNFDが提唱するLEAPアプローチを導入しました。

       気候変動と自然資本の包括的な理解のもと、リスク・機会管理の強化を目指し、持続可能な未来の構築に向けて、今後も継続的な評価・分析及び情報開示を実施していきます。

 

   b)ガバナンス

(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス」をご参照ください。

 

   c)戦略、リスクと影響の管理、指標と目標

 当社運航船の航路・寄港頻度の多寡などをベースに各事業拠点及び操業箇所の重点エリアの選定を実施。

併せて、生物多様性の重要性が高い海域を「UN Biodiversity Lab」を用いて特定、さらに双方を照らし合わせて、当社事業活動がより多くの自然との接点を持つ優先地域を特定した各地域において、当社事業に関わる

自然関連の依存度・影響度について評価し、事業リスクを特定した結果、全ての優先地域に該当する「油濁汚染」「大気への影響」「海洋生物の移動防止」「哺乳類への影響」の4つを重点分野として集約・特定しました。それぞれのリスクに対する対応の詳細や指標と目標については以下となります。

 

 (LEAPアプローチにより当社事業の関連リスク・機会として特定された4つの重点分野と、その対応及び目標)

 

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   LEAPアプローチの詳細につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。

   「サステナビリティ」>「環境」>「自社からの海洋・大気への環境影響低減」>「考え方」>「TNFDフレーム

   ワークに基づく情報開示」

   https://www.kline.co.jp/ja/sustainability/environment/impact_mitigation.html#001

 

なお、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムの運用により、環境マネジメントシステム関係者による各部門・グループ会社におけるリスクと機会の抽出・評価を年一回実施、認識されたリスクと機会については、必要に

応じて「環境専門委員会」若しくは「サステナビリティ専門委員会」を通じて代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」へ報告され、対応について審議・指示が行われます。

 

 ③人的資本多様性(ダイバーシティ&インクルージョンの促進、労働環境の整備・健康経営の促進、人材の確保・

  育成)

   a)人材育成方針・社内環境整備方針

 当社では、事業の成長や変革をリードする力を有するとともに、事業環境の変化に柔軟に対応し得る人材の確保・育成に取り組んでいます。ポートフォリオ戦略遂行のために、各事業部門の需要に応じた人材の量的・質的な確保・育成を推進するとともに、これを一層促進するために多様な人材が活躍し、持てる能力を最大限に発揮できる労働環境の整備に努めています。

 人材の確保においては、新卒採用に加え通年でのキャリア採用を実施しており、「成長を牽引する役割」を担う3事業を中心に人員を配置するとともに、事業基盤を支えるコーポレート部門にもバランス良く配置を行っています。採用に際しては、国籍、学歴、性別を問わず、多様な価値観を持つ人材の確保に努めています。

 人材の育成では、モラル・コンプライアンスを重視する企業風土を大切にしながら、「事業の持続的成長・変革をリードしていく人材」として海運プロフェッショナル経営人材の育成、「事業環境変化に柔軟に対応できる人材」としてビジネストランスフォーメーション人材及び環境・技術系人材の育成を目的とし、階層別研修に加えて、海運実務研修、乗船研修、会計・財務研修、マネジメントスキル研修、DX研修等を実施しています。

 社内において働く環境整備の一環として、法令を上回る育児休業制度を設け、女性社員が自律的なキャリア継続が出来るための支援や育児に関する社内理解促進のための管理職研修を実施しています。また、男性の育児参加促進のため、当社独自の施策として最大10日間の育児休暇制度を導入するなど、男性育休取得率の向上も推進しています。加えて、介護と仕事の両立を支援するため、介護休業や独自の休暇制度を整備するとともに、介護に関する相談窓口を設けて、介護に直面する社員が安心して働けるような環境の整備に努めています。コンプライアンスの観点からは社内、社外にハラスメント相談窓口を設け、プライバシーに最大限配慮したうえで迅速に問題解決に当たる体制を整備しています。また、当社役職員向けにハラスメント防止セミナーを毎年開催しています。

 

   b)指標と目標

 全ての社員が働き甲斐をもち、いきいきと働ける企業となることを目指すとともに、仕事と家庭の両立を図りながら、誰もが個々の能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を進めるため、女性活躍推進及び次世代育成支援のための行動計画(計画期間:2025年4月1日~2027年3月31日)で以下の当社目標を設定して取り組んでいます。

 

    ・ 計画期間末迄に管理職における女性社員比率を15%とする。

    ・ 一人当たりの月平均法定残業時間を30時間未満とする。

    ・ 男性社員の育児のための休暇・休業取得率を50%以上とする。

    ・ 年次有給休暇と企業独自の法定外休暇(年度内に7日間を限度)を合わせた取得日数を12日以上とする。

注)連結子会社についてはそれぞれの課題に基づいて随時目標の個別設定を行っており、ここでは提出会社

単体の数字を記載しています。

 

   c)目標の進捗状況

 「第一部 企業情報 第1企業の概況 5従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 ①提出会社」をご参照ください。

 

   なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント方針・体制

 当社グループは国際的な事業展開を行っており、海運業を含む物流事業の経営には、様々なリスクが存在しています。リスクマネジメント強化のため、より体系立ててリスクを管理すべく、事業継続に及ぼす影響の大きいリスクとして主要リスクを定義し、内容を再編する形で従来の8項目から7項目に整理をしました。見直し後の主要リスク(図1)は、従来どおり、「船舶運航に伴うリスク」、「災害リスク」、「コンプライアンスに関わるリスク」、「その他の経営に関わるリスク」の4つのリスクに分類し、それぞれ対応する委員会を設けています。また、この4委員会を束ね、リスクマネジメント全般を統括する組織として、危機管理委員会を設置しています(図2)。代表執行役社長がこれら全ての委員会の委員長を務め、平時においても四半期ごとに委員会を開催し、リスクマネジメントの強化を図っています。

 

図1 見直し前後の主要リスク

変更前後の主要リスク

人材・労務環境リスク

人材・人権リスク

法務・コンプライアンスリスク

法務・コンプライアンスリスク

船舶運航リスク

船舶運航リスク

経済活動変動リスク

経済活動変動リスク

情報システム・情報セキュリティリスク

情報システム・情報セキュリティリスク

災害リスク

災害リスク

(リスクであり機会でもある

気候変動リスクを独立)

気候変動リスク

環境保全リスク

(事故/運航により環境汚染に関連するものとして、

「船舶運航リスク」に再編)

投資リスク

(経済活動変動リスクと同義のため

「経済活動変動リスク」に再編)

 

図2 リスクマネジメント体制図

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(2)リスクマネジメントプロセス

 当社グループにおけるリスクマネジメントを徹底すべく、グループ全体に関わるリスクを特定し、情報管理・モニタリングを行いながら、リスクマネジメントに取り組んでいます。各リスクの管理は、期末にリスクの再評価や網羅的なリスクの洗い出し・特定を行い、管理体制の有効性や主要リスクから重要課題を定めたうえで、各委員会において定期的にレビューを行い、再評価、対策の実施を行うPDCA体制としています。このPDCAでは、各委員会がボトムアップでリスクの再評価や洗い出し・特定を行う手法と、まだ顕在化していないものの重要性が高まっているエマージングリスクのようなメガトレンドの変化をトップダウンで評価をする手法を併用し、重層的に対応しています。メガトレンドの変化は、リスクのみならず機会となるため、次年度の事業戦略立案時に行うPEST分析を軸として、メガトレンド認識を的確に事業戦略に生かす側面と、最新のリスクトレンドの変化を評価し対応する側面とで、リスクと機会の双方を網羅するよう取り組んでいます。

 具体的には、PESTの要素を各事業のバリューチェーンに掛け合わせることでリスクシナリオを想定し、経営陣により発生可能性/影響度/備えの状況を整理のうえ、ヒートマップを作成します。さらに、専門家による分析や調査レポート等の外部知見も得ながら、注視すべき課題を特定し、ボトムアップ式のリスク特定と合わせて重要課題を選定します。また、PDCAサイクルの過程でリスクマネジメントに対する情宣を行っています。リスク対策や期初に特定した重要課題への取組み状況を、取締役会や執行役員会を通じて社内に周知しています。

 

図3 リスクマネジメントプロセス

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(3)リスク情報

 当社グループにて認識しているリスク項目の内容、対応策、組織への影響の可能性、潜在的なビジネスインパクトの大きさ、さらに、それらを基にした各項目のリスク重要度を、下表に纏めています。

 

NO

主要リスク

人材・人権リスク

法務・コンプライアンスリスク

船舶運航リスク

経済活動変動リスク

情報システム・情報セキュリティリスク

災害リスク

気候変動リスク

 

 

リスク名

①人材・人権リスク

影響度

非常に大きい

リスク内容

 当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、事業活動が地域社会・国際社会に与える影響を自覚し、かつ、それを踏まえて事業活動を進めていくことが社会的責任の重要な側面の一つと考えています。また、企業に対して、自社の事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重を求める国際社会からの要求が年々高まっています。この様な状況下で、当社グループ及びサプライチェーン上に存在する人権問題への対応が不適切であることにより事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社に必要な人材が不足することにより、業界内での競争力の低下や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

事業へのインパクト

 人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージが低下し、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、必要人材の不足は事業活動の制約となるため、当社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

対策

 当社グループはグループ全体で遵守される行動規範である「グループ企業行動憲章」において、当社グループの事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権を尊重することを掲げています。また、同憲章のより具体的な指針として掲げられた「川崎汽船グループ人権基本方針」では、人権尊重に関連した国際規範や法令を尊重・遵守するとともに、当社グループの事業活動との関わりにおいて生じる人権への顕在的又は潜在的な負の影響を把握して、これを未然に防止又は軽減していく、という一連のプロセスである「人権デューディリジェンス」を実施することを定めています。本方針のもと、当社グループの事業活動において優先的に取り組むべき人権課題を特定するため、国内外のグループ会社からヒアリングを実施し各社個別に取組みを強化すべき課題を抽出、その結果を受けて改善に向けたアクションプランを実行しています。また、サプライチェーンも含めた当社グループの事業活動に関わる全てのステークホルダーの人権尊重に向けた取組みを推進すべく、PDCAサイクルの確立を目指しています。

 また、当社の業界内での競争力強化や安定的な事業継続を図るべく、「事業の持続的成長・変革をリードしていく人材」、「事業環境変化に柔軟に対応できる人材」という視点から人材の育成に取り組んでいます。

 

 

リスク名

②法務・コンプライアンスリスク

影響度

非常に大きい

リスク内容

 当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、事業活動が地域社会・国際社会に与える影響を自覚し、かつ、一層高いコンプライアンス意識をもって事業活動を進めていくことが社会的責任の重要な側面の一つと考えています。当社グループの役職員が法令違反行為や企業倫理違反行為等を発生させることにより事業活動に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、社会的な機運の高まりにより、自社のみならず持続可能な社会づくりに向けてサプライチェーン全体での協力が不可欠になっています。

事業へのインパクト

 コンプライアンス上のリスクは、社会情勢、国民意識によっても変化するものであり、コンプライアンス上の問題が生じた場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、またそれに伴う対応のため、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

対策

 当社では、「グループ企業行動憲章」を制定し、法令及び企業倫理の遵守(コンプライアンス)を当社グループ企業の行動原則の一つとして掲げています。また、より具体的な指針として「川崎汽船グループ グローバルコンプライアンスポリシー(以下、「グローバルポリシー」という。)」を制定し、当社及びグループ会社役職員に遵守を義務付けています。当社及び当社グループ会社のコンプライアンスを担保するための方針及びコンプライアンス違反に対する対応措置を審議するための場として、年4回コンプライアンス委員会を開催し、毎年11月をコンプライアンス月間と位置付け、コンプライアンスの重要性を再認識させるため、社長メッセージを配信するとともに、必修のコンプライアンスeラーニング研修、外部講師を招いてのコンプライアンスセミナー、階層別人事研修の中でのコンプライアンス研修等、組織的にコンプライアンス文化を醸成する様々なプログラムを実施しています。

 また、当社及び当社グループでは、お客さまから信頼されるサービスの提供に欠かせないパートナーとしてのお取引先さまとの、相互の信頼関係の確立と共生を図っています。これに加えて当社グループでは、サプライチェーン全体における企業としての社会的責任(CSR)の推進にお取引先さまとともに取り組むべく、「サプライチェーンにおけるCSRガイドライン」を策定しています。

 

リスク名

③船舶運航リスク

影響度

非常に大きい

リスク内容

 当社グループは、安全運航の徹底、環境保全を最優先課題として、安全運航水準と危機管理体制の維持強化を図っています。不測の事故による船体・積み荷・船員及び荷役関係者への損害や損傷、とりわけ油濁その他環境汚染につながる重大事故等が発生し、環境汚染を引き起こした場合、事業活動に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、海賊被害、政情不安・武力紛争地域での運航、船舶へのテロ行為リスクの増大、サイバーリスクは、当社グループの船舶に重大な損害を与え、また船員の生命を危険にさらすなど、当社グループ船舶の安全運航、海上輸送事業全般に悪影響を与える可能性があります。

事業へのインパクト

 不測の事故、とりわけ油濁その他環境汚染につながる重大事故等が起これば、当社グループの財政状態・経営成績に重大な影響を与え、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により広範な営業活動に重大な影響を与える可能性があります。

対策

 当社グループは安全運航の徹底を最優先課題として安全運航水準と危機管理体制の維持強化を図っています。安全運航については、代表執行役社長を委員長とする安全運航推進委員会を定期的に開催し、事故防止や海賊やテロへの対応などを含む安全運航に関わる全ての案件について、ソフト面・ハード面においてあらゆる視点に基づいて検討し、教育・指導を含めた様々な対策を行っています。さらに、緊急時の事故対応をまとめた「事故対応マニュアル」を策定し、定期的な事故対応演習により継続的改善を図っています。なお、最善を尽くしたうえでも回避しきれなかった場合においても十分な対応を行うため適切に保険を付保し備えとしています。また当社グループの事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にすべく、環境憲章を掲げ、環境への取組みを確実に推進するために、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ経営推進委員会を設置して、推進体制の審議・策定をしています。

 

 

リスク名

④経済活動変動リスク

影響度

大きい

リスク内容

 当社グループの事業は、世界経済の動向と密接に結びついており、様々な経済的要因の変化による影響を受けます。特に、事業売上において米ドル建て収入の比率が大きく、円高が進むと円建ての収益が減少するリスクがあります。加えて、船舶投資や運転資金調達には借入金を活用しており、金利上昇も利益が減少する要因となります。また、燃料費は運航コストの大きな部分を占めるため、原油価格の変動は利益に影響します。これらの市場リスクは、世界的な経済動向や地政学的なリスクなど、様々な要因によって変動するため、当社グループにとって大きなリスク要因です。

 将来の事業拡大に向けた船舶投資計画は、海運市況の悪化や想定外の公的規制導入などにより、計画通りに進まない可能性があります。計画の遅延や中止、あるいは新造船が完成した後に想定していた需要が得られない場合など、収益に悪影響が出る可能性があります。既存の船舶についても、市況の悪化や技術革新による陳腐化によって、売却や傭船契約の途中解約を迫られる可能性があり、損失につながるリスクがあります。また、保有する船舶等の資産は、市況の悪化や収益性の低下に伴い、減損損失が発生する可能性もあります。

 海運事業は、国際条約や各国・地域の規制や通商政策の影響を受けやすい事業構造となっています。新たな規制の導入や既存規制の変更は、事業コストの増加や事業活動の制限につながる可能性があります。不確実性の増大により予見可能性が低下するリスクがあります。国際的な海運市場では競争も激化しており、モノの流れが変わったり、輸送価格が下落したり、市場シェアが減少したりすることで、収益に影響が出るリスクがあります。また、取引先の業績悪化などにより、契約が履行されない場合、損失が発生するリスクもあります。

事業へのインパクト

 これらの経済活動の変動は、当社グループの財務状態と経営成績に大きな影響を与える可能性があります。急激な円高は米ドル建て事業売上の円貨換算後の価値を目減りさせ、利益を大きく減少させる可能性があります。金利上昇は資金調達コストを増加させ、投資計画の実行を困難にするだけでなく、既存事業の収益性も悪化させる可能性があります。また、燃料油価格の変動は、運航コストを直接的に増加させ、利益率を低下させる主要因となります。さらに、原油価格の急騰による燃料油価格の高騰で、短期的な収益悪化だけでなく、中長期的な事業計画の見直しが必要となる可能性もあります。

 投資計画の遅延や中止は、大きな機会損失となるだけでなく、既に投資した資金を回収できなくなるリスクもあります。市況悪化による船舶の売却や傭船契約の途中解約は、損失につながるだけでなく、将来の輸送能力を低下させ、事業機会の喪失を招く可能性があります。また、保有資産の減損は財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 規制変更への対応には、設備投資や運用変更など多額のコストが必要となる場合があり、収益を圧迫する可能性があります。また、予見可能性の低下により、規制変更への対応や事業計画への反映等が遅れると、事業活動の制限や罰金など、深刻な事態に陥る可能性もあります。国際的な海運市場では、競争の激化は輸送価格の下落を招き、収益性を低下させるだけでなく、モノの流れが変わること等による市場シェアの減少を通じて当社グループの業界での地位や経営成績に一定の影響を及ぼす可能性があります。さらに、取引先が契約不履行となった場合、損失の発生だけでなく、取引関係の喪失による将来的な事業機会の喪失にもつながる可能性もあります。

対策

 当社グループでは、これらの経済活動の変動リスクに対し、様々な対策を講じています。為替変動の影響を和らげるため、為替予約や一部費用のドル化で影響の最小限化に努めています。金利変動リスクに対しては、固定金利での借入や金利固定化スワップを実施し、資金調達コストの安定化に取り組んでいます。燃料費の変動を抑えるため、燃料油の先物取引による価格ヘッジを行っています。

 投資計画は、市場調査と需要予測に基づいて慎重に策定し、想定最大損失額を連結自己資本の範囲内に収めることで、「安定性」と「成長性」の両立に努めています。市況の悪化に備え、船舶の売却や傭船契約の解約についても、市況動向を常に注視し、適切なタイミングで判断できる体制を整えています。また、保有資産の価値を定期的に評価し、減損リスクの早期発見に努めています。

 国際条約や各国・地域の規制変更、通商政策には、最新の情報収集と迅速な対応を可能にする体制を整えています。取引先の契約不履行リスクを軽減するため、取引先の信用状況を常時監視し与信管理を徹底しています。

 

 

リスク名

⑤情報システム・情報セキュリティリスク

影響度

大きい

リスク内容

 当社グループは、世界の経済活動を支える物流インフラとして、安全・安心な海上輸送及び物流サービスを提供するため、情報セキュリティの確保と向上へ対策を講じています。昨今のサイバー攻撃は、多種多様化を極め、不正アクセスによる情報の漏洩、ウイルス感染によるシステム停止等が発生することにより事業活動に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。

事業へのインパクト

 不正アクセスによる情報の漏洩、ウイルス感染によるシステム停止等が発生した場合には、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

対策

 当社グループでは、継続的にサイバーセキュリティの強化を進めています。これまでにPC、サーバーなどのエンドポイントや通信ネットワークのセキュリティ強化、最新技術を用いた監視体制を導入しました。さらに、グローバルでの認証基盤構成を見直し、多要素認証やアカウント管理認証レベルの高度化、迅速な脆弱性への対応を進めることで、グループ全体のITガバナンスの強化、認証レベルの向上、マルウェア・情報漏洩への対策強化を実現し、サイバーインシデントに迅速かつ的確に対応できる体制を築いています。近年、インターネット回線による船舶運航データの船陸共有化と安全品質の向上へのデータ活用が進んでおり、衛星通信容量の拡大に伴い、船内ICT機器及び船内ネットワークの整備が必須となっています。今後、船陸間でインターネット環境への接続が一層増えることによるサイバーリスクを見据え、当社グループの船舶管理会社では一般財団法人日本海事協会からサイバーセキュリティマネジメントシステム(CSMS)の認証を取得し、船上のサイバーリスクへの対応力強化に努めています。「安全」は海上輸送を主軸とする当社グループの事業の根幹を成すものであり、サイバーリスクへの対応を強化することで、より安全で最適な輸送サービスを提供してまいります。また、技術的対策に加え、当社グループ全般におけるセキュリティ教育・啓発活動を通じ、セキュリティファーストの文化を醸成して、安全・安心・安定、強靭なIT基盤を構築していきます。

 

リスク名

⑥災害リスク

影響度

大きい

リスク内容

 自然災害やパンデミック発生時の事業継続は、社会の機能の一端を担い社会に責任を負う当社グループの責務であるとともに、当社グループの存在意義に関わる重大な事項です。首都圏直下型大地震が発生した場合には、多くの建物、交通、ライフラインに甚大な影響が及ぶことが想定され、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に準ずる感染症が発生し、パンデミックとなった場合には、多くの人々の健康に重大な影響が及ぶことが懸念されます。また、これらの自然災害又はその二次災害に伴う風評被害が広がることが懸念されます。

事業へのインパクト

 自然災害発生時、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に準ずる感染症が発生し、パンデミックとなった場合には、当社グループの営業活動、財政状態・経営成績に影響を与える可能性があります。

対策

 当社グループではこれらの災害等を想定した事業継続マネジメント(BCM)を策定し、自然災害の発生時には、この計画を適用又は応用することで可能な限りの事業継続ができるよう備えています。新型コロナウイルス感染症(COVID19)に関する一連の対応を振り返り、パンデミックに備えた行動手引書を作成しました。なお、災害等を想定した本社・社外での訓練等を定期的に実施し、そこで明確になった課題に対処することで、継続的に見直しを行いかつ実効性を高めていきます。

 

 

リスク名

⑦気候変動リスク

影響度

大きい

リスク内容

 地球温暖化をはじめとする気候変動は、気象・海象の変化をより激しくし、安全運航の妨げにつながる危険性があります。また、気候変動対策としての脱炭素化の流れは、大量の燃料油を必要とし、主要貨物として様々な化石エネルギー資源を輸送する当社グループにとって、公的規制等によるコスト増大や輸送需要の構造的変化などの形で事業環境を大きく変える可能性があるだけでなく、気候変動対策が十分でなかった場合、当社グループの競争力の低下につながる懸念もあります。

事業へのインパクト

 今後、気候変動の影響が顕在化し、輸送ルートの変更を余儀なくされることにより運航コストの増加につながることや、積載貨物や船舶の損傷や訴訟リスクが増加する可能性があります。また、気候変動対策としての脱炭素化の流れに対応できなかった場合、当社グループの営業活動、財政状態や経営成績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

対策

 当社グループは安全運航の徹底を最優先課題として安全運航水準と危機管理体制の維持強化に努めています。自社システムによる気象・海象予測を踏まえた最適航路選定により、高波高域への入域や船体動揺・貨物損傷リスクの低減に努めています。また、事業へ及ぼす影響に対する対策として、荷崩れを引き起こす一因となる特定の横揺れの発生を予測するアプリ導入などにも取り組んでいます。

 また「“K” LINE環境ビジョン2050」では、2050年GHG排出ネットゼロへの挑戦を宣言しており、長期ビジョンとして、経済的成長と企業価値向上に向けて、自社・社会のスムーズなエネルギー転換にコミットし、低炭素・脱炭素社会の実現に向けた活動を推進することを掲げています。中期経営計画では、低炭素・脱炭素化を機会とした成長戦略に基づき、環境への投資により成長を実現していく計画です。さらに、TCFDが提言するシナリオ分析を見直すとともに、そこで特定された「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目における気候変動リスクと機会に関する財務インパクトの試算を実施し、開示内容も拡充しています。

 

 

(4)エマージングリスク

 当社グループでは、事業戦略の実行を妨げる可能性があり、まだ顕在化していないものの従来に増して重要性が高まっているリスクをエマージングリスクと定義しており、当社グループで認識しているエマージングリスクを下表に纏めています。

 

エマージングリスク名

①地政学情勢の変化による荷動きや船舶建造、保守に与える影響

リスク内容

 地政学的な要因、特に米中関係の不透明性が高まることで、当社グループの経営成績に影響を与えるリスクがあります。世界的なサプライチェーンの変容や地産地消の動きは、顧客の事業モデル見直しを促進し、長期的には輸送需要と供給能力のバランスを崩し、マーケットコンディションやプライシングに影響を与える可能性があり、当社グループの事業に大きな影響を与える懸念があります。さらに、中国での船舶建造量や当社の保守、入渠に係る中国への依存度の高さを鑑みると、米中関係の悪化は船舶の建造・保守に支障をきたし、継続的な船舶運航を阻害する可能性があります。現在も中国での新造船発注残があり、当該リスクを注視していく必要があります。

事業へのインパクト

 当社グループの事業は海上輸送に大きく依存しており、荷動きの動向は経営成績に大きく影響を及ぼします。また、保有船舶は5年ごとの入渠が必要であり、各国の船舶の多くが利用している中国ドックへの入渠が阻害された場合、船舶運航ひいては当社グループの営業活動と経営成績に大きな影響を与えます。さらに、世界の半数近くを占める中国での船舶竣工量は近年増加傾向にある一方、中国での船舶建造が阻害された場合、世界的な船舶供給ひいては当社グループの営業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

対策

 主要顧客とのパートナーシップ深化を中核としながら、多様な顧客との関係強化を通じて成長機会を創出するなど、事業特性に応じた役割を明確化し、ポートフォリオの適切なマネジメントを実施しています。また、営業・運航要員の増員、環境営業の強化など、営業体制の進化・発展を通じて顧客の事業戦略の変化を機敏に捉え、サプライチェーンや事業モデルの見直しに柔軟に対応しています。新造船の発注においては、グループ全体での管理、リスクの定量化、分散発注の検討など、専門家との協議に基づいたリスク最小化策を講じています。船舶修繕についても、グループ全体での管理・分散化を図り、ベストプラクティス策定に向けた協議を進めています。

 

エマージングリスク名

②海運業を脅かすエマージングな技術革新

リスク内容

 3DプリンタやAR/VR技術、自動化などの技術革新は、今後海運業の参入障壁を引き下げる技術となる可能性があると考えられます。3Dプリンタで扱うことのできる素材の広がりや造形方式の進化などを背景に、最終製品量産のための活用も広がる可能性が高まっています。またデジタル化や産業メタバースの活用による港湾作業や船舶運航の自動化・自律化の複合的な活用は、人手不足への対応や業務効率化に寄与します。これらの技術革新は、海運業の省コスト化につながる一方で、他業種からの参入障壁が低下する可能性にもつながり得ます。

 また、消費財や完成品の輸送においては、技術革新による製造体制の変化により地産地消が進む可能性があり、特にコンテナ輸送需要や完成車輸送において、事業環境に構造的変化を与える可能性もあり、今後より一層幅広い分野の技術動向に注視していく必要があります。

事業へのインパクト

 3DプリンタやAR/VR技術、自動化などの技術革新は、参入障壁の低下により、新たな競合他社が市場に参入しやすくなり、価格競争が激化する可能性があります。これは、新しい競合他社の出現につながり、既存企業の市場シェアを奪う可能性があります。また、技術革新はサプライチェーンの効率化やコスト削減につながる可能性や、新技術の普及により、既存の設備やノウハウが陳腐化し、新たな投資が必要となる可能性もあります。事業環境の構造的変化により、当社グループの営業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

対策

 新技術に対応できる人材の育成や最新技術を持つ企業との戦略的な提携を検討し、海運ビジネスに捕らわれることなく、最新技術トレンドを常に把握し、自社事業への影響を評価する体制を構築する必要があります。そのために事業部門別に、課題の整理・洗い出しと優先課題の抽出など体系的に整理し、外部専門知見のサポートを得て継続的にリスク状況をモニターできる「リスクインテリジェンスサイクル」を構築し、モニタリングできる体制作りに取り組んでいます。

 

 

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。また、ここに記載するものが当社グループの全てのリスクではありません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

世界経済は、中東情勢、米中対立等の地政学的リスクの高まり、欧米等のインフレ・金利の高止まりなど不透明な状況が継続しました。一方、国内経済は、サービス消費やインバウンド需要の回復を背景に、緩やかに成長しました。

海運市況は、自営事業のドライバルク事業、エネルギー資源輸送事業、並びに自動車船事業において、それぞれ順調な貨物需要により、堅調に推移しました。コンテナ船事業に関しても、旺盛な貨物需要と中東情勢の悪化に伴う喜望峰経由への迂回航行により、概ねタイトな船腹需給が継続し、市況は堅調に推移しました。

このような事業環境のなか、当社は2022年度から5か年の中期経営計画を着実に実行しています。低炭素・脱炭素社会の実現を事業機会として成長戦略を策定し、ポートフォリオ戦略に基づき、成長の牽引役となる3つの事業に対して経営資源を集中的に配分し、また、当社グループの重要な事業部門であるコンテナ船事業については、株主として持分法適用関連会社であるONE社の持続的な成長と発展のために支援を強化します。そのうえで最適資本構成を目指し、バランスのとれた成長投資と株主還元を軸としたキャッシュアロケーションも進めます。これらの取組みを通じて、環境負荷を軽減し、持続可能な社会の実現に向けて、企業価値を継続的に向上させることで、全てのステークホルダーに信頼され続ける会社を目指してまいります。

当期業績について、自営事業は全てのセグメントで黒字を確保しました。一過性要因によりエネルギー資源セグメントの業績が前期比で悪化したものの、ドライバルクセグメントと自動車船事業を中心とした製品物流セグメントの業績改善と為替影響により、自営事業全体としては前期を上回りました。また、ONE社の業績は旺盛な貨物需要を背景に前期比で改善しました。

株主還元政策に関しては、業績動向を見極め、最適資本構成を常に意識し、企業価値向上に必要な投資及び財務健全性を確保のうえ、適正資本を超える部分についてはキャッシュ・フローを踏まえて、自己株式取得を含めた株主還元を積極的に実施しました。

 

これらの結果、当期の連結売上高は1兆479億円、営業利益は1,028億円、経常利益は3,080億円、親会社株主に帰属する当期純利益は3,053億円となりました。

なお、持分法による投資利益として2,020億円を計上しました。うち、当社の持分法適用関連会社であるONE社からの持分法による投資利益の計上額は2,012億円です。

 

経営計画の主な内容は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期的な会社の経営戦略、(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。

事業環境が大きく変化しているなか、当社グループは2022年度から2026年度までの5か年の中期経営計画を公表しました。当社グループならではの強みである専門機能を磨き上げ、2050年に向けた自社と社会の低炭素・脱炭素化の実現と、収益成長を両立させるための長期経営ビジョンを達成していくため、中期経営計画で策定した施策を実行しています。

 

業績等の概要

(1)業績

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減額 (増減率)

売上高

9,579

10,479

900

(9.4%)

営業利益

841

1,028

187

(22.2%)

経常利益

1,327

3,080

1,753

(132.1%)

親会社株主に帰属する当期純利益

1,019

3,053

2,033

(199.4%)

 

 

 

為替レートと燃料油価格が経常利益に与えた影響は以下のとおりです。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

影響額

為替レート(円/US$)

144

153

9

225

億円

燃料油価格(US$/MT)

620

610

△10

△0

億円

 

 

           <為替の推移(円/US$)>         <消費燃料油価格の推移(US$/MT)>

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(注)為替・消費燃料油価格(平均補油価格)とも、当社社内値です。

 

当連結会計年度の期首より、在外子会社等の収益及び費用は、決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更し、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較を行っています。

 

また、当連結会計年度の事業セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

 

   前連結会計年度

 (自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

   当連結会計年度

 (自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

増減額 (増減率)

ドライバルク

売上高

2,935

3,223

288

(9.8%)

セグメント損益

35

135

100

(278.4%)

エネルギー

資源

売上高

1,056

1,019

△37

(△3.5%)

セグメント損益

75

49

△25

(△33.5%)

製品物流

売上高

5,486

6,128

641

(11.7%)

セグメント損益

1,286

2,943

1,657

(128.8%)

その他

売上高

100

108

7

(7.2%)

セグメント損益

14

9

△4

(△32.4%)

 

① ドライバルクセグメント

[ドライバルク事業]

大型船市況は、年明けに鉄鉱石産地の雨季・荒天の影響による出荷の減退に伴い一時軟化しましたが、輸送需要に支えられ概ね堅調に推移しました。

中・小型船市況は、上半期は堅調に推移、下半期に中国向けのとうもろこし及び石炭の荷動き鈍化により軟化しましたが、期末に上昇に転じました。

このような状況下、ドライバルクセグメントでは、市況エクスポージャーを適切に管理すると同時に運航コストの削減や配船効率向上に努めました。

ドライバルクセグメント全体では、前期比で増収増益となりました。

 

② エネルギー資源セグメント

[液化天然ガス輸送船事業・電力事業・油槽船事業・海洋事業]

LNG船、電力炭船、大型原油船、LPG船、ドリルシップ(海洋掘削船)及びFPSO(浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備)は、中長期の傭船契約のもとで順調に稼働し、安定的に収益に貢献しました。

エネルギー資源セグメント全体では、一過性の要因により前期比で減収減益となりました。

 

③ 製品物流セグメント

[自動車船事業]

世界自動車販売市場は、半導体及び自動車部品の供給不足が概ね解消され、回復基調が継続しました。また、運賃修復及び運航効率の改善に引き続き取り組みました。

 

[物流事業]

国内物流・港湾事業では、コンテナ船ターミナル取扱量、曳船事業の作業数及び倉庫事業の取扱量はそれぞれ堅調に推移しました。国際物流事業では、フォワーディング事業における半導体関連や自動車関連貨物の荷量が前期比で増加、収益改善につながりました。完成車物流事業は、豪州各港での取扱量に影響を与える新車販売台数は高く推移し、第2四半期以降続いていた検疫問題による寄港隻数の減少等の影響も改善し、2025年初めから取扱台数も回復しました。

 

[近海・内航事業]

近海事業では、鋼材の新規契約獲得及び堅調なバイオマス燃料輸送により、輸送量は前期比で増加しました。内航事業では、定期船輸送での農水産物や建築部材等の荷動きが堅調に推移したものの、フェリー輸送の稼働減や一部航路の減便により輸送量は前期比で減少しました。不定期船は順調な稼働により輸送量は前期比で増加しました。

 

[コンテナ船事業]

当社持分法適用関連会社であるONE社の業績は、堅調な個人消費と中東情勢に起因する喜望峰ルート利用の長期化や港湾混雑による船腹需要の高まりを背景に好調に推移しました。

旧正月以降、荷動きの鈍化や船舶の供給過剰を受け運賃市況は下落傾向にあるものの、前期比では大幅な増収増益となりました。

 

製品物流セグメント全体では、前期比で増収増益となりました。

 

④ その他

その他には、船舶管理業、旅行代理店業及び不動産賃貸・管理業等が含まれており、前期比で増収となるも減益となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,015億円となり、前連結会計年度末より679億円減少しました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益等により、当連結会計年度は2,731億円のプラス(前連結会計年度は2,024億円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得等により、当連結会計年度は1,261億円のマイナス(前連結会計年度は663億円のマイナス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得、配当金の支払い及び長期借入金の返済等により、当連結会計年度は2,116億円のマイナス(前連結会計年度は2,231億円のマイナス)となりました。

 

生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、海運業を中核とする海運事業グループであり、ドライバルク事業、エネルギー資源事業、製品物流事業を行っています。このほか、船舶管理業、旅行代理店業及び不動産賃貸・管理業等を展開しています。したがって、生産、受注を行っておらず、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

 

セグメント別売上高(外部顧客に対する売上高)

 セグメント別売上高(外部顧客に対する売上高)の実績は、下記のとおりです。

 セグメントの名称

 前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

比率(%)

金額(百万円)

比率(%)

ドライバルク

293,516

30.6

322,357

30.8

エネルギー資源

105,662

11.0

101,917

9.7

製品物流

548,671

57.3

612,857

58.5

その他

10,089

1.1

10,812

1.0

合計

957,939

100.0

1,047,944

100.0

 

当社(川崎汽船㈱)の営業収益実績(参考)

 提出会社のセグメント別営業収益の実績は、下記のとおりです。

 区分

 前事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 当事業年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

比率(%)

金額(百万円)

比率(%)

 (ドライバルク)

280,797

36.7

307,207

36.5

 (エネルギー資源)

84,810

11.1

84,585

10.1

 (製品物流)

398,676

52.2

448,785

53.4

海運業収益

764,284

100.0

840,578

100.0

 (その他)

49

0.0

50

0.0

その他事業収益

49

0.0

50

0.0

合計

764,334

100.0

840,628

100.0

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

 

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

売上高は前年度に比べ9.4%増収の1兆479億円となりました。報告セグメント別では、ドライバルクセグメントは、前年度に比べ、9.8%増収の3,223億円となりました。エネルギー資源セグメントは、前年度に比べ、3.5%減収の1,019億円となり、製品物流セグメントは、前年度に比べ、11.7%増収の6,128億円となりました。その他の区分は、7.2%増収となりました。

 

② 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前年度の7,983億円から673億円増加し、8,656億円(前年度比8.4%増)となりました。営業収入に対する売上原価の比率は0.7ポイント減少して82.6%となりました。販売費及び一般管理費は39億円増加し、793億円(前年度比5.2%増)となりました。

 

③ 営業利益

売上総利益の増加により、前年度の841億円の営業利益に対し1,028億円の営業利益となりました。

④ 営業外収益(費用)

2,020億円の持分法による投資利益(前年度は491億円の持分法による投資利益)を計上したことが主な要因となり、営業外損益は2,052億円の利益(前年度は485億円の利益)となりました。

⑤ 税金等調整前当期純利益

固定資産売却益などにより特別利益は123億円となりました。また、訴訟損失引当金繰入額などにより特別損失は5億円となりました。これらの結果、税金等調整前当期純利益は3,199億円(前年度は1,308億円の税金等調整前当期純利益)となりました。

⑥ 法人税等

法人税等は、主として法人税、住民税及び事業税の減少により、前年度の267億円から143億円減少し123億円となりました。

 

⑦ 非支配株主に帰属する当期純利益

非支配株主に帰属する当期純利益は、日東物流㈱などの非支配株主に帰属する当期純利益が増加し、前年度の21億円に対し、22億円となりました。

⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度の1,019億円に対し、3,053億円となりました。1株当たり当期純利益は、前年度の141.37円に対し、460.11円となりました。

(注)2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合の株式分割を行っています。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり当期純利益金額を算定しています。

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フローの状況

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。

② 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループのドライバルク事業や自動車船事業の運営に関わる海運業費用です。この中には港費・貨物費・燃料費などの運航費、船員費・船舶修繕費などの船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業の運営に関わる労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。また、設備資金需要としては船舶投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に1,334億円の設備投資を実施しました。

 

③ 財務政策

当社グループの事業維持・拡大を支える低コストで安定的な資金の確保を重視しています。長期の資金需要に対しては金融機関からの長期借入金を中心に、社債発行、新株発行により調達しています。短期的な運転資金を銀行借入、コマーシャルペーパー(CP)発行等により調達し、一時的な余資は安定性・流動性の高い金融資産で運用しています。また、キャッシュマネージメントシステム等を利用して、国内・海外グループ会社の余剰資金を有効活用しています。

流動性の確保としまして、CP発行枠600億円に加え、国内金融機関と約1,400億円の複数年のコミットメントラインを設定し、緊急の資金需要に備えています。

当社は日本格付研究所(JCR)から格付を取得しており、2025年3月31日現在の発行体格付は、「A-」となっています。また、短期債格付(CP格付)については「J-1」を取得しています。

 

(4)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前年度末比1,006億円増加し2兆2,100億円となりました。流動資産は、現金及び預金の減少等により、前年度末比849億円減少し4,033億円となりました。

固定資産は前年度末比1,855億円増加し1兆8,066億円となりました。固定資産のうち有形固定資産は、船舶の増加等により、前年度末比783億円増加し4,886億円となりました。投資その他の資産は、投資有価証券の増加等により、前年度末比1,059億円増加し1兆3,107億円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前年度末比477億円増加し5,325億円となりました。支払手形及び営業未払金の減少等により、流動負債は2,054億円となり、長期借入金の増加等により、固定負債は3,271億円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前年度末比528億円増加し、1兆6,774億円となりました。純資産のうち株主資本は、主に利益剰余金が698億円増加したことにより、1兆3,484億円となりました。その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定が減少したことを主な要因として、前年度末比163億円減少し2,999億円となりました。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、輸送技術の革新、安全輸送の徹底及び環境保全等に関する研究開発に取り組んでおり、他社と共同による船舶の省エネ化・環境対策に資する技術の高度化研究を通じ、省エネ・環境対策技術の保有を目指しています。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は2,011百万円です。

 なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。