文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)当社グループの企業理念
当社グループは、創立者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する。」という会社の創業精神です。いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方を、当社グループは創業当時から140年以上にわたり受け継いできました。
2019年、当社グループは、あらためて渋沢栄一の創業精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて持続的に成長できる会社となることをめざして、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。
■企業理念体系「TOYOBO PVVs」
(2)サステナブル・ビジョン2030(2022年5月発表)
当社グループは、企業理念体系「TOYOBO PVVs」に基づいて、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定しています。今後の事業環境の変化や社会トレンドを想定し、「人」と「地球」に関する5つの社会課題とサステナビリティ目標およびアクションプランを設定しています。当社のコア技術をベースにしたイノベーションにより5つの社会課題解決へ貢献していくことで、「安心してくらせる「ゆたか」な社会の実現と企業価値向上のスパイラルアップ」という当社グループのありたい姿を実現していきます。
■サステナブル・ビジョン2030の全体像
(3)マテリアリティ
当社グループは、ステークホルダーの要請・期待に応え、めざす姿「人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ」を実現するため、マテリアリティ(サステナブルな会社であるための重要課題)を特定しています。ステークホルダーにとっての影響度と当社グループにとっての影響度の2軸から、優先度の高い目標を明確にし、「事業を通じて社会課題解決に貢献する」「人的資本」「環境・モノづくり」「事業基盤」の4つの領域に整理しました。
■マテリアリティマップ
(4)2025中期経営計画(2022~2025年度)(2022年5月発表)
① 基本方針
「2025中期経営計画(2022~2025年度)(以下、「2025中計」といいます。)」では、2025年を「サステナブル・ビジョン2030」で掲げる目標達成に向けた通過点としています。2025中計策定時点において、大規模な火災事故や品質不適切事案など、製造業としての信頼が揺らぐ事案を抱える一方、工業用フィルム事業を除く事業の成長が足踏みしていました。そこで、2022年度から2025年度までの期間を「つくりかえる・仕込む4年」と位置づけ、「安全・防災、品質の徹底」「事業ポートフォリオの組替え」「未来への仕込み」「土台の再構築」の4つの施策への取組みを通じて、「サステナブル・グロース」への変革を図ります。
■基本方針と4つの施策
② 2025中計の進捗(2022~2024年度)
イ)経営環境
2025中計期間において世界経済は、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や中東情勢緊迫化などによる原燃料価格の高騰と高止まり、円安の進行、中国経済停滞、米国通商政策の変更など、当社グループを取り巻く経営環境は、当初の想定を上回るスピードと大きさで変化してきました。
ロ)業績
このような経営環境の中、2025中計の前半(2022~2023年度)は、原燃料価格高騰の影響による限界利益率の低下と数量回復の遅れに加え、事業拡大や基盤整備のための固定費の増加により、稼ぐ力が大きく低下しました。その後、製品価格改定の効果と主要製品の数量増加もあり、収益は回復基調にありますが、当初計画に対し乖離しています。また、成長事業への大型投資の先行もあり、有利子負債が増加したことから、財務体質が悪化しました。
■業績推移
ハ)4つの施策の進捗
2025中計の4つの施策のうち、「安全・防災、品質の徹底」「未来への仕込み」「土台の再構築」は着実に前進していますが、「事業ポートフォリオの組替え」に遅れが生じました。
i)施策1:安全・防災、品質の徹底
安全・防災については、「ゼロ災」をめざして、「安全防災ロードマップ」に沿って、ハード面(安全基盤の整備)、ソフト面(安全文化の醸成)での取組みを進めてきました。2021年度以降、重大インシデント・ゼロを達成しました。具体的な取組みとして、ハード面においては、現場安全防災総点検を実施し、グループ全体で約180億円(2020~2025年度合計)の老朽化更新を含む安全・防災投資を進めています。また、労働環境のリスク低減のため、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)の認証取得を進めており、2025年3月末時点で、敦賀事業所、岩国事業所、宇都宮工場の3拠点が取得しており、犬山工場についても2025年4月10日に取得しています。ソフト面においては、安全ワークショップの推進や、安全意識調査の実施と結果の活用を進めています。
品質については、「品質保証体制再構築ロードマップ」に沿って、PL/QAアセスメントの徹底、品質データのオンライン化、品質の中核人材育成(Qaceセミナー)(※)を含む製品安全・品質保証教育の充実化や品質不正に関する研修などのコンプライアンス教育の強化、品質保証マニュアルの多言語化(海外拠点への共有)などを進めてきました。加えて、品質文化の醸成、その基盤となる組織風土改革、安全・安心を最優先するモノづくりを推進しています。過年度に発生した品質不適切事案への対応として、エンジニアリングプラスチック製品においてISO9001認証を2024年5月に再取得し、医薬品製造受託においてアメリカ食品医薬品局(FDA)より受領していたWarning Letterが2023年7月に解除されました。
(※) Qace:Qa_assurance Qc_control Qe_ensuranceの頭文字をとったもの
ii)施策2:事業ポートフォリオの組替え
「収益性」と「成長性」の2軸により、各事業を「重点拡大事業」「安定収益事業」「要改善事業」「新規育成事業」に層別し、それぞれの位置づけに応じた事業運営を行います。「収益性」は営業利益を使用資本で除した使用資本利益率(ROCE)、「成長性」は年平均売上高成長率(CAGR)を指標としています。「収益性」は資本コストをベースにハードルレート6.5%、「成長性」は業界の年平均売上高成長率を参考にハードルレート4.5%を目安として設定しています。なお、当社グループ全体の資本効率性指標はROICとしていますが、各事業の層別においてはROCEを用いています。
a.重点拡大事業
フィルム事業およびライフサイエンス事業は、当社グループに優位性があり、市場の拡大が見込めるものとして「重点拡大事業」に位置づけ、中長期の成長拡大をめざして積極的な投資を計画どおりに実施してきました。一方で、技術難易度の高い新製品の製造設備を含め、大型投資が集中したことから、一部の新設備において立上げ遅れが生じ、収益に影響を与えました。
b.安定収益事業
環境・機能材事業は、安定収益事業に位置づけられていますが、各商材のもつ成長機会および潜在力を再評価し、第三の柱とすべく、2023年4月に、三菱商事株式会社との合弁会社である東洋紡エムシー株式会社による事業運営を開始しました。当社のモノづくりと三菱商事株式会社のグローバル経営力により、経営基盤の整備・強化、収益改善施策の実行を進めるなど、順調な立上がりを見せています。
c.要改善事業
2025中計策定当初、要改善事業に位置づけられた衣料繊維事業、エアバッグ用基布事業、医薬品製造受託事業の3事業は、黒字化ロードマップに従い、収益性は着実に改善しました。しかしながら、包装用フィルム事業と不織布マテリアル事業においては、原燃料価格高騰など事業環境の変化により収益性が低下しました。このことにより、当該2事業の位置づけを2024年度に要改善事業に変更し、それぞれに収益性改善に向けた対策を実行しています。
■事業ポートフォリオ(位置づけの変化)
各事業セグメントにおける実行したこと、計画に対する遅れは以下のとおりです。
■セグメント別進捗
iii)施策3:未来への仕込み
4つのコア技術「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」「分析・シミュレーション技術」を融合させ、リニューアブルポリマー100%を目標とする「新循環プラスチックソリューション」、水・空気などの環境浄化やCO2の回収・利用に貢献する「環境アクティブクリーンソリューション」、人々が健康に寿命を全うできる社会をめざす「Well-Beingソリューション」の3つの領域でイノベーションの創出を進めています。
また、気候変動対応として、カーボンニュートラルに向けて策定した「GHG排出量削減ロードマップ」に沿って、Scope1,2の2050年ネットゼロ達成に向けて取り組むと同時に、バリューチェーン全体のGHG排出量の削減を進めています。加えて、燃料電池や風力発電に使われる材料、良質な水域・大気の維持に貢献する海水淡水化膜やVOC(揮発性有機化合物)回収装置など環境分野での拡販を図りました。
さらに、DXの実現に向けて、IT環境を整備し、ビジネス・イノベーションを加速・推進するための基盤づくりを進めています。当社はこの取組みについて、経済産業省の認定基準を満たしていることが評価され、2024年2月に「DX認定事業者」の認定を取得しました。
iv)施策4:土台の再構築
当社グループが持続的に成長していくために必要な基盤の再構築として、「人的資本」「人権の尊重」「モノづくり現場力の強化」「事業基盤の整備」「ガバナンス・コンプライアンス」「組織風土改革」を進めています。
「人的資本」では、「人」こそが最も重要な経営資本と位置づける「人材マネジメント方針」のもと各種施策を実行しています。具体的には、次世代経営人材やモノづくりを支える現場リーダーなどの人材育成、ダイバーシティの推進、健康経営の推進などの取組みを進めていくことで、従業員の幸せと当社グループの持続的成長、そして、従業員エンゲージメントの向上を図ります。
「人権の尊重」については、2020年10月に制定(2024年2月改定)した「東洋紡グループ人権方針」にのっとり、外国人技能実習生の就業状況を把握し、特に海外グループ会社において児童労働や強制労働がないことの確認を進めています。また、役員・従業員向けに「ビジネスと人権研修」を実施し、人権デュー・デリジェンスの啓発を進めています。
「モノづくり現場力の強化」においては、技術者教育体系の整備や階層別教育の強化を行い、デジタル技術の活用(スマートファクトリーなど)、全社の知恵を結集するための現場交流や3Sの取組みなどにより、生産革新活動の全社展開を進めていきます。
「事業基盤の整備」においては、全社・事業所拠点構想の検討、老朽化したインフラのリニューアル投資やレガシーシステムの更新などに取り組んでいきます。
「ガバナンス・コンプライアンス」においては、グループガバナンスの強化として、リスクマネジメント体制の整備を行っています。具体的には、グループ管理総括部(※1)は、リスク内在部門(事業)、リスク主管部門(スタッフ)と連携しながら、リスクアセスメント(重大リスクの抽出、モニタリング)、リスク最小化のための資源配置を行い、グループ会社へも展開しています。内部監査部は、監査計画および報告を取締役会に行い、内部監査機能の実効性を確保しています。また、コンプライアンスについては、全従業員の理解促進とルールの周知徹底を行うため、「東洋紡グループ コンプライアンスマニュアル」を毎年発行・配布しています。また、研修や勉強会を充実や具体事例の共有等を推進するとともに、内部通報窓口の利用促進を図っています。
「組織風土改革」においては、カエル推進部(※2)による企業理念体系「TOYOBO PVVs」の浸透活動を軸に、組織の垣根を越えて、気づきを改善・改革につなげる働きかけや「カエ続ける」ことを文化として定着させるための取組みを行っています。また、社長ほか経営幹部と従業員が対話する「まじめな雑談」など職場での対話機会を広げていくことで、心理的安全性の向上に努めています。
(※1)当該活動は、グループ管理総括部から2025年4月新設のリスクマネジメント部へ移管
(※2)当該活動は、2025年4月に、カエル推進部から人事・労務総括部へ移管
③ 2025年度以降の取組み
2025年度経営方針「未来をつくるために稼ぐ力を取り戻す」のもと、2025年度以降の企業価値向上に向けて、以下の6つのアクションプランに取り組みます。
イ)安全・防災、品質、コンプライアンスの徹底(大前提)
安全・防災については、「安全防災ロードマップ」に沿って、安全文化の醸成と安全基盤の整備を活動の両輪とし、全ての階層への教育の充実や安全防災投資によるリスク低減に取組み、「ゼロ災」をめざします。
品質については、「品質保証体制再構築ロードマップ」に沿って、PL/QAアセスメントの徹底、品質データのオンライン化などを推進することで、安全・安心な製品・サービスをお届けします。
コンプライアンスについては、引き続き、研修の充実や具体事例の共有、内部通報窓口の利用促進施策などを進め、問題の早期発見と是正に努めます。
ロ)価値に見合ったプライシングの徹底
プライシングは稼ぐ力の鍵であることを再認識し、提供する付加価値に見合った製品価格の設定を徹底します。2021年度からの原燃料価格の高騰分については概ね価格転嫁が完了しましたが、引き続き、物流費や人件費などの上昇分に対する製品価格の改定を進めます。
ハ)要改善事業対策
要改善事業として位置づけている5事業については、それぞれ次の取組みを進め、早期の黒字化・正常化をめざします。
衣料繊維事業はすでに黒字化していますが、さらに資産効率の改善を進めていきます。医薬品製造受託事業はGMP(Good Manufacturing Practice)体制の維持に加え、更新した製造設備の稼働率向上、新規案件の獲得を進めます。エアバッグ用基布事業はタイの原糸工場の稼働率向上や生産体制の見直しを進めます。
包装用フィルム事業は生産体制の見直し、製品価格改定に加え、全社フォロー体制による新機台の早期収益化、環境対応製品へのシフトを進めます。不織布マテリアル事業は国内生産体制の見直しに加え、開発品の強化、外部委託生産の拡大を進めていきます。
これらの取組みを通じて、2025年度に2024年度比で約70億円の収益改善をめざします。
■黒字化ロードマップ
ニ)投資の確実な回収と新の創出
重点拡大事業であるフィルム、ライフサイエンスにおいて、セラミックコンデンサ用離型フィルム、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”、生化学診断薬用原料酵素、PCR検査試薬・遺伝子診断薬用原料、人工腎臓用中空糸膜などに対して、積極的に設備投資を進めています。一部の設備で発生している計画対比での遅れに対して、生産技術部門による横串機能の強化を行うなど全社でのフォローアップをすることで、成長投資案件を確実に立上げ、2028年度に2024年度比で約100億円の利益創出をめざします。
■主な成長投資計画(フィルム、ライフサイエンス)
加えて、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材における「新の創出」により、中長期的に更なる収益拡大をめざします。以下は、各事業セグメントにおける「新の創出」の主な製品や取組みです。
■新の創出
ホ)投資・経費の絞り込み、コストダウン
投資の絞込みについては、2025中計策定時(2022年5月)、4年累計2,400億円の設備投資を計画していましたが、2024年5月に投資案件を見直すことで、1,800億円に圧縮する計画に変更しました(2025年5月見通し1,760億円)。成長投資については、工業用フィルム事業、バイオ事業、メディカル事業への投資は着実に実行する一方、要改善事業に位置づけを変更した包装用フィルムの成長投資を見直しました。つくりかえる投資については、優先順位を精査のうえ見直しを行っています。安全・防災・環境投資については、安全・防災、品質投資は着実に実行し、環境投資は一部26年度以降へ見送りをしています。引き続き、資本効率を重視した経営を進めていきます。
経費の絞込み、コストダウンについては、全社プロジェクトによる経費の見直し、生産性の改革やコスト構造の変革を進めます。具体的には、スタッフ部門を中心とした業務委託費の削減などによる間接材費のコストダウン、共通部門費の見直し、事業再配置による事業所・工場のコスト競争力強化、人材の最適配置、データ資産活用の高度化などによる業務効率・生産性向上に取り組みます。これらにより、2027年度に2023年度比で約50億円の利益創出をめざします。
■設備投資(2022~2025年度合計)
ヘ)使用資本の圧縮
持続的な成長を見据えて、使用資本の適正化のために、運転資金の拡大抑制、投資の絞込み、事業ポートフォリオの組替えに注力します。並行して、ベストオーナーの選択肢も排除せずに、使用資本圧縮の検討を進めていきます。
④ 財務目標
2025中計において、「売上高」「営業利益」「営業利益率」「EBITDA」「当期純利益」「自己資本利益率(ROE)」「投下資本利益率(ROIC)」「D/Eレシオ」「Net Debt/EBITDA倍率」を重要財務指標としています。持続的な成長に向けて、積極的な投資マインドを社内に形成するため、営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA」を指標に加えるとともに、資本効率を重視した経営を推進する目的で、投下資本利益率(ROIC)を指標に加え、成長性と効率性の両側面から経営資源の最適な配分に努めます。
また、社債の発行体格付の維持向上等を通じて資金調達の安定性を確保する観点から、有利子負債と自己資本の比率(D/Eレシオ)を重視しています。2018~2021年度の中期経営計画では、D/Eレシオ1.0倍未満を目標とし、その目標を達成しました。2025中計では、将来の成長に向けた先行投資を、時機を逸することなく実施していくため、D/Eレシオの目標を1.2倍未満とし、キャッシュ・フローの創出力と有利子負債とのバランスを失することなくコントロールするため、Net Debt/EBITDA倍率の指標を加え、4倍台を目安にコントロールし、財務状態を安定的に管理していく方針です。
しかしながら、経営環境が大きく変化し、事業ポートフォリオの組替えの遅れによる営業キャッシュ・フローの減少に加え、フィルムやライフサイエンスなどの成長事業への大型投資による投資キャッシュ・フローの増加によって有利子負債が増加し、2025年3月末において、D/Eレシオは1.37倍、Net Debt/EBITDA倍率は6.1倍となり、財務状態が悪化しました。この状況下、成長投資と財務健全性の両立を目的として、2024年9月に、劣後特約付ローンおよび公募劣後特約付社債による総額400億円の資金調達を行っています。これらを踏まえ、2025年度財務指標の見通し、および2025中計期間中のキャッシュ・フロー・アロケーション見通しを以下としています。
2025年度経営方針「未来をつくるために稼ぐ力を取り戻す」のもと、サステナブル・グロースの実現、企業価値の向上に努めます。要改善事業の正常化と成長投資の回収を進めることで、早期に営業利益300億円以上、ROE5%の実現に向けた取組みを進めます。さらに、新の創出による利益の上積みでROE8%超をめざします。
■財務指標
米国相互関税の影響については、サプライチェーン全体への影響が不透明であることから、2025年度見通しには織り込んでおりません。なお、当社グループの米国向け販売状況は以下の通りです(2025年3月期実績)。
・米国向け売上規模(顧客の所在地ベース):連結売上高の約3%
・米国における主な事業:
- ライフサイエンス:バイオ事業
- 環境・機能材:樹脂・ケミカル事業(エンジニアリングプラスチックほか)、環境・ファイバー事業
■キャッシュ・フロー・アロケーション(2022年度~2025年度)
■営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フローの推移
■サステナブル・グロースの実現
⑤ 資本コストや株価を意識した経営
当社グループでは、現状、PBRが1.0倍を下回る水準にあることを重く受け止めており、資本コストを意識した経営を推進しています。2025中計では、重要財務指標にROE、ROICを採用しており、「価値に見合ったプライシング」「要改善事業対策」「投資の確実な回収」「投資・経費の絞り込み、コストダウン」「使用資本の圧縮」を推進することにより、グループ全体の収益性、資産効率の改善を進めています。並行して、PERを高めるために、「新の創出」により、成長の具体策や道筋を示し成長期待を高めるとともに、「安全・防災、品質、コンプライアンスの徹底」によりリスクの低減を進めています。これらの取組みを通じて、ROE8%以上、PBR1.0倍以上をめざします。
■資本コストや株価を意識した経営
⑥ 株主還元方針
「第4提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とはさまざまな要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ戦略
当社グループは、創立者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。2019年、改めて創業の精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて、成長軌道を描き続ける会社となるべく、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。さらにこの企業理念体系を具体的にするべく、2022年5月に長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定・公表しました。
「サステナブル・ビジョン2030」は、今後の事業環境の変化を想定し、企業理念体系のビジョン「素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続ける」を基軸として、当社グループの「2030年のありたい姿」と「サステナビリティ指標」およびその「アクションプラン」を示すものです。当長期ビジョンでは「サステナブル・グロースの実現」、すなわち「社会のサステナビリティに貢献するサステナブルな(成長を実現する)会社」をめざします。
① ガバナンス
当社グループは、社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、経営会議メンバー(事業本部長、コーポレート・スタッフ部門の管掌役員)が出席し、全社的なサステナビリティ活動を推進しています。同委員会は、年6回開催し、当社グループのマテリアリティ(重要課題)として設定した項目に関し、リスクと機会を踏まえてKPIを設定し、その進捗状況と施策の有効性を報告・確認しています。2024年度は、気候変動や生物多様性、人権デュー・デリジェンス、役員報酬制度などの課題につき議論を行いました。また、これらについては、社会動向の変化に伴うリスクと機会の検証状況も含め、取締役会に適宜報告しています。
② 戦略
「サステナブル・ビジョン2030」では、サステナビリティ経営に向けたアプローチを「“Innovation”と3つの“P”、すなわち“People” “Planet” “Prosperity”」と整理しました。この“Innovation”は、1. 「人」と「地球」を最終的な「お客さま」と捉えたマーケティング思考、2.「素材+サイエンス」に基づき、独自の工夫やアイディアによるサイエンスベースド・イノベーション、3.多様なパートナーとのオープンイノベ―ション等を通じた価値共創、を意味します。
また、“People”は、「人」を中心とした社会課題の解決策を、“Planet”は「地球」全体を意識した社会課題の解決策を、そして当社グループが考える“Prosperity”とは、企業理念にのっとり、課題解決を通じて「ゆたか」な社会を実現し、同時に当社グループの企業価値も向上させることを意味します。その実現に向けて、当社グループが事業等を通じて解決に貢献する5つの社会課題――「People」に関する「従業員のウェルビーイングとサプライチェーンの人権」「健康な生活&ヘルスケア」「スマートコミュニティ&快適な空間」、「Planet」に関する「脱炭素社会&循環型社会」「良質な水域・大気・土壌&生物多様性」――を設定し、これらの解決にチャレンジします。
③ リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ委員会において、社会動向の変化を踏まえ、マテリアリティ各項目のリスクと機会について変動の有無を検証し、活動に反映しています。
当社グループは、社長執行役員を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、経営会議メンバー(事業本部長、コーポレート・スタッフ部門の管掌役員)が出席し、全社的なリスクマネジメント活動を推進しています。本委員会は、2024年度は2回開催しました。本委員会では、グループ全体のリスク管理方針を策定するとともに、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括し、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用をめざすことにより、リスク管理体制の強化に努めています。当社グループに重大な影響を与えるリスクを中心に、当該リスクの主たる担当部門を選定し、その回避・低減策を策定しています。各部門が中心となって対応し、本委員会でその活動状況を確認しています。
なお、リスクマネジメント活動の起点として、全社的なリスクに関するアセスメントを実施、各種リスクシナリオをベースとして影響度(※)と発生可能性(※)の2軸で評価した結果に基づき、重視すべき全社重大リスクを抽出しています。なお当該リスクについては、「
(※)影響度と発生可能性の詳細
影響度:「影響範囲」、「業務停止期間」、「人的被害」、「レピュテーション」、「財務」に関して「大規模の被害に相当」、「中規模の被害に相当」、「小規模の被害に相当」の3段階で評価
発生可能性:「頻繁に発生」、「度々発生」、「稀に発生」の3段階で評価
④ 指標と目標
マテリアリティの取組みの進捗管理を確実なものとするため、マテリアリティごとに担当役員を決定し、KPI(目標)を設定しています。事業活動によるマイナスの影響を最小化しつつ、プラスの影響を最大化する取組みを整理していきます。なお、この進捗はサステナビリティ委員会で管理し、指標・目標は年1回見直ししています。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組み)
当社グループでは、気候変動が当社グループやステークホルダーにもたらす影響の大きさを認識するとともに、「脱炭素社会&循環型社会」の実現を重要なサステナビリティ目標としています。2020年1月に、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、同提言にのっとった取組みと開示を進めています。
2022年5月には、脱炭素社会に向けた移行計画(「カーボンニュートラルへのロードマップ」)を含む「サステナブル・ビジョン2030」を公表しました。パリ協定が求める水準と整合させ、事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量(以下、Scope1,2)を2030年度までに2013年度比で46%(2020年度比で27%)以上削減することを目標とし、科学的根拠に基づいた目標として、SBTイニシアチブによる認定を取得しています。さらに、2050年度までにネットゼロにすることをめざしています。また、東洋紡グループのバリューチェーン全体のGHG排出量を上回る削減貢献量創出の実現を、2050年度の目標としています。
■カーボンニュートラルへのロードマップ
① ガバナンス
気候変動関連課題の最高責任者である社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動関連課題の解決に向けた上位方針や目標設定について審議しています。取締役会はその報告を定期的に受け、上位方針や目標などの重要事項を承認し、活動の進捗を監督しています。
当年度は、サステナビリティ委員会を6回開催し、その結果を受け、取締役会において定期報告のほか臨時報告を行いました。この結果、取締役会において、役員報酬制度の評価項目であるサステナビリティ指標への「気候変動対応関係指標」の採用を決議し、GHG排出量削減取組みを加速しています。なお、気候変動対応関係指標は、GHG排出量(Scope1,2)の対前年度比削減率とし、2024年度実績に基づき支給される2025年7月度以降の報酬から適用します。
■体制図
② 戦略
(イ)概要
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」の中で「脱炭素社会&循環型社会」の実現を重要なサステナビリティ目標の一つとしています。また、TCFD提言にのっとり、パリ協定に基づく気候変動シナリオを前提とした将来リスクと事業機会を分析・整理しました。それらリスクと機会の影響と財務インパクトを特定した上で、対応策および指標・目標を設定し、経営戦略の強靭性(レジリエンス)向上を図ります。
(ロ)シナリオ分析
気候変動対策の進展によってさまざまなシナリオが考えられる中、以下「シナリオ分析の概要」に記載したシナリオを典型的なものとして参照しました。
今世紀末までの世界の平均気温の上昇が1.5℃に抑えられるシナリオと、4℃まで上昇するシナリオのそれぞれについて、2050年までの事業への影響と、当社グループの新たな機会を検討しました。
■シナリオ分析の概要
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設定シナリオ |
1.5℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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社会像 |
今世紀末までの平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求し、持続可能な社会の発展をかなえるため、大胆な政策や技術革新が進められる。脱炭素社会への移行に伴う社会変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会になる。 〈事例〉 ●炭素税の導入・炭素価格の上昇 ●中国を中心とした自動車の電動化シフト ●再生可能エネルギーと、これに付随する蓄電池需要の拡大 |
パリ協定に即して定められた約束草案等の各国政策が実施されるも、今世紀末までの平均気温が成り行きで最大4℃まで上昇する。温度上昇等の気候の変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会になる。 〈事例〉 ●大雨による洪水被害の増大 |
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参照シナリオ |
●「NZE」(IEA WEO2024) ●「APS」(IEA WEO2024) ●「SSP1-1.9」(IPCC AR6) ●「RCP2.6」(IPCC AR5) ●「Global Ambition scenario」(OECD Global Plastics Outlook) |
●「SSP5-8.5」(IPCC AR6) ●「RCP8.5」(IPCC AR5) ●「STEPS」(IEA WEO2024/ETP2020) |
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リスクと機会の傾向 |
移行面(規制強化などの社会変化)でのリスクおよび機会が顕在化しやすい |
物理面(気象の変化など)でのリスクおよび機会が顕在化しやすい |
(ハ)シナリオ下のリスクと機会の洗い出し
1.5℃シナリオと4℃シナリオを踏まえ、気候変動に特化した当社グループのリスク・機会の抽出を行いました。抽出されたリスク・機会の項目を集約し、社会の変化という観点でまとめ直した上で、それぞれの対策案を検討しています(下表:「シナリオ別のリスク/機会とその対策」)。「サステナブル・ビジョン2030」を踏まえ、影響度と発生可能性の2軸による評価の結果、特に重要であると認識したリスクと機会は後述のとおりです。また、分析の対象とした期間は、「短期」を3年程度、「中期」を2030年まで、「長期」を2050年までとしています。
当社グループでは、原材料調達を含むサプライチェーン全体でのGHG排出量の削減を、リスク低減と機会創出の両面で捉えています。具体的には、Scope1,2の計画的な削減により、将来のカーボンプライシング制度による負担を軽減するとともに、お客さまからの脱炭素化要求に確実に応えられるように備えます。
また、原材料をリサイクル材やバイオマス由来素材へシフトすることにより、石油由来資源への依存度を下げ、将来の事業リスクを低減するとともに、事業機会の獲得・拡大につなげていきます。
さらに、水資源の希少化による様々な高度水処理の需要の高まりに対し、低エネルギーで淡水の造水が可能な海水淡水化用膜や、水資源のリサイクルを促進する高効率濃縮用膜の開発・販売により、事業拡大につなげていきます。
また、従来技術からの置き換えによるGHGの削減貢献製品の事業拡大を見込んでいます。当社グループの代表的製品として、活性炭素繊維“Kフィルター”を用いたVOC回収装置があります。蓄電池関連の生産工場等で発生する揮発性有機化合物(VOC)(※)の除去を省エネルギーで行い、さらに有機溶剤の回収・再利用を可能とすることでGHGの削減と環境負荷低減の両面に寄与します。
(※)Volatile Organic Compounds
■シナリオ別のリスク/機会とその対策
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社会の変化およびその影響 |
リスク/機会項目 |
当社グループの対策 |
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区分 |
期間 |
事象 |
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脱炭素社会への移行に伴う影響 (広範囲に及ぶ政策・法規制・技術・市場の変化等) |
移行・ リスク |
短期 |
カーボンプライシングの導入 |
・GHG排出量削減計画の推進 (省エネルギー、生産効率向上、燃料転換、再生可能エネルギー導入他) ・インターナルカーボンプライシング制度の活用 |
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中期~ 長期 |
原燃料価格の上昇 (炭素価格の転嫁等) |
・非石油由来資源へのシフト ・サプライヤーへの働き掛け・連携(低炭素原料開発等) ・原材料調達手段の多様化(複数購買・現地調達を拡大) |
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省エネルギー化推進・高効率設備導入等に伴うコスト増加 |
・生産プロセスの革新・超高効率化の追求 ・サステナブルファイナンス、トランジションファイナンス等の活用 ・バリューチェーン全体における生産の高効率化 (関係会社との統合・連携強化、M&A等) |
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製品製造時の低炭素/脱炭素化要求への対応に伴うコスト増加 |
・再生可能エネルギーの導入・調達拡大 ・生産プロセスの高効率化、省エネルギー化推進 ・製品価格への転嫁 |
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石油由来資源の削減や代替化する要請の高まり |
・原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 ・石油由来資源に依存する汎用素材事業の見直し |
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移行・ 機会 |
中期 |
低炭素/脱炭素型素材や製品の需要増加 |
・原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 ・微生物(酵母)を活用したバイオ事業の生産プロセス革新(バイオものづくり) ・原材料(リサイクル材やバイオマス由来素材)の調達課題(材料の逼迫)への対応 ・低炭素/脱炭素型素材での製品開発・商品企画の推進 ・革新的な低炭素/脱炭素型素材の開発加速 ・低炭素/脱炭素型製品の生産/品質管理体制の強化 |
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GHG排出削減貢献につながる製品の需要拡大 |
・削減貢献視点でのお客さまを含めたサプライチェーンでの連携 ・従来技術からの置き換えによる削減貢献に寄与する製品開発・商品企画(※)の加速 (※)省エネルギー型の海水淡水化用膜、有機溶剤の燃焼処理を回避し再利用を可能にするVOC回収装置、廃液処理由来のGHG排出の低減に寄与する水現像フレキソ版、燃料電池用素材、GHG多排出工程である塗装を代替する塗装代替フィルム等 |
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再生可能エネルギー・蓄電池関連市場の拡大 |
・再生可能エネルギー/蓄電池関連事業(※)の製品開発・商品企画の強化 ・東洋紡と三菱商事による合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」の立ち上げによるメガトレンドの先取りや海外展開、ソリューション提供力の強化 (※)浸透圧発電用膜、浮体式洋上風力用スーパー繊維・フィルム、リチウムイオン電池工場用VOC回収装置、有価物(リチウム等)濃縮用膜・装置、水素発生装置関連素材、水素キャリア関連素材、有機薄膜太陽電池用ドナー材料等 |
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社会の変化およびその影響 |
リスク/機会項目 |
当社グループの対策 |
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区分 |
期間 |
事象 |
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気候変動の進行に伴う影響 (資産に対する直接的な損傷や、サプライチェーンの寸断による間接的な影響、技術・市場の変化等) |
物理的・ リスク |
現在~ 中期 |
猛暑による生産性の低下 |
・熱中症予防に関する基本方針の明確化 ・作業環境、作業の適切な管理(日よけ・冷房・通風設備の増設、高温多湿作業場での連続作業時間短縮等) ・工場内作業の自動化拡大 ・IoT機器等での現場作業者の熱中症管理 |
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自然災害による原材料の供給停止 |
・在庫水準見直し、複数購買の拡大 ・物流ルートの多様化 ・気候変動に左右されにくい代替原料の検討 |
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原料調達の不安定化 |
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水害(洪水・高潮等)による設備損壊、操業停止 |
・水害対策に関する基本方針の明確化 ・生産設備/動力設備等の高耐久化や高台移設/かさ上げ ・生産拠点の分散・移転 ・BCP訓練実施 |
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物理的・機会 |
中期 |
土木工事の需要増加 |
・減災/復旧工事用製品(※)の拡充 (※)防砂シート、コンクリート剥離防止シート、軟弱路床改善素材等 |
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水不足や干ばつによる海水淡水化の需要増加
淡水希少化による環境規制強化、産業排水の無排水(ZLD)化(※)の需要増加
(※)Zero Liquid Discharge |
・海水淡水化用膜(RO/FO膜等)(※)の販売拡大 ・RO/FO膜等の省エネルギー/高耐久性化開発 ・高効率濃縮用膜(BC膜)(※)のシステム開発 ・RO/FO/BC膜等の生産/品質管理体制の強化 ・三菱商事の海外ネットワークを生かした「東洋紡エムシー株式会社」による販売力の強化 (※)Reverse Osmosis, Forward Osmosis, Brine Concentration |
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長期 |
気温上昇に伴う感染症対策(予防・治療)の需要増加 |
・食品パッケージ関連製品の需要拡大 ・感染症関連製品、技術の研究開発促進 |
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(ニ)特に重要であると認識したリスクと機会
<重要リスク1:水害(洪水・高潮等)による建物・設備への被害リスク>
当社グループの主力工場である、敦賀・岩国・犬山工場はいずれも河川や沿岸付近にあり、かつ低地にあることから水害リスクを有しています。気候変動が進行する場合、海面上昇や降雨パターンの変化により、水害リスクはさらに高まると想定しています。2030年代における水害による資産減少額(建物および装置等の被害額)を簿価より試算した結果、当該3工場の合計金額は最大で約650億円となりました。なお、当該3工場の水害による資産減少額は、当該3工場の建物や装置等の簿価に国土交通省が公表している水害による被害率(※)を乗じて、概算しています。
(※)国土交通省『治水経済調査マニュアル(案)』(令和6年4月)
(リスクを低減するための施策)
当年度においては、新たに「水害対策ガイドライン」を制定し、当社グループ生産拠点における水害対策に関する基本方針を明確化しました。新規計画の生産設備や動力設備等への水害対策(高台設置/かさ上げ等)をはじめ、既存設備への防水扉や囲い塀の追加設置など優先順位をつけ順次実施しています。
(シナリオ分析に使用した主なパラメータ)
・東アジアにおける海面上昇幅 (「RCP8.5」,IPCC AR5)
<重要リスク2:カーボンプライシングの導入>
2030年度のScope1,2は、2020年度(実績90万トン-CO2)を基準とした成り行き(BAU)(※)シナリオにおいて、売上拡大に伴い約130万トン-CO2に増加します。BAUシナリオにおいて2030年度の炭素価格単価を1.5万円/トン-CO2と想定した場合の年間コストは約200億円となります。
(※)Business As Usualの略。ここでは特段のGHG排出削減対策を行わなかった場合を指します。
(リスクを低減するための施策とその費用)
当社グループは、Scope1,2の増加を気候関連の重要リスクと捉え、2030年度までの脱炭素社会に向けた移行計画(「カーボンニュートラルへのロードマップ」)を含む「サステナブル・ビジョン2030」を2022年度に公表しました。このロードマップでは、エネルギー削減・省エネルギー化(生産効率向上含む)、燃料転換、再生可能エネルギー導入を含むエネルギーの最適化等により2030年度のScope1,2を65.5万トン-CO2以下に低減することを目標としています。この場合のカーボンプライシングによる年間コストは、約100億円となり、BAUシナリオと比較し、約100億円のコスト削減効果があります。
このカーボンニュートラルへのロードマップに沿った2025年までの環境関連の累積投資額は、安全・防災・環境投資額の2022~25年度累計見通し170億円に含まれます。
(シナリオ分析に使用した主なパラメータ)
・炭素価格単価(Net Zero Emissions by 2050 Scenario, IEA WEO 2024)
<重要リスク3:石油由来資源の削減や代替化する要請の高まり>および
<重要機会1:低炭素/脱炭素型素材や製品の需要増加>
当社グループの主力事業であるフィルム事業はグループ全体の売上高の4割程度を占めます。また、現状のフィルム事業の売上高のうち、大部分が石油由来資源に依存したものです。今後の脱炭素に向けた社会変化(移行)の中で、お客さまを含む社会から石油由来資源の使用量削減や代替化の要請が高まることが予想され、気候関連の重要リスクとして認識しています。また、同時に低炭素/脱炭素型素材や製品の需要は増加し、事業機会が存在すると認識しています。
(リスクを低減する/機会を実現するための施策とその費用)
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、石油由来資源の使用量低減につながる技術や取組み(※)をグリーン化と定義し、2030年度にフィルム製品の60%でグリーン化を実現することを目標に設定しました。当年度においてその比率は14%となりました。
当年度においては、新開発のシュリンクラベル用PET フィルム“ReCrysta”が、国際的なリサイクル性能に関する認証を取得しました。今後、東南アジアを中心に、PETのリサイクル拡大に貢献します。
石油由来資源の使用量を減らすフィルム製品は、低炭素/脱炭素型製品でもあり、フィルム製品のグリーン化を推進することで、リスクの低減と共に、事業機会の獲得・拡大を図ります。フィルム事業の2030年度の目標売上高である約2,200億円のうち、約1,300億円が、当機会の獲得・拡大によるものです。
このフィルム製品のグリーン化を実現するための当年度の費用は、グリーン化フィルムに関する研究開発投資額であり、フィルムセグメントの研究開発費である44億円に含まれます。
(※)バイオマス原料を用いたフィルムの開発、薄型軽量素材のフィルム開発(高強度化)、使用後のフィルムのリサイクルを容易にするための環境配慮設計(モノマテリアル化)、リサイクル原料を使用したフィルム開発およびリサイクル化自体の技術開発
<重要機会2:水資源の希少化による様々な高度水処理の需要の高まり>
気候変動の進行により、全世界で水不足や干ばつの発生リスクが高まると認識しています。今後、多くの地域で工業用水だけでなく生活用水の確保にも課題が生じ、淡水や淡水のリサイクル需要がますます高まると予測しています。
当社グループは、1970年代に紡糸技術を活用して開発されたRO膜により海水淡水化事業に進出しました。RO膜はその素材特性により、塩素殺菌に優れた耐久性があります。特に閉鎖性海域などの微生物が増殖しやすい海水での海水淡水化に強みがあり、中東湾岸諸国での安定的な淡水の供給に貢献しています。
また、この技術を応用して、高効率に溶液を濃縮するBC膜を開発・販売しています。当年度においては、中国バッテリーリサイクル大手のリサイクル工場において、使用済みリチウムイオンバッテリーからリチウムを回収する工程に採用されました。この他、塩湖かん水からのリチウム濃縮用途、工場排水の排水処理・リサイクルや無排水(ZLD)化などで売上拡大を見込んでいます。
(機会を実現するための施策とその費用)
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、2030年度に、膜による海水淡水化で1,000万人分の水道水相当量を造水する目標を設定し、2024年度時点で、その造水量は520万人分となりました。今後も、三菱商事との合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」でのソリューション提供力の強化により、社会課題の解決を通じた事業機会の獲得・拡大を図ります。
これらの目標の実現、事業機会獲得のための当年度の費用は、水処理膜に関する研究開発投資額であり、環境・機能材セグメントの研究開発費である38億円に含まれます。
<重要機会3:温室効果ガス排出削減貢献につながる製品の需要拡大>
当社グループでは、従来技術からの置き換えによるGHGの削減貢献に寄与する製品・設備・ソリューションを数多く有しています。蓄電池、製薬、印刷等の工場で発生する揮発性有機化合物(VOC)を省エネルギーで除去し、有機溶剤の回収・再利用を可能とする装置(VOC回収装置)もその一つです。当社グループでは、1970年代からVOCの吸着材である活性炭素繊維“Kフィルター”と、それを用いたVOC回収装置を開発・販売しています。最新型のVOC回収装置では、加熱した窒素等を用いてVOCを脱着する方式を採用し、さらに窒素の循環使用を可能にしています。この装置は、非常にコンパクトで運転エネルギーが少なく、不純物の少ない高品質の有機溶剤の回収が可能です。脱炭素社会実現の観点から、VOCの燃焼方式から窒素脱着式への置き換え需要が高まっており、従来技術である燃焼方式と比較し、GHG削減効果が高いことが評価されています。
将来的には、次世代電池である全固体電池生産工場での用途展開も進めます。さらに、GHGの削減貢献に寄与するソリューションを積極的に展開していきます。一方、半導体産業では、2000年代からVОC濃縮装置“ハニローター”を用いた装置システムの導入実績があり、昨今の半導体工場の日本国内回帰においても、その性能や実績が評価され採用が進んでいます。
(機会を実現するための施策とその費用)
2023年から東洋紡と三菱商事による機能素材分野における合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」の事業を開始しています。三菱商事の持つ海外拠点やエンドユーザーとの接点を活かし、メガトレンドの先取りや海外展開、ソリューション提供力強化を行います。当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、蓄電池工場向けのVOC回収装置による2030年度の処理風量目標を70億Nm3/年としました。2024年度時点では、EV化減速の影響を受けてその処理風量は、54億Nm3/年にとどまっていますが、今後も、社会課題の解決を通じた事業機会の獲得・拡大を図ります。
この目標を実現するための当年度の費用は、VOC回収装置に関する研究開発投資額であり、環境・機能材セグメントの研究開発費である38億円に含まれます。
③ リスク管理
当社グループは、グループ全体の気候変動課題を含むリスクを一元的に管理する「リスクマネジメント委員会」を設置しています。本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括するほか、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、PDCAサイクルを回すことにより、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用、およびリスク管理体制の強化に努めています。
「
④ 指標と目標
当社グループは、気候変動に対する目標を設定し、それぞれの施策を進めています。Scope1,2とScope3に対する目標はパリ協定が求める水準としており、2022年12月にSBTイニシアチブにより科学的根拠に基づいた目標(Science-based targets)として認定されました。
売上高が前年度比1.9%増加する中、2024年度のScope1,2は78万トン-CO2となりました(前年度実績83万トン-CO2、前年度比約6%削減)。2023年10月に岩国事業所の自家発電所をリニューアルし、燃料を石炭からLNG等に転換したことなどによりScope1の大幅な削減につながりました。
一方、Scope3は当社グループのVOC処理装置の販売に起因し、カテゴリ11(販売した製品の使用に伴う排出)が増加傾向にあります。同装置への新技術や省エネ技術の導入を進めており、ユーティリティ使用量の抑制・再利用、省エネルギー化等、GHG排出量の削減を進めています。なお、当社グループのVOC処理装置は、お客さま(蓄電池、製薬、印刷等)の工場で発生するVOCを省エネルギーで処理するとともに、一部では有機溶剤の回収・再利用も可能です。GHG排出量の削減だけでなく、環境負荷低減にも貢献しています。
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カテゴリ |
指標 |
目標 |
主な施策 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
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GHG |
GHG排出量 |
Scope1,2 |
2030年度: 27%削減(SBT) (基準年度:2020年度) ※2013年度比:46%削減に相当 |
・エネルギー削減・省エネルギー化、生産効率向上、燃料転換、再生可能エネルギー導入等 |
2020年度比 8%削減 ( |
2020年度比 13%削減 ( |
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2050年度: ネットゼロ |
・カーボンフリー燃料導入、再生可能エネルギー調達、生産プロセス革新等 |
(注1) |
(注1) |
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Scope3 (カテゴリ1と11) |
2030年度: 12.5%削減(SBT) (基準年度: 2020年度) |
・カテゴリ1(※): 原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 (※)購入した原材料・サービスに関連する活動(製造など)に伴う排出 ・カテゴリ11(※): VOC回収装置の省エネルギー化等 (※)販売した製品の使用に伴う排出 |
2020年度比 107%増加 (
(注2) |
2020年度比 109%増加 (
(注2) |
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気候関連の機会 |
フィルム製品のグリーン化比率 (移行リスクの低減も兼ねる指標として設定) |
2030年度: 60%以上 |
・マテリアル/ケミカルリサイクルの推進、バイオマス原料の開発と採用増、フィルムの減容化等 |
13% |
14% |
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膜による海水淡水化 |
2030年度: 1,000万人分の水道水相当量 |
・海水淡水化用膜(RO/FO膜等)の販売拡大 ・RO/FO膜等の省エネルギー化/高耐久性化開発 ・RO/FO膜等の生産/品質管理体制の強化 ・インド国内でのRO膜の販売開始 |
520万人分 |
520万人分 |
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VOC回収装置の処理風量(※)
(※)これまでに販売し稼働している装置による処理風量 |
2030年度: 70億Nm3/年 |
・お客さまのGHG削減貢献視点での営業活動の強化(燃焼式からの置き換え) ・合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」による営業体制の強化 ・装置の更なる小型化、省エネルギー化など、新技術の採用 ・印刷、フイルム・シール等の加工業界など、蓄電池分野以外への販売拡大 |
60億Nm3/年 |
54億Nm3/年 |
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カテゴリ |
主な施策、2024年度実績 |
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環境関連投資 |
・2022-25年度累計見通し:170億円(安全・防災・環境投資額の合計) ・施策:自家発電設備の低炭素化、再生可能エネルギー設備の導入等 ・2024年度実績:岩国事業所のLNG自家火力発電所の本格稼働(脱石炭)、犬山工場への太陽光発電設備の追加導入、Thailandの在外子会社 TOYOBO SAHA SAFETY WEAVE CO., LTD.本社工場への太陽光発電設備の新規導入 |
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インターナルカーボンプライシング |
・2022年度に制度導入し運用中 社内炭素価格設定 10,000円/トン-CO2 ・CO2排出量の増減を伴う設備投資、開発設備への投資判断の拡大 |
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報酬 |
役員報酬(インセンティブ)に反映させる非財務指標の評価項目に、GHG排出量の削減を気候変動対応関係指標として追加することを決定(2024年度実績に基づき支給される2025年7月度以降の報酬から適用)。 |
(注)1.2050年度までにネットゼロにすることをめざしています。なお、2023年度と2024年度の再生可能エネルギーによる発電量はそれぞれ896MWh、1,487MWhです。
2.それぞれ直前年度(2022年度および2023年度)の実績です。
2024年度の実績については、2025年8月頃に当社ウェブサイトの統合報告書にて公表予定です。
(https://www.toyobo.co.jp/sustainability/report/)
(3)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社グループは、「現場が主役」の考え方のもと、“人材マネジメント方針”に基づき、経営方針・事業戦略の実現に向けた人事・労務施策を展開し、企業価値の向上をめざしています。
人材マネジメントに関する実行責任者は、人事部門を統括する役員(取締役常務執行役員)が選任されています。当社では、人事部門が主体となって、各事業所やグループ会社の人事部門責任者と定期的に情報交換・議論の場を設け、人材マネジメント関連の施策立案・実行につなげています。
① 人材マネジメント方針
企業理念体系「TOYOBO PVVs」を根本とした経営方針・事業戦略を実現するためには、「人」こそが最も重要で大切な経営資本であり、「人」=従業員が誇りとやりがいを持ち活躍する“人材マネジメント”の仕組み構築が必要不可欠です。
具体的には、「TOYOBO PVVs」を体現するという“かえない”ものを柱にしつつ、経営方針や事業戦略の変化に応じて能力や専門性を“かえ続ける”人材活躍サイクルを実現します。同時に従業員が安心して働ける環境の土台を構築していきます。
これらの実現が、従業員の幸せと当社グループの持続的成長につながると確信しています。
② 人材の育成に関する課題と戦略
(イ)”かえない“もの をめざす人材育成
<めざす人材・育成方針>
企業理念体系である「TOYOBO PVVs」を体現できる人材として、「Values:大切にすること」で示す「変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくる」ことができ、そして、「TOYOBO Spirit~9つの約束(※)」を実践できる人材の育成と組織開発をしていきます。
(※)9つの約束:東洋紡グループが大切にすることを、「挑戦」「信頼」「協働」を3つの柱として定めた日常の考え方や行動指針
挑戦(①先取 ②創造 ③遂行)
信頼(④安全へのこだわり ⑤お客さま満足 ⑥現場・現物・現実)
協働(⑦双方向の意思疎通 ⑧多様性の確保・活用 ⑨やってみる機会の提供)
<課題>
企業理念体系は、2019年に策定されて以降、当社グループ内に理解が浸透しつつありますが、行動として実践できる人材育成と組織開発を継続していくことが必要です。
<戦略>
「TOYOBO PVVs」を体現する人材・組織を創出し続けるために、新卒新入社員研修、キャリア入社者研修、グループ会社管理者研修、管理職昇格者研修など各種研修の機会に「TOYOBO PVVs」に関する講義と対話を通じ、引き続き浸透を図っています。また、人事考課における行動評価に「TOYOBO Spirit~9つの約束」を含めることで、従業員の行動の変容と定着を促進しています。
〇指標:従業員一人当たりの教育投資額(教育時間)
(ロ)“かえ続ける”もの をめざす人材育成
<めざす人材・育成方針>
経営方針や事業戦略の変化に応じて能力や専門性を高める施策を充実させていきます。
次世代経営人材として、自ら率先して「変化をつくる」人材を育成していくとともに、当社グループが地球全体で事業活動を進めていくための人材を育成していきます。
<課題>
当社グループでは、各部門・各事業所・工場独自の教育体系を持ち、技術伝承・知識習得を図っていましたが、一部は重複や不足する内容がありました。
<戦略>
■全社共通教育
当社グループにとって必要な共通知識を階層別・職種別・目的別に定め、全社の教育体系のもと、運営しています。
■技術者教育
技術者育成を担う技術総括部が中心となり、各事業所で実施されている研修体系を検証し、各部門に共通する技術を学ぶ技術者教育体系を整備し、モノづくり人材育成を進めています。
■専門技術・知識
部門で異なる専門技術・知識は、各部門で教育しています。さらには、必要な資格の取得を昇格要件と連携することで、それぞれの部門・等級に求められる能力や専門性を確保し、高めています。
■次世代経営人材育成
選抜した人材に対して、経営幹部育成のための社内外の研修を計画しています。当社グループでは、次世代経営人材の育成施策を討議する「人材会議」を運用しています。主にマネジメントポストの後継者を討議する「全社人材会議」と、主に業務専門性の高いポジションの後継者討議をする「部門人材会議」の二つの会議を連携させることで、人材の発掘と育成を実践し、より効果を高めていきます。
■グローバル人材育成
当社では、海外マーケット開拓などができる海外要員を確保し、教育・育成を計画的に実施することを目的として、国内従業員を対象に、海外グループ会社で行う「短期海外業務研修」を2011年から実施してきました。参加者は累計100名に到達し、若手、中堅の従業員にとってグローバルビジネス参画への強い動機付けとなり、キャリアアップの大きな機会ともなっていましたが、業務としての海外派遣機会が増えてきたこともあり、2025年度以降は事業毎の海外派遣の中で実現していく予定です。また、海外グループ会社の現地幹部候補を対象として、日本で教育を受ける「ナショナルスタッフ研修」を実施しており、これまで累計100名を超えるスタッフが来日し、受講しています。
■能力開発支援
2022年7月からスタートした新人事制度では、個人の能力向上につなげるために、等級毎の期待能力を明示し、年1回実施する人事考課時に行うキャリア開発シートの作成と上司との面談を通じ、将来のキャリアや能力開発を考える機会を設けています。そのうえで、職務上の期待や自身のキャリアに基づいて、自身が必要な知識・スキルを学ぶことができるよう、公募型の研修や自己啓発e-learning等のメニューを整え、自律的な学び・能力開発を支援しています。
〇指標:海外基幹人材の日本での研修受講者数、従業員一人当たりの教育投資額(教育時間)
③ 社内環境に関する課題と戦略
<めざす社内環境・整備方針>
安全・安心な職場環境を構築したうえで、従業員が「成長」「誇り」「やりがい」(=「働きがい」)を感じることができる職場を実現していくことが、従業員の幸せと当社グループの持続的成長につながると考えています。
・安全・安心な職場の構築
従業員の心身の健康保持・増進を進め、多様な人材それぞれが働きやすい職場環境や各種制度を備えた当社グループをめざしています。
・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
東洋紡グループダイバーシティ推進方針を定め、Diversity(多様性:ダイバーシティ)、Equity (エクイティ:公平性)、Inclusion (インクルージョン:一体性)という3つの要素を柱としたダイバーシティを推進します。
・新人事制度の定着
「働きがい」を感じることができる新人事制度を定着させて、人材活躍のサイクルが機能することが、人的資本の最大化につながり、当社グループの経営方針・事業戦略の実現に貢献すると考えています。
<課題>
当社は、従来からダイバーシティ推進に取り組んできましたが、管理職に占める女性比率と男性の育児休業取得率の向上をめざして目標を定め、施策を展開しています。
<戦略>
■ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
当社グループでは、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちの中にあって、互いを認め合い、協力して目標に向けた努力をすることが、個人と組織の成長につながると理解しています。異なる意見、多様な人材の存在価値を認め合い、高い目標へと力を合わせて努力することを大切にしています。
女性の活躍推進のため、人事・労務総括部にダイバーシティ推進グループを設置し、2015年から女性の活躍推進活動に取り組んできました。上司向けセミナー、女性リーダー育成セミナー、女性のキャリア開発支援セミナーなどを継続して実施し、従業員の意識改革を図っています。女性管理職(課長職以上)比率の数値目標を設定し、当該目標の達成に向け、新卒採用の女性比率を40%とする取組みを推進しています。また、社外のイニシアチブへも積極的に参画し、活動しています。こうした活動を通じ、当社(東洋紡㈱)は、女性活躍推進に関する「えるぼし(2段階目)」認定を2021年12月に取得しています。
また、育児支援として総合研究所内(滋賀県大津市)に企業内保育園「おーきっずⓇ」を開設しています。育児休業からの早期復帰、計画的な復帰を可能にするだけでなく、安心して出産できる環境の整備にもつながっています。
障がい者雇用率の向上については、労働環境の問題点の洗い出しを行い、整備につなげています。具体的な整備事案として、敦賀事業所、犬山工場の事務所をバリアフリー化し、その他の事業所についても順次バリアフリーを意識した建物改良、積極的な障がい者の採用を進めています。
ジェンダーマイノリティを含め多様な人材が働きやすい職場づくりを推進するため、全従業員向けのLGBTQ+相談窓口を設置しています。実務担当者向けの研修を実施し、ガイドラインなども整え、従業員の理解が深まるような啓発活動を展開し、それらの活動が認められ「PRIDE指標2024」において最高位であるゴールドを取得しました。
〇指標:管理職に占める女性比率
■健康経営
当社グループは、従業員の健康に配慮した働きやすい職場づくりを行うため、従業員の心身の健康保持・増進に向けて取り組んでいます。健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」に着手し、従業員の健康保持・増進により、生産性の向上や組織の活性化を図り、業績向上に寄与する取組みを推進しています。健康管理最高責任者(CHO)である人事部門を統括する役員(取締役常務執行役員)のもと、労務部、産業医・看護職、健康保険組合が連携する推進体制を構築し、「TOYOBO健康経営宣言」における以下の重点施策に取り組んでいます。
・従業員の健康意識向上(啓発・教育)への取組み
・従業員の生活習慣改善(運動・食事・禁煙支援など)への取組み
・メンタルヘルス対策の強化(高ストレス従業員・職場への改善対応など)への取組み
当社では、2022年度以降、受動喫煙やニコチン依存について解説する禁煙セミナーやオンライン禁煙外来の案内、女性特有の健康課題に対する理解促進を目的としたセミナーを開催するなど、従業員に対する啓発活動を強化しています。健康診断は、生活習慣病やがんなど、法定項目以上に充実した検査を実施しています。がん検診については、健康保険組合と協働で希望者(本人・被扶養者)に実施し、家族も含めた疾病の早期発見・早期治療に努めています。診療所では専門医療機関への紹介など、健康に関する相談にも対応し、従業員の健康保持・増進を支援しています。
また、年1回、管理職向けにメンタルヘルスの研修を実施し、啓発・教育に取り組んでいます。全従業員を対象とするストレスチェックの結果を基に、高ストレス従業員への個別対応を行うとともに、集団分析結果を各職場の管理職向けにフィードバックするなどの対応に取り組んでいます。
グローバル展開の加速に伴って海外赴任者が年々増加しています。海外赴任者には赴任前に人間ドック受診・予防接種の義務付け、現地での医療体制支援および渡航先情報の提供などの支援を行っています。
当社(東洋紡㈱)は、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人認定制度」において、2021年~2025年まで5年連続「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に、その内2023年、24年の2年間は「健康経営優良法人(大規模法人部門)ホワイト500」に認定されました。引き続き、従業員の健康保持・増進に積極的に取り組むなど、健康経営をより一層強化・推進することで、企業価値のさらなる向上をめざします。
〇指標:健康経営ホワイト500認定
■多彩な人材が働きやすい職場環境と制度の整備
従業員が意識を変えて効率的に働き、仕事と私生活の充実を図ることができるよう、「働き方改革」に取り組むとともに、育児・介護、フレックスタイム、テレワークなどの制度を整備しています。当社は、法定基準を上回る内容の「育児短時間勤務」「介護休職」などの制度を導入している他、5日間の「育児休職」制度を設けています。子どもが生まれた男性従業員に個別に制度の案内を行い、上司からも取得を勧めることで、男性の育児休業取得を促しています。「男性の育児休業取得は当たり前」となるよう、引き続き奨励していきます。こうした活動を通じ、当社(東洋紡㈱)は、高い水準で子育て支援に取り組む企業として、「プラチナくるみん」認定を取得しています。
また、60歳で定年退職した従業員で、本人が希望し、通常勤務が可能と認められた者を再雇用するシニア社員制度を導入し、雇用を推進しています。再雇用されたシニア社員は、若手の育成や技術伝承の担い手として活躍しています。
〇指標:男性の育児休業取得率、年休取得率
■超過重労働による健康障害撲滅
当社では、健康障害の要因となり得る長時間労働の常態化を防ぐため、各事業所において労使で一定のラインを設定し、長時間労働につながる動きをチェックし、過度な労働時間の削減を進めています。また、各事業所で労使が協力し「定時にカエルデー」を設定して定時帰宅を促し、自分や家族のために時間を使うよう働きかけています。なお、3ヶ月連続で一定の基準を超えた場合、経営層に、状況および対応策を報告することとしています。
〇指標:過重労働者比率(2024年度以降は長時間労働による健康障害防止に重点化を図るため、従来の指標「年間法定時間外労働削減」から変更しています)
■新人事制度の定着
2022年7月から運用がスタートした新人事制度においては、従業員全員が「成長」「誇り」「やりがい」を感じることができるように、「能力向上を促進・支援」「職責に応じた処遇と評価」「マネジメント力の強化」「多様な専門人材の活躍推進」という四つの方針を掲げて実行しています。
■エンゲージメントサーベイ
上記各種戦略・施策への取組みの結果が、最終的に社員エンゲージメントの向上につながるものと考えています。2021年度から、全役員・全従業員を対象とする「組織風土・働きがい調査」を開始しました。同調査によって定期的に従業員エンゲージメントの状況を把握し、従業員が誇りとやりがいを持って主体的に業務に取り組める環境を整えていきます。
〇指標:従業員エンゲージメントスコア肯定的回答率
※本稿において「当社グループ」と記載していない箇所は、特段の注記がない箇所を除き、東洋紡㈱、および主要な子会社である東洋紡エムシー㈱、東洋紡STC㈱における記載です。各国の法規制・慣習を含む地域の特性および事業形態・事業規模、それらを背景とした人事制度も異なることから連結会社ベースでの記載が困難であり、東洋紡㈱と同一の人事制度を適用している主要な子会社を対象に施策を展開しています。
④ 指標と目標
上記方針に関する指標の内容、および当該指標による目標と当期の実績は以下のとおりです。
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戦略項目 |
指標(KPI)(注1) |
目標(注2) |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
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人材育成 |
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7人 |
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従業員一人当たりの教育投資額(教育時間) |
50千円/年 (21時間) |
50千円/年 (18.22時間) |
44千円/年 (14.35時間) |
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社内環境整備 (土台の構築) |
管理職に占める 女性比率 |
5.0%以上 |
5.5% |
5.6% |
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年休取得率 |
75%以上 |
83.2% |
79.0% |
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過重労働者比率 (3ヶ月連続で一定の基準を超えた人数/対象者数) |
前年度比改善 |
- (注3) |
0.26 % |
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男性の育児休業取得率 |
取得率80%以上、 平均取得日数14日 以上(2020年度比 20%増加) |
取得率 97.7% 平均取得日数19.3日 |
取得率 86.3% 平均取得日数28.2日 |
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健康経営ホワイト500 認定 |
取得・維持 |
健康経営優良法人2024(大規模法人部門)ホワイト500 認定 |
健康経営優良法人2025(大規模法人部門) 認定 |
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従業員エンゲージメントスコア肯定的回答率 ①日常の業務遂行に関する項目 ②多様な意見や考え方の尊重に関する項目 |
スコアの向上 (前年度比) |
① 38% ② 50% (注4) |
① 42% ② 53% |
(注)1.「海外基幹人材の日本での研修受講者数」は全連結会社における目標と実績です。その他の指標については、東洋紡㈱、および主要な子会社である東洋紡エムシー㈱、東洋紡STC㈱における目標と実績です。各国の法規制・慣習を含む地域の特性および事業形態・事業規模、それらを背景とした人事制度も異なることから連結会社ベースでの記載が困難であり、東洋紡㈱と同一の人事制度を適用している主要な子会社を対象として各種指標と目標を設定し、施策を展開しています。
2.
3.2024年度以降は長時間労働による健康障害防止に重点化を図るため、従来の指標「年間法定時間外労働削減」から「過重労働者比率」に変更しています。
4.2022年度以降隔年実施により2023年度は未実施のため、2022年度の実績を参考として記載しています。
当社グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、グループ全体のリスクを一元的に管理する「リスクマネジメント委員会」を2021年に設置しました。本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括する他、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、PDCAサイクルを回すことにより、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用及び、リスク管理体制の強化に努めています。
サステナビリティ推進体制
当社グループでは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、従業員が誇りとやりがいをもって働き続けられる会社、持続的に成長できるサステナブルな会社をめざし、2025中期経営計画を策定しています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2025中期経営計画では2025年度を最終年度とし、当社グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に当社グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学リスクの影響については不確定要素が多く、原燃料価格の高止まり、急激な為替相場の変動など事業環境の不透明な状況が続くことが見込まれます。
加えて、以下の(1)から(15)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているものの、それらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2025中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>
(1)災害・事故・感染症の発生
当社グループは、国内外の各地で生産活動等の企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場や事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限り災害・事故の発生や感染症の拡大を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および感染症の世界的な流行、原子力発電所の事故等が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害等が発生した場合など、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2018年9月発生の敦賀事業所第2火災事故、2020年9月発生の犬山工場火災事故を踏まえ、安全文化の醸成と安全基盤の整備の二側面から再発防止に取り組んでいます。
当社グループは、「安全衛生の確保は企業活動の大前提」とし、当社グループ従業員や協力会社も対象の「東洋紡グループ安全衛生基本方針」を定め、「自分を守る、仲間を守る、気付きを声に出す」をスローガンに掲げ、安全な職場環境づくりに努めています。経営の最重要課題である安全と保安防災の取組みを着実に進めるため、社長直轄の組織として安全防災本部を設置しています。同組織は、各分野の専門家を委員とする安全防災会議を主催し、安全・防災活動の有効性を評価するとともに全社の方針案を策定し、経営会議・サステナビリティ委員会で方針決定をします。進捗については、取締役会に適宜報告します。
また、同組織が中心となって、当社の各事業所・工場およびグループ会社に赴いて安全環境アセスメントを実施し、現地の活動を点検しています。特に火災・爆発リスクについては、第三者の専門家により現地の管理状況を定期的に点検しています。
当社グループは、労働環境のリスク低減のため、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)の認証取得を進めています。2025年3月末時点で、敦賀事業所、岩国事業所、宇都宮工場の3拠点が取得しており、犬山工場についても2025年4月10日に取得しています。
「安全」「防災」「環境」に関する東洋紡グループ体制
(2)政治・経済情勢の悪化
当社グループは、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。米国通商政策の変更および各国の金融政策の見直しや、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学的情勢の変動によって、当社グループおよび仕入先の生産拠点や主要市場等において深刻な政治的混乱や景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売が縮小する可能性があります。また、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
販売及び委託加工に際しては、当社グループは与信取引を行っており、取引先の信用悪化や経営破綻などによる与信リスクを負っています。当社グループでは、売上債権等の貸倒れによる損失に備えるため、与信管理規定のもと、取引先別の信用度に見合う取引限度額を設定し管理を行うとともに、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握することに努めています。また、過去の貸倒実績率等に基づき貸倒引当金を計上することにより、与信リスクの低減を図っています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)訴訟等
当連結会計年度末において、当社グループの業績に重要な影響を及ぼすことが明らかな訴訟等の事案はありません。
当社グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。訴訟等において、当社グループの主張が最終的に認められない場合には、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<中長期的なリスク>
(4)原材料の購入
当社グループの、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品は、石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などが主要な原材料です。「(1)災害・事故・感染症の発生」および「(2)政治・経済情勢の悪化」にて記載した、自然災害、事故、感染症や、経営破綻、事業撤退、縮小および深刻なサプライチェーンの混乱などが取引先において発生した場合、必要量の原材料が確保できなくなる可能性があります。また、原油価格や為替の変動、当該原材料等の急激な需給バランスの変動などにより、購入価格が高騰し、当社グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループでは、販売価格への転嫁や製造コストの低減に努めているほか、適正な取引方針を確立し、仕入先の分散による複数社購買等による原材料調達手段の多様化や、植物由来原料やリサイクル原料の使用を進めるグリーン化の取組みなど、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。また、法令順守、公正な取引、環境配慮、人権尊重などに対応する「CSR調達ガイドライン」および環境配慮のための「グリーン調達ガイドライン」を制定しています。CSR調達ガイドラインは、急速にグローバル化が進む社会情勢に対応するため、定期的に見直し、更新することで、特に人権尊重、環境配慮を強化しています。お取引先さまの選定にあたって人権に関する事項(児童労働・強制労働や、あらゆる属性の人々への差別を禁止するなど)を考慮することを明記し、本ガイドラインをご理解いただくことを取引可否の判断基準の一つとして設定し、本ガイドラインに定める事項の順守を主要なお取引先さまを含むビジネス・パートナーに周知しています。
(5)製品の欠陥等
当社グループは、製品の欠陥等の発生リスクを未然に防止するため、所定の品質管理規定に基づいて、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不具合が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などにおいて何らかの原因により製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながるリスクがあります。当社グループは、製造物責任賠償保険に加入しているものの、最終的に負担する損害額は保険によって十分カバーされないリスクがあります。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、PL(Product Liability:製造物責任)およびQA(Quality Assurance:品質保証)を統括する品質保証本部会を設けています。品質保証本部会は品質を統括する役員、各事業本部および品質保証本部の品質を統括する部長で構成され毎月開催しています。また、各事業本部の部長クラスを推進委員としたPL/QA推進委員会を年6回開催しました。
また、事業推進から独立した品質保証本部および他部門の品質保証担当者によるPL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社のPS(Product Safety:製品安全)活動を客観的に確認し、改善の機会としています。さらに、PSとPLのリスク度合いを判定する基準を設け、この基準に基づき、製品開発から販売までの各段階で審査を行い、リスクに事前に対応することで、お客さま等に掛かるリスクの低減に努めています。
なお、米国の第三者安全科学機関であるUL Solutions(以下「UL」といいます)によって認証を受けているエンジニアリングプラスチック製品の一部の品番について、認証に関する確認試験時に、顧客に販売している製品と異なる組成のサンプルを提出していたことや、UL認証を取得している製品を製造する登録を受けていない工場で製造を行っていること等により、2020年10月以降、一部の品番についてUL認証登録を取り消されましたが、2025年3月末時点で2製品を残してUL認証を再取得しています。未取得の2製品についてもお客さまと引き続き相談させて頂きながら再取得を進めています。
(6)人材の確保
当社グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。
当社グループでは、成長戦略実現への寄与をめざし、次世代経営人材の育成や主体的に学び成長できる環境づくりに力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動、障がい者雇用、LGBTQ+に向けた施策にも積極的に取り組んでいます。
なお、当社グループの人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
(7)気候変動
気候変動の進行に伴う物理的リスクとして、台風や集中豪雨等の自然災害による、一時的な事業活動停止等の可能性があります。また、脱炭素社会への移行リスクとして、カーボンプライシングの導入によるGHG排出量や化石燃料の使用に伴うコスト増加等の可能性があります。当社グループはTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)提言にのっとって、パリ協定に基づく気候変動シナリオを前提とした将来リスクと事業機会を分析・整理しています。それらリスクと機会の影響と財務インパクトを特定した上で、対応策とそれに基づく指標・目標を設定し、経営戦略の強靭性(レジリエンス)向上を図ります。なお、当該リスクについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
(8)環境負荷
当社グループは、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品の生産等を通じて多くの化学物質を取り扱っており、水質汚濁、大気汚染、土壌汚染や化学物質管理に関する法令や規制の適用を受けています。これらの法令や規制がさらに強化されることで、対応コストの上昇や、収益機会の減退による当社グループの売上減少など、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクを最小限にするため、有害物質の使用量・排出量は極小化できるよう製造工程の改善に努めるとともに、流出状況をモニタリングしています。また、管理体制を整備し、「東洋紡グループ化学物質管理区分」を定め、取り扱う化学物質を分類し、区分ごとに管理内容を定め、効率的な使用や代替化を進めています。
(9)情報セキュリティ
当社グループは、DXとデータの利活用によるビジネスイノベーション加速・推進に取り組み、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要な情報資産を管理しています。さらに、世界各国で個人情報・データ保護のための法規制強化が行われており、これらへの対応も求められています。当社グループはこれらの情報資産について様々なセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスや想定を超えるサイバー攻撃、従業員の過誤などが発生した場合、システム障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などが発生する可能性があります。これらにより、社会的信用の低下や多額の費用負担が発生し、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、「情報セキュリティポリシー」を定め、情報セキュリティに関する各種規定を整備し、全情報資産の適切な運用・管理・活用に努めています。
また、代表取締役社長が任命した最高情報セキュリティ責任者(CISO)をリーダーとした情報セキュリティ部会(TOYOBO-CSIRT)を設置し、海外法規制対策、技術的対策の継続的な改善、従業員教育による意識レベル向上、セキュリティ人材の育成、ならびに事故発生時の対応体制の強化に取り組んでいます。
(10)法規制およびコンプライアンス
当社グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を順守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの規制に対し、当社グループおよび取引先において、不順守や違法行為が発生した場合には、当社グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。
また、当社グループでは、コンプライアンス活動の核として企業理念である「順理則裕」を掲げ、コンプライアンスを重視した経営を推進していますが、製品・サービスや労働・安全、サプライチェーン全体におけるコンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの信用低下や行政処分、損害賠償責任が課されることなどにより、多額の損害が生じるおそれがあります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、内部通報制度やコンプライアンスアンケートを通じた不正事案の早期発見、早期是正や未然防止に加え、コンプライアンスを推進するため、具体的に様々な取組みを実施しています。内部通報制度に関しては、海外グループ会社のナショナルスタッフや日本国内で働く外国人労働者や技能実習生などが当社コンプライアンス部門に使いやすい言語で内部通報ができるように、これまでの日本語・英語に加えて多言語で通報できる窓口を設けました。コンプライアンスの推進に関しては、「東洋紡グループ企業行動憲章」に対応した当社グループの全従業員が守るべきルール「東洋紡グループ社員行動基準」を定め、同基準を具体的に分かりやすく解説した「東洋紡グループ コンプライアンスマニュアル」を発行して全社員に配付しています。各職場でのコンプライアンスマニュアルを用いた研修(読み合わせ)などを通して、全従業員に社員行動基準を周知するとともに、海外拠点向けには、グローバル版(英語・中国語)を発行し配布しています。また、各国・地域の法令・慣習に合わせ編集を加えた現地版マニュアルが、海外グループ会社における研修にて活用されています。そのほか、国内グループ会社の管理者層を対象としたコンプライアンス勉強会の実施や、職場で問題となりそうなコンプライアンス違反事例等を元にケーススタディ形式で啓発する「コンプライアンスミニスタディ」を毎月発行するなど、コンプライアンス意識の向上を図っています。
(11)海外での事業活動
当社グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。そのため、地球温暖化による気候変動や世界経済全体の動向に加え、各国の法令・規制や政策等の予期しない改定変更、またはテロ、戦争、政変、疫病やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらリスクに対し、グループ各社での情報収集や、公的機関だけにとどまらず外部コンサルタントからの情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前後で具体的かつ適切に対処できるよう、海外グループ会社ごとに「危機管理マニュアル」を策定しています。また、当社グループ全体でのリスクマネジメント活動の中、国内および海外のグループ会社ごとにリスクアセスメントのミーティングを開き、自然災害・安全防災から情報漏洩・法改正などの各種リスクについて、発生した場合の影響度を網羅的に把握し、改善策につなげています。
さらに、当社グループは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行い、各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても適切に対処しています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
<財務リスク>
(12)為替レートの大幅変動
当社は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的に著しい変動があった場合は、製造リードタイムが比較的長い製品などは業績に対して影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(13)金利の大幅上昇
当社グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、当社グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」および「純有利子負債のEBITDA(営業利益と減価償却費の和)に対する倍率(Net Debt/EBITDA倍率)」を重視しています。当連結会計年度末ではD/Eレシオは1.37倍、Net Debt/EBITDA倍率は6.1倍となりました。
(14)株価の大幅下落
当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、当社の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。当社は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、当社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。当連結会計年度において、当社および当社の子会社は、保有する投資有価証券の一部を売却し、1億円の売却益を計上しました。
(15)固定資産の減損
当社グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度において、当社および一部の子会社が保有する固定資産のうち、休止予定資産や事業用資産について合計19億円の減損損失を計上しました。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(以下、「当年度」といいます。)における当社グループを取り巻く事業環境は、米国では堅調な経済活動が続いたものの、足もとは需要減退の兆しが見られ、先行き不透明感が増してきました。中国では輸出は拡大しましたが、不動産不況や消費低迷の長期化に対する政策の効果は限定的で、景気は足踏み状態が続いています。国内においては、所得環境の改善により個人消費が持ち直したことに加え、インバウンド需要の増加や設備投資の拡大により、景気は緩やかに回復しました。
こうした事業環境のもと、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”、中東向け特化生地は堅調に推移しました。加えて、包装用フィルム事業、不織布マテリアル事業などの要改善事業において、製品価格の改定や生産体制の見直しなどの対策を進めたことにより、収益性が改善しました。
以上の結果、当年度の売上高は4,220億円と前年度比1.9%の増収、営業利益は167億円と前年度比85.1%の増益、経常利益は106億円と前年度比52.1%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は20億円と前年度比18.4%の減益となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
(フィルム)
包装用フィルム事業では、新製品の開発費用などコスト上昇の影響を受けましたが、荷動きが緩やかに回復したことに加え、原燃料価格や物流費の上昇に対する製品価格の改定を進めたことにより、収益性が改善しました。
工業用フィルム事業では、セラミックコンデンサ用離型フィルムはAIサーバー向けなどの販売が拡大した一方で、新機台の立上げ費用が増加しました。液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は強い需要に支えられ、堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比103億円(6.6%)増の1,668億円、営業利益は同42億円(157.4%)増の69億円となりました。
(ライフサイエンス)
バイオ事業では、診断薬用原料酵素は国内外ともに堅調な需要に支えられ、販売が増加しましたが、生産能力増強に伴う費用の増加に加え、一時的な生産性低下の影響も受けました。
メディカル事業では、人工腎臓用中空糸膜の販売が堅調に推移しましたが、新工場の立上げやインフラ関連投資に関する費用が増加しました。
医薬品製造受託事業では、FDAからのWarning Letterが解除されたことに加え、製品価格の改定が進みました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比2億円(0.6%)減の343億円となり、営業利益は同24億円(54.7%)減の20億円となりました。
(環境・機能材)
樹脂・ケミカル事業では、エンジニアリングプラスチックは、製品価格の改定が進んだことに加え、北中米向け自動車用途の販売が拡大しました。水現像型感光性印刷版用途の光機能材料は、中国や東南アジアを中心に販売が増加しました。
環境・ファイバー事業では、環境ソリューションは、リチウムを濃縮回収するためのBC(Brine Concentration)膜装置の販売が寄与しましたが、EV市場減速の影響により、リチウムイオン電池セパレータ製造工程で使用されるVOC回収装置の出荷が減少しました。高機能ファイバーは、海外向け販売が堅調に推移しました。不織布マテリアルは、国内生産体制の見直しが進み、収益性が改善しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比45億円(3.9%)減の1,108億円、営業利益は33億円(70.6%)増の80億円となりました。
(機能繊維・商事)
衣料繊維事業では、中東向け特化生地は、強い需要に牽引され販売が増加したことに加え、為替影響により輸出採算が好転しました。さらに、国内生産拠点の集約などの構造改革が進展しました。
エアバッグ用基布事業では、製品価格の改定が進みました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比24億円(2.5%)増の981億円、営業利益は5億円(前年同期は営業損失10億円)となりました。
(不動産、その他)
不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等の各インフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比2億円(1.6%)減の120億円、営業利益は5億円(15.3%)減の26億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比85億円(39.5%)収入が増加し、301億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費227億円および税金等調整前当期純利益72億円による資金の増加と運転資本の増加による資金の減少50億円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比124億円(21.1%)支出が減少し、464億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出452億円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度22億円(27.0%)収入が増加し、105億円の収入となりました。主な内容は、長期借入れによる収入405億円および社債の発行による収入170億円と、短期借入金の減少による支出154億円、社債の償還による支出150億円、長期借入金の返済による支出133億円および配当金の支払額35億円です。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比59億円減の274億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム |
168,286 |
8.3 |
|
ライフサイエンス |
33,977 |
8.0 |
|
環境・機能材 |
114,920 |
△6.6 |
|
機能繊維・商事 |
99,581 |
3.5 |
|
不動産 |
- |
- |
|
その他(うち製造) |
18,891 |
△14.2 |
|
合計 |
435,656 |
1.8 |
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.外注生産を含んでいます。
3.不動産の生産実績はありません。
(ロ)受注実績
当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム |
166,842 |
6.6 |
|
ライフサイエンス |
34,341 |
△0.6 |
|
環境・機能材 |
110,807 |
△3.9 |
|
機能繊維・商事 |
98,062 |
2.5 |
|
不動産 |
4,147 |
1.9 |
|
その他 |
7,834 |
△3.4 |
|
合計 |
422,032 |
1.9 |
(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
総資産は、前年度末比108億円(1.8%)増の6,178億円となりました。これは主として現金及び預金が減少した一方で、設備投資により有形固定資産が増加したことによります。
負債は、前年度末比89億円(2.3%)増の3,858億円となりました。これは主として短期借入金が減少した一方で、長期借入金が増加したことによります。
純資産は、配当金の支払などにより利益剰余金が減少した一方で、非支配株主持分が増加したことから、前年度末比20億円(0.9%)増の2,320億円となりました。
また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。
|
回次 |
|
第163期 |
第164期 |
第165期 |
第166期 |
第167期 |
|
決算年月 |
|
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
自己資本比率 |
(%) |
37.8 |
37.6 |
32.2 |
32.5 |
31.6 |
|
時価ベースの自己資本比率 |
(%) |
25.8 |
18.8 |
15.6 |
16.4 |
13.4 |
|
自己資本当期純利益率 |
(%) |
2.3 |
6.8 |
△0.3 |
1.3 |
1.0 |
|
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 |
(年) |
5.3 |
11.2 |
29.4 |
11.5 |
8.9 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
(倍) |
28.0 |
14.0 |
5.9 |
16.2 |
14.2 |
|
有利子負債自己資本比率 (D/Eレシオ) |
(倍) |
1.01 |
0.98 |
1.21 |
1.26 |
1.37 |
自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末平均
キャッシュ・フロー対有利子負債 比率 :期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産
当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しています。当連結会計年度末のD/Eレシオは1.37倍となりました。
(ロ)経営成績の分析
2025中期経営計画の三年目にあたる当連結会計年度は、期初において売上高4,350億円、営業利益170億円を計画し事業活動を進めましたが、売上高、営業利益ともに計画に対し未達となりました。
売上高については、液晶偏光子保護フィルムは堅調に推移しましたが、セラミックコンデンサ用離型フィルムの拡大ペースが想定を下回ったことに加え、不織布マテリアル事業における関係会社事業譲渡に伴う売上高減少などにより期初の計画には届きませんでした。
営業利益については、交易条件の改善については期初の計画以上に進捗しましたが、包装用フィルムにおける新機台の立上げ費用を含む新製品開発費用などのコスト上昇や、セラミックコンデンサ用離型フィルムの需要拡大の遅れに加え、バイオ事業における一時的な生産性低下の影響などにより、期初の計画を下回りました。
親会社株主に帰属する当期純利益については、営業利益が当初計画を下回ったほか、為替差損や減損損失を計上したことなどから、20億円に留まりました。この結果、「自己資本当期純利益率(ROE)」は1.0%となりました。
(単位:億円)
|
|
2024年度 (計画(*)) |
2024年度 (実績) |
増 減 (実績-計画) |
|
売上高 |
4,350 |
4,220 |
△130 |
|
営業利益 |
170 |
167 |
△3 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
26 |
20 |
△6 |
(*) 期初において計画した計画値
2024年度の事業環境(当初想定との差異)
|
セグメント |
事業 |
期初想定 |
期初想定との差異 |
|
フィルム |
包装用 |
在庫調整を終え、緩やかに回復へ |
(期初想定のとおり) |
|
工業用 |
液晶偏光子保護フィルムは前年並みの需要 |
(期初想定のとおり) |
|
|
セラミックコンデンサ用離型フィルムは年度後半から需要回復 |
年度を通じて徐々に拡大も想定ペースを下回る |
||
|
ライフサイエンス |
バイオ |
生化学診断薬用酵素は需要堅調 |
(期初想定のとおり) |
|
メディカル |
人工腎臓用中空糸膜は堅調に推移 |
(期初想定のとおり) |
|
|
環境・機能材 |
樹脂・ ケミカル |
自動車生産は堅調に推移 |
北中米向けは堅調も、アジア向けで減速 |
|
電子材料用途の需要回復 |
(期初想定のとおり) |
||
|
環境・ ファイバー |
VOC回収装置の需要堅調 |
EV化減速の影響あり |
|
|
不織布マテリアルの厳しい競争環境は継続 |
(期初想定のとおり) |
||
|
機能繊維・ 商事 |
エアバッグ |
自動車生産は堅調に推移 |
北米向けは堅調も、アジア向けで減速 |
当社グループは足元の業績を受け、2025年度以降の企業価値の向上に取り組みます。具体的なアクションについては「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)2025中期経営計画 ③2025年度以降の取組み」に記載のとおりです。
(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。また、包装用フィルム事業の新機台の立上げ状況を注視しています。
(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
53,043 |
53,043 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
126,027 |
11,684 |
27,419 |
35,847 |
51,077 |
|
リース債務 |
6,799 |
857 |
1,155 |
770 |
4,018 |
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。
当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2025年3月31日現在の債務保証額は、6,769百万円です。
c.財務政策
当社グループは、2025中期経営計画レビューの見通しを実現すべく、安全・防災・環境対応を最優先としつつ、同時に成長事業への積極投資を行っていきます。必要資金に関しては、内部資金または外部調達により資金を調達し、外部調達は、直接金融・間接金融を活用し、D/Eレシオは1.4倍未満、Net Debt/EBITDA倍率は4倍台を目安として管理していきます。
また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています。(借入未実行残高17,500百万円)。
該当事項はありません。
当社グループは2022年の「サステナブル・ビジョン2030」の中で、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」というビジョンを掲げています。「素材+サイエンス」として、自社保有のコア技術のさらなる進化と、オープンイノベーションの考え方のもと、新製品の開発、新事業の創出に注力しました。
当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究開発部門と、中長期的視点から次代を担う新事業・新製品・新技術の創出を図る全社共通のコーポレート研究部門が担っています。これらの研究開発のマネジメントはイノベーション推進会議の方針のもとイノベーション戦略部が担当し、各部門の活動をサポートし、相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しています。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は143億円となっており、セグメントごとの活動概要は以下のとおりです。
(フィルム)
包装用フィルム分野においても、環境配慮商品に対するニーズが高まっており、バイオマス原料を使用した“バイオプラーナ”として、ポリエステル、ナイロン、シーラントの各該当フィルム製品の採用も拡大しています。プラ減容化として薄肉化に取り組んでいる、高耐熱・高剛性のポリプロピレンフィルム“パイレン EXTOP”のうち、F&Gタイプと超高耐熱タイプについて試験販売を開始し、拡販中です。更に、包装材のモノマテリアル化にも取組み、循環型経済の実現に貢献すべく積極的に推進していきます。
工業用フィルムでは環境に配慮したリサイクル原料を使用したフィルム製品“クリスパー”、“カミシャイン”、“リシャイン”の開発・改良、販売促進に加え、環境負荷の少ないリサイクルシステムの開発も積極的に進めています。また、バイオマス原料を用いたポリエステルフィルムの開発を推進しています。さらに電子情報通信分野、自動車分野で拡大しているセラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”においても、薄層化による減量化、リサイクルによる環境対応に注力しています。また、液晶ディスプレイに最適な超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”は、既存設備改造による増産検討の取組みを開始し、更に、次世代を担うバイオマス原料による新製品の開発にも着手しています。加えて、力学的・熱的特性に優れたポリエチレンナフタレートフィルム“テオネックス”の開発を進め、自動車分野やエネルギー分野に貢献する商品としていきます。
以上、当事業に係る研究開発費は
(ライフサイエンス)
感染症診断領域では、罹患者の入院治療や感染管理に迅速検査が必要な結核菌群について、従来よりも検出感度を向上させた検査キットの開発に成功し、近日販売開始予定です。また、診断薬メーカーのニーズが高い、凍結乾燥が可能なPCR検査原料についても開発に成功し、販売を開始しました。
医療機器分野では、メディカル研究所が竣工し2024年4月より運用開始しました。カテーテルや血液回路チューブに生体適合性を付与するコーティングポリマーなどの開発を加速しています。
医用膜分野の“VolSep”腹水濾過フィルタ・濃縮フィルタは厚生労働省より製造販売承認を取得、保険適用されました。血液浄化商品群の拡充に加え、医薬品製造工程で使用されるウイルス除去膜など、プロセス膜の開発も推進しています。
以上、当事業に係る研究開発費は
(環境・機能材)
樹脂・ケミカル分野では、高分子量でありながら、有機溶剤可溶であるポリフェニレンエーテル(PPE)を開発しました。PPEは、耐熱性、絶縁性、低誘電特性などを活かし、耐熱性を備えたコーティング剤や電子材料用の接着剤などへの展開が期待されています。しかしながら、従来品は、分子量を高めるために乾燥工程の後に熱処理工程を加える必要がありました。開発品は、乾燥工程でのみ高分子量体塗膜を得ることができ、工程簡略化と塗膜強度の向上が期待されます。引き続き、さらなる高性能化を図るとともに、用途探索を進めます。
ゴム弾性を持つポリエステル系樹脂材料である“ペルプレン”は、加熱すると流動性を示す成形加工可能でリサイクル性も併せ持ちます。より環境適合性の高い素材として原料の一部に植物由来のバイオマス素材を使用しながら化石由来の従来品と同等の物性を有する“ペルプレン”エコシリーズを開発しました。初回サンプルは25%、55%の2グレードを用意し、自動車部品のほか、スポーツ用品、アパレル関連製品、ウレタン代替を目的とした日用品への展開を想定しています。
環境・ファイバー分野では、使用済みリチウムイオンバッテリーからのリチウム回収工程への中空糸型膜モジュール“ホロセップ”BC膜の展開を進めています。溶液を濃縮することにより、次工程の蒸発工程を大幅に短縮できるため、“ホロセップ”BC膜による濃縮を行わない場合に比べて大幅な消費エネルギーの削減が可能になります。
超高強力ポリエチレン繊維は、軽量かつ高強度・高弾性率・高耐候性を持つものの、継続して力が加わり続けると変形が進んでしまうクリープと呼ばれる欠点がありました。海に浮かべた基礎に風車を設置する洋上浮体式風力発電の係留に使うには、クリープ性を大幅に改善する必要がありましたが、その改善を実現した“イザナス”ULCを開発、国内で初めて一般財団法人日本海事協会の承認を取得しています。現在、漁業への影響は小さいが、設置は難しいTLP型という国内で施行実績のない方式での実証実験に入っています。
“ブレスエアー”では、三層構造型が「繊維学会技術賞」を、水平マテリアルリサイクル型“ブレスエアーメビウス”が「エコマークアワード2024」ベストプロダクトを受賞しました。また、介護用マットレス“ツインウェーブ”をフランスベッド株式会社と共同開発し、販売・レンタルを開始、“ブレスエアーメビウス”リサイクルプログラムを株式会社DINOS CORPORATIONと共同実施するなど、話題の多い年となりました。今後も機能性や快適性に磨きをかけると共に、環境適合性も合わせ持つ“ブレスエアー”の開発を進めていきます。
以上、当事業に係る研究開発費は
(機能繊維・商事)
衣料繊維分野では、中東トーブの新風合い加工開発が進み採用が増えているため、庄川工場の設備増強を進めています。またリサイクルナイロンの“looplon”も新たに仮撚り加工商材のラインナップを増やしアウター、ニット用途での採用が拡大しています。
「新の創出」で取り組んでいる炭素繊維、ガラス繊維と熱可塑性樹脂繊維を複合したハイブリッドヤーンである“CfC yarn”、“GfC yarn”は各種展示会出展後、10社以上の開発提案を受け、取組みを進めています。また先日「繊研合繊賞」のテクニカル部門賞を受賞しました。
これら新の創出に関する開発を加速させるためには、工場における生産技術開発の推進と人材育成が重要であり、25年度より庄川工場内に新規事業開発部を設けました。
機能資材分野では、国内大手ユーザーと協業し商品開発を行い「人工透析用キット」を上市しました。工業材料分野では、難燃性でかつ柔らかく放射熱軽減+断熱効果のある素材を縫製技術と組み合わせ、高炉など高温作業環境下の作業環境を改善する製品の提供を拡大しています。
エアバッグ用基布事業では、カーボンニュートラルの取組みとして、リサイクル原料を使ったポリエチレンテレフタレート(PET)繊維や製造工程で排出される二酸化炭素を削減した加工剤を用いた織物の開発に取組みます。
以上、当事業に係る研究開発費は
(全社共通)
イノベーション部門においては、全社成長戦略(ソリューション志向)に基づいた価値提供領域及び大型テーマの設定とテーマ推進の加速を図りました。
全社共通の研究開発を担当するコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションなどデジタル技術を用いた解析業務を通じて、研究開発全般および当社の製造、販売活動をも支援する全社インフラとしての機能も有しています。上記のコンピューターシミュレーションを担当する部署については2024年8月に科学研究費助成事業(科研費)指定の認証を受けました。
新規事業企画・開発においては事業部研究開発部門と連携し、オープンイノベーションの考え方のもと、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との協業を積極的に進めました。
具体的な研究開発例として、医薬品製造プロセス用新規分離膜デバイス、異種材料接着向け環境配慮型高耐熱接着フィルム、生体細胞間の情報伝達や細胞の修復に重要な役割を果たすことが明らかになっているエクソソームを簡便に分離精製する“CATAROSEV”等の開発が挙げられます。今後、社会的な課題の解決に向け、早期の市場投入を目指して、研究開発をより一層加速していきます。
一方、民間企業が運営する助成制度の仕組みを利用し、当社が注力する研究開発分野における大学等の研究者を支援する公募型研究制度(東洋紡高分子科学賞)を2021年度に立上げ、2024年度は2名の大学若手研究者への支援を決定しました。当社は今後も、若手研究者の積極的な支援や大学・研究機関との連携を通じて、オープンイノベーションの推進を図るとともに、当社のコア技術に関わる学術分野の発展にも貢献できるよう努めます。
以上、当事業に係る研究開発費は36億円です。