文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、事業を通じて21世紀の医療に貢献する企業となることを目指しております。
当社は、生物が元来持っている機能を利用することで、これまでにない医療技術及び医薬品開発技術の実用化が期待される中、ヒト細胞の機能に着目し、この機能を維持したまま対外で大量に増殖させる細胞技術を開発してきました。この技術を応用し、さらに、増殖したヒト細胞を実験動物に移植する技術により、ヒト細胞の機能を様々な用途に提供していく所存であります。
(2)経営戦略等
当社は、海外でのPXBマウス事業のさらなる拡大を図るため、2010年8月に完全子会社PhoenixBio USA Corporationを設立し、2017年11月にKMT Hepatech,Inc.の株式を取得しました。また、北米製薬企業やCROとのパイプを持つコンサル会社との提携等によって北米を中心とした海外展開に注力してまいりました。海外生産拠点であったKMT Hepatech,Inc.は解散することとしましたが、引き続きPhoenixBio USA Corporationが主軸となり、PXBマウスのサービス提供に関して協力企業との折衝を進めてまいります。
(3)経営環境
最近のトレンドとして、従来、医薬品の主流であった低分子化合物に代わる、タンパク質、核酸、細胞といった新しい形態の新薬開発が世界的に注目を集めており、ヒト細胞で構成された臓器をもつ実験動物として世界で唯一であるヒト肝細胞キメラマウスや、その動物から単離された新鮮ヒト肝細胞が、ヒト特異的なタンパク質や核酸に対する有効性、安全性を評価するうえで非常に有用なツールであるという認識が高まりつつあります。当社グループの製品であるPXBマウス、PXB-cellsはこのニーズに応えることができる素材であることから、北米のコンソーシアム(CMHL Consortium)や、国内外の大学、製薬企業との共同研究、さらに、業務提携先の非臨床試験受託機関との連携によって、新しい知見を積み重ね、プロモーションに利用して、認知度向上に務めております。また、薬効薬理分野においても、非アルコール性肝炎や脂質代謝などの新しい分野への応用を目指したモデル開発を進めております。併せて、当社製品の普及のため、自社施設での受託試験サービスに加えて、国内外の非臨床試験受託機関との連携を一層強化し、PXBマウス及びPXB-cells等の製品販売を国内外で拡大していく計画であります。
当社グループでは、製品販売の拡大に合わせた供給体制の整備を進めてまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
a.PXBマウス需要への対応
当社グループの事業環境は、従来の肝炎関連の受託試験サービスが減少する一方で核酸医薬・遺伝子治療など安全性等分野でのマウス販売が増加している状況にあります。
当社グループとして北米の生産拠点と位置づけたKMT Hepatech社については、採算の観点から解散する方針を決定しましたが、依然堅調に推移するPXBマウスの需要に対応するため、外部への飼育委託による段階的な増産に取り組むとともに、今後、投資効率の高い増産計画を検討してまいります。そのうえで、引き続き高い品質のPXBマウスを提供するために、国内外の顧客や提携先CROからもたらされる納品後のマウスの情報について、当社の品質管理部門が一元的に対応、適切にフィードバックする体制を整えてまいります。
また昨今、強く動物愛護が求められる環境下においては、一方的な増産計画のみならず、動物福祉の観点からも理想的な設備と飼育方法で管理する責任があることから、国際的な動物管理及び使用に関する評価を行っているAAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)に認証取得の申請をいたしました。今後も国際基準に準拠した動物福祉の実現に取り組んでまいります。
b.in vitro分野への展開・発展
近年、動物実験の代替手段として、ヒトの細胞や組織を利用したin vitro試験の重要性がますます高まっております。当社グループではin vitro試験で使用できる製品として、PXBマウスの肝臓から分離された新鮮ヒト肝細胞である PXB-cellsのほか、PXB-Shizuku、PXB-cells RF、PXB-cells Cryo等の関連製品を新たに市場投入しており、今後さらにその需要が高まることが期待されます。
このような状況において、当社グループはin vitroの評価法として世界的に開発が進められているMicrophysiological System(MPS:生体模倣システム)等の新規デバイスや新技術に対する研究開発を強化し、併せて、共同研究先であるUSC(University of Southern California)を通じて、医薬品開発競争の主要舞台である米国のトレンドを見極め、市場ニーズにあった製品開発を目指してまいります。
また、市場の拡大を見据えた体制として、並行して顧客開拓や増産検討も進めてまいります。
c.新しい市場の取り込み
創薬におけるモダリティ(治療薬の形態)は多様化しており、抗体医薬、細胞治療医薬、核酸医薬、遺伝子治療など新しい技術を用いた医薬品・治療法の開発が活発になっており、評価ツールとしてのヒト肝キメラマウスやヒト肝細胞の需要は増加しております。
今後、さらに当社グループが市場を獲得してゆくためには、PXBマウス、PXB-cellsに関して、次世代医薬品・治療法の評価ツールとしての有用性を示すデータ取得が一層重要になると認識しており、自社での研究開発に加えて、共同研究先、業務提携先とも協力して進めてまいります。
また、安全性等分野における核酸医薬、遺伝子治療、薬効薬理分野におけるMASH(metabolic dysfunction associated steatohepatitis:従来の非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎を統合した肝疾患名称)や脂質代謝を、新しい市場での重要分野と位置づけ、PXBマウス、PXB-cellsの用途開発や新製品開発に取り組んでまいります。当社では基幹技術であるPXBマウスの基本特許を、日米を始め主要地域において取得しておりますが、今後も社内研究や共同研究で新たに開発した知財の権利化について専心してまいります。
(5)目標とする経営指標
当社グループは経営指標として、事業規模を示す売上高を採用しております。サービス分野別に「薬効薬理分野」と「安全性等分野」に区分しており、特に市場規模が大きい「安全性等分野」の売上高を重要な経営指標として、事業拡大を目指してまいります。
また、「安全性等分野」においては顧客が自身の都合で試験ができる販売の形態を望むケースが多く、当社グループにおいてもPXBマウス及びPXB-cellsの生産に注力できることから、製品販売に重点を置く方針であります。従いまして、「製品販売」の売上高も重要な経営指標としております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社は企業理念である「分野のトップランナーを目指すことで、全従業員の物心両面の幸福を追求し同時に人類・社会の進歩発展に寄与する」の実現に向けて事業活動を行っており、サステナビリティを巡る課題への対応は重要な経営課題であると認識しております。
当社は、現在サステナビリティに係る方針については策定しておりませんが、グループ行動規範のなかで、地球環境の保全、人権の尊重、公平な取引を謳っているほか、メンタルヘルスケアやハラスメントの撲滅など従業員の健康・労働環境に配慮した方針、自然災害等への危機管理に対応する危機管理マニュアルなど、個々の方針を策定、運用しております。
社内に設置している「衛生委員会」において、従業員の健康に関する施策、作業環境等について意見聴取を行い、労働衛生に関する課題がないか観察するとともに、ストレスチェックの実施や時間外労働、休暇取得状況のモニタリング等により、従業員が健康で安心して働ける職場環境にするために取り組んでおります。この他、当社の事業活動に関する法令・ガイドラインの遵守のため、弁護士等の有識者を含む委員会を設置して、モニタリングを実施しております。
また、「リスク管理委員会」においては、当社グループに係るリスクを予見するため、サステナビリティを含めたリスクの洗い出し及び評価するとともにリスクの防止及び損失の最小化のため、適宜、必要な措置を講じております。
これらの委員会には取締役が参加しており、サステナビリティに関連するリスク及び機会について、その他の経営上のリスク及び機会と同様に必要に応じて取締役会で議論され、管理を行っております。
(2)人的資本
人材の採用及び育成方針、人材多様性の推進
従業員の採用においては、技術職、事務職を問わず、外国籍人材のほかジェンダー平等に配慮した人材の採用を進めており、国内外での女性の積極採用、教育研修プログラムの改善等により女性社員の比率、女性管理職の人数が徐々に高まっています。
仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。また、事業ポートフォリオの変革に合わせた人材の獲得や、新鮮なアイディアや価値観を取り入れて、組織を活性化させるため等の理由から中途採用者を積極的に活用しています。入社時は経験・スキル等の適正な評価に基づき処遇を決定し、入社後は他の社員と同様に業績や能力伸長・組織貢献等を総合評価することで、中途採用者がハンデなく働ける人事制度を採用しています。
働き方の改革“ライフワークバランス”の推進に向け、就業時間管理の徹底、長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。今後も、従業員の誰もが当社グループで働くことに価値と誇りを感じ、成長の機会や自分らしい人生を歩めるよう、従業員としての経験価値を高めるような取り組みを行うとともに、従業員の成長を会社へ還元していく意識改革を推進してまいります。
当社では、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良である企業に与えられる「えるぼし」の取得を目指してまいります。
なお、当社グループにおける女性活躍状況の指標と目標は以下のとおりです。
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実績(当連結会計年度) |
目標( |
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(注)1.当連結会計年度の実績において目標値を上回っておりますが、引き続き維持することを目指してまいります。
2.当社グループの管理職の定義は、課長クラス以上としております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)PXBマウス事業への依存について
当社グループの売上高は単一事業であるPXBマウス事業のみとなっており、同事業に依存した収益構造となっております。経営資源を集中させることにより収益規模を拡大させることを目指しておりますが、今後、他社との競争によりPXBマウス事業の売上高が減少した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)特定の顧客、市場への依存について
当社グループの2025年3月期におけるAlnylam Pharmaceuticals,Inc.に対する売上高は、約41%を占めております。当社グループは安全性等分野においてPXBマウス及びPXB-cellsの有用性を示すデータの取得、新製品開発、プロモーション活動等を推進し、新規顧客獲得により特定の顧客に依存しない基盤づくりに努めてまいりますが、思うように進まず、同社の事業方針の変更や業績の変化等があった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、2025年3月期における米国市場に対する売上高は、約73%を占めております。そのため、米国政府による関税政策、薬価政策等の動向によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3)大学等の公的研究機関との関係
当社グループの販売先である大学及び公的研究機関は、その研究資金の大部分を科学研究費補助金など公的な補助金及び助成金に依存しております。現在、海外製薬企業を中心に民間企業への販路が拡大しているものの、今後も大学及び公的研究機関に対する売上は一定程度見込まれることから、科学研究費補助金等の削減又は制度の変更により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4)国立大学法人広島大学との共同研究について
当社グループは、自社での研究活動の他、国立大学法人広島大学と共同研究を実施しております。当社グループは、今後も同大学との間で良好な関係を維持し、共同研究を継続していく方針でありますが、当該契約の更新が困難となった場合、当社グループの研究開発活動に悪影響を与える可能性があります。
(5)生産設備の事故、故障、感染症の発生について
当社グループの事業は、マウス、ラットなど動物を扱う事業であり、これらは当社グループの研究施設及び生産施設内のクリーンルームで外部の病原菌からの感染を防止するなど、厳重な管理体制のもと飼育し、また不測の事態を考慮して複数の施設に分散する等リスク軽減のための処置を施しております。しかしながら、予期せぬ天災、環境設備の故障及び事故等で施設が損傷を受けた場合、又は動物に感染症等が発生した場合、当社グループの事業に重大な影響を与える可能性があります。
(6)ヒト肝細胞の入手について
当社グループの主要な製品であるPXBマウスはヒトの肝細胞を移植しております。移植に使われるヒト肝細胞は、国内での入手は行えず、代理店を通じて国外業者から輸入しております。今後、仕入価格の高騰、法規制等でヒト肝細胞の入手が困難になった場合PXBマウスの生産に制約を受け、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
(7)小規模組織であることについて
当社グループの組織は2025年3月31日現在で取締役4名、監査役3名、従業員69名と小規模であり、内部管理体制も当該規模に応じたものであります。今後の事業拡大に伴い、計画的な人員の増強と内部管理体制の充実を図る方針でありますが、必要な人員を確保できない場合、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
(8)技術者の確保、育成について
当社グループの事業は特殊性が高く、かつ専門性が高いため、技術育成に期間を要します。また、技術の個人依存度が高いため急な増員が難しく、技術者が大幅に流出した場合には当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
(9)税務上の繰越欠損金について
当社グループは2025年3月31日現在、1,042,815千円の税務上の繰越欠損金を有しております。従いまして、当社グループの業績が順調に推移し当期純利益が計上された場合でも、当該繰越欠損金が解消されるまで課税される税金負担が繰越控除の限度内にて軽減されると考えております。しかしながら、当該繰越欠損金が解消された以降は税負担が増加し、当期純利益に影響を与えることが予想されます。
(10)研究開発について
当社グループは、開発競争の激しいバイオ産業のなかで収益力を維持するためには、技術の独自性及び先進性を保ち、顧客のニーズにあったサービスを提供できるよう技術開発を行う事が重要だと認識しております。
当社グループにおいて研究開発費は大きなウエイトを占めており、将来を見据えながら先行して研究開発及び設備投資を実施しております。しかしながら、研究開発が期待通りの結果を得られない場合は、先行して投資した研究開発費及び設備投資費を回収できない可能性があります。
(11)知的財産権について
当社グループの属するバイオ産業は、技術進歩は著しく速く、日々新しい技術開発が進んでおります。当社グループの技術に関して第三者の知的財産権の侵害は存在しないと認識しておりますが、今後、知的財産権の侵害を理由とする当社グループへの訴訟が発生しないとは限らず、このような事態が発生した場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
(12)配当政策について
当社は創業以来、累積損失を計上しており利益配当を実施しておりません。
当社は、事業の確立に向けて研究開発及び設備投資を実施している段階であり、投資した研究開発及び設備投資費用を回収するまでには至っておりません。さらに今後、生産体制を強化するため設備投資を実施する計画であります。しかしながら、当社は株主への利益還元も重要な経営課題であると認識しており、事業の確立、経営基盤の安定及び累積損失の一掃後に、内部留保を勘案しながら還元していく方針であります。
(13)為替相場の変動について
当社グループは販路拡大を目的に、米国を中心に海外製薬会社に対し積極的にPXBマウス販売や受託試験サービスを展開しており、2025年3月期において約8割が海外売上となっております。海外製薬企業との契約を締結する場合は、外貨建取引によっており、為替リスクを有しております。このため、為替相場が円高傾向になりますと、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、為替リスクの低減に努める所存でありますが、為替相場の変動リスクを完全に排除することは困難であり、為替相場の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(14)技術革新について
当社グループの属するバイオ産業は、開発競争が激しく、技術革新が急速に進んでおります。当社グループの主要な製品であるPXBマウスは、ヒト肝細胞の置換率が70%以上という高置換率を誇っており、医薬品開発において有効な技術であると認識しております。しかしながら、今後これに代わる優れた技術、又は価格競争力に優れている技術が開発され、当社グループ技術の優位性を失った場合、技術の陳腐化、又は価格競争にさらされる恐れがあります。
(15)競合について
PXBマウス事業の基幹技術である「ヒト肝細胞を持つキメラマウス」を安定生産するには、高い技術力と生産に係る経験を基礎とするノウハウを要するため、参入障壁が高いと考えておりますが、市場拡大が期待されることから、今後、他社が参入する可能性があります。現在の競合他社や新規参入により当社の優位性が低下した場合、価格競争にさらされて、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(16)法的規制について
当社グループでは、PXBマウスの生産で遺伝子組換え生物等を取り扱っており、国内においては遺伝子組換え生物等を用いる際の規制措置を定めた「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に則り、事業を行っております。製品(PXB-cells)の販売につきましては、経済産業省から第二種使用等拡散防止措置確認を取得して産業利用を行っております。また、海外での生産につきましても、現地法令等に則り事業を行っております。
当社グループでは、施設の保全、リスク管理並びに従業員への教育訓練等を実施し、法令等を遵守していく所存でありますが、事故による拡散及び法規制の強化等により、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
(17)大株主との関係について
当社のその他の関係会社である三和澱粉工業株式会社は、2025年3月31日時点で当社発行済株式総数の14.18%(574,218株)を所有し、同社の子会社である株式会社特殊免疫研究所は、3.18%(129,000株)を所有しております。また、同社の緊密な者である三和商事株式会社、森本俊一氏は、それぞれ当社発行済株式総数の17.48%(708,000株)、12.49%(506,000株)を所有しております。
現在、これら大株主との関係については大きな変更を想定しておりませんが、将来において、大株主との関係に大きな変化が生じた場合は、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
(18)感染症の拡大について
新型コロナウイルス感染症を含む感染症の発生、拡大により、当社グループの主要顧客である製薬企業において新薬開発が停滞した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、従業員間で感染症が拡大した場合、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業業績の回復や雇用・所得環境の改善などにより景気は緩やかに回復しているものの、エネルギー価格の高止まりや継続的な物価上昇に加えて、米国の通商政策の影響により先行きは不透明な状況にあります。
当社グループの顧客が属する医薬品業界では、世界人口の増加と新興国の所得水準の向上を背景として市場は成長しておりますが、特許切れによる後発薬の台頭、新薬開発の長期化等により製薬企業の収益性は厳しさを増しております。一方で、潤沢な資金を持つ大手製薬企業は、新たな収益源を求めて有望なパイプラインには積極的に投資する等、M&Aによる業界再編が進んでおります。このような状況を背景に、製薬企業では新薬開発を迅速かつ効率的に実施するために、臨床試験等の開発業務を外部のCRO(開発業務受託機関)へ委託するケースが増えており、当社がターゲットとしている前臨床試験におきましても製薬企業の外部委託は拡大傾向にあります。
このような状況のもと、当社グループでは世界の大手製薬企業が研究開発拠点を置く米国を中心に、マウスの肝臓の70%以上がヒトの肝細胞に置き換えられたヒト肝細胞キメラマウス(当社製品名:PXBマウス)を用いた受託試験サービスの提供及びPXBマウス関連製品の販売を行っております。
PXBマウスの需要は肝炎領域からバイオ医薬領域に移行しており、核酸医薬品や遺伝子治療等の開発で利用が増加しております。当連結会計年度においては主要顧客である海外製薬企業で開発プログラムの中止や人員整理が頻発する等、上期は開発予算の都合で受注までは至らないケースが増えましたが、下期では研究開発活動に回復の傾向が見られ、引き合いが増加しております。受注高はこれまで単年でマウス販売契約をしていた顧客から新たに2年契約で受注獲得したこともあり前年同期を上回りましたが、売上高については、上期での受注不振が響き前年同期を下回りました。損益面につきましては、受託試験の外注案件が減少したこと等により売上原価は減少しておりますが、研究開発費は増加しており、売上高の減少に伴い営業赤字となりました。また、連結子会社であるKMT Hepatech,Inc.の解散及び清算決定に伴い、特別損失として事業整理損失引当金等を計上しております。
この結果、当連結会計年度の売上高1,541,388千円(前年同期比10.1%減)、営業損失142,079千円(前年同期は営業利益11,063千円)、経常損失155,182千円(前年同期は経常利益43,526千円)、親会社株主に帰属する当期純損失448,933千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益26,378千円)となりました。
なお、当社グループは「PXBマウス事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ235,500千円減少し、1,149,390千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、使用した資金は73,000千円(前連結会計年度は79,307千円の使用)となりました。これは主に棚卸資産評価損153,628千円、事業整理損失引当金の増加145,837千円、売上債権及び契約資産の減少47,170千円があった一方で、税金等調整前当期純損失432,841千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は27,985千円(前連結会計年度は115,358千円の獲得)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出21,243千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は128,000千円(前連結会計年度は244,879千円の使用)となりました。これは長期借入金の返済による支出79,992千円、リース債務の返済による支出48,008千円があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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生産高(千円) |
前年同期比(%) |
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PXBマウス事業 |
475,008 |
89.8 |
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
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PXBマウス事業 |
1,953,782 |
105.0 |
1,097,869 |
153.7 |
(注)外貨建て取引の受注高につきましては、受注時の為替レートにより、また、受注残高につきましては、当事業年度末の為替レートによりそれぞれ換算しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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PXBマウス事業 |
1,541,388 |
89.9 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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Alnylam Pharmaceuticals, Inc. |
664,952 |
38.8 |
634,022 |
41.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、海外製薬企業における開発予算削減の影響を受けるなかで上期は受注が低迷していたものの、核酸医薬品や遺伝子治療分野でPXBマウス利用に興味を示す新規顧客から引き合いが下期にかけて具体的な案件として増加し、受注高は回復傾向にあります。売上計上までのリードタイムがあることから、受注残高は前連結会計年度末と比較して増加しておりますが、売上高は10.1%減少し1,541,388千円で着地しました。利益面については賃上げや各種経費の高止まりのなか、売上高が減少したことから3期ぶりに営業赤字となりました。
また、海外生産施設であるKMT Hepatech,Inc.は採算性の観点から解散することを決定したことから、特別損失として減損損失13,732千円、棚卸資産評価損153,628千円、事業整理損失引当金繰入額145,837千円を計上しており、親会社株主に帰属する当期純損失は448,933千円となりました。
財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,717,435千円となり、前連結会計年度末に比べ414,772千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が235,500千円、仕掛品が79,406千円、売掛金及び契約資産が47,170千円、製品が23,229千円、それぞれ減少したことによるものです。また固定資産は567,906千円となり、前連結会計年度末に比べ15,205千円減少いたしました。この結果、資産合計は2,285,342千円となり、前連結会計年度末に比べ429,977千円減少となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は566,623千円となり、前連結会計年度に比べ145,165千円増加いたしました。これは主に事業整理損失引当金が140,797千円増加したことによるものです。また固定負債は353,313千円となり、前連結会計年度末に比べ142,941千円減少いたしました。これは主に長期借入金が79,992千円、リース債務が58,046千円、それぞれ減少したことによるものです。この結果、負債合計は919,936千円となり、前連結会計年度末に比べ2,223千円増加となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は1,365,406千円となり、前連結会計年度に比べ432,201千円減少いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が448,933千円減少したことによるものです。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの事業は、PXBマウスを用いた受託試験サービスとPXBマウス及びPXB-cellsの販売を中心に展開しておりますが、とりわけ、PXBマウス及びPXB-cellsは薬効薬理分野における抗肝炎ウイルス薬の薬効評価ツールとして、国内外で、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの基礎研究、医薬品開発に貢献してまいりました。しかしながら、ここに来て肝炎分野の受託試験サービスは大きく減少しており、今後の市場回復も期待できないことから、当社グループでは、ほぼ全ての医薬候補物質が対象となり、より大きな市場である安全性等分野でのPXBマウス、PXB-cellsの普及に努めております。
当社グループでは、重要な経営指標として分野別の売上高を採用しておりますが、今後PXBマウス、PXB-cellsの製品販売に重点を置いていくことから、サービスライン別の売上高も記載しております。
当連結会計年度の分野別売上高及びサービスライン別売上高は下記のとおりであります。
|
分野別 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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売上高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
薬効薬理分野 |
73,138 |
45.9 |
|
安全性等分野 |
1,468,249 |
94.4 |
|
サービスライン別 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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|
売上高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
製品販売 |
1,081,470 |
81.9 |
|
受託試験サービス |
459,918 |
116.3 |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの分析・検討)
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ235,500千円減少の1,149,390千円となりました。内訳は営業活動で73,000千円の資金を使用しており、投資活動で固定資産の取得等により27,985千円、財務活動で長期借入金及びリース債務の返済により128,000千円、それぞれ資金を使用しております。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの主な資金需要は、PXBマウス、PXB-cellsの生産ならびに受託試験にかかる製造費、PXBマウスの用途開発や有用性検証を目的とするコンソーシアム活動や南カリフォルニア大学との共同研究を含めた研究開発費、専門学会でのブース展示を含めた国内外での営業宣伝活動費、これらグループの活動を支える間接部門に係る運転資金の他、生産、受託試験及び研究開発のための設備・機器への投資とこれらの設備・機器の運転・維持、ならびに実験機器等消耗品の購買資金であります。これらのうち、運転資金につきましては内部資金を活用し、設備投資資金につきましては、投資規模により資金調達コストを勘案の上、内部資金の活用の他、金融機関からの借入金、リースによる調達によっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表の作成にあたり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積りには不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
共同出願に係る発明の不実施補償
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相手先の名称 |
対象発明の内容 |
契約内容 |
契約日 |
契約期間 |
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公益財団法人 東京都医学総合研究所 |
ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジェニックマウス |
当社、公益財団法人東京都医学総合研究所及び中外製薬株式会社の三社共同出願した本発明に係る知的財産権を当社が独占的に商業実施することによる不実施補償 |
2016年2月22日 |
2016年4月1日から 2032年4月27日まで |
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中外製薬株式会社 |
(注)1.本マウスを商業実施に用いた匹数により不実施補償料を支払っております。
2.本マウスは、PXBマウスの生産において使用しているホスト動物であるurokinase-type plasminogen activator cDNAトランスジェニックマウス(cDNA-uPA)であります。
PXBマウスの潜在的な市場を具現化するには、創薬工程における実験動物としての用途開発をすることが必要であります。特に、非臨床試験のうち薬物代謝試験及び安全性試験の新たな評価ツールとしてPXBマウスを用いた試験手法は将来有望であり、PXBマウス単体の付加価値は実験動物としての限界がありますが、用途開発によって高収益体質を持続可能なものにできます。PXBマウス事業の研究開発活動はこの用途開発に注力し知的財産権の確立を目指しております。
当連結会計年度の研究開発費は、PXBマウス事業に係るものであり、総額は