当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、社是「科学技術で社会に貢献する」、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」のもと、永年の事業で培った技術、ノウハウを活かし、複雑化・多様化する社会の課題や要請に応える製品・サービスの提供、それを基にした社会課題解決の仕組み作りを行い、ステークホルダーからの信頼の獲得と、企業価値の向上に努めています。
また、社是・経営理念に基づく事業活動を通してサステナブルな社会を実現するために、「島津グループサステナビリティ憲章」を制定しました。グループ全体で、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指して、サステナビリティ経営を実践していきます。
これからも、地球・社会・人との調和を図りながら、“事業を通じた社会課題の解決”と“社会の一員としての責任ある活動”の両輪で企業活動を行い、明るい未来を創造します。
(2) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題
1) 4つの社会価値創生領域における各事業の取り組み
世界のパートナーとの関係を強化し、共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーとして、サステナブルな社会の共創を引き続き目指します。
①ヘルスケア領域
ライフサイエンス分野では製薬、食品市場を中心に、計測機器事業における液体クロマト分析システムと質量分析システムを重点機種と位置付け、お客様の業務の効率化・省力化に向けたAIによる分析プロセスの革新(AX:アナリティカルトランスフォーメーション)の実現を追求します。また、医薬品精製装置への参入などソリューション提供の拡大を進めます。
メドテック分野では、計測機器事業と医用機器事業を中心に据え、臨床検体検査ソリューションの提供・実装強化と、画像診断にAIやIoT技術を活用した「イメージングトランスフォーメーション (IMX)」を引き続き展開し事業拡大を進めます。また、健康長寿の実現、シニアヘルスケアへの貢献に向け、パートナーとの共創によるアルツハイマー型認知症や感染症に関連した研究開発と、当社独自の音声認識機能を搭載する血管撮影システムや高齢者の嚥下(えんげ)検査用X線TV装置のグローバル展開を進めます。
②グリーン領域
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、水素エネルギーの社会実装をはじめとする新エネルギー開発、バイオ燃料分析手法の開発や温室効果ガス(GHG)測定分野において、ガスクロマト分析システムなど、計測機器の展開を進めます。また、環境分野では、世界中で規制強化が進む有機フッ素化合物(PFAS)に対し、分析手法の普及に向けた取り組みを強化するとともに、バイオものづくり事業でのソリューション開発に注力します。
③マテリアル領域
計測製品のラインアップ強化、自動化促進とインフォマティクスを用いた複合計測・解析の強化に取り組み、セラミックス複合材料などの革新素材の開発・製造への貢献、サーキュラーエコノミーの実現に向けた計測機器開発を促進します。また、新たに販売を開始した走査電子顕微鏡による事業展開を通じて、ナノ領域の表面観察分野で付加価値の高いソリューションを提供してまいります。
④インダストリー領域
産業機械事業を中心に据え、生成AIの需要拡大など活況が続く半導体市場や、気候変動対策に関わる電気自動車などの産業機械市場で「世界で評価されるソリューションプロバイダー」を目指します。半導体製造に欠かせないターボ分子ポンプの製造・サービス体制を強化するとともに、分析計測装置や太陽光パネル製造装置、ガラスコーティング装置向けに用途を拡大し、新たな価値提供に取り組みます。また、自動車等の電動化で用いられるセラミック製品製造向けに工業炉の拡販を図ります。
航空機器事業においては、安全なモビリティ社会の実現に貢献するとともに、中長期的に成長と収益を確保できる事業体制の確立を目指しています。「選択と集中」および「収益性改革」の基本方針のもと、事業を継続してまいります。
2)リカーリングビジネスの拡大
試薬等の消耗品とサービスの両輪でリカーリングビジネスの拡大に取り組んでいます。フランスの子会社2社を統合して2025年4月1日に設立したShimadzu Chemistry and Diagnostics SAS、島津ダイアグノスティクス株式会社などグループ全体で試薬と消耗品のラインアップ拡充を進め、ビジネスを拡大します。
また、計測機器事業でのマルチベンダーサービスの拡大、および北米医用事業のサービス体制強化を進め、広くお客様に密着したサービスの提供を進めます。
3)新事業の創出と開発力強化
スタートアップや大学などとの共創を目的とした研究公募プログラム「SHIMADZUみらい共創チャレンジ」の活動と、スタートアップへの投資から新規事業の創出を目指すCVC「Shimadzu Future Innovation Fund」の活動を継続します。
また、開発力の強化では、アジャイル開発の適用拡大とグローバル開発拠点を活用したコンカレント(同時並行型)開発の導入、およびAIやDXの活用に向けたデジタル人財の育成に引き続き取り組みます。
4)経営基盤の強化と“顧客中心”志向への体制変革
①北米では昨年度開設したR&Dセンターボストンラボで最先端ニーズを捉え、現地開発によるソリューション提供を拡大します。
②中国では、拡張した蘇州工場で分析計測システムなどを生産し、国産優遇策への対応力を強化します。
③インドでは、分析と医用製品を扱う統合会社を立上げ、顧客中心の販売活動を展開します。また、2027年の稼働予定での工場建設を進めます。
④4つの社会価値創生領域に向けたソリューションの開発・提案力の持続的強化のため、戦略的な成長投資を続けます。併せて、AIを活用した業務効率化を進め、ROICを指標とした資本効率の向上を図ります。
⑤多様な視点を持つグローバルで活躍する人財の育成に向け、次世代リーダー育成プログラムを拡充します。
5)環境経営と健康経営
環境経営では、脱炭素社会の構築やサーキュラーエコノミーへの移行を見据え、事業を通じた環境貢献の観点から、製品設計に遡ったCO2排出量の削減、梱包材の見直し等を進めているほか、企業価値貢献の観点で情報開示を進め、外部評価の向上に取り組んでいます。
健康経営では、自社技術を活用した社員およびその家族の健康増進とともに、労働安全衛生マネジメントシステムの活用を進めます。また、健康経営アライアンスの一員として、当社の技術や知見の社会還元に取り組みます。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
上記の通り事業活動を進めていく一方で、円高および米国の関税政策の影響により、当社をとりまく事業環境には不透明感が増しています。米国における関税の影響については、マクロ経済の減速に伴う需要減少と関税コストの増加を想定しており、つぎに示す2026年3月期の連結業績予想は、この関税政策の影響が年間を通して継続することを前提として策定しています。関税引き上げによる業績への影響は重大なものになると想定していますが、インドなどの成長市場での需要獲得に加え、価格転嫁やサプライチェーンの見直しなどの対応を通じて、影響の軽減に取り組んでまいります。なお、今後の動向も予測困難な状況にあるため、継続して注視していきます。
(単位:百万円)
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2026年3月期 連結業績予想 |
対前期増減率 |
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売上高 |
515,000 |
△4.5% |
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営業利益 |
58,000 |
△19.1% |
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経常利益 |
58,000 |
△19.5% |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
45,000 |
△16.3% |
※上記の業績予想は、2025年3月期決算短信公表時点(2025年5月12日)において入手可能な情報に基づき算出したものであり、実際の業績は、今後様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。なお、本連結業績予想は、4月中旬時点での米国関税政策によるマクロ経済への影響と関税によるコスト増を見込んだものです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(サステナビリティ全般)
当社は、社是「科学技術で社会に貢献する」、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」のもと、「島津グループサステナビリティ憲章」を制定し、サステナビリティ経営を推進しています。
“事業を通じた社会課題の解決”と“社会の一員としての責任ある活動”の両輪で、グループ一体となった企業活動を行い、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指して、サステナビリティ経営を実践していきます。
<ガバナンス>
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組織体 |
役割 |
開催 頻度 |
責任者 |
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取締役会 |
取締役会は、サステナビリティ経営に関する重要な方針や計画に関する意思決定、および業務執行の監督の役割を担っている。 |
1回/月 |
会長 |
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執行役員会 |
取締役会の監督のもと、サステナビリティ経営に関する審議および監督を通じて、迅速かつ的確な業務執行の役割を担っている。 |
3回/月 |
社長 |
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島津グループ サステナビリティ会議 [専門部会] ・リスク・倫理会議 ・環境会議 |
・島津グループサステナビリティ会議は、サステナビリティ経営に関する最高審議機関である。重要課題、実施方針、計画ならびにKPIについて審議し、進捗状況をモニタリングしている。 ・主要テーマとKPIは、中期経営計画、事業方針、社会動向などから導き出し、島津グループサステナビリティ会議の審議を経て決定している。 ・特に重要なコンプライアンス・リスクマネジメント、ならびに環境経営については、専門部会を設置し、より専門的な課題やテーマに関する報告および審議を行っている。 |
2回/年 |
社長 |
当社グループにおけるサステナビリティ経営を推進するための組織として、島津グループサステナビリティ会議を設置しています。会議の構成メンバーは、会長、社長、役付執行役員、常勤監査役、事業部長、全社部門長、国内外の関係会社の代表者などで、事務局は経営戦略室が担っています。
また、事業活動を通じた社会課題の解決、リスクマネジメント活動、環境経営については、サステナビリティ経営の中で特に重要な位置づけであるとの考えのもと、専門部会を設けています。
会議の結果は取締役会にも報告され、取締役・監査役からサステナビリティ経営の推進やさらなる展開に向けた提言を得ています。
<戦略>
当社グループは、社是に「科学技術で社会に貢献する」、経営理念に「『人と地球の健康』への願いを実現する」を掲げています。1875年の創業以来、永年培ってきた科学技術やノウハウを活用し、お客様・株主・取引先・従業員・地域社会などのステークホルダーからの信頼の獲得と持続可能な事業および社会の実現に努めています。また、社是および経営理念をサステナビリティ経営として具現化するために「島津グループサステナビリティ憲章」を制定し、当社の事業活動が社会に与えるインパクトと事業活動における機会とリスクの両方の観点を踏まえて、「島津グループサステナビリティ経営実施方針」において、以下7つのマテリアリティを定めています。
①「人の命と健康への貢献」、②「地球の健康への貢献」、③「産業の発展、安心・安全な社会の実現への貢献」、
④「科学技術の進歩と高度化」、⑤「開発・製造能力の向上」、
⑥「ガバナンスの強化」、⑦「人財の育成」
これらの7つのマテリアリティは中期経営計画と連動しています。現在の中期経営計画においては、当社が目指す姿として「プラネタリーヘルス(人と地球の健康)の追求」を掲げており、ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4つの社会価値創生領域における価値提供を通じて、それぞれのマテリアリティに対応する取り組みを進めています。
<リスク管理>
当社グループは、リスクマネジメント(事業に関わるリスク対策)と、コンプライアンス・内部統制(職務執行上のリスク対応)を有機的・一体的に機能させながら、経営戦略を実行し事業目的などを達成することで企業価値の最大化を図っていきます。
この統合リスク管理の仕組みは以下の4つの取り組みから構成されています。
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(1) リスクマネジメント |
事業に関わるリスクを適正に管理するための活動として、リスク発生の未然防止に取り組むこと、また危機事象が発生した場合に早期解決へその損失影響を最小化する措置および真因究明・再発防止の水平展開を行うことを「島津グループリスクマネジメント基本規定」として定め、実践しています。 |
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(2) コンプライアンス |
当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、競争法など、世界各国・地域の法令や行政による許認可、規制の適用を受けており、その遵守に努めています。これらの法令遵守のみならず、国際規範に則り行動するとともに、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、当社グループの役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定め、「コンプライアンスはすべてに優先する」を実践しています。 |
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(3) 内部統制 |
当社グループの役員および従業員の職務執行が法令および定款に適合すること、およびその業務が適正かつ効率的に行われることを確保するための内部統制体制を整備しています。違反行為などが発生した場合は、当社グループでその内容と処分などを速やかに共有し、類似行為の発生を抑止しています。加えて、個人情報の保護や秘密情報の厳正な管理のもと、広報・IR活動やWEBサイトにより、適宜適切な対外情報発信・開示を行っています。 |
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(4) モニタリング |
リスクマネジメント・内部統制・コンプライアンスの全てが有効に機能していることを、事業部門・管理部門・監査部門の3ラインの各段階で、組織的かつ継続的に検討・評価します。2023年度より、業務監査方針を策定し、グローバル地域(欧州、米州、中国、アジア)毎に監査を実施しています。監査頻度を増やして、当社グループ各社の事業部門(第1ライン)と管理部門(第2ライン)へ日常的に適切なモニタリングを促します。 |
<指標及び目標>
当社グループは「島津グループサステナビリティ憲章」と関連規程に基づき、中期経営計画と連動するマテリアリティを定め、島津グループサステナビリティ会議において、マテリアリティに対応する具体的なKPIを毎年設定しています。2024年度の主なKPIは以下のとおりです。
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地球の健康への貢献 |
<気候変動対策> ・事業活動と製品使用に伴うCO2排出量の削減 自社排出量:2025年度 0.85万t-CO2(*1)、2050年 実質ゼロ 削減貢献量(*2):2025年度 1.2万t-CO2(自社排出量を上回る量) <持続可能な資源利用> ・製品へのサステナブル素材(*3)の採用 2023~2025年度 累計10件以上 ・国内製造開発拠点の資源循環 2023~2025年度 リサイクル率99.6%以上維持 |
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ガバナンスの強化 |
<CSR調達の推進> ・CSRセルフアセスメントを実施しているサプライヤの拡大 2025年度 100%(協力会社発注額に占める割合) <グループガバナンスの強化> ・グローバルでの網羅的な内部監査(業務監査)の実施 2025年度 100%(グループ会社内部監査のカバー率) |
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人財の育成 |
<女性のさらなる活躍の推進> ・女性管理職比率(連結) 2025年度 12%、2030年度 15% |
*1 従来目標値(1.0万t-CO2)を達成したため、新たに目標を設定
*2 当社エコプロダクツPlus制度認定製品を使用したことによる顧客のCO2排出の削減量
*3 バイオ由来またはリサイクル由来の樹脂素材
このうち、気候変動対応への取り組みおよび人的資本については、以下に詳細を記載しています。
(気候変動対応への取り組み)
当社グループは、「島津グループサステナビリティ憲章」のもと、「地球の健康への貢献」に向けて、事業活動を通じた気候変動対応に取り組んでいます。
当社グループは、環境問題を最重要経営課題の一つとして位置付けており、中でも、気候変動問題に対して、バリューチェーンを含めた事業活動におけるCO2排出量の抑制や、環境いわゆるグリーン領域におけるイノベーション創出に貢献する製品およびソリューションの提供に取り組んでいます。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言に賛同し、関連情報の開示に努めています。
<ガバナンス>
当社グループは、気候関連のリスク・機会および経営課題解決に向けた施策について、環境問題に関する専門部会である「環境会議」(議長:代表取締役社長、年2回開催)で討議しています。
討議内容は執行役員会に報告されるとともに取締役会に報告・付議がなされており、取締役会による監視・監督体制が適切に確保されています。さらに、取締役会では当社グループの環境経営に関わる重要な事項について審議決定が行われます。
<戦略>
1. 気候変動リスク・機会の特定
当社グループの事業・戦略・財務に影響を及ぼす気候関連リスク・機会の特定にあたり、①脱炭素化が進展する1.5℃の世界観、②成り行きで温暖化が進行する4℃の世界観を整理し、それぞれの世界において、当社事業への影響度が大きいと想定される気候変動起因のドライバーを抽出・整理しました。
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当社の「社会価値創生領域」に関する気候変動起因のドライバー |
その他の気候変動 起因のドライバー |
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ヘルスケア |
グリーン(GX) |
マテリアル |
インダストリー |
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1.5℃の世界 |
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・脱化石燃料化、CO2フリー燃料の普及 ・再生可能エネルギー比率の上昇 ・EVシフト ・CO2回収・利用の実用化 ・バイオマス資源活用の拡大 |
・素材の軽量化・高強度化 ・蓄電池・蓄電システム需要の拡大 |
・モーダルシフト、物流の脱炭素化 ・カーボンニュートラルに向けた社会の電化とデジタルインフラの強靭化 |
・カーボンプライシングの導入・強化 ・エネルギー集約度が高い産業の製品高騰 ・環境配慮製品の浸透・需要増大 ・技術開発競争の激化 |
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4℃の世界 |
・気温上昇に伴う感染症の増加 |
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・社会インフラの強靭化 |
・風水災の頻発化・激甚化 |
これを起点とし、IEA(国際エネルギー機関)の気候変動シナリオ等を参考に、様々な産業分野でカーボンニュートラルに関する研究や技術開発等の進展が予想される中、当社事業に関連する主なリスクや機会を整理し、シナリオ分析を行いました。
2. 気候変動シナリオに基づく事業・戦略・財務への影響について
脱炭素シナリオ(1.5℃)、現行シナリオ(4℃)に照らした分析の結果、当社の事業・戦略・財務への影響について、以下のように評価・整理しました。
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1.5℃の世界 |
化石燃料を使用するエネルギー、発電、輸送機などの産業においては、脱炭素社会への移行に伴い当社製品の需要減少が懸念されます。一方で、様々な産業において、クリーンエネルギー、バッテリー、新素材等に関する研究開発や生産設備・インフラへの投資が進み、研究開発関連の分析計測機器など、当社製品の需要拡大が期待されます。 |
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4℃の世界 |
物理的リスクの影響が大きくなるため、社会インフラの強靭化が喫緊の課題となり、その補強・更新に向けた各種試験機器の開発・供給ニーズの高まりが予想されます。また、気温上昇に伴う媒介性感染症の発症地域の拡大など、医用分野の市場環境にも変化が予想されます。他方、物理的リスクに起因するサプライチェーンの途絶により、当社の事業活動が停止に追い込まれるなどの悪影響を受ける事態も想定されます。 |
・気候変動シナリオに基づく当社の事業・戦略・財務への影響について
当社は、積極的な省エネ推進や再エネ活用により、事業活動におけるCO2排出量の削減に努めるとともに、使用電力の再生可能エネルギー100%を目指す国際的な環境イニシアティブ「RE100」にも加盟しています。また、医薬・医療・環境・エネルギー・半導体・素材など様々な産業に製品・サービスを提供しており、お客様の産業の裾野が幅広いという特徴を有しています。このため、特定の産業の規模縮小といったリスクの発現が当社の財務に甚大な影響を及ぼす可能性は小さいと考えます。
また、気候変動による機会については、「1.5℃の世界」「4℃の世界」のいずれにおいても様々な産業・分野で想定されますが、「1.5℃の世界」の実現に向けた取り組みが社会全体のリスク低減につながると認識しており、当社も1.5℃目標を実現させるべく事業活動を通じて取り組んでいます。具体的には、当社はすべての製品を省エネなど環境に配慮した設計にするとともに、特に環境性能に優れた製品である「エコプロダクツPlus」の売上比率を引き上げ、かつ気候変動への緩和・適応に貢献する製品の開発投資・供給を継続します。
総じて、当社の事業・戦略・財務は、次項の移行計画に沿った対応や取り組みの推進を通じて、気候変動の機会を適切に捉え持続的成長を実現していくことにより、気候変動に対しレジリエント(強靭)な状態を維持することが可能であると考えます。
3. 脱炭素社会に向けた移行計画
・気候変動の緩和(1.5℃目標の達成)
当社グループは、パリ協定に整合した1.5℃目標の達成に向けて、事業活動からのCO2排出量を2050年に実質ゼロとする目標を設定し、CO2排出量の削減に積極的に取り組んでいます。また、サプライチェーンでのCO2排出量の削減に向けて、「お客様先での当社製品使用時のCO2排出量」に関する削減目標を設定しています。
・機会の獲得と最大化
気候変動の緩和・適応に資する製品を戦略的に開発・供給し、お客様の事業における脱炭素の取り組みに貢献していくことで、持続的な成長につなげていきます。また、当社製品需要の変化に応えるべく、開発基盤や供給体制の強化を進めていきます。
<リスク管理>
当社グループの事業・戦略・財務に影響を与えうる気候変動リスクは、環境経営統括室が主体となって各事業のリスクの洗い出しを行い、気候変動シナリオを参考に、重要度が高いリスクを特定しています。特定・評価した結果は、「環境会議」において討議・確認しています。
<指標及び目標>
当社グループは、2050年までに事業活動で排出するCO2を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることを目指します。
・2050年目標
事業活動で排出するCO2を実質ゼロとする。
使用電力の再生可能エネルギー比率を100%とする。
・2040年目標
事業活動で排出するCO2を2017年度比で90%以上削減する。
・2030年目標
事業活動で排出するCO2を2017年度比で85%以上削減する。(*)
当社グループが販売した製品使用時のCO2排出量を2020年度比で30%以上削減する。
* 島津グループの2030年度CO2排出量の削減目標は、科学的根拠に基づいた削減を促す国際イニシアティブ「SBT(Science Based Targets)」から、パリ協定における「産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃未満に抑える水準と整合した目標」として認定されています。
(人的資本)
<戦略>
1. 島津人財戦略
人は会社にとって最大の財産であり、島津グループの競争力の源泉は人財の力にあります。社員が社是である「科学技術で社会に貢献する」を実践し、技術開発力と社会実装力の両輪で世界のパートナーと共に社会課題の解決に取り組むことで、持続的な企業価値の向上を目指します。人財戦略では、「Leadership & Diversity」のスローガンのもと、多様なパートナーと連携し、社会課題の解決に向けたイノベーションをリードできる人財の創出・獲得を推進します。
2. 人財育成方針
当社グループが求める人財を、高潔な倫理観を持ち、多様な視点や専門性を活かし、果敢に挑戦し、やり遂げ、自ら成長する人財と定義し、社員が自律的に取り組み、挑戦し、常に学び成長する企業文化を醸成します。また、当社では『島津アカデミー』を開講し、事業戦略の実現、経営基盤強化のため、経営幹部候補育成やビジネスリーダー育成、高度専門人財育成を推進しています。革新的な技術を社会実装するには、いち早く製品やサービスなどトータルソリューションを提供し、成功と失敗から学び、次の手段を打てる力が求められます。『島津アカデミー』では学びと経験を実践するカリキュラムを提供します。
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企業文化の醸成 |
当社では、社員が事業や文化・歴史を深く学び、企業文化を醸成する取り組みを推進しています。「Leadership & Diversity」のスローガンのもと、多様性への理解を深めるとともに、リーダーシップを発揮できる環境づくりを推進しています。全ての社員が自律的に挑戦し、学び続けることで、学びと成長を基盤にした企業文化を醸成すると同時に、社会価値の創出へとつながる取り組みを展開しています。 |
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事業戦略・経営基盤強化のための人財育成 |
・経営幹部候補育成 事業戦略、経営基盤の強化を推進する上で、経営幹部の育成は当社の重要テーマです。当社では1997年より「経営塾」を始め、島津グループの成長を牽引する経営幹部候補の育成に取り組んできました。2023年度より新たに経営幹部候補育成プログラム「経営塾アドバンス」、「経営塾」を開始しました。社外派遣による知識の習得に加え、グループ会社の経営など実践的タフアサインメントの付与との両輪による経営幹部候補の育成を推進し、経営人財プールの拡充を図っています。 ・ビジネスリーダー育成 高度な技術を社会実装していくため、ビジネス課題を解決しメンバーを統率して事業を牽引していくビジネスリーダーの育成は、当社グループの重要なテーマです。本社・海外グループ会社のマネージャー層を対象に状況対応型リーダーシップ研修を実施しており、2024年度からは社内講師も育成し国内グループ会社への展開に取り組むなど、グローバルで事業を牽引するビジネスリーダーの育成に取り組んでいます。このほか、海外現場研修、省庁への派遣など、若手社員も含め幅広くビジネスリーダーの育成に取り組んでいます。さらに本社では、次世代リーダーの育成研修として部長および課長候補者を対象とした「TORINOME」、「MUSHINOME」の2つのコースを新たにスタートしました。次のポストで必要な視野・視座、経営知識やリーダーシップを早期に習得します。経営幹部候補人財と併せて、事業や組織の中核を担う後継者人財のパイプラインを強化しています。 ・高度専門人財育成 グループの成長には、日々の技術力向上と高い専門性が不可欠であり、世界の優れた専門家と協業し新たな技術や事業機会を生み出す人財、高品質の新製品を生み出すための開発・設計力を持つ人財、高度な管理業務を遂行する人財、データを利活用してビジネス・業務を変革する人財の育成が必要です。これらの専門人財を育成するため、当社では資格取得奨励制度や教育研修による支援を行ってきました。2021年度からは大学と共同で博士課程での若手技術者・研究者の育成を行い、2024年度からは社会人博士育成支援制度を開始し、社員の博士号取得を支援しています。また、高度な国家資格や社内資格をオープンバッジで認定することで、社員の専門性獲得を促進しています。2025年度からは、国内グループ会社の社員にもオープンバッジの発行を広げる予定です。将来的には、グローバルに活動を広げて、世界各国で専門人財の育成に取り組んでいきます。 |
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3. 社内環境整備方針
当社は、多様な人財が、健康で働きがいを感じ、夢と成長の実現に向けた新たな挑戦ができる職場を「Well-Beingな職場」と定義し、目標とする職場づくりのため、多様性を活かす組織風土、挑戦マインドを育む人事制度、健康で安全な職場、コンプライアンス徹底の実現に向けた施策を推進します。
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多様性を活かす組織風土づくり(DE&Iの推進) |
・多様な人財の獲得と活躍 当社は、国籍・性別・経験に関わらず多様で優秀な人財の獲得と活躍の実現を目指しています。特に、高度な技術的専門性や経営管理スキルを持つ専門人財の確保のため、技術系・事務系インターンシップや、外国大学の学生が日本で就業するためのプログラムへの参加など、様々な採用活動を進めています。また、女性社員の積極採用やキャリアデザイン研修を通じて、女性管理職比率の向上に取り組んでいます。当社が事業を行う多くの国・地域から本社への受入制度を整備し、海外人財の受け入れを拡大しています。
*1 いずれも当社の状況です。 *2 2024年度の採用活動実績です。 ・柔軟な勤務制度 当社は、生産性の向上や育児・介護など社員一人ひとりの事情に応じた働き方を実現するため、フレックスタイムやテレワークといった柔軟な勤務制度を導入しています。今後はグループにおける多様な人財獲得・定着の観点から、グループ会社にも柔軟な勤務制度を展開していきます。 |
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挑戦マインドを育む人事制度づくり |
・人事制度改革/評価制度改革 当社は、社内公募制や全社業績表彰などの各種表彰制度を通じて、社員が自律的に挑戦していくことを奨励しています。また、2024年度よりマネジメント系列とプロフェッショナル系列からなる複線型人事制度を導入しました。今後、社員一人ひとりが自律的に専門性を高め、それぞれの強みを活かし、様々な挑戦を通してキャリアアップしていくことで、社員の挑戦マインドとエンゲージメントの向上を目指します。 |
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健康で安全、コンプライアンスを徹底する職場づくり |
・健康経営 当社は、健康増進イベントや、自社技術に基づく乳房専用PET検査・軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査の社員や社員の家族への還元をはじめとした健康経営施策に取り組んでおり、2025年まで健康経営優良法人(ホワイト500)に9年連続で認定されています。今後は健康増進アプリの展開など、国内外のグループ全体を含めたグローバルな健康増進活動を推進し、社員のさらなるWell-Being向上を図ります。 ・安全衛生 当社は、法定の安全教育だけにとどまらず、各職場でのチーム学習における動画教材による安全教育や危険体感研修などを通じた安全意識の涵養と、職場巡視活動の徹底による安全リスクの低減に取り組んでいます。今後はこの活動をグループ会社に広く展開するとともにリスクアセスメントの強化を図り、休業災害ゼロの実現を目指します。 ・コンプライアンス 当社では、社員の行動指針である「島津グループ企業倫理規定」の内容を詳解する「島津グループ企業倫理行動ガイドライン」を作成し、企業倫理意識の浸透を図っています。また、本社・グループ会社において、毎年e-learningまたは学習冊子による企業倫理教育やハラスメント防止研修を実施しているほか、集合研修等によるコンプライアンス研修を実施しています。 |
<指標及び目標>
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(1) 人財育成方針に関する指標及び目標 |
*1 当社の状況です。 *2 当社および国内グループ会社の状況です。 *3 博士号のほか難易度の高い国家資格等保有者(技術士、弁理士、機械設計技術者1級、第1種・第2種電気主任技術者、IT系資格レベル4相当、弁護士、公認会計士、税理士、MBA等)、社内資格保有者 |
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(2) 社内環境整備方針に関する指標及び目標 |
*1 当社の状況です。 *2 当社および国内グループ会社の状況です。 *3 その他は当社およびグループ会社の状況です。 |
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当社グループでは、リスクマネジメントの最高責任者である社長の下、審議機関として半期ごとに「リスク・倫理会議」を開催し、当社が優先して対策を講じるべきリスクやコンプライアンスに関わるリスクに対する取組について報告し必要事項を決定しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 国内外の市場の動向
当社グループは、当社(日本)と世界各地の子会社が密接に連携し、各地域の市場規模や産業構造に応じて販売戦略を策定・実行しています。しかしながら、日本を含む世界各国の政策や景気動向、設備投資動向などにおいて、戦略策定時には予期できなかった変化が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、戦争やテロ行為、疫病の蔓延等がもたらすサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰は世界各国の経済活動を停滞させ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外での事業活動
当社グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上高の増加、コストの削減および収益性の向上を目指しています。海外での事業活動を支える経営基盤を強化し、適正かつ効率的な運営を実現するため、「島津グループマネジメント基本規定」を制定して必要な統制、管理を行っています。さらに各地域の主要な子会社に域内のガバナンスを統括する機能を持たせ、各地域におけるリスクの把握と適切な対応に努めています。最近の国際情勢変化に対しては、社内外のリソースを活用して情勢をモニタリングし、グループ内で情報を共有・周知し、変化に対応しています。しかしながら、海外での事業活動には、予期できない法律や規制および政策の変更、産業基盤の脆弱性、国家間の貿易制限措置および報復措置、テロ、戦争その他の要因による社会的または政治的混乱といったリスクがあるため、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 製品品質
当社グループは、ISO規格の認証を受けた品質システムを構築し、「品質保証基本方針」を定め、開発・製造・販売・サービスなど製品ライフサイクルの各段階での絶え間ない改善を通して、優れた品質で顧客にとって最大の価値を生み出す製品・サービスを提供するように努めています。また、顧客の満足を得る上で、基本的かつ重要である製品安全性のさらなる向上を目指した「製品安全基本方針」により、グループ一丸となって顧客の安全と信頼を最優先に行動することを宣言しています。しかしながら、想定が難しい多様な環境下での製品使用による品質トラブルや製品安全への懸念などが発生する場合には、当社グループの信頼性やブランド力の低下にも繋がり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新製品開発力
当社グループの事業は、専門性が高く、高度な技術力を必要とします。そのため、新製品・新技術の研究開発には多額の投資を行っていますが、商品化遅れや、市場ニーズを満たす新製品を開発できない場合には、競合力の低下や市場トレンドに沿ったビジネスの取り込みが進まないことにより、将来の事業成長と収益性が低下し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 購買調達
当社グループは、品質および環境面で当社グループの要求を満たす原材料やサービスを安定的に入手するため、信頼のおける調達先を選定しています。また、重要な原材料等について一定の在庫を確保するとともに、代替調達先の選定、特定調達先に依存しないよう自社における生産能力獲得等を実施しています。しかしながら、自然災害や疫 病、事故、調達先の倒産に加え、地政学リスクなどにより、原材料等が不足または供給量が制限され当社グループの生産活動に影響を及ぼす場合があります。また、長期にわたる原材料等の供給悪化や、急激に調達価格が高騰する場合には、機会損失の発生や製品の価格競争力の低下、利益率の悪化等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 人材確保
当社グループの事業成長に必要な人材は、研究開発に従事する人材をはじめ、製造業各社にとっても必要な人材候補と重なります。そのため採用活動においては企業間の獲得競争になることがあります。特に当社の研究開発部門の多くが所在する日本では、今後、労働人口の減少を背景に、社内需要を充足出来なくなるリスクがあります。また、当社における人材定着率は比較的安定していますが、日本の労働市場における人材流動化が一層進展した場合、社員の離職が増加するリスクがあります。これに対応するため、当社ではインターンシップやカムバック採用などの多様な採用活動を通じて、グローバル人材、博士等の専門人材、即戦力人材の採用に力を入れています。また、人材流出を防ぐための魅力的な処遇への改善や柔軟な勤務制度の整備、社員の強みを活かす複線型人事制度の導入、自律的なキャリア形成を支援する社内公募制の実施、65歳定年制による豊富な経験やスキルを持った人材の確保を通じて、事業への影響を低減させるべく取り組んでいます。しかしながら、有能な人材の確保が出来ない場合や、人材流出を防止出来ない場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 法令・規制
当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、独占禁止法令など、国内外の各種法令、行政による許認可および規制の適用を受けており、その遵守に努めています。また、当社グループでは、法令の遵守のみならず、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定めています。集合研修やe-learningなどの教育活動により、当該規定の内容を啓発・浸透させることでコンプライアンス上の問題発生の予防に取り組むとともに、上記法令等への対応状況を適時にモニタリングすること、内部通報窓口を社内外に設置し、問題発生時の報告体制を整備することなどにより、当社グループにおけるコンプライアンスの実効性を担保しています。しかしながら、法令・規制に対する理解が不十分、または予期せぬ変更への対応が適切でない場合等には、コンプライアンス違反と判定され、過料、課徴金等による損失や営業停止等の行政処分、または信用の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 知的財産権
当社グループは、現在の事業活動および将来の事業展開に有用な知的財産権を取得できるよう、研究所、事業部、知的財産部が一体となり知的財産創出活動を行っています。一方、他社知的財産権の調査・検討体制を整備し、問題発生を未然に防止するよう努めています。また、技術者を対象とした知的財産研修会を定期的に開催することにより、技術者の知的財産に対するスキルの底上げを図っています。しかしながら、権利範囲の解釈によっては他社との間に知的財産紛争が生じる場合があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 環境規制・気候変動への対応
当社グループは、気候変動、水質汚濁、大気汚染、騒音、土壌汚染、廃棄物、使用する有害化学物質などにおいて、国内外の様々な環境法令および規制等の適用を受けており、その遵守に努めています。さらに、ISO14001の国際規格に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、第三者認証を受けています。「TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同し、気候変動対策を含めた環境情報の適切な開示を行うとともに、環境課題の解決に向けてリスクや機会を踏まえながら適切に取り組んでいます。しかし、将来、環境規制への適応が極めて困難な事象や不測の事態が発生する場合には、環境対応に関する費用の増加や事業活動の停止など、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティ
当社グループは、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報などの機密情報を保有しています。当社グループでは、IT資産の盗難・紛失などを通じた情報漏洩や、サイバー攻撃による改ざん・流出・システム停止等の被害を防ぐために情報セキュリティ推進体制を構築し、「島津グループ 情報セキュリティ基本方針」を定め、外部からの不正侵入防止、データの暗号化、社外向けWEBサイトの情報漏洩・改ざん防止などのセキュリティ対策を実施しています。また、ネットワークやIT資産に対するセキュリティ対策はもとより、従業員への定期的な情報セキュリティ教育も実施しています。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃や、予期せぬ不正利用などにより、重要情報や個人情報の漏洩や事業活動停止などの被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 自然災害等
当社グループは、大規模地震を始めとする災害や新型インフルエンザ感染症の発生等を想定し、必要とされる安全対策の実施、早期復旧のための事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、および防災訓練等の対策を講じています。また、新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、感染症の感染拡大防止のための様々な知見を獲得しました。しかしながら、当社グループの事業活動はグローバルに展開されていることから、新たな感染症の流行や自然災害等が発生する場合のリスクを全て回避・管理することは困難であり、想定外の規模の被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 為替変動の影響
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、外国通貨建て取引にかかる事業活動は為替変動によるリスクに晒されています。為替変動リスクは、現地生産体制や、為替予約等により、最小限に抑える努力をしていますが、影響を完全に排除することは困難です。また、連結財務諸表の作成においては、各地域の現地通貨建ての項目を円換算しているため、換算時の為替レートにより、換算後の価値が変動します。通常、他の通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響となり、過度な為替相場の変動は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 国際税務
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、グループ内でも相互に取引を行っていることから、移転価格税制等の国際税務リスクが伴います。各国の税法に準拠した適正な納税を行っており、国際税務リスクについて細心の注意を払っていますが、各国の税制の変化や税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要はつぎのとおりです。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の経営成績は、売上高5,390億4千7百万円(前年度比5.3%増)、営業利益717億2千万円(同1.4%減)、経常利益720億1千8百万円(同6.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益537億7千6百万円(同5.7%減)となりました。
セグメントごとの経営成績はつぎのとおりです。
なお、当連結会計年度より、従来「航空機器」に含まれていた磁気探知機/磁力計、水中光無線装置の業績を、「産業機器」へ移管しています。以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
・計測機器事業
売上高3,479億1千5百万円(前年度比2.9%増)、営業利益520億7千3百万円(同9.4%減)となりました。
・医用機器事業
売上高725億6千7百万円(前年度比0.4%増)、営業利益42億6千3百万円(同10.8%減)となりました。
・産業機器事業
売上高723億3千5百万円(前年度比9.4%増)、営業利益104億6千7百万円(同41.6%増)となりました。
・航空機器事業
売上高386億6千2百万円(前年度比34.5%増)、営業利益60億6千8百万円(同73.4%増)となりました。
・その他の事業
売上高75億6千6百万円(前年度比16.6%増)、営業利益6億3千万円(同39.6%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ220億4千3百万円減少し、1,371億9千万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況はつぎのとおりです。
・営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、520億2百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ218億7千4百万円増加しました。その主なものは、仕入債務の増減による増加148億9千5百万円、法人税等の支払額の減少47億1千3百万円、棚卸資産の増減による増加29億6千4百万円です。
・投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ71億7千4百万円支出が増加し、231億7千3百万円の支出となりました。その主なものは、設備投資による支出151億2百万円、子会社株式の取得による支出65億4千6百万円です。
・財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ273億1千万円支出が増加し、484億9百万円の支出となりました。その主なものは、自己株式の取得による支出250億4百万円、配当金の支払額182億5千万円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
計測機器 |
345,501 |
△1.6 |
|
医用機器 |
71,834 |
△3.5 |
|
産業機器 |
72,223 |
6.1 |
|
航空機器 |
38,920 |
29.7 |
|
その他 |
7,579 |
15.6 |
|
合計 |
536,058 |
1.1 |
(注) 金額は、販売価格によっています。
ロ. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期比(%) |
|
計測機器 |
350,331 |
4.6 |
113,996 |
2.2 |
|
医用機器 |
71,042 |
△4.5 |
23,366 |
△6.1 |
|
産業機器 |
70,230 |
8.1 |
14,467 |
△19.5 |
|
航空機器 |
57,655 |
26.6 |
83,879 |
29.3 |
|
その他 |
8,213 |
32.1 |
3,227 |
25.1 |
|
合計 |
557,473 |
6.0 |
238,937 |
7.7 |
ハ. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、つぎのとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
計測機器 |
347,915 |
2.9 |
|
医用機器 |
72,567 |
0.4 |
|
産業機器 |
72,335 |
9.4 |
|
航空機器 |
38,662 |
34.5 |
|
その他 |
7,566 |
16.6 |
|
合計 |
539,047 |
5.3 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容はつぎのとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ. 財政状態
当連結会計年度末は、前連結会計年度末に比べ無形固定資産が57億3千万円、退職給付に係る資産が49億3千万円、受取手形、売掛金及び契約資産が43億1千8百万円、棚卸資産が15億8千3百万円それぞれ増加しましたが、現金及び預金が218億7千万円減少したことなどにより、総資産は17億8千5百万円減少し、6,721億7千7百万円となりました。純資産は、自己株式の取得により250億4百万円、為替換算調整勘定が33億8千6百万円、その他有価証券評価差額金が30億4千5百万円それぞれ減少しましたが、利益剰余金が353億1千7百万円増加したことなどにより、57億3千1百万円増加し、4,980億6千6百万円となりました。
ロ. 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻や中東紛争等の地政学リスク、中国経済の停滞や米国の関税政策、インフレによるコスト増加等、依然として不透明な状況が続きました。
このような経営環境下で、当社グループは前年の中国市場の落ち込みを受けての厳しいスタートとなる中、ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4注力領域で、中期経営計画で掲げる事業戦略を展開し、世界のパートナーと共に社会課題の解決に取り組みました。
具体的には、「重点事業*1強化」では、ロボティクス・AIの活用等により競合力ある計測機器新製品の開発推進と、顧客のワークフロー全体へのトータルソリューション提供を目指した製品ラインアップ強化に取り組みました。
「メドテック事業*2の強化」では、臨床市場における事業基盤構築に向けて、臨床市場向け質量分析システム、試薬、ソフトウェアのラインアップ拡充に努めました。また、医用画像解析にAIやIoT技術を用いた“イメージングトランスフォーメーション”を推進して、2024年4月に光学カメラ搭載のX線撮影システムを発売しました。
「海外事業の拡大」では、北米で開発機能強化を目的に2024年4月にR&Dセンターを開所したほか、中国では地産地消を目指して2024年12月に新工場を開所し製造機能を強化しました。
「リカーリングビジネス*3の強化・拡大」では、2024年4月に北米の計測機器メンテナンスサービス会社Zef Scientific, Inc.を買収して北米におけるアフターサービス事業の強化・拡大に注力しました。
また、お客様(領域)中心志向への体制変革として、2024年4月から国内営業を本部制に移行し、事業部間連携の強化、お客様への最適なトータルソリューションの提供等の営業活動を推進したことも成長に繋がりました。
*1.重点事業:液体クロマト分析システム、質量分析システム、ガスクロマト分析システム、試験機、ターボ分
子ポンプの5事業
*2.メドテック事業:健康管理、検査、診断、治療、予後管理において、医用画像システムや血液等の成分を分
析するシステムを用いてトータルソリューションを提供する事業
*3.リカーリングビジネス:試薬、培地、カラムなどの消耗品や、機器のメンテナンスサービスを提供する事業
以上の結果、当連結会計年度の業績は、日本、北米、その他のアジアが増加したことや、為替の押し上げも加わり、売上高は5,390億4千7百万円(前年度比5.3%増)となり、過去最高を更新しました。一方利益面では、価格改定を進めたものの、部材価格の高騰、将来に向けての研究開発費やDX投資などの成長投資の増加に加え、人的投資も増加させた影響を、売上増による利益増で補うことが出来ず、営業利益は717億2千万円(同1.4%減)となりました。経常利益は720億1千8百万円(同6.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は537億7千6百万円(同5.7%減)となりました。
セグメントの経営成績は、つぎのとおりです。
なお、当連結会計年度より、従来「航空機器」に含まれていた磁気探知機/磁力計、水中光無線装置の業績を、「産業機器」へ移管しています。以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。
・計測機器事業
計測機器事業は、ヘルスケア領域の医薬品市場で世界的に進む研究開発向けやアジアを中心にした品質管理向けに液体クロマト分析システム、光分析システムが増加し、メドテック領域の臨床市場向けに質量分析システムが増加しました。加えて、グリーン/マテリアル領域で新素材開発向け等に試験機が増加しました。地域別では、日本、北米、欧州、その他のアジア等の主要地域で伸長しました。
この結果、当事業の売上高は3,479億1千5百万円(前年度比2.9%増)となりました。営業利益は上期の生産抑制による影響に加え、研究開発費などの成長投資と人的投資を進めたことで520億7千3百万円(同9.4%減)となりました。
なお、主要地域別売上高の状況は下記のとおりです。
|
|
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
概況 |
|
|
日本 |
127,179 |
131,029 |
3.0 |
医薬向けに液体クロマト分析システム、質量分析システム、光分析システム、水質管理向けに水質計測システムが増加。新素材開発向けに試験機が増加。 |
|
|
海外 |
211,077 |
216,886 |
2.8 |
海外売上高比率が62.3%と0.1pt減少。 |
|
|
主要地域
|
北米 |
34,123 |
39,026 |
14.4 |
特定顧客向けに液体クロマト分析システムや、受託分析会社向けに質量分析システムが増加。また、連結化した、マルチベンダーサービス*事業を展開するZef Scientific, Inc.の業績も貢献。 |
|
欧州 |
38,864 |
40,889 |
5.2 |
臨床検査向けに液体クロマト分析システムや質量分析システムが増加。 |
|
|
中国 |
74,746 |
67,779 |
△9.3 |
政府の景気支援策により官公庁やアカデミアの需要が回復傾向にあるものの、民間市場の回復遅れの影響を受け液体クロマト分析システムをはじめ全体的に減少。 |
|
|
その他の アジア |
45,620 |
47,889 |
5.0 |
インドの医薬や受託分析向けに液体クロマト分析システムが増加。加えて、東南アジアで品質管理向けに試験機が増加。 |
|
*メーカーを選択することなく、お客様が使用中のすべての装置の修理・メンテナンスを提供するサービス形態のこと
・医用機器事業
医用機器事業は、メドテック分野での中心事業として、健康寿命の延伸と医療従事者の業務効率化を実現するために、画像解析にAIやIoT技術を用いた“イメージングトランスフォーメーション”戦略を展開しました。日本、中国、欧州では市況回復遅れの影響を受けたものの、病院の経営環境が持ち直した北米でX線TVシステムが、成長著しいその他のアジアでX線TVシステム、血管撮影システムが増加しました。
この結果、当事業の売上高は725億6千7百万円(前年度比0.4%増)となり、営業利益はプロダクトミックスの悪化等により42億6千3百万円(同10.8%減)となりました。
なお、主要地域別売上高の状況は下記のとおりです。
|
|
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
概況 |
|
|
日本 |
34,373 |
33,957 |
△1.2 |
頭部と乳房の検査が可能なPETシステムや放射線治療装置用動体追跡システムが増加したものの、市況回復遅れによりX線関連システムが減少。 |
|
|
海外 |
37,929 |
38,609 |
1.8 |
海外売上高比率は53.2%と0.7pt増加。 |
|
|
主要地域
|
北米 |
10,619 |
12,134 |
14.3 |
病院の経営環境が持ち直し、X線TVシステム、血管撮影システムが増加。 |
|
欧州 |
4,785 |
4,113 |
△14.0 |
東欧でX線TVシステムが増加したものの、前年度回診装置大口案件の反動や市況回復遅れにより減少。 |
|
|
中国 |
5,685 |
3,941 |
△30.7 |
市況回復遅れの影響や、腐敗防止強化による入札案件が遅れたことで、X線TVシステムや一般撮影システムが減少。 |
|
|
その他の アジア |
7,279 |
8,668 |
19.1 |
東南アジアでX線TVシステム、血管撮影システムが伸長。加えて、インドで血管撮影システムが増加。 |
|
・産業機器事業
インダストリー領域の中心事業である産業機器事業は、ターボ分子ポンプは中国で太陽電池用薄膜製造装置向け等が減少した一方、半導体需要の拡大に伴い日本、北米、その他のアジアで半導体製造装置向けが増加しました。工業炉は中国で車載用セラミック製造向けが増加しましたが、油圧機器は市況回復遅れの影響を受け減少しました。
この結果、当事業の売上高は723億3千5百万円(前年度比9.4%増)、営業利益は売上高の増加により104億6千7百万円(同41.6%増)となり、いずれも過去最高を更新しました。
なお、主要地域別売上高の状況は下記のとおりです。
|
|
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
概況 |
|
|
日本 |
27,126 |
31,472 |
16.0 |
半導体製造装置向けターボ分子ポンプが製品、サービス共に伸長。加えて、先端炭素材料製造向けに工業炉が増加。 |
|
|
海外 |
38,983 |
40,863 |
4.8 |
海外売上高比率は56.5%と2.5pt減少。 |
|
|
主要地域
|
北米 |
8,548 |
8,797 |
2.9 |
半導体製造装置向けターボ分子ポンプが製品、サービス共に増加。 |
|
欧州 |
4,679 |
4,225 |
△9.7 |
半導体製造装置向けターボ分子ポンプのサービスは伸長したものの、同装置向けおよび太陽電池用薄膜製造装置向けターボ分子ポンプの製品が減少。 |
|
|
中国 |
19,343 |
19,560 |
1.1 |
前年投資が集中した太陽電池用薄膜製造装置向けターボ分子ポンプの減少を、車載用セラミック製造向けに工業炉が補い増加。 |
|
|
その他の アジア |
6,100 |
8,123 |
33.2 |
半導体製造装置向けターボ分子ポンプが製品、サービス共に伸長。電子基板用ガラス繊維向けにガラスワインダが台湾で増加。 |
|
・航空機器事業
航空機器事業は、日本では政府の防衛力強化方針により、防衛分野向けが増加しました。海外では民間航空機搭載品が堅調なものの、前年増加した補用品の反動により減少しました。
この結果、当事業の売上高は386億6千2百万円(前年度比34.5%増)、営業利益は売上高の増加や採算性改善により、60億6千8百万円(同73.4%増)となりました。
なお、主要地域別売上高の状況は下記のとおりです。
|
|
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
概況 |
|
日本 |
20,431 |
30,544 |
49.5 |
防衛分野で政府の防衛力強化方針により、航空機搭載品が増加。 |
|
海外 |
8,305 |
8,117 |
△2.3 |
海外売上高比率は21.0%と7.9pt減少。 |
|
主要地域 北米 |
7,312 |
7,415 |
1.4 |
民間航空機搭載品が堅調に推移し増加。 |
・その他の事業
当事業の売上高は75億6千6百万円(前年度比16.6%増)となり、営業利益は6億3千万円(同39.6%減)となりました。
(注) セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでいません。
当社グループは、2023-2025中期経営計画において、最終年度の目標数値として、売上高5,500億円以上、営業利益800億円以上、営業利益率14.5%以上、自己資本利益率12.5%以上を設定し、取り組んでいます。2年目にあたる当連結会計年度は、売上高5,390億4千7百万円、営業利益717億2千万円、営業利益率13.3%、自己資本利益率10.9%となり、売上高は順調に進捗したものの、営業利益は厳しい結果となりました。また、最終年度については、米国関税政策によるマクロ経済への影響と関税によるコスト増を見込んでおり、売上高・営業利益とも中期経営計画の最終年度目標に対して厳しい進捗を想定しています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、手元資金を次なる成長につなげることを示すキャピタルアロケーション(資本配分)を策定しています。「攻めの財務」をスローガンに掲げ、財務健全性を確保しながら、持続的な成長に必要な戦略的投資を実施します。
イ. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
ロ. 資金需要
当社グループの資金需要のうち営業活動については、当社グループ製品製造のための材料や部品の購入のほか、製造費、販売費および一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費および研究開発費です。
投資活動については、M&Aやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)等の戦略投資、生産能力の拡大・効率化、研究開発環境の整備、DX関連の基盤強化を目的とした設備投資・研究開発投資が主な内容です。今後、社会価値創生領域での事業成長に資する、戦略投資・設備投資・研究開発投資等を継続していく予定です。
ハ. 財務政策
当社グループの当連結会計年度末の借入金等の残高は、前連結会計年度末に比べ2億4千6百万円減少し、13億7千2百万円となりました。
当社グループは、営業活動によりキャッシュを生み出す能力を持っていることなどから、当社グループの成長を維持するために将来必要となる運転資金および設備投資資金を創出・調達することが十分に可能であると考えています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。
連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したうえで行っています。特に重要な見積りを伴う会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。
借入に関する契約
2024年4月1日前に締結した契約については、経過措置により記載を省略しています。また、2024年4月1日以降に新たに締結した契約はありません。
当社グループの研究開発活動は、主として当社が行っており、先端的および基盤的な技術の研究開発と、製品化技術の研究開発を、総合的・有機的に連携させ運営しています。すなわち、コア要素技術である先端分析、革新バイオ、脳五感、AIと、製品基盤技術である機器制御設計、システム統合の領域で研究開発に取り組むことで、基盤事業としての計測機器事業、医用機器事業、産業機器事業、航空機器事業に対する新製品開発を推進しています。
また、子会社においては、独自に研究開発を行うほか、欧州、北米および中国の研究開発子会社において次世代の当社製品の核となる基盤要素技術の研究開発を行うなど積極的な研究開発に取り組んでいます。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
当連結会計年度における主要な研究開発成果にはつぎのものがあります。
<計測機器事業>
計測機器事業では、クロマト分析システム、質量分析システム、光分析システム、熱分析システム、ライフサイエンス関連分析システム、X線分析システム、表面分析・観察システムなどの開発に注力しています。
独自の元素選択技術により、バイオ燃料中の含酸素・含窒素成分だけを選択的に検出できる世界初の元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計「ELEM-SPOT」を開発しました。バイオ燃料の品質評価や業務効率の向上を支援し、カーボンニュートラル社会実現に貢献します。また、イオン源改良と装置状態自動校正機能「パフォーマンス・コンシェルジュ」により感度・安定性・稼働率を大幅に向上させたTQ型LC-MSの新製品「LCMS-TQ RXシリーズ」を開発しました。医薬・環境・食品分野の高感度分析ニーズに応え、ラボの省人化にも貢献します。加えて、6軸ロボットによる無人連続処理で、抗体糖鎖分析の前処理工程を自動化可能な抗体糖鎖自動前処理装置「MUP-3100」を開発しました。製薬企業や医薬品製造受託機関(CMO)、医薬品開発製造受託機関(CDMO)での品質管理の効率化と作業者の安全確保に寄与します。また、信号処理の高速化と制御方法の最適化により、従来比10倍のスループットでナノレベル形状・物性マッピングを実現した、走査型プローブ顕微鏡「SPM-9700HT Plus」を発売しました。高分子・電池材料、ナノ素材のナノテクノロジー・ナノサイエンス革新を支援します。さらに、世界最高水準の秒2,000万コマの撮影速度と高解像度を両立し、材料破壊や衝撃波などの超高速現象を映像として鮮明に可視化する新製品の超高速ビデオカメラ「HyperVision HPV-X3」は、基礎研究から産業開発まで超高速計測の新領域を拓きます。また、TESCAN社との共同ブランド「Shimadzu by TESCAN」第一弾として発売した、試料の前処理低減に有効な低加速・低真空での観察に最適化された走査電子顕微鏡「SUPERSCAN SS-4000」は、歪みのない広域観察やリアルタイムでのビームの自動調整など、SEMユーザーにとって使用上の課題を解決した装置になっています。
<医用機器事業>
医用機器事業では、血管撮影システム、X線TVシステム、一般撮影システム、回診用システム、外科用X線TVシステム、PETシステム、近赤外光カメラシステム、放射線治療関係、医療情報システムなどの開発に注力しています。
透視時に寝台を動かさず視野を移動してERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)や嚥下造影検査の安全性向上と検査時間短縮を実現するX線TVシステム用ソフトウェア「Smart FOV」、医師が音声コマンドで主要操作を可能とすることでカテーテル治療の効率化と術者負担軽減に寄与可能な血管撮影システム向け音声認識機能「SMART Voice」、および操作盤(コンソール)のユーザビリティ改善と被検者の動きを検知する光学カメラ搭載により、検査業務を効率化して診療放射線技師と被検者の負担を軽減するX線一般撮影システム「RADspeed Pro SR5 Version」を開発しました。
<産業機器事業>
産業機器事業では、ターボ分子ポンプ、油圧ギヤポンプ、コントロールバルブ、パワーパッケージ、工業炉、液送ポンプ、ガラスワインダ、動釣合試験機(バランシングマシン)、ヘリウムリークディテクタ、高速スパッタリングシステム、磁気探知機/磁力計、水中光無線装置、光格子時計などの開発に注力しています。
ストロンチウム光格子時計として18桁精度を達成した世界初の小型商用光格子時計「Aether Clock OC 020」を発売しました。次世代時間標準や、高精度測地など一般相対性理論を利用した重力ポテンシャル測定を様々なフィールドで応用できます。
<航空機器事業>
航空機器事業では、フライトコントロールシステム、エアマネジメントシステムなど航空機向けシステムの開発に注力しています。
LiDARとカメラで機体周囲障害物を検知、HMDに表示するヘリコプタ用救助支援システム「HeROSS」を川崎重工業株式会社・セントラルヘリコプターサービス株式会社と共同開発しました。乗組員の監視業務の負担を減らし、安全かつ確実な救助任務の実行に貢献します。
今後も、当社の先端的および基盤的な技術と、製品化技術を用いた研究開発を活かして、社会課題の解決に役立てるよう取り組みます。