第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

新たな「経営理念」に基づき、当社グループの”目指す姿”を実現するために、ニチリンのコア技術となる

”フローエンジニアリング”を軸に行動を実践し、すべてのステークホルダーにとって歓びと豊かな社会づくりに貢献する会社であり続けることを目指しております。

経営理念

価値を創り、形にし、社会に届けるフローエンジニアリングで、人々の歓びと世界の豊かな明日(あす)を育む

 ・部品提供にとどまらず、顧客製品の性能向上とユーザーの安全・快適性を追求する。

 ・人・モノ・情報・価値など、企業活動に関わるあらゆる流れを最適に設計・管理する。

 ・変化へ柔軟に対応できる事業基盤を築き、持続的な成長と豊かな社会の実現に貢献する。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2026年を初年度とする中期経営計画(NICHIRIN Flow Engineering Challenge 2030)を策定し、下記に記載の「7つの全体戦略」を確実に遂行することで、収益構造のさらなる強化と環境変動に左右されにくい経営体質の構築に取組んでまいります。

①ビジョン

新中期経営計画の骨子を「ビジョン」として次のように定めております。

 

<あらゆる配管の開発・製造・販売をメインに、

全ての人・モノ・ことを楽しく幸せにするパイプ役 として発展していく>

 

私たちは、高分子設計技術と、社会と共創する開発姿勢を核に、多様な人材の力を結集し、グローバル全体最適と現地対応を両立した生産体制を展開。モビリティの変化とグローバル環境の変動にも対応できる柔軟で強靭な事業基盤の構築に取り組みます。既存事業の競争力を深化させつつ、社員一人ひとりの挑戦心を力に、100年以上にわたる信頼を礎に、次の100年を見据えて、新たな価値を創り続けます。

 

②成長のロードマップ

中期経営計画では、2030年に目指すべき数値目標を設定し、グローバルな連携の強化と各市場の特性を活かした戦略を推進することで、製品・サービスの価値向上と新市場の開拓を図り、持続的な成長を目指していきます。

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③7つの全体戦略

経営戦略① 既存価値の極大化

空調用配管における異種材料シール技術の高度化、軽量化、低炭素排出などを通じて製品競争力を一層高めるとともに、ブレーキホースにおいてはプレミアム仕様の拡販を推進し、グローバルでの既存商品商権の維持・拡大に取り組んでまいります。

 

経営戦略② 成長ドメインの創出

高付加価値製品の拡販を推進するとともに、4輪・2輪を含むEV用部品の販売拡大を図ります。さらに、新領域への技術展開を通じて社会価値の共創を実現し、持続的な成長に向けた事業基盤を強化します。当社グループは、自社技術を核にアライアンスを活用し、新市場・新製品を計画的に展開してまいります。

経営戦略③ グローバル深耕

重点地域・重点ドメインに資源を最適配分し、持続的な収益成長を実現してまいります。グローバル事業の強化に向け、各地域における現地ニーズの把握と対応力強化を通じて優位性を確立し、地域戦略に基づく体制構築や調達の最適化を推進し競争力を高めてまいります。

基盤戦略① DX戦略

デジタルとAIの活用により変革を起こし、最適なモノ造りと新たな価値創出を実現してまいります。グローバル経営を同じデータ・同じルールで回し、リスクや不確実性に耐える体制(守る力)を強化し、AIの活用などで定型業務の自動化を図り、付加価値の高い創造的な業務へのシフトを推進してまいります。

基盤戦略② 人材戦略

持続的成長と企業価値向上に向けて、人材の獲得・育成・活用を戦略的に推進してまいります。4つの重点領域を定め、人材獲得、挑戦を促進する企業風土の醸成、健康経営の推進、ダイバーシティ&インクルージョンにおいて、方向性を定め、施策を段階的に展開してまいります。

基盤戦略③ サステナビリティの推進

当社グループは、各拠点において、お客様や取引先、株主、従業員、地域社会など多様なステークホルダーに支えられ事業を展開しています。今後も対話と協働を通じて、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指してまいります。

基盤戦略④ 財務・資本戦略

持続可能な企業価値向上に向けた成長投資と資本収益性の改善を通じて、収益性向上と資本最適化を図り、IR・コーポレートガバナンスの強化を推進してまいります。

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(3)経営環境

2026年の世界経済は、国際情勢の不安定化や地政学的リスクの高まりなど不確実性を抱えつつも、全体としては横ばいで推移する見込みです。追加関税を含む保護主義的な政策動向を背景に、通商環境の変化が継続すると見られており、企業活動を取り巻く事業環境は引き続き不透明な状況にあります。

日本経済は、政府の各種経済対策や継続的な賃上げによる所得環境の改善を背景に、個人消費や企業の投資活動が下支えされ、底堅く推移することが見込まれます。一方で、金利動向の影響を注視する必要があるほか、日中関係の行方次第では、対中貿易やサプライチェーンに更なる影響が及ぶ懸念もあり、景気の下振れリスクとして引き続き留意が必要です。

自動車業界においては、EV化の進展に一服感が見られる中、収益性や競争力の確保を重視した事業再編が進められています。また、関税政策の動向や地政学的リスクの高まりにより、半導体やレアアースをはじめとする部材調達の不確実性が高まっており、調達リスクへの対応が業界全体の重要課題となっています。このような環境のもと、自動車メーカーではサプライチェーンの再構築が進められています。当社においても、原材料・物流・関税等のコスト変動を踏まえた顧客との価格転嫁交渉を進めるとともに、商流や調達方針の見直しを通じて、供給の継続性確保に取り組んでまいります。

こうした事業環境を踏まえ、当社グループでは、中期経営計画(NICHIRIN Flow Engineering Challenge 2030)において、新たな経営理念に基づき、経営ビジョン・行動指針も刷新のうえ、変化に対応し、持続可能な成長につながる経営基盤の強化に取り組み、初年度となる本年の計画達成に邁進してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画では、「7つの全体戦略」に従った具体的な「重点施策」を確実に遂行してまいります。

グローバルで加速するEV政策の見直しや中国メーカーの台頭、地域分断化などの環境変化が進む中、当社グループは地球環境への配慮と次世代モビリティへの対応を強化し、自動車分野では軽量化・熱マネジメント対応によるCO₂削減とコスト競争力強化を進めるとともに、住設・インフラなど非自動車領域の製品群を拡大することで、多様な価値を創出し、持続可能な企業集団をめざしてまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画では、NICHIRIN Flow Engineering Challenge 2030(経営数値目標)として、「連結経営目標」を設定しております。初年度である2026年連結目標は、次のとおりです。

・連結経営目標

単位:百万円

2026年12月期目標

売上高

78,000

営業利益

9,300

営業利益率

11.9%

※1USD=150円を想定しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。詳細につきましては、当社ホームページ上で公開している「サステナビリティレポート2024」を参照ください。2026年に最新版発行を予定しております。

 https://www.nichirin.co.jp/toppage/csr/csr16

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンスおよびリスク管理

 当社グループでは、「環境」「社会」「経済」という3つの観点すべてにおいて持続可能な状態を実現する「サステナビリティ経営」を推進し、企業価値の向上を図ることを経営上の重要課題として捉えております。

 なお、「サステナビリティ経営」を推進するために、「サステナビリティ推進室」を設け、同室を事務局とする「サステナビリティ委員会」を設置し、年3回開催(4月、7月、および11月を原則)としています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とする10名の取締役・執行役員で構成され、常勤監査役もオブザーバーとして参加しており、主に下記の役割を担っています。

・サステナビリティ戦略の策定と実行

・取締役会から指示された事項の推進およびサステナビリティに関する事項の取締役会への報告

・外部とのコミュニケーション

 

 当社は、経営目標を大きく妨げると予測されるグループ全体のリスクおよび機会の管理については、常勤の取締役・執行役員・理事職を委員とする「経営会議」で行っています。また、当社およびグループ会社における品質・環境・安全等のリスク管理については、各専門委員会によって、より専門的な立場からモニタリングを含めて実施しています。情報セキュリティに係るリスクは優先順位の高いリスクと位置付け、「情報セキュリティ委員会」により、情報漏洩や情報システムが正常に機能しないリスクに対して事業継続を確保する体制の構築を図っています。

 サステナビリティ推進室では、経営会議で取り扱っているグループ全体のリスクや機会、また各専門委員会で取り扱っている個別のリスクや機会を踏まえ、それに気候変動などに関するシナリオなどを加味して、気候変動などに関するリスクや機会の特定と管理を行っています。

 なお、サステナビリティ委員会と各専門委員会との関係(「監督」、「指示」および「報告」)は、各方針の策定やステークホルダーからの要求への対応など、サステナビリティへの取り組みに関する事項に限定しています。

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(2)気候変動に関する戦略ならびに指標および目標

 2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)において「気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する」と合意された後、COP30まで進んでおり、気候変動対策は私たち人類にとって喫緊の課題となっています。当社グループは、脱炭素社会に貢献する事業の推進を重要課題の一つとして捉え、持続可能な社会の実現に向け、事業活動のあらゆる局面での環境負荷低減を目指した環境経営を推進しています。

 特に、気候変動に関連する課題は「サステナビリティ委員会」と「環境管理委員会」において議論され、それらを踏まえてリスクや機会を抽出し、戦略に落とし込むようにしています。その結果については、取締役会への報告がなされております。

①戦略

 当社グループの事業にとって重要と考えられるリスクと機会、想定リスク(当社グループの事業に影響を与えると思われる要因)、気候変動が中長期で当社事業へもたらす事業活動への影響を以下の通り想定しております。当社はこれらのリスクが発生する可能性や影響度を加味しながら、リスクの回避や発生時の影響を最小限にするための対策とともに、戦略に反映し対応すべく、取り組む方針であります。

 

・シナリオの選定

 気候変動によって生じるリスク・機会のうち、当社への影響が発生する可能性の高いものを評価対象として選定しました。国際エネルギー機関(IEA)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提示する世界の平均気温上昇1.5℃と4℃に相当するシナリオや社内外の情報を参照し、リスクと機会それぞれについて、影響度と発生確率を「1」~「5」の5段階で評価し、各項目の重点施策を洗い出しました。

 

1.5℃シナリオ *1

各国政策のさらなる見直しなど、温室効果ガスの排出規制が強化される

再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギー技術が普及する

炭素税など環境関連の規制が強化される

 

4℃シナリオ *2

従来型の経済成長が続き、気候変動対策に向けた取り組みはあまり進展しない

気候変動の進行により、豪雨や洪水、熱波等の自然災害の発生が激増する

 

*1 IEA World Energy Outlook(NZE、SDS)、Global EV Outlook (NZE)、IPCC(SSP1-2.6、SSP1-1.9)等

*2 4℃:IPCC(SSP5-8.5)等

 

発生確率と影響度

 

発生確率

影響度

5

1年未満

100億円超

4

1~3年

30~100億円

3

3~10年

10~30億円

2

10~30年

3~10億円

1

30年超

3億円未満

 

 

シナリオ分析に基づく評価結果

リスク

分類

リスク内容

2030年

2050年

発現時期

主な対応策

影響度

発生確率

影響度

発生確率

移行

リスク

政策

法規制

炭素税導入による操業コストの増加

4

4

5

4

中期

・カーボンニュートラルに向けた取り組みの強化

・製造工程におけるエネルギー効率の向上

原材料価格の高騰

1

3

1

3

中期

・原材料のロスの低減

・省資源製品の研究開発

評判

気候変動への対応遅れによる投資家からの評判低下

2

5

2

5

短期

・ESG投資の評価の視点を踏まえた取り組みや情報開示

・環境配慮型製品の開発とPR

市場

内燃機関車の販売減少による関連製品の売上減少

1

4

2

4

中期

・市場動向に沿った適切な事業ポートフォリオの構築

・EV車向けの製品開発、拡販

法的責任

気候変動に関連する訴訟リスクの増加

1

1

1

1

長期

・環境配慮の取り組みや適切な情報開示

・法規制等の順守

物理

リスク

急性

異常気象による操業停止やサプライチェーン寸断

3

1

3

1

短期

・サプライチェーンマネジメントの強化

・調達先の複数確保

・水害対策の強化

慢性

高温による労働生産性の低下とコスト増加

1

4

1

4

短期

・労働環境の改善

・高効率空調設備の導入

水ストレス地域における売上減少

2

1

2

1

中期

・節水設備の導入による水使用量の削減

・水の再利用の促進

主要なリスク「炭素税導入による操業コストの増加」

 炭素税など気候変動対策に関する政策・法規制が強化された場合、当社への影響として操業コストの増加が考えられます。IEAのネットゼロシナリオ(NZE)を参考に試算した結果、当社を含む国内外のグループ各社で、2030年には約64億円、2050年には約127億円のコストアップが想定されます。

 そのため、当社では2050年カーボンニュートラル実現に向け、温室効果ガス排出量削減を実施しております。引き続き、当社を含むグループ各社の温室効果ガス排出量の算定や再生可能エネルギー由来の電力使用、製造工程におけるエネルギー効率向上など、温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組み、炭素税による影響の低減に努めます。

 

機会

分類

機会内容

2030年

2050年

発現時期

主な対応策

影響度

発生確率

影響度

発生確率

移行機会

技術

省エネ技術の進展によるエネルギーコスト削減

1

4

1

4

中期

・高効率な生産設備等の導入

・エネルギー効率の向上や製造工程の見直し

市場

EVの販売増加による関連製品の売上増加

1

4

2

4

中期

・市場動向に沿った適切な事業ポートフォリオの構築

・EV車向けの製品開発、拡販

物理機会

急性

レジリエントな生産体制への評価向上

1

1

2

1

短期

・BCMの推進・開示

・サプライチェーンマネジメントの強化

主要な機会「EVの販売増加による関連製品の売上増加」

 市場において、EVなどのゼロエミッション車の需要が増加することで、当社でも関連製品の売上増加が見込まれます。IEAのシナリオ(APS)において、ゼロエミッション車の販売台数は、2024年と比較して、2030年には約4倍、2050年には約8倍に増加すると予測されています。

 当社では、この機会を逸することがないよう、EV車向け製品の市場シェア拡大を目指し、研究開発や品質向上に取り組んでまいります。

 

②指標と目標

 当社では、2050年に当社グループ全体でカーボンニュートラルを達成することを宣言しており、それを実現するためのステップとして様々な目標を掲げています。これらの目標について、温室効果ガス排出量の削減目標に関する国際的な認定機関である「Science Based Targets initiative」(SBTi)の審査を受け、2024年7月にNet-zero基準(世界の平均気温の上昇を産業革命前に対して1.5℃以下に抑えるための基準)に合致した科学的な根拠に基づく目標であると認められました。

時期

目標

短期(2030年)

Scope1・2におけるGHG排出量:42%削減(2022年比)

長期(2050年)

Scope1・2・3におけるGHG排出量:90%削減(2022年比)

ネットゼロ

2050年までにバリューチェーン全体でのGHG排出量をネットゼロにする

短期(2030年)目標の達成状況は次のグラフのとおりとなっています。

0102010_004.png

 

 今後もカーボンニュートラルな社会の実現に向け、様々な取り組みを一層加速させていきます。なお、現時点でのGHG排出量算定結果は以下のとおりとなっています。

単位:tCO2eq

 

提出会社と国内連結子会社

当社グループ全体

2023年

2024年

2025年

2023年

2024年

2025年

Scope1

2,485*1

2,076

2,060

4,952

4,730*2

5,272

Scope2

5,151*1

3,735

2,372

18,374

14,097*2

10,417

Scope1+2

7,636

5,811

4,432

23,326

18,827

15,689

Scope3

199,730

196,834

184,102

376,087

380,705

368,280

Scope1:事業者自らの活動 (燃料の燃焼やフロンの漏洩など) によるGHGの直接排出

Scope2:他社から供給された電気や蒸気などの使用に伴うGHGの間接排出

Scope3:Scope1・2以外のGHGの間接排出 (事業者の活動に関連する他社からの排出)

(注)1.算定結果は小数点以下を四捨五入した値になっています。またScope2はマーケット基準で算定しています。

2.当社は国内連結子会社の製品のほぼ全てを購入し、当社から顧客へ販売しています。当社単独のGHG排出量では実態とかけ離れたものになってしまいますので、国内連結子会社と合わせたGHG排出量を開示しています。

3.2023年度以降、Scope 1・2排出量(表中の*1、および*2印部)は、ビューローベリタスジャパン(株)による第三者保証(限定的保証)を受けています。

なお、限定的保証を受けたGHG排出量は、エネルギー起源CO2・CH4・N2O・HFCに基づくものとなります。

また、当社、および当社の連結子会社16社(国内3社、北米5社、中国2社、アジア4社、欧州2社)のうち、限定的保証の対象は次のとおりです。

*1 次の拠点、および連結子会社となります。

・東京支社

・神戸本社

・浜松営業所

・姫路工場(日輪機工(株)姫路工場とニチリン・サービス(株)を含む)

・日輪機工(株)仁豊野工場

・(株)ニチリン白山

*2 下記3社は除外となります(排出量の算定にも含まれておりません)。

・NICHIRIN MEXICO, S.A. DE C.V.

・NICHIRIN BULGARIA EOOD

・NICHIRIN ATCO TEXAS, INC.

4.当社はサステナビリティ情報の精度向上を目的として、GHG排出量の係数等を見直しました。これにより過年度(2023年度及び2024年度)の一部の数値についても遡及修正を行っております。

 

③社外からの評価

イ.CDP(旧Carbon Disclosure Project)

 CDPは、企業や都市などが自らの環境への影響や対策について情報を公開し、気候変動や水リスクなどの環境問題に対する透明性と行動を促進する非営利団体です。当社グループは、2025年度のCDP評価において、気候変動分野はB、水資源保護分野はA-の評価を獲得しました。

ロ.EcoVadis

 EcoVadisはグローバルプラットフォームを介して包括的な企業の社会的責任評価サービスを提供している評価機関で、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4つのカテゴリーにおいて企業の取り組みを評価しています。ニチリングループは2025年度の評価において、総合得点は59点(パーセンタイルは56)となり、コミットメントバッジを獲得しました。

 

(3)人的資本に関する戦略および指標と目標

①人材育成方針

 ニチリングループは、"価値を創り、形にし、社会へ届けるフローエンジニアリングで、人々の歓びと世界の豊かな明日(あす)を育む"という経営理念のもと、人的資源を「大きな技術革新が進む中で、新たな価値と多様性を兼ね備えた成長戦略を推進していくうえで最大の経営資源」ととらえ、ニチリングループ企業行動憲章に示した行動を実践できる人材を育成します。性別や国籍などの違いにとらわれることなく、従業員の多様性・人格・個性および自主性を尊重しながら、従業員個々にとって有効かつ適切な方法で育成します。

これらの人材育成施策により、「世界情勢の激しい変化に速く(SPEEDY)  気付き(SENSE)、戦略的に(STRATEGICALLY)  誠実に(SINCERITY)  乗り越える(SURVIVE)ことができる人材、そして皆様を満足(SATISFY)と光り輝く笑顔(SPARKLING SMILE)を与え、サステナブル(SUSTAINABLE)に、且つ、時代を超えて継承(SUCCESSION)する」を行動指針として取り組みます。

・教育と研修(提出会社の状況)

 リーダーシップを発揮し、戦略、組織および人材をマネジメントできる人財の育成、グローバル対応力の強化を目的として各種の研修およびセミナーを実施しています。

 当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する会社においては、各社独自での取組みは行っていますが、グループ全社で統一された基準での実施やデータ管理は行われていないため、次の指標に関する実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

2025年度の主な教育実績

研修名

受講実績

人権研修(ハラスメント防止研修)

受講対象者の受講率100%

間接部門の業務改善研修

受講対象者の受講率100%

グローバルリスクセミナー

受講対象者の受講率100%

TOEIC Listening & Reading Test、TOEIC IP TEST

104名受講(前年60名)

社内英会話研修

8名受講(前年10名)

英語基礎力養成講座

30名受講(前年28名)

英語スピーキング力養成講座

17名受講(前年23名)

マネジメント力、専門知識向上のための通信教育

288科目受講(前年283科目)

 

2026年度の主な教育計画と目標

研修名

目標値

多様性受容セミナー

受講対象者の受講率100%

人権研修(ハラスメント防止研修)

受講対象者の受講率100%

次期幹部候補者に対するマネジメント研修

受講対象者の受講率100%

不正防止研修

受講対象者の受講率100%

TOEIC Listening & Reading Test、TOEIC IP Test

昨年実績以上の受検者

英語基礎力養成講座

昨年実績以上の受講者

英語スピーキング力養成講座

昨年実績以上の受講者

DX推進、AI活用人材育成に関する研修

受講対象者の受講率100%

マネジメント力、専門知識向上のための通信教育

昨年実績以上の科目受講

 

一人当たりの教育費(正社員)

2023年実績

2024年実績

2025年実績

91,850円

121,140円

93,039円

 

②社内環境整備方針(提出会社の状況)

 大きく変化する環境の中で、会社が継続的に成長、発展していくためには、従業員の人権が尊重され、健康で生き生きと安心して働くことができる職場環境の実現が重要になります。そのために当社は、ニチリングループ人権方針およびニチリン健康経営宣言のもとで、「心と身体の健康」を育み、実現する職場環境作りを目指します。

1)ハラスメントを防止する取組み

人種、民族、性別、宗教、信条、国籍、出生地、年齢、障がいの有無、性的指向、性自認等を理由とする一切の差別を行いません。ハラスメント防止を宣言し、精神的な嫌がらせ、差別的発言などのハラスメントのない従業員が互いに尊重され、活気ある職場環境を作ります。ハラスメント防止に関する取組みの周知および研修等を通じて、ハラスメント防止意識の浸透を図ります。

2)多様な価値観、人権を尊重する取組み

多様な価値観が互いに理解・尊重され、従業員一人ひとりの特性を生かして、チャレンジできる組織風土を作ります。増加する外国籍社員の価値観理解と尊重のために、多様性受容セミナーを行い、多様な価値観への理解と尊重を促進します。

3)心と身体の健康増進への取組み

職場における良好なコミュニケーションを確保し、従業員一人ひとりの心と身体の健康保持・増進に取り組みます。

また、健康経営の推進体制および諸施策の充実を図り、健康経営優良法人の認定を維持します。

4)過重労働を防止する取組み

労働時間を適切に管理し、過重労働の発生を防止する仕組み作りに取り組みます。労働時間については、法定上限時間を下回るよう労使協定するとともに、過重労働が発生しないよう労使のチェック体制を厳格にします。

5)働き方の多様化実現に向けた取組み

従業員の多様な生き方を尊重し、場所や時間にとらわれない多様な働き方が可能な環境作りに取り組みます。育児・介護とキャリアの両立を支援、促進するため、育児や介護が必要な従業員の把握と相談窓口の設置を行うとともに、サポート施策の充実を図ります。

 

・多様な価値観、人権の尊重、働き方の多様化を実現する指標(提出会社の状況)

指標

目標値

2024年実績

2025年実績

女性雇用比率

20.0

19.2%

19.2

外国人雇用比率(注)1

15.0

14.0%

15.0

フレックス勤務実施人数

144名

157

在宅勤務実施人数(注)2

23名

23

(注)1.当社が指定する主要部門における比率

2.定期的に在宅勤務を実施している1か月あたりの人数

 

(4)健康経営の取組み

 当社は、従業員が心身ともに健康で、個々の能力を最大限に発揮することが持続的な企業価値向上の基盤であると考えています。2019年の「ニチリン健康経営宣言」以降、メンタルおよびフィジカルの包括的な健康増進に取り組んでおり、その継続的な成果として「健康経営優良法人(大規模法人部門)」には8年連続で認定されています。2025年3月からは、社長を委員長とする「健康経営推進委員会」および施策の実施を担う「心と身体の健康専門委員会」が本格始動いたしました。この新体制のもと、健康経営を組織文化として深く浸透させるべく、専門部署である「健康経営推進グループ」が中心となり、現場のニーズに即した施策を迅速に展開しています。今後も、全従業員が安心して生き生きと挑戦し続けられる職場づくりに注力してまいります。

 

・心と身体の健康増進の指標(提出会社の状況)

指標

目標値

2024年実績

2025年実績

健康経営優良法人

認定

認定

認定

ストレスチェック受検率

100

100%

100

定期健康診断受診率

100

100%

100

喫煙率

15以下

26.1%

23.4

ストレスチェック集団分析における総合健康リスク

100以下

96

96

(注)1.特に当社で重視する指標

2.喫煙率は定期健康診断時における正社員の全年齢での数値

3.目標値との乖離が大きい喫煙率については、2024年度から就業時間中の禁煙、禁煙サポート、非喫煙者へのインセンティブの取り組みを実施しています。

4.総合健康リスクとは現状の職場のストレス状態が労働者の健康にどの程度影響を与えるかを判断するための指標で、全国平均を100として、この数値が高いほど労働者の健康リスクが高い状態であることを示しています。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載しました事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業展開上のリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業環境

自動車産業への依存度

 当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、特定の自動車メーカーの系列に属さないものの、自動車業界の動向、顧客企業の業績ならびに顧客の調達方針変更、また、自動車技術の革新等に伴う既存部品の変化などにより、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、新製品の開発、新規事業の発掘、自動車以外の住設分野などの製品群を拡大する等の取り組みを進めております。

 

海外事業展開

 当社グループの生産および販売活動は、日本以外に海外9か国にわたっています。これら海外市場への事業進出には、以下のようなリスクが内在しており、当該事象が当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律または規制の変更による投資機会の逸失、製造・販売の中止、コスト負担の増加等

・不利な政治的または経済的要因の発生

・戦争、テロ、疫病などによる社会的混乱に伴う材料調達、生産、販売および輸送の遅延や中止

 

各国の法令・各種規制

 当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、独占禁止、環境保護等の各種関係法令の適用を受けております。当社グループは、こうした法令および規制を遵守し、公正な企業活動に努めておりますが、万一法令・規制違反を理由とする訴訟や法的手続きにおいて、当社グループにとって不利な結果が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

原材料価格の変動

 当社グループは、製品製造にあたり合成ゴム、補強糸、金属およびゴム部品等の材料を購入しており、これらの価格は原油や金属などの国際相場により大きく変動することがあり、購入価格に影響を受けます。当社グループにおいては、生産改善や経費削減などの原価低減に取り組んでおりますが、原材料価格の著しい変動は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、対応可能な購入価格の上昇に対しては、コスト低減や販売価格への転嫁等により業績への影響を最小限に留め、原材料を安定かつ継続的に購入するよう努めております。

 

 

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業環境

 

 

 

 

 

 

 

部品・原材料の調達

 当社グループが製造において使用する一部の部品・原材料については、品質、価格、納期などから特定の仕入先に依存しているものがあります。効率的かつ低コストで供給を受け続けられるかどうかは、当社グループがコントロールできないものも含めて、多くの要因に影響されますが、仕入先の生産体制、技術・研究開発力や経営状態によっては、当社グループの生産に影響を及ぼす可能性があります。また、国際的な物流問題等により、部品・原材料が入手困難になる可能性もあります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、調達に関する情報収集や対応策の検討、より競争力のある仕入先の開拓を実施してまいります。

 

競争の激化

 当社グループが関連する事業分野において競争が激化し、他社による競争力のある新製品・新サービスの提供、大幅値下げ等の積極的な販売活動の展開、低価格品への需要シフト等が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

為替相場の変動

 当社グループは、日本、北米、中国、アジア、欧州の各事業拠点において生産と販売を行っており、海外取引のウエイトは高まっております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表においては円換算されております。これらの項目は、現地通貨における価値が変わらなくても、換算時の為替レートの変動の影響を受け、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。全てのリスクを軽減することはできませんが、当社グループでは、為替予約等により為替相場の変動リスクを最小限に留めるよう努めております。

 

事故・自然災害等

 火災などの重大事故、地震など大規模な自然災害や人的災害、感染症の拡大等が万一発生した場合は、当社グループはもとより発生地域によっては、顧客または仕入先の生産設備等の被害やサプライチェーンの混乱等による生産への影響が予想されます。当社グループは、こうした事態に対処するため、その被害を最小限にくい止めるための体制の整備に努めておりますが、災害の規模により当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、大規模地震等の発生に備え、耐震補強工事を継続的に進めております。また、大規模地震や感染症の拡大等に見舞われた際の事業の継続または早期再開を目的に、「事業継続計画書(地震)」や「事業継続計画書(感染症)」を制定しております。

 

人材の確保

 当社グループの将来的な成長には事業遂行に必要な人材を採用し、確保し続ける必要があります。今後、優秀な人材の確保・育成が中長期的に計画どおり進まなかった場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 なお、全体戦略の1つとして、グローバル人材の確保と育成を掲げ、リスクの軽減に取り組んでおります。

 

資産の減損

 当社グループは、事業環境が大幅に悪化するなどの場合は、減損損失が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業運営

 

製品の欠陥

 当社グループは、製品の品質は事業を維持、発展させるためのもっとも重要なものの1つであると考え、世界基準や取引先の厳しい品質管理基準を遵守するため各種の施策や対策を実施し、製品品質の維持・向上に最大限の注意を払い製造販売しております。しかしながら、自動車の不具合の原因が当社グループの供給した製品の欠陥にある場合、リコール等の処置がなされることがあります。当社グループにおいては、製品の品質確保に万全を期してはおりますが、このような事態が発生した場合、契約上も、法律上もリコール等の処置にかかわる費用を負担しなければならないことがあります。リコール等による多額の費用の発生や顧客満足度の低下は当社グループの評価を下げると共に、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、開発、生産、品質保証部門が一体となり、品質に関する課題を共有、議論し、早期に最善な方法で解決する活動を行っております。

 

知的財産権

 当社グループは、当社グループ製品による第三者の重要な知的財産権の侵害を防止するとともに、第三者により当社の知的財産権を侵害されないよう他社製品の継続的な調査を行っておりますが、当社グループのような企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。このような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

情報システム障害による影響

 当社グループは、販売・生産を含む多くの業務を情報システムに依存しており、災害やサイバー攻撃などによるシステム障害が発生した場合、事業活動に影響が生じる可能性があります。これらのリスク低減のため、クラウドサービスの活用による可用性向上や、EDR(Endpoint Detection and Response)およびSOC(Security Operation Center)サービスの導入により、不正アクセス監視や異常検知を強化しています。さらに、MDR(Managed Detection and Response)サービスを活用し、高度化するサイバー攻撃への迅速な対応体制を整備しております。また、IT-BCP(事業継続計画)を策定し、システム障害発生時の業務継続に向けた体制強化にも努めています。

環境

気候変動

 気候変動などの環境問題への対応は、当社グループにとって重要な課題であり、気候変動に対する政策及び法規制、市場の要求を踏まえ、環境配慮型製品の開発に取り組んでおりますが、これらの規制が予測を超えて厳しくなった場合、コストの増加、販売機会損失等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動により近年増加傾向にある台風・豪雨等の異常気象、地震などの大規模自然災害等が発生した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、事業活動に関わる各国の環境関連法規制の遵守及びサプライチェーン全体で環境保全と環境負荷低減に努めるなど、リスクの軽減に取り組んでおります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2025年1月1日~2025年12月31日)における世界経済は、米国の底堅い景気推移や欧州での回復が見られる一方、中国では不動産市場の低迷や輸出減少が継続し、成長鈍化が鮮明となっています。ウクライナや中東での緊張に加え、米国トランプ政権による関税措置の適用が進む中、各国では輸出減や物価高による景気減速懸念が広がり、先行きは依然として不透明な状況にあります。

 米国においては、インフレ圧力が続くなか、個人消費には鈍化の兆しが見られましたが、企業部門も含めた景気は底堅く推移しました。年末にかけて政策金利の引下げが実施される一方、関税措置による物価上昇が顕在化しており、今後の景気の動向が注目されています。

 欧州ではエネルギー価格の安定によりインフレは落ち着きを見せ、景気は緩やかな回復が続きました。一方、米国向け輸出については、関税政策を背景に下押し圧力が続いており、政治的な問題が経済にもたらす影響についても懸念されています。

 中国においては、不動産市場の低迷や米国の関税措置により対米輸出が減少した一方、米国以外への輸出は堅調に推移しており、政府主導の景気刺激策によるハイテク産業分野への投資が拡大し、景気の下支えとなりました。10月の米中首脳会談では一部関税の引き下げやレアアースの輸出規制の一時停止など暫定的な合意が成立しましたが、依然貿易摩擦の再燃リスクが残るなど、先行きは不透明な状況が続いています。

 アジアでは、インフレの落ち着きとともに内需が堅調に推移し、輸出面では中国を巡る地政学リスクを背景に、各国企業によるサプライチェーン再編が進展し、経済成長を下支えしました。一方で、米中間の緊張や米国の関税措置が景気の懸念材料となりました。

 日本経済は、円安による物価高があったものの、インバウンド需要や賃上げを背景とした個人消費の回復、設備投資の持ち直しに支えられ、景気は堅調に推移しました。一方、米国の関税政策の影響により自動車を中心とした輸出には下押し圧力がかかっており、今後の為替や景気の動向が懸念されています。

 

 当社グループの主要事業分野である日本自動車業界に関する状況は、次のとおりであります。

 

 自動車の生産・販売は、米国向け輸出においては関税の影響により減少した一方、国内市場では前年の能登半島地震や認証不正問題に伴う出荷停止からの回復が進み、前年比で増加となりました。中国市場では、現地メーカーの急成長により日系メーカーの販売低迷が続いています。各国で進むEVシフトに対しては、ハイブリッド車(HV)を含めた柔軟な生産体制の構築と収益性の確保が求められており、米国の関税政策への対応も引き続き重要な課題となっています。

 この結果、当連結会計年度における国内乗用車メーカー8社の国内四輪車販売台数は、前年比3.2%増の416万台、四輪車輸出台数は、前年比1.1%減の395万台となり、国内四輪車生産台数は、前年比2.1%増の799万台となりました。また、海外生産台数は、前年比0.6%減の1,617万台となりました。

 このような環境のなか、当連結会計年度の売上高は73,668百万円(前連結会計年度71,356百万円)、営業利益は9,060百万円(前連結会計年度9,184百万円)、経常利益は9,230百万円(前連結会計年度10,382百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,514百万円(前連結会計年度6,171百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

日本

国内向け販売は、価格転嫁の進展もあり堅調に推移しました。一方で、輸出においては中国市場での需要の鈍化や顧客の在庫調整等により、前期比で減少しました。この結果、売上高は34,931百万円(前連結会計年度35,771百万円)、営業利益は3,184百万円(前連結会計年度3,808百万円)となりました。

 

北米

6月末での北米子会社 NICHIRIN ATCO TEXAS, INC.の連結子会社化による新規トラック事業が売上に寄与した一方、一部顧客の販売低迷や半導体不足に伴う生産停止の影響を受け、売上高は14,633百万円(前連結会計年度14,445百万円)、また、関税措置の影響もあり、営業利益は265百万円(前連結会計年度1,104百万円)となりました。

 

 

中国

日系メーカーの販売低迷の中、現地メーカー向け管体販売が堅調に推移したことや、日本向け製品輸出の拡大もあり、売上高は10,835百万円(前連結会計年度11,280百万円)、営業利益は1,651百万円(前連結会計年度1,414百万円)となりました。

 

アジア

アジア市場は内需を中心に概ね堅調に推移し、売上高は25,021百万円(前連結会計年度24,795百万円)、営業利益は3,502百万円(前連結会計年度3,331百万円)となりました。

 

欧州

欧州メーカー向け販売増加により、売上高は8,035百万円(前連結会計年度6,841百万円)、営業利益は175百万円(前連結会計年度40百万円)となりました。

なお、BMWへの二輪車向け製品の納入が開始されました。

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は54,133百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,981百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が2,430百万円増加、受取手形が167百万円減少、売掛金が913百万円増加、棚卸資産が42百万円減少したことによるものであります。固定資産は33,982百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,155百万円増加いたしました。これは主に、のれんが1,433百万円増加、顧客関連資産が472百万円増加、建物及び構築物が191百万円減少、機械装置及び運搬具が532百万円増加、投資有価証券が307百万円減少したことによるものであります。この結果、総資産は、88,115百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,137百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は13,514百万円となり、前連結会計年度末に比べ7百万円増加いたしました。これは主に、買掛金が419百万円増加、電子記録債務が39百万円減少、1年内返済予定の長期借入金が171百万円減少、未払法人税等が279百万円減少したことによるものであります。固定負債は6,482百万円となり、前連結会計年度末に比べ868百万円増加いたしました。これは主に、リース債務が938百万円増加、退職給付に係る負債が231百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は、19,996百万円となり、前連結会計年度末に比べ875百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は68,119百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,261百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が3,200百万円増加し、為替換算調整勘定が553百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は68.5%(前連結会計年度末は68.4%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ898百万円増加し、当連結会計年度末は18,858百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は8,353百万円の増加(前連結会計年度は8,670百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益9,649百万円(資金の増加)および、減価償却費3,144百万円(資金の増加)、投資有価証券売却益402百万円(資金の減少)、売上債権の増加85百万円(資金の減少)、棚卸資産の減少743百万円(資金の増加)、仕入債務の減少5百万円(資金の減少)、法人税等の支払額3,113百万円(資金の減少)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は3,745百万円の減少(前連結会計年度は6,213百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,224百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出667百万円、投資有価証券の取得による支出22百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は3,788百万円の減少(前連結会計年度は5,766百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出231百万円、配当金の支払額2,411百万円、非支配株主への配当金の支払額705百万円等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

19,469

104.6

北米

14,145

90.2

中国

8,903

89.4

アジア

22,634

102.2

欧州

7,974

122.4

合計

73,127

100.3

 (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループの主要製品である自動車用ホースは、基本的には販売先からの受注による受注生産であり、必要なものを必要な時に納入する「ジャスト・イン・タイム」の定時・定量納入方式を特徴としております。

 しかし、販売先より提示を受ける納入内示と実際の納入は、時期、数量が異なるとともに確定受注から納期までは極めて短い期間であります。従って、現実的には販売先からの四半期および翌月の生産計画の内示を基に、過去の実績・当社の生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っております。

 このような理由により、受注高および受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

19,407

104.1

北米

14,633

101.4

中国

9,061

91.5

アジア

22,697

104.2

欧州

7,868

119.7

合計

73,668

103.2

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績について、2025年は中期経営計画(Nichirin New Sustainable Development Plan)における最終年度として、グローバル展開に向けた事業基盤づくりを推進し、新しい価値と多様性を兼ね備えた持続可能な成長に向け経営課題に取り組みました。

 世界経済は、金融・財政政策対応によりインフレは次第に落ち着きを見せ、概ね底堅い成長を維持しました。一方で、米国における追加関税や相互関税措置により貿易摩擦は強まり、一部地域で関税引き下げの動きはあるものの、世界的な景気の下振れリスク要因として意識される状況となりました。更にロシア・ウクライナ情勢や中東情勢など地政学的リスクも高まり、自国主義と不安定な国際情勢が、世界経済の先行き不透明感を高める1年となりました。

 当社グループの主要事業分野である自動車業界は、ここ数年続いた部品供給制約が解消に向かい、生産体制も安定化したことで、生産台数はプラスに転じました。一方で、北米の関税措置を背景に、主要自動車メーカー各社は北米での生産拡大やサプライチェーン再編を進め、当社においても価格転嫁交渉や商流の見直し、現地調達化の検討が求められる状況となりました。

 このように外的環境要因による制約を受けながらの事業環境ではありましたが、当連結会計年度の売上高は73,668百万円、営業利益は9,060百万円、経常利益は9,230百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は5,514百万円となりました。

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標および当連結会計年度の達成・進捗状況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

指標

2024年(実績)

2025年(計画)

2025年(実績)

2025年(計画比)

2025年(前期比)

売上高

71,356

73,600

73,668

+68

+0.1%

+2,312

+3.2%

営業利益

9,184

9,100

9,060

△40

△0.4%

△124

△1.4%

経常利益

10,382

8,600

9,230

+630

+7.3%

△1,152

△11.1%

親会社株主に帰属する当期純利益

6,171

5,000

5,514

+514

+10.3%

△657

△10.6%

(注)2025年計画は、2025年8月8日公表値を記載しております。

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、自動車業界の動向、顧客企業の業績や調達方針の変更などにより、経営成績に重要な影響を受ける可能性があります。

 その他の要因につきましては、「第2 事業の状況」の「3事業等のリスク」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度末の現金及び預金は23,619百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,430百万円増加いたしました。これは営業活動の結果獲得した資金が8,353百万円と前連結会計年度に比べ317百万円減少し、投資活動の結果使用した資金が3,745百万円と前連結会計年度に比べ2,468百万円減少し、財務活動の結果使用した資金が3,788百万円と前連結会計年度に比べ1,978百万円減少したことによります。

 

 上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金および金融機関からの借入金にて賄われております。

 当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,132百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は18,858百万円となっております。

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成においては、資産・負債および収益・費用の適正な開示を行うため、貸倒引当金、退職給付に係る負債、賞与引当金などに関する引当については、過去の実績や当該事象の状況に照らし合理的と考えられる見積りおよび判断を行い、また価値の下落した投資有価証券の評価及び固定資産の評価や繰延税金資産の計上については、将来の回復可能性や回収可能性などを考慮して計上しております。但し、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、見積りと異なる場合があります。
 当社グループが採用しております会計方針のうち重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計方針)に記載のとおりであります。

 また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(1)当社が技術援助等を受けている契約

 該当事項はありません。

(2)当社が技術援助等を与えている契約

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

和承R&A

大韓民国

自動車用エアコンディショニングホース製造に関する技術

2025年1月1日から

2027年12月31日まで

自動車用ブレーキホース製造に関する技術

2025年1月1日から

2027年12月31日まで

(注) 上記についてはロイヤルティとして純売上高の一定割合を受け取っております。

 

(3)企業・株主間のガバナンスに関する合意

 該当事項はありません。

(4)企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意

 該当事項はありません。

(5)ローン契約と社債に付される財務上の特約

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、国内および世界市場における競争力を強化し、顧客ニーズである自動車の安全性向上や快適さを追求する製品、環境に優しい製品を開発するとともに、商品開発力で世界の顧客から期待される自動車用ホースのLeading Companyを目指しております。自動車や自動二輪車のEV化、世界各国での環境規制の強化が進む中で、商品群の変化に関する情報を先取りし、顧客満足度向上にも注力しております。

住設分野では、節水タイプ等のモデルに適した新製品、海外市場向けの低価格仕様の開発を進めています。主要製品である自動車用ホース分野について、エアコン関連では、新規海外顧客向けに、要求仕様に適合するホースの開発に注力し、販売先の拡大を進めております。また、今後の環境規制による冷媒転換を見据えた新たなホース仕様の開発も進めています。

液圧ブレーキホースでは、二輪用主力商品のSLIMシリーズの需要が順調に拡大しており、日本およびベトナムでの生産量を拡大しております。価格競争力を高めるため、口金具のアジア各拠点での現地生産についても開発を進めています。新たに米国およびアジアの新興4輪EVメーカーにもブレーキホースの納入を開始することができました。

また、当社は環境配慮型素材の選定や樹脂加工技術の高度化に注力しており、SDGsの達成に資する研究開発を推進しております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,303百万円(前連結会計年度1,220百万円)であり、日本で研究開発活動を行っております。