第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

 当社グループは「経営理念」「経営ビジョン」「行動指針」の3つの要素から構成される「The DIC Way」を経営の基本的な考え方としています。

 「経営理念」は当社グループが追い求める究極的な「ありたい姿」を示すもの、「経営ビジョン」は「経営理念」を実現するために当社グループが進むべき事業の方向性を示すものです。また、「行動指針」は「経営理念」と「経営ビジョン」を実現するにあたり、当社グループ社員が常に心に刻み、行動の道標とすべきコアバリュー(価値観)を表しています。

 私たちは、100年を超える歴史と、約60か国でのグローバルな事業展開によって培われてきた大切な価値観である「進取の精神」と「多様性の結集」を独自の強みとして、グループ一丸となって持続的な企業価値の向上を目指していきます。

 

The DIC Way

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[経営理念]

絶えざるイノベーションにより豊かな価値を創造し、顧客と社会の持続可能な発展に貢献する

 

[経営ビジョン]

彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに -Color & Comfort-

 

[行動指針]

進取、誠実、勤勉、協働、共生

 

(2)当社グループの経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2030年に向けて、“DICが貢献する社会”を「グリーン」「デジタル」「Quality of Life (QOL)」とし、DICの強みを活かして貢献できる事業領域に経営資源を集中し、“社会の持続的繁栄に貢献する事業ポートフォリオを構築”と“地球環境と社会のサステナビリティ実現に貢献”を、以下の「DIC Vision 2030」基本戦略のもと実現すべく取り組んでいます。

 

1.「DIC Vision 2030」の基本戦略

● 事業ポートフォリオの変革

1)中核事業の質的転換による収益力強化

インキ・パッケージ材料、顔料、ポリマの構造改革や製品ポートフォリオの転換を通じて中核事業の収益力を強化

2)当社の成長をけん引する新たな事業の柱の構築

AIが社会のあらゆる仕組みと統合されていく社会を“AI融合社会”と定義。ケミトロニクス、コンポジット/デバイスを“AI融合社会”を支える成長事業と位置づけ、主に半導体、バッテリー、フィジカルAI分野において素材及びソリューションを提供

 

● サステナビリティ戦略

1)サステナブル製品の展開

2)CO2排出量削減の推進

3)サーキュラーエコノミーへの対応

 

2.「DIC Vision 2030」Phase2計画の策定

 当社は、2022年2月に公表した長期経営計画「DIC Vision 2030」の実現に向けた最終フェーズとして、2026年度から2030年度までの5年間を推進期間とする「DIC Vision 2030」Phase2計画を策定しました。「DIC Vision 2030」Phase1では、中核事業の収益力を回復させ、成長領域への足掛かりを構築してまいりましたが、Phase2では、飛躍的な成長に向けてビジネスモデルを進化させるとともに、株主還元の充実を含め、企業価値の向上に努めていきます。

 

● Phase2計画の基本方針

・長期経営計画「DIC Vision 2030」では、Phase1(2022-2025)を「目指す姿の実現に向けた基盤作り」、Phase2(2026-2030)を「目指す姿の実現と展開」の段階と位置付けています。

・Phase2では、2030年度に向けて、持続的成長と稼ぐ力を備えた事業ポートフォリオを構築し、資本効率の改善と株主還元の充実を図ることで企業価値の向上にコミットしていきます。

 

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● 目指すポートフォリオ像

・構造改革や製品ポートフォリオの転換を通じて中核事業の収益力を高め、成長事業に重点的に資源投入することで、確実な事業拡大を目指します。

 

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● 成長事業の確立に向けた取組み

・AIが社会のあらゆる仕組みと融合されていく社会を“AI融合社会”と定義。AI融合社会を支える事業分野のうち、主に当社の経営資源を活かせる半導体、バッテリー、フィジカルAIで素材とソリューションを提供します。

 

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● 財務計画及び主要KPI

 

2025

実績

2026

計画

2030

計画

売上高(億円)

10,522

11,000

12,400以上

営業利益(億円)

522

560

800以上

ROIC(%)

4.4%

4.7%

6.0%以上

ROE(%)

7.4%

7.1%

10.0%

D/Eレシオ(倍)

0.8倍

0.8倍

0.8倍以下

 

 

 

● キャッシュアロケーション方針

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。なお文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが合理的な仮定等に基づき、適切な検討を経て判断したものであり、実際の結果を約束する趣旨のものではありません。

 

(1) サステナビリティ共通

1.ガバナンス

 当社グループは、DICグループサステナビリティ方針(2025年12月改定)に定める以下の5つの目的を意識して事業活動を行い、企業価値の向上と持続可能な成長の達成を目指します。

1.安全と健康の確保

2.ESG課題に関するリスク管理

3.公正な企業行動と多様性および人権の尊重

4.環境との調和とその保護の推進

5.イノベーションを通じた社会的価値の創造と持続可能な発展への貢献

 その推進のため当社グループではサステナビリティ委員会を設置し、社会的要請に基づく重要課題への対応を担っています。また、サステナビリティ活動の強化を中心とする重要事項の審議を行っています。

 

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 DICグループでは、社長執行役員がサステナビリティ活動を統括しており、2020年からサステナビリティ委員会の委員長を務めています。サステナビリティ委員会は、当社グループのサステナビリティ活動に関する方針及び活動計画の策定、その他当委員会が必要と認めた事項の審議・決定をしています。2025年度は4回開催し、主な議題にはDICグループの新しいマテリアリティ(重要課題)の策定、CO2排出量削減計画の進捗管理、サステナビリティレポートの準備、Sun Chemical ESG委員会の報告を含みます。

 また当委員会には3つの部会を設置しています。サステナビリティ部会では、サステナビリティ活動及び年次報告の発行の運営をしています。リスクマネジメント部会では、DICグループのリスクマネジメント活動を推進しています。気候変動部会では、グループ全体でのCO2排出量削減の計画を策定しています。

 当委員会の審議内容及び結果については、取締役会に報告しています。DICグループサステナビリティ方針・中長期方針は、取締役会の決議事項としています。DICグループサステナビリティ方針については、日本語・英語にて作成し、グループ内ウェブサイトで周知を図っています。

 

 

2.リスクマネジメント

 技術革新、価値観の多様化、侵攻、感染症等かつてなく不確実性の高い現代において、当社グループではリスクをどのようにマネージできるのかが、企業価値向上にとって重要だと捉えています。

 当社グループは中長期に会社の業績に大きな影響を与えるマテリアリティを抽出し、確実で効率的な対応を心掛けつつ事業推進に役立てています。当社グループの事業活動におけるマテリアリティは統合報告書(DICレポート2025)に記載しています。この中には気候変動や人的資本価値の最大化が含まれています。

マテリアリティについては、社会・環境の変化を踏まえ、継続的な見直しを行っています。

 

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DICレポート2025 P21より抜粋

 

 このような経営環境の変化やリスクの多様化に適切かつ柔軟に対応するとともに、潜在的なリスクが顕在化することによる事業への影響を速やかに最小限に抑えるため、リスクマネジメント活動を進めています。サステナビリティ委員会の下部組織としてリスクマネジメント部会を設置し、当社グループ全体における統合的リスクマネジメント体制を強化しています。

 各部署における自主的なリスク管理を基本としつつ、サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント部会を通じて適切にモニタリングし、取締役会が定期的に監督しています。これらのリスクマネジメントについての詳細は「3 事業等のリスク」をご覧ください。

 

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

1.気候変動

① 戦略

 当社グループでは 気候変動に伴うリスクや機会の重要性も意識した事業戦略を推進しています。気候変動による影響は中長期的に顕在化する可能性が高いため、2024年に実施したシナリオ分析に基づき、中長期的な視点で予測される機会とリスクへの認識を高めながら時間軸を踏まえた戦略の立案と実行に結びつけていきます。

 

イ.シナリオ分析

 シナリオ分析は、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2023年3月に発表した第6次評価報告書に基づく気候シナリオSSP1-1.9、SSP2-4.5、SSP5-8.5と、2023年10月に国際エネルギー機関(IEA)が発表したWorld Energy Outlook 2023に基づく外部環境シナリオを参考に、2020年に公表したシナリオ分析結果を見直しました。分析対象期間は、2050年までとしています。

 これらのシナリオが示唆する将来の気候変動とエネルギーの状況を踏まえ、次の3つの世界観(移行、適応、適応の限界)を設定し、それぞれの世界観のもとで当社グループにとってのリスクと機会、及びその対応策について分析をしました(表1)。

 

移行:地球温暖化を産業革命前より1.5℃上昇に抑えることを目標に、各国がCO2排出量削減のための対策を劇的かつ即座に実施する。省エネや共同輸送など、効率的なエネルギー利用が求められる。カーボンプライシング(2030年 135USドル、2050年 200USドル)は、多くの国で新たに始まり、拡大し、価格は上昇していくだろう。

 

適応:地球温暖化は2040年代半ばまで拡大し、1.5℃を超えるが2℃は超えない。地球の気温上昇へ適応するためには、レジリエントな対策と行動が必要である。遮熱や放熱といった対策は、適応の世界に有効だろう。現在100年に1度といわれる極端な気候現象は、10年に1度、あるいは1年に1度の確率になると予想される。

 

適応の限界:地球温暖化は2050年に2℃を超えていき、2100年には5℃に迫る。予期せぬ天候や気候の極端さが増大し、食糧不安や供給不安を引き起こし、何世紀にもわたって人々が暮らしてきた場所からの移住が余儀なくされる。こうした変化は、複合的、連鎖的で、国境を超えて生活の質に悪影響をもたらす。こうした悪影響から、パンデミックや紛争といった非気候リスクが増大されると予測される。

 

なお、シナリオ分析中で認識している水に関するリスクについては、地域別でDICウェブサイトにて開示しています。

https://www.dic-global.com/ja/csr/2025/environment/water_resource.html(水資源の管理)

 

表1 シナリオ分析結果

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(注)CSRDに係る最新の動向を踏まえて、DICレポート2025に記載の「R: 欧州のCSRDへの対応が求められ、2026年に報告する予定」から変更しています。

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DICレポート2025 P67-68より抜粋

 

② 指標と目標

 気候関連のリスクと機会を評価する重要なKPIとしては、スコープ1、スコープ2を利用しています(表2)。また2021年より当社グループは、サステナビリティの観点から定めたCO2排出量の長期削減目標を更新し、新たな目標として「2030年度50%削減(2013年度比)」及び「2050年度カーボンネットゼロ」の実現を目指しています。世界的な脱炭素社会実現の動きが加速する中、積極的に脱炭素社会の実現に取り組んでいくとの決意のもと、新たな削減目標を設定しています。

 

表2 スコープ1、スコープ2

 

合計(tCO2)

削減率

スコープ1(tCO2)

スコープ2(tCO2)

2013年

921,386

2024年

549,886

37%

282,856

267,030

2030年

438,943

50%

 

 

2.人的資本・多様性

① 戦略

イ.基本戦略

 当社グループは人材に関する基本戦略として「人的資本経営」を掲げています。当社は人材を、当社グループが経営戦略を実現する上での重要な「資本」と位置づけ、多様な人材が集まり、その能力を最大限に発揮することが当社グループの競争力につながると考えています。この考えのもと、また、将来目指すべき人材ポートフォリオを踏まえ、当社はリーダー人材や自律的に行動できる人材の育成に向けた仕組みの構築、社員一人ひとりの人権・安全の確保、多様な人材が働きがいを実感できる職場環境の整備や組織力の向上などに取り組んでいます。

 

ロ.長期経営計画における人材戦略

 人的資本経営の最優先かつ最重要の課題は長期経営計画「DIC Vision 2030」で掲げる「事業ポートフォリオの変革」の実現に必要な人材の獲得、育成、配置、即ち新事業の創出及び事業領域の変化に合致した人材の最適化です。2030年のあるべき当社グループの人材ポートフォリオを構築すべく、当社グループを率いる次世代リーダーシップの開発、異業種出身人材・高度専門人材の積極的獲得・育成、自発的な学びを支援する学習ツールの導入等を通じたリスキリングの推進、イノベーション創出に向けたチャレンジ行動の促進等の各施策に取り組んでいます。また人材の流動性が高まるなかで、一人ひとりの望むキャリア形成を実現するべく社内公募、社内副業、キャリア支援等の取組みを行っています。

 

A) 後継者計画

当社では継続的な事業発展及び人材可視化を目的として、後継者計画の策定を全社的に推進しています。2025年は、当社及び国内・中国・アジアパシフィック地域関係会社における約100の主要ポジションを対象に、2024年度に設定した To Be(あるべき姿)の要件も活用し、後継者計画を策定しました。併せて、候補人材に対するタレントレビューを実施し、育成計画について関係部門と協議を行いました。これらの取組みを基盤として、策定した計画の確実な実行に向け、候補人材の計画的な育成と能力開発の強化に努めてまいります。

 

B) グローバル経営幹部候補者選抜研修

当社グループのグローバルビジネスを牽引する次期トップリーダーの育成計画の一環として、「グローバルマネジメントアクセラレーター(GMA)」を実施しました。2024年度に開講した第一期プログラムでは2025年に海外拠点での集合研修や海外有名大学の短期間教育プログラムへの派遣を実施しました。また、2025年度後半には対象地域・人数を拡大し、第二期プログラムを開始しました。卒業生は次期トップリーダーとしての能力を発揮し、重要ポジションを担う人材へと成長することが期待されています。

 

C) キャリア研修・カウンセリング

当社では、28歳・39歳・50歳の社員を対象とした世代別キャリア研修や、受講者を対象にした社内キャリアコンサルタントによるフォロー面談などを通じて、社員一人ひとりのキャリアビジョンの明確化やキャリア自律を支援しています。2025年には、「キャリアデザイン月間」や「テーマ別キャリア面談ウィーク」などのイベントを開催しました。加えてマネジャー社員を対象に、部下のキャリア自律支援ワークショップや傾聴力向上講座など、キャリア自律をテーマに部下とのコミュニケーションを活性化する取組みも実施し、部下及び自身のキャリアについて考える機会を提供しました。

 

D) 1on1ミーティングの推進

当社では上司・部下の1on1ミーティングを制度導入しています。半期ごとに実施率、満足度などアンケートを実施しており、満足度は7割程度と高位にて推移しています。また、1on1ミーティングの実施率・満足度と従業員エンゲージメントには一定の相関関係があることから、1on1ミーティングの満足度向上の施策として、1on1スキルを高めたいマネジャーを対象としてスキルアップ研修を実施し、更なる1on1ミーティングの質的向上を図りました。

 

 

 

ハ.人材の多様性確保と活躍支援

 当社グループでは属性に関わらず個々の多様な価値観を尊重することを基本理念とし、社員の多様性確保・活躍を推進しています。社員一人ひとりがもつ多様性を互いに理解・尊重することで、創造的な思考を生み続ける企業文化が醸成され、当社グループの競争力向上につながると考えています。具体的なダイバーシティ関連施策としては、女性一人ひとりのキャリア支援、部門単位での育成計画の策定や外国人社員のネットワーク強化や職場教育を通じた活躍推進体制の強化、再雇用制度の見直しによる再雇用者の活用、障がい者の雇用・活用等に取り組んでいます。

 

A) 女性活躍推進

多様な考えや発想を事業環境の変化を乗り越える力としていくため、女性社員の持つ能力を最大限に発揮できる環境・風土作りに注力しています。女性社員が意思決定層で活躍するためのパイプラインとしての役員メンター制度を始め、管理職手前の女性社員を対象とした研修や女性管理職によるメンタリングを継続して実施しています。育児と業務の両立に関する2025年の施策は2024年の取組みをさらに加速させ、育休を取得した男性社員と社長との懇談会を開催、育休取得をした女性管理職、男性管理職を含む社員と子育てに悩みを抱える社員との相談会を実施しました。子育ての悩みを1人で抱えない、そして子供を共に育て、共に働ける組織風土の醸成に今後も取り組んでまいります。

 

B) 障がい者雇用

当社では人事部内に障がい者雇用推進担当を設置し、特例子会社であるDICエステート株式会社と連携して、当社の各事業所、関連会社、特例子会社における新規採用ルートの開拓、業務の切り出し、業務プロセスの見直し、障がいのある社員に対する管理指導体制の強化に取り組んでいます。2025年の雇用率は昨年の2.55%から2.70%に伸張し、法定雇用率を充足することができました。今後も障がいを持っている社員が働きやすい環境を整備するとともに、それぞれが会社の戦力として活躍する人材育成を行うダイバーシティ活動を推進していきます。

 

C) クリフトンストレングス®※1の展開

当社では社員の多様性を推進するツールの1つとして、強みの資質を言語化できるアセスメントツール「クリフトンストレングス®」を活用しています。これまでに国内社員の8割がアセスメントを受診し、自身の強みや自己理解を深めてきました。2026年から開始する全地域を包含するグローバル事業部門体制においては、国籍の異なる多様な社員との関わりが増える事になり、一人ひとりの考え方や業務の進め方の多様性を理解・受容するためのツールとしても活用していきます。今後も社員の多様性を理解し、各々がもつ強みを活かせる環境作りを推進します。

 

ニ.職場環境の整備

 当社グループは安全操業最優先を経営の基本とし、無事故無災害を達成するため労働安全衛生・保安防災に取り組んでいます。職場のリスク低減、安全基本動作の徹底、安全感度の高い人材育成を重点課題に位置づけ、安全基盤の強化や安全文化の醸成に向けたグループ全体の安全衛生・保安力向上に努めています。また当社グループでは、経営トップによる健康経営宣言のもと、社員が心身ともに健康でいきいきと働くことのできる環境の整備を積極的に推進しています。社員の健康は当社グループが持続的な成長を力強く実現していくための重要なテーマであると考えており、健康づくり、メンタルヘルスの領域において指標を定め、各種施策を実施しています。

 

A) 労働安全

安全操業は当社グループの持続可能な成長を支える事業の根幹です。当社グループは日本を中心とする連携により、地域ごとに労働災害発生率(TRIR※2)の目標を掲げ、安全衛生・保安防災に関する各種活動に取り組んでいます。2025年は日本では社員だけでなく協力会社の安全性の向上を目的とし、DIC工事安全ガイドラインを制定、運用を開始しました。中国地区では、安全環境担当者の力量向上を目的に安全知識コンテストを実施しました。アジアパシフィック地区では4月28日をSafety Dayと定め、傘下の各事業所にて安全意識向上のための各種イベントを実施しました。北米・ヨーロッパでは、Sun Chemicalグループ独自の安全環境マネジメントシステムであるSun Careによる安全管理を継続しています。 また、定期的なグローバル会議や各地域が実施する安全環境監査でこのような取組みの状況を把握共有し、翌年の活動に反映させています。

 

 

 

B) 健康経営の推進

経営トップによる健康経営宣言のもと、社員が心身ともに健康でいきいきと働くことのできる環境の整備を積極的に推進しています。社員の健康は当社グループが持続的な成長を力強く実現していくための重要なテーマであると考えており、メンタルヘルスや健康づくりの領域において指標を定め、各種施策を実施しています。2025年はストレスチェックの分析結果を活用した職場環境改善面談を実施し、働きやすい職場を実現するために職場の特性を把握しながら具体的な助言・指導を計画的に進めました。また、2027年事業所内完全禁煙実現に向けた段階的禁煙施策の継続実施、健康の維持増進を目的とした健康づくりセミナーの月次開催、健康保険組合との協働による特定保健指導の推進に取り組みました。

 

② 指標と目標

 当社では、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に基づき以下のとおり主な指標を設定しています。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。また、特に注力すべき課題として社員のエンゲージメント向上に取り組んでおり、毎年エンゲージメントサーベイを実施しその状況の把握に努めています。

 

指標

2025年度実績

2026年度目標

後継者準備率

115

未定※3

ストレスチェックにおける高ストレス者判定率

11.3

10.0%未満

メンタル不調休業率

0.8

0.6

1on1実施率(2ヶ月/回)

40.9

50%以上

1on1満足度

72.3

75%以上

従業員エンゲージメント(主要設問の平均スコア)

3.26

未定※4

 

指標

2025年度実績

(2026年1月時点)

2030年度目標

(2031年1月時点)

執行役員に占めるマイノリティ比率

19

30

 

※1 「クリフトンストレングス」はGallup, Inc.の商標です。

※2 TRIR(Total Recordable Incident Rate)とは「業務上の負傷・疾病による被災者数(休業災害+不休災害)」を「100万延べ労働時間」で割った数値です。

※3 グローバル事業部門体制へのシフトに伴い、2026年は後継者擁立が必要なポジションを改めて精査・検討します。

※4 2025年秋の調査結果を受け、現在、2026年目標を策定中です。

3【事業等のリスク】

 当社グループは中長期に会社の業績に大きな影響を与えるマテリアリティ(重要課題)を抽出しています。マテリアリティについては、確実で効率的な対応を心がけつつ、2022年スタートの長期経営計画「DIC Vision 2030」(注1)における成長シナリオをイメージしながら事業の推進に役立てています。また、経営環境の変化やリスクの多様化に適切かつ柔軟に対応するとともに、潜在的なリスクが顕在化することによる事業への影響を速やかに最小限に抑えるため、リスクマネジメント活動を進めています。広範なリスクのうち、「外部環境リスク」、「コーポレートリスク」は当社グループのサステナビリティ活動の審議機関であるサステナビリティ委員会及び下部組織のリスクマネジメント部会で、「ビジネスリスク」については業務執行に係る重要な事項の審議機関である経営会議や執行会議など重要会議を通じて適切にモニタリングし、リスクが顕在化した場合の影響を低減するように各リスクに主管部署を定めてリスク対策を実施しています。

 後述する重要な事業リスクについては、当社グループの事業活動におけるマテリアリティ(注2)をベースにリスクマネジメント部会で実施する調査結果を踏まえて、各リスクが顕在化した場合に、当社グループのビジネス及びステークホルダーに与え得る影響度合いを大、中、小に分類しています。

 なお、将来に関する事項についての記載は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、また当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(注1)長期経営計画「DIC Vision 2030」の詳細は、以下をご覧ください。

https://www.dic-global.com/pdf/ir/management/plan/DIC_Vision_2030_Phase2.pdf

(注2)事業活動におけるマテリアリティの詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。

 

リスクマネジメント体制

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リスクマネジメント活動の全体像

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(1)重要な事業リスク

 投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある当社グループのリスクは以下のとおりであると考えています。

 これらの重要なリスクは、執行役員や本社管理部門の部長等を評価者としたリスクアセスメントにより、影響度、発生可能性、想定されるリスクシナリオ、その他の社内外の諸事情や要因を加味した上で、リスクマネジメント部会が重大リスクとして選定し、サステナビリティ委員会と取締役会での審議、確認を経て毎年特定しているものです。

 一部については、積極的な情報開示の観点から、必ずしも重大な影響を及ぼすとまでは言えないリスクも記載しています。

 

掲載

順序

リスク分類

リスク項目

影響度

発生

可能性

時期

区分

関連

1

外部環境

需要の急減な変化や低迷に伴うリスク

短~中

①②③

A・B

2

地政学に関するリスク

不明

①②

3

金利・為替の急激な変動に起因するリスク

短~中

①③

4

大地震発生に伴うリスク

短~長

①③

5

環境・資源

気候変動に伴う環境変化や

社会変革への対応に関するリスク

中~長

①②③

A・B

6

環境負荷低減の要請に関するリスク

短~長

①②③

A・B

7

経営戦略

・事業戦略

買収戦略失敗のリスク

短~中

①②③

A・B

8

事業ポートフォリオマネジメント失敗のリスク

短~中

①②③

A・B

9

サプライチェーンに関するリスク

短~長

①②③

A・B

10

管理・業務

コンプライアンスに関するリスク

不明

A・B・他

11

イノベーションの停滞・失敗のリスク

中~長

②③

A・B・他

12

人材確保に関するリスク

短~長

②③

A・B

13

品質問題発生のリスク

不明

②③

A・B

14

サイバーセキュリティに関するリスク

不明

15

知的財産に関するリスク

不明

①②③

A・B

 

影響度(当連結会計年度末現在における各リスクが発現したときに起こり得る影響の大きさ)

大:影響度が大きい  中:影響度が中程度  小:影響度が小さい

 

発生可能性(当連結会計年度末現在における各リスクが将来的に顕在化する可能性)

高:可能性が高い   中:可能性が中程度  低:可能性が低い

 

時期(当連結会計年度末現在における各リスクが顕在化し得る時期やタイミング)

長期:5年超  中期:概ね3~4年程度  短期:概ね2年以内

不明:顕在化するタイミングが予想できない

 

区分(発生要因別の当社における管理上のリスク区分)

①:発生防止を自社でコントロールできない外部環境リスク

②:会社のマネジメントで発生防止対策を取り得るコーポレートリスク

③:事業の中で認識すべきビジネスリスク

 

関連(長期経営計画「DIC Vision 2030」で定めた事業戦略との関連)

A:成長実現に向けた事業ポートフォリオの変革

B:グローバル経営、ESG経営及び安全経営を下支えする経営基盤の強化

C:キャッシュ・フローマネジメント

他:事業戦略の関係なし

 

1.外部環境に関するリスク

(1) 需要の急激な変化や低迷に伴うリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、世界の各地域、各国で需要急減、低迷長期化のリスクがあります。欧州経済や中国経済の低迷長期化等により、域内需要の減少に止まらず、世界同時不況に発展する可能性があります。また、先行きに対する不安や所得の伸び悩み等により、個人消費を中心に需要が急減し、需要の想定以上の抑制や回復の遅れが生じる可能性があります。新興国においては、政治や経済の混乱に起因した為替変動の拡大や通貨価値の下落等の可能性が想定されます。

②当社グループの取組

当社グループでは、インテリジェンス機能としてグローバルで政治・経済情勢を定期的にモニタリングし、地域ごと、需要業界ごとに事業環境の変化を把握しています。また各事業への影響と実行すべきアクションについての考察や経営改善の意思決定を定期的に行うとともに、必要に応じて地域ポートフォリオの見直しを行い、リスクの分散と低減に努めています。

 

(2) 地政学に関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

政治・社会情勢の著しい変化や、各種法規制・国際条約の変更等に関する予期せぬ事態が生じた場合、これらに起因して生じるコスト増、製品・原料の輸出入制限、送金停止、サプライチェーン分断等が、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。例えば、米中対立等を背景とした経済安全保障上の措置による製品・原料等の輸出入停止及び関税率アップに伴うコスト急増、渡航規制強化による適時適切な現地対応や人材配置の制限、あるいは中東における紛争・政治不安、その他政変・テロ・暴動等に起因するエネルギーや天然資源の価格高騰、物流の混乱等が挙げられます。

②当社グループの取組

当社グループでは、本社による全体的な管理に加え、地域統括会社による日常的な管理により、事業面及び機能面の双方で事業を展開する各国における様々なリスクをモニタリングしています。生産・販売面においては、事業部門を主体としたBCP(事業継続計画)の確立や原料の複数調達体制の構築を通じて、カントリーリスクへの対応に取り組んでいます。サプライチェーンの分断には、世界中に広がる当社グループのネットワークを有効活用することで、リスクを低減しています。加えて、人命・信用・資産等、各種経営資源の保全に向け、必要に応じて現地拠点とも協力しながらグループ全体での情報共有・対策立案・教育訓練にも取り組んでいます。

 

(3) 金利・為替の急激な変動に起因するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

金融危機については、何らかの契機によってリスク資産が急落するとともに信用リスクが上昇した場合、まず社債・CP市場の機能不全から始まり、銀行が資産価格下落による自己資本比率低下から資金回収に転じることで、資金調達に支障が生じる可能性があります。為替については、金融市場の混乱から急激な円高が進行、輸出採算悪化や海外子会社収益の円換算額が減少し、業績に著しい影響を与えます。さらに為替換算調整勘定のマイナスが拡大し、純資産が棄損することで財務バランスが悪化する可能性があります。金利については、金利上昇によって支払利息が増加します。当社グループのグロス有利子負債は4千億円程度であり、金利が1%上昇することで、中期的に年間45億円程度の支払利息増加となるリスクがあります。

②当社グループの取組

金融危機対策としては、将来の資金需要を一定期間カバーする手元資金及びコミットメント空き枠を維持しています。また、資金調達に占める長期比率を8割程度としているほか、長期資金の期日分散化を図っています。為替、特に円高への対策としては、輸出入や配当等の決済における為替変動リスク低減のため、先物予約等を活用しています。また、為替リスク管理委員会でヘッジ方針を策定し、実施状況を適宜モニタリングしています。なお、対象となる通貨・金額は、ヘッジコストとヘッジ効果に鑑み、為替リスク管理委員会で総合的に判断しています。金利上昇対策としては、引き続きグループ運転資本の適正化に向け、事業部門ごとの年間目標を設定し、月次で進捗管理を実施するほか、現預金の圧縮による有利子負債調達の抑制によって金融収支改善を図っています。

 

(4) 大地震発生に伴うリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、国内外における事業継続を脅かす自然災害の発生を重要リスクとして認識しており、その中でも本社機能を有する日本での大地震発生は、事業継続に重大な影響を及ぼすと想定しています。南海トラフ地震が発生した場合、四日市工場、堺工場、滋賀工場、小牧工場、大阪支店、名古屋支店で震度6程度が予想され、堺工場や四日市工場では液状化現象が、本社のある東京でも津波発生の可能性があります。また、首都直下地震の場合、本社、東京工場、埼玉工場、千葉工場、総合研究所で震度6程度の地震発生の可能性があります。これらの事業所では、電力会社からの電力供給停止、配管ラインの損傷による工業用水の停止、ボイラー停止による蒸気停止、排水設備の損傷による排水停止等の可能性があります。生産設備は、配管ラインの破損と原材料の漏洩、地盤隆起による設備の傾斜、生産ライン中の異常反応、ユーティリティ供給停止による設備破損、通信不能によるDCS制御停止、津波による浸水等の可能性があります。人員面では、交通網遮断による帰宅・出社困難、厚生施設の機能停止、構内常駐協力会社の手配困難等の可能性があります。また、本社ビルは一時滞在施設に指定されているため、地域の帰宅困難者受入を図る必要があります。これらの結果、数週間から数ヶ月程度の生産停止、設備・機材・人員不足による復旧難航、原材料入荷や製品出荷の遅滞・停止等のほか、行政による安全検証作業のための事業活動停滞の可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループでは、BCPの管理指標を見直し、国内外の事業環境を踏まえた事業継続体制の強化を進めています。また、災害時危機管理ポータル「DIC BCPortal」を活用し、災害発生時の情報収集・共有・連絡体制の強化、初動対応能力の向上を図っています。本社では、災害時の一斉帰宅抑制を想定した体制整備に加え、行政ガイドラインを踏まえた災害時帰宅困難者対策の強化として、備蓄物資の確保、地域連携体制の整備を進めています。

(ii) 当社グループは事業のグローバル化が進展していることから、海外グループ会社におけるBCP水準のギャップ是正を重要な課題として認識しています。2025年度より海外拠点へのBCP展開を開始しており、地政学リスクを含む地域特性を踏まえながら、事業継続体制の整備を推進しています。

 

2.環境・資源に関するリスク

(1) 気候変動に伴う環境変化や社会変革への対応に関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは2021年6月より「DIC NET ZERO 2050」として、「2030年CO2排出量の50%削減(2013年度比)」と「2050年カーボンネットゼロの実現」を長期目標に掲げています。この目標を達成するための活動において、以下をリスクと捉えています。

a.排出権取引、化石燃料賦課金等の諸政策実施に伴って原料価格や電力価格が上昇した場合、収益が低下する可能性があります。

b.CO2排出量削減の社会的要求や顧客ニーズに極端な変化が生じた場合、既存事業の縮小・撤退や新規投資案件の中止も検討せざるを得なくなる可能性があります。

c.循環型社会に向けた急激な需要変化に対応できない場合、収益の低下や既存事業からの撤退を余儀なくされる可能性があります。

d.異常気象による気象災害の深刻化・頻発化が事業所の稼働停止や原料調達の不安定化につながった場合、収益が低下する可能性があります。

e.国際的に情報開示に対する要求が厳しくなっている中、不適切な情報開示を行った場合、レピュテーションが毀損したり、グリーンウォッシュ訴訟を提起されたりする可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループは、積極的な環境投資と省エネ施策の推進を通じてCO2排出削減に取り組んでいます。当社グループで統一した製品カーボンフットプリント(PCF)算出のガイドラインを策定し、製品のPCF算定を実施しています。このガイドラインについて、国際規格ISO 14067:2019及び「TfS PCF ガイドライン」などに準拠していることを証明する第三者認証を取得し、2025年11月に広報しました。2025年1月からは、サステナビリティ委員会の下部組織として気候変動部会を設置し、グループ目標として相応しいCO2排出削減目標とそれを達成するための計画を策定しています。また、気候変動による需要の変化に的確に対応すべく、脱炭素社会に向けた5R(Reuse, Reduce, Renew, Recycle, Redesign)のグループ定義を掲げ、サーキュラーエコノミーを含めた製品・サービスの開発を進めています。物理的リスクに対しては、重要原料の供給対策も含むBCPの策定を進めているほか、沿岸立地事業所の気象災害リスクへの対策強化にも努めています。

(ii) 確度の高い情報収集とグループ内での情報共有により、高度な情報開示要求に対し、グリーンウォッシュのような事態に陥ることなく、グループ全体の情報の適切な開示に努めています。

 

(2) 環境負荷低減の要請に起因するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループには、生産活動を通じて様々な環境負荷が発生するリスクがあります。具体的な環境負荷としては、大気汚染物質や水質汚濁物質、産業廃棄物、プラスチック廃棄物が挙げられます。

a.通常は環境負荷の排出を一定レベルに抑えていますが、トラブル等によって環境負荷物質を想定以上に排出してしまった場合、その回収コストの負担や損害賠償責任が発生する可能性があります。

b.環境負荷に対する環境規制の強化、業界基準の変更、さらには社会的要請等に適切に対応できなかった場合、生産を継続することができなくなる可能性があります。また、社会情勢の変化に伴う製品要求性能の急変に対応できなかった場合、事業収益の低下や事業継続の可否に関わるリスクが顕在化する可能性もあります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループは、生産と事業の両面から環境負荷の低減に努めています。生産面においては、生産拠点所在地における環境負荷低減に関連する様々な法令や規制の遵守はもとより、具体的な削減目標を定めた上で定期的に環境負荷データをモニタリングして、新たに発生する環境負荷物質の削減に努めています。また、トラブルに対しては、緊急事態に対応したマニュアルを整備し、環境負荷物質の排出を最小限に抑える体制をとっています。同時に、社会的変化に対応すべく環境保護設備の積極的な導入に努めています。

(ii) 事業活動においても、製品の環境負荷低減を図りながら、地球環境と社会課題に貢献できるよう努めています。具体的には、バイオベース材料やマスバランス方式原料の採用、製品の再利用や再商品化、ケミカルリサイクルあるいはマテリアルリサイクルを含めたサーキュラーエコノミーを視野に入れた製品、サービスの開発及び普及に取り組んでいます。

 

3.経営戦略・事業戦略に関するリスク

(1) 買収戦略失敗のリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、事業ポートフォリオ変革のため、企業買収や資本提携を積極的に実施しています。当社グループが実施する統合・協業が不十分又は想定どおり進まない場合、当初計画していた効果が得られないため、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

②当社グループの取組

当社グループでは、設定した指標に基づいて投資判断を行うとともに、自社による調査のほか、外部機関も活用して徹底したデューデリジェンスを行ってリスクを事前に洗い出し、対策を講じています。買収後はグループ一体となったPMI(統合活動)の推進やシナジーの実現に向けたアクションを実施することにより、リスク低減に取り組んでいます。また、買収後に業績不振に陥ったときは、グループ一体となって構造改革や効率化の取組みをスピードアップし、収支構造の改善に取り組んでいます。

 

(2) 事業ポートフォリオマネジメント失敗のリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

長期経営計画「DIC Vision 2030」のPhase2(2026-2030)では、社会課題を解決し、社会の持続的繁栄に貢献する重点事業領域に経営資源を集中させることで事業ポートフォリオの変革に取り組んでいます。事業ポートフォリオの変革に遅れが生じた場合、硬直化によって成長が鈍化した場合、及び製品ライフサイクルに伴い成熟事業の収益性が徐々に低下した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

②当社グループの取組

当社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、持続的成長と稼ぐ力を備えた事業ポートフォリオの構築に取り組んでいます。また、当社グループの事業戦略にそぐわない低収益事業の縮小・撤退の基準を設けて定期レビューを行うとともに、取締役会及び執行会議では長期経営計画で定めた事業戦略の進捗を定期的に確認し、事業環境に応じて施策を更新、追加しています。長期的計画を確実に実現させるため、2025年までの前半の4年間(Phase1)を「DIC Vision 2030」の目指す姿を実現するための基盤づくりの期間、2030年までの後半の5年間(Phase2)を目指す姿を実現して展開する期間と位置づけています。Phase2では、中核事業(インキ・パッケージ材料、顔料、ポリマ)の質的転換により収益力の強化を図ると共に、ケミトロニクス、コンポジット/デバイス事業を成長事業と位置づけ、主に当社の経営資源を活かせる半導体、バッテリー、フィジカルAIなどのAI関連事業において素材及びソリューションを提供してまいります。これらにより社会の持続的繁栄に貢献する事業ポートフォリオを構築し、引き続き「DIC Vision 2030」の目指す姿の実現に取り組んでいきます。

 

(3) サプライチェーンに関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、短期及び中長期的な視点で原料の安価・安定調達に加え、持続可能なサプライチェーンの構築、原料調達の実現に向けた取組みを推進しています。本件に関するリスクとして、国際商品市況の影響による原料価格上昇、原料サプライヤーの事故・トラブル・自然災害等を起因とした需給バランスの変動、その他の事情に伴う物流混乱、化学物質に関する法規制・業界規制の強化等によって原料の調達が困難になる場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。また中長期的観点では、サステナビリティ活動への取組みが不十分なサプライヤーからの原料調達は、供給の不安定化に加え、サプライチェーン全体の価値低下やそれに伴う顧客等からの信用失墜につながり、当社グループの事業継続に支障を来たす可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループは、複数購買・契約購買・代替原料の導入等を通じ、原料コストの削減や調達リスクの低減を図り、安価で安定した調達を目指しています。また、中長期的観点では、環境負荷低減や人権尊重を始めとしたサステナビリティ活動全般への取組みをサプライヤーに要請するとともに、外部評価機関や自社製アンケートを使用した活動状況の調査及び改善啓発を行い、持続可能な原料調達の実現を目指しています。

(ii) これらの取組みを通じた製品の供給安定化や品質安定化、健全化により顧客からの信頼確保を図るとともに、収益性を確保するための適切かつ計画的な価格設定等にも努めています。

 

4.管理・業務に関するリスク

(1) コンプライアンスに関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、世界各国で事業活動を行っており、商取引、安全、環境や化学物質等に関する様々な法規制の適用を受けています。法規制等に違反した場合、事業の停止命令や罰金が課され、又は損害賠償責任が発生し、当社グループの業績や財務状況に影響を与えるだけでなく、社会的信用の失墜にもつながる可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループでは、法規制のほか、ビジネスを実践する上で遵守すべきコンプライアンスに関する基準として「DICグループ行動規範」を定めています。社長は、役員を含む全社員に向けて、コンプライアンスの重要性や、ビジネスよりもコンプライアンスが優先すべき価値であることを折に触れて自らの言葉で発信しています。全社員は、具体的事例を取り上げたeラーニングや研修によって、その認識を深めています。さらに、コンプライアンス上の疑問を持った場合に相談できる体制を整備し、内部通報制度の活用や担当部署から独立した部署による監査・調査等を通じ、コンプライアンス違反があった場合の早期発見、早期是正を図っています。また、相談を行った者や調査等に協力した者に報復することは禁じられており、「DICグループ行動規範」に対する重大な違反となります。

(ii) 法規制変更時の周知徹底、化学物質情報管理システムの運用徹底・DX(デジタルトランスフォーメーション)化や効率化、デザインレビューの運用徹底等、あらゆる段階でコンプライアンスリスクの低減に必要な対策を講じています。

 

(2) イノベーションの停滞・失敗のリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、環境面における社会変革への対応が非常に重要と捉え、「グリーン社会、デジタル社会、QOL社会」に貢献する製品開発をグループ一丸となって取り組んでいます。同時に、急速に進展するデジタルテクノロジーの活用、DX推進に遅れを取らないように対策を進めています。しかしながら、当社グループのイノベーションが停滞して社会要請に応える製品を開発・上市できない場合、成長が鈍化する可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループは、保有する既存の基盤技術に加え、無機材料やバイオに関する新しい基盤技術を活用して、グリーン社会に貢献する次世代向けパッケージ、デジタル社会に貢献する高速通信関連材料、環境に配慮した非PFAS素材、QOL社会に貢献する高機能ニュートリション等、様々な市場やニーズに応じたサステナブル製品の開発を進めています。技術部門では、開発テーマの審査体制とリソース運用ルールを整備し、技術部門のアイディエーション促進及び社内外連携の仕組みを強化しています。CVC(Corporate Venture Capital)を通じ重点領域の投資方針を策定し、DS活用拡大とAI/MI基盤の将来像を構築しています。また、タウンミーティングにより業務負荷を把握し業務効率化策、改善策に取り組んでいます。

(ii) 生産技術部門においても、工場のスマート化に向けた生産技術のDX推進に精力的に取り組んでいます。

 

(3) 人材確保に関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

先進国を中心に少子化に起因した労働人口減少が進む中、期待水準を満たす人材の獲得が困難になるとともに、人材獲得競争が激化しています。また、労働市場の流動化が高まる中、社員から見た当社の魅力が相対的に落ちた場合、優秀人材の離職が進むことで事業継続が困難になる可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 日本においては、新卒採用は広報活動強化により企業認知度を向上させ、ターゲット層の掘り起こしを図っています。初任給水準を含む賃金設定の柔軟化も検討しています。キャリア採用は、スペシャリストや嘱託等の柔軟な処遇体系の設定に加え、アルムナイ、リファラル採用の開設・定着を図る等、多様な採用チャネルを活用しています。また、日本国内のグループ会社とは採用ツールの共通化や採用ノウハウの共有にも取り組んでいます。海外各地域における採用活動の実態も把握しており、グローバルHR会議で課題を設定しながら今後も取組みを強化していきます。海外グループ各社のニーズがあれば、ブランディング、採用ツール、採用ノウハウ面でもグローバル共通の取組みに着手していきます。リテンションの面において、日本ではエンゲージメントサーベイを実施していますが、調査→分析→対策策定→実施のPDCAをさらに磨いていきます。海外でも中国などサーベイを展開している拠点もあり、今後はグローバルでの合同実施も検討していきます。

(ii) 優秀人材確保は普遍的課題であり、特に日本においては、採用力の強化、エンゲージメントの向上、日本人に頼らない仕組み作りを優先事項としています。

 

(4) 品質問題発生のリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループの製品又は業務プロセスにおいて、欠陥、不正もしくは偽装等が疑われる事象が発生した場合、あるいは重大なクレーム又は製造物責任(PL)に係る問題が発生した場合には、製品回収、損害賠償の負担、行政当局又は第三者機関による措置その他の対応を求められる可能性があります。これらの対応に伴い、生産活動の停止、製品出荷の中断等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼすおそれがあります。さらに、当該事象の発生は、当社グループの社会的信用を毀損し、中長期的な事業運営、取引関係及び企業価値に影響を与える可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループでは、年度計画に基づき各製造拠点において品質監査を実施し、品質管理システムが適切且つ有効に管理され、社会及び事業環境の変化に対応した運用が確保されていることを確認しています。品質監査においては、実態確認に基づく改善・是正要求及びその対応に加え、その後のフォローアップを確実に行うことにより、ルール及び業務プロセスの運用の改善に取り組んでいます。

(ii) 当社グループでは、品質に係る教育・啓発を通じた品質文化の醸成を重要な取組みとして位置づけ、「品質コンプライアンスに関するe-ラーニング」のほか、関係会社社長や営業部署への品質教育などを継続的に実施しています。これらの取組みにより、品質に関する役割・責任の理解を深めるとともに、適切な判断及び行動の定着を図っています。なお、教育施策の実施状況については、受講状況等を把握し、必要に応じて内容の見直し・改善を行うことで、教育の有効性向上に努めています。

 

(5) サイバーセキュリティに関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

懸念される重大リスクシナリオとして、ランサムウェア等のサイバー攻撃により、外部の攻撃者が当社グループネットワークに不正侵入し、社内サーバー等を乗っ取って重要機密情報を含むデータを窃取、暗号化することが想定されます。当社グループがインシデント対応手順を誤って被害の拡大を招くと、各種ITシステムが長期間にわたり使用できなくなる可能性があります。また、当社グループの従業員や元従業員による重要機密情報の不正な持ち出し・持ち込み、あるいは改竄・破壊・不正利用等の内部不正行為も想定されます。さらに、急速に業務適用が進展する生成AIにも不適切利用に関するセキュリティリスクがあります。生成AIの不適切利用としては、社外の生成AIに不用意に入力した当社グループの機密情報が学習データに利用されて外部公開される、又は、生成物に含まれる第三者の著作物をそれと気づかず対外利用してしまうということが想定されます。これらのリスクが発現した場合、業務プロセス、生産ライン、サプライチェーン、デジタルエコシステム等が中断・停止され、当社グループの事業活動や収益だけでなく、顧客や取引先、地域社会にも多大な影響を与えてしまいます。さらに、重要技術情報等の外部漏洩が生じた場合、当社グループの技術的優位性の喪失、新製品開発の遅延、市場での競争力低下等をもたらします。また、財務データが破壊・改竄されると、財務報告の誤りや不正確な情報公表につながり、投資家の信頼を失うことにもなります。これらの結果として、短期・長期での企業競争力低下、会社のブランドイメージ棄損、顧客や社会からの信頼喪失等を惹起するほか、損害賠償を含む法的対応の義務が生じる可能性もあります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループでは、国内外グループ会社におけるITインフラのセキュリティ対策強化、実践的インシデント対応力強化、従業員のセキュリティ意識向上、生成AI利用ガイドラインなど、ITセキュリティに関するガイドラインの継続的な更改の浸透を図っています。

(ii) 第三者セキュリティアセスメント及び侵入テスト結果に基づく対策の実施、各種訓練や啓発活動も計画的かつ継続的に実施しており、リスクは確実に低減しています。

 

(6) 知的財産に関するリスク

①リスクの内容・業績に与える影響の内容

当社グループは、事業活動の中で生み出される新たな技術やノウハウを保護するため、知的財産権の取得に努めています。一方、他社の権利を侵害しないよう適切な対応を講じ、第三者の正当な知的財産権を尊重した事業活動を行っています。しかしながら、権利の解釈や見解の相違等により、知的財産に関する紛争が発生した場合、製品開発や販売の停止、損害賠償金の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループが保有する技術情報やノウハウが不測の事態により外部に流出した場合、当社グループ製品の模倣品や類似品が流通し、製品の競争力が失われ、事業収益に影響を与える可能性があります。その他、第三者が当社グループのロゴや商標を不当に使用して類似品や劣化品を市場に流通させることで、当社グループの業績への影響やブランド毀損が生じる可能性があります。

②当社グループの取組

(i) 当社グループでは、製品開発の各ステージにおいて、第三者の知的財産権の侵害予防調査を実施し、知的財産部門に在籍する弁理士や、国内外の特許事務所及び法律事務所の弁理士、弁護士による判断のもと、第三者の正当な知的財産権を尊重した製品化を行っています。万一、知的財産に関する紛争が発生した場合にも、事案に応じて社内外の弁理士、弁護士が適切に連携して対応できる体制をとっています。また、当社グループでは、「情報セキュリティに関する方針」のもと、「機密情報管理規程」を制定し、技術情報等を厳格に管理しています。外部への技術情報の開示に際しては、学会発表や展示会への出展等、開示形態に応じた監視体制を整え、機密情報の漏洩を防止しています。

(ii) 当社グループのロゴや商標の不当使用に対しては、電子商取引サイトの監視や商標データベース調査により、当社グループのロゴや商標の不正使用、悪質な類似商標出願を確認した場合には、電子商取引サイトの出店差し止め請求や、類似商標の登録防止措置を講じています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績

当連結会計年度の業績は次のとおりです。

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前年同期比

売上高

10,711

10,522

△1.8%

△1.7%

営業利益

445

522

+17.2%

+17.8%

経常利益

379

442

+16.7%

親会社株主に帰属する当期純利益

213

324

+51.8%

EBITDA

957

1,093

+14.2%

US$/円(平均)

151.04

150.08

△0.6%

EUR/円(平均)

163.34

169.58

+3.8%

   EBITDA:親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額

 

 当連結会計年度(2025年1月~12月)における当社グループの売上高は、前年同期比1.8%減の1兆522億円でした。

・世界経済の状況を振り返ると、米国による相互関税措置が発表された直後は、サプライチェーンの混乱や関税コスト負担による出荷への影響が心配されました。しかし、主要国間で通商政策に関する合意が形成されるにつれて落ち着きを取り戻しました。一方で、物価高や米中貿易摩擦の再燃への懸念は収まらず、企業や消費者にとって先行きが不透明な状況が続きました。

・このような経済環境下において、当社グループが特に成長分野と定める顧客業界の市況については、電気•電子やディスプレイを中心とするデジタル分野のうち、ディスプレイ市場はパネルメーカーの稼働状況に伴い市況に波が見られたものの、半導体市場はAI半導体デバイス等の旺盛な需要が市場をけん引し、年間を通して堅調に推移しました。モビリティを中心とするインダストリアル分野では、自動車市場において、米国の関税政策による一時的な駆け込み需要や中国メーカーの台頭といった動きが見られたなか、比較的安定して推移しました。

・こうしたなか、当社グループの出荷動向に関しては、デジタル印刷に使用されるジェットインキやケミトロニクス事業の中核製品であるエポキシ樹脂や工業用テープといった高付加価値製品は堅調な出荷となりました。また、PPSコンパウンドなどモビリティに関連した製品も前年並みの水準となりました。一方で、パッケージ用インキ、塗料用顔料、プラスチック用顔料など消費財に近いボリュームゾーンの製品は物価高や景気先行きに対する懸念などを背景に減少しました。

 営業利益は、前年同期比17.2%増の522億円でした。減収となるなか、高付加価値製品の堅調な出荷、関税対策を含めた価格対応の実施やコスト管理を徹底したことに加え、カラー&ディスプレイにおいて、欧米顔料事業の構造改革によるコスト削減効果の発現により、赤字であった海外地域が黒字に転換したことなどが、増益の主要因となりました。

 経常利益は、前年同期比16.7%増の442億円でした。ハイパーインフレーション会計及び新興国通貨に対する為替換算影響により為替差損が増加した一方で、欧米での利下げに伴い支払利息が減少しました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、51.8%増の324億円でした。液晶材料事業の撤退に関連した出資金売却益や美術品売却益を計上するなど、特別利益が前年同期比で増加したことに加え、特別損失が前年同期比で減少しました。

 EBITDAは、前年同期比14.2%増の1,093億円でした。

 

※インダストリアル分野とは、自動車、鉄道、船舶などのモビリティ用途と建設機械、産業機械などの一般工業用途に係る製品分野の総称です。

 

また、各セグメントの業績は次のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:億円)

セグメント

売  上  高

営 業 利 益

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前年

同期比

現地通貨

ベース

前年同期比

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前年

同期比

現地通貨

ベース

前年同期比

パッケージング&

グラフィック

5,601

5,497

△1.9%

△1.3%

316

311

△1.7%

+1.6%

カラー&ディスプレイ

2,570

2,475

△3.7%

△4.4%

△3

50

黒字化

黒字化

ファンクショナル

プロダクツ

2,960

2,909

△1.7%

△2.1%

214

231

+7.9%

+6.9%

その他、全社・消去

△419

△358

△82

△70

10,711

10,522

△1.8%

△1.7%

445

522

+17.2%

+17.8%

(注)当連結会計年度より「パッケージング&グラフィック」、「ファンクショナルプロダクツ」及び「その他、全社・消去」のセグメント間で、売上高と営業利益の一部についてセグメント区分を変更しています。

これに伴い、前連結会計年度についても、変更後の数値に組み替えて記載しています。

 

 

 [パッケージング&グラフィック]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

5,601

億円

5,497

億円

△1.9%

△1.3%

営 業 利 益

316

億円

311

億円

△1.7%

+1.6%

 

 売上高は、前年同期比1.9%減の5,497億円でした。食品包装を主用途とするパッケージ用インキは、日本では物価高に伴う消費の落ち込みによって、米州・欧州では特に欧州で景気の減速感や競合環境によってそれぞれ出荷が減少しましたが、一貫して価格対応に努めた結果、両地域とも増収となりました。一方、アジア他では市況の落ち込みと価格競争により出荷と価格の両面で厳しい環境にあるなか、顧客開拓による拡販が進んだ中国では増収となったものの、それ以外の地域では減収となりました。商業印刷や新聞を主用途とする出版用インキは、各地域で構造的な出版需要の減少が続くなか、特に米州・欧州で価格競争が強まり、出荷が大きく減少した結果、減収となりました。デジタル印刷に使用されるジェットインキは、デジタル化の進展により出荷が増え、増収となりました。食品トレーなどで使用されるポリスチレンは、日本における物価高を背景とした食料品の買い控えの影響などにより、出荷が前年同期を下回りました。

 営業利益は、前年同期比1.7%減の311億円でした。日本ではパッケージ用インキと出版用インキにおいて価格対応を進めましたが、コスト増加分を吸収できず、減益となりました。米州・欧州では、安定した供給やサービスを通じて販売価格の維持に努めた結果、現地通貨ベースでは増益となったものの、新興国通貨安による為替換算影響を受けたことから、減益となりました。アジア他では、売上の減少により減益となりました。

 

 [カラー&ディスプレイ]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

2,570

億円

2,475

億円

△3.7%

△4.4%

営 業 利 益

△3

億円

50

億円

黒字化

黒字化

 

 売上高は、前年同期比3.7%減の2,475億円でした。売上の割合が大きい塗料用顔料、プラスチック用顔料は、欧州や米国を中心に景気の先行き不透明感から顧客需要が伸び悩み、出荷が落ち込みましたが、関税対策や採算是正を目的とした価格改定に一貫して努めた結果、増収となりました。高付加価値製品については、ディスプレイ用途であるカラーフィルタ用顔料は、パネルメーカーの稼働状況が安定せず、前年を下回る出荷となりましたが、品目構成の影響により増収となりました。化粧品用顔料は、主な顧客である欧米の化粧品メーカーにおける需要停滞などにより出荷が減少し、減収となりました。スペシャリティ用顔料は、在庫調整が一巡した農業向けの出荷が回復したことに加え、建築向けも出荷を伸ばした結果、増収となりました。顔料製品以外では、液晶材料事業からの撤退により、液晶材料製品の売上高が減少したことが減収要因となりました。

 営業利益は、50億円の黒字となりました。カラーフィルタ用顔料やスペシャリティ用顔料といった高付加価値製品の増収に加え、以前から進めてきた欧米顔料事業の構造改革によるコスト削減効果の発現により、赤字であった海外地域が黒字に転換しました。

 

 [ファンクショナルプロダクツ]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

2,960

億円

2,909

億円

△1.7%

△2.1%

営 業 利 益

214

億円

231

億円

+7.9%

+6.9%

 

 売上高は、前年同期比1.7%減の2,909億円でした。デジタル分野については、半導体などのエレクトロニクス材料を主用途とするエポキシ樹脂は、半導体需要にけん引される形で全般的に出荷が堅調であった結果、増収となりました。スマートフォンなどのモバイル機器を主用途とする工業用テープは、新機種への採用拡大など着実に需要を取り込んだことで、増収となりました。インダストリアル分野については、自動車市場において米国関税措置による出荷への影響が懸念されましたが、PPSコンパウンドなどモビリティ関連用途の製品出荷が底堅い結果となりました。上記以外では、連結子会社であったDICデコール株式会社の株式を2025年4月に譲渡したことにより、住宅材料関連製品の売上高が減少したことが減収要因となりました。

 営業利益は、前年同期比7.9%増の231億円でした。ケミトロニクス事業に関連した先行投資などによりコスト増となるなか、エレクトロニクスやモビリティ関連用途の高付加価値製品の拡販が進んだことに加え、各製品において価格維持に努めたことにより、増益となりました。

 

②キャッシュ・フロー

 

 [営業活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度 730億円(前連結会計年度 462億円)

 当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益が516億円、減価償却費が538億円となりました。また、法人税等に159億円を支払い、運転資本の増加により78億円の資金を使用しました。以上の結果、営業活動により得られた資金の総額は730億円となりました。

 

 [投資活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度 △206億円(前連結会計年度 △171億円)

 当連結会計年度は、美術品の売却により80億円、子会社株式及び出資金の売却により59億円、有形固定資産の売却により46億円の資金を獲得した一方で、有形及び無形固定資産の取得に420億円を支払いました。以上の結果、投資活動に使用した資金の総額は206億円となりました。

 

 [財務活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度 △454億円(前連結会計年度 △626億円)

 当連結会計年度は、借入等の返済に302億円を支払い、剰余金の配当として95億円を支払いました。以上の結果、財務活動に使用した資金の総額は454億円となりました。

 

 (キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

 

2023年度

2024年度

2025年度

自己資本比率

(%)

29.2

32.7

37.0

時価ベースの自己資本比率

(%)

21.1

26.1

27.1

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率

(年)

5.9

10.5

6.3

事業収益インタレスト・

カバレッジ・レシオ

(倍)

2.2

5.7

8.7

(注)1.各指標の算式は以下のとおりです。

自己資本比率             :(純資産-非支配株主持分)/総資産

時価ベースの自己資本比率       :株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後))/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率  :有利子負債/営業キャッシュ・フロー

事業収益インタレスト・カバレッジ・レシオ:(営業利益+受取利息+受取配当金)/支払利息

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、社債、コマーシャル・ペーパー及びリース債務を対象にしています。

営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。

また、支払利息については、連結損益計算書の支払利息を使用しています。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

(イ) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメント

金額(百万円)

前年同期比(%)

パッケージング&グラフィック

545,843

102.5

カラー&ディスプレイ

249,684

104.7

ファンクショナルプロダクツ

294,429

96.9

報告セグメント計

1,089,955

101.4

その他

46

148.9

1,090,001

101.4

 (注)生産実績は期中平均販売価格により算出しています。

 

 

(ロ) 受注実績

 当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(ハ) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメント

金額(百万円)

前年同期比(%)

パッケージング&グラフィック

549,677

98.1

カラー&ディスプレイ

215,192

98.7

ファンクショナルプロダクツ

286,802

98.1

報告セグメント計

1,051,671

98.2

その他

524

81.1

1,052,194

98.2

(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(2)経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況の分析

①経営成績の分析

 経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。

 

②財政状態の分析

 当連結会計年度末の資産の部は、有形無形固定資産の減価償却が進んだものの、為替変動による円換算額増加の影響が大きく、前連結会計年度末と比べて477億円増加し、1兆2,741億円となりました。負債の部は、主に有利子負債の減少により、前連結会計年度末比226億円減の7,832億円となりました。また、純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替換算調整勘定の増加により前連結会計年度末比702億円増の4,908億円となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性

(a) キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載しています。

 

(b) 財務戦略

 当社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、ネットD/Eレシオ(注2)を経営指標として設定することとし、これを0.8倍以下に維持することを目標としています。翌連結会計年度末のネットD/Eレシオは、堅調な営業キャッシュ・フロー創出と利益の蓄積、及び資産売却に取り組むことにより、0.80倍程度まで改善する計画です。

 

(c) 資金需要の主な内容

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資、株式及び出資金の取得等によるものです。今後の設備投資計画等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しています。

 

(d) 資金調達

 これらの資金需要に対して当社グループは、運転資金については、自己資金のほか短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの発行により、また設備投資等の長期資金については、長期借入金及び社債で調達を行っています。

 なお、当連結会計年度末のネット有利子負債(注3)は3,894億円ネットD/Eレシオは0.83倍となりました。また、当連結会計年度末の現金及び預金は689億円となりました。

 

(注)1.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及びリース債務を対象にしています。

2.ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債/自己資本

3.ネット有利子負債=有利子負債-現金及び預金

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

 

(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当連結会計年度における長期経営計画「DIC Vision 2030」の達成状況は次のとおりです。

 

(単位:億円)

2025年度計画

2025年度実績

2026年度見通し

2030年度計画

売上高

11,100

10,522

11,000

12,400以上

営業利益

480

522

560

800以上

ROIC *

4.2%

4.4%

4.7%

6.0%以上

ROE

6.0%

7.4%

7.1%

10.0%

D/Eレシオ **

1.03倍

0.83倍

0.80倍

0.8倍以下

*  ROIC = 税引き後営業利益 ÷ (ネット有利子負債+純資産)

** D/Eレシオ = ネット有利子負債 ÷ 自己資本

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、経営ビジョン「彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに- Color & Comfort -」の実現に向けて、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散など既存基盤技術の深耕に加え、新たな基盤技術として無機・バイオ材料設計の確立に取り組んでいます。さらに、これらの技術を複合化することで、持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発を積極的に推進しています。

 日本国内の研究開発組織は、事業に直結した製品の開発・改良を担う技術統括本部、DICグラフィックス㈱の技術本部、基盤技術の深耕と創生を担うR&D統括本部、並びに戦略的な新事業創出と事業部門の次世代製品群の事業化を担う新事業統括本部より構成されています。なお、2026年より、技術統括本部に集約されていた製品群別の技術本部を各事業部門に移管しました。これまで培ってきた技術本部間の連携体制を維持しつつ、製造・販売・技術が一体化した組織運営を行うことで、顧客ニーズへの迅速な対応及び現場との連携強化を図ります。

 海外においては、サンケミカルの研究所(米国、英国及びドイツ)、青島迪愛生創新科技有限公司(中国)をはじめ、中国及びアジア・パシフィック地域を中心とした技術開発拠点として、印刷インキ技術センター、ポリマ技術センター、ソリッドコンパウンド技術センター、顔料技術センター、テープ技術センターなどを展開しており、これらの拠点が連携してグローバルに製品・技術の開発を行っています。

 また、データサイエンスセンターを中核として、研究開発へのMI(Materials Informatics)などAI技術の活用を推進するとともに、AI分野のスペシャリスト育成を進めています。併せて、CVC(Corporate Venture Capital)や産官学連携などオープンイノベーションも積極的に活用し、研究開発の効率化を加速しています。

 当連結会計年度における研究開発費は、15,964百万円であり、このほか、当社及びDICグラフィックス㈱における製品の改良・カスタマイズなどに関わる技術関連費用は、15,445百万円です。主な研究開発の進捗状況は以下のとおりです。

 

(1) パッケージング&グラフィック

 印刷インキでは、バイオマス由来原料とUVインキ原料を融合させ、バイオマス度50%(当社調べ)という業界最高水準を実現したハイブリッド型UVインキを発売しました。本製品は、従来のUV印刷機でそのまま使用することが可能であり、紙器パッケージ印刷におけるカーボンニュートラルの推進に貢献します。また、食品包装向けグラビアインキにおいても、従来品同様にバイオマス原料を使用しながら、ラミネート強度や印刷濃度などの性能を向上させた次世代インキを発売しました。

 パッケージ材料では、食品包装用色柄発泡トレーにおけるトレーからトレーへの水平リサイクル実現に向け、溶解分離リサイクル手法を用いたリサイクルポリスチレンの量産を開始しました。

 海外では、サステナブルパッケージへの需要増加に対応するため、ポリエチレン単一素材に酸素バリア性を付与することでパッケージ材料としての採用可能性を高める白インキや、化学的に修飾されていない天然由来材料を用いた、食品に直接接触可能なコート剤を開発しました。

 

(2) カラー&ディスプレイ

 ディスプレイのカラーフィルタ用では、新規色材の開発を進めています。

 化粧品用では、メイクアップ、スキンケア、ボディケア、サンケア製品などに幅広く使用可能な高彩度のメタリックエフェクト顔料を開発しました。本顔料は、肌への色残りやブリーディングを起こすことがなく、紫外線安定性にも優れ、動物性原料の不使用が求められるビーガン化粧品の処方設計や、カルミンを含まない化粧品への高い需要に向けた革新的なソリューションを提供します。

 自動車向け及び工業用では、優れた隠蔽力、輝度、明度を兼ね備え、溶剤系及び水性系システムの双方に対応可能な鮮やかな青み赤のアルミ系エフェクト顔料、高彩度と繊細なきらめきを実現した、理想的なマゼンタ色の小粒径合成マイカをベースとした半透明エフェクト顔料及び純白で清涼感のある光沢と上品なサテン効果を生み出す次世代の合成マイカ・パール顔料を開発しました。

 繊維製品用では、高堅牢性を有するとともに脱色が可能な、当社独自の顔料捺染剤を開発しました。本捺染剤を用いたプリント加工製品は、一般プリント加工品と同様に使用することができ、使用後には特殊洗浄によりプリント加工前に近いレベルにまで脱色することが可能で、再度基材に戻せるためリサイクルの適用範囲及び用途の拡大につながり、プリント加工製品の易リサイクル設計に寄与します。

 

 

(3) ファンクショナルプロダクツ

 合成樹脂では、高周波回路基板向けの低誘電特性を有する樹脂の量産を開始しました。併せて、密着性を改善した樹脂についても顧客評価が進展し、少量生産を開始しました。また、自動車補修、建築機械・産業機械向けに従来のハイソリッドタイプ標準品と比較して、塗膜外観の向上に加え、低VOC化、速乾性と長い作業可能時間を両立した二成分硬化型のアスパラギン酸エステル複合型アクリル樹脂を開発しました。さらに、住宅設備、土木インフラ、ボード、船舶、自動車部品向けの不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の両製品において、「ISCC PLUS認証」を当社グループとして国内で初めて取得しました。これにより、バイオマス原料を活用した製品展開を進めるとともに環境負荷低減に向けた取組みを強化しています。

 界面活性剤では、フッ素系界面活性剤の代替が可能な高性能PFASフリー界面活性剤について、20品番を超える製品ラインナップへと拡充しました。

 PPSコンパウンドでは、電気性能の指標である耐トラッキング性を向上させたタイプのほか、有機繊維強化によりギア耐久性を向上させたタイプ、流動性と靭性のバランスを改善した金属部品被覆用などを開発しました。

 工業用テープでは、テープを伸ばすだけで部品に触れずに剥がす事ができるため、薄い・脆い部品のハンドリングが可能な電子部品の製造工程用ストレッチテープを開発しました。

 

(4) その他

 当社グループの新たな基盤技術の創生への取組みとして、バイオ材料において、高い保水性を有する多糖体「サクラネクス®」の原料である培養スイゼンジノリの量産化に向けた培養・生産プロセスの改善を進めています。併せて、グローバル市場への供給に向け、安定供給体制及び品質管理体制の整備も進めています。無機材料では、大学と連携して進めている水素製造光触媒の開発において、当社独自の粒子設計技術を適用した顔料中間体により、業界トップレベルの水分解光触媒性能を達成しました。

 また、「Direct to Society」をコンセプトに、従来の化学メーカーの枠を超えて社会に新たな価値を提案し、業種や業界の垣根を超えたエコシステム(経済圏)の構築及び多様な事業の創出を目指して開発した全方位マルチコプター「HAGAMOSphere®(アガモスフィア)」は、2025年1月にラスベガスで開催された「CES2025」において、ドローン部門でイノベーションアワードを受賞しました。本機は、並進飛行及び地上回転が可能な画期的なドローンであり、災害救助や保守点検、エンターテイメントなど、様々な場面での活用を目指しています。このほか、リチウムイオン電池の熱暴走による発火の延焼リスクに対する延焼防止吸熱パッド「GELRAMICTM(ゲラミック)」を開発しました。本製品は、発火に至る熱暴走時に発生する高温を強力に吸収(吸熱)する特殊ゲルを内包し、熱エネルギーを効率的に制御することで温度上昇を抑制し、電池外部への延焼を防止します。さらに、高温下でゲルがセラミック化することにより、断熱性及び耐破片性を発揮し、延焼と熱伝搬を物理的に遮断します。