文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
当社は、mRNAを標的とした低分子創薬のプラットフォーム型ビジネス(独自の基盤技術を、共同創薬研究等を通じて複数の製薬会社へ提供)に加え、自社での医薬品の創出を行うパイプライン型ビジネスによって、「どんな疾患の患者さまも治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会を実現し発展させる」ことを経営理念としています(図22)。当社は、創薬のブレイクスルーを実現しスペシャリティファーマとなり、より多くのmRNAを標的とする医薬品を迅速かつ継続的に社会に届けていく方針です。

一方、製薬業界では米国の大手製薬会社が自社による創薬を手控え、より他社によって創出された医薬品候補(アセット)の導入を求めるようになっており、その潮流と比較的距離を置いていた日欧の製薬会社も急速にその潮流に追従しつつあります。つまり製薬会社の創薬を支援する契約そのものが世界的に減少傾向にあり、当社のプラットフォーム技術の秀劣にかかわらず、製薬会社をパートナーとして共同創薬研究を行うプラットフォーム型ビジネスにとってアゲインストの状況にあります。
そのような中、当社は以下の取り組みを進めております。

1. プラットフォーム事業については、この潮流を理解しつつチャンスを広げる
● 既存の共同創薬研究を進捗させ、mRNA標的低分子創薬の成功例を作る。これにより技術的なブレイクスルーを示して、業界の潮流を変化させる
● 将来価値の高いプロジェクトを、創薬の意欲が旺盛な国内外バイオテクと進める契約を締結する
● 直近の収益になるプロジェクトを製薬会社と進める契約を締結する努力を怠らない
2. 自社パイプラインの拡充: 製薬会社が求める将来のアセットの創出
● パイプライン1については、ドラッグデリバリーシステムPerfusioによる臨床試験のコストと期間を抜本的に短縮し、将来価値の向上と早期マネタイズを意識する
● パイプライン2については、2026年度に創出する
3. 多角化を通じた事業の安定化
● 当社技術の応用性を活かし、農薬事業に参入する
● ドラッグデリバリーシステム自体のライセンスアウトを視野に入れる
当社では、既存のプラットフォーム事業はおおむね順調に推移しており、これは当社の技術力が向上し、実際の創薬に適用できる技術となっていることを示しているものと認識しております。現在進めている共同創薬研究のなかには、中期経営期間中に非臨床試験入りすることが期待できるものも含まれており、対象疾患や創出される医薬品の将来価値等の情報を適時適切に開示することによって株主価値の向上につなげたいと考えています。
また、そうしたイベントは「mRNA創薬によって(理想的な)低分子医薬品が作れる」という明白な証明になりますので、製薬各社は現在の潮流にあってもより真剣に当社との契約を必要とするようになると考えております。
加えて2026年度は、特に当社にとって新たな事業分野であるドラッグデリバリーシステム(DDS)について形を定めていきます。このDDSは、2027年度までの中期経営計画期間中に実用化して販売開始まで進めることが目標です。そして最も順調に進捗した場合には、このDDSによって当社のパイプラインの臨床試験期間とコストを約5分の1程度にまで圧縮することを目指します。
当社は今後の中長期的な目標として、2030年を目途に「スペシャリティファーマとしての地歩を確立すること」を目指します(図24)。

(注) あくまで当社が目標とする成長のイメージであり、実際の時価総額の推移を示唆するものではありません。
スペシャリティファーマを目指す道のりの第一段階として、当社はこれまで、創薬プラットフォームibVISⓇを活用したプラットフォーム型ビジネスに注力し、収益基盤を固めました。複数の国内製薬会社とmRNA標的低分子創薬の共同創薬研究を実施し、その過程で得られた知見と実績が、プラットフォーム技術の向上と競合他社との差別化、ひいては収益の確保につながりました。
スペシャリティファーマへの道のりの第二段階として、AI創薬プラットフォームをaibVISに発展させてmRNA標的低分子医薬品のプラットフォーム型ビジネスを拡大させつつ、さらに2025年より核酸医薬品を中心として自社独自のパイプラインも創出するパイプライン型ビジネスを本格化させて収益源を複数有する「ハイブリッド型ビジネス」に移行しています。ハイブリッド型ビジネスにより、製薬会社と進めている共同創薬研究から収益を確保するとともに、自社独自のパイプラインを保有することにより、その現在価値が織り込まれるよう情報開示を進め、株主価値の向上を目指します(図25)。

スペシャリティファーマは、日本だけでなくアメリカにおいても非常によく見られる事業形態で、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場しているヘルスケア関連企業の中で、上場後10年以上にわたり成長を維持している中堅企業の大半が、この事業形態を採っています。
スペシャリティファーマへの道のりの最終段階として、プラットフォーム事業及びパイプライン創出とあわせて、製薬会社として必要な組織、機能、人材等を確保し、持続的な成長が期待できるスペシャリティファーマとしての態勢を整えます。
これらスペシャリティファーマを目指すプロセスを通じて、当社が中長期的に安定的かつ持続的な成長を実現することにより、株主価値を高めていきます。合わせて、当社の技術で創出された医薬品を社会に責任をもって届ける態勢を確保することにより、当社が掲げる理念の実現につながるものと考えております。
2030年度にスペシャリティファーマとしての地歩を確立するため、当社は2025年度から2027年度にかけての中期経営計画期間中、当社の株主価値に寄与する以下の施策を実施し(図26)、ハイブリッド型ビジネスのバイオテク企業として収益基盤の確立を図ります。

当社は、2030年度にスペシャリティファーマとしての地歩を確保することを経営目標としております。その経営目標を達成する過程ではハイブリッド型ビジネスとして、プラットフォーム型ビジネスからは事業収益を、パイプライン型ビジネスからは自社パイプラインが創出されます。
プラットフォーム型ビジネスにおいては、製薬会社とのプロジェクトは全て研究段階であり、当社が開発・売上マイルストーン及びロイヤリティ収入を獲得可能となるのは早くても数年後となるため、現時点においては、ROAやROEといった経営指標ではなく、製薬会社との新規共同創薬研究契約の締結数(年間2社)を、目標達成の判断基準(KPI)として掲げています。
パイプライン型ビジネスにおいては、年間1本の自社パイプライン創出をKPIとして設定しております。これらKPIは取締役会等に報告されており、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようにしております。
ハイブリッド型ビジネスとして、2つのビジネスのバランスを取ることが重要と認識しており、それは明確な数字を指標とするより、契約一時金、研究支援金及び製薬会社とのプロジェクト進捗に応じて得られる研究マイルストーンに基づく事業収益全体と、社内技術の拡充および社内パイプラインの研究開発費といった事業支出全体をお示ししてご説明を差し上げることで代えることといたします。
ところで、新規共同創薬研究契約数の目標を達成するための施策として、当社はこれまでに、製薬会社と秘密保持契約書(CDA)の締結からはじまる事業開発活動の実績を統計的に解析しています(図27)。その結果、全CDA締結数のうち本契約まで至った確率はおおよそ42%、CDA締結から本契約に至るまでの期間(中央値)は約14か月となっています(2025年12月末現在)。一方で、CDA下での交渉を行う際に、直近で収益が得られる性質の交渉と、自社パイプラインの共同創出を求める性質の二者に分類されることが分かってまいりました。そこで当社としては、直近で収益が得られる契約も取りこぼさないよう、十二分に注意します。このように事業開発の重点を定め、2026年も2社と契約を締結するという目標のもと、その数に見合うCDA締結数を獲得するなど事業開発活動を実施しています。

内閣官房の健康・医療戦略室委託事業が2021年3月に発表した『令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書』によると、世界の医療用医薬品市場は、2020年の約75兆円から、2030年には約103兆円に成長すると予測されています(図28)。
近年、抗体医薬品やペプチド医薬品などの中分子・高分子医薬品が一定規模の市場を形成しており、今後も成長期市場として存在感を示すと考えられます。低分子医薬品は、既に成熟期に差し掛かっている市場であり、市場成長率は微増であるものの、2030年においても医薬品市場の約半分を占めると予測されています。低分子医薬品は、グローバル市場において、日本企業が占有率を高く保っている領域です。今後日本では、占有率の維持に向けて、低分子医薬品の創薬標的やターゲット構造の拡大、適応疾患の拡大、及び研究開発の効率化による低コスト化が重要視されると考えられます。

当社の属するmRNA標的低分子創薬の領域は、現在世界的に見ても研究段階であるため、2030年時点で市場が大きく形成されている可能性は低いと考えられます。しかしながら、従来のタンパク質標的低分子医薬品と競合することなく、全く新規の創薬標的に対して低分子医薬品の創出に取り組めるうえに、低分子医薬品は経口投与が可能で、製造コストが低く、規制体制及び商材としてのバリューチェーンも確立されているため、将来的には、mRNA標的低分子医薬品単独で新たな市場が形成されると考えられます。その市場規模は、将来のある時点において、既存のタンパク質標的低分子医薬品の市場と同等規模になると、当社は推定しています(図29)。

2010年代後半、米国を中心としてmRNAを標的とした低分子医薬品の創出を目指すバイオテク企業が相次いで立ち上がり、2017年11月には、科学系学術団体としては世界最大のアメリカ化学会の学会誌であるChemical & Engineering Newsに「The RNA hunters」として取り上げられました。さらに、近年の科学技術の発展に伴って低分子医薬品でアプロ―チ可能な創薬標的が拡大したことにより、2023年10月の同学会誌には「Is this a golden age of small-molecule drug discovery?」と特集されるなど、再度低分子医薬品の創出に対する注目が高まっています。その中で、mRNA標的低分子創薬についても同学会誌に取り上げられており、創薬の専門家のコメントとして「個人的な見解ではあるものの次の大本命はRNA標的であり創薬の主流になりつつある」と記載されております。
このような流れを受けて、低分子医薬品の研究開発能力を持つ製薬会社はmRNA標的低分子創薬を検討しはじめ、mRNA標的低分子創薬に取り組むバイオテク企業間の競争は今後より一層激しくなると予想されます。その一方で、各社独自のビジネス展開により棲み分けが進んでいくものと考えられます。
当社の知る限り、国内外の大手製薬会社20社以上がmRNA標的低分子創薬関連のバイオテク企業と提携済みであり(2025年12月末現在)、本創薬への流れは既に始まっていると考えております。当社では、mRNA標的低分子創薬関連に取り組むバイオテク企業の中で、以下に示す当社基準にもとづき、Arrakis Therapeutics、Ribometrix、及びAnima Biotechの3社を当社の主要な競合会社と考えております。
[競合他社の選定基準]
・当社同様の作用機序に基づくmRNA標的低分子創薬を目指している企業
・全てのmRNA標的低分子創薬に関する技術を保有していると考えられる企業
・大型提携の実績をもつ企業
そのうえで、当社がもっとも注目している点は、公開情報等から競合他社が主に既知のターゲット構造を創薬対象としていると考えられるのに対して、当社は多種多様なターゲット構造を同定し、創薬対象とできることです(当社のターゲット構造を同定する技術の詳細は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (2) 当社の事業領域 ③ aibVISプラットフォーム」を参照)。当社の「ターゲット探索」は、各製薬会社の新薬開発ニーズに対して、多種多様なターゲット構造を創薬対象とすることで応えられるため、創薬標的の枯渇という製薬業界の課題に対する抜本的な解決につながると考えております。したがって、当社のプラットフォーム技術は、競合他社に比べて「ターゲット探索」において優位性があると考えます。
近年、抗体医薬、遺伝子治療、細胞治療等と並び、核酸医薬品は次世代モダリティの一角として国際的な注目を集めております。当社が自社パイプラインの創出と言う形で取り組む核酸医薬品は、図28において、特に希少疾患向けとしての切り札と考えられているため、主要な医薬品の中にあって最も成長率の高いセグメントであると認知されています。核酸医薬品は、従来の低分子医薬品や抗体医薬では標的化が困難であった遺伝子発現制御を可能とし、極めて高い治療的潜在力を有します。
主要な核酸医薬品であるASO医薬品およびsiRNA医薬品につきましては、2025年度中も家族性高カイロミクロン血症治療薬であるsiRNA医薬品Redemploや遺伝性血管性浮腫治療薬であるASO Dawnzeraなどが米国などで承認されるなど、臨床的有用性を示しております。これらの実績の蓄積を背景に、我が国におきましても核酸医薬品の品質・非臨床安全性・臨床評価に関する規制上の考え方が整理されつつあり、当局による各種ガイドラインの整備も進展しております。このような規制環境の明確化は、開発リスクの低減および投資判断の合理化に資するものであり、核酸医薬品分野の持続的発展に向けた重要な基盤形成と位置付けられるものです。
一般に、医薬品産業は高度な知識集約型産業であると同時に、厳格な品質管理の下で大量生産を行う製造業としての側面を有しております。いかに優れた創薬コンセプトでありましても、再現性・安定性・経済合理性を備えた製造法が確立されて初めて、社会に広く普及させることが可能となります。この観点から、核酸医薬品におきましても、原薬合成技術、精製技術、製剤化技術等の高度化およびスケールアップ体制の構築が、現在まさに業界横断的な重要課題として位置付けられております。日本においても、日東電工株式会社や味の素株式会社、株式会社日本触媒などの化学・素材メーカーが、積極的に研究開発や設備投資を進め、強力な原薬製造能力を保有しグローバルに供給しようとしている状況にあります。
さらに、核酸医薬品の実用化においては、標的臓器・標的細胞へ有効成分を効率的に送達するDDSが不可欠の基盤技術と認識されております。しかしながら、DDSに用いられるリポソームや高分子ミセルについては、安全性に関する知見がなお限定的であり、それらに由来する毒性が懸念されるとともに、複雑な製造工程や品質管理の難易度の高さが事業化上の制約要因となり得ます。他方で、DDSの導入は、これまで治療介入が困難であった臓器・組織への薬剤送達を可能とし、製品の市場的魅力および医療的価値を飛躍的に高める可能性を有しております。
したがいまして、現在求められておりますDDSは、単に送達効率を向上させるのみならず、安全性において予見可能性を備え、かつ商業生産に適した製造合理性を確保し得る技術です。すなわち、「魅力」を高めつつ「毒性」や「製造」に関する課題を同時に克服する統合的ソリューションの確立が、核酸医薬品分野における競争優位の鍵を握るものと考えられます(図7)。
当社は、前述の通り、核酸医薬品の課題を、毒性、製造コスト、医薬品自体のビジネス的魅力、の三つととらえており、毒性や製造コストと矛盾なく核酸医薬品のビジネス的魅力を高めるDDSが重要だと考えております。その点、カテーテルを用いて対象臓器にだけ医薬品を送達および回収できるPerfusioは毒性をさらに下げることが期待でき、また既存のカテーテルを利用することが可能であるためにPerfusio自体の製造コストは軽微であり、むしろ使用薬剤量を低減できることで全体のコストは低減されます。つまり、応用範囲が広くデメリットの少ない当社独自のPerfusioを利用し、これまで核酸医薬品を適用することがそもそも想起されてこなかった臓器への核酸医薬品を作ることで、競合のいないオンリーワンとなり当然にファーストインクラスとなることを達成しようと考えています。Perfusioは当社のAI創薬による核酸医薬創薬の加速と合わせて、当社の優位性に資すると考えております。
経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
当社のmRNA標的低分子創薬事業(プラットフォーム事業)は、共同創薬研究契約の相手方である製薬会社が抱えるニーズや課題を的確に把握し、適切に対応を進め、創薬研究を着実に前進させることにより、研究支援金や研究成果に応じたマイルストーン収入等の収益を獲得します。また新たな共同創薬研究契約の締結のため、欧州での事業開発活動に注力するなど戦略的かつ計画的に取り組みます。当社はこれまでに引き続き、現在進行中の共同創薬研究をそれぞれ進捗させること、また新規契約を着実に締結してゆくことを通じて、持続的・安定的な事業の拡大と収益の獲得を目指します。
当社は、これまでのプラットフォーム事業にとどまらず、自社パイプライン事業を進めております。具体的には、当社単独で創出が可能な核酸医薬品に加えて、低分子医薬品も候補とします。その際、創出する医薬品の将来価値総額の大きさ、製品として市場に出るまでの期間の短縮、直近のコストの低減に特に留意します。これにより、当社の株主価値の持続的な拡大につなげてまいります。
当社は、これまでに実施した製薬会社との共同創薬研究や、自社独自の研究を通じて蓄積した経験と知見を、当社のプラットフォーム技術に反映させるとともに、大学等との共同研究を通じて新たな技術を積極的に吸収し、技術競争力の強化を図ります。引き続き、専門分野の弁理士等と連携しながら、積極的な特許出願・国際展開、当社独自のソフトウェアとデータベースの構築及び秘匿化などにより、当社の技術について独占性の確保・維持と将来の事業展開への素地を作ります。
当社は、株主価値を高めることにより株主に報いる経営に取り組みます。具体的には、将来の株主価値を高める事業に経営資源を振り向け、事業を計画的に実行してまいります。また健全性と透明性の高い経営を実践しつつ、適時的確で積極的な情報開示や株主との対話等を通じて、適正な株主価値の構築とその向上に努めます。
当社の事業を持続的かつ安定的に発展させるために、RNA研究に関する高い専門性や豊富な創薬研究経験を有する人材、事業の拡大に資する人材の確保を進めます。当社は、従業員が働きやすく、業務を通じて成長できる環境を整備することにより、当社への帰属意識や従業員満足度を高めます。こうしたサステナビリティ経営を通じて、当社の事業基盤を盤石にいたします。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、サステナビリティに関する重要な事項については、サステナビリティ担当の取締役が起案して、取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会で審議・決定します。サステナビリティに関する事項は随時取締役会に報告されるとともに、特に重要な事項は、サステナビリティ委員会が取締役会に上程し、取締役会において審議・決定します。
当社が取り組むべき課題の各項目における戦略は以下のとおりです。
当社は、「どんな疾患の患者さまも治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会を実現し発展させる。」という経営理念のもと、メッセンジャーRNA(mRNA)を標的とする医薬品(「mRNA標的医薬品」)の創出に取り組んでおり、事業活動を通じた持続可能な社会の継続と、当社の持続的な成長を目指しております。
当社の事業活動の原動力は、当社で働く全ての社員であり、事業基盤を構築する上で優秀な人材を確保し育てていくことが肝要です。このため、社員の人権を最大限に尊重するとともに、働きがいのある企業風土の醸成(社内環境整備)、人材の多様化と一人ひとりを活かす組織づくり等により人的資本への対応を進め、また社員の健康管理・健康増進を経営としてコミットし、社員の当社への帰属意識や満足度の向上を図り、職場の活性化を実現することに努めます。
気候変動への取組みについては、地球温暖化の影響で自然災害(台風や豪雨災害等)の猛威が増大し、また将来的には熱帯の疾病が日本に定着するリスクが高まっていると考えています。こうした中、当社では、自然災害等の発生に備え、「防災マニュアル」を拠点ごとに整備し、全ての社員等の人命を最優先に行動することに努めております。
会社のサステナビリティに関するリスクと機会の把握は、取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会において定期的に審議・検討します。
働きがいのある企業風土の醸成(社内環境整備)に関する指標を定め、開示します。
当社は、社内環境整備の指標として、「年次有給休暇取得率」を目標としております。
当社の事業内容、経営成績及び財政状態等に関するリスク要因について、投資者の判断に重要な影響を与える可能性のある事項を以下に記載しております。
なお、本項目の記載はすべてのリスク要因を網羅したものではなく、業績等に影響を与えうるリスク要因は下記の項目に限定されるものではありません。また、本項における将来に関する記載は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社において合理的であると判断したものです。
● 事業活動にかかるリスクに関する事項
当社の主な収益には、共同研究等の相手方より定期的に受け取る研究支援金のほか、新規契約時に受け取る契約一時金、研究活動の目標達成時に受け取るマイルストーン収入の臨時的収入があります。当社が締結する共同創薬研究等は、相手先ごと、プロジェクトごとに契約内容を個別に取り決めているため、契約にもとづく収益の発生時期や金額は契約案件ごとに異なります。また新規契約の交渉においては、相手方における経営環境の変化や経営方針の変更など、当社の裁量が及ばない要因によって契約締結時期が計画より遅延する可能性もあります。
当社では定期的に受け取る収入の割合を高め、収益の安定化、平準化に努めるとともに、提携候補先の数を増やし、また提携候補先の所在する地域を多様性することにより、収益変動リスクの分散や軽減を図ろうとしております。さらに、自社の裁量によりコントロール可能な自社パイプラインを創出し、その事業化を進捗させることにより収益変動リスクの回避に努める方針です。しかしながら、新規契約を計画通りに締結できない可能性や、新規契約を計画通りに締結できた場合であっても提携先との研究方針の不一致等の要因により予定していた収益が想定通りに得られない可能性があり、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 創薬研究の不確実性について
医薬品の研究は、初期の創薬研究から開発に至るまでに時間を要するとともに、投資が必要となります。また、有用な化合物を見いだせない場合や副作用など安全性への懸念が生じた場合には、研究の延長や中止の判断が行われるなど、創薬研究には不確実性が存在します。一般に医薬品の創薬研究の成功の可能性は、他の産業と比較して低いものとされています。
このような一般的な状況に加えて、当社のプラットフォーム型ビジネスにおいては、創薬研究の進行が自社の裁量のみではコントロールできず、提携先の方針や判断等によって左右される等の不確定要因があります。
当社では、自社の裁量によりコントロール可能な自社パイプラインの創出に加えて、複数の製薬会社と複数の創薬研究プロジェクトを進めることにより、これらリスク要因の分散や軽減に努めております。しかしながら、かかるリスクが顕在化した場合には、研究活動の長期化や中止等につながる可能性があり、結果として将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社が取り組むパイプライン事業においては、ライセンスアウト用のデーターセットの作成や開発プロセスを実施した実績がありません。そのため現時点では、当社が想定している収益化に至る過程には不確実性があります。当社では、パイプライン導出先の候補となる企業との間で、あらかじめ希望遺伝子のリサーチを行い、かかる不確実性の低減を図っております。また現時点で策定している中期経営計画(2025~2027年度分の計画)にはパイプライン導出による収益は織り込まず、当該リスクが顕在化した場合においても、直ちに当社の財政状態や経営成績に関する想定について変更を余儀なくされる事態には至らないものと想定しております。導出先候補会社の意向が変更された場合ないし、何らかの事由によりパイプライン導出が想定より大きく遅延する事態に至った場合には、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
当社の創薬プラットフォームは、mRNA標的創薬に必要な技術群をワンストップで提供します。特に、製薬会社のニーズの高い任意の遺伝子に対してmRNA上に創薬に適した部分構造を発見し、ターゲット構造を定めることが可能である点に特徴があり、日本、米国、欧州での特許を取得しております。この点が当社の競争優位性の源泉であり、同時に他社との有力な差別化要因でもあります。当社は引き続き、新たな技術の開発等を通じて創薬プラットフォームの技術力を強化するとともに、外部環境の変化による影響を受けにくい自社パイプラインの創出も進め、競争優位を維持する方針です。しかしながら、同業他社による新たな技術の実用化により当社技術の相対的な優位性が失われる場合や、他社が運営する創薬プラットフォームとの競争が激化する等の外部環境の変化が生じた場合には、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、今後創出する自社パイプラインの物質特許を含め、事業運営上必要となる特許権等の知的財産権の出願・取得を積極的に進めます。しかしながら、一般的に知的財産権には第三者に先願される可能性があり、また現在当社が出願中の知的財産権が、当社の希望通りに付与される保証はありません。また、権利化の後においても異議申立てや無効審判請求等により、権利の一部又は全てが無効化される可能性があります。当社は当該分野の知財状況をモニターし、この分野で高い専門性を有する弁理士・弁護士と連携するなどの方法により不確実性の軽減に努めております。しかしながら、当社の事業運営に必要な特許権等が取得できない事態や、権利の一部又は全てが無効化される事態が生じた場合には、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 研究活動における情報セキュリティについて
当社では、社内の秘密情報、顧客の秘密情報、自社及び顧客との共同研究を通じて得られる実験データなどの研究情報など、さまざまな秘匿すべき情報があります。これら情報の取り扱いにおいては、一般的に故意または過失による漏洩、外部からの侵入等による漏出などの情報セキュリティリスクがあります。
当社では、秘匿すべき情報にアクセスできる社員を限定するとともに、役員及び社員の全員を対象とする情報セキュリティ教育を随時実施し、情報漏洩リスクに対する意識を高めるとともに、過失による情報漏洩を防ぐソフトウェアの活用や外部からの侵入を防ぐ各種の情報セキュリティ対策を講じることにより、かかるリスクの低減に努めております。これらの施策にもかかわらず、万一、情報漏洩等が発生した場合には、その対応等に要する労力や時間、費用の発生等により、将来の時点における当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
● 組織及び人材にかかるリスクに関する事項
当社は、医薬品等の研究を行う企業としては小規模な組織であり、役員及び社員が各々担当する業務及び責任範囲は相対的に広範となります。当社では事業の拡大に伴い、今後必要な人員補強を図ってゆく方針であり、計画的に人材の採用及び社内教育を進めていく予定です。しかしながら、計画通りに人材の採用ができなかった場合や、多くの人材流出等があった場合には、今後の事業運営が滞る等の影響が生じ、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社では、過度に特定の人物に依存しない組織的な経営体制の強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により、当社代表取締役社長中村慎吾をはじめとする特定の人物が、当社の業務を継続することが困難になった場合には、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
● サステナビリティリスクに関する事項
当社では、自然災害等の発生に備えて「防災マニュアル」を拠点ごとに整備し、役員及び社員の安全を最優先に行動することに努めております。また、事業継続が危ぶまれる事態を想定して「事業継続計画(BCP)」を策定し、定期的な訓練を実施しております。しかしながら、当社の役員または社員への人的被害や、建物や施設に対する物理的被害が発生した場合には、その回復にかかる費用や時間等の発生、事業の再開継続に支障が生ずる等の要因により、将来の時点における当社の事業、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度(2025年1月1日~2025年12月31日)における世界経済は、米国政府による関税政策や世界各地での地政学リスクの高まりが不安材料となりつつも、生成AIの普及や今後の需要拡大期待からデータセンターなどAI関連投資の拡大が後押しする形となり、全体として拡大基調をたどりました。
米国では、AI関連投資が旺盛となり、底堅い個人消費と相まって拡大基調で推移しました。欧州では、主要国の政治不安や、ウクライナや中東地域をめぐる地政学的リスクがありながらも、雇用所得環境が堅調に推移し、消費者物価の安定と相まって堅調に推移しました。中国では、過剰生産解消に伴う投資抑制、政府による景気刺激策の効果一巡から、今後の先行きに不透明感が強まりました。
日本では、米国政府による関税政策による下押しがありつつも、原油などエネルギー価格の落ち着きにより企業収益が拡大基調となりました。また名目賃金の伸びが続くなか消費者物価の上昇が緩やかになり、実質賃金が前年比プラスに転じたことにより個人消費も旺盛となり、総じて堅調に推移しました。
当社の強みである独自のAI創薬プラットフォームibVISⓇの基盤となる技術については、7月に米国で特許の効力が発生し、日本、欧州、米国の世界主要地域にて知的財産権を確保しました。またibVISⓇに実装している複数の「ルールベースAI」に大幅な改良を加えるなど、より応用範囲が広く効果的なaibVISへのバージョンアップを図りました。
プラットフォーム事業においては、機能強化を図った創薬プラットフォームibVISⓇを活用し、医薬品市場で最大のセグメントである低分子医薬品の創出を東レ株式会社、塩野義製薬株式会社、ラクオリア創薬株式会社、武田薬品工業株式会社と共同創薬研究を各々進めるとともに、英国のLCC Therapeutics Ltd.と締結した共同開発及び商業化契約にもとづく共同研究を進めました。さらに新たな契約の締結に向け、mRNA標的低分子医薬品およびmRNA標的核酸医薬品の創薬に関心を持つ国内外の製薬会社等に、当社のプラットフォーム技術の紹介等のアプローチを進めた結果、6月には三菱ガス化学株式会社と核酸医薬品の創出を目的とした共同研究契約を締結、12月にはスイスのSpiroChem AGとmRNA標的化合物の共同探索研究を実施することで合意に至りました。これらにより、複数の医薬品がなるべく早く市場に現れることが期待できます。
自社で独自に進めている、mRNAを標的とする新たな医薬品創出(パイプライン創出)の取り組みでは、当社は既にp53遺伝子のmRNAの量を低下させ,タンパク質の発現を抑制する核酸医薬品の一種であるASOを同定し、日本国内での特許取得とともに、さらに効率よく活性の高いASOを取得するための当社独自の研究活動も進めています。6月には最初の自社パイプラインとなる創薬研究の対象疾患を心臓血管手術後に惹起される虚血性の急性腎不全と定め、ASOによる疾患治療のプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは順調に進捗し、12月にはその研究成果として得られたASOについて物質特許を出願しました。加えて、このプロジェクトに続く新たなASO創出を目的として、11月には国立大学法人島根大学と原発性肺移植片機能不全を抑制する核酸医薬品の研究開発を目的とした共同研究を開始しました。これらにより、治療方法のない疾患に対する医薬品の実現が期待できます。
当社では、ASOの自社創薬とあわせて、ASOが抱える課題の解決に向けて取り組みを進めました。11月にはデクセリアルズ株式会社と高速かつ正確性の高い分光学的RNA構造測定法の確立と社会実装を目的とする共同技術開発の実施について合意しました。12月には、当社が発案し研究を進めていたカテーテルを使用するドラッグデリバリーシステムについて、特許の効力が発生し、このシステムの名称を「Perfusio(パーフュージオ)」といたしました。これにより、主作用が強く副作用のない医療の実現が期待できます。
これらの結果、当事業年度における経営目標の主要な指標であるKPIの達成状況は、新規契約締結数については年間目標4社に対し3社と締結、自社パイプライン創出は特許出願1件で目標達成、事業収益は未達成の結果となりました。
当事業年度における事業収益等の経営指標は、共同創薬研究契約に基づき定期的に受け取る研究支援金や、スポット的に発生するマイルストーン収入等により事業収益は91,140千円(前事業年度比53.2%減)を計上しました。事業費用には研究開発費215,616千円を含む487,888千円を計上し、営業損失は396,748千円(前事業年度は212,851千円の営業損失)となりました。営業外損益においては、定期預金等による受取利息5,729千円など営業外収益6,120千円が発生し、経常損失は390,628千円(前事業年度は233,562千円の経常損失)、特別損失においては、減損損失31,318千円を特別損失に計上し、当期純損失は425,671千円(前事業年度は236,442千円の当期純損失)となりました。
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて364,045千円(16.2%)減少し、1,884,912千円となりました。流動資産は主に現金及び預金の減少348,145千円により366,701千円(16.4%)減少し、1,865,371千円となりました。固定資産は、減損損失の計上及び減価償却による有形固定資産の減少14,115千円があったものの、差入保証金の増加が17,637千円があり、2,656千円(15.7%)増加し、19,541千円となりました。
(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べて61,625千円(156.4%)増加し、101,035千円となりました。これは主に流動負債の前受金の増加55,000千円等があったことによるものです。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べて425,671千円(19.3%)減少し、1,783,876千円となりました。これは2025年5月に実施した減資による資本金の減少67,175千円、その他資本剰余金の増加67,175千円並びに、利益剰余金の減少425,671千円があったことによるものです。
これらの結果、自己資本比率は、前事業年度末の98.2%から3.6ポイント下落し、94.6%となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」と表記)の残高は、前事業年度末より151,854千円増加し325,213千円となりました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は、以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動により支出した資金は299,265千円となりました。これは主に税引前当期純損失421,946千円、前受金の増加55,000千円、減損損失31,318千円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動により獲得した資金は451,119千円となりました。これは定期預金の払戻による収入2,000,000千円、定期預金の預入による支出1,500,000千円、有形固定資産の取得による支出25,663千円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度は財務活動によるキャッシュ・フローはありませんでした。
当社の行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。
当社の行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.当社は創薬プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、事業セグメント別の記載を省略しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、下表のとおりです。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当事業年度の事業収益は91,140千円(前事業年度は194,643千円:前期比53.2%の減少)となりました。事業収益は、2024年度より期ずれとなっていた新規案件の交渉において、契約条件等の妥結点を見いだせず、当該案件の成約を前提として予算化していた契約一時金等の発生の目途が見込めなくなったため減収となりました。
当事業年度の事業費用は487,888千円(前事業年度は407,494千円:前期比19.7%の増加)となりました。これは主として研究活動の進捗に応じた研究開発費の増加43,141千円、各費目の支出増加による販売費及び一般管理費の増加37,253千円によるものです。これらの結果、当事業年度の当期純損失は425,671千円(前事業年度は当期純損失236,442千円)となりました。
なお、財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況 ② 財政状態」に含めて記載しております。
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社における主な資金需要は、人件費にかかる支出及び研究開発にかかる支出です。この資金需要に対しては、原則として自己資金を充当することを基本としております。
なお、当事業年度末において、金融機関等からの借入金はありません。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実績の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成するに当たって採用した重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、重要な会計上の見積りを要する項目はないと判断しております。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載しております。
当社は、mRNA標的創薬の技術力を基盤として、研究開発活動を行っております。当社は、研究活動の拠点として新川崎研究所(神奈川県川崎市幸区)及び、新潟研究所(新潟県新潟市秋葉区)を有しております。基礎研究の拠点である新川崎研究所では、主として製薬会社とのmRNAを標的とする低分子創薬のプラットフォーム事業の推進や、計算化学研究をはじめとしたaibVISプラットフォームの基盤技術強化に取り組んでいます。応用研究の拠点である新潟研究所では、医薬品候補化合物を取得するための細胞を用いた評価実験や、mRNA標的低分子医薬品の作用機序解析等のパイプライン事業の推進に取り組んでいます。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
当社では独自のAI創薬プラットフォームを強みとしており、mRNAを標的とした創薬の原動力としております。そしてこの基盤技術であるibVISⓇプラットフォームについては、7月に米国で特許が有効となり、日本・欧州・米国の主要地域で知的財産権を確保いたしました。あわせて、ibVISⓇプラットフォームに実装するルールベースAIなどを大幅に改良し、より応用範囲が広く効果的なaibVISプラットフォームへのバージョンアップを行いました。
プラットフォーム事業においては、医薬品市場で最大のセグメントである低分子医薬品の創出を目的として、製薬企業4社との共同創薬研究の各プロジェクトの着実な遂行に取り組み、その結果、5月には塩野義製薬とのマイルストーン達成に至りました。さらに12月には、スイスSpiroChem AGとmRNA標的化合物の共同探索研究を実施することに合意いたしました。これらの共同研究を通じて、当社の知見と経験が拡大しました。
研究開発体制については、海外企業も含めた新たな共同創薬研究の実施に備えた体制強化のため、2025年度には新川崎研究所にて研究員の増員を図りました。さらに、プラットフォーム事業の拡大・強化はもとより、パイプライン事業の推進にも備えるため、研究所施設の拡充及び移転の取り組みも進めました。これらのインフラ整備に加えて、研究内容を今後一層高度化するため、研究員の能力向上にも積極的に取り組みました。医薬品の研究開発に必要な知識を個々の研究員が体得するための社内勉強会を実施する等の施策を継続的に実施しております。その結果、20th Drug Discovery Chemistryからの招待講演を含め、国内外5つの学会にて当社研究員が研究発表を行い、それらの機会を通じて、当社の基盤技術への理解を深めてもらうことにも取り組みました。
研究開発活動をより機動的に実施するための施策として社内連携も重視しており、製薬企業との契約交渉時より事業開発活動と連携することにより、契約締結後には研究戦略部と連携することで速やかかつ円滑な共同創薬研究の実施に努めております。
当社では、スペシャリティファーマへの将来的な移行への次のステップとしてパイプライン事業を開始し、プラットフォーム事業と同時に手掛けるハイブリッド型ビジネスを推し進めています。パイプライン事業では、当社の強みであるaibVISプラットフォームを活かしながら、2025年度以降に毎年1本ずつパイプラインを創出することを計画しております。2025年度においては、数千の候補のなかから、医薬品の将来価値、開発期間、開発コストを勘案して自社パイプラインの1本目に相応しい標的遺伝子としてp53を選定し、6月には、心臓血管手術後に惹起される急性腎不全の予防を対象とする核酸医薬品によるプロジェクトを開始しました。この研究は順調に進捗し、12月には研究成果たる医薬品候補物質の特許出願に至りました。7月には三菱ガス化学株式会社との間で核酸医薬品の共同研究契約を締結しました。この共同研究は新たな核酸医薬品の創出を目的として、QbDの考え方を研究初期段階から採り入れ、2026年度のパイプラインとするべく研究活動を開始しました。
パイプライン事業を推進するための体制拡充にも並行して取り組み、毎年1本のパイプライン創出に対応するために必要となる機器を導入し、研究員の負担軽減や効率化を図りました。加えて、パイプライン事業においては対象疾患への理解のみならず、患者さまの想いを理解する事が重要との観点より、患者会の方々と交流する機会を設け、研究員の意識啓発にも努めました。さらに新川崎研究所と新潟研究所との連携を促進し、両研究所間で意見や情報の交換など人的交流の機会を設けることにより、研究部門全体として一層の活性化を図りました。
当社は、2027年度までの中期経営計画期間を「技術開発における第二創業期」と位置づけ、積極的な技術開発を行っています。そして当社独自のaibVISプラットフォームの更なる強化に向けた技術開発を進めております。
aibVISプラットフォームの強化については、社内研究および各種製薬会社との共同研究によりRNAに関する当社独自の解析データを蓄積し、それを利用したデータ駆動AIであるAISLARを開発し装備することにより、スクリーニング効率を飛躍的に高める事に成功しました。
さらにRNA構造の正確かつ高速な非破壊分光学的測定法の確立を目指して、デクセリアルズ株式会社との間で、既存の構造解析手法では両立できなかった高速かつ高精度な測定法を確立し社会実装することを目的とした共同技術開発を開始しました。
くわえて、ASOをはじめとする医薬品を対象臓器に選択的かつ正確に投与する手法について当社独自に研究を進めて12月に特許を取得、そのドラッグデリバリーシステムを「Perfusio(パーフュージオ)」と命名しました。このシステムにより、これまで治療対象とすることが難しかった臓器に対しても、薬剤投与を必要最小量に抑えつつ最大の薬効が得られる治療法の実用化を目指します。
アカデミアとの共同研究においては、9つの大学研究室との共同研究を実施しており、各分野で高い専門性をもつ先生方と連携協力しながら基盤技術の強化に努めております。
2025年には、社内組織として新たに研究戦略部を設置したことにより、上記の通り積極的な技術開発が行われました。同部が全社的な研究戦略をはじめ、知財戦略やアライアンスマネジメントの業務も担うことにより、PerfusioやAISLARを含む6件の特許を出願するとともに、その際に知財の範囲やビジネスの範囲を改めて検討することによって、収益の機会を逃さないようにしています。