第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

① 経営方針

当社グループは「遺伝子の力を活用し、すべての人に治療の機会を届けます」をミッションとして、あるべき姿「遺伝子医薬のグローバルリーダーとして、未だ有効な治療法が存在しない疾患に革新をもたらし、世界中の人々のQOL向上に貢献します」というビジョンのもと事業活動を行っています。

② 利益配分に関する基本方針

当社グループの事業のステージは、現時点では創薬における先行投資の段階にあることから、利益配当は実施しておりません。

当社グループは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は、利益配当は実施せず、研究開発資金の確保を優先する方針です。しかしながら株主への利益還元についても経営課題と認識しており、将来、収益が改善した折には、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当も検討する所存です。

③ 投資単位の引き下げに関する方針

投資単位の引き下げは、個人株主増加や株式流動性向上のために望ましい施策であると考えております。このため、投資単位の引き下げについては、株価の動向を見極めつつ、引き下げによる費用増加、当社株式の出来高、株主数、株主分布状況を考慮しながら、慎重に検討していきたいと考えております。

 

(2) 経営環境

従来は低分子化合物が中心であった医薬品市場は、創薬ターゲットの枯渇を背景に、抗体などのバイオ医薬品や核酸医薬品などの市場が拡大してモダリティ(※1)の多様化を迎えていますが、研究開発の成功確率は決して高くなく、研究開発費は年々増大する傾向にあります。また、治療技術の向上により再生医療や遺伝子治療など新たな治療法の開発も進み、さらにはゲノム解析技術の進歩による個別化医療の普及、デジタル・IT技術を用いたデジタル医療の登場など、治療の選択肢は広がりを見せています。一方で、難病、希少疾患をはじめ、未だに治療法のない疾患も多数存在し、高いアンメット・メディカル・ニーズ(※2)があります。それら疾患の治療の実現に向けて、世界中のバイオベンチャーや製薬会社が研究開発を加速しています。

※1 低分子薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子細胞治療、遺伝子治療などの治療手段のこと

※2 未だ満たされていない医療ニーズ、つまり有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズのこと

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは研究開発型の創薬系バイオベンチャーであり、利益が本格的に拡大するのは、現在開発している複数の新薬が上市され、あるいは提携先からロイヤリティの支払いを受ける時期になる予定です。従って、現段階においては、提携先から契約一時金や開発協力金を受け取り財務リスクの低減を図りながら、研究開発を進め、営業利益をはじめとした各種利益項目の黒字化を目指しております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

具体的には以下の方針に沿って事業を進めてまいります。 

HGF遺伝子治療用製品の製品価値最大化

HGF遺伝子治療用製品は、2019年3月に条件及び期限付製造販売承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売しておりましたが、2023年5月に本承認に向けた製造販売承認を申請しました。一方、2024年6月に米国における後期第Ⅱ相臨床試験の結果の速報値において、良好な結果が確認されました。このような状況から、当社は2024年6月に戦略的な観点から日本国内における製造販売の承認申請を取下げ、米国での開発を優先することといたしました。日本国内における承認申請の取下げに伴い、条件及び期限付製造販売承認は期限が満了し、販売を終了いたしました。

一方、米国において実施した臨床試験結果が大変良好であったことから、米国食品医薬品局(以下、「FDA」といいます。)よりブレイクスルー・セラピーに指定を受け、その後、FDAとの協議の結果、臨床試験を完了とし、生物製剤認可申請(以下、「BLA申請」といいます。)に向けた準備を進めることとなりました。今後は、米国における早期の申請、承認を目指してまいります。

さらに、適応症についても、慢性動脈閉塞症の他に、HGFの生物活性を生かせる強皮症などの種々疾患への適応拡大の可能性を追求していきます。これらの諸施策により、HGF遺伝子治療用製品の価値最大化をはかります。

・グローバル展開の推進

遺伝子医薬のグローバルリーダーとして、革新的な医薬品を世界中の患者さんにお届けする当社のミッションに従い、世界最大市場である米国及びこれに続く欧州主要国を中心に医薬品の開発並びに事業化のグローバル展開を推進します。既にグローバル展開に取り組んでいるHGF遺伝子治療用製品以外の開発品やゲノム編集技術についても、米国を中心にグローバル展開を視野に臨床開発を進め、グローバル・パートナーとの提携を活用した展開を進めていきます。

・創薬プラットフォームの深化と拡大

基本プラットフォームであるプラスミドDNA(※3)及び核酸(※4)について、プラットフォームの深化をはかりながら創薬を推進します。プラスミドDNAは、構造の改変や最適化、標的の臓器・組織に効率よく届ける薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)を組み合わせて、より効率の高い遺伝子発現を目指します。また、プラスミドDNAやウイルスベクター(※5)を用いて遺伝子を補充・付加する従来の遺伝子治療に加え、異常な遺伝子や不要な遺伝子の修復や破壊が可能な、究極の遺伝子治療とも言われるゲノム編集を用いた治療法の開発が世界的に進められ、激しい競争が繰り広げられています。2020年に子会社化したEmendoBio社は、新規CRISPRヌクレアーゼ(※6)を探索・最適化する独自のプラットフォーム技術(以下、「OMNI Platform」といいます。)により疾患に応じて構築するゲノム編集戦略を用いて、これまでゲノム編集では対象とできなかった疾患を含め、様々な疾患に対する安全で有効な治療の開発を進めております。これらの取り組みにより、当社グループとしてパイプラインの拡大につなげていきます。

・パイプラインの継続的拡大

当社グループの創薬プラットフォームを利用した研究開発によりパイプラインの継続的な拡大をはかりますが、遺伝子医薬、核酸医薬、ゲノム編集を含む遺伝子治療の領域は極めて進歩が速く、多様なモダリティーの開発が進められている技術分野です。そのため、当社グループは、国内外の大学などで生まれた研究成果や、国内外の企業の開発品を積極的に導入し、開発パイプラインの継続的な拡大を図っていきます。

・希少遺伝性疾患への取り組み強化及び検査事業の活用

2021年に希少遺伝性疾患のスクリーニング検査事業を開始したACRLでは、スクリーニング検査の受託拡大に加え、検査の種類・項目を増やして事業の拡大をはかっていくのと並行して、当社グループの研究開発や事業への活用を推進していきます。

当社グループは、過去に希少遺伝性疾患であるムコ多糖症VI型の治療薬「ナグラザイム」について、国内で承認を取得して販売した実績があり、小児科KOL(※7)とのネットワーク構築など希少遺伝性疾患治療薬を開発、販売するためのノウハウを有しています。これらの実績とノウハウを活用して、希少遺伝性疾患ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下、「HGPS」といいます)及びプロセッシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(以下、「PDPL」といいます)の治療薬である「ゾキンヴィ」について、2022年5月に日本での独占販売権を獲得し、2024年1月に製造販売承認を取得、2024年5月に販売を開始しました。「ゾキンヴィ」の承認取得に合わせ、ACRLにおいて同疾患の検査を受託できる体制を整えました。さらに、「ゾキンヴィ」に続く希少遺伝性疾患治療薬の導入時においてもACRLの検査事業を活用していきます。これらの取り組みにより、当社グループの医薬品の研究開発事業と検査事業を有機的に結び付けてシナジー効果を追求していきます。

※3 染色体とは別個に存在し、独立して複製する小さなDNA分子 遺伝子工学研究においてプラスミドDNAは必須のツール

※4 細胞核の中に存在している物質でDNAとRNA2つがあり、DNAは「親から子へ、細胞から細胞へ」性質を伝える遺伝子の本体として働いており、RNAはDNAの情報に基づいてタンパク質を合成する働きを担っています

※5 分子生物学研究において遺伝物質を細胞に送達するために使用される遺伝子の運び屋(ベクター)のうち、ウイルスをベースとしたもの

※6 ゲノム編集に使用されるDNAを切断する酵素

※7 Key Opinion Leader 知識が豊富で権威性があり影響力を兼ね備えた医師などの専門家のこと

 

<当社グループの経営戦略>

医薬品開発には一般に多額の資金と長い期間が必要であり、加えて開発の成功確率の点で大きなリスクを伴います。最先端の技術を使い革新的な医薬品開発に挑戦している当社グループの場合には、特にこれが当てはまります。さらに販売面においても、販売・マーケティング機能を自社で構築するには多額の資金を必要とします。このため、経営資源の限られたベンチャー企業である当社グループは、当社グループが開発中の医薬品の後期臨床開発や販売・マーケティングについては他の製薬企業と積極的に提携することで、提携先が持つ医薬品開発力・販売力を活用し、さらに提携先から契約一時金・マイルストーン及びロイヤリティを受け取ることで、開発・財務面でのリスクを低減することを目指しています。

なお、当社グループは、未だ先行投資の段階にあるため現時点では親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画です。

 

 <開発段階と収益構成>


 

<一般的な新薬開発のプロセスと期間>

 

プロセス

期間

内容

基礎研究

2~3年

医薬品ターゲットの同定、候補物質の創製及び絞込み

前臨床試験

3~5年

実験動物を用いた有効性及び安全性の確認試験

臨床試験

3~7年

第Ⅰ相:少数の健康人を対象に、安全性及び薬物動態を確認する試験

第Ⅱ相:少数の患者を対象に、有効性及び安全性を確認する試験

第Ⅲ相:多数の患者を対象に、有効性及び安全性を最終的に確認する試験

申請・承認

1~2年

国(厚生労働省)による審査

 

 

(5) 会社の対処すべき課題

当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)などの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。さらに2020年度より、先進のゲノム編集技術を有するEmendoBio社を買収し、事業基盤の拡大を推進してまいりました。

一方で、医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社グループは継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、全ての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。

このような環境のもと、当社グループは、当該状況の解消と継続的な発展を目指し、下記を重要な課題として取り組んでおります。

① 自社既存プロジェクトの推進

当社グループは、現在開発している医薬品等のプロジェクトを確実に進捗させることが重要な課題と認識しております。

当社グループでは、2019年3月にHGF遺伝子治療用製品の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。その後、米国で実施された後期第Ⅱ相臨床試験の結果が2024年6月に良好であることが判明したことを踏まえ、戦略的な観点から、同年6月に期限満了に伴い販売も終了いたしました。一方、米国では、2024年9月に米国FDAから画期的新薬(以下、「ブレイクスルー・セラピーといいます。)に指定され、2025年11月に米国心臓学会(AHA)が発行する学術誌「Circulation: Cardiovascular Interventions」に臨床試験結果の論文が掲載されました。これらの状況から、米国での製品化を最優先とし、最短での製造販売承認を目指し米国での開発に注力しております。

椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAは、米国において後期第Ⅰ相臨床試験を完了し、その結果が北米脊椎学会(NASS)が発行する「The SPINE JOURNAL」に掲載されました。2023年10月からは、日本国内における第Ⅱ相臨床試験を開始し、予定どおり症例登録を実施しております。

これら開発中の医薬品について、今後も優先順位を明確にし、開発速度を最大限に高めながら進めてまいります。

② 開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大

当社グループの主力事業である医薬品開発において、上記プロジェクトのように遺伝子医薬や核酸医薬等、新しい分野の医薬品開発に取り組んでおりますが、これらの製品化は非常に難易度が高いため、常に開発パイプラインを充実させることが重要な課題と認識しております。そのため、当社グループではアカデミアによる研究成果や他社の開発品について共同開発を行う等、開発パイプラインの拡充に努めております。開発パイプラインの拡充実績として、2018年にカナダのVasomune Therapeutics, Inc.(以下。「Vasomune社」といいます。)との共同開発契約を締結したTie2受容体アゴニストがあり、対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸切迫症候群(ARDS)として現在米国において前期第Ⅱ相臨床試験を実施中です。また、2025年12月にVasomune社と共同開発契約の対象を全ての疾患に拡大する契約を締結いたしました。

今後も、アカデミアとの協業並びに提携先との共同開発等により、開発パイプラインの拡充を目指してまいります。

また、事業基盤の拡大としては、既に海外で販売され、日本国内では販売されていない医薬品を日本において製造販売承認を取得し販売することや、希少遺伝性疾患の治療に必要な各種検査を受託する事業等による実現を目指しております。事業基盤の拡大実績としては、2022年5月に米国のバイオ医薬品企業Eiger社と早老症治療薬ゾキンヴィの日本における独占販売契約を締結し、2023年5月に、厚生労働省に国内製造販売承認申請を行い、2024年1月に同省から製造販売承認を取得し、本治療薬を販売しております。また、希少遺伝性疾患の拡大新生児スクリーニング検査を受託しているACRLでは自治体や民間の検査センター等との連携により受託拡大を進めております。

今後も、ライセンス導入や希少遺伝性疾患への取り組み等による事業基盤の拡大を図り、開発パイプラインの拡充をとおして将来の成長を実現してまいります。

③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保

当社グループでは、製薬会社との提携により、開発リスクを低減するとともに、契約一時金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進め、上市後にロイヤリティを受領するという提携モデルを事業運営の基本方針としております。

提携状況につきましては、NF-κBデコイオリゴDNAの日本国内における慢性椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅱ相臨床試験では、塩野義製薬株式会社から臨床試験費用の一部負担等の協力を受けるとともに、続く第Ⅲ相臨床試験の実施について協議いたします。また、HGF遺伝子治療用製品に関しましては、その高い有効性への期待からFDAからブレイクスルー・セラピーに指定されたことを生かし、欧米地域を中心にグローバル展開を行っていくことができるパートナーとの提携を検討しております。

今後も、製薬会社等との更なる提携を検討するとともに、開発プロジェクトに協力いただける企業を開拓し、事業基盤の強化に努めてまいります。

④ 資金調達の実施

当社グループにとって、上記①②を実現するために機動的に資金調達を行うことは重要な課題と認識しており、この課題に取り組んでおります。2024年9月にCantor Fitzgerald Europeを割当先とした第45回新株予約権(第三者割当て)を発行し、開始から2025年8月末日までに71億60百万円(新株予約権発行に伴う入金を含む)を調達いたしました。2025年11月にCantor Fitzgerald Europeを割当先とした第46回新株予約権(第三者割当て)を発行し、2025年12月末日までに2億11百万円(新株予約権発行に伴う入金を含む)を調達いたしました。

今後も、研究開発活動推進及び企業活動維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

しかしながら、現時点において、第46回新株予約権の行使は株価等の動向に左右されることから未確定であり、また上記に記載したプロジェクトを継続的に進めるための更なる資金調達の方法、調達金額、調達時期については確定しておらず、当社は継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。

なお、連結財務諸表は継続企業を前提としており、上記のような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方は、「国連持続可能な開発サミット」のSDGsの一つである『すべての人に健康と福祉を』を目標に、治療法がない疾病分野や難病、希少疾患などを対象にした革新的な医薬品の開発を通じて、国民生活や医療水準の向上に貢献することであります。また、持続可能な開発手段強化のため、積極的なグローバル・パートナーシップに取組んでおります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるためサステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。代表取締役社長を委員長としたリスク管理・コンプライアンス委員会を設置しており、その中でサステナビリティに係る当社グループの在り方を提言することを目的として、サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会への対応の基本方針を議論しております。リスク管理・コンプライアンス委員会で協議・決議された内容は取締役会へ報告しております。リスク管理・コンプライアンス委員会は四半期に一回、定例的に開催しております。

 

(2)戦略

当社グループは人的資本こそが価値の源泉と考えております。遺伝子医薬の研究開発という専門家領域で、女性をはじめとした多様で優秀な人材を確保していくことは、企業の持続的な発展のためには不可欠です。女性のキャリア形成や上位職への登用など、機会の拡大を積極的に進め、多くの優秀な女性社員が活躍する組織を目指しております。当社グループは女性管理職を積極的に登用し、多様性の確保に取り組んでおります。

 

管理職に占める女性の割合

 

管理職 計

男性

女性

女性比率

2018年

24

18

6

25.0%

2019年

25

17

8

32.0%

2020年

29

17

12

41.4%

2021年

35

23

12

34.3%

2022年

34

22

12

35.3%

2023年

35

22

13

37.1%

2024年

29

17

12

41.4%

2025年

34

18

16

47.1%

 

※休職中は除く。契約社員を含む。

※従業員役員は含まない。(「役員」でカウント)

 

(3)リスク管理

当社グループのリスク管理は経営に大きな影響を及ぼすリスクを「重点経営リスク」と位置づけその特性によって「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分けて管理しております。サステナビリティに関するリスクは企業の中長期的な成長に大きく影響を与えることから、戦略リスクのつとして位置づけております。

当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスク管理・コンプライアンス委員会において行っており、サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞込みについても、ここで評価しております。重要なリスクは、戦略、事業計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。

 

(4)指標及び目標

当社グループは人的資本に関する具体的な指標及び目標は設定しておりませんが、引き続き、女性管理職を積極的に登用し、多様性の確保に取り組んでまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。将来に関する事項については有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1) 遺伝子治療について

遺伝子治療とは、遺伝子を用いて病気を治療することです。

遺伝子治療が有効と考えられる対象疾患としてはまず、遺伝子の変異が原因の遺伝子疾患があります。遺伝子疾患では、遺伝子治療により正常な遺伝子を補充することで治療効果が期待しやすいと考えられます。

最近では「ゲノム編集」技術の医療への応用が急速に進歩しています。「ゲノム編集」とは、ヒトゲノムの特定の部位で外因性の遺伝子を追加・挿入、あるいは遺伝子変異を修正・削除できる最新の遺伝子工学技術であり、従来の遺伝子組み換え技術と比べて著しく精度と効率が高いため、今後医療や科学にとって不可欠な技術になるとみられております。

2010年代になり遺伝子を自在に書き換える「ゲノム編集」(Genome Editing)技術が開発され、その技術は今日ますます発展を遂げております。特に遺伝子異常による難病を持つ患者の治療方法として開発が進んでおり、医療・ヘルスケア業界だけでなく、農業・食品分野に革命的な影響を及ぼしており事業性の面からも注目されております。

しかしながら、最新の「ゲノム編集」技術を利用した遺伝子(細胞)治療は新規性が高く有効性が期待されるものの、現段階では未知のリスクを否定できず、幅広い実用化には至らない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(2)医薬品開発及び販売について

一般に新薬の開発には、長期にわたる開発期間と多額の費用が必要です。しかしながら、以下の理由等により、当社グループが開発、販売する医薬品が計画通り進捗しない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

① 研究開発について

医薬品の開発は計画通りに進行するとは限らず、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じたりした場合には、研究開発を中止する可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

② 製造について

当社グループは、製品及び治験薬等を自社で製造しておらず、他社からの供給に依存しております。従って、製品や治験薬等について、何らかの要因により、品質上の問題が生じたり、若しくは予定通りに必要な数量を確保できない場合には、開発に遅れが生じたり、製品供給の不足になる可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

③ 販売について

当社グループが開発中の医薬品については、国内、米国及び欧州等の各地域において、将来競合する可能性のある製品及び開発品が存在するものもあります。当社グループは、競争力の高い製品を早期に開発、上市することで、一定の市場シェアの獲得を目指しております。しかしながら、競合他社が当社の想定より早く承認を取得する、あるいは想定以上のシェアを獲得した場合には、当社グループが開発した製品が上市された場合においても期待通りの収益を上げられない可能性があります。

また、日本や欧州においては新薬の価格は原則として政府あるいはそれに準じた公的機関により決定され、また、米国においては保険会社・マネージドケア(健康保険運営団体)及び政府のメディケア・プログラムとの交渉により決定されます。そのため、当社グループが開発した製品について当社グループが想定した薬価とならない場合があり期待通りの収益を上げられない可能性があります。

加えて、当社が販売する医薬品について、予期しない副作用が発生した場合には売上高が減少する可能性があります。そのような場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

④ 薬事法制による規制について

薬事法制は、医薬品・医療機器等の品質、有効性、安全性確保の観点から、企業が行う開発・製造・販売等に関して必要な規制を行う法律であり、当社グループが実施している医薬品の研究開発は日本をはじめ各国の薬事法制の規制を受けております。

各国において、様々な要因による承認要件の変更、さらに薬事法制度の変更により、承認を計画通りに取得できない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(3) 知的財産権について

① 特許戦略

当社グループが現在開発しているHGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAの研究開発活動は、主に当社グループが保有する又は当社グループが実施権を有する特許権に基づき実施しております。以下において、それらのうち特に重要なものを記載しております。

しかしながら、当社グループが現在出願中の特許が全て登録されるとは限りません。また、当社グループの研究開発を超える優れた研究開発により当社グループの特許が淘汰される可能性は、常に存在しております。仮に当社グループの研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループの今後の事業展開の中でライセンスを受けることが必要な特許が生じ、そのライセンスが受けられない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

対象

表題

保有者

登録(出願)状況

HGF遺伝子治療用製品

糖尿病性虚血性疾患遺伝子治療

当社

日本において延長登録済

NF-κBデコイオリゴDNA

椎間板の疾患を治療、阻害及び回復するための方法及び組成物

当社

ラッシュ大学(米国)

日本、米国、欧州(EP)、カナダにて成立済

キメラデコイ

当社

株式会社ジーンデザイン

物質特許。日本、米国、欧州(EP)にて成立済

デコイを含む薬学的組成物の新規な用途

当社

日本国内で出願済み

今後、海外へも展開予定

 

 

② 知的財産権に関する訴訟、クレーム

連結会計年度末現在において、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。 

但し、他社が当社グループと同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後とも知的財産について問題が発生しないという保証はありません。
 当社グループとしても、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許調査を実施しており、当社グループ特許が他社の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループのような研究開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題が発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)検査受託サービスについて

ACRLの検査事業は、受託先や地域の拡大、検査の種類・項目を増やすことにより、事業の拡大を図る計画です。検査受託サービスの拡大のためには、検査機器等への投資が必要となりますが、他の検査会社の進出による競合の激化やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(5) 業績の推移について

当社グループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。

 

 

第23期

第24期

第25期

第26期

第27期

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

2025年12月

(1) 連結経営指標等

 

 

 

 

 

 

事業収益

(千円)

64,148

67,061

152,985

643,638

874,120

経常損失

(千円)

△13,588,973

△14,610,015

△5,651,225

△7,537,856

△5,288,775

親会社株主に帰属する当期純損失

(千円)

△13,675,587

△14,714,772

△7,437,607

△28,128,983

△5,123,269

純資産額

(千円)

38,634,741

30,425,406

26,103,166

2,156,591

3,076,080

総資産額

(千円)

45,455,746

38,820,711

28,892,536

4,668,599

5,405,983

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

△11,380,546

△11,214,246

△8,745,759

△6,612,875

△5,750,366

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

△154,873

△97,141

△356,653

△130,801

18,814

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

17,378,670

3,572,543

2,036,465

4,202,127

5,902,042

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

17,835,704

10,969,684

4,092,160

1,627,669

1,796,068

(2) 個別経営指標等

 

 

 

 

 

 

事業収益

(千円)

64,148

67,061

138,919

567,793

857,662

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

△7,932,836

△8,001,351

1,989,979

△3,143,453

△4,509,032

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

△8,086,792

△8,115,452

1,067,726

△39,305,588

△5,659,293

資本金

(千円)

33,359,568

35,146,368

35,053,890

37,255,887

40,228,661

純資産額

(千円)

38,688,587

34,141,342

37,266,789

2,398,295

2,663,736

総資産額

(千円)

44,879,500

40,718,613

38,691,268

3,746,065

4,425,152

 

当社グループは、事業のステージが先行投資の段階にあるため、現時点では、上記記載のように、第23期から第27期において親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、現在の研究開発を着実に進め、パイプラインの拡充を図り、将来医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益の拡大を目指してまいります。

但し、現在の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、当社グループが将来においても親会社株主に帰属する当期純利益を計上できない可能性もあります。

また、上記記載のように、第23期から第27期においては、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスであり、現状の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、将来においても営業活動によるキャッシュ・フローがプラスにならない可能性もあります。

 

(6) 重要な契約等について

当社グループのビジネス展開上重要と思われる契約の内容を本報告書「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載しております。なお、当社グループは、これらの契約に関して、いずれも当社グループの根幹にかかわる重要な契約であると認識しております。従って、当該契約の解除及び解約が行われた場合、あるいは当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない等の場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 組織体制について

①  人材の確保

当社グループの競争力は研究開発力にあり、専門性の高い研究及び開発担当者の確保が不可欠です。また、事業の成長拡大を支えるためには事業開発、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。当社グループは、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画どおりに進まない場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。

 一方、当社グループは、業務遂行体制の充実に努めますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。

②  特定人物への依存

 当社グループの事業の推進者は、代表取締役である山田英です。代表取締役山田英は、当社グループの最高責任者として、当社グループの経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。また、当社メディカルアドバイザーである森下竜一には、研究開発の面でアドバイスを受けておりま

す。

 当社グループではこれらの特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っていますが、当面の間はこれらの特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況の中で、これらの特定人物が何らかの理由により当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 訴訟について

当社グループは、有価証券報告書提出日現在において医薬品の副作用、製造物責任、知的財産権及び労務問題等に関して、訴訟を提起されておりません。但し、将来、当社グループが上記に関して提訴された場合には、その内容次第で当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(9) 配当政策について

当社グループは、創薬系バイオベンチャーであり、主力の開発品であるHGF遺伝子治療用製品や他のプロジェクトにおいても医薬品の開発段階であり、事業のステージは、先行投資の段階にあります。このため、現時点においては、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、剰余金の配当は実施しておりません。

但し、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって利益が計上され分配可能額が生じる時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、剰余金の配当を検討したいと考えております。

しかしながら、開発中の新薬の上市や販売が計画通りに進捗しない場合は配当政策を見直す必要が出る可能性があります。

 

(10)外国為替変動について

当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動、海外企業とのライセンス、海外からの製品及び治験薬の仕入等において外貨建取引が存在します。また、当社グループが現在開発を行っている製品は、日本のみならず、米国を含む海外市場での販売が見込まれます。そのため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(11)地政学的リスクについて

当社連結子会社EmendoBio社は、イスラエル中部のテルアビブ近郊に研究施設を有しており、今般の中東における紛争の影響で、EmendoBio社のイスラエルにある研究施設(以下、「Emendo R&D」といいます)における研究開発体制の見直しを行いましたが、事業計画を推進するにあたり地政学的リスクを考慮する必要があります。

以上のように、EmendoBio社では人工知能の活用を中心とする研究開発機能を集約し、Emendo R&Dの規模もそれに見合ったものに再編成するとともに、その他の機能を米国に段階的に移管し、米国の拠点化を促進する計画ですが、中東の紛争が拡大する場合には、今後EmendoBio社の研究開発活動の遅延や当社の経営戦略に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)継続企業の前提に関する重要事象等について

当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)などの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。さらに2020年度より、先進のゲノム編集技術を有するEmendoBio社を買収し、事業基盤の拡大を推進してまいりました。

一方で、医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社グループは継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、全ての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。

このような環境のもと、当社グループは、当該状況の解消と継続的な発展を目指し、下記を重要な課題として取り組んでおります。

① 自社既存プロジェクトの推進

当社グループは、現在開発している医薬品等のプロジェクトを確実に進捗させることが重要な課題と認識しております。

当社グループでは、2019年3月にHGF遺伝子治療用製品の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。その後、米国で実施された後期第Ⅱ相臨床試験の結果が2024年6月に良好であることが判明したことを踏まえ、戦略的な観点から、同年6月に期限満了に伴い販売も終了いたしました。一方、米国では、2024年9月に米国FDAからブレイクスルー・セラピーに指定され、2025年11月に米国心臓学会(AHA)が発行する学術誌「Circulation: Cardiovascular Interventions」に臨床試験結果の論文が掲載されました。これらの状況から、米国での製品化を最優先とし、最短での製造販売承認を目指し米国での開発に注力しております。

椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAは、米国において後期第Ⅰ相臨床試験を完了し、その結果が北米脊椎学会(NASS)が発行する「The SPINE JOURNAL」に掲載されました。2023年10月からは、日本国内における第Ⅱ相臨床試験を開始し、予定どおり症例登録を実施しております。

これら開発中の医薬品について、今後も優先順位を明確にし、開発速度を最大限に高めながら進めてまいります。

② 開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大

当社グループの主力事業である医薬品開発において、上記プロジェクトのように遺伝子医薬や核酸医薬等、新しい分野の医薬品開発に取り組んでおりますが、これらの製品化は非常に難易度が高いため、常に開発パイプラインを充実させることが重要な課題と認識しております。そのため、当社グループではアカデミアによる研究成果や他社の開発品について共同開発を行う等、開発パイプラインの拡充に努めております。開発パイプラインの拡充実績として、2018年にカナダのVasomune社との共同開発契約を締結したTie2受容体アゴニストがあり、対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸切迫症候群(ARDS)として現在米国において前期第Ⅱ相臨床試験を実施中です。また、2025年12月にVasomune社と共同開発契約の対象を全ての疾患に拡大する契約を締結いたしました。

今後も、アカデミアとの協業並びに提携先との共同開発等により、開発パイプラインの拡充を目指してまいります。

また、事業基盤の拡大としては、既に海外で販売され、日本国内では販売されていない医薬品を日本において製造販売承認を取得し販売することや、希少遺伝性疾患の治療に必要な各種検査を受託する事業等による実現を目指しております。事業基盤の拡大実績としては、2022年5月に米国のバイオ医薬品企業Eiger社と早老症治療薬ゾキンヴィの日本における独占販売契約を締結し、2023年5月に、厚生労働省に国内製造販売承認申請を行い、2024年1月に同省から製造販売承認を取得し、本治療薬を販売しております。また、希少遺伝性疾患の拡大新生児スクリーニング検査を受託しているACRLでは自治体や民間の検査センター等との連携により受託拡大を進めております。

今後も、ライセンス導入や希少遺伝性疾患への取り組み等による事業基盤の拡大を図り、開発パイプラインの拡充をとおして将来の成長を実現してまいります。

③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保

当社グループでは、製薬会社との提携により、開発リスクを低減するとともに、契約一時金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進め、上市後にロイヤリティを受領するという提携モデルを事業運営の基本方針としております。

提携状況につきましては、NF-κBデコイオリゴDNAの日本国内における慢性椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅱ相臨床試験では、塩野義製薬株式会社から臨床試験費用の一部負担等の協力を受けるとともに、続く第Ⅲ相臨床試験の実施について協議いたします。また、HGF遺伝子治療用製品に関しましては、その高い有効性への期待からFDAからブレイクスルー・セラピーに指定されたことを生かし、欧米地域を中心にグローバル展開を行っていくことができるパートナーとの提携を検討しております。

今後も、製薬会社等との更なる提携を検討するとともに、開発プロジェクトに協力いただける企業を開拓し、事業基盤の強化に努めてまいります。

④ 資金調達の実施

当社グループにとって、上記①②を実現するために機動的に資金調達を行うことは重要な課題と認識しており、この課題に取り組んでおります。2024年9月にCantor Fitzgerald Europeを割当先とした第45回新株予約権(第三者割当て)を発行し、開始から2025年8月末日までに71億60百万円(新株予約権発行に伴う入金を含む)を調達いたしました。2025年11月にCantor Fitzgerald Europeを割当先とした第46回新株予約権(第三者割当て)を発行し、2025年12月末日までに2億11百万円(新株予約権発行に伴う入金を含む)を調達いたしました。

今後も、研究開発活動推進及び企業活動維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

しかしながら、現時点において、第46回新株予約権の行使は株価等の動向に左右されることから未確定であり、また上記に記載したプロジェクトを継続的に進めるための更なる資金調達の方法、調達金額、調達時期については確定しておらず、当社は継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。

なお、連結財務諸表は継続企業を前提としており、上記のような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社3社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 経営成績及び財政状態の概要

当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。早老症治療薬「ゾキンヴィ」につきまして商品売上高に計上しております。ACRLにおいて拡大新生児スクリーニングを実施しており、手数料収入に計上しております。

この結果、当連結会計年度における事業収益は8億74百万円(前期比2億30百万円(+35.8%)の増収)、経常損失は52億88百万円(前年同期の経常損失は75億37百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は51億23百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は281億28百万円)となっております。

財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は54億5百万円(前連結会計年度末比7億37百万円の増加)となりました。現金及び預金は18億82百万円(前連結会計年度末比1億74百万円の増加)となりました。負債は23億29百万円(前連結会計年度末比1億82百万円の減少)となりました。純資産は30億76百万円(前連結会計年度末比9億19百万円の増加)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ1億68百万円増加し、17億96百万円となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、57億50百万円(前年同期は66億12百万円の減少)となりました。仕入債務が2億32百万円増加しましたが、税金等調整前当期純損失52億36百万円に加え、棚卸資産が3億17百万円増加、前渡金が2億92百万円増加しております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の増加は、18百万円(前年同期は1億30百万円の減少)となりました。EmendoBio社において、有形固定資産の売却による収入47百万円が発生しております。長期貸付による支出15百万円、有形固定資産の取得による支出14百万円が発生しております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、59億2百万円(前年同期は42億2百万円の増加)となりました。Cantor Fitzgerald Europeを割当先とする第46回新株予約権の発行により、新株予約権の発行による収入が31百万円ありました。Cantor Fitzgerald Europeを割当先とする第45回新株予約権及び第46回新株予約権の行使により、新株予約権の行使による株式の発行による収入が58億70百万円となっております。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績はありませんでした。

 

b. 仕入実績

当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品

235,289

△38.9

合計

235,289

△38.9

 

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

 

c. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

医薬品

874,120

35.8

合計

874,120

35.8

 

 

d. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品

874,120

35.8

合計

874,120

35.8

 

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社エス・ディ・コラボ

244,237

37.9

302,845

34.6

一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会

245,594

38.2

53,514

6.1

Anocca AB

75,845

11.8

14,962

1.7

 

 

2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、ゾキンヴィの販売及び拡大新生児スクリーニングの受託が増加したことによるものです。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表及び注記事項等の作成上、必要な会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の事業収益は前年同期に比べ2億30百万円増加し8億74百万円(前年同期比35.8%増)となりました。当社グループでは、2024年5月より早老症治療薬「ゾキンヴィ」の販売を開始しており、当期において3億2百万円の商品売上高を計上しております(同58百万円の増加)。ACRLにおいては、拡大新生児スクリーニングの受託数が前年同期に比べ順調に増加していることから、手数料収入として5億54百万円(同2億42百万円の増加)を計上いたしました。EmendoBio社において、Anocca ABとの契約締結に伴う契約一時金を計上したこと等により、研究開発事業収益を16百万円計上しております(同59百万円の減少)。
 当連結会計年度における事業費用は、前年同期に比べ37億33百万円減少し、60億19百万円(同38.3%減)となりました。
 売上原価は、前年同期に比べ1億57百万円増加し、5億53百万円(同39.9%増)となりました。ゾキンヴィにかかる商品売上原価は、商品売上高の増加に伴い前年同期に比べ65百万円増加し、2億26百万円となっております(同40.9%増)。ACRLにおける拡大新生児スクリーニング検査にかかる原価は、受託数の増加に伴い前年同期に比べ1億円増加し、3億27百万円(同44.1%増)となりました。

研究開発費は、前年同期に比べ2億30百万円減少し、35億53百万円(同6.1%減)となりました。前年同期に計上していた使用期限切れによる廃棄が見込まれる材料及び製品にかかる評価損の計上が当期では無くなったため、研究用材料費が5億26百万円減少しております。HGF遺伝子治療用製品の米国における開発費用及び申請準備にかかる費用の増加により、外注費が3億25百万円増加しております。
 当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業は先行投資が続きますが、提携戦略等により財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください。
 販売費及び一般管理費は前年同期に比べ36億61百万円減少し、19億12百万円(同65.7%減)となりました。前年同期においてはEmendoBio社買収にかかるのれん償却額を33億22百万円計上しておりましたが、前年度において当該のれんを減損したことにより、のれん償却額の計上がなくなりました。EmendoBio社において、事業再編成に伴う人員の減少により役員報酬が52百万円、給料手当が1億26百万円、法定福利費が23百万円減少しました。EmendoBio社における弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬が減少したため、支払手数料が前年同期より1億40百万円減少しております。
 この結果、当連結会計年度の営業損失は51億45百万円(前年同期の営業損失は91億9百万円)となりました。
 営業外損益においては、EmendoBio社社屋のリース契約の一部解約によりリース解約益を1億2百万円計上しております。EmendoBio社への米ドル建貸付金の評価替の影響により、為替差損2億20百万円を計上しております(前年同期は為替差益15億91百万円)。
 この結果、当連結会計年度の経常損失は52億88百万円(前年同期の経常損失は75億37百万円)となりました。
 特別損失においては、前年同期にEmendoBio社にかかるのれん及び使用権資産の減損損失200億48百万円を計上しておりましたが、当期においては特別損失の計上がありませんでした。

法人税等においては、前年同期にEmendoBio社の過年度法人税の修正額を計上しておりましたが、金額の確定により過年度法人税等戻入額を2億77百万円計上しております。
 これらの結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は51億23百万円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は281億28百万円)となりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ7億37百万円増加し、54億5百万円となりました。

 流動資産は前連結会計年度末に比べ8億43百万円増加し、43億86百万円となっております。Cantor Fitzgerald Europeを割当先とする2024年9月17日発行の第45回新株予約権及び2025年11月25日発行の第46回新株予約権につき、当連結会計年度に59億39百万円を調達しました。現金及び預金は前連結会計年度末に比べ1億74百万円増加して18億82百万円となりました。HGF遺伝子治療用製品の原薬の購入により、原材料及び貯蔵品が3億8百万円増加しております。HGF遺伝子治療用製品の原薬の製造委託費用を前払いしたことにより、前渡金が2億92百万円増加しております。
 当連結会計年度末の固定資産は前連結会計年度末に比べ1億6百万円減少し、10億19百万円となっております。
 当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べ1億82百万円減少し、23億29百万円となりました。棚卸資産の購入により、買掛金が2億35百万円増加しております。EmendoBio社社屋のリース契約の一部解約により、リース債務が流動負債で1億9百万円、固定負債で1億8百万円減少しております。
 当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べ9億19百万円増加し、30億76百万円となりました。Cantor Fitzgerald Europeを割当先とする第45回新株予約権及び第46回新株予約権の行使により、資本金が29億72百万円、資本剰余金が29億73百万円増加しております。親会社株主に帰属する当期純損失の計上により、利益剰余金が51億23百万円減少しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における資金需要は、プロジェクト推進のための研究開発費需要と会社運営のための運転資金需要があります。これらの資金需要に対して、主に新株予約権によるエクイティファイナンスによって資金調達を行っております。

 

5 【重要な契約等】

当社の重要な契約は以下のとおりであります。

 

(1) 導入

相手先名

契約内容

対価の支払

契約期間

住友ファーマ株式会社

HGF遺伝子を遺伝子治療に用いるための基本特許の取得

一定料率のロイヤリティ

本医薬品の上市後若しくは本事業の開始後10年間のいずれか遅く到来する日

株式会社バイオリーダース(韓国)

子宮頸部前がん治療ワクチンに関する国内、米国、英国及び中国における開発、製造、販売に関する独占的実施権の取得

一定料率のロイヤリティ

2013年4月3日から、全ての特許権の満了日

Sentynl Therapeutics Inc.(米国)

(注)

Zokinvy(一般名:ロナファルニブ)の国内における独占販売権の取得

契約一時金、マイルストーン

2022年5月10日から、最初の薬事承認取得後10年を経過する日まで。以後、3年ごとの更新

 

(注)2024年5月にEiger BioPharmaceuticals, Inc.より、Sentynl Therapeutics Inc.に事業譲渡しました。

 

(2) 導出

相手先名

契約内容

対価の受取

契約期間(契約日)

塩野義製薬株式会社

NF-κBデコイオリゴDNAの皮膚疾患を適用対象とした外用剤の全世界における独占的販売権の許諾

マイルストーン、開発協力金、及び一定料率のロイヤリティ

2010年12月27日から本製剤が販売されている期間中

森下仁丹株式会社

バイオリーダースから許諾を受けている「子宮頸部前がん治療ワクチン」に関する国内、米国、英国及び中国における開発、製造、販売に関する独占的再実施権の許諾

契約一時金及び一定料率のロイヤリティ

2016年12月6日から、全ての特許権の満了日まで

 

 

(3) 製造・供給に関する重要な契約

相手先名

契約内容

対価の支払

契約期間

Boehringer Ingelheim Biopharmaceuticals GmbH(ドイツ)

当社開発品に用いる原薬の製造委託・供給契約。一定の年間購入義務等のコミットメント、ならびに製造サイト移管等の規制当局対応に関する特則を含む。

発注量に応じた対価の支払

(注)

2018年12月1日の原契約締結後、2025年8月8日の契約改訂。以後、契約に基づく期間・更新規定に従う。

 

(注) 対価支払・詳細条件は相手先との守秘義務により非開示といたします。

 

(4) その他の重要な契約

当社は、2026年2月24日付の取締役会決議に基づき、Cantor Fitzgerald Europeと無担保私募債ファシリティー(リボルビング型)総額引受契約を締結し、2026年2月27日に第2回無担保社債(私募債)を発行いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。

 

(5) ローン契約と社債に付される財務上の特約

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費は3,553百万円(前年同期比230百万円(6.1%)の減少)となりました。

当社グループは、遺伝子医薬を中心に医薬品の開発、実用化及びゲノム編集技術の研究開発並びにACRLにおける拡大新生児スクリーニングを始め遺伝学的検査、バイオマーカー検査など希少遺伝性疾患検査の開発を行っております。さらに当社は国内外の企業と積極的に提携し、有望な医薬品の実用化に向けて共同開発を進めております。

以下に、当社グループの開発品並びに当社提携先の開発状況についてご説明いたします。

 

当社開発プロジェクト

 


※HGF遺伝子治療用製品の日本国内における条件及び期限付き承認の期間満了に伴い、イスラエルKamada社及びトルコEr-Kim社との契約について両社と見直し中です。

 

■HGF遺伝子治療用製品(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)(自社品)

HGF遺伝子治療用製品の開発につきましては、軽度から中等度の包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する米国における後期第Ⅱ相臨床試験で、良好な結果が示されました。その結果、2024年9月にFDAによるブレイクスルー・セラピーに指定されました。その後、FDAと協議を行い、米国における臨床試験を完了とし、BLA申請の準備を進めています。直近では、FDAとType B Clinical Meeting(※1)を実施し、臨床に関する申請方針について合意を得ることができました。2026年内にBLAを提出(段階的提出/Rolling Submission(※2))し、FDAによる審査(Rolling Review(※2))開始を予定しています。

また、承認された場合の製品の原薬製造、供給について、ベーリンガー・インゲルハイム・バイオファーマシューティカルズ社と契約を締結し、製品供給体制を構築しました。

なお、上記臨床試験結果につきましては、主導医師の論文が米国心臓学会(AHA)の発行する「Circulation: Cardiovascular Interventions」に掲載されました。

※1 Type B Clinical Meeting:FDAが定める、医薬品・生物製剤の開発における主要マイルストーンで開催される「正式会合」で、開発中の医薬品や生物製剤において、臨床や製造、品質管理など、申請に向けた重要なポイントについてFDAと共同でデータ要件を確認・協議する場です。協議をとおして、申請の質を高め、審査過程における問題の早期解消を図ることができます。

※2 Rolling SubmissionとRolling Review:Rolling Submissionは、FDAによりファストトラックやブレイクスルー・セラピーに指定された製品の審査書類を完成した書類ごとに提出することで、提出された書類を順次審査することをRolling Reviewといいます。

 

■NF-κBデコイオリゴDNA(自社品)

核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAについては、日本国内における第Ⅱ相臨床試験を実施中で、2026年末迄の登録完了を目指しています。米国において実施した後期第Ⅰ相臨床試験の結果が米国の医学雑誌「The SPINE JOURNAL」に掲載されました。投与1年後でも鎮痛効果が持続するという画期的な結果となったことに加え、椎間板の修復を示唆するデータも得られました。

なお、国内の第Ⅱ相臨床試験に関して塩野義製薬株式会社と契約を締結しており、費用の一部を負担いただくとともに、試験結果に基づき第Ⅲ相臨床試験の実施について協議する予定です。

 

■高血圧治療用DNAワクチン(自社品)

高血圧治療用DNAワクチンについては、オーストラリアでの第Ⅰ相/前期第Ⅱ相臨床試験は重篤な有害事象はなく、安全性に問題がないことを確認しました。今後の開発につきましては、新型コロナウイルスのDNAワクチンとは異なるプラスミドDNAの発現に関する改善策などの検討を進めてまいります。

 

 

■Tie2受容体アゴニスト(共同開発品)

Tie2受容体アゴニスト(AV-001)は、カナダのバイオ医薬品企業であるVasomune社と共同開発契約を締結しています。現在、インフルエンザなどのウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象とした前期第Ⅱ相臨床試験を米国で実施しており、計画した患者登録は完了しましたが、脱落症例に対応する追加の登録を2026年第1四半期末までに完了できるように取り組んでいます。

なおAV-001は、2024年5月に米国FDAにより重篤な疾患に対する治療薬やアンメットメディカルニーズに対して有効性が期待される医薬品をより早く患者に届けることを目的としたFast Trackに指定をされました。

また、医師主導試験として、新たに血液透析によって認知機能に障害をもたらす細胞毒性脳浮腫を軽減し、脳の白質の機能を維持できるか評価いたします。2026年1月に最初の患者が登録されました。

このような新たな適応を含む血管漏出が関与する疾患領域への応用可能性を検討するため、新たなAV-001共同開発契約をVasomune社と締結しました。

 

EmendoBio社開発プロジェクト

 

■ゲノム編集技術による遺伝子治療用製品開発

当社は、究極の遺伝子治療法ともいわれるゲノム編集技術を用いた遺伝子疾患治療に挑むため、2020年12月にEmendoBio社を子会社化しました。EmendoBio社では、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼ(※3)を探索・最適化するOMNI Platformを確立しており、ゲノム編集でしばしば問題視される「オフターゲット効果」(※4)を回避できるなど、新たな特徴をもった独自のOMNI ヌクレアーゼを数多く作出し、特許を出願しております。

当年度はイスラエルの研究所における研究成果を米国でバックアップする体制を構築し、米国における研究開発活動及び導出などに取り組みました。また、OMNIヌクレアーゼの更なる最適化、効率化などを進めました。

なお、2024年3月に、OMNIヌクレアーゼの非独占的ライセンス契約を締結したスウェーデンのバイオ企業であるAnocca社と、2025年9月にライセンスの適用範囲を拡大する契約を新たに締結しました。

さらに、スタンフォード大学医学部と共同で、EmendoBio社のゲノム編集技術を活用し新たながんゲノム編集治療法を研究しています。

 

※3 新規CRISPRヌクレアーゼ:ゲノム編集で使用する新たなRNA誘導型DNA切断酵素で、ガイドRNAで規定した塩基配列を識別し、その標的とした塩基配列を切断する。

※4 オフターゲット効果:ゲノム編集で、DNA鎖上の目的とする塩基配列以外の別の領域に、意図せぬ突然変異を引き起こしてしまうこと。

 

検査受託サービス及び提携先における開発状況

■希少遺伝性疾患検査を主目的としたACRLの検査受託

ACRLでは、群馬県、沖縄県等の自治体(又はその関連団体)などから拡大新生児スクリーニング検査を受託しています。この拡大新生児スクリーニングにおいて陽性となった受検者のうち、偽陽性者を選別するための二次スクリーニング手法を新たに開発し、2025年には長野県における拡大新生児スクリーニングと併せて二次スクリーニングの受託を開始しました。

さらに、早老症治療薬ゾキンヴィの対象疾患であるHGPS及びPDPLに関して遺伝学的検査体制を整備しました。また、拡大新生児スクリーニングの対象疾患の一部について、治療効果をモニタリングするためのバイオマーカー検査と疾患確定のための遺伝学的検査の受託も開始しています。今後は、まだ体制が整っていないスクリーニング対象疾患についても、バイオマーカー検査体制の構築を進め、希少遺伝性疾患のスクリーニングから診断、治療へと一連の流れを支える包括的な検査体制の提供を目指してまいります。

 

■マイクロバイオームを用いた治療薬・サプリメントなどの開発

当社は、腸内細菌叢を利用した疾患治療薬や健康維持のサプリメントを開発しているイスラエルのMyBiotics Pharma Ltd.(以下「MyBiotics社」といいます。)と2018年7月に資本提携しております。MyBiotics社では、腸内細菌叢の微生物の構成を再現した培養物(SuperDonor)の製造法を確立しており、クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療薬MBX-SD-202の第Ⅰ相臨床試験をイスラエルにおいて完了いたしました。

しかしながら、中東地域における紛争の影響により、MyBiotics社における研究開発の継続が懸念される状況となっております。