当社グループは、「独創的なモーションコントロール技術で、移動・生活空間に安全・安心・快適を提供」することを企業理念とし、その実現に向け、企業理念を体現する姿勢やマインドを「私たちが大切にすること」として明文化した「ナブテスコ ウェイ」を掲げています。2030年のありたい姿である「長期ビジョン」、長期目標実現に向けて取り組むべき特に重要な経営課題を示す「経営マテリアリティ」、その実行策である「中期経営計画」からなる長期的な価値創造ストーリーを推進しています。これにより、イノベーションを創出し、長期的に経済価値、環境価値・社会価値を向上させることで、社会と当社グループ双方の持続的成長を目指す経営を追求しています。
<ナブテスコの価値創造ストーリー>

(1) ナブテスコ ウェイ
当社グループでは、2012年に企業理念及び行動指針を表す「ナブテスコ ウェイ」を策定し、グループ内での浸透活動を行いながら、企業理念の実践に取り組んできました。
2023年には、昨今のさまざまな外部・内部環境の変化を踏まえ、世界中の多様な人材が理解・共感し、さらに意欲的に行動していくことを意図して「ナブテスコ ウェイ」を改定しました。新しい『ナブテスコ ウェイ』は、「企業理念」はそのままに、「ナブテスコの約束」と「行動指針」について、次世代へ引き継ぎたい要素を整理し、挑戦する企業としての新たな視点を組み入れ、「私たちが大切にすること」を6項目に集約しています。“人と地球の視点”で顧客・社会のニーズと課題を捉え、“オープン・フェア・オネスト”の精神で、“好奇心と探求心”を大切に“挑戦を楽しみ”ながら、“多様性を共創力”とし、自律的な“個の成長”を促進することで、期待を超える満足を社会にお届けすることを目指していきます。


(2) 長期ビジョン
当社グループは、2030年に向けてグループの成長・発展の実現に向けた指針として長期ビジョン「未来の“欲しい”に挑戦し続けるイノベーションリーダー」を設定し、「2030年のありたい姿」を目指しています。

長期ビジョンの達成に向けて、2030年までの長期ビジョンのコンセプトを下図のとおり設定しています。これまで培ってきた「ナブテスコらしさ」を基盤とし、「技術」「グローバル化」「社会貢献」に注力しながら事業を推進することで、市場の新価値を創造し、顧客の一歩先を行くイノベーションリーダーとなることを目指していきます。

(3) 経営マテリアリティ
当社グループでは、「経営マテリアリティ」を長期目標実現に向けて特に重要な経営課題と位置づけ、取り組みを推進することで社会と当社グループ双方の持続的な成長を目指しています。その実現のため、経営マテリアリティを「財務パフォーマンス向上への取り組み」「経営基盤強化への取り組み」「長期目標実現への固有の取り組み」の3つの柱で構成し、財務・非財務両面での取り組みを通じて経済価値と環境価値・社会価値の両立を長期的な視点で追求します。
今後も事業環境、社会要請の変化を踏まえ、経営マテリアリティを迅速かつ適切に見直しながら経営基盤を一層強化し、ステークホルダーの皆さまへの価値を創造してまいります。
なお、経営マテリアリティの詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般に対する対応」に記載しています。
(4) 中期経営計画
当社グループは、自社の企業理念を踏まえて、2021年2月に発表した2030年を最終年度とする長期ビジョンの実現に向け、2025年度から3ヵ年の中期経営計画を策定しています。
① 中期経営計画の目標
当社グループは2025年度から2027年度の中期経営計画の目標を、以下のとおり設定しました。
2025年度の実績は以下のとおりです。
(注) 1 2026年3月26日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として、「剰余金の処分の件」を提案しており、当該議案が承認可決されますと、DOE数値が以上のとおりとなる予定です。
2 CO₂排出削減量は提出日時点の集計値に基づいたものです。
② 中長期的な会社の経営戦略
2030年をゴールとする長期ビジョンの目指す姿である「未来の“欲しい”に挑戦し続けるイノベーションリーダー」の実現に向け、中期経営計画では、Project 10により稼ぐ力を取り戻し(再興)、製品/サービスの価値を高めるためにスマートモーションコントロールを志向(進化)します。
1) Project 10による稼ぐ力・収益性改善
事業成長、原価低減、固定費抑制による利益拡大
2) スマートモーションコントロール
当社の強みであるコンポーネントを中心とする「モーションコントロール」を、「スマートモーションコントロール」(電動化/インテグレーション/データ活用)へ進化させることで、当社の事業領域に関連する社会課題に対して、新たな価値を創造
3) レジリエントな企業基盤の構築
目指すべき方向性(スマートモーションコントロール)・収益性(ROIC)を軸に、ポートフォリオバランスを最適化
(注) 本有価証券報告書における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手している情報に基づき当社が判断したものであり、実際の業績等は、「3 事業等のリスク」に挙げた事項等により、異なる結果となる可能性があります。
当社グループは、ナブテスコの価値創造ストーリーにおいて、その根幹をなす「経営マテリアリティ」を特に重要な経営課題と位置づけています。これは、財務・非財務両面での取り組みを通じて経済価値、環境価値・社会価値の両立を図り、社会と当社グループ双方の持続的成長を目指すものです。
事業環境や経営環境の変化を的確に捉え、経営マテリアリティを迅速かつ適切に見直すこと(動的マテリアリティ)が長期的な価値創造の推進には重要であると考えています。経営マテリアリティに基づくアクションを着実に実行し経営基盤を一層強化することで、ステークホルダーの皆さまへの価値創造に努めてまいります。
なお、本有価証券報告書における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手している情報に基づき当社が判断したものであり、実際の業績等は、「3 事業等のリスク」に挙げた事項等により、異なる結果となる可能性があります。
(1) サステナビリティ全般に対する対応
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ・ガバナンスを強化するため、2023年に従来のCSR委員会を発展的に解消し、CEO直轄の「経営マテリアリティ委員会」を設置しました。同委員会は、他のCEO直轄委員会と連携し、執行役員である経営マテリアリティ委員長が監督をおこない、経営マテリアリティの各項目に関する目標やKPIの設定、及びその進捗を管理しています。活動内容は、経営マテリアリティ委員会、及び経営会議(マネジメント・コミッティ)での審議を経て、取締役会に報告することで、グループ全体のサステナビリティ・ガバナンスの実効性向上を図っています。
<サステナビリティ・ガバナンスの推進体制>

② 戦略
■経営マテリアリティの構造
経営マテリアリティは「財務パフォーマンス向上への取り組み」「経営基盤強化への取り組み」「長期目標実現への固有の取り組み」の3つの柱から成り立っています。財務・非財務両面での取り組みを通じて、経済価値と環境価値・社会価値の両立を長期的な視点で図ることで、ステークホルダーの皆さまへの価値を創造してまいります。
「財務パフォーマンス向上への取り組み」では、短期的な収益目標の遂行を積み重ねながら、経営資源の効率的な配分と資産効率の向上を追求し、ROIC経営の浸透を図ります。
「経営基盤強化への取り組み」では、企業活動を通じた社会貢献に向けて強化すべき項目を抽出し、ESG項目に関連する各活動と、当社の利益や成長との結合性を意識しながら取り組んでまいります。
さらに、「長期目標実現への固有の取り組み」により、社会貢献を含めた事業活動を強化し長期的な成長率を高めていきます。
■経営マテリアリティの特定プロセスと定期的な見直し
経営マテリアリティの特定にあたっては、事業戦略を通じて解決する社会課題や、当社グループに関連性の高いESGテーマなどから社会問題を抽出し、「当社グループへの影響」と「ステークホルダーへの影響」の視点で重要度を分析します。さらに、リスクアセスメント結果に基づく全社的重大リスクとの整合性を評価したうえで経営マテリアリティとして定めており、その妥当性については、外部有識者との意見交換や、経営マテリアリティ委員会、及び、経営会議(マネジメント・コミッティ)での審議を経て、取締役会にて決定しています。
また、経営マテリアリティについては、事業環境、社会要請の変化に迅速かつ適切に対応するため、毎年1回を目途に見直し、変更の有無に関わらず取締役会にて決定しています。
(特定プロセス)
STEP1:課題の認識
・当社グループの事業戦略を通じて解決する社会課題、当社に関連性の高いESGテーマなどを踏まえ、当社グループを取り巻く社会環境や事業環境の社会課題を抽出
STEP2:重要性の分析
・ダブルマテリアリティの考え方に基づき、「当社グループへの影響」と「ステークホルダーへの影響」の2つの視点で重要度を分析し、優先すべき課題を整理
・リスクアセスメント結果に基づく全社的重大リスクとの整合性を評価

STEP3:経営マテリアリティの特定
・外部有識者と意見交換を実施
・経営マテリアリティ委員会、及び、経営会議(マネジメント・コミッティ)で議論し、その妥当性を評価した上で、取締役会において決定
STEP4:目標の設定とモニタリング
・経営マテリアリティの各項目について、優先度に応じて目標・アクションプランを設定
・各アクションプランの進捗状況を定期的にモニタリングし、目標達成に向けた取り組みを管理・推進
STEP5:定期的な見直し
・事業環境、社会環境の変化、ステークホルダーの期待、ならびに当社グループの事業戦略の変化に応じて年1回、見直しを実施
なお、2025年は、「中期経営計画で求める収益性の改善とイノベーション領域の具体化」「社会的な要請であるダブルマテリアリティ」に対する内部・外部環境の変化を捉え、課題認識の妥当性と重要性を改めて検証した結果、2024年度に設定した経営マテリアリティを維持することを決定いたしました。
・財務パフォーマンス向上への取り組み
「ポートフォリオバランスの最適化」と「ROIC向上」の両立を目指すことから、以下項目で管理
・「資産効率経営(ROIC)の推進」
・経営基盤強化への取り組み
ESGの観点で整理した以下の項目で管理
・E「気候変動への対応」
・S「人的資本経営の推進」「安全・安心・快適の追求」
・G「コーポレート・ガバナンスの強化」「レジリエントな企業基盤の構築」
・長期目標実現への固有の取り組み
中期経営計画における方向性や戦略をより明確に示した以下の項目で管理
・「スマートモーションコントロールを通じた社会課題の解決」
・「デジタル技術によるものづくり革新」
・「グローバルマネジメントの強化」
また、経営マテリアリティの各項目に対して、サブマテリアリティとKPIを設定し、各活動の進捗管理を強化することで、より実効性を高めてまいります。

③ リスク管理
当社グループにおけるサステナビリティを含めたリスク管理についての詳細は、「
④ 指標及び目標
2025年度経営マテリアリティにおける「経営基盤強化」の各課題の目標と指標、主な活動実績・計画は以下のとおりです。
<サステナビリティに関する目標と指標、主な活動実績・計画>
(注) 上記CO₂排出削減量のうち2025年度の数値については提出日時点の集計値に基づいたものです。
2026年度の経営マテリアリティに対する活動目標は、当社の全社的重大リスクとの整合性を検証したうえで、以下のとおり設定しています。
(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示
当社グループは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同表明し、取り組みの進捗に合わせて、TCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示の充実を図っています。
① ガバナンス
当社の取締役会は、重要事項の報告等を通じて情報を共有化することにより、当社の戦略・基本方針及び重要な業務執行を決定し、監督を行っています。気候変動に関しては、執行役員であるものづくり革新室長が監督責任を持ちます。CO₂削減目標に対する進捗状況や主要な環境設備投資の状況について、環境安全の担当役員が報告しています。
取締役会の指揮・監督のもと、代表取締役社長 最高経営責任者(CEO:以下CEO)は当社グループ環境理念・環境行動指針・長期目標を制定しています。執行役員会(CEO及び執行役員で構成)において、環境安全担当役員が社内カンパニーと主要なグループ会社のCO₂排出状況を報告し、目標との乖離があった場合は、原因を明確にして対策を実施しています。CEOは、審議事項や報告において事業に影響を及ぼすと考えられる事案について、対応を決定し事業戦略に反映しています。
ESH(Environment, Safety & Health)管理に関するCEO直轄の推進機関として、当社グループ全体を管轄するESH委員会を設置しています。ESH委員会の委員長及び委員はCEOによって取締役を含む役員から任命されます。ESH委員長は、気候変動に係るリスク・機会を含めた環境・安全・健康に関する重要な情報を各カンパニー及びグループ会社から収集しています。また、確認のためESH監査、全社省エネ委員会などを各事業所に訪問して実施しています。これらのモニタリングから重要性の評価及び重要と評価された事案への対策についてESH委員会にて審議を行っています。
② 戦略
気候変動が事業活動に及ぼす影響を適切に把握・管理するため、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯の外部シナリオを用いて、取引先や顧客を含むサプライチェーン全体のリスク・機会を分析しています。
ESH委員会の審議結果において、気候変動による事業への重要な影響を及ぼすと考えられる事案(リスク・機会)については、CEOの決定で事業戦略に反映しています。
当社グループでは、「気候変動への対応」は「長期ビジョン実現に向けた長期的な課題」である経営マテリアリティの1つとして特定しています。進捗を管理している経営マテリアリティ委員会が、ESH委員会をはじめとする他の委員会と連携し、定期的に評価しています。活動内容は経営会議(マネジメント・コミッティ)での審議・決定を経て、取締役会に報告されます。
今後、市場やお客さまの要求により、炭素価格の上昇や再生可能エネルギー電力の購入による運用コストの上昇リスク、再生可能エネルギー発電等の導入の資本的支出、省エネ製品開発のための研究開発費の増加リスクが想定されます。また、風水災によるインフラの損傷や電力の不安定化による事業中断などの物理的リスクも挙げられます。
一方、省エネラベリング制度の義務化等の法規制による新たなビジネス機会や、消費者の気候変動への関心が高まると、CO₂排出量を抑える観点から、長寿命化への嗜好の変化に対してMRO(Maintenance, Repair and Overhaul)ビジネスの機会拡大などが考えられます。
今後も、環境に関連するリスク・機会の把握に努め、省エネ活動のさらなる推進をはじめとするリスクへの対策・機会の実現に向けて取り組んでまいります。
③ リスク管理
ESH委員会において、気候変動に係るリスク、機会に関する重要な情報を社内カンパニー及びグループ会社から収集し、事業活動に大きな影響を及ぼすか否かの評価及び重要と評価された事案への対策について審議を行っています。想定される影響額及び発生(実現)可能性について評価し、優先付けをしています。リスクについては影響額にかかわらず、発生可能性の高いリスクについて、優先的に対策案を策定し、ESH委員会において審議を行っています。また、ESH委員会では、気候変動以外に水資源、廃棄物、化学物質、従業員の安全、健康に関する評価も行っています。
<TCFDへの対応:リスク評価結果(参照シナリオ:IEA 450/IEA NZE 2050/RCP2.6/RCP8.5)>
■移行リスク ▲:リスク ●:機会
■物理リスク ▲:リスク ●:機会
(注) 影響度については、発生頻度と財務的な影響度の2つの観点から、大・中・小に分類をしています。
-発生頻度:頻繁に起きている/起きることが知られている/起きそうにない/まずありえない
-財務的な影響度:深刻(50億円以上)/大きい(25億円以上~50億円未満)/中程度(5億円以上~25億円未満)/軽微(1億円以上~5億円未満)/極めて軽微(1億円未満)
④ 指標及び目標
当社グループは、温室効果ガス排出削減の長期目標としてグループ全体のCO₂排出量を、2030年度で63%、2050年度で100%削減することとしています(基準年:2015年度、SBT1.5に認定)。2025年度までの累計実績は43.6%減と目標実現に沿ったペースで着実に削減を進めています。
また、自社だけでなく、サプライヤーへの展開活動も始めています。温室効果ガス排出量をサプライチェーン全体で見た場合、製品・サービスの購入(スコープ3 カテゴリ1)の割合が高いため、サプライヤーでの温室効果ガス排出量削減の取り組みが欠かせません。そこで、メインサプライヤー(年間調達額の70%を占める上位)の温室効果ガス排出量自主削減目標の設定状況の調査を開始しました。
2024年度時点で、メインサプライヤーの63%が温室効果ガス排出量自主削減目標を設定し、取り組みを行っています。
2025年度からは、サプライヤーによるスコープ3排出量算定の支援を開始しています。
サプライヤーが、自社排出を含むサプライチェーン全体での温室効果ガス削減に取り組めるよう、引き続き支援体制を強化しています。
<CO₂排出削減の長期目標(1.5℃目標/Scope 1+2)>
<CO₂排出削減の実績(単位:t-CO₂) (注)1、2、3>
(注)1 上記排出量のうち2025年度の数値については提出日時点の集計値であり、第三者保証を取得後、確定値を当社のウェブサイトにて開示します。
2 集計範囲はナブテスコ単体及び国内外の主要な連結子会社です。
3 集計の方針及び基準は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」「地球温暖化対策の推進に関する法律」に準拠し、環境情報管理に関する社内規定に基づき集計しています。
<その他の間接排出(スコープ3) 2024年度実績 (注)1、2>
(注)1 2025年度実績については集計中のため、2024年度実績の情報を記載しています。
2 2024年度スコープ3算定方法、対象期間、範囲は以下のとおり。
・算定方法:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省、経済産業省)に準拠。
・算定期間:2024年1月1日~2024年12月31日
(3) 人的資本経営の推進
当社グループは、長期ビジョンで掲げる「イノベーションリーダー」に向けて、統合前から積み重ねてきた顧客ニーズに「応える」取り組みとともに、顧客や社会の期待を「超える」視点を重視し、業績の向上 (Financial Impact)と社会課題の解決 (Social Impact)を同時に実現していくことで企業価値を高めることを追求しています。
その実現には、「両利きの経営」で言われる既存事業の深化と新規事業の探索の両立が必要であり、イノベーションを促進する基盤となる諸資本の変革が求められます。
なかでも人的資本は価値創造プロセスの起点となる重要な資本であり、当社グループでは、「イノベーションリーダー」の実現に向けた人的資本の最適化を図ることを、人的資本経営の目的としています。
顧客の「期待に応える」ためには、既存事業における絶え間ない技術革新や性能・品質の改善、生産性の向上等を通じて、顧客ニーズに徹底的に寄り添う人財が必要となります。一方、顧客や社会の「期待を超える」ためには、既存事業領域の拡大や新事業の創出など、顧客や社会の期待を超える価値を生み出し、提案する人財の拡充や育成が求められます。
組織面では、経営環境の変化に対して柔軟に対応できる組織能力の獲得が重要となります。そのためには、経営層からの上意下達による従来型のマネジメントだけではなく、各個人が自律的・自発的に行動することやトップダウンとボトムアップをつなげる管理職層の役割が重要となります。当社グループの人的資本経営は、これら各層の三位一体による推進が骨格となっています。各層がこのような役割を果たせるよう人的資本への投資を積極的に行い、「期待に応える」と「期待を超える」サイクルを力強く回し続けることで長期ビジョンの実現につなげていきます。

① 人的資本経営の目指す姿
当社グループでは、会社・経営層、組織・管理職層、個人による役割遂行が価値創造につながるとの認識のもと、人的資本の最適化に向け、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」のそれぞれでの目指す姿を設定しています。
会社・経営層においては、Actionできる「状況・環境」を創り出すこと。「組織・管理職層」においては、個々人のActionの種に気づきを与えること。「個人」においては「Innovation in Action」の種を芽吹かせること。これらが、当社グループの人的資本経営の目指す姿です。

② 現状と目指す姿のギャップ/課題抽出
当社グループでは、社員の主観的な状態を測定するエンゲージメントスコア(ES)と組織診断を定期的に実施し、個人の状態と組織風土の両面から現状把握と課題抽出を行っています。
組織診断の設問設計にあたっては、挑戦、共創、学習、創意工夫などイノベーション促進に関連性が高いと考えられる項目(イノベーション項目)を設定しました。下のグラフは、ESと組織診断の設問群を「個人の状態を表すもの(個人指標)」、「組織の状態を表すもの(組織指標)」に分類した上で、イノベーション項目とそれ以外の設問項目の充足度の相関分析を両指標について実施し、イノベーションとのつながりの強さ(横軸)、充足度(縦軸)でプロットしたものです。
両グラフの右下の項目群は、「イノベーションとのつながり」が強い一方で「充足度」が低い項目であり、個人指標では、仕事へのやりがいや達成感を得られ、成長につながる実感を持つことがイノベーション推進のドライバーとなることが示唆されます。
組織指標においては、会社・経営層のレベルでは「目標達成の見通しの実感」、「会社による世の中の変化先取り」「挑戦する風土の醸成」、組織・管理職層のレベルでは、「部署を超えた問題解決」や、「次のリーダー育成」といったキーワードが挙がっています。これらの項目の充足が、イノベーションリーダーの実現に向けた重点課題となるとの仮説を構築し、ギャップ解消に向けた各施策を、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」が三位一体となり推進しています。


③ 指標及び目標
前頁のギャップ解消に向け、当社グループでは、「会社・経営層」「組織・管理職層」「個人」の各層でのイノベーションに向けた取り組みの進捗を測る結果系指標として、「イノベーション指数」「リンケージ指数」「エンゲージメント指数」の3つの人的資本KPIを設定しています。これらの指標は、組織診断結果とエンゲージメントスコアを合成した結果系指標であり、各指標で2022年度の第三四分位の値を当面の目標として設定しています。
「イノベーション指数」は、Actionできる「状況・環境」を創り出すための指標で、ナブテスコ ウェイの浸透、人財ポートフォリオの充足により、イノベーションに取り組む目的を共有することで組織・個人がActionできる状況・環境を支援していきます。
「リンケージ指数」は、個々人のActionの種に気づきを与えるための指標で、配置・育成・評価、新規事業の仕組み、支援、制度改定により、「期待に応える」「期待を超える」両利きの視点で個人のActionを後押しします。
「エンゲージメント指数」は、個々人におけるMy “Innovation in Action”の種を芽吹かせるための指標で、ナブテスコ ウェイの自分事化、自律的キャリア形成、リスキリングにより、個々人のイノベーション意識を定着させていきます。
人的資本KPIについては、実行戦略や各指標の進捗をモニタリングしつつ、課題の変化に合わせて柔軟に見直し、人的資本経営の高度化を図っていきます。
<人的資本KPI>
(注)1 2025年度実績については集計中のため、2024年度実績の情報を記載しています。
2 組織診断とエンゲージメントサーベイの集計について、両データを整合させるために部門平均値を使用した結果、2022年度の数値を遡及修正しています。また、この修正に伴い、人的資本KPIの目標も2022年度の第三四分位の数値へ遡及修正しています。
(会社・経営層)イノベーション指数
イノベーション指数向上に向けた体系的な施策展開

(組織・管理職層)リンケージ指数
リンケージ指数向上に向けた体系的な施策展開

(個人)エンゲージメント指数
エンゲージメント指数向上に向けた体系的な施策展開

(4) 持続的なイノベーション創出をリードする知的財産経営戦略
当社グループは、顧客やパートナー企業など、すべてのステークホルダーが持続的成長と事業拡大を図るために、その事業競争力の源泉である現在及び未来の「コア価値(知財・無形資産)」の持続的な競争優位を担保する「知的財産経営戦略」をグループ全体で推進することで、企業価値の向上を追求しています。
当社グループの「コア価値」は、いわゆるコアコンピタンス(中核となる強み)だけでなく、競合企業も保有している技術等であっても、顧客への価値提供に必要な技術等を含むものとなります。コアコンピタンスだけでは顧客に価値を提供できないため、対象を広く捉えており、更に特許などの知的財産権だけでなく、ノウハウや取引実績、サプライチェーンなども含まれる知財・無形資産をいいます。そして、現在保有しているコア価値(現在のコア価値)と、将来必要となるコア価値(未来のコア価値)を事業毎に定めています。
さらに現在及び未来のコア価値は全社共通の切り口(機能や目的)で可視化され、共有されています。
<当社グループのコア価値>

① ガバナンス
2025年度から技術開発戦略と知的財産戦略を一体的に議論すべく、これまで開催してきた全社知財戦略審議を発展的に解消し、当社グループ全体の技術開発戦略及び知的財産戦略の基本方針を議論・審議するため、CEOや経営幹部をメンバーとしたグループ開発会議を年1回開催しています。ここで決定された基本方針に基づき、各社内カンパニーやグループ会社固有の技術開発戦略や知的財産戦略を議論・審議するため、各社内カンパニー等の社長や幹部と技術本部長や技術本部の幹部をメンバーとしたカンパニーロードマップ会議を年3回程度開催しています。なお、カンパニーロードマップ会議は従来、各社内カンパニー等の技術開発を中心に議論する会議体でしたが2024年度に技術開発戦略と知的財産戦略を一体的に議論すべく知的財産戦略を議論する場であったカンパニー知財戦略審議と統合しました。
また、2025年度から各カンパニーロードマップ会議の活動状況の共有や社内カンパニー等の共通の技術及び知財課題について議論・審議するため、技術本部長とコーポレート部門や社内カンパニー等の技術部門長をメンバーとした技術部門長会議を年6回程度開催しています。なお、技術部門長会議は従来、当社グループ共通の技術課題を中心に議論する会議体でしたが2025年度に技術課題と知財課題を一体的に議論すべく当社グループ共通の知財課題を議論する場であった知的財産強化委員会と統合しました。
技術部門長会議で議論された内容は戦略提案としてグループ開発会議で審議されて、翌年の基本方針に反映されています。このようにグループ開発会議、カンパニーロードマップ会議及び技術部門長会議の活動が有機的に結びつき、スパイラル的に発展していく形になっています。
また、2022年以降より年1回、取締役会で全社知的財産戦略の基本方針を報告し監督を受けています。なお、個別事業に関する知的財産戦略については事業戦略に含めて都度、取締役会で報告し監督を受けています。

② 戦略
■IPランドスケープによる新事業創造
当社グループではIPランドスケープを活用した市場や顧客ニーズの探索を通じて、コア価値の強化、新規獲得を図っています。当社グループの製品・サービスが使用される設備やシステム全体に関する特許情報などの知財情報だけでなく、論文、雑誌、企業情報などあらゆる公開情報をグローバルに調査し、技術・市場動向や顧客ニーズをマクロ分析しています。さらにこの分析結果をもとに新事業テーマ・市場・顧客ニーズの探索や開発テーマの検証、オープンイノベーションなどの協業先の探索など、将来事業の方針設定や他社連携の議論をイノベーション戦略室や社内カンパニー等と行っています。
■コア技術情報管理と知的財産権獲得の戦略的な活用
当社グループの競争力の源泉であるコア価値(知財・無形資産)には、いわゆる発明だけでなく、顧客との深い信頼関係や市場におけるブランドイメージ、商品・サービスに関するアイデア、設計・製造ノウハウ、サプライチェーンや人財などが含まれます。秘匿可能なコア価値については、徹底したコア技術情報管理(秘密情報管理)を行い、販売等のため秘匿することが困難なコア価値については、積極的に出願して知的財産権を獲得することで、コア価値の保護を図っています。
現在保有するコア価値とともに新たに生み出されるコア価値をコア技術情報管理と知的財産権獲得の両面で保護することにより、当社グループの総合的なコア価値力を持続的に増大させ、企業価値の向上を図ります。

③ リスク管理
■秘密情報管理と知的財産権獲得の戦略的な活用
当社グループの競争力の源泉であるコア価値には、顧客との深い信頼関係や市場でのブランドの構築、商品、サービスにおける技術アイデアや、設計・製造ノウハウなどが含まれ、これらは多数の特許、意匠、商標、営業秘密等の知的財産権で保護されています。
創造されたコア価値(知財・無形資産)は、原則として、全てコア技術情報(秘密情報)として徹底した秘密情報管理(コア技術情報管理)がされています。コア技術情報管理の一環として、全役員・社員(含む派遣社員)を対象に毎年情報管理教育を行うとともに、万一の国内外の裁判でも耐えうるような証拠形成も行っています。さらに業務監査部門とも連携して管理体制の維持も図っています。
一方、製品販売等の事業活動で公開するため、秘匿することが困難な技術的コア価値のみ、知財網を構築する知的財産権獲得戦略で保護を図っています。2025年末の時点で日本2,200件程度、アジア1,200件程度、欧州1,100件程度、米国500件程度の特許・実用新案・意匠(出願中含む)からなるパテントポートフォリオを構築しています。
現在のコア価値とともに新たに生み出される未来のコア価値をこのコア技術情報管理と知的財産権獲得戦略の両面で保護することにより、当社グループの総合的な知財・無形資産力を持続的に増大させ、これにより企業価値の持続的な向上を図ります。

■知財クリアランスの実行取り組み
当社グループでは、顧客の事業や製品を守ることを必須項目とし、当社グループの事業・製品を守ることを必要項目として、事業化プロセスの中で知財クリアランスを実行しています。具体的にはコア技術情報管理、知的財産権獲得、他社の知的財産権侵害防止、技術契約遵守、模倣排除、商標・著作権保護等の活動を事業化プロセスの中で実施しています。
2018年度以降で190件以上の製品・サービスについて実施しています。
■模倣品排除
当社グループのブランドを信じて購入した顧客が損害を被らないように、ブランド模倣はコストが掛かっても徹底的に排除する方針を取っています。
社内カンパニー及び国内外グループ会社からの情報のほか、展示会の定期巡回、ECサイトへの出品状況や企業ホームページの定期的な監視、過去に警告して侵害を中止した企業の定期監視等を行い、模倣品の早期把握を図っています。
その結果、2018年度以降で420件以上の侵害警告を行っています。
④ 指標及び目標
■量から質への転換
コア価値(知財・無形資産)を獲得・強化するための知的財産戦略活動を体系化し、社内カンパニーとグループ会社の中期経営計画の中で、その知的財産戦略活動を事業計画の一つとして策定、実行することを徹底しています。
また、すべての技術者が自ら新事業や新技術のアイデアや設計・製造のノウハウを創造する風土を構築するために、その創造活動を業績評価の対象として積極的な活動を奨励すると共に、事業に貢献する発明をなした方々(2025年度までに延べ256名)に対して、会社の創立記念式典で優秀発明者表彰を行い、全社でその栄誉を称え、社員の創造意欲の高揚を図っています。
このような活動を通じて、発明、意匠及びノウハウに関する知財創造届出件数は、以下のグラフに示すように、一定以上の水準を維持しております。
2025年度に量から質の更なる向上を目的とした活動に変更し、スマートモーションコントロールによる社会課題の解決を加速すべく、これに関する知財創造届出目標件数を設定しました。その結果、スマートモーションコントロール関連の知財創造届出件数は計画180件に対し、実績は325件となり計画以上となりました。一方、スマートモーションコントロール関連以外の開発テーマや生産技術関連の知財創造届出件数は減少することになり、全体で637件となりました。今後もスマートモーションコントロール関連の知財創造活動に注力して目標管理を行いますが、知財創造届出件全体でも一定の件数を維持するように活動していきます。
<知財創造届出件数>

※1 油圧機器事業を除いております。
2 網掛はスマートモーションコントロール関連の件数です。
■知の探索によるイノベーションを推進する施策
2022年度からいわゆる知の探索によるイノベーションを活性化させる一つの取組みとして知財創造する人の多様性を高める活動を展開しており、この活動状況を示す指標として「発明者割合」を設定しました。
この「発明者割合」は開発者だけでなく生産技術者を含む技術者に対する知財創造届出を行った発明者等の実数の比率で、年度単位で算出されるものであり、多様性が継続的に維持・改善されているかを示すものです。目標は80%以上としており、これを継続するために小集団活動を含め各種施策を展開しています。
2025年度から量から質の更なる向上を目的とした活動(スマートモーションコントロール関連の知財創造強化)に変更した影響もあり目標未達となりました。2026年度はスマートモーションコントロール関連以外の開発テーマの開発担当者や設計者及び生産技術者の知財創造支援も再度強化することで目標達成に繋げたいと考えています。
更に新たな市場ニーズ等を収集し、イノベーションに繋げた営業担当者等を対象とした知財創造支援者制度により、全社一丸となったイノベーション推進を図っています。
<発明者割合>

※油圧機器事業を除いております。
(1) 当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、業務執行に関し、損益、資産効率、品質、災害等の状況を適正かつタイムリーに取締役会に報告する体制を整備し、リスクの早期発見に努め、損失の極小化を図っています。
また、持続的な企業価値の向上に向けて、重要事項の審議等を行うCEOの直轄機関としてリスクマネジメント委員会を設置しており、その委員はCEOより任命されます。
リスクマネジメント委員会の委員長(常務執行役員)は、リスクマネジメントの取組状況をCEOが出席するマネジメント・コミッティや取締役会等の経営会議に定期的に報告しています。
(2) リスク管理
リスクマネジメント委員会は、全社横断的な組織として、毎年、コーポレート部門、社内カンパニー及びグループ会社が行ったリスクアセスメントの結果に基づいて、全社的重大リスクを特定し、それらの対策を審議することに加えて、対応策の実施状況を適切にフォローしています。事業活動に影響を与える各リスク項目について、その発生度及び影響度で評価し、さらに発生原因の分析も実施します。そして、リスク対応の優先順位付けとリスクに対する許容度を確認した上、リスクの対応方法を立案し、対策案の審議を経て実行します。
また、リスクマネジメント委員会に加えて、内部監査部門をはじめとする本社専門スタッフが業務上のリスク管理状況を監査し、専門的知見に基づき業務改善に向けた必要かつ適切な助言を提供し、取締役会に報告することでリスク対応状況を適切にモニタリングします。
なお、当社のリスク評価は、①リスク分析、②リスク評価、③リスク判定の順で実施します。リスク分析において、個々のリスクに対し、発生度5段階と影響度4段階により重要度を分析します。リスク分析から得られた結果に基づいて、スコアを特定し、リスクレベル及び対策レベルを4段階で判定します。

(3) 主要リスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。このようなリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。なお、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
リスクマップ

① 経済、市場の動向、為替相場の変動に関するリスク
当社グループの事業は、国内外の自動車、鉄道、建築、産業機械等の各産業分野に直接的又は間接的に関わっています。これら産業の景気変動及び設備投資動向、為替相場の変動等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 地政学に関するリスク
当社グループは、成長性・収益性の追求のため、アジア、北米、欧州を中心に積極的な事業展開を図っています。このため、各国の経済・市場の動向に関するリスクだけでなく、テロ、戦争その他の要因による社会的混乱の発生、政治的変動や予期できない法律、規制等の改正が行われる場合があり、各種製品の市場が影響を受け、その結果、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 大規模災害・気候変動に関するリスク
当社グループは、国内外の工場を始め、世界各地に事業拠点を置いています。近年、世界的な気候変動を背景とした風水害や、大規模地震、パンデミック等各種災害その他の要因による社会的混乱などのリスクが高まっていることに伴い、人的・物的被害の発生や資材調達の停滞及び物流網の寸断により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、これらによる損害が損害保険等で十分にカバーされるという保証はありません。
④ 調達に関するリスク
当社グループは、約1,600社の多様な規模のサプライヤーより、主に金属部品、電子電装部品等の調達を行っています。自然災害やサイバー攻撃による調達機能の停止などの外的要因や、調達先の倒産によって部品供給が滞り代替の調達先が確保できない場合には、製品の利益率の悪化や機会損失の発生により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 製品品質に関するリスク
当社グループは、各種製品について、欠陥が発生しないように万全な品質管理基準のもとに製造しています。しかしながら、万一リコールや製造物責任(PL)につながるような重大な欠陥が発生した場合には、訴訟・リコールなどにより多額のコストの発生につながり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 競合に関するリスク
当社グループは、国内外において高い市場占有率を誇る製品を多数保有しています。しかしながら、新製品開発の遅れ又は他社が画期的な新製品を開発する等により、各種製品の市場占有率が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルス感染等により、万一これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、生産停止や信用低下により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 知的財産に関するリスク
当社グループは、特許を含む知的財産権や秘密情報管理により自社技術の保護を図り、これら自社技術に関する知財・無形資産を適切に管理するとともに、第三者の知的財産権等を侵害することのないよう細心の注意を払っています。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産権を侵害した場合、秘密情報が漏洩した場合、又は当社グループが第三者から知的財産権の侵害等を主張された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 企業買収等に関するリスク
当社グループは、企業買収を通じて、国内外における製品の生産、販売・サービス体制の拡充や技術基盤の強化を図っています。しかしながら、企業買収当初に期待した効果が買収後に得られない場合、認識しているのれん等の固定資産の減損損失等の発生により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 人財の確保に関するリスク
当社グループは、製造・開発・販売、その他専門分野に携わる優秀な人財を幅広く採用・育成することで、グローバルな事業活動の推進と競争力の維持向上を図っています。しかしながら、人財の獲得競争の激化や社員の退職等によって十分な人財の確保及び育成ができなかった場合、競争力の低下につながり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
① 経営成績
当社は、2025年7月31日に「油圧機器事業の会社分割(簡易吸収分割)ならびにComer Industries S.p.A.との株式譲渡契約および株主間契約締結のお知らせ」にて公表のとおり、油圧機器事業の会社分割並びに同事業を継承する子会社の株式譲渡に関する決議がなされたことから、IFRS第5号に基づき第3四半期連結会計期間より、同事業を非継続事業に分類しています。これに伴い、売上高、営業利益、税引前利益について、期首より非継続事業を除いた継続事業の金額を表示し、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、継続事業及び非継続事業の合算を表示しています。なお、前期についても同様に組み替えて表示しています。
当社グループの当連結会計年度の業績は、コンポーネントソリューション事業、トランスポートソリューション事業及びアクセシビリティソリューション事業で需要が増加したことにより、売上高は307,912百万円となりました。
営業利益は増収による増益に加え、Project 10による収益性改善活動の効果があったものの、鉄道車両用機器に係る関係会社整理損失やDeep Sea社に配分されたのれんの減損損失もあり、20,726百万円となりました。また、税引前当期利益は21,656百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は15,695百万円となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度のセグメント別概況は次のとおりです。
[売上高]
(単位:百万円)
[営業利益]
(単位:百万円)
② 財政状態
(単位:百万円)
(資産)
当連結会計年度末の流動資産は256,426百万円、非流動資産は207,566百万円であり、その結果、資産合計は463,991百万円と前連結会計年度末比18,447百万円の増加となりました。主な増加要因は、IFRS第5号に基づき油圧機器事業を非継続事業に分類したことに伴う売却目的で保有する資産の増加43,665百万円です。主な減少要因は、営業債権の減少13,512百万円、及び有形固定資産の減少12,657百万円です。
(負債)
当連結会計年度末の流動負債は134,955百万円、非流動負債は40,202百万円であり、その結果、負債合計は175,157百万円と前連結会計年度末比16,890百万円の増加となりました。主な増加要因は、流動負債における借入金の増加13,129百万円、及びIFRS第5号に基づき油圧機器事業を非継続事業に分類したことに伴う売却目的で保有する資産に直接関連する負債の増加12,256百万円です。主な減少要因は、その他の債務の減少9,181百万円です。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は288,834百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分合計は271,932百万円と前連結会計年度末比1,840百万円の増加となりました。主な増加要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益15,695百万円、及び在外営業活動体の換算差額等によるその他の資本の構成要素の増加4,754百万円です。主な減少要因は、配当及び自己株式の消却による利益剰余金の減少20,089百万円です。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する持分比率は58.6%となり、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,320.45円となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動及び短期借入れにより獲得した資金を、主に設備投資、自己株式の取得及び配当金の支払に充てた結果、73,340百万円と前連結会計年度末比1,136百万円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは32,824百万円の資金の増加となりました。主な増加要因は、当期利益、減価償却費及び償却費によるものです。一方、主な減少要因は、棚卸資産の増加、及び営業債務の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは15,725百万円の資金の減少となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは13,559百万円の資金の減少となりました。主な増加要因は、短期借入れによる収入です。主な減少要因は、自己株式の取得による支出、及び配当金の支払いです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりです。
(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値です。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりです。
(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値です。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりです。
(注) 1 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値です。
2 総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要性のある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 注記3.重要性のある会計方針 及び 注記5.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1) 売上高(非継続事業を除く)
当社グループの当連結会計年度の業績は、コンポーネントソリューション事業、トランスポートソリューション事業及びアクセシビリティソリューション事業で需要が増加したことにより、前期比9.8%増加し307,912百万円となりました。
2) 営業利益(非継続事業を除く)
営業利益は増収による増益に加え、Project 10による収益性改善活動の効果があったものの、当第4四半期では鉄道車両用機器に係る関係会社整理損失やDeep Sea社に配分されたのれんの減損損失もあり、前期比60.3%増加し20,726百万円となりました。売上高営業利益率は6.7%となりました。
3) 税引前当期利益(非継続事業を除く)
金融収益は、為替差益等を計上したことにより992百万円となりました。金融費用は、支払利息等を計上したことにより1,105百万円となりました。持分法による投資利益は1,043百万円となりました。
その結果、税引前当期利益は21,656百万円と前期比57.1%増加となりました。
4) 親会社の所有者に帰属する当期利益(非継続事業を含む)
以上の結果、法人所得税費用5,933百万円及び非支配持分に帰属する当期利益1,930百万円を差引いた親会社の所有者に帰属する当期利益は、15,695百万円と前期比55.1%増加となりました。
また、基本的1株当たり当期利益は前期比47.31円増加し、131.56円となりました。
当連結会計年度のセグメントの業績の状況は次のとおりです。
コンポーネントソリューション事業の受注高は、前期比16.2%増加し82,428百万円となりました。売上高は、同17.3%増加し79,325百万円、営業利益は、同103.2%増加し5,420百万円となりました。
精密減速機は、長期化していた産業用ロボット在庫が適正水準となったことに加え、需要が堅調に推移したことにより、売上高は前期比で増加となりました。
(トランスポートソリューション事業)
トランスポートソリューション事業の受注高は、前期比8.4%増加し109,354百万円となりました。売上高は、同13.2%増加し100,473百万円、営業利益は、同8.7%増加し13,586百万円となりました。
鉄道車両用機器は、国内外での新車向け需要及びMRO (Maintenance, Repair and Overhaul)需要が好調に推移したことにより、売上高は前期比で増加となりました。
航空機器は、防衛費の増額による需要拡大と民間航空機向けでも増収となり、売上高は前期比で増加となりました。
舶用機器は、新造船向け需要及びMRO需要が好調に推移したことにより、売上高は前期比で増加となりました。
商用車用機器は、東南アジア市場で需要の低迷が継続しているものの、国内市場の需要は底堅く推移したことから、売上高は前期並みとなりました。
なお、当期は鉄道車両用機器に係る関係会社整理損失1,324百万円及びDeep Sea社に配分されたのれんの減損損失989百万円を計上しました。
(アクセシビリティソリューション事業)
アクセシビリティソリューション事業の受注高は、前期比8.7%増加し111,145百万円となりました。売上高は、同3.7%増加し110,668百万円、営業利益は、同0.9%増加し9,085百万円となりました。
自動ドア事業は、国内での建物用ドア及びプラットホームドア需要が堅調に推移したことに加え、為替効果により、売上高は前期比で増加となりました。
(その他)
その他の受注高は、前期比14.5%増加し20,326百万円となりました。売上高は、同0.8%増加し17,445百万円、営業利益は、同110.3%増加し2,194百万円となりました。
包装機は、国内での設備更新需要が堅調だったものの、海外での設備投資の見合わせが継続したことにより、売上高は前期並みとなりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、営業活動においては、生産活動に必要な運転資本(原材料、人件費等)、受注獲得のための販売費、既存事業の競争力強化や新商品や新事業の創出のための研究開発費等があります。投資活動においては、コンポーネントソリューションセグメントにおける精密減速機における生産能力増強等を中心に、製品の増産対応や更新等の設備投資を実施しました。財務活動においては、短期借入12,900百万円を実施しました。
また、当社グループは2026年12月期において、12,500百万円の設備投資を予定しています。
当社グループの事業活動に必要な資金は、主として自己資金、及び金融機関からの借入等により調達しており、親会社所有者帰属持分比率やROE等の指標を注視しながら、最適な資金調達方法を選択しています。当連結会計年度末の借入金の残高は44,985百万円と前期比13,101百万円の増加となりました。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2025年度を初年度とする中期経営計画における経営目標として、ROIC 10%以上という財務目標を設定していました。当期の各指標の実績は以下のとおりです。
(注) 2026年3月26日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として、「剰余金の処分の件」を提案しており、当該議案が承認可決されますと、DOE数値が以上のとおりとなる予定です。
(技術等導入に関する契約)
(注) 上記契約に対する対価として、一定額又は売上高の一定率を支払っています。
(株式譲渡契約及び株主間契約)
当社は、2025年7月31日開催の当社取締役会において、当社の油圧機器事業を、当社が新たに設立する完全子会社(コムテスコ株式会社)に吸収分割の方法により承継させ、対象事業を集約させた上で、同社の発行済株式のうち70%をComer Industries S.p.A.に譲渡する旨の株式譲渡契約、及びコムテスコ株式会社に関する株主間契約をComerとの間で締結することを決議し、2026年1月1日付で譲渡を完了しています。
詳細につきましては、「第5経理の状況 2(財務諸表等) (注記事項) (企業結合等関係)をご覧ください。
当社グループは、「独創的なモーションコントロール技術で、移動・生活空間に安全・安心・快適を提供します」との企業理念のもと、利益ある成長の姿を研究開発活動のゴールに設定し、事業戦略と連携した研究開発計画を立案して研究開発に取組んでいます。
研究開発活動の方向性として、強みであるメカ・コンポーネント技術を基盤とし、電動化に加え、システム化、センシング技術やデータ分析技術、ソフトウェア技術を組み合わせ、当社にしか出来ない「スマートモーションコントロール」製品を生み出すため、各種研究開発を推進しています。
当連結会計年度の研究開発のための費用は
セグメントごとの研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりです。
(1) コンポーネントソリューション事業
精機カンパニー、パワーコントロールカンパニーが中心となって、精密減速機及び同システム、建設機械用油圧機器及び同システム等の研究開発を行っています。当連結会計年度の主な成果は、産業用ロボット向け「精密減速機RV™」のラインアップ強化、小型減速機『RVmini®シリーズ』及び『Monocrank®シリーズ』の新製品開発、故障検知センサーの開発、「精密減速機RV™」をベースにした半導体・FPD市場向けギヤヘッドシリーズの開発、AGV駆動ユニットのシリーズ開発、建設機械用省エネポンプ・バルブシステムの投入、建設機械用走行/旋回ユニットのラインアップ強化、建設機械用コンパクト・高出力密度VCシリーズモータモデルの投入、建設機械のICT化・電動化に対応した機器の研究等です。当事業に係る研究開発費は、
(2) トランスポートソリューション事業
鉄道カンパニー、航空宇宙カンパニー、舶用カンパニー及びナブテスコオートモーティブ㈱が中心となって、鉄道車両用ブレーキ装置及び同ドアシステム、航空機用飛行制御機器及び同システム、舶用エンジン制御システム、商用車用ブレーキや乗用車用クラッチの各種装置・機器の研究開発を行っています。当連結会計年度の主な成果は、グローバル市場向け鉄道車両用ブレーキ制御装置・機器(車両制御)の開発、粉塵環境性能を向上させたオイルフリーコンプレッサーの開発、フライトコントロール用電動アクチュエータの開発、船速馬力制御ユニット「TELEGRAPH AGENT™(テレグラフ エージェント)」を適用した自律運航船向けシステム連携開発、環境対応エンジン向け制御装置及び燃料噴射バルブの開発、エンジン始動用高圧電磁弁の上市、従来の商用車用エアブレーキ機器の開発に加え電動化に対応した電動コンプレッサーの開発等です。当事業に係る研究開発費は、
(3) アクセシビリティソリューション事業
住環境カンパニーが中心となって、建物用自動ドア、プラットホーム用可動柵やスクリーンドア、福祉機器等の研究開発を行っています。当連結会計年度の主な成果は、高付加価値自動ドアの開発、遮煙性能付き(CAS認定)特定防火設備(複合防火設備)の上市、デジタルサイネージ一体型自動ドア及び広告配信事業の展開拡大、鉄道駅舎プラットホーム向けの可動式ホーム柵及びフルスクリーンホームドアの開発、台車向けアシストユニットの開発及び上市、歩行車用コンパルユニットの小型モデル・海外仕様等です。当事業に係る研究開発費は、
(4) その他
PACRAFT㈱、及びシーメット㈱が中心となって、自動充填包装機、光造形システム(3Dプリンター)等の研究開発を行っています。当連結会計年度の主な成果は、高生産性要求に応える包装機、包装機の前後工程での省人化・自動化装置の開発、製造業向け中型光造形装置「ATOMm-4000Ⅱ」の上市、風力発電機用CMFS機器の開発、欧州大手発電事業者所有の3MW風車用CMFSの実機試験、CMFSクラウドサービスの開発及び国内・海外でのサービス開始、クラウド内での旋回ギヤの歯面寿命診断の開発等です。当事業に係る研究開発費は、
(5) コーポレート部門
コーポレート部門では、グループ全体に共通する基盤要素技術や新事業分野に係る研究開発活動、大学・研究機関及び他企業と共同研究開発活動等を積極的に行っています。2024年に北米にイノベーション拠点を設置し、技術シーズや協業先の探索を継続しています。コーポレート部門に係る研究開発費は、3,328百万円です。